説明

条鋼搬送用ピンチローラ装置

【課題】条鋼材を複数条同時に搬送する搬送ラインに設置され、他の搬送ラインを跨いで対象の搬送ラインの1条の条鋼材をピンチする一対の上下のロールを少なくとも有する条鋼搬送用ピンチローラ装置において、前記上下の各ロールに連結されたロール駆動軸のオーバーハング部を短くする。
【解決手段】前記上下の各ロール111,112のそれぞれが先端部に連結され、回転駆動力を各ロール111,112のそれぞれに伝達する上下のロール駆動軸113,114と、ロール駆動軸先端側軸受117aとロール駆動軸基端側軸受117bとを有して前記各ロール駆動軸113,114をそれぞれ回転可能に支持し、前記他の搬送ラインに直交して延びる上下の軸受ケーシング115,116とを備え、前記各軸受ケーシング115,116の前記ロール駆動軸先端側軸受117aを平面視にて前記他の搬送ラインの位置よりもロール側に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、条鋼材(鋼線材、棒鋼材)を製造する条鋼製造設備に設置され、回転する上下のロールで条鋼材を挟み付けてこれに搬送力を付与することにより、条鋼材の冷却床などへの搬送を行う条鋼搬送用ピンチローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものの一例としては、特開平9−323114号公報記載の線・棒状材の搬送装置(以下、従来搬送装置という)が知られており、これを図8〜図12によって説明する。図8は従来搬送装置の側面図、図9は図8の上面図、図10は図8のA−A断面図、図11は図8のB−B断面図、図12は図8のC−C断面図である。
【0003】
上下ロール1,2は共に回転軸(ロール駆動軸)3,4に取付けられており、その回転軸3,4は回転可能に筒状の軸受(軸受ケーシング)5,6に取付けられている。上下軸受5,6は、その胴部外周に揺動フレーム7,8、調整レバー9,10及び開閉レバー11,12がそれぞれ取付けられるとともに、上揺動フレーム7をフレーム本体13の上側に揺動軸14を用いて、また下揺動フレーム8をフレーム本体13の下側に揺動軸15を用いてそれぞれ上下方向に揺動可能に取付けられている。
【0004】
上調整レバー9は、フレーム本体13に取付けられた上ロール微調整装置16に取付けられ、この上ロール微調整装置16の操作により上下方向に移動調整される。上ロール微調整装置16は、ウオームジャッキ17と、ウオームジャッキ17を操作する調整ハンドル18と、ウオームジャッキ17の昇降軸19の先端に固定された上調整レバー9の取付け部20とで構成され、調整ハンドル18を回動操作することでウオームジャッキ17を介して上調整レバー9を上下方向に移動調整する。
【0005】
下調整レバー10は、下ロール2の昇降(開閉)位置を規制するのに使用するもので、フレーム本体13の上下方向に設けられた架設フレーム21に取付けられた下ロール2の上限位置微調整装置22と下限ストッパ23との間に位置するように設けられている。上限位置微調整装置22は、上端に調整ハンドル24を有するネジ軸25を架設フレーム21に固定されたナット部26に螺合させ上下方向に移動可能に取付けて構成されている。また、下限ストッパ23は、ナット部26に取付けられたネジ軸25の軸線上の架設フレーム21の下部に取付けられている。これら下調整レバー10と上限位置微調整装置22及び下限ストッパ23より構成される下ロール2の昇降(開閉)位置の規制は、必ずしも必要ではないが、上限位置微調整装置22が有れば下ロール2の上昇位置を線・棒状材の大きさに応じて調整することができ、線・棒状材の大きさに応じた上下ロール1,2の間隔に規制できることから、圧下による過度な変形を防ぎ且つより確実な圧下力で線・棒状材の搬送を行うことができる。
【0006】
開閉レバー11,12はその間に開閉(昇降)シリンダ27が取付けられており、この開閉シリンダ(空気圧シリンダ)27の伸縮により下揺動フレーム8が揺動軸15を中心に上下に揺動して下ロール2が上ロール1に対して開閉(昇降)する。開閉レバー11,12への開閉シリンダ27の取付けは、上開閉レバー11の先端にはシリンダロッド28の上端部をピン連結29し、下開閉レバー12の先端にはシリンダ本体30の外底部に設けたブラケット31をピン連結32して取付けられている。そして、上ロール1は上ロール微調整装置16により位置調整された後その位置に固定状態となっているので、開閉シリンダ27を伸長させることで下ロール2が上ロール1に対して揺動軸15を中心に下降して開き、また逆に縮小させることで下ロール2が上ロール1に対して揺動軸15を中心に上昇して閉じ、上ロール1に対する下ロール2の開閉操作がなされ、閉じる操作で線・棒状材を上下ロール1,2の間隔にはさみ付けで搬送することがなされる。なお、33は上下ロール1,2の入側に設けられた入口ガイド、34は上下ロール1,2の出側に設けられた出口ガイドである。
