説明

板状物品の積層搬送装置

【課題】上下に複数段に並設された搬送路8,10,12の各後端部8b,10b,12bが、上段側のものほど上流側に位置されていて、該各搬送路上に載置された板状物品wを押送手段16で同時に押送することで、上段側から下段側へと順次に該板状物品を落として重ね合わせつつ下流に向けて積層搬送していく積層搬送方法及びその装置において、板状物品を落下させる際に、搬送方向前方に滑って位置ずれや滑落が生じないようにする。
【解決手段】上記の最下段を除く各搬送路10,12の後端部10b,12bには、その幅方向の一方側に、落下される板状物品の一側部を係止する係止片を下流に向けて所定長に亘って設ける。板状物品は落下する際に、幅方向の一側部が先に落下してから他側部が落下するので、下段側の板状物品上に重なる時に搬送方向に前後の位置ズレを生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に複数段に並設された搬送路の各後端部が、上段側のものほど上流側に位置されていて、それら各搬送路上に載置された板状物品を押送手段で押送していくことにより、上段側から下段側へと順次に上記板状物品を落として重ね合わせつつ下流に向けて積層搬送していく板状物品の積層搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばビスケット等のような板状物品にあっては、その数枚を重ね合わせて袋体内に収納した包装形態が採用されることが多々ある。そして、このような包装形態を採用する場合には、ピロー包装装置等に当該板状物品を所定枚数ずつ積層させた状態にして間欠的に搬送供給する必要がある。
【0003】
ここで、上記のように板状物品等のワークを所定数ずつ積層させながら搬送していく積層搬送装置の技術として、例えば特許第2942855号公報にて提案されているものが知られている。即ち、当該提案の積層搬送装置は、複数のワークを積み重ね状態で滑らせながら移送する為の主移送台と、この主移送台の上面に沿って直立姿勢で走行する移送杆を所定のピッチで設けたループ状走行体と、主移送台の移送経路の上流部にて合流するように設けた前記ワークの積み重ね数と同数の投入用移送装置とを具備している。
【0004】
また、上記投入用移送装置は、主移送台との合流点相互間に間隔を有するように、当該主移送台に対して斜めに並設されており、各投入用移送装置によって移送されるワークは主移送台に対して斜め後方から投入されるようになっている。上流側の投入用移送装置の主移送台との合流点と、これに続く下流側の投入用移送装置の主移送台との合流点との間には、主移送台の上面から下流側に向かって上昇した後に主移送台と平行となる補助移送台を設け、前記補助移送台の水平部と主移送台との間隔は、下流側にて投入されるワーク又は積み重ね状態のワークの厚さよりも大きく設定し、前記補助移送台には長手方向に延びるスリットを設けてこれに貫通させた態様で上記移送杆を走行させるようにし、各投入用移送装置は、各移送杆が主移送台の合流点を通過した後、ワークを間欠的に投入するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2942855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の積層搬送装置では、主移送台上のワークと副移送台上のワークとを移送杆で同時に押しながら上段側の副移送路上のワークをその後端部で落下させて直下の主移送台上のワークに重ね合わせるようになっているが、その落下の際には、ワークは移送杆によって搬送方向の前方に押されながら前端部側から斜めになって投げ出されるように落下するので、下段の主移送台上にある直下のワークに積み重なる時に、前方に弾んだり滑ったりして位置ズレが生じやすいばかりか滑落してしまうこともあり、このような位置ズレや滑落が生じると、爾後の包装等の次工程での処理に支障を来たしてしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、上段側の板状物品を下段側の板状物品上に落として載せ込む際に、搬送方向の前方に滑って位置ずれが生じたり、滑り落ちたりすることがない板状物品の積層搬送方法、及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、上下に複数段に並設した搬送路の各後端部を、上段側のものほど上流側に位置させ、該各搬送路上に載置された板状物品を押送手段で同時に押送していくことにより、各搬送路上に載置された板状物品を順次に上段側から下段側へと落として重ね合わせつつ、下流に向けて積層搬送していく積層搬送方法であって、上段側から下段側へと該板状物品を落下させる際には、上段側の該板状物品における搬送方向に沿った一側部を所定長に亘って係止して他側部側から落下させ、爾後、該一側部を落下させて下段の板状物品上に重ね合