説明

材料試験装置

【課題】 試験片の表面に導体の薄膜パターンを形成するような手間をかけず、破損の瞬間を正確に捉えることができる材料試験装置を提供する。
【解決手段】 試験片2の所定部位に荷重を負荷しながら、負荷した荷重の荷重値W及び変位量を測定することにより、試験片2の強度試験を行う材料試験装置1であって、試験片2の一端面から試験片2の内部に光Lを入射させる光源部21と、試験片2の他端面から出射してきた光Tの強度Pを検出する光検出器22とを備え、光検出器22で検出された光強度に基づいて、試験片2の破断時を捉えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス、シリコンウエハ等の材料で作製された試験片の強度を試験する材料試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス等の材料の強度試験としては、日本工業規格JIS R 1601に規定されているような3点又は4点曲げ強度試験が一般に用いられている。図6(a)は、3点曲げ強度試験を説明するための図であり、図6(b)は、4点曲げ強度試験を説明するための図である。図6(a)に示すように、3点曲げ強度試験では、加圧体101の先端を荷重点とし、2本の支持体103の先端を支点として、板形状の試験片102に荷重Wを加えて折れたときの最大曲げ応力を測定している。一方、図6(b)に示すように、4点曲げ強度試験では、2本の加圧体101の先端を荷重点とし、2本の支持体103の先端を支点として、板形状の試験片102に荷重Wを加えて折れたときの最大曲げ応力を測定している。
【0003】
このとき、試験片102にクラック(亀裂)が入り破損する瞬間を検出する必要がある。この検出方法には、破損する瞬間に発生するアコースティックエミッション(音響出力)をマイクロフォンを介して検出する方法(例えば、特許文献1参照)や、試験片102に加わっている荷重W(試験力)の急激な変化を検出する方法が用いられている。
【0004】
しかしながら、アコースティックエミッションを検出する方法では、破損時の信号が微弱な信号であるため、この微弱な信号を増幅するアンプや、破損時の信号とそれ以外の信号とを分別するFFT(高速フーリエ変換)アナライザ等の高価な機器が必要である。
一方、試験力の変化を検出する方法では、クラック等の破損の初期段階では試験力の変化がほとんどないため、破損する瞬間を正確に捉えることが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、破損する瞬間を正確に捉える材料試験方法として、試験片102の表面に導体の薄膜パターンを形成するとともに、薄膜パターンの両端の導通を検出する手段を設け、強度試験による導体の薄膜パターンの断線を検出することにより、試験片102の破断時を捉えるものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−194346号公報
【特許文献2】特開2007−225519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような材料試験方法では、試験片102の表面に導体の薄膜パターンを形成する必要があるため、非常に手間がかかる。さらに、試験片102の表面に導体の薄膜パターンを形成するための設備(例えば、真空蒸着機等)が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本件発明者は、上記課題を解決するために、破損する瞬間を正確に捉える材料試験方法について検討を行った。アコースティックエミッションを検出する方法のように破壊音による方式では、音速の限界から破壊音と破損する瞬間との間に、数ms〜数十μsオーダーの遅れがあるとともに、破壊音の大きさや破損する瞬間のバラツキも大きい。よって、音でなく光を用いて破損する瞬間を捉えることを考えた。そこで、試験片の一端面から試験片の内部にレーザ光等を入射させて、試験片の他端面から出射してきたレーザ光(透過光)の強度を光検出器で検出しつづけて、透過光の強度の時間変化から破損する瞬間を捉えることを見出した。
【0009】
ここで、図3は、試験片にクラックが入る前の光路を説明するための図であり、図4は、試験片にクラックが入ったときの光路を説明するための図である。また、図5は、光検出器で検出された光強度の時間変化を示すグラフの一例である。例えば、試験片2がガラス(屈折率1.5)で作製された場合、試験片2にクラックが入ると、クラック端面でのガラスから空気への反射率がR=0.04となり、クラック端面での空気からガラスへの反射率がR=0.04となるので、クラックが入る前と比較して合計8%の減衰となる。これにより、例えば、透過光Tの強度P(t)が5%以上減衰した瞬間を破断(破損する瞬間)t’と捉えられることがわかった。
