説明

杭頭接合部材及びこれを用いた杭頭接合構造

【課題】施工現場での溶接作業が不要で、施工が容易で、作業効率が向上し、高靱性の杭に対しても強固な杭頭接合構造を構築可能な杭頭接合技術を提供する。
【解決手段】杭頭接合部材10は、地面Gf上に打設された捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aに装着される部材であって、複数の縦鉄筋10v,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭100aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部11と、杭頭100aの開口端100bを閉塞する円板状の蓋体12と、を備えている。蓋体12は、溶接により、本体部11内周の縦鉄筋10vに一体化されている。また、本体部11の下端側の外周を囲繞した形状をなすように本体部11と一体的に補強部13が設けられている。補強部13は縦鉄筋10vの下端に形成されたJ字状部10jの周囲に複数のフープ鉄筋10Hを溶接して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的大型のコンクリート構造物の基礎工事において、土中に埋設された杭の頭部と、この杭頭の上方に構築される鉄筋コンクリート基礎部と、を接合する杭頭接合技術に関する。
【背景技術】
【0002】
土中に埋設された杭の頭部の上方に鉄筋コンクリート基礎部を構築する場合、従来、施工現場において、地面から突出した杭頭の外周に複数の定着鉄筋を溶接し、これらの周囲に型枠を形成した後、定着鉄筋と一体化するようにコンクリートを打設する、という工法が採られている。しかしながら、施工現場において溶接作業を行うのは非効率的であり、溶接不良が発生する可能性もある。また、近年は、資格を有する溶接技能者の確保も困難となっている。そこで、施工現場における溶接作業を極力少なくした杭頭接合技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−187028号公報
【特許文献2】特開2009−13652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の「杭頭結合用鋼材」は、上載構造物の鉛直荷重を確実に杭本体に伝達できる点において優れている。しかしながら、この「杭頭結合用鋼材」を使用する場合、杭頭に配置した複数の「杭頭結合用鋼材」が施工中にズレないように、何らかの係止手段を設ける必要があるため、別の資材を用意しなければならず、施工手順が煩雑化する。また、コンクリートを打設する場合、「杭頭結合用鋼材」の脚部と杭頭内面との間のコンクリートの充填状況が確認し難いので、コンクリート打設時の施工性が悪い。
【0005】
特許文献2記載の「杭頭補強用鉄筋」は、地中に埋設されたコンクリートパイルと地盤に打設されたコンクリート基礎とを強固に接合することができる点において優れている。しかしながら、この「杭頭補強用鉄筋」は配筋状態が複雑であるため、コンクリート基礎を構成する鉄筋の配筋が複雑となり、配筋作業性が悪い。また、この「杭頭補強用鉄筋」は鉄筋の使用量が多く、配筋密度が高いので、この部分に打設されたコンクリートの流動が阻害されることがあり、使用可能な骨材粒度が限定される。このため、コンクリート打設時の作業性も悪い。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、施工現場での溶接作業が不要で、施工が容易で、作業効率が向上し、高靱性の杭に対しても強固な杭頭接合構造を構築することができる、杭頭接合技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の杭頭接合部材は、地中に埋設された杭材の地面から突出した杭頭に装着される杭頭接合部材であって、鉄筋を用いて前記杭頭の外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部と、前記杭頭の開口端を閉塞する蓋体と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、筒篭形状の本体部を、地面から突出した杭頭の外周を囲繞する状態で取り付け、この杭頭の開口端を蓋体で閉塞すれば、杭頭接合部材を杭頭に装着することができるため、施工は容易である。また、筒篭形状の本体部は、予め鉄筋を用いて形成されているため、施工現場での溶接作業が不要であり、杭頭の開口端が蓋体で閉塞されることにより杭頭内部へのコンクリート打設が不要となるので、作業効率が向上する。さらに、鉄筋で形成された筒篭形状の本体部によって杭頭の外周が囲繞されるため、強固な杭頭接合構造を構築することができる。
