説明

末梢血白血球における、Fc受容体を介した腫瘍壊死因子スーパーファミリーmRNA発現

腫瘍壊死因子スーパーファミリーである(「TNFSF」)−2、TNFSF−8、またはTNFSF−15の発現の変化に関与する、関節リウマチの治療に対する患者の反応性を予測するための方法を開示する。このような治療法の有効性をモニターするための方法もまた開示される。さらに、関節リウマチの治療において使用するための化合物のスクリーニング方法が開示される。関節リウマチ患者において、長期にわたり疾病の状態をモニターするための方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は2007年11月14日に提出した米国仮出願第61/002,967号の非仮出願であり、かつ2008年10月7日に提出した米国特許出願第12/296,423号の一部継続出願である。該米国特許出願第12/296,423号は、2007年4月5日に提出した国際特許出願PCT/US2007/008559号の国内段階であり、該国際特許出願PCT/US2007/008559号は2006年4月7日に提出した米国仮出願第60/790,511号に基づく優先権を主張する
【0002】
<技術分野>
本開示は、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバーまたはサイトカインに関係する関節リウマチの治療に対する患者の反応性を予測するための方法、このような治療法の有効性をモニターするための方法、および関節リウマチの治療において使用するための化合物のスクリーニング方法に関する。本開示はまた、関節リウマチ患者において疾患の状態をモニターするための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
自己免疫疾患は、ホスト細胞に反応する抗体または自己反応性の免疫エフェクターT細胞のいずれかの産生により特徴付けられる。自己抗体はしばしば、重症筋無力症における抗アセチルコリン受容体抗体および全身性エリテマトーデスにおける抗DNA抗体のような、自己免疫疾患の特定の型において同定される。しかしながら、このような自己抗体は自己免疫疾患の多くの型において見られることはない。さらに、自己抗体はしばしば健常人の間でも検出されるが、このような抗体は自己免疫疾患を引き起こさない。従って自己免疫疾患の病因には、自己抗体に加え、明らかにさらなる未同定の機構が関与している。
【0004】
自己抗体が標的ホスト細胞に一旦結合すると、ホスト細胞の死を導くC5−9膜攻撃複合体を標的細胞膜上に形成するため、補体カスケードが活性化されると考えられる(Esser, Toxicology 87, 229 (1994)を参照)。C3a、C4a、もしくはC5aのような副生成物としての走化性因子は、病変部へさらなる白血球を動員する(Hugli, Crit. Rev. Immunol. 1, 321 (1981)を参照)。病変部へ補充された白血球または天然に存在する白血球は、Fc受容体(「FcR」)を通して抗体結合細胞(免疫複合体)を認識する。免疫複合体により一旦FcRが架橋されると、白血球がTNF−αを放出し(Debets et al., J Immunol. 141, 1197 (1988)を参照)、これがホスト細胞表面の特異的受容体に結合してアポトーシスまたは細胞損傷を引き起こす(Micheau et al., Cell 114, 181 (2003)を参照)。活性化されたFcRはまた、走化性サイトカインの放出を開始して、病変部へ異なる白血球サブセットを動員する(Chantry et al., Eur. J. Immunol. 19, 189 (1989)を参照)。これはFcR関連自己免疫疾患の分子機構についての一般的な仮説である。
【0005】
関節リウマチ(「RA」)は、消化管の炎症を伴う免疫疾患である。臨床的に十分特徴付けられているにも関わらず、その病因はよく分かっていない。RAは通常、対称的な分布の末梢関節に関与する持続的炎症性の滑膜炎により特徴付けられる。これは軟骨破壊、骨侵食、および関節の完全性における変化を導き得る。RAの原因は未だ不明であるが、滑膜中にCD4+T細胞が優勢であること、RA患者の血液および血清中における可溶性
IL−2受容体(活性化T細胞から産生される)の増加、およびT細胞の除去による疾病の顕著な寛解から、この疾病においてCD4+T細胞が重要な役割を果たしていることが強く推測される。RAは関節内におけるTNF−α(TNFSF−2としても知られる)の蓄積に付随する。通常TNF−αは、冒された領域における炎症の原因となる感染およびその他の侵入者と戦うための白血球の移動に役立つ。健常体は過剰なTNF−αを除去できるが、関節リウマチ患者の体はそれができない。結果として、冒された領域へさらに多くの白血球が移動する。特にリウマチ性の関節におけるこのTNF−αの蓄積は、炎症、疼痛、および組織損傷の原因となる。
【0006】
IgG Fc受容体(FcγR)は、様々な炎症反応を誘発する免疫複合体(IC)(エピトープと、このエピトープに対して作られた抗体との組み合わせ)と反応することが知られている。特定の抗原は完全に特徴付けられていないが、ICはRA患者の関節病変部において頻繁に確認される。ICはまた、炎症を確立する補体カスケード、同様に様々な白血球のFcγRへの結合による抗体依存性細胞傷害(ADCC)も活性化することが知られている。これまでに、局所浸潤性の白血球が滑液から採取され、研究されてきた。しかしながら、これらの採取物は新規の細胞および消耗した細胞の両方を含むため、結果の解釈が困難であった。末梢血白血球はそれらが疾病部位に遊走する際、RAの病因に主要な役割を果たすことから、このような機能をin vitroで模倣する多数の実験が行われてきた。典型的には、単核白血球が分離され、培養液に懸濁され、様々な刺激物質またはエフェクター細胞と共にCO2インキュベーター内でインキュベートされる。しかしながらこのようなアッセイが行われる条件は、異なる細胞集団との連絡、赤血球からの酸素供給、同様に血漿タンパク質およびその他の成分との複雑な相互作用が欠如していることから、生理的条件には近くない。長いインキュベーション期間の間には、第二の反応が起こり得る。さらに、労働集約型の技術および実験ごとの実質的な変動のため、これらのin vitro試験の診断検査における応用は少ない。
