束になった即席麺用生麺
【課題】既存の製造ラインを可能な限り維持し、かつ、特別な添加剤を使用せずに、湯戻し時にウェーブの少ないストレート麺となる即席麺の製造方法を提供すること。また、そのような即席麺の原料麺として有用な生麺の束を提供すること。
【解決手段】一対の切刃ロール間を通過させることによって麺生地を複数の麺線へと形成し、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層し、扁平な麺線の束として配列させる。このような状態の麺線は、そのまま蒸煮しても、湯戻し時に略直線状のストレート麺となる。
【解決手段】一対の切刃ロール間を通過させることによって麺生地を複数の麺線へと形成し、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層し、扁平な麺線の束として配列させる。このような状態の麺線は、そのまま蒸煮しても、湯戻し時に略直線状のストレート麺となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺の原料として使用した場合、湯戻ししたときに麺線自体のウェーブがつかないことを特徴とする即席麺用生麺の束に関する。また、本発明は、湯戻ししたときに麺線自体のウェーブがつかないことを特徴とする即席麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類の製造方法は、一般的に小麦粉・でん粉等の製麺原料を混合・混練して麺生地(ドウ)を形成し、これを所定厚さに圧延して帯状の麺帯を製造し、その麺帯を麺線切出し装置により所定太さの線状の麺線に切出して生麺線を製造する方法を基本としており、当該生麺線は、更にその後、生麺、乾麺、蒸麺、即席麺等の各種麺類の最終製品形態に応じて、裁断処理又は蒸煮処理等の所要の処理工程に移行され、加工製造されている。
【0003】
蒸麺及び即席麺では、麺線切出し後、蒸煮処理することがほぼ必須であり、麺線切出し装置と蒸煮装置とは、麺線搬送用コンベアが介在して、ほぼ連続的に工程が接続されており、麺の移送が自動化されている。
【0004】
従来の即席麺における麺線切出し装置においては、一対の切刃ロールが水平に又は適宜の傾斜を設けて配設され、その直下に誘導管が垂直方向に又は麺線搬送用コンベアの進行方向に対して後方傾斜させて設けられ、切出しされた麺線は該誘導管内において詰まらせ気味の状態にして屈曲化させ、これを下方に配設された搬送用コンベアに導き、その屈曲状態(ウェーブをつけた状態)で蒸煮装置に移行させ所要の屈曲麺を得るものであった(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
また、切出された麺線を、ローラー(筒状体)を用いて揺動させ、コンベア上に任意の波形を賦形した麺類を載置させる麺類賦形装置も知られている(特許文献2参照)。
【0006】
即席麺の製造においては、即席麺が工業的に大量生産するものであり、土地等のコスト等の面からも製造ラインも可能な限り短くし、設置スペースを小さくすることが理想である。ここで、上述のように誘導管内において詰まらせ気味の状態にしてウェーブをかけることによって、コンベア上に麺線が密集することになるため、製造ラインの物理的な長さを短縮することが可能となっていた。そして、この場合、切刃からの麺線の切出し速度よりもコンベアの搬送スピードが小さいものであった。
【0007】
一方、近年の消費者の嗜好の多様化より、即席麺においても、麺線にウェーブが少ない、略直線状のいわゆる「ストレート麺」と呼ばれる麺に対する需要も高まってきた。麺線にウェーブをかけずにストレートにする方法としては、切刃からの麺線の切出し速度にコンベアの搬送速度を近づけていく方法や、切刃から鉛直方向下向きに垂下させた麺線をそのまま切出して次の工程に移すという方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平4−38714号公報
【特許文献2】特公昭36−24040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した麺線を略直線状のストレート麺にする従来方法のうち、麺線の切出し速度にコンベアの搬送速度を近づけていく方法では、大量生産を考えた場合、ラインを長くすることが必要になる。その結果、設置スペースが大きくなるという問題があった。また、切刃から鉛直方向下向きに垂下させた麺線をそのまま切出す方法では、その後のα化等の処理が煩雑になりやすいという問題があった。
【0010】
また、特許文献2の麺類賦形装置は、麺類全体を加熱しやすいように賦形する装置であり、大量生産時に麺線をストレートに形成するための装置ではない。
【0011】
本発明は、既存の製造ラインを可能な限り維持し、かつ、特別な添加剤を使用せずに、湯戻し時にウェーブの少ないストレート化した麺となる即席麺の製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、そのような即席麺の原料麺として有用な生麺の束の提供を目的とする。
【0012】
なお、以下の記載において、「ストレート麺」とは、湯戻しした状態(喫食時の状態)で箸又はフォーク等で麺線をすくい上げると、ウェーブが少なく、略直線状の状態となる麺をいう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、従来までのライン長を可能な限り維持しつつ、ストレート麺を製造する方法を検討するに当たって、既存の即席麺の製造ラインをできるだけそのまま利用するという観点から、蒸し後の麺線を物理的に引っ張ってストレート化する方法に注目した。しかし、従来の製造方法で麺生地から調製したウェーブのかかった状態の麺線では、蒸し工程(蒸煮工程)によるα化の後に、麺線を引っ張ってもウェーブが強くなってしまっているために、その後の工程をどのように調整しても、湯戻し時にストレート麺となる即席麺を製造することは困難であった。
【0014】
そこで、本発明者らは、麺線の切出し工程において、種々の切出し条件を試験し、切出し後の麺線の状態がどのようなものであれば、喫食前の麺線のストレート化が可能となるかどうかを見出すことを目的として鋭意検討を行った。
【0015】
種々の切り出し条件を検討した結果、驚くべきことに蒸し後の麺線を引っ張ってストレート化できる場合とは、切出し後のコンベア上の麺の積層状態が、各麺線が隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲しながらコンベア上に積層し、コンベア上で隣り合う麺線同士が同様の湾曲状乃至屈曲状態を呈することのない状態(すなわち、麺線の流れが同調しない状態)であることを見出した。そして、この状態であれば、たとえ多層に積層されている状態であっても、蒸煮後に麺線を延伸すれば、ストレート化することができることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0016】
具体的に本発明は、
複数の麺線が積層した略扁平な即席麺用生麺の束であって、
隣り合う麺線が非並行状態で、略螺旋状となるように屈曲しつつ所定方向に向かって積層されており、
その積層状態のまま蒸煮され、延伸され、切断され、乾燥されることにより、湯戻し時に麺線が略直線状となることを特徴とする即席麺用生麺の束に関する。
【0017】
また、本発明は、
一対の切刃ロール間を通過させることによって麺生地を複数の麺線へと形成し、該麺線をカスリによって切刃ロールから剥ぎ取り、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層し、扁平な麺線の束として配列させる配列工程と、
前記配列工程後の麺線の状態を保持したまま、麺線を蒸煮する蒸煮工程と、
前記蒸煮工程後の麺線を一定方向に伸ばす延伸工程と、
前記延伸工程後の麺線の一定量を切断する切断工程と、
前記切断後の麺線を乾燥する乾燥工程と、
を有することを特徴とする即席麺の製造方法に関する。
【0018】
即席麺の製造方法においては、常法により製造された麺生地を、複数の環状溝を有する一対の切刃ロール間を通過させることのよって複数の麺線へと形成し、カスリによって麺線を切刃ロールから剥離させ、コンベア上へと落下させる。このとき、通常は誘導管を用いてコンベアへと落下する麺線の揺動を抑え、コンベア上で麺線が拡散しないようにしている。
