説明

架橋ポリウレタンを含有し、さらに追加の反応性成分を含有する生地用インクジェットインク

主成分として、印刷後硬化剤、および、ポリウレタンの調製に用いられる選択されたジオールを含む架橋ポリウレタン分散質バインダ添加剤を有するインクジェットインクを提供する。ジオールとしては、ポリエーテルジオール、イオン性ジオールおよびポリカーボネート、ポリアミドおよびポリ(メタ)アクリレートジオールが挙げられる。これらのインクは、異なる媒体への印刷に用いられることが可能であり、生地への印刷に特に好適である。印刷された生地は、重要な洗濯堅牢度および色落ちテストに対して特に耐久性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年5月8日出願の米国仮特許出願第61/126873号明細書に基づく米国特許法第119条による優先権を主張する。
【0002】
本発明は、インクジェットインクに関し、より具体的には、特定のジオールから生成される1種または複数種の架橋ポリウレタン分散質バインダ、および、印刷後硬化により反応するバインダに対する反応性成分を含有する顔料インクジェットインクに関する。印刷後硬化は、ポリウレタン分散質における架橋性とは独立している。これらのバインダは、生地印刷用インクにおける使用に特に好適であり、これらのインクで形成された印刷された生地では、洗濯堅牢度および色堅牢度が向上する。これらのバインダでは加水分解安定性も向上し、従って、これらのバインダを利用するインクでは、保管安定性が向上する。
【背景技術】
【0003】
好適なこのような生地用のデジタル印刷システムが、例えば、共有の米国特許出願公開第20030128246号明細書および米国特許出願公開第20030160851号明細書に開示されている。印刷速度の高速化のためにインクジェットハードウェアの改良がなされているが、色堅牢度を向上させる方法も見出されなければ、生地産業におけるインクジェット印刷の利用は妨げられてしまうこととなるであろう。
【0004】
インクジェット印刷、特に顔料インクでのインクジェット印刷の欠点は、インクジェット印刷された布は特に摩擦による色落ちがし易く、それ故、耐久性に劣っていることである。しかも、インクジェット印刷、特に顔料インクでのインクジェット印刷の他の欠点は、インクジェット印刷された布は、生地に要求される洗濯条件に耐えられないことである。印刷された色は、洗濯されると退色し、洗濯の最中に洗濯中の他の布または洗濯機の部品に不適切に色移りする可能性がある。しかも、商業的な消費用に形成されたインクは、長期間の保管条件に耐えなければならない。インクは、インク特性またはもたらされる印刷物の特性のいずれにおいても劣化することはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、インク安定性の向上、ならびに、特に着色剤が顔料である場合の生地上のインクジェット画像の耐久性の向上に対する要求が技術分野に存在する。
【0006】
それ故、本発明は、保管安定性が向上したインクジェットインク、ならびに、特に洗濯の結果に対する耐久性および色堅牢度が向上したインクジェット印刷生地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態においては、インクの安定性およびインクジェット印刷生地の洗濯堅牢度格付けを、着色剤、印刷後硬化剤および第1の架橋ポリウレタン分散質を有する水性ビヒクルを含むインクジェットインク組成物を用いることにより商業的に許容可能なレベルに向上させることが可能であり、ここで、インクは、インクの総重量を基準にして架橋ポリウレタン分散質を約0.5重量%超から約30重量%の量で含み、ならびに、架橋ポリウレタン中の架橋の量はTHF不溶分テストによる計測で約1重量%超、かつ、約50重量%未満であり、ここで、架橋ポリウレタンは、少なくとも第1のジオールZ、第2のジオールZ、および、第3のジオールZから形成され、ここで
【0008】
【化1】

(式中、pは2以上であり、
mは3以上〜約36であり;
、R=水素、アルキル、置換アルキル、アリールであり;ここで、RまたはRは各置換メチレン基について同一であるか異なっており、Rと、RまたはRとは結合して環構造を形成することが可能である);
はイオン基で置換されたジオールであり;
は、ポリカーボネートジオール、ポリアミドジオールおよびポリ(メタ)アクリレートジオールからなる群から選択され;
着色剤は、顔料および染料、または、顔料と染料との組み合わせから選択され、ならびに、印刷後硬化剤は、アミドおよびアミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂およびブロック化イソシアネートから選択される。
