説明

果実等の物品の宙吊り収納トレー

【課題】宙吊り用の合成樹脂フィルムをトレーに容易に着脱することができ、トレーの再利用を容易とした果実等の物品の宙吊り収納トレーを提供する。
【解決手段】宙吊り用合成樹脂フィルム5の2辺に沿って係合片10を設けると共に、係合片10に係合突片11を突設し、係合片10に対応するトレー3の2辺に下向係合溝13を設け、トレー3に各係合突片11が挿入可能な係合孔8を貫設し、上記フィルムをトレー3の上面開口2aに宛がい係合片10を上面開口トレー3の側面に沿って配置し、係合片10の内側の各端縁を下向係合溝13に係合し、係合突片11を係合孔8に抜止状態で挿入係合することにより、宙吊り用合成樹脂フィルム5をトレー3の上面開口2aに係止状態で張設し得るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桃等の果実或いは他の物品を収納する果実等の物品の宙吊り収納トレーに関するものであり、柔軟な宙吊り用の合成樹脂フィルムをトレーに簡単に取り付け可能とした果実等の物品の宙吊り収納トレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、柔軟な合成樹脂フィルムに複数の果実収納用の凹部を塑性変形により形成し、当該フィルムをパルプモウルド製トレーの開口部に張設し、当該フィルムの果実収納凹部が上記トレー底面に接触しないように構成することで、当該果実収納凹部内に苺等の果実を宙吊り収納する果実収納トレーが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−81195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の果実収納トレーにおいて、その合成樹脂フィルムとトレーは、接着剤又は溶着等の手段により接着されているため、上記合成樹脂フィルムの果実収納凹部に果実を収納して輸送等に使用した後、果実を果実収納凹部から取り出した後は、再利用されることなく廃棄されていた。
【0005】
また、上記果実収納トレーにおいて、パルプモウルド製トレーの部分は本来再利用可能であるが、上記トレーを再利用するためには上記合成樹脂フィルムを上記トレーから分離することが必要である。しかしながら、上記合成樹脂フィルムは上記トレーに接着剤等により接着されているため、上記トレーからの合成樹脂フィルムの分離に多くの手間を要するという課題があった。
【0006】
そこで、特許文献1のようなパルプモウルド製トレーにおいて、果実を確実に宙吊り収納する一方、使用後においては、トレーと合成樹脂フィルムを容易に分離できるようなトレーが望まれている。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、柔軟な宙吊り用の合成樹脂フィルムをトレー(例えばパルプモウルド製トレー等)に容易に着脱することができ、トレーの部分の再利用を容易とした果実等の物品の宙吊り収納トレーを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は宙吊り用合成樹脂フィルムをトレーに簡単に取り付けることができると共に、例えば桃等の比較的重量の大きい果実等の物品をも確実に宙吊り収納することができる果実等の物品の宙吊り収納トレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、上面開口トレーと、該上面開口トレーの上面開口に張設され果実等の物品を収納するための柔軟な凹部が塑性変形により形成された柔軟な宙吊り用合成樹脂フィルムとを有し、上記宙吊り用合成樹脂フィルムを上記上面開口に張設した状態で上記凹部に果実等の物品を宙吊り状態で収納し得る果実等の物品の宙吊り収納トレーにおいて、上記宙吊り用合成樹脂フィルムの対向2辺に沿う各端縁に各々係合片を接合すると共に、上記両係合片の対称位置に外側方向に突出する係合突片を各々形成し、上記両係合片に対応する上記上面開口トレーの2辺に下向係合溝を各々設けると共に、上記上面開口トレーに上記各係合突片が挿入係合可能な係合孔を貫設し、上記宙吊り用合成樹脂フィルムを上記上面開口に宛がうと共に上記フィルムの上記対向2辺を上記上面開口トレーの側面に沿って折り曲げて上記両係合片を各々上記上面開口トレーの左右の側面に沿って配置した状態において、上記両係合片の内側の各端縁を上記下向係合溝に各々係合すると共に、左右の上記係合突片を上記係合孔に抜止状態で挿入係合することにより、上記宙吊り用合成樹脂フィルムを上記上面開口トレーの上記上面開口に係止状態で張設し得るように構成したものであることを特徴とする果実等の物品の宙吊り収納トレーにより構成される。