【0007】
RAの治療は鎮痛、炎症の縮小、関節構造の保護、機能の維持、および全身性病変の制御に焦点を合わせる。選択肢は、アスピリンおよびその他の非ステロイド性抗炎症剤;メトトレキサート、金化合物、D−ペニシラミン、抗マラリア剤、およびスルファサラジンのような抗リウマチ剤;グルココルチコイド;インフリキシマブおよびエタネルセプトのようなTNF−α中和薬;ならびにアザチオプリン、レフルノミド、シクロスポリン、およびシクロホスファミドのような免疫抑制剤を含む。治療的選択肢の選択はRA患者における疾病状態の評価に依存するため、疾病状態を評価し、かつ疾病の進行をモニターする新しい方法の開発が望ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】末梢全血中のヒト白血球における、様々なTNFSF mRNAの、FcγRを介した遺伝子発現の定量結果を示す。
【図1B】末梢全血中のヒト白血球における、様々なTNFSF mRNAの、FcγRを介した遺伝子発現の定量結果を示す。
【図1C】末梢全血中のヒト白血球における、様々なTNFSF mRNAの、FcγRを介した遺伝子発現の定量結果を示す。
【図2A】関節リウマチ患者およびコントロール患者の全血における、熱凝集IgG(HAG)刺激により誘導された様々なTNFSF mRNAレベルの増加倍率を、前記患者由来の無刺激全血に比較して示す。
【図2B】関節リウマチ患者およびコントロール患者の全血における、熱凝集IgG(HAG)刺激により誘導された様々なTNFSF mRNAレベルの増加倍率を、前記患者由来の無刺激全血に比較して示す。
【図2C】関節リウマチ患者およびコントロール患者の全血における、熱凝集IgG(HAG)刺激により誘導された様々なTNFSF mRNAレベルの増加倍率を、前記患者由来の無刺激全血に比較して示す。
【図3A】関節リウマチ患者およびコントロール患者の全血における、熱凝集IgG(HAG)刺激により誘導された様々なTNFSF mRNAレベルの比較上の増加倍率を、前記患者由来の無刺激全血に比較して示す。
【図3B】関節リウマチ患者およびコントロール患者の全血における、熱凝集IgG(HAG)刺激により誘導された様々なTNFSF mRNAレベルの比較上の増加倍率を、前記患者由来の無刺激全血に比較して示す。
【図3C】関節リウマチ患者およびコントロール患者の全血における、熱凝集IgG(HAG)刺激により誘導された様々なTNFSF mRNAレベルの比較上の増加倍率を、前記患者由来の無刺激全血に比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施形態の詳細な説明
本開示は、特定の治療法に対してRA患者が適した候補であるか否かの評価における、特定の細胞刺激に応答した白血球内の差次的mRNA転写パターンの使用に関する。本開示はまた、RA患者に施した治療法が有効であるか否かの評価における、このような差次的転写パターンの使用にも関する。本開示はまた、RA患者の治療に使用するための候補となる薬剤のスクリーニングにおける、このような差次的転写パターンの使用にも関する。本開示はまた、患者のRAの状態の長期にわたる評価および疾病の進行のモニターにおける、このような差次的転写パターンの使用にも関する。
【0010】
上記のようにRAの病理学は、RA患者の免疫細胞のFcγRとICの間の相互作用に関連する可能性がある。この可能性をさらに評価するため、熱凝集IgG(HAG、ICの標準的モデル)を用い、健常成人コントロールおよびRA患者両方におけるヒト全血中のFcγRを刺激した。使用できるその他の刺激剤は、ホルボールミリステートアセテート(PMA)、フィトヘマグルチニン(PHA)、コムギ胚芽凝集素(WGA)、コンカナバリン−A(ConA)、リポ多糖(LPS)、ジャカリン、フコイダン、熱凝集IgE、熱凝集IgA、および熱凝集IgMを含む。
【0011】
HAGを直接ヘパリン化全血中に加え、腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)の様々なメンバーのmRNAレベルにおける変化を評価した。FcγRI、IIa、IIb、およびIII(GeneBank UniGeneデータベース)のような複数のFcγRが存在するが、HAGは全てのFcγRサブタイプと反応できる普遍的な刺激として作用する。HAGの刺激に起因する、TNFSF mRNAメンバー(例えばGeneBank UniGeneデータベースを参照)のmRNAレベルにおける変化を定量化した。
【0012】
前述のように、FcγRを介する機能はIgGのFc部の4種のサブクラス(IgG1〜4)、FcγRの複数のクラス(FcγRIa−c、FcγRIIa−c、およびFcγRIIIa−b)、FcγRを有する白血球の異なるサブセット、および様々な下流の細胞内シグナルカスケードから成る。さらに、これらのタンパク質は複数の転写物変異体
および様々な遺伝的多型性を有する。疾病状態におけるFcγRの機能の変化は、どのようなレベルでも起こり得る。しかしながら、各個体において各因子を特徴付けることは現実的ではないであろう。本開示は、個々の細胞分析、様々な遺伝子の遺伝子型同定、および細胞内シグナルカスケードの変動のような、様々な下流アッセイの利益を享受し得る個人を同定するためのスクリーニング手段としての全血(ex vivo状態での付随物を含む)の使用を意図する。ICはTNFSF−2(=TNF−α)およびTNFSF−15(=TL1A)mRNAを誘導することが知られているため、全ての腫瘍壊死因子スーパーファミリー(TNFSF)メンバーはこの方法によりスクリーニングされた。
【0013】