【0009】
あるいは、インクジェットインク組成物は、着色剤、印刷後硬化剤、ならびに、第2の架橋ポリウレタン分散質および第3の架橋ポリウレタン分散質を有する水性ビヒクルを含み、ここで、インクは、第2の架橋ポリウレタン分散質を、インクの総重量を基準にして約0.25重量%超から約30重量%の量で含み、第3の架橋ポリウレタン分散質を、インクの総重量を基準にして約0.5重量%超から約30重量%の量で含み、ここで、第2の架橋ポリウレタン中の架橋の量はTHF不溶分テストによる計測で約1重量%超、かつ、約50重量%未満であり、第3の架橋ポリウレタン中の架橋の量はTHF不溶分テストによる計測で約1重量%超、かつ、約50重量%未満であり、第2の架橋ポリウレタンは少なくとも第1のジオールZおよび第2のジオールZから形成され、第3の架橋ポリウレタンは少なくとも第2のジオールZおよび第3のジオールZを含み、ここで、Z、ZおよびZは上記に定義されているとおりであり、着色剤は、顔料および染料、または、顔料と染料との組み合わせから選択され、ならびに、印刷後硬化剤は、アミドおよびアミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂およびブロック化イソシアネートから選択される。
【0010】
他の実施形態は、インクジェットインク中の着色剤で印刷された生地の耐久性を向上させるために有利であり、インクジェットインク印刷生地に対する商業的に許容可能な耐久性が達成可能である。既述のポリウレタンバインダの研究(米国特許出願公開第2005/0182154号明細書)において、これらのバインダは劣った保管安定性を有しており、保管の後に用いた場合には劣った洗濯堅牢度および色落ちの印刷生地をもたらすことが示された。意外なことに、インクが、印刷後硬化剤を有し、かつポリウレタン中のすべての3種のジオールZ、ZおよびZの化学的組み合わせと、一度に2種のジオール(Z、ZおよびZおよびZ)の物理的混合物との両方を有する場合、向上したバインダ性能、および、従って、特に洗濯堅牢度に対する向上した印刷耐久性がもたらされる。
【0011】
それ故、さらなる実施形態においては、水性ビヒクル、着色剤、印刷後硬化剤、および、上記の特定のジオール組み合わせのいずれかにより配合される1種または複数種の架橋ポリウレタン分散質を含むインクジェットインク組成物が提供され、ここで、着色剤は水性ビヒクル中に可溶性または分散性であり、架橋ポリウレタン分散質対着色剤の重量比は少なくとも約0.2である。インクジェットインクは、インクまたは結果として印刷される画像の最終的に所望される特性を得るために要求される、他の周知の添加剤または補助剤を任意により含んでいてもよい。
【0012】
インクジェットインク中の着色剤は、インクの総重量を基準にして約0.1〜約30重量%の範囲であることが好ましく、顔料であることが好ましい。架橋ポリウレタン分散質は、インクの総重量を基準にして約1重量%超であることが好ましい。2種以上の架橋ポリウレタン分散質が用いられる場合、分散質の量は、インクの総重量を基準にして約1重量%超であることが好ましい。架橋ポリウレタン中の架橋の量は、以下においてさらに詳細に議論されているTHF不溶分テストによる計測で約1重量%超、かつ、約50重量%未満であることが好ましい。
【0013】
他の実施形態によれば、少なくとも3色の異なる有色インクジェットインクを含むインクジェットインクセットが提供され、ここで、インクの少なくとも1種が上記に記載のインクジェットインクである。
【0014】
さらに他の実施形態においては:
(a)デジタルデータ信号に対応するインクジェットプリンタを提供するステップ;
(b)印刷されるべき基材をプリンタに装填するステップ;
(c)上記に記載されかつ以下にさらに詳細に説明されているインク、または、上記に記載されかつ以下にさらに詳細に説明されているインクジェットインクセットをプリンタに装填するステップ;および
(d)デジタルデータ信号に対応して、基材上にインクまたはインクジェットインクセットを用いて印刷するステップ
を含む基材上へのインクジェット印刷方法が提供されている。
【0015】
上記のとおり、本発明によるインクおよびインクセットは、特にインクジェットインクとして、より特定的には生地印刷用のインクジェットインクとして有用である。従って、好ましい基材は生地を含む。
【0016】
印刷された生地およびいずれかの他の基材は、印刷後に融着プロセスに供されてもよく、かつ供されることが好ましい。融着プロセスでは、熱および圧力の組み合わせに印刷された生地または他の基材を供することが必要であり、これは、一般に、特に着色剤が顔料である場合に、生地の耐久性を向上させることが見出されている。特に、熱および圧力の後処理の組み合わせは、洗濯堅牢度および着色格付けを向上させることが見出されている。