【0010】
上記宙吊り用合成樹脂フィルムの対向2辺とは、例えば方形の宙吊り用合成樹脂フィルム(5)の長手方向の端縁(5’,5’)側の対向2辺をいう。上記係合片に対応する上面開口トレーの2辺とは、例えば方形の上面開口トレー(3)における長手方向の対向する2辺(外周縁部2d,2eが形成された対向2辺)をいう。上記トレーの左右の側面とは、例えばトレー(3)の長手方向の左右の側面(6c,6c)をいう。上記両係合片の内側の各端縁とは、例えば係合片(10,10)の内側の延長片部(10a,10a)の内側の端縁(10a’,10a’)をいう。このように構成すると、宙吊り用合成樹脂フィルムを上面開口トレーに簡単に張設し、取り外すことができると共に、係合突片が上記トレーの係合孔に抜止状態で係合しているため、比較的重量の大きい物品であっても確実に宙吊り収納することができる。
【0011】
第2に、上記両係合片の上記内側の各端縁を上記上面開口トレーの上記下向係合溝に係合した状態において、上記両係合突片を互いに対向方向に回動することにより、上記両係合突片を上記係合孔内に抜止状態に挿入係合し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1記載の果実等の物品の宙吊り収納トレーにより構成される。
【0012】
両係合突片を互いに対向方向に回動とは、例えば係合突片(11,11)を矢印(P2”)方向(図5(b))に回動することをいう。このように構成すると、上記両係合片の上記各端縁を上記トレーの上記下向係合溝に係合し上記トレーを両手で把持した状態で、例えば両手の各中指で上記両係合突片を上記各係合孔内に挿入係合することができ(図6参照)、上記トレーへの上記宙吊り用合成樹脂フィルムの張設を極めて簡単に行うことができる。
【0013】
第3に、上記上面開口トレーはパルプモウルド成形により形成されたパルプモウルド製であることを特徴とする上記第1又は2記載の果実等の物品の宙吊り収納トレーにより構成される。
【0014】
このように構成すると、上記トレーの再利用を容易に行うことができる。
【0015】
第4に、上記両係合片及び上記両係合突片は薄板状の弾性板により構成されており、上記両係合突片は上記各係合孔の幅よりも若干幅広の先端部を有しており、該先端部を上記係合孔内に抜止状態に挿入係合し得るように構成したものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載の果実等の物品の宙吊り収納トレーにより構成される。
【0016】
上記薄板状の弾性板は例えば段ボール紙により構成することができる。このように構成すると、上記係合片及び係合突片を有する宙吊り用合成樹脂フィルムを低コストで実現することができる。
【0017】
第5に、上記上面開口トレー内に、上記上面開口トレーの上記2辺間を接続して上記上面開口トレー内を分割する隔壁を設け、上記隔壁における上記2辺に近い各端部位置に上記両係合突片が挿入係合し得る上記係合孔を各々貫設したものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載の果実等の物品の宙吊り収納トレーにより構成される。
【0018】
このように構成すると、上記係合突片を上記係合孔に容易に挿入係合し得て、宙吊り用合成樹脂フィルムを上記トレーに簡単に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように、上面開口トレーに対する宙吊り用合成樹脂フィルムの取り付け、取り外しを、接着剤等を使用せずに容易に行うことができるので、例えば使用後にトレーの再利用を手間を要せずに簡易に行うことができるという効果を奏するものである。
【0020】
また、上記トレーに宙吊り用合成樹脂フィルムを簡易に着脱できるにも拘わらず、該フィルムを上記トレーに確実に係止状態に装着できるので、当該フィルムによって、例えば桃等の比較的重量の大きい果実等の物品を確実に宙吊り収納することができるという効果をも奏するものである。
【0021】