【0007】
回転軸3,4の上下ロール1,2とは逆の端には、それぞれユニバーサルスピンドル35,35を介在させて駆動部36が取付けられている。この駆動部36は、駆動モータ37の出力軸と増速機38の入力軸をカップリング39により連結して構成され、増速機38の出力軸に前記ユニバーサルスピンドル35,35が連結されている。
【0008】
このように構成される搬送装置による線・棒状材の搬送は次のようにして行われる。すなわち、上ロール1の位置を、搬送される線・棒状材が入出ガイド33,34のほぼ中心軸位置を通過するように上ロール微調整装置16の操作によりレベル調整して固定(ウオームジャッキ17を使用しているので調整後は固定状態となる)する一方、下ロール2を開閉シリンダ27を縮小して閉じるとともに、その下ロール2の圧下力が所定圧になるように油圧回路を調整し、また下ロール2の上限位置を、所定のはさみ付け代ではさみ付けるように上限位置微調整装置22の操作により設定する。次いで、開閉シリンダ27を伸長操作して下ロール2を下降させる。この後、操業において、線・棒状材が入出ガイド33,34を通過すると、開閉シリンダ27が縮小操作され下ロール2が上昇し、線・棒状材を下から上に上ロール1にはさみ付けて線・棒状材の搬送が行われるようになされている。なお、特開平9−323114号公報の従来技術の項に説明されているように、一般的には、搬送装置では、下ロールを固定、上ロールの位置を調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−323114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
条鋼搬送用ピンチローラ装置(以下、単にピンチローラ装置ともいう)で条鋼材を搬送するに際し、1条の条鋼材を搬送する搬送ライン(搬送ラインが1本の搬送ライン設備)の場合には、前記従来搬送装置のように、1条の条鋼材を挟み付けて搬送するための一対をなす上下のロールを有する1条用のピンチローラ装置を1台設置すればよい。
【0011】
ところが、2条スリット圧延や4条スリット圧延などのようにスリット圧延された2条、あるいは4条の条鋼材を同時に搬送する搬送ライン(搬送ラインが2本、あるいは4本の搬送ライン設備)の場合、その対応策の一つとして、1条用のピンチローラ装置を複数台タンデムに配置することがなされている。例えば、2条の条鋼材を同時に搬送するに際し、図13に示すように、1条用のピンチローラ装置51,52を2台タンデム配置するようにしている。
【0012】
この場合、図13に示すように、上流側のピンチローラ装置51では、下流側のピンチローラ装置52でピンチされる(挟み付けられて搬送力を付与される)他の条鋼材が通過できるようにするため、上下の各ロールに連結された上下の各ロール駆動軸におけるロール駆動軸先端側軸受位置からロールまでの部分(オーバーハング部)が長くなる。このオーバーハング部が長尺化すると、強度確保のためにロール駆動軸を太くすることが必要となり、ピンチローラ装置自体が大掛かりになるという欠点があった。なお、オーバーハング部の長尺化を回避するため駆動装置を条鋼材の反対側に設置することも考えられるが、操作性、ロール交換作業性などの点でデメリットが多い。
【0013】
そこで、本発明の課題は、条鋼材を複数条同時に搬送する搬送ラインに設置され、他の搬送ラインを跨いで対象の搬送ラインの1条の条鋼材を挟み付けて搬送するための一対をなす上下のロールを少なくとも有する条鋼搬送用ピンチローラ装置において、前記上下の各ロールに連結されたロール駆動軸におけるロール駆動軸先端側軸受位置からロールまでの部分(オーバーハング部)を、強度確保のためロール駆動軸を太くしなくすむよう、短くすることができて、ロール駆動軸の太径化のため装置が大掛かりになるということを回避することができるようにした、条鋼搬送用ピンチローラ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0015】
