説明

板状リールシートの固定構造及びその固定構造を備えた釣り竿

【課題】 板状リールシートの音鳴りを阻止する。
【解決手段】 竿3の所定箇所に板状リールシート1を、その板状リールシート1の板ベース部分を糸2で固定するとともに、板状リールシート1のリール脚装着用のフード1Aとその板状リールシート1が載置された竿3の外周面とを、軟質材製の筒状固定体4で覆って締め付け固定すべく構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状リールシートの固定構造及びその固定構造を備えた釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の板状リールシートを用いた釣り竿においては、仕掛けを投入するなど、竿を振り出す際に板状リールシートから異音が発生することがあり、釣り人に不快感を与えていた。
従来は、板状リールシートの板ベース部分を取付固定用の糸で締付るものや、引き揃え強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたテープで巻き占める構成を採っているものや(特許文献1)、リール脚をガタツキなく取り付けるために、可動フード内に弾性材を装着するものがあった(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−167729号公報(公報第2頁右上欄の及び、図2)
【特許文献2】特開平5−3740号公報(段落番号〔0015〕〔0016〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した特許文献に開示された発明は、いずれも、板状リールシートが発する異音を抑制するものでなく、他の目的のためのものであり、この異音の発生を阻止する技術は存在しなかった。
【0005】
本発明の目的は、効果的に板状リールシートからの異音の発生を抑制できる釣り竿構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、竿の所定箇所に板状リールシートを、その板状リールシートの板ベース部分を取付固定具で固定するとともに、前記板状リールシートのリール脚装着用のフードとその板状リールシートが載置された竿の外周面とを、軟質材製の筒状固定体で覆って締め付け固定すべく構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用効果〕
異音の発生場所が板状リールシートの釣竿への取付面と釣竿の装着箇所の表面との僅かなスベリ現象に関係していることを突き止めた。
これに対して、板ベース部分を取付固定具で竿の所定箇所に取り付け固定する。そして、これだけに止まらず、取付固定具を施し難いフード部分に対して、軟質材製の筒状固定体をフード部分とともに竿の外周面に亘って覆うことによって、固定したものである。
このことによって、板状リールシートの竿に対する固定部分が板ベース部分だけでなく、フード部分でも固定することができるようになり、板状リールシートの釣竿への取付面と釣竿の装着箇所の表面とのスベリ現象を効果的に抑制できるに至った。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、筒状固定体が板状リールシートの可動フード部分に対する可動フード用筒状固定体と固定フード部分に対する固定フード用筒状固定体とで構成されている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
リール脚を固定するために設けてある可動フードと固定フードとの二つのフードに対して筒状固定体で覆うことにしてあるので、板状リールシートの取付固定箇所を多くすることができるので、より一層スベリ現象の解消を図ることができる。
【0010】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1又は2に係る発明において、前記筒状固定体の竿の外周面に接触する部位に、円周方向に沿った切欠き長孔を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
つまり、固定フードや可動フードは単純な円形断面を呈するものではなく複雑な形状を呈するものであるところから、筒状固定体の全面を固定フード等の表面に接触させて固定することには無理がある。そこで、前記したように、切欠き長孔を形成することによって、この部分の突っ張りがなくなり、よりフード面に接触し易くなる。
このように、軟質材製である筒状固定体の変形性をより高めて、切欠き長孔を有していない場合に比べてフードに対する接触追従性を高めることができた。
【0012】
請求項4に係る発明の特徴構成は、請求項1〜3のうちいずれか一つに係る発明において、前記可動フード用筒状固定体と前記固定フード用筒状固定体とを一体形成し、リール装着部位に相当する部分に切欠き長孔を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0013】
〔作用効果〕
両フードに対する筒状固定体を一体形成することによって、筒状体を装着する際も取り外す際も取扱いが容易になり、取り外した後の仕舞い場所も容易に選定し仕舞い処理することができる。
【0014】
請求項5に係る発明の特徴構成は、請求項1〜4に係る発明において、板状リールシートとその板状リールシートを載置する竿の所定箇所との間に、マスキング材を介在させている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0015】
〔作用効果〕
このマスキング材を介在させることによって、板状リールシートと竿の載置面とのズレが一層抑制されることになり、異音の発生を抑制できる。
【0016】
請求項6に係る発明の特徴構成は、請求項1から5のいずれか一つに記載の筒状固定体によって板状リールシートを覆い固定してある構成を釣り竿に施してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0017】
〔作用効果〕
このように、板状リールシートに軟質材製の筒状固定体を施した釣り竿は、仕掛けを投入する際に振り操作をされても、異音を発生しない、使い易いものになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
