説明

杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材、そのシール構造およびその施工方法

【課題】杭と鞘管間の隙間に簡単に取り付けることができ、杭や鞘管の大きさにも簡単に対応することができるグラウト流出防止用シール材、そのシール構造およびその施工方法を提供すること。
【解決手段】先後端部が閉塞された筒状のシール部材11を注入排出部11bから真空ポンプなどで内部の空気を排出して潰すことで、杭4と鞘管2との隙間Dに簡単に入れてスパイラル状に巻き付けて装着し、シール部材11の内部に水や空気などの加圧流体を供給して膨らますことで隙間Dの壁面に密着させてシール状態にする。また、隙間Dの下端部に設けた支持部材12でシール部材11の抜け落ちを防止する。
これにより、シール材10を溶接して装着する必要がなく、鞘管2の下端部からシール部材11を取り付けることができるとともに、鞘管2と杭4の位置が定まった後にシール部材11を取り付けることで損傷を防止し、杭4の大きさが代わってもシール部材11の長さを変えるだけで簡単に対応できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材、そのシール構造およびその施工方法に関し、海洋構造物などの基礎部の構築方法の一つで、杭とジャケット(鞘管)との隙間に充填するグラウトの流出を防止するシール材を簡単に施工でき、杭やジャケットの大きさに関係なく対応できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
例えば人工島や橋台等の構造物を構築する際の基礎部分として、構造物の一部をなすよう鋼管又はコンクリート等からなる鞘管を取り付けておき、この鞘管内に鋼管又はコンクリート等からなる杭を挿入して地中に打設した後、鞘管と杭との間の空間(隙間)にグラウトを充填したり、逆に杭を打設した後、鞘管を挿入し、これらの隙間にグラウトを充填することにより、杭と鞘管とを一体的に結合固定することが行われており、鞘管の端部において鞘管と杭の隙間からグラウトが外部に流出することを防止するためシール材を装着したシール構造が設けられる。
【0003】
従来から鞘管と杭の隙間からグラウトが流出することを防止するためのシール構造については種々提案されている。
例えば特許文献1には、図8(a)に示すように、ゴム等の弾性体により形成された断面形状がL字状の環状のシール材1の外周面に、鞘管2に溶接固定するための鋼管などの短筒状の固定部材3が一体にされており、鞘管2の端部に装着して固定部材3を溶接することでシール構造が施工され、シール材1が下側に弾性変形して先端が杭4の外面に圧接してシールするように構成され、比較的杭4と鞘管2との間隔が小さい場合のシール構造とされている。
なお、特許文献1には記載されていないが、杭4の挿入時に、シール材1、固定部材3の接着部を保護する目的で、調整用ガイドプレート9を設置することが行われている.
【0004】
また、比較的杭4と鞘管2との間隔が大きい場合のシール構造としては、例えば図8(b)に示すように、断面形状がI字状のシール材5を用い、鞘管2の内周面に環状の取付金具6を水平に突き出すように溶接し、シール材5を載せて環状の押え板7を介してボルト・ナット8で締め付けて固定し、シール材5を保護する調整用ガイドプレート9を設置したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−88050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来のシール構造では、杭または鞘管の挿入時に調整用ガイドプレート9を設置する必要があることにより、杭または鞘管を挿入する際の遊間が狭くなり、杭または鞘管の施工精度によっては該シール構造を適用できない場合があった。
【0007】
さらに、杭の大きさが変わると対応して鞘管の大きさも変わり、シール材もこれに対応する大きさのものを用意しなければならないという問題もある。
【0008】
この発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたもので、杭または鞘管の挿入する際の遊間を広く取る事ができ、かつ、杭や鞘管の大きさの変化にも簡単に対応するグラウト流出防止用シール材、そのシール構造およびその施工方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材は、杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール材であって、先後端部が閉塞され注入排出部からの内部空気の吸引により潰されて前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着されるとともに、加圧流体で膨らませて前記隙間の壁面に密着される筒状のシール部材と、前記隙間の端部に設けられ前記シール部材の抜け止め用の支持部材とからなることを特徴とするものである。
【0010】
