杭打ち装置及び杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法
【課題】杭打ち作業において、掘削部から地上へ上げられて回収される汚濁水が、鋼管杭と、この鋼管杭を内嵌めして回転自在に支える部分との間の隙間を通って下方へ漏れることを防止できるようにする。
【解決手段】杭打ち装置(9)は、オーガスクリュー(10)と回転体(11)を有するアースオーガ(1)と、リーダー(90)に昇降自在に設けられ底部(21)に振止め管(23)を有する集積容器(2)と、掘削部から上げられる汚濁水を集積容器(2)の内部に排出する排出口(141)と、集積容器(2)に設けられた排出部(22)及びオーバーフロー部(25)と、振止め管(23)に通され上部が回転体(11)に取り付けられている鋼管杭(3)の振止め管(23)上端より高い位置に排出口(141)から鋼管杭(3)を伝って落ちる汚濁水を下方の振止め管(23)の外側に誘導する庇部材(4)とを備えている。
【解決手段】杭打ち装置(9)は、オーガスクリュー(10)と回転体(11)を有するアースオーガ(1)と、リーダー(90)に昇降自在に設けられ底部(21)に振止め管(23)を有する集積容器(2)と、掘削部から上げられる汚濁水を集積容器(2)の内部に排出する排出口(141)と、集積容器(2)に設けられた排出部(22)及びオーバーフロー部(25)と、振止め管(23)に通され上部が回転体(11)に取り付けられている鋼管杭(3)の振止め管(23)上端より高い位置に排出口(141)から鋼管杭(3)を伝って落ちる汚濁水を下方の振止め管(23)の外側に誘導する庇部材(4)とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打ち装置及び杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法に関するものである。更に詳しくは、例えば海や河川の底に中掘工法や二軸同軸アースオーガ工法等により鋼管杭等の杭を打つ杭打ち作業において、掘削部から地上に上げられた汚濁水を回収することにより、海や河川を汚染することなく杭打ち作業を行うことができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
海に施工される桟橋や河川に施工される橋梁等の基礎を施工するために海や河川の底に鋼管杭等の杭を打つ杭打ち装置が使用されている。このような杭打ち装置としては、例えば鋼管杭の内部にオーガスクリューを通し、これらを互いに逆方向に回転させながら杭打ちを行うタイプがある。この杭打ち装置を使用した海や河川で行われる杭打ち工法(中掘工法や二軸同軸アースオーガ工法)においては、汚濁水(水を多く含む泥砂、排土)がオーガスクリューによって掘削部から地上へ上げられるが、汚濁水はそのまま海や河川に流されており、これが海や河川の汚染の原因となっていた。
【0003】
アースオーガを使用し、汚濁水を含む排土を回収できるようにした作業機として、例えば特許文献1に「スクリュー掘進機」が提案されている。
このスクリュー掘進機は、例えばダム底に溜まった土砂を上方へ押し上げて移動させることにより取り除く作業機である。
【0004】
この作業機を説明すると、縦方向に支持され下端はオーガヘッドであり、上端は土砂排出口につながる主軸を立設しており、主軸の外周には螺旋状の羽根をほぼ全長に周設し、主軸に回転力を与える駆動手段を備えた竪型のスクリュー掘進機において、主軸の外縁を被包し、主軸と逆方向へ回転可能な筒状ケーシングを主軸上に冠装し、筒状ケーシングの下部はラッパ状に広がり、筒状ケーシングの全域にわたって常に主軸の羽根に接近した突条を内設しており、従来の単一的なスクリュー掘進機に比べて強力な土砂の持ち上げ能力を有すると共に土砂排出口から汚濁水を外部へ排出し回収できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平4−52290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載のスクリュー掘進機には、次のような課題があった。すなわち、実施例において筒状ケーシングは筒状ケーシングを回転自在に支持している上部ケーシングに軸受によって軸支されており、軸受による軸支部分には、水封のためにシール材が使用されている。
しかし、スクリューによって筒状ケーシングの上端部から溢れる汚濁水は、鋼管杭が回転するために次第にシール材の僅かな隙間から微細な粒子が入り込む可能性があり、筒状ケーシングの外周面に沿って汚濁水が漏れ出すおそれがある。そうすると、隙間を通る汚濁水の粒子でシール材を傷め、前記汚濁水の漏れがさらに進むため、シール材を頻繁に交換しなければならない。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、鋼管杭等を打ち込む杭打ち作業において、オーガスクリューにより掘削部から地上へ上げられる汚濁水の回収を行うときに、排出口へ誘導される汚濁水が、鋼管杭と、この鋼管杭を内嵌めして回転自在に支える部分との間の隙間を通って下方へ漏れることをより確実に防止できるようにした杭打ち装置及び杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
鋼管杭の中空部をアースオーガで掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガにより前記鋼管杭の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器と、
該容器の底板に立設されている振止め管と、
を備えており、
鋼管杭は、前記該振止め管の中を貫通しており、
前記振止め管の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭の中空部を通って容器内に排出される汚濁水が、振止め管と鋼管杭との間の隙間を通って容器の外へ漏れるのを防止する庇が設けられている、
杭打ち装置である。
【0009】
(2)本発明は、
