説明

材料試験機および材料試験機における測定温度表示方法

【課題】 基準電圧電源を準備したり煩雑な調整を行うことなく、材料試験時の温度を表示することが可能な材料試験機および材料試験機における測定温度表示方法を提供する。
【解決手段】 NTCサーミスタ51と、このNTCサーミスタ51が摂氏0度を測定したときの抵抗値と等しい抵抗値を有する摂氏0度相当固定抵抗器52と、NTCサーミスタ51が摂氏50度を測定したときの抵抗値と等しい抵抗値を有する摂氏50度相当固定抵抗器53と、増幅回路24と、NTCサーミスタ51、摂氏0度相当固定抵抗器52、摂氏50度相当固定抵抗器53を増幅回路24に選択的に接続する切替スイッチ54と、表示部41と、増幅回路24からの信号に基づいてNTCサーミスタ51で測定した温度を表示部41に表示させる制御部23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試験片に対して試験力を付与することにより材料試験を実行する材料試験機および材料試験機における測定温度表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料試験機において、例えば樹脂等の試験片に対して引っ張り試験等を行う場合においては、材料試験時の雰囲気温度を測定する場合がある。また、材料試験時に試験片の温度を制御しながら材料試験を行う場合もある。特許文献1には、試験片の周囲の温度を制御する雰囲気炉を備えた材料試験機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−183275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3は、従来の材料試験機において、温度センサ91で測定した温度を表示部94に表示するための構成を示すブロック図である。
【0005】
温度センサ91で計測した温度を材料試験機本体93のアナログ電圧入力ポートから取り込む場合においては、温度センサ91側においては、温度センサ用アンプ92を利用して、温度センサ91のアナログ電圧出力におけるゼロボルト電圧調整とフルスケール電圧調整を行うとともに、温度を電圧に変換するときの係数について、ゼロボルト出力時の温度と単位温度あたりの電圧の傾きとの両方の設定を行う必要がある。また、材料試験機本体93側においては、アナログ電圧入力ポートにおけるゼロボルト電圧調整とフルスケール電圧調整を行うとともに、温度を電圧に変換するときの係数について、ゼロボルト入力時の温度と単位温度あたりの電圧の傾きとの両方の設定を行う必要がある。
【0006】
また、材料試験機本体93側において、温度を電圧に変換するときの係数について、ゼロボルト入力時の温度と単位温度あたりの電圧の傾きとの設定を行うときには、その基準となる基準電圧電源を準備する必要がある。このため、これらの作業は極めて煩雑なものとならざるを得ない。
【0007】
このため、例えば、RS232CやUSBを利用して、デジタル通信により温度情報をコンピュータに取り込む手法を採用することも考えられるが、この場合においては、専用のプロトコルを実装したソフトウエアが必要となる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、基準電圧電源を準備したり煩雑な調整を行うことなく、材料試験時の温度を表示することが可能な材料試験機および材料試験機における測定温度表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、温度測定機構を備えた材料試験機において、測温抵抗体と、前記測温抵抗体が摂氏ゼロ度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第1の抵抗器と、前記測温抵抗体が最大測定温度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第2の抵抗器と、増幅回路と、前記第1の抵抗器、前記第2の抵抗器および前記測温抵抗体を、前記増幅回路に選択的に接続する切替スイッチと、表示部と、前記増幅回路からの信号に基づいて前記測温抵抗体で測定した温度を前記表示部に表示させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記試験片の変位量を測定する変位量測定手段をさらに備え、前記表示部は、前記変位測定手段により測定された材料試験時の前記試験片の変位量を表示するとともに、前記制御部は、前記切替スイッチにより前記第1の抵抗器と前記増幅回路が接続されたときに前記表示部に摂氏ゼロ度が表示され、前記切替スイッチにより前記第2の抵抗器と前記増幅回路とが接続されたときに前記表示部に最大測定温度が表示されるように温度表示制御を行う。
【0011】
請求項3に記載の発明は、試験片に試験力を付与する試験力付与手段と、前記試験片の変位量を測定する変位量測定手段と、表示部と、前記試験片近傍の温度を測定する測温抵抗体と、前記測温抵抗体からの信号を増幅する増幅回路と、前記変位測定手段で測定した前記試験片の変位量および前記増幅回路で増幅された前記測温抵抗体からの信号に基づいて、前記表示部に前記試験片の変位量および前記試験片近傍の温度とを表示させる制御部と、を備えた材料試験機における測定温度表示方法において、前記測温抵抗体が摂氏ゼロ度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第1の抵抗器と接続した状態で、そのときの前記表示部の表示が摂氏ゼロ度となるように前記制御部において調整を行う第1調整工程と、前記測温抵抗体が最大測定温度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第2の抵抗器と接続した状態で、そのときの前記表示部の表示が最大温度となるように前記制御部において調整を行う第2調整工程と、前記増幅回路を前記測温抵抗体と接続した状態で前記試験片近傍の温度を測定する温度測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、基準電圧電源を準備したり、煩雑な調整作業を行ったりすることなく、測温抵抗体により測定した温度を表示部に容易に表示することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、材料試験時の試験片の変位量を表示するための表示部に温度表示を行うことが可能となる。