板金タービンハウジング
【課題】タービンホイールがバーストした際の破片の飛散防止を行うプロテクタを必要最小限の箇所に設けて、破片の飛散防止を効果的に得るとともに、小型、軽量化することができる板金タービンハウジングを提供する。
【解決手段】エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャのスクロール部3が板金製で形成されるタービンハウジング1であって、前記スクロール部3の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタ30を配設し、該プロテクタ30を前記スクロール部3に固着したことを特徴とする。
【解決手段】エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャのスクロール部3が板金製で形成されるタービンハウジング1であって、前記スクロール部3の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタ30を配設し、該プロテクタ30を前記スクロール部3に固着したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに対する過給圧を発生させるターボチャージャに採用される板金製のタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は広い運転範囲において高圧力、高効率化であることが求められている。
図11は、排気タービンの要部拡大断面図を示している。
排気タービン02を内含した鋳造タービンハウジング01の構造が使用されている。
鋳造製のタービンハウジング01は各部の肉厚が厚く、熱容量が大きく、排気浄化触媒の上流側に配設すると、触媒暖気の妨げとなる。
近年の排気ガス規制強化の観点から、タービンハウジングを板金で薄肉軽量化して、熱容量を低下させることは、触媒の暖気を促進して、触媒を活性化させて触媒浄化性能を向上する上で重要である。
【0003】
タービンハウジングを板金化した技術として、特開2002−54447号公報(特許文献1)が開示されている。
特許文献1によると、図12に示すように、タービンハウジング011は、スクロール部019、カバー部013、フランジ部016,017、環状部材014とを備え、流通する排気ガスがタービンブレード027に当たることによってタービン025が回転させる。
スクロール部019から噴出して、タービン025を回転させた排気ガスはZ方向に排出される。
【0004】
そして、スクロール部019の他端部側には、環状部材014が外嵌され、スクロール部019に外嵌して、フランジ部016にスクロール部019を固定している。スクロール部内を流通する排気ガスの熱に起因してスクロール部019が熱膨張する場合でも、環状部材014により、タービンブレード027と近接する部分のスクロール部019が外方に向かって熱膨張するのをスクロール部019の外側から抑制して、タービンブレード027とスクロール部019との間のクリアランスが所定間隔で保持される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−54447号公報(特許文献1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、鋳造タービンハウジング01の場合には、タービンハウジング01が単一の鋳造品なので、鋳造の湯口などの無駄な材料使用量が多くなり、精度が確保し難い。
さらに、タービンハウジング01は単一の鋳造品なので、熱容量が大きく、触媒の暖気を促進して、触媒を活性化させて触媒浄化性能向上を図るのに妨げとなる不具合を有している。
一方、特許文献1に開示の技術において、板金製のタービンハウジングを採用することにより、軽量化と、熱容量の減少が図られている。
また、タービン025が何らかの過回転を発生してバーストした場合に、破片の飛散をスクロール部019、カバー部013にて防げる構造になっている。
【0007】
排ガス規制強化に対応するためには、タービンハウジングを熱容量の小さい板金化にする必要があるとともに、バーストした場合の破片の飛散防止の観点からカバー部を設ける必要があるが、特許文献1においては、スクロール部019の外側にはカバー部013が配設され一端側がフランジ部016に、他端側がフランジ部017に夫々固着されている。
スクロール部019と、該スクロール部019の外側にカバー部013を配設して、カバー部013がスクロール部019の全体を覆って二重構造となっており、カバー部013によって重量が重く、また製造工数の増大や部品コストの増大を招く不具合を有している。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、タービンホイールがバーストした際の破片の飛散防止を行うプロテクタを必要最小限の箇所に設けて、破片の飛散防止を効果的に得るとともに、小型、軽量化することができる板金タービンハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するため、エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャの渦状の排気ガス通路を構成するスクロール部が板金製のスクロール部材によって形成される板金タービンハウジングであって、前記スクロール部の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタを配設し、該プロテクタを前記スクロール部に固着したことを特徴とする。
【0010】
このような構成により、スクロール部の外周部にスクロール方向に沿ってプロテクタを配設することで、タービンホイールがバーストした場合に、インペラ(動翼)が板金製スクロール部を突破ることを防止する。
また、プロテクタをスクロール部に固着する構造としたので、プロテクタがコンパクトになり、重量及び、コストの上昇を抑制できる。
このように、プロテクタを、スクロール部の外周部にスクロール方向に沿って配設し且つスクロール部に固着するため、バースト時のインペラの破片の飛散方向である半径方向部分だけを補強することで補強範囲を必要最小限として効果的な保護かでき、且つコンパクト化を達成できる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタは板状部材からなり前記スクロール部の外周面の面上に重ねて固着されるとよい。
【0012】
このように板金タービンハウジング外周部の板状のプロテクタを重ねて固着させるだけなので、重量増加を最小限に抑制することができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、前記スクロール部はラジアル方向頂部でタービンロータのスラスト方向に分割され、該分割された端部同士をスクロール方向の概ね全域にわたり重合させて、該重合の部分で前記プロテクタが形成されるとよい。
【0014】
このように分割された端部同士をスクロール方向の概ね全域にわたり重合させて、該重合部分で前記プロテクタが形成されるので、別途プロテクタの部材を設ける必要がないため、部品点数削減と、製造工数削減によるコスト低減効果を有する。
また、スクロール部のラジアル方向頂部の剛性が上がるので、当該部からの騒音発生が抑制され、騒音低減効果も得られる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタは前記スクロール部の外周部に沿うと共に、前記ラジアル方向断面が略C字形状を成し、該C字形状の開口端縁が前記スクロール部の側壁に固着されるとよい。
【0016】
このようにプロテクタのラジアル方向断面が、略C字形状をしているので、プロテクタの剛性が高くなると共に、プロテクタにラジアル方向の衝撃力が作用した際に、プロテクタとスクロール部との結合部にはラジアル方向の作用力となり、固着部の固着強度が大きく、製品強度が向上する。
【0017】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタの前記C字形状の開口と対向した片に、前記スクロール部のスクロール方向に沿って凹凸条溝部を形成するとよい。
【0018】
このようにプロテクタのC字形状の開口と対向した片に、スクロール部のスクロール方向に沿って凹凸条溝部を形成したので、プロテクタの剛性が向上し、タービンホイールがバーストした場合に、インペラ(動翼)の破片の飛散防止効果を一層高めることができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタは、前記スクロール部の前記ラジアル方向頂部と隙間部を有して配設され、前記スクロール部の側壁に固着されるとよい。
【0020】
このようにスクロール部のラジアル方向頂部とプロテクタとの間に隙間部を設けることにより断熱層を形成し、排気ガスの放熱を抑制し、排気ガス浄化用触媒の暖気を促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果も有する。
【0021】
また、本発明において好ましくは、前記隙間部に耐熱繊維素材を充填するとよい。
【0022】
このようにスクロール部のラジアル方向頂部とプロテクタとの間に隙間部を設け、当該部に耐熱繊維素材を充填することにより、スクロール部からの放熱を防止すると共に保温性を向上させて、排気ガス浄化用触媒の暖気をさらに促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果もさらに向上する。