鋼管杭の中空部をアースオーガで掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガにより前記鋼管杭の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器と、
該容器の底板に立設されている振止め管と、
前記アースオーガによって前記鋼管杭の内部を通って上げられる汚濁水を前記容器内部に排出する排出口と、
を備えており、
鋼管杭は、前記該振止め管の中を貫通しており、
前記排出口より下で前記振止め管の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭の中空部を通って容器内に排出される汚濁水が、振止め管と鋼管杭との間の隙間を通って容器の外へ漏れるのを防止する庇が設けられている、
杭打ち装置である。
【0010】
(3)本発明は、
庇が、振止め管の中を貫通している鋼管杭の上部に設けられている、
前記(1)又は(2)の杭打ち装置である。
【0011】
(4)本発明は、
鋼管杭の中空部をアースオーガで掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭を沈設させる杭打ち方法において、
アースオーガにより鋼管杭の中空部を通って上げられる汚濁水を、底板に立設されており、鋼管杭が貫通する振止め管を備えている容器で回収するにあたり、
振止め管の上端縁より上に庇を設けて、この庇により容器内に排出される汚濁水が、振止め管の中を貫通している鋼管杭と振止め管との間の隙間を通って外部へ漏れるのを防止するようにした、
杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法である。
【0012】
(作用)
本発明に係る杭打ち装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0013】
杭打ち装置の作用を海や河川の水底地盤で鋼管杭(3)の杭打ち作業を行う場合で説明する。
水底地盤での杭打ち作業に当たり、オーガスクリュー(10)によって掘削部から鋼管杭(3)の内部を通り地上へ上げられた汚濁水は、鋼管杭(3)の上部又は上方から排出口(141)を通り容器(2)の内部に排出される。排出された汚濁水は、容器(2)の外部に排出されて回収船(6)等で回収され、汚濁水が海や河川に流れないようにして、汚染を防止する。
【0014】
汚濁水の回収においては、排出口(141)から鋼管杭(3)の外周面を伝って落ちる汚濁水を庇(4)によって下方の振止め管(23)の外側に誘導し、容器(2)の底部(21)へ落とすことによって、振止め管(23)と鋼管杭(3)の隙間に汚濁水が入らないようにして、汚濁水が外部へ漏れることを防止する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鋼管杭を打ち込む杭打ち作業において、オーガスクリューにより掘削部から地上へ上げられる汚濁水の回収を行うときに、排出口へ誘導される汚濁水が、回転する鋼管杭と、この鋼管杭が通される振止め管との間の隙間を通って外部へ漏れることを、鋼管杭の回転部分と接触するシール材を使用せずに鋼管杭等に取り付けられた庇によって防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る杭打ち装置の一実施の形態を示す説明図。
【図2】本発明に係る杭打ち装置の要部を示す断面説明図。
【図3】杭打ち装置を構成する庇部材の構造及び鋼管杭に対する取り付け構造を示す説明図。
【図4】本発明に係る杭打ち方法を示し鋼管杭に庇部材を装着している状態の説明図。
【図5】庇部材を上側にして鋼管杭を吊り上げている状態の説明図。
【図6】杭打ち装置のリーダーに昇降自在に設けられ所要高さに位置させた集積容器の振止め管に鋼管杭を通している状態の説明図。
【図7】振止め管に通した鋼管杭に、杭打ち装置のリーダーに昇降自在に設けられたアースオーガのオーガスクリューを挿入している状態の説明図。
【図8】集積容器と鋼管杭をオーガスクリューに沿って上昇させている状態の説明図。
【図9】鋼管杭を庇部材が振止め管の上端近傍に位置するようにアースオーガの回転体に装着している状態の説明図。
【図10】アースオーガと集積容器の間隔を一定に保ちながらオーガスクリューと集積容器を下降させて鋼管杭の杭打ちを行っている状態の説明図。
【図11】アースオーガをリーダーに沿って上昇させてオーガスクリューを所要の深さに打ち込まれた鋼管杭から抜き取っている状態の説明図。
【図12】鋼管杭から庇部材を取り外している状態の説明図。
【図13】集積容器をリーダーに沿って上昇させて鋼管杭から取り外している状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図3を参照する。
杭打ち装置9における排出汚濁水の回収構造は、次の構成を有している。なお、杭打ち装置9において回収構造に含まれない構造及びその他の付帯装置等については、後で概略を説明する。
【0018】
符号90は杭打ち装置9のリーダーで、リーダー90には、アースオーガ1と集積容器2がリーダー90に沿って昇降自在に取り付けられている。アースオーガ1は、吊りワイヤ91の巻き取りと繰り出しによって昇降され、集積容器2は、ラックとスライダー(何れも符号省略)からなるラック昇降機構92によって昇降が制御される。
【0019】
前記アースオーガ1には、中心部の回転軸(符号省略)にオーガスクリュー10が取り付けられている。また、アースオーガ1には、前記回転軸と回転中心を共通にして、回転軸とは逆方向へ回転する回転体11が設けられている。符号12はモーターで、ギヤボックス13を介し前記回転軸及び回転体11を駆動する。また、回転体11は、中心軸線を回転中心と共通にして下側に設けられた管体14及び管体14と連通する取付管15を含んでいる。
【0020】
管体14の円管状の胴部140の下端寄りには、オーガスクリュー10によって掘削部から後述する鋼管杭3の内部を通って上げられる汚濁水を集積容器2内部に排出する排出口141が壁部を貫通して形成されている。排出口141は、オーガスクリュー10のスクリュー部の基端よりやや上方に位置させてある。
