杖及び杖システム
【課題】杖使用者の杖に対する依存度や利用に関する情報を収集でき、杖の利用の適正を客観的に判定することが可能になる。
【解決手段】制御部153は、杖を用いての歩行中か否かを圧力センサ152からの信号により判定し、歩行中であると判定した場合、利用者の体重のどの程度の負担が杖にかかっているかを示す圧力値を制御部153内のメモリに順次記憶していく。
【解決手段】制御部153は、杖を用いての歩行中か否かを圧力センサ152からの信号により判定し、歩行中であると判定した場合、利用者の体重のどの程度の負担が杖にかかっているかを示す圧力値を制御部153内のメモリに順次記憶していく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行の支援機具である杖、並びにそれを用いたシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の移動動作の中で、歩くという移動動作は人間が獲得した自然な動作であり、生活していくうえも重要な動作と言える。年齢的、或いは、足腰の疾患等により歩行が困難になってくると、歩行支援用具である杖を用いて歩行動作を補うのが一般的である。
【0003】
杖の種類には、松葉杖、ロフストランド杖、アンダーアームクラッチ、接地する脚が複数ある多脚杖、接地する脚が1本の杖等、様々である。これらの杖は、その患者の様態や環境に応じたものが利用されている。
【0004】
近年の杖は、血圧、脈拍、体温等のライフモニタを接続でき、検出した情報を発信する杖も知られている(特許文献1)。
【0005】
更にまた、視覚障害者が利用する杖に、方向の前方に障害物があること超音波センサで検出し、圧電素子による振動で利用者に知らせる杖も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−325600号公報
【特許文献2】特開2004−015092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2に係る技術は、「杖」に新たな可能性を見出している点で望ましいものではあるが、「杖」本来の歩行動作に注視しているものではない。
【0008】
本願発明者等は、杖を利用する上で最も重要な点は、その杖が利用者の歩行動作を補っているかどうかであり、その観点からすると、現状では、杖に依存して歩行動作を行っている者自身、或いは、その担当医や歩行の指導役が、歩行動作における杖に対する依存度を客観的に把握できていない点が問題であると考えた。
【0009】
例えば、今使用中の杖の耐久度が低く、より加重をかけることができる種類の杖に切り換えるかどうかの判断や、杖無しの通常歩行が行えるまで身体の回復が進んだ場合における、杖無しでの歩行へ切り換えの判断等は、利用者自身の主観、或いは、担当医等の経験や勘で行っているのが現状である。
【0010】
上記のように歩行動作における杖に対する依存度を客観的に知ることができれば、杖についての知識が乏しい方や経験の浅い医師等であっても、歩行動作の適切なアドバイスを与えることができるようになる。そこで、本発明は、杖使用者の杖に対する依存度や利用に関する情報を収集し、杖の利用の適正を判定可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による杖は、以下の構成を備える。すなわち、
歩行動作を補助する杖であって、
杖利用者から杖本体に係る負荷を検出するセンサと、
前記杖利用者の前記杖を用いた歩行動作における負荷を前記センサで検出し、当該検出した負荷に係る情報を所定のメモリに格納する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、杖使用者の杖に対する依存度や利用に関する情報を収集でき、杖の利用の適正を客観的に判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態における杖の断面と上面図である。
【図2】杖に内蔵される制御部及びその周辺の回路構成を示す図である。
【図3】実施形態における制御部における初期設定処理を示すフローチャートである。
【図4】利用者の歩行中の制御部における処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態における歩行情報の集計、解析を行う情報処理装置のブロック構成図である。
【図6】実施形態における歩行情報の集計、解析を行う情報処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図7】解析処理結果の表示例を示す図である。
【図8】解析処理結果の表示例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における歩行情報の集計、解析を行う情報処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第4の実施形態における装着型装置と杖への装着例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。杖には、松葉杖、ロフストランド杖、多脚杖、一脚杖等、その全体の形状だけでも多種類存在する。本実施形態では、一脚杖、特に、広く使われているグリップ部の形状がT字形の杖を例として説明することとするが、これは一例である点に留意願いたい。
【0015】
[第1の実施形態]
図1(A)に実施形態における杖100の断面構造図を、図1(B)に杖100のグリップ(柄)101の上面図を示す。実施形態における杖100は、先に示したようにグリップ101とポール102とでT字形をなす杖である。ポール102の上部(グリップ101側)内部には、圧力センサ152、ワンチップの制御部153、並びに、バッテリ157(ボタン電池等)を収容している。そして、ポール102の下部の上端が、ポール102の上部に挿入され、且つ、上部に設けられた圧力センサ152に当接するようなっている。そして、利用者がグリップ101に体重をかけた際に、その負荷(荷重、重量)に応じた圧力が圧力センサ152にかかるようにするため、ポール101の上部と下部が微小距離だけスライド可能にするための間隙151がポール102に設けられている。
【0016】
また、ポール102の上部には、複数のスイッチで構成される操作部154が設けられている。また、グリップ101の先端部にはLED156、中央部近傍にはLCD(液晶)ディスプレイ155が埋め込まれている。なお、LED156がグリップ先端に設けた理由は、グリップ部分をつかんだ状態でも利用者が目視できるようにするためである。