【0017】
さらに他の実施形態は、顔料インクジェットインクでインクジェット印刷されたインクジェット印刷生地であり、前記印刷された生地は、少なくとも3の洗濯堅牢性(2AテストとしてAATCC試験法61−1996に準拠して計測)、および、AATCC試験法による計測で少なくとも3.5の色落ち格付けを有する。あるいは、洗濯堅牢度は、印刷後の印刷の色と、3回の洗濯サイクル後の印刷の色とを比較することにより計測することが可能である。
【0018】
本発明のこれらのおよび他の特性および利点は、以下の詳細な説明を読むことにより当業者によってより容易に理解されるであろう。明確さのために上述されかつ個別の実施形態の文脈において後述されている本発明の一定の特性はまた、単一の実施形態における組み合わせでももたらされ得ることが認められる。反対に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の種々の特性もまた、個別に、または、任意のサブコンビネーションでもたらされ得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
そうでないと定義されていない限りにおいて、本明細書において用いられているすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通例理解されるものと同一の意味を有する。抵触する場合には、定義を含めて本明細書が優先される。
【0020】
他に記載されていない限りにおいて、すべての割合、部、比等は重量基準である。
【0021】
量、濃度または他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値および好ましい下方値の列挙のいずれかとして記載されている場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかにかかわらず、いずれかの範囲上限または好ましい値と、いずれかの範囲下限または好ましい値とのいずれかの対から形成されるすべての範囲を特定的に開示していると理解されるべきである。本明細書において数値の範囲に言及されている場合、他に明記されていない限りにおいて、この範囲は、その端点、ならびに、その範囲内のすべての整数および分数を含むと意図されている。本発明の範囲が、範囲を定義する際に言及された特定の値に限定されることは意図されていない。
【0022】
「約」という用語が値または範囲の端点の説明において用いられている場合、この開示は、参照された特定の値または端点を含むと理解されるべきである。
【0023】
特定的に記載されている場合を除いて、本明細書における材料、方法および実施例は単に例示的であり、限定的であるとは意図されない。本発明の実施またはテストにおいて、本明細書に記載のものと同様であるかまたは同等の方法および材料を用いることが可能であるが、好適な方法および材料が本明細書に記載されている。
【0024】
水性インクは着色剤、架橋ポリウレタン分散質バインダおよび他のインク成分を含み、ここで、着色剤は水性ビヒクル中に可溶性または分散性である。
【0025】
本発明によれば、「ポリウレタン分散質」という用語は、当業者によってこれらの用語が理解されるとおり、ウレタン基(例えば、ポリウレタン)を含有するポリマーの水性分散体/エマルジョンを指す。本発明の水性架橋ポリウレタン分散質は架橋ポリウレタンを含み、それ故、ポリウレタンがいくらかの架橋を含有する水性安定ポリウレタンエマルジョンまたは分散体である。ポリウレタン分散体/エマルジョンバインダをインクジェットインク中の他の分散体および成分と区別するために、これらは、本明細書においてポリウレタン「分散質」と称される。
【0026】
架橋ポリウレタン分散質が、水性ビヒクル、印刷後硬化剤、および着色剤と組み合わされて、すべての基材への印刷に用いられることが可能であり、生地に特に有用である安定なインクジェットインクがもたらされる。架橋ポリウレタンは、他のインクジェットインク成分への添加の前に、その架橋のすべてが完了していることが好ましい。インク成分の添加順は任意の簡便な順番であることが可能である。
【0027】
理論には束縛されないが、ポリエーテルジオール(Z)と、Zにより表される選択されたジオールとの組み合わせは、特に、生地印刷に必要とされる要求に対して、顕著に向上した性能をもたらすインクに対するバインダ系をもたらすと考えられている。意外な態様の1つは、Z、ZおよびZの各々が架橋ポリウレタンの調製の最中にイソシアネート反応性成分として存在する化学的混合物と、ジオールZおよびZから形成される架橋ポリウレタンならびにジオールZおよびZから形成される架橋ポリウレタンの物理的混合物との両方が、等しく、この向上した結果をもたらすことが可能であることである。印刷後硬化剤を提供することで、これまで達成できなかったレベルまで耐久性がさらに増強される。
