説明

枕及び枕カバー

【課題】 頭部を安定的に保持することが可能な枕及び着脱容易にこれを内包する枕カバーを提供する。
【解決手段】 弾性体の枕本体1を備える枕であって、枕本体1は、略板状に形成されるとともに、上面1aから下面に貫通する頭部保持孔1dが設けられ、枕本体1の下方には、略板状に形成され、上面から下面に貫通する貫通孔を備えたスペーサ2が枕本体1に重ねて設けられており、スペーサ2の貫通孔を、枕本体1の頭部保持孔1dの下方に配するとともに、頭部保持孔1dの開口面積よりも大きな開口面積を備えて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枕及び枕カバーに関し、特に使用者の頭部を安定的に保持する枕及びこれを内包する枕カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部を適度な弾性を持って支持する枕には、例えば特許文献1に開示されているような、枕本体が、上面側からの平面視で略長方形を呈し、断面視で高い山部と低い山部の2つの山部が形成され、底面がほぼ平坦状に形成されたものがある。この枕本体は、例えばポリウレタンフォームで形成されて、布等で形成された袋状の枕カバーに内包されて使用される。また、この種の枕においては、高い山部が使用者の首部に接し、高い山部と低い山部の間の谷に後頭部が接するようにして使用され、ポリウレタンフォームで形成された枕本体が、頭部の荷重により圧縮されることによって、頭部を安定的に保持することが可能とされている。
【0003】
一方、一般就寝時よりも安定的に頭部を保持することが要求される、例えば患者の手術や治療を施す際に用いられる枕には、枕本体が、例えば特許文献2に開示されているように、堅いベースの上面側に4つの柔軟なパッドが突出するように形成されたものがある。この枕においては、4つのパッドで画成された十字形凹部に患者の後頭部が保持され、かつ4つのパッドの上面に頭部が当接支持されることにより、頭部を安定的に保持することが可能とされている。また、この特許文献2に開示された枕においては、底部を下方に凸となる凸面で形成することによって、枕本体が、頭蓋の後の後頭骨の頭蓋仙骨の移動及びそれに付随した膜並びに筋肉に順応して患者の頭部を枕本体で保持しつつ移動するものとされ、生理学的な弛緩の状態を引き起こすことが可能とされている。このように形成された枕本体は、レザーのような柔軟な材料や繊維のカバーで被覆されて用いられている。
【特許文献1】特開2004−267577号公報
【特許文献2】特表平10−509904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されているような枕においては、頭部が移動すると、後頭部が高い山部と低い山部の間の谷からずれたり、首部が高い山部からずれてしまい、頭部を安定的に保持することができなくなるという問題があった。特に、上面側からの平面視で略長方形を呈するように形成され、その長手方向に高い山部と低い山部が延設されて枕本体が形成されているため、短手方向には頭部のずれが生じにくい一方で、長手方向に移動する頭部を保持することが困難であり、後頭部が高い山部と低い山部の間の谷からずれてしまうという問題があった。
【0005】
一方、一般就寝時よりも安定的に頭部を保持することが要求される際に用いられる上記の特許文献2に開示される枕においては、4つのパッドによって画成された十字形凹部で患者の頭部を保持するものとされているため、患者の頭部の大きさや形状、頭部の重さの違いによって、例えばパッドの弾性変形が小さくなり十字形凹部に頭部が浅く保持されて安定性が確保できない場合や、逆にパッドの弾性変形が大きくなり頭部が深く沈み込みすぎて首部などに負荷がかかった姿勢で頭部が保持されてしまう場合があり、患者の頭部の形状や重さの違いに十分に対応することができないという問題があった。
【0006】