また、この発明の請求項2記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材は、請求項1記載の構成に加え、前記シール部材の先端部に設けられて先端位置を保持する先端保持部材を備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、この発明の請求項3記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材は、請求項1または2記載の構成に加え、前記シール部材の両側部に密着性を高める突状部を形成してなることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の請求項4記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記支持部材を、周方向に複数に分割してなり、フランジ部を介してボルトナットで連結して前記杭に固定する構造または溶接により連結して少なくとも前記杭あるいは前記鞘管のいずれかに固定する構造としてなることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、この発明の請求項5記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール構造であって、先後端部が閉塞され注入排出部からの内部空気の吸引により潰されて前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着されるとともに、加圧流体で膨らませて前記隙間の壁面に密着される筒状のシール部材と、前記隙間の端部に設けられ前記シール部材の抜け止め用の支持部材とからなることを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項6記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項5記載の構成に加え、前記シール部材の先端部に設けられて先端位置を保持する先端保持部材を備えてなることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、この発明の請求項7記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項5または6記載の構成に加え、前記シール部材の両側部に密着性を高める突状部を形成してなることを特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項8記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造は、請求項5〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記支持部材を、周方向に複数に分割してなり、フランジ部を介してボルトナットで連結して前記杭に固定する構造、または溶接により連結して少なくとも前記杭あるいは前記鞘管のいずれかに固定する構造としてなることを特徴とするものである。
【0017】
さらに、この発明の請求項9記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法は、杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール材を施工するに際し、先後端部が閉塞された筒状のシール部材の注入排出部から内部の空気を吸引により潰して前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着した後、前記隙間の端部に前記シール部材の抜け止め用の支持部材を設け、前記シール部材の前記注入排出部から加圧流体を注入して膨らませて前記隙間の壁面に密着されるようにしたことを特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の請求項10記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法は、請求項9記載の構成に加え、前記シール部材の先端部に先端位置を保持する先端保持部材を設けて先端位置を保持するようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
さらに、この発明の請求項11記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法は、請求項9または10記載の構成に加え、前記支持部材を、周方向に複数に分割しておき、フランジ部を介してボルトナットで連結して杭に固定し、または溶接により連結して少なくとも杭あるいは鞘管のいずれかに固定するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明の請求項1記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材によれば、杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール材であって、先後端部が閉塞され注入排出部からの内部空気の吸引により潰されて前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着されるとともに、加圧流体で膨らませて前記隙間の壁面に密着される筒状のシール部材と、前記隙間の端部に設けられ前記シール部材の抜け止め用の支持部材とからなるので、先後端部が閉塞された筒状のシール部材を注入排出部から真空ポンプなどで内部の空気を排出して潰すことで、杭と鞘管との隙間に簡単に入れてスパイラル状に巻き付けて装着することができるとともに、シール部材の内部に水や空気などの加圧流体を供給して膨らますことで隙間の壁面に密着させてシール状態に簡単にすることができ、しかも隙間の端部に設けた支持部材でシール部材の抜け落ちを防止することができる。
【0021】
これにより、鞘管の端部からシール部材を取り付けることができるとともに、鞘管と杭の位置が定まった後にシール部材を取り付けることができる。このことから、シール部材の保護を必要としないため、杭または鞘管を挿入する際の遊間を広く取る事ができる。また、杭の大きさが変わってもシール部材の長さを変えるだけで簡単に対応することができる。