さらに、耐熱繊維素材による騒音吸収により、外部への騒音防止が期待できる。
【0023】
また、本発明において好ましくは、前記スクロール部の外周部にスクロール方向に沿って複数の固着部材を配設し、前記プロテクタを前記固着部材を介してスクロール部の外周部にスクロール方向に沿って固定するとよい。
【0024】
このようにスクロール部の外周部にスクロール方向に沿って複数の固着部材を配設し、プロテクタを複数の固着部材を介して固定するようにしたので、プロテクタを板金タービンハウジングに固着させる作業が容易化され、製造コスト上昇が最小限に抑制できる。
【0025】
また、本発明において好ましくは、前記板金タービンハウジングの外周部は、さらに金属製のメッシュ部材で耐熱性のある布状の複合素材を抱合した断熱部材にて被覆されるとよい。
【0026】
このように板金タービンハウジングの外周部を、さらに金属製のメッシュ部材で耐熱性のある布状の複合素材を抱合した断熱部材にて被覆したので、板金タービンハウジングからの放熱を防止すると共に保温性を向上させて、排気ガス浄化用触媒の暖気をさらに促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果もさらに向上する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャの渦状の排気ガス通路を構成するスクロール部が板金製のスクロール部材によって形成される板金タービンハウジングであって、前記スクロール部の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタを配設し、該プロテクタを前記スクロール部に固着したので、タービンホイールがバーストした際の破片の飛散防止を行うプロテクタを必要最小限の箇所に設けて、破片の飛散防止を効果的に得るとともに、小型、軽量化することができる。
さらに、プロテクタによるスクロール部からの放熱の抑制、また、スクロール部のラジアル方向頂部とプロテクタとの間に設けられる隙間部によって形成される断熱層による放熱の抑制、または断熱部材の被覆による放熱の抑制によって、排気浄化触媒の暖気促進効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタービンハウジングの概要構成の斜視図を示す。
【図2】図1のA−A線要部断面図を示す。
【図3】本発明の第2実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図4】本発明の第3実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図5】本発明の第4実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図6】本発明の第5実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図7】本発明の第6実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図8】(A)は、本発明の第7実施形態に係るスクロール部の頂部とプロテクタとの隙間の一方が開放されたラジアル方向断面形状図を示し、(B)は、本発明の第8実施形態に係るスクロール部の頂部とプロテクタとの空間部に耐熱繊維部材を介装したラジアル方向断面図を示す。
【図9】本発明の第9実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図10】本発明の第10実施形態に係る(A)は、スクロール部を断熱部材で覆った場合の外観略図を示し、(B)は、図10(A)のスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図11】従来技術の鋳造製タービンハウジングの断面概略図を示す。
【図12】従来技術の板金製タービンハウジングの断面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。
但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るタービンハウジングについて説明する。
図1及び図2に示すように、板金製のタービンハウジング1は大きく分けて、スクロール部3と、センターコア部9と、出口管部23とからなり、さらに、スクロール部3は突合接合される第1スクロール部5と、第2スクロール部7とから成っている。
そして、これらの部品が溶接接合されることでタービンハウジング1が形成される。
【0031】
渦巻状の排気ガス通路を形成するスクロール部3は第1スクロール部5と、第2スクロール部7の2個の部材を突合わせて、その全周において突合わせ部分を突合わせ溶け込み溶接接合して、排気ガス通路を形成している。
また、第1スクロール部5と、第2スクロール部7は薄板状の板金部材で、材質は一例として、オーステナイト系ステンレス鋼板等の耐熱鋼板を成形加工して構成されるとよい。
【0032】
突合わせ溶け込み部aはスクロール部3のタービンホイール24のラジアル方向(以後、タービンホイール24のラジアル方向は、説明を簡略化するため、「ラジアル方向」と略称する。)外周部の頂部51で、タービンホイール24のスラスト方向(以後、タービンホイール24のスラスト方向は、説明を簡略化するため、「スラスト方向」と略称する。)においてスクロール部3の中間位置としている。
従って、それぞれのスクロール部3は排気ガス通路をスクロール方向に略半割にした断面形状を有している。
スクロール部3の外周部はエンジンからの排気ガス流の脈動により、スクロール部3の外周部壁面に対し、該壁面の垂直方向に排気ガスの圧力が作用するため、溶接部の構造を曲げ力に対して有利な突合わせ溶け込み溶接aとすることで、溶接部の耐久信頼性を向上させている。
【0033】
そして、図2に示すように、スクロール部3の旋回中心部には、センターコア部9が設けられ、該センターコア部9は全体に略円筒形状をして、他端側にタービンホイール24の回転軸25を支持するベアリングが配設されるベアリング嵌合部91と、一端側に形成されたタービンホイール24の外周を囲繞して排気ガス排出口を形成するハウジング部93と、ベアリング嵌合部91とハウジング部93との間に円周方向に間隔を有して架橋された複数の支柱(図示省略)とで構成され、一体的に形成されている。
排気ガスはスクロール部3からハウジング部93の複数の支柱の間からタービンホイール24側に噴出して、該タービンホイール24を回転駆動して、ハウジング部93から矢印Y方向に排出される。
【0034】
図1に示すように、スクロール部3の外周部の頂部51には外周部に沿ってプロテクタ30が突合わせ溶け込み溶接aを覆うようにして重なって固着されている。
プロテクタ30は、板状部材からなり、スクロール部3の外周部の周方向長さが、スクロール部3の舌部(図示省略)相当部位からスクロール巻き終り近傍で、幅方向の大きさはスクロール部3の頂部51のスラスト方向部分の幅となっている。
固着方法は、プロテクタ30の外周端縁を隅肉溶接(溶接範囲は全周又は部分溶接)、又は、プロテクタ30に穿設した複数の孔部の内周端縁を隅肉溶接する、所謂栓溶接がよい。
栓溶接の場合は、突合わせ溶け込み溶接aを跨ぐように配置するとよい。
【0035】
このような構造にすることにより、タービンホイール24の過回転により、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散しても、プロテクタ30によって、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、プロテクタ30と頂部51との溶接部が突合わせ溶け込み溶接aを跨ぐように配設したので、飛散したインペラが頂部51に衝突した際は、プロテクタ30が突合わせ溶け込み溶接aに作用する引張作用力を分担するので、当該部の強度、剛性が向上し、製品に対する信頼性が向上する。
また、頂部51に固着されたプロテクタ30によって、スクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
【0036】
更に、プロテクタ30の幅は、少なくともタービンホイール24のスラスト方向部分の長さを有すればよく、このようにプロテクタ30の幅を設定することで、インペラ(動翼)の飛散に対して必要最小限のプロテクタ30とすることができ、構造が簡単な帯状の部材のため、重量及びコスト低減が一層効果的に得られる。
【0037】
(第2実施形態)
図3に基づいて第2実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図3は、第2実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部には、両端縁がスクロール部3の側面に沿って当接する側端部312,313を有する断面略C字形状のプロテクタ31が固着している。
プロテクタ31は頂部51に当接して重なるように設けられて、略C字形状の開口と対向した片311と、該開口と対向した片311のスラスト方向両端縁にスクロール部3の側面に沿って当接する前記側端部312,313とを有して構成されている。
