説明

木造建物のリフォーム工法

【課題】主として木造戸建て住宅のリフォームを居住者が普通に継続して住みながら効率的に行なうことができ、施工の効率化と工期の短縮化等を可能にした木造建物のリフォーム工法を提供する。
【解決手段】最初に、壁軸組2に設けられた各部屋の窓枠6内に取り付けられた既存のサッシ7をすべて新規のサッシに取り替える。サッシ取替え工事と並行して浴室、洗面、便所、台所などの水回りの工事を行なう。次に、外装工事と内装工事を並行して行ない、既存の外装材8と内装材9をそれぞれ新規の外装材と内装材に取り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木造建物のリフォーム工法に関し、主として木造戸建て住宅のリフォームを居住者が普通に継続して住みながら行なえるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、木造戸建て住宅は、壁軸組の室外側に下地材として取り付けられたボード類の上に外装仕上げ材を取り付けることにより構成され、また壁軸組の室内側には下地材として取り付けられたボード類の上に内装仕上げ材を取り付けることにより内壁が構成されている。
【0003】
さらに、窓は壁軸組内に窓台と窓まぐさと縦枠とからなる窓枠を構成し、当該窓枠内にサッシを取り付けることにより構成されている。
【0004】
また、施工に際しては、窓枠を含む軸組工事が完了したら窓枠内にサッシを取り付け、続いて外装工事と内装工事を行なって外壁と内壁の仕上げが行なわれる。その際特に、サッシの位置が決まらないことには外装工事と内装工事に取り掛かれないことから、サッシを先付けしてサッシの位置を決め、その後から外装工事と内装工事が行なわれる。
【0005】
ところで、従来、こうした戸建て木造住宅のリフオームは、一般に既存のサッシを新規のサッシに取り替えてサッシの位置を決め、その後から窓周囲の外装工事と内装工事が行なわれている。
【0006】
また、リフォーム期間中、居住者が引越しを強いられることなく、継続して住めるよう居住者の仮住まいとなる部屋を確保するため、サッシの取り替えと内装工事を部屋ごとにおこない、すべての部屋のサッシの取り替えと内装工事が完了したら建物全体の外装工事を行なっている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−143883号公報
【特許文献2】特開平9−217556号公報
【特許文献3】特開2005−299194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、サッシの取替えと内装工事を部屋ごとに行い、最後に外装工事を行なうとなると、天候次第で仕上げが延びることがあり、このため施工効率が悪く、工期の長期化が避けられない等の課題があった。
【0009】
また、工事は2階部分から開始されることが多く、このため足場を仮設後、各部屋ごとにサッシを取り替え、全体のサッシ取替えが完了した後に外装工事となるため、足場の架設期間が長くなり、防犯上の課題もあった。
【0010】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、主として木造戸建て住宅のリフォームを、居住者が普通に継続して住みながら、効率的におこなえるようにした木造建物のリフォーム工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の木造建物のリフォーム工法は、木造建物のリフォーム工法において、サッシの取替え工事を先行させて室外側から行い、主たる内装工事を新設サッシが入った状態で行なうとともに、外装工事を内装工事と並行作業により行なうことを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、主として木造戸建て住宅に適用されるリフォーム工法であり、特に居住者がリフォーム期間中も継続して普通に住み続けられるように、最初に各部屋の既存のサッシのみをすべて新規のサッシに取り替えることにより、防犯上の安全と居住性を確保し、続いて外装工事と内装工事を並行して行なうことにより施工の効率化と工期の短縮化等を可能にしたものである。
【0013】
なお、サッシの取り替えに際しては、窓枠周囲の外装材と内装材およびこれらの下地材を一部撤去する必要があるが、リフォーム期間中も居住者が継続して普通に住み続けられるように、窓枠周囲の取り壊しは可能な限り最少に留めるのが望ましい。
【0014】
請求項2記載の木造建物のリフォーム工法は、請求項1記載の木造建物のリフォーム工法において、取替えの前後でサッシの大きさを変更する部分について、新設サッシを取り付ける壁軸組に対し、室外側から補強を行なうことを特徴とするものである。
【0015】
たとえば、窓の腰壁を低くして窓を大きくするときは、窓台の下側に取り付けられた間柱を所定の位置から上の部分を切除し、その上に窓台を取り付けることにより窓を大きくした後の窓回りを補強することができる。
【0016】