【0017】
図2は制御部153の構成と、その周辺回路との接続関係を示す図である。図示の通り、制御部153には、圧力センサ152、操作部154、LED156、LCD155が接続関係され、これらはバッテリ157で駆動するようになっている。制御部153は、マイクロコンピュータ(マイコン)161、メモリ162、タイマ163、並びに、外部と通信するインタフェース164を有する。メモリ162はマイコン161の処理手順(後述する図3、図4のフローチャートに係るプログラム)を記憶するROMと、圧力データを記憶するためのRAMで構成されている。なお、実施形態におけるインタフェース164は電気的な接続端子を不要とするため無線インタフェースとするが、外部装置と通信できれば良いのでその種類は問わず、例えばUSBインタフェースであっても良い。USBインタフェースにする場合、その接続端子を杖の何処かに設けなければならない反面、バッテリ157が再充電可能な2次電池とした場合、外部装置との通信の際のUSBからのバスパワーを利用して再充電可能になるというメリットがある。タイマ163は、時刻を保持するためのものである。
【0018】
一般に、実施形態で示したT字形の一脚杖の場合、利用者の体重の20%までその杖に負担させて歩行するのに適するとされている。つまり、体重60kgの人の場合、その20%に相当する12kgを杖に分担させ歩行動作が行え、結果、自身の足や腰等に係る負担がその分だけ免れることになる。自身の体重を杖に分散させることを免荷といい、その率を免荷率という。最大免荷率は、利用する杖の種類(形状)に応じたものとなる。例えば、ロフストランド杖の場合、免荷率が更に高く30%とすることができる。
【0019】
さて、実施形態における杖100は、T字形の一脚杖であるので、正常な利用での免荷率は上記の通り20%であり、体重の最大20%の範囲内の加重をかけての歩行が正常な範囲と言える。ただし、杖に係る最大負担がある程度以下の場合、その杖が役立っていない、又は、杖が不要と判断する指針として考えることができる。実施形態では、その指針となる免荷率を5%とした。一方、最大負荷が免荷率20%を超える場合、その利用者の歩行運動が困難な状況にある(歩行に疲れが出ている)、或いは、その状況が長く続く場合には、許容免荷率の高い形状の杖への判断材量と捉える指針にも利用できる。
【0020】
以上の考察から、実施形態では体重の5%、20%(これらは杖の種類に応じて設定する)に相当する閾値Th1、Th2(Th1<Th2)を設定し、歩行中の最大圧力P(以下、この圧力を歩行圧力といい、その値を歩行圧力値という)との関係が、
P≦Th1
Th1<P≦Th2
Th2<P
の3段階のいずれに在るかを、利用者に知らしめるともに、歩行圧力値Pを示すデータを時刻共に記憶保持し、後の解析に利用できるようにした。LED156は、上記3段階のいずれかであるかを報知するために使用される。このLED156は、実際は緑色、黄色、赤色の3つのLED素子を内蔵し、利用者から見れば1つのLEDに見えるものとなっている。P≦Th1の場合には緑色、Th1<P≦Th2の場合には黄色、Th2<Pの場合には赤色で発光させる(詳細後述)。
【0021】
また、歩行圧力Pの求め方は次の通りである。実施形態におけるT字形の一脚杖を利用した歩行動作の場合、二歩進む毎に、地面(床)への接地と地面からの引き上げ操作が繰り返される。そこで、二歩分を進むに要する時間が最大で5秒と考え、それを最大周期とする。そして、その最大周期内の杖の接地状態の間で圧力センサ152で検出した最大圧力(ピーク)を上記歩行圧力Pとした。ただし、この条件の下で歩行圧力Pが、それぞれが上記最大周期以内に、5回連続して検出された場合、歩行中であると判断することとした。なお、これらの条件で本願発明を限定されるものではなく、適宜設定できるようにしても良い。
【0022】
図3は実施形態における制御部153の初期設定に係る処理を示すフローチャートである。バッテリ157が正常な電力が供給しつつある場合には、歩行監視モードになっており、図3の処理は、操作部154に設けられた中の所定スイッチに対して所定操作(例えば長押し)を行うと、この初期設定モードに移行する。
【0023】
マイコン161は、先ず、ステップS11にて、操作者に体重の入力を行なわせる。体重の入力は、例えば初期値として「50kg」をLCD155に表示し、1kg単位の増加又は減少の操作、並びに、決定操作を操作部154に設けられたスイッチで行なわせるものとする。マイコン161は、体重の入力を行なわせると、その体重をメモリ162に格納保存する。
【0024】
次いで、マイコン161は、ステップS12において、免荷率(2つ)を設定させる。これも体重と同様に操作部154により入力させ、メモリ162に記憶させる。実施形態では5%、20%が入力されるものとして説明を続ける。この入力が行われると、ステップS13に進んで、体重と2つの免荷率から閾値Th1、Th2を算出する。そして、ステップS14に進み、算出した閾値Th1、Th2をメモリ162に記憶させ、本処理を終える(歩行監視モードに戻る)。
【0025】
次に、図4のフローチャートに従い歩行監視モードを説明する。
【0026】
先ず、マイコン161は圧力センサ152による圧力を検出し(ステップS21)、タイマ163の計時時間と検出した圧力値に基づき歩行中かどうかを判定する(ステップS22)。歩行中かどうかの判定基準は先に説明した通りである。歩行中ではないと判断した場合には、再びステップS21の処理に戻る。
【0027】
さて、歩行中であると判定すると、ステップS23に進み、それまでに検出した1周期分の圧力の中の最大圧力である歩行圧力Pと、その時刻とをペアにしてメモリ162に順次記憶する。次いで、ステップS24、25にて、検出した着目周期における歩行圧力Pが3段階のいずれに属しているかを判定する。P≦Th1の場合にはLED156を緑色で点灯駆動する(ステップS26)。また、Th1<P≦Th2の場合にはLED156を黄色で点灯駆動する(ステップS27)。そして、Th2<Pの場合にはLED156を赤色で点灯駆動する(ステップS28)。いずれの場合であっても、処理はステップS21に戻る。
【0028】
以上が歩行監視モードの処理である。実施形態における杖100内の制御部153の処理は上記2つのモードに加えて、計測データ転送モードが存在する。この計測データ転送モードは、操作部154からの所定のスイッチの所定の操作で移行するものであって、単にインタフェース164を使って外部の装置からの要求に応じてメモリ162内のデータ(体重、免荷率、歩行時における時刻と最大圧力で構成される歩行データ)を送信するものであり、そのデータを受信し解析する側の装置の説明から明らかになるので、ここでの詳述は省略する。