わせ、かつ、該落下時には板状部材の幅方向へのズレを搬送路の側縁に設けた側壁で抑制する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項2に係る発明は、上下に複数段に並設された搬送路の各後端部が、上段側のものほど上流側に位置されていて、該各搬送路上に載置された板状物品を押送手段で同時に押送していくことにより、上段側から下段側へと順次に該板状物品を落として重ね合わせつつ、下流に向けて積層搬送していく積層搬送装置であって、最下段を除く各搬送路の後端部には、その幅方向の一方側に、下段に落下される該板状物品の一側部を係止する係止片が、下流に向かって所定長に亘って設けられており、かつ、少なくとも該係止片の配設部位には、落下する板状部材の幅方向へのズレを抑制する側壁が搬送路の側縁に沿って起立形成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上下に複数段に並設した搬送路の各後端部を、上段側のものほど上流側に位置させ、該各搬送路上に載置された板状物品を押送手段で同時に押送していくことにより、各搬送路上に載置された板状物品を順次に上段側から下段側へと落として重ね合わせつつ、下流に向けて積層搬送していくにあたって、上段側の板状物品を下段側の板状物品上に落として載せ込む際に、搬送方向の前方に滑って上下の板状物品に前後の位置ずれが生じたり、滑り落ちたりすることがなく、綺麗に積み重ねて搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る積層搬送装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】図1に示す積層搬送装置の概略構成を示す側断面図である。
【図3】同図(a)は図1中のa−a線部の矢視断面図、同図(b)は同じくb−b線部の矢視断面図、同図(c)はc−c線部の矢視断面図、同図(d)はd−d線部の矢視断面図、同図(e)はe−e線部の矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る積層搬送方法及び積層搬送装置に付いて、その好ましい実施の形態例を添付図面を参照して詳述する。
図1及び図2に示すように、この積層搬送装置2は押送コンベア4にて構成されており、上下に複数段に並設された搬送路群6を有している。図示する本実施形態例では、当該搬送路群6は上段と中段と下段との3つの搬送路8,10,12からなり、下段搬送路8はその長さが一番長く形成されて主搬送路を構成し、中段搬送路10と上段搬送路12とはその長さが順次に短く形成されて副搬送路を構成している。
【0013】
そして、その搬送路長の一番長い下段搬送路8の搬送方向後端部には、不図示のピロー包装機等の包装機械が繋がれていて、各搬送路8,10,12上にそれぞれ載置された板状部材wは、後述する押送手段 によって当該包装機械のワーク搬入端に向けて移送されて、その3枚の板状物品wが上下に積み重ねらた積層状態とされて供給されるようになっている。
【0014】
即ち、下段搬送路8よりもその搬送路長が短く形成されている中段搬送路10は、下段搬送路8に沿ってその上方に並行に設けられている。そして、当該中段搬送路10の搬送方向上流側の前端部10aは、下段搬送路8の前端部8aよりも後方の下流側に所定長ずらされされるとともに、当該中段搬送路10の搬送方向下流端の後端部10bは、下段搬送路8の後端部8bよりも上流側に位置されて配設されている。
【0015】
また、同様にして、中段搬送路10よりも更にその搬送路長が短く形成されている上段搬送路12は、中段搬送路10に沿ってその上方に並行に設けられている。そして、当該上段搬送路12は、その搬送方向上流側の前端部12aが中段搬送路10の前端部10aよりも後方の下流側に所定長ずらされるとともに、当該上段搬送路12の搬送方向下流端の後端部12bは、中段搬送路10の後端部10bよりも更に上流側に位置されて配設されている。つまり、上下方向に3段に並設された搬送路8,10,12の各前端部8a,10a,12aは上段側のものほど下流側に位置され、かつ、その各後端部10b,12bは上段側のものほど上流側に位置されている。なお、下段搬送路8の後端部は図示を省略してある。
【0016】
そして、上記の下段・中段・上段の各搬送路8,10,12には、その幅方向の中央部に沿わされて、その長手方向の全長に亘って溝部8c,10c,12cが上下に貫通形成されていて、当該溝部8c,10c,12cには押送手段16のプッシャー18が挿通されるようになっている。
【0017】
即ち、当該押送手段16は下段搬送路8の溝部8cに沿って配設されたエンドレスチェーン19と、このエンドレスチェーン19に所定の等間隔を空けて配設された上記プッシャー18とからなり、当該プッシャー18はエンドレスチェーンの周回作動に伴って、各搬送路8,10,12の各前端部8a,10a,12aから、その各溝部8c,10c,12c内に順次に入り込んで、各搬送路8,10,12上に載置されている板状物品wを下流に向けて押送していくようになっている。