【0021】
前記取付管15は、円管状に形成され、後述する鋼管杭3に外嵌めができる内径を有している。回転体11の取付管15の下開口部の外周部には、補強のための帯環150が固定されている。また、取付管15には、周方向の一箇所に下開口部から上方向に壁部を切り欠いて逆L字形(カギ形)の係合穴151が形成されている。
【0022】
前記集積容器2は、上部が開口したいわゆる桶状の容器である。集積容器2は、平面視で円形状(ほぼ円筒形状)の側板20と、側板20の下部に設けられている底板21を有している。底板21は、前記リーダー90とは反対側へ所要の角度で下方へ傾斜しており、その最深部には、排出管22が形成されている。底板21の傾斜角度は、本実施の形態では約30°であるが、これに限定せず、適宜角度に設定が可能である。排出管22には、後述する汚濁水回収船6等の回収部につながる排水ホース61が接続されている。
【0023】
集積容器2には、底板21を貫通して所要長さの円管状の振止め管23が取り付けられている。振止め管23と前記円筒形状の側板20は、中心線が共通である。振止め管23の上端は、側板20の高さ方向の中間よりやや下方に位置させてあり、下端側は、底板21の最深部よりやや下方まで延ばして突出させてある。振止め管23と側板20の間には汚濁水を流す空間部24が形成されている。なお、振止め管23の外周部と底板21は、水密に固着されている。
【0024】
また、側板20のうち振止め管23の上端よりやや低い位置には、側板20を貫通してオーバーフロー管25が形成されている(図2参照)。オーバーフロー管25には、前記排出管22と同様に後述する汚濁水回収船6等の回収部につながる排水ホース62が接続されている。オーバーフロー管25から、増量した汚濁水を排出することにより、汚濁水の水位が振止め管23の上端を超えて振止め管23と後述する鋼管杭3の隙間に汚濁水が侵入することを防止している。
【0025】
集積容器2の振止め管23には、鋼管杭3が挿通されている。鋼管杭3の上端寄りには、庇部材4が着脱自在に取り付けられている。
庇部材4は、図3に示すように、ほぼ半円環形状の構成体40、40aで構成されている。構成体40、40aは、それぞれ半円環状の上板41と、上板41の外周部に全周にわたり取付時下方へ向け直角に形成された水切板42を有している。上板41及び水切板42の外径は、振止め管23の外径よりやや大きく形成されている。
【0026】
上板41の内周部には、円弧状の内周部形状に沿うように、内板44が形成されている。内板44の内周面には、この内周面と同じ形状のパッキン45が張設されている。このように庇部材4は、下側が開放された構造であり、水切板42による水切りがより確実にできるようにしている。なお、庇部材4にパッキン45を設ける代わりに、庇部材4を鋼管杭3に取り付けた後、庇部材4の内周面と鋼管杭3の外周面との間の隙間をコーキング剤で埋めるようにしてもよい。
【0027】
構成体40、40aの合わせ側の両端部には、前記上板41、水切板42及び内板44の端縁部をつなぐように合わせ板43が設けられている。合わせ板43には、接合穴430が複数設けられ、構成体40、40aは、この合わせ板43を合わせて各接合穴430にボルトを通しナットで止めることにより円環状になるように一体化される。また、構成体40、40aは、鋼管杭3にパッキン45を密着させ、鋼管杭3を両側から挟むように一体化することによって、鋼管杭3を締め付けて強固に固定されると共に鋼管杭3の外周面と庇部材4の間ではパッキン45によって水密が保たれる。
【0028】
庇部材4は汚濁水を切るためのものであり、前記したように鋼管杭3の上端寄り、かつ前記振止め管23の上端より高い位置の外周部に取り付けられている。この構造によると、庇部材4は、前記排出口141から排出され、回転体11の管体14、取付管15の外周面から鋼管杭3の外周面を伝って落ちる汚濁水を受け止め、図2に矢印で示しているように下方の振止め管23の直径方向において振止め管23より外側に誘導して集積容器2の底板21上に落とすことができる。
【0029】
この汚濁水の誘導においては、汚濁水は庇部材4の外周部に設けられている水切板42の作用によって水切りが行われ、庇部材4より下側の鋼管杭3の外周面に汚濁水が伝わることを防止する。なお、庇部材4は、前記排出口141より下で振止め管23の上端より上であれば、例えば振止め管23の上端より上に延長された支持部材に設けてもよいし、前記胴部140や取付管15等に設けることもできる。
【0030】
鋼管杭3の上端寄りには、外周面の一箇所に前記係合穴151と係合する係合突起30が形成されている。鋼管杭3は、係合突起30を係合穴151に開放側から挿入して回転して移動することで係合穴151と係合し、前記回転体11を構成する取付管15に着脱自在に嵌装されている。そして、前記アースオーガ1のオーガスクリュー10は、回転体11の管体14、取付管15及び鋼管杭3に挿通されている。鋼管杭3は、この嵌装状態で回転体11により前記オーガスクリュー10とは反対方向に回転駆動される。
【0031】
(作用)
図1乃至図13を参照して、杭打ち装置9の作用及びそれを使用して鋼管杭を海の水底地盤に打ち込む杭打ち方法を説明する。
まず、杭打ち装置9について簡単に説明する。
杭打ち装置9は、海洋作業船5に設けられている。杭打ち装置9は、リーダー90の角度や高さを調節するリーダー操作部93を備えている。海洋作業船5は、海面を移動自在であり、錨(図示省略)等を使用して所要の位置に停止させることができる。また、符号6は汚濁水回収船であり、その貯留槽60には、前記したように各排水ホース61、62がつながれている。
【0032】
(1)まず、打ち込まれる鋼管杭3の上端側となる部分に庇部材4を前記した手順で装着する(図4参照)。
(2)次に、アースオーガ1を備えた杭打ち装置9を使用し、庇部材4を上側に位置させた状態でクレーン等の吊り上げ機(符号省略)を使用して鋼管杭3を吊り上げる(図5参照)。
