説明

末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞から生殖細胞を産生するための方法及び組成物

本発明は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞及びその前駆細胞の使用、それを単離する方法及びそれを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願/特許及び参照による取り込み)
本出願は、代理人整理番号第910000−3073号として2004年5月17日に出願された米国特許出願第60/572,222号、代理人整理番号第910000−3074号として2004年5月24日に出願された米国特許出願第60/574,187号及び代理人整理番号第910000−3076号として2004年7月9日に出願された米国特許出願第60/586,641号に係る優先権を主張する。これら出願のそれぞれの内容を参照して本明細書に取り込む。
本明細書中に引用された出願及び特許;またその各々(特許された出願の係属中に「本出願で引用された文献」として引用された文献も含む)で引用した文献又は参照;これらの出願及び特許の何れかに対応するPCT及び外国出願又は特許、及び/又はこれらの出願及び特許の何れかの優先権を主張する出願及び特許;及び、特許出願に於いて引用された文献中で引用又は参照された文献はそれぞれ、参照して本明細書に取り込み、本発明の実施に用いてもよい。より一般的には、本明細書中に引用される文献又は参照は、明細書の末尾に参考文献リストとして又は明細書中の何れかに引用される。そして、これらの文献又は参照(「本明細書で引用された文献」)のそれぞれは、及び本明細書で引用された各々の文献で引用された文献及び参照(製造者の仕様書、説明書等の何れをも含む)と同様に、参照して本明細書に取り込むものとする。
【0002】
(政府が保有する利益に関する記載)
米国政府は、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)の加齢医学研究所(National Institutes on Aging)から出されたグラント番号R01−AG12279及びR01−AG24999に基づいて、この発明に関する特定の権利を有するものである。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物のメスが胎生期に生殖細胞の再生をする能力を失うという生殖生物学の基本的な学説は、JohnsonらのNature428:145(2004)により、最近検証されたばかりである。Johnsonらは、幼惹なマウス及び成体マウスの卵巣が、卵母細胞の変性とクリアランスの割合に基づいて、出生後の哺乳動物の卵巣内に卵母細胞と卵胞の産生を維持するといった有糸分裂的に活性な生殖細胞を持つことを確証的に示した最初のグループである。
生殖細胞前駆体の存在は卵巣にのみ限定されないということが近年示されてきた。生殖細胞マーカー遺伝子は、現在、骨髄由来の細胞にも確認されている。さらに、ある条件の宿主に骨髄が移植されると、骨髄細胞は卵巣内で新たな卵母細胞へ発生することが認められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新生児の臍帯血は、造血前駆細胞(概説として、Korbling and Anderlini,2001 Blood 98:2900−2908、Ho and Punzel,2003 J LeukocBiol 73:547−555、Sanchez−Ramos,2002 J Neurosci Res 69:880−893、Lee,2004 Blood 103:1669−75を参照されたい)を含む、体細胞系列の多様性に寄与することになる幹細胞の宝庫であることは知られている。臍帯血サンプルの収集は容易且つ安全に行われ、将来の治療用に保管も可能である。(Rogers and Casper,2004 Sexuality,Reproduction&Menopause 2:64−70)。さらに、臍帯血サンプルの個々の患者に対する有用性は、将来的に完全に一致するドナー細胞の供給源を提供するものである。臍帯血等の末梢血が生殖細胞前駆体も含んでいるか否かは、今のところ定かではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要約)
本発明の方法は、特に、精巣及び卵巣に於いて生殖細胞の貯蔵を補充する又は増大(expand)させるために、受精率を増加又は回復させるために、そして雌性に於いては更年期の徴候及び影響を改善するために、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞の使用することに関する。
一態様に於いては、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞を含んで成る組成物を提供する。
【0006】
ある態様では、本発明は、有糸分裂能を有し、Vasa、Dazl及びStellaを発現する、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞を含んで成る組成物を提供する。本発明の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞は、それらの有糸分裂能の表現型と一致して、成長/分化因子9(GDF−9)、透明帯タンパク質(例えば、透明帯タンパク質3(ZP3))、ヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)及びシナプトネマ複合体タンパク質(SCP3)を発現しない。
宿主に移植されると、本発明の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞は、移植後少なくとも1週、より好ましくは1〜約2週、約2〜約3週、約3〜約4週又は約5週以上の期間の後、卵母細胞を産生する。
【0007】
別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞を含む組成物を提供する。一態様では、本発明は、Vasa、Dazl及びStellaを発現するが、GDF−9、透明帯タンパク質、HDAC6及びSCP3は発現しない、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞の前駆細胞を含む組成物を提供する。本発明の、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞の前駆細胞は、宿主に移植されると、移植後1週より短い期間で、好ましくは約24〜48時間で卵母細胞を産生する。
【0008】
一態様では、本発明は、有糸分裂能があり、Vasa、Dazl及びStellaを発現する、単離された末梢血細胞を提供する。好ましくは、細胞は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞であり、XXの核型を有する。好ましくは、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞は、非胚性(non-embryonic)の、哺乳動物の、そしてより好ましくはヒトのものである。
別の態様では、本発明は、精製された末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞集団及び/又はその前駆細胞集団を提供する。特定の態様では、精製された細胞集団は、組成物中に約50〜約55%、約55〜約60%、約65〜約70%、約70〜約75%、約75〜約80%、約80〜約85%、約85〜約90%、約90〜約95%又は約95〜約100%の細胞が存在する。
【0009】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞及び/又はそれらの前駆細胞並びに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、精製された末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞集団及び/又はその前駆細胞集団を含んでいてもよい。
本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞を含む組成物は、卵巣組織に直接投与することによって、又は、例えば対象の循環器系に(例えば、卵巣外循環に)間接的に投与することによって提供することができる。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書で以下に記載されるように、インビボ、エクスビボ又はインビトロで末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を操作する方法を提供する。
【0011】
ある態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、細胞の増殖又は生存を促進させる薬剤と接触させることによりそれらの量を増加させることを含む、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞をインビボ、エクスビボ又はインビトロで増大(expand)させる方法を提供する。このような薬剤は、末梢血由来の幹細胞又は末梢血由来の幹細胞から派生する前駆細胞を、末梢血内から末梢血へ動員することを促進するかもしれない(例えば、GCSF、GMCSF)。好ましい態様では、薬剤は、ホルモン若しくは成長因子(例えば、インスリン様成長因子(IGF)、)形質転換増殖因子(TGF)、骨形成タンパク質(BMP)、Wntタンパク質若しくは線維芽細胞成長因子(FGF))、細胞情報伝達分子(例えば、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)若しくはレチノイン酸 (RA))、又は、薬理学若しくは医薬品化合物(例えば、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)阻害剤、Bax阻害剤若しくはカスパーゼ阻害剤等のアポトーシス阻害剤、一酸化窒素産生の阻害剤、又はHDAC活性阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0012】
別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を試験する薬剤と接触させ、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数の増加を検出し、それにより、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の増殖又は生存を促進する薬剤を同定することを含む、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の増殖又は生存を促進する薬剤を同定する方法を提供する。
【0013】
さらに別の態様では、対象となる集団から末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を単離し、複数の培養細胞を確立するために培養液中で当該細胞を増大(expand)させること、任意で当該細胞を望ましい系統に分化させること、細胞培養物を1つ又はそれ以上の生物学的又は薬理学的な薬剤に接触させること、1つ又はそれ以上の生物学的又は薬理学的な薬剤に対して1つ又はそれ以上の細胞応答を同定すること、及び、異なる対象由来の細胞培養物の細胞応答を比較することを含む、生物学的又は薬理学的な薬剤に対する薬理学的な細胞応答を特徴付けるために、雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を使用する方法を提供する。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤の存在下で、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を培養し、それにより卵母細胞を産生することを含む、卵母細胞を産生するための方法を提供する。好ましい態様では、薬剤は、ホルモン若しくは成長因子(例えば、TGF、BMP若しくはWntファミリータンパク質、kit−リガンド(SCF)若しくは白血病抑制因子(LIF))、情報伝達分子(例えば、減数分裂活性化ステロール(FF−MAS))、又は、薬理学若しくは医薬品化合物(例えば、Idタンパク質の機能若しくはSnail/Slug転写因子の機能の調節因子)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、対象となる雌をインビトロで受精させる方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含む:
a)末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、卵母細胞に分化させる薬剤の存在下で培養することにより、卵母細胞を産生すること
b)卵母細胞をインビトロで受精させて接合体を形成すること、及び、
c)接合体を対象である雌の子宮に移植すること。
さらに別の態様では、本発明は、対象である雌をインビトロで受精させる方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含む:
a)末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、当該細胞を卵母細胞に分化させる薬剤と接触させることによって、卵母細胞を産生すること、
b)卵母細胞をインビトロで受精させて接合体を形成すること、及び、
c)接合体を対象である雌の子宮に移植すること。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を試験される薬剤と接触させること、及び、卵母細胞の数の増加を検出し、それにより、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の分化を誘導する薬剤を同定することを含む、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の卵母細胞への分化を誘導する薬剤を同定する方法を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、組織、好ましくは卵巣に提供することを含む、卵母細胞を産生する方法を提供し、そこでは、細胞は組織に生着し卵母細胞に分化し、それにより卵母細胞を産生する。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、組織、好ましくは卵巣に提供することを含む、卵胞形成を誘導する方法を提供し、そこでは、細胞は組織に生着し卵胞内で卵母細胞に分化し、それにより卵胞形成を誘導する。
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、不妊治療を必要としている対象の雌の不妊を治療する方法を提供し、そこでは、細胞は、組織、好ましくは卵巣に生着し卵母細胞に分化し、それにより不妊を治療する。本明細書で特に言及しない限り、不妊治療を必要とする雌の対象とは、以前に化学療法又は放射線治療を受けていない対象である。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の治療有効量を対象に投与することを含む、既に化学療法若しくは放射線治療(又は両方の治療)を受けており、受精率の回復を望む対象の雌の受精率を回復させる方法を提供し、そこでは、細胞は組織、好ましくは卵巣に生着し卵母細胞に分化し、それにより対象の受精率を回復させる。好ましくは、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞は、末梢血から得られる精製された細胞の亜母集団を含む。化学療法剤は、特に、ブスルファン、シクロホスファミド、5−FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、エトポシド、シスプラチン、メトトレキセート、ドキソルビシンを含むが、それらに限定されるものではない。放射線治療は、電離放射線、紫外線照射、X線等を含むが、それらに限定されるものではない。
【0019】
さらに別の態様では、本発明は、化学療法若しくは放射線治療(又は両方の治療)より前に又は同時に、生殖機能の傷害を保護する薬剤を提供すること、及び、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を対象に提供することを含む、化学療法若しくは放射線治療(又は両方の治療)を受けている又は受けることが予定されている対象の雌において受胎能力を保護するための方法を提供し、そこでは、細胞は、組織、好ましくは卵巣組織に生着し卵母細胞に分化し、それにより対象の受胎能力を保護する。保護剤は、S1P、Bax拮抗剤又はSDF−1活性を増加させるいずれの薬剤でもよい。
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を含む組成物の治療有効量を組織に提供することを含む、損傷を受けた卵巣組織を修復するための方法を提供し、そこでは、細胞は組織に生着し卵母細胞に分化し、それにより損傷を受けた組織を修復する。損傷は、例えば、細胞傷害性因子への曝露、ホルモンの欠乏、成長因子の欠乏、サイトカインの欠乏、細胞レセプター抗体等によって、引き起こされるかもしれない。本明細書で特に言及する場合を除き、損傷は、以前に受けた化学療法又は放射線治療によるものではない。損傷は、また、癌、多嚢胞性卵巣疾患、遺伝性疾患、免疫障害、代謝性疾患等の卵巣機能に影響を与える疾患によっても引き起こされるかもしれないがそれらに限定はされない。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の治療有効量を対象の卵巣に投与することを含む、化学療法若しくは放射線治療(又は両方の治療)を受けたことがあり、卵巣機能の回復を望む対象の雌の卵巣機能を回復するための方法を提供し、そこでは、細胞は卵巣に生着し卵巣内で卵母細胞に分化し、それにより対象の卵巣機能を回復する。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、閉経期にある対象の雌の卵巣機能を回復するための方法を提供し、そこでは、細胞は卵巣に生着し卵母細胞に分化し、それにより卵巣機能を回復する。閉経期にある雌の対象は、閉経前又は閉経後の段階であってもよく、当該閉経は正常(例えば、加齢)又は病理学的過程(例えば、手術、疾患、卵巣損傷)により引き起こされるものである。
卵巣機能の回復は、これらに限定はされないが、骨粗鬆症、循環器系の疾患、体細胞性の性機能障害、のぼせ、膣部の乾燥、睡眠障害、うつ病、刺激過敏症、性欲の喪失、ホルモンのアンバランス等の体細胞性の疾患、同様に記憶の喪失、情緒障害、うつ病等の認知性疾患を含む更年期障害に伴う有害な症状及び合併症を軽減することができる。
【0023】
さらに別の態様では、本発明は、対象から得た末梢血サンプル中に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数を測定することを含む、対象に於いて早発卵巣不全を検出又は診断するための方法を提供し、そこでは、サンプル中に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数は、健常な対象から得たサンプル中に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数より実質的に少なく、それにより対象に於いて早発卵巣不全を検出又は診断する。
【0024】
本発明の方法は、他の生殖細胞種を産生するのに使用できる。従って、さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞を含む組成物を提供し、そこでは、末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞は、有糸分裂能があり、Vasa及びDazlを発現する。本発明の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞はXX核型を有する一方、本発明の末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞はXY核型を有する。好ましくは、末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞は、非胚性の、哺乳動物の、そしてより好ましくはヒトのものである。
【0025】
ある態様では、本発明は、有糸分裂の能力があり、XY核型を有し、Vasa及びDazlを発現する、単離された末梢血細胞を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、対象である雄の精巣に末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を提供することを含む、精子形成を回復又は増強するための方法を提供し、そこでは、細胞は精上皮に生着し精細胞に分化し、それにより精子形成を回復又は増強する。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の治療有効量を対象に投与することを含む、化学療法若しくは放射線治療(又は両方の治療)を受けたことがあり、受精率の回復を望む対象である雄の受精率を回復する方法を提供し、そこでは、細胞は精上皮に生着し精細胞に分化し、それにより受精率を回復する。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞をを、細胞増殖を減少させる薬剤と接触させ、それにより末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させることを含む、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量をインビボ、エクスビボ又はインビトロで減少させる方法を提供する。好ましい態様では、薬剤は、ホルモン若しくは成長因子(例えば、TGF−β)、分裂促進的なホルモン若しくは成長因子のペプチドアンタゴニスト(例えば、BMPアンタゴニスト、DAN及びCerberus関連タンパク質(PRDC)並びにGremlin)、又は、薬理学若しくは医薬品化合物(例えば、細胞周期阻害剤若しくは成長因子情報伝達の阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0028】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、細胞の生存を阻害する又は細胞死を促進させる薬剤と接触させ、それにより末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させることを含む、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞をインビボ、エクスビボ又はインビトロで減少させるための方法を提供する。好ましい態様では、細胞の生存を阻害する薬剤は、ホルモン、成長因子若しくはサイトカイン(例えば、TNF−α、Fasリガンド(FasL)及びTRAIL等のアポトーシス促進性の腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー)、 生存促進性のBcl−2ファミリーメンバーの機能のアンタゴニスト、情報伝達分子(例えば、セラミド)、又は、薬理学若しくは医薬品化合物(例えば、成長因子情報伝達の阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。好ましい態様では、細胞死を促進させる薬剤は、アポトーシス促進性の腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー(例えば、TNF−α、FasL及びTRAIL)、生存促進性のBcl−2ファミリーメンバーの機能のアゴニスト及びセラミドを含むが、それらに限定されるものではない。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を試験する薬剤と接触させること、及び、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数の減少を検出し、それにより雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の増殖又は生存を減少させる又は細胞死を促進させる薬剤を同定することを含む、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の増殖又は生存を減少させる又は細胞死を促進させる薬剤を同定する方法を提供する。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、対象の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の増殖、機能又は生存を減少させる、又は、当該細胞の新たに卵母細胞、精細胞又は受精に必要とされる他の体細胞性の細胞種を産生する能力を減少させる薬剤と接触させ、それにより対象に避妊を提供することを含む、対象である雄又は雌において避妊するための方法を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、本発明の様々な薬剤を利用する際に使用するためのキットを提供する。