このため、例えば、既存の装置に温度測定機能を付加する場合においても、新たに表示部を追加する必要が無くなる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、基準電圧電源を準備したり、煩雑な調整作業を行ったりすることなく、測温抵抗体により測定した温度を表示部に容易に表示することができ、また、材料試験時の試験片の変位量を表示するための表示部に温度表示を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明を適用する材料試験機の概要図である。
【図2】この発明に係る材料試験機の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【図3】従来の材料試験機において、温度センサ91で測定した温度を表示部94に表示するための構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明を適用する材料試験機の概要図である。
【0017】
この材料試験機は、テーブル16と、このテーブル16上に鉛直方向を向く状態で回転可能に立設された一対のねじ棹11、12と、これらのねじ棹11、12に沿って移動可能なクロスヘッド13と、このクロスヘッド13を移動させて試験片10に対して試験力を付与するための負荷機構30とを備える。
【0018】
クロスヘッド13は、一対のねじ棹11、12に対して、図示を省略したナットを介して連結されている。各ねじ棹11、12の下端部には、負荷機構30におけるウォーム減速機32、33が連結されている。このウォーム減速機32、33は、負荷機構30の駆動源であるサーボモータ31と連結されており、サーボモータ31の回転がウォーム減速機32、33を介して、一対のねじ棹11、12に伝達される構成となっている。サーボモータ31の回転によって、一対のねじ棹11、12が同期して回転することにより、クロスヘッド13は、これらのねじ棹11、12に沿って昇降する。
【0019】
クロスヘッド13には、試験片10の上端部を把持するための上つかみ具21が付設されている。一方、テーブル16には、試験片10の下端部を把持するための下つかみ具22が付設されている。引っ張り試験を行う場合には、試験片10の両端部をこれらの上つかみ具21および下つかみ具22により把持した状態で、クロスヘッド13を上昇させることにより、試験片10に試験力(引張荷重)を負荷する。
【0020】
このときに、試験片10に作用する試験力はロードセル14によって検出され、制御部23に入力される。また、試験片10における標点間の距離の変位量は、変位計15により測定され、制御部23に入力される。また、試験片10付近の雰囲気温度は、温度測定ユニット25を利用して測定され、増幅回路24で増幅された後、制御部23に入力される。
【0021】
制御部23はコンピュータやシーケンサーおよびこれらの周辺機器によって構成されており、ロードセル14および変位計15からの試験力データおよび変位量データを取り込んでデータ処理を実行する。サーボモータ31は、この制御部23により、フィードバック制御される。また、制御部23は、温度測定ユニット25から増幅回路24を介して入力された信号を処理する。また、この制御部23は、材料試験時の試験片10の変位量を表示するための表示部41と接続されている。
【0022】
図2は、この発明に係る材料試験機の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【0023】
この材料試験機は、測温抵抗体としてのNTCサーミスタ51と、摂氏0度相当固定抵抗器52と、摂氏50度相当固定抵抗器53とから構成される温度測定ユニット25を備える。この温度測定ユニット25は、切替スイッチ54および増幅回路24を介して、材料試験機本体における制御部23と接続されている。温度測定ユニット25からの信号は、増幅回路24により増幅され、アナログ電圧出力として制御部23におけるアナログ電圧入力ポートに出力される。
【0024】
ここで、切替スイッチ54は、NTCサーミスタ51と、摂氏0度相当固定抵抗器52と、摂氏50度相当固定抵抗器53とを選択的に増幅回路24に接続する機能を有する。この切替スイッチ54としては、マニュアルで切替動作を実行するものを使用してもよく、また、電気信号等に基づいて自動的に切替可能なものを使用してもよい。
【0025】
温度測定ユニット25におけるNTCサーミスタ51は、温度の上昇に対してその抵抗値が減少するサーミスタである。このNTCサーミスタ51は、温度と抵抗値とがほぼ比例関係となることから、温度検出用に広く使用されている。
【0026】
温度測定ユニット25における摂氏0度相当固定抵抗器52は、NTCサーミスタ51が摂氏ゼロ度を測定したときの抵抗値と等しい抵抗値を有している。すなわち、NTCサーミスタ51における温度と抵抗値との関係は、NTCサーミスタ51の製造メーカにより公表されている。このため、この摂氏0度相当固定抵抗器52の抵抗値は、NTCサーミスタ51が摂氏ゼロ度を測定したときの抵抗値となるように設定される。
【0027】
同様に、温度測定ユニット25における摂氏50度相当固定抵抗器53は、NTCサーミスタ51が摂氏50度を測定したときの抵抗値と等しい抵抗値を有している。すなわち、摂氏50度相当固定抵抗器53の抵抗値は、摂氏0度相当固定抵抗器52と同様、NTCサーミスタ51が摂氏50度を測定したときの抵抗値となるように設定されている。
【0028】
