説明

杭の連結構造、PC鋼棒

【課題】連結した既製杭の外面に突起物を生じさせず、連結作業を簡略化する。
【解決手段】下杭30Aの上端板25Aに、先端に上膨大部を有する連結棒20を立設し、側面4に嵌合溝片43を形成する。上杭30Bは、下端板25Bの一面2に連結棒20を挿入係止できる係止受け部を形成し、下端板25Bの側面4に嵌合溝片43を形成する。下杭30Aを杭穴に降下させて地上で保持し(a)、上杭30Bを降下させて、下杭30Aの上端板25Aの連結棒20を、上杭30Bの係止受け部に挿入する。上杭30Bを回転して、上下杭30A、30Bで、開口縁46、46を合致させる。この際、下杭30Aの連結棒20が、上杭30Aの係止受け部10に係止される。また、嵌合溝片43が合致してなる嵌合溝49に嵌合連結材50を嵌合して、連結構造33を構成する(b、c)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の既製杭を上下に接合して連結杭を構成する際の杭の連結構造、および既製杭をコンクリート杭とした場合に使用するPC鋼棒に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の既製杭を連結する際には、接合端部に鋼製の端板を取付け、端板同士を付け合わせて、溶接して接合する方法が未だに一般的となっている。溶接による場合には、熟練技術を要し、風雨がある場合には雨や埃が溶接に影響を与えるので、天候に作業の進捗が左右され工程管理に問題があった。そこで、溶接を使わない様々な方法が提案されている。
【0003】
例えば、部分円形の帯状の連結具を被せて、連結具の外側から端板にボルトを打ち、固定していた(特許文献1)。また、他の方法では接続部材に2つの接続突起を突設して、上下端板に設けた凹部に、接続突起を嵌挿して、上杭、下杭を連結していた(特許文献2)。また、他の方法は、一方の端板に頭部を先端にしてボルトを突設して、他方の端板にボルトの頭部が挿入される大径部、大径溝部、鍔部を形成して、付け合わせた端板内で、接合する構造が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−82656
【特許文献2】特開2002−161531
【特許文献3】特開2004−76533
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の技術では特許文献1、2では、既製杭の外側面で突出物が形成されるので、突起物が杭穴壁に当たり、杭穴壁を崩すおそれもあり、その衝撃で突起物に負荷が掛かり、上下杭の連結が破壊されあるいは緩むおそれがあった。また、特許文献3では、ボルト5のボルト頭部51を、段差を有する鍔部33に係止するので、接合する端板の当接面に不整合があった場合、連結不能となるおそれもあった。
【0005】
また、連結に用いる部材、プレート、ボルト、特殊な端板など、それぞれの連結方法に、特殊な構造の材料を使用する必要があった。従ってコスト高や納期の長期化を招き、工期の短縮を拒む要因ともなっていた。
【0006】
また、PC鋼棒は既製コンクリート杭の両端板の定着孔に定着して、コンクリートにプレストレスを導入するためにだけに使用していた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
然るにこの発明は、係止部及び/又は係止受け部の口縁部をテーパー状の連結案内部を形成したので、あるいは、端板の外側面と嵌合連結材の外面とを略同一に形成したので、従来の汎用の端板をそのままあるいは加工して使用でき、前記問題点を解決した。
【0008】
即ちこの発明は、下杭の端板の上端面と上杭の端板の下端面とを当接して両端板を連結して、連結杭を構成する連結構造において、
一方の端板の端面に、先端に係止部を有する係止突起を形成し、他方の端板の端面に、前記突起を挿入して、係止部を係止できる係止受け部を有する係止凹部を形成し、前記係止部及び/又は係止受け部の口縁部をテーパー状の連結案内部を形成したことを特徴とする杭の連結構造。
【0009】