また、このような枕では、枕本体の形状が複雑であるため、これを内包する枕カバーを着脱することが困難であるとともに、形状が複雑化した枕カバーをディスポーザブルなものにすると経済的な負担が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑み、頭部を安定的に保持することが可能な枕及び着脱容易にこれを内包する枕カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明の枕は、弾性体の枕本体を備える枕であって、前記枕本体は、略板状に形成されるとともに、上面から下面に貫通する頭部保持孔が設けられ、該枕本体の下方には、略板状に形成され、上面から下面に貫通する貫通孔を備えたスペーサが前記枕本体に重ねて設けられており、前記スペーサの前記貫通孔は、前記枕本体の前記頭部保持孔の下方に配されるとともに、前記頭部保持孔の開口面積よりも大きな開口面積を備えて形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の枕においては、前記枕本体が、低反発ウレタンで形成されていることが望ましい。
【0011】
さらに、本発明の枕においては、前記スペーサが、前記枕本体と同じ素材、もしくは前記枕本体よりも硬度の高い素材で形成されていることがより望ましい。
【0012】
本発明の枕カバーは、上記の枕を内包するための布状の柔軟材からなる枕カバーであって、一端側に前記枕を挿入する開口部を備えた袋状に形成され、撥水性または吸水性、あるいはこの双方の性質が付与されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の枕カバーにおいて、前記一端側は、前記柔軟材が少なくとも二重で形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の枕によれば、枕本体に頭部保持孔が設けられていることによって、この枕本体の上面側に頭部を載せるとともに、後頭部の一部が頭部保持孔に嵌め込まれるようにして頭部を保持することが可能となる。また、このとき、枕本体の下方に、枕本体と重ねてスペーサが設けられ、このスペーサに頭部保持孔よりも大きな開口面積を有する貫通孔が設けられていることによって、頭部の荷重で圧縮した枕本体の頭部保持孔周辺部分を貫通孔内に沈み込むように変形させることが可能となる。このため、頭部保持孔とともに、この頭部保持孔周辺の下方に沈み込んだ上面で頭部、特に後頭部から側頭部に向かう部分を包み込むようにすることができ、頭部保持孔周辺の枕本体の上面を後頭部から側頭部に向かう部分に大きな面積で接触させて頭部を保持することが可能になる。これにより、頭部を安定的に保持してこの状態を維持することが可能とされる。
【0015】
また、本発明の枕においては、枕本体が低反発ウレタンで形成されていることにより、枕本体の弾性を好適な状態にすることができ、上記効果を確実に得ることが可能とされる。
【0016】
さらに、本発明の枕においては、スペーサが、枕本体と同じ素材、もしくは枕本体よりも硬度の高い素材で形成されていることにより、スペーサの弾性を、頭部の荷重が枕本体を通じてスペーサに作用した際にスペーサの圧縮変形によって貫通孔がつぶれてしまうことのない好適な状態にすることができ、より確実に上記効果を得ることが可能とされる。
【0017】
本発明の枕カバーによれば、撥水性または吸水性、あるいはこの双方の性質が付与されていることによって、例えば患者の手術などの際に使用され、枕カバーに血液が付着するなどした場合においても、その撥水性により、付着した血液がこの袋状に形成された枕カバーで内包する上記の枕に達することを防止できる。また、吸水性が付与された場合においては、枕カバーに付着した血液が拡がることを防止できる。これにより、内包した枕を衛生的に保持することが可能とされる。
【0018】
また、本発明の枕カバーにおいては、枕を挿入する開口部を備える一端側に、柔軟材が少なくとも二重で形成された部分が具備されることにより、上記の弾性体の枕を収納したり、内包した枕を取り出すことを容易に行なうことが可能になる。つまり、一般に、布状の柔軟材から形成された枕カバーに、上記の弾性体の枕を着脱しようとすると、枕カバーの開口部分がよれてしまい、弾性体の枕の収納に時間を要したり、逆に内包した枕を取り出す際には、枕カバーの開口部分がよれて枕本体にくっ付いたりしてやはり時間を要してしまう場合があった。これに対して、開口部分の柔軟材が少なくとも二重で形成されていることにより、この部分が補強され適度な剛性が付与されるため、枕本体を袋状の枕カバーの内部に挿入する際には、開口部を確実に開口した状態で保持することが可能となり、これにより好適に弾性体の枕本体を挿入することが可能になる。また、内包した弾性体の枕本体を取り出す際にも、この開口部が確実に開口した状態で保持されるため、容易に枕本体を引き出すことが可能になる。