【0010】
すなわち、本発明の材料試験装置は、試験片の所定部位に荷重を負荷しながら、負荷した荷重の荷重値及び変位量を測定することにより、当該試験片の強度試験を行う材料試験装置であって、前記試験片の一端面から前記試験片の内部に光を入射させる光源部と、前記試験片の他端面から出射してきた光の強度を検出する光検出器とを備え、前記光検出器で検出された光強度に基づいて、前記試験片の破断時を捉えるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の材料試験装置によれば、試験片の表面に導体の薄膜パターンを形成するような手間をかけることなく、破損の瞬間を正確に捉えることができる。
【0012】
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、上記の発明において、前記試験片が破断したと判定するための光強度閾値を記憶する記憶部と、前記光検出器で検出された光強度及び光強度閾値に基づいて、前記試験片の破断時を捉える制御部とを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である材料試験装置を示す概略構成図。
【図2】図1に示す演算制御部を示す概略構成図。
【図3】試験片にクラックが入る前の光路を説明するための図。
【図4】試験片にクラックが入ったときの光路を説明するための図。
【図5】光検出器で検出された光強度の時間変化を示すグラフ。
【図6】強度試験を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態である材料試験装置を示す概略構成図であり、図2は、図1に示す演算制御部を示す概略構成図である。なお、地面に水平な一方向をX方向とし、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
材料試験装置1は、機台7と、上下方向(Z方向)が回転軸となる2本のネジ軸5、13を回転可能に支持する筐体14と、機台7上面の中央部に固設された支持台12と、ネジ軸5、13に螺合してネジ軸5、13の回転に伴い機台7に対して上下方向に移動することが可能なクロスヘッド8と、クロスヘッド8下面の中心部に固設されたロードセル9と、レーザ光Lを出射するレーザ光源(光源部)21と、レーザ光(透過光)Tの強度P(t)を検出するフォトセンサ(光検出器)22と、制御や演算処理を行う演算制御部3とを備える。
【0016】
機台7の内部には、演算制御部3からの制御信号により制御されるモータ4と、モータ4からの回転力をネジ軸5、13に伝達するベルト61と、連動用プーリ62を連結したギヤー機構6とが配置されている。これにより、モータ4が回転することで、2本のネジ軸5、13が回転して、クロスヘッド8を機台7に対して上下方向に移動させるようになっている。
【0017】
支持台12上面には、試験片2の下面を支持するための上下方向に伸びた2本の棒状の支持体11が形成されている。一方、ロードセル9下面には、試験片2の上面を加圧するための上下方向に伸びた1本の棒状のアンビル(加圧体)10が形成されている。これにより、板形状の試験片2は2本の棒状の支持体11の先端を支点として配置されるとともに、1本のアンビル10の先端を荷重点として試験片2の所定部位に荷重が負荷されるようになっている。また、ロードセル9で検出された荷重値W及び変位量を示す試験力検出信号は演算制御部3に所定時間間隔で出力されるようになっている。
【0018】
レーザ光源21は、X方向にレーザ光Lを出射するように筐体14の左方に配置されている。これにより、支持体11の先端を支点として配置された試験片2の一端面から試験片2の内部にレーザ光Lを入射させるようになっている(図3,4参照)。このとき、試験片2の一端面と垂直となる方向からレーザ光Lを入射させてもよく、試験片2の一端面と垂直でない方向からレーザ光Lを入射させてもよい。試験片2の一端面と垂直でない方向からレーザ光Lを入射させたときには、レーザ光Lは試験片2の上面や下面に反射しながら試験片2の他端面に導かれることになる。なお、試験片2は、レーザ光Lに対して透明となっている。
【0019】