前記において、係止突起は、軸部の先端を膨大に形成して略球形の係止部とし、係止凹部は、前記係止部を挿通できる大きさの大径穴と軸部を挿通でき係止部を挿通できない大きさの小径穴とを円周方向に並列し、前記小径穴の開口部をテーパー状に拡径した連結案内部を有する係止凹部を形成することを特徴とする杭の連結構造である。また、前記において、下杭及び上杭を、上下端板間に配置したPC鋼棒でストレスを導入したコンクリート製の杭とし、前記PC鋼棒の端縁を前記端板の内周側に定着させ、係止突起及び係止受け部を前記端板の外周側に配置したことを特徴とする杭の連結構造である。また、下杭又は上杭のいずれか一方の杭の端板の外周に、上杭又は下杭の外径を内径とするガイド筒を嵌装したことを特徴とする杭の連結構造である。また、一方の端板の外側面に複数の第一嵌合溝片を形成し、他方の端板の外側面に前記第一嵌合溝に対応して、第二嵌合溝片を形成し、前記両嵌合溝に、嵌合連結材を嵌合し、前記端板の外側面と前記嵌合連結材の外面とを略同一に形成したことを特徴とする杭の連結構造である。
【0010】
また、他の発明は、下杭の端板の上端面と上杭の端板の下端面とを当接して両端板を連結して、連結杭を構成する連結構造において、一方の端板の外側面に複数の第一嵌合溝片を形成し、他方の端板の外側面に前記第一嵌合溝に対応して、第二嵌合溝片を形成し、前記両嵌合溝片を合わせて、前記上下杭を配置し、前記両嵌合溝片に共通する嵌合連結材を嵌合してなり、前記両嵌合溝に、嵌合連結材を嵌合し、前記端板の外側面と前記嵌合連結材の外面とを略同一に形成したことを特徴とする杭の連結構造である。
【0011】
更に、他の発明は、既製コンクリート杭に埋設して使用するPC鋼棒であって、前記既製コンクリート杭の端板の定着孔との定着用の膨大部の先端側に軸部を延長し、該軸部の先端に連結用の膨大部を形成したことを特徴とするPC鋼棒である。
【発明の効果】
【0012】
前記係止部及び/又は係止受け部の口縁部をテーパー状の連結案内部を形成したので、上杭を回転されれば、係止部と係止受け部の係止が容易に行うことができ、連結作業を簡略化すると共に、端板の当接面に不陸があるなど不整合があった場合であっても、上下杭を接合することができる効果がある。
【0013】
また、端板の外側面と嵌合連結材の外面とを略同一に形成したので、連結した既製杭の外面に突起物が生じないので、その突起部が杭穴壁に当接して、連結を破壊しあるいは杭穴壁を崩すおそれがない。従って、必要以上に大きな径の杭穴を空ける必要がなく、また既製杭の埋設作業を簡略化することができる効果がある。
【0014】
また、この発明で使用する端板は従来より汎用で使用している端板に係止受け部を設ければ完成でき、連結棒は、一般のPC鋼棒の極短尺のものを使用することができる。従って、この発明で使用する各部材については、製造コストの削減を図ることができ、また製造も簡略化できるので、納期の短縮化から、工程の短縮化を実現できる。
【0015】
また、PC鋼棒は、定着用の膨大部を延長して連結棒を構成した場合には、別途連結棒を作成し、既製杭に取り付ける作業を省略することができ、連結作業を更に簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(1) 下杭30Aの上端板25Aの一面2に先端に上膨大部22を有する連結棒(係止棒)20を立設し(図6鎖線図示20)、側面4に、開口縁46及び幅広部を有する嵌合溝片43、43を形成する(図6(a)、図2(a))。
【0017】
上杭30Bは、下端板25Bの他面3に、下杭の連結棒20の上膨大部22を挿入して、回転して上膨大部22を係止できる挿通孔11、係止孔12を有する係止受け部11を形成する。また、下端板25Bの側面4に、開口縁46及び幅広部を有する嵌合溝片43、43を形成する(図6(a))。
【0018】
(2) 所定の杭穴に、下杭30Aを従来と同様な方法で降下させて地上で保持する(図6(a))。上杭30Bを降下させて、下杭30Aの上端板25Aの連結棒20の上膨大部22を、上杭30Bの係止受け部10の挿通孔11に挿入する。
【0019】