【0009】
ここで、前記杭頭の外周を囲繞可能なリング状若しくは短筒状の周壁部材を前記本体部に設けることができる。このような構成とすれば、本体部の強度向上に有効である。
【0010】
また、前記杭頭に装着された前記本体部を、前記杭頭と略同軸上の所定位置に保持する保持手段を設けることが望ましい。このような構成とすれば、本体部の位置決め作業を容易且つ正確に行うことが可能となるため、作業効率の向上及び施工品質の安定化に有効である。
【0011】
この場合、前記保持手段として、前記杭頭の開口端に係合する保持部材を前記本体部に設けることができる。このような構成とすれば、前記保持部材を杭頭の開口端に係合させることにより、本体部を、杭頭と略同軸上の所定位置に保持することが可能となるため、作業性が向上する。
【0012】
また、前記蓋体を前記本体部に一体化させることもできる、このような構成とすれば、本体部を杭頭に取り付けることによって杭頭の開口端を蓋体で閉塞することが可能となるため、作業効率が向上する。また、蓋体を介して、本体部と杭頭との一体性を高めることができるので、杭頭接合構造の強度向上に有効である。
【0013】
一方、前記本体部の下端側の外周を囲繞した形状をなすように鉄筋を用いて前記本体部と一体的に形成された補強部を設けることもできる。このような構成とすれば、杭頭の外周を囲繞する本体部の下端側の外周がさらに補強部で囲繞された状態となり、杭頭の周囲に配筋される有効鉄筋量が増えるため、杭頭接合構造の強度がさらに向上する。
【0014】
次に、本発明の杭頭接合構造は、前述したいずれかの杭頭接合部材の前記本体部を、地面から突出した杭頭の外周を囲繞した状態に取り付け、前記杭頭の開口端を前記蓋体で閉塞したことを特徴とする。
【0015】
このような構成とすれば、施工現場での溶接作業が不要となり、施工が容易で、作業効率が向上し、高靱性の杭に対しても強固な杭頭接合構造を構築することができる。
【0016】
ここで、前記本体部が前記杭頭の開口端側に離脱するのを阻止する係止手段を設けることが望ましい。このような構成とすれば、外力が加わったときに、本体部が杭頭の開口端側から離脱し難くなるため、杭頭接合構造の強度向上に有効である。
【0017】
この場合、前記係止手段として、前記杭頭の開口端側に前記本体部が離脱不能な拡径部を設けることができる。このような構成とすれば、簡素な構造でありながら、確実な離脱防止作用を得ることができる。
【0018】
また、前記係止手段として、前記本体部が離脱不能な外径を有する前記蓋体を前記杭頭の開口端に固定することもできる。このような構成とすれば、当該杭頭接合部材の一部をなす蓋体を利用して、確実な離脱防止作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、施工現場での溶接作業が不要で、施工が容易で、作業効率が向上し、高靱性の杭に対しても強固な杭頭接合構造を構築可能な杭頭接合技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態である杭頭接合部材を示す平面図である。
【図2】図1に示す杭頭接合部材の正面図である。
【図3】図2に示す杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【図4】本発明の第2実施形態である杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造の施工過程を示す一部切欠正面図である。
【図5】図4に示す施工過程を経て形成された杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【図6】本発明の第3実施形態である杭頭接合部材を使用したその他の杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【図7】本発明の第4実施形態である杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【図8】本発明の第5実施形態である杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【図9】本発明の第6実施形態である杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【図10】本発明の第7実施形態である杭頭接合部材を示す平面図である。
【図11】図10に示す杭頭接合部材の正面図である。