【0029】
以上説明したように本実施形態よれば、杖100に設けられたLED156の点灯色から、自身の杖に対する免荷率の多い/少ないを客観的に把握できるようになる。また、この結果を踏まえて、休憩を取るとかの判断材量にも活用できる。
【0030】
次に、実施形態における杖100からの計測データ転送モードで転送されたデータを解析する解析装置の構造とその処理内容について説明する。図5は実施形態における解析装置のブロック構成図である。この装置は、パーソナルコンピュータ等に代表される情報処理装置で代替できるものであり、図示の如く、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、キーボード205、ポインティングデバイス(マウス等)206、
ディスプレイ207、並びに、杖100と通信するインタフェース208を有する。実施形態の場合、杖100内部のインタフェースは無線通信インタフェースとしているので、このインタフェース208も同様のインタフェースとなる。
【0031】
本装置の電源がONになると、CPU201はROM202のブートプログラムに従って起動し、HDD204からOS(オペレーティングシステム)をRAM203にロードすることで、キーボード205、ポインティングデバイス206を用いて操作が可能になる。そして、ユーザが、杖データの解析を行うアプリケーションプログラムを実行させることで、本装置が解析装置として機能することとなる。
【0032】
図6は解析アプリケーションプログラムを実行した際のCPU201の処理手順のフローチャートを示している。以下、同図に従い、解析装置の処理内容を説明する。
【0033】
先ずステップS31において、杖100との通信をインタフェース208を介して開始し、通信可となるのを待つ。杖100との通信が可となると、杖100に対して測定データの送信を要求し、そのデータを受信する(ステップS32)。正常にデータ受信が行えた場合、CPU201は、杖100に対して歩行圧力と時刻のデータの消去を指示する。ただし、体重や免荷率といったデータは、従前のものが利用できるので、消去対象からは除外する。
【0034】
次いで、ステップS33にて、受信したデータから、その杖の使用状況に関する状態値を算出する。受信したデータには、体重、免荷率、閾値Th1、Th2に後続して、多数の{歩行圧力P、時刻}の形式のデータが連続する。そこで、CPU201は、歩行中と判定されや期間長、一日のトータルの歩行時間、一日の歩行圧力Pの中の最大値、1分毎の歩行圧力Pの平均値を算出し、受信したデータと共にHDD204に既に構築されたデータベースに保存登録する(ステップS34)。
【0035】
この後、ステップS35にて、どのような解析結果の表示を行うかをユーザに選択させ、ステップS36にてその選択した解析内容に従ってデータを表示する。そして、ステップS37にて、他の形式の表示が指示されたと判断する限りは、ステップS35、36を繰り返す。
【0036】
表示するデータの形式の例を示すのが図7、図8である。図7は、操作者が指定した或る一日の歩行状況の表示例を示している。図示では、指定された日の杖を利用した最初の歩行を検出から、その日の最後の同歩行の期間を範囲とし、その間の1分単位の平均歩行圧力Pの推移を示している。縦軸は免荷率(圧力でも良い)を示し、免荷率20%、5%に相当する位置に図示のように水平方向に破線で表示し、どの時間帯で負荷が大きかったか、軽かったかが明瞭になるようにした。また、図示の水平軸は時刻を示し、連続して歩行した期間に対応する時間帯については太線で示すことで、その歩行時間が容易に判別できるようになっている。
【0037】
図8は過去1ヵ月の一日単位の歩行圧力の最大値、平均値の推移を示す画面の例であるこの例の場合、直近では最大歩行圧力も免荷率20%を下回っているので、疾患の回復傾向が顕著なことが理解できる。例えば、使用中の杖が多脚杖やロフストランド杖である場合には、それより免荷率の低い杖への切り換えを進める材量としても利用できる。
【0038】
日々の変化を捉える方法としては、図8に示すようなグラフでもよく、また図8に示すグラフ中の一定時間における積算値(歩行圧力×時間の総和)でも構わない。
【0039】
なお、歩行圧力と時刻のデータから導き出せるものであれば良いので、図7、図8に限るものではないし、他の切り口での情報解析結果を表示しても構わない。
【0040】
以上説明したように本実施形態の解析装置によれば、杖利用者の歩行状況が一日等の短い期間や、1ヶ月と言った比較的長い期間で客観的に把握できるようになり、利用者の杖の依存度や勿論のこと、今現在利用している杖止めるべきかどうか、代替杖に切り換えるべきか等の判断を材量として利用できるようになる。
【0041】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、杖100に操作部154、操作部に設けられた少ないスイッチによる設定を補助するためのLCD155を設ける例を説明した。しかし、これらによる各種設定を解析装置側で行うようにし、杖100には操作部154、LCD155を排除するようにしても良い。このようにする理由は、特に高齢者に、操作部154やLCD155を利用しての各種設定を強いるのは難しい面がある点と、操作部154、LCD155を杖100から排除することで、杖のコストが下げることができる点が挙げられる。
【0042】
この場合、杖100は図1又は図2の構成から、操作部154、LCD155が無くなり、マイコン161の処理が若干変更になるだけであり、それは以下の説明から明らかなる。そこで、第2の実施形態における解析装置について説明する。解析装置のハードウェアに係る構成は第1の実施形態と同じとする。そして、本第2の実施形態における解析装置は、例えば医師や杖の利用を指導する特定のユーザが操作することとし、杖の利用する多数の患者を一元管理する例を説明する。その処理手順を図9のフローチャートに従って説明する。なお、この図9のフローチャートは、第1の実施形態における図6に置き換わるものであり、ユーザが指示することで起動する。
【0043】
先ず、ステップS41にて、通信する杖の利用者を特定する情報(ID等)をキーボード205より入力する。この結果、HDD204に格納された全杖利用者のうちの一人が特定できることとなる。