【0019】
こうした従来の即席麺の製造方法では、コンベア上の麺線が詰まった状態となってウェーブが強くなるため、このままの状態の麺線をコンベアで蒸煮工程へと移送して蒸煮を行うと、その後に麺線を延伸しても、最終製品を食する前に湯戻しするときに、麺線にウェーブが残ってしまい、ストレート麺の状態にはならなかった。
【0020】
しかし、本発明の即席麺用生麺の束は、各麺線が隣り合う麺線とは非並行状態で、略螺旋状となるように屈曲しつつ所定方向に向かって積層されているために、麺線同士の接触部分が小さい。また、本発明の即席麺の製造方法では、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層するために、麺線同士の接触部分が小さい。このため、積層されたそのままの状態の麺線(麺線の束)をコンベアで蒸煮工程へと移送して蒸煮を行い、その後、麺線を延伸し、切断し、乾燥又はフライして最終製品となした場合、該最終製品を食する前に湯戻しするときに、麺線同士がきれいに離れ、ストレート麺の状態となる。
【0021】
ここで、本願でいう「並行状態」とは、隣り合う複数の麺線の流れが同調することにより、隣り合う複数の麺線全体として一つの纏まった形態を有する状態をいう。換言すれば、隣り合う複数の麺線がほとんど同じ状態でコンベア上に積層している状態をいう。
【0022】
一方、本願でいう「非並行状態」とは、隣り合う複数の麺線の流れが同調せず、それぞれ独立した流れを形成することによって、隣り合う複数の麺線全体又は一定部分が一つの纏まった形態を有しないランダムな状態をいう。
【0023】
このような、特別な装置や添加剤等を使用せず、湯戻し時の即席麺がストレート麺になるという本発明の特徴は、従来の即席麺用生麺及び即席麺の製造方法、並びにその寄せ集めからは、当業者といえども予測できない、独特な効果である。
【0024】
また、本願でいう「即席麺」とは、熱湯を注湯して一定時間湯戻しして喫食するものであり、ラーメンやうどんのような汁を有するタイプや、湯戻し後のお湯を捨てるやきそばタイプのような汁のないタイプがある。
【0025】
前記配列工程では、複数の麺線の束をコンベア上に配列させてもよい。複数の麺線の束を連続して配列することにより、大量生産が可能となるためである。
【0026】
前記切断工程においては、延伸工程で伸ばした一定量の麺線を、所定の長さに切断する。
【0027】
前記乾燥工程は、麺線を油で揚げるフライ工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の即席麺の製造方法は、従来の製造ラインを利用しつつ、コストやエネルギーをかけることなく、湯戻し時にストレート麺となる即席麺を大量製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】切刃ロールからコンベア上へと落下する麺線の状態を表す概念図であり、(a)は麺線の流れが同調する従来の即席麺の製造方法、(b)は麺線の流れが同調しない本発明の即席麺の製造方法である。
【図2】本発明の配列工程における、好ましいカスリの剥離歯の位置を表す概念図である。
【図3】本発明の配列工程における、切刃ロール周辺を示す概念図である。
【図4】従来の即席麺の製造方法におけるコンベア上の麺線の積層状態を表す概念図である。
【図5】比較例の即席麺の製造方法におけるコンベア上の麺線の積層状態を表す概念図である。
【図6】実施例の即席麺の製造方法におけるコンベア上の麺線の積層状態を表す概念図である。
【図7】本発明の麺線の状態を表す図であり、(a)は略螺旋状の麺線、(b)は隣り合う輪同士が重なり合った状態の麺線、(c)は螺旋の輪の大きさが一定でない部分が含まれる麺線である。
【図8】本発明の麺線の積層状態を表す図であり、(a)は略螺旋状の麺線の流れが同調して積層している状態、(b)は略螺旋状の麺線同士がコンベア搬送方向に位相がずれて積層している状態、(c)は略螺旋状の麺線同士がコンベア搬送方向に直交する方向に位相がずれて積層している状態である。
【図9】実施例の配列工程におけるコンベア上の麺線を撮影した写真である。
【図10】実施例の配列工程におけるコンベア上の麺線を別の角度から撮影した写真である。
【図11】従来例の配列工程におけるコンベア上の麺線を撮影した写真である。
【図12】比較例の配列工程におけるコンベア上の麺線を撮影した写真である。
【図13】比較例の配列工程におけるコンベア上の麺線を別の角度から撮影した写真である。
【図14】実施例の麺線の湯戻し時を撮影した写真である。
【図15】従来例の麺線の湯戻し時を撮影した写真である。
【図16】比較例の麺線の湯戻し時を撮影した写真である。
【図17】湯戻し時の実施例、従来例及び比較例の麺線を、水平な板上に静置した状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されない。
【0031】
(配列工程)
配列工程では、まず、定法により調製した麺生地を、一対の切刃ロール間を通過させることによって複数の麺線へと形成する。次に、麺線とカスリ剥離歯とを接触させることにより切刃ロールから麺線を剥離させ、稼働中のコンベア上に落下させる。
ここで、コンベアに落下する場合の麺線の状態やコンベアに落下後の麺線の積層状態は、麺線の切出し速度、コンベアの速度、切刃から麺線を剥離する際の位置等によって異なる。従って、これらの条件を調整することで本発明の積層状態となる麺線を得ることができる。具体的な切出しの方法の例について以下に説明する。
【0032】
通常の即席麺の製造方法では、切刃ロールから剥離した麺線は誘導管内へと通し、麺線の揺動が強制的に抑えられて、強いウェーブが麺線に付与されてしまう。このため、蒸煮後に麺線を延伸しても略直線状のストレートにはならない。
【0033】
また、切刃における任意の隣接する溝から剥離される麺線同士をコンベアの進行方向に対して同じ位置(隣接する麺線についてカスリ剥離歯との接触位置が切刃ロール周方向において同じ位置)に落下させると、該隣接する麺線同士が近接して落下するため互いに干渉して落下することが多い。すなわち図1(a)にあるように同調してコンベア上の落下し、麺線同士が面や線で重なった積層体となる(上述の「並行状態」の積層状態)。
【0034】
一方、本発明においては、誘導官を用いずに麺線がコンベアへの落下時に比較的自由に落下させつつ、コンベア上における麺線の落下位置がコンベアの進行方向に対して異なる位置とすることが好ましい。すなわち、切刃における任意の隣接する溝から剥離される麺線同士がコンベアの進行方向に対して異なる位置(隣接する麺線についてカスリ剥離歯との接触位置が切刃ロール周方向において異なる位置)で剥離とすることが好ましい。
【0035】
このように切出すことで麺線を図1(b)にあるように同調させずに、略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に落下させて本発明の麺線の積層体を得ることが可能となる(上述の「非並行状態」の積層状態)。
【0036】
なお、このような積層状態とするためには、切刃ロールは、角刃又は丸刃その他どのような形状の切刃ロールを用いてもよい。
【0037】
上述したように、麺線とカスリ剥離歯との接触位置は、切刃ロール周方向において異なる複数箇所存在することが好ましい。1個のカスリに切刃ロール周方向において異なる位置である複数箇所に剥離歯が存在していれば、そのようなカスリを1個設置すればよい。
また、切刃ロール周方向において同じ位置である複数箇所に剥離歯が存在している通常のカスリであれば、切刃ロール周方向において異なる位置に、複数個のカスリを設置すればよい。
【0038】
ここで、「切刃ロール周方向において異なる」とは、図2に示したように、カスリ1の剥離歯2a及び2bが、切刃ロール4a(又は4b)の外周面の異なる位置にあることを意味する。なお、剥離歯2a及び2bの先端部3a及び3bは、切刃ロール4a(又は4b)の回転中心10からの位置が異なった位置にあることがより好ましい。カスリ1の剥離歯の枚数は、2枚に限らず、2枚以上であってもよい。例えば、4枚や6枚が挙げられる。
【0039】
なお、1個のカスリに切刃ロール周方向において異なる位置である複数箇所に剥離歯が存在させる場合、隣接する剥離歯について交互に長さを変えるか、又は交互に該先端部付近を屈曲又は湾曲させる方法が有効である。