【0028】
架橋ポリウレタン分散質において用いられることが可能であるポリウレタンの例が以下に記載されている。上記のとおり、ポリウレタン中の架橋は、インク配合物への添加の前に達成されていることが好ましい。
【0029】
着色剤
本発明のインク用の好適な着色剤は、染料などの可溶性着色剤、および、分散顔料(顔料と分散剤)および自己分散性顔料などの不溶性着色剤を含む。アニオン性、カチオン性、両性およびノニオン性染料などの従来の染料が本発明において有用である。このような染料は、当業者に周知である。アニオン性染料は、水溶液中で、着色されたアニオンが得られる染料である。カチオン性染料は、水溶液中で、着色されたカチオンが得られる染料である。典型的には、アニオン性染料は、カルボン酸基またはスルホン酸基をイオン性部分として含有する。カチオン性染料は、通常、第4級窒素族を含有する。
【0030】
本発明において最も有用であるアニオン性染料のタイプは、例えば、酸性染料、直接染料、食品染料、媒染染料および反応染料である。アニオン性染料は、ニトロソ化合物、ニトロ化合物、アゾ化合物、スチルベン化合物、トリアリールメタン化合物、キサンテン化合物、キノリン化合物、チアゾール化合物、アジン化合物、オキサジン化合物、チアジン化合物、アミノケトン化合物、アントラキノン化合物、インジゴイド化合物およびフタロシアニン化合物からなる群から選択される。
【0031】
本発明において最も有用であるカチオン性染料のタイプとしては、主に、繊維などの基材上の酸性部位に結合するよう設計された塩基性染料およびいくつかの媒染染料が挙げられる。このような染料の有用なタイプとしては、アゾ化合物、ジフェニルメタン化合物、トリアリールメタン、キサンテン化合物、アクリジン化合物、キノリン化合物、メチンまたはポリメチン化合物、チアゾール化合物、インダミンまたはインドフェニル化合物、アジン化合物、オキサジン化合物、およびチアジン化合物、とりわけ、当業者に周知であるすべてのものが挙げられる。
【0032】
有用な染料としては、(シアン)Acid Blue9およびDirect Blue199;(マゼンタ)Acid Red52、Reactive Red180、Acid Red37、CI Reactive Red23;および(イエロー)Direct Yellow86、Direct Yellow132およびAcid Yellow23が挙げられる。
【0033】
本発明における使用に好適な顔料は、一般に、水性インクジェットインク用に技術分野において周知であるものである。伝統的に、顔料は、高分子分散剤または界面活性剤などの分散剤によって安定化されて、ビヒクル中の顔料の安定な分散体がもたらされる。しかしながら、より最近においては、いわゆる「自己分散性(self−dispersible)」または「自己分散性(self−dispersing)」顔料(以下「SDP」)が開発されてきている。名称が意味するであろうとおり、SDPは、分散剤無しでも水中に分散性である。本明細書において用いられる水性インク中に不溶性であるため、分散された染料もまた顔料とみなされる。
【0034】
添加される分散剤によって安定化される顔料は、技術分野において公知である方法によって調製され得る。一般に、安定化された顔料を濃縮形態で形成することが望ましい。安定化された顔料は、先ず、水性キャリア媒体(水および、任意により、水和性の溶剤など)中に選択された顔料および高分子分散剤を予混合し、次いで、顔料を分散または解膠させることにより調製される。分散ステップは、2−ロールミル、媒体ミル、水平ミニミル、ボールミル、磨砕機において、または混合物を、液体噴射相互作用チャンバ内の複数のノズルに、少なくとも5,000psiの液体圧力で通過させて、顔料粒子の水性キャリア媒体中の均一な分散体(マイクロ流動化装置)を生成することにより達成され得る。あるいは、濃縮物は、高分子分散剤および顔料を圧力下での乾燥ミルにより調製され得る。
【0035】
ミルプロセスが完了した後、顔料濃縮物は、水性系中に「薄め」られ得る。「薄め」られるとは、混合または分散での濃縮物の希釈を指し、混合/分散の強度は、通常、試行および慣例の方法を用いる誤差により判定され、および度々、高分子分散剤、溶剤および顔料の組み合わせに依存する。
【0036】