【0044】
次に、ステップS42において、杖100との通信が可になるのを待つ。通信が可能になると、ステップS43に進んで、杖100に対する各種設定を行うのか、杖100から測定データを取得するのかを選択するメニューを表示し、ユーザに選択させる。そして、ステップS44にて、ユーザの選択が、杖に対する設定であるか、杖からのデータ取得であるかを判断する。
【0045】
ユーザの選択が、杖に対する設定であると判断した場合、処理はステップS45に進み、各種パラメータを設定する。パラメータは、杖を利用者の体重、その杖の免荷率(2つ)である。また、そこから閾値Th1、Th2を算出する。なお、杖の利用者が既に特定されているので、その情報をHDDのデータベースから読み込み、必要に応じて編集するようにしてもよい。
【0046】
この後、ステップS46に進み、杖100に向けて設定、ならびに算出したデータを転送し、メモリ162にそれを格納させる。この結果、杖100のバッテリー157が切れてしまって、メモリ162内のデータが消えてしまって場合や、杖を最初に利用する場合、更には、体重等が変動した場合にも対処できるようになり、マイコン161は、歩行監視モードにおける処理が可能になる。
【0047】
一方、杖100からのデータ取得を選択した場合、処理はステップS44からステップS47に進み、測定データの取得、登録、表示処理を行う。このステップS47の処理は図6のステップS32以降と同じで良いので、その説明は省略する。ただし、登録対象となるのは、ステップS41で特定した杖利用者に割り当てられたデータベース領域となる。
【0048】
以上説明したように本第2の実施形態によれば、杖に対する設定に係る操作を、解析装置側で行うので、杖利用者に係る操作に係る負担を軽減でき、且つ、杖に係るコストも軽減できる。更に、杖には操作部が無くなるので、基本的に誤操作という問題がなくなる。更に、解析装置のユーザが、医師又は杖の指導者であった場合、複数の利用者に対して1つの解析装置で対処できるので、システムとして見た場合のコストは更に低いものとすることができる。
【0049】
[第3の実施形態]
上記第1,第2の実施形態では、解析装置が杖内部の測定データを取得するため互いに通信するためのインタフェースを有するものであったが、例えば杖100のメモリ162が杖100から脱着できるようにし、解析装置ではメモリカードのリーダ/ライタを有するようにしても構わない。
【0050】
[第4の実施形態]
上記第1,第2の実施形態で用いる杖は、圧力センサ152や制御部153を内蔵し、LEDを有するものであった。しかし、圧力センサ152、制御部153、LED156を、通常の杖に装着できるようにした例を第3の実施形態として説明する。
【0051】
図10(A)は第3の実施形態における杖アタッチメントの外観斜視図を示している。この杖アタッチメントは、LED156並びに制御部(図2の符号153に相当)を内蔵する部品301、手のひらと杖のグリップとで挟まれる圧力を検出する部分(図1の圧力センサ152に相当)303、並びに、部品301と302とを連結する可撓性部分302で構成される。部品301、303それぞれの両脇には、T字形のグリップの先端、後端を捲回、固定するための面ファスナー301a,b、303a,bが設けられている。
【0052】
図10(B)は、グリップ部がT字形の杖に本第3の実施形態の杖アタッチメントを、上記面ファスナー301a,b,303a,bを用いて固定した状態の側面図を示している。
【0053】
図10(B)に示すように、多くのT字形グリップの杖に装着できることとなり、多くの杖の利用者の利用中の杖の評価にも利用できることとなる。
【符号の説明】
【0054】
100:杖 101:グリップ 102:ポール 151:間隙 152:圧力センサ 153:制御部 154:操作部 155:LCD 156:LED 157:バッテリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行の支援機具である杖、並びにそれを用いたシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の移動動作の中で、歩くという移動動作は人間が獲得した自然な動作であり、生活していくうえも重要な動作と言える。年齢的、或いは、足腰の疾患等により歩行が困難になってくると、歩行支援用具である杖を用いて歩行動作を補うのが一般的である。
【0003】
杖の種類には、松葉杖、ロフストランド杖、アンダーアームクラッチ、接地する脚が複数ある多脚杖、接地する脚が1本の杖等、様々である。これらの杖は、その患者の様態や環境に応じたものが利用されている。
【0004】
近年の杖は、血圧、脈拍、体温等のライフモニタを接続でき、検出した情報を発信する杖も知られている(特許文献1)。
【0005】
更にまた、視覚障害者が利用する杖に、方向の前方に障害物があること超音波センサで検出し、圧電素子による振動で利用者に知らせる杖も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−325600号公報
【特許文献2】特開2004−015092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2に係る技術は、「杖」に新たな可能性を見出している点で望ましいものではあるが、「杖」本来の歩行動作に注視しているものではない。
【0008】
本願発明者等は、杖を利用する上で最も重要な点は、その杖が利用者の歩行動作を補っているかどうかであり、その観点からすると、現状では、杖に依存して歩行動作を行っている者自身、或いは、その担当医や歩行の指導役が、歩行動作における杖に対する依存度を客観的に把握できていない点が問題であると考えた。
【0009】
例えば、今使用中の杖の耐久度が低く、より加重をかけることができる種類の杖に切り換えるかどうかの判断や、杖無しの通常歩行が行えるまで身体の回復が進んだ場合における、杖無しでの歩行へ切り換えの判断等は、利用者自身の主観、或いは、担当医等の経験や勘で行っているのが現状である。
【0010】
上記のように歩行動作における杖に対する依存度を客観的に知ることができれば、杖についての知識が乏しい方や経験の浅い医師等であっても、歩行動作の適切なアドバイスを与えることができるようになる。そこで、本発明は、杖使用者の杖に対する依存度や利用に関する情報を収集し、杖の利用の適正を判定可能にする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による杖は、以下の構成を備える。すなわち、