【0040】
切刃ロールの麺線切出し速度は、コンベア搬送速度よりも大であることが必要となる。この点を具体的に説明すると、麺線の切出し速度がコンベア搬送速度と同じであるとコンベア状の麺線は直線状になる。次に、麺線切出し速度がコンベア搬送速度よりも大きくなると、麺線は図3の破線7で示したように、ジグザグ状でコンベア上に配列されることになる。切刃ロールの麺線切出し速度がコンベア搬送速度よりもさらに大きくなれば、麺線は図3の実線8で示したような、従来得られなかった略螺旋状でコンベア上に配列される。そして、これらの略螺旋状の麺線が連続的に堆積することで略螺旋状の麺線が重なり合った積層体を得ることができる。
【0041】
なお、切刃ロールの切出し速度は、コンベア搬送速度の3倍以上20倍以下の範囲であることが好ましい。3倍以下では、麺線がほぼ直線状に配列され、20倍を超えると麺線の積層量が多くなりすぎ、後述する蒸煮工程で蒸しが不十分になる場合があるという問題が生じるためである。また、良好な略螺旋状の麺線を得るには、切刃ロールの切出し速度は、コンベア搬送速度の5倍以上10倍以下の範囲であることがよりに好ましい。
【0042】
一対の切刃ロール4の中間位置付近には、図3の符号9で示したような上板(邪魔板)を設置することが好ましい。切刃ロールの切出し速度が高い場合、麺線の垂直上部方向への跳ね上がりが大きくなることがある。上板を設けることでこのような跳ね上がりの力を抑え、水平前方方向への揺動力に変換し、麺線が大きな螺旋を描くようにコンベア上に落下させることができる。
【0043】
図3では、コンベア上の麺線1本毎の状態を説明したが、次に、コンベア上の麺線の積層状態について、図4〜図6に基づいて説明する。なお、図4〜図6(各断面図を除く)においては、図中の上部から下部に向かってコンベアが搬送されているものとする。
【0044】
従来の即席麺の製法方法では、図4に示すように、複数の麺線が隣り合う麺線と並行状態で、コンベア搬送方向に対して直線的に折り重なるようにして積層している。ここで、図4の上面図はコンベアを真上から見た図であり、断面図は上面図のX−X断面図であり、概念図はコンベア上の麺線の流れを表す概念図である。なお、これら上面図、断面図及び概念図の意味は、後述する図5及び図6についても同様である(図5の断面図は上面図のY−Y断面図であり、図6の断面図は上面図のZ−Z断面図である)。
【0045】
この図4の状態では、それぞれの麺線に強いウェーブがかかるため、この状態のままコンベアで蒸煮工程へと移行して蒸煮すると、延伸工程で麺線を一定方向に引っ張っても麺線にウェーブが残ってしまう。その結果、最終製品である即席麺を喫食するために湯戻しした際にも、麺線にウェーブが残ってしまうことになり、ストレート麺にはならない。なお、この図4は、後述する従来例である。
【0046】
次に、従来の製造方法で使用する誘導管を取り外し、コンベア上に落下する麺線を揺動させることを試みた。このときのコンベア上の麺線は、図5に示すように、隣り合う麺線が並行状態でカーブを描くように、コンベア搬送方向に対して折り重なって積層している。この図5の状態では、麺線同士の重なりが図4の状態よりも強くなり、このままコンベアで蒸煮工程へと移行して蒸煮すると、蒸煮時に麺線同士がくっついてしまうため、続く延伸工程で麺線を所定方向に引っ張っても、最終製品である即席麺を喫食するために湯戻しした際にも、麺線同士がくっついた状態となる。なお、この図5は、後述する比較例である。
【0047】
これに対して、本発明の製法方法では、図6に示すように、略螺旋状の麺線が、隣り合う麺線とは非並行状態でランダムに積層した状態となっている。上面図及び断面図の比較から明らかなように、図6ではすべての麺線が横倒しとなっており、その点においても図4及び図5の麺線の積層状態と大きく異なる。
【0048】
麺線同士の接触部分は図4及び図5の場合と比較して小さく、このままコンベアで蒸煮工程へと移行して蒸煮しても、最終製品である即席麺を喫食するために湯戻しした際、麺線同士がくっついていないために、ストレート麺の状態となる。
【0049】
このストレート麺は、湯戻し後の麺線を箸等で持ち上げた場合の外観だけでなく、食感についても従来の即席麺と大きく異なる。特に、滑らかな「のどごし感」が好まれる日本そばについては、ストレート麺であることによって得られる食感改善効果は大きいと言える。
【0050】
ここで、図6に示す本発明の麺線積層状態は、すべての麺線が略螺旋状である必要はなく、本発明の効果を妨げない限度において、略螺旋状以外の状態の麺線を一部に含んでいてもよい。
【0051】
なお、図6に示す本発明の麺線積層状態は、図4又は図5に示した麺線積層状態と比較して、麺線が密に接触していないため、他の蒸煮条件が同じであれば、同じ量の麺線を蒸煮する場合に要する時間が短いという特徴をも有する。
【0052】
ここで、配列工程における麺線の積層状態についてさらに詳しく説明する。本発明においては、各麺線は図7(a)に示すような略螺旋状とすることが好ましいが、図7(b)に示すような、1本の麺線中で隣り合う輪同士が重なった状態としてもよい。麺線の積層状態において、上下方向の麺線同士の接触部分をより小さくすることができるためである。また、図7(c)に示すように一本の麺線中で螺旋の輪の大きさが異なっている部分が含まれていてもよい。
【0053】
なお、図5では、螺旋の輪がすべて左側にある状態について表したが、輪の向きが右側にある状態であってもよい。また、両方の螺旋が混在していてもよい。すなわち、螺旋の向きは限定されない。
【0054】
図7(a)〜(c)に示したような略螺旋状態の麺線は、麺線の流れが同調しないように積層している。図7(a)の螺旋状の麺線を例に説明すると、図8(a)に示すように、複数の麺線が並行状態で積層するのではなく、非並行状態で積層することが必要である。換言すれば、1本の麺線中の輪の位置がずれたような状態で積層することが必要である。
【0055】
具体的には、コンベア搬送方向に対して輪の位置がずれた図8(b)に示す状態か、コンベア搬送方向に直交する方向に輪の位置がずれた図8(c)に示す状態か、コンベア搬送方向に対して斜めの方向に輪の位置がずれた図8(d)に示す状態にあることが必要である。通常、切刃ロールから剥離するときに、隣接する麺線の流れが同調しなければ、図8(b)〜図8(d)に示した積層状態となる。
【0056】
図8(b)〜図8(d)に示した積層状態で麺線が積層されれば、10層〜16層程度までコンベア上に麺線が垂直方向に積層されてもよい。なお、各麺線がきれいな層になっているものの他、入り組んだ形態の層が含まれていてもよい。
【0057】
本発明では、一対の切刃ロール間に麺生地を連続的に投入し、複数の麺線の束をコンベア上に配列させることにより、即席麺の大量生産が可能となる。
【0058】
ただし、コンベア上に積層される麺線の状態を安定させる観点からは、麺線とカスリ剥離歯との接触位置が、切刃ロール周方向において異なる複数箇所存在しており、切刃ロールから剥離した麺線が誘導管を経ずにコンベア上に落下させ、麺線切出し速度がコンベア搬送速度よりも大とすることが好ましい。
【0059】
(蒸煮工程)
次に、蒸煮工程について説明する。配列工程後の麺線の束は、コンベアによってそのままの状態で蒸煮工程へと移行させる。本発明の蒸煮工程は、蒸煮時の麺線の状態が異なる以外は、通常の即席麺の製造方法における蒸煮工程と同じである。例えば、通常の蒸煮であれば、100℃で1〜2分間程度行う。この場合、連続的にコンベアに載せたままの麺線を蒸煮し、α化させることができる。
【0060】
(延伸工程)
次に、延伸工程について説明する。延伸工程では、蒸煮工程後の麺線を、一定方向に伸ばし、麺線の絡み合いを解消してまっすぐな状態へと調整する。本発明の延伸工程は、延伸させる前の麺線の状態が異なる以外は、通常の即席麺の製造方法における延伸工程とほぼ同じである。例えば、蒸煮時のコンベアから搬送速度を高めたコンベアを乗り移らせるという方法で、α化させた麺線の束をまっすぐな状態へと調整する。なお、この際の延伸するためのコンベアの速度は、切出し時の切刃ロールの切出し速度程度が好適である。
【0061】
延伸する場合には、蒸煮後の麺に水シャワーをかけたり、風冷する等して冷却してから延伸してもよい。また、麺の配合によっては、冷却せずとも延伸するだけで略直線状の麺線を得ることも可能である。