【0031】
ある態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の細胞増殖又は生存を促進する薬剤と、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の細胞増殖又は生存を促進する薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を増大(expand)させる、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞をインビボ、エクスビボ又はインビトロで増加させるキットを提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤と、本発明の方法に従って末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤の使用に関する説明書を含む、卵母細胞を産生するキットを提供する。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は、増殖又は生存を促進することにより末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤と、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って卵母細胞を産生する、卵母細胞を産生するためのキットを提供する。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞に分化させる薬剤と、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞に分化させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って卵母細胞を産生する、卵母細胞を産生するためのキットを提供する。
【0035】
さらに別の態様では、本発明は、増殖又は生存を促進することによって、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤と、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って対象の不妊を治療する、不妊治療を必要としている対象の雌の不妊を治療するためのキットを提供する。
【0036】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞に分化させる薬剤と、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞に分化させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って対象の不妊を治療する、不妊治療を必要としている対象の雌の不妊を治療するためのキットを提供する。
【0037】
さらに別の態様では、本発明は、生殖機能の傷害に対して末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を保護する薬剤と、生殖機能の傷害に対して末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を保護する薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って対象である雌において受胎能力を保護する、化学療法若しくは放射線治療(又は両方の治療)を受けている又は受けることが予定されている対象である雌の受胎能力を保護するためのキットを提供する。
【0038】
さらに別の態様では、本発明は、増殖又は生存を促進することによって、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤と、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って対象の卵巣機能を回復する、対象となる閉経後の雌において卵巣機能を回復するためのキットを提供する。
【0039】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞に分化させる薬剤と、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞に分化させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って対象の卵巣機能を回復する、対象となる閉経後の雌において卵巣機能を回復するためのキットを提供する。
【0040】
別の態様では、本発明は、細胞の生存を阻害する又は細胞死を促進させる薬剤と、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の細胞の生存を阻害する又は細胞死を促進させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させる、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量をインビボ、エクスビボ又はインビトロで減少させるためのキットを提供する。
【0041】
さらに別の態様では、本発明は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の増殖、機能又は生存を減少させる、又は、当該細胞の新たに卵母細胞又は受精に必要とされる他の体細胞性の細胞種を産生する能力を減少させる薬剤と、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の増殖、機能又は生存を減少させる、又は、当該細胞の新たに卵母細胞、精細胞又は受精に必要とされる他の体細胞性の細胞種を産生する能力を減少させる薬剤の使用に関する説明書を含み、それにより本発明の方法に従って対象に避妊を提供する、対象である雄又は雌において避妊するためのキットを提供する。
【0042】
(発明の詳細な説明)
定義
「末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞」は、雄性又は雌性の生殖細胞系列幹細胞の集団を含む末梢血から得られる多分化能の細胞である。
「増大(expansion)」は、最終的な分化をすることなく、1つ又は複数の細胞が増殖することを示す。「単離表現型」は、単離された末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞の構造的及び機能的な特徴を示す。「増大(expansion)表現型」は、増大している(during expansion)末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞の構造的及び機能的な特徴を示す。増大(expansion)表現型は単離表現型と同一であってもよいし、あるいは、増大(expansion)表現型は単離表現型と比べてより分化したものであってもよい。
「分化」は、細胞系列に関係付けられた分化過程を示す。「細胞系列」は、細胞の発生経路を示し、細胞の発生においては、前駆体(precursor)すなわち「前駆(progenitor)」細胞は、進行性の生理学的な変化を経て独特の機能を有する特定の細胞種(例えば、神経細胞、筋細胞又は内皮細胞)に分化していく。分化はいくつかの段階で起こり、「最終的な分化」とも呼ばれる十分な成熟に達するまで、細胞は段階をへて次第により特異的となっていく。「最終的に分化した細胞」は、特異的な細胞系列に関係付けられた細胞であり、分化の最後の段階(すなわち、十分に成熟した細胞)に達している。卵母細胞は、最終的に分化した細胞種の一例である。
【0043】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、天然には生じない状態の(例えば、生体からの末梢血のような生体又は生物学的なサンプルから単離された)末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を表す。
本明細書で使用される「前駆細胞」は、1)一連の共通マーカー遺伝子を備え、本発明の生殖細胞系列幹細胞から子孫(progeny)として派生した、2)分化の初期段階にあり、3)有糸分裂能を保持している、生殖細胞系列の細胞である。
本明細書で使用される「子孫細胞(progeny)」は、前駆細胞、分化した細胞及び最終的に分化した細胞を含む、本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞から派生した全ての細胞である。
本明細書で使用される「由来の/から派生した(derived from)」は、娘細胞を得る過程を示す。
「生着する」は、細胞間接触の過程及びインビボで目的の既存組織(例えば、卵巣)への細胞の取り込みの過程を示す。
【0044】
「薬剤」は、細胞の(生物学的な)及び医薬品としての因子、好ましくは成長因子、サイトカイン、ホルモン若しくは小分子を示し、又は、細胞機能を調節する(例えば、細胞系列への関係づけを誘導する、増大(expansion)を増加させる、細胞の成長及び生存を阻害若しくは促進する)遺伝的にコードされた産生物を示す。例えば、「増大剤(expansion agents)」は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞の増殖及び/又は生存を増加させる薬剤である。「分化剤」は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞を誘導して、卵母細胞又は精細胞等のように関係づけられた細胞系列に分化させる薬剤である。
【0045】
「卵胞」は、体細胞(卵胞膜間質のない又は卵胞膜間質を伴う顆粒膜)によって囲まれた単一の卵母細胞からなる卵巣構造を示す。生殖腺の体細胞は、個々の卵母細胞を包み込み卵胞を形成する。十分に形成されたそれぞれの卵胞は完全な基底膜に包まれる。新たに形成されたこれらの卵胞のいくつかは、ほぼ即時に成長を開始するが、それらの殆どは、退化するか又は何らかのシグナルがそれらを活性化し成長過程へ導くまで休止期の状態を保っている。卵巣の構造、機能及び生理学についての概説としては、Gougeon,A.,(1996)Endocr Rev.17:121−55、Anderson,L.D.,and Hirshfield,A.N.(1992)Md Med J.41:614−20、及び、Hirshfield,A.N.(1991)Int Rev Cytol.124:43−101を参照されたい。
【0046】
「精(精子)細胞」は、十分に成熟した精子を含む、発生過程の減数分裂前(すなわち、有糸分裂の能力のある)又は減数分裂後、何れかの状態にある、雄性の生殖細胞を示す。「精子形成」は、精細胞が形成される発生過程である。
「有糸分裂能がある」とは、1つの細胞が分裂し1つの親細胞から2つの娘細胞を生じる過程である、有糸分裂が可能である細胞を示す。
「非胚性の」細胞は、出生後の源(post-natal source)(例えば、乳児、小児及び成体組織)から得た細胞を示す。
「対象(subject)」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長類、そしてより一層好ましくはヒトである。哺乳動物は、霊長類、ヒト、家畜、競技用動物及びペットを含むが、それらに限定されるものではない。
【0047】
「薬剤を得る」といった「得ること」という用語は、購入すること、合成すること、又は、他の方法で薬剤(又は指示された物質又は材料)を取得することを含むことを意図している。
「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」という用語は、米国特許法で規定されているように広い意味を持つよう意図されており、「含む(includes)」「含んでいる(including)」等を意味する。
【0048】
発明の態様
I.末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞
本発明の方法は、生殖細胞の産生を回復又は増加させるための、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、又は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞の前駆細胞の使用に関する。本発明の方法は、特に、受精率を上昇させる又は回復させるため、及び、雌性に於いては更年期の徴候及び影響を改善するために使用することができる。
【0049】
理論に拘束されることは望まないが、1つ又はそれ以上のメカニズムが、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞が生殖細胞集団を再構築(repolupate)する能力に関与しているものと理解される。雌性の生殖細胞系列幹細胞は末梢血中で検出されているが、それらは生殖器官における生殖細胞の供給を再構築する及び/又は増大(expand)させる能力を有している幹細胞の貯蔵場所として機能しているとみられる。雄性の生殖細胞系列幹細胞も、対象となる雄の末梢血中に存在することができる。造血幹細胞等の末梢血中に存在するその他の細胞亜集団も同様に、例えば、多分化能の前駆細胞に脱分化し(米国特許第6,090,625号、Herzog,E.L.,etal.,(2004)Blood 102(10):3483)参照)、次いでその前駆細胞が末梢血を通じて生殖系に移動し、生殖細胞系列幹細胞又は生殖細胞系列幹細胞の前駆細胞として器官(例えば、卵巣又は精巣)に生着し生殖細胞に分化するといった、生殖器官における生殖細胞の供給を再構築する及び/又は増大(expand)させる能力を有しているかもしれない。
【0050】
本明細書に記載のように、生殖細胞系列幹細胞は、対象である雄及び雌の末梢血(臍帯血を含む)中に検出されている。末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞は、Vasa、Dazl及びStellaを含むマーカーを発現する。末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞は有糸分裂能を持ち(すなわち、有糸分裂できる)、従ってGDF−9、透明帯タンパク質(例えば、ZP3)、HDAC6又はSCP3を発現しない。
【0051】
本発明は、また、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞前駆体も提供する。本発明の末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞前駆体は、体内を循環することができ、より好ましくは骨髄、末梢血及び卵巣に局在することができる。本発明の前駆細胞は、Vasa、Dazl及びStellaを発現するが、GDF−9、透明帯タンパク質(例えば、ZP3)、HDAC6又はSCP3を発現しない。
【0052】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞は、機能的な差異を有する。宿主へ移植されると、本発明の末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞は、移植後少なくとも1週、より好ましくは1〜約2週、約2〜約3週、約3〜約4週又は約5週以上経過した後に、卵母細胞を産生することが可能である。末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞前駆体は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞よりも急速に卵母細胞を生じる能力を有する。宿主へ移植されると、本発明の末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞前駆体は、移植後1週間未満で、好ましくは約24〜約48時間で卵母細胞を産生することが可能である。
【0053】
Stellaは、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞で発現する遺伝子である。Stellaは、卵母細胞(Bortvinら(2004)BMC Developmental Biology 4(2):1−5)を含む原始(primordial)生殖細胞及びそれらの子孫で特異的に発現する新規の遺伝子である。Stellaは、SAP様ドメイン及びスプライシング因子モチーフ様構造を有するタンパク質をコードする。Stellaの発現を欠く胚は、着床前の発生に欠陥があり、殆ど胚盤胞期に達しない。このように、Stellaは初期胚発生に関係する母系性の因子である。
【0054】
Dazlは、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞で発現する遺伝子である。常染色体の遺伝子Dazlは、RNA結合ドメイン共通配列を含む遺伝子ファミリーのメンバーであり、生殖細胞で発現する。マウスでの無傷のDazlタンパク質の発現欠失は、生殖細胞における減数分裂前期の完了の失敗に関連している。特に、Dazl遺伝子を持たない雌マウスでは、胎生期に、生殖細胞が減数分裂前期へ進行するのと同じ時期に、生殖細胞の消失が起こる。Dazl遺伝子を持たない雄マウスでは、生殖細胞は、減数分裂前期Iの細糸期(レプトテン期)を越えて進行できなかった。このように、Dazlの不在では、減数分裂前期への進行が中断される(Saundersら(2003),Reproduction,126:589−597)。
【0055】
Vasaは、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞で発現する遺伝子である。Vasaは、DEADファミリーのATP依存性RNAヘリカーゼをコードする、生殖質の構成成分である(Liangら(1994)Development,120:1201−1211、Laskoら(1988)Nature,335:611−167)。Vasaの分子機能は、生殖細胞の確立(例えば、Oskar and Nanos)、卵形成(例えば、Gruken)及び翻訳開始(Gavisら(1996)Development,110:521−528)に関与する標的mRNAへの結合を指向している。Vasaは極細胞の形成に必要とされ、発生全体を通じてもっぱら生殖細胞系列に限定的なものとなっている。このように、Vasaはほとんどの動物種において生殖細胞系列についての分子マーカーである(Toshiakiら(2001)Cell Structure and Function 26:131−136)。Vasaは細胞移動の阻害に関連しているので、本発明の前駆細胞におけるVasaの発現は、前駆体の遊走過程に依存して、差別化されて制御されるであろう。例えば、骨髄に存在する時は前駆体はVasaを発現するが、生殖系へ移動した時には前駆体は発現をダウンレギュレートする、といった具合にである。
【0056】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞は、すでに卵母細胞へと分化を開始した細胞で発現する遺伝子GDF−9を発現しない。成長/分化因子9(GDF−9)は、形質転換増殖因子βスーパーファミリーのメンバーで、卵巣で特異的に発現する。GDF−9のmRNAは、一層の一次卵胞期から排卵後まで、成人及び新生児の卵母細胞で見出すことができる(Dong,J.ら(1996)Nature 383:531−5)。GDF−9欠損マウスの解析により、原始(primordial)及び一層の一次卵胞のみ形成され、卵胞の発生に於いて一層の一次卵胞期より先に進行することができず、完全に不妊という結果となることが明らかになった。
【0057】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞は、卵母細胞の透明帯を構成する遺伝子産物であるZP3、ZP1、ZP2及びZP3を発現しない。それらの発現は、ベーシックへリックス−ループ−へリックス(bHLH)転写因子FIGαによって制御されている。FIGα遺伝子を持たないマウスは、Zp遺伝子を発現せず、原始卵胞を形成しない(Soyal,S.M.ら(2000)Development 127:4645−4654)。ZP遺伝子を個別にノックアウトすると、透明帯の異常又は欠損となり、受精率の減少(Zpl;Rankin T.ら(1999)Development 126:3847−55)又は不妊(Zp2;Rankin TL.ら(2001)Development 128:1119−26、Zp3;Rankin T.ら(1996)Development 122:2903−10)となる。ZPタンパク質産物はグリコシル化され、その後分泌されて、インビボでの受精及び着床前の発生のために重要な細胞外マトリックスを形成する。ZPタンパク質の発現は正確に制御されており、卵形成に於ける成長期の2週間に限定されている。ZpのmRNA転写物は、休止期の卵母細胞では発現しないが、ひとたび卵母細胞が成長を開始すると、3つ全てのZp転写物の蓄積が開始される。