【0019】
さらに、このように一端側が少なくとも二重の柔軟材で形成されていることにより、枕カバーに弾性体の枕本体を挿入した段階で、補強部分を他端側に折曲げて、内包した枕本体を封止するようにした場合には、他端側に折曲げた部分が、柔軟材が少なくとも二重とされた補強部分であるため、枕本体を内包しつつ封止した状態を確実に保持することが可能とされる。これにより、例えば患者の手術に使用された場合において、補強部分が折曲げられて強固に枕本体が封止されることになるため、枕カバーに付着した血液などが内包する枕本体に開口部を介して付着することを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る枕について説明する。本実施形態は、手術や治療を施す患者の頭部を安定的に保持する枕に関するものである。
【0021】
本実施形態の枕Aは、図1から図4に示すように、弾性体の枕本体1と、弾性体のスペーサ2とから構成され、枕本体1の下方にスペーサ2を重ねるように配置して使用されるものである。
【0022】
枕本体1は、例えば低反発ウレタンで形成されているとともに、上面1a側からの平面視で一端1b側が円弧形状を呈する略矩形板状に形成されている。また、この枕本体1には、前記平面視で略中央に、上面1aから下面1cに貫通する略円形状の頭部保持孔1dが形成されている。ここで、低反発ウレタンとは、弾性と粘性とを併せ持つ粘弾性ウレタンフォームであって、ヒステリシスロス率(JIS K 6400−2)が大きく、優れた衝撃吸収性を有し、反発弾性率(JIS K 6400−3)が15%程度以下とされて、圧縮した後に外力を取り除くとゆっくりと元の形状に戻る性質を有するものを表す。
【0023】
スペーサ2は、例えば枕本体1と同様の低反発ウレタンや枕本体1よりも硬度の高いウレタン材などで形成されており、枕本体1と上面2a側からの平面視で外郭形状が略等しくなる略矩形板状に形成されている。一方、このスペーサ2には、上面2a側からの平面視で、略中央に、上面2aから下面2bに貫通する略矩形状の貫通孔2cが形成されており、この貫通孔2cは、枕本体1の下面1cをスペーサ2の上面2aに当接させてスペーサ2を枕本体1の下方に重ねて設けた際に、枕本体1の頭部保持孔1dの下方、好ましくは直下に位置されるように形成されているとともに、頭部保持孔1dよりも上面2a側からの平面視の開口面積が大きくなるように形成されている。
【0024】
ついで、上記の構成からなる枕Aの作用及び効果について説明する。
【0025】
枕本体1の下面1cとスペーサ2の上面2aを当接させて互いの外郭が、上面1a側からの平面視で略一致するように重ねた枕Aを、スペーサ2が下方に位置するように例えばベッドに載置する。この状態の枕Aに対して、図4に示すように、患者3の頭頂部3a側が円弧形状を呈する一端1b側に配され、首部3bが円弧形状を呈する一端1b、2d側と反対に位置する他端1e、2e側に配されるように患者3の頭部3cを枕本体1の上面1a側に載せる。このとき、患者3の上方を向く顔面に対して、下方を向く後頭部3dの一部が枕本体1の頭部保持孔1d内に嵌まり込むようにされて患者3の頭部3cが枕本体1に支持される。
【0026】
この状態で、枕本体1は、例えば低反発ウレタンなどの弾性体で形成されているため、頭部3cの荷重により圧縮される。さらに、頭部保持孔1dの直下に、この頭部保持孔1dよりも大きな開口面積を備えるスペーサ2の貫通孔2cが設けられていることで、枕本体1の患者3の頭部3cを支持する頭部保持孔1d周辺の枕本体1が頭部3の荷重によってスペーサ2の貫通孔2c内に入り込むように凹むこととなる。これにより、患者3の後頭部3dは、その一部が枕本体1の頭部保持孔1dに入り込んで保持されるとともに、この頭部保持孔1d周辺のスペーサ2の貫通孔2c側に凹んだ部分の上面1aが後頭部3dから側頭部3eに向けた部分を包み込むように接触するため、患者3の頭部3cが安定的に枕Aに保持されることとなる。このように、本実施形態の枕Aで頭部3が保持された場合には、例えば患者3が不意に動くなどした際にも、頭部3が十分に枕Aの下方に沈み込んで、安定した装着状態で保持されるため、頭部3がずれることが防止される。