請求項1の発明は、条鋼材を複数条同時に搬送する搬送ラインに設置され、他の搬送ラインを跨いで対象の搬送ラインの1条の条鋼材を挟み付けて搬送するための一対をなす上下のロールを少なくとも有する条鋼搬送用ピンチローラ装置において、前記上下の各ロールのそれぞれが先端部に連結され、駆動源からの回転駆動力を各ロールのそれぞれに伝達する上下のロール駆動軸と、ロール駆動軸先端側軸受とロール駆動軸基端側軸受とを有して前記各ロール駆動軸をそれぞれ回転可能に支持し、前記他の搬送ラインに直交して延びる上下の軸受ケーシングとを備え、前記各軸受ケーシングの前記ロール駆動軸先端側軸受が、平面視にて前記他の搬送ラインの位置よりもロール側に設けられていることを特徴とする条鋼搬送用ピンチローラ装置である。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1記載の条鋼搬送用ピンチローラ装置において、前記各軸受ケーシングに、前記他の搬送ラインと干渉しないように該搬送ライン用のスペースを確保するための切欠き部が、当該軸受ケーシングの前記ロール駆動軸先端側軸受の位置よりも反ロール側に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の条鋼搬送用ピンチローラ装置において、前記一対をなす上下のロールとともに、他に一対をなす上下のロールを有しており、これらの2組の上下のロールについて、それぞれ、上下の各ロールに駆動力を伝達するための駆動軸ユニットを備え、これら2組の駆動軸ユニットが1つのベースフレームに設置され、さらに、前記2組の上下のロールの各上ロールを昇降させるための揺動軸が1つに共通化されるとともに、各下ロールを昇降させるための揺動軸が1つに共通化されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3記載の条鋼搬送用ピンチローラ装置において、駆動源として1台のモータと、前記モータの回転駆動力を分配して前記2組の駆動軸ユニットに伝達するピニオンスタンドとを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の条鋼搬送用ピンチローラ装置は、条鋼材を複数条同時に搬送する搬送ラインに設置され、他の搬送ラインを跨いで対象の搬送ラインの1条の条鋼材を挟み付けて搬送するための一対をなす上下のロールを少なくとも有する条鋼搬送用ピンチローラ装置において、ロール駆動軸先端側軸受とロール駆動軸基端側軸受とを有して、前記上下の各ロールに先端部が連結された上下のロール駆動軸を回転可能に支持する上下の軸受ケーシングを備え、前記各軸受ケーシングの前記ロール駆動軸先端側軸受が、平面視にて前記他の搬送ラインの位置よりもロール側に設けられている。したがって、前記上下の各ロール駆動軸におけるロール駆動軸先端側軸受位置からロールまでの部分(オーバーハング部)を、強度確保のためロール駆動軸を太くしなくすむよう、短くすることができ、ロール駆動軸の太径化のため装置が大掛かりになるということを回避することができる。
【0020】
請求項2の条鋼搬送用ピンチローラ装置は、前記各軸受ケーシングに、前記他の搬送ラインと干渉しないように該搬送ライン用のスペースを確保するための切欠き部が、当該軸受ケーシングの前記ロール駆動軸先端側軸受の位置よりも反ロール側に設けられている。したがって、前述の効果に加え、前記上下のロールのロール径を大径化しなくても、前記他の搬送ラインと干渉しないように該搬送ライン用のスペースを確保することができる。
【0021】
請求項3の条鋼搬送用ピンチローラ装置は、2組の上下のロールについて、それぞれ、上下の各ロールに駆動力を伝達するための駆動軸ユニットを備え、これら2組の駆動軸ユニットが1つのベースフレームに設置され、さらに、前記2組の上下のロールの各上ロールを昇降させるための揺動軸が1つに共通化されるとともに、前記2組の上下のロールの各下ロールを昇降させるための揺動軸が1つに共通化されている。したがって、2組の上下のロールを有する条鋼搬送用ピンチローラ装置において、装置の省スペース化を図ることができる。
【0022】
請求項4の条鋼搬送用ピンチローラ装置は、1台のモータを駆動源として2組の上下のロールを同時に回転駆動させるようにしている。したがって、装置コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の条鋼搬送用ピンチローラ装置が複数条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合を説明するための平面説明図であって、その(a)は2条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合の平面説明図で、その(b)は4条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合の平面説明図である。
【図2】本発明の一実施形態による条鋼搬送用ピンチローラ装置を示す一部断面平面図であって、2条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合の図である。
