説明

板状建材塗装方法

【課題】板状建材の下方に配設したインクジェットヘッドによって、板状建材の下面にインクジェット塗装を行う際に、該インクジェットヘッドのインク吐出口にインクミストが付着することを防止し、もって画質不良の発生を低減し得る板状建材塗装方法を提供する。
【解決手段】板状建材10の下面12にインクジェット塗装を行う板状建材塗装方法であって、前記板状建材の下方にインク吐出口22を有したインクジェットヘッド21を配設し、前記インクジェットヘッドのインク吐出口と前記板状建材の下面との間の空間spに、該インク吐出口からインク滴MIを吐出させた時に生じるインクミストimを該インク吐出口から遠ざける気流caを発生させ、その状態で、前記インク吐出口から前記板状建材の下面に向けてインク滴を吐出させて塗装を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット塗装によって、板状建材の下面を塗装する板状建材塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装材や外装材、家具材等に使用される板状の建築材料(板状建材)の表面には、種々の塗装方式によって塗装が施されている。
近時においては、塗装の一方式として、局所的な模様形成や所望の模様パターンを容易に塗装できるインクジェット塗装が用いられている。
このようなインクジェット塗装では、板状建材の表面に非接触の状態で、インク吐出口(インクジェットノズル、噴射ノズル)からインク滴を吐出させて被塗装面にインク滴を着弾させ、この着弾したインク滴による微小なドットの集合によって、リアルで精密な模様が形成できる。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、インクジェット法により表示装置の発光層を形成するようにした表示装置の製造方法が提案されている。
このものでは、基板上に、画素毎に隔壁によって区画された電極上にインクジェット方式により液状材料を塗布して上記発光層を形成するようにしており、液状材料を塗布した後に、液状材料を乾燥するために基板上に、基板と平行な気流あるいは下方の基板に対して上方から垂直気流を発生させるようにしている。
【特許文献1】特開2003−297569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インク吐出口から吐出されるインク滴は、液柱状に吐出され、被塗装面に着弾するまでに、インク液自身の表面張力と空気抵抗とによって、インク滴がミスト状に分離して、被塗装面に着弾するメインのインク滴以外に微小なインクミストが発生する。
このようにインクミストが発生すると、画質不良が生じたり、周辺環境が汚染されたりするといった問題が生じる。
【0005】
また、上記したような板状建材を被塗材とする場合において表裏両面を塗装する場合は、板状建材を裏返す必要があるが、通常の被塗材である定型紙や上記した表示装置の基板等と比べて、サイズが大きいため、板状建材を裏返す作業が困難である。
このような場合には、上面は、上方に配置したインクジェットヘッドによって塗装し、下面は、下方に配置したインクジェットヘッドによって塗装することが考えられる。
しかしながら、下方に配置したインクジェットヘッドによって塗装する場合は、上記したようなインクミストが特に発生し易くなり、また、上方に向けて吐出されたインク滴のインクミストが自重によって浮遊落下してインク吐出口に付着しやすくなる。インク吐出口にインクミストが付着すると、インク吐出口に目詰まりが生じ、連続吐出がなされない恐れがあり、画質不良が発生する恐れがあった。
上記特許文献1で提案されている表示装置の製造方法では、液状材料が塗布された基板上に気流を発生させて、液状材料を乾燥させるものではあるが、このものでは、上記したインクミストに対しての考慮がなされておらず、上記したような問題の解決は困難である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、板状建材の下方に配設したインクジェットヘッドによって、板状建材の下面にインクジェット塗装を行う際に、該インクジェットヘッドのインク吐出口にインクミストが付着することを防止し、もって画質不良の発生を低減し得る板状建材塗装方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る板状建材塗装方法は、板状建材の下面にインクジェット塗装を行う板状建材塗装方法であって、前記板状建材の下方にインク吐出口を有したインクジェットヘッドを配設し、前記インクジェットヘッドのインク吐出口と前記板状建材の下面との間の空間に、該インク吐出口からインク滴を吐出させた時に生じるインクミストを該インク吐出口から遠ざける気流を発生させ、その状態で、前記インク吐出口から前記板状建材の下面に向けてインク滴を吐出させて塗装を行うことを特徴とする。
【0008】
ここに、前記板状建材は、平板状の略直方体形状のもので、建築物の内装材や外装材、家具材等に用いられる木質系建築材料、樹脂系建築材料、窯業系建築材料を指す。
木質系建築材料としては、無垢の木材、集成材、合板、パーティクルボード、木質繊維板等や、これらを基材として、ポリエステル樹脂や塩化ビニル樹脂などの樹脂シートを貼着したものが挙げられる。
樹脂系建築材料としては、熱硬化性樹脂材、熱可塑性樹脂材等が挙げられる。
窯業系建築材料としては、外壁や屋根、塀等に用いられる、レンガ、瓦、セラミックスや、セメントを主成分として補強繊維や無機質充填材を含有したセメント系の窯業系材料等が挙げられる。
また、前記板状建材は、扉、床、階段、框、柱、手摺り、棚、キッチンパネル、天井、各種家具のキャビネットや天板、内壁、外壁、屋根、塀等に用いられる。
また、インクジェット塗装により前記板状建材の下面に塗装する模様は、木目調、石目調、タイル調、ブロック調、単色、その他各種の絵柄等が挙げられる。
【0009】