用いられた方法は以下の通りである。様々なTNFSF遺伝子のヌクレオチド配列をGenBankのUniGeneデータベースから検索した。各遺伝子に対するPCRプライマーを、Primer Express(Applied Biosystem、フォスターシティー、カリフォルニア州)およびHYBsimulator(RNAture、アーバイン、カリフォルニア州)(Mitsuhashi et al., Nature 367, 759 (1994); Hyndman et al., BioTechniques 20, 1090 (1996)を参照)により設計した。配列の概要を以下の表1に示す。オリゴヌクレオチドはIDT(コーラルヴィル、アイオワ州)つくばオリゴサービス(筑波、日本)、ニッポンイージーティー(富山、日本)および北海道システム・サイエンス(札幌、日本)によって合成された。
表1.プライマー配列
【0014】
【表1】

【0015】
熱凝集IgG(HAG)は、PBS中の20mg/mLヒトIgG(Sigma、セントルイス)を63℃において15分間加熱することにより調製した(Ostreiko et al., Immunol. Lett. 15, 311 (1987)を参照)。8ウェルストリップマイクロチューブ内に1.4μlのHAGまたはコントロール(リン酸緩衝食塩水)を加え、使用まで−20℃で保存した。70μlの新鮮なヘパリン化全血(ICによる刺激までに4℃で保持されていた)を各ウェルへ3通りに加え、蓋を閉めて37℃で4時間インキュベートした。血液サンプルは同日、採血によって処理した。処理後、各血液サンプルを使用まで−80℃で凍結保存した。
【0016】
mRNAおよびcDNAは、Mitsuhashi et al., Clin. Chem. 52, 634 (2006) に説明される以下の方法によって全血から調製した。参照としてここに取り込まれる米国特許出願第10/796,298号に開示される方法もまた用いられてよい。簡単に述べると、白血球を96−ウェルフィルタープレート内へ捕獲するため、50μlの全血をその中へ移した。これらのフィルタープレート
を採取プレート上に配置し、150μlの1.5mM Tris、pH7.4を加えた。4℃における120xg、1分間の遠心に続き、50μlの血液サンプルを各ウェルに加えて直ちに4℃で120xg、2分間遠心し、続いて各ウェルを300μlのPBSで4℃、2000xg、5分間の遠心により1回洗浄した。その後、1% 2−メルカプトエタノール(Bio Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州、米国)、0.5mg/ml プロテナーゼK(Pierce、ロックフォード、イリノイ州、米国)、0.1mg/ml サケ精子(5 Prime Eppendorf/Brinkmann、ウェストベリー、ニューヨーク州、米国)、0.1mg/ml E.coli tRNA(Sigma)、各10mMの特異的逆方向プライマーの混合物、および標準的なRNA34オリゴヌクレオチドを追加した溶解緩衝液の原液60μlをフィルタープレートへ加え、続いて37℃で10分間インキュベートした。その後フィルタープレートをオリゴ(dT)固定化マイクロプレート(GenePlate、RNAture)(Mitsuhashi et al., Nature 357, 519 (1992); Hamaguchi et al., Clin. Chem. 44, 2256 (1998)(両方とも参照としてここに取り込まれる)を参照)上に配置し、4℃、2000xgにおいて5分間遠心した。4℃における一晩の保存後、マイクロプレートを100μlの単純な溶解緩衝液で3回洗浄し、続いて150μlの洗浄緩衝液(0.5M NaCl、10mM Tris、pH7.4、1mM EDTA)で4℃において3回洗浄した。cDNAは、1xRT−緩衝液、各1.25mMのdNTP、4単位のrRNasin、および80単位のMMLV逆転写酵素(Promega)(プライマーを含まない)を含む緩衝液を加え、37℃で2時間インキュベートすることにより、各ウェル30μlの溶液中で直接合成した。溶液中には特定のプライマーにより刺激されたcDNAが存在し、oligo(dT)により刺激されたcDNAはマイクロプレート内に固定されたままであった(Hugli, Crit. Rev. Immunol. 1, 321 (1981)を参照)。SYBRグリーンPCRのため(Morrison et al., Biotechniques 24, 954 (1998)(参照としてここに取り込まれる)を参照)、cDNAを水中で4倍希釈し、384ウェルPCRプレートに4μlのcDNA溶液を直接移し、5μlのiTaq SYBRマスターミックス(Bio Rad、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)および1μlのオリゴヌクレオチド混合物(各15μMの順方向および逆方向プライマー)を加え、PCRをPRISM 7900HT(ABI)内で、95℃10分間の1サイクル、続く95℃30秒間および60℃1分間の45サイクルにより行った。TaqMan PCRもまた用いられてよく、この場合384ウェルPCRプレートにcDNA溶液を直接移し、5μlのTaqManユニバーサルマスターミックス(ABI)および1μlのオリゴヌクレオチド混合物(各15μMの順方向および逆方向プライマー、および3〜6μMのTaqManプローブ)を加え、PCRをPRISM 7900HT(ABI)内で、95℃10分間の1サイクル、続く95℃30秒間、55℃30秒間、および60〜65℃1分間の45サイクルにより行う。各遺伝子は個別に増幅された。
【0017】
SYBRグリーンPCRの条件下でプライマーダイマーが産生されなかったことを確認するため、1xRT緩衝液を陰性コントロールとして使用した。さらに、PCRシグナルが単一のPCR産物由来であることを確認するため、それぞれの場合において融解曲線を分析した。分析ソフトウェア(SDS、ABI)により、一定量のPCR産物(蛍光)の産生のために必要とされたPCRサイクル数であるサイクル閾値(Ct)を決定した。ΔCtを算出するため、HAGにより処理した3通りのサンプルのCt値をPBSコントロールのCt値の平均によってそれぞれ通分し、未刺激サンプルに比較した刺激サンプルの増加倍率(以下、単に「増加倍率」とする)を、各PCRサイクルの効率が100%であったと仮定することにより、2^(−ΔCt)として算出した。
【0018】
図1A−1Cは、末梢血白血球における、FcγRを介したmRNA発現を示す。各デ