【0022】
また、この発明の請求項2記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材によれば、前記シール部材の先端部に設けられて先端位置を保持する先端保持部材を備えているので、先端部に設けた水膨張ゴムやスポンジなどの先端保持部材でシール部材の先端位置を保持して装着することができ、鞘管の端部からの装着を一層容易にすることができる。
【0023】
さらに、この発明の請求項3記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材によれば、前記シール部材の両側部に密着性を高める突状部を形成したので、両側部にギザギザなどの突状部を形成することで、隙間壁面への接触圧力を高めることができ、一層止水性(グラウトの流出防止性)を高めることができる。
【0024】
また、この発明の請求項4記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材によれば、前記支持部材を、周方向に複数に分割してなり、フランジ部を介してボルトナットで連結して前記杭に固定する構造または溶接により少なくとも前記杭あるいは前記鞘管のいずれかに固定する構造としたので、支持部材を周方向に分割しておき、フランジ部を介してボルトナットで連結して杭に固定して隙間の端部を塞ぐようにしたり、分割された支持部材を杭や鞘管のいずれかに溶接または両方に溶接することで隙間の端部を塞ぐようにしてシール部材の抜け落ちを防止することができ、分割したものを取り付けることで、作業性や施工性を向上することができる。
【0025】
さらに、この発明の請求項5記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール構造であって、先後端部が閉塞され注入排出部からの内部空気の吸引により潰されて前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着されるとともに、加圧流体で膨らませて前記隙間の壁面に密着される筒状のシール部材と、前記隙間の端部に設けられ前記シール部材の抜け止め用の支持部材とからなるので、先後端部が閉塞された筒状のシール部材を注入排出部から真空ポンプなどで内部の空気を排出して潰すことで、杭と鞘管との隙間に簡単に入れてスパイラル状に巻き付けて装着することができるとともに、シール部材の内部に水や空気などの加圧流体を供給して膨らますことで隙間の壁面に密着させてシール状態に簡単にすることができ、しかも隙間の端部に設けた支持部材でシール部材の抜け落ちを防止することができる。
【0026】
これにより、シール材を溶接して装着する必要がなく、鞘管の端部からシール部材を取り付けることができるとともに、鞘管と杭の位置が定まった後にシール部材を取り付けることで損傷を防止することができる。また、杭の大きさが代わってもシール部材の長さを変えるだけで簡単に対応することができる。
【0027】
また、この発明の請求項6記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、前記シール部材の先端部に設けられて先端位置を保持する先端保持部材を備えているので、先端部に設けた水膨張ゴムやスポンジなどの先端保持部材でシール部材の先端位置を保持して装着することができ、鞘管の端部からの装着を一層容易にすることができる。
【0028】
さらに、この発明の請求項7記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、前記シール部材の両側部に密着性を高める突状部を形成したので、両側部にギザギザなどの突状部を形成することで、隙間壁面への接触圧力を高めることができ、一層止水性(グラウトの流出防止性)を高めることができる。
【0029】
また、この発明の請求項8記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造によれば、前記支持部材を、周方向に複数に分割してなり、フランジ部を介してボルトナットで連結して前記杭に固定する構造、または溶接により連結して少なくとも前記杭あるいは前記鞘管のいずれかに固定する構造としたので、支持部材を周方向に分割しておき、フランジ部を介してボルトナットで連結して杭に固定して隙間の端部を塞ぐようにしたり、分割された支持部材を杭や鞘管のいずれかに溶接または両方に溶接することで隙間の端部を塞ぐようにしてシール部材の抜け落ちを防止することができ、分割したものを取り付けることで、作業性や施工性を向上することができる。
【0030】
さらに、この発明の請求項9記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法によれば、杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール材を施工するに際し、先後端部が閉塞された筒状のシール部材の注入排出部から内部の空気を吸引により潰して前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着した後、前記隙間の端部に前記シール部材の抜け止め用の支持部材を設け、前記シール部材の前記注入排出部から加圧流体を注入して膨らませて前記隙間の壁面に密着されるようにしたので、先後端部が閉塞された筒状のシール部材を注入排出部から真空ポンプなどで内部の空気を排出して潰すことで、杭と鞘管との隙間に簡単に入れてスパイラル状に巻き付けて装着することができるとともに、シール部材の内部に水や空気などの加圧流体を供給して膨らますことで隙間の壁面に密着させてシール状態に簡単にすることができ、しかも隙間の端部に設けた支持部材でシール部材の抜け落ちを防止することができる。