【図3】図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置の正面図である。
【図4】図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置の一部切欠き側面図である。
【図5】図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置における第1の上下のロール駆動軸及び軸受ケーシングの要部を示す側面断面図である。
【図6】図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置が4条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合を示す一部断面平面図である。
【図7】図6における第1の上下のロール駆動軸及び軸受ケーシングの要部を示す側面断面図である。
【図8】従来搬送装置の側面図である。
【図9】図8の上面図である。
【図10】図8のA−A断面図である。
【図11】図8のB−B断面図である。
【図12】図8のC−C断面図である。
【図13】従来技術を説明するための平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図1は本発明の条鋼搬送用ピンチローラ装置が複数条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合を説明するための平面説明図であって、その(a)は2条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合の平面説明図で、その(b)は4条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合の平面説明図である。
【0026】
本発明の条鋼搬送用ピンチローラ装置100は、以下に説明する実施形態では、条鋼材として棒鋼材を対象とし、図1の(a)に示すように、2条の搬送ラインに設置され、棒鋼材を2条同時に搬送可能なように、1条の棒鋼材を挟み付けて搬送するための一対をなす上下のロールとして、第1の上下のロール111,112と、第2の上下のロール121,122との2組を備えている。また、ピンチローラ装置100は、図1の(b)に示すように、棒鋼材を4条同時に搬送する4条の搬送ラインに設置される場合には、2台がタンデム配置される。
【0027】
図2は本発明の一実施形態による条鋼搬送用ピンチローラ装置を示す一部断面平面図であって、2条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合の図、図3は図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置の正面図、図4は図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置の一部切欠き側面図である。なお、図4では、図2における第1の上下のロール、昇降用エアシリンダ及びストッパ装置などは図示していない。
【0028】
101はベースフレームであり、ベースフレーム101の上面に固定されたモータ取付フレーム103上に、駆動源である1台の駆動モータ102が取付けられている。105はベースフレーム101の上面に固定されたピニオンスタンドである。ピニオンスタンド105は、入力軸を有する1個の駆動側ピニオンと各々が出力軸を有する4個の従動側ピニオンを有し、前記駆動モータ102の回転駆動力を分配して4つの出力軸に伝達するものである。ピニオンスタンド105の前記入力軸は、カップリング104によって駆動モータ102の出力軸に連結されている。また、ピニオンスタンド105の前記4つの出力軸のうち、2つの出力軸は、それぞれ、第1のユニバーサルスピンドル106,106に連結されており、他の2つの出力軸は、それぞれ、第2のユニバーサルスピンドル107,107に連結されている。
【0029】
前記第1のユニバーサルスピンドル106,106の反ピニオンスタンド側端部は、それぞれ、第1の上下のロール駆動軸113,114の基端部に連結されており、この第1の上下のロール駆動軸113,114の先端部に第1の上下のロール111,112が取り付けられている。同様に、前記第2のユニバーサルスピンドル107,107の反ピニオンスタンド側端部は、それぞれ、第2の上下のロール駆動軸123,124の基端部に連結されており、この第2の上下のロール駆動軸123,124の先端部に第2の上下のロール121,122が取り付けられている。
【0030】