ータ点は、3通りの一定分量の全血からの平均+標準偏差(図1A)、または平均(図1B、1C)を示す。
【0019】
図1Aは発現動態の分析結果を示す。ヘパリン化全血各70μlの一定分量の3通りをPBS、または200μg/mlの熱凝集IgG(HAG)と混合し、37℃において0〜8時間インキュベートした。その後TNFSF−2(=TNF−α、●)、TNFSF−8(▲)、またはTNFSF−15(=TL1A、◆)、およびβ−アクチン(△)のmRNAを定量化し、増加倍率(y軸)を上記のように算出した。図1Aに示すようにTNFSF−2の誘導は非常に迅速であり、ピークが30分前後で、4時間前後の大きな持続性のピークがそれに続く。TNFSF−2とは対照的に、TNFSF−8(図1A、▲)およびTNFSF−15(=TL1A)(図1A、◆)はゆっくりと増加し、ピークは4時間前後であった。HAGとの8時間のインキュベーションの間にハウスキーピング遺伝子(β−アクチン)は誘導されなかった(図1A、△)。従って、TNFSF−2、−8および−15のmRNAを分析するためのHAGとのインキュベーションは4時間に固定した。薬物誘導性の変化を同定するためのタンパク質検出が少なくとも一晩のインキュベーションを必要とすることから、この短いインキュベーション(4時間)は、mRNAに基づくアッセイの利点の一つである。
【0020】
図1Bは容量反応を示す。ヘパリン化全血を0〜800μg/mlのHAGと共に37℃で4時間インキュベートし、その後様々なmRNAを定量化した(各シンボルは図1Aのように定義される)。HAGにより誘導されたTNFSF−2、TNFSF−8およびTNFSF−15は、10μg/mlのHAGから用量依存性であり、100〜200μg/mlにおいて飽和するが、β−アクチンは変化しないことが確認された。
【0021】
図1Cは、同個体から一週間以内に2回採血し、HAGにより誘導されたTNFSF−2(●)、TNFSF−8(▲)、TNFSF−15(◆)mRNAおよび外部コントロールmRNA(合成RNA34)(○)を定量化して得られた結果を示す。図1Cに示すように誘導には再現性があり、8健常人の間での1日目と2日目の間のr2値は0.927(n=32、p<0.001)であった(図1C)。溶解緩衝液中に加えた外部合成RNAの増加倍率(RNA34、図1C、○)は常に1.5未満であり、これは各実験においてアッセイが適切に行われたことを示唆する。
【0022】
mRNA分析に使用する実際の血液量は50μlであったが、このアッセイでは一反応あたり70μlの全血を使用した(20μlは8ウェルストリップからフィルタープレートへ移動する間の予備である)。従って各試験は420μl(70μl/ウェルx2(HAGおよびPBS)x3(3通り))程度の少ない全血を消費した。50μlの全血/ウェルから、RT−PCR(30μlのcDNAに90μlの水を加える(1:4希釈)、4μlのcDNA/PCR)により30の異なるmRNAを定量化した。1:4希釈のcDNAからであっても、様々なTNFSFmRNAの測定は達成された。個体間でのヘマトクリットの変動のために血清量が予測できない血清に基づく試験とは異なり、全血は操作が容易である。
【0023】
表2は、末梢全血中のヒト白血球におけるFcRを介したTNFSF mRNAの遺伝子発現の分析結果を示す。ここに示した結果は、HAG刺激への応答によって2よりも大きい増加倍率を示す被験者として定義される、「応答者」被験者のパーセンテージとして表現される。健常被験者とRA患者の間で陽性反応の頻度をそれぞれのTNFSF mRNAについて比較するため、χ2検定を用いた。2つの集団(陽性および陰性反応)が存在したことから、t−検定は増加倍率が2を超える被験者に対してのみ適用した。
【0024】
【表2】

【0025】
表2に示すように、HAGは全ての健常ドナー、および61人中59人のRA患者にTNFSF−15(=TL1A)mRNAを誘導した(増加倍率>2)。これらの結果は最近出版された報告により、ex vivo状態で再現された(Prehn et al., The T cell costimulator TL1A is induced by FcgammaR signaling in human monocytes and dendritic cells, J. Immunol. 178,
4033 (2007); Cassatella et al., Soluble
TNF−like cytokine (TL1A) production by immune complexes stimulated monocytes in
rheumatoid arthritis, J. Immunol. 178, 7325 (2007)(両方が参照としてここに取り込まれる)を参照)。HAGはまた、TNFSF−2(TNF−α)mRNAを誘導することも知られている(Satoh
et al., Endogenous production of TNF in
mice with immune complex as a primer, J. Biol. Response Mod. 5, 140 (1986); Chouchakova et al., Fc gamma RIII−mediated production of TNF−alpha induces immune complex alveolitis independently of CXC chemokine generation, J. Immunol. 166, 5193 (2001)(両方が参照としてここに取り込まれる)を参照)。しかしながら表2に示すように、TNFSF−2は全ての個体には誘導されないことが見出され、半分を超える被験者が反応しなかった。さらに、HAG刺激は1/3を超えるコントロールおよびRA患者にTNFSF−8(=CD153、CD30リガンド)およびTNFSF−14(=LIGHT)mRNAを誘導し、かつ数例にTNFSF−1(=リンホトキシンα、LTA)、TNFSF−3(=リンホトキシンβ、LTB)、TNFSF−4(=CD252、CD134リガンド)、TNFSF−6(=Fasリガンド)、TNFSF−7(=CD70、CD27リガンド)およびTNFSF−9を誘導したが、TNFSF−5(=CD154、CD40リガンド)、TNFSF−12(=TWEAK)、TNFSF−13(=CD256)およびTNFSF−13B(=CD257)は全く誘導されないか、わずかに誘導された。図1Aおよび1Bに示すように、飽和は200μg/mlのHAGとの4時間のインキュベーションにおいて達成されたことから、この個体ごとの変動