【0062】
(切断工程)
延伸工程後には、伸ばした麺線を所定の長さに切断する切断工程を有することが好ましい。最終製品である即席麺の麺量を一定量に調整するためである。この切断工程は、通常の即席麺における切断工程と同じであり、公知の切断方法を利用することができる。
【0063】
なお、このように蒸煮後に切断した蒸煮麺はそのまま包装して利用することも可能である。すなわち、蒸煮麺とは、生麺を蒸煮した後に切断及び袋詰めされ、チルド商品として流通しているものをいうが、本発明により製造した蒸煮麺はウェーブが無く、略直線状のストレートとなるため独特の食感を得ることができる。このため、汁有りタイプのラーメンやうどんにも、汁無しタイプのやきそばにも利用できる。本発明を利用することでウェーブのない蒸煮麺を連続的に大量生産できることになる。
【0064】
(乾燥工程)
即席麺を製造するためには、切断工程後に、リテーナに充填等してから麺線を乾燥させる乾燥工程を行う。乾燥工程としては、いわゆるノンフライ麺を製造するための公知の乾燥手段、例えば、熱風乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等を利用することが可能である。
【0065】
また、その他の乾燥方法として油熱乾燥法がある。具体的には、フライ工程として麺線を植物性油脂又は動物性油脂を用いて油揚げすることも可能である。このフライ工程も公知の油揚げ手段を利用することが可能である。
【0066】
乾燥工程又はフライ工程後の麺は、通常の即席麺の製造方法と同様に、適宜調味料等を添加した後、容器等へと充填され、密封処理が施された後、最終製品である即席麺として市場に供給される。
【0067】
[実施例]
本発明の実施例として、即席中華麺を製造した。まず、ミキサーや圧延機を用いて麺生地を調製した。この麺生地は、現在市販されている即席中華麺と同じである。
【0068】
(配列工程)
次に、圧延した麺生地を直径3.7cm、幅21.5cmである一対の切刃ロールへと供給し、直径1.0mmの断面が丸形の麺線へと成形し、誘導管は使用せずにコンベア上へと落下させた。なお、切刃ロールは、18番丸刃であり、カスリについては、任意の隣接する剥離歯2つが切刃ロールの周方向において異なるものを設置した。また、麺線の落下速度(切り出し速度)は1000cm/分、コンベア搬送速度は170cm/分とし、一対の切刃ロールの接合部と、コンベアとの間の距離は5cmとした。
【0069】
(蒸煮工程)
次に、配列工程後の麺線を、配列工程終了時の麺線の状態を維持させたまま、蒸煮装置へと導入して、100℃、2分間蒸煮処理した。
【0070】
(延伸工程)
次に、蒸煮工程後のα化された麺線を、蒸煮コンベアから搬送速度を速めたコンベアに乗り移らせるという手段によって延伸し、麺線同士の絡まり合いを解消し、麺線全体を直線状態とした。
【0071】
(切断工程)
次に、直線状態に延伸した麺線を、回転するロールカッターを用いて長さ約30cmとなるように切断した。
【0072】
(乾燥工程)
次に、切断工程後の麺線を、油熱乾燥という手段によって、150℃、2分間という条件でフライ乾燥させた。
【0073】
[従来例]
配列工程において、誘導管を使用して切り出し直後の麺線の揺動を抑制し、麺線にウェーブを付与してコンベア上へと落下させたこと以外、すべて、実施例と同様にしてフライ麺の麺線を製造した。これは、通常の即席麺の製造方法である。
【0074】
[比較例]
配列工程において、カスリの任意の隣接する剥離歯2つが切刃ロールの周方向の同じ位置にあること以外、すべて、実施例と同様にしてフライ麺の麺線を製造した。
【0075】
<配列工程時の麺線の状態>
まず、実施例の配列工程時におけるコンベア上の麺線積層状態を、図9及び図10に示す。実施例では、コンベア上の麺線は、各麺線が略螺旋状となっており、隣り合う麺線とは非並行状態であった。また、麺線の束全体としてランダムな状態であり、隣り合う麺線の流れが同調している部分は認められなかった。
【0076】
次に、従来例の配列工程時におけるコンベア上の麺線積層状態を、図11に示す。従来例では、コンベア上の麺線は、隣り合う麺線と並行状態であり、コンベア搬送方向に対して直線的に小さく折り重なって積層していた。麺線同士の接触部分は、大きかった。
【0077】
次に、比較例の配列工程時におけるコンベア上の麺線積層状態を、図12及び図13に示す。比較例では、コンベア上の麺線は、隣り合う麺線と並行状態であり、隣り合う麺線の流れが同調している部分が大部分であった。そして、麺線同士の接触部分は、非常に大きく、コンベア上にカーブしながら、隣り合う複数の麺線全体として一つの纏まった形態を有するように積層していた。
【0078】
<湯戻し時の麺線の状態>
実施例の乾燥工程後の麺線(フライ麺)70gを熱湯400mLに3分間浸漬し、湯戻し試験を行った。湯戻し後の麺線の状態を、図14に示す。実施例の麺線は、箸等で持ち上げた際にまっすぐに伸ばすことが可能であり、ストレート麺と呼べる状態であった。また、麺線同士がくっつくこともなかった。
【0079】
なお、実施例の乾燥工程の替わりに、熱風乾燥処理する乾燥工程を行った場合でも、湯戻し後の麺線状態は同様であった。
【0080】
次に、従来例の乾燥工程後の麺線(フライ麺)70gを熱湯400mLに3分間浸漬し、湯戻し試験を行った。湯戻し後の麺線の状態を、図15に示す。従来例の麺線はウェーブが強く、箸で持ち上げた際にまっすぐに伸ばすことができず、ストレート麺と呼べる状態ではなかった。
【0081】
次に、比較例の乾燥工程後の麺線(フライ麺)70gを熱湯400mLに3分間浸漬し、湯戻し試験を行った。湯戻し後の麺線の状態を、図16に示す。比較例の麺線は、麺線同士がくっついている部分が従来例以上に多いため、箸で持ち上げた際にまっすぐに伸ばすことができず、ストレート麺と呼べる状態ではなかった。
【0082】
実施例、従来例及び比較例の湯戻し後の麺線を、箸で持ち上げた後、水平な板上に静置した。その状態で上方向から各麺線を撮影した写真を、図17に示す。従来例では、各麺線にウェーブがかかっているため、ストレート麺と呼べる状態ではなかった。また、比較例では、各麺線のウェーブは小さいが、麺線同士が強固にくっついている部分が非常に多かった。
【0083】
これに対して、実施例では、各麺線にウェーブがかかっておらず、麺線同士がくっついている部分が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の即席麺の製造方法、及び生麺の束は、食品分野において有用である。
【符号の説明】
【0085】
1:カスリ
2a,2b:剥離歯
3a,3b:剥離歯の先端部
4:一対の切刃ロール
4a,4b:切刃ロール
5:コンベア
6:コンベアロール
7:ジグザグ状の麺線
8:略螺旋状の麺線
9:上板
10:切刃ロールの回転中心
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺の原料として使用した場合、湯戻ししたときに麺線自体のウェーブがつかないことを特徴とする即席麺用生麺の束に関する。また、本発明は、湯戻ししたときに麺線自体のウェーブがつかないことを特徴とする即席麺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類の製造方法は、一般的に小麦粉・でん粉等の製麺原料を混合・混練して麺生地(ドウ)を形成し、これを所定厚さに圧延して帯状の麺帯を製造し、その麺帯を麺線切出し装置により所定太さの線状の麺線に切出して生麺線を製造する方法を基本としており、当該生麺線は、更にその後、生麺、乾麺、蒸麺、即席麺等の各種麺類の最終製品形態に応じて、裁断処理又は蒸煮処理等の所要の処理工程に移行され、加工製造されている。
【0003】
蒸麺及び即席麺では、麺線切出し後、蒸煮処理することがほぼ必須であり、麺線切出し装置と蒸煮装置とは、麺線搬送用コンベアが介在して、ほぼ連続的に工程が接続されており、麺の移送が自動化されている。
【0004】