下杭30Aの上端板25Aの嵌合溝片43の開口縁46と、上杭30Bの下端板25Bの嵌合溝片43の開口縁46とが合致するように上杭30Bを回転させる。嵌合溝片43、43の開口縁46、46が合致した状態で、下杭30Aの連結棒20の上膨大部22が、上杭30Aの係止受け部10の係止孔12に係止される(図5(b))。この状態で、上杭30Bの嵌合溝片43と下杭30Aの嵌合溝片43とが一致し、嵌合溝49を構成する(図6(b))。
【0020】
嵌合溝49に幅広部に対応した幅広部52を有する嵌合連結材50を、嵌合溝49に嵌合して、連結構造33を構成する。
【0021】
(3) 前記における連結棒20は、軸部21の両端部に上膨大部22、下膨大部23を形成した短い鋼材を使用することもできる(図5)。また、既製コンクリート杭25のコンクリート27に埋設して、プレストレスを導入するために使用されるPC鋼棒28を利用することもできる(図8(b)〜(d))。このPC鋼棒28の膨大部29(上端板25Aの定着孔8と定着するための)の先端側に延長して(上端板25Aの一面2より先端側に延長される)、連結棒20の軸部21を形成し、この軸部の先端(上端)に上膨大部22を形成することもできる(図8(d))。このPC鋼棒28は、下端側の膨大部29から上端側の膨大部29、上膨大部22まで一体に形成されている。また、PC鋼棒28の膨大部29が、連結棒20の下膨大部23と兼用されている。
【実施例1】
【0022】
図1〜図5、図8に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0023】
[1]端板25の構成
【0024】
(1) 厚さtの鋼製円盤1の内周側の円40に沿って、PC鋼棒28の両端部の膨大部29を定着させる定着孔8、8を形成する。鋼製円板1の外周側の円41に沿って、係止受け部10を形成する。円40、41は、半径方向で、鋼製円盤1の幅L0(杭のコンクリートの肉厚に相当する)をほぼ3分の1づつに分割する位置に配置される。
【0025】
(2) 1つの係止受け部10は、鋼製円盤1に、大径Dの挿通孔11と小径Dの係止孔12を穿設する。挿通孔11と係止孔12とは、円41に沿って配置され、挿通孔11と係止孔12との間を係止孔12の直径に沿って削って、連通部14を介して連通させ、一体の開口を形成する(図4)。
【0026】
鋼製円盤1の厚さ内の中間位置から、鋼製円盤1の一面2(杭の外面に位置する側)に向けて、係止孔12を徐々に拡大して(径D)、他面3(杭のコンクリートに位置する側)で係止孔12と同芯で、径Dとなるように、テーパー状に形成する。従って、係止孔12は、鋼製円盤1の一面2から中間厚さまで径Dで、中間厚さから鋼製円盤1の他面3まで徐々に拡径して、鋼製円盤1の他面3では径Dとなり、略漏斗状の形状となっている。
<D<D
【0027】
また、径D部分では、挿通孔11側に向けて径Dで、挿通孔11と連通するように、連通部14を形成されている。係止孔12で、中間厚さの径Dの縁から面3にかけてのテーパー状の面を係止縁(連結案内部)13とする。
【0028】
(3) また、鋼製円盤1の外周部の所定位置(通常は係止孔12を通る半径の延長線上)に、目印17を形成する。目印17は、2つの鋼製円盤1、1を面2と面3とを当接して、係止孔12、12が連通した状態(上杭31と下杭30とを連結した状態)で、両鋼製円盤1、1の目印17、17が一致するような位置に形成されている(図3(a))。
【0029】
(4) 以上のようにして、コンクリート製の既製杭用の端板25を形成する(図1)。尚、端板25は一体に製造する。従って、この端板25では、PC鋼棒28の軸部及び膨大部29と、連結棒20の軸部21、膨大部22、23とが同じ構造となるならば、係止受け部10の断面形状を同一として、一方が鋼製円盤1の一面2側から形成し、他方を鋼製円盤1の他面3側から形成することもできる。
【0030】
(5) また、連結用の連結棒20を、長さLで、軸部21の径D(D<D)で、両端部に上膨大部22、下膨大部23(径D:D<D≦D)となるような構造で鋼材から形成する。一方の係止受け部10に取り付けた連結棒20が係止突起を構成する(図5(a))。両膨大部22、23は軸部21側のテーパー部(連結案内部)22a、23aが、略球形の一部となるような曲面のテーパー状に形成されている(図5(a))。
【0031】
[2]既製コンクリート杭30の構成
【0032】
