説明

杭頭接合構造

【課題】杭の鉛直方向、水平方向及び傾斜角の施工誤差を調整でき、上部構造物を支持し固定することが可能な杭頭接合構造を提供する。
【解決手段】上部構造物を上側で支持し固定する筒形状の杭10と、軸方向が杭内部で杭の中空部分を横切って配置され杭に固定された棒部材104と、棒部材の下部を通過する第一端部と、杭の上端部から突出して配置され、上部構造物と連結する第二端部とを有し、杭内部の可動範囲内で上部構造物の水平方向位置を調節する固定部材110と、杭の中空部分に充填され固定部材を杭の中空部分で固定する硬化部材150とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地上に設置される構造物は、地盤に施工された杭の上部に設置されることで、地盤に対して安定的に設置される(以下、杭上部に設置される構造物を「上部構造物」ともいう)。杭と上部構造物が接合されることによって、杭は上部構造物の荷重を支持し、上部構造物が受ける風等によって上部構造物が地盤から離れてしまうのを防止する。地盤に施工される杭は、材料によって、コンクリート杭、鋼管杭などに分類される。
【0003】
特許文献1では、土台を支持する支持金具に設けられた円形突出部が杭頭開口部に挿入され、土台と杭が接合される技術が開示されている。また、特許文献2では、アンカーパイル本体の上端部に、土台が載置されるキャップ部材が螺合接続され、キャップ部材の上下方向位置が調整される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−213699号公報
【特許文献2】実用新案登録第3047063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地盤に施工される杭が、垂直・水平方向に正確に埋設されることは困難であり、多少傾斜する場合もある。また、複数の杭の上部に一つの上部構造物を設置する場合、複数の杭の高さを全て一致させて埋設させておくことも困難である。また、杭の埋設位置についても、精度良く施工することは困難であるため、複数の杭を一直線上に配置できないという問題がある。そのため、複数の杭の上部に一つの上部構造物を水平に設置するためには、杭の上部で杭の鉛直方向、水平方向及び傾斜角の施工誤差を調整する必要がある。
【0006】
しかし、特許文献1では、土台と杭の接合部分において杭の施工によって生じる垂直方向の誤差や傾斜誤差を考慮したディテールになっていないため、特許文献1で開示された接合方法によって施工誤差を解消することは難しい。また、特許文献2でも、特許文献1と同様に、土台とアンカーパイルの接合部分において施工誤差を解消するディテールとなっていないため、特許文献2で開示された接合方法は水平方向の誤差や傾斜誤差を解消できない。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、杭の鉛直方向、水平方向及び傾斜角の施工誤差を調整でき、上部構造物を支持し固定することが可能な、新規かつ改良された杭頭接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、上部構造物を上側で支持し固定する筒形状の杭と、軸方向が前記杭内部で杭の中空部分を横切って配置され杭に固定された棒部材と、棒部材の下部を通過する第一端部と、杭の上端部から突出して配置され、上部構造物と連結する第二端部とを有し、杭内部の可動範囲内で上部構造物の水平方向位置を調節する固定部材と、杭の中空部分に充填され固定部材を杭の中空部分で固定する硬化部材とを備える杭頭接合構造が提供される。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上部構造物を上側で支持し固定する筒形状の杭と、軸方向が杭内部で杭の中空部分を横切って配置され杭に固定された棒部材と、杭の上端部で、上部構造物の荷重を杭に伝達するように配置される板状の支持部材と、棒部材の下部を通過する第一端部と、杭の上端部から突出して配置され、支持部材と連結する第二端部とを有し、杭内部の可動範囲内で上部構造物の水平方向位置を調節する固定部材と、杭の中空部分に充填され固定部材を杭の中空部分で固定する硬化部材とを備える、杭頭接合構造が提供される。
【0010】
上記硬化部材は、上面が杭の上端部より上になるように杭の中空部分に注入され、硬化部材の上面が支持部材の下面と接触して上部構造物の設置傾斜角を調節してもよい。
【0011】
上記固定部材は筒形状であり、第二端部は、支持部材の下面と接合し、支持部材と共に上部構造物の設置傾斜角を調節してもよい。
【0012】
上記支持部材のうち固定部材に対応する位置に開口部が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、杭の鉛直方向、水平方向及び傾斜角の施工誤差を調整でき、上部構造物を支持し固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す正面図である。
【図2】同実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す側面図である。
【図3】同実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す斜視図である。
【図4】同実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す断面図である。
【図5】同実施形態に係る杭頭接合構造100のアイボルト110を示す側面図である。
【図6】同実施形態に係る杭頭接合構造100のアイボルト110を示す正面図である。
【図7】同実施形態に係る杭頭接合構造100の施工過程状態を示す断面図である。