従来の即席麺における麺線切出し装置においては、一対の切刃ロールが水平に又は適宜の傾斜を設けて配設され、その直下に誘導管が垂直方向に又は麺線搬送用コンベアの進行方向に対して後方傾斜させて設けられ、切出しされた麺線は該誘導管内において詰まらせ気味の状態にして屈曲化させ、これを下方に配設された搬送用コンベアに導き、その屈曲状態(ウェーブをつけた状態)で蒸煮装置に移行させ所要の屈曲麺を得るものであった(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
また、切出された麺線を、ローラー(筒状体)を用いて揺動させ、コンベア上に任意の波形を賦形した麺類を載置させる麺類賦形装置も知られている(特許文献2参照)。
【0006】
即席麺の製造においては、即席麺が工業的に大量生産するものであり、土地等のコスト等の面からも製造ラインも可能な限り短くし、設置スペースを小さくすることが理想である。ここで、上述のように誘導管内において詰まらせ気味の状態にしてウェーブをかけることによって、コンベア上に麺線が密集することになるため、製造ラインの物理的な長さを短縮することが可能となっていた。そして、この場合、切刃からの麺線の切出し速度よりもコンベアの搬送スピードが小さいものであった。
【0007】
一方、近年の消費者の嗜好の多様化より、即席麺においても、麺線にウェーブが少ない、略直線状のいわゆる「ストレート麺」と呼ばれる麺に対する需要も高まってきた。麺線にウェーブをかけずにストレートにする方法としては、切刃からの麺線の切出し速度にコンベアの搬送速度を近づけていく方法や、切刃から鉛直方向下向きに垂下させた麺線をそのまま切出して次の工程に移すという方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平4−38714号公報
【特許文献2】特公昭36−24040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した麺線を略直線状のストレート麺にする従来方法のうち、麺線の切出し速度にコンベアの搬送速度を近づけていく方法では、大量生産を考えた場合、ラインを長くすることが必要になる。その結果、設置スペースが大きくなるという問題があった。また、切刃から鉛直方向下向きに垂下させた麺線をそのまま切出す方法では、その後のα化等の処理が煩雑になりやすいという問題があった。
【0010】
また、特許文献2の麺類賦形装置は、麺類全体を加熱しやすいように賦形する装置であり、大量生産時に麺線をストレートに形成するための装置ではない。
【0011】
本発明は、既存の製造ラインを可能な限り維持し、かつ、特別な添加剤を使用せずに、湯戻し時にウェーブの少ないストレート化した麺となる即席麺の製造方法の提供を目的とする。また、本発明は、そのような即席麺の原料麺として有用な生麺の束の提供を目的とする。
【0012】
なお、以下の記載において、「ストレート麺」とは、湯戻しした状態(喫食時の状態)で箸又はフォーク等で麺線をすくい上げると、ウェーブが少なく、略直線状の状態となる麺をいう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、従来までのライン長を可能な限り維持しつつ、ストレート麺を製造する方法を検討するに当たって、既存の即席麺の製造ラインをできるだけそのまま利用するという観点から、蒸し後の麺線を物理的に引っ張ってストレート化する方法に注目した。しかし、従来の製造方法で麺生地から調製したウェーブのかかった状態の麺線では、蒸し工程(蒸煮工程)によるα化の後に、麺線を引っ張ってもウェーブが強くなってしまっているために、その後の工程をどのように調整しても、湯戻し時にストレート麺となる即席麺を製造することは困難であった。
【0014】
そこで、本発明者らは、麺線の切出し工程において、種々の切出し条件を試験し、切出し後の麺線の状態がどのようなものであれば、喫食前の麺線のストレート化が可能となるかどうかを見出すことを目的として鋭意検討を行った。
【0015】
種々の切り出し条件を検討した結果、驚くべきことに蒸し後の麺線を引っ張ってストレート化できる場合とは、切出し後のコンベア上の麺の積層状態が、各麺線が隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲しながらコンベア上に積層し、コンベア上で隣り合う麺線同士が同様の湾曲状乃至屈曲状態を呈することのない状態(すなわち、麺線の流れが同調しない状態)であることを見出した。そして、この状態であれば、たとえ多層に積層されている状態であっても、蒸煮後に麺線を延伸すれば、ストレート化することができることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0016】
具体的に本発明は、
複数の麺線が積層した略扁平な即席麺用生麺の束であって、
隣り合う麺線が非並行状態で、略螺旋状となるように屈曲しつつ所定方向に向かって積層されており、
その積層状態のまま蒸煮され、延伸され、切断され、乾燥されることにより、湯戻し時に麺線が略直線状となることを特徴とする即席麺用生麺の束に関する。
【0017】
また、本発明は、
一対の切刃ロール間を通過させることによって麺生地を複数の麺線へと形成し、該麺線をカスリによって切刃ロールから剥ぎ取り、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層し、扁平な麺線の束として配列させる配列工程と、
前記配列工程後の麺線の状態を保持したまま、麺線を蒸煮する蒸煮工程と、
前記蒸煮工程後の麺線を一定方向に伸ばす延伸工程と、
前記延伸工程後の麺線の一定量を切断する切断工程と、
前記切断後の麺線を乾燥する乾燥工程と、
を有することを特徴とする即席麺の製造方法に関する。
【0018】
即席麺の製造方法においては、常法により製造された麺生地を、複数の環状溝を有する一対の切刃ロール間を通過させることのよって複数の麺線へと形成し、カスリによって麺線を切刃ロールから剥離させ、コンベア上へと落下させる。このとき、通常は誘導管を用いてコンベアへと落下する麺線の揺動を抑え、コンベア上で麺線が拡散しないようにしている。
【0019】
こうした従来の即席麺の製造方法では、コンベア上の麺線が詰まった状態となってウェーブが強くなるため、このままの状態の麺線をコンベアで蒸煮工程へと移送して蒸煮を行うと、その後に麺線を延伸しても、最終製品を食する前に湯戻しするときに、麺線にウェーブが残ってしまい、ストレート麺の状態にはならなかった。
【0020】
しかし、本発明の即席麺用生麺の束は、各麺線が隣り合う麺線とは非並行状態で、略螺旋状となるように屈曲しつつ所定方向に向かって積層されているために、麺線同士の接触部分が小さい。また、本発明の即席麺の製造方法では、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層するために、麺線同士の接触部分が小さい。このため、積層されたそのままの状態の麺線(麺線の束)をコンベアで蒸煮工程へと移送して蒸煮を行い、その後、麺線を延伸し、切断し、乾燥又はフライして最終製品となした場合、該最終製品を食する前に湯戻しするときに、麺線同士がきれいに離れ、ストレート麺の状態となる。
【0021】
ここで、本願でいう「並行状態」とは、隣り合う複数の麺線の流れが同調することにより、隣り合う複数の麺線全体として一つの纏まった形態を有する状態をいう。換言すれば、隣り合う複数の麺線がほとんど同じ状態でコンベア上に積層している状態をいう。
【0022】
一方、本願でいう「非並行状態」とは、隣り合う複数の麺線の流れが同調せず、それぞれ独立した流れを形成することによって、隣り合う複数の麺線全体又は一定部分が一つの纏まった形態を有しないランダムな状態をいう。
【0023】
このような、特別な装置や添加剤等を使用せず、湯戻し時の即席麺がストレート麺になるという本発明の特徴は、従来の即席麺用生麺及び即席麺の製造方法、並びにその寄せ集めからは、当業者といえども予測できない、独特な効果である。
【0024】
また、本願でいう「即席麺」とは、熱湯を注湯して一定時間湯戻しして喫食するものであり、ラーメンやうどんのような汁を有するタイプや、湯戻し後のお湯を捨てるやきそばタイプのような汁のないタイプがある。
【0025】
前記配列工程では、複数の麺線の束をコンベア上に配列させてもよい。複数の麺線の束を連続して配列することにより、大量生産が可能となるためである。
【0026】
前記切断工程においては、延伸工程で伸ばした一定量の麺線を、所定の長さに切断する。
【0027】