【0018】
また、各搬送路8,10,12の前端部8a,10a,12aには、その各搬送路8,10,12毎にそれぞれ側方から供給コンベア20,22,24が繋がれていて、当該供給コンベア20,22,24から各搬送路8,10,12の前端部8a,10a,12a上に板状物品wが移載されるようになっている(図1参照)。また、各搬送路8,10,12と各供給コンベア20,22,24との接続口8d,10d,12dを除いて、各搬送路8,10,12の幅方向両側には、上方に起立した側板14(14a,14b,14c)がその全長に亘って設けられていて、各搬送路8,10,12上を移送される板状物品wが幅方向の外側にズレて脱落することを防止するようになっている。
【0019】
ここで、各搬送路8,10,12の前端部8a,10a,12aの位置はプッシャー18の配設ピッチに相応されて前後にずらされており、供給コンベア20,22,24は押送手段16のプッシャー18の動作に同期作動して、当該プッシャー18が各搬送路8,10,12の接続口8d,10d,12dを通過する合間に、板状物品wを各搬送路8,10,12の前端部8a,10a,12aに移載するようになっている。
【0020】
ところで、上記搬送路群6にあっては、図1と図3とに示すように、その最下段に位置して主搬送路をなす下段搬送路8を除き、他の副搬送路をなしている中段搬送路10と上段搬送路12とには、その各後端部10b,12bに、板状部材wの一側部を係止する係止片10e,12eが搬送方向に沿って所定長に亘って延長形成されている。ここで、図示例の板状物品は円形を呈しているが、前記係止片10e,12eの長さは少なくとも当該板状物品wの直径寸法よりも大きい所定長に設定され、本実施形態例では直径寸法の約1.5倍に形成されている。
【0021】
即ち、当該係止片10e,12eは、中段搬送路10と上段搬送路12の各後端部10b,12bから下方に落下される板状部材wを、その搬送方向に直交する幅方向の一側部側を所定長に亘って係止することによって、その他側部側を先行させて落下させ、もって係止片10e,12eの終端部まで板状部材wを幅方向に傾かせて移送した後、当該終端部で一側部側を後らせて落下させて、その直下にある板状部材w上に載せて重ね合わせるようになっている。
【0022】
ここで、上段搬送路12の後端部10bにおいては、その係止片12eは図3の(b)の断面図に示すように、下流側から上流側に向かって見て上段搬送路12の右側に位置する一側部に設けられおり、一方、中断搬送路10の後端部10bにおいては、その係止片10eは図3の(d)の断面図に示すように、下流側から上流側に向かって見て中段搬送路12の左側に位置する一側部に設けられていて、上段搬送路12と下段搬送路10とではその各係止片10e,12eの配設位置は左右逆になっている。
【0023】
また、上述した側板14(14a,14b,14c)は、図3(a)に示すように各搬送路8,10,12の両側縁にそれぞれ一体的に起立形成されていて、当該各搬送路8,10,12はL字状に屈曲された一対の板材が溝部8c,10c,12c分の間隔を空けて対向対置された構成となって形成されている。そして、図3(b)に示すように上段搬送路12の後端部12bから係止片12eが延長形成されている箇所では、当該係止片12eに一体に側板14aが形成されており、係止片のない他側部では側板14は中段搬送路10に一体形成されている側板14bが上方に延出形成されてその左右の高さが揃えられている。また、上段搬送路12の係止片12eの終端部を過ぎた後方の箇所では、図3(c)に示すように、中段搬送路10の両方の側板14bがともに上方に延出されて上段搬送路12の側板14aの高さに揃えられており、上段搬送路から落下して2枚重ねとなった板状部材w,wの幅方向への滑落が防止されている。
【0024】
また、図3(d)に示すように中段搬送路10の後端部10bから係止片10eが延長形成されている箇所では、当該係止片10eに一体に側板14bが形成されており、係止片のない他側部では側板14は下段搬送路8に一体形成されている側板14cが上方に延出形成されてその左右の高さが揃えられている。また、中段搬送路10の係止片10eの終端部を過ぎた後方の箇所では、図3(e)に示すように、下段搬送路8の両方の側板14cがともに上方に延出されて上段搬送路12の側板14aの高さに揃えられており、上段搬送路12と中段搬送路10から落下して3枚重ねとなった板状部材w,w,wの幅方向への滑落が防止されている。
【0025】