【図8】同実施形態に係る杭頭接合構造200と上部構造物を示す斜視図である。
【図9】同実施形態に係る杭頭接合構造200と上部構造物を示す断面図である。
【図10】同実施形態に係る杭頭接合構造100の変形例の一部と上部構造物の一部を示す断面図である。
【図11】同実施形態に係る杭頭接合構造200の変形例の一部と上部構造物の一部を示す断面図である。
【図12】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造300と上部構造物を示す斜視図である。
【図13】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造300と上部構造物を示す断面図である。
【図14】同実施形態に係る杭頭接合構造200のアイボルト110の上端における結合部分を示す断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る杭頭接合構造400と上部構造物を示す断面図である。
【図16】同実施形態に係る杭頭接合構造400を示す断面図である。
【図17】同実施形態に係る杭頭接合構造400を示す断面図である。
【図18】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【図19】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【図20】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【図21】同実施形態に係る杭頭接合構造400を示す横断面図である。
【図22】同実施形態に係る杭頭接合構造400を示す横断面図である。
【図23】プレート320の変形例であるプレート420を示す平面図である。
【図24】プレート320を示す平面図である。
【図25】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【図26】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【図27】同実施形態の変形例に係る杭頭接合構造600を示す断面図である。
【図28】同実施形態に係る杭頭接合構造400の変形例を示す横断面図である。
【図29】同実施形態に係る杭頭接合構造400の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
[1.第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る杭頭接合構造100は、図1に示すように、杭10の上部に適用され、杭10の鉛直方向、水平方向及び傾斜角の施工誤差を調整でき、上部構造物を支持し固定することが可能である。図1は、本実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す正面図である。図2は、本実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す側面図である。
【0017】
図1及び図2に示す例では、杭頭接合構造100が杭10の上部に適用され、上部構造物が杭10と接合されて、杭10の上部において上部構造物が支持され固定される。具体的には、複数の杭10の上部にベースレール30が水平に設置され、ベースレール30の上にフレーム20が設置される。ベースレール30は、杭10に載置される下面と、下面に対向する上面が平行な部材である。そのため、杭頭接合構造100が、杭10の鉛直方向、水平方向及び傾斜角の施工誤差を調整することで、ベースレール30を水平に設置でき、その結果、フレーム20を正確な高さや水平方向に基づいて設置できる。
【0018】
ベースレール30は、図2に示すように、例えば断面がコ字形状の鋼材であり、複数の杭10の上部を水平につなぐことができるつなぎ材である。ベースレール30には、杭10に対応する位置に開口部32が形成される。開口部32は、杭頭接合構造100のアイボルト110が貫通する。フレーム20は、例えばソーラーパネル40を設置するための支持構造体である。本明細書では、上部構造物としてフレーム20、ベースレール30及びソーラーパネル40の例を説明するが、本発明の杭頭接合構造は、その他の上部構造物にも適用できる。
【0019】
次に、本実施形態に係る杭頭接合構造100の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す斜視図である。図4は、本実施形態に係る杭頭接合構造100と上部構造物を示す断面図である。図5は、本実施形態に係る杭頭接合構造100のアイボルト110を示す側面図である。図6は、本実施形態に係る杭頭接合構造100のアイボルト110を示す正面図である。
【0020】
杭頭接合構造100は、杭10とベースレール30を接合する構造であり、ボルト102と、ナット106と、ワッシャー107,108と、アイボルト110と、ワッシャー132と、ナット134,136などを有する。杭頭接合構造100は、杭10の上部にベースレール30の中間部分が位置するときに、杭10とベースレール30を接合する場合に適用される。
【0021】
杭10は、例えば筒形状の鋼管杭であり、地盤1に埋設される。地盤に施工される杭10は、垂直方向を目標として埋設されるが、正確な垂直方向に埋設されることは困難であり、多少傾斜する場合がある。図4では、杭10がわずかに傾斜している例を示している。
【0022】
杭10には、杭10本体の上部に開口部12が二つ形成される。二つの開口部12はボルト102が貫通可能な開口部であり、互いに対向する位置に形成される。開口部12の設置位置は、アイボルト110の設置時の可動範囲などを考慮して決定される。開口部12はボルト102が杭10に対する水平方向、垂直方向及び斜め方向に移動しないように固定する。なお、開口部12は、杭頭接合構造100のために設けられた孔でもよいし、杭10を回転しながら埋設する際に、杭施工装置と杭10を固定するために使用される孔でもよい。