【0027】
したがって、上記の枕Aによれば、枕Aを弾性体の枕本体1とスペーサ2とから構成し、枕本体1の頭部保持孔1dで患者3の頭部3cを保持できるとともに、スペーサ2の貫通孔2cが枕本体1の頭部保持孔1dよりも大きな開口面積を備えるように形成されていることで、枕本体1に載置した頭部3の荷重によって、枕本体1の頭部保持孔1d周辺部分をスペーサ2側に凹むように変形させることが可能となる。これにより、枕本体1の頭部保持孔1dとともに、スペーサ2側に凹むように変形した部分で患者3の頭部3cを保持することが可能とされるとともに、スペーサ2側に凹んだ枕本体1の上面1aが患者3の後頭部3dから側頭部3e側の部分を包み込むように接触されることになるため、患者3の頭部3cをより確実に安定的に保持することが可能とされる。
【0028】
また、上記の枕Aにおいては、患者3の頭部3cの大きさや形状が異なる場合においても、枕本体1のスペーサ2側に凹む部分の上面1aが頭部3の大きさや形状に係わりなく確実に包むように接触することとなり、さらに、頭部3の重さが異なる場合においても、その重さに応じた変形量で枕本体1がスペーサ2側に同じく頭部3を包むように凹んで、枕本体1の上面1aが頭部3を包むように接触することになるため、頭部3を安定的に保持することが可能とされる。
【0029】
以上、本発明に係る枕の実施の形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、枕本体1とスペーサ2がそれぞれ個別に形成されて、枕本体1の下面1cとスペーサ2の上面2aとを重ねるように配置して使用するものとしたが、例えば枕本体1の下面1cとスペーサ2の上面2aとを固着して、枕本体1とスペーサ2とが一体形成されていてもよいものである。また、枕本体1とスペーサ2とが、ともに上面1a、2a側からの平面視で一端1b、2d側が円弧形状を呈する略矩形板状に形成されているものとしたが、この限りではなく、それぞれの外郭形状は、略矩形状であっても略円形状であってもよいものである。
【0030】
さらに、本実施形態では、枕本体1の頭部保持孔1dが、上面1a側からの平面視で略円形状を呈するように形成され、スペーサ2の貫通孔2cが、上面2a側からの平面視で略矩形状に形成されているものとしたが、少なくとも貫通孔2cの開口面積が頭部保持孔1dの開口面積よりも大きく形成されていれば、頭部保持孔1d及び貫通孔2cの形状は限定を必要とするものではなく、特に貫通孔2cの形状は略円形状であったり、略楕円形状であってもよいものである。
【0031】
また、本実施形態では、枕本体1が低反発ウレタンで形成され、スペーサ2が枕本体1と同様の低反発ウレタン材やこれよりも硬度の高いウレタン材で形成されているものとしたが、これらのウレタン材と同様の弾性や硬度の性質を備えていれば、例えばゴムなどの他の弾性体で形成されてもよく、この場合においても、本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0032】
ついで、図5から図6を参照し、本発明の一実施形態に係る枕カバーについて説明する。本実施形態の枕カバーは、手術や治療を施す患者の頭部を安定的に保持するための前述の一実施形態に係る枕を内包する枕カバーに関するものである。
【0033】
本実施形態の枕カバーBは、図5から図6に示すように、例えば不織布などの柔軟材4で形成されており、その端部4a、4b側を接着あるいは溶着して一端4c側に開口部4dを備える平面視略矩形状の袋状に形成されたものである。また、開口部4d側の一端4cと反対に位置する他端4eは、前述の枕Aの一実施形態に示した枕本体1及びスペーサ2の一端1b、2eの形状と係合する平面視に円弧形状を呈するように形成されている。ここで、この枕カバーBは、不織布などの安価な柔軟材4で形成されるものであるため、ディスポーザブルな枕カバーBとされている。また、この枕カバーBは、ポリプロピレンなどの撥水性材料または吸水性ポリマーなどの吸水性材料を用いて形成されて撥水性または吸水性が付与されている。なお、枕カバーBは、抗菌性物質が塗布やコーティングされてより衛生的なものとされていてもよいものである。