【0058】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞は、HDAC6を発現しない。HDAC、すなわちヒストン脱アセチル化酵素は卵巣での卵胞の発生に関与している。特にHDAC6は、休止している胚胞期(原始)卵母細胞で検出される(Verdel,A.ら(2003)Zygote 11:323−8;図16)。HDAC6は、クラスIIのヒストン脱アセチル化酵素で、微小管に関連した脱アセチル化酵素とされている(Hubbert,C.ら,(2002)Nature 417:455−8)。ヒストン脱アセチル化酵素は、トリコスタチンA及びトラポキシンには限定はされないが、それら阻害剤の標的であり、両阻害剤は、細胞分化、細胞周期停止及び形質転換された細胞形態の回復を誘導する微生物代謝産物である。
【0059】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞は、それらの細胞が減数分裂前の幹細胞である(すなわち、二倍体)という観察に一致して、SCP3を発現しない。シナプトネマ複合体タンパク質SCP3は、相同染色体のシナプシスにとって重要であり減数分裂に特異的なタンパク質構造である、シナプトネマ複合体の側方要素の一部である。シナプトネマ複合体は、相同染色体の対合と分離を促進し、クロスオーバーの数と相対的な分布に影響を与え、クロスオーバーをキアズマに変換する。SCP3は減数分裂に特異的であり、多重鎖で交差した筋のある繊維を形成することができ、側方要素に秩序ある繊維性のコアを形成する(Yuan,L.ら,(1998)J.Cell.Biol.142:331−339)。マウスにおけるSCP3の欠損は、雌性の生殖細胞での異数性及び細胞死を引き起こすが、恐らくそれは減数分裂している染色体の構造的な整合性が欠けることによるものである(Yuan,L.ら,(2002)Science 296:1115−8)。
【0060】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞は、血液から幹細胞を分離する、当該技術分野公知の標準的な方法(例えば、セルソーティング)で単離される。好ましくは、単離プロトコールは、造血性細胞が枯渇した、kit/lin分画の生成を包含する。遺伝子発現(例えば、Vasa、Dazl及びStella)の特徴的なプロファイルに基づくさらなる選別手段は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞を含む細胞集団の精製に利用できる。末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞を含む組成物は、単離され、引き続いて、それらが得られた生物学的サンプル(例えば、臍帯血を含む、末梢血)が実質的に取り除かれる程度まで精製される。
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞前駆体は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞から、例えば培地で増大(expand)させることにより、得ることができる。このように、前駆細胞は、「増大(expansion)表現型」を有する細胞であってもよい。
【0061】
II.投与
末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を含む組成物は、目的の生殖器官(例えば、卵巣又は精巣)に直接的に供与できる。あるいは、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞をを含む組成物は、例えば、循環系に(例えば、卵巣外循環へ)投与することによって、目的の生殖器官に間接的に供与することができる。移植又は着床に続いて、細胞は生着し生殖細胞(例えば、卵母細胞又は精細胞)へ分化できる。「生着(engraft)」は、細胞間接触の過程及びインビボで目的の既存組織(例えば、卵巣)への細胞の取り込みの過程を示す。増大剤(expansion agnets)及び分化剤は、投与の前、間及び後に、インビボで生殖細胞の産生を増加させるために供与することができる。
【0062】
本発明の組成物は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞をを含む医薬組成物と薬学的に許容される担体を含む。自己のもの又は異種のものを投与してもよい。例えば、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、又は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞は、対象の一つから得たものを、同じ対象又は適合性のある異なる対象に投与することができる。
本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はその子孫細胞(例えば、インビボ、エクスビボ又はインビトロで派生された)は、カテーテル投与、全身注入、局所的な注入、静脈内注入、子宮内注入又は非経口の投与を含む、局所的な注入を介して投与することができる。本発明の治療用組成物(例えば、医薬組成物)を投与するときは、一般的に、注入可能な単位用量の形態(溶液、懸濁液、エマルジョン)で処方されるであろう。
【0063】
本発明の組成物は、例えば、水性等張液、懸濁液、エマルジョン、分散液又は粘性の組成物等の、選択されたpHの緩衝液である無菌の液体調製物として簡便に提供される。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物及び固体組成物と比べて調製するのがより容易である。さらに、液体組成物は、投与、特に注入による投与において、多少は、より簡便である。一方で、特定の組織でより長い接触期間を提供するために、粘性組成物を適切な粘性範囲内で処方することもできる。液体又は粘性組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状のポリエチレングリコール等)及びそれらの適した混合物を含有する、溶媒又は分散培地であってもよい担体を含むことが可能である。
【0064】
無菌の注入可能な溶液は、必要に応じて他の成分を様々な量で含有する、必要とされる量の適した溶媒に、本発明を実施するのに利用される細胞を取り込んで調製することができる。このような組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース等の適した担体、希釈液又は賦形剤との混合物であってもよい。組成物は、また、凍結乾燥することもできる。組成物は、望ましい投与経路及び調製物によって、湿潤剤、分散剤又は乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル又は粘性促進添加剤、保存剤、香料、色素等の補助的な物質を含むことができる。「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE」第17版1985年等の標準的なテキストは、参照して本明細書に取り込むが、過度の実験なしに適した調製物を調製する助けとなるであろう。
【0065】
抗菌性保存剤(antimicrobial)、抗酸化剤、キレート剤及び緩衝剤を含む、組成物の安定性と無菌状態を促進する様々な添加剤を添加することができる。例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の様々な抗菌剤(antibacterial)及び抗真菌剤によって、微生物の活動の防止を確実なものとすることができる。注入可能な医薬品形態の吸収を延長することは、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅らせる薬剤の使用によって達成できる。しかしながら、本発明に従って使用される担体、希釈剤又は添加剤はいずれも、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞に適合性を有するものでなければならない。
【0066】
組成物は、等張、すなわち、それらが血液及び涙液と同じ浸透圧を有していてもよい。本発明の組成物に望まれる等張性は、塩化ナトリウム又はその他に、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール又はその他の無機又は有機溶質等の薬学的に許容される薬剤を使用することにより達成できるであろう。塩化ナトリウムは、ナトリウムイオンを含む緩衝液として特に好まれる。
【0067】
組成物の粘性は、必要に応じて、薬学的に許容される肥厚剤を使用することにより、選択されたレベルで維持可能である。メチルセルロースは、容易且つ経済的に入手可能であり、取り扱いが容易であるので好まれる。その他の好適な肥厚剤として、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー等が挙げられる。肥厚剤の好ましい濃度は、選んだ薬剤によるであろう。重要な点は、選択した粘性が達成できる量で使用することである。好適な担体及びその他の添加剤の選択は、実際の投与経路と特定の剤形の性質、例えば、液体製剤の形態(例えば、組成物が溶液、懸濁液、ゲル、又は、時間により放出される形態又は液体で満たされた形態等のその他の液状形態で処方されるかどうか)に依存するのは明らかである。
【0068】
細胞の導入を必要とする対象に細胞を導入する際に、細胞の生存を潜在的に増加させる方法は、目的の末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの子孫細胞(例えば、インビボ、エクスビボ又はインビトロで派生された)を、生体高分子又は合成ポリマーに取り込むことである。対象の症状によっては、傷跡又はその他の障害により、注入部位が細胞を蒔いたり成長させたりするのに適していないかもしれない。生体高分子としては、限定はされないが例えば、フィブロネクチン、フィブリン、フィブリノーゲン、トロンビン、コラーゲン及びプロテオグリカンの何れかと混合した細胞が挙げられる。これは増大因子(exponsion factors)又は分化因子を含んで又は含まずに構築してもよい。さらに、これらは懸濁液の状態であってもよいが、流出までの各部位での滞在時間は、通常の範囲が好ましい。別の代替物としては、細胞と生体高分子の混合物の間隙に封入した、細胞を含んだ三次元ゲルが挙げられる。さらに、増大因子(exponsion factors)又は分化因子を細胞とともに含んでいてもよい。これらは本明細書に記載の多様な経路を通して注入により配備される。
【0069】
組成物の構成成分として、本発明に記載のように、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆体細胞の生存性又は有効性に影響しないように、化学的に不活性なもの選択すべきであることは、当業者には認識されているところである。これは、化学及び医薬の原理に精通した者にとって問題とはならないだろうし、また、問題が起きたとしても、標準のテキストを参照することにより又は簡便な実験により(過度の実験を要することなく)、当該明細書の開示及び引用文献から容易に回避できるであろう。
【0070】
本発明の末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞の治療用途に関して考慮すべきことの一つは、最適な効果を達成するために必要な細胞の量である。自己の単核末梢血細胞に関するヒトに於ける最近の研究では、経験的な用量である細胞数1〜4×10個の範囲で使用した場合に有望な結果が得られた。しかしながら、筋書き如何によっては、目的組織に注入する細胞量の最適化が求められるかもしれない。このように、細胞の投与量は、治療される対象によって変化する。好ましい態様では、本発明の幹細胞10〜10個、より好ましくは10〜10個、そして更に好ましくは3×10個を、ヒト対象に投与することができる。
【0071】
より少数の細胞を卵巣又は精巣に直接的に投与することもできる。好ましくは10〜10、より好ましくは10〜10、そしてさらにより好ましくは10個の末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞を、ヒト対象に投与することができる。しかしながら、効果的とみなされる正確な用量は、身長、年齢、性別、体重及び症状を含むそれぞれの患者に個別の因子に依存して決定されるものである。特定の望ましい適用として選択された患者に100〜1000個といった少ない数の細胞を投与してもよい。従って、当業者であれば、当該明細書の開示と当該技術分野における知識から用量を確認するのは容易であろう。
【0072】
本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞は、雌性の生殖細胞系列幹細胞の精製された母集団を含むことができる。当業者は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)等の様々な周知の方法を使用して、母集団に含まれる雌性の生殖細胞系列幹細胞の割合を容易に決定することができる。雌性の生殖細胞系列幹細胞を含む母集団において好ましい純度の範囲は、約50〜約55%、約55〜約60%及び約65〜約70%である。より好ましくは、純度は、約70〜約75%、約75〜約0%、約80〜約85%であり、より一層好ましくは、純度は、約85〜約90%、約90〜約95%及び約95〜約100%である。雌性の生殖細胞系列幹細胞の純度は、母集団中の遺伝子マーカーのプロファイルに従って決定することができる。当業者であれば、用量を容易に調整することができる(例えば、純度が低ければ用量を増やす必要がある)。
【0073】
当業者であれば、本発明の方法で投与される、本発明の組成物中の細胞及び任意の添加剤、賦形剤及び/又は担体の量を容易に決定することができる。一般的に、どのような添加剤(活性化された幹細胞及び/又は薬剤に加えて)も、リン酸緩衝生理食塩水中に0.001〜50%(重量)の量で存在し、有効成分は、約0.0001〜約5重量%、好ましくは約0.0001〜約1重量%、より一層好ましくは約0.0001〜約0.05重量%、又は、約0.001〜約20重量%、好ましくは約0.01〜約10重量%、そしてより一層好ましくは約0.05〜約5重量%等のマイクログラムからミリグラムのオーダーで存在する。当然ながら、動物又はヒトに投与される如何なる組成物に対しても、如何なる特定の投与方法に対しても、適するモデル動物、例えばマウス等の齧歯類における致死量(LD)及びLD50を決定すること等によって毒性を決定し、また、適した応答を誘導する、組成物の用量、組成物含まれる構成成分の濃度及び組成物を投与する時期を決定するのがよしとされる。このような決定には、当業者の知識、当該明細書に於ける開示及びその引用文献に鑑みて過度の実験を要しない。また、逐次投与の時期の決定も過度の実験を要することなく確認できる。
【0074】
III.卵母細胞の産生
ある態様では、本発明は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、対象である雌、より好ましくは当該対象の卵巣に提供することを含む、卵母細胞産生のための方法を提供し、そこでは、細胞は当該対象の組織(例えば卵巣)に生着し卵母細胞に分化する。
【0075】
好ましくは、生着した細胞は、卵胞を形成し、当該細胞は卵胞内で卵母細胞へと分化する。卵胞形成は、単一の卵母細胞からなる卵巣構造が体細胞(卵胞膜間質のない又はそれを伴う顆粒膜)によって囲まれる過程である。生殖腺の体細胞は、個々の卵母細胞を囲い込み卵胞を形成する。それぞれの十分に形成された卵胞は完全な基底膜に包まれる。これらの新たに形成された卵胞のいくつかはほぼ即時に成長を開始するが、それらのほとんどは、退化するか又は何らかのシグナルがそれらを活性化して成長期に入るまで休止状態を保持している。本発明の方法は、いくつかの投与経路のうちの何れかで末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を卵巣に提供することにより、卵巣の卵胞形成を誘導することができる。末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞は、当該卵巣に生着し、卵巣の卵胞内で卵母細胞に分化できる。
【0076】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれら前駆細胞の数は、現存する末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれら前駆細胞の生存又は増殖を促進することによって増加させることができる。
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞、又は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞の増殖と生存を増加させる薬剤(例えば、増大剤(expansion agents))は、ホルモン若しくは成長因子(例えば、IGF、TGF、BMP、Wntタンパク質若しくはFGF)、細胞情報伝達分子(例えば、S1P若しくはRA)、又は、薬理学若しくは医薬品化合物(例えば、GSK−3阻害剤、Bax阻害剤若しくはカスパーゼ阻害剤等のアポトーシス阻害剤、一酸化窒素産生の阻害剤、又は、HDAC活性阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0077】
成長因子を含む薬剤が、幹細胞の増殖又は生存を増加させることは当該技術分野公知である。例えば、米国特許第5,750,376号及び第5,851,832号は、TGFを使用した、神経性幹細胞のインビトロでの培養と増殖のための方法を記載している。幹細胞の増大(expansion)と増殖における能動的な役割は、BMP(Zhu,G.ら,(1999)Dev.Biol.215:118−29、Kawase,E.ら,(2001)Development 131:1365)及び、Wntタンパク質(Pazianos,G.ら,(2003)Biotechniques 35:1240、Constantinescu,S.(2003)J.Cell Mol.Med.7:103)についても記載されている。米国特許第5,453,357号及び第5,851,832号は、FGFを利用した増殖性の幹細胞培養システムを記載している。特にこれら参考文献それぞれの内容について、当該技術分野公知の増大剤(expansion agents)についての記載を参照して、本明細書に取り込む。
【0078】
成長因子を含む薬剤が、骨髄又は卵巣から末梢血へ幹細胞の動員を増加させることも当該技術分野では公知である。動員剤は、GCSF又はGMCSFを含むがそれらに限定されるものではない。血液への幹細胞の動員を増加させる薬剤は、末梢血採取の前に、また一方で、本発明のその他の方法、これにより(例えば、卵巣に細胞を標的化させるのを増強するために)雌性の生殖細胞系列幹細胞の循環レベルを増加させることが望ましいが、を増強又は補充するために提供することができる。
【0079】
細胞情報伝達分子を含む薬剤も、幹細胞の増殖又は生存を増加させることは当該技術分野では公知である。例えば、スフィンゴシン−1−リン酸は、神経性の前駆細胞の増殖を誘導することが知られている(Harada,J.ら,(2004)J.Neurochem.88:1026)。米国特許出願第20030113913号は、培地中での幹細胞の自己再生におけるレチノイン酸の使用を記載している。特にこれら参考文献それぞれの内容について、当該技術分野公知の増大剤(expansion agents)についての記載を参照して、本明細書に取り込む。
【0080】
薬理学又は医薬品化合物を含む薬剤も、幹細胞の増殖又は生存を増加させることは当該技術分野では公知である。例えば、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−阻害剤は、Wntシグナル伝達による活性化を介して胚性幹細胞の多分化能を維持する(Sato,N.ら,(2004)Nat.Med.10:55)。アポトーシス阻害剤(Wang,Y.ら,(2004)Mol.Cell.Endocrinol.218:165)、一酸化窒素/一酸化窒素合成酵素の阻害剤(Matarredona,E.R.ら,(2004)Brain Res.995:274)及びヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(Lee,J.H.ら,(2004)Genesis38:32)は、増殖及び/又は多分化能を増加させることが知られている。例えば、ヒューマニンペプチドは、アポトーシスを抑制するBax機能の阻害剤である(Guo,B.ら,(2003)Nature 423:456)。特にこれら参考文献それぞれの内容について、当該技術分野公知の増大剤(expansion agents)についての記載を参照して、本明細書に取り込む。
【0081】
末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞、又は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞を含む組成物を、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤(例えば、分化剤)と接触させることによって、卵母細胞の産生をさらに増加させることができる。このような分化剤は、ホルモン若しくは成長因子(例えば、TGF、BMP、Wntタンパク質、SCF又はLIF)、情報伝達分子(例えば、減数分裂活性化ステロール(FF−MAS))、又は、薬理学若しくは医薬品製剤(例えば、Idタンパク質の機能若しくはSnail/Slug転写制御因子の機能の調節因子)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0082】
成長因子を含む薬剤が幹細胞を分化させることは、当該技術分野では公知である。例えば、TGF−βは、造血性幹細胞の分化を誘導できる(Ruscetti,F.W.ら,(2001)Int.J.Hematol.74:18)。米国特許出願第2002142457号には、BMPを使用して心筋細胞を分化させるための方法が記載されている。Peraらには、BMP−2を使用したヒト胚性幹細胞の分化が記載されている(Pera,M.F.ら,(2004)J.Cell Sci.117:1269)。米国特許出願第20040014210号及び米国特許第6,586,243号には、SCFの存在下、樹状細胞の分化が記載されている。米国特許第6,395,546号には、LIFを使用した胚性及び成体中枢神経系細胞からインビトロでドーパミン作動性ニューロンを発生させるための方法が記載されている。これら参考文献それぞれの内容は、当該技術分野公知の分化剤についての記述に関する参考文献として、本明細書に特に取り込まれる。
【0083】