【0023】
杭10内部には、仕切り板14が設けられる。仕切り板14は、杭10内部に注入されるモルタル150が杭10の上端側にのみ施工されるようにする。仕切り板14の設置位置は、開口部12やアイボルト110の設置位置よりも下である。
【0024】
ボルト102は、二つの開口部12を貫通して杭10に設置される。その際、ボルト102の軸部104(棒部材の一例である。)は、軸方向が杭10内部で杭10の中空部分を横切って配置される。ボルト102は、ナット106とワッシャー107,108と共にねじ結合されて杭10に固定される。ワッシャー107は、ボルト102の頭部側に設けられ、ワッシャー108は、ナット106側に設けられる。ボルト102の軸部104には雄ねじが形成され、軸部104はアイボルト110のリング部112を貫通する。
【0025】
アイボルト110は、リング部112と、軸部114を有する。リング部112は、アイボルト110の軸部114の一端側に設けられ、図6に示すように開口部116を有する環状部材である。アイボルト110の軸部114には雄ねじが形成され、軸部114はベースレール30の開口部32を貫通してナット134,136によってねじ結合で固定される。軸部114の先端は杭10の上端部から突出して配置される。アイボルト110は固定部材の一例である。また、リング部112は第一端部の一例であり、軸部114は第二端部の一例である。なお、第一端部は環状部材に限定されず、ボルト102の軸部104を貫通させることができれば他の形状でもよい。
【0026】
ナット134,136は、アイボルト110の軸部114とねじ結合して、ベースレール30を杭10に固定する。ワッシャー132は、ベースレール30のプレート部材とナット134の間に設置される。
【0027】
モルタル150は杭10に注入され、上面が杭10の上端より突出するように施工される。モルタル150は硬化したのち、杭10内部でアイボルト110が移動しないようにアイボルト110を固定する。また、硬化したモルタル150は、アイボルト110を介して、ベースレール30上に設置された上部構造物で発生した水平力を杭10に伝達することができる。
【0028】
モルタル150は、杭10の上部に設置する上部構造物の設置傾斜角を調節できる。即ち、モルタル150の上面を水平に施工し硬化させることによって、杭10の上部に設置するベースレール30を水平に配置でき、更にベースレール30上部に設置するフレーム20などの上部構造物を水平に設置できる。また、モルタル150の上面の高さを調整して硬化させることによって、杭10の上部に設置するベースレール30やフレーム20等の上部構造物の設置高さを調節してもよい。
【0029】
アイボルト110は、杭10の中空部分で、図5及び図6に示すように設置位置を調整できる。即ち、アイボルト110は、図5に示すように、ボルト102の軸部104の軸方向に沿って移動することができる。また、アイボルト110は、図6に示すように、軸部104の軸方向に対して垂直方向に移動することも可能である。図6に示す例では、リング部112の開口部116が円形であり、アイボルト110の可動範囲は限定されているが、本実施形態のリング部112や開口部116の形状は、他の形状でもよい。例えば、開口部116を長穴形状にすることで、図6の例に比べて可動範囲を広げることもできる。
【0030】
このように、アイボルト110の設置位置が調整できることで、アイボルト110に固定されるベースレール30の水平方向の設置位置を調節できる。その結果、杭10の水平方向の施工誤差を吸収できる。
【0031】
また、アイボルト110の軸部114は、上部構造物の設置に要求される水平面に対して垂直方向に設置される。そして、上面が水平に施工されたモルタル150の上に、ベースレール30の両面が平行なプレート部材と、両面が平行なワッシャー132が設置される。ワッシャー132が、ナット134,136によって固定されることによって、ワッシャー132とモルタル150の間で、ベースレール30のプレート部材が水平に設置され、ベースレール30を水平にかつ確実に杭10に固定できる。即ち、アイボルト110は、杭10の立設方向が傾斜していても、垂直方向に設置できるため、杭10の傾き誤差を吸収できる。
【0032】
次に、図7を使用して、アイボルト110の固定方法を含む杭頭接合構造100の施工方法の一例について説明する。図7は、本実施形態に係る杭頭接合構造100の施工過程状態を示す断面図である。図7では、分かりやすさのため、杭10が極端に傾斜した状態を示している。
【0033】
まず、アイボルト110のリング部112を軸部114より下側にして、アイボルト110を杭10の中空部分に挿入する。次に、ボルト102の軸部104を、杭10の一方の開口部12と、アイボルト110のリング部112の開口部116と、杭10の他方の開口部12に貫通させる。そして、ナット106をボルト102に結合し、ボルト102を杭10に固定する。
【0034】
次に、図7に示すように、杭10の上端の周囲に段ボール等による仮設材50を全周にわたって巻く。そして、モルタル150を杭10及び仮設材50の中空部分に注入する。所望の高さまでモルタル150を注入しながら、ベースレール30の水平方向の設置位置に合わせて、アイボルト110の軸部114を水平方向に移動させる。また、アイボルト110の軸部114を、上部構造物の設置に要求される水平面に対して垂直方向に設置する。アイボルト110の位置が決定したら、アイボルト110を固定したままモルタル150上面を水平にならして、モルタル150を硬化させる。アイボルト110を固定する方法としては、例えば穴の空いた板材を仮設材50の上にかぶせて、板材の穴にアイボルト110の軸部114を貫通させて固定する方法がある。