本発明の前記板状建材塗装方法においては、前記インクジェットヘッドの少なくとも一側方部に、該側方部に沿って上方に向けて開口するエアー吸引口を設け、該エアー吸引口で空気を吸引させて前記気流を発生させるようにしてもよい。
この場合においては、前記エアー吸引口と前記インクジェットヘッドの前記側方部との間に、該側方部に沿って遮蔽板を立設するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の前記板状建材塗装方法においては、エアー吹出口を前記インク吐出口と前記板状建材の下面との間の空間に向けて設け、該エアー吹出口から空気を吹出させて前記気流を発生させるようにしてもよい。
この場合においては、エアー吸引口を前記エアー吹出口の風下に更に設け、該エアー吹出口から空気を吹出させながら、前記エアー吸引口で空気を吸引させて前記気流を発生させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る前記板状建材塗装方法によれば、前記インクジェットヘッドのインク吐出口と前記板状建材の下面との間の空間に、該インク吐出口からインク滴を吐出させた時に生じるインクミストを該インク吐出口から遠ざける気流を発生させ、その状態で、前記インク吐出口から前記板状建材の下面に向けてインク滴を吐出させて塗装を行うようにしているので、該空間を浮遊するインクミストは、前記気流によって、インク吐出口から遠ざかるように誘導される。これにより、インクミストが自重によって浮遊落下してインク吐出口に付着することを防止でき、インク吐出口が目詰まりを起こすようなことを防止できる。
よって、インク吐出口の目詰まりによって連続吐出が妨げられることによる画質不良の発生を低減でき、意匠性の高い板状建材を安定して提供できる。
【0012】
本発明に係る前記板状建材塗装方法において、前記インクジェットヘッドの少なくとも一側方部に、該側方部に沿って上方に向けて開口するエアー吸引口を設け、該エアー吸引口で空気を吸引させて前記気流を発生させるようにすれば、上記のようにインク滴の吐出時に生じて浮遊するインクミストを吸引することができ、インクミストの飛散による周辺機器へのインクミストの付着も防止できる。
上記場合において、前記エアー吸引口と前記インクジェットヘッドの前記側方部との間に、該側方部に沿って遮蔽板を立設するようにすれば、インク吐出口から板状建材の下面に向けて吐出されたインク滴(被塗装面に着弾すべきメインインク)に対する前記気流の緩衝を低減でき、よって、吐出された直後のインク滴がエアー吸引口に吸引されることを防止できる。
【0013】
また、本発明に係る前記板状建材塗装方法において、エアー吹出口を前記インク吐出口と前記板状建材の下面との間の空間に向けて設け、該エアー吹出口から空気を吹出させて前記気流を発生させるようにすれば、インク吐出口から吐出されるインク滴に対して略直交する方向(略水平方向)の気流によって、効果的にインクミストをインク吐出口から遠ざけることができる。
上記場合において、エアー吸引口を前記エアー吹出口の風下に更に設け、該エアー吹出口から空気を吹出させながら、前記エアー吸引口で空気を吸引させて前記気流を発生させるようにすれば、該気流に乗って浮遊するインクミストをエアー吸引口で吸引することができ、インクミストの飛散による周辺機器へのインクミストの付着も防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1(a),(b)は、いずれも第1実施形態に係る板状建材塗装方法を説明するための説明図であり、(a)は、概略側面図、(b)は、(a)におけるX部の概略拡大図、図2は、同実施形態を説明するための説明図であり、図1(a)におけるY−Y線矢視図、図3は、同実施形態に係る板状建材塗装方法を実行する板状建材塗装装置の一例を示すブロック図である。
尚、図1(b)、後記する図4及び図5においては、インク吐出口、インク吐出口から吐出されたインク滴及び気流発生手段によって生じる気流を模式的に示している。
【0015】
本実施形態に係る板状建材塗装方法によって塗装される板状建材10は、略直方体形状とされ、集成材、合板、パーティクルボード、木質繊維板などの木質系基材で構成され、後記する板状建材塗装方法を実行する板状建材塗装装置Aによって、下面12に木目模様の塗装がなされる。
このような板状建材10を被塗材として、その表裏両面のそれぞれに上方から塗装する場合は、板状建材10を裏返す工程が必要となり、通常の被塗材である定型紙等と比べて、サイズが大きいため、板状建材10を裏返す工程が困難となるが、本実施形態のように、下方から板状建材10の下面12を塗装することで、板状建材10を裏返す必要がなく、塗装工程の簡略化が図れる。
また、下面12には、塗装がなされる前に、後記するインクジェット塗装装置20から吐出させたインクを定着させるための白地のインク受理層が前処理として形成されている。
【0016】
上記のような板状建材10に用いられる基材としては、他の木質系材料、例えば、無垢の木材、あるいは、無垢の木材や集成材、合板、パーティクルボード、木質繊維板等にさらにポリエステル樹脂や塩化ビニル樹脂などの樹脂シートを貼着したものとしてもよい。
また、上記基材を、熱硬化性樹脂材、熱可塑性樹脂材等の樹脂材料としてもよい。また、外壁や屋根、塀等に用いられる、レンガ、瓦、セラミックスや、セメントを主成分として補強繊維や無機質充填材を含有したセメント系の窯業系材料を上記基材としてもよい。
上記のような板状建材10は、建築物の内装材や外装材、家具材として用いられ、扉、床、階段、框、柱、手摺り、棚、キッチンパネル、天井、各種家具のキャビネットや天板、内壁、外壁、屋根、塀等に用いられる。
【0017】
尚、本実施形態では図例のように、後記するインクジェット塗装装置20により板状建材10に塗装された模様は、木目調の模様としているが、これに限らず、石目調、タイル調、ブロック調、単色、その他各種の絵柄等としてもよい。