フォトセンサ22は、X方向からのレーザ光(透過光)Tの強度P(t)を検出するように筐体14の右方に配置されている。これにより、支持体11の先端を支点として配置された試験片2の他端面から出射してきたレーザ光Tの強度P(t)を検出するようになっている(図3,4参照)。そして、フォトセンサ22で検出されたレーザ光Tの強度P(t)を示す光強度検出信号は演算制御部3に所定時間間隔で出力されるようになっている(図5参照)。
【0020】
演算制御部3においては、CPU(制御部)35と、メモリ(記憶部)34と、ロードセル9から出力される試験力検出信号を増幅するアンプ31及びこの出力をディジタル値に変換するA/D変換器32からなる試験力検出部33とを備え、さらに操作器15と、表示器16とが連結されている。ここで、CPU35が処理する機能をブロック化して説明すると、モータ4に制御信号を送信するモータ制御部35aと、ロードセル9からの試験力検出信号を演算処理し、算出した曲げ試験特性を表示させる試験力取得制御部35bと、フォトセンサ22からの光強度検出信号を取得する光強度取得制御部35cと、試験片2の破断時を捉える判定部35dとを有する。また、メモリ34は、試験片2が破断したと判定するための光強度閾値(例えば、測定開始時の光強度の95%)Pthを予め記憶する。
【0021】
ここで、材料試験装置1を用いて試験片2の強度を試験する材料試験方法について説明する。まず、測定者は支持体11の先端を支点として試験片2を配置する。次に、測定者は操作器15から測定開始信号を入力して測定を開始させる。
測定開始信号が入力されると、モータ制御部35aからの制御信号により、モータ4は一定速度で回転し、クロスヘッド8は所定の速度で下降し、アンビル10と支持体11との上下間隔が一定速度で接近し、その結果、試験片2に曲げ試験力が加えられ試験片2の中央部(所定部位)を下方に押し曲げていく。このとき、試験力検出信号が一定周期毎に試験力取得制御部35bに採り込まれ、所定の演算処理が行われて表示器16に変位に対する試験力が表示される。
【0022】
一方、測定開始信号が入力されると、光強度取得制御部35cからの制御信号により、レーザ光源21はX方向にレーザ光Lを出射するとともに、フォトセンサ22で検出された光強度検出信号が一定周期毎に光強度取得制御部35cに採り込まれる(図3,5参照)。
その後、試験力が試験片2の曲げ耐力を超えると、試験片2にクラックが生じ瞬間的に破壊される(図4参照)。このとき、試験片2がガラス(屈折率1.5)で作製された場合、クラック端面でのガラスから空気への反射率がR=0.04となり、クラック端面での空気からガラスへの反射率がR=0.04となるので、クラックが入る前と比較して合計8%の減衰となる。
そして、判定部35dは、フォトセンサ22で検出されたレーザ光Tの強度P(t)が光強度閾値Pth以下になった時間t’を、試験片2の破断時とする。
【0023】
以上のように、材料試験装置1によれば、試験片2の表面に導体の薄膜パターンを形成するような手間をかけることなく、破損の瞬間t’を正確に捉えることができる。
【0024】
<他の実施形態>
上述した材料試験装置1では、1個のレーザ光源21と1個のフォトセンサ22とを備えるような構成を示したが、Y方向に並ぶ2個のレーザ光源と2個のフォトセンサとを備えるような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、例えば、セラミックス、シリコンウエハ等の材料で作製された試験片の強度を試験する材料試験装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 材料試験装置
2 試験片
21 レーザ光源(光源部)
22 フォトセンサ(光検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片の所定部位に荷重を負荷しながら、負荷した荷重の荷重値及び変位量を測定することにより、当該試験片の強度試験を行う材料試験装置であって、
前記試験片の一端面から前記試験片の内部に光を入射させる光源部と、
前記試験片の他端面から出射してきた光の強度を検出する光検出器とを備え、
前記光検出器で検出された光強度に基づいて、前記試験片の破断時を捉えることを特徴とする材料試験装置。
【請求項2】
前記試験片が破断したと判定するための光強度閾値を記憶する記憶部と、
前記光検出器で検出された光強度及び光強度閾値に基づいて、前記試験片の破断時を捉える制御部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の材料試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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