【0033】
(3)杭打ち装置9のリーダー90に昇降自在に設けられ、所要高さに位置させた集積容器2の振止め管23に鋼管杭3を通す(図6参照)。
(4)集積容器2の振止め管23に通した鋼管杭3に、杭打ち装置9のリーダー90に昇降自在に設けられたアースオーガ1のオーガスクリュー10を挿入する(図7参照)。
【0034】
(5)アースオーガ1のオーガスクリュー10とは逆回転する回転体11の係合穴151を鋼管杭3上部の係合突起30と係合させて、回転体11を鋼管杭3に装着する(図8参照)。そして、集積容器2を上昇させ、振止め管23の上端が鋼管杭3に固定されている庇部材4のやや下側に位置するように高さを設定する(図9参照)。
【0035】
(6)オーガスクリュー10と鋼管杭3を互いに逆方向に回転させ、アースオーガ1と集積容器2の間隔を一定に保ちながらオーガスクリュー10と集積容器2を下降させて鋼管杭3の杭打ちを行う(図10参照)。
【0036】
(7)この杭打ち作業と並行して、オーガスクリュー10によって掘削部から鋼管杭3の内部を通り地上へ上げられた汚濁水は、鋼管杭3より上方にある排出口141から集積容器2の内部に排出される。排出された汚濁水は、集積容器2に設けられている排水部22から排水ホース61を通り外部にある汚濁水回収船6に送られて回収され、海に流さないようにする。なお、汚濁水が増量して水位が上がった場合、オーバーフロー管25から増量した汚濁水が汚濁水回収船6へ排出されるので、汚濁水の水位が振止め管23の上端を超えて振止め管23と後述する鋼管杭3の隙間に汚濁水が侵入したり、集積容器2の上部から汚濁水が溢れることを防止できる。
【0037】
また、この回収においては、排出口141から鋼管杭3の外周面を伝って落ちる汚濁水を庇部材4によって下方の振止め管23の直径方向において振止め管23より外側に誘導し集積容器2の底板21上へ落とすことによって振止め管23と鋼管杭3の隙間を汚濁水が通って外部へ漏れて海を汚染することを防止することができる(図1、図2参照)。
【0038】
(8)鋼管杭3が水底地盤7に所要の深さに打ち込まれたら、アースオーガ1をリーダー90に沿って上昇させてオーガスクリュー10を鋼管杭3から上方へ抜き取る(図11参照)。そして、打ち込まれている鋼管杭3から庇部材4を作業者が取り外し、集積容器2の抜き取りの邪魔にならないようにする(図12参照)。最後に、集積容器2をリーダー90に沿って上昇させて鋼管杭3から抜き取り、鋼管杭3の杭打ち作業が完了する(図13参照)。
なお、鋼管杭をさらに深く打ち込む場合は、鋼管杭3を接合手段で上方向に接ぎながら前記と同様の作業を行うようにする。
【0039】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 アースオーガ
10 オーガスクリュー
11 回転体
12 モーター
13 ギヤボックス
14 管体
140 胴部
141 排出口
15 取付管
150 帯環
151 係合穴
2 集積容器
20 側板
21 底板
22 排出管
23 振止め管
24 空間部
25 オーバーフロー管
3 鋼管杭
30 係合突起
4 庇部材
40 構成体
41 上板
42 水切板
43 合わせ板
430 接合穴
44 内板
45 パッキン
5 海洋作業船
6 汚濁水回収船
60 貯留槽
61 排水ホース
62 排水ホース
9 杭打ち装置
90 リーダー
91 吊りワイヤ
92 ラック昇降機構
93 リーダー操作部
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打ち装置及び杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法に関するものである。更に詳しくは、例えば海や河川の底に中掘工法や二軸同軸アースオーガ工法等により鋼管杭等の杭を打つ杭打ち作業において、掘削部から地上に上げられた汚濁水を回収することにより、海や河川を汚染することなく杭打ち作業を行うことができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
海に施工される桟橋や河川に施工される橋梁等の基礎を施工するために海や河川の底に鋼管杭等の杭を打つ杭打ち装置が使用されている。このような杭打ち装置としては、例えば鋼管杭の内部にオーガスクリューを通し、これらを互いに逆方向に回転させながら杭打ちを行うタイプがある。この杭打ち装置を使用した海や河川で行われる杭打ち工法(中掘工法や二軸同軸アースオーガ工法)においては、汚濁水(水を多く含む泥砂、排土)がオーガスクリューによって掘削部から地上へ上げられるが、汚濁水はそのまま海や河川に流されており、これが海や河川の汚染の原因となっていた。
【0003】
アースオーガを使用し、汚濁水を含む排土を回収できるようにした作業機として、例えば特許文献1に「スクリュー掘進機」が提案されている。
このスクリュー掘進機は、例えばダム底に溜まった土砂を上方へ押し上げて移動させることにより取り除く作業機である。
【0004】
この作業機を説明すると、縦方向に支持され下端はオーガヘッドであり、上端は土砂排出口につながる主軸を立設しており、主軸の外周には螺旋状の羽根をほぼ全長に周設し、主軸に回転力を与える駆動手段を備えた竪型のスクリュー掘進機において、主軸の外縁を被包し、主軸と逆方向へ回転可能な筒状ケーシングを主軸上に冠装し、筒状ケーシングの下部はラッパ状に広がり、筒状ケーシングの全域にわたって常に主軸の羽根に接近した突条を内設しており、従来の単一的なスクリュー掘進機に比べて強力な土砂の持ち上げ能力を有すると共に土砂排出口から汚濁水を外部へ排出し回収できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平4−52290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載のスクリュー掘進機には、次のような課題があった。すなわち、実施例において筒状ケーシングは筒状ケーシングを回転自在に支持している上部ケーシングに軸受によって軸支されており、軸受による軸支部分には、水封のためにシール材が使用されている。