端板25の係止受け部10、10に栓(図示していない)をして面3を内側にして、成型用の型枠内に端板25、25を設置し(上端板25A、下端板25B)、PC鋼棒28、28、必要な鉄筋を配置して、通常の方法により、遠心成型で既製コンクリート杭30を構築する。この際、通常の方法により、ストレスを導入する。以上のようにして、既製コンクリート杭30を構成する(図2(a)、図5(a))。
【0033】
従って、既製コンクリート杭30は、上に端板25A、下に端板25Bを有する構造となり、端板25Aの定着孔8と、端板25Bの定着孔8との間にPC鋼棒28の両端部の膨大部29が係止されている。また、図中27は、既製コンクリート杭30のコンクリート部分である。
【0034】
[3]既製コンクリート杭30の施工(本件連結構造33の構築)
【0035】
(1) 通常の方法により、下杭30Aとして、既製コンクリート杭30を埋設し、杭穴の開口部で保持する。
【0036】
(2) 端板25Aの係止受け部10に取り付けた栓を取り外し、連結棒20の下端部の下膨大部23を下杭30Aの端板25Aの挿通孔11に挿入し、連通部14を通して係止孔12に移動し、連結棒20の軸部21を係止孔12に位置させ、下膨大部23をテーバー部23a、係止縁13を案内として、テーパー状の係止縁13に位置させ、連結棒20の引き抜きを防止する。必要な係止受け部10(通常は総ての係止受け部10)に連結棒20を取り付ける(図2(b)、図5(b))。この際、連結棒20の下膨大部23が係止縁13に位置し、連結棒20の軸部21が係止孔12に位置するので、連結棒20は係止受け部10から抜けるおそれは無い。
【0037】
また、この際、連結棒20の中間部から上膨大部22にかけての部分が、係止突起を構成する。
【0038】
(3) 続いて、所定の方法で杭打ち機に設置した上杭30Bを下降し(図2(a)、図5(a))、上杭30Bの下端板25Bを下杭30Aの上端板25Aに重ねる(図3(b)、図2(b)、図5(a)鎖線図示30B)。この際、連結棒20の上膨大部22、22を上杭30Bの下端板25Bの係止受け部10、10の挿通孔11に位置させる。また、係止受け部10、10は対応して形成されているので、1つの連結棒20で、位置を合わせると、総ての連結棒20、20が対応する係止受け部10、10の挿通孔11、11に挿入されるようになっている。この状態で、両端板30A、30Bの目印17A、17Bは一致していない(図3(b))。
【0039】
(4) 続いて、上杭30Bを回転させて、上杭30Bの下端板25Bの目印17Bを、下杭30Aの上端板25Aの目印17Aとを一致させる(図3(c))。上杭30Bを回転して、目印17A、17Bとを一致させることにより、連結棒20の上膨大部22のテーパー部22が係止縁13のテーパー状の斜面を案内として、連結棒20の軸部21の上側が上杭30Bの下端板25Bの係止孔12に位置し、上膨大部22が上杭30Bの下端板25Bの係止縁13に位置する(図5(b))。従って、目印17A、17Bを手がかりとして上杭30Bを回転させることにより、自動的に連結できるので、目視による確認が容易である。
【0040】
以上により、上下杭30B、30Aを連結した連結構造33が完了する。また、一旦このように連結したならば、連結棒20の軸部21は、上下の端板25A、25Bの係止孔12の孔壁で挟まれるので、ずれるおそれはないが、当接した端板25A、25Bの当接部分で少なくとも1箇所の溶接を施すこともできる。この場合には、より接合を確実にすることができる。
【0041】
(5) 尚、ここで、連結棒20を下杭30Bの上端板25Bの係止受け部10、10に取り付けしたが、上杭30Bの係止受け部10に取り付けることもできる(図示していない)。
【0042】
また、連結棒20を予め、溶接などにより、下杭30Aの上端板25Aに溶接等により固定しておくこともできる。
【0043】
また、下杭30Aの上端部外周に、案内筒35(例えば、防水処理をした厚紙製)の下部を被せて仮止めし、案内筒の内周を案内として、上杭30Bを下降して、上杭30Bの端板25Bを、下杭30Aの端板25Aに載置することもできる(図3(a)鎖線図示35)。
【0044】
[4]他の実施例