プロテクタ31の両端部312,313はスクロール部3の両端面のラジアル方向中間部で固着されている。
【0038】
このような構造にすることにより、タービンホイール24の過回転により、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散しても、プロテクタ31によって、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、プロテクタ31の側端部312,313がスクロール部3の側面のラジアル方向中間部に固着した構造なので、飛散したインペラが頂部51に衝突した際は、プロテクタ31が突合わせ溶け込み溶接aに作用する引張作用力を分担し、さらに、プロテクタ31の両側端部312,313のスクロール部3との溶接部はスクロール部3の側面に沿った方向(溶接部に剥がれ方向の作用力が働かない)の作用力なので、溶接強度が十分に確保でき、溶接部の強度、剛性が向上し、製品に対する信頼性が向上する。
【0039】
また、プロテクタ31は、スクロール部3を覆うように設けられるため、プロテクタ31はスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
【0040】
(第3実施形態)
図4に基づいて第3実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図4は、第3実施形態におけるスクロール部4のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部4は第1スクロール部41と、第2スクロール部42とで構成されている。
第1スクロール部41はスクロール部4の頂部416に位置する部位の第1頂片411と、該第1頂片411の一端側に接続し、タービンホイール24側に曲折し、延在した第1側片412と、該第1側片412に接続し、第1頂片411の他端側に傾斜した傾斜片413と、該傾斜片413に接続し、タービンホイール24側に曲折し、延在した第2側片414とで構成されている。
第2スクロール部42はスクロール部4の頂部416に位置する部位の第2頂片421と、該第2頂片421の一端側に接続し、タービンホイール24側に曲折し、延在した第3側片422とで構成されている。
【0041】
第1頂片411の一端側には、第2頂片421の板厚と略同じ段差部415が形成され、第2頂片421が排気ガス通路側に位置するようにして、第1頂片411と第2頂片421が重合した状態で固着され、段差部415の段差が解消される構造に組付けられている。
そして、段差部415と第2頂片421の他端側端縁との当接部はスクロール部4の周方向全周にわたって連続溶接を実施している。これは、排気ガス通路内の排気ガスが漏れないようにするためである。
一方、第1頂片411の他端側と第2頂片421の一端側は断続溶接が行われる。
このように、頂部に位置する第1頂片411と第2頂片421を重合することにより、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散した場合のプロテクタとしての作用を有するようにしてある。
尚、本実施形態では、溶接は段差部415側を連続溶接とし、第1頂片411の他端側と第2頂片421の一端側は断続溶接としたが、段差部415側を断続溶接とし、第1頂片411の他端側と第2頂片421の一端側を連続溶接としてもよい。
さらに、第2頂片421の一端側に段差部を設け、第1頂片411を排気通路側に位置した重合構造にしてもよい。
【0042】
このような構造にすることにより、スクロール部4のラジアル方向頂部の分割された端部をスラスト方向の概ね全域にわたり重合させて、当該部をプロテクタとすることで、部品点数削減と、製造工数削減によるコスト低減効果を有する。
また、スクロール部4のラジアル方向頂部の剛性が上がるので、当該部からの騒音発生が抑制され、騒音低減が可能となる。
また、第1頂片411と第2頂片421とを重合させたので、スクロール部4の頂部からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
【0043】
(第4実施形態)
図5に基づいて第4実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図5は、第4実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部には、頂片331と頂部51外周面との間の第1空間部335、第1スクロール部5の側面と第1側片332との間の第2空間部336夫々を有して、端縁がスクロール部3の側面に当接した側端部332,333,334を有した断面略C字形状のプロテクタ33が固着している。
【0044】
また、第1スクロール部5の側面と第1側片332との間に設ける第2空間部336を、第2スクロール部7側に設けてもよい。
更に、第1スクロール部5及び、第2スクロール部7の両側に空間部を設けてもよい。 また、第1空間部だけを配設しても、同様の効果を得ることができる。
【0045】
このような構造にすることにより、板金タービンハウジングの頂部とプロテクタとの間に隙間部を設けることにより断熱層を形成し、排気ガスの放熱を抑制し、排気ガス浄化用触媒の暖気を促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果も有する。
【0046】
(第5実施形態)
図6に基づいて第5実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図6は、第5実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部51には、端縁がスクロール部3の側面に当接した側端部342,343が断面略C字形状のプロテクタ34が固着している。
プロテクタ34は頂部51との間に隙間部空間部(隙間部)345が形成されるように配置され、略C字形状の開口と対向した片(頂片)341と、該頂片341のスラスト方向両端縁に、該両端縁に連続してタービンホイール24側に折り曲げられた両端部342,343で構成され、両端部342,343は第1スクロール部5及び第2スクロール部7の側面のラジアル方向中間位置において、隅肉溶接にて固着されている。
そして空間部345の内部には、耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填してある。耐熱繊維6の一例としては、耐熱性、引張強度の高い結晶性のポリマーである、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の繊維が用いられるとよい。
【0047】
このような構造にすることにより、タービンホイール24の過回転により、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散しても、プロテクタ34によって、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、空間部345には、耐熱繊維素材を充填したので、当該部における保温性が向上し、プロテクタ30がスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
さらに、耐熱繊維6による騒音吸収が行われ商品性の向上が図れる。
【0048】
(第6実施形態)
図7に基づいて第6実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図7は、第6実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部51には、ラジアル方向断面が略C字形状のプロテクタ35が固着されている。
プロテクタ35は頂部51との間に空間部(隙間部)355が形成されるように配置され、略C字形状の開口と対向した片(頂片)351と、該頂片351のスラスト方向両端縁に、該両端縁に連続してタービンホイール24側に折り曲げられた両端部352,353で構成され、両端部352,353は第1スクロール部5及び第2スクロール部7の側面のラジアル方向中間位置において、隅肉溶接にて固着されている。
頂片351には、板金タービンハウジング1のスクロール部3の外周にスクロール方向に沿った凹凸条溝部358が複数条形成されている。
尚、本実施形態では、スラスト方向の断面がU字形状に形成したが、三角形状、矩形形状にしても同様の効果を得ることができる。
また、空間部355には、耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填してもよい。耐熱繊維6の一例としては、耐熱性、引張強度の高い結晶性のポリマーである、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の繊維が用いられるとよい。
【0049】
このような構造にすることにより、頂片351のラジアル方向の剛性が向上するので、プロテクタ35の板厚を減少でき、重量軽減と共に、コスト低減が可能となる。
【0050】
(第7実施形態)
図8に基づいて第7実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図8(A)は、第7実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
