説明

架橋されたビニル芳香族ブロックコポリマーに基づく自己接着性組成物を含んでなる接着テープを用いる窓フランジのマスキング

【課題】接着マスキングテープを除去した後、自動車のガラス窓が、反応性PU窓接着剤を用いて表層材及び透明塗膜(clearcoat)のない窓フランジに取り付けられるように、窓フランジを、続く塗装及び焼き付け操作中の過剰塗装から保護するための、接着マスキングテープの使用法を提供する。
【解決手段】基材、特に陰極電気塗膜(CED)材料で被覆された基材、より好ましくは窓フランジを、単層または多層の裏打ち材及びその片面に適用された、少なくとも1つまたはそれ以上の増粘剤樹脂がブレンドされ、金属キレートで架橋しうる、少なくとも部分的に酸で改変されまたは酸無水物で改変されたビニル芳香族ブロックコポリマー、好ましくはスチレンブロックコポリマーを含んでなる自己接着性組成物で、マスキングするための接着テープの使用法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に陰極電気塗膜(CED)材料の塗布された自動車車体外板(shell)における窓フランジをマスキングするための、架橋されたビニル芳香族ブロックコポリマーに基づく自己接着性組成物を含んでなる接着マスキングテープの使用法に関する。この接着マスキングテープの目的は、マスキングテープを除去した後、自動車のガラス窓が、反応性PU窓接着剤を用いて表層材及び透明塗膜(clearcoat)のない窓フランジに取り付けられるように、窓フランジを、続く塗装及び焼き付け操作中の過剰塗装から保護することである。
【背景技術】
【0002】
自動車の窓ガラスは、普通ゴムシール材を用いて塗装された自動車に取り付けられる。最近この技術は、反応性接着剤(例えばポリウレタンに基づく)を用いる窓の取り付けに、いよいよ置き換わりつつある。この場合、窓の縁に接着剤ビーズを付与し、窓は接着ビーズが窓フランジ上に押しつけられるように配置される。
【0003】
取り付けられた窓、特にフロントガラスは、今日では車体の強化要素として働いている。極端な、自動車のひっくり返った場合、フロントガラスは屋根の支柱のたわみを防ぐ働きをする。結果として現代の自動車の事故における安全性にとって十分な結合強度が決め手となる。
【0004】
現代の自動車の仕上げは、(系統的には)次の順序での、下塗りした車体金属に適用される種々の塗膜からなる。
−電気泳動塗膜、普通陰極電気塗膜(CED)、
−表層材または機能材塗膜、
−有色表面塗膜、
−透明塗膜。
電気泳動塗装(電着塗装または電気塗装)は、塗装を電場(50−400V)の作用によって行う技術である。塗装しうる電流を流す材料を、陽極または陰極として塗料浴に導入する。この浴の壁は実施に際しては第2の電極として働く。塗料の付着量は適用される電流量に直接比例する。電気泳動塗布は下塗り(priming)に対して特に使用される。噴霧損失はなく、得られる被膜は届きにくい箇所でも非常に均一である。基材がプラスチック、ガラス、セラミックなどのように電気を通さない場合、塗布は塗料粒子の静電荷を介して行われる(静電塗装として公知)。
【0005】
すべての電気塗膜材料は、低濃度にすぎない(凡そ3%)有機溶媒を含む水に可溶(結合剤(binders)及び顔料の脱鉱物水中懸濁液)である。結果としてCED工場を操業する時火災の防護または特別な作業衛生環境の手段を講ずる必要はない。自動車工業内においては、陰極電着塗装が好適である。このCED浴は約80%程度まで水からなり、19%が結合剤及び顔料、そして僅か約1−2%が有機溶媒である。pHはわずかに酸性の、約6−6.5である。塗装の仕組みは多くの段階に分類される。水に不溶の合成樹脂は有機酸と共にだけ水に分散できるようになる。負に荷電した作業部品の領域(陰極)において、水素の発生がアルカリ境界層(pH11−13)を作る。この作業部品の表面におけるOH濃度の増大の結果として、水に溶解した塗装材料は凝縮し、細かい(fine)塗料塗膜の形で部品上に付着する。沈降を防ぐために且つデッドスペースの形成を排除するために、タンク浴を約0.2m/秒の平均流速で撹拌する。すなわちタンクの内容物に基づいて、浴は毎時4−6回循環する。塗料消費2−3kg/部品(body)の場合及び浴温約30℃において水の蒸発が無視できない場合、浴の組成を連続的に制御しなければならない。陽極で遊離される有機酸は透析システムで分離して、浴のpHを安定に維持する。これに次いで、塗料回収工程からの超ろ過、または脱鉱物水を用いて多段ゆすぎ域が存在する。