しかし、スクリューによって筒状ケーシングの上端部から溢れる汚濁水は、鋼管杭が回転するために次第にシール材の僅かな隙間から微細な粒子が入り込む可能性があり、筒状ケーシングの外周面に沿って汚濁水が漏れ出すおそれがある。そうすると、隙間を通る汚濁水の粒子でシール材を傷め、前記汚濁水の漏れがさらに進むため、シール材を頻繁に交換しなければならない。
【0007】
(本発明の目的)
本発明の目的は、鋼管杭等を打ち込む杭打ち作業において、オーガスクリューにより掘削部から地上へ上げられる汚濁水の回収を行うときに、排出口へ誘導される汚濁水が、鋼管杭と、この鋼管杭を内嵌めして回転自在に支える部分との間の隙間を通って下方へ漏れることをより確実に防止できるようにした杭打ち装置及び杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
(1)本発明は、
鋼管杭の中空部をアースオーガで掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガにより前記鋼管杭の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器と、
該容器の底板に立設されている振止め管と、
を備えており、
鋼管杭は、前記該振止め管の中を貫通しており、
前記振止め管の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭の中空部を通って容器内に排出される汚濁水が、振止め管と鋼管杭との間の隙間を通って容器の外へ漏れるのを防止する庇が設けられている、
杭打ち装置である。
【0009】
(2)本発明は、
鋼管杭の中空部をアースオーガで掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガにより前記鋼管杭の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器と、
該容器の底板に立設されている振止め管と、
前記アースオーガによって前記鋼管杭の内部を通って上げられる汚濁水を前記容器内部に排出する排出口と、
を備えており、
鋼管杭は、前記該振止め管の中を貫通しており、
前記排出口より下で前記振止め管の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭の中空部を通って容器内に排出される汚濁水が、振止め管と鋼管杭との間の隙間を通って容器の外へ漏れるのを防止する庇が設けられている、
杭打ち装置である。
【0010】
(3)本発明は、
庇が、振止め管の中を貫通している鋼管杭の上部に設けられている、
前記(1)又は(2)の杭打ち装置である。
【0011】
(4)本発明は、
鋼管杭の中空部をアースオーガで掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭を沈設させる杭打ち方法において、
アースオーガにより鋼管杭の中空部を通って上げられる汚濁水を、底板に立設されており、鋼管杭が貫通する振止め管を備えている容器で回収するにあたり、
振止め管の上端縁より上に庇を設けて、この庇により容器内に排出される汚濁水が、振止め管の中を貫通している鋼管杭と振止め管との間の隙間を通って外部へ漏れるのを防止するようにした、
杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法である。
【0012】
(作用)
本発明に係る杭打ち装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0013】
杭打ち装置の作用を海や河川の水底地盤で鋼管杭(3)の杭打ち作業を行う場合で説明する。
水底地盤での杭打ち作業に当たり、オーガスクリュー(10)によって掘削部から鋼管杭(3)の内部を通り地上へ上げられた汚濁水は、鋼管杭(3)の上部又は上方から排出口(141)を通り容器(2)の内部に排出される。排出された汚濁水は、容器(2)の外部に排出されて回収船(6)等で回収され、汚濁水が海や河川に流れないようにして、汚染を防止する。
【0014】
汚濁水の回収においては、排出口(141)から鋼管杭(3)の外周面を伝って落ちる汚濁水を庇(4)によって下方の振止め管(23)の外側に誘導し、容器(2)の底部(21)へ落とすことによって、振止め管(23)と鋼管杭(3)の隙間に汚濁水が入らないようにして、汚濁水が外部へ漏れることを防止する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鋼管杭を打ち込む杭打ち作業において、オーガスクリューにより掘削部から地上へ上げられる汚濁水の回収を行うときに、排出口へ誘導される汚濁水が、回転する鋼管杭と、この鋼管杭が通される振止め管との間の隙間を通って外部へ漏れることを、鋼管杭の回転部分と接触するシール材を使用せずに鋼管杭等に取り付けられた庇によって防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る杭打ち装置の一実施の形態を示す説明図。
【図2】本発明に係る杭打ち装置の要部を示す断面説明図。
【図3】杭打ち装置を構成する庇部材の構造及び鋼管杭に対する取り付け構造を示す説明図。
【図4】本発明に係る杭打ち方法を示し鋼管杭に庇部材を装着している状態の説明図。
【図5】庇部材を上側にして鋼管杭を吊り上げている状態の説明図。
【図6】杭打ち装置のリーダーに昇降自在に設けられ所要高さに位置させた集積容器の振止め管に鋼管杭を通している状態の説明図。
【図7】振止め管に通した鋼管杭に、杭打ち装置のリーダーに昇降自在に設けられたアースオーガのオーガスクリューを挿入している状態の説明図。
【図8】集積容器と鋼管杭をオーガスクリューに沿って上昇させている状態の説明図。
【図9】鋼管杭を庇部材が振止め管の上端近傍に位置するようにアースオーガの回転体に装着している状態の説明図。
【図10】アースオーガと集積容器の間隔を一定に保ちながらオーガスクリューと集積容器を下降させて鋼管杭の杭打ちを行っている状態の説明図。