【0035】
モルタル150が硬化する前又は硬化した後、プレート120をモルタル150の上部にプレート120を設置する。プレート120は、ナット134,136、ワッシャー132をアイボルト110の軸部114に結合することによって、杭10に固定される。
【0036】
そして、プレート120の上面にベースレール30を載せて、ボルト140を、プレート120の開口部124と、ベースレール30の開口部34に貫通させる。そして、ナット144,146、ワッシャー142,143をボルト140に結合し、プレート120にベースレール30を固定する。
【0037】
(杭頭接合構造200)
次に、本実施形態に係る杭頭接合構造200について説明する。図8は、本実施形態に係る杭頭接合構造200と上部構造物を示す斜視図である。図9は、本実施形態に係る杭頭接合構造200と上部構造物を示す断面図である。
【0038】
上記の杭頭接合構造100は、杭10の上部にベースレール30の中間部分が位置するときに適用される構造であるが、杭頭接合構造200は、杭10の上部に二つのベースレール30の端部が位置するときに、杭10と二つのベースレール30を接合する場合に適用される。杭頭接合構造200は、杭頭接合構造100に対して、プレート120を追加した構成である。
【0039】
杭頭接合構造200は、杭10とベースレール30を接合する構造であり、ボルト102と、ナット106と、ワッシャー107,108と、アイボルト110と、プレート120と、ワッシャー132と、ナット134,136と、ボルト140と、ワッシャー142,143と、ナット144,146などを有する。
【0040】
プレート120は、例えば板状部材であり、アイボルト110の軸部114の端部と、杭10の上端部のモルタル150の上面との間に配置される。プレート120は、例えば金属製である。プレート120は支持部材の一例である。プレート120の下面は杭10の上端部のモルタル150と接触し、プレート120の上面はベースレール30の下面と接触する。プレート120には、開口部122,124が形成される。開口部122は、アイボルト110の軸部114が貫通する。開口部124は、ボルト140の軸部が貫通する。
【0041】
ナット134,136は、アイボルト110の軸部114とねじ結合して、プレート120を杭10に固定する。ワッシャー132は、プレート120とナット134の間に設置される。
【0042】
ボルト140は、プレート120の開口部124を貫通し、ベースレール30の開口部34を貫通する。ベースレール30の開口部34は、プレート120の開口部124に対応する位置に形成される。ナット144,146は、ボルト140とねじ結合して、プレート120にベースレール30を固定する。ワッシャー142は、ボルト140の頭部とプレート120の間に設置され、ワッシャー143は、ベースレール30とナット144の間に設置される。これにより、ベースレール30が杭10に固定される。
【0043】
図8及び図9では、杭頭接合構造200が一のベースレール30の端部と、他のベースレール30の端部を支持している状態を示している。このような場合に、プレート120は、両方のベースレール30を支持し、ベースレール30等の上部構造物からの荷重を杭10に伝達できる。
【0044】
なお、上部構造物の高さ調整のため、図10に示すように、ベースレール30とモルタル150の間、または図11に示すように、ベースレール30とプレート120の間に、高さ調整プレート160を設置してもよい。図10は、本実施形態に係る杭頭接合構造100の変形例の一部と上部構造物の一部を示す断面図である。図11は、本実施形態に係る杭頭接合構造200の変形例の一部と上部構造物の一部を示す断面図である。高さ調整プレート160は、所定の厚さを有する板状部材である。これにより、杭頭接合構造100,200が、杭10の高さ方向の施工誤差を吸収できる。なお、ナット134,136はアイボルト110の軸部114とねじ結合して、図10に示す例では、ベースレール30を杭10に固定し、図11に示す例では、高さ調整プレート160とプレート120を杭10に固定する。
【0045】
(杭頭接合構造300)
次に、本実施形態の変形例に係る杭頭接合構造300について説明する。図12は、本実施形態の変形例に係る杭頭接合構造300と上部構造物を示す斜視図である。図13は、本実施形態の変形例に係る杭頭接合構造300と上部構造物を示す断面図である。
【0046】
本実施形態の変形例に係る杭頭接合構造300は、杭頭接合構造200のプレート120の代わりに、図12及び図13に示すように、断面係数が高い断面を有する支持部材220を使用したものである。
【0047】
支持部材220は、例えば、平行な下面222と上面224を有する、断面がロ字形状のボックス型の部材である。支持部材220は、下面222を介して、ナット134,136、ワッシャー132をアイボルト110の軸部114に結合することによって、杭10に固定される。また、ナット244,246、ワッシャー242,243をボルト240に結合し、支持部材220にベースレール30を固定する。これにより、プレート120では曲げ耐力が足りないとき、杭頭接合構造の曲げ剛性を確保することができる。
【0048】
図12及び図13では、杭頭接合構造300が一のベースレール30の端部と、他のベースレール30の端部を支持している状態を示している。このような場合に、ボルト240にかかる軸力が大きくなるため、図8及び図9のプレート120よりも、図12及び図13で示した支持部材220を使用することで、杭頭接合構造の曲げ剛性を高め、より強固に上部構造物を支持できる。