前記乾燥工程は、麺線を油で揚げるフライ工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の即席麺の製造方法は、従来の製造ラインを利用しつつ、コストやエネルギーをかけることなく、湯戻し時にストレート麺となる即席麺を大量製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】切刃ロールからコンベア上へと落下する麺線の状態を表す概念図であり、(a)は麺線の流れが同調する従来の即席麺の製造方法、(b)は麺線の流れが同調しない本発明の即席麺の製造方法である。
【図2】本発明の配列工程における、好ましいカスリの剥離歯の位置を表す概念図である。
【図3】本発明の配列工程における、切刃ロール周辺を示す概念図である。
【図4】従来の即席麺の製造方法におけるコンベア上の麺線の積層状態を表す概念図である。
【図5】比較例の即席麺の製造方法におけるコンベア上の麺線の積層状態を表す概念図である。
【図6】実施例の即席麺の製造方法におけるコンベア上の麺線の積層状態を表す概念図である。
【図7】本発明の麺線の状態を表す図であり、(a)は略螺旋状の麺線、(b)は隣り合う輪同士が重なり合った状態の麺線、(c)は螺旋の輪の大きさが一定でない部分が含まれる麺線である。
【図8】本発明の麺線の積層状態を表す図であり、(a)は略螺旋状の麺線の流れが同調して積層している状態、(b)は略螺旋状の麺線同士がコンベア搬送方向に位相がずれて積層している状態、(c)は略螺旋状の麺線同士がコンベア搬送方向に直交する方向に位相がずれて積層している状態である。
【図9】実施例の配列工程におけるコンベア上の麺線を撮影した写真である。
【図10】実施例の配列工程におけるコンベア上の麺線を別の角度から撮影した写真である。
【図11】従来例の配列工程におけるコンベア上の麺線を撮影した写真である。
【図12】比較例の配列工程におけるコンベア上の麺線を撮影した写真である。
【図13】比較例の配列工程におけるコンベア上の麺線を別の角度から撮影した写真である。
【図14】実施例の麺線の湯戻し時を撮影した写真である。
【図15】従来例の麺線の湯戻し時を撮影した写真である。
【図16】比較例の麺線の湯戻し時を撮影した写真である。
【図17】湯戻し時の実施例、従来例及び比較例の麺線を、水平な板上に静置した状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は、以下の記載に限定されない。
【0031】
(配列工程)
配列工程では、まず、定法により調製した麺生地を、一対の切刃ロール間を通過させることによって複数の麺線へと形成する。次に、麺線とカスリ剥離歯とを接触させることにより切刃ロールから麺線を剥離させ、稼働中のコンベア上に落下させる。
ここで、コンベアに落下する場合の麺線の状態やコンベアに落下後の麺線の積層状態は、麺線の切出し速度、コンベアの速度、切刃から麺線を剥離する際の位置等によって異なる。従って、これらの条件を調整することで本発明の積層状態となる麺線を得ることができる。具体的な切出しの方法の例について以下に説明する。
【0032】
通常の即席麺の製造方法では、切刃ロールから剥離した麺線は誘導管内へと通し、麺線の揺動が強制的に抑えられて、強いウェーブが麺線に付与されてしまう。このため、蒸煮後に麺線を延伸しても略直線状のストレートにはならない。
【0033】
また、切刃における任意の隣接する溝から剥離される麺線同士をコンベアの進行方向に対して同じ位置(隣接する麺線についてカスリ剥離歯との接触位置が切刃ロール周方向において同じ位置)に落下させると、該隣接する麺線同士が近接して落下するため互いに干渉して落下することが多い。すなわち図1(a)にあるように同調してコンベア上の落下し、麺線同士が面や線で重なった積層体となる(上述の「並行状態」の積層状態)。
【0034】
一方、本発明においては、誘導官を用いずに麺線がコンベアへの落下時に比較的自由に落下させつつ、コンベア上における麺線の落下位置がコンベアの進行方向に対して異なる位置とすることが好ましい。すなわち、切刃における任意の隣接する溝から剥離される麺線同士がコンベアの進行方向に対して異なる位置(隣接する麺線についてカスリ剥離歯との接触位置が切刃ロール周方向において異なる位置)で剥離とすることが好ましい。
【0035】
このように切出すことで麺線を図1(b)にあるように同調させずに、略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に落下させて本発明の麺線の積層体を得ることが可能となる(上述の「非並行状態」の積層状態)。
【0036】
なお、このような積層状態とするためには、切刃ロールは、角刃又は丸刃その他どのような形状の切刃ロールを用いてもよい。
【0037】
上述したように、麺線とカスリ剥離歯との接触位置は、切刃ロール周方向において異なる複数箇所存在することが好ましい。1個のカスリに切刃ロール周方向において異なる位置である複数箇所に剥離歯が存在していれば、そのようなカスリを1個設置すればよい。
また、切刃ロール周方向において同じ位置である複数箇所に剥離歯が存在している通常のカスリであれば、切刃ロール周方向において異なる位置に、複数個のカスリを設置すればよい。
【0038】
ここで、「切刃ロール周方向において異なる」とは、図2に示したように、カスリ1の剥離歯2a及び2bが、切刃ロール4a(又は4b)の外周面の異なる位置にあることを意味する。なお、剥離歯2a及び2bの先端部3a及び3bは、切刃ロール4a(又は4b)の回転中心10からの位置が異なった位置にあることがより好ましい。カスリ1の剥離歯の枚数は、2枚に限らず、2枚以上であってもよい。例えば、4枚や6枚が挙げられる。
【0039】
なお、1個のカスリに切刃ロール周方向において異なる位置である複数箇所に剥離歯が存在させる場合、隣接する剥離歯について交互に長さを変えるか、又は交互に該先端部付近を屈曲又は湾曲させる方法が有効である。
【0040】
切刃ロールの麺線切出し速度は、コンベア搬送速度よりも大であることが必要となる。この点を具体的に説明すると、麺線の切出し速度がコンベア搬送速度と同じであるとコンベア状の麺線は直線状になる。次に、麺線切出し速度がコンベア搬送速度よりも大きくなると、麺線は図3の破線7で示したように、ジグザグ状でコンベア上に配列されることになる。切刃ロールの麺線切出し速度がコンベア搬送速度よりもさらに大きくなれば、麺線は図3の実線8で示したような、従来得られなかった略螺旋状でコンベア上に配列される。そして、これらの略螺旋状の麺線が連続的に堆積することで略螺旋状の麺線が重なり合った積層体を得ることができる。
【0041】
なお、切刃ロールの切出し速度は、コンベア搬送速度の3倍以上20倍以下の範囲であることが好ましい。3倍以下では、麺線がほぼ直線状に配列され、20倍を超えると麺線の積層量が多くなりすぎ、後述する蒸煮工程で蒸しが不十分になる場合があるという問題が生じるためである。また、良好な略螺旋状の麺線を得るには、切刃ロールの切出し速度は、コンベア搬送速度の5倍以上10倍以下の範囲であることがよりに好ましい。
【0042】
一対の切刃ロール4の中間位置付近には、図3の符号9で示したような上板(邪魔板)を設置することが好ましい。切刃ロールの切出し速度が高い場合、麺線の垂直上部方向への跳ね上がりが大きくなることがある。上板を設けることでこのような跳ね上がりの力を抑え、水平前方方向への揺動力に変換し、麺線が大きな螺旋を描くようにコンベア上に落下させることができる。
【0043】
図3では、コンベア上の麺線1本毎の状態を説明したが、次に、コンベア上の麺線の積層状態について、図4〜図6に基づいて説明する。なお、図4〜図6(各断面図を除く)においては、図中の上部から下部に向かってコンベアが搬送されているものとする。
【0044】
従来の即席麺の製法方法では、図4に示すように、複数の麺線が隣り合う麺線と並行状態で、コンベア搬送方向に対して直線的に折り重なるようにして積層している。ここで、図4の上面図はコンベアを真上から見た図であり、断面図は上面図のX−X断面図であり、概念図はコンベア上の麺線の流れを表す概念図である。なお、これら上面図、断面図及び概念図の意味は、後述する図5及び図6についても同様である(図5の断面図は上面図のY−Y断面図であり、図6の断面図は上面図のZ−Z断面図である)。