図8(A)は、スクロール部の頂部とプロテクタとの隙間の一方が開放されたラジアル方向断面形状図を示す。
図8(A)はスクロール部3の頂部51に隙間を有して頂片361と、第2スクロール部7のラジアル方向中間部に端縁を固着した略L字形のプロテクタ36が取付けられている。プロテクタ36は頂部51と頂片361との隙間を形成している空間部365の第1スクロール部5側は開放された構造となっている。
また、本発明において好ましくは、前記空間部365には第5実施形態と同様の耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填すると良い。
【0051】
本実施形態では、空間部の片側が開放されたプロテクタ36となっているが、頂部51からの輻射熱を頂片361によって遮るので、頂部51からの放熱が軽減され、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
また、空間部365には、耐熱繊維素材を充填したので、当該部における保温性が向上し、プロテクタ36がスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
さらに、耐熱繊維6による騒音吸収が行われ商品性の向上が図れる。
【0052】
(第8実施形態)
図8(B)に基づいて第8実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図8(B)は、第8実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
図8(B)はスクロール部3の頂部51に隙間を有して頂片371と、第1スクロール部5のラジアル方向中間部に端縁を固着した略L字形のプロテクタ37が取付けられている。プロテクタ37は頂部51と頂片371との隙間を形成している空間部375の第2スクロール部7側が開放された構造となっている。
空間部375には第5実施形態と同様の耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填してある。プロテクタ37の頂片371の頂部51側には爪状の係止突起374が固着され、プロテクタ37を第1スクロール部5に固着する際に、係止突起374と耐熱繊維6とを係止させて、溶接固着するようになっている。
【0053】
本実施形態によると、空間部375の片側が開放されたプロテクタ37となっているが、空間部375に耐熱繊維6を充填することにより、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、空間部375には、耐熱繊維素材を充填したので、当該部における保温性が向上し、プロテクタ30がスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
さらに、耐熱繊維6による騒音吸収が行われ商品性の向上が図れる。
【0054】
(第9実施形態)
図9に基づいて第9実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図9は、第9実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
スクロール部3の頂部51には、スクロール部3の外周部に沿って、固着部材である内部に雌ねじを設けたボス部382が複数配設(溶接固着)されている。
ボス部382の位置に対応した孔部を有するプロテクタ38が締結部材であるボルト383によって固定されている。
また、プロテクタ38は溶接によって固着部材(この場合は雌ねじ不要)に固定されても良い。
この場合、固着部材が配設された位置に対応した孔部を有するプロテクタ38を、該孔部の内周縁と固着部材の頂面とを隅肉溶接(栓溶接)によって、固着するようにしても良い。
またもプロテクタ38の幅は、第1実施形態で説明したものと同様に、プロテクタ38の幅は、少なくともタービンホイール24のスラスト方向部分の長さを有すればよい。
【0055】
このような構造にすることで、板金タービンハウジングの外周部に複数の締結部材を固着し、板金タービンハウジングのタービンロータスラスト方向の概ね全域に相当する部分にプロテクタを覆うようにしたプロテクタを複数の締結部材で締結するようにしたので、プロテクタを板金タービンハウジングに固着させる作業が容易化され、コスト上昇が最小限に抑制できる。
また、図9に破線にて示したように、空間部384に耐熱繊維素材61を挿入してもよい。耐熱繊維素材61は、ボス部382の位置に対応した貫通孔611を設け、該貫通孔611をボス部382に外嵌して、プロテクタ38にて頂部51に押圧すると、さらに、騒音低減、排気ガスの保温効果を増すことができる。
【0056】
(第10実施形態)
本発明の第10実施形態に係る図10(A)は、スクロール部を断熱部材で覆った場合の外観略図を示し、図10(B)は、図10(A)のスクロール部のラジアル方向断面形状図に基づいて説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図10(A)のスクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
図10(A)は、スクロール部3の舌部(図示省略)から巻き終りまでを、金属製線材をメッシュ状にした断熱部材8で被覆したものである。
断熱部材8は、図10(B)に示すように、金属製線材をメッシュ状にしたメッシュ部材81で、耐熱性のある布状の複合素材82を抱合したものである。複合素材82としてはガラス繊維等がある。
断熱部材8は、該断熱部材8の外周縁部に紐状部材83が配設され、紐状部材83が断熱部材8に対して摺動自在にできるようになっており、図10(A)に示すように、スクロール部を断熱部材で覆った後に、紐状部材83によってスクロール部3に緊締できるようになっている。
紐状部材83は耐熱性があれば、細い金属製ワイヤを編んだ物でもよいし、ガラス繊維を紐状にしたものでもよい。
なお紐状部材83は、摺動自在のものでなくても該断熱部材8の両端にそれぞれ締結された状態でもよい。
図10(B)は第1実施形態のスクロール部3の頂部にプロテクタ30が固着された状態に、断熱部材8を被覆させた状態である。
【0057】
板金タービンハウジングの外周部を、金属製部材をメッシュ状に形成し、内部に複合素材を抱合した断熱部材にて被覆したので、板金タービンハウジングからの放熱を防止すると共に保温性を向上させて、排気ガス浄化用触媒の暖気をさらに促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果もさらに向上する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
エンジンの排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに対する過給圧を発生させるターボチャージャに採用される板金製のタービンハウジングに用いられるとよい。
【符号の説明】
【0059】
1 タービンハウジング
3 スクロール部
5 第1スクロール部
6 耐熱繊維
7 第2スクロール部
8 断熱部材
24 タービンホイール
30,31、33、34,35,36,37,38 プロテクタ
82 複合素材
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに対する過給圧を発生させるターボチャージャに採用される板金製のタービンハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は広い運転範囲において高圧力、高効率化であることが求められている。
図11は、排気タービンの要部拡大断面図を示している。
排気タービン02を内含した鋳造タービンハウジング01の構造が使用されている。
鋳造製のタービンハウジング01は各部の肉厚が厚く、熱容量が大きく、排気浄化触媒の上流側に配設すると、触媒暖気の妨げとなる。
近年の排気ガス規制強化の観点から、タービンハウジングを板金で薄肉軽量化して、熱容量を低下させることは、触媒の暖気を促進して、触媒を活性化させて触媒浄化性能を向上する上で重要である。
【0003】
タービンハウジングを板金化した技術として、特開2002−54447号公報(特許文献1)が開示されている。
特許文献1によると、図12に示すように、タービンハウジング011は、スクロール部019、カバー部013、フランジ部016,017、環状部材014とを備え、流通する排気ガスがタービンブレード027に当たることによってタービン025が回転させる。
スクロール部019から噴出して、タービン025を回転させた排気ガスはZ方向に排出される。
【0004】
そして、スクロール部019の他端部側には、環状部材014が外嵌され、スクロール部019に外嵌して、フランジ部016にスクロール部019を固定している。スクロール部内を流通する排気ガスの熱に起因してスクロール部019が熱膨張する場合でも、環状部材014により、タービンブレード027と近接する部分のスクロール部019が外方に向かって熱膨張するのをスクロール部019の外側から抑制して、タービンブレード027とスクロール部019との間のクリアランスが所定間隔で保持される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−54447号公報(特許文献1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、鋳造タービンハウジング01の場合には、タービンハウジング01が単一の鋳造品なので、鋳造の湯口などの無駄な材料使用量が多くなり、精度が確保し難い。