前記第1の上下のロール駆動軸113,114は、それぞれ、ロール駆動軸先端側軸受117a及びロール駆動軸基端側軸受117bを有する円筒状の第1の上下の軸受ケーシング115,116によって回転可能に支持されている。同様に、前記第2の上下のロール駆動軸123,124は、それぞれ、ロール駆動軸先端側軸受127a及びロール駆動軸基端側軸受127bを有する円筒状の第2の上下の軸受ケーシング125,126によって回転可能に支持されている。これらの第1の上下の軸受ケーシング115,116及び第2の上下の軸受ケーシング125,126は、ベースフレーム101の上面に固定されたロール駆動軸取付フレーム131に固定されている。
【0031】
前記の第1のユニバーサルスピンドル106,106、第1の上下のロール駆動軸113,114、及び第1の上下の軸受ケーシング115,116は、前記第1の上下のロール111,112に駆動力を伝達するための第1の駆動軸ユニットを構成している。同様に、前記の第2のユニバーサルスピンドル107,107、第2の上下のロール駆動軸123,124、及び第2の上下の軸受ケーシング125,126は、前記第2の上下のロール121,122に駆動力を伝達するための第2の駆動軸ユニットを構成している。
【0032】
また、前記ロール駆動軸取付フレーム131には上揺動軸132と下揺動軸133が回転可能に支持されている。上揺動軸132には、前記第1の上軸受ケーシング115に取り付けられた揺動フレームと前記第2の上軸受ケーシング125に取り付けられた揺動フレームとが固定されており、前記第1の上ロール111と前記第2の上ロール121とを昇降させるための、前記各揺動フレームの揺動の中心となる軸である。同様に、下揺動軸133には、前記第1の下軸受ケーシング116に取り付けられた揺動フレームと前記第2の下軸受ケーシング126に取り付けられた揺動フレームとが固定されており、前記第1の下ロール112と前記第2の下ロール122とを昇降させるための、前記各揺動フレームの揺動の中心となる軸である。
【0033】
また、118は、棒鋼材を所定の挟み付け代で挟み付けるように、第1の上ロール111の下降限と下ロール112の上昇限とを設定するための第1のストッパ装置である。119は、第1の上ロール111に対し下ロール112を上昇させて棒鋼材を挟み付けるための第1の昇降用エアシリンダである。
【0034】
同様に、128は、棒鋼材を所定の挟み付け代で挟み付けるように、第2の上ロール121の下降限と下ロール122の上昇限とを設定するための第2のストッパ装置である。129は、第2の上ロール121に対し下ロール122を上昇させて棒鋼材を挟み付けるための第2の昇降用エアシリンダである。前記の第1のストッパ装置118及び第1の昇降用エアシリンダ119と、前記の第2のストッパ装置128及び第2の昇降用エアシリンダ129とは、図2に示すように、勝手反対に設置されている(第1のストッパ装置118及び昇降用エアシリンダ119はロール駆動軸113,114に対して上流側に配置される一方、第2のストッパ装置128及び昇降用エアシリンダ129は、ロール駆動軸123,124に対して下流側に配置されている。すなわち、正面視(図3)で左右対称に配置されている。)。
【0035】
141は、搬送ラインを構成する誘導パイプである。棒鋼材は、第1の上下のロール111,112の入側(上流側)に配置された誘導パイプ141内を通って導かれ、該ロール111,112でピンチされ(挟み付けられて搬送力を付与され)、出側(下流側)に配置された次の誘導パイプ141内を下流へ搬送されるようになっている。同じく、142は他の(別の)搬送ラインを構成する誘導パイプである。棒鋼材は、第2の上下のロール121,122の入側に配置された誘導パイプ142内を通って導かれ、該ロール121,122でピンチされ、出側に配置された次の誘導パイプ142内を下流へ搬送されるようになっている。図2と後述の図5に示すように、2条の搬送ライン間の距離は、本実施形態では280mmである。
【0036】
なお、棒鋼材の圧延製造においては、一般に、太物の棒鋼材の製造では、生産性が良いことから、太物棒鋼材を1条のみ圧延する「1本通し」が行われ、細物の棒鋼材の製造では、生産性を高めるため、細物棒鋼材を2条、4条など複数条、例えば2条同時に圧延する「2本通し」が行われる。この実施形態の条鋼搬送用ピンチローラ装置100は、前記「1本通し」にも使用可能なようにしたものであり、前記誘導パイプ142は前記「1本通し」を想定した場合のものである。なお、誘導パイプは、棒鋼材の太さに応じて交換されるようになっている。
【0037】