【0045】
(1) 前記実施例において、連結に使用しない端板25(例えば、最下部の既製杭30の下端板25B、最上部の既製杭30の上端板25Aは、任意構造でも可能である。
【0046】
(2) また、前記実施例において、連結棒20を両端部に膨大部22、23を形成した鋼材から構成したが、上部のみに上膨大部22を形成した連結棒20を使用して、この連結棒20の軸部21を下杭30Aの上端板25Aの係止孔12に溶接して、この連結棒20の上膨大部22を上方に向けて配置することもできる(図示していない)。この場合にも、同様に、連結棒20の上膨大部22が下端板25Bの係止受け部10に係止される。この場合には、連結棒20として、汎用の皿状(頭部の軸側にテーパーが形成された)のボルトを使用することもできる。
【0047】
(3) また、前記実施例において、下端板25Aの係止孔12に連結棒20を取り付けたが、外れないように一部を接着又は溶接などの処理をすれば、上端板Bの係止孔12に連結棒20を取り付けることもできる(図示していない)。
【0048】
(4) また、係止孔12にテーパー状の係止縁13を形成し、連結棒20にもテーパー部22a、23aを形成したが、テーバー部22a、23a又はテーパー状の係止縁13のいずれか一方を省略することもできる(図示していない)。
【0049】
(5) また前記実施例において、鋼製円盤1の内周側の円40に沿って定着孔8、8、外周側の円41に沿って係止受け部10、10をそれぞれ設けたが、1つの円42に沿って、定着孔8、係止受け部10を交互または適宜な順番で、形成して端板25を構成することもできる(図8(a))。この場合、下端板25bは、上端板25aに対応させた構造とする。
【0050】
(6) また、(5)のように1つの円42の周りに、定着孔8、係止受け部10を形成する場合、PC鋼棒28を加工して連結棒20を形成することもできる。
【0051】
即ち、下端版25aを従来の汎用の端版を使用して、型枠に端板を設置した状態で、PC鋼棒を若干長めとして、端部に膨大部29を形成し、膨大部29に続き先端側に連結棒の軸部21を形成し、軸部21の先端側に上膨大部22を形成する(図8(d))。また、下端板25Bでは、前記と同様の定着孔8と係止受け部10が交互に配置され、PC鋼棒28の他端の膨大部29を、下端板25Bの定着孔8に従来同様に定着させる(図8(b)参照)。以上のようにして、端板25A、25Bを使用して既製コンクリート杭30を製造する。
【0052】
既製コンクリート杭30を使用した上下杭30A、30Bの連結は前記実施例と同様であり、下杭30Aの上端板25Aの連結棒20の上膨大部22を、上杭の下端板25Bの係止受け部10に係止して連結する。この場合には、予め下杭30Aの上端板25Aに連結棒20を取り付けた状態で埋設されるので、連結作業を更に簡略化できる。
【0053】
尚、PC鋼棒28の上端部に連結棒20を形成する場合、1つの既製コンクリート杭で、端板を共通させるために、上端板25Aを下端板25Bと同じ構造とすることもできる(図示していない)。この場合、上端板25Aでは、係止受け部10、10を使用しないので、必要ならば栓をする(図示していない)。
【0054】
(7) 前記実施例において、係止受け部10を鋼製円盤1に貫通させた孔としたが、鋼製円盤1」(端板25)が厚い場合には、他面3(コンクリート側)を塞いだ断面形状とすることもできる(図示していない)。
【実施例2】
【0055】
次ぎに、図6、図7に基づいて、他の発明の実施例を説明する。
【0056】
[1]端板25、既製コンクリート杭30の構成
【0057】
この実施例の端板25は、鋼製円盤1の側面4の所定位置に、嵌合溝片43、43を形成して構成する。嵌合溝片43は、端板25の他面3側(外面側)で開口縁45し、他面3側を幅狭部44として、一面2側(コンクリート側)を幅広部45としてある。嵌合溝片43、43は、2つの端板25、25を他面3と他面3とを当接した際に、幅狭部44、44の開口縁46、46が一致して、両嵌合溝片43、43で嵌合溝49を形成するような形状と位置で形成されている。また、嵌合溝片43は、少なくととも端板25の円周に対して、等間隔で2個形成するが、通常は、等間隔に4個以上形成することが望ましい。