さらに、タービンハウジング01は単一の鋳造品なので、熱容量が大きく、触媒の暖気を促進して、触媒を活性化させて触媒浄化性能向上を図るのに妨げとなる不具合を有している。
一方、特許文献1に開示の技術において、板金製のタービンハウジングを採用することにより、軽量化と、熱容量の減少が図られている。
また、タービン025が何らかの過回転を発生してバーストした場合に、破片の飛散をスクロール部019、カバー部013にて防げる構造になっている。
【0007】
排ガス規制強化に対応するためには、タービンハウジングを熱容量の小さい板金化にする必要があるとともに、バーストした場合の破片の飛散防止の観点からカバー部を設ける必要があるが、特許文献1においては、スクロール部019の外側にはカバー部013が配設され一端側がフランジ部016に、他端側がフランジ部017に夫々固着されている。
スクロール部019と、該スクロール部019の外側にカバー部013を配設して、カバー部013がスクロール部019の全体を覆って二重構造となっており、カバー部013によって重量が重く、また製造工数の増大や部品コストの増大を招く不具合を有している。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、タービンホイールがバーストした際の破片の飛散防止を行うプロテクタを必要最小限の箇所に設けて、破片の飛散防止を効果的に得るとともに、小型、軽量化することができる板金タービンハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するため、エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャの渦状の排気ガス通路を構成するスクロール部が板金製のスクロール部材によって形成される板金タービンハウジングであって、前記スクロール部の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタを配設し、該プロテクタを前記スクロール部に固着したことを特徴とする。
【0010】
このような構成により、スクロール部の外周部にスクロール方向に沿ってプロテクタを配設することで、タービンホイールがバーストした場合に、インペラ(動翼)が板金製スクロール部を突破ることを防止する。
また、プロテクタをスクロール部に固着する構造としたので、プロテクタがコンパクトになり、重量及び、コストの上昇を抑制できる。
このように、プロテクタを、スクロール部の外周部にスクロール方向に沿って配設し且つスクロール部に固着するため、バースト時のインペラの破片の飛散方向である半径方向部分だけを補強することで補強範囲を必要最小限として効果的な保護かでき、且つコンパクト化を達成できる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタは板状部材からなり前記スクロール部の外周面の面上に重ねて固着されるとよい。
【0012】
このように板金タービンハウジング外周部の板状のプロテクタを重ねて固着させるだけなので、重量増加を最小限に抑制することができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、前記スクロール部はラジアル方向頂部でタービンロータのスラスト方向に分割され、該分割された端部同士をスクロール方向の概ね全域にわたり重合させて、該重合の部分で前記プロテクタが形成されるとよい。
【0014】
このように分割された端部同士をスクロール方向の概ね全域にわたり重合させて、該重合部分で前記プロテクタが形成されるので、別途プロテクタの部材を設ける必要がないため、部品点数削減と、製造工数削減によるコスト低減効果を有する。
また、スクロール部のラジアル方向頂部の剛性が上がるので、当該部からの騒音発生が抑制され、騒音低減効果も得られる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタは前記スクロール部の外周部に沿うと共に、前記ラジアル方向断面が略C字形状を成し、該C字形状の開口端縁が前記スクロール部の側壁に固着されるとよい。
【0016】
このようにプロテクタのラジアル方向断面が、略C字形状をしているので、プロテクタの剛性が高くなると共に、プロテクタにラジアル方向の衝撃力が作用した際に、プロテクタとスクロール部との結合部にはラジアル方向の作用力となり、固着部の固着強度が大きく、製品強度が向上する。
【0017】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタの前記C字形状の開口と対向した片に、前記スクロール部のスクロール方向に沿って凹凸条溝部を形成するとよい。
【0018】
このようにプロテクタのC字形状の開口と対向した片に、スクロール部のスクロール方向に沿って凹凸条溝部を形成したので、プロテクタの剛性が向上し、タービンホイールがバーストした場合に、インペラ(動翼)の破片の飛散防止効果を一層高めることができる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、前記プロテクタは、前記スクロール部の前記ラジアル方向頂部と隙間部を有して配設され、前記スクロール部の側壁に固着されるとよい。
【0020】
このようにスクロール部のラジアル方向頂部とプロテクタとの間に隙間部を設けることにより断熱層を形成し、排気ガスの放熱を抑制し、排気ガス浄化用触媒の暖気を促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果も有する。
【0021】
また、本発明において好ましくは、前記隙間部に耐熱繊維素材を充填するとよい。
【0022】
このようにスクロール部のラジアル方向頂部とプロテクタとの間に隙間部を設け、当該部に耐熱繊維素材を充填することにより、スクロール部からの放熱を防止すると共に保温性を向上させて、排気ガス浄化用触媒の暖気をさらに促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果もさらに向上する。
さらに、耐熱繊維素材による騒音吸収により、外部への騒音防止が期待できる。
【0023】
また、本発明において好ましくは、前記スクロール部の外周部にスクロール方向に沿って複数の固着部材を配設し、前記プロテクタを前記固着部材を介してスクロール部の外周部にスクロール方向に沿って固定するとよい。
【0024】
このようにスクロール部の外周部にスクロール方向に沿って複数の固着部材を配設し、プロテクタを複数の固着部材を介して固定するようにしたので、プロテクタを板金タービンハウジングに固着させる作業が容易化され、製造コスト上昇が最小限に抑制できる。
【0025】
また、本発明において好ましくは、前記板金タービンハウジングの外周部は、さらに金属製のメッシュ部材で耐熱性のある布状の複合素材を抱合した断熱部材にて被覆されるとよい。
【0026】
このように板金タービンハウジングの外周部を、さらに金属製のメッシュ部材で耐熱性のある布状の複合素材を抱合した断熱部材にて被覆したので、板金タービンハウジングからの放熱を防止すると共に保温性を向上させて、排気ガス浄化用触媒の暖気をさらに促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果もさらに向上する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャの渦状の排気ガス通路を構成するスクロール部が板金製のスクロール部材によって形成される板金タービンハウジングであって、前記スクロール部の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタを配設し、該プロテクタを前記スクロール部に固着したので、タービンホイールがバーストした際の破片の飛散防止を行うプロテクタを必要最小限の箇所に設けて、破片の飛散防止を効果的に得るとともに、小型、軽量化することができる。
さらに、プロテクタによるスクロール部からの放熱の抑制、また、スクロール部のラジアル方向頂部とプロテクタとの間に設けられる隙間部によって形成される断熱層による放熱の抑制、または断熱部材の被覆による放熱の抑制によって、排気浄化触媒の暖気促進効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るタービンハウジングの概要構成の斜視図を示す。
【図2】図1のA−A線要部断面図を示す。
【図3】本発明の第2実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図4】本発明の第3実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図5】本発明の第4実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図6】本発明の第5実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図7】本発明の第6実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図8】(A)は、本発明の第7実施形態に係るスクロール部の頂部とプロテクタとの隙間の一方が開放されたラジアル方向断面形状図を示し、(B)は、本発明の第8実施形態に係るスクロール部の頂部とプロテクタとの空間部に耐熱繊維部材を介装したラジアル方向断面図を示す。