図5は図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置における第1の上下のロール駆動軸及び軸受ケーシングの要部を示す側面断面図である。
【0038】
図5に示すように、第1の上ロール111には、冷し嵌めによってロール取付用の内筒体111aが上ロール111と一体に固定されている。この第1の上ロール111が、第1の上ロール駆動軸113の先端部に、ロールセンタリング用のテーパスリーブ113aを介した状態で、キー113bによって固定されている。同様に、第1の下ロール112には、冷し嵌めによってロール取付用の内筒体112aが下ロール112と一体に固定されている。この第1の下ロール112が、第1の下ロール駆動軸114の先端部に、ロールセンタリング用のテーパスリーブ114aを介した状態で、キー114bによって固定されている。
【0039】
そして、第1の上下のロール駆動軸113,114は、平面視においてそのロール駆動軸先端側軸受117aの位置を前記誘導パイプ142による前記他の搬送ラインの位置(第2の上下のロール121,122の位置)よりも第1の上下のロール111,112側へ近づけることにより(図2参照)、この先端側軸受117aから各ロール111,112までの部分であるオーバーハング部OHを、強度確保のためロール駆動軸113,114を太くしなくすむよう、短くしてある。
【0040】
この場合、オーバーハング部OHの長さを短くすると、第2の上下のロール121,122による棒鋼材の搬送ラインに前記「1本通し」のときに用いられる太物用の前記誘導パイプ142を配置しようとすると、第1の上下の軸受ケーシング115,116と前記誘導パイプ142とが干渉してしまい、前記誘導パイプ142を配置できないということになる。
【0041】
そこで、第1の上下の軸受ケーシング115,116に、第2の上下のロール121,122によって搬送する棒鋼材の搬送ラインと干渉しないように該搬送ライン用のスペース、この実施形態では前記誘導パイプ142を配置するためのスペースを確保するための切欠き部115a,116aを、図5に示すように、ロール駆動軸先端側軸受117aよりも反ロール側に設けてある。これにより、切欠き部115a,116aをロール駆動軸先端側軸受117aの外径寸法に制約をされずに大きくとることができる。また、切欠き部115a,116aは上下の軸受ケーシング115,116の外周の一部分(1/6〜1/5程度)を切り欠くことですみ、切欠き部115a,116aでの肉厚の減少が上下の軸受ケーシング115,116の強度に悪影響を及ぼすようなことはない。なお、図5中、Sは誘導パイプ141内を導かれる棒鋼材の大きさ(外径)を示し、S’は、誘導パイプ142内を導かれる棒鋼材の大きさ(外径)を示している。
【0042】
このように、本実施形態の条鋼搬送用ピンチローラ装置100は、棒鋼材を2条同時に搬送する搬送ラインに設置され、誘導パイプ142による他の搬送ラインを跨いで対象の搬送ラインの1条の棒鋼材を挟み付けて搬送するための一対をなす上下のロール111,112を少なくとも有し、ロール駆動軸先端側軸受117aとロール駆動軸基端側軸受117bとを有して、前記上下の各ロール111,112に先端部が連結された上下のロール駆動軸113,114を回転可能に支持する上下の軸受ケーシング115,116を備え、かつ、前記各軸受ケーシング115,116の前記ロール駆動軸先端側軸受117aが、平面視にて前記他の搬送ラインの位置よりもロール側に設けられている。
【0043】
したがって、前記上下の各ロール駆動軸113,114におけるロール駆動軸先端側軸受117a位置からロール111,112までのオーバーハング部OHを、強度確保のためロール駆動軸を太くしなくすむよう、短くすることができ、ロール駆動軸の太径化のため装置が大掛かりになるということを回避することができる。
【0044】
また、本実施形態の条鋼搬送用ピンチローラ装置100は、前記各ロール駆動軸113,114を回転可能に支持し、前記他の搬送ラインに直交して延びる上下の軸受ケーシング115,116に、前記他の搬送ライン用のスペースを確保するための切欠き部115a,116aが設けられている。したがって、前述の効果に加え、前記上下のロール111,112のロール径を大径化しなくても、前記他の搬送ラインと干渉しないように該搬送ライン用のスペースを確保することができる。
【0045】
また、本実施形態の条鋼搬送用ピンチローラ装置100は、2組の上下のロール111,112及び121,122について、それぞれ、上下の各ロールに駆動力を伝達するための前記駆動軸ユニットを備え、これら2組の前記駆動軸ユニットが1つのベースフレーム101に設置され、さらに、前記2組の上下のロールの各上ロール111,121を昇降させるための揺動軸132が1つに共通化されるとともに、前記2組の上下のロールの各下ロール112,122を昇降させるための揺動軸133が1つに共通化されている。したがって、前記2組の上下のロールを有する条鋼搬送用ピンチローラ装置において、装置の省スペース化を図ることができる。