また、上記両係合片の上記各端縁を上記トレーの上記下向係合溝に係合し上記トレーを両手で把持した状態で、例えば両手の各中指で上記両係合突片を上記各係合孔に係合することができ、上記トレーへの上記宙吊り用合成樹脂フィルムの張設を極めて簡単に行うことができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る果実等の物品の宙吊り収納トレーの分解斜視図である。
【図2】同上トレーの宙吊り用合成樹脂フィルムの装着状態の斜視図である。
【図3】同上トレーの側面図である。
【図4】(a),(b)は図1のA−A線断面図であり、(a)は宙吊り用合成樹脂フィルムの張設前の断面図、(b)は同上フィルムの張設状態の断面図である。
【図5】(a),(b)は図1のB−B線断面図であり、(a)は宙吊り用合成樹脂フィルムの張設前の断面図、(b)は同上フィルムの張設状態の断面図である。
【図6】図1のB−B線断面図であり、係合突片を指で係合装着している状態を示す断面図である。
【図7】(a)は宙吊り用合成樹脂フィルムの平面図、(b)は上面開口トレーの平面図である。
【図8】(a)は宙吊り用合成樹脂フィルムを上面開口トレーに宛がった状態の平面図、(b)は宙吊り用合成樹脂フィルムの装着状態の同上トレーの平面図である。
【図9】同上フィルムを製造する状況を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る果実等の物品の宙吊り収納トレーを詳細に説明する。尚、以下の説明において、収納される果実として桃Fを例に説明するが、収納物はこれに限らず、他の果実或いは果実以外の物品(例えば野菜等の食品、食品以外であれば電子部品等)であっても良い。
【0024】
図1に示すように、本発明に係る果実等の物品の宙吊り収納トレー1は、全体の外周縁2が略方形の上面開口2aを有するパルプモウルド製の有底の上面開口トレー3と、該上面開口トレー3の上記上面開口2aに張設され、果実等の物品を宙吊り収納するための2個の柔軟な果実収納用の凹部4,4が塑性変形により形成された全体が柔軟な略方形の宙吊り用合成樹脂フィルム5とから構成されている。
【0025】
そして、上記宙吊り用合成樹脂フィルム5を上記トレー3の上面開口2aに宛がい、上記フィルム5の対向2辺(左右縁部)に設けられた係合片10,10の延長片部10a,10aを、上記上面開口トレー3の上記係合片10,10の対応位置に設けられた下向係合溝13,13内に係合することで、図2に示すように、上記フィルム5を上記トレー3の上面開口2aに張設し得るように構成されている。
【0026】
尚、以下の説明において、図1における上面開口トレー3の斜視図の手前側を「前方」、後ろ側を「後方」、「前方」から「後方」を向いた場合の左右を「左側」及び「右側」として説明を行う。
【0027】
上記上面開口トレー3は、周知のパルプモウルド成形の方法により一体的に抄造されたパルプモウルド製のものであり、図1に示すように、底面6には上記宙吊り用合成樹脂フィルム5の上記凹部4に桃Fを収納した場合に、桃Fの底部下方に宙吊り用の空間S(図4(b)参照)を形成して桃Fを宙吊り収納するための凹部6a,6aが上記凹部4,4に対応する位置に、前後方向(長手方向)に2個凹設されている(図3参照)。
【0028】
また、上記トレー3の上記2個の凹部6a,6aの中間部には、トレー3の左右方向に直線的に所定幅の隔壁6bが設けられている。この隔壁6bは、全体として、上記トレー3の周囲の上記外周縁2の高さより低い高さを有しており、左の外周縁2の内側における上記外周縁2より若干低い高さの位置7aから、右の外周壁2の内側における上記外周縁2より若干低い高さの位置7b(上記位置7aと同一高さの位置)に至るまで連続的に形成されている(図5(a)参照)。また、この隔壁6bは、図5(a)に示すようにその中央部が最も高さの低い左右方向の湾曲凹面6b’を形成していると共に、左右両端部には略水平面を構成する端面6b”,6b”が各々形成されている。
【0029】
上記隔壁6bの上記左右の端面6b”,6b”の板面には、後述の係合突片11,11を各々挿入係合するための略方形の係合孔8,8が各々貫通形成されている。即ち、上記上面開口トレー3内に、上記トレー3の左右の外周縁2,2(外周縁部2d,2e)の2辺間を接続して上記トレー3内を分割する隔壁6bを設け、上記隔壁6bにおける上記2辺に近い各端部位置7a,7bに、係合突片11,11が挿入係合し得る係合孔8,8を各々貫設したものである。