【図9】本発明の第9実施形態に係るスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図10】本発明の第10実施形態に係る(A)は、スクロール部を断熱部材で覆った場合の外観略図を示し、(B)は、図10(A)のスクロール部のラジアル方向断面形状図を示す。
【図11】従来技術の鋳造製タービンハウジングの断面概略図を示す。
【図12】従来技術の板金製タービンハウジングの断面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。
但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るタービンハウジングについて説明する。
図1及び図2に示すように、板金製のタービンハウジング1は大きく分けて、スクロール部3と、センターコア部9と、出口管部23とからなり、さらに、スクロール部3は突合接合される第1スクロール部5と、第2スクロール部7とから成っている。
そして、これらの部品が溶接接合されることでタービンハウジング1が形成される。
【0031】
渦巻状の排気ガス通路を形成するスクロール部3は第1スクロール部5と、第2スクロール部7の2個の部材を突合わせて、その全周において突合わせ部分を突合わせ溶け込み溶接接合して、排気ガス通路を形成している。
また、第1スクロール部5と、第2スクロール部7は薄板状の板金部材で、材質は一例として、オーステナイト系ステンレス鋼板等の耐熱鋼板を成形加工して構成されるとよい。
【0032】
突合わせ溶け込み部aはスクロール部3のタービンホイール24のラジアル方向(以後、タービンホイール24のラジアル方向は、説明を簡略化するため、「ラジアル方向」と略称する。)外周部の頂部51で、タービンホイール24のスラスト方向(以後、タービンホイール24のスラスト方向は、説明を簡略化するため、「スラスト方向」と略称する。)においてスクロール部3の中間位置としている。
従って、それぞれのスクロール部3は排気ガス通路をスクロール方向に略半割にした断面形状を有している。
スクロール部3の外周部はエンジンからの排気ガス流の脈動により、スクロール部3の外周部壁面に対し、該壁面の垂直方向に排気ガスの圧力が作用するため、溶接部の構造を曲げ力に対して有利な突合わせ溶け込み溶接aとすることで、溶接部の耐久信頼性を向上させている。
【0033】
そして、図2に示すように、スクロール部3の旋回中心部には、センターコア部9が設けられ、該センターコア部9は全体に略円筒形状をして、他端側にタービンホイール24の回転軸25を支持するベアリングが配設されるベアリング嵌合部91と、一端側に形成されたタービンホイール24の外周を囲繞して排気ガス排出口を形成するハウジング部93と、ベアリング嵌合部91とハウジング部93との間に円周方向に間隔を有して架橋された複数の支柱(図示省略)とで構成され、一体的に形成されている。
排気ガスはスクロール部3からハウジング部93の複数の支柱の間からタービンホイール24側に噴出して、該タービンホイール24を回転駆動して、ハウジング部93から矢印Y方向に排出される。
【0034】
図1に示すように、スクロール部3の外周部の頂部51には外周部に沿ってプロテクタ30が突合わせ溶け込み溶接aを覆うようにして重なって固着されている。
プロテクタ30は、板状部材からなり、スクロール部3の外周部の周方向長さが、スクロール部3の舌部(図示省略)相当部位からスクロール巻き終り近傍で、幅方向の大きさはスクロール部3の頂部51のスラスト方向部分の幅となっている。
固着方法は、プロテクタ30の外周端縁を隅肉溶接(溶接範囲は全周又は部分溶接)、又は、プロテクタ30に穿設した複数の孔部の内周端縁を隅肉溶接する、所謂栓溶接がよい。
栓溶接の場合は、突合わせ溶け込み溶接aを跨ぐように配置するとよい。
【0035】
このような構造にすることにより、タービンホイール24の過回転により、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散しても、プロテクタ30によって、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、プロテクタ30と頂部51との溶接部が突合わせ溶け込み溶接aを跨ぐように配設したので、飛散したインペラが頂部51に衝突した際は、プロテクタ30が突合わせ溶け込み溶接aに作用する引張作用力を分担するので、当該部の強度、剛性が向上し、製品に対する信頼性が向上する。
また、頂部51に固着されたプロテクタ30によって、スクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
【0036】
更に、プロテクタ30の幅は、少なくともタービンホイール24のスラスト方向部分の長さを有すればよく、このようにプロテクタ30の幅を設定することで、インペラ(動翼)の飛散に対して必要最小限のプロテクタ30とすることができ、構造が簡単な帯状の部材のため、重量及びコスト低減が一層効果的に得られる。
【0037】
(第2実施形態)
図3に基づいて第2実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図3は、第2実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部には、両端縁がスクロール部3の側面に沿って当接する側端部312,313を有する断面略C字形状のプロテクタ31が固着している。
プロテクタ31は頂部51に当接して重なるように設けられて、略C字形状の開口と対向した片311と、該開口と対向した片311のスラスト方向両端縁にスクロール部3の側面に沿って当接する前記側端部312,313とを有して構成されている。
プロテクタ31の両端部312,313はスクロール部3の両端面のラジアル方向中間部で固着されている。
【0038】
このような構造にすることにより、タービンホイール24の過回転により、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散しても、プロテクタ31によって、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、プロテクタ31の側端部312,313がスクロール部3の側面のラジアル方向中間部に固着した構造なので、飛散したインペラが頂部51に衝突した際は、プロテクタ31が突合わせ溶け込み溶接aに作用する引張作用力を分担し、さらに、プロテクタ31の両側端部312,313のスクロール部3との溶接部はスクロール部3の側面に沿った方向(溶接部に剥がれ方向の作用力が働かない)の作用力なので、溶接強度が十分に確保でき、溶接部の強度、剛性が向上し、製品に対する信頼性が向上する。
【0039】
また、プロテクタ31は、スクロール部3を覆うように設けられるため、プロテクタ31はスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
【0040】
(第3実施形態)
図4に基づいて第3実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図4は、第3実施形態におけるスクロール部4のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部4は第1スクロール部41と、第2スクロール部42とで構成されている。
第1スクロール部41はスクロール部4の頂部416に位置する部位の第1頂片411と、該第1頂片411の一端側に接続し、タービンホイール24側に曲折し、延在した第1側片412と、該第1側片412に接続し、第1頂片411の他端側に傾斜した傾斜片413と、該傾斜片413に接続し、タービンホイール24側に曲折し、延在した第2側片414とで構成されている。
第2スクロール部42はスクロール部4の頂部416に位置する部位の第2頂片421と、該第2頂片421の一端側に接続し、タービンホイール24側に曲折し、延在した第3側片422とで構成されている。
【0041】
第1頂片411の一端側には、第2頂片421の板厚と略同じ段差部415が形成され、第2頂片421が排気ガス通路側に位置するようにして、第1頂片411と第2頂片421が重合した状態で固着され、段差部415の段差が解消される構造に組付けられている。
そして、段差部415と第2頂片421の他端側端縁との当接部はスクロール部4の周方向全周にわたって連続溶接を実施している。これは、排気ガス通路内の排気ガスが漏れないようにするためである。
一方、第1頂片411の他端側と第2頂片421の一端側は断続溶接が行われる。
このように、頂部に位置する第1頂片411と第2頂片421を重合することにより、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散した場合のプロテクタとしての作用を有するようにしてある。