また、本実施形態では、板状建材10の下面12にインクジェット塗装装置20による塗装によって模様を形成する例を示しているが、上面11及び端面(木口面)にも他の塗装装置を用いて模様を形成するようにしてもよい。
【0018】
次に、板状建材10の下面12を塗装する装置の一例について説明する。
図例の板状建材塗装装置Aは、図1及び図3に示すように、大略的に、板状建材10の下面12を塗装するためのインクジェット塗装装置20と、インク吐出口22と板状建材10の下面との間の空間spに気流caを発生させるための気流発生手段30と、インクジェット塗装装置20によって塗装されたインク滴を乾燥、硬化させるための紫外線照射装置40と、装置各部を制御する制御装置50と、板状建材10を搬送するための板状建材搬送手段60とを備えている。これら各装置は、制御手段を構成するCPU51と信号線54を介して接続され、その制御がなされる。
【0019】
板状建材搬送手段60は、インクジェット塗装装置20のインク吐出口22と板状建材10とを相対移動させる移動手段を構成し、図2に示すように、基台61と、搬送ベルト62とを備えている。この板状建材搬送手段60の基台61及び搬送ベルト62は、開口部を形成するように搬送方向上流側と下流側とに分離されており、該開口部に後記するインクジェット塗装装置20等が配置されて、該開口部において板状建材10の下面12の塗装がなされる構成とされている。
また、板状建材搬送手段60は、インクジェット塗装装置20によるインク滴の吐出動作と連動制御され、板状建材10を白抜矢印方向(図1(a)における紙面右方向、図2における紙面上方向)へ向けて搬送する。
【0020】
尚、本実施形態では、固定状態とされたインクジェット塗装装置20のインクジェットヘッド21に対して、板状建材10が搬送ベルト62によって、搬送されることで、インクジェット塗装装置20のインク吐出口22と板状建材10とを相対移動させる構成としているが、固定状態とされた板状建材10に対して、インクジェット塗装装置20のインクジェットヘッド21を移動走査させて、インク吐出口22と板状建材10とを相対移動させる構成としてもよい。
このような構成においては、例えば、前記板状建材搬送手段60に代えて、板状建材10の上面11を吸引して板状建材10を固定保持する板状建材固定保持手段を設けるようにしてもよい。
【0021】
インクジェット塗装装置20は、板状建材10の下方に配置されており、板状建材10の下面12を塗装するインクジェット塗装手段を構成する。
このインクジェット塗装装置20は、図1及び図2に示すように、装置本体24、装置本体24に連結されインクジェットヘッド21を支持するヘッドアーム23を有している。
インクジェットヘッド21は、板状建材10の搬送方向と直交する方向(板状建材10の幅方向)に長尺に形成されたいわゆるライン型のインクジェットヘッドで、その上面には、各種カラーのインク滴を板状建材10の下面12に向けて吐出する多数のインク吐出口22が形成されている。このような板状建材10の下面12の幅方向全体に亙って塗装できるライン型のインクジェットヘッド21とすることで、例えば、後記する幅方向に沿って移動走査されるシリアル型のインクジェットヘッドに比べて塗装時間を短縮できるとともに装置構成を簡略化できる。
【0022】
本実施形態では、インクジェットヘッド21は、板状建材10の搬送方向上流側から順に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色を吐出するための多数のインク吐出口22c,22m,22y,22kをそれぞれ備えた4本のライン型のインクジェットヘッド21c,21m,21y,21kから構成されている。
上記インク吐出口22と、上記板状建材搬送手段60によって搬送される板状建材10の下面12との間の空間spは、1mm〜10mm前後とすることが好ましく、3mm〜5mm前後とすることがより好ましい。これにより、高画質の模様を形成できる。
尚、インクジェット塗装装置20のインクジェットヘッド21としては、ライン型ではなく、板状建材10の幅方向に移動走査可能とされた幅方向の短い、いわゆるシリアル型のインクジェットヘッドとしてもよい。この場合には、後記する気流発生手段のエアー吹出口及びエアー吸引口もインクジェットヘッドの幅に合わせて、幅方向を短いものとし、インクジェットヘッドの移動走査に連動させて、移動させるようにしてもよい。
【0023】
気流発生手段30は、本実施形態では、空気吹出装置31と、その下流側に設置された空気吸引装置35とから構成されている。
空気吹出装置31は、ファンやブロアなどの空気吹出手段を内設しており、該空気吹出手段を作動させて吹出用配管32を介してエアー吹出口34へ空気を給送し、エアー吹出口34からインク吐出口22と板状建材10の下面12との間の空間spに向けて空気を吹出させる構成とされている。
上記エアー吹出口34は、図1(b)に示すように、インクジェットヘッド21の上流側近傍位置に配置されており、インク吐出口22と板状建材10の下面12との間の空間spに向けて開口している。また、該エアー吹出口34は、上記のように幅方向に長尺に形成されたインクジェットヘッド21の幅方向に沿って横長スリット状に形成されている
このエアー吹出口34と吹出用配管32との間には、吹出用配管32からエアー吹出口34に向けて徐々に拡開する拡開部33が形成されている。
【0024】
上記空気吸引装置35は、ファンやポンプなどの空気吸引手段を内設しており、該空気吸引手段を作動させて吸引用配管36を介してエアー吸引口38から空気を吸引する構成とされている。
上記エアー吸引口38は、上記エアー吹出口34の風下、すなわち、インクジェットヘッド21の下流側近傍位置に配置され、インクジェットヘッド21を挟んで対向するように配置されている。また、エアー吸引口38は、上記エアー吹出口34と同様、インク吐出口22と板状建材10の下面12との間の空間spに向けて開口しており、上記のように幅方向に長尺に形成されたインクジェットヘッド21の幅方向に沿って横長スリット状に形成されている。