【0030】
このトレー3の長手方向の左右の上記外周縁2,2には、上記各凹部6a,6aに対応する左右位置に、各々下向き台形状の切欠部9a,9a(左側)、9b,9b(右側)が凹設されている。よって、上記トレー3の外周縁2,2は、上記切欠部9a,9a,9b,9bにより4つの部分、即ち、略「コ」字状の前方側の外周縁部2b、後方側の外周縁部2c、左右外周縁2,2における直線状の外周縁部2d,2eに分離されており、これらの外周縁部2b,2c,2d,2eは同一の高さを構成している。
【0031】
従って、上記トレー3の上面開口2aに上記フィルム5を張設すると、上記外周縁2(外周縁部2b〜2e)の各上面にフィルム5の裏面5bが接触して上記上面開口2aが閉鎖されるが、上記各切欠部9a,9bにおいては、各切欠部9a,9bの上側12aと外側12bとが上記フィルム5で閉鎖された状態となるように構成されている(図2、図3参照)。
【0032】
上記トレー3の上記下向係合溝13は、図4(a)(b)に示すように、横断面略下向きの「コ」字形状であり、その底部(上面)13’に上記係合片10の内側の延長片部10aの端縁10a’が係合(嵌合)し得るように構成されている(図4(b)参照)。
【0033】
上記下向係合溝13は、上記トレー3の左右の長手方向の外周縁2,2の下側(内側)に沿って、該外周縁2,2の全長に亘って前後方向に設けられている。従って、上記下向係合溝13は、長手方向に沿ってみると、水平部分13a,13c,13eと、上記切欠部9a,9bによって下に凸の台形状に設けられた台形部分13b,13dとから構成されており、これらの部分13a〜13eに亘って、上記下向きの「コ」字形状の下向係合溝13が連続的に形成されている(図1、図2参照)。
【0034】
一方、上記係合片10,10の上記延長片部10a,10aも、上記下向係合溝13の上記各部分13a〜13eに合うように、上記水平部分13a,13c,13eの下向係合溝13に係合し得る水平部分14a,14c,14eと、下に凸状の上記台形部分13b,13dの下向係合溝13に係合し得るように上記台形部分13b,13eと相似形をなす凹状の台形部分14b,14dを有している。
【0035】
そして、上記係合片10,10の上記延長片部10a,10aの各水平部分14a,14c,14eと台形部分14b,14dの各端縁10a’を、上記トレーの左右の下向係合溝13,13の各水平部分13a,13c,13eと各台形部分13b,13dに各々係合し得るように構成されている(図2参照)。
【0036】
上記宙吊り用合成樹脂フィルム5は、その厚さが10μm〜300μmの極めて薄い柔軟性のあるフィルムであり、その材質はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン等の薄膜透明又は半透明の熱可塑性合成樹脂フィルムが用いられる。尚、以下の実施形態において、上記宙吊り用合成樹脂フィルム5の厚さは例えば100〜200μmとする。
【0037】
この宙吊り用合成樹脂フィルム5は、図1に示すように、平坦面(表面)5aに長手方向に2個の略半球形状の凹部4,4が、熱による塑性変形により形成されている。上記凹部4の個数及び凹部の形状は任意であり、収納する物品(果実等)の個数、形状、大きさにより変更可能である。
【0038】
このような宙吊り用合成樹脂薄フィルム5は、図9に示す真空成型法により形成することができる。即ち、複数の凹部20が形成され、さらに複数の吸引用貫通孔21が形成された略直方体形状の金型22を網状板23上に水平に載置し、当該金型22上に加熱して軟化させた合成樹脂薄フィルム5を被覆し、その状態で上記吸引用貫通孔21を介して真空吸引(矢印y方向)することで、図1に示す柔軟な凹部4を有する柔軟な宙吊り用合成樹脂薄フィルム5を形成することができる。
【0039】
この宙吊り用合成樹脂薄フィルム5は、成型後においては図1に示すような形状を維持しているが、その厚さが極めて薄いため、凹部4を含め全体的に柔軟性を有しており、2つ折り或いは3つ折りに折り畳む等によりコンパクトに収納できるし、上下方向に積み重ねた場合は上記凹部4が上下方向に不定形に圧縮された状態となり、多数の合成樹脂フィルム5を積み重ねても嵩張らずに収納、運搬が可能となる。尚、上記凹部4等は不定形に圧縮した後においても、塑性変形しているため元の形状を維持しており、物品を収納することに関して何ら支障はない。