【0046】
またさらに、本実施形態の条鋼搬送用ピンチローラ装置100は、1台の駆動モータ102を駆動源として前記2組の上下のロールを同時に回転駆動させるようにしている。したがって、装置コストの低減を図ることができる。
【0047】
図6は図2の条鋼搬送用ピンチローラ装置が4条の棒鋼材の搬送ラインに設置される場合を示す一部断面平面図、図7は図6における第1の上下のロール駆動軸の要部を示す側面断面図である。
【0048】
図6,図7に示すように、両図における左側から順に、前記第1の上下のロール111,112でピンチする棒鋼材の搬送ライン、誘導パイプ143で構成される搬送ライン、前記第2の上下のロール121,122でピンチする棒鋼材の搬送ライン、及び誘導パイプ144で構成される搬送ラインが、この実施形態では140mmの間隔で設けられている。このように、本実施形態の条鋼搬送用ピンチローラ装置100は、棒鋼材を4条同時に搬送する4条の搬送ラインに設置される場合には、2台がタンデム配置されるようになっている(図1(b)参照)。
【符号の説明】
【0049】
100…条鋼搬送用ピンチローラ装置
101…ベースフレーム 102…駆動モータ 103…モータ取付フレーム
104…カップリング 105…ピニオンスタンド
106…第1のユニバーサルスピンドル
107…第2のユニバーサルスピンドル
111,112…第1の上下のロール 111a,112a…内筒体
113,114…第1の上下のロール駆動軸
113a,114a…テーパスリーブ 113b,114b…キー
115,116…第1の上下の軸受ケーシング
117a…ロール駆動軸先端側軸受 117b…ロール駆動軸基端側軸受
118…第1のストッパ装置 119…第1の昇降用エアシリンダ
121,122…第2の上下のロール
123,124…第2の上下のロール駆動軸
125,126…第2の上下の軸受ケーシング
127a…ロール駆動軸先端側軸受 127b…ロール駆動軸基端側軸受
128…第2のストッパ装置 129…第2の昇降用エアシリンダ
131…ロール駆動軸取付フレーム 132…上揺動軸 133…下揺動軸
141〜144…誘導パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
条鋼材を複数条同時に搬送する搬送ラインに設置され、他の搬送ラインを跨いで対象の搬送ラインの1条の条鋼材を挟み付けて搬送するための一対をなす上下のロールを少なくとも有する条鋼搬送用ピンチローラ装置において、
前記上下の各ロールのそれぞれが先端部に連結され、駆動源からの回転駆動力を各ロールのそれぞれに伝達する上下のロール駆動軸と、ロール駆動軸先端側軸受とロール駆動軸基端側軸受とを有して前記各ロール駆動軸をそれぞれ回転可能に支持し、前記他の搬送ラインに直交して延びる上下の軸受ケーシングとを備え、前記各軸受ケーシングの前記ロール駆動軸先端側軸受が、平面視にて前記他の搬送ラインの位置よりもロール側に設けられていることを特徴とする条鋼搬送用ピンチローラ装置。
【請求項2】
前記各軸受ケーシングに、前記他の搬送ラインと干渉しないように該搬送ライン用のスペースを確保するための切欠き部が、当該軸受ケーシングの前記ロール駆動軸先端側軸受の位置よりも反ロール側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の条鋼搬送用ピンチローラ装置。
【請求項3】
前記一対をなす上下のロールとともに、他に一対をなす上下のロールを有しており、これらの2組の上下のロールについて、それぞれ、上下の各ロールに駆動力を伝達するための駆動軸ユニットを備え、これら2組の駆動軸ユニットが1つのベースフレームに設置され、さらに、前記2組の上下のロールの各上ロールを昇降させるための揺動軸が1つに共通化されるとともに、各下ロールを昇降させるための揺動軸が1つに共通化されていることを特徴とする請求項1又は2記載の条鋼搬送用ピンチローラ装置。
【請求項4】
駆動源として1台のモータと、前記モータの回転駆動力を分配して前記2組の駆動軸ユニットに伝達するピニオンスタンドとを備えていることを特徴とする請求項3記載の条鋼搬送用ピンチローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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