【0031】
これにより、シール材を溶接して装着する必要がなく、鞘管の端部からシール部材を取り付けることができるとともに、鞘管と杭の位置が定まった後にシール部材を取り付けることで損傷を防止することができる。
【0032】
また、この発明の請求項10記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法によれば、前記シール部材の先端部に先端位置を保持する先端保持部材を設けて先端位置を保持するようにしたので、先端部に設けた水膨張ゴムやスポンジなどの先端保持部材でシール部材の先端位置を保持して装着することができ、鞘管の端部からの装着を一層容易にすることができる。
【0033】
さらに、この発明の請求項11記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法によれば、前記支持部材を、周方向に複数に分割しておき、フランジ部を介してボルトナットで連結して杭に固定し、または溶接により連結して少なくとも杭あるいは鞘管のいずれかに固定するようにしたので、支持部材を周方向に分割しておき、フランジ部を介してボルトナットで連結して杭に固定して隙間の端部を塞ぐようにしたり、分割された支持部材を杭や鞘管のいずれかに溶接または両方に溶接することで隙間の端部を塞ぐようにしてシール部材の抜け落ちを防止することができ、分割したものを取り付けることで、作業性や施工性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の一実施の形態にかかるシール部材の概略斜視図および支持部材の概略斜視図である。
【図2】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の一実施の形態にかかり、(a)はシール部材の正面図および側面図、(b)は拡大断面図である。
【図3】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の一実施の形態にかかり、(a)は分割した支持部材の正面図および側面図、(b)はB‐B断面図、(c)はC矢視図である。
【図4】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造およびその施工方法の一実施の形態にかかる第1工程の説明図である。
【図5】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造およびその施工方法の一実施の形態にかかる部分拡大断面図およびA矢視図である。
【図6】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造およびその施工方法の他の一実施の形態にかかる部分拡大断面図である。
【図7】この発明の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造およびその施工方法の一実施の形態にかかる完成状態の部分断面図である。
【図8】従来の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
まず、杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材(以下、単にシール材とする。)10について説明する。
【0036】
このシール材10は、これまでの鞘管(ジャケットレグ)2の内周に溶接固定するものとは異なり、杭(鋼管杭)4の打設を行った後に鞘管2との隙間Dの下端部側からスパイラル状に巻き付けて取り付けることを可能としたものである。
【0037】
このシール材10は、図1〜図3に示すように、横断面形状が円形の筒状のシール部材11と、このシール部材の抜け止め用の支持部材12とで構成される。
【0038】
シール部材11は、ゴムや合成樹脂などの弾性体で作られて杭4の外周長の2倍以上の長さ、例えば2.5倍程度の長さとされ、先後端部が封止金具11aで閉塞されて密封状態とされ、後端部近傍には、シール部材11の内部に連通する注入排出部としての接続管11bが設けてある。
また、先後端部は封止金具11aではなく、弾性体の一体成型で密封されていても良い。
【0039】
これにより、注入排出部としての接続管11bに配管ホース(図示せず)を介して真空ポンプを接続して真空吸引することで内部の空気を排出してシール部材11を円形断面から潰した状態にして幅を狭めることができる。一方、接続管11bに配管ホースを介して加圧流体、例えば加圧水や加圧空気を注入することで、シール部材11を膨らますことができ、鞘管2と杭4との隙間Dの壁面にシール部材11の側面部11cを加圧状態で密着させることができる。
【0040】
また、このシール部材11では、鞘管2と杭4との隙間Dの壁面への密着性を高めるため、図2(b)に示すように、シール部材11の両側面部11cに、ギザギザの突状部11dが形成してあり、加圧流体の注入との相乗効果でシール性を一層高めることができるようにしてある。
【0041】
さらに、このシール部材11では、潰して幅を狭めた状態で鞘管2と杭4との隙間Dに装着することから、先端位置を保持するためシール部材11の先端部と封止金具11aの外周面に先端保持部材11eとして最大幅部が隙間より大きい略くさび状の水膨張ゴムあるいはスポンジなどが取り付けてあり、先端保持部材11eの反発弾性力でシール部材11の先端を隙間Dに保持できるようにしてある。
また,図示しないが,シール部材11に安全弁など,余剰圧を排除する装置の設置を行ってもよい.