【0034】
また、本実施形態の枕カバーBは、開口部4d側の一端4cが枕カバーBの他端4e側に折り返されて、開口部4d側の柔軟材4が二重に形成されて、他の部分よりも剛性の高い補強部4fが形成されている。この補強部4fは、例えば折り返された一端4gが柔軟材4に固着されて保持されている。
【0035】
ついで、上記の構成からなる枕カバーBの作用及び効果について説明する。
【0036】
上記の枕カバーBで前述の一実施形態に示した枕Aを内包して、この枕Aに枕カバーBを装着する際には、一般の枕カバーと同様に、開口部4d側から枕カバーBの内部に枕Aを挿入して装着することとなる。本実施形態の枕カバーBのように、ディスポーザブルとするために不織布などを用いて非常に柔軟性が高い状態で形成された枕カバーでは、弾性体の枕を挿入する際に、開口部分の柔軟材4がよれてしまい、枕Aを好適に挿入できないことがあり、装着作業を容易にかつ早急に行なうことが可能な枕カバーが求められていた。
【0037】
これに対して、本実施形態の枕カバーBにおいては、不織布などを用いて非常に柔軟性が高い柔軟材4で形成されている一方で、開口部4d側が枕カバーBの他端4e側に折り返されて柔軟材4が二重とされて、他の部分よりも剛性の高い補強部4fが形成されているため、枕カバーBを弾性体の枕Aに装着する際には、開口部4cを画成する柔軟材4がよれて開口部4cが閉塞されてしまうことを防止できる。これにより、弾性体の枕Aを、時間を要することなく好適に枕カバーBに挿入し内包させることが可能とされる。
【0038】
また、枕カバーBの内部に枕Aを挿入した段階で、補強部4fが他の部分よりも高剛性とされていることで、補強部4fの枕カバーBの他端4e側に配された一端4gに沿って、この補強部4fを枕カバーBの他端4e側に(図5の矢印a方向に)折曲げて、この状態を保持することが可能とされる。
【0039】
このように枕Aを内包した段階で、手術を施す患者の頭部を保持した場合には、例えば術野からの出血が枕カバーBに飛散し付着した場合においても、枕カバーBの柔軟材4に撥水性が付与されているため、枕カバーBに血液が滲み込んで内包した枕Aが汚れることを防止できる。また、大量の血液が枕カバーBの柔軟材4に付着しこの表面を流動するような場合においても、枕カバーBの補強部4fが他端4e側に折り返されて強固に保持されているため、枕Aを確実に封止した状態で内包しており、内包した枕Aに血液が到達してこれが付着することを確実に防止できる。また、枕カバーBの柔軟材4に吸水性が付与されている場合には、不測の事態で枕カバーBの内側に血液が入り込んだときにも、この枕カバーBが血液を吸収することで、汚れが拡がることを防止できる。
【0040】
また、枕カバーBから枕Aを取り出す際には、折曲げた補強部4fを元の位置に戻すとともに、補強部4fで開口部4dが確実に開口されるため、内包した枕Aを容易に外部に取り出すことが可能とされる。
【0041】
したがって、上記の枕カバーBによれば、不織布などの柔軟性の高い素材で形成され、ディスポーザブルな枕カバーBとした場合であっても、一端4c側に補強部2fが形成されていることによって、弾性体の枕Aを容易に着脱することが可能とされる。また、内包した枕Aを衛生的に保持することが可能とされる。
【0042】
以上、本発明に係る枕カバーの実施の形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、枕カバーBの一端4c側の補強部4fが、柔軟材4を二重にして形成されているものとしたが、柔軟材4が二重以上で重ねられて形成されていてもよいものである。この場合には、より確実に開口部分がよれることを防止できる。また、これに関連して、枕カバーBの一端4c側を二重以上で形成せずに、補強部4fを具備せぬ枕カバーBとしてもよく、この場合には、補強部4fを形成するための製作手間をなくして枕カバーBのコストを低減することができ、これにより、枕カバーBをディスポーザブルなものとした場合においてもその経済的負担の軽減を図ることが可能とされる。さらに、本実施形態では、枕カバーBの他端4eが、前述の枕Aの一実施形態として示した枕本体1及びスペーサ2の一端1b、2dの形状と係合する円弧形状を呈するように形成されているものとしたが、枕カバーBは、平面視に矩形状を呈するように形成されてもよく、特にその形状が限定される必要はない。
