説明

果物運搬用厚紙シート

【課題】カットした西瓜等を傷つけずに且つ持ち運びを容易にする包装シート
【解決手段】1枚のカートンからなる段ボールシート等厚紙を、カットされた西瓜等果物を包むように折り曲げ、更に1/2等にカットされた西瓜を固定するように楕円状に切込みを入れ、且つシート両端に作られた取手部の内、一方の取手部に繋がった舌片を他方の取手部に挿入することにより、包装された西瓜を持ち易くする。また、西瓜等果物のカット面を段ボールシートで覆うことにより、運搬時に果物のカット面が傷つかないようにする。更に、切り欠けと舌片を噛み合せて段ボールシートを固定することで陳列時に積み重ねを可能とし、見栄えを良くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、1/2や1/4等にカットされた西瓜などの球状果物を、傷つけること無く、持ち運び易くし、且つ商品の陳列を考慮した包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
西瓜などの球状果物は、重量が重い、1個では値段が高い、少数家族化した為1個では量が多すぎる、中身の熟れ具合が判る、などの理由により小売り段階で1/2や1/4にカットされて販売されることも多くなっており、自宅などへ運搬する際は、そのままスーパーマーケットや百貨店、八百屋、果物屋などで配布されるビニール袋に入れて運搬している。
【0003】
例えば、特許文献1では、吊り紐を利用してカットされた球状の果物を運搬する形態を提示している。
【0004】
また、特許文献2では、展示及び運搬を考慮して、カットされた西瓜をフィルムで包装する形態が提示されている。
【0005】
【特許文献1】特公昭62−009262号公報
【特許文献2】特開2002−037370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カットされた西瓜などの球状果物は、スーパーマーケットや百貨店などで配布されるビニール袋に入れられて運搬される為、運搬途中で障害物に西瓜等果物を衝突させ、果物の形状を壊すことが発生し易い。また、西瓜は重いので、1/2にカットしても持ち手にビニール袋の取手の紐が食い込み、手を傷めることがある。
特許文献1の包装容器では、包装した球状果物が落下しやすいという欠点があった。また、取手部が紐である為、重量の重い果物を運ぶ際に、保持する手に紐が食い込みやすく、手を傷めるという欠点があった。
【0007】
特許文献2の包装容器では、フィルムで包装している為、果物の果実部に傷が付き易いという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明では、以下の(1)〜(4)の構成を採用する。
(1)略長方形のシートの中央部に、
短辺に平行な2本の罫線により区画された底板部を設け、
該底板部の両側に、各々が平行な罫線を介して連接する側部、天部、取っ手部をこの順で設け、
両側の側部には、各々底部側罫線と天部側罫線の中間に各罫線に平行な折線と、該底部側罫線と天部罫線を起点とし、長辺の方向に膨らむ一対の楕円弧状スリットを設け、一方の天部の端部に切欠部を設けると同時に、他方の天部の端部に前記切欠部と対応する係止用舌片を設け、
天部の取っ手部と連接する罫線に接する手孔を設けた果物運搬用厚紙シート。
(2)天部と接する該楕円弧状スリットの内側の長さ(X)と楕円長軸長さ(3a)との比がX:3a=4:10〜6:10であり、且つ底部と接する該楕円弧状スリットの内側の長さ(Y)と楕円長軸長さ(3a)との比がY:3a=2:10〜4:10である(1)に記載の果物運搬用厚紙シート。
(3)天部の手孔の少なくとも一方は取っ手部と連接する罫線に接する部分を切断せずに残すことを特徴とする(1)または(2)に記載の果物運搬用厚紙シート。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の果物運搬用厚紙シートに、1/2にカットされた半球状の果物を底部に載せ、罫線に沿って両側の底部を折り立てて、両側の天部を重ね、天部の両端部に設けられた係止用舌片を対応する切欠部に折り込んで固定すると同時に、側部中央に設けられた折り線の切欠部から略長方形のシートの外側に設けられた部分(3b、3c、3e、3f)を内側に、切欠部から略長方形のシートの内側に設けられた部分(3a、3d)を外側に折り曲げて、果物を固定した果物包装体。
【0009】
果物に接する楕円弧状スリットの形状の決定に際し、果物の形状を考慮して楕円状に決定した。
【0010】
折れ線、破線の設置箇所及び寸法に関しては、カットされた西瓜を実際に梱包し、最適な箇所及び数値を決定した。
【0011】
持ち手部分に、一方の舌片を他方に挿入することにより、持ち運びし易くした。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明の厚紙シートを用いることにより、1/2や1/4にカットされた西瓜などを運び易くすることができる。楕円状にカットされた切欠部が、内側に包まれた西瓜などの球状果物を保持するので落下することはない。且つ、厚紙で果物を覆っているため、果物の果実部分を運搬中に傷つけることはない。