また、窓の内法高を高くして窓を大きくするときは、窓まぐさの上側に取り付けられた間柱を所定の位置から下側部分を切除し、その下側に窓まぐさを取り付けることにより、窓を大きくした後の窓回りを補強することができる。
【0017】
また、窓の腰壁を高くして窓を小さくするときは、既存の窓台の上に間柱を新たに取り付け、その上に窓台を新たに取り付けることにより、窓を小さくした後の窓回りを補強することができる。
【0018】
また、窓の内法高を低くして窓を小さくするときは、既存の窓まぐさの下側に新たに間柱を垂設し、その下側に窓まぐさを取り付けることにより、窓を小さくした後の窓回りを容易に補強することができる。
【0019】
さらに、窓の間口を広くして窓を大きくするときは、既存の窓台と窓まぐさを長いものに取り替え、その両端に改めて窓枠を取り付け、その際特に、窓まぐさの上側に補強梁を配置することにより、窓を大きくした後の窓の周囲を容易に補強することができる。
【0020】
請求項3記載の木造建物のリフォーム工法は、請求項1または2記載の木造建物のリフォーム工法において、室外側からの前記サッシの取替え工事と並行して、室内水回り工事を行い、サッシの取替え工事の完了後またはサッシの取替え工事がほぼ完了した後に、主たる内装工事と外装工事を行なうことを特徴とするものである。
【0021】
浴室、洗面、便所、台所などの水回りは、給排水設備の設置を伴なうことから、サッシ取替え工事と並行して先に行なうことにより、後の内装工事と外装工事を効率的に行なうことができる。
【0022】
請求項4記載の木造建物のリフォーム工法は、請求項1、2または3に記載の木造建物のリフォーム工法において、内装工事は、工事中の部屋以外を居住空間として残した状態で、部屋ごと順次行なうことを特徴とするものである。
【0023】
本発明は、居住者がリフォーム期間中も引越しを強いられることなく、継続して普通に住み続けられるようしたものであり、サッシ取替え後、内装工事が完了した部屋を順に移動することにより、居住者はリフォーム期間中も継続して住み続けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、特に居住者がリフォーム期間中も継続して普通に住み続けられるように、最初に各部屋の既存のサッシのみをすべて新規のサッシに取り替えることにより、防犯上の安全と居住性を確保し、続いて外装工事と内装工事を並行して行なうことにより施工の効率化と工期の短縮化等を図ることができる等の効果を有する。
【0025】
また、外装工事が内装工事と並行して行なわれることで、工期の短縮化が可能になり、これにより外部足場の架設期間が短縮され、防犯面の強化が図れる等の効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1と図2は、一般的な戸建て木造住宅の外壁の構造を示し、図において、複数の間柱1を有して構成された壁軸組2内に窓台3と窓まぐさ4と縦枠5,5とからなる窓枠6が構成され、当該窓枠6内にサッシ7が取り付けられている。また、壁軸組2の室外側に外装材8、室内側に内装材9がそれぞれ取り付けられている。
【0027】
サッシ7は下枠7aと上枠7bと左右縦枠7c,7cとから構成され、それぞれ窓枠6の窓台3と窓まぐさ4と縦枠5,5に取り付けられている。また、外装材8と内装材9は壁軸組2にボード類などの下地材10を介して取り付けられている。こうして、戸建て木造住宅の外壁と窓が構成されている。
【0028】
次に、このように構成された戸建て木造住宅のリフォーム工法について説明すると、最初に各部屋の既存のサッシ7のみをすべて新しいサッシに取り替える。また、サッシ7の取替え工事と並行して、浴室、洗面、便所、台所などの水回りの工事を行なう。
【0029】
なお、サッシの取替え工事に際し、窓枠周囲の外装材8、内装材9およびこれらの下地材10を一部撤去する必要がある場合、居住者が継続して普通に住み続けられる程度の居住性を確保する必要があるため、窓枠6周囲の外装材8、内装材9およびこれらの下地材10の取り壊しは可能な限り最小限に留めるものとする。
【0030】
また、後から取り付けられる新規のサッシと既存のサッシ7の大きさが異なるときは、窓枠6も部分的またはすべて新しい部材によって新たに構成し、その回りを補強する。
【0031】
窓回りを補強する方法として、例えば、窓の内法高を高くして窓を大きくするときは、図3(a)に図示するように、既存の窓まぐさ4を撤去し、その上側に取り付けられた既存の間柱1を所定位地から下側部分1aを切除し、その下側に新規の窓まぐさ4Aを取り付ける。
【0032】
また、窓の腰壁を低くして窓を大きくするときは、図3(b)に図示するように、既存の窓台3を撤去し、その下側に取り付けられた間柱1を所定位地から上側部分1bを切除し、その上に新規の窓台3Aを取り付ける。
【0033】
一方、窓の内法高を低くして窓を小さくするときは、図4(a)に図示するように、既存の窓まぐさ4の下側に新たに間柱1Aを垂設し、その下側に新規の窓まぐさ4Aを改めて取り付ける。