歩行動作を補助する杖であって、
杖利用者から杖本体に係る負荷を検出するセンサと、
前記杖利用者の前記杖を用いた歩行動作における負荷を前記センサで検出し、当該検出した負荷に係る情報を所定のメモリに格納する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、杖使用者の杖に対する依存度や利用に関する情報を収集でき、杖の利用の適正を客観的に判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態における杖の断面と上面図である。
【図2】杖に内蔵される制御部及びその周辺の回路構成を示す図である。
【図3】実施形態における制御部における初期設定処理を示すフローチャートである。
【図4】利用者の歩行中の制御部における処理を示すフローチャートである。
【図5】実施形態における歩行情報の集計、解析を行う情報処理装置のブロック構成図である。
【図6】実施形態における歩行情報の集計、解析を行う情報処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図7】解析処理結果の表示例を示す図である。
【図8】解析処理結果の表示例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における歩行情報の集計、解析を行う情報処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第4の実施形態における装着型装置と杖への装着例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。杖には、松葉杖、ロフストランド杖、多脚杖、一脚杖等、その全体の形状だけでも多種類存在する。本実施形態では、一脚杖、特に、広く使われているグリップ部の形状がT字形の杖を例として説明することとするが、これは一例である点に留意願いたい。
【0015】
[第1の実施形態]
図1(A)に実施形態における杖100の断面構造図を、図1(B)に杖100のグリップ(柄)101の上面図を示す。実施形態における杖100は、先に示したようにグリップ101とポール102とでT字形をなす杖である。ポール102の上部(グリップ101側)内部には、圧力センサ152、ワンチップの制御部153、並びに、バッテリ157(ボタン電池等)を収容している。そして、ポール102の下部の上端が、ポール102の上部に挿入され、且つ、上部に設けられた圧力センサ152に当接するようなっている。そして、利用者がグリップ101に体重をかけた際に、その負荷(荷重、重量)に応じた圧力が圧力センサ152にかかるようにするため、ポール101の上部と下部が微小距離だけスライド可能にするための間隙151がポール102に設けられている。
【0016】
また、ポール102の上部には、複数のスイッチで構成される操作部154が設けられている。また、グリップ101の先端部にはLED156、中央部近傍にはLCD(液晶)ディスプレイ155が埋め込まれている。なお、LED156がグリップ先端に設けた理由は、グリップ部分をつかんだ状態でも利用者が目視できるようにするためである。
【0017】
図2は制御部153の構成と、その周辺回路との接続関係を示す図である。図示の通り、制御部153には、圧力センサ152、操作部154、LED156、LCD155が接続関係され、これらはバッテリ157で駆動するようになっている。制御部153は、マイクロコンピュータ(マイコン)161、メモリ162、タイマ163、並びに、外部と通信するインタフェース164を有する。メモリ162はマイコン161の処理手順(後述する図3、図4のフローチャートに係るプログラム)を記憶するROMと、圧力データを記憶するためのRAMで構成されている。なお、実施形態におけるインタフェース164は電気的な接続端子を不要とするため無線インタフェースとするが、外部装置と通信できれば良いのでその種類は問わず、例えばUSBインタフェースであっても良い。USBインタフェースにする場合、その接続端子を杖の何処かに設けなければならない反面、バッテリ157が再充電可能な2次電池とした場合、外部装置との通信の際のUSBからのバスパワーを利用して再充電可能になるというメリットがある。タイマ163は、時刻を保持するためのものである。
【0018】
一般に、実施形態で示したT字形の一脚杖の場合、利用者の体重の20%までその杖に負担させて歩行するのに適するとされている。つまり、体重60kgの人の場合、その20%に相当する12kgを杖に分担させ歩行動作が行え、結果、自身の足や腰等に係る負担がその分だけ免れることになる。自身の体重を杖に分散させることを免荷といい、その率を免荷率という。最大免荷率は、利用する杖の種類(形状)に応じたものとなる。例えば、ロフストランド杖の場合、免荷率が更に高く30%とすることができる。
【0019】
さて、実施形態における杖100は、T字形の一脚杖であるので、正常な利用での免荷率は上記の通り20%であり、体重の最大20%の範囲内の加重をかけての歩行が正常な範囲と言える。ただし、杖に係る最大負担がある程度以下の場合、その杖が役立っていない、又は、杖が不要と判断する指針として考えることができる。実施形態では、その指針となる免荷率を5%とした。一方、最大負荷が免荷率20%を超える場合、その利用者の歩行運動が困難な状況にある(歩行に疲れが出ている)、或いは、その状況が長く続く場合には、許容免荷率の高い形状の杖への判断材量と捉える指針にも利用できる。
【0020】
以上の考察から、実施形態では体重の5%、20%(これらは杖の種類に応じて設定する)に相当する閾値Th1、Th2(Th1<Th2)を設定し、歩行中の最大圧力P(以下、この圧力を歩行圧力といい、その値を歩行圧力値という)との関係が、
P≦Th1
Th1<P≦Th2
Th2<P
の3段階のいずれに在るかを、利用者に知らしめるともに、歩行圧力値Pを示すデータを時刻共に記憶保持し、後の解析に利用できるようにした。LED156は、上記3段階のいずれかであるかを報知するために使用される。このLED156は、実際は緑色、黄色、赤色の3つのLED素子を内蔵し、利用者から見れば1つのLEDに見えるものとなっている。P≦Th1の場合には緑色、Th1<P≦Th2の場合には黄色、Th2<Pの場合には赤色で発光させる(詳細後述)。
【0021】