【図12】図11に示す杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造を示す正面図である。
【図13】本発明の第8実施形態である杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【図14】本発明の第9実施形態である杭頭接合部材を使用した杭頭接合構造を示す一部切欠正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図3に基づいて本発明の第1実施形態である杭頭接合部材10及びこれを用いた杭頭接合構造について説明する。図1〜図3に示すように、杭頭接合部材10は、地中Giに埋設された杭材100の地面Gf上に打設された捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aに装着される部材であって、複数の縦鉄筋10v,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭100aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部11と、杭頭100aの開口端100bを閉塞する円板状の蓋体12と、を備えている。蓋体12は、溶接により、本体部11内周の縦鉄筋10vに一体化されている。また、本体部11の下端側の外周を囲繞した形状をなすように本体部11と一体的に補強部13が設けられている。
【0022】
図1,図2に示すように、本体部11を形成する6本の縦鉄筋10vは、当該本体部11の軸心11cと同軸の仮想円筒面(図示せず)に沿って軸心11cと平行をなす状態で60度間隔に配置され、これらの縦鉄筋10vの外周を包囲する状態でリング状をした4本のフープ鉄筋10hが軸心11c方向に沿って等間隔で配置されている。6本の縦鉄筋10vの下端部は軸心11cを中心にそれぞれ放射方向に拡がるようにJ字状に折り曲げられ、そのJ字状部10jの周囲を包囲する状態で、フープ鉄筋10hより内径の大きな2本のフープ鉄筋10Hを軸心11c方向に沿って配置することによって補強部13が本体部11と一体的に形成されている。
【0023】
円板状の蓋体12は、軸心11c方向の最下部に位置するフープ鉄筋10hと補強部13との間に、軸心11cと直交する姿勢で本体部11の内周に固着されている。なお、縦鉄筋10v及びフープ鉄筋10h,10Hの本数や配置間隔、軸心11c方向における蓋体12の配置場所などは前述したものに限定しないので、施工条件に応じて変更することができる。
【0024】
杭頭接合部材10を使用する場合、図3に示すように、筒篭形状の本体部11を、捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aの外周を囲繞するような状態で取り付け、この杭頭100aの開口端100bを蓋体12で閉塞すれば、杭頭接合部材10が杭頭100aに装着されるため、施工は容易である。また、杭頭接合部材10においては、本体部11内周に固着されている蓋体12が、杭頭100aに装着された本体部11を、杭頭100aと略同軸上の所定位置に保持する保持手段として機能するため、本体部11の位置決めを容易且つ正確に行うことができ、作業効率の向上及び施工品質の安定化に有効である。
【0025】
筒篭形状の本体部11及び補強部13は、予め縦鉄筋10v及びフープ筋10h,10Hを用いて溶接にて形成されているため、施工現場での溶接作業が不要であり、杭頭100aの開口端100bが蓋体12で閉塞されることによって杭頭100a内部へのコンクリート打設が不要となるので、杭頭接合工事の作業効率が向上する。さらに、縦鉄筋10v及びフープ筋10h,10Hで形成された筒篭形状の本体部11によって杭頭100aの外周が囲繞されるため、高靱性の杭に対しても強固な杭頭接合構造を構築することができる。なお、複数のフープ筋10hの代わりに、縦鉄筋10vの周りに鉄筋をスパイラル状に溶接することによって筒篭状の本体部を形成することもできる。
【0026】
杭頭接合部材10において、蓋体12を本体部11に一体化させたことにより、本体部11を杭頭100aに取り付けると同時に杭頭100aの開口端100bが蓋体12で閉塞された状態となるため、作業効率が向上する。また、蓋体12を介して、本体部11と杭頭100aとの一体性を高めることができるので、杭頭接合構造の強度向上に有効である。
【0027】
一方、本体部11の下端側の外周を囲繞した形状をなすように本体部11と一体の補強部13を設けたことにより、杭頭100aの外周を囲繞する本体部11の下端側の外周がさらに補強部13で囲繞された状態となり、杭頭100aの周囲に配筋される有効鉄筋量が増えるため、杭頭接合構造の強度をさらに向上させることができる。