【図11】アースオーガをリーダーに沿って上昇させてオーガスクリューを所要の深さに打ち込まれた鋼管杭から抜き取っている状態の説明図。
【図12】鋼管杭から庇部材を取り外している状態の説明図。
【図13】集積容器をリーダーに沿って上昇させて鋼管杭から取り外している状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図3を参照する。
杭打ち装置9における排出汚濁水の回収構造は、次の構成を有している。なお、杭打ち装置9において回収構造に含まれない構造及びその他の付帯装置等については、後で概略を説明する。
【0018】
符号90は杭打ち装置9のリーダーで、リーダー90には、アースオーガ1と集積容器2がリーダー90に沿って昇降自在に取り付けられている。アースオーガ1は、吊りワイヤ91の巻き取りと繰り出しによって昇降され、集積容器2は、ラックとスライダー(何れも符号省略)からなるラック昇降機構92によって昇降が制御される。
【0019】
前記アースオーガ1には、中心部の回転軸(符号省略)にオーガスクリュー10が取り付けられている。また、アースオーガ1には、前記回転軸と回転中心を共通にして、回転軸とは逆方向へ回転する回転体11が設けられている。符号12はモーターで、ギヤボックス13を介し前記回転軸及び回転体11を駆動する。また、回転体11は、中心軸線を回転中心と共通にして下側に設けられた管体14及び管体14と連通する取付管15を含んでいる。
【0020】
管体14の円管状の胴部140の下端寄りには、オーガスクリュー10によって掘削部から後述する鋼管杭3の内部を通って上げられる汚濁水を集積容器2内部に排出する排出口141が壁部を貫通して形成されている。排出口141は、オーガスクリュー10のスクリュー部の基端よりやや上方に位置させてある。
【0021】
前記取付管15は、円管状に形成され、後述する鋼管杭3に外嵌めができる内径を有している。回転体11の取付管15の下開口部の外周部には、補強のための帯環150が固定されている。また、取付管15には、周方向の一箇所に下開口部から上方向に壁部を切り欠いて逆L字形(カギ形)の係合穴151が形成されている。
【0022】
前記集積容器2は、上部が開口したいわゆる桶状の容器である。集積容器2は、平面視で円形状(ほぼ円筒形状)の側板20と、側板20の下部に設けられている底板21を有している。底板21は、前記リーダー90とは反対側へ所要の角度で下方へ傾斜しており、その最深部には、排出管22が形成されている。底板21の傾斜角度は、本実施の形態では約30°であるが、これに限定せず、適宜角度に設定が可能である。排出管22には、後述する汚濁水回収船6等の回収部につながる排水ホース61が接続されている。
【0023】
集積容器2には、底板21を貫通して所要長さの円管状の振止め管23が取り付けられている。振止め管23と前記円筒形状の側板20は、中心線が共通である。振止め管23の上端は、側板20の高さ方向の中間よりやや下方に位置させてあり、下端側は、底板21の最深部よりやや下方まで延ばして突出させてある。振止め管23と側板20の間には汚濁水を流す空間部24が形成されている。なお、振止め管23の外周部と底板21は、水密に固着されている。
【0024】
また、側板20のうち振止め管23の上端よりやや低い位置には、側板20を貫通してオーバーフロー管25が形成されている(図2参照)。オーバーフロー管25には、前記排出管22と同様に後述する汚濁水回収船6等の回収部につながる排水ホース62が接続されている。オーバーフロー管25から、増量した汚濁水を排出することにより、汚濁水の水位が振止め管23の上端を超えて振止め管23と後述する鋼管杭3の隙間に汚濁水が侵入することを防止している。
【0025】
集積容器2の振止め管23には、鋼管杭3が挿通されている。鋼管杭3の上端寄りには、庇部材4が着脱自在に取り付けられている。
庇部材4は、図3に示すように、ほぼ半円環形状の構成体40、40aで構成されている。構成体40、40aは、それぞれ半円環状の上板41と、上板41の外周部に全周にわたり取付時下方へ向け直角に形成された水切板42を有している。上板41及び水切板42の外径は、振止め管23の外径よりやや大きく形成されている。
【0026】
上板41の内周部には、円弧状の内周部形状に沿うように、内板44が形成されている。内板44の内周面には、この内周面と同じ形状のパッキン45が張設されている。このように庇部材4は、下側が開放された構造であり、水切板42による水切りがより確実にできるようにしている。なお、庇部材4にパッキン45を設ける代わりに、庇部材4を鋼管杭3に取り付けた後、庇部材4の内周面と鋼管杭3の外周面との間の隙間をコーキング剤で埋めるようにしてもよい。
【0027】
構成体40、40aの合わせ側の両端部には、前記上板41、水切板42及び内板44の端縁部をつなぐように合わせ板43が設けられている。合わせ板43には、接合穴430が複数設けられ、構成体40、40aは、この合わせ板43を合わせて各接合穴430にボルトを通しナットで止めることにより円環状になるように一体化される。また、構成体40、40aは、鋼管杭3にパッキン45を密着させ、鋼管杭3を両側から挟むように一体化することによって、鋼管杭3を締め付けて強固に固定されると共に鋼管杭3の外周面と庇部材4の間ではパッキン45によって水密が保たれる。
【0028】
庇部材4は汚濁水を切るためのものであり、前記したように鋼管杭3の上端寄り、かつ前記振止め管23の上端より高い位置の外周部に取り付けられている。この構造によると、庇部材4は、前記排出口141から排出され、回転体11の管体14、取付管15の外周面から鋼管杭3の外周面を伝って落ちる汚濁水を受け止め、図2に矢印で示しているように下方の振止め管23の直径方向において振止め管23より外側に誘導して集積容器2の底板21上に落とすことができる。
【0029】