【0013】
さらに、厚紙シートで取っ手部を作成し、且つ一方に作成した舌片を他方の手孔へ挿入することで、重量のあるカットされた果物を持ち運ぶ場合での持ちやすさが格段に向上し、手を傷めることはない。
【0014】
また、陳列時において、切欠部と係止用舌片を噛み合せて固定できるので、積み重ねることが可能となり、狭いスペースの陳列棚を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1は本願厚紙シートの展開図、図2は本願厚紙シートに1/2にカットした西瓜を置いた状態の斜視図、図3は西瓜を持ち帰る状態の斜視図、図4は西瓜を陳列する際の斜視図である。実施例として図5に寸法を記載した展開図を示す。
尚、以下の説明において、西瓜に接する方の面を包装体(容器)あるいは厚紙の内側面と称し、包装体の外側になる面を外側面と称する。また、折り曲げなどの方向を示す際にも、包装体の内側に伴う動作を「内側に」と称し、外側に向かう動作を「外側に」と称する。
【0016】
図3は西瓜を持ち帰る状態の斜視図を示し、図1の1a、1b、1c、1dで示す楕円弧状スリットにより西瓜を保持しており、3a、3dを外側に折り曲げ、3b、3c、3e、3fを内側に折り曲げる。この部分を、以下には「押え部」と称する。「押え部」により果物が包装体の脇から飛び出ることを防止できる。
2a、2b、4a、4b、7、11は罫線であり、6aで形成される舌片を10に挿入することにより、持ちやすい取っ手を形成している。6aは切断線であり、6bは罫線である。
【0017】
図4は西瓜を陳列する際の斜視図を示し、図1の5a、5eで形成される係止用舌片をそれぞれ9a、9bに噛み合せることで段ボールシートを固定し、内側に西瓜を包んだ状態で陳列を可能にする。5b、5d、5f、5hは切断線であり、5c、5gは罫線である。
【0018】
以下、上記した形態の細部について説明する。
本発明の楕円弧状のスリットの位置は、以下のようにして画図して決定することができる。
まず、略長方形のシートの長手方向の中心線と、側部の天部側の罫線(以下天部罫線)と底部の罫線(以下底部罫線)の距離を二分する線の交点付近に、楕円の中心を設定する。楕円の長軸が略長方形の短辺に平行な方向で、楕円の長軸方向の頂点が長辺のやや内側に来るように楕円の大きさを設定する。その際に、楕円は底部罫線および天部罫線と必ず交わるような大きさに設定する。楕円と底部罫線とが交わる位置を15a、15b、16a、16bとし、楕円と天部罫線が交わる位置を14a、14b、17a、17bとする。スリットは14aから15aにかけて切り込みを入れることにより形成し、また、14bから15bにかけて切り込みを入れることにより形成する。
14aと14bを結んだ線分の長さをXとし、15aと15bを結んだ線分の長さをYとすると、XがYより少し長い状態が好ましい。
長さXは、楕円長軸長さの4/10〜6/10程度が好ましく、長さYは、楕円長軸長さの2/10〜4/10程度が好ましい。長さYがこの範囲より小さいと、果物の荷重により切れる可能性があるので好ましくない。長さYをこの範囲より大きくすると、結果的にシート自体が大きくなり経済的観点から好ましくない。
【0019】
側部に形成される楕円弧状のスリットは、単なる切り込み線でも良いし、幅を持った切り抜きでも良い。幅としては、2mm〜6mm程度が好ましい。
楕円の長径/短径の比率は、1.1〜1.5程度が好ましい。この範囲であれば、西瓜やメロンなどの多くのものに上手く適合し易い。しかしながら、1.0に近い値、即ち円弧状のスリットであっても使用可能である。
また楕円の長軸は、本発明の長方形シートの短辺に平行な方向である。
楕円の長軸の長さは長方形シート短辺長さの6/10〜8/10程度が好ましい。楕円の長軸長さが短辺長さに近過ぎる(スリットの頂点が長辺に近過ぎる)と果物を「押え部」の紙幅が小さくなり、強度的に弱くなる。
【0020】
側部の略中央で楕円弧状スリットの略中央に形成する前記「折れ線」は、厚紙のどちらの表面から押された罫線でも良いが、好ましくは、押え部では、シートが外側に折れやすいように、内側面から罫線を入れることが好ましい。また、楕円弧の内部では、内側に折れ易いように、外側面から罫線を入れることが好ましい。
【0021】
本発明の果物運搬用厚紙シートでは、持ち帰り用としては勿論、陳列用としても機能する。尚、本発明の段ボールシートの上記使用実態では、カットされた西瓜用として説明しているが、果物の形状(長径及び短径、等)を考慮することにより、球状及び長球状の果物(メロン、ドリアン、グレープフルーツ、マンゴー、その他)にも応用できる。
【0022】
本発明の厚紙とは、段ボールシートまたは板紙である。
【0023】