【0006】
車の窓を、塗装操作を行った後に窓フランジに取り付けるならば、また窓フランジも塗装されているならば、次の不都合が起こる。窓の接着剤をその付着基材としての透明塗膜に適応しなければならないから、企業の使用する透明塗膜材料が多数ならば、多くの適切な接着剤を蓄えておく必要があり、非常に複雑な結果をもたらす可能性がある。しかしながら、更に重要なことは、車の窓の全体の結合強度が、多段塗膜塗料システムにおける最も弱い箇所に依存し、かくして透明塗膜に対する接着剤の結合強度よりも非常に低くなるという事実である。
【0007】
それゆえに、窓を最も下の塗料塗膜、CED塗膜に適用することが有利である。業者によって使用されるCED製品の数は、典型的には透明塗膜材料の数よりも低い。第一に、この結果、窓接着剤に対して、限界を決める(defined)付着基材がほとんどない、また第二に、2つの境界層を持つ、金属/CED/窓を含んでなる系が、複雑な全体の塗装システムよりも破損の危険性を少なくする。
【0008】
陰極電気塗膜の適用後に窓フランジをマスキングするためには、特許文献1に記述されるようにPVCプラスチゾルを使用することができる。このプラスチゾルは、液体形で塗装された窓フランジに適用され、全体に塗布し(painted over)、少なくとも163℃の温度の焼き付け工程中にゲル化して堅いフィルムとなる。この技術の欠点は、焼き付けを行った後に脱マスキングするために、「グリップタッグ(grip tag)」を機械的に露呈することが必要である。この場合、電気塗膜も容易に損傷を受け、続いて腐食の危険がある。窓フランジでは、一度ならず多くの場合に、プラスチゾルの細片がくぼんだシームを満たすPVCシームシーラントと交差する(crosses)。ゲル化時にシームシーラントとPVCプラスチゾル窓フランジマスキングの間の過度な接着がしばしば観察され、問題のない脱マスキングをより困難にする。同様に、接着基材のプラスチゾルと関連する汚染で、窓接着剤及び先にプラスチゾルでマスキングされた電気塗膜間の境界において接着の失敗を生じさせる場合が観察される。結果として、窓に必要な結合の信頼性は保証されない。この欠点にはプライマーの使用で対抗できるけれど、そのような工程は、作業集約的であり、望ましくない溶媒の発生をもたらし、偶然的な透明塗膜上での染みまたは濡れの結果として、塗装を修復する必要が起こるかもしれない。
【0009】
窓フランジをマスキングするより有利な手段は、自己接着テープを使用することである。このプラスチゾルに勝る利点は、100−200μmの非常に薄い層厚さであり、対応してマスキングする基材辺りの廃棄物の重量は低下しよう。接着テープの裏打ち材が適切に設計されていれば、それは、手動ばかりでなく、自動化された工程ではロボットにより張り付けることができる。この場合にも、プラスチゾルの場合と同様に、窓接着剤及び先にマスキングされた電気塗膜間の境界において接着の失敗が明らかとなるような、接着マスキングテープの接着剤による接着基材の汚染をもたらしてはならない。
【0010】
この用途に対しては、天然ゴム、アクリルエステルコポリマー及びスチレンブロックコポリマーに基づく自己接着性組成物の使用が知られている。前者の2つを使用する場合には、度々接着の欠点が観察される。接着の欠陥は、
1.陰極電気塗膜及びその焼き付け条件、
2.窓接着剤及びその反応性、
3.接着マスキングテープ、
4.シームシーラント、表面剤、有色表面塗膜、及び透明塗膜の焼き付け条件、
の複雑な相互作用の結果として起こることが長い間認められてきた。すなわち接着の欠陥は、焼き付け条件の厳しさに、特にこの条件が塗装材料の製造業者により推奨されるような取り扱っている窓の上限に近いまたはそれより厳しい時に、対応して増大することが観察される。これに対して、窓接着剤部分上のより低度の反応性は、接着の発現に有利であることが分かっている。
【0011】