、あるいは刺激開始から4時間の応答者および非応答者の存在には意味がある。このex
vivoアッセイは様々な下流のアッセイのスクリーニングプラットフォームとして有用であると期待される。
【0026】
リウマチ因子(RF)(2型(ポリクローナルIgGに対するモノクローナルIgM)または3型(ポリクローナルIgGに対するポリクローナルIgM)クリオグロブリンのいずれか)に対する試験は、RAが疑われる症例における標準的な診断法である。HAG刺激によるTNFSF−2、TNFSF−8、およびTNFSF−15誘導の結果をRFレベルにより分類して相互関係を模索した。結果を図2A〜2Cに示す。HAGにより誘導されたTNFSF−2(A)、TNFSF−8(B)、およびTNFSF−15(C)mRNAを、40人の健常成人志願者(コントロール)、およびそれぞれRF<30、30〜100、および>100IU/mlを有する61人のRA患者から定量化した。2つの集団(増加倍率>2の応答者、および非応答者)が観察されたことから、t−検定は応答者集団にのみ適用した。χ2検定による分析では、これら4群の間の有意な相違は明らかではなかった。
【0027】
図2に示すように、RFの量によるRA患者の分類はTNFSF誘導における著しい相違を明らかにした。図2Cに示すように、RF>100IU/mlのRA患者におけるTNFSF−15の増加倍率は、コントロール(p=0.01)およびRF<30IU/mlのRA患者(p=0.04)各々のそれよりも有意に少なかった。これはおそらくRFがICの天然型であり、ex vivoでHAGを添加したときにも全血中に存在したという事実に起因する。RA患者の大部分はHAG刺激への反応を維持した。このことは、長期間のRFへの曝露にもかかわらず、RA患者の末梢血中の循環白血球はなおICを活性化できることを示す。高RFを有するRA患者に見られる減少したTNFSF−15の応答は、末梢血白血球のTNFSF−15受容体機能が何故か減少していることを示し得る。
【0028】
RFによるFcγRの活性化を考慮し、TNFSF−15 mRNAの基線レベルがRFへの持続的曝露によって上昇するか否かについての評価を行った。結果は、表2に示すようにTNFSF−5、−13、および−13BのmRNAはHAGにより誘導されなかったため、これら3種のTNFSFに比較したTNFSF−15の相対的発現を算出することにより、Ctに関して測定した。しかしながら、RA患者におけるTNFSF−15の基線レベルは、3通りの算出全てにおいて、コントロール被験者との有意な相違は見られなかった。
【0029】
図3は、図2に示す結果を、TNFSF−2および−8(A)、TNFSF−2および−15(B)、ならびにTNFSF−8および−15(C)をコントロール(○)およびRA(●)それぞれと比較することにより、x−yグラフに変換して得られた結果を示す。図3Cに示すように、TNFSF−15の増加倍率はRA(●)および健常被験者(○)の両方においてTNFSF−8のそれとよく相関しており、r2値はそれぞれ0.48(n=61、p<0.001)および0.27(n=38、p<0.001)であった。しかしながらTNFSF−8の増加倍率は低めで、かつ陽性応答者の集団はTNFSF−15のそれに比べて小さかったことから、RA患者をRFの量により分類した場合であっても、コントロールとRAの間にTNFSF−8についての著しい相違は見られなかった(図2B)。しかしながら図2Aに示すように、TNFSF−15とは対照的に、RF<30および<100のRA患者におけるTNFSF−2の増加倍率は健常被験者のそれよりも有意に(p<0.03、0.05)高かった。TNFSF−2の増加倍率はTNFSF−8(図3A)(コントロールおよびRAそれぞれ、r2=0.03および0.02)およびTNFSF−15(図3B)(コントロールおよびRAそれぞれ、r2=0.11および0.003)のそれとは相関しておらず、TNFSF−2およびTNFSF−8/
−15は異なる経路由来であることが示唆される。このことは、TNFSF−2およびTNFSF−8/−15の動態が異なるという図1Aに示される証拠により、さらに確認された。
【0030】
TNFSF−2(=TNF−α)は、RAの病因に関与する炎症性サイトカインの一つであり、RAの滑液中に存在する(Saxne et al., Detection of tumor necrosis factor alpha but not tumor necrosis factor beta in rheumatoid arthritis synovial fluid and serum, Arthritis Rheum. 31, 1041 (1988)(参照としてここに取り込まれる)を参照)。in situハイブリダイゼーションにより、TNF−α転写物が滑膜組織マクロファージに存在することが示されてきた(MacNaul et al., Analysis of IL−1 and TNF−alpha gene expression in human rheumatoid synoviocytes and normal monocytes by in situ hybridization, J. Immunol. 145, 4154 (1990)(参照としてここに取り込まれる)を参照)。さらに、抗−TNF−αモノクローナル抗体(インフリキシマブ、Remicade)およびTNF−αの作用を遮断する可溶性TNF受容体(エタネルセプト、Enbrel)が、RA患者において臨床的有効性を示した(Weaver, The impact of new biologicals in the treatment of rheumatoid arthritis, Rheumatology (Oxford) 43 Suppl. 3:iii17−iii23 (2004)(参照としてここに取り込まれる)を参照)。従って、我々のex vivoアッセイにおいてRA患者に見られた、HAGにより誘導されるTNF−α誘導の上昇は極めて妥当である。無論mRNAの誘導は、選択的スプライシング、翻訳後修飾、および阻害性のカスケードにより、タンパク質合成ならびにそれに続く生物学的および臨床的結果に常には対応しない。しかしながらこのex vivoシミュレーションは、受容体および付随するタンパク質の遺伝的多型性のような、様々な下流の分子アッセイの開始点のスクリーニング手段として有効となるであろう。