情報伝達分子を含む薬剤は卵母細胞の分化を誘発することも、当該技術分野公知である。FF−Masは、卵母細胞の成熟を促進することが知られる(Marin Bivens,C.L.ら,(2004)BOR papers 印刷中)。特にこれら参考文献それぞれの内容について、当該技術分野公知の分化剤についての記載を参照して、本明細書に取り込む。
【0084】
薬理学又は医薬品化合物を含む薬剤が、幹細胞を分化を誘導することも当該技術分野では公知である。例えば、Idの調節因子は、造血系の分化に関与しているし(Nogueria,M.M.ら,(2000)276:803)、Snail/Slugの調節因子は、幹細胞の分化を誘導することが知られている(Le Douarin,N.M.ら,(1994)Curr.Opin.Genet.Dev.4:685−695、Plescia,C.ら,(2001)Differentiation 68:254)。特にこれら参考文献それぞれの内容について、当該技術分野公知の分化剤についての記載を参照して、本明細書に取り込む。
【0085】
本発明は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、細胞増殖を減少させる、細胞の生存を阻害する又は細胞死を促進させる薬剤と接触させることを含む、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞をインビボ、エクスビボ又はインビトロで減少させる方法も提供する。本発明の細胞の望まれない増殖とは、癌性及び前癌性の表現型(例えば、生殖細胞腫瘍、卵巣癌、精巣癌)を生じることである。このような方法は、生殖細胞系列幹細胞及び任意でそれらの前駆細胞若しくは卵母細胞の数を減少させることにより、望まれない増殖(例えば、癌)を制御するために又は避妊処置のために使用することができる。
【0086】
細胞増殖を減少させる薬剤は、ホルモン若しくは成長因子(例えば、TGF−β)、分裂促進ホルモン若しくは成長因子のペプチドアンタゴニスト(例えば、BMPアンタゴニスト、PRDC及びGremlin)、又は、薬理学若しくは医薬品化合物(例えば、細胞周期阻害剤若しくは成長因子情報伝達の阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0087】
細胞の生存を阻害する薬剤は、ホルモン、成長因子若しくはサイトカイン(例えば、TNF−α、FasL及びTRAIL等のアポトーシス促進性のTNFスーパーファミリーメンバー)、生存促進性のBcl−2ファミリーメンバーの機能のアンタゴニスト、情報伝達分子(例えば、セラミド)、又は、薬理学若しくは医薬品化合物(例えば、成長因子情報伝達の阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。生存促進性のBcl−2ファミリーのメンバーは、Bcl−2、Bcl−xl(Cory,S.and Adams,J.M.(2000)Nat Rev Cancer 2(9):647−656、Lutz,R.J.(2000)Cell Survival Apoptosis 28:51−56)、Bcl−W(Gibson,L.ら,(1996)Oncogene 13 665−675、Cory,S.and Adams,J.M.(2000)Nat Rev Cancer 2(9):647−656)、Mcl−1(Kozopas,K.M.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:3516−3520、Reynolds,J.E.ら(1994)Cancer Res.54:6348−6352、Cory,S.and Adams,J.M.(2000)Nat Rev Cancer 2(9):647−656)及びA1(Cory,S.and Adams,J.M.(2000)Nat Rev Cancer 2(9):647−656、Gonzales,J.ら(2003)Blood 101(7):2679−2685、Reed,J.C.(1997)Nature 387:773−776)を含む。
【0088】
細胞死を促進させる薬剤は、アポトーシス促進性の腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバー(例えば、TNF−α、FasL及びTRAIL)、アポトーシス促進性のBcl−2ファミリーメンバーの機能のアゴニスト及びセラミドを含むが、それらに限定されるものではない。アポトーシス促進性のBcl−2ファミリーメンバーは、Bax(Oltvai,ZN.ら(1993)Cell 74:609−619)、Bak(Chittenden,T.ら(1995)Nature 374:733−736)、Bid(Luo,X.,ら(1998)Cell 94:481−490)、Hrk(Inohara,N.ら(1997)EMBO J 16(7):1686−1694)、Bod(Hsuら(1998)Mol Endocrinol.12(9):1432−1440)、Bim(O’Connor,L.ら(1998)EMBO J.17(2):385−395)、Noxa(Oda,E.ら(2000)Science 288,1053−1058、Yakovlev,A.G.ら(2004)J Biol Chem 279(27):28367−28374)、puma(Nakano,K.and Vousden,K.H.(2001)Mol Cell 7(3):683−694)、Bok(Yakovlev,A.G.ら(2004)J Biol Chem 279(27):28367−28374、Hsu SY.ら(1997)Proc Natl Acad Sci USA.94(23):12401−6)及びBcl−xs(Boise,L.H.ら(1993)Cell 74:597−608)を含む。
【0089】
PRDC(Sudoら,(2004)J.Biol.Chem.,出版進行中)、TNF(Wong,G.ら,(2004)Exp.Neurol.187:171)、FasL(Sakata,S.etal,(2003)Cell Death Differ.10:676)、TRAIL(Pitti,RMら(1996)J Biol Chem 271:12687−12690、Wiley,SR.ら(1995)Immunity 3:673−682)を含む、いくつかの薬剤が、細胞増殖若しくは生存を阻害する又は細胞死を促進させることは当該技術分野では公知である。セラミドは、原始的なヒト造血性細胞に対する腫瘍壊死因子の機能を仲介する(Maguer−Satta,V.ら,(2000)Blood 96:4118−23)。Bcl−2、Bcl−XL、Bcl−W、Mcl−1、A1、Bax、Bak、Bid、Hrk、Bod、Bim、Noxa、Puma、Bok及びBcl−xs等のBcl−2ファミリーメンバーのアゴニスト/アンタゴニストは、幹細胞の生存を阻害することが知られる(Lindsten,T.ら,(2003)J.Neurosci.23:11112−9)。薬理学又は医薬品化合物を含む薬剤は細胞の生存を阻害することも、当該技術分野では公知である。例えば、繊維芽細胞成長因子の情報伝達を阻害するヘパラン硫酸6−O−エンドスルファターゼ、QSulfl等の成長因子情報伝達の阻害剤は、幹細胞の生存を阻害できる(Wang,S.ら,(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101:4833)。特にこれら参考文献それぞれの内容について、細胞の生存を阻害することが当該技術分野で公知となっている薬剤についての記載を参照して、本明細書に取り込む。
【0090】
薬剤は、目的の生殖器官へ直接的に提供することができる。あるいは、薬剤は、例えば循環系に投与することによって、間接的に目的の生殖器官へ提供することができる。
薬剤は、多様な投与経路によりそれを必要とする対象に投与できる。投与方法は、一般に、医学的に許容できる何れの投与形態、すなわち臨床上許容できない副作用を有することなく効果的なレベルの活性な化合物を生じる如何なる形態、で実施されてもよい。このような投与形態は、経口の、直腸の、局所的な、眼内の、頬側の、膣内の、大槽内の、脳室内の、気管内の、経鼻の、経皮の(例えば、コラーゲン等の繊維、浸透圧ポンプ若しくは適切に形質転換された細胞を含んだ移植片等の移植物(implants)内/上の)又は非経口の経路を含む。「非経口の」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、生殖腺内への注入を含む。静脈内又は筋肉内の経路は、長期の治療及び予防法として特に適しているわけではない。特定の投与方法は、コラーゲン繊維、タンパク質ポリマー等の治療用タンパク質とともに被覆した、包埋した又は誘導体化した繊維を含む。他の有用なアプローチは、Otto,D.ら,J.Neurosci.Res.22:83及びOtto,D.and Unsicker,K.,J.Neurosci.10:1912に記載されている。
【0091】
インビトロ及びエクスビボでの適用は、望ましい結果を達成するために、選択された薬剤とともに、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を培養することを含んでいてもよい。細胞(同じ個体由来及び異なる個体由来)の培養を、卵母細胞の産生を刺激する目的の薬剤とともに行うことができ、その後、卵母細胞は多様な治療上の応用(例えば、インビトロでの受精、移植)のために使用することができる。
本発明の培養物から派生する分化した細胞は、宿主に着床することができる。移植は、器官又は器官ユニットを派生する幹細胞のドナーが、操作される組織を有するレシピエントであるような自家移植であってもよい。移植は、器官又は器官ユニットを派生する幹細胞のドナーが、操作される組織を有するレシピエントでないような異種移植であってもよい。ひとたび宿主へ移植されると、分化した細胞は、生来の宿主組織の機能と構造を有する。
【0092】
末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの子孫細胞は、ポリマー骨格の存在下で培養し、薬剤で処理し及び/又は投与することができる。ポリマー骨格は、拡散によりガス、栄養分及び廃棄物の交換を最適化するよう設計される。ポリマー骨格は、例えば、繊維からなる多孔質で不織のアレイを含んでいてもよい。当該ポリマー骨格は、表面領域が最大となり、細胞へ栄養分と成長因子の適切な拡散が可能となるよう成型することができる。これらのパラメーターを考慮に入れて、当業者であれば、当該技術分野公知の方法を使用して、操作された組織(engineered-tissue)が移植されて新たな血管と互いに嵌合するまでの間、細胞が拡散により栄養を得るのに十分な表面領域を有するポリマー骨格を形成することができる。ポリマー骨格は、原繊維の構造を含んでいてもよい。繊維は、円形、扇形、平形、星形、単一のもの又は他の繊維と絡み合わせたものであってもよい。体積に比例して表面領域が増加するように、分岐している繊維を使用してもよい。
【0093】
他に特定されない限り、「ポリマー」という用語には、重合し又は接着して完全なユニットを形成するモノマー及びポリマーが含まれる。当該ポリマーは、非生分解性又は、通常、加水分解若しくは酵素的な切断を介する生分解性であってもよい。「生分解性」という用語は、要求される構造的な完全性を維持しながら、数分から3年、好ましくは1年より短い期間をかけて、生理学的な環境で相互作用により代謝可能な又は排出可能な構成成分に機械的に分解されることにより、生吸収性及び/又は分解性及び/又は破壊される物質を示す。ポリマーについての言及で使用されるとき、「分解する」という用語は、分子量がオリゴマーレベルでほぼ一定であり、ポリマー粒子が分解後にも残るようなポリマー鎖の切断を示す。
【0094】
ポリマー骨格の製作に適する材料は、ポリ乳酸(PLA)、ポリ−L−乳酸(PLLA)、ポリ−D−乳酸(PDLA)、ポリグリコリド、ポリグリコール酸(PGA)、ポリラクチドコグリコリド(PLGA)、ポリジオキサノン、ポリグルコン酸、ポリ乳酸−酸化ポリエチレンコポリマー、修飾セルロース、コラーゲン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシプリオピオン酸、ポリホスホエステル、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリカプロラクトン、ポリ炭酸、ポリアミド、ポリ無水物、ポリアミノ酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリル酸、分解性ウレタン、アリファト酸ポリエステルポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アシル置換酢酸セルロース、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、塩化ポリビニル、フッ化ポリビニル、ポリビニルイミダゾール、クロロスルホン酸化ポリオリフィン、酸化ポリエチレン、ポリビニルアルコール、テフロンRTM、ナイロンシリコン、及び、ポリ(スチレンブロックブタジエン)、ポリノルボルネン、ヒドロゲル、金属合金及び切り替え区域としてのオリゴ(ε−カプロラクトン)ジオール/物理的な架橋としてのオリゴ(p−ジオキサノン)ジオール等の形状記憶物質を含む。他の適するポリマーは、The Polymer Handbook第3版(Wiley,N.Y.,1989)を参照することにより得ることができる。
【0095】
栄養分、成長因子、分化又は脱分化の誘導因子、分泌生産物、免疫調節物質、炎症阻害剤、退化因子、ホルモン又は他の生物学的に活性な化合物を含むが、それらには限定されない因子が、ポリマー骨格に取り込まれるか、又は、ポリマー骨格と結合して提供されてもよい。
【0096】
本発明の薬剤は、キット中のさらなる試薬とともに提供されてもよい。当該キットは、治療計画又はアッセイに関する説明書、試薬、器具(試験管、反応容器、針、シリンジ等)及びキャリブレーションのための、又は治療若しくはアッセイを指示するための標準試薬を含むことができる。本発明に従ってキット中に提供される説明書は、操作上の適当なパラメーターとしてラベル又は別添の挿入物の形態で提供されてもよい。当該キットは、さらに標準すなわち対照となる情報を含んでいてもよく、それにより検査サンプルは一貫性のある結果が得られたか否かを調べるため、標準となる対照の情報と比較することができる。
【0097】
IV.精子形成
本発明の方法は、他の生殖系の細胞種の産生にも使用することができる。従って、ある態様では、本発明は、末梢血由来の雄性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を対象である雄の精巣に提供することを含む、精子形成を回復又は増強する方法を提供し、そこでは、当該細胞は精上皮に生着し、精細胞へ分化する。雄性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を精巣へ投与することは、好ましくは精巣への注入により実施される。精巣への直接的な注入は、血液による障壁を有利に回避し、細胞を精上皮等の適した場所へ提供する。
【0098】
精子形成は、さらに、末梢血由来の雄性の生殖細胞系列幹細胞を派生、又は、末梢血由来の雄性の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞を含む組成物を、末梢血由来の雄性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の卵母細胞への分化を増加させる薬剤(すなわち、分化剤)と接触させることによって、増加させることができる。このような分化剤は、本明細書に記載されるものであってもよいが、それらに限定されるものではない。
【0099】
精子形成、すなわち、精原細胞からの精母細胞の形成は、多数の因子で制御することができる。Bax、BclXLファミリーメンバー及びカスパーゼファミリーメンバーを含むアポトーシス制御因子は、精子形成を調節し、雄性の受精率に影響を与えることができる(Said,T.M.ら,(2004)Hum.Reprod.Update 10:39−51、Yan,W.ら,(2003)Mol.Endocrinol.17:1868)。カスパーゼは、特に、精子形成障害、精子運動性の減少及び精子DNA断片化レベルの増加等の複数の男性病学の病理の原因と結びつけられてきた。サバイビン及びFLIP等のカスパーゼ阻害剤は、精子形成時のアポトーシス現象を制御するために使用することができる(Weikert S.,(2004)Int.J.Androl.27:161、Giampietri,C.ら,(2003)Cell Death Differ.10:175)。同様に、ヒューマニンらのBax阻害剤も精子形成のアポトーシスに関係付けられている(Guo,B.ら,(2003)Nature423:456)。
【0100】
線維芽細胞成長因子−4(Hirai,K.ら,(2004)Exp.CellRes.294:77)等の成長因子も、精子形成に影響を与えることができる。FGF−4は、アポトーシスから生殖細胞を保護することによりそれらの生存因子として決定的な役割を果たすことができる。FGF−4でセルトリ細胞を刺激すると、生殖細胞の生存に不可欠な乳酸の生産が誘導された。FGF−4刺激は、セルトリ細胞でDNAの断片化を減少させることもできる。
【0101】
骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路も、ショウジョウバエで生殖細胞系列幹細胞の維持に関係づけられてきた(Kawase,E.ら,(2004)Development 131:1365−75、Pellegrini,M.ら,(2003)J.Cell Sci.116:3363)。培養された精原細胞のBMP−4刺激は、c−kit遺伝子を介する分化と同様に、Smadが仲介する増殖を誘導することができる。さらに、体細胞からのBMPシグナルは、bam発現の抑止を介した生殖細胞系列幹細胞の維持に必須であることが示され、体細胞からのBmpシグナルは、精巣でbamの発現を抑止することにより、少なくとも部分的に生殖細胞系列幹細胞を維持していることが指示された。
【0102】
形質転換増殖因子(TGF)も精巣でbamの発現を抑止できる。生殖細胞系列幹細胞及びそれらの子孫細胞の維持と増殖は、これらの細胞が有する、BMP5/8のオーソログ(相同分子種)であるGlass Bottom Boatとしてショウジョウバエで知られる、体細胞性に発現するTGF−βリガンドの活性を伝達する能力に依存している(Shivdasani,A.A.and Ingham,P.W.(2003)Curr.Biol.13:2065)。TGF−βのシグナル伝達は、生殖細胞の分化に必要かつ十分であるbamの発現を抑止し、これにより、生殖細胞系列幹細胞とそれらの増殖状態にある精原細胞が維持される。
【0103】
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)も、生殖細胞系列幹細胞及び精原細胞の生存と増殖に影響を与えることが知られている。照射された精巣組織をS1Pで処理するという研究では、一次精母細胞及び精原細胞の数が未処理の組織より高くなり、S1P処理が放射線照射により誘導される細胞死から生殖細胞系列幹細胞を保護できることを指示した。
グリアから誘導される神経栄養因子はマウス精巣で生殖細胞系列幹細胞を顕著に増幅することが見出された(Kubota,H.ら,(2004)Biol.Reprod.Apr 28 Epub ahead of print(出版に先がけた電子版))。移植による解析は、生殖細胞系列幹細胞の濃縮のみならず、幹細胞から精子への分化も示した(Yomogida,K.ら,(2003)Biol.Reprod.69:1303)。
【0104】
本発明は、また、末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、細胞増殖を減少させる、細胞の生存を阻害する又は細胞死を促進させる薬剤と接触させることを含む、インビボ、エクスビボ又はインビトロで末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を減少させるための方法も提供する。本発明の細胞にとって望まれない増殖とは、癌性及び前癌性の表現型(例えば、生殖細胞腫瘍)を生じることである。このような方法は、望まれない増殖(例えば、癌)を支配するために、又は、生殖細胞系列幹細胞及び任意でそれらの前駆細胞若しくは精細胞の数を減少することによる避妊の手段として使用することができる。
【0105】
細胞増殖を減少する薬剤は、ホルモン又は成長因子(例えば、TGF−β)、分裂促進的なホルモン又は成長因子のペプチドアンタゴニスト(例えば、BMPアンタゴニスト、PRDC及びGremlin)、又は薬理学又は医薬品化合物(例えば、細胞周期阻害剤又は成長因子情報伝達の阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0106】
細胞の生存を阻害する薬剤は、ホルモン、成長因子又はサイトカイン(例えば、TNF−α、FasL及びTRAIL等のアポトーシス促進性のTNFスーパーファミリーのメンバー)、アポトーシス促進性のBcl−2ファミリーメンバーの機能のアンタゴニスト、情報伝達分子(例えば、セラミド)、又は薬理学又は医薬品化合物(例えば、成長増殖因子情報伝達の阻害剤)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0107】
細胞死を促進させる薬剤は、アポトーシス促進性の腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバー(例えば、TNF−α、FasL及びTRAIL)、アポトーシス促進性のBcl−2ファミリーメンバーの機能のアゴニスト及びセラミドを含むが、それらに限定されるものではない。
【0108】
V.スクリーニング、アッセイ
本発明は、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を調節する調節因子、すなわち、候補物又はテスト化合物又は薬剤(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、peptoids、小分子又は他の薬剤)の同定のための方法を提供する。このように、薬剤は、例えば治療上のプロトコールにおいて、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞の、例えば、増殖、生存及び分化を調節するために使用することができる。
【0109】
本発明のテスト薬剤は、単独で得られるか、又は、当該技術分野公知のコンビナトリアルライブラリー法による多数のアプローチの何れかを使用して得ることができる。当該技術分野公知のコンビナトリアルライブラリー法は、生物学的ライブラリー、ペプチドライブラリー(ペプチドの機能性は有するが、酵素消化に抵抗性であり、それにもかかわらず生物活性を保持している新規な非ペプチド骨格を有する分子からなるライブラリー、例えば、Zuckermann,R.N.(1994)ら,J.Med.Chem.37:2678−85参照)、空間的に位置づけできる平行固相又は液層ライブラリー、逆重畳が要求される合成ライブラリー法、「1粒子1化合物」ライブラリー法、及び、アフィニティークロマトグラフィー選択を使用した合成ライブラリー法を含む。生物学的ライブラリー及びペプチドライブラリーアプローチは、ペプチドライブラリーに制限される一方、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー又は化合物からなる小分子ライブラリーに適用できる(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0110】