天然ゴム及びアクリルエステルコポリマーの場合、接着の欠陥が非常にしばしば起こる一方で、スチレンブロックコポリマーに基づく自己接着性組成物を有する接着マスキングテープは、窓接着剤の接着との顕著な調和性を示す。しかしながら、適用の場合、この合成ゴム群の熱不安定性に起源する他の問題が存在する。すなわち約80℃以上において、スチレンブロックコポリマーは、この温度以上で凝集に関係するスチレン領域が徐々に軟化するから凝集での弱点を示し始める。接着マスキングテープの適用時点において、成功する温度は180℃以下である。換言すれば、自己接着性組成物は、完全に液化され、最早剪断力、例えば曲面を通して結合する場合に裏打ち材の収縮の結果としてもたらされる剪断力に耐えることができない。この結果、接着マスキングテープの裏打ち材はその元の位置から引っ張られ、少なくとも部分的に自己接着性組成物がそこに残る。適用後の脱マスキングの過程において、これは自己接着性組成物の残留に帰結する。窓接着剤をそのような残留物に適用するならば、予め不十分な結合が設定されてしまう。
【0012】
特許文献2は、特に自動車の窓フランジをマスキングすることが意図された、2層を含み、1つの層が他の層の上に存在し、第1層が可塑化されたポリ塩化ビニル(PVC)を含み且つ第2層が配向されてないポリブチレンテレフタレート(PBT)を含む裏打ち材を含んでなり、自己接着性組成物が第1または第2層に適用されている、接着テープを開示している。一方が他方の上に配置された可塑化されたPVC及び未配向のPBTの2層は積層接着剤を用いないで熱と圧力をかけて互いに接合されている。
【0013】
特許文献3は、窓フランジをマスキングするための接着テープに対する裏打ち材材料として可塑化されたPVC及びポリエステルの積層物を記述している。
【0014】
特許文献4は、特に窓フランジのマスキングが意図された、片面にエチレン、酢酸ビニル、アクリルエステル、及び所望によりアクリルアミドのコポリマーに基づく自己接着性組成物が適用された裏打ち材を含んでなる接着テープを開示している。この種のコポリマーは特許文献5に記述されている。ある好適な具体例において、自己接着性組成物は以下の組成で作られる:
エチレン 10−30重量%、より好ましくは10−15重量%
酢酸ビニル 20−55重量%、より好ましくは30−35重量%
アクリルエステル 30−69重量%、より好ましくは50−60重量%
アクリルアミド 0−8重量%、より好ましくは0.5重量%
【特許文献1】ヨーロッパ特許第0655989B1号
【特許文献2】独国特許第102004063330A1号
【特許文献3】独国特許第19952211A1号
【特許文献4】独国特許第19952213A1号
【特許文献5】ヨーロッパ特許第0017986A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上に概述した従来法の欠点を示さない、または同一の程度まで示さない接着テープを用いるマスキングに対する解決策を見出だすことである。接着テープを用いるマスキングの解決は、特に予めマスキングされた領域における窓接着剤の接着欠陥をもたらさず、また適用に使用される温度において自己接着性組成物の残留に至る凝集の弱
さをもたらすべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本目的は、主たる特許請求の範囲に示されるように、架橋されたスチレンブロックコポリマーに基づく自己接着性組成物を含んでなる接着テープを用いて窓フランジをマスキングする手段によって達成される。
【0017】
従って本発明は、単層または多層の裏打ち材及びその片面に適用された、金属キレートで架橋可能で且つ少なくとも1つまたはそれ以上の粘着性付与剤樹脂がブレンドされているスチレンブロックコポリマーを含んでなる自己接着性組成物を用いてマスキングすることを含んでなる、特に陰極電気塗膜(CED)材料で被覆された基材、より好ましくは自動車窓フランジを架橋スチレンブロックコポリマーに基づく自己接着性組成物を備えた接着テープによりマスキングする方法を提供する。このスチレンブロックコポリマーは、金属キレートで錯体化させうるために少なくとも部分的に酸で改変されまたは酸無水物で改変されている。この架橋の結果として、温度安定性の多大な向上を達成することができる。普通の架橋されないスチレンブロックコポリマー組成物に対しては剪断付着破壊温度(SAFT)試験はまれに120℃以上であるけれども、キレート架橋するとこれを180℃以上まで上昇させることができる。