【0040】
このような上記宙吊り用合成樹脂フィルム5の少なくとも対向2辺に沿う各端縁5’,5’に、各々細長板状の上記係合片10,10を接合(例えば接着剤による接着等)する(図1参照)。尚、係合片10,10と上記フィルム5との接着部を図1中ハッチングにて示す。このように、上記フィルム5と上記係合片10,10は、その外側縁部10b,10bの部分、及び後述の係合突片11,11においてはその先端部11b,11bの部分(図1中ハッチング部分)においてのみ上記フィルム5(の裏面5b)と接着されており、上記係合片10,10より内側の延長片部10a,10a、上記係合突片11の基部11aの部分は上記フィルム5の裏面5bとは接着されていない。
【0041】
即ち、上記各係合片10,10の各々の内側端縁10b’,10b’(上記外側縁部10b,10bと上記延長片部10a,10aとの境界部)に上記フィルム5に接着(接合)せずに上記フィルム5の裏面5b側に位置する上記延長片部10a,10aを、上記係合片10,10の略全長に亘り形成する。
【0042】
上記係合片10,10及び上記係合突片11,11は、細長い略長方形の板状に形成されたものであり、厚さ1mm程度の厚紙(例えば段ボール紙)或いは合成樹脂板のような薄板状の弾性板により形成されており、上記係合突片11,11を含めて一体的に形成されている。
【0043】
上記係合片10,10の上記延長片部10a,10aは上述のように、水平部分14a,14c,14eと台形部分14b,14dから構成されているが、これら係合片10,10の外側端縁には、中央部に斜め対向方向切込14,14を入れることで、前後方向の中央の対称位置に、互いに外側方向に突出する所定幅の長方形状の係合突片11,11が上記係合片10,10と一体に形成されており、上記外側端縁の前後端コーナ部は、トレー3の上記凹部6a,6aの側面6c,6cの上向き傾斜のテーパに沿うテーパ状切込15,15が各々形成されている。
【0044】
上記係合突片11,11は、その先端部11bが基部11aより前後方向に幅広く形成されており、上記フィルム5を上記トレー3の上面開口2aに張設したとき、上記係合突片11,11を互いに対向方向(内側方向)(図5(b)矢印P2”方向)に折り曲げて、その先端部11b,11bを上記係合孔8,8内に挿入係合し得るように構成されている。そして、上記先端部11b,11bの幅は上記係合孔8,8の幅より若干大に形成されているため、上記先端部11b,11bを上記係合孔8,8内に挿入すると、上記先端部11b,11bの段部11b’,11b’が上記係合孔8,8の縁部に係合して、係合突片11,11が上記係合孔8,8から抜け止め状態となるように構成されている(図2、図8(b)参照)。
【0045】
このように、上記宙吊り用合成樹脂フィルム5の左右の係合片10,10の延長片部10a,10aの水平部分14a,14c,14e及び台形部分14b,14dの端縁10a’,10a’を、上記トレー3の左右の下向係合溝13,13の各水平部分13a,13c,13e及び台形部分13b,13dに係合した状態で、上記左右の係合突片11,11を上記トレー3の上記係合孔8,8内に挿入係合することで、図2に示すように、上記トレー3の上面開口2aに上記宙吊り用合成樹脂フィルム5を係止状態で張設することができる。
【0046】
本発明は上述のように構成されているため、以下本発明の果実等の物品の宙吊り収納トレーを構成する手順を説明する。
【0047】
まず、上面開口トレー3の上面開口2aに宙吊り用合成樹脂フィルム5を宛がう。このとき、図8(a)に示すように、上記フィルム5の長辺側の左右の係合片10,10を上記上面開口有底トレー3の長辺側の左右の上記下向係合溝13,13に対応させた状態で宛がう。
【0048】
そして、上記合成樹脂フィルム5の両側の上記係合片10,10を係合突片11,11共々、図4(a)、図5(a)に示すように、上記内側端縁10b’を中心に矢印P1方向に若干回転し、上記延長片部10a,10a及び基部11a,11aを上記フィルム5裏面5bから離間させ、図4(b)、図5(b)に示すように、上記フィルム5を上記上面開口トレー3の上面開口2aに被せ、上記フィルム5裏面5bを上記トレー3の長手方向の外周縁2,2に接触させた状態で、上記左右端部(対向2辺)のフィルム5を上記係合片10,10共々互いに対向する方向(矢印P2方向)に、トレー3の側面に沿って折り曲げて(回動させて)、上記両係合片10,10を各々上記トレー3の左右の側面に沿って配置した状態とする。