分子ライブラリーの合成に関する方法の例は、当該技術分野で見出すことができる。例えば、DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909、Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422、Zuckermannら(1994)J.Med.Chem.37:2678、Choら(1993)Science 261:1303、Carrellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059、Carellら(1994)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061、及びGallopら(1994)J.Med.Chem.37:1233。
【0111】
化合物ライブラリーは、溶液中に(例えば、Houghten(1992),Biotechniques 13:412−421)、又は粒子上に(Lam(1991),Nature 354:82−84)、チップに(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌に(Ladner,米国特許第5,223,409号)、胞子に(Ladner,米国特許第5,223,409号)、プラスミドに(Cull ら(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:1865−1869)又はファージ上に(Scott and Smith(1990)Science 249:386−390、Devlin(1990)Science249:404−406、Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378−6382、Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310、Ladner 上記.)提示されるかもしれない。
【0112】
テスト薬剤として使用される化学的な化合物(すなわち、潜在的な阻害剤、アンタゴニスト、アゴニスト)は、商業的な供給源から得ることもできるし、簡単に入手できる出発物質から標準的な合成手法及び当業者に公知の方法論を用いて合成することもできる。本明細書に記載の方法によって同定される化合物を合成する際に有用な合成化学での変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当該技術分野公知であり、例えば、R.Larock(1989)Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers、T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2nd ed.,John Wiley and Sons(1991)、L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994)、及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995),及びそれらの続版に記載されるような方法論を含む。
【0113】
ある側面では、化合物は、有機的な小分子、すなわち、1,000amuより少ないか、あるいは350−750amuの間である分子量有する化合物である。他の側面では、化合物は、(i)非ペプチド性の化合物であり、(ii)さらなる置換基を有してもよい、ヘテロシクリル、ヘテロアリール環基を含めた1から5の間の官能基を有する化合物であり、(iii)それらそれぞれの薬学的に許容される塩形態である化合物、又は(iv)ペプチド性の化合物である。
【0114】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環ならば1−3ヘテロ原子、二環なら1−6ヘテロ原子、又は三環なら1−9ヘテロ原子を有する、非芳香族の3−8員からなる単環性の、8−12員からなる二環性の、又は11−14員からなる三環性の環状系を示し、当該ヘテロ原子は、O、N又はSから選択され(例えば、単環、二環又は三環ならば、それぞれ炭素原子及び1−3、1−6又は1−9のO、N又はSヘテロ原子)、そこでは、それぞれの環で0、1、2又は3原子が置換基によって置換されていてもよい。
【0115】
「ヘテロアリール」という用語は、単環ならば1−3ヘテロ原子、二環なら1−6ヘテロ原子、又は三環なら1−9ヘテロ原子を有する、芳香族の5−8員からなる単環性の、8−12員からなる二環性の、又は11−14員からなる三環性の環状系を示し、当該ヘテロ原子は、O、N又はSから選択され(例えば、単環、二環又は三環ならば、それぞれ炭素原子及び1−3、1−6又は1−9のO、N又はSヘテロ原子)、そこでは、それぞれの環で0、1、2、3又は4原子が置換基によって置換されていてもよい。
【0116】
「置換基」という用語は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基上の何れかの原子で「置換された」官能基を示す。適した置換基は、限定されることなく、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、SOH、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、カルボキシル、オキソ、チオキソ、イミノ(アルキル、アリール、アラルキル)、S(O)アルキル(n=0−2)、S(O)アリール(n=0−2)、S(O)ヘテロアリール(n=0−2)、S(O)ヘテロシクリル(n=0−2)、アミン(モノ−、ジ−、アルキル−、シクロアルキル−、アラルキル−、ヘテロアラルキル−、及びそれらの組合せ)、エステル(アルキル−、アラルキル−、ヘテロアラルキル−)、アミド(モノ−、ジ−、アルキル−、アラルキル−、ヘテロアラルキル−、及びそれらの組合せ)、スルホンアミド(モノ−、ジ−、アルキル−、アラルキル−、ヘテロアラルキル−、及びそれらの組合せ)、置換されていないアリール、置換されていないヘテロアリール、置換されていないヘテロシクリル、置換されていないシクロアルキルを含む。ある側面では、官能基の置換は、独立して、上述の置換基のうち何れか1つ又は何れかのサブセットである。
【0117】
本発明として思い描かれる化合物において置換基とその数の組合せは、安定な化合物の形成に帰するもののみである。本明細書で使用されるように「安定な」という用語は、製造することができる程に十分な安定性を有し、本明細書で述べる目的(輸送、貯蔵、アッセイ、対象への治療上の投与)に対して有用である十分な期間、化合物の完全性が維持される化合物を示す。
【0118】
本明細書に記載の化合物は、1つ又はそれ以上の不斉中心を有していてもよく、これによりラセミ体、及び、ラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー及びジアステレオマー混合物として生じる。これらの化合物のこのような全ての異性体は、特に本発明に包含される。本明細書に記載の化合物は、複数の互変異体で表すこともでき、互変異体の全ては本明細書に包含される。化合物は、シス−又はトランス−、又は、E−又はZ−二重結合異性体も生じることができる。このような化合物のこのような全ての異性体は、特に本発明に包含される。
【0119】
本発明のテスト薬剤は、ペプチドであってもよい(例えば、成長因子、サイトカイン、レセプターリガンド)。
本発明のスクリーニング方法は、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の増殖又は生存を増加させる薬剤の同定を包含することができる。このような方法は、通常、生殖細胞系列幹細胞又は前駆細胞の集団を培養中でテスト薬剤と接触させ、結果として産生された新たな幹細胞又は前駆細胞の数を定量化することを含むだろう。未処理のコントロールとの比較が、同時に評価されてもよい。幹細胞又は前駆細胞の数の増加がコントロ−ルと比較して検出される場合には、テスト薬剤は望ましい活性を有すると判定される。
【0120】
本発明の方法を実施する際に、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の精製された集団が使用されることが望まれるかもしれない。末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の精製された集団は、約50〜55%、55〜60%、60〜65%及び約65〜70%の純度を有する。より好ましくは、純度は約70〜75%、75〜80%、80〜85%、そしてより一層好ましくは、純度は約85〜90%、90〜95%及び約95〜100%である。
【0121】
末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の増加した量は、Dazl、Stella及びVasaを含む遺伝的マーカーの遺伝子発現の増加によって検出することもできる。発現レベルは、遺伝的マーカーによってコードされるmRNAを測定すること、遺伝的マーカーによってコードされるタンパク質の量を測定すること、又は、遺伝的マーカーによってコードされるタンパク質の活性を測定することを含み、それらに限定されるものではないが、多くの方法で測定することができる。
【0122】
遺伝的マーカに対応するmRNAのレベルは、in situで及びインビトロで測定することができる。単離されたmRNAは、サザン分析又はノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応及びプローブアレイを含み、それらに限定はされないが、ハイブリダイゼーション又は増幅アッセイで使用することができる。mRNAレベルの検出に関する診断方法の1つは、単離されたmRNAを、検出すべき遺伝子によりコードされるmRNAとハイブリダイズ可能な核酸分子(プローブ)と接触させることを包含する。核酸プローブは、ストリンジェントな条件下で十分に、mRNA又はゲノムDNAに特異的にハイブリダイズする。プローブは、アレイ、例えば以下に記載するアレイの、ある位置に置くことができる。診断アッセイに使用するその他の好適なプローブも、本明細書に記載する。
【0123】
ある形式では、例えば、単離されたmRNAをアガロースゲル上で泳動し、ゲルからニトロセルロース等の膜へmRNAを転写することによって、mRNA(又はcDNA)を、表面に固定化して、プローブと接触させる。それに代わる形式、例えば、以下に記載の二次元遺伝子チップアレイでは、プローブを表面に固定化し、mRNA(又はcDNA)をプローブと接触させる。当業者であれば、公知のmRNA検出方法を応用して、本明細書に記載の遺伝的マーカーによってコードされるmRNAレベルを検出することができる。
【0124】
サンプル中のmRNAレベルは、例えば、rtPCR(Mullis(1987)米国特許第4,683,202号)、リガーゼ連鎖反応(Barany、(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189−193)、self sustained sequence replication(Guatelliら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、transcriptional amplification system(Kwohら、(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Q−βレプリカーゼ(Lizardiら、(1988)Bio/Technology 6:1197)、rolling circle replication(Lizardiら、米国特許第5,854,033号)又はその他のいずれかの核酸増幅法により核酸を増幅し、当該技術分野公知の手法を用いて増幅した分子を検出することによって、評価することができる。本明細書で使用されるように、増幅プライマーは、遺伝子の5’又は3’領域にアニールでき(+鎖及び−鎖それぞれに、又は逆も同じ)、その間に短い領域を含む、一組の核酸分子であるとして定義される。一般に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域の両端に隣接する。このようなプライマーは、好適な条件下、また、好適な試薬を用いることにより、プライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子を増幅させることができる。
【0125】
in situでの方法用に、細胞又は組織サンプルを調製/処理し、支持体(通常はスライドガラス)上に固相化し、次いで、解析すべき遺伝的マーカーをコードするmRNAにハイブリダイズすることが可能なプローブと接触させる。
本発明のスクリーニング方法は、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞へと分化させることを増進する薬剤の同定を包含する。このような方法は、通常、生殖細胞系列幹細胞又は前駆細胞を培養中にテスト試薬と接触させること、及び、結果として産生された新たな卵母細胞の数を定量化すること、を包含する。未処理のコントロールとの比較評価を同時に行ってもよい。コントロールと較べて、卵母細胞の数の増加が検出されれば、テスト薬剤は、望ましい活性を有していると判定される。テスト薬剤は、生物学的なサンプル(例えば、卵巣組織)を使用して試験(assay)してもよいし、試験の結果があいまいな場合には、幹細胞又は前駆細胞の集団を使用して、引き続き薬剤の機能的な活性(例えば、増殖又は生存の増加よりむしろ分化)を識別する試験を行ってもよい。
【0126】
卵母細胞の増加量は、Dazl、Stella及びVasaを含む幹細胞若しくは前駆細胞の遺伝的マーカーの遺伝子発現の減少、又は、HDAC6、GDF9及びZP3等の卵母細胞マーカーの増加によって検出される。
本発明のスクリーニング方法は、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の増殖又は生存を減少させる薬剤の同定を包含していてもよい。このような方法は、通常、幹細胞又は前駆細胞の集団又は生物学的なサンプル(例えば、卵巣組織)を、培養中にテスト薬剤と接触させること、及び、結果として失われた幹細胞又は前駆細胞の数を定量化することを包含する。未処理のコントロールとの比較評価を同時に行ってもよい。コントロールと較べて、幹細胞又は前駆細胞の数の減少検出されれば、テスト薬剤は望ましい活性を有すると判定される。
【0127】
VI.治療及び診断の方法
本発明の末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞は、さまざまな治療上の応用に使用することができる(例えば、インビトロ受精及び体細胞核移植を含むエクスビボでの操作又はインビボでの治療のための卵母細胞の産生)。従って、本発明の方法は、特に、生殖器官の障害の治療において生殖細胞を提供するために、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の使用に関する。
【0128】
このように、本発明は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、それを必要とする対象の雌に提供することを含む、不妊治療のための方法を提供し、そこでは、当該細胞は組織に生着し、後に受精のために提供することができる(例えば、対象の排卵又はインビトロ受精に続いて)卵母細胞へ分化する。好ましくは、組織は卵巣組織であるが、体内の他の組織が、後に卵母細胞を生じる生着した細胞を宿してもよい。卵巣以外の組織に宿った卵母細胞は、インビトロ受精を含む操作のために回収され、使用することができる。
【0129】
本発明は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の産生又は生存を増加させる薬剤を投与することを含む、不妊治療のための方法も提供する。このような薬剤は、細胞の増殖又は生存を促進し、それにより卵母細胞の産生を増強する可能性がある。
【0130】
薬剤は、目的の生殖器官へ直接的に提供することができる。あるいは、薬剤は、目的の生殖器官へ、例えば循環系に投与することにより、間接的に提供することができる。
本発明は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を卵巣組織に提供することを含む、損傷を受けた卵巣組織を修復するための方法も提供し、そこでは、当該細胞は組織に生着し、卵母細胞へ分化する。本明細書で特に言及する場合を除いて、卵巣組織は化学療法又は放射線治療によって過去に損傷を受けていないものとする。
【0131】
損傷は、例えば、細胞傷害性因子への曝露、ホルモンの欠乏、成長因子の欠乏、サイトカインの欠乏、細胞レセプター抗体等によって、引き起こされる可能性がある。損傷が、化学療法及び/又は放射線治療の予測される過程で引き起こされる可能性がある場合には、生殖障害を保護する薬剤を化学療法及び/若しくは放射線治療の前に又は同時に投与することにより受胎能力を保護し、本明細書に記載の修復するための方法をより優れたものにする。保護剤は、S1P、Bax又はSDF−1活性を増加させるいずれかの薬剤(すなわち、SDF−1は幹細胞の移動とホーミングを仲介する)をも含むことができるが、それらに限定されるものではない。生殖系を保護する際のS1Pの使用に関する記載としては、2002年8月12日出願、2003年8月21日公開(第20030157086号公報)の米国特許出願第10/217,259号を参照されたい。その内容は参照して本明細書に取り込むものとする。
【0132】
本発明は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を対象に投与することにより、細胞を卵巣に生着させて卵母細胞に分化させることを含む、閉経期の雌性の対象に於いて卵巣機能を回復させる方法を提供する。閉経期の雌性の対象は、閉経の前又は後のどちらであってもよく、当該閉経は正常に(例えば、加齢)又は病理学的過程(例えば、手術、疾患、卵巣損傷)により引き起こされたものであってもよい。
【0133】
閉経後の雌の卵巣機能は、(例えば、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞の数や寿命を増加させることにより、又は、末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞が卵母細胞へ分化するのを増加させることにより)末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量及び/又はそれらの卵母細胞への分化を増加させる薬剤を投与することによって修復可能である。
【0134】
卵巣機能の回復により、骨粗鬆症、循環器系の疾患、体細胞性の性機能障害、のぼせ、膣部の乾燥、睡眠障害、うつ病、刺激過敏症、性欲の喪失、ホルモンのアンバランス等の体細胞性の疾患を含むがそれらには限定されない更年期障害に伴う有害な症状及び合併症、更に記憶の喪失、情緒障害、うつ病等の認知性疾患も軽減することができる。
【0135】
本発明の末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞、それらの前駆細胞又はそれらのインビトロで派生された子孫細胞は、上記のように投与可能であり、当該技術分野公知のあらゆる方法により取得可能である。
【0136】
末梢血は、臍帯血を回収するための方法を含む、当該技術分野公知の標準的な方法によって単離可能である。一般に、末梢血単核細胞(PBMC)は、標準的な手法で、患者から採取する。本明細書における「末梢血単核細胞」又は「PBMC」は、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞等)、単球及び幹細胞を意味する。本発明のいくつかの態様では、PBMCのみを採取し、赤血球及び多形核白血球は患者に残されるか戻される。これは、例えばleukophoresis手法を用いて当該技術分野公知の方法で行われる。一般に、患者から実質的にPBMCを取り除き、残りの血液成分を戻すといった、5〜7リットルのleukophoresis工程を実施する。細胞サンプルの収集は、好ましくは当該技術分野で公知のように、ヘパリン等の抗凝固剤の存在下で行われる。
【0137】
一般に、PBMCを含むサンプルは、幅広い様々な方法で前処理することができる。一般的には、当該細胞は、収集と同時に濃縮されなかった場合、一度収集された後で更に濃縮してもよい、又は、更に精製するために及び/若しくは濃縮するために、一度収集された後で更に濃縮してもよい。当該細胞を洗浄、計数し、更に精製、活性化させるために、無菌の閉鎖系に移された緩衝液中に再懸濁してもよい。
【0138】
好ましい態様では一般に、PBMCは処置用に当該技術分野で標準的な手法で濃縮されるが、leukophoresisによる収集工程は、抑制性の組成物の1回分の用量又は試薬を含んだ無菌のleukopak中にPBMC濃縮サンプルを得ることである。その概略は以下により詳細に記載する。さらなる濃縮/精製工程は、一般に、当該技術分野で公知のFicoil−Hypaque密度勾配遠心等で行われる。分離又は濃縮手順には、抗体被覆磁性ビーズを使用した磁性分離;アフィニティークロマトグラフィー;モノクローナル抗体に結合するか補足物とともに使用される細胞傷害性の薬剤;固体の基質にモノクローナル抗体を使用した「パニング」が含まれるが、それらに限定はされない。磁性粒子、アガロースビーズ、ポリスチレンビーズ、中空繊維膜及びプラスチック表面等の固相基質に付着した抗体は、直接分離することができる。細胞から結合した抗体を取り除き、細胞懸濁液から固相支持体を物理的に分離することによって、細胞を濃縮できる。実際の条件及び手順は、使用される系に特異的な因子に依存する。適した条件の選択は、当該技術の範囲内で十分可能である。
【0139】
細胞分離を可能にするために、抗体を後に支持体に結合したアビジン若しくはストレプトアビジンで取り除くことができるビオチン又は蛍光標示式細胞分取器(FACS)で使用することができる蛍光色素に結合させてもよい。望ましい細胞の生存を阻害しない限り、いかなる手法を使用してもよい。
好ましい態様では、PBMCは、Nexell Isolex 300i Magnetic Cell Selection System等の自動化された閉鎖系で分離される。これは、一般的に、無菌状態を維持するために、及び、細胞分離、細胞の活性化及び細胞機能の抑制因子の開発に用いる手順を標準化するために、実施される。
【0140】