【0018】
マスキング溶液に使用されるマスキングテープの場合の塗膜重量は、5−80g/m、好ましくは12−40g/mである。
【0019】
CED基材に対する結合強度は1−8N/cm、好ましくは2−4N/cmである。
【0020】
適用に従う170℃で100分間までの熱負荷後のCEDの剥離強度は、2−10N/cmの範囲である。
【0021】
使用される自己接着性組成物は、好ましくは主にビニル芳香族、好ましくはスチレンからなるポリマーブロック(ブロックA)及び主に1、3−ジエン、好ましくはブタジエン及びイソプレンの重合で作られるブロック(ブロックB)を含むブロックコポリマーに基づくものである。ホモポリマー及びコポリマーブロックの両方が本発明で使用できる。得られるブロックコポリマーは、部分的に、選択的に、または完全に水素化されていても良い同一のまたは異なるBブロックを含むことができる。ブロックコポリマーは線状のA−B−Aを有することができる。同様に放射構造(radial)のブロックコポリマー、及び更に星形及び線状マルチブロック形コポリマーの使用も可能である。存在しうる更なる成分はA−Bジブロックコポリマーを含む。ビニル芳香族及びイソブチレンのブロックコポリマーも同様に本発明で使用できる。上述したポリマーのすべては単独でまたは互いに混合して使用できる。
【0022】
用いるブロックコポリマーの少なくともいくつかは酸改変または酸無水物改変されていなければならない。この改変は、主に不飽和モノカルボン酸及びポリカルボン酸、例えばフマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、或いはポリカルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、好ましくは無水マレイン酸の遊離基グラフト共重合で行われる。酸または酸無水物の画分は、好ましくは全体としてのブロックコポリマーに基づいて0.5−4重量%である。酸改変または酸無水物改変ポリマーは、好ましくはアルミニウム化合物またはチタン化合物、特にアルミニウムまたはチタンキレートを用いて架橋される。
【0023】
この種のブロックコポリマーは、商業的には例えばクレイトン(Kraton)からクレイトンFG1901及びクレイトンFG1924、及びアサヒ(Asahi)から
タフテックM1913及びタフテックM1943の名で入手できる。
【0024】
感圧接着剤は、好ましくはスチレンブロックコポリマーを20−70重量%、好ましくは30−60重量%、特に好ましくは35−55重量%の画分で有し、ブロックコポリマーの全画分が必ずしも無水物改変形である必要はない。
【0025】
上述した酸改変または酸無水物改変されたビニル芳香族ブロックコポリマーの他に、更なる酸または酸無水物を添加しても、高度の架橋を、すなわち更に向上した付着を達成することもできる。この場合、米国特許第3,970,608A号に記述されているようなモノマー酸無水物及び酸ばかりでなく、酸改変または酸無水物改変ポリマー及び酸無水物コポリマー、例えばISPの販売するガントレツ(Gantrez)の名で得られるポリビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーを用いることができる。
【0026】
粘着性付与剤として、本発明の自己接着性組成物は、主たる成分として特にビニル芳香族ブロックコポリマーの弾性体ブロックと親和性のある粘着性付与剤樹脂が使用される。これらの好適なものは、ロジン及びロジン誘導体に基づく水素化されてない、部分的に水素化されたまたは完全に水素化された樹脂、ジシクロペンタジエンの水素化されたポリマー、C、C/CまたはCモノマーストリーム(streams)に基づく水素化されてない、部分的に水素化されたまたは完全に水素化された炭化水素樹脂、α−ピネン及び/またはβ−ピネン及び/またはδ−リモネンに基づくポリテルペン樹脂、及び好ましくは純粋のC及びC芳香族の水素化されたポリマーを含む。上述した増粘樹脂は単独でまたは混合物で使用できる。