【0031】
また、HAGにより誘導されたTNFSF−2 mRNAの、応答者(増加倍率>=2)および非応答者(増加倍率<2)の間での患者の臨床的特徴も比較した。結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
表3に示すように、RF<30IU/ml群の応答者集団は、非応答者の集団よりも有意に若かった(p=0.04)。年齢、性別、罹病期間、CRP、腫脹関節の数、および圧痛のある関節の数のようなその他の臨床パラメータについては、全てのRF群において応答者と非応答者の間に有意な違いはなかった(表3)。興味深いことに全ての患者を組み合わせた場合、抗TNF−αモノクローナル抗体または可溶性TNF受容体のような生物学的薬剤で処置した患者の数は、非応答者集団よりも応答者集団において有意に多かった(p=0.02)(表3)。これらの抗TNF−α薬剤の使用は、未知の負のフィードバック機構を通してFcγRを介するTNF−αの作用を増大し得るか、またはこれらの患者は生物学的治療法のよい候補者であり得る。HAGにより誘導されるTNF−αmRNAに応答を示すRA患者は、RA病理学においてTNF−αが有意に関与する可能性がさらにあり、それ故、これらの生物学的薬剤のよい候補者である可能性がさらにある。生物学的薬物は非常に高価であり、全ての患者に有効ではなく、かつ時折望ましくない副作用を示すため、これらの薬物に応答する可能性のある患者の同定は、個別化された医学としての臨床的有用性をもつであろう。
【0034】
細胞毒性試験は一般に、RAにおいて起こると信じられている免疫システムの活性に起因する、実際の細胞死を研究するために用いられてきた。細胞毒性試験は一般に、51Cr負荷細胞とエフェクター細胞とを様々な比においてインキュベートすること、ならびに死滅または損傷した細胞から放出された51Crの放射活性量を定量化することにより行われる(Dunkley et al., J. Immunol. Methods 6,
39 (1974)を参照)。ある場合には、放射性物質は蛍光定量物質のような非放射性物質に置き換えられているが(Kruger−Krasagakes et al., J. Immunol. Methods 156, 1 (1992)を参照)、基本的原理は変化していない。従って細胞毒性試験の結果は実際の細胞死を反映する。
【0035】
しかしながら、細胞毒性試験は非生理的な実験条件下で行われ、このような研究過程において複雑な細胞と細胞、および細胞と血漿の相互作用を評価することは困難である。さらに、細胞毒性試験はどのTNFSFメンバーが細胞死の原因であるかを示さない。単一のエフェクター細胞は多数の標的細胞の死滅には十分でないことから、一旦エフェクター細胞が標的細胞を認識すると、エフェクター細胞の機能は標的を死滅させることのみではなく、その他のエフェクター細胞を動員することでもある。この動員機能は走化性因子の放出に代表されると考えられている。エフェクター細胞から放出されるこのような走化性因子の同一性は、古典的な細胞毒性試験によっては明らかにされないであろう。しかしながら本開示中で説明されるアッセイシステムは、エフェクター細胞における遺伝子発現の多数のクラスを同時に同定可能である。
【0036】
全血の使用は、分離された白血球の培養液中での使用よりも好ましい。その理由は、前者は後者よりもさらに生理的であり、かつ白血球の全集団をスクリーニングできることである。全血の長めのインキュベーションはさらなるアーチファクトを生じ得る。従って理想的な方法は、in vitroからex vivoへの切り替えによる短期間のインキュベーションの間に、全血中でキラーの初期シグナルおよび動員シグナルを同定することである。mRNAの転写は、タンパク質合成または最終の生物学的結果のいずれよりも早期の出来事である。従って、mRNAは論理にかなった標的である。
【0037】
本方法は全血を使用することから、TNFSF非活性化治療法に対する可能な応答性を評価し、かつ治療的応答をモニターする、RAの診断試験として使用されてよい。特に、RAを有するヒトがT細胞刺激に応答して転写されたmRNAを標的とする治療法に応答する可能性があるか否かを決定する方法の好ましい実施形態においては、前述のようにRA患者から全血を採取し、血液サンプルをHAG刺激へ、かつ必要に応じてコントロール刺激(PBS)へ供する。TNFSF−2,TNFSF−8、またはTNFSF−15mRNAの量は上記のサンプル中で測定されてよい。HAGによる刺激後、これらのうち1以上のmRNAのレベルが有意に上昇している(示したように、例えば増加倍率が2を超える)RA患者は、これらのmRNAを標的とした治療法のよい候補である。
【0038】
さらに、TNFSF−2,TNFSF−8、またはTNFSF−15mRNAのうちの1以上を標的にしたRA治療法の有効性を患者において評価する方法の好ましい実施形態においては、処置開始前に、HAG刺激後の全血中のmRNA量のコントロール刺激後の量に対する第一の比を求める。処置開始後に、HAG刺激後の全血中のmRNA量のコントロール刺激後の量に対する第二の比を求める。第一の比が第二の比よりも大きいような、比における有意な相違により、治療法の有効性が示される。このような治療法は例えば、インフリキシマブまたはエタネルセプトの投与を含んでよい。
【0039】
重要なことには、このex vivo法はTNFSF−2,TNFSF−8、またはTNFSF−15mRNAのうちの1以上、特に疾病病理学に関わることが知られているTNFSF−2の、抗FcRを介した発現を阻害する化合物のスクリーニングに使用できる