特に、段ボールシートは同米坪の板紙として、強度に優れ、包装材の軽量化、資源の節約に繋がる為、各種包装用素材として従来から広く用いられているが、本発明にも好適に用いられる。段ボールシートは、その中芯の波形状の段高及び30cm当たりの段山数によって、A段、B段、C段、E段等に分類される。JISにより規格が定められていて、いわゆる通常の段ボール箱の材料として用いられるA段、B段、C段は各々段高が約5mm、3mm、3.6mmである。これらに対し、より薄型の段ボールとして、JIS等では特に規格は決められていないが、段高が1.1〜1.4mmのE段や、それより段高の低い、F段、G段、ミニ段、マイクロフルート段ボール等と呼ばれるものが存在する。これら薄型の段ボールは、個装や内装用箱、美粧用ギフト箱、中仕切材など、通常は板紙を素材とするようないわゆる紙器の素材として使用されている。
【0024】
本発明においては、包装対象となる果物の重量や大きさに応じて、任意の段ボールシートを用いることが可能である。例えば、西瓜を包装する場合はBフルートが好適に使用される。
また、段ボールシートはフルート構造を有する為、緩衝性及び断熱性を有し、傷付き易い或いは保冷が必要な果物の包装に適する。
【0025】
本発明で用いる段ボールシート及び板紙の原紙には、雨天時の運搬や保冷による結露を考慮して、耐水性を付与することが望ましい。手段としては、表面にオーバーコートニスを表面に施したり、合成樹脂保護層を設けることができる。また、耐水板紙若しくは耐水段ボールシートを使用することができる。
【0026】
本発明で使用する厚紙には、その表面、特に外側となる面に印刷を施して、装飾性を高めることができる。また、取っ手部をテープ等で補強しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係わる段ボールシートの分解図を示す。
【図2】1/2にカットした西瓜を置いた状態の斜視図を示す。
【図3】1/2にカットした西瓜を持ち帰る状態の斜視図を示す。
【図4】1/2にカットした西瓜を陳列する場合の斜視図を示す。
【図5】実施例の寸法を示す。
【符号の説明】
【0028】
1a、1b、1c、1d…楕円弧状のスリット
2a、2b…内側に折る罫線
3a、3d…外側に折る罫線
3b、3c、3e、3f…内側に折る折線
4a、4b…内側に折る罫線
5a、5e…係止用舌片
5b、5d、5f、5h…切断線
5c、5g…罫線
6a…10に挿入する舌片を形成する切断線
6b…罫線
7、11…内側に折る罫線
8、12…取手部
9a、9b…5a、5eの舌片を噛み合せる切欠
10…取っ手を形成する切断線
13a、13b…果物の重量が掛かる側部
14a、14b、17a、17b…楕円弧状スリットと天部罫線との交点
15a、15b、16a、16b…楕円弧状スリットと底部罫線との交点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形のシートの中央部に、
短辺に平行な2本の罫線により区画された底板部を設け、
該底板部の両側に、各々が平行な罫線を介して連接する側部、天部、取っ手部をこの順で設け、
両側の側部には、各々底部側罫線と天部側罫線の中間に各罫線に平行な折線と、該底部側罫線と天部罫線を起点とし、長辺の方向に膨らむ一対の楕円弧状スリットを設け、一方の天部の端部に切欠部を設けると同時に、他方の天部の端部に前記切欠部と対応する係止用舌片を設け、
天部の取っ手部と連接する罫線に接する手孔を設けた果物運搬用厚紙シート。
【請求項2】
天部と接する該楕円弧状スリットの内側の長さ(X)と楕円長軸長さ(3a)との比がX:3a=4:10〜6:10であり、且つ底部と接する該楕円弧状スリットの内側の長さ(Y)と楕円長軸長さ(3a)との比がY:3a=2:10〜4:10である請求項1の果物運搬用厚紙シート。
【請求項3】
天部の手孔の少なくとも一方は取っ手部と連接する罫線に接する部分を切断せずに残すことを特徴とする請求項1または2に記載の果物運搬用厚紙シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の果物運搬用厚紙シートに、1/2にカットされた半球状の果物を底部に載せ、罫線に沿って両側の底部を折り立てて、両側の天部を重ね、天部の両端部に設けられた係止用舌片を対応する切欠部に折り込んで固定すると同時に、側部中央に設けられた折り線の切欠部から略長方形のシートの外側に設けられた部分(3b、3c、3e、3f)を内側に、切欠部から略長方形のシートの内側に設けられた部分(3a、3d)を外側に折り曲げて、果物を固定した果物包装体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−96407(P2006−96407A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287525(P2004−287525)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(502356517)王子チヨダコンテナー株式会社 (66)
【Fターム(参考)】