説明

枕および枕セット

【課題】就寝時に頚椎および腰椎にかかる負担を軽減できる枕を提供する。
【解決手段】底面10が床に載置される面となり、底面10に対して約30°傾斜して体載置面12がある。体載置面12は、例えば、平面である。奥ゆきAが約800mmあることから、使用者3がその骨盤の上の腰椎および頚椎を伸ばした状態で仰向けに横たわることができる。そのため、頚椎および腰椎にかかる負担を軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠時における頚椎および骨髄への負担を小さくし、健康によい枕および枕セットに関する。
【背景技術】
【0002】
枕は、人が寝ている時に頭部を少し高い位置に保ち頭部の血圧を下げる役割がある。
従来の通常の枕は、頭部のみを約10cmの高に上げるものであり、枕使用時には首部は湾曲した状態になる。
枕は、上述したように頭部のみを支えるものの他、図9に示すように、頭部、首の背面および上肩部付近を支えるものがある。
このように首の背面および上肩部付近を支えることで、頭部のみを支える枕に比べて、寝ている時に首が曲がる角度を小さくでき、首付近にある頚椎への負担を軽減できる。
【特許文献1】実開平7−17165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来の枕では、首付近にある頚椎への負担は軽減できるが、頭部および肩部を高い位置に置いたことにより、腰部の上側の腰椎内の脊髄が腹方向に折れ曲がってしまう。
このように脊髄が腹方向に折れ曲がると、腰痛の原因となる。
ここで、腰椎は、骨盤の上に5つ並んだ椎骨と椎間板のことで、身体を支え、脊髄(神経)を保護する重要な役割を果たす。そのため、腰椎に負担がかかる生活を続けていると「腰椎椎間板ヘルニア」などの疾病を発症する可能性が高まる。
【0004】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされ、就寝時における頚椎および腰椎内の脊髄にかかる負担を軽減できる枕および枕セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した従来技術の問題点を解決し、上述した目的を達成するため、本発明の枕は、断面略三角形状の枕であって、床に載置される床載置面と、仰向けに横たわる人体の腰部周辺から頭部を支持するように、前記床載置面に対して傾斜した人体載置面とを有する。ここで、前記人体載置面は、前記床載置面に対して、10〜40°の範囲で傾斜している。
【0006】
本発明の枕では、従来のように頭部のみを高くするのではなく、床載置面に対して10〜40°の範囲で傾斜した人体載置面によって、仰向けに横たわる人体の腰部周辺から頭部を支持する。
すなわち、使用者の腰周辺を支持する箇所から傾斜している。
そのため、使用者の首部周辺の支持位置に段差を持たせなくても、頭部を高い位置に保持できる。これにより、使用者が枕に仰向けに横たわった状態で、頚椎を湾曲させずにまっすぐ保持しても、その使用者の頭部を他の部分より高い位置におくことができ、頚椎にかかる負担を軽減できる。よって、頭痛・肩こり防止の効果が図れる。
なお、このように頭を高い位置に保持することで、頭部の血圧が高まることを抑制し、障害が生じることを抑制できる。
【0007】
また、本発明の枕は、上記構成により、使用者の腰部周辺の支持位置に段差がなく、腰部周辺が湾曲しない。これにより、使用者が枕に仰向けに横たわった状態で、腰椎内の骨髄を湾曲させずにまっすぐ保持しても、その使用者の頭部を他の部分より高い位置におくことができ、骨髄にかかる負担を軽減できる。よって、腰痛防止の効果が図れる。
【0008】
また、好適には、本発明の枕は、前記床載置面の前記床載置面に対して傾斜する方向の長さが約600〜1000mmである。
【0009】
また、好適には、本発明の枕は、前記人体載置面と前記床載置面との間の角度を調整可能な機構をさらに有する。
【0010】
本発明の枕セットは、断面略三角形状の第1の枕と、断面略三角形状の前記第1の枕に重ねられる第2の枕とを有する。
ここで、前記第1の枕は、床に載置される床載置面と、仰向けに横たわる人体の腰部周辺から頭部を支持するように、前記床載置面に対して10〜40°の範囲で傾斜した第1の人体載置面とを有する。
また、前記第2の枕は、前記第1の枕の前記第1の人体載置面に着脱可能な状態で載置される枕載置面と、仰向けに横たわる人体の腰部周辺から頭部を支持するように、前記枕載置面に対して10〜40°の範囲で傾斜した第2の人体載置面とを有する。
このように2つの枕を用いることで、就寝時と、それ以外のテレビ等を見る時との各々においてユーザが最適な姿勢を保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、就寝時における頚椎および腰椎にかかる負担を軽減できる枕および枕セットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る枕を、図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態の枕1の構成図である。図1(A)は側面図、図1(B)は平面図、図1(C)は背面図である。