【0049】
なお、支持部材220は、断面がロ字形状のボックス型の部材に限定されず、例えば、断面がコ字形状、H字形状であってもよく、2枚のプレートが上下で対向するように配置されることで、杭頭接合構造の曲げ剛性を高めることができる。
【0050】
以上、本実施形態の杭頭接合構造100,200,300によれば、モルタル150が杭10の高さ方向や傾き方向の施工誤差を調整し、ボルト102とアイボルト110の組み合わせが杭10の水平方向の芯ずれを調整する。また、杭頭接合構造100,200,300は、プレート120(又は支持部材220)及びモルタル150によって上部構造物の荷重を杭10に伝達できる。更に、上部構造物に上方向の力(引き抜き力)が作用した場合でも、ボルト102とアイボルト110とナット134,136によって杭10と上部構造物の接合を維持でき、上部構造物を杭10に固定できる。特に、杭10の中空部分にモルタル150が硬化していることによって、ボルト102の軸部104が曲がりづらくなり、大きな引き抜き力を杭10に伝達することができる。
【0051】
更に、杭頭接合構造100,200,300は、上部構造物に水平力が作用した場合、アイボルト110とモルタル150を介して、杭10に水平力が伝達される。そのため、杭10の中空部分にモルタル150が充填されない場合に比べて、杭頭接合構造100,200,300は、より大きな水平力を杭10に伝達できる。
【0052】
また更に、アイボルト110は、モルタル150の硬化前において、杭10の中空部分で自由に移動できる。その結果、アイボルト110の水平方向の位置によって、杭10の水平方向の誤差を吸収できる。従って、ボルト140,240を貫通させるベースレール30の開口部34の開口面積を広げてルーズホールとすることで、杭頭接合構造100,200,300と、ベースレール30の位置合わせをする必要がない。そのため、ベースレール30の開口部34の開口面積は、ボルト140の軸部が貫通できる必要最小限の大きさでよい。ルーズホールでねじ結合する場合は、摩擦接合が必要であり、高力ボルトを使用する必要があるが、本実施形態によれば、ボルトサイズの穴でよいため、支圧接合でよく、普通ボルトを使用して杭頭接合構造100,200,300を構成できる。更に、本実施形態はボルト数を減らすこともできる。
【0053】
なお、上記実施形態では、アイボルト110が上部構造物の設置に要求される水平面に対して垂直方向に設置される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、図14に示すように、上部構造物(ベースレール30)に対して、斜め方向にアイボルト110を設けてもよい。図14は、本実施形態に係る杭頭接合構造200のアイボルト110の上端における結合部分を示す断面図である。この場合、ねじ結合によって、プレート120を杭10に固定できるように、球面ワッシャー232、球面座付きフランジナット234、ナット236を使用する。
【0054】
球面ワッシャー232、球面座付きフランジナット234は、ナット236と共に、アイボルト110の軸部114と結合して、プレート120を杭10の上部に固定する。球面ワッシャー232は、一端に凹面が形成され、他端がプレート120と接触する。球面座付きフランジナット234は、一端が球面ワッシャー232の凹面と接触する球面部235であり、他端が、雌ねじが形成されたナット部である。
【0055】
球面ワッシャー232と球面座付きフランジナット234を組み合わせることで、球面座付きフランジナット234が、プレート120及び杭10に対して傾斜して配置できるため、球面座付きフランジナット234を貫通するアイボルト110も同様に傾斜配置できる。その結果、杭10の上部に設置するベースレール30を水平に配置でき、更にベースレール30上部に設置するフレーム20などの上部構造物を水平に設置できる。すなわち、球面ワッシャー232及び球面座付きフランジナット234が、杭10の傾き方向の施工誤差を調整する。
【0056】
[2.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る杭頭接合構造400について説明する。図15は、本実施形態に係る杭頭接合構造400と上部構造物を示す断面図であり、図16及び図17は、本実施形態に係る杭頭接合構造400を示す断面図である。
【0057】
杭頭接合構造400は、杭10とベースレール30を接合する構造であり、ボルト102と、ナット106と、ワッシャー107,108と、連結部材310と、プレート320と、ボルト140と、ワッシャー143と、ナット144,146などを有する。
【0058】
ボルト102と、ナット106と、ワッシャー107,108と、ボルト140と、ワッシャー143と、ナット144,146は、上述した第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。なお、ボルト102の軸部104は、連結部材310の開口部316を貫通する。
【0059】
連結部材310は、中空の円筒形状部材であり、側面を切り欠いた形状を有する。連結部材310は固定部材の一例である。連結部材310は、下部312と、中間部314と、上部318に分けられる。下部312は、円筒状であり、上側で二つの中間部314と連結している。中間部314は、対向する二つの部材であり、下側で下部312と連結し、上側で上部318と連結する。上部318は、円筒状であり、下側で二つの中間部314と連結し、上側でプレート320の下面と連結している。連結部材310は、プレート320と溶接によって接合される。図15〜図17中の332は、溶接部分を示す。下部312と、中間部314と、上部318が四方を囲むことによって、開口部316が形成される。開口部316には、ボルト102が貫通する。