【0049】
そして、かかる状態において、上記係合片10,10を上記内側端縁10b’,10b’を基端として矢印P2’方向(図4(b)参照)にさらに回転させ、上記端縁10a’,10a’側を上方、外側縁部10b,10b側を下方に向けて、上記係合片10,10の上記延長片部10a,10aの端縁10a’,10a’を上記下向係合溝13,13の底部13’,13’に係合させた状態で、上記係合片10,10を図4(b)実線に示すように、上記トレー3の左右側面に沿って、略鉛直方向に位置させる。
【0050】
上記下向係合溝13,13と上記係合片10,10との係合は、上記トレー3の長手方向の左右に位置する上記下向係合溝13,13の全範囲に亘って行われる。よって、上記下向係合溝13,13と上記左右の係合片10,10の係合状態においては、上記下向係合溝13,13の水平部分13a,13c,13eの各底部13’に上記係合片10,10の水平部分14a,14c,14eの各端縁10a’が係合し、上記下向係合溝13,13の台形部分13b,13dの各底部13’に上記係合片10,10の台形部分14b,14dの各端縁10a’が係合する。かかる状態においては、上記係合片10,10における係合突片11,11も、図5(b)二点鎖線に示すように、上記係合片10,10と同様に、上記トレー3の左右側面に沿って略鉛直方向に位置している。
【0051】
その後、同図に示すように、上記係合突片11,11を、上記略鉛直状態から、矢印P2”方向に,互いに対向方向(内側方向)に回動してその先端部11b,11bを上記係合孔8,8内にそれらの下側から挿入し、上記先端部11b,11bの段部11b’,11b’が上記係合孔8,8を介して端面6b”,6b”の上面側に臨出するまで上記両先端部11b,11bを上記係合孔8,8の上側に押し出す(図2、図8(b)参照)。そうすると、上記段部11b’,11b’が上記係合孔8,8を介して端面6b”,6b”の上側に臨出するため、係合片10,10は上記段部11b’,11b’によって上記係合孔8,8に抜け止め状態となる。
【0052】
上記各工程により、上記宙吊り用合成樹脂フィルム5を上記トレー3の上面に係止状態で装着(張設)することができた(図2、図8(b)参照)。
【0053】
このとき、上記係合突片11,11の上記係合孔8,8への係合挿入は、上記係合片10,10を上記下向係合溝13,13内に係合して左右の係合片10,10を図4(b)のように上記トレー2の左右側面に沿って、略鉛直方向に位置させた状態において、図6に示すように、例えば左側の中指M1、1本を左側の上記係合突片11の先端部11bの外側に当て、同時に右手の中指M2、1本を右側の上記係合突片11の先端部11bの外側に当て、両方の中指M1,M2を同時に対向方向(内側方向)(矢印P2”方向)に回動して上記係合孔8,8の下側から両係合孔8,8の上側に押し込むことで、上記係合突片11,11を、その先端部11b’,11b’をワンタッチで上記係合孔8,8内に挿入して、上記係合突片11,11を抜け止め状態で上記係合孔8,8に係合することができる。このように、上記係合突片11,11の上記係合孔8,8への係合は簡単に行うことができる。
【0054】
このような上記フィルム5の上記トレー3への張設状態において、上記果実収納用の凹部4,4に桃Fを収納すればよい。すると、各桃Fの下半部に柔軟な上記凹部4,4のフィルムが密着し(図4(b)参照)、桃Fは上記凹部4,4によって上記凹部6aの底面との間に空間Sを保持した状態で、宙吊り支持される(図4(b)参照)。
【0055】
かかる宙吊り状態においては、上記桃Fの荷重がフィルム5に作用して、上記フィルム5の左右の係合片10,10に対して矢印T1方向の戻りテンションが作用する(図4(b)参照)。
【0056】
しかしながら、上記係合片10,10に対して図4(b)の矢印T1方向の戻りテンションが作用しても、かかる戻りテンションは、係合片10,10の延長片部10a,10aの端縁10a’,10a’が、上記下向係合溝13,13の底部13’,13’に当接する方向(上向き方向)に作用するので、上記係合片10,10は上記下向係合溝13,13との係合状態を維持し、従って、上記上面開口2aに張設されたフィルム5は弛むことはなく、上記桃Fを宙吊り状態で確実に支持することができる。