【0013】
図1(A)に示すように、枕1は、側面が三角形状で、奥ゆきAが約800mmである。奥ゆきAは、使用者3の腰部周辺から頭部を支持できるものであれば、例えば、約600〜1000mmの範囲で任意に選択可能である。
また、底面10が床に載置される面となり、底面10に対して体載置面12は角度θだけ傾斜している。
【0014】
角度θは、例えば、10〜40°であり、頚椎および腰椎にかかる負担が小さいとうい観点から、約30°が好ましい。
体載置面12は、例えば、平面である。
枕1は、上述したように、奥ゆきAが約800mmであることから、図2に示すように、使用者3がその骨盤の上の腰椎および頚椎を伸ばした状態で仰向けに横たわることができる。
【0015】
枕1の素材としては、例えば、ウレタンが用いられる。なお、枕1の素材としては、通常のウレタンの他に、低反発素材としての低反発ウレタン等を用いてもよい。
【0016】
低反発ウレタンは、ゆっくり沈んで、ゆっくりもどる性質を持ち、理想的にカラダを包み込む。体圧分散効果に優れているので、医療用や介護用としても使われている。
低反発ウレタンとしては、例えば、軟質ウレタンフォーム、半硬質ウレタンフォームおよび硬質ウレタンフォームなどがある。
【0017】
低反発素材の反発度は、適宜選択される。例えば、比較的反発度が高い素材を用いた場合には、図3に示すように使用者3が横たわった場合に、その体の沈み込み度合いは小さい。
一方、比較的反発度が低い素材を用いた場合には、図4に示すように使用者3が横たわった場合に、その体の沈み込み度合いは大きい。
【0018】
また、枕1は、複数種類の素材を組み合わせて用いてもよい。さらに、枕1の内部を複数の領域に分け、複数の領域が異なる素材を用いてもよい。
【0019】
本実施形態の枕1によれば、使用者3の腰周辺を支持する箇所から傾斜している。
そのため、使用者3の首部周辺の支持位置に段差を持たせなくても、頭部を高い位置に保持できる。これにより、使用者3が枕に仰向けに横たわった状態で、頚椎を湾曲させずにまっすぐ保持しても、その使用者3の頭部を他の部分より高い位置におくことができ、頚椎にかかる負担を軽減できる。よって、頭痛・肩こり防止の効果が図れる。
なお、このように頭を高い位置に保持することで、頭部の血圧が高まることを抑制し、障害が生じることを抑制できる。
【0020】
また、枕1によれば、上記構成により、使用者3の腰部周辺の支持位置に段差がなく、腰部周辺が湾曲しない。これにより、使用者3が枕に仰向けに横たわった状態で、腰椎内の骨髄を湾曲させずにまっすぐ保持しても、その使用者3の頭部を他の部分より高い位置におくことができ、骨髄にかかる負担を軽減できる。よって、腰痛防止の効果が図れる。
【0021】
<第2実施形態>
本実施形態では、上述した第1実施形態の枕1の上に、他の枕31を重ね合わせる場合を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態の構成図である。図5(A)は側面図、図5(B)は平面図、図5(C)は背面図である。
【0022】
図5(A)に示すように、枕31は、枕1と同様に、側面が三角形状である。
枕31の底面30が枕1の体載置面12に重ね合わされる面となる。
枕31の底面30に対して約30°傾斜して体載置面32がある。底面30と体載置面32との間の角度は、10〜40°であれば特に限定されない。
体載置面32は、例えば、平面である。
図5に示す例では、枕31は、枕31の上に重ねた状態で側面35が、枕1の側面15と一体的になる形状を有している。
【0023】
枕1の体載置面12と枕31の底面30とは、それぞれ滑りにくい表面になっており、重ね合わせた状態で、容易にはずれないようになっている。
また、体載置面12と底面30の一部の領域に面ファスナー(マジックテープ(商標))などを設けてもよい。
【0024】
なお、枕1と枕31は個別に販売されてもよいし、セットとして販売されてもよい。
【0025】
本実施形態では、就寝時には枕1のみを用い、それ以外の本を読んだりテレビを見たりするときに枕1に枕31を重ね合わせて用いる。
これにより、それぞれの場合において、使用者3が適切な姿勢をとりながら、その骨盤の上の腰椎および頚椎を伸ばした状態にでき、頚椎および腰椎にかかる負担を軽減できる。
すなわち、第1実施形態と同様に、使用者3の腰椎および頚椎を伸ばした状態にできることで、頚椎および腰椎にかかる負担を軽減できる。そのため、頭痛、首痛、肩こり、腰痛等に効果がある。
【0026】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態の構成図である。
図7に示すように、本実施形態では、2つの枕1を重ね合わせる。
これにより、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0027】