【0045】
この図4の状態では、それぞれの麺線に強いウェーブがかかるため、この状態のままコンベアで蒸煮工程へと移行して蒸煮すると、延伸工程で麺線を一定方向に引っ張っても麺線にウェーブが残ってしまう。その結果、最終製品である即席麺を喫食するために湯戻しした際にも、麺線にウェーブが残ってしまうことになり、ストレート麺にはならない。なお、この図4は、後述する従来例である。
【0046】
次に、従来の製造方法で使用する誘導管を取り外し、コンベア上に落下する麺線を揺動させることを試みた。このときのコンベア上の麺線は、図5に示すように、隣り合う麺線が並行状態でカーブを描くように、コンベア搬送方向に対して折り重なって積層している。この図5の状態では、麺線同士の重なりが図4の状態よりも強くなり、このままコンベアで蒸煮工程へと移行して蒸煮すると、蒸煮時に麺線同士がくっついてしまうため、続く延伸工程で麺線を所定方向に引っ張っても、最終製品である即席麺を喫食するために湯戻しした際にも、麺線同士がくっついた状態となる。なお、この図5は、後述する比較例である。
【0047】
これに対して、本発明の製法方法では、図6に示すように、略螺旋状の麺線が、隣り合う麺線とは非並行状態でランダムに積層した状態となっている。上面図及び断面図の比較から明らかなように、図6ではすべての麺線が横倒しとなっており、その点においても図4及び図5の麺線の積層状態と大きく異なる。
【0048】
麺線同士の接触部分は図4及び図5の場合と比較して小さく、このままコンベアで蒸煮工程へと移行して蒸煮しても、最終製品である即席麺を喫食するために湯戻しした際、麺線同士がくっついていないために、ストレート麺の状態となる。
【0049】
このストレート麺は、湯戻し後の麺線を箸等で持ち上げた場合の外観だけでなく、食感についても従来の即席麺と大きく異なる。特に、滑らかな「のどごし感」が好まれる日本そばについては、ストレート麺であることによって得られる食感改善効果は大きいと言える。
【0050】
ここで、図6に示す本発明の麺線積層状態は、すべての麺線が略螺旋状である必要はなく、本発明の効果を妨げない限度において、略螺旋状以外の状態の麺線を一部に含んでいてもよい。
【0051】
なお、図6に示す本発明の麺線積層状態は、図4又は図5に示した麺線積層状態と比較して、麺線が密に接触していないため、他の蒸煮条件が同じであれば、同じ量の麺線を蒸煮する場合に要する時間が短いという特徴をも有する。
【0052】
ここで、配列工程における麺線の積層状態についてさらに詳しく説明する。本発明においては、各麺線は図7(a)に示すような略螺旋状とすることが好ましいが、図7(b)に示すような、1本の麺線中で隣り合う輪同士が重なった状態としてもよい。麺線の積層状態において、上下方向の麺線同士の接触部分をより小さくすることができるためである。また、図7(c)に示すように一本の麺線中で螺旋の輪の大きさが異なっている部分が含まれていてもよい。
【0053】
なお、図5では、螺旋の輪がすべて左側にある状態について表したが、輪の向きが右側にある状態であってもよい。また、両方の螺旋が混在していてもよい。すなわち、螺旋の向きは限定されない。
【0054】
図7(a)〜(c)に示したような略螺旋状態の麺線は、麺線の流れが同調しないように積層している。図7(a)の螺旋状の麺線を例に説明すると、図8(a)に示すように、複数の麺線が並行状態で積層するのではなく、非並行状態で積層することが必要である。換言すれば、1本の麺線中の輪の位置がずれたような状態で積層することが必要である。
【0055】
具体的には、コンベア搬送方向に対して輪の位置がずれた図8(b)に示す状態か、コンベア搬送方向に直交する方向に輪の位置がずれた図8(c)に示す状態か、コンベア搬送方向に対して斜めの方向に輪の位置がずれた図8(d)に示す状態にあることが必要である。通常、切刃ロールから剥離するときに、隣接する麺線の流れが同調しなければ、図8(b)〜図8(d)に示した積層状態となる。
【0056】
図8(b)〜図8(d)に示した積層状態で麺線が積層されれば、10層〜16層程度までコンベア上に麺線が垂直方向に積層されてもよい。なお、各麺線がきれいな層になっているものの他、入り組んだ形態の層が含まれていてもよい。
【0057】
本発明では、一対の切刃ロール間に麺生地を連続的に投入し、複数の麺線の束をコンベア上に配列させることにより、即席麺の大量生産が可能となる。
【0058】
ただし、コンベア上に積層される麺線の状態を安定させる観点からは、麺線とカスリ剥離歯との接触位置が、切刃ロール周方向において異なる複数箇所存在しており、切刃ロールから剥離した麺線が誘導管を経ずにコンベア上に落下させ、麺線切出し速度がコンベア搬送速度よりも大とすることが好ましい。
【0059】
(蒸煮工程)
次に、蒸煮工程について説明する。配列工程後の麺線の束は、コンベアによってそのままの状態で蒸煮工程へと移行させる。本発明の蒸煮工程は、蒸煮時の麺線の状態が異なる以外は、通常の即席麺の製造方法における蒸煮工程と同じである。例えば、通常の蒸煮であれば、100℃で1〜2分間程度行う。この場合、連続的にコンベアに載せたままの麺線を蒸煮し、α化させることができる。
【0060】
(延伸工程)
次に、延伸工程について説明する。延伸工程では、蒸煮工程後の麺線を、一定方向に伸ばし、麺線の絡み合いを解消してまっすぐな状態へと調整する。本発明の延伸工程は、延伸させる前の麺線の状態が異なる以外は、通常の即席麺の製造方法における延伸工程とほぼ同じである。例えば、蒸煮時のコンベアから搬送速度を高めたコンベアを乗り移らせるという方法で、α化させた麺線の束をまっすぐな状態へと調整する。なお、この際の延伸するためのコンベアの速度は、切出し時の切刃ロールの切出し速度程度が好適である。
【0061】
延伸する場合には、蒸煮後の麺に水シャワーをかけたり、風冷する等して冷却してから延伸してもよい。また、麺の配合によっては、冷却せずとも延伸するだけで略直線状の麺線を得ることも可能である。
【0062】
(切断工程)
延伸工程後には、伸ばした麺線を所定の長さに切断する切断工程を有することが好ましい。最終製品である即席麺の麺量を一定量に調整するためである。この切断工程は、通常の即席麺における切断工程と同じであり、公知の切断方法を利用することができる。
【0063】
なお、このように蒸煮後に切断した蒸煮麺はそのまま包装して利用することも可能である。すなわち、蒸煮麺とは、生麺を蒸煮した後に切断及び袋詰めされ、チルド商品として流通しているものをいうが、本発明により製造した蒸煮麺はウェーブが無く、略直線状のストレートとなるため独特の食感を得ることができる。このため、汁有りタイプのラーメンやうどんにも、汁無しタイプのやきそばにも利用できる。本発明を利用することでウェーブのない蒸煮麺を連続的に大量生産できることになる。
【0064】
(乾燥工程)
即席麺を製造するためには、切断工程後に、リテーナに充填等してから麺線を乾燥させる乾燥工程を行う。乾燥工程としては、いわゆるノンフライ麺を製造するための公知の乾燥手段、例えば、熱風乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等を利用することが可能である。
【0065】
また、その他の乾燥方法として油熱乾燥法がある。具体的には、フライ工程として麺線を植物性油脂又は動物性油脂を用いて油揚げすることも可能である。このフライ工程も公知の油揚げ手段を利用することが可能である。
【0066】
乾燥工程又はフライ工程後の麺は、通常の即席麺の製造方法と同様に、適宜調味料等を添加した後、容器等へと充填され、密封処理が施された後、最終製品である即席麺として市場に供給される。
【0067】
[実施例]
本発明の実施例として、即席中華麺を製造した。まず、ミキサーや圧延機を用いて麺生地を調製した。この麺生地は、現在市販されている即席中華麺と同じである。
【0068】
(配列工程)
次に、圧延した麺生地を直径3.7cm、幅21.5cmである一対の切刃ロールへと供給し、直径1.0mmの断面が丸形の麺線へと成形し、誘導管は使用せずにコンベア上へと落下させた。なお、切刃ロールは、18番丸刃であり、カスリについては、任意の隣接する剥離歯2つが切刃ロールの周方向において異なるものを設置した。また、麺線の落下速度(切り出し速度)は1000cm/分、コンベア搬送速度は170cm/分とし、一対の切刃ロールの接合部と、コンベアとの間の距離は5cmとした。