また、歩行圧力Pの求め方は次の通りである。実施形態におけるT字形の一脚杖を利用した歩行動作の場合、二歩進む毎に、地面(床)への接地と地面からの引き上げ操作が繰り返される。そこで、二歩分を進むに要する時間が最大で5秒と考え、それを最大周期とする。そして、その最大周期内の杖の接地状態の間で圧力センサ152で検出した最大圧力(ピーク)を上記歩行圧力Pとした。ただし、この条件の下で歩行圧力Pが、それぞれが上記最大周期以内に、5回連続して検出された場合、歩行中であると判断することとした。なお、これらの条件で本願発明を限定されるものではなく、適宜設定できるようにしても良い。
【0022】
図3は実施形態における制御部153の初期設定に係る処理を示すフローチャートである。バッテリ157が正常な電力が供給しつつある場合には、歩行監視モードになっており、図3の処理は、操作部154に設けられた中の所定スイッチに対して所定操作(例えば長押し)を行うと、この初期設定モードに移行する。
【0023】
マイコン161は、先ず、ステップS11にて、操作者に体重の入力を行なわせる。体重の入力は、例えば初期値として「50kg」をLCD155に表示し、1kg単位の増加又は減少の操作、並びに、決定操作を操作部154に設けられたスイッチで行なわせるものとする。マイコン161は、体重の入力を行なわせると、その体重をメモリ162に格納保存する。
【0024】
次いで、マイコン161は、ステップS12において、免荷率(2つ)を設定させる。これも体重と同様に操作部154により入力させ、メモリ162に記憶させる。実施形態では5%、20%が入力されるものとして説明を続ける。この入力が行われると、ステップS13に進んで、体重と2つの免荷率から閾値Th1、Th2を算出する。そして、ステップS14に進み、算出した閾値Th1、Th2をメモリ162に記憶させ、本処理を終える(歩行監視モードに戻る)。
【0025】
次に、図4のフローチャートに従い歩行監視モードを説明する。
【0026】
先ず、マイコン161は圧力センサ152による圧力を検出し(ステップS21)、タイマ163の計時時間と検出した圧力値に基づき歩行中かどうかを判定する(ステップS22)。歩行中かどうかの判定基準は先に説明した通りである。歩行中ではないと判断した場合には、再びステップS21の処理に戻る。
【0027】
さて、歩行中であると判定すると、ステップS23に進み、それまでに検出した1周期分の圧力の中の最大圧力である歩行圧力Pと、その時刻とをペアにしてメモリ162に順次記憶する。次いで、ステップS24、25にて、検出した着目周期における歩行圧力Pが3段階のいずれに属しているかを判定する。P≦Th1の場合にはLED156を緑色で点灯駆動する(ステップS26)。また、Th1<P≦Th2の場合にはLED156を黄色で点灯駆動する(ステップS27)。そして、Th2<Pの場合にはLED156を赤色で点灯駆動する(ステップS28)。いずれの場合であっても、処理はステップS21に戻る。
【0028】
以上が歩行監視モードの処理である。実施形態における杖100内の制御部153の処理は上記2つのモードに加えて、計測データ転送モードが存在する。この計測データ転送モードは、操作部154からの所定のスイッチの所定の操作で移行するものであって、単にインタフェース164を使って外部の装置からの要求に応じてメモリ162内のデータ(体重、免荷率、歩行時における時刻と最大圧力で構成される歩行データ)を送信するものであり、そのデータを受信し解析する側の装置の説明から明らかになるので、ここでの詳述は省略する。
【0029】
以上説明したように本実施形態よれば、杖100に設けられたLED156の点灯色から、自身の杖に対する免荷率の多い/少ないを客観的に把握できるようになる。また、この結果を踏まえて、休憩を取るとかの判断材量にも活用できる。
【0030】
次に、実施形態における杖100からの計測データ転送モードで転送されたデータを解析する解析装置の構造とその処理内容について説明する。図5は実施形態における解析装置のブロック構成図である。この装置は、パーソナルコンピュータ等に代表される情報処理装置で代替できるものであり、図示の如く、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、キーボード205、ポインティングデバイス(マウス等)206、
ディスプレイ207、並びに、杖100と通信するインタフェース208を有する。実施形態の場合、杖100内部のインタフェースは無線通信インタフェースとしているので、このインタフェース208も同様のインタフェースとなる。
【0031】
本装置の電源がONになると、CPU201はROM202のブートプログラムに従って起動し、HDD204からOS(オペレーティングシステム)をRAM203にロードすることで、キーボード205、ポインティングデバイス206を用いて操作が可能になる。そして、ユーザが、杖データの解析を行うアプリケーションプログラムを実行させることで、本装置が解析装置として機能することとなる。
【0032】
図6は解析アプリケーションプログラムを実行した際のCPU201の処理手順のフローチャートを示している。以下、同図に従い、解析装置の処理内容を説明する。
【0033】
先ずステップS31において、杖100との通信をインタフェース208を介して開始し、通信可となるのを待つ。杖100との通信が可となると、杖100に対して測定データの送信を要求し、そのデータを受信する(ステップS32)。正常にデータ受信が行えた場合、CPU201は、杖100に対して歩行圧力と時刻のデータの消去を指示する。ただし、体重や免荷率といったデータは、従前のものが利用できるので、消去対象からは除外する。
【0034】
次いで、ステップS33にて、受信したデータから、その杖の使用状況に関する状態値を算出する。受信したデータには、体重、免荷率、閾値Th1、Th2に後続して、多数の{歩行圧力P、時刻}の形式のデータが連続する。そこで、CPU201は、歩行中と判定されや期間長、一日のトータルの歩行時間、一日の歩行圧力Pの中の最大値、1分毎の歩行圧力Pの平均値を算出し、受信したデータと共にHDD204に既に構築されたデータベースに保存登録する(ステップS34)。
【0035】
この後、ステップS35にて、どのような解析結果の表示を行うかをユーザに選択させ、ステップS36にてその選択した解析内容に従ってデータを表示する。そして、ステップS37にて、他の形式の表示が指示されたと判断する限りは、ステップS35、36を繰り返す。
【0036】