この汚濁水の誘導においては、汚濁水は庇部材4の外周部に設けられている水切板42の作用によって水切りが行われ、庇部材4より下側の鋼管杭3の外周面に汚濁水が伝わることを防止する。なお、庇部材4は、前記排出口141より下で振止め管23の上端より上であれば、例えば振止め管23の上端より上に延長された支持部材に設けてもよいし、前記胴部140や取付管15等に設けることもできる。
【0030】
鋼管杭3の上端寄りには、外周面の一箇所に前記係合穴151と係合する係合突起30が形成されている。鋼管杭3は、係合突起30を係合穴151に開放側から挿入して回転して移動することで係合穴151と係合し、前記回転体11を構成する取付管15に着脱自在に嵌装されている。そして、前記アースオーガ1のオーガスクリュー10は、回転体11の管体14、取付管15及び鋼管杭3に挿通されている。鋼管杭3は、この嵌装状態で回転体11により前記オーガスクリュー10とは反対方向に回転駆動される。
【0031】
(作用)
図1乃至図13を参照して、杭打ち装置9の作用及びそれを使用して鋼管杭を海の水底地盤に打ち込む杭打ち方法を説明する。
まず、杭打ち装置9について簡単に説明する。
杭打ち装置9は、海洋作業船5に設けられている。杭打ち装置9は、リーダー90の角度や高さを調節するリーダー操作部93を備えている。海洋作業船5は、海面を移動自在であり、錨(図示省略)等を使用して所要の位置に停止させることができる。また、符号6は汚濁水回収船であり、その貯留槽60には、前記したように各排水ホース61、62がつながれている。
【0032】
(1)まず、打ち込まれる鋼管杭3の上端側となる部分に庇部材4を前記した手順で装着する(図4参照)。
(2)次に、アースオーガ1を備えた杭打ち装置9を使用し、庇部材4を上側に位置させた状態でクレーン等の吊り上げ機(符号省略)を使用して鋼管杭3を吊り上げる(図5参照)。
【0033】
(3)杭打ち装置9のリーダー90に昇降自在に設けられ、所要高さに位置させた集積容器2の振止め管23に鋼管杭3を通す(図6参照)。
(4)集積容器2の振止め管23に通した鋼管杭3に、杭打ち装置9のリーダー90に昇降自在に設けられたアースオーガ1のオーガスクリュー10を挿入する(図7参照)。
【0034】
(5)アースオーガ1のオーガスクリュー10とは逆回転する回転体11の係合穴151を鋼管杭3上部の係合突起30と係合させて、回転体11を鋼管杭3に装着する(図8参照)。そして、集積容器2を上昇させ、振止め管23の上端が鋼管杭3に固定されている庇部材4のやや下側に位置するように高さを設定する(図9参照)。
【0035】
(6)オーガスクリュー10と鋼管杭3を互いに逆方向に回転させ、アースオーガ1と集積容器2の間隔を一定に保ちながらオーガスクリュー10と集積容器2を下降させて鋼管杭3の杭打ちを行う(図10参照)。
【0036】
(7)この杭打ち作業と並行して、オーガスクリュー10によって掘削部から鋼管杭3の内部を通り地上へ上げられた汚濁水は、鋼管杭3より上方にある排出口141から集積容器2の内部に排出される。排出された汚濁水は、集積容器2に設けられている排水部22から排水ホース61を通り外部にある汚濁水回収船6に送られて回収され、海に流さないようにする。なお、汚濁水が増量して水位が上がった場合、オーバーフロー管25から増量した汚濁水が汚濁水回収船6へ排出されるので、汚濁水の水位が振止め管23の上端を超えて振止め管23と後述する鋼管杭3の隙間に汚濁水が侵入したり、集積容器2の上部から汚濁水が溢れることを防止できる。
【0037】
また、この回収においては、排出口141から鋼管杭3の外周面を伝って落ちる汚濁水を庇部材4によって下方の振止め管23の直径方向において振止め管23より外側に誘導し集積容器2の底板21上へ落とすことによって振止め管23と鋼管杭3の隙間を汚濁水が通って外部へ漏れて海を汚染することを防止することができる(図1、図2参照)。
【0038】
(8)鋼管杭3が水底地盤7に所要の深さに打ち込まれたら、アースオーガ1をリーダー90に沿って上昇させてオーガスクリュー10を鋼管杭3から上方へ抜き取る(図11参照)。そして、打ち込まれている鋼管杭3から庇部材4を作業者が取り外し、集積容器2の抜き取りの邪魔にならないようにする(図12参照)。最後に、集積容器2をリーダー90に沿って上昇させて鋼管杭3から抜き取り、鋼管杭3の杭打ち作業が完了する(図13参照)。
なお、鋼管杭をさらに深く打ち込む場合は、鋼管杭3を接合手段で上方向に接ぎながら前記と同様の作業を行うようにする。
【0039】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 アースオーガ
10 オーガスクリュー
11 回転体
12 モーター
13 ギヤボックス
14 管体
140 胴部
141 排出口
15 取付管
150 帯環
151 係合穴
2 集積容器
20 側板
21 底板
22 排出管
23 振止め管
24 空間部
25 オーバーフロー管
3 鋼管杭
30 係合突起
4 庇部材
40 構成体
41 上板
42 水切板
43 合わせ板
430 接合穴
44 内板
45 パッキン
5 海洋作業船
6 汚濁水回収船
60 貯留槽
61 排水ホース
62 排水ホース
9 杭打ち装置
90 リーダー
91 吊りワイヤ
92 ラック昇降機構
93 リーダー操作部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭(23)の中空部をアースオーガ(1)で掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭(3)を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガ(1)により前記鋼管杭(23)の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器(2)と、
該容器(2)の底板(21)に立設されている振止め管(23)と、
を備えており、
鋼管杭(3)は、前記該振止め管(23)の中を貫通しており、