ひとたび精製、濃縮された細胞は、アリコートに分けて、好ましくは液体窒素中で凍結してもよいし、以下に記載されるように直ちに使用してもよい。凍結した細胞は、必要時に解凍して使用してもよい。使用可能な凍結保護剤(耐凍剤)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Lovelock,J.E.and Bishop,M.W.H.,1959,Nature 183:1394−1395、Ashwood−Smith,M.J.,1961,Nature 190:1204−1205)、ヘタスターチ、グリセロール、ポリビニルピロリジン(Rinfret,A.P.,1960,Ann.N.Y.Acad.Sci.85:576)、ポリエチレングリコール(Sloviter,H.A.and Ravdin,R.G.,1962,Nature 196:548)、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレングリコール、i−エリトリトール、D−リビトール、D−マンニトール(Rowe,A.W.ら,1962,Fed.Proc.21:157)、D−ソルビトール、i−イノシトール、D−ラクトース、塩化コリン(Bender,M.A.ら,1960,J.Appl.Physiol.15:520)、アミノ酸(Phan The Tran and Bender,M.A,1960,Exp.Cell Res.20:851)、メタノール、アセトアミド、グリセリン一酢酸(Lovelock.J.E.,1954,Biochem.J.56:265)及び無機塩(Phan The Tran and Bender,M.A,1960,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.104:388、Phan The Tran and Bender,M.A,1961,in Radiobiology Proceedings of the Third Australian Conference on Radiobiology,Ilbery,P.L.T.,ed.,Butteworth,London,p.59)を含むが、それらに限定されるものではない。細胞は、通常、10%のDMSO、50%の血清、及び40%のRPMI1640培地中に保存する。細胞分離及び精製の方法は、米国特許第5,888,499号に見られるが、これを参照して、本明細書に取り込む。
【0141】
好ましい態様では、PBMCは、血清タンパク質及び自己抗体、阻害剤等の可溶性の血液成分を取り除くために、その後、当該技術分野で周知の手法で洗浄するが、一般的には、生理学的な培地又は緩衝液を添加して、その後遠心分離する。これを必要に応じて繰り返してもよい。ハンクス平衡塩溶液(HBBS)又は緩衝生理食塩水(リン酸緩衝生理食塩水;PBS)等の緩衝液も使用することができるが、生理学的な培地、好ましくはAIM−V無血清培地(Life Technologies)に、PBMCを再懸濁することができる(血清はTGF−β阻害剤を顕著な量で含んでいるため)。
【0142】
その後、細胞は計数されるが、一般的に、5〜7リットルのleukophoresis工程で1×10〜2×10の白血球が収集される。これらの細胞は、およそ200mlの緩衝液又は培地で育成される。
回収前に、骨髄又は卵巣から末梢血へ幹細胞の動員を増加させるように、患者を当該技術分野公知の薬剤で処理してもよい。動員剤には、GCSF又はGMCSFが含まれるがそれらには限定されない。
【0143】
もし必要であれば、本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞は、臍帯血を含む末梢血から精製できる。それゆえに、本発明の方法で使用する末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞は、雌性及び雄性の生殖細胞系列幹細胞を含むが、それらには限定されない精製された細胞の亜母集団を含むことができる。精製された細胞は、収集して、例えばフローサイトメトリーによって分離することができる。
【0144】
本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞は、自系の(対象から得られた)又は異種の(例えば、ドナーから得られた)ものであってもよい。異種の細胞は、細胞が免疫拒絶されるのを防止するために、当該技術分野で公知の免疫抑制療法とともに提供することができる。
【0145】
本発明の方法に於いては、生涯にわたって対象から末梢血を回収することが可能であるが、閉経前のものを回収するのが推奨される。さらに、病気(例えば、癌)に罹患する前のものを回収するのが望ましく、細胞傷害性の手段(例えば、放射線又は化学療法)で治療する前のものを回収する方が収量が向上するので望ましい。雌性のドナーからの収量を増加させるためには、実施例4に記載のように、生殖細胞系列幹細胞が末梢血中により高レベルで示される好適な生殖周期に合わせて単離することが望ましいであろう。
【0146】
ある態様では、末梢血サンプルに存在する、雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数を定量化することが有益である。対象に於いて雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量が、健常な対象のそれと比較して実質的に減少している場合(例えば、100より少ない)、対象は、早発卵巣不全の可能性があるか、又は、早発卵巣不全を発生する恐れがある。末梢血を循環している雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量は、雌の生殖周期の特定の時期に最大となる。従って、サンプルの抽出と診断を、雌の生殖周期の特定の時期に合わせることが望ましいであろう。
【0147】
精製された末梢血由来の雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞は、FACsによるセルソーティングを含む、当該技術分野公知の標準的な方法で取得可能である。(Shenら,(2001)J.Immunol.166,5027−5033)、(Calvi etal.,(2003)Nature 425 841−846)に記載のように、細胞系列マーカーが枯渇した(lin)細胞を得るために(Spangrudeら,(1988)Science 241,58−62)、(Spangrude and Scollay,(1990)Exp.Hematol.18 920−926)最初に行う免疫磁性粒子カラムに基づく分画工程に続いて、当該技術分野公知のフローサイトメーター(例えば、BD Biosciences FACScalibur cytometer)を使用して、Sca−1(van de Rijnら,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,4634−4638)及び/又はc−Kit(Okadaら,(1991)Blood 78,1706−1712)、(Okadaら,(1992)Blood 80,3044−3050)の細胞表面での発現に基づいて、単離された末梢血を選別することができる。
【0148】
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、インビトロで連続継代により増やすために(Meirelles and Nardi,(2003)Br.J.Haematol.123 702−711)(Tropelら,(2004)Exp.Cell Res.295 395−406)、単離した末梢血を、10%ウシ胎児血清(Hyclone,Logan,UT)、ペニシリン、ストレプトマイシン、L−グルタミン及びアムホテリシンBを含むダルベッコ変法イーグル培地(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)が入ったプラスチック上に蒔くことができる。最初に細胞を蒔いてから約48時間後、非付着性の細胞を含む上清を取り除き、穏やかに洗浄した後、新鮮な培養培地で置換してもよい。その後も培養を維持し、ひとたびコンフルエントに達すると(例えば、約6週の期間で全部で約3回継代してもよいが、)接着性の細胞を収集して解析するために、培養を終了させてもよい。
【0149】
末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を含む組成物を、目的の生殖器官(例えば、卵巣又は精巣)へ直接提供してもよいが、末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を含む組成物を、目的の生殖器官(例えば、卵巣又は精巣)へ、例えば循環系(例えば、卵巣外循環)へ投与することにより間接的に提供してもよい。
【0150】
本明細書に記載の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、それらの前駆細胞又はそれらの子孫細胞を、投与する前に、当業者には公知の様々な組換え法を用いて、細胞に異種のDNA又はRNA又はタンパク質を導入することにより、任意にインビトロ、インビボ又はエクスビボで遺伝的に修飾することもできる。これらの方法は、一般に4つの主なカテゴリーに分類される。(1)例えば、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、シンドビスウイルス及びウシパピローマウイルス等のDNA又はRNAウイルスベクターの使用を含む、ウイルスによる移入、(2)カルシウムリン酸トランスフェクション法及びDEAEデキストラントランスフェクション法を含む、化学的な移入、(3)例えば、リポソーム、赤血球ゴースト及びプロトプラスト等のDNAが負荷された膜状担体を使用する、膜融合による移入、及び(4)マイクロインジェクション、エレクトロポレーション又は直接「裸の」DNAを移入する等の物理的な移入手法、である。
【0151】
本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、それらの前駆細胞又はそれらの子孫細胞は、あらかじめ選択して単離したDNAの挿入により、あらかじめ選択して単離したDNAで細胞のゲノムの一部を置換することにより、又は、細胞のゲノムの少なくとも一部を欠失又は不活化させることにより、遺伝的に改変することができる。細胞のゲノムの少なくとも一部を欠失又は不活化させるのは、例えば、アンチセンス手法(ペプチド核酸、すなわちPNAsの使用を含むことができる)又はリボザイム手法による遺伝的な組換えを含むがそれに限定されない様々な手段により可能となる。改変されたゲノムは、選択可能な又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子の遺伝的な配列を有し、その発現により、ゲノムが改変された細胞又はその子孫細胞を、ゲノムが改変されていない細胞から識別することができる。例えば、このようなマーカーは、緑色、赤色、黄色蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、ネオマイシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)又はハイグロマイシンであってもよいが、これらの例に限定されるものではない。
【0152】
病理状態の根底にある欠陥は、代謝系タンパク質等のタンパク質をコードするDNAの変異である場合がある。異種のDNAによってコードされるポリペプチドは、病理状態に関連する変異がないものが好ましい。病理状態がタンパク質発現の減少に関連している場合もある。遺伝的に改変された末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はその子孫細胞は、組換えタンパク質の強力な発現を司るプロモーターにより、このようなタンパク質をコードするDNAを含んでいるかもしれない。あるいは、タンパク質、酵素又は他の細胞産生物の発現の制御又は時期を高度に制御する必要がある場合には、細胞は、誘導性のプロモーター又はその他の制御機構により調節可能な遺伝子を発現する場合がある。このような幹細胞を、タンパク質の発現が異常に低い対象に移植すると、タンパク質が高レベルで産生されるので、治療上有効である。例えば、本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、その前駆細胞又はそのインビトロで派生した子孫細胞は、例えば遺伝子治療に於いて発現する遺伝子をコードする異種のDNAを含むことができる。本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、それらの前駆細胞又はそれらのインビトロで派生した子孫細胞は、受胎能力を低下させるヒトの疾患である毛細血管拡張性運動失調症に関与する遺伝子、Atmをコードする異種のDNAを含むことができる。末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、それらの前駆細胞又はそれらのインビトロで派生した子孫細胞を介してAtmを提供することにより、卵巣機能の欠陥をさらに軽減することができる。末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞の機能を改変するような遺伝子産物をコードするDNAで疾患状態のまったくないものも想定されている。例えば、アポトーシスを阻害したり、分化を抑制する遺伝子の送達は有益であろう。
【0153】
相同組換え又はウイルスによる組込みにより、宿主となる細胞のゲノムへ、1つ又はそれ以上のあらかじめ選択されたDNA配列を挿入することが可能である。望ましい遺伝子配列は、プラスミド発現ベクター及び核移行配列を使用することによって、細胞、特にその核へ取り込ませることができる。ポリヌクレオチド配列を核へ方向付ける方法は、当該技術分野では公知である。遺伝的な物質は、ある化学物質/薬剤を使用して目的の遺伝子を積極的に又は消極的に誘導可能なプロモーター、又は、与えられた薬剤/化学物質の投与後に目的の遺伝子を排除可能なプロモーターを使用して導入することもできるし、特定の細胞区画(細胞膜を含むがそれに限定されない)で化学物質(タモキシフェン応答性の変異を有するエストロゲンレセプターを含むがそれに限定されない)による発現を誘導できるようにタグを付けることもできる。
【0154】
カルシウムリン酸トランスフェクションは、単離された又は培養された末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞に、標的の遺伝子又はポリヌクレオチドを含むプラスミドDNAを導入するのに使用することができ、これは当業者には、DNA移入の標準的な方法である。DEAEデキストラントランスフェクションは、これも当業者には公知であるが、一過性の移入が望まれる場合には、効率的である場合が多いので、カルシウムリン酸トランスフェクションに較べて好まれるであろう。本発明の細胞は単離された細胞であるので、マイクロインジェクションは細胞へ遺伝的な物質を移入するために特に効果的であるかもしれない。この方法は、注入するポリペプチドの細胞質及びリソソームの分解を回避して、望ましい遺伝物質を核に直接送達できるため好都合である。この手法は、トランスジェニック動物に於ける末梢血由来の修飾に効果的に使用されてきた。本発明の細胞は、エレクトロポレーションを使用して遺伝的に修飾することも可能である。
【0155】
細胞を遺伝的に修飾するための、リポソームによるDNA又はRNAの送達は、ポリヌクレオチドと安定な複合体を形成する陽イオン性のリポソームを用いて実施することができる。リポソーム複合体の安定化のために、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)又はジオレオイルホスファチジルコリン(DOPQ)を添加することができる。リポソームによる移入のために商業的に入手可能な試薬には、リポフェクチン(Life Technologies)が含まれる。例えば、リポフェクチンは、陽イオン性の脂質N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N−N−N−トリメチルアンモニアクロリドとDOPEの混合物である。リポソームはより大きなDNA断片を運ぶことができ、一般的にポリヌクレオチドが分解するのを防止し、特定の細胞又は組織へ標的化することができる。陽イオン性の脂質で仲介される遺伝子の移入効率は、精製された水庖性口内炎ウイルスエンベロープのG糖タンパク質(VSV−G)等の精製されたウイルス又は細胞性のエンベロープ構成要素を取り込むことで増強される。リポポリアミン被覆DNAを使用することによって初代又は確立された哺乳動物の培養細胞株へDNAを送達することに関して効果が示されてきた遺伝子移入の手法を用いて、本明細書に記載の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞に標的のDNAを導入することができる。
【0156】
裸のプラスミドDNAは、単離された末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞から分化した細胞で形成された組織(tissue mass)へ直接的に注入することができる。1回の筋肉内注入でマウス骨格筋に於ける発現が19ヶ月間以上観察されていることから、骨格筋組織へプラスミドDNAを移入する場合にこの手法が効果的であることはすでに明らかである。より急速に分裂する細胞は、より効果的に裸のプラスミドDNAを取り込む。それゆえに、プラスミドDNAで処理する前に、細胞分裂を刺激することは好都合である。微粒子銃による遺伝子移入も、インビトロ又はインビボ何れにおいても幹細胞へ遺伝子を移入するのに使用することができる。微粒子銃による遺伝子移入に関する基本的な手順は、J.Wolff in Gene Therapeutics(1994),p.195に記載されている。同様に、微粒子を注入する手法は、既に開示されており、方法は当業者には公知である。シグナルペプチドをプラスミドDNAに付加してDNAを核に方向付けることにより、更に効率的な発現が可能となる。
【0157】
本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの子孫細胞を遺伝的に改変するためにウイルスベクターが用いられる。ウイルスベクターを用いて、上記の物理的な方法による場合と同様に、例えば、1つ又はそれ以上の標的遺伝子、ポリヌクレオチド、アンチセンス分子又はリボザイム配列を細胞へ送達する。ウイルスベクター及び細胞へDNAを送達するためにそれらを使用する方法は、当業者には周知である。本発明の細胞を遺伝的に改変するのに使用可能なウイルスベクターの例として、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターを含む)、アルファウイルスベクター(例えば、シンドビスベクター)及びヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0158】
本発明の末梢血由来の生殖細胞系列幹細胞、及びそれらの子孫細胞を遺伝的に改変するためのその他の方法として、ペプチド又はタンパク質のトランスフェクションが用いられる。限定はされないが、Pep−1(ChariotTMとして商業的に入手可能)及びMPGを含むペプチドは、約60%から約95%の効率で生物学的に活性なタンパク質、ペプチド、抗体及び核酸を細胞に直接、迅速かつ効率的に輸送することができる(Morris,M.C.ら,(2001)Nat.Biotech.19:1173−1176)。理論に縛られることを望むものではないが、ペプチドは、目的の巨大分子(すなわち、タンパク質、核酸)と非共有結合を形成する。結合反応はタンパク質を安定化させ、その分解を防止する。本発明の幹細胞等の目的の細胞へ送達されると、ペプチド−巨大分子複合体は解離し、巨大分子は生物学的に活性な状態を維持して標的のオルガネラへ進む。送達は、血清の存在下又は非存在下で行われる。取り込み及び送達を4℃で行うことにより、侵入してくる巨大分子に対するエンドゾームでのプロセッシングを排除できる。エンドゾーム経路を介した巨大分子の移動は、取り込み時の巨大分子を修飾できる。Pep−1等のペプチドは、目的のタンパク質、抗体又はペプチドを直接送達することにより、転写−翻訳過程を回避する。
【0159】
本発明の方法は、体細胞核移植等のエクスビボ手順で使用する卵母細胞の貯蔵を提供する。核移植前に、組換え手法を使用すれば、カスタマイズされた卵母細胞の設計が可能となり、最終的に胚性幹細胞を派生することが可能な胚を産生する。さらに、核移植前にドナーDNAを遺伝的に操作すれば、望ましい修飾又は遺伝的な形質を有する胚を生じさせることが可能である。
【0160】
体細胞核移植の方法は、当該技術分野に於いては周知である。2004年3月24日に出願され、第20050064586号公報が発行された、米国特許出願第10/494074号、Wilmutら(1997)Nature,385,810−813、Wakayamaら(1998)Nature 394:369−374及びTeruhikoら,(1999)PNAS 96:14984−14989を参照されたい。核移植は、ドナー細胞又は細胞核を、除核された卵母細胞へ移植することを含む。卵母細胞の除核は、当業者に周知の多数の方法で実施することができる。再構成(reconstituted)された細胞を形成するために、除核された卵母細胞へのドナー細胞又は核の挿入は、通常、融合する前に透明帯の下にドナー細胞をマイクロインジェクションすることによる。融合は、接触/融合面を超えてDC電気的なパルスを適用すること(電気融合)により、ポリエチレングリコール等の融合を促進する化学物質に細胞を曝すことにより、又は、センダイウイルス等の不活性なウイルスの方法により誘導してもよい。再構成された細胞は、通常、核ドナーとレシピエント卵母細胞の融合前、融合中及び/又は融合後に電気的な及び/又は非電気的な手段で活性化される。活性化の方法は、電気的なパルス、化学的に誘導された衝撃、精子の侵入、卵母細胞内の二価陽イオンレベルの上昇及び卵母細胞内に存在する細胞タンパク質のリン酸化の減少(キナーゼ阻害剤の方法によるように)を含む。活性化された再構成された細胞又は胚は、通常、当業者に周知の培地で培養し、その後動物胎内へ移入する。
【0161】
胚から胚性幹細胞を生成することに関する方法も、当該技術分野で周知である。Evansら(1981)Nature,29:154−156、Martinら(1981)PNAS,78:7634−7638、Smithら(1987)Development Biology,121:1−9、Notarianniら(1991)J.Reprod.Fert.,Suppl.43:255−260、ChenRLら(1997)Biology of Reproduction,57(4):756−764、Wiannyら(1999)Theriogenology,52(2):195−212、Stekelenburg−Hamersら(1995)Mol.Reprod.40:444−454、Thomsonら(1995)PNAS,92(17):7844−8及びThomson(1998)Science,282(6):1145−1147を参照のこと。従って、望ましい遺伝的形質を有する胚を産生するために、受精前にインビトロで卵母細胞の操作をするか、あるいは、除核された卵母細胞へ核移入する前にドナーDNAを操作することにより、本発明の卵母細胞から産生された胚を遺伝的に修飾することができる。