【0034】
また、窓の腰壁を高くして窓を小さくするときは、図4(b)に図示するように、窓台3の上に新たに間柱1Aを建て付け、その上に新規の窓台3Aを取り付ける。
【0035】
なお、図5(a),(b)に図示するように、既存の窓台3と窓まぐさ4を撤去し、既存の間柱1の端部に新たに間柱1Aを継ぎ足し、新規の窓台3Aと窓まぐさ4Aをそれぞれ設置してもよい。
【0036】
そして、窓の間口を広くして窓を広くするときは、図6(a),(b)に図示するように、既存の窓台3と窓まぐさ4をそれぞれ長い新規の窓台3Aと窓まぐさ4Aに取り替え、窓まぐさの上側に補強梁11を架け渡す。
【0037】
この場合、補強梁11の両端は柱12の側部に大入れ接合とし、当該補強梁11と柱12との接合部は、その室外側部に双方の部材に跨って補強プレート13を取り付けることにより補強する。
【0038】
このように、補強プレート13を接合部の室外側に取り付けて接合部を補強することにより、窓枠周囲の外装材9およびその下地10の取り壊しを最少に留めることができ、また接合部を室外側から容易に補強することができる。
【0039】
なお、補強梁11は窓まぐさ4Aと兼用させてもよい。また、補強プレート13には鉄板を用い、補強梁11と柱12にビスによって取り付けることができる。
【0040】
こうした窓回りの補強も、サッシ取替え工事と同様に内装材8に手を加えることなくすべて室外側から行なう。
【0041】
また、サッシの取替え工事などの一連の工事の着工に先立ち、あらかじめ外周壁などに基準となる高さの墨出しを行い、この墨出しをした高さを基準に窓枠6の取り替え等を行なう。こうして全部屋の既存のサッシ7の取り替えが完了したら、外装工事と内装工事を並行に行なって外装材7と内装材8の取替えを行なう。
【0042】
図7は、本発明の木造建物のリフォーム工法の工程(図(b))と従来の木造建物のリフォーム工法の工程(図(a))を比較したものであり、工程表からも明らかにように、本発明の場合、サッシ取替え工事を先行して行い、その後から内装(内部)工事と外装(外部)工事を並行して行なうことにより、従来の工法に比べて工期を約0.5ケ月短縮でき、また、作業足場の仮設期間を約1ケ月短縮できる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、主として戸建て木造住宅のリフォームを、リフォーム期間中も居住者が普通に住みながらきわめて効率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一般的な戸建て木造住宅の外壁の構造を示す一部破断正面図である。
【図2】窓回りの構造を示し、図1におけるイ−イ線断面図である。
【図3】窓を大きくするときの窓回りの補強方法を示す壁軸組の一部正面図である。
【図4】窓を小さくするときの窓回りの補強方法を示す壁軸組の一部正面図である。
【図5】窓を小さくするときの窓回りの補強方法を示す壁軸組の一部正面図である。
【図6】窓を大きくするときの窓回りの補強方法を示し、(a)は壁軸組の一部正面図、(b)は柱と梁との接合部を示す拡大図である。
【図7】本発明のリフォーム工法の工程図と従来のリフォーム工法の工程図を比較したものであり、(a)は従来のリフォーム工法の工程図、(b)は本発明のリフォーム工法の工程図である。
【符号の説明】
【0045】
1 間柱
2 壁軸組
3 窓台
4 窓まぐさ
5 縦枠
6 窓枠
7 サッシ
8 外装材
9 内装材
10 下地材
11 補強梁
12 柱
13 補強プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建物のリフォーム工法において、サッシの取替え工事を先行させて室外側から行い、主たる内装工事を新設サッシが入った状態で行なうとともに、外装工事を内装工事と並行作業により行なうことを特徴とする木造建物のリフォーム工法。
【請求項2】
取替えの前後でサッシの大きさを変更する部分について、新設サッシを取り付ける壁軸組に対し、室外側から補強を行なうことを特徴とする請求項1記載の木造建物のリフォーム工法。
【請求項3】
室外側からの前記サッシの取替え工事と並行して、室内水回り工事を行い、サッシの取替え工事の完了後またはサッシの取替え工事がほぼ完了した後に、主たる内装工事と外装工事を行なうことを特徴とする請求項1または請求項2記載の木造建物のリフォーム工法。
【請求項4】
内装工事は、工事中の部屋以外を居住空間として残した状態で、部屋ごと順次行なうことを特徴とする請求項1、2または3記載の木造建物のリフォーム工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−308870(P2008−308870A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157357(P2007−157357)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】