なお、この実施形態に係る材料試験機においては、温度測定ユニット25における最大測定温度を摂氏50度に設定している。また、この材料試験機においては、変位計15の最大測定変位は50mmとなっている。すなわち、この材料試験機においては、温度のフルスケール値は摂氏50度であり、変位のフルスケール値は50mmとなっている。
【0029】
以上のような構成を有する材料試験機においては、温度測定ユニット25の設置時に、材料試験機本体における制御部23のアナログ電圧入力ポートの調整を行う。この場合においては、最初に、切替スイッチ54を切り換えて、摂氏0度相当固定抵抗器52と増幅回路24とを接続する。この状態において、制御部23のアナログ電圧入力ポートのゼロを調整する。すなわち、この状態において、表示部41の表示が0度となるように、制御部23において調整を実行する。
【0030】
次に、切替スイッチ54を切り換えて、摂氏50度相当固定抵抗器53と増幅回路24とを接続する。この状態において、制御部23のアナログ電圧入力ポートのフルスケールを調整する。すなわち、この状態において、表示部41の表示がフルスケール、すなわち50度となるように、制御部23において調整を実行する。
【0031】
しかる後、切替スイッチ54を切り換えて、NTCサーミスタ51と増幅回路24とを接続する。また、変位計15による変位の測定値に対する表示部41の表示がフルスケール、すなわち最大測定変位である50mmとなるように、制御部23において調整を実行する。
【0032】
以上の調整工程を実行した後に、材料試験を行う。この材料試験時には、温度測定ユニット25におけるNTCサーミスタ51を使用しての温度測定工程が実行される。このときには、制御部23においてゼロおよびフルスケールの調整が行われていることから、NTCサーミスタ51により測定した温度を正確に表示部41に表示することが可能となる。また、この表示部41には、試験片10の変位量が表示される。
【0033】
上述したように、この発明に係る材料試験機においては、基準電圧電源を準備したり煩雑な調整を行うことなく、材料試験時の温度を表示することが可能となる。このため、稼働中の材料試験機に温度検出機能を追加する場合等においても、その作業は容易となる。また、NTCサーミスタ51により検出した温度を、試験片10の変位量を表示するための表示部41に表示することができることから、温度表示のための表示部を追加することなく、稼働中の材料試験機に温度検出機能を追加することが可能となる。
【0034】
なお、上述した実施形態においては、測温抵抗体としてNTCサーミスタを使用しているが、その他のサーミスタを使用してもよく、また、サーミスタ以外の測温抵抗体を使用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 試験片
11 ねじ棹
12 ねじ棹
13 クロスヘッド
14 ロードセル
15 変位計
16 テーブル
21 上つかみ具
22 下つかみ具
23 制御部
24 増幅回路
25 温度測定ユニット
30 負荷機構
31 サーボモータ
41 表示部
51 NTCサーミスタ
52 摂氏0度相当固定抵抗器
53 摂氏50度相当固定抵抗器
54 切替スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度測定機構を備えた材料試験機において、
測温抵抗体と、
前記測温抵抗体が摂氏ゼロ度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第1の抵抗器と、
前記測温抵抗体が最大測定温度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第2の抵抗器と、
増幅回路と、
前記第1の抵抗器、前記第2の抵抗器および前記測温抵抗体を、前記増幅回路に選択的に接続する切替スイッチと、
表示部と、
前記増幅回路からの信号に基づいて前記測温抵抗体で測定した温度を前記表示部に表示させる制御部と、
を備えることを特徴とする材料試験機。
【請求項2】
請求項1に記載の材料試験機において、
前記試験片の変位量を測定する変位量測定手段をさらに備え、
前記表示部は、前記変位測定手段により測定された材料試験時の前記試験片の変位量を表示するとともに、
前記制御部は、前記切替スイッチにより前記第1の抵抗器と前記増幅回路が接続されたときに前記表示部に摂氏ゼロ度が表示され、前記切替スイッチにより前記第2の抵抗器と前記増幅回路とが接続されたときに前記表示部に最大測定温度が表示されるように温度表示制御を行う材料試験機。
【請求項3】
試験片に試験力を付与する試験力付与手段と、前記試験片の変位量を測定する変位量測定手段と、表示部と、前記試験片近傍の温度を測定する測温抵抗体と、前記測温抵抗体からの信号を増幅する増幅回路と、前記変位測定手段で測定した前記試験片の変位量および前記増幅回路で増幅された前記測温抵抗体からの信号に基づいて、前記表示部に前記試験片の変位量および前記試験片近傍の温度とを表示させる制御部と、を備えた材料試験機における測定温度表示方法において、
前記測温抵抗体が摂氏ゼロ度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第1の抵抗器と接続した状態で、そのときの前記表示部の表示が摂氏ゼロ度となるように前記制御部において調整を行う第1調整工程と、
前記測温抵抗体が最大測定温度を測定したときの当該測温抵抗体の抵抗値と等しい抵抗値を有する第2の抵抗器と接続した状態で、そのときの前記表示部の表示が最大温度となるように前記制御部において調整を行う第2調整工程と、
前記増幅回路を前記測温抵抗体と接続した状態で前記試験片近傍の温度を測定する温度測定工程と、
を備えたことを特徴とする材料試験機における測定温度表示方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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