【0060】
プレート320は、例えば金属製の板状部材であり、連結部材310の上端に配置され、溶接によって固定される。プレート320には、開口部322と、開口部124が形成される。開口部322は、モルタル150を杭10の中空部分に注入するための穴である。開口部124は、第1の実施形態と同様に、ボルト140の軸部が貫通する。
【0061】
連結部材310とプレート320は、杭10に設置する前に両者を溶接によって接合しておく。連結部材310の軸方向は、プレート320の水平面に対して垂直である。
【0062】
モルタル150は、硬化部材の一例であり、プレート320の開口部322を介して、杭10に注入される。モルタル150の上面は、プレート320に接触してもよいし、プレート320から離隔してもよい。モルタル150は硬化したのち、杭10内部で連結部材310が移動しないように連結部材310を固定する。また、硬化したモルタル150は、連結部材310を介して、ベースレール30上に設置された上部構造物で発生した水平力を杭10に伝達することができる。
【0063】
連結部材310及びプレート320は、杭10の上部に設置する上部構造物の設置傾斜角及び設置高さを調節できる。即ち、プレート320の上面を水平に施工し、モルタル150を硬化させることによって、杭10の上部に設置するベースレール30を水平に配置でき、更にベースレール30上部に設置するフレーム20などの上部構造物を水平に設置できる。また、連結部材310及びプレート320の設置高さを調整して、モルタル150を硬化させることによって、杭10の上部に設置するベースレール30やフレーム20等の上部構造物の設置高さを調節できる。
【0064】
連結部材310は、杭10の中空部分で、水平方向に設置位置を調整できる。即ち、連結部材310は、ボルト102の軸部104の軸方向に沿って移動することができる。また、連結部材310は、軸部104の軸方向に対して垂直方向に移動することも可能である。このように、連結部材310の設置位置を水平方向に調整できることで、連結部材310に固定されるベースレール30の水平方向の設置位置を調節できる。その結果、杭10の水平方向の施工誤差を吸収できる。
【0065】
また、連結部材310の軸方向は、上部構造物の設置に要求される水平面に対して垂直方向に設置される。その結果、プレート320の上面が水平に施工される。即ち、連結部材310は、杭10の立設方向が傾斜していても、垂直方向に設置できるため、杭10の傾き誤差を吸収できる。
【0066】
次に、連結部材310及びプレート320の固定方法の一例について説明する。
まず、連結部材310とプレート320を溶接などによって結合しておく。そして、連結部材310を地盤に施工された杭10の中空部分に挿入する。次に、ボルト102の軸部104を、杭10の一方の開口部12と、連結部材310の開口部316と、杭10の他方の開口部12に貫通させる。そして、ナット106をボルト102に結合し、ボルト102を杭10に固定する。
【0067】
次に、プレート320の開口部322を介して、モルタル150を杭10の中空部分に注入する。所望の高さまでモルタル150を注入しながら、ベースレール30の水平方向の設置位置に合わせて、連結部材310を水平方向に移動させる。また、連結部材310を、上部構造物の設置に要求される水平面に対して垂直方向に設置する。連結部材310の位置が決定したら、連結部材310を固定したままモルタル150を硬化させる。上述した第1の実施形態では、モルタル150を杭10の中空部分に注入した後、プレート120をモルタル150上に設置した。そして、モルタル150が硬化する前にプレート120を設置する場合、モルタル150が硬化するまで、アイボルト110とプレート120の両方を支持する必要があった。一方、本実施形態によれば、連結部材310とプレート320が一体化しているため、モルタル150が硬化するまで、連結部材310とプレート320のいずれか一方を支持すればよい。
【0068】
モルタル150が硬化した後、プレート320の上面にベースレール30を載せて、ボルト140を、プレート320の開口部124と、ベースレール30の開口部34に貫通させる。そして、ナット144,146、ワッシャー142,143をボルト140に結合し、プレート320にベースレール30を固定する。
【0069】
以上、本実施形態の杭頭接合構造400によれば、連結部材310及びプレート320の組み合わせが高さ方向や傾き方向の施工誤差を調整し、連結部材310及びプレート320の組み合わせが杭10の水平方向の杭10の芯ずれを調整する。
【0070】
また、杭頭接合構造400は、プレート320、連結部材310及びモルタル150によって上部構造物の荷重を杭10に伝達できる。更に、上部構造物に上方向の力(引き抜き力)が作用した場合でも、連結部材310と、モルタル150と、ボルト102によって、杭10と上部構造物の接合を維持でき、上部構造物を杭10に固定できる。連結部材310は、円筒形状を有するため、第1の実施形態のアイボルト110の軸部114に比べて剛性を高めることができ、より確実な力の伝達が可能となる。
【0071】
杭10を上部から見たとき、連結部材310の下部312と、ボルト102の軸部104が交差していることで、杭頭接合構造400は引き抜き力に抵抗できる。また、下部312の周囲にモルタル150が付着し、付着応力によって力の伝達を高めることができる。更に、杭10の中空部分にモルタル150が硬化していることによって、ボルト102の軸部104が曲がりづらくなり、大きな引き抜き力を杭10に伝達することができる。
【0072】