【0027】
特別な改善または性質を達成する目的で典型的に使用できる更なる添加物は次のものを含む:
・主要な酸化防止剤、例えば立体障害されたフェノール
・二次酸化防止剤、例えばホスファイトまたはチオエーテル
・加工安定剤、例えばCラジカル捕捉剤
・光安定剤、例えばUV吸収剤または立体障害されたアミン
・加工助剤
・エンドブロック強化樹脂
・充填剤、例えば二酸化ケイ素、ガラス(粉砕またはビーズ形)、アルミニウム酸化物、亜鉛酸化物、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラックなど、及び更に着色顔料及び染料
・可塑剤、例えば液体樹脂、可塑剤油または低分子量の液体ポリマー、例えば数平均分子量<1500g/モルの低分子量ポリブテン、
・所望により更なるポリマー、好ましくは本質的に弾性体。対応して使用できる弾性体は中でも単一炭化水素に基づくもの、不飽和ポリジエン、例えば天然または合成ポリイソプレンまたはポリブタジエン、化学的に実質的に飽和の弾性体、例えば飽和エチレンープロピレンコポリマー、α−オレフィンコポリマー、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、及び化学的に機能化された炭化水素、例えばハロゲン含有、アクリレート含有またはビニルエーテル含有ポリオレフィン。但しこれらは一部である。
【0028】
金属キレートの金属は、第2、3、4または5主族の金属あるいは遷移金属であってよい。特に適当な例は、アルミニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオビウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、及びセリウムを含む。アルミニウム及びチタンは特に好適である。
【0029】
金属キレートは、下式
(RO)M(XRY)
[式中、Mは上述したような金属であり、
はアルキルまたはアリール基、例えばメチル、エチル、ブチル、イソプロピルま
たはベンジルであり、
nは0またはより大きい整数であり、
X及びYは酸素または窒素であり、そしてそれぞれRに二重結合で結合していてよ
く、
はX及びYを連結するアルキレン基であり、そして枝分かれしていても、酸素ま
たは他のヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよく、
mは全数であるが、少なくとも1である]
で表すことができる。
【0030】
好適なキレート配位子は、次の化合物の反応からもたらされるものである:トリエタノールアミン、2、4−ペンタンジオン、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、または乳酸。特に好適な架橋剤はアルミニウムアセチルアセトネート及びチタンアセチルアセトネートである。
【0031】
ここに、最適な架橋を達成するために酸または酸無水物基とアセチルアセトネート基を凡そ当量割合での選択を目標とすべきである。但し架橋剤の少過剰量は有望である。しかしながら無水物基とアセチルアセトネート基との比は、変えることができる。この場合、十分な架橋に対するこの目標は、2つの基のいずれもが5倍以上のモル過剰量で存在すべきでないことである。
【0032】
接着剤マスキングテープの適当な裏打ち材は、本質的に30−300μmの厚さを有するすべての軟質シート様材料、たとえば重合体フィルム、紙、金属ホイルまたはテキスタイル(織り布、不織布)を含む。局面の周囲に適用する場合を含めて接着マスキングテープを適用する場合に必要とされる適合性のために、また使用後の接着テープの脱マスキング中に必要とされる靭性のために、重合体フィルムは好ましく適当である。特に言及しうるものは、ポリエステルフィルム(特にポリエチレンテレフタレートPET、グリコール改変ポリエチレンテレフタレートPETG、またはポリエチレンナフタレートPEN、及びこれらの金属化された、共押出しされた及び/またはプライマー処理されたもの)、ポリイミドフィルム、PVCフィルム、好ましくは可塑化されたPVCフィルム、及びポリオレフィンフィルム(ポリエチレン及びそのコポリマー、ポリプロピレン及びそのコポリマー、並びにこれらのブレンド)を含む。