このエアー吸引口38と吸引用配管36との間には、吸引用配管36からエアー吸引口38に向けて徐々に拡開する拡開部37が形成されている。
【0025】
上記紫外線照射装置40は、板状建材10の下方に配置されており、インクジェット塗装装置20によって塗装されたインク滴に紫外線を照射して、乾燥、硬化させる乾燥手段を構成する。
該紫外線照射装置40は、インクジェット塗装装置20の下流側に位置し、装置本体43、紫外線を照射する紫外線照射ヘッド41及び装置本体43に連結され紫外線照射ヘッド41を支持するヘッドアーム42を有している。
紫外線照射ヘッド41は、板状建材10の搬送方向と直交する方向(板状建材10の幅方向)に長尺に形成されており、上方(板状建材10の下面12)に向けて紫外線を照射する紫外線光源41aを内設している。該紫外線光源41aは、板状建材10の下面12の幅方向全体に亙って紫外線の照射が可能なように設けられている。
尚、紫外線光源41aとしては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハイドランプ、熱陰極管、冷陰極管、半導体レーザ、エキシマランプ、LED等の適用が可能であるが、その他、適宜、公知の紫外線光源の適用が可能である。
【0026】
上記制御装置50は、上記各部を制御するCPU51、各種操作を行うための操作手段52、制御プログラムや塗装する模様のパターンデータなどを記憶する記憶手段53などを有している。
尚、上記したインクジェット塗装装置20のインク吐出口22からインク滴を吐出するためのインクジェットのノズル駆動方式は、特に限定されず、適宜公知のものが選択可能であり、ドロップオンデマンドピエゾ方式、ドロップオンデマンドバルブ方式、コンティニュアス帯電偏向方式など任意のものが適用可能である。
【0027】
また、吐出するインクは、例えば、樹脂、溶剤、硬化剤、添加剤等に、基本色を構成する顔料或いは染料を混合した溶液であり、前記したノズル駆動方式や板状建材10の下面12に形成されたインク受理層等に応じて、公知の産業用インクジェットインクの適用が可能であるが、本実施形態では、上記のように紫外線照射装置40によって乾燥、硬化される紫外線(UV)硬化型インクとしている。このようなUV硬化型インクとしては、公知のUV硬化型インクの適用が可能であり、例えば、重合性化合物(ラジカル重合性化合物やカチオン重合性化合物など)、光開始剤及び顔料や染料等の着色剤等からなるインクとしてもよい。その他、例えば、メチルエチルケトンやエタノール、アセトンなどを溶剤とする速乾性インク、オイルベースの油性インク、水性インクなどで少なくとも耐候性、耐水性のあるものとすることが好ましい。
さらに、本実施形態では、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のカラーインクを適用した例を示しているが、単一色のみにより模様を形成する場合には、その単一色を吐出するインク吐出口22を備えたインクジェットヘッド21のみを採用するようにしてもよい。
【0028】
また、吸引用配管36の途中にフィルタ装置を配設したり、エアー吸引口38にフィルタ等を配設したりするようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、気流発生手段30として、空気吹出装置31と、空気吸引装置35とから構成されたものを例示しているが、インク吐出口22からのインク滴の吐出時に生じるインクミストをインク吐出口22から遠ざけるような気流を発生させるものであればよく、例えば、空気吹出装置31のみを設けるようにしても良い。
また、このような気流発生手段30の選択、空気の吹出、吸引力の設定(ファンやブロア、ポンプ等の出力)は、インクジェット塗装装置20のインクジェットヘッド21の形状、インク吐出口22から吐出されるインク滴の大きさや吐出圧、エアー吹出口34、エアー吸引口38の大きさや形状等に応じて適宜、選択、設定可能であるが、板状建材10の下面12の着弾すべき箇所に、メインのインク滴MIが着弾するよう風量を設定することが好ましい。すなわち、メインのインク滴MIの飛翔軌道を妨げない程度で、かつ、ミスト状となって浮遊するインクミストimをインク吐出口22から遠ざけるような程度の風量、気流とすることが好ましい。
【0029】
次に、前記構成とされた板状建材塗装装置Aを用いて板状建材10を塗装する塗装工程について説明する。
【0030】
図2に示すように、板状建材搬送手段60を作動して、上流側搬送ベルト62上に載置された板状建材10を下流側搬送ベルト62との間に設けられた開口部へ搬送する。
該開口部に至り、板状建材10が所定位置に到着したことを検出すると、記憶手段53に記憶されたパターンデータに基づいて、各インク吐出口22c,22m,22y,22kから各色のインク滴を吐出させ、搬送される板状建材10に対してインクジェットヘッド21が走査することで、下面12の塗装を行う。上記所定位置は、光学センサなどで検出するようにしてもよい。
【0031】
また、上記のようにインク滴が吐出される際には、図1(b)に示すように、前記気流発生手段30を作動して、インク吐出口22と板状建材10の下面12との間の空間spに、インク吐出口22からインク滴MIを吐出させた時に生じるインクミストimをインク吐出口22から遠ざけるよう気流caを発生させる。
本実施形態では、上記したように、インクジェットヘッド21の上流側近傍位置に配置されたエアー吹出口34から吹出される空気と、インクジェットヘッド21の下流側近傍位置に配置されたエアー吸引口38による空気の吸引とによって、インク滴MIの吐出方向と略直交する略水平方向の気流caを発生させるようにしている。すなわち、エアー吹出口34から空気を吹出させながら、エアー吸引口38で空気を吸引させて気流caを発生させるようにしている。
【0032】