更に、杭頭接合構造400は、上部構造物に水平力が作用した場合、連結部材310とモルタル150を介して、杭10に水平力が伝達される。そのため、杭10の中空部分にモルタル150が充填されない場合に比べて、杭頭接合構造は、より大きな水平力を杭10に伝達できる。
【0073】
(杭頭接合構造500)
なお、上記実施形態では、連結部材310は、下部312と、中間部314と、上部318に分けられる構成であるが、本発明は、この例に限定されない。例えば、図18〜図20に示す連結部材410を適用できる。図18〜図20は、本実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【0074】
連結部材410は、棒状部材412と、中間部414と、上部418に分けられる。棒状部材412は、両端で二つの中間部414と連結している。中間部414は、対向する二つの部材であり、下側で棒状部材412と連結し、上側で上部418と連結する。上部418は、円筒状であり、下側で二つの中間部414と連結し、上側でプレート320の下面と連結している。連結部材410は、プレート320と溶接によって接合される。図18〜図20中の332は、溶接部分を示す。棒状部材412と、中間部414と、上部418が四方を囲むことによって、開口部416が形成される。
【0075】
この構成の連結部材410によれば、連結部材310に比べて部材数が多くなるが、連結部材310と同様に、杭10を上部から見たとき、連結部材410の棒状部材412と、ボルト102の軸部104が交差していることで、杭頭接合構造500は引き抜き力に抵抗できる。また、棒状部材412の周囲にモルタル150が付着し、付着応力によって力の伝達を高めることができる。
【0076】
(プレート320の設置方向及びベースレール30の設置方向について)
次に、本発明の第2の実施形態におけるボルト102の軸方向と、プレート320の設置方向及びベースレール30の設置方向の関係について説明する。
【0077】
ベースレール30は、軸方向に長い長尺の部材であり、杭10と結合される場所に予め開口部34が形成されている。ベースレール30と結合されるプレート320には、ベースレール30の軸方向に沿うように、少なくとも二つの開口部124が連結部材310を間に挟んで形成される(例えば図15参照)。そのため、プレート320をベースレール30と結合する場合、全ての杭10上のプレート320は、同一方向に揃う必要がある。
【0078】
ボルト102を貫通させる杭10の開口部12は、杭10を地盤に施工する前に形成したものでもよい。この場合、杭10を所定深さに埋設し終えた後の開口部12の方向は、杭10によって相違する。そのため、二つの開口部12を貫通するボルト102の方向も、杭10によって相違する。ところで、連結部材310の設置方向は、図21及び図22に示すように、ボルト102の軸部104と、連結部材310の開口部316の関係によって規制される。そして、連結部材310とプレート320は一体的に形成されているため、ボルト102の方向によって、プレート320の設置方向範囲が制限される。図21及び図22は、本実施形態に係る杭頭接合構造400を示す横断面図である。
【0079】
全ての杭10上のプレート320を同一方向に揃えるためには、連結部材310の開口部316が広いほどよい。しかし、図23に示すように、連結部材310を間に挟んで、プレート420に二つの開口部124を設ける場合、開口部316を広げてもプレート320の設置方向範囲を360°の範囲で網羅することはできない。図23は、プレート320の変形例であるプレート420を示す平面図である。
【0080】
そこで、図24に示すように、連結部材310を中心にして、4方向に均等に開口部124を設ける。図24は、プレート320を示す平面図である。これにより、連結部材310の設置方向が、図21及び図22に示すように、ボルト102の軸部104と、連結部材310の開口部316の関係によって規制されたとしても、常にベースレール30の軸方向に沿うように、連結部材310を間に挟んで二つの開口部124を揃えることができる。
【0081】
ところで、杭10を地盤に回転させながら施工するため、杭10に2組の開口部12を形成する場合がある。ここで、2組の開口部12とは、対向する二つの開口部12−1と、他の対向する二つの開口部12−2であり、開口部12−1と開口部12−2は上下関係にある。二つの開口部12−1と二つの開口部12−2が、図25に示すように上下で隣接している場合、図24に示すように、連結部材410を中心にして4方向に均等に開口部124を設けるプレート320を使用する。これにより、開口部12−1,12−2の方向に関わらず、プレート320の設置方向を全ての杭10で揃えることができる。図25は、本実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【0082】
一方、二つの開口部12−1と二つの開口部12−3が、図26に示すように上下で交差している場合、図20に示すように、連結部材410を間に挟んで二つの開口部124を設けるプレート420を使用してもよい。すなわち、プレート420を揃えたい方向に応じて、ボルト102の軸部104を開口部12−1又は開口部12−3のいずれかに貫通させて、連結部材410の開口部416にボルト102の軸部104を貫通させればよい。図26は、本実施形態の変形例に係る杭頭接合構造500を示す断面図である。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば、上記実施形態では、杭10の上部に直接、杭頭接合構造を形成するとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図27に示すように、杭10の上部に拡頭部40を設けて、拡頭部40に杭頭接合構造を形成してもよい。図27は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る杭頭接合構造600を示す断面図である。なお、図27は、拡頭部40に第2の実施形態の変形例を適用した例を示しているが、第1の実施形態に係る杭頭接合構造など他の構造を適用してもよい。拡頭部40は、杭10の直径より大きな径を有する例えば円筒部材80と、円板82からなる。円筒部材80は、円板82を介して杭10の上端と接合される。円筒部材80の側面には、開口部84が形成され、開口部84にはボルト102の軸部104が貫通する。