顔料を安定化させるために用いられる分散剤は、高分子分散剤であることが好ましい。構造化またはランダムポリマーのいずれかが用いられ得るが、構造化ポリマーが、技術分野において周知である理由のために、分散剤としての使用に好ましい。「構造化ポリマー」という用語は、ブロック、分岐またはグラフト構造を有するポリマーを意味する。構造化ポリマーの例としては、米国特許第5085698号明細書に開示されているものなどのABまたはBABブロックコポリマー;欧州特許出願公開第A−0556649号明細書に開示されているものなどのABCブロックコポリマー;ならびに、米国特許第5231131号明細書に開示されているものなどのグラフトポリマーが挙げられる。用いられることが可能である他の高分子分散剤は、例えば、米国特許第6117921号明細書、米国特許第6262152号明細書、米国特許第6306994号明細書、米国特許第6433117号明細書、ならびに、共有で、かつ、同時係属中の米国仮特許出願第61/005,977号明細書(2007年12月10日に出願)に記載されている。
【0037】
本発明における使用に好適なポリマー分散剤は、一般に、疎水性モノマーおよび親水性モノマーの両方を含む。ランダムポリマーにおいて用いられる疎水性モノマーのいくつかの例は、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレートおよび対応するアクリレートである。親水性モノマーの例は、メタクリル酸、アクリル酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩である。また、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの第4級塩も用いられ得る。
【0038】
広く多様な有機顔料および無機顔料が、単独でまたは組み合わせで選択されてインクが形成され得る。「顔料」という用語は、本明細書において用いられるところ、不溶性着色剤を意味する。顔料粒子は、インクジェット印刷デバイス、特に、通常は約10ミクロン〜約50ミクロンの範囲の直径を有する噴射ノズルを通るインクの自由な流れが許容されるように十分小さいものである。粒径はまた、インクの寿命を通して重要である顔料分散安定性にも影響を有する。微小粒子のブラウン運動は粒子の凝集の防止を補助するであろう。最大色濃度および光沢のために小さい粒子を使うことも所望される。有用な粒径の範囲は、典型的には約0.005ミクロン〜約15ミクロンである。好ましくは、顔料粒径は、約0.005〜約5ミクロン、および、最も好ましくは、約0.005〜約1ミクロンの範囲であるべきである。動的光散乱により計測される平均粒径は、好ましくは約500nm未満、より好ましくは約300nm未満である。
【0039】
選択された顔料は、乾燥形態または湿潤状態で用いられ得る。例えば、顔料は、通常は、水性媒体中で製造され、得られる顔料は、水湿潤プレスケーキとして得られる。プレスケーキ形態においては、顔料は、乾燥形態における程度にまでは凝集していない。それ故、水湿潤プレスケーキ形態の顔料は、乾燥形態での顔料ほどのインクの調製プロセスにおける解凝集は必要とされない。代表的な市販されている乾燥顔料が米国特許第5085698号明細書に列挙されている。
【0040】
有機顔料の場合、インクは、総インク重量を基準として、約30重量%以下、好ましくは約0.1〜約25重量%、およびより好ましくは約0.25〜約10重量%の顔料を含有し得る。無機顔料が選択される場合、無機顔料は一般に有機顔料より高い比重を有するために、インクは、有機顔料を利用している比較可能なインクより高い重量パーセントの顔料を含有する傾向となり、いくつかの場合においては約75%もの高割合になり得る。
【0041】
自己分散顔料(SDP)は、架橋ポリウレタン分散質と一緒に用いられることが可能であり、度々、同一の顔料充填量でのより優れた安定性およびより低い粘度の点で、従来の分散剤−安定化された顔料より有利である。これは、最終インクにより大きな配合物寛容度をもたらすことが可能である。
【0042】
SDP、および、特に自己分散性カーボンブラック顔料は、例えば、米国特許第2439442号明細書、米国特許第3023118号明細書、米国特許第3279935号明細書および米国特許第3347632号明細書に開示されている。SDP、ならびに、SDPおよび/またはSDPと配合された水性インクジェットインクの製造法の追加の開示は、例えば、米国特許第5554739号明細書、米国特許第6,852,156号明細書に見出されることが可能である。
【0043】
好ましい着色剤は、自己分散顔料を含む顔料である。
【0044】
印刷後硬化剤
インクジェットインクへの添加剤は、インクの配合後に印刷後硬化することが可能であるものが含まれる。本出願の目的のためのこの追加の成分は印刷後硬化と呼ばれ、好ましくは、印刷後に生じる。THF不溶分テストによる計測での架橋ポリウレタン分散質中の架橋は、いずれの後硬化とも無関係である。架橋ポリウレタン分散質は、印刷後硬化に関連してもしなくてもよい。