上記のような気流caを発生させることによって、インク吐出口22から吐出されたインク滴のうち被塗装面である下面12に着弾すべきメインのインク滴MI以外のミスト状となって上記空間spを浮遊するインクミストimは、浮遊落下してインク吐出口22に付着するようなことがなく、該気流caに乗って、エアー吸引口38へと誘導されて吸引される。これにより、インク吐出口22の目詰まりが防止でき、よって、インク吐出口22の目詰まりによって連続吐出が妨げられることによる画質不良の発生を低減でき、意匠性の高い板状建材10を安定して提供できる。
また、上記のように誘導されるインクミストimは、エアー吸引口38で吸引されるので、インクミストimの飛散による周辺機器へのインクミストimの付着も防止できる。
さらに、板状建材10の端面(木口面)に上記のようなインクミストimが回り込んで付着することも防止でき、これにより、前後の工程において端面が塗装される場合にも端面の模様に影響を与えることがない。
【0033】
上記のように気流caを発生させた状態で、インク滴MIが着弾した板状建材10の下面12は、下流側に向けて搬送され、下面12に着弾したインク滴MIは、紫外線照射装置40から照射される紫外線によって乾燥、硬化される。
このように、紫外線によって硬化させる構成としているので、下面12に着弾したインク滴MIを瞬時に硬化させることができ、本実施形態のように板状建材10の下面12に対して下方から上方に向けてインク滴を吐出させる場合でも着弾したインク滴MIが垂れ落ちるようなことがなく、また、下流側の搬送ベルト62に付着するようなことがない。
尚、本実施形態では、紫外線照射装置40を備えた板状建材塗装装置Aを例示しているが、紫外線照射装置40を備えないものとしてもよい。この場合は、紫外線照射装置に代えて、乾燥手段として温風乾燥装置を配設し、着弾したインク滴の乾燥を温風によって行うようにしてもよい。あるいは、このような乾燥手段を設けずに、速乾性のインクを使用し、着弾したインク滴を自然乾燥させる態様としてもよい。
【0034】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図4(a)は、第2実施形態に係る板状建材塗装方法を説明するための説明図であり、図1(b)に対応させた図である。
尚、第1実施形態との相違点は、主にインクジェット塗装装置のインクジェットヘッドの構成及び気流発生手段の構成であり、同様の構成については、同一符合を付し、説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、板状建材塗装装置Bが備えるインクジェットヘッド21Aは、上記第1実施形態で説明したインクジェットヘッド21と同様、各色のインク滴をそれぞれ吐出する4本のライン型のインクジェットヘッド21Ac,21Am,21Ay,21Akを備えている。
また、板状建材塗装装置Bが備える気流発生手段30Aは、上方に向けて開口する3つのエアー吸引口38A,38B,38Cを有している。
上記3つのエアー吸引口38A,38B,38Cは、後記するように、それぞれインクジェットヘッド21Aの側方部に設けられ、該側方部に沿って長尺に形成された横長スリット状に形成されている。これらエアー吸引口38A,38B,38Cは、インクジェットヘッド21Aの各インク吐出口22よりもやや下方に配置されている。
【0036】
本実施形態では、上記3つのエアー吸引口のうち、エアー吸引口38Cは、最上流側に位置するインクジェットヘッド21Acの上流側側方部に沿って設けられている。また、エアー吸引口38Aは、上記4本のインクジェットヘッド21Aの中間位置となるインクジェットヘッド21Amとインクジェットヘッド21Ayとの間に、これらが対向する側方部に沿って設けられている。また、エアー吸引口38Bは、最下流側に位置するインクジェットヘッド21Akの下流側側方部に沿って設けられている。
これらエアー吸引口38A,38B,38Cは、それぞれ拡開部37A,37B,37Cが形成され、上記同様の吸引用配管を介して空気吸引装置に接続されている。
【0037】
上記エアー吸引口38A,38B,38Cと、これらエアー吸引口38A,38B,38Cがそれぞれ設けられたインクジェットヘッド21Aの側方部との間には、該側方部に沿って遮蔽板39がそれぞれ立設されている。
本実施形態では、上記3つのエアー吸引口38A,38B,38Cのそれぞれが隣接する各インクジェットヘッド21Ac,21Am,21Ay,21Akとの間に遮蔽板39を立設するようにしている。すなわち、遮蔽板39は、エアー吸引口38Cとインクジェットヘッド21Acとの間、エアー吸引口38Aとインクジェットヘッド21Amとの間、エアー吸引口38Aとインクジェットヘッド21Ayとの間、及びエアー吸引口38Bとインクジェットヘッド21Akとの間にそれぞれ設けられている。
これら遮蔽板39は、インクジェットヘッド21A及びエアー吸引口38A,38B,38Cの幅方向(板状建材10の幅方向と同方向)の長さに合わせて、長尺に形成されるとともに、インク吐出口22と板状建材10の下面12との間の空間spの略中間位置まで突出するよう立設されている。
【0038】
次に、上記構成とされた板状建材塗装装置Bを用いて板状建材10を塗装する工程について説明する。尚、主に前記第1実施形態と異なる工程について説明し、同様の工程については説明を省略あるいは簡略に説明する。
上記第1実施形態と同様、板状建材搬送手段60を作動して、板状建材10を上記開口部へ搬送し、板状建材10が所定位置に到着したことを検出すると、記憶手段53に記憶されたパターンデータに基づいて、各インク吐出口22c,22m,22y,22kから各色のインク滴を吐出させ、搬送される板状建材10に対してインクジェットヘッド21Aが走査することで、下面12の塗装を行う。
【0039】