特に適当なものは、同一のまたは異なるポリマーフィルムの或いは重合体フィルム及び紙及び/またはテキスタイル(織り布、不織布)の2層または多層積層物である。この積層物は例えば天然ゴム、合成ゴム、またはアクリルエステル重合体に基づく自己接着性組成物で接合されていてよい。また適当には、ホットメルト接着剤、例えばエチレンコポリマー(例えばエチレン−酢酸ビニル、エチレン−アクリル酸、またはエチレン−無水マレイン酸コポリマー)、或いは例えばポリウレタンまたはエポキシに基づく反応性積層接着剤であってよい。ある場合には、熱で誘導される積層も可能である。積層物の被覆または積層に先立って、フィルム表面は、コロナ放電、火炎処理、プラズマコーティングまたは湿式化学下塗りによって随時予備処理して、付着を向上させてもよい。積層操作中、付着物の組み合わせはエンボスダイを用いて構造体にしてもよい。本質的に自己接着性組成物を被覆する面に優先される側(preferential side)ない。裏打ち材の表面の性質に依存して、適当な下塗り剤は、自己接着性組成物の付着(anchorage)を改善するために有利である。
【0033】
取り扱いを容易にする為に、接着テープの接着剤のない反対面には、シリコーン、有機弗素化合物またはポリ塩化ビニルステアリルカーバメートを含んでなる巻きほどき力を減じるラッカーを適用することができる。他に接着テープを、容易に剥離できる剥離紙(liner material)、例えばシリコーンを被覆した紙に適用してもよい。
【0034】
合理的な適用幅は、設置する窓の寸法に依存して10−30mmである。局面の結合には、皺のないように適用するために15mmを越えるべきでなく、さもなければこれが実質的に不可能である。しかしながら、それは10mmよりも狭くてはならない。この場合に露呈される陰極電気塗膜への窓接着剤の信頼できる付着のために十分大きな面積となる。ロボットによる適用には12−15mmの作業幅が典型的である。
【0035】
本発明の概念に更に包含されるものは、本発明のマスキング溶液でマスキングされた窓フランジ、及び更に本発明のマスキング溶液でマスキングされた窓フランジを有する自動車がある。
【0036】
本発明のマスキング溶液は、実施例を参照して、好適な具体例において記述される。しかしこの具体例はいずれの具合にも本発明を限定するものではない。更に不適当なマスキング溶液を示す対照実施例も提示する。
【0037】
[実施例]
マスキングを行うための接着テープが以下に記述される。
【実施例1】
【0038】
クレイトンFG1901(SEBS、ジブロックなし、スチレン含量30重量%(以下は%だけで表示)及びグラフト形で無水マレイン酸約2%、クレイトン社製)50部、クレイトンFG1924(SEBS、ジブロック約40%、ポリスチレンブロック13%及び無水マレイン酸約1%、クレイトン社製)50部、レガライト(Regalite)R1100(軟化点約110℃の水素化された炭化水素樹脂、イーストマン(Eastman)製)20部、及びアルミニウムアセチルアセトネート2部からなる接着剤を、9:1の割合のトルエン及びイソプロパノールの混合物に溶解し、この溶液を100mμのPETフィルムに、塗布バーを用いて、乾燥して接着剤塗膜重量が25g/mになるように直接被覆した。この使用に先立って、試料をシリコーン処理した剥離紙で被覆した。
【実施例2】
【0039】
クレイトンFG1901の50部、クレイトンFG1924の50部、ペンタリン(Pentlyn)H(水素化されたロジンエステル、イーストマン製)120部、オンディナ(Ondina)G41(低ナフタレン画分のホワイトオイル、シェル(Shell)製)15部、及びチタンアセチルアセトネート2部の組成を有する接着剤を用いる以外、実施例1に従った。
【実施例3】
【0040】
クレイトンFG1901の50部、クレイトンFG1924の50部、ダーコライト(Dercolyte)A115(軟化点約115℃のα−ピネン樹脂、DRT製)70部、ウィングタック(Wingtack)10(液体炭化水素樹脂、グッドイヤー(Goodyear)製)40部、及びアセチルアセトネート2部の組成を有する接着剤を用いる以外、実施例1に従った。