表示するデータの形式の例を示すのが図7、図8である。図7は、操作者が指定した或る一日の歩行状況の表示例を示している。図示では、指定された日の杖を利用した最初の歩行を検出から、その日の最後の同歩行の期間を範囲とし、その間の1分単位の平均歩行圧力Pの推移を示している。縦軸は免荷率(圧力でも良い)を示し、免荷率20%、5%に相当する位置に図示のように水平方向に破線で表示し、どの時間帯で負荷が大きかったか、軽かったかが明瞭になるようにした。また、図示の水平軸は時刻を示し、連続して歩行した期間に対応する時間帯については太線で示すことで、その歩行時間が容易に判別できるようになっている。
【0037】
図8は過去1ヵ月の一日単位の歩行圧力の最大値、平均値の推移を示す画面の例であるこの例の場合、直近では最大歩行圧力も免荷率20%を下回っているので、疾患の回復傾向が顕著なことが理解できる。例えば、使用中の杖が多脚杖やロフストランド杖である場合には、それより免荷率の低い杖への切り換えを進める材量としても利用できる。
【0038】
日々の変化を捉える方法としては、図8に示すようなグラフでもよく、また図8に示すグラフ中の一定時間における積算値(歩行圧力×時間の総和)でも構わない。
【0039】
なお、歩行圧力と時刻のデータから導き出せるものであれば良いので、図7、図8に限るものではないし、他の切り口での情報解析結果を表示しても構わない。
【0040】
以上説明したように本実施形態の解析装置によれば、杖利用者の歩行状況が一日等の短い期間や、1ヶ月と言った比較的長い期間で客観的に把握できるようになり、利用者の杖の依存度や勿論のこと、今現在利用している杖止めるべきかどうか、代替杖に切り換えるべきか等の判断を材量として利用できるようになる。
【0041】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、杖100に操作部154、操作部に設けられた少ないスイッチによる設定を補助するためのLCD155を設ける例を説明した。しかし、これらによる各種設定を解析装置側で行うようにし、杖100には操作部154、LCD155を排除するようにしても良い。このようにする理由は、特に高齢者に、操作部154やLCD155を利用しての各種設定を強いるのは難しい面がある点と、操作部154、LCD155を杖100から排除することで、杖のコストが下げることができる点が挙げられる。
【0042】
この場合、杖100は図1又は図2の構成から、操作部154、LCD155が無くなり、マイコン161の処理が若干変更になるだけであり、それは以下の説明から明らかなる。そこで、第2の実施形態における解析装置について説明する。解析装置のハードウェアに係る構成は第1の実施形態と同じとする。そして、本第2の実施形態における解析装置は、例えば医師や杖の利用を指導する特定のユーザが操作することとし、杖の利用する多数の患者を一元管理する例を説明する。その処理手順を図9のフローチャートに従って説明する。なお、この図9のフローチャートは、第1の実施形態における図6に置き換わるものであり、ユーザが指示することで起動する。
【0043】
先ず、ステップS41にて、通信する杖の利用者を特定する情報(ID等)をキーボード205より入力する。この結果、HDD204に格納された全杖利用者のうちの一人が特定できることとなる。
【0044】
次に、ステップS42において、杖100との通信が可になるのを待つ。通信が可能になると、ステップS43に進んで、杖100に対する各種設定を行うのか、杖100から測定データを取得するのかを選択するメニューを表示し、ユーザに選択させる。そして、ステップS44にて、ユーザの選択が、杖に対する設定であるか、杖からのデータ取得であるかを判断する。
【0045】
ユーザの選択が、杖に対する設定であると判断した場合、処理はステップS45に進み、各種パラメータを設定する。パラメータは、杖を利用者の体重、その杖の免荷率(2つ)である。また、そこから閾値Th1、Th2を算出する。なお、杖の利用者が既に特定されているので、その情報をHDDのデータベースから読み込み、必要に応じて編集するようにしてもよい。
【0046】
この後、ステップS46に進み、杖100に向けて設定、ならびに算出したデータを転送し、メモリ162にそれを格納させる。この結果、杖100のバッテリー157が切れてしまって、メモリ162内のデータが消えてしまって場合や、杖を最初に利用する場合、更には、体重等が変動した場合にも対処できるようになり、マイコン161は、歩行監視モードにおける処理が可能になる。
【0047】
一方、杖100からのデータ取得を選択した場合、処理はステップS44からステップS47に進み、測定データの取得、登録、表示処理を行う。このステップS47の処理は図6のステップS32以降と同じで良いので、その説明は省略する。ただし、登録対象となるのは、ステップS41で特定した杖利用者に割り当てられたデータベース領域となる。
【0048】
以上説明したように本第2の実施形態によれば、杖に対する設定に係る操作を、解析装置側で行うので、杖利用者に係る操作に係る負担を軽減でき、且つ、杖に係るコストも軽減できる。更に、杖には操作部が無くなるので、基本的に誤操作という問題がなくなる。更に、解析装置のユーザが、医師又は杖の指導者であった場合、複数の利用者に対して1つの解析装置で対処できるので、システムとして見た場合のコストは更に低いものとすることができる。
【0049】
[第3の実施形態]
上記第1,第2の実施形態では、解析装置が杖内部の測定データを取得するため互いに通信するためのインタフェースを有するものであったが、例えば杖100のメモリ162が杖100から脱着できるようにし、解析装置ではメモリカードのリーダ/ライタを有するようにしても構わない。
【0050】
[第4の実施形態]
上記第1,第2の実施形態で用いる杖は、圧力センサ152や制御部153を内蔵し、LEDを有するものであった。しかし、圧力センサ152、制御部153、LED156を、通常の杖に装着できるようにした例を第3の実施形態として説明する。
【0051】
図10(A)は第3の実施形態における杖アタッチメントの外観斜視図を示している。この杖アタッチメントは、LED156並びに制御部(図2の符号153に相当)を内蔵する部品301、手のひらと杖のグリップとで挟まれる圧力を検出する部分(図1の圧力センサ152に相当)303、並びに、部品301と302とを連結する可撓性部分302で構成される。部品301、303それぞれの両脇には、T字形のグリップの先端、後端を捲回、固定するための面ファスナー301a,b、303a,bが設けられている。
【0052】