従って、以上のような板状部材wの積層搬送装置2では、周回する押送手段のプッシャー18は先ず下段搬送路8の上流端からその溝部8c内に入り込んで、供給コンベア20から下段搬送路8上に移載された板状物品wに当接して下流へと移送していき、同様にして、供給コンベア22から中段搬送路10上に移載された板状物品wと、供給コンベア24から上段搬送路12上に移載された板状物品wとに順次に当接して、それら3枚の板状物品wを3段重ねになった各々の搬送路8,10,12上を滑動させて同時に押送していく(図2及び図3(a)参照)。
【0026】
そして、プッシャー18が上段搬送路12の後端部12bまで移動しくると、先ずその上段搬送路12上の板状物品wが中段搬送路10上の板状物品wの上に落下する。この時、上段搬送路12の後端部12bには、その搬送路の幅方向の一側に係止片12eが下流に向かって所定長に亘って設けられているので、上段搬送路12上の板状物品Wはその一側部が当該係止片12eに係止されて落下せずに、この種の係止片が設けられていない他側部側が先行して落下し、搬送路の幅方向に傾斜した状態で係止片12eの終端部まで移送される(図3(b)参照)。爾後、板状部材wが当該係止片12eの終端部を過ぎた時点で、板状部材wの一側部が係止片12eから脱落して落下し、直下にある中段搬送路10の板状部材wの上に重なって2枚が積層された状態で下流へと搬送されていくことになる(図3(c)参照)。
【0027】
そして、2枚重ねになった板状物品wが中段搬送路10の後端部まで移送されてくると、上記の上段搬送路12の場合と同様にして、中断搬送路10上にある2枚重ねの板状物品w,wがその直下の下段搬送路8上にある板状物品wの上に、一旦斜めの状態にされてから落下して、下段搬送路8上の板状物品wの上に重なって3枚が積層された状態で下流の包装装置等へと搬送されていくことになる(図3(d),(e)参照)。
【0028】
ここで、板状部材wの落下に際しては、幅方向の一側部が先行して落下して斜め状態になった後に、他側部が落下して直下の板状物品w上に段階的に積み重ねられるので、板状物品wは前方に投げ出されるように落下されることがなく、もって弾んだり滑ったりして積層状態の位置ズレや滑落を生じてしまうことが可及的に防止される。また、落下時の幅方向への位置ズレは側壁で抑止されるので、位置ズレの少ない綺麗な状態に積層することができる。
【0029】
なお、以上の実施形態例では、搬送路群6を上段・中断・下段の3つの搬送路8,10,12で構成した例を示しているが、当該搬送路群6は2つ以上であれば良いことは勿論のことである。また、板状部材wの落下時の幅方向へのズレを抑止する側壁14は、少なくとも係止片10e,12eの配設部位の全長に亘って形成すれば良い。
【符号の説明】
【0030】
2 積層搬送装置
4 押送コンベア
6 搬送路群
8 下段搬送路
8c 溝部
10 中段搬送路
10b 後端部
10c 溝部
10e 係止片
12 上段搬送路
12b 後端部
12c 溝部
12e 係止片
14a,14b,14c 側壁
16 押送手段
18 プッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に複数段に並設した搬送路の各後端部を、上段側のものほど上流側に位置させ、該各搬送路上に載置された板状物品を押送手段で同時に押送していくことにより、各搬送路上に載置された板状物品を順次に上段側から下段側へと落として重ね合わせつつ下流に向けて積層搬送していく積層搬送方法であって、
上段側から下段側へと該板状物品を落下させる際には、上段側の該板状物品における搬送方向に沿った一側部を所定長に亘って係止して他側部側から落下させ、爾後、該一側部を落下させて下段の板状物品上に重ね合わせ、
かつ、該落下時には板状部材の幅方向へのズレを搬送路の側縁に設けた側壁で抑制する、
ことを特徴とする積層搬送方法。
【請求項2】
上下に複数段に並設された搬送路の各後端部が、上段側のものほど上流側に位置されていて、該各搬送路上に載置された板状物品を押送手段で同時に押送していくことにより、上段側から下段側へと順次に該板状物品を落として重ね合わせつつ下流に向けて積層搬送していく積層搬送装置であって、
最下段を除く各搬送路の後端部には、その幅方向の一方側に、下段に落下される該板状物品の一側部を係止する係止片が、下流に向かって所定長に亘って設けられており、
かつ、少なくとも該係止片の配設部位には、落下する板状部材の幅方向へのズレを抑制する側壁が搬送路の側縁に沿って起立形成されている、
ことを特徴とする積層搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−136815(P2011−136815A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298579(P2009−298579)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000206093)大森機械工業株式会社 (138)
【Fターム(参考)】