【対照実施例1】
【0041】
クレイトンG1650(SEBS、ジブロックなし、スチレン含量30%、無水マレイン酸なし、クレイトン社製)50部、クレイトンG1657(SEBS、ジブロック約40%、ポリスチレンブロック13%、無水マレイン酸なし、クレイトン社製)50部、レガライト(Regalite)R1100の90部、及びレガライトR1010の20部からなる接着剤を用いる以外、実施例1に従った。
【対照実施例2】
【0042】
クレイトンG1650の50部、クレイトンG1657の50部、ペンタリンHの120部、及びオンディナG41の15部の組成を有する接着剤を用いる以外、実施例1に従った。
【対照実施例3】
【0043】
ジフェニルメタンジイソシアネート1部と混合した天然ゴム2部のトルエン溶液を、塗膜重量0.3g/mで下塗りする以外、実施例1に従った。下流操作では、このプライマーに天然ゴム自己接着性組成物を塗布した。この自己接着性組成物は天然ゴム100部、酸化亜鉛10部、ペンタリンH20部、ブルカレセン(Vulkaresen)PA510(反応性アルキルフェノール樹脂、シェネクタディ(Schenectady)製)10部、レガライトR1100の50部、及びオンディナG41の5部からなった。
【対照実施例4】
【0044】
ポリ塩化ビニリデンのトルエン溶液を下塗りする以外、実施例1に従った。下流操作では、このプライマーにアクリルエステルコポリマーを自己接着性組成物として塗布した。この自己接着性組成物はブチルアクリレート40部、2−エチルヘキシルアクリレート40部、酢酸ビニル12部、メチルアクリレート5部、及びアクリル酸3部からなった。
【試験尺度】
【0045】
本発明で述べた問題点に対して重要と考えられる、従って使用された決定的な試験尺度は以下の通りであった。
・規定された半径を持つ結合における熱負荷後の陰極電気塗膜上での接着剤残留物
・実施例に記述したマスキング接着テープで形式上結合された箇所における窓接着剤の付着欠陥
【試験法】
【0046】
接着剤残留物
塗布した試料から、幅15mmの細片を試験片として切り取った。この試験片を、可能な限り皺のないように且つ200mmの半径で、陰極電気塗膜を塗布した金属パネル(カソガード(Cathoguard)500、BASF製)に付着させ、製造業者仕様に従って焼付けた;この付着は焼き付け物の僅かな伸長の場合だけ可能であった。続いてこのように結合したパネルを170℃に予熱した加熱室に入れ、1時間放置した。パネルの冷却後、試験片の外半径を接着剤残留物に関して評価した。
評価の尺度は次の通りであった。
+ 接着剤残留物なしまたは微量
− 接着剤残留物明白
【0047】
付着欠陥
塗布した試料から、幅15mmの細片を試験片として切り取った。この試験片を、皺のないように、陰極電気塗膜を塗布した金属パネル(カソガード(Cathoguard)500)に直線的に付着させ、製造業者仕様に従って焼付けたこのように結合させたパネルを170℃に予熱した加熱室に入れ、1時間40分放置した。パネルの冷却後、試験片を取り出し、改良された加工のために50℃まで予熱した反応性の1成分PU窓接着剤(シカフレックス(Sikaflex)DM2、シカ(Sika)製)を、幅約1cm及び高さ1cmの三角形のビーズ(bead)形で、先の結合の箇所に適用した。底部が陰極電気塗膜上に位置する三角形の側面を、続いてビーズが高さ約0.5cm及び幅約1.2cmを有するように、ポリエチレン板で平らに押しつけた。この金属パネルを23±1℃及び相対湿度50±1%で10日間貯蔵し、接着剤を硬化させた。硬化後、接着剤のビーズを1つの準備された端で持ち上げ、約90°の角度で金属パネルから剥離した。結合が有効であったならば、もっぱら接着剤ビーズ内で付着欠陥が起こる。すなわち陰極電気塗膜に対して付着欠陥はない。従って、ナイフで付着的に破損しているビーズ残部中へ、電気塗膜に至るまで切り込みを入れることによってビーズの連続した剥離が達成できる。
【0048】
付着欠陥の場合、接着剤のビーズは実質的な残部なしに電気塗膜から剥離できる。付着画分の割合が10%以上ならば、試験は欠陥として分類される。
【0049】
用いた評価基準は次の通りであった。
+ 10%以下の付着欠陥