【0045】
インクに添加される任意の印刷後硬化剤は、画像が印刷された後の追加の印刷後硬化処理をもたらすこととなる。この追加の印刷後硬化は、度々、印刷された後のサンプルの加熱により促進される。印刷後硬化剤の例は、インクへのメラミンの添加であろう。メラミンを含むインクを印刷した後、これは、基材で、または、基材への印刷後硬化を行うために加熱されるであろう。
【0046】
好適な印刷後硬化剤の例としては、アミドおよびアミン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂およびブロックポリイソシアネートが挙げられる。選択された印刷後硬化剤は、インク中に可溶性または分散性である。インクは架橋された加水分解的に安定なポリウレタンPUDバインダを含有し、かつ、選択された印刷後硬化剤は、保管中は安定であり、これは印刷前に硬化反応が生じないことを意味する。インクが印刷された後であって、印刷された画像が熱および任意により圧力で融着された場合にのみ、印刷後硬化剤は1種または複数種のポリウレタン分散質、分散剤、ヒドロキシル官能性インクビヒクル、生地基材等と化学反応を生じる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が好ましく、その例は、Cytec、West Patterson NJ製のCymel(登録商標)303 ULFである。
【0047】
インク中の印刷後硬化剤の充填量は、0.2〜約12重量%、好ましくは約1〜約8%の範囲である。ならびに、任意により0.01%〜1%酸または酸ブロック触媒が、印刷後硬化効率をさらに高めるために用いられることが可能である。酸触媒の例としては、King Industries、Norwalk CN製のNacure(登録商標)3525が挙げられる。この一例は、インクへのメラミンの添加である。メラミンを含むインクを印刷した後、これは加熱されて、基材で、または、基材上へのさらなる印刷後硬化が行われる。生地が、この印刷後硬化のための好ましい基材である。
【0048】
ポリウレタン分散質バインダ(PUD)
上述のとおり、架橋ポリウレタン分散質とは、これらの用語が当業者に理解されているとおり、ウレタン基および架橋を含有するポリマーの水性分散体を指す。これらの架橋ポリウレタン分散質は、ポリウレタン中のジオールZ、ZおよびZの各々の存在、または、ポリウレタン中の一度に2種のジオール(ZおよびZ、ならびに、ZおよびZ)の物理的混合物の存在を要求する。架橋ポリウレタンは、前者の場合には、3種すべてのジオールが利用されるような様式で調製されることが認識されるであろう。普通、水性ビヒクル中での架橋ポリウレタンの分散安定性は、水系における架橋ポリウレタンの安定性を促進させるポリウレタンポリマー中のイオン性成分を組み込むことにより達成される。この分散安定性とは、ポリウレタンが、相分離せず、凝集せず、および/または、水系から沈殿しないであろうことを意味する。
【0049】
好適なポリウレタンの例はポリマーが、主に、組み込まれたアニオン性官能基を介して分散体に安定化されているものであり、その一例は、中和された酸基(「アニオンで安定化されたポリウレタン分散質」)などのアニオン性官能基である。普通、好ましいアニオン性化合物はジオールZであり、さらなる詳細が以下に記載されている。
【0050】
ポリウレタン中のジオールZ、ZおよびZ、または、ポリウレタン中の一度に2種のジオール(ZおよびZ、ならびに、ZおよびZ)の物理的混合物は、向上した加水分解安定性を備えるポリウレタンバインダをもたらす。向上した加水分解安定性は、多くのポリウレタンが、自身の水性分散体中またはポリウレタンを含有するインク中で加水分解されるために要求される。
【0051】
この加水分解安定性を計測するための方法は、新たに形成されたポリウレタンをフィルムに延伸させ、このフィルムを乾燥させ、フィルムの一部分を計量し、これを一定時間の間水溶液中に吊るすものである。水中に液浸された後、ポリウレタンは拭われて計量され;重量増加が吸収された水に起因する。重量変化が計算されて、%吸水として標識される。70℃で7日間加熱された後のポリウレタンで同一のステップを行うことにより比較を行った。向上した本発明のポリウレタンは、形成されたポリウレタンおよび加熱劣化ポリウレタンと同様のまたは極少量の吸水を示すことを特徴とする。
【0052】