【0028】
次に、図4,図5に基づいて、本発明の第2実施形態である杭頭接合部材20及びこれを用いた杭頭接合構造について説明する。杭頭接合部材20は、捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aに装着される部材であって、複数の縦鉄筋10v,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭100aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部21と、本体部21の下端側の外周を囲繞するように本体部21と一体的に形成された補強部23と、本体部21から独立した円板状の蓋体22と、を備え、本体部21内周の下端部には短円筒状の周壁部材24が本体部21の軸心21cと同軸をなす状態で溶接されている。
【0029】
複数の縦鉄筋10vの下端部を、軸心21c中心にそれぞれ放射方向に拡がるようにJ字状に折り曲げ、そのJ字状部10jの周囲を包囲する状態で、フープ鉄筋10hより内径の大きな2本のフープ鉄筋10Hを軸心21c方向に沿って配置することによって補強部23が本体部21と一体的に形成されている。
【0030】
円板状をした蓋体22の外周には、蓋体22の一方の面(下面)に向かって連続的に縮径した円錐面22aが形成されている。蓋体22の下面(円錐面22aの縮径部)の外径は杭頭100aの開口端100bの内径以下であり、蓋体の上面の外径は開口端100bの内径より大である。
【0031】
図4に示すように、杭頭接合部材20を装着する対象である杭材100においては、その杭頭100aの開口端100cから杭材100の軸心100c方向に沿って複数のスリット100sが開設されている。複数のスリット100sは、軸心100cを中心に等間隔で開設されているが個数や配置間隔は限定しない。
【0032】
図4に示すように、捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aの外周を筒篭形状の本体部21及び短円筒状の周壁部材24で囲繞する状態に取り付けた後、蓋体22を、その下面側(円錐面22aの縮径部側)を杭頭100aの開口端100bに向けた姿勢で開口端100b内に嵌め込み、蓋体22が軸心100cと直交した姿勢のまま蓋体22を軸心100c方向に押し込めば、図5に示すように、開口端100bの内周面に対する円錐面22aの楔作用により、複数のスリット100sが拡がり、開口端100bが拡径するように変形し、蓋体22が開口端100bから杭頭100a内に嵌入される。
【0033】
これにより、開口端100bは蓋体22で閉塞されるとともに、開口端100bに、杭頭接合部材20の周壁部材24の内径より外径の大きな拡径部100wが形成されるので、杭頭接合部材20の本体部21は杭頭100aから離脱不能となる。また、本体部21の軸心21cが、杭材100の軸心100cと略一致した状態に装着される。
【0034】
杭頭接合部材20においては、杭頭100aの外周を囲繞可能な短円筒状の周壁部材24を本体部21の下端部側に設けているため、本体部21の強度向上に有効である。この場合、周壁部材24の内径を、杭頭100aの外径に近い寸法としておけば、杭頭接合部材20を杭頭100aに装着したとき、本体部21の軸心21cと、杭材100の軸心100cとの一致度が高まり、杭頭接合部材20と杭材100との間のガタを低減することができる。
【0035】
本実施形態では、杭頭接合部材20の本体部21が杭頭100aの開口端100b側に離脱するのを阻止する係止手段として、開口端100b側に本体部21が離脱不能な拡径部100wを形成しているため、簡素な構造でありながら、確実な離脱防止作用を得ることができる。また、施工後に外力が加わったときに、本体部21が杭頭100aの開口端100b側から離脱し難くなるため、杭頭接合構造の強度向上に有効である。
【0036】
次に、図6に基づいて、本発明の第3実施形態である杭頭接合部材30及びこれを使用した杭頭接合構造について説明する。図6に示すように、杭頭接合部材30は、捨てコンクリートC表面から突出した上杭101の杭頭101aに装着される部材である。上杭101は杭材100と継手部分が同径の部材であり、地中Giに埋設された杭材100の上端と上杭101の下端とを溶接継手部Wを介して接合することにより、杭材100と上杭101とはそれぞれの軸心100c,101cが一致した状態で一体構造をなしている。杭頭接合部材30は、複数の縦鉄筋10v,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭101aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部31と、本体部31の下端側の外周を囲繞するように本体部31と一体的に形成された補強部33と、本体部31から独立した円板状の蓋体32と、を備え、本体部31内周の下端部には、短円筒状の周壁部材34が、本体部31の軸心31cと同軸状態で溶接されている。