【0085】
拡頭部40は、杭10よりも開口面積が広くなるため、連結部材410の水平方向の可動範囲が広くなる。その結果、杭頭接合構造によれば、杭10の水平方向の施工誤差を調節できる範囲が広がる。
【0086】
また、上記実施形態では、杭10に設置されるボルト102の軸部104が直線状であるとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図28に示すように、ボルト102は、軸部104の中間部で屈曲してもよい。図28は、本発明の第2の実施形態に係る杭頭接合構造400の変形例を示す横断面図である。このボルト102を使用すると、ボルト102を回転させることで、軸部104の屈曲部分が、杭10の中心より、杭10の軸方向に対して垂直方向に位置するように配置できる。このような構成とすることで、連結部材310は、一の開口部12から他の開口部12への方向に対して垂直方向へ移動できる範囲が広がる。その結果、杭10の水平方向の施工誤差をより大きく吸収することができる。なお、図示しないが、アイボルト110を使用した本発明の第1の実施形態にも同様に屈曲したボルト102を適用できる。
【0087】
更に、上記実施形態では、棒部材がボルト102の軸部104である例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、図29に示すように、棒部材202は、丸鋼等の鋼製部材であってもよい。棒部材202は、ボルト102のように雄ねじ部分や頭部がない。棒部材202には、Cリング207,208が両端部分に装着される。これによって、棒部材202が杭10から抜けることを防止できる。Cリング207,208は、例えば棒部材202の外面に形成された溝に嵌められて固定される。Cリング207,208の代わりにEリング、割りピンなどが棒部材202に装着されてもよい。なお、図29では、屈曲した棒部材の例について図示したが、直線状の棒部材でも丸鋼等の鋼製部材を使用できる。また、図29では、本発明の第2の実施形態に係る杭頭接合構造400における例を図示したが、アイボルト110を使用した本発明の第1の実施形態にも同様に棒部材202を適用できる。
【符号の説明】
【0088】
10 杭
12,32,34 開口部
14 仕切り板
20 フレーム
30 ベースレール
40 ソーラーパネル
50 仮設材
100,200,300,400,500,600 杭頭接合構造
102,140 ボルト
104 軸部
106,134,136,144,146,236 ナット
107,108,132,142,143 ワッシャー
110 アイボルト
112 リング部
114 軸部
116,122,124,316,322,416 開口部
120,320 プレート
150 モルタル
160 高さ調整プレート
220 支持部材
222 下面
224 上面
232 球面ワッシャー
234 球面座付きフランジナット
310,410 連結部材
312 下部
314,414 中間部
318,418 上部
412 棒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物を上側で支持し固定する筒形状の杭と、
軸方向が前記杭内部で前記杭の中空部分を横切って配置され前記杭に固定された棒部材と、
前記棒部材の下部を通過する第一端部と、前記杭の上端部から突出して配置され、上部構造物と連結する第二端部とを有し、前記杭内部の可動範囲内で前記上部構造物の水平方向位置を調節する固定部材と、
前記杭の中空部分に充填され前記固定部材を前記杭の中空部分で固定する硬化部材と
を備える、杭頭接合構造。
【請求項2】
上部構造物を上側で支持し固定する筒形状の杭と、
軸方向が前記杭内部で前記杭の中空部分を横切って配置され前記杭に固定された棒部材と、
前記杭の上端部で、上部構造物の荷重を杭に伝達するように配置される板状の支持部材と、
前記棒部材の下部を通過する第一端部と、前記杭の上端部から突出して配置され、前記支持部材と連結する第二端部とを有し、前記杭内部の可動範囲内で前記上部構造物の水平方向位置を調節する固定部材と、
前記杭の中空部分に充填され前記固定部材を前記杭の中空部分で固定する硬化部材と
を備える、杭頭接合構造。
【請求項3】
前記硬化部材は、上面が前記杭の上端部より上になるように前記杭の中空部分に注入され、前記硬化部材の上面が前記支持部材の下面と接触して前記上部構造物の設置傾斜角を調節する、請求項1又は2に記載の杭頭接合構造。
【請求項4】
前記固定部材は筒形状であり、前記第二端部は、前記支持部材の下面と接合し、前記支持部材と共に前記上部構造物の設置傾斜角を調節する、請求項1又は2に記載の杭頭接合構造。
【請求項5】
前記支持部材のうち前記固定部材に対応する位置に開口部が形成される、請求項4に記載の杭頭接合構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−82620(P2012−82620A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229952(P2010−229952)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】