前記振止め管(23)の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭(3)の中空部を通って容器(2)内に排出される汚濁水が、振止め管(23)と鋼管杭(3)との間の隙間を通って容器(2)の外へ漏れるのを防止する庇(4)が設けられている、
杭打ち装置。
【請求項2】
鋼管杭(23)の中空部をアースオーガ(1)で掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭(3)を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガ(1)により前記鋼管杭(23)の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器(2)と、
該容器(2)の底板(21)に立設されている振止め管(23)と、
前記アースオーガ(1)によって前記鋼管杭(3)の内部を通って上げられる汚濁水を前記容器(2)内部に排出する排出口(141)と、
を備えており、
鋼管杭(3)は、前記該振止め管(23)の中を貫通しており、
前記排出口(141)より下で前記振止め管(23)の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭(3)の中空部を通って容器(2)内に排出される汚濁水が、振止め管(23)と鋼管杭(3)との間の隙間を通って容器(2)の外へ漏れるのを防止する庇(4)が設けられている、
杭打ち装置。
【請求項3】
庇(4)が、振止め管(23)の中を貫通している鋼管杭(3)の上部に設けられている、
請求項1又は2記載の杭打ち装置。
【請求項4】
鋼管杭(3)の中空部をアースオーガ(1)で掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭(3)を沈設させる杭打ち方法において、
アースオーガ(1)により鋼管杭(3)の中空部を通って上げられる汚濁水を、底板(21)に立設されており、鋼管杭(3)が貫通する振止め管(23)を備えている容器(2)で回収するにあたり、
振止め管(23)の上端縁より上に庇(4)を設けて、この庇(4)により容器(2)内に排出される汚濁水が、振止め管(23)の中を貫通している鋼管杭(3)と振止め管(23)との間の隙間を通って外部へ漏れるのを防止するようにした、
杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法。
【請求項1】
鋼管杭(23)の中空部をアースオーガ(1)で掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭(3)を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガ(1)により前記鋼管杭(23)の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器(2)と、
該容器(2)の底板(21)に立設されている振止め管(23)と、
を備えており、
鋼管杭(3)は、前記該振止め管(23)の中を貫通しており、
前記振止め管(23)の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭(3)の中空部を通って容器(2)内に排出される汚濁水が、振止め管(23)と鋼管杭(3)との間の隙間を通って容器(2)の外へ漏れるのを防止する庇(4)が設けられている、
杭打ち装置。
【請求項2】
鋼管杭(23)の中空部をアースオーガ(1)で掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭(3)を沈設させる杭打ち装置であって、
前記アースオーガ(1)により前記鋼管杭(23)の中空部を通って上げられる汚濁水を集める容器(2)と、
該容器(2)の底板(21)に立設されている振止め管(23)と、
前記アースオーガ(1)によって前記鋼管杭(3)の内部を通って上げられる汚濁水を前記容器(2)内部に排出する排出口(141)と、
を備えており、
鋼管杭(3)は、前記該振止め管(23)の中を貫通しており、
前記排出口(141)より下で前記振止め管(23)の上端縁より上には、前記アースオーガにより鋼管杭(3)の中空部を通って容器(2)内に排出される汚濁水が、振止め管(23)と鋼管杭(3)との間の隙間を通って容器(2)の外へ漏れるのを防止する庇(4)が設けられている、
杭打ち装置。
【請求項3】
庇(4)が、振止め管(23)の中を貫通している鋼管杭(3)の上部に設けられている、
請求項1又は2記載の杭打ち装置。
【請求項4】
鋼管杭(3)の中空部をアースオーガ(1)で掘削しながら杭自重、圧入又は打撃を加えることにより水底地盤に鋼管杭(3)を沈設させる杭打ち方法において、
アースオーガ(1)により鋼管杭(3)の中空部を通って上げられる汚濁水を、底板(21)に立設されており、鋼管杭(3)が貫通する振止め管(23)を備えている容器(2)で回収するにあたり、
振止め管(23)の上端縁より上に庇(4)を設けて、この庇(4)により容器(2)内に排出される汚濁水が、振止め管(23)の中を貫通している鋼管杭(3)と振止め管(23)との間の隙間を通って外部へ漏れるのを防止するようにした、
杭打ち装置における汚濁水の漏れ防止方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−127112(P2012−127112A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279709(P2010−279709)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(510330851)シーテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(510330851)シーテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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