【0069】
(蒸煮工程)
次に、配列工程後の麺線を、配列工程終了時の麺線の状態を維持させたまま、蒸煮装置へと導入して、100℃、2分間蒸煮処理した。
【0070】
(延伸工程)
次に、蒸煮工程後のα化された麺線を、蒸煮コンベアから搬送速度を速めたコンベアに乗り移らせるという手段によって延伸し、麺線同士の絡まり合いを解消し、麺線全体を直線状態とした。
【0071】
(切断工程)
次に、直線状態に延伸した麺線を、回転するロールカッターを用いて長さ約30cmとなるように切断した。
【0072】
(乾燥工程)
次に、切断工程後の麺線を、油熱乾燥という手段によって、150℃、2分間という条件でフライ乾燥させた。
【0073】
[従来例]
配列工程において、誘導管を使用して切り出し直後の麺線の揺動を抑制し、麺線にウェーブを付与してコンベア上へと落下させたこと以外、すべて、実施例と同様にしてフライ麺の麺線を製造した。これは、通常の即席麺の製造方法である。
【0074】
[比較例]
配列工程において、カスリの任意の隣接する剥離歯2つが切刃ロールの周方向の同じ位置にあること以外、すべて、実施例と同様にしてフライ麺の麺線を製造した。
【0075】
<配列工程時の麺線の状態>
まず、実施例の配列工程時におけるコンベア上の麺線積層状態を、図9及び図10に示す。実施例では、コンベア上の麺線は、各麺線が略螺旋状となっており、隣り合う麺線とは非並行状態であった。また、麺線の束全体としてランダムな状態であり、隣り合う麺線の流れが同調している部分は認められなかった。
【0076】
次に、従来例の配列工程時におけるコンベア上の麺線積層状態を、図11に示す。従来例では、コンベア上の麺線は、隣り合う麺線と並行状態であり、コンベア搬送方向に対して直線的に小さく折り重なって積層していた。麺線同士の接触部分は、大きかった。
【0077】
次に、比較例の配列工程時におけるコンベア上の麺線積層状態を、図12及び図13に示す。比較例では、コンベア上の麺線は、隣り合う麺線と並行状態であり、隣り合う麺線の流れが同調している部分が大部分であった。そして、麺線同士の接触部分は、非常に大きく、コンベア上にカーブしながら、隣り合う複数の麺線全体として一つの纏まった形態を有するように積層していた。
【0078】
<湯戻し時の麺線の状態>
実施例の乾燥工程後の麺線(フライ麺)70gを熱湯400mLに3分間浸漬し、湯戻し試験を行った。湯戻し後の麺線の状態を、図14に示す。実施例の麺線は、箸等で持ち上げた際にまっすぐに伸ばすことが可能であり、ストレート麺と呼べる状態であった。また、麺線同士がくっつくこともなかった。
【0079】
なお、実施例の乾燥工程の替わりに、熱風乾燥処理する乾燥工程を行った場合でも、湯戻し後の麺線状態は同様であった。
【0080】
次に、従来例の乾燥工程後の麺線(フライ麺)70gを熱湯400mLに3分間浸漬し、湯戻し試験を行った。湯戻し後の麺線の状態を、図15に示す。従来例の麺線はウェーブが強く、箸で持ち上げた際にまっすぐに伸ばすことができず、ストレート麺と呼べる状態ではなかった。
【0081】
次に、比較例の乾燥工程後の麺線(フライ麺)70gを熱湯400mLに3分間浸漬し、湯戻し試験を行った。湯戻し後の麺線の状態を、図16に示す。比較例の麺線は、麺線同士がくっついている部分が従来例以上に多いため、箸で持ち上げた際にまっすぐに伸ばすことができず、ストレート麺と呼べる状態ではなかった。
【0082】
実施例、従来例及び比較例の湯戻し後の麺線を、箸で持ち上げた後、水平な板上に静置した。その状態で上方向から各麺線を撮影した写真を、図17に示す。従来例では、各麺線にウェーブがかかっているため、ストレート麺と呼べる状態ではなかった。また、比較例では、各麺線のウェーブは小さいが、麺線同士が強固にくっついている部分が非常に多かった。
【0083】
これに対して、実施例では、各麺線にウェーブがかかっておらず、麺線同士がくっついている部分が認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の即席麺の製造方法、及び生麺の束は、食品分野において有用である。
【符号の説明】
【0085】
1:カスリ
2a,2b:剥離歯
3a,3b:剥離歯の先端部
4:一対の切刃ロール
4a,4b:切刃ロール
5:コンベア
6:コンベアロール
7:ジグザグ状の麺線
8:略螺旋状の麺線
9:上板
10:切刃ロールの回転中心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の麺線が積層した略扁平な即席麺用生麺の束であって、
隣り合う麺線が非並行状態で、略螺旋状となるように屈曲しつつ所定方向に向かって積層されており、
その積層状態のまま蒸煮され、延伸され、切断され、乾燥されることにより、湯戻し時に麺線が略直線状となることを特徴とする即席麺用生麺の束。
【請求項2】
一対の切刃ロール間を通過させることによって麺生地を複数の麺線へと形成し、該麺線をカスリによって切刃ロールから剥ぎ取り、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層し、扁平な麺線の束として配列させる配列工程と、
前記配列工程後の麺線の状態を保持したまま、麺線を蒸煮する蒸煮工程と、
前記蒸煮工程後の麺線を一定方向に伸ばす延伸工程と、
前記延伸工程後の麺線の一定量を切断する切断工程と、
前記切断工程後の麺線を乾燥する乾燥工程と、
を有することを特徴とする即席麺の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程が麺線を油で揚げるフライ工程である請求項2に記載の即席麺の製造方法。
【請求項1】
複数の麺線が積層した略扁平な即席麺用生麺の束であって、
隣り合う麺線が非並行状態で、略螺旋状となるように屈曲しつつ所定方向に向かって積層されており、
その積層状態のまま蒸煮され、延伸され、切断され、乾燥されることにより、湯戻し時に麺線が略直線状となることを特徴とする即席麺用生麺の束。
【請求項2】
一対の切刃ロール間を通過させることによって麺生地を複数の麺線へと形成し、該麺線をカスリによって切刃ロールから剥ぎ取り、各麺線を隣り合う麺線とは非並行状態で略螺旋状となるように屈曲させながらコンベア上に積層し、扁平な麺線の束として配列させる配列工程と、
前記配列工程後の麺線の状態を保持したまま、麺線を蒸煮する蒸煮工程と、
前記蒸煮工程後の麺線を一定方向に伸ばす延伸工程と、
前記延伸工程後の麺線の一定量を切断する切断工程と、
前記切断工程後の麺線を乾燥する乾燥工程と、
を有することを特徴とする即席麺の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程が麺線を油で揚げるフライ工程である請求項2に記載の即席麺の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−187621(P2010−187621A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37077(P2009−37077)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【特許番号】特許第4381470号(P4381470)
【特許公報発行日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【復代理人】
【識別番号】100127502
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 賛治
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【特許番号】特許第4381470号(P4381470)
【特許公報発行日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【復代理人】
【識別番号】100127502
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 賛治
【Fターム(参考)】
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