また、上記のようにインク滴が吐出される際には、前記気流発生手段30Aを作動して、インク吐出口22と板状建材10の下面12との間の空間spに、インク吐出口22からインク滴MIを吐出させた時に生じるインクミストimをインク吐出口22から遠ざけるよう気流caを発生させる。
本実施形態では、上記したように、インクジェットヘッド21Aの側方部に沿って設けられ、上方に向けて開口する3つのエアー吸引口38A,38B,38Cによる空気の吸引によって、気流caを発生させるようにしている。
該気流caは、各インク吐出口22c,22m,22y,22kからの吐出時のインクミストimを、各インク吐出口22c,22m,22y,22kの上方位置から側方に誘導するとともに、下方に誘導する気流caとされ、該気流caに誘導されたインクミストimは、各エアー吸引口38A,38B,38Cによって吸引される。
【0040】
上記のような気流caを発生させることによって、インク吐出口22から吐出されたインク滴のうち被塗装面である下面12に着弾すべきメインのインク滴MI以外のミスト状となって上記空間spを浮遊するインクミストimは、上記第1実施形態と同様、浮遊落下してインク吐出口22に付着するようなことがなく、該気流caに乗って、エアー吸引口38A,38B,38Cへと誘導されて吸引される。これにより、インク吐出口22の目詰まりが防止でき、よって、インク吐出口22の目詰まりによって連続吐出が妨げられることによる画質不良の発生を低減でき、意匠性の高い板状建材10を安定して提供できる。
【0041】
また、上記エアー吸引口38A,38B,38Cと、これらエアー吸引口38A,38B,38Cがそれぞれ設けられたインクジェットヘッド21Aの側方部との間に、該側方部に沿って遮蔽板39を設けるようにしているので、インク吐出口22から吐出された直後のインク滴MIに対する気流caの緩衝を防止でき、被塗装面である板状建材10の下面12に着弾すべきインク滴MIを吸引するようなことを防止できる。
【0042】
尚、本実施形態では、4本のインクジェットヘッド21Ac,21Am,21Ay,21Akに対して3つのエアー吸引口38A,38B,38Cを設けた例を示しているが、それぞれのインクジェットヘッドの両側方部にそれぞれエアー吸引口が配置されるよう5つのエアー吸引口を設けるようにしてもよい。あるいは、上記4本のインクジェットヘッド21Ac,21Am,21Ay,21Akから構成されるインクジェットヘッド21Aをインクジェットヘッドユニットとして把握し、このインクジェットヘッドユニットの少なくとも一側方部に、エアー吸引口を設けるようにしてもよい。すなわち、インクジェットヘッド21Aの上流側側方部、及び/又は下流側側方部にのみ、上方に向けて開口するエアー吸引口を設けるようにしてもよい。
また、遮蔽板39を設けない態様としてもよい。
【0043】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図4(b)は、第3実施形態に係る板状建材塗装方法を説明するための説明図であり、図1(b)に対応させた図である。
尚、第1実施形態との相違点は、主にインクジェット塗装装置のインクジェットヘッドの構成及び気流発生手段の構成であり、同様の構成については、同一符合を付し、説明を省略する。
【0044】
本実施形態では、板状建材塗装装置Cが備えるインクジェットヘッド21Bは、上記第1実施形態で説明したインクジェットヘッド21と同様、各色のインク滴をそれぞれ吐出する4本のライン型のインクジェットヘッド21Bc,21Bm,21By,21Bkを備えている。
また、板状建材塗装装置Cが備える気流発生手段30Bは、上記インクジェットヘッド21Bの下流側近傍位置及び上流側近傍位置のそれぞれに配置されたエアー吸引口38,38Dと、インクジェットヘッド21Bの中間位置となるインクジェットヘッド21Bmとインクジェットヘッド21Byとの間に設けられたエアー吸引口38Aとを有している。
【0045】
上記インクジェットヘッド21Bの上流側近傍位置に配置されたエアー吸引口38Dは、前記第1実施形態で説明したエアー吹出口34と機能が異なるのみで略同形状とされており、拡開部37Dが形成され、上記同様の吸引用配管を介して空気吸引装置に接続されている。
また、上記インクジェットヘッド21Bの下流側近傍位置に配置されたエアー吸引口38は、前記第1実施形態で説明したエアー吸引口38と同様のものである。
また、上記インクジェットヘッド21Bの中間位置となるインクジェットヘッド21Bmとインクジェットヘッド21Byとの間に設けられたエアー吸引口38Aは、前記第2実施形態で説明したエアー吸引口38Aと同様のものである。このエアー吸引口38Aの両側方部には、前記第2実施形態と同様の遮蔽板39が設けられている。
【0046】
次に、上記構成とされた板状建材塗装装置Cを用いて板状建材10を塗装する工程について説明する。尚、主に前記第1実施形態と異なる工程について説明し、同様の工程については説明を省略あるいは簡略に説明する。
上記第1実施形態と同様、板状建材搬送手段60を作動して、板状建材10を上記開口部へ搬送し、板状建材10が所定位置に到着したことを検出すると、記憶手段53に記憶されたパターンデータに基づいて、各インク吐出口22c,22m,22y,22kから各色のインク滴を吐出させ、搬送される板状建材10に対してインクジェットヘッド21Bが走査することで、下面12の塗装を行う。
【0047】
また、上記のようにインク滴が吐出される際には、前記気流発生手段30Bを作動して、インク吐出口22と板状建材10の下面12との間の空間spに、インク吐出口22からインク滴MIを吐出させた時に生じるインクミストimをインク吐出口22から遠ざけるよう気流caを発生させる。