【0042】
シール材10を構成する抜け止め用の支持部材12は、鞘管2と杭4との隙間Dを下端部から塞ぐように配置されてシール部材11の抜け落ちを防止できるようにする環状のもので、例えば、円周方向に複数に分割され、隙間Dの下端部に水平に当てる水平板部12aと杭4の外周面に当てる垂直板部12bと、両端部に設けた連結用のフランジ部12cとで構成し、例えば4つに分割されたものをフランジ部12c同士でボルト・ナットで連結することで杭4にバンド状に締め付けて固定する。
【0043】
さらに、この支持部材12には、一箇所にシール部材11の注入排出部である接続管11bを通す貫通孔12dが形成してある。
【0044】
なお、抜け止め用の支持部材12は、円周方向に複数に分割したものをフランジ部同士で連結することで鞘管2と杭4との隙間Dの下端部を塞ぐようにするもののほか、支持部材12Aとして水平板部12aのみで構成し、鞘管2と杭4との少なくともいずれか一方、図示例では両方に溶接するようにしても良い(図6参照)。
【0045】
次に、この発明のシール材10を用いたシール構造およびその施工方法の実施の形態を図4〜図7に基づき説明する。
まず、海洋構造物の基礎部分を構築する場合に、図4に示すように、鞘管2を構成するジャケットレグに杭4を構成する鋼管杭を貫通して、基礎地盤に杭4を打設する。なお、予め打設した鋼管杭などの杭4に鞘管2を構成するジャケットレグを貫通させる場合であっても良い。
【0046】
このような鞘管2を構成するジャケットレグの下端部の形状はストレートでもよいが,ロート状に広がる形状とすることが好ましく、後工程でのシール材10の装着が容易にできるとともに、ジャケットレグを打設した杭4に貫通させる場合のガイドとして利用することもできる。
【0047】
次に、シール材10を装着するため、シール部材11の先端部に先端位置を保持する先端保持部材11eを取り付けるとともに、横断面が円形筒状のシール部材11の注入排出部である接続管11bに配管ホースを介して真空ポンプを接続し、内部の空気を吸引して潰した状態とする。
【0048】
この後、鞘管2と杭4との隙間Dの下端部からシール部材11を入れ、先端保持部材11eでシール部材11の先端部の位置を保持してスパイラル状に杭4の外側に巻き付けるように装着する。
【0049】
次いで、シール部材11を装着した鞘管2を構成するジャケットレグの下部に抜け止め用のバックアッププレートとして支持部材12を配置し、分割されたフランジ部12c同士をボルト・ナットで連結してバンド状に締め付けることで杭4の外周に固定する。この支持部材12を固定する場合には、シール部材11の注入排出部である接続管11bを貫通孔12dを介して外部に突き出すようにしおく。
【0050】
なお、バックアッププレートとしては、支持部材12のフランジ部12cをボルト・ナットで連結してバンド状に取り付けるのに代え、溶接構造の支持部材12Aを用いる場合には、図6に示すように、杭4とのすみ肉部および鞘管2とのすみ肉部の両方、あるいは少なくとも一方で溶接して固定する。この場合にも、シール部材11の注入排出部である接続管11bを貫通孔12dから外部に突き出すようにしおく。こうすることで、鞘管2と杭4との隙間Dにシール部材11を装着することができる。
【0051】
次に、シール部材11の内部と連通する注入排出部である接続管11bに配管ホースを接続した後、配管ホースから加圧水あるいは加圧空気を注入する。この場合の加圧水あるいは加圧空気の圧力は、グラウト材Gの注入圧力以上の圧力としてシール部材11を膨らませ、隙間Dの壁面にシール部材11の両側部11cおよび11dを密着させる。
【0052】
これにより、シール材10の上部にグラウト材Gが充填されてもグラウト材Gの漏洩を防止することができる状態となる。
【0053】
この後、鞘管2であるジャケットレグに設けたグラウト注入管および杭4である鋼管杭と鞘管2であるジャケットレグとの隙間Dの天端部からグラウト材Gの注入を開始する。
【0054】
そして、シール材10の下部よりグラウト材Gの漏洩がないことを確認した後にシール部材11の接続管11bのバルブを閉めて接続してある配管ホースを外す。
【0055】
このようなシール構造およびその施工方法によれば、杭4である鋼管杭と鞘管2であるジャケットレグとの隙間Dを完全にシール状態にしてグラウト材Gを注入することができる。
【0056】
さらに、このシール構造およびその施工方法によれば、シール材10の取り付けのため鞘管2の内周に溶接する作業がなく、鞘管2と杭4との隙間Dに対して潰した状態のシール部材11を装着すれば容易にシール部材11の施工が簡単にできる。
【0057】
また、シール部材11の抜け止め用の支持部材12をバンド状に締め付けて固定したり、鞘管2や杭4の外側に溶接して固定するようにしたので、簡単に取り付けることができる。
【0058】
さらに、鞘管2に予めシール部材11を取り付けておく必要がなく、鞘管2の取り付けや杭4の打設の際に損傷することを防止できるとともに、鞘管2と杭4との隙間Dが均一になっていない場合でも加圧流体でシール部材11を膨らませて隙間Dの壁面に密着させることで、均一な接触圧力を保持することができ、安定したシール機能を得ることができる。
【0059】
また、鞘管2や杭4の大きさが変わる場合でも円筒状のシール部材11を用意しておき、対応する長さに切断して両端部を封止金具11aで封止すればよく、杭のサイズに応じて多種類のものを在庫する必要もなく、杭サイズに簡単に対応することができる。
【0060】
さらに、シール部材11の先端部に設けられて先端位置を保持する先端保持部材11eを備えているので、先端部に設けた水膨張ゴムやスポンジなどの先端保持部材11eでシール部材11の先端位置を保持して装着することができ、鞘管の下端部からの装着を一層容易にすることができる。
【0061】