【0058】
他面2を外側に向けて(嵌合溝片43の開口縁46、46を外側に向けて)、上下端板25、25を既製杭成型用の型枠に設置して、通常の方法により、既製コンクリート杭30(下杭30A、上杭30B)を製造する(図6(a))。
【0059】
[2]連結構造33の構成
【0060】
正面鼓形(板状)で、嵌合溝49(2つの嵌合溝片43、43)の形状に対応させて嵌合連結材50を形成する。即ち、嵌合連結材50は、幅狭部51に対応して、中央に幅狭部51を形成し、幅広部45、45に対応して上下両端部に幅広部52、52を形成してある。
【0061】
まず、杭穴内に埋設した下杭30を杭穴口で支持して、杭打ち機で上杭30Aを下降して(図6(a))、上杭30Bの下端板25Bを、下杭30Aの上端板25Aに、載置する(図6(a)鎖線図示30B、25B)。この状態で、上下杭30A、30Bの嵌合溝片43、43の開口縁46、46を一致させて、嵌合溝片43、43を連通して嵌合溝49を構成する。
【0062】
続いて、嵌合溝49、49に、嵌合連結材50、50を打ち込み、この発明の連結装置33を構成する(図6(b)(c))。また、このようにして嵌合溝49と嵌合連結材50とが嵌合し、嵌合溝49の幅狭部44、44に、嵌合連結材50の上下の幅広部52、52が嵌合し、上下杭30A、30Bの連結を維持できる。また、端板25A、25Bの側面4、4と嵌合連結材50の表面50aとが略面一に形成され、段差が無いので、実施例1と同様に上下杭30A、30Bの埋設中に該部が杭穴壁に当たることがない。
【0063】
尚、この場合、必要ならば、嵌合連結材50の外周の一部を溶接することもできる。
【0064】
[3]他の実施例
【0065】
(1) 前記実施例において、嵌合溝片43の他面3側(コンクリート側)を深く形成して(端板25の中心側に向けて)、係止縁48を有する係止底部47を形成することもできる(図7(a)(b))。この場合には、係止底部47は底が広く、開口側の係止縁48が狭い蟻溝のように形成する。この場合に使用する嵌合連結材50も、上下両端部に、係止底部47の形状に応じて、先端側が広く基端側が狭い膨出係止部53、53を形成する(図7)。尚、この場合には、嵌合溝43、嵌合連結材50の正面形状を、鼓形から、長方形(幅狭部44、51、幅広部45、52を無くする)とすることもできる(図7(c))。
【0066】
(2) また、前記実施例において、前記実施例1の端板25の側面4に更に、嵌合溝片43、43を形成して端板25とすることもできる(図示していない)。この場合には、連結棒20と係止受け部10との係止に加え、更に嵌合溝49と嵌合連結材50とが嵌合するので、上下杭30B、30Aはより強固に連結された連結構造33とすることができる(図6(a)鎖線図示20)。
【0067】
また、この場合には、前記実施例1の目印17、17の位置に嵌合溝片43、43を形成する。従って、上下杭30A、30Bの係止孔12、12が連通した状態(上杭30Bと下杭30Aとを連結した状態)で、幅狭部44、44の開口縁46、46を一致させる作業をすれば、即ち、両嵌合溝片43、43で嵌合溝49を形成するように上杭30Bを回転させれば、連結棒20と係止孔12とが一致して、同時に係合できる。よって、嵌合溝片43、43が前記実施例1の目印17、17と同じ役割を果たすので、目印17、17を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の実施例で(a)は下杭の上端板の平面図、(b)は上杭の下端板の底面図、(c)は(a)のA部拡大図、(d)は(b)のB部拡大図である。
【図2】同じく図1(c)のC−C断面図に相当する図で、(a)は接合前、(b)は接合後を夫々表す。
【図3】同じく一部斜視図で、(a)は接合前、(b)は当接した状態、(c)は接合後を夫々表す。
【図4】この発明の実施に使用する端板の係止受け部で、(a)は上端板の平面図、(b)はD−D断面図、(c)は、E−E断面図、(d)はF−F断面図である。
【図5】この発明の連結構造を説明する前の拡大縦断面図であり、(a)は連結前、(b)は連結後を夫々表す。