本実施形態では、上記したように、インクジェットヘッド21Bの上流側近傍位置に配置されたエアー吸引口38Dによる空気の吸引によってインクジェットヘッド21Bの上流側上方部に、上流側に向かう気流caを発生させるとともに、インクジェットヘッド21Bの下流側近傍位置に配置されたエアー吸引口38による空気の吸引によってインクジェットヘッド21Bの下流側上方部に、下流側に向かう気流caを発生させるようにしている。また、インクジェットヘッド21Bmとインクジェットヘッド21Byとの間に設けられたエアー吸引口38Aによる空気の吸引によって、インク吐出口22m,22yのそれぞれの上方位置からその側方のエアー吸引口38Aに向かう気流caを発生させるようにしている。これらの気流caに誘導されたインクミストimは、各エアー吸引口38,38A,38Dによって吸引される。
【0048】
上記のような気流caを発生させることによって、インク吐出口22から吐出されたインク滴のうち被塗装面である下面12に着弾すべきメインのインク滴MI以外のミスト状となって上記空間spを浮遊するインクミストimは、上記第1実施形態と同様、浮遊落下してインク吐出口22に付着するようなことがなく、該気流caに乗って、エアー吸引口38,38A,38Dへと誘導されて吸引される。これにより、インク吐出口22の目詰まりが防止でき、よって、インク吐出口22の目詰まりによって連続吐出が妨げられることによる画質不良の発生を低減でき、意匠性の高い板状建材10を安定して提供できる。
【0049】
また、上記エアー吸引口38,38A,38Dのうち、下方に向けて吸引するエアー吸引口38Aと、エアー吸引口38Aが設けられたインクジェットヘッド21Bの側方部との間に、該側方部に沿って遮蔽板39を設けるようにしているので、インク吐出口22から吐出された直後のインク滴MIに対する緩衝を防止でき、被塗装面である板状建材10の下面12に着弾すべきインク滴MIを吸引するようなことを防止できる。
【0050】
尚、本実施形態では、それぞれ空気を吸引する3つのエアー吸引口38,38A,38Dを設けた例を示したが、例えば、インクジェットヘッド21Bの上流側近傍位置に配置されたエアー吸引口38Dに代えて、前記第1実施形態で説明したエアー吹出口34を配置するようにしてもよい。
また、エアー吸引口38Aの側部に遮蔽板39を設けない態様としてもよい。
【0051】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図5(a)は、第4実施形態に係る板状建材塗装方法を説明するための説明図であり、図1(b)に対応させた図である。
尚、第1実施形態との相違点は、主にインクジェット塗装装置のインクジェットヘッドの構成であり、同様の構成については、同一符合を付し、説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、板状建材塗装装置Dが備えるインクジェットヘッド21Cは、上記第1実施形態で説明したインクジェットヘッド21と同様、各色のインク滴をそれぞれ吐出する4本のライン型のインクジェットヘッド21Cc,21Cm,21Cy,21Ckを備えている。
また、本実施形態では、前記第1実施形態で説明したインクジェットヘッド21とは異なり、インクジェットヘッド21Cc,21Cm,21Cy,21Ckを、それぞれ下流側に向けて、やや傾斜させて配置している。
【0053】
前記構成とされた板状建材塗装装置Dが備えるインクジェットヘッド21Cからは、インク滴MIが斜め上方下流側に向けて吐出される。
このように吐出されたインク滴MIから生じたインクミストimは、気流発生手段30によって発生させた上流側から下流側に向かう気流caによって、下流側のエアー吸引口38へ誘導されて、吸引される。
【0054】
前記したように、本実施形態では、各インクジェットヘッド21Cc,21Cm,21Cy,21Ckを下流側に向けて、やや傾斜させて配置し、インク滴MIを斜め上方下流側に向けて吐出させるようにしているので、インク吐出口22へのインクミストimの付着をより効果的に防止できる。すなわち、浮遊するインクミストimが自重により鉛直下方に落下した場合にも吐出されたインク吐出口22の位置とは異なる位置に落下することとなり、インク吐出口22へのインクミストimの付着を効果的に防止できる。
また、上記構成とともに、そのインクジェットヘッド21Cの下流側近傍位置にエアー吸引口38を設けているので、前記第1実施形態で説明した板状建材塗装装置Aに比べて、より効果的にインクミストimをエアー吸引口38へと誘導でき、吸引できる。
【0055】
尚、本実施形態では、上記のように斜め上方に向けてインク滴MIを吐出するようにしているので、鉛直上方に向けて吐出する場合に比べて、インク滴MIが着弾して形成されるドット間隔が広がるが、上記第1実施形態で説明したものと同等程度の画質とするために、インク吐出口22の配置間隔を傾斜角度に応じて密に設定するようにしてもよい。これによれば、斜め上方に向けてインク滴MIを吐出することによるドット間隔の広がりを吸収でき、高画質の模様を形成できる。あるいは、ドット間隔の広がりを吸収すべく、印加電圧を上げたり、バルブ方式やピエゾ方式のインクジェットヘッドでは、バルブ開の時間を長くしたり、ON時間を長くしたりすることで、吐出させるインク滴MIの大きさ(量)を、大きく(多く)するようにしてもよい。
また、インクジェットヘッド21Cの下流側への傾斜角度は、鉛直上方を0度とすると、下流側に向けて45度程度までの傾斜角度とすることが好ましい。これにより、着弾したインク滴MIにより形成される模様の質を阻害することなく、インクミストimの付着防止と吸引とを効果的に行える。
【0056】
次に、本発明に係る更に他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図5(b)は、第5実施形態に係る板状建材塗装方法を説明するための説明図であり、図1(b)に対応させた図である。
尚、第2実施形態との相違点は、主にインクジェット塗装装置のインクジェットヘッドの構成及び気流発生手段の構成であり、同様の構成については、同一符合を付し、説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、板状建材塗装装置Eが備える各インクジェットヘッド21Dc,21Dm,21Dy,21Dk及び気流発生手段30Cが備える各エアー吸引口38E,38F,38Gは、それぞれ前記第2実施形態と略同様の構成ではあるが、いずれも、下流側に向けて、やや傾斜させて配置している。