【0037】
複数の縦鉄筋10vの下端部を軸心31c中心にそれぞれ放射方向に拡がるようにJ字状に折り曲げて形成されたJ字状部10jの周囲を包囲する状態で、フープ鉄筋10hより内径の大きな2本のフープ鉄筋10Hを軸心31c方向に沿って配置することによって補強部33が本体部31と一体的に形成されている。なお、フープ鉄筋10h,10Hの本数や配置間隔などは図6に示す実施形態に限定するものではない。
【0038】
蓋体32は、杭頭101aの開口端101bに載置される円板状の部材であり、その中心に貫通孔32cが開設されている。蓋体32の外径は、開口端101bの外径及び周壁部材34の内径より大であって、本体部31の内周より小である。蓋体32上面に配置される座金32aよりも外周側の領域には、複数のリブ38が貫通孔32cを中心に放射状に固着されている。
【0039】
一方、地中Giに埋設された杭材100上に接合された上杭101内の下端寄りの部分には、円板状の固定部材101dが上杭101の軸心101cと同軸状態で配置され、固定部材101dの外周と上杭101の内周面とが溶接されている。固定部材101dの中心に貫通孔101eが開設され、固定部材101dの下面には、円板状の座金101g及び雌ネジ部を有するナット101fが貫通孔101eと同軸状態で固着されている。
【0040】
図6に示すように、杭頭101aの外周を筒篭形状の本体部31及び短円筒状の周壁部材34で囲繞する状態に取り付けた後、蓋体32を、その表面(リブ38が固着された面)を上に向けた状態で杭頭101aの開口端101bに取り付ければ、蓋体32が開口端101bを閉塞した状態となる。この後、蓋体32の貫通孔32cから、上杭101内の固定部材101dの貫通孔101eに向かって雄ねじ部材35を挿入し、その下端部を固定部材101d下面のナット101fに螺着させ、蓋体32の貫通孔32cから突出する雄ねじ部材35の上端部にナット36を螺着して締め付ければ、蓋体32が杭頭101aの開口端101bに固定される。
【0041】
前述したように、蓋体32の外周は、杭頭101aの外径及び周壁部材34の内径より大であるため、杭頭101aの開口端101bに蓋体32を固定することにより、蓋体32の外周が杭頭101aの外周からフランジ状に突出した状態となり、本体部31は杭頭101aから離脱不能な状態に装着される。
【0042】
なお、蓋体32の固定手順は、前述した方法に限定しないので、例えば、蓋体32を杭頭101aの開口端101bに装着する前に雄ねじ部材35を上杭101内に取り付けておく方法を採ることもできる。即ち、蓋体32装着前の開口状態にある杭頭101aの開口端101bから上杭101内の固定部材101dの貫通孔101eに向かって雄ねじ部材35を挿入し、その下端部を固定部材101d下面のナット101fに螺着させることにより、雄ねじ部材35の上端部が開口端101bから突出し状態にしておき、この後、開口端101bから突出する雄ねじ部材35に蓋体32を取り付け、ナット36で締め付ける方法を採ることもできる。
【0043】
本実施形態では、本体部31が杭頭101aの開口端101b側から離脱するのを阻止する係止手段として、本体部31が離脱不能な外径を有する蓋体32を杭頭101aの開口端101bに固定しているため、杭頭接合部材30を構成する蓋体32を利用して、確実な離脱防止作用を得ることができる。
【0044】
次に、図7に基づいて、本発明の第4実施形態である杭頭接合部材40及びこれを使用した杭頭接合構造について説明する。なお、図7において図6中の符号と同じ符号を付している部分は杭頭接合部材30の構成部分と同じ形状、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0045】
図7に示すように、杭頭接合部材40は、捨てコンクリートC表面から突出した杭頭101aに装着される部材であって、複数の縦鉄筋10v,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭101aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部41と、本体部41から独立した円板状の蓋体32と、を備え、本体部41内周の下端部には、短円筒状の周壁部材34が、本体部41の軸心41cと同軸をなす状態で溶接されている。