尚、本実施形態では、溶接は段差部415側を連続溶接とし、第1頂片411の他端側と第2頂片421の一端側は断続溶接としたが、段差部415側を断続溶接とし、第1頂片411の他端側と第2頂片421の一端側を連続溶接としてもよい。
さらに、第2頂片421の一端側に段差部を設け、第1頂片411を排気通路側に位置した重合構造にしてもよい。
【0042】
このような構造にすることにより、スクロール部4のラジアル方向頂部の分割された端部をスラスト方向の概ね全域にわたり重合させて、当該部をプロテクタとすることで、部品点数削減と、製造工数削減によるコスト低減効果を有する。
また、スクロール部4のラジアル方向頂部の剛性が上がるので、当該部からの騒音発生が抑制され、騒音低減が可能となる。
また、第1頂片411と第2頂片421とを重合させたので、スクロール部4の頂部からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
【0043】
(第4実施形態)
図5に基づいて第4実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図5は、第4実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部には、頂片331と頂部51外周面との間の第1空間部335、第1スクロール部5の側面と第1側片332との間の第2空間部336夫々を有して、端縁がスクロール部3の側面に当接した側端部332,333,334を有した断面略C字形状のプロテクタ33が固着している。
【0044】
また、第1スクロール部5の側面と第1側片332との間に設ける第2空間部336を、第2スクロール部7側に設けてもよい。
更に、第1スクロール部5及び、第2スクロール部7の両側に空間部を設けてもよい。 また、第1空間部だけを配設しても、同様の効果を得ることができる。
【0045】
このような構造にすることにより、板金タービンハウジングの頂部とプロテクタとの間に隙間部を設けることにより断熱層を形成し、排気ガスの放熱を抑制し、排気ガス浄化用触媒の暖気を促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果も有する。
【0046】
(第5実施形態)
図6に基づいて第5実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図6は、第5実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部51には、端縁がスクロール部3の側面に当接した側端部342,343が断面略C字形状のプロテクタ34が固着している。
プロテクタ34は頂部51との間に隙間部空間部(隙間部)345が形成されるように配置され、略C字形状の開口と対向した片(頂片)341と、該頂片341のスラスト方向両端縁に、該両端縁に連続してタービンホイール24側に折り曲げられた両端部342,343で構成され、両端部342,343は第1スクロール部5及び第2スクロール部7の側面のラジアル方向中間位置において、隅肉溶接にて固着されている。
そして空間部345の内部には、耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填してある。耐熱繊維6の一例としては、耐熱性、引張強度の高い結晶性のポリマーである、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の繊維が用いられるとよい。
【0047】
このような構造にすることにより、タービンホイール24の過回転により、タービンホイール24がバーストして、インペラ(動翼)が飛散しても、プロテクタ34によって、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、空間部345には、耐熱繊維素材を充填したので、当該部における保温性が向上し、プロテクタ30がスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
さらに、耐熱繊維6による騒音吸収が行われ商品性の向上が図れる。
【0048】
(第6実施形態)
図7に基づいて第6実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図7は、第6実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
そして、スクロール部3の頂部51には、ラジアル方向断面が略C字形状のプロテクタ35が固着されている。
プロテクタ35は頂部51との間に空間部(隙間部)355が形成されるように配置され、略C字形状の開口と対向した片(頂片)351と、該頂片351のスラスト方向両端縁に、該両端縁に連続してタービンホイール24側に折り曲げられた両端部352,353で構成され、両端部352,353は第1スクロール部5及び第2スクロール部7の側面のラジアル方向中間位置において、隅肉溶接にて固着されている。
頂片351には、板金タービンハウジング1のスクロール部3の外周にスクロール方向に沿った凹凸条溝部358が複数条形成されている。
尚、本実施形態では、スラスト方向の断面がU字形状に形成したが、三角形状、矩形形状にしても同様の効果を得ることができる。
また、空間部355には、耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填してもよい。耐熱繊維6の一例としては、耐熱性、引張強度の高い結晶性のポリマーである、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等の繊維が用いられるとよい。
【0049】
このような構造にすることにより、頂片351のラジアル方向の剛性が向上するので、プロテクタ35の板厚を減少でき、重量軽減と共に、コスト低減が可能となる。
【0050】
(第7実施形態)
図8に基づいて第7実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図8(A)は、第7実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
図8(A)は、スクロール部の頂部とプロテクタとの隙間の一方が開放されたラジアル方向断面形状図を示す。
図8(A)はスクロール部3の頂部51に隙間を有して頂片361と、第2スクロール部7のラジアル方向中間部に端縁を固着した略L字形のプロテクタ36が取付けられている。プロテクタ36は頂部51と頂片361との隙間を形成している空間部365の第1スクロール部5側は開放された構造となっている。
また、本発明において好ましくは、前記空間部365には第5実施形態と同様の耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填すると良い。
【0051】
本実施形態では、空間部の片側が開放されたプロテクタ36となっているが、頂部51からの輻射熱を頂片361によって遮るので、頂部51からの放熱が軽減され、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
また、空間部365には、耐熱繊維素材を充填したので、当該部における保温性が向上し、プロテクタ36がスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
さらに、耐熱繊維6による騒音吸収が行われ商品性の向上が図れる。
【0052】
(第8実施形態)
図8(B)に基づいて第8実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図8(B)は、第8実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
図8(B)はスクロール部3の頂部51に隙間を有して頂片371と、第1スクロール部5のラジアル方向中間部に端縁を固着した略L字形のプロテクタ37が取付けられている。プロテクタ37は頂部51と頂片371との隙間を形成している空間部375の第2スクロール部7側が開放された構造となっている。
空間部375には第5実施形態と同様の耐熱繊維素材である耐熱繊維6を充填してある。プロテクタ37の頂片371の頂部51側には爪状の係止突起374が固着され、プロテクタ37を第1スクロール部5に固着する際に、係止突起374と耐熱繊維6とを係止させて、溶接固着するようになっている。
【0053】
本実施形態によると、空間部375の片側が開放されたプロテクタ37となっているが、空間部375に耐熱繊維6を充填することにより、タービンホイール24の破片がスクロール部3を突破ることを防止できる。
また、空間部375には、耐熱繊維素材を充填したので、当該部における保温性が向上し、プロテクタ30がスクロール部3からの放熱を防ぐ効果を有し、排気ガスの冷却を抑制して、排気ガス浄化触媒の暖気を促進させる効果を有する。
さらに、耐熱繊維6による騒音吸収が行われ商品性の向上が図れる。
【0054】
(第9実施形態)
図9に基づいて第9実施形態における、板金タービンハウジング構造について説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図9は、第9実施形態におけるスクロール部3のラジアル方向断面形状図を示し、スクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