また、遮蔽板39も上記インクジェットヘッド21D等の傾斜角度に合わせて下流側に向けて、やや傾斜させて配置している。
【0058】
前記構成とされた板状建材塗装装置Eが備えるインクジェットヘッド21Dからは、インク滴MIが斜め上方下流側に向けて吐出される。
このように吐出されたインク滴MIから生じたインクミストimは、気流発生手段30Cによって発生させたそれぞれの気流caによって、各エアー吸引口38E,38F,38Gへ誘導されて、吸引される。
【0059】
前記したように、本実施形態では、各インクジェットヘッド21Dc,21Dm,21Dy,21Dkを下流側に向けて、やや傾斜させて配置し、インク滴MIを斜め上方下流側に向けて吐出させるようにしているので、インク吐出口22へのインクミストimの付着をより効果的に防止できる。すなわち、浮遊するインクミストimが自重により鉛直下方に落下した場合にも吐出されたインク吐出口22の位置とは異なる位置に落下することとなり、インク吐出口22へのインクミストimの付着を効果的に防止できる。
また、上記構成とともに、インクジェットヘッド21Dの側方部に、前記第2実施形態と同様に、上方に向けて開口するエアー吸引口38E,38F,38Gを設けているので、前記第2施形態で説明した板状建材塗装装置Bに比べて、より効果的にインクミストimを各エアー吸引口38E,38F,38Gへと誘導でき、吸引できる。すなわち、斜め上方下流側に向けて吐出されて生じたインクミストimは、下流側へ向けて浮遊し、このように下流側に向けて浮遊するインクミストimは、吐出されたインク吐出口22の下流側に位置するエアー吸引口38E,38Fによって、効果的に吸引できる。
【0060】
尚、前記各実施形態で塗装される板状建材10として、下面12が平滑とされたものを例示しているが、下面12に凹凸形状が形成されたものに対しても塗装可能である。
また、板状建材10の下面12の周縁に面取りによって形成された傾斜面や凸曲面を有したものへの塗装も可能である。
さらに、前記各実施形態で下面12にインクジェット塗装によって模様を形成した後に、更に、施された模様を阻害することがないように透明の保護シートや保護フィルムを更に貼着して保護層を形成したり、あるいは、透明樹脂塗料(例えば、ウレタン、エポキシなど)などを塗装して保護塗膜を形成したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a),(b)は、いずれも本発明に係る板状建材塗装方法の一実施形態を説明するための説明図であり、(a)は、概略側面図、(b)は、(a)におけるX部の概略拡大図である。
【図2】同実施形態を説明するための説明図であり、図1(a)におけるY−Y線矢視図である。
【図3】同実施形態に係る板状建材塗装方法を実行する板状建材塗装装置の一例を示すブロック図である。
【図4】(a),(b)は、いずれも本発明に係る板状建材塗装方法の他の実施形態を説明するための説明図であり、図1(b)に対応させた図である。
【図5】(a),(b)は、いずれも本発明に係る板状建材塗装方法の更に他の実施形態を説明するための説明図であり、図1(b)に対応させた図である。
【符号の説明】
【0062】
10 板状建材
12 下面
21,21A,21B,21C,21D インクジェットヘッド
22 インク吐出口
34 エアー吹出口
38,38A,38B,38C,38D,38E,38F,38G エアー吸引口
39 遮蔽板
ca 気流
im インクミスト
MI インク滴(メインインク)
sp インク吐出口と板状建材の下面との間の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状建材の下面にインクジェット塗装を行う板状建材塗装方法であって、
前記板状建材の下方にインク吐出口を有したインクジェットヘッドを配設し、
前記インクジェットヘッドのインク吐出口と前記板状建材の下面との間の空間に、該インク吐出口からインク滴を吐出させた時に生じるインクミストを該インク吐出口から遠ざける気流を発生させ、
その状態で、前記インク吐出口から前記板状建材の下面に向けてインク滴を吐出させて塗装を行うことを特徴とする板状建材塗装方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記インクジェットヘッドの少なくとも一側方部に、該側方部に沿って上方に向けて開口するエアー吸引口を設け、該エアー吸引口で空気を吸引させて前記気流を発生させることを特徴とする板状建材塗装方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記エアー吸引口と前記インクジェットヘッドの前記側方部との間に、該側方部に沿って遮蔽板を立設するようにしたことを特徴とする板状建材塗装方法。
【請求項4】
請求項1において、
エアー吹出口を前記インク吐出口と前記板状建材の下面との間の空間に向けて設け、該エアー吹出口から空気を吹出させて前記気流を発生させることを特徴とする板状建材塗装方法。
【請求項5】
請求項4において、
エアー吸引口を前記エアー吹出口の風下に更に設け、該エアー吹出口から空気を吹出させながら、前記エアー吸引口で空気を吸引させて前記気流を発生させることを特徴とする板状建材塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−172526(P2009−172526A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14705(P2008−14705)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】