説明

杭孔壁防護方法

【課題】場所打ち杭の杭孔掘削と同時並行に孔壁保護を行えるようにする。
【解決手段】
場所打ち杭の杭孔掘削作業と同時並行して、杭孔よりも小径で、掘削した部分の深さより短い、もしくは同等の長さの円筒管(14)を複数繋ぎ合わせて孔壁(15)に沿って落とし込み、孔壁と円筒管との隙間に充填材(16)を充填して密着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は場所打ち杭の孔壁を防護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ち杭工法における孔壁防護方法として、かご状フレームとその外周面を覆うスキンプレートからなる筒状の土留め壁組立体を単位要素として複数段に渡って継ぎ足し、最下段のスキンプレートのみかご状フレームに接合した状態で、かご状フレームを荷重手段として所定深度まで地中に圧入し、スキンプレートのみ土留め壁として残してかご状フレームを撤去する工法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】

【特許文献1】特開2006−125055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の工法では、土留め壁を圧入するための大掛かりな荷重手段が必要となって作業が大掛かりになってしまう。また、長いスタンドパイプを揺動しながら圧入することも行われているが、重機が必要となり、軌道間の作業等では駅舎の屋根を一旦撤去する必要もあって施工が難しい。また、短いパイプを溶接しながら圧入する工法もあるが、溶接に時間がかかるとともに、圧入の際の反力をとるためのカウンタ・ウエイトが必要になり、カウンタ・ウエイトがとれない場合にはアンカを打って地盤から反力をとることも必要となり、作業が大がかりになってしまっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、場所打ち杭の杭孔掘削と同時並行に孔壁保護を行えるようにすることを目的とする。
本発明は、場所打ち杭の杭孔掘削作業と同時並行して、杭孔よりも小径で、掘削した部分の深さより短い、もしくは同等の長さの短い円筒管を複数繋ぎ合わせて孔壁に沿って落とし込み、孔壁と円筒管との隙間に充填材を充填して密着させることを特徴とする。
また、本発明は、地上の杭口元に配置した注入ノズルより充填材を注入し、充填材の自重で充填するようにしたことを特徴とする。
また、本発明は、前記充填材は作業現場から離れた箇所で練り上げられ、前記注入ノズルまで圧送されることを特徴とする。
また、本発明は、前記充填材はその粘性により前記円筒管の落とし込まれる動きに自重で追随し、円筒管と地山とを密着させることを特徴とする。
また、本発明は、円筒管と地山との隙間に充填材を充填させて地山への泥水の漏水を防止することを特徴とする。
また、本発明は、杭掘削泥水と充填材との水頭差により、充填材の充填速度を調整することを特徴とする。
また、本発明は、前記円筒管の先端部周囲に、充填材の逸出防止用シール材を取り付けたことを特徴とする。
また、本発明は、前記充填材に逸泥水防止剤を混ぜたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、掘削と同時に、杭径よりも小径で、掘削した部分の深さより短い、もしくは同等の長さの円筒管を複数接続しながら孔壁に沿って落としこみ、孔壁と円筒管の間に液状の充填材を流し込むことで、孔壁と円筒管を密着させ、掘進と同時並行で孔壁を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】杭孔掘削と孔壁防護の同時施工を説明する図である。
【図2】孔壁防護を説明する図である。
【図3】円筒管先端部の充填材の逸出防止シールを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では軌道間等駅舎の付近に場所打ち杭を施工する例について説明するが、本発明は施工場所に限定されるものではないことは言うまでもない。
図1は場所打ち杭を施工する際の孔壁防護方法の例を説明する図で、図1(a)は側断面図、図1(b)は掘削機とライナープレートを説明する上面図である。
駅ホーム3の付近で杭孔を掘削する場合、仮囲い5を設置して掘削機地上装置10からロッド11の先端部に取り付けた掘削ビット12を回転駆動して地山1を掘削する。本実施形態では掘削と同時並行で、杭孔よりも小径のライナープレートなどの鋼製の円筒管14を孔壁15に沿って落とし込む。円筒管14は鋼製に限定されるものではなく、例えば、鉄筋コンクリート製、コンクリート製、樹脂製、木製等を用いてもよく、現場の状況に応じて適宜選択して用いればよい。円筒管14は掘削した部分の深さより短い、もしくは同等の長さの管をボルト等で複数段繋ぎ合わせ、支持用治具13によりワイヤーで吊り下げて順次落とし込んでいく。このとき円筒管14は杭孔よりも小径のため自重により容易に落とし込むことができる。