【0162】
VII.インビトロ受精
本明細書に記載されるように、本発明の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞から、又は、本発明の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞から生じる卵母細胞も、インビトロ受精の方法に使用することができる。従って、本発明は、以下の工程
a)卵母細胞への分化剤の存在下で、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を培養することによって卵母細胞を産生すること、
b)インビトロで卵母細胞を受精させて接合体を形成すること、
c)対象となる雌の子宮に接合体を移植すること、
を含む、対象である雌のインビトロ受精に関する方法を提供する。
【0163】
インビトロ受精の方法は、当該技術分野で周知であり、今や急激に一般的なことになりつつある。男女のカップルは、彼らに特有の不妊の原因を診断するために、通常先ず検査される。これらは、パートナー両者に関する説明がつかない不妊から女性側(例えば、不規則な月経周期を伴う卵管閉塞を生じる子宮内膜症又は多嚢胞性の卵巣疾患)又は男性側(例えば、形態学的な異常を伴う精子数の低下、又は、脊髄周辺の病変、逆行性射精又は精管切除後再疎通を伴うことによる正常な射精が不可能であること)の重篤な問題にまで及ぶかもしれない。これらの検査結果からも、カップル毎に特異的な施術手順が決定される。
【0164】
手順は、しばしば、視床下部/下垂体系を負に制御する薬剤(LHRHアゴニスト)の投与から始められる。この工程はゴナドトロピンの血清濃度を減少させるので、発生している卵巣の卵胞が退化し、それにより発生のより初期の段階に一組の新しい卵胞を提供する。これは、視床下部−下垂体軸による影響の非存在下で外因性のゴナドトロピンを投与することによって、新たな卵胞の成熟をより的確にコントロールできる。成熟の進行と成長過程の卵胞の数(通常卵巣当たり4から10個刺激される)は、超音波及び血清エストラジオールの測定を用いた日々の観察によってモニターされる。当該卵胞が排卵前の大きさ(18−21mm)に達し、エストラジオール濃度の直線的な上昇が継続している時に、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を外部から投与することによって排卵性の応答が開始される。
【0165】
本明細書で上に記載したように、卵母細胞は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞から、又は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞から得ることができる。末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞、又は、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞から派生した前駆細胞は、卵母細胞への分化を誘導する卵母細胞分化剤の存在下で、培養することができる。分化剤は、外因的に(例えば、培養培地に添加することで)、あるいは、自系の又は異種の卵巣組織と共培養中に内因性の供給源から供給することができる。本発明の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞は、分化剤が外因性又は内因性に供給され、組織操作された構造体とともに培養され、卵母細胞を得る。
【0166】
個々の卵母細胞を、形態学的に評価し、培養培地及び熱で不活化された血清を含むペトリ皿へ移す。精液サンプルは、雄のパートナーから提供され、最も活発な、運動性の精子が精子注入のために得られるように「swim up」手順を使用して処理する。雌に卵管が存在するならば、GIFT(配偶子卵管内移入)と呼ばれる手順をこの段階で実施することができる。このアプローチにより、精子で囲まれた卵母細胞−卵丘複合体が腹腔鏡手術により直接、卵管に置かれる。この手順は、正常な一連の現象を最も活性化させるものであり、卵管内での受精を可能にする。驚く程のことではないが、GIFTは、1990年に卵細胞回収(ova retrieval)により出産した3750患者のうち22%という最も高い成功率を有している。代替法としてのZIFT(接合体卵管内移入)は、卵細胞回収(ova retrieval)の翌日に、インビトロで受精させた接合体のうち選択されたものを、卵管へ移植する。余分な接合体は、将来の移植のため又は雌性の配偶子を持てないカップルに提供するためにこの段階で凍結保存することができる。しかしながら、より深刻な不妊の問題を抱える多くの患者は、初期の卵割期にある前胚を子宮への移入のために選択することができるように、培養中でさらに1日〜2日のインキュベーションする必要がある。このIVF−UT(インビトロ受精子宮移入)は、2〜6細胞(2日目)又は8〜16細胞(3日目)のいくつかの前胚を子宮の基底へ経頸管的に移入することを必要とする(4〜5前胚が最適な成功を提供する)。
【0167】
インビトロ受精のための手順は、米国特許第6,610,543号、第6,585,982号、第6,544,166号、第6,352,997号、第6,281,013号、第6,196,965号、第6,130,086号、第6,110,741号、第6,040,340号、第6,011,015号、第6,010,448号、第5,961,444号、第5,882,928号、第5,827,174号、第5,760,024号、第5,744,366号、第5,635,366号、第5,691,194号、第5,627,066号、第5,563,059号、第5,541,081号、第5,538,948号、第5,532,155号、第5,512,476号、第5,360,389号、第5,296,375号、第5,160,312号、第5,147,315号、第5,084,004号、第4,902,286号、第4,865,589号、第4,846,785号、第4,845,077号、第4,832,681号、第4,790,814号、第4,725,579号、第4,701,161号、第4,654,025号、第4,642,094号、第4,589,402号、第4,339,434号、第4,326,505号、第4,193,392号、第4,062,942号及び第3,854,470号にも記載されているが、これらの手順に関する記載を参照してその内容を特に本明細書に取り込む。
【0168】
以下の例は、説明の目的にのみ記載されており、発明者等が発明とみなしている範囲を何ら制限するものではない。
実施例
【実施例1】
【0169】
末梢血に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞
骨髄が、成人女性の卵母細胞産生を維持するための生殖細胞系列幹細胞の貯蔵所の役割を果たしていることが近年示された。代理人整理番号第51588−62060号として2005年5月17日出願された米国特許出願第 号を参照されたい、又その内容を参照して本明細書に取り込む。従って、生殖細胞系列幹細胞から派生した子孫細胞は卵巣への導管として末梢血の供給を利用することが提唱されてきた。末梢血は生殖細胞系列幹細胞を含んでいることから、本明細書に示されるように、末梢血細胞の移植(PBCT)はレシピエントである雌の卵母細胞の産生を回復させるために使用することができる。
【0170】
このような実験の最初のものとして、ドキソルビシン傷害モデルを利用した。そのモデルでは、ドキソルビシンによる傷害に続いて、おそらく、通常の循環系を通じて卵巣に到着した生殖細胞系列幹細胞から派生した子孫細胞を介して、迅速かつ自発的に原始卵胞プールの再生が起こる。従って、このようなモデルは、成体の雌において末梢血から派生した生殖細胞が卵母細胞の新たな(de novo)産生に寄与しているか否かを迅速に評価するのに、非常に役立つ。
【0171】
宿主から派生したこれらの新たな卵母細胞とドナーのそれとの区別をするために、末梢血単核細胞は、緑色蛍光タンパク質(GFP)の広範な発現を利用して成体のトランスジェニック雌マウスから採取した。PBCTのために、末梢血を収集し、Ficoll−Paque Plus(Amersham Biosciences社)に重層した。サンプルを4℃で15分間、800×gで遠心し、単核細胞がフィコールと緩衝液の界面から回収した。回収後、細胞は洗浄し、PBS中に最終濃度3〜6×10cell/mlとなるよう再懸濁した。レシピエントの成体(6〜7週齢)野生型雌マウスに、ドキソルビシン(5mg/kg)を注入し、25時間後にPBCT(尾静脈を介して、マウス当たり0.5ml細胞)した。PBCTから24時間後、卵巣を摘出し、免疫組織化学によってGFPの発現を解析した。
【0172】
実験のコントロールとして、GFPの発現をトランスジェニック雌マウスの原始及び一次卵母細胞(図1a)で検出したが、PBCT前の野生型雌マウスの卵母細胞では観察されなかった(図1b)。しかしながら、PBCT後24時間以内に成体野生型雌マウスの卵巣のGFP陽性卵母細胞で、原始及び初期一次卵胞を検出した(図1c−e)。予想通り、GFP陰性の原始及び一次卵母細胞もPBCTを受けたマウスの同じ卵巣で見出されたが(図1f)、それらはドキソルビシン処理によって破壊されなかった卵母細胞か、傷害後に宿主の生殖細胞系列幹細胞由来の子孫細胞から形成された新たな卵母細胞であることを意味している。
【0173】
次に、近位のエンハンサー領域(GOF18−△PE又はTgOG2)が不活化されているOct4プロモーター(Yeomら(1996)Development 122,881−894)、(Yoshimizuら (1999)Dev.Growth Differ.41,675−684)、(Szaboら(2002)Mech.Dev.115,157−160)の18kbフラグメントによって誘導されるGFPの発現を有するトランスジェニック雌マウスを、末梢血細胞の移植(PBCT)のためのドナーとして使用した。過去の研究において、成体動物における内在性Oct4の発現は生殖細胞に限定されており(Scholer ら(1989)EMBO J.8, 2543−2550)、(Yoshimizuら (1999))、Oct4プロモーターの近位のエンハンサー(△PE)に欠失を導入すると、胚形成期であっても生殖細胞系列で導入遺伝子の排他的な発現を引き起こすこと(Yeomら,1996)が示されている。
【0174】
末梢血細胞を、Oct4特異的にGFPを発現している成体(7〜10週齢)トランスジェニック雌マウス又はOct4−GFPトランスジェニック成体雄マウスから採取し、Ficoll−Paque Plus(Amersham Biosciences/GE Healthcare,Piscataway,NJ)に重層した。
サンプルを4℃で15分間、800×gで遠心し、単核細胞がフィコールと緩衝液の界面から回収した。その後、細胞を洗浄し、PBS中に最終濃度2〜4×10cell/mlとなるよう再懸濁した。以下に記載されるようにいくつかの実験では、レシピエントとなる成体(6〜7週齢)野生型マウス又はAtm遺伝子を有さない雌マウスを、BMTについて上記のように化学療法で条件化し、24時間後にPBCT(尾静脈を介して、マウス当たり0.5ml細胞)した。全ての例で、卵巣をPBCT後28〜30時間で採取し免疫組織化学によってGFPの発現を解析した。ドナーとして雄を使用したPBCTを含む実験に対しては、レシピエントの卵巣を固定し、連続切片にし、その全てをGFPを発現している卵母細胞についてスクリーニングした。陽性コントロールとして、Oct4−GFP(TgOG2)マウスからの精巣及び卵巣組織を、卵巣での抗原検出と同様に、雄での導入遺伝子の発現を確認するために平行して解析した。
【0175】
コントロールでは、GFPの発現がトランスジェニック雌マウスの原始及び成長している卵母細胞でのみ検出され(図2A〜2B)、PBCT前の野生型雌マウスの卵母細胞にはGFPシグナルは存在しなかった(図2C)。しかしながら、高度にGFP陽性(GFP)の卵母細胞を有する原始卵胞が、PBCTの28〜30時間以内に化学的に切除された成体の野生型雌マウスの卵巣で検出された(図2D〜2F、図4も参照)。
【0176】
レシピエントとして、化学的な切除を施したAtm遺伝子欠失の雌マウスを使用して実験を繰り返した結果、類似の結果が得られたので(図2G〜2H)、宿主の雌に於ける内性の卵母細胞産生について、PBCTによる非特異的な回復効果の可能性を除外した。さらに、生殖細胞で導入遺伝子の豊富な発現も示す(図3A〜3C)成体のTgOG2雄マウスから回収された末梢血由来の単核細胞を移植しても、化学療法条件下の雌レシピエントでGFP卵母細胞の産生は見られず(図3D〜3F)、化学的切除(chemo-ablation)の過程で破壊されなかった宿主の残留生殖細胞とGFPを発現するドナー細胞が融合した結果、雌性の末梢血の移植後に観察された卵母細胞が発育を開始したという可能性を除外した。
【0177】
Oct−4トランスジェニック雌ドナーから収集した末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞が、成体の野生型雌マウスへ移植された後に卵母細胞を生じる能力について、供給者らの推奨に従い、高温による抗原のアンマスキング後に、MVH(T.Noceの好意により提供された。Fujiwaraら,1994)、HDAC6(2162、Cell Signaling Technology,Beverly,MA)、NOBOX(A.Rajkovic、Suzumoriら,2002)、GDF−9(AF739、R&D Systems,Minneapolis,MN)又はGFP(sc−9996、Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)に特異的な抗体を用いて免疫組織化学解析により更に評価した。PBCTに関する研究のために、GFPを広範に発現するトランスジェニックマウスをドナーとして用い、この系統のマウスでは原始卵母細胞におけるGFP発現の基礎レベルが低いので(未発表の知見)、検出された抗原をチラミド(tyramide)増幅(PerkinElmer,Boston,MA)後に可視化した。免疫蛍光法に基づいた抗原検出を用いたそれらの実験で、核を可視化するヨウ化プロピジウム(Vectashield、Vector Laboratories,Burlingame,CA)又はTO−PRO−3ヨウ化物(Molecular Probes,Eugene,OR)と共に切片をマウントし、Zeiss LSM 5 Pascal共焦点顕微鏡を使用して画像を捕らえた。MVH(図4A〜4F)、HDAC6(図4G〜4L)、NOBOX(図4M〜4O)及びGDF9(図4P〜4R)を発現している成体のTgOG2雌マウスから収集した末梢血を移植した後に、GFP細胞を、生殖細胞(MVH、Noceら,2001)及び卵母細胞(HDAC6、NOBOX、Suzumoriら,2002。GDF9、McGrathら,1995)の状態を維持させて、宿主の卵胞内に挿入した。
【0178】
これらの発見は、末梢血で生殖細胞系のマーカーが発現していること(実施例2)とともに、成体の雌マウスが、新たな卵母細胞の産生をサポートする循環している生殖細胞系列幹細胞を所有していることを示唆する。
【実施例2】
【0179】
末梢血における雌性の生殖細胞系列幹細胞のマーカー遺伝子の発現
マウス及びヒトの末梢血でDazl及びStellaの発現をRT−PCRにより検出した(図5)。それぞれのサンプルから全RNAを抽出し、その1mgをオリゴdTプライマーを使用して逆転写した(Superscript II RT、Invitrogen,Carlsbad,CA)。次いで、それぞれの遺伝子に特異的なプライマーセット(追加の表S1)と共にTaqポリメラーゼ及び緩衝液D(Epicentre,Madison,WI)を使用して28〜40サイクルのPCRによる増幅を実施した。それぞれのサンプルについて、リボソーム遺伝子L7(マウスの研究)、βアクチン(マウスの研究)又はグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素遺伝子(GAPDH、ヒトの研究)によってコードされるRNAを増幅し、添加量のコントロール(ハウスキーピング遺伝子)として使用した。確認のために全てのPCR産物を単離し、サブクローニングして配列決定した。
【実施例3】
【0180】
臍帯血から派生した末梢血中の雌性の生殖細胞系列幹細胞
生殖細胞マーカーであるDazlを発現する細胞が存在するか否か決定するために、ヒト臍帯血を評価した。Dazlは、女性ヒト胎児の生殖細胞(Brekhmanら,2000 Mol Hum Reprod 6:465−468、Tsaiら,2000 Fertil Steril 73:627−630)及びヒト男性の生殖細胞(Brekhmanら,2000 Mol Hum Reprod 6:465−468)の両方で以前に検出されている。1つのヒト臍帯血サンプルを2つに複製して、それぞれのサンプルからRNAを抽出した。次いで、複製サンプルをそれぞれ逆転写した。同時に、偽の逆転写した陰性コントロールサンプルも調製した。その後サンプルを、Dazl及びハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して特異的なプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応増幅反応(RT−PCR)に付した。(図6に)示されるように、使用した臍帯血サンプルは、複製したサンプルの両方ともが、Dazlについて陽性であった。従って、ヒトの卵母細胞及び精子の産生に於いて、ヒト臍帯血は、生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の新たな供給源であると言える。
【実施例4】
【0181】
性周期における末梢血から由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞の調節
PBCTの手順の中で、生成されたドナー由来の卵母細胞の数に影響する一態様は、ドナーである雌の生殖周期のどの段階で移植用の血液を回収するかである。循環している生殖細胞の数が性周期によって変動するか否か試験するにあたり、発情期、発情後期、発情休止期 及び発情前期にある成体雌マウスから末梢血を収集し、Mvh発現についてリアルタイムPCR法で解析した。Mhvレベルの定量的な解析のために、Cepheid Smart Cycler II並びにMvh(FAM−labeled LUXTM Fluorogenic Custom Primers,Invitrogen、forward:cacctcagagggttttccaagcgaggg; reverse:cctcttctgaacgggcctga)及びβアクチン(LUXTM Primer Sets for Housekeeping Genes101M−01、Invitrogen)の増幅に特異的なプライマーを使用して、PCRを実施した。比較のために、発情期の骨髄におけるMhvレベルを基準点(1.0)として設定し、発現の割合をPfaffl(2001)の方法で計算した。
【0182】
この生殖細胞系マーカーの末梢血中のレベルは、性周期による影響を受けた(図7)。これらの結果と実施例1〜3で既に提供された結果は、成体雌マウスは、卵母細胞を発生する循環している生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞を保持しており、生殖周期のどの段階で移植用の血液を回収するかが、移植後に生着して入手できる生殖細胞系列幹細胞及びそれらの前駆細胞の数に影響することを示唆するものであった。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図1は、末梢血に卵母細胞を産生する生殖細胞が含まれていることを示す結果を表す。図1aは、成体のGFPトランスジェニックマウスにおいて、GFP陽性卵母細胞(白い破線内に囲まれた緑色、核はヨウ化プロピジウムで赤色に描出された)を含む原始性の初期の一次卵胞を示す(スケールバー=10mm)。図1bは、PBCT前の野生型の卵巣内に存在する初期の一次卵母細胞を示す、GFPシグナルの欠如(aと較べて)が示される。図1c〜eは、成体のGFPトランスジェニック雌マウスから採取された末梢血を用いてPBCTをした後24時間に、野生型マウスの卵巣においてGFP陽性卵母細胞(aと較べて)を含んでいる原始及び初期の一次卵胞の例を示す。図1fは、図1c−eに示されたものと同じ卵巣内に存在するGFP陰性卵母細胞を示す。
【図2】図2は、末梢血に卵母細胞を産生する生殖細胞が含まれていることを示す結果をさらに表す。成体のOct4−GFPトランスジェニックマウスの卵巣に存在するGFP陽性(茶色)卵母細胞を含む卵胞(A、複数の原始卵母細胞が強調されている)。スケールバー=10mm。Oct4−GFP(TgOG2)雌をドナーとして用いたPBCTをする前の野生型卵巣内に存在する卵母細胞(矢頭又は囲み)、GFPシグナルの欠如が示される(挿入図、原始卵母細胞)(C)。成体のTgOG2トランスジェニック雌マウスを末梢血細胞ドナーに用いて、PBCTを施した28〜30時間後に、野生型雌マウスの卵巣内に存在するGFP陽性卵母細胞を含む原始卵胞(図8も参照)(D〜F)。スケールバー=10mm。成体のTgOG2トランスジェニック雌マウスをドナーに用いてPBCTした後30時間に、卵巣内に存在するAtmを欠くGFP陽性原始卵母細胞(G〜H)。スケールバー=10mm。
【図3】図3は、雄の末梢血が、移植を受けた雌マウスで卵母細胞を生じないことを指示する結果を示す。成体のTgOG2雄マウスの精巣内の生殖細胞におけるGFP発現の免疫組織化学による検出(茶色、矢頭によって強調されている)、雄において導入遺伝子の正確で豊富な発現を確認した(A〜C)。成体のTgOG2雄マウスをドナーとして用いたPBCT後28〜30時間の、化学療法を受けた成体雌マウスの卵巣における代表的な免疫組織化学解析(D〜E)、原始卵母細胞(矢頭)においてGFPシグナルの欠如が示される。3匹のレシピエントから作成した卵巣の連続切片の全体をスクリーニングし解析した750以上の切片で、GFP陽性卵母細胞は観察されなかった。上記に示される精巣サンプルに加えて(A〜C)、成体のTgOG2雌から得た卵巣も、卵巣でGFPを検出するための陽性コントロールとして平行して試験された(データ未掲載、図2参照)。
【図4−1】図4−1は、生殖細胞系列及び卵母細胞のマーカーを発現するPBCTに由来する卵巣の卵胞細胞を示す。成体のOct4−GFP(TgOG2)トランスジェニック雌マウスから採取された末梢血で移植後28〜30時間に、レシピエントである雌マウスの卵巣内において存在する未成熟な卵胞の卵母細胞での、GFP(緑色)及びMVH(赤色)(A〜F)、GFP(緑色)及びHDAC6(赤色)(G〜L)、GFP(緑色)及びNOBOX(赤色、核の局在に注目)(M〜O)、又は、GFP(緑色)及びGDF9(赤色)(P〜R)の共発現を示す二重免疫蛍光解析(コントロールとして図2参照)。P及びRパネルで、*は赤血球の自己蛍光を表示する。全ての細胞核は、重ね合わされた(merged)パネルでヨウ化TO−PRO−3染色(青色)により強調されている。スケールバー=10mm。