− 10%以上の付着欠陥
【結果】
【0050】
マスキング溶液の結果を下表に要約する。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明のマスキング溶液は両方の重要な評価尺度に同時に適合し、一方従来法の対照溶液はその1つだけに適合する、すなわち不適当であるということが明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、特に陰極電気塗膜(CED)材料で被覆された基材、より好ましくは窓フランジをマスキングするための、単層または多層の裏打ち材及びその片面に適用された、少なくとも1つまたはそれ以上の粘着付与剤樹脂がブレンドされ、金属キレートで架橋しうる、少なくとも部分的に酸で改変されまたは酸無水物で改変されたビニル芳香族ブロックコポリマー、好ましくはスチレンブロックコポリマーを含んでなる自己接着性組成物を有する接着テープの使用法。
【請求項2】
酸または酸無水物の画分が全体としてのブロックコポリマーに基づいて0.5−4重量%である、請求項1の接着テープの使用法。
【請求項3】
接着剤が、20−70重量%、好ましくは30−60重量%、より好ましくは35−55重量%のビニル芳香族ブロックコポリマーの画分を有する、請求項1または2の接着テープの使用法。
【請求項4】
ビニル芳香族ブロックコポリマーがビニル芳香族、好ましくはスチレン(Aブロック)、及び1、3−ジエン、好ましくはブタジエン及びイソプレンの重合で得られるブロック(ブロックB)で形成されている、請求項1−3の少なくとも1つの接着テープの使用法。
【請求項5】
接着剤が、少なくとも1つの、酸で改変されたまたは酸無水物で改変されたビニル芳香族ブロックコポリマー、
下式
(RO)M(XRY)
[式中、Mは第2、3、4または5主族の金属あるいは遷移金属であり、
はアルキルまたはアリール基であり、
nは0またはより大きい整数であり、
X及びYは酸素または窒素であり、そしてそれぞれRに二重結合で結合していてよ
く、
はX及びYを連結するアルキレン基であり、そして枝分かれしていても、酸素ま
たは他のヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよく、
mは整数であるが、少なくとも1である]
の少なくとも1つの金属キレート、及び更に
少なくとも1つの粘着性付与樹脂、
からなる、請求項1−4の少なくとも1つの接着テープの使用法。
【請求項6】
用いるキレート配位子が次の化合物、トリエタノールアミン、2、4−ペンタンジオン、2−エチル−1、3−ヘキサンジオールまたは乳酸の反応で生成する配位子である、請求項1−5の少なくとも1つの接着テープの使用法。
【請求項7】
用いる架橋剤がアルミニウムアセチルアセトネート類及びチタンアセチルアセトネート類である、請求項1−6の少なくとも1つの接着テープの使用法。
【請求項8】
接着剤が更なるブレンド成分、特に可塑剤、老化防止剤、加工助剤、充填剤、染料、安定剤を含んでなる、請求項1−7の少なくとも1つの接着テープの使用法。
【請求項9】
接着剤の裏打ち材への塗布重量が5−80g/m、好ましくは12−40g/mである、請求項1−8の少なくとも1つの接着テープの使用法。
【請求項10】
接着テープのCED基材への結合強度が1−8N/cm、好ましくは2−4N/cmであり、及び/または170℃で100分間までの適用法に従う熱露呈後の陰極電気塗膜からの剥離強度が2−10N/cmの範囲である、請求項1−9の少なくとも1つの接着テープの使用法。
【請求項11】
請求項1−10の少なくとも1つの接着テープでマスキングされた窓フランジ。
【請求項12】
請求項1−11の少なくとも1つの接着テープでマスキングされた窓フランジを含む車。

【公開番号】特開2007−308698(P2007−308698A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124270(P2007−124270)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(501237327)テサ・アクチエンゲゼルシヤフト (62)
【Fターム(参考)】