なお、図では円筒管を繋ぎ合わせて杭底まで施工する例を示しているが、杭底の方の地盤が硬くてしっかりしている場合は、円筒管は地盤の軟らかい杭孔の途中までだけ施工するようにしてもよい。円筒管14を落とし込むのに合わせて円筒管14と孔壁15との間にセメントミルク、セメントミルクにエアーを混ぜたもの、粘土に固化材または固化剤を混ぜたもの等からなる粘性のある充填材(裏込め材)16を地上の杭の口元に配置した注入ノズル(図示せず)から注入し、地下水圧に抗して自重により充填していく。なお、充填材16は作業現場から離れた位置で練り上げ、杭の口元に配置した注入ノズルまで圧送し、自動で注入するか、半自動(充填の状況を監視しながら作業員がノズルを開けたり閉めたりする)で注入してもよく、このようにすることで狭隘な作業現場であっても対応することができる。掘削機の掘削ビット12は伸縮機構付になっていて、ビットを伸ばした状態で掘削することで円筒管14よりも大径で削孔し、作業終了時にはビットを縮小させて円投管と接触せずに引き上げられるようになっている。
【0009】
図2は円筒管を落とし込んで充填材を充填した状態を示す図である。
複数段の円筒管14と孔壁15との間は充填材16により密着し、充填材は時間の経過とともに固化し、孔壁からの土圧は充填材を介して円筒管14で支持できるため、地層によらず孔壁防護が可能となる。また、充填材16は粘性があるため円筒管14の落とし込みの動きに自重で追随し、常に円筒管と孔壁を密着させて、地山からの地盤反力、せん断抵抗を作用させて円筒管と地盤を安定させることができる。また、杭孔内には所定水位の掘削泥水18があるが、充填材16の比重が大きいため、泥水位の管理を必要とせずに、杭の口元からの注入のみで充填することができる。また、充填材の充填速度は掘削泥水と充填材との水頭差で変化し、掘削泥水の水位を下げると充填速度は速くなり、掘削泥水の水位を上げると充填速度は遅くなるので、掘削泥水の水位により充填速度を調整することができる。また、充填材が低比重の場合は、掘削泥水の水位を下げることで充填させることができる。
【0010】
図3は複数段接続される先端の円筒管に付けたシール材を説明する断面図である。
1段目(先端)の円筒管12の底面周縁部に沿って、底面から孔壁に接するように延びて、先端部を上方へ折り曲げるようにして取り付けられた充填材の逸出防止用シール材20がボルトナット等により取り付けられる。シール材は、不織布、ブラシ、ゴム板、鋼板等、もしくはその組み合わせからなる。シール材の先端部は上方へ折り曲げられて孔壁に接するようにしているため、円筒管14の落とし込み時に孔壁に接した状態が維持され、比重の大きい充填材が下方へ逸出するのを防止する。また、掘削泥水の水位(泥水圧)を高くすることでも充填材が杭の下方へ逃げるのを防ぐことが可能である。また、充填材中に、パルプ、レーヨン、ロックウール、おがくず、線実絞りかす、クルミ殻などの目詰まりを起こす成分(逸泥水防止剤)を混ぜることで泥水が逸水して孔壁が崩れるのを防止することが可能である。
【符号の説明】
【0011】
1…地山、3…駅ホーム、5…仮囲い、10…掘削機地上装置10、11…ロッド,12…掘削ビット、13…支持用治具、14…円筒管、15…孔壁、16…充填材、18…掘削泥水、20…シール材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ち杭の杭孔掘削作業と同時並行して、杭孔よりも小径で、掘削した部分の深さより短い、もしくは同等の長さの短い円筒管を複数繋ぎ合わせて孔壁に沿って落とし込み、孔壁と円筒管との隙間に充填材を充填して密着させることを特徴とする杭孔壁防護方法。
【請求項2】
地上の杭口元に配置した注入ノズルより充填材を注入し、充填材の自重で充填するようにしたことを特徴とする請求項1記載の杭孔壁防護方法。
【請求項3】
前記充填材は作業現場から離れた箇所で練り上げられ、前記注入ノズルまで圧送されることを特徴とする請求項2記載の杭孔壁防護方法。
【請求項4】
前記充填材はその粘性により前記円筒管の落とし込まれる動きに自重で追随し、円筒管と地山とを密着させることを特徴とする請求項1記載の杭孔壁防護方法。
【請求項5】
円筒管と地山との隙間に充填材を充填させて地山への泥水の漏水を防止することを特徴とする請求項1記載の杭孔壁防護方法。
【請求項6】
杭掘削泥水と充填材との水頭差により、充填材の充填速度を調整することを特徴とする請求項1記載の杭孔壁防護方法。
【請求項7】
前記円筒管の先端部周囲に、充填材の逸出防止用シール材を取り付けたことを特徴とする請求項1記載の杭孔壁防護方法。
【請求項8】
前記充填材に逸泥水防止剤を混ぜたことを特徴とする請求項1記載の杭孔壁防護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−248714(P2010−248714A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96628(P2009−96628)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】