【0043】
また、本実施形態では、柔軟材4が不織布であるものとしたが、織布であってもよいものである。さらに、本実施形態では、枕カバーBが、ポリプロピレンなどの撥水性材料または吸水性ポリマーなどの吸水性材料を用いて形成されているものとしたが、例えば吸水性材料の柔軟材4の内面側、すなわち内包した枕Aと接触する内面側に撥水性材料をコーティングしたりして、吸水性と撥水性の双方の性質が付与されていてもよいものである。この場合には、例えば枕カバーBの外面に付着した血液がその吸水性によって飛散することを防止できるとともに、枕カバーBの外面から内包した枕Aの側に柔軟材4を通じて浸透した血液が、柔軟材4の内面側の撥水性材料によって遮断され、枕Aに到達することを防止できる。これにより、付着した血液の飛散を防止しつつ内包した枕Aを衛生的に保持することが可能とされる。また、本発明の枕カバーBは、必ずしも撥水性や吸水性が付与されていなくてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態の枕の枕本体を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態の枕のスペーサを示す正面図である。
【図3】図1及び図2に示した枕本体とスペーサからなる枕を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態の枕の使用状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態として示した枕カバーを示す図である。
【図6】図5の枕カバーを弾性体の枕に装着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 枕本体
1a 上面
1b 一端
1c 下面
1d 頭部保持孔
1e 他端
2 スペーサ
2a 上面
2b 下面
2c 貫通孔
2d 一端
2e 他端
3 患者(使用者)
3c 頭部
4 柔軟材
4c 一端
4d 開口部
4e 他端
4f 補強部
A 枕
B 枕カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体の枕本体を備える枕であって、
前記枕本体は、略板状に形成されるとともに、上面から下面に貫通する頭部保持孔が設けられ、該枕本体の下方には、略板状に形成され、上面から下面に貫通する貫通孔を備えたスペーサが前記枕本体に重ねて設けられており、前記スペーサの前記貫通孔は、前記枕本体の前記頭部保持孔の下方に配されるとともに、前記頭部保持孔の開口面積よりも大きな開口面積を備えて形成されていることを特徴とする枕。
【請求項2】
請求項1に記載の枕において、
前記枕本体が、低反発ウレタンで形成されていることを特徴とする枕。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の枕において、
前記スペーサが、前記枕本体と同じ素材、もしくは前記枕本体よりも硬度の高い素材で形成されていることを特徴とする枕。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の枕を内包するための布状の柔軟材からなる枕カバーであって、
一端側に前記枕を挿入する開口部を備えた袋状に形成され、撥水性または吸水性、あるいはこの双方の性質が付与されていることを特徴とする枕カバー。
【請求項5】
請求項4記載の枕カバーにおいて、
前記一端側は、前記柔軟材が少なくとも二重で形成されていることを特徴とする枕カバー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−111157(P2007−111157A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304156(P2005−304156)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】