また、シール部材11の両側部11cに密着性を高める突状部11dを形成したので、両側部にギザギザなどの突状部11dを形成することで、隙間Dの壁面への接触圧力を高めることができ、一層止水性(グラウトの流出防止性)を高めることができる。
【0062】
さらに、支持部材12を周方向に分割しておき、フランジ部12cを介してボルト・ナットで連結して杭4に固定して隙間Dの下端部を塞ぐようにしたり、分割された支持部材12を杭4や鞘管2のいずれかに溶接または両方に溶接することで隙間Dの下端部を塞ぐようにしてシール部材11の抜け落ちを防止することができ、分割したものを取り付けることで、作業性や施工性を向上することができる。
【符号の説明】
【0063】
2 鞘管
4 杭
10 杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材
11 シール部材
11a 封止金具
11b 接続管(注入排出部)
11c 側面部
11d 突状部
11e 先端保持部材
12 支持部材
12a 水平板部
12b 垂直板部
12c フランジ部
12d 貫通孔(接続管用)
12A 支持部材
D 隙間(鞘管と杭の間)
G グラウト材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール材であって、
先後端部が閉塞され注入排出部からの内部空気の吸引により潰されて前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着されるとともに、加圧流体で膨らませて前記隙間の壁面に密着される筒状のシール部材と、前記隙間の端部に設けられ前記シール部材の抜け止め用の支持部材とからなることを特徴とする杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材。
【請求項2】
前記シール部材の先端部に設けられて先端位置を保持する先端保持部材を備えてなることを特徴とする請求項1記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材。
【請求項3】
前記シール部材の両側部に密着性を高める突状部を形成してなることを特徴とする請求項1または2記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材。
【請求項4】
前記支持部材を、周方向に複数に分割してなり、フランジ部を介してボルトナットで連結して前記杭に固定する構造または溶接により連結して少なくとも前記杭あるいは前記鞘管のいずれかに固定する構造としてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材。
【請求項5】
杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール構造であって、
先後端部が閉塞され注入排出部からの内部空気の吸引により潰されて前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着されるとともに、加圧流体で膨らませて前記隙間の壁面に密着される筒状のシール部材と、前記隙間の端部に設けられ前記シール部材の抜け止め用の支持部材とからなることを特徴とする杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項6】
前記シール部材の先端部に設けられて先端位置を保持する先端保持部材を備えてなることを特徴とする請求項5記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項7】
前記シール部材の両側部に密着性を高める突状部を形成してなることを特徴とする請求項5または6記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項8】
前記支持部材を、周方向に複数に分割してなり、フランジ部を介してボルトナットで連結して前記杭に固定する構造、または溶接により連結して少なくとも前記杭あるいは前記鞘管のいずれかに固定する構造としてなることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール構造。
【請求項9】
杭とその外側に配置される鞘管との隙間に注入されるグラウトの流出を防止してシールするシール材を施工するに際し、
先後端部が閉塞された筒状のシール部材の注入排出部から内部の空気を吸引により潰して前記隙間にスパイラル状に巻き付けて装着した後、前記隙間の端部に前記シール部材の抜け止め用の支持部材を設け、前記シール部材の前記注入排出部から加圧流体を注入して膨らませて前記隙間の壁面に密着されるようにしたことを特徴とする杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法。
【請求項10】
前記シール部材の先端部に先端位置を保持する先端保持部材を設けて先端位置を保持するようにしたことを特徴とする請求項9記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法。
【請求項11】
前記支持部材を、周方向に複数に分割しておき、フランジ部を介してボルトナットで連結して杭に固定し、または溶接により連結して少なくとも杭あるいは鞘管のいずれかに固定するようにしたことを特徴とする請求項9または10記載の杭と鞘管間のグラウト流出防止用シール材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−140805(P2011−140805A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1907(P2010−1907)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】