。このような化合物は、これらの新しい薬物候補が白血球におけるmRNA産生を転写レベルで遮断し得ることから、興味あるものとなるであろう。このことは、RAに対する薬剤の発展に対し新しい戦略を提供するであろう。
【0040】
開示されたシステムを用い、それによりRA治療のための推定される薬剤を同定する薬物化合物のスクリーニング方法の実施形態において、全血は反応者であるRA患者から得られ、ここで反応者は、その白血球がHAGのようなT細胞刺激に曝露されたとき、RAに付随するmRNAのレベルにおいて少なくとも2倍の増加を示す個体である。HAG刺激後の被験者の全血中のmRNA量のコントロール刺激後の量に対する第一の比を算出した。被験者からのさらなる全血サンプルをin vitroで薬物化合物へ曝露し、その後上記のように差次的に刺激した。その後これら曝露したサンプルの、HAG刺激後の全血中のmRNA量のコントロール刺激後の量に対する第二の比を算出した。第一の比が第二の比よりも大きいような、比における有意な相違により、薬物化合物がRAの有望な治療法としてのさらなる検討のための候補であることが示される。
【0041】
加えて、患者から得られた白血球を含むサンプル中のTNFSF−2,TNFSF−8、またはTNFSF−15mRNAのうちの1以上のレベルを測定することにより、RA患者の疾病状態をモニターする方法の好ましい実施形態において、第一の時に、in vitroでの熱凝集IgG抗体を用いたT細胞刺激またはその他の刺激後の全血中のmRNA量の、in vitroでのコントロール刺激後の量に対する第一の比を得る。前記第一の時に続く第二の時に、in vitroでのT細胞刺激後の全血中のmRNA量の、in vitroでのコントロール刺激後の量に対する第二の比を得る。比における有意な相違により、疾病状態の変化が示される。例えば、第二の比が第一よりも大きな場合には疾病の進行が示されるが、第一の比がより大きな場合には疾病の退行が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節リウマチ患者が抗TNF治療法に応答する可能性があるか否かを決定する方法であって、
前記患者由来の第一のサンプル中の白血球のFc受容体をin vitroで刺激すること;
刺激後に、第一のサンプル中の腫瘍壊死因子スーパーファミリー(「TNFSF」)タンパク質をコードするmRNAの量を測定すること:
第二のサンプル中の白血球をin vitroでコントロール刺激に曝露すること:
第二のサンプル中の前記mRNAの量を測定すること;
第一のサンプル中のmRNA量の第二のサンプル中のmRNA量に対する比を決定すること;および
該比が約2:1又はそれ以上の場合に、患者が該治療法に応答する可能性があると決定することを含む方法。
【請求項2】
該mRNAがTNFSF−2をコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一のサンプル中の白血球を刺激することが第一のサンプルに熱凝集ヒトIgGを混合することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一および第二のサンプルのうち少なくとも1つが全血を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
コントロール刺激がリン酸緩衝食塩水である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
該治療法がインフリキシマブおよびエタネルセプトから成る群より選択される薬剤の投与を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
関節リウマチ患者が、抗FcRを介した腫瘍壊死因子スーパーファミリー(「TNFSF」)タンパク質をコードするmRNAの発現を阻害する治療法に応答する可能性があるか否かを決定する方法であって、
前記患者由来の第一のサンプル中の白血球のFc受容体をin vitroで刺激すること;
刺激後に、第一のサンプル中の腫瘍壊死因子スーパーファミリー(「TNFSF」)タンパク質をコードするmRNAの量を測定すること:
第二のサンプル中の白血球をin vitroでコントロール刺激に曝露すること:
第二のサンプル中の前記mRNAの量を測定すること;
第一のサンプル中のmRNA量の第二のサンプル中のmRNA量に対する比を決定すること;および
該比が約2:1又はそれ以上の場合に、患者が該治療法に応答する可能性があると決定することを含む方法。
【請求項8】
該mRNAがTNFSF−2をコードする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第一のサンプル中の白血球の刺激が第一のサンプルに熱凝集ヒトIgGを混合すること含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第一および第二のサンプルのうち少なくとも1つが全血を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
コントロール刺激がリン酸緩衝食塩水である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
関節リウマチを治療するための候補薬剤を同定する方法であって、
熱凝集ヒトIgGに曝露したとき、腫瘍壊死因子スーパーファミリー(「TNFSF」)タンパク質をコードするmRNAの転写が少なくとも1.5倍増加する白血球を有するヒト由来の白血球を含む、第一、第二、第三、および第四のサンプルを得ること;
第一のサンプル中の白血球のFc受容体をin vitroで刺激すること;
第二のサンプル中の白血球をin vitroでコントロール刺激に曝露すること:
刺激後の、第一および第二のサンプル中のmRNAの量を測定すること;
第三および第四のサンプルを薬剤に曝露すること;
曝露後の第三サンプル中の白血球のFc受容体をin vitroで刺激すること;
第四サンプル中の白血球をin vitroでコントロール刺激に曝露すること:
刺激後の第三および第四サンプル中のmRNAレベルを測定すること;および