【図6】この発明の実施例2で、(a)は連結前の正面図で、(b)は連結後の正面図、(c)は(b)のG−G線における拡大断面図である。
【図7】同じく他の実施例で、(a)は拡大縦断面図、(b)は係止受け部の正面図、(c)は他の係止受け部の正面図である。
【図8】この発明の実施例1の他の実施例で、(a)は下杭の下端板の平面図、(b)は他の実施例の上杭の下端版の底面図、(c)は同じく下杭の上端版の平面図、(d)は(c)のH−H線における拡大断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 鋼製円盤
2 一面(外側)
3 他面(コンクリート側)
4 側面
5 内周
8 定着孔
10 係止受け部
11 挿通孔
12 係止孔
13 係止縁
14 連通部
17、17A、17B 目印
20 連結棒
21 連結棒の軸部
22 連結棒の上膨大部
22a 上膨大部のテーパー部
23 連結棒の下膨大部
23a 下膨大部のテーパー部
25、25A、25B 端板
27 コンクリート部分
28 PC鋼棒
29 PC鋼棒の膨大部
30、30A、30B 既製コンクリート杭
33 連結構造
35 案内筒
40 円
41 円
42 円
43 嵌合溝片
44 嵌合溝片の幅狭部
45 嵌合溝片の幅広部
46 嵌合溝片の開口縁
47 嵌合溝片の係止底部
48 嵌合溝片の係止縁
49 嵌合溝
50 嵌合連結材
50a 嵌合連結材の表面
51 嵌合連結材の幅狭部
52 嵌合連結材の幅広部
53 嵌合連結材の膨出係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下杭の端板の上端面と上杭の端板の下端面とを当接して両端板を連結して、連結杭を構成する連結構造において、
一方の端板の端面に、先端に係止部を有する係止突起を形成し、
他方の端板の端面に、前記突起を挿入して、係止部を係止できる係止受け部を有する係止凹部を形成し、
前記係止部及び/又は係止受け部の口縁部をテーパー状の連結案内部を形成した
ことを特徴とする杭の連結構造。
【請求項2】
係止突起は、軸部の先端を膨大に形成して略球形の係止部とし、
係止凹部は、前記係止部を挿通できる大きさの大径穴と
軸部を挿通でき係止部を挿通できない大きさの小径穴とを円周方向に並列し、
前記小径穴の開口部をテーパー状に拡径した連結案内部を有する係止凹部を形成することを特徴とする
請求項1記載の杭の連結構造。
【請求項3】
下杭及び上杭を、上下端板間に配置したPC鋼棒でストレスを導入したコンクリート製の杭とし、
前記PC鋼棒の端縁を前記端板の内周側に定着させ、係止突起及び係止受け部を前記端板の外周側に配置したことを特徴とする
請求項1記載の杭の連結構造。
【請求項4】
下杭又は上杭のいずれか一方の杭の端板の外周に、上杭又は下杭の外径を内径とするガイド筒を嵌装したことを特徴とする請求項1記載の杭の連結構造。
【請求項5】
一方の端板の外側面に複数の第一嵌合溝片を形成し、他方の端板の外側面に前記第一嵌合溝に対応して、第二嵌合溝片を形成し、
前記両嵌合溝に、嵌合連結材を嵌合し、前記端板の外側面と前記嵌合連結材の外面とを略同一に形成したことを特徴とする
請求項1記載の杭の連結構造。
【請求項6】
下杭の端板の上端面と上杭の端板の下端面とを当接して両端板を連結して、連結杭を構成する連結構造において、
一方の端板の外側面に複数の第一嵌合溝片を形成し、他方の端板の外側面に前記第一嵌合溝に対応して、第二嵌合溝片を形成し、
前記両嵌合溝片を合わせて、前記上下杭を配置し、前記両嵌合溝片に共通する嵌合連結材を嵌合してなり、
前記両嵌合溝に、嵌合連結材を嵌合し、前記端板の外側面と前記嵌合連結材の外面とを略同一に形成したことを特徴とする杭の連結構造。
【請求項7】
既製コンクリート杭に埋設して使用するPC鋼棒であって、前記既製コンクリート杭の端板の定着孔との定着用の膨大部の先端側に軸部を延長し、該軸部の先端に連結用の膨大部を形成したことを特徴とするPC鋼棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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