【0057】
さらに、上記係合片10,10の係合突片11,11の先端部11b,11bは、上記トレー3の係合孔8,8に係合装着され、上記先端部11b,11bの段部11b’,11b’により抜け止め状態となっているので(図5(b)、図2参照)、上記係合突片11,11に対して上記桃Fの荷重による矢印T2方向の上記戻りテンション(図5(b)参照)(係合突片11が上記係合孔8から抜ける方向の力)が作用したとしても、上記係合片10,10の先端部11b,11bが上記係合孔8,8から抜けることはなく、従って上記桃Fを安定して宙吊り状態に収納支持することができる。
【0058】
特に、上記係合突片11,11の先端部11b,11bが上記トレー3の上記係合孔8,8に抜け止め状態で確実に係合しているので、桃F等の比較的重量の大きい果実その他の物品を上記凹部4に収納したとしても、その荷重による上記戻りテンション(T1,T2)によって上記係合片10,10が上記下向係合溝13から外れて、或いは、上記係合突片11が上記係合孔8から外れて、上記フィルム5が弛むことはなく、重量の大きい果実等の物品の緩衝包装、宙吊り包装を確実に行うことができる。
【0059】
さらに、本発明によれば、凹部6a,6aの左右位置に切欠部9a,9bが形成されており、かかる切欠部9a,9bの上側12a、外側12bにフィルム5が被覆されているので、果実等が振動により左右方向に振動(移動)しても、果実の左右側面がトレー3に直接、接触することはなく、上記上側12a、外側12bに存在するフィルム5により緩衝されるため、果実とトレー左右側面との接触による果実の損傷をも防止することができる。
【0060】
このように、本発明の果実等の物品の宙吊り収納トレーによれば、宙吊り用合成樹脂フィルム5を上面開口トレー3に簡単に張設し、取り外することができると共に、係合突片11が上記トレー3の係合孔8に抜止状態で確実に係合しているため、比較的重量の大きい物品であっても安定して宙吊り収納することができる。
【0061】
また、上記両係合片10,10の上記各端縁10a’,10a’を上記トレー3の上記下向係合溝13に係合し上記トレー3を両手で把持した状態で、例えば両手の各中指M1,M2で上記両係合突片11,11を上記各係合孔8,8に簡単に挿入係合することができ(図6参照)、上記トレー3への上記宙吊り用合成樹脂フィルム5の張設を極めて簡単に行うことができる。
【0062】
また、接着剤等を使用しておらず、使用済トレー3からの宙吊り用合成樹脂フィルム5の取り外しが容易であるため、上記トレー3の再利用を簡易かつ確実に行うことができる。
【0063】
また、係合片10,10は例えば段ボール紙により構成することができ、上記係合片10及び係合突片11を有する宙吊り用合成樹脂フィルム5を低コストで実現することができる。
【0064】
本発明は以上のように、上面開口トレー3に対する宙吊り用合成樹脂フィルム5の取り付け取り外しを、接着剤等を使用せずに容易に行うことができるので、例えば使用後にトレー3の再利用を手間を要せずに簡易に行うことができるという効果を奏する。
【0065】
また、上記トレー3に宙吊り用合成樹脂フィルム5を簡易に着脱できるにも拘わらず、該フィルム5を上記トレー3に確実に係止状態に装着でき、当該フィルム5によって、例えば桃F等の比較的重量の大きい果実等の物品を安定して宙吊り収納することができるという効果をも奏する。
【0066】
また、上記両係合片10,10の上記各端縁10a’,10a’を上記トレー3の上記下向係合溝13に係合し上記トレー3を両手で把持した状態で、例えば両手の各中指M1,M2で上記両係合突片11,11を上記各係合孔8,8に係合することができ(図6参照)、上記トレー3への上記宙吊り用合成樹脂フィルム5の張設を極めて簡単に行うことができるという効果を奏する。