【0046】
杭頭接合部材40を構成する本体部41は、図6に示す杭頭接合部材30の本体部31から補強部33を削除し、蓋体32上面のリブ38を削除し、周壁部材34の外周に位置する縦鉄筋10vの外周に複数のフープ鉄筋10hを溶接した簡素な構造であるため、必要な強度を確保しつつ、鉄筋使用量の低減を図ることができる。
【0047】
次に、図8に基づいて本発明の第5実施形態である杭頭接合部材50及びこれを使用した杭頭接合構造について説明する。図8に示すように、杭頭接合部材50は、捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aに装着される部材であって、複数の縦鉄筋10v,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭100aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部51と、本体部51の下端側の外周を囲繞するように本体部51と一体的に形成された補強部53と、本体部51内にその軸心51cと同軸状態で固着された円板状の蓋体52aと、を備え、杭頭100aに装着された本体部51を、杭頭100aの軸心100cと略同軸上の所定位置に保持する保持手段として、本体部51内周の下端寄りに、逆U字状をした複数の保持部材54が設けられている。
【0048】
複数の保持部材54は、本体部51の下端寄りの内周に沿って一定間隔を置いて軸心51cを中心に放射状に配置され、それぞれの保持部材54の上部を構成する腰部54dが蓋体52aを軸心51c方向に貫通した状態で蓋体52aに固着されている。各保持部材54を構成する一対の脚部54b,54cの間のスリット54a内に、杭頭100aの開口端100bの周壁100gを嵌め込むことによって本体部51が杭頭100aの所定位置に保持される。杭頭100a内に位置する各保持部材54の脚部54cの下端に、円板状の蓋体52bが軸心51cと同軸状態で固着されている。
【0049】
図8に示すように、杭頭接合部材50においては、杭頭100aの開口端100bに係合する複数の保持部材54を本体部51に設けているため、これらの保持部材54のスリット54aをそれぞれ杭頭100aの開口端100bの周壁100gに係合させることにより、本体部51を、杭頭100aの軸心100cと略同軸上の所定位置に保持することが可能となり、作業性が向上する。また、蓋体52aの上面から軸心51cを中心に放射状に突出した複数の腰部54dの上端部がリブ的な補強機能を発揮するとともに、保持部材54の脚部54cの下端には円板状の蓋体52bが軸心51cと同軸状態で固着されているため、強固な杭頭接合構造を構築することができる。
【0050】
次に、図9に基づいて、本発明の第6実施形態である杭頭接合部材60及びこれを使用した杭頭接合構造について説明する。なお、図9において図8中の符号と同じ符号を付している部分は杭頭接合部材50の構成部分と同じ形状、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0051】
図9に示すように、杭頭接合部材60は、捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aに装着される部材であって、複数の縦鉄筋10v,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭100aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部61と、本体部61内にその軸心61cと同軸をなすように固着された円板状の蓋体52aと、を備え、本体部61内周の下端寄りに、逆U字状をした複数の保持部材54が設けられている。また、保持部材54の脚部54cの下端には円板状の蓋体52bが軸心61cと同軸状態で固着されている。
【0052】
杭頭接合部材60を構成する本体部61は、図8に示す杭頭接合部材50の本体部51から補強部53を削除して、保持部材54の外周に位置する縦鉄筋10vの外周に複数のフープ鉄筋10hを溶接した簡素な構造であるため、必要な強度を確保しつつ、鉄筋使用量の低減を図ることができる。
【0053】