好適な水性ポリウレタン分散質は、典型的には、NCO末端プレポリマーが形成されるマルチステップ合成プロセスによって調製され、このプレポリマーが、水に添加されるか、または、水がプレポリマーに添加されて、水中に分散されたポリマー(水性分散体)が形成され、その後、水性相中で鎖長が延長される。このプレポリマーは、単一ステッププロセスまたはマルチステッププロセスにより形成されることが可能である。用いられる場合、鎖延長もまた、単一ステッププロセスまたはマルチステッププロセスであることが可能である。重要な架橋は、これらの単一ステッププロセスまたはマルチステッププロセスの一部として生じさせることが可能である。ポリウレタンに対する架橋は、インク配合物への添加の前に完了していることが好ましい。
【0053】
ポリウレタン分散質が調製された後、これが他のインク成分と一緒に含まれてインクジェットインクがもたらされる。当業者はインクの調製の詳細に精通している。ポリウレタン合成および架橋は、他の成分との任意の混合の前に完了し、それ故、着色剤および架橋ポリウレタンは完全に独立している。
【0054】
上記のとおり、ポリウレタン分散質は、典型的には、マルチステッププロセスによって調製される。典型的には、プレポリマー形成の最初のステージにおいては、ジイソシアネートが、各々が2つのNCO−反応性基を含有する、化合物、ポリマー、あるいは、化合物の混合物、ポリマーの混合物またはこれらの混合物と反応される。すべてが>2つのNCO−反応性基、ならびに、安定化イオン性官能基を含有する、追加の化合物または化合物もまた用いられて中間体ポリマーが形成される。この中間体ポリマーまたはプレポリマーは、NCO基またはNCO−反応性基のいずれかで末端封止されることが可能である。末端基は、プレポリマーステージにおけるNCO対NCO−反応性基のモル比によって定義される。典型的には、プレポリマーは、モル過剰量のNCOを用いることにより達成されるNCO封止材料である。それ故、ジイソシアネート対2つのイソシアネート−反応性基を含有する化合物のモル比は、少なくとも約1.1:1.0、好ましくは約1.20:1.0〜約5.0:1.0、およびより好ましくは約1.20:1.0〜約2.5:1.0である。普通、この比は、最初のステージにおいて、少なくとも2つのNCO反応性基を有するNCO反応性化合物の1種をジイソシアネートのすべてまたは一部と反応させることによってNCO封止中間体を調製することにより達成される。これに続いて、順番に、所望の場合に他のNCO反応性化合物が添加される。すべての反応が完了したら、基NCOおよび/またはNCO反応性基がプレポリマーの末端部に見出されるであろう。これらの成分は、NCO基対NCO−反応性基の全当量比が達成されるようなモル比がもたらされるに十分な量で反応される。
【0055】
ポリウレタンの架橋を達成するための手段は、一般に、3つ以上の官能性反応部位を有するポリウレタン(出発材料および/または中間体)の少なくとも1種の成分に依存する。3個(以上)の反応部位の各々の反応が、架橋ポリウレタン(3次元マトリックス)をもたらすこととなる。2個の反応性部位のみが各反応性成分で利用可能である場合、直鎖(場合によっては高分子量であるにもかかわらず)ポリウレタンのみが生成されることが可能である。架橋技術の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
イソシアネート−反応性部分が少なくとも3個の反応性基を有する、例えば多官能アミンまたはポリオール;
イソシアネートが少なくとも3個のイソシアネート基を有する;
イソシアネート反応以外の反応を介して、例えばアミノトリアルコキシシランと反応することが可能である、プレポリマー鎖が少なくとも3個の反応性部位;
インクジェットインク調製におけるその使用に先立つ少なくとも3個の反応性部位を有する反応性成分のポリウレタンへの添加、例えば三官能性エポキシ架橋剤;
オキサゾリン官能基を有する水−分散性架橋剤の添加;
カルボニル官能基を有するポリウレタンの合成、続いて、ジヒドラジド化合物の添加;
ならびに、これらの架橋方法および関連する技術分野における当業者に公知である他の架橋手段のいずれかの組み合わせ。
【0056】
また、これらの架橋成分は、ポリウレタンに添加される反応性官能基全体のわずかに(ごく)一部であり得ることが理解される。例えば、多官能アミンが添加される場合、単官能性および二官能性アミンもまたイソシアネートとの反応に存在し得る。多官能アミンは、アミンの副たる部分であり得る。
【0057】
架橋は、ポリウレタンの調製の最中に生じることが好ましい。ポリウレタン反応順序における架橋に好ましい時間は、反転ステップの直前、反転ステップ時またはその後であろう。すなわち、架橋は、水のポリウレタン調製混合物への添加の最中またはその直後に生じることが好ましい。反転は、その安定な分散された水性形態にポリウレタンが転化されるよう、十分な水が添加される時点である。反転の後に架橋が生じることがもっとも好ましい。しかも、ポリウレタンの実質的にすべての架橋が、インク配合物への組み込みの前に完了していることが好ましい。