【図4−2】図4−2は、生殖細胞系列及び卵母細胞のマーカーを発現するPBCTに由来する卵巣の卵胞細胞を示す。成体のOct4−GFP(TgOG2)トランスジェニック雌マウスから採取された末梢血で移植後28〜30時間に、レシピエントである雌マウスの卵巣内において存在する未成熟な卵胞の卵母細胞での、GFP(緑色)及びMVH(赤色)(A〜F)、GFP(緑色)及びHDAC6(赤色)(G〜L)、GFP(緑色)及びNOBOX(赤色、核の局在に注目)(M〜O)、又は、GFP(緑色)及びGDF9(赤色)(P〜R)の共発現を示す二重免疫蛍光解析(コントロールとして図2参照)。P及びRパネルで、*は赤血球の自己蛍光を表示する。全ての細胞核は、重ね合わされた(merged)パネルでヨウ化TO−PRO−3染色(青色)により強調されている。スケールバー=10mm。
【図5】図5は、マウス及びヒトの末梢血における生殖細胞系列マーカーの解析を示す。成体の雌マウスから単離された末梢血(PB)単核細胞のRT−PCR解析は、生殖細胞系列マーカーDazl及びStellaの発現を示す(L7はハウスキーピング遺伝子、Mockは偽の逆転写されたRNAサンプル)(A)。示されたデータは、7−10週齢の野生型雌マウス6匹の解析により得られた結果の代表例である。年齢23−33の3人の女性(ヒト)ドナーから回収された末梢血単核細胞(PB)におけるDAZL及びSTELLAの発現(B)。陰性コントロールとして、平行して解析された異なる2人の(ヒト)成人から得られた子宮(Ut)内膜には、生殖細胞系列マーカーは検出されなかった。GAPDHは内部添加コントロールとして増幅された。Mockは偽の逆転写されたRNAサンプル。
【図6】図6は、RT−PCR解析によって検出される、ヒト臍帯血におけるDazlの発現を表す。
【図7】図7は、示された性周期の段階における成体雌マウスの骨髄又は末梢血中のMvhレベルのリアルタイムPCR解析を表す。示されたデータは、添加されたサンプルについてβアクチンで標準化された後、周期中の他の段階と比較するために基準点として設定された発情期における平均値と、グループ当たりマウス3〜4匹の解析から得られた結果の組合せを意味する。発情期にあるマウスに対して、骨髄におけるMvhの発現は、線形増幅期に解析された3つのサンプルのうち1つにのみ検出された。
【0184】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
有糸分裂の能力があり、XX核型を有し、Vasa、Dazl及びStellaを発現する単離された末梢血細胞。
【請求項2】
細胞が、宿主に移植されて、少なくとも1週、1〜約2週、約2〜約3週、約3〜約4週又は約5週以上経過した後に、卵母細胞を産生することが可能である、請求項1に記載の単離された細胞。
【請求項3】
細胞が、宿主に移植された後、1週未満で卵母細胞を産生することが可能である、請求項1に記載の単離された細胞。
【請求項4】
細胞が、宿主に移植された後、約24〜約48時間未満で、卵母細胞を産生することが可能である、請求項1に記載の単離された細胞。
【請求項5】
単離された細胞が、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
単離された細胞が、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞の前駆細胞である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
細胞が、哺乳動物の細胞である、請求項1に記載の単離された細胞。
【請求項8】
細胞が、ヒトの細胞である、請求項1に記載の単離された細胞。
【請求項9】
細胞が、非胚性の細胞である、請求項1に記載の単離された細胞。
【請求項10】
a)請求項1に記載の単離された細胞を、細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤の存在下で培養することにより、卵母細胞を産生し、
b)インビトロで前記卵母細胞を受精させて接合体を形成し、そして
c)対象である雌の子宮に前記接合体を移植する、
工程を含む、対象である雌をインビトロで受精させる方法。
【請求項11】
請求項1に記載の単離された細胞を、細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤の存在下で培養し、それにより卵母細胞を産生することを含む、卵母細胞を産生する方法。
【請求項12】
薬剤が、形質転換増殖因子、骨形成タンパク質、Wntファミリータンパク質、kit−リガンド、白血病抑制因子、減数分裂活性化ステロール、Idタンパク質機能の調節因子及びSnail/Slug転写因子機能の調節因子からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有糸分裂の能力があり、XX核型を有し、Vasa、Dazl及びStellaを発現する精製された細胞集団、並びに薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項14】
細胞が、末梢血から精製される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
細胞が、哺乳動物の細胞である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
細胞が、ヒトの細胞である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
精製された細胞集団が、前記組成物中に、約50〜約55%、約55〜約60%、約65〜約70%、約70〜約75%、約75〜約80%、約80〜約85%、約85〜約90%、約90〜約95%又は約95〜約100%の細胞で存在する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の医薬組成物を、対象の組織に提供し、
前記細胞が前記組織へ生着して卵母細胞へと分化し、それにより前記対象に於いて卵母細胞を産生する、
ことを含む、対象に於いて卵母細胞を産生する方法。
【請求項19】
前記組織が、卵巣組織である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項13に記載の医薬組成物を対象に提供し、
前記細胞が前記対象の組織へ生着して卵胞内で卵母細胞へと分化し、それにより前記対象に於いて卵胞形成を誘導する、
ことを含む、対象に於いて卵胞形成を誘導する方法。
【請求項21】
前記組織が、卵巣組織である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項13に記載の医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、
前記細胞が卵巣に生着して卵母細胞へ分化し、それにより不妊を治療する、
ことを含む、不妊治療を必要とする対象の雌において不妊を治療する方法。
【請求項23】
請求項13に記載の医薬組成物の治療有効量を組織へ提供し、
前記細胞が前記組織へ生着し卵母細胞へと分化し、それにより対象に於いて傷害を受けた組織を修復する、
ことを含む、対象に於いて傷害を受けた卵巣組織を修復する方法。
【請求項24】
前記傷害が、化学療法剤又は放射線照射に曝露された結果である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記化学療法剤が、ブスルファン、シクロホスファミド、5−FU、ビンブラスチン、アクチノマイシンD、エトポシド、シスプラチン、メトトレキセート及びドキソルビシンからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記傷害が、癌、多嚢胞性卵巣疾患、遺伝性疾患、免疫不全又は代謝性疾患の結果である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
請求項13に記載の医薬組成物の治療有効量を対象へ投与し、
前記細胞が卵巣に生着して卵母細胞へと分化し、それにより対象に於いて卵巣機能を回復させる、
ことを含む、閉経期にある対象の雌において卵巣機能を回復させる方法。
【請求項28】
閉経期にある対象の雌が、閉経前又は閉経後のいずれかの段階にある、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象から得た末梢血サンプル中に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数を測定し、
サンプル中に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数が、健常な対象から得たサンプル中に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数より実質的に少ないことにより対象に於いて早発卵巣不全を検出又は診断する、
ことを含む、対象に於いて早発卵巣不全を検出又は診断する方法。
【請求項30】
サンプル中に存在する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の数が100未満である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
雌の生殖周期のうちで、末梢血中に雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞が最も高いレベルで示される時期にサンプルを得る、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
対象の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞に分化させる薬剤と接触させ、それにより対象に於いて卵母細胞を産生することを含む、対象に於いて卵母細胞を産生する方法。
【請求項33】
薬剤が、形質転換増殖因子、骨形成タンパク質、Wntファミリータンパク質、kit−リガンド、白血病抑制因子、減数分裂活性化ステロール、Idタンパク質機能の調節因子及びSnail/Slug転写因子機能の調節因子からなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項33に記載の薬剤、及び
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤であって、それにより卵母細胞を産生するものである薬剤の使用に関する説明書、
を含む、卵母細胞を産生するためのキット。
【請求項35】
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤と接触させ、それにより末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を増大(expand)させることを含む、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞をインビボ、エクスビボ又はインビトロで増大(expand)させる方法。
【請求項36】
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を、細胞の増殖又は生存を促進する薬剤で増加させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
薬剤が、インスリン様成長因子、形質転換増殖因子、骨形成タンパク質、Wntタンパク質、線維芽細胞成長因子、スフィンゴシン−1−リン酸、レチノイン酸、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3の阻害剤、Bax阻害剤、カスパーゼ阻害剤、一酸化窒素産生の阻害剤及びヒストン脱アセチル化酵素活性の阻害剤からなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項37に記載の薬剤、及び
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤であって、それにより末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を増大(expand)させるものである薬剤の使用に関する説明書、
を含む、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を増大(expand)させるためのキット。
【請求項39】
対象の末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を増加させる薬剤と接触させ、それにより対象に於いて卵母細胞を産生することを含む、対象に於いて卵母細胞を産生する方法。
【請求項40】
薬剤が、細胞の生存又は増殖を増加させ、それにより細胞の量を増加させる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
細胞の生存又は増殖を増加させる薬剤が、インスリン様成長因子、形質転換増殖因子、骨形成タンパク質、Wntタンパク質、線維芽細胞成長因子、スフィンゴシン−1−リン酸、レチノイン酸、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3の阻害剤、Bax阻害剤、カスパーゼ阻害剤、一酸化窒素産生の阻害剤及びヒストン脱アセチル化酵素活性の阻害剤からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の治療有効量を対象に投与して、前記細胞を組織に生着させて卵母細胞へと分化させ、それにより対象の受胎能力を回復させることを含む、受胎能力の回復を望む対象の雌に於いて受胎能力を回復させる方法。
【請求項43】
前記組織が、卵巣組織である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
対象に、
生殖機能の傷害を保護する薬剤を、化学療法、放射線治療若しくはその両方の治療を施す前に又は同時に提供し、そして
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を提供して、前記細胞を組織に生着させて卵母細胞へと分化させ、それにより対象の受胎能力を保護する、
こと含む、化学療法、放射線治療若しくはその両方の治療を受けているか又は受けることが予定されている対象の雌に於いて受胎能力を保護する方法。
【請求項45】
薬剤が、S1P、Baxアンタゴニスト又はSDF−1活性を増加させる何れかの薬剤からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
請求項45に記載の薬剤、及び
末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を生殖機能の傷害から保護する薬剤であって、対象の雌に於いて受胎能力を保護するものである薬剤の使用に関する説明書、
を含む、化学療法、放射線治療若しくはその両方の治療を受けているか又は受けることが予定されている対象の雌において受胎能力を保護するためのキット。
【請求項47】
a)末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を卵母細胞へ分化させる薬剤と接触させることにより、卵母細胞を産生し、
b)インビトロで卵母細胞を受精させて接合体を形成し、そして
c)対象である雌の子宮に前記接合体を移植する、
工程を含む、対象である雌をインビトロで受精させる方法。
【請求項48】
有糸分裂の能力があり、XY核型を有し、Vasa及びDazlを発現する、単離された末梢血細胞。
【請求項49】
前記細胞が、哺乳動物の細胞である、請求項48に記載の単離された細胞。
【請求項50】
前記細胞が、ヒトの細胞である、請求項48に記載の単離された細胞。
【請求項51】
前記細胞が、非胚性の細胞である、請求項48に記載の単離された細胞。
【請求項52】
前記末梢血が、臍帯血である、請求項1又は48に記載の単離された細胞。
【請求項53】
末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞又はその前駆細胞を、雄である対象の精巣へ提供して、前記細胞を精上皮に生着させて精細胞へと分化させ、それにより精子形成を回復又は増強させる、精子形成を回復又は増強させる方法。
【請求項54】
末梢血に由来する雄性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の治療有効量を対象に投与して、前記細胞を精上皮に生着させて精細胞へと分化させ、それにより受精率を回復させる、化学療法、放射線治療又はその両方を受けたことがあり、受精率の回復を望む対象である雄に於いて受精率を回復させる方法。
【請求項55】
対象に於いて、梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を細胞の増殖を減少させる薬剤と接触させることにより、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させることを含む、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を対象に於いて減少させる方法。
【請求項56】
薬剤が、形質転換増殖因子−β、骨形成タンパク質のアンタゴニスト、DAN及びCerberus関連タンパク質並びにGremlinからなる群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
対象に於いて、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、細胞の生存を阻害する薬剤と接触させることにより、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させることを含む、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を対象に於いて減少させる方法。
【請求項58】
前記生存を阻害する薬剤が、アポトーシス促進性の腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバー、 生存促進性Bcl−2ファミリーメンバーの機能のアンタゴニスト及びセラミドからなる群より選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記アポトーシス促進性の腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーが、腫瘍壊死因子−α、Fas−リガンド及びTRAILからなる群より選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記生存促進性のBcl−2ファミリーメンバーが、Bcl−2、Bcl−XL、Bcl−W、Mcl−1及びA1からなる群より選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
請求項58に記載の薬剤、及び
末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の細胞の生存を阻害する薬剤であって、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させるものである薬剤の使用に関する説明書、
を含む、末梢血に由来する雌性の生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させるためのキット。
【請求項62】
対象に於いて、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、細胞死を促進させる薬剤と接触させることにより、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させることを含む、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を対象に於いて減少させる方法。
【請求項63】
前記細胞死を促進させる薬剤が、アポトーシス促進性の腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバー、 アポトーシス促進性Bcl−2ファミリーメンバーの機能のアンタゴニスト及びセラミドからなる群より選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記アポトーシス促進性の腫瘍壊死因子スーパーファミリーのメンバーが、TNFα、Fas−リガンド及びTRAILからなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記アポトーシス促進性Bcl−2ファミリーメンバーが、BAX、BAK、BID、HRK、BOD、BIM、NOXA、PUMA、BOK及びBCL−XSからなる群より選択される、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
請求項63に記載の薬剤、及び
末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の細胞死を促進させる薬剤であって、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させるものである薬剤の使用に関する説明書、
を含む、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させるためのキット。
【請求項67】
対象が、前癌性の又は癌性の症状を呈している、請求項55、57又は62に記載の方法。
【請求項68】
前記癌性の症状が、生殖細胞腫瘍、卵巣癌、精巣癌又は奇形腫である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞を、末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させる薬剤と接触させて、対象に於いて避妊を提供することを含む、対象に於いて避妊を提供する方法。
【請求項70】
請求項69に記載の薬剤、及び
末梢血に由来する生殖細胞系列幹細胞又はそれらの前駆細胞の量を減少させる薬剤であって、対象に於いて避妊を提供するものである薬剤の使用に関する説明書、
を含む、対象に於いて避妊を提供するためのキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−512989(P2008−512989A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527370(P2007−527370)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/017233
【国際公開番号】WO2005/113752
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【Fターム(参考)】