次に、図10〜図12に基づいて、本発明の第7実施形態である杭頭接合部材70及びこれを使用した杭頭接続構造について説明する。図10〜図12に示すように、杭頭接合部材70は、地中Giに埋設された杭材100の地面Gf上に打設された捨てコンクリートC表面から突出した杭頭100aに装着される部材であって、複数の縦鉄筋10w,フープ鉄筋10hを組み合わせて溶接することによって杭頭100aの外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部71と、杭頭100aの開口端100bを閉塞する円板状の蓋体72と、を備えている。蓋体72は、溶接により、本体部71内周の縦鉄筋10wに一体化され、本体部71内周の下端部には短円筒状の周壁部材74が本体部71の軸心71cと同軸をなす状態で溶接されている。
【0054】
本体部71を構成する複数の縦鉄筋10wの上端には、縦鉄筋10wの外径より拡径した円板状の頭部10tが形成されている。また、この頭部10tと同じ頭部10tを有する複数の鉄筋10xが周壁部材74の外周面から突設されている。これらの鉄筋10xは本体部71の軸心71cを中心にして放射状に突設されている。周壁部材74の外周に突設された頭部10t付きの鉄筋10xの本数や突設する位置は図10,図11に示す形態に限定しない。
【0055】
杭頭接合部材70を使用する場合、図12に示すように、短円筒状の周壁部材74内を杭頭100aが貫通する状態で本体部71を杭頭100aに取り付けると、杭頭100aの外周が周壁部材74及び本体部71によって囲繞されるとともに、杭頭100aの開口端100bが蓋体72によって閉塞された状態となる。
【0056】
杭頭接合部材70においては、上端に頭部10tを有する複数の縦鉄筋10wを用いて本体部71を構成するとともに、頭部10tを有する複数の鉄筋10xを周壁部材74の外周に突設している。従って、杭頭100aに装着された杭頭接合部材70の周囲にコンクリートを打設したとき、それぞれの頭部10tがアンカー機能を発揮するため、杭頭接合構造の強度向上に有効である。また、本体部71を構成する縦鉄筋10wの頭部10tがアンカー機能を有することにより、比較的短い縦鉄筋10wであってもコンクリート打設後の付着強度を確保することが可能となるので、図12に示す定着長Lの短縮化を図ることもできる。
【0057】
次に、図13,図14に基づいて、本発明の第8,9実施形態である杭頭接合部材80,90について説明する。なお、図13,図14において、図4〜図7若しくは図10〜図12中の符号と同じ符号を付している部分は杭頭接合部材20,30,40,70の構成部分と同じ形状、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0058】
図13に示す杭頭接合部材80は、図10,図11に示す杭頭接合部材70の本体部71から蓋体72を削除した構造の本体部81と、独立した蓋体22と、を備えている。杭頭接合部材80を使用する場合、図13に示すように、杭頭100aの周囲を筒篭形状の本体部81及び周壁部材74で囲繞するように本体部81を取り付けた後、杭頭100aの開口端100b内に蓋体22を圧入する。
【0059】
これにより、開口端100bは蓋体22で閉塞されるとともに、開口端100bに、杭頭接合部材80の周壁部材74の内径より外径の大きな拡径部100wが形成されるので、杭頭接合部材80の本体部81は杭頭100aから離脱不能となる。また、本体部81の軸心81cが、杭材100の軸心100cと略一致した状態に装着される。
【0060】
図14に示す杭頭接合部材90は、図10,図11に示す杭頭接合部材70の本体部71から蓋体72を削除した構造の本体部91と、独立した蓋体32と、を備えている。蓋体32は、杭頭101aの開口端101bに載置される円板状の部材であり、その中心に貫通孔32cが開設されている。蓋体32の外径は、開口端101bの外径及び周壁部材74の内径より大であって、本体部91の内周より小である。蓋体32上面に配置される座金32aよりも外周側の領域には、複数のリブ32aが貫通孔32cを中心に放射状に固着されている。
【0061】
杭頭接合構造90を使用する場合、図14に示すように、杭材100の上端に溶接継手部Wを介して接合された上杭101の杭頭101aの周囲を筒篭形状の本体部91及び周壁部材74で囲繞するように本体部91を取り付けた後、蓋体32を、その表面(複数のリブ38が固着された面)を上に向けた状態で杭頭101aの開口端101bに載置すれば、開口端101bが蓋部32で閉塞された状態となる。
【0062】
この後、蓋体32の貫通孔32cから、上杭101内の固定部材101dの貫通孔101eに向かって雄ねじ部材35を挿入し、その下端部を固定部材101dの下面に固着されたナット101fに螺着させ、蓋体32の貫通孔32cから突出する雄ねじ部材35の上端部にナット36を螺着して締め付ければ、蓋体32が杭頭101aの開口端101bに固定される。なお、予め固定部材101d下面のナット101fに雄ねじ部材35の下端部を螺着させることにより、雄ねじ部材35の上端部を杭頭101aの開口端101bから突出させた状態にしておいて、蓋体32の取り付け及びナット36の螺着を行うこともできる。