尚、図2のフィルム装着状態において、上記凹部4,4に果実(桃F等)を収納した場合は、当該トレー1の上部全体に透明の樹脂製蓋を装着することが好ましい。図1中13”,13”は、上記トレー3の短辺側の外周縁2(外周縁部2b,2c)の内側(裏面側)に設けられた下向係合溝であり、上記下向係合溝13,13と連続して設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の果実等の物品の宙吊り収納トレーは、桃等の比較的重量の大きい果実の緩衝宙吊り包装に適しているが、果実に限らず野菜等の食品の他、電子部品、電気機器の緩衝宙吊り包装用の収納トレーとしても利用することができるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 果実等の物品の宙吊り収納トレー
2 外周縁
2a 上面開口
3 上面開口トレー
4 凹部
5 宙吊り用合成樹脂フィルム
5’ 端縁
6b 隔壁
6c 側面
7a,7b 位置
8 係合孔
10 係合片
10a’ 端縁
11 係合突片
11b 先端部
13 下向係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口トレーと、該上面開口トレーの上面開口に張設され果実等の物品を収納するための柔軟な凹部が塑性変形により形成された柔軟な宙吊り用合成樹脂フィルムとを有し、上記宙吊り用合成樹脂フィルムを上記上面開口に張設した状態で上記凹部に果実等の物品を宙吊り状態で収納し得る果実等の物品の宙吊り収納トレーにおいて、
上記宙吊り用合成樹脂フィルムの対向2辺に沿う各端縁に各々係合片を接合すると共に、上記両係合片の対称位置に外側方向に突出する係合突片を各々形成し、
上記両係合片に対応する上記上面開口トレーの2辺に下向係合溝を各々設けると共に、上記上面開口トレーに上記各係合突片が挿入係合可能な係合孔を貫設し、
上記宙吊り用合成樹脂フィルムを上記上面開口に宛がうと共に上記フィルムの上記対向2辺を上記上面開口トレーの側面に沿って折り曲げて上記両係合片を各々上記上面開口トレーの左右の側面に沿って配置した状態において、上記両係合片の内側の各端縁を上記下向係合溝に各々係合すると共に、
左右の上記係合突片を上記係合孔に抜止状態で挿入係合することにより、上記宙吊り用合成樹脂フィルムを上記上面開口トレーの上記上面開口に係止状態で張設し得るように構成したものであることを特徴とする果実等の物品の宙吊り収納トレー。
【請求項2】
上記両係合片の上記内側の各端縁を上記上面開口トレーの上記下向係合溝に係合した状態において、
上記両係合突片を互いに対向方向に回動することにより、上記両係合突片を上記係合孔内に抜止状態に挿入係合し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1記載の果実等の物品の宙吊り収納トレー。
【請求項3】
上記上面開口トレーはパルプモウルド成形により形成されたパルプモウルド製であることを特徴とする請求項1又は2記載の果実等の物品の宙吊り収納トレー。
【請求項4】
上記両係合片及び上記両係合突片は薄板状の弾性板により構成されており、上記両係合突片は上記各係合孔の幅よりも若干幅広の先端部を有しており、該先端部を上記係合孔内に抜止状態に挿入係合し得るように構成したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の果実等の物品の宙吊り収納トレー。
【請求項5】
上記上面開口トレー内に、上記上面開口トレーの上記2辺間を接続して上記上面開口トレー内を分割する隔壁を設け、上記隔壁における上記2辺に近い各端部位置に上記両係合突片が挿入係合し得る上記係合孔を各々貫設したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の果実等の物品の宙吊り収納トレー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−232782(P2012−232782A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102620(P2011−102620)
【出願日】平成23年4月30日(2011.4.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 博覧会名 アグロ・イノベーション2010 主催者名 社団法人日本能率協会 開催日 平成22年11月24日〜同年11月26日
【出願人】(000206392)大石産業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】