元竿3の所定位置に取付固定具としての糸2で固定される板状リールシート1について説明する。図1及び図2に示すように、板状リールシート1は、全体が金属で構成されており、竿先側にリール脚5を挿入保持する固定フード1Aと竿尻側にリール脚5を挿入保持解除自在な可動フード1Bとを備え、両フード1A、1Bとを取り付けている細長板状のベースフレーム1Cとで構成してある。そのベースフレーム1Cにおける両フード1A、1Bから突出する竿先端ベース部分1a、竿尻端ベース部分1b、及び、両フード1A、1Bとの間に位置する中間ベース部分1cを、取付固定具としての糸2を巻き付けて固定する。糸2を巻き付けた後、樹脂製の接着剤等を塗布して固定状態を確定する。
【0019】
筒状固定体4に付いて説明する。図1及び図3に示すように、筒状固定体4は、軸芯長が短い固定フード用の筒状固定体4Aと、軸芯長が長い可動フード用の筒状体との二つから構成されるもので、両者4A、4Bは別個のものである。
筒状固定体4は、軟質材製であり、NBR等のゴムやエラストマーが使用可能である。
【0020】
筒状固定体4A、4Bには、竿の外周面に接触する部位に、円周長の略半分の長さに相当する切欠き長孔4aが穿設されており、固定フード用筒状固定体4Aでは一個だけが設けてあり、可動フード用筒状固定体4Bでは3個の切欠き長孔4aが設けられている。
【0021】
以上のような構成を有する筒状固定体4A、4Bは、図1及び図3に示すように、糸2によって所定の載置面に固定された板状リールシート1に対して、予め、可動フード1Bより竿先側に位置させた可動フード用筒状固定体4Aを可動フード1Bとそれを載置する竿の外周面を覆うように引き寄せてその可動フード1Bを覆う。同様に、予め、固定フード1Aより竿尻側に位置させた固定フード用筒状固定体4Bを固定フード1Aとそれを載置する竿の外周面を覆うように引き寄せてその固定フード1Aを覆い、これによって、図1に示すように、板状リールシート1を竿の所定位置に固定できた。
【0022】
〔別実施形態〕
(1) 前記実施形態では、板状リールシート1を直接竿の載置面に載置したが、図2に示すように、板状リールシート1と竿の載置面との間にマスキング材6を介在させて板状リールシート1と載置面とのズレを防止する機構を追加する構成を採っても良い。
この場合に、マスキング材6として使用する材料は、主に和紙を使用する。ここに使用される和紙としては、手漉きによる半紙、美濃紙や機械漉きによる京花紙等であってもよい。
和紙以外に消音効果を発揮するものは、エポキシ材をテープ状にしたものを元竿3に貼り付けるものであってもよい。
(2) 筒状固定体4としては、図4に示すように、可動フード用筒状固定体4Aと固定フード用筒状固定体4Bとを一体形成してもよい。この場合には、前記した切欠き長孔4a以外にその長孔4aとは反対側にリール脚5挿入用の抜き孔4bを設けてある。
(3) 筒状固定体4としては、図示してはいないが、可動フード用筒状固定体4Aと固定フード用筒状固定体4Bとのいずれか一方が装着されるものでもよい。
(4) 筒状固定体4としては、単に円筒状に形成したものを固定フード1A等に被着する構成を採っているが、固定フード1A等と竿の外周面に沿った形状に構成してもよい。つまり、型成形によって固定フード1A等と竿の外周面に沿った形状ではあるが、それらより僅かに小さな形状に構成し、軟質材性の弾性復帰力を利用できる構成としながら、略固定フード1A等の形状に沿ったものに形成してあるので、被着する操作を行い易い面がある。
(5) 板状リールシート1を竿3に取り付ける取付固定具としては、引き揃え強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたテープを利用してもよい。
(6) 板リールシート1が装着される竿としては、振出竿、並継竿でもよく、或いは、外付けガイド竿、中通し竿でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】筒状固定体を装着した状態を示す側面図
【図2】板状リールシートを示す斜視図
【図3】筒状固定体を示す斜視図
【図4】筒状固定体の別実施構造を示す斜視図
【符号の説明】
【0024】
1 板状リールシート
1A、1B フード
1a、1b、1c 板ベース部分
2 取付固定具
3 竿
4 筒状固定体
4A 固定フード用筒状固定体
4B 可動フード用筒状固定体
5 リール脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿の所定箇所に板状リールシートを、その板状リールシートの板ベース部分を取付固定具で固定するとともに、前記板状リールシートのリール脚装着用のフードとその板状リールシートが載置された竿の外周面とを、軟質材製の筒状固定体で覆って締め付け固定すべく構成してある板状リールシートの固定構造。
【請求項2】
筒状固定体が板状リールシートの可動フード部分に対する可動フード用筒状固定体と固定フード部分に対する固定フード用筒状固定体とで構成されている請求項1記載の板状リールシートの固定構造。
【請求項3】
前記筒状固定体の竿の外周面に接触する部位に、円周方向に沿った切欠き長孔を形成してある請求項1又は2記載の板状リールシートの固定構造。
【請求項4】
前記可動フード用筒状固定体と前記固定フード用筒状固定体とを一体形成し、リール装着部位に相当する部分に切欠き孔を形成してある請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の板状リールシートの固定構造。
【請求項5】
板状リールシートとその板状リールシートを載置する竿の所定箇所との間に、マスキング材を介在させている請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の板状リールシートの固定構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の筒状固定体によって板状リールシートを覆い固定してある釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−223186(P2006−223186A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40845(P2005−40845)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】