【0063】
蓋体32の外周は、杭頭101aの外径及び周壁部材74の内径より大であるため、杭頭101aの開口端101bに蓋体32を固定することにより、蓋体32の外周が杭頭101aの外周からフランジ状に突出した状態となるため、本体部91は杭頭101aから離脱不能な状態に装着される。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る杭頭接合部材及び杭頭接合構造は、オフィスビル、大型商業施設あるいは公共建造物などの鉄筋コンクリート構造物の基礎工事などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10,20,30,40,50,60,70,80,90 杭頭接合部材
10j J字状部
10t 頭部
10v,10w 縦鉄筋
10h,10H フープ鉄筋
10x 鉄筋
11,21,31,41,51,61,71,81,91 本体部
11c,21c,31c,41c,51c,61c,71c,81c,91c,100c,101c 軸心
12,22,32,52a,52b,72 蓋体
13,23,33 補強部
22a 円錐面
24,34,74 周壁部材
32a,101g 座金
32c,101e 貫通孔
35 雄ねじ部材
36,101f ナット
38 リブ
54 保持部材
54a スリット
54b,54c 脚部
54d 腰部
100 杭材
100a,101a 杭頭
100b,101b 開口端
100g 周壁
100s スリット
101 上杭
101d 固定部材
C 捨てコンクリート
Gi 地中
Gf 地面
L 定着長
W 溶接継手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された杭材の地面から突出した杭頭に装着される杭頭接合部材であって、鉄筋を用いて前記杭頭の外周を囲繞可能な筒篭形状に形成された本体部と、前記杭頭の開口端を閉塞する蓋体と、を備えたことを特徴とする杭頭接合部材。
【請求項2】
前記杭頭の外周を囲繞可能なリング状若しくは短筒状の周壁部材を前記本体部に設けたことを特徴とする請求項1記載の杭頭接合部材。
【請求項3】
前記杭頭に装着された前記本体部を、前記杭頭と略同軸上の所定位置に保持する保持手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の杭頭接合部材。
【請求項4】
前記保持手段として、前記杭頭の開口端に係合する保持部材を前記本体部に設けたことを特徴とする請求項3記載の杭頭接合部材。
【請求項5】
前記蓋体が前記本体部に一体化されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の杭頭接合部材。
【請求項6】
前記本体部の下端側の外周を囲繞した形状をなすように鉄筋を用いて前記本体部と一体的に形成された補強部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の杭頭接合部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の杭頭接合部材の前記本体部を、地面から突出した杭頭の外周を囲繞した状態に取り付け、前記杭頭の開口端を前記蓋体で閉塞したことを特徴とする杭頭接合構造。
【請求項8】
前記本体部が前記杭頭の開口端側に離脱するのを阻止する係止手段を設けたことを特徴とする請求項7記載の杭頭接合構造。
【請求項9】
前記係止手段として、前記杭頭の開口端側に前記本体部が離脱不能な拡径部を設けたことを特徴とする請求項8記載の杭頭接合構造。
【請求項10】
前記係止手段として、前記本体部が離脱不能な外径を有する前記蓋体を前記杭頭の開口端に固定したことを特徴とする請求項8記載の杭頭接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−220073(P2011−220073A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93340(P2010−93340)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(308023826)株式会社テクノ九州 (2)
【出願人】(394002981)株式会社岡本建設用品製作所 (10)
【Fターム(参考)】