図10(B)は、グリップ部がT字形の杖に本第3の実施形態の杖アタッチメントを、上記面ファスナー301a,b,303a,bを用いて固定した状態の側面図を示している。
【0053】
図10(B)に示すように、多くのT字形グリップの杖に装着できることとなり、多くの杖の利用者の利用中の杖の評価にも利用できることとなる。
【符号の説明】
【0054】
100:杖 101:グリップ 102:ポール 151:間隙 152:圧力センサ 153:制御部 154:操作部 155:LCD 156:LED 157:バッテリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行動作を補助する杖であって、
杖利用者から杖本体に係る負荷を検出するセンサと、
前記杖利用者の前記杖を用いた歩行動作における負荷を前記センサで検出し、当該検出した負荷に係る情報を所定のメモリに格納する制御手段と
を備える杖。
【請求項2】
外部の解析装置と通信するためのインタフェースと、
該インタフェースを介して前記メモリに格納された情報を前記解析装置に送信する送信手段と
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の杖。
【請求項3】
前記メモリは、前記杖から脱着自在であることを特徴とする請求項1に記載の杖。
【請求項4】
前記制御手段は、前記杖利用者の前記杖の接地から持ち上げまでの期間で検出された最大負荷を歩行圧力として前記メモリに格納することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の杖。
【請求項5】
前記杖利用者の体重の前記杖にかかる負荷の度合を判定するための比較基準となる閾値を設定する閾値設定手段と、
該閾値設定手段で設定した閾値と前記歩行圧力とを比較する比較手段と、
該比較手段による比較結果を表示する表示手段と
を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の杖。
【請求項6】
前記閾値設定手段で設定する免荷率は2つあって、1つは下限を示す第1の免荷率であって、もう1つは杖の形状に依存した上限を示す第2の免荷率であり、前記第1、第2の免荷率と、前記杖利用者の体重との積に基づき2つの閾値を設定することを特徴とする請求項5に記載の杖。
【請求項7】
前記センサ、前記制御手段は、杖のグリップ部を覆う部材に収容されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の杖。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の杖が有する前記メモリに格納された情報を解析し、前記杖利用者の歩行時の杖に係る負荷の推移を示す情報を表示する解析装置。
【請求項9】
歩行動作を補助する杖と、当該杖の利用者の前記杖に対する依存度を解析する解析装置で構成される杖システムであって、
前記杖は、
杖利用者から杖本体に係る負荷を検出するセンサと、
前記杖利用者の前記杖を用いた歩行動作における負荷を前記センサで検出し、当該検出した負荷に係る情報を所定のメモリに格納する制御手段とを有し、
前記解析装置は、
前記メモリに格納された情報を解析し、前記杖利用者の歩行時の杖に係る負荷の推移を示す情報を表示する手段を有する
ことを特徴とする杖システム。
【請求項1】
歩行動作を補助する杖であって、
杖利用者から杖本体に係る負荷を検出するセンサと、
前記杖利用者の前記杖を用いた歩行動作における負荷を前記センサで検出し、当該検出した負荷に係る情報を所定のメモリに格納する制御手段と
を備える杖。
【請求項2】
外部の解析装置と通信するためのインタフェースと、
該インタフェースを介して前記メモリに格納された情報を前記解析装置に送信する送信手段と
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の杖。
【請求項3】
前記メモリは、前記杖から脱着自在であることを特徴とする請求項1に記載の杖。
【請求項4】
前記制御手段は、前記杖利用者の前記杖の接地から持ち上げまでの期間で検出された最大負荷を歩行圧力として前記メモリに格納することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の杖。
【請求項5】
前記杖利用者の体重の前記杖にかかる負荷の度合を判定するための比較基準となる閾値を設定する閾値設定手段と、
該閾値設定手段で設定した閾値と前記歩行圧力とを比較する比較手段と、
該比較手段による比較結果を表示する表示手段と
を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の杖。
【請求項6】
前記閾値設定手段で設定する免荷率は2つあって、1つは下限を示す第1の免荷率であって、もう1つは杖の形状に依存した上限を示す第2の免荷率であり、前記第1、第2の免荷率と、前記杖利用者の体重との積に基づき2つの閾値を設定することを特徴とする請求項5に記載の杖。
【請求項7】
前記センサ、前記制御手段は、杖のグリップ部を覆う部材に収容されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の杖。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の杖が有する前記メモリに格納された情報を解析し、前記杖利用者の歩行時の杖に係る負荷の推移を示す情報を表示する解析装置。
【請求項9】
歩行動作を補助する杖と、当該杖の利用者の前記杖に対する依存度を解析する解析装置で構成される杖システムであって、
前記杖は、
杖利用者から杖本体に係る負荷を検出するセンサと、
前記杖利用者の前記杖を用いた歩行動作における負荷を前記センサで検出し、当該検出した負荷に係る情報を所定のメモリに格納する制御手段とを有し、
前記解析装置は、
前記メモリに格納された情報を解析し、前記杖利用者の歩行時の杖に係る負荷の推移を示す情報を表示する手段を有する
ことを特徴とする杖システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2013−48801(P2013−48801A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189252(P2011−189252)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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