【0058】
あるいは、架橋は、イソシアネートまたはイソシアネート−反応性基が3個以上の反応することが可能である基を有する場合、ウレタン結合の初期の形成の最中に生じることが可能である。架橋がこの早いステージで行われる場合、ゲル形成をもたらす程度まで架橋してはならない。このステージでの過剰な架橋は、安定なポリウレタン分散体の形成を妨げることとなる。
【0059】
異なる基材への印刷用の所望のインクジェットインクを得るためのポリウレタンの架橋の量は、幅広い範囲にわたって多様であることが可能である。これらのインクの好ましい用途は、生地の印刷用である。理論には束縛されないが、架橋の量は、ポリウレタン組成物、ポリウレタンの形成に利用された反応条件の全順序、および、当業者に公知である他の要因に応じる。架橋性の程度、インクジェットインク配合物、着色剤、インクジェットセットにおける他のインク、生地、熱および/または圧力への後処理露出、ならびに、生地への印刷技術のすべてが、最終印刷生地性能に寄与する。印刷技術に関して、これは、生地の前処理および後処理を含むことが可能である。
【0060】
本明細書に記載の技術に基づいて、当業者は、日常的な実験を通して、織物用の有効なインクジェットインクを得るための特定のタイプのポリウレタンに必要とされる架橋を判定することが可能である。しかも、上述のとおり、これらのインクはまた、普通紙、写真用紙、スライド用フィルム、ビニルおよび他の印刷可能な基材にも用いられ得る。
【0061】
架橋の量は、標準的なテトラヒドロフラン不溶分テストにより計測されることが可能である。本明細書における定義の目的のために、ポリウレタン分散質のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、1グラムのポリウレタン分散質と30グラムのTHFとを予め計量した遠心分離チューブ中に混合することにより計測される。溶液を17,000rpmで2時間遠心分離した後、上部の液体層を注ぎ出して、底の未溶解ゲルを残留させる。未溶解ゲルを含む遠心分離チューブは、チューブをオーブン中に入れて110℃で2時間乾燥させた後に再計量する。次いで、以下の式が用いられて結果が算出される。
【0062】
ポリウレタンの%THF不溶分=(チューブおよび非溶解ゲルの重量−チューブ重量)/(サンプル重量×ポリウレタン固体%)。ポリウレタンの%THF不溶分は、乾燥ポリマーを基準とした重量パーセントとして報告される。
【0063】
架橋の上限は、安定な水性ポリウレタン分散体の形成能に関連している。高度に架橋されたポリウレタンが、水に転化されたときに安定であるような適切なイオン性またはノニオン性官能基を有する場合、その架橋レベルは、向上した織物用のインクジェットインクをもたらすこととなる。THF不溶分テストによって計測される架橋性の上限は約50%である。ポリウレタン分散質における架橋性の下限は、THF不溶分テストによる計測で約1%以上、好ましくは約2%以上である。
【0064】
架橋に由来する不溶分を計測する他の方法は、コーティングのテストに用いられる膨潤比テストの使用である。ポリウレタン分散体は規定の厚さのフィルムに延ばされる。次いで、円形のフィルム片が切り出され、その寸法が観察される。次いで、塩化メチレン、THFなどの溶剤の液滴がフィルム片上に落とされる。架橋のないフィルムはこれらの条件下で溶解することとなる可能性が高く、多様な程度の架橋を有するフィルムは寸法変化に関連付けられることが可能である。
【0065】
ポリウレタンにおいて有効量の架橋を達成する代替的な方法は、架橋性部位を有するポリウレタンを選択し、次いで、自己架橋を介して、および/または添加された架橋剤を介して、これらの部位を架橋させることである。自己架橋官能基の例としては、例えば、上述のとおり一定の出発材料から入手可能であるシリル官能基(自己縮合性)、ならびに、エポキシ/ヒドロキシル、エポキシ/酸およびイソシアネート/ヒドロキシルなどの、ポリウレタンに組み込まれた反応性官能基の組み合わせが挙げられる。ポリウレタンおよび補完的な架橋剤の例としては:(1)ポリウレタンと、イソシアネート反応性部位(ヒドロキシルおよび/またはアミン基など)およびイソシアネート架橋反応体、ならびに、2)ポリウレタンと、未反応イソシアネート基およびイソシアネート−反応性架橋反応体(例えば、ヒドロキシルおよび/またはアミン基を含有する)が挙げられる。補完的な反応体は、インク配合物へのその組み込みの前に架橋が行われるよう、ポリウレタンに添加することが可能である。架橋は、好ましくは