スクロール部3の頂部51には、スクロール部3の外周部に沿って、固着部材である内部に雌ねじを設けたボス部382が複数配設(溶接固着)されている。
ボス部382の位置に対応した孔部を有するプロテクタ38が締結部材であるボルト383によって固定されている。
また、プロテクタ38は溶接によって固着部材(この場合は雌ねじ不要)に固定されても良い。
この場合、固着部材が配設された位置に対応した孔部を有するプロテクタ38を、該孔部の内周縁と固着部材の頂面とを隅肉溶接(栓溶接)によって、固着するようにしても良い。
またもプロテクタ38の幅は、第1実施形態で説明したものと同様に、プロテクタ38の幅は、少なくともタービンホイール24のスラスト方向部分の長さを有すればよい。
【0055】
このような構造にすることで、板金タービンハウジングの外周部に複数の締結部材を固着し、板金タービンハウジングのタービンロータスラスト方向の概ね全域に相当する部分にプロテクタを覆うようにしたプロテクタを複数の締結部材で締結するようにしたので、プロテクタを板金タービンハウジングに固着させる作業が容易化され、コスト上昇が最小限に抑制できる。
また、図9に破線にて示したように、空間部384に耐熱繊維素材61を挿入してもよい。耐熱繊維素材61は、ボス部382の位置に対応した貫通孔611を設け、該貫通孔611をボス部382に外嵌して、プロテクタ38にて頂部51に押圧すると、さらに、騒音低減、排気ガスの保温効果を増すことができる。
【0056】
(第10実施形態)
本発明の第10実施形態に係る図10(A)は、スクロール部を断熱部材で覆った場合の外観略図を示し、図10(B)は、図10(A)のスクロール部のラジアル方向断面形状図に基づいて説明する。
尚、第1実施形態と同じものは同一の符号を付して説明は省略する。
図10(A)のスクロール部3は、第1スクロール部5と第2スクロール部7とをスクロール部3の頂部51のスラスト方向中間部に突合わせ溶け込み溶接aを有した構造をなしている。
図10(A)は、スクロール部3の舌部(図示省略)から巻き終りまでを、金属製線材をメッシュ状にした断熱部材8で被覆したものである。
断熱部材8は、図10(B)に示すように、金属製線材をメッシュ状にしたメッシュ部材81で、耐熱性のある布状の複合素材82を抱合したものである。複合素材82としてはガラス繊維等がある。
断熱部材8は、該断熱部材8の外周縁部に紐状部材83が配設され、紐状部材83が断熱部材8に対して摺動自在にできるようになっており、図10(A)に示すように、スクロール部を断熱部材で覆った後に、紐状部材83によってスクロール部3に緊締できるようになっている。
紐状部材83は耐熱性があれば、細い金属製ワイヤを編んだ物でもよいし、ガラス繊維を紐状にしたものでもよい。
なお紐状部材83は、摺動自在のものでなくても該断熱部材8の両端にそれぞれ締結された状態でもよい。
図10(B)は第1実施形態のスクロール部3の頂部にプロテクタ30が固着された状態に、断熱部材8を被覆させた状態である。
【0057】
板金タービンハウジングの外周部を、金属製部材をメッシュ状に形成し、内部に複合素材を抱合した断熱部材にて被覆したので、板金タービンハウジングからの放熱を防止すると共に保温性を向上させて、排気ガス浄化用触媒の暖気をさらに促進させると共に、タービンホイールのバーストに対するプロテクタ効果もさらに向上する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
エンジンの排気ガスのエネルギーを利用してエンジンに対する過給圧を発生させるターボチャージャに採用される板金製のタービンハウジングに用いられるとよい。
【符号の説明】
【0059】
1 タービンハウジング
3 スクロール部
5 第1スクロール部
6 耐熱繊維
7 第2スクロール部
8 断熱部材
24 タービンホイール
30,31、33、34,35,36,37,38 プロテクタ
82 複合素材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャの渦状の排気ガス通路を構成するスクロール部が板金製のスクロール部材によって形成される板金タービンハウジングであって、
前記スクロール部の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタを配設し、該プロテクタを前記スクロール部に固着したことを特徴とする板金タービンハウジング。
【請求項2】
前記プロテクタは板状部材からなり前記スクロール部の外周面の面上に重ねて固着されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項3】
前記スクロール部はラジアル方向頂部でタービンロータのスラスト方向に分割され、該分割された端部同士をスクロール方向の概ね全域にわたり重合させて、該重合の部分で前記プロテクタが形成されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項4】
前記プロテクタは前記スクロール部の外周部に沿うと共に、前記ラジアル方向断面が略C字形状を成し、該C字形状の開口端縁が前記スクロール部の側壁に固着されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項5】
前記プロテクタの前記C字形状の開口と対向した片に、前記スクロール部のスクロール方向に沿って凹凸条溝部を形成したことを特徴とする請求項4記載の板金タービンハウジング。
【請求項6】
前記プロテクタは、前記スクロール部の前記ラジアル方向頂部と隙間部を有して配設され、前記スクロール部の側壁に固着されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項7】
前記隙間部に耐熱繊維素材を充填したことを特徴とする請求項6記載の板金タービンハウジング。
【請求項8】
前記スクロール部の外周部にスクロール方向に沿って複数の固着部材を配設し、前記プロテクタを前記固着部材を介してスクロール部の外周部にスクロール方向に沿って固定したことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項9】
前記板金タービンハウジングの外周部には、さらに金属製のメッシュ部材で耐熱性のある布状の複合素材を抱合した断熱部材にて被覆されたことを特徴とする請求項1乃至8記載のいずれかに記載の板金タービンハウジング。
【請求項1】
エンジン排気マニホールド下流側に装着され、排気ガスによってタービンロータを駆動するターボチャージャの渦状の排気ガス通路を構成するスクロール部が板金製のスクロール部材によって形成される板金タービンハウジングであって、
前記スクロール部の外周部で、前記タービンロータの回転軸のラジアル方向の外周部に、スクロール方向に沿ってプロテクタを配設し、該プロテクタを前記スクロール部に固着したことを特徴とする板金タービンハウジング。
【請求項2】
前記プロテクタは板状部材からなり前記スクロール部の外周面の面上に重ねて固着されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項3】
前記スクロール部はラジアル方向頂部でタービンロータのスラスト方向に分割され、該分割された端部同士をスクロール方向の概ね全域にわたり重合させて、該重合の部分で前記プロテクタが形成されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項4】
前記プロテクタは前記スクロール部の外周部に沿うと共に、前記ラジアル方向断面が略C字形状を成し、該C字形状の開口端縁が前記スクロール部の側壁に固着されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項5】
前記プロテクタの前記C字形状の開口と対向した片に、前記スクロール部のスクロール方向に沿って凹凸条溝部を形成したことを特徴とする請求項4記載の板金タービンハウジング。
【請求項6】
前記プロテクタは、前記スクロール部の前記ラジアル方向頂部と隙間部を有して配設され、前記スクロール部の側壁に固着されたことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項7】
前記隙間部に耐熱繊維素材を充填したことを特徴とする請求項6記載の板金タービンハウジング。
【請求項8】
前記スクロール部の外周部にスクロール方向に沿って複数の固着部材を配設し、前記プロテクタを前記固着部材を介してスクロール部の外周部にスクロール方向に沿って固定したことを特徴とする請求項1記載の板金タービンハウジング。
【請求項9】
前記板金タービンハウジングの外周部には、さらに金属製のメッシュ部材で耐熱性のある布状の複合素材を抱合した断熱部材にて被覆されたことを特徴とする請求項1乃至8記載のいずれかに記載の板金タービンハウジング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−211544(P2012−211544A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77388(P2011−77388)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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