また、上述した第2および第3実施形態では、枕を2段に重ねる場合を例示したが、3段以上で重ねてもよい。
【0028】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態の構成図である。
上述した実施形態では複数の枕を重ねることで体載置面の傾きを調整する場合を例示したが、本実施形態では、図8に示すように、底面10と体載置面12との角度を調整可能な構成を有している。
【0029】
図8に示すように、底面10と体載置面12とが蝶番80などで角度θを調整可能に結合されている。
また、体載置面12は、例えば、底面10上に置かれた支持台82によって所定の角度θの位置に姿勢が保たれる。
そして、支持台82の位置を調整することによって、角度θを調整できる。
【0030】
第4実施形態の枕によれば、底面10と体載置面12との間の角度θを調整できるため、複数の枕を用意する必要がない。
なお、図8に示す例では、底面10と体載置面12との間の角度θを蝶番80によって可変にする場合を例示したが、蝶番以外の機構によって可変にしてもよい。
【0031】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0032】
上述した実施形態では、枕1の体載置面12および枕31の体載置面32として平坦な面を用いた場合を例示したが、これらの面は凹凸を有していてもよい。
また、首の背面を支持する凸部や、腰の凹部を支持する凸部を有していてもよい。
【0033】
また、上述した実施形態において、各枕の各辺の寸法は一例であり、一般的な仰向けに横たわる使用者の腰部周辺から頭部を支持できるものであれば特に限定されない。
【0034】
以上説明したように、上述した全ての実施形態の枕および枕セットによれば、、就寝時などで、頭部を高い位置に保ちながら、使用者3の腰椎および頚椎を伸ばした状態にできる。そのため、使用者3の頚椎および腰椎にかかる負担を軽減でき、頭痛、首痛、肩こり、腰痛等に効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、就寝時に用いられる枕に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態の枕の構成図である。図1(A)は側面図、図1(B)は平面図、図1(C)は背面図である。
【図2】図2は、図1に示す枕の使用時における側面方向の図である。
【図3】図3は、比較的反発度が高い素材を用いた場合の図2に示す側面方向の図である。
【図4】図4は、比較的反発度が低い素材を用いた場合の図2に示す側面方向の図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態の枕の構成図である。図5(A)は側面図、図5(B)は平面図、図5(C)は背面図である。
【図6】図6は、図5に示す枕の使用時における側面方向の図である。
【図7】図7は、本発明の第3実施形態の構成図である。
【図8】図8は、本発明の第4実施形態の構成図である。
【図9】図9は、従来技術を説明するための図である。
【符号の説明】
【0037】
1…枕
3…使用者
10…底面
12…体載置面
15…側面
30…底面
32…体載置面
35…側面
80…蝶番
82…支持台



【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略三角形状の枕であって、
床に載置される床載置面と、
仰向けに横たわる人体の腰部周辺から頭部を支持するように、前記床載置面に対して傾斜した人体載置面と
を有し、
前記人体載置面は、前記床載置面に対して、10〜40°の範囲で傾斜している
枕。
【請求項2】
前記床載置面の前記床載置面に対して傾斜する方向の長さが約600〜1000mmである
請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記人体載置面と前記床載置面との間の角度を調整可能な機構
をさらに有する請求項1または請求項2に記載の枕。
【請求項4】
低反発素材を用いて構成された
請求項1〜3のいずれかに記載の枕。
【請求項5】
断面略三角形状の第1の枕と、
断面略三角形状の前記第1の枕に重ねられる第2の枕と
を有し、
前記第1の枕は、
床に載置される床載置面と、
仰向けに横たわる人体の腰部周辺から頭部を支持するように、前記床載置面に対して10〜40°の範囲で傾斜した第1の人体載置面と
を有し、
前記第2の枕は、
前記第1の枕の前記第1の人体載置面に着脱可能な状態で載置される枕載置面と、
仰向けに横たわる人体の腰部周辺から頭部を支持するように、前記枕載置面に対して10〜40°の範囲で傾斜した第2の人体載置面と
を有する
枕セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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