第一のサンプルから得られたデータを第三サンプルから得られたデータに比較することおよび第二のサンプルから得られたデータを第四サンプルから得られたデータに比較することを含み、比較データ間の有意な相違により候補薬剤が示唆される、方法。
【請求項13】
第一および第二のサンプル中のmRNA量の測定後、第一のサンプル中のmRNA量の第二のサンプル中のmRNA量に対する第一の比が算出され;
第三および第四サンプル中のmRNAレベルの測定後、第三サンプル中のmRNA量の第四サンプル中のmRNA量に対する第二の比が算出され;かつ
第一および第二の比が比較され、比の間が有意に相違する候補薬剤を示唆する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
該TNFSFタンパク質がTNFSF−2、TNFSF−8、またはTNFSF−15である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第一および第三サンプル中の白血球を刺激することがサンプルに熱凝集ヒトIgGを混合することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
コントロール刺激がリン酸緩衝食塩水である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第一、第二、第三、および第四サンプルのうち少なくとも1つが全血を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
比における有意な相違は、第一の比が第二の比よりも大である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
該mRNAがTNFSF−2をコードする、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
該TNFSFタンパク質がTNFSF−2、TNFSF−8、またはTNFSF−15である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
第一および第三サンプル中の白血球を刺激することがサンプルに熱凝集ヒトIgGを混合すること含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
コントロール刺激がリン酸緩衝食塩水である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
第一、第二、第三、および第四サンプルのうち少なくとも1つが全血を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
該mRNAがTNFSF−2をコードする、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
患者の関節リウマチの状態を評価する方法であって、
白血球を含み、かつ患者から第一の時に得られた第一のサンプル中の白血球のFc受容体をin vitroで刺激すること;
刺激後に第一のサンプル中の腫瘍壊死因子スーパーファミリー(「TNFSF」)タンパク質をコードするmRNA量を測定すること;
患者から前記第一の時に得られた白血球を含む第二のサンプル中の白血球をin vitroでコントロール刺激に曝露すること;
刺激後に第二のサンプル中のmRNA量を測定すること;
第一のサンプル中のmRNA量の第二のサンプル中のmRNA量に対する第一の比を決定すること;
白血球を含み、かつ前記第一の時に続く第二の時に患者から得られた第三サンプル中の白血球のFc受容体をin vitroで刺激すること;
刺激後に第三サンプル中のmRNA量を測定すること;
患者から前記第二の時に得られた白血球を含む第四サンプル中の白血球をin vitroでコントロール刺激に曝露すること;
刺激後に第四サンプル中のmRNA量を測定すること;
第三サンプル中のmRNA量の第四サンプル中のmRNA量に対する第二の比を決定すること;および
第一および第二の比を比較し、第一および第二の比における有意な相違が疾病状態の変化を示唆することを含む方法。
【請求項26】
該TNFSFタンパク質がTNFSF−2、TNFSF−8、またはTNFSF−15である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第一および第三サンプル中の白血球を刺激することがサンプルにヒト熱凝集IgGを混合することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
コントロール刺激がリン酸緩衝食塩水である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
第一、第二、第三、および第四サンプルのうち少なくとも1つが全血を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
第二の比が第一の比よりも、比における有意な相違が大きく、かつ疾病状態の変化が疾病の進行である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
第一の比が第二の比よりも、比における有意な相違が大きく、かつ疾病状態の変化が疾病の退行である、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
該mRNAがTNFSF−2をコードする、請求項26に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2011−502535(P2011−502535A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534127(P2010−534127)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/083136
【国際公開番号】WO2009/070442
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(500294958)ヒタチ ケミカル リサーチ センター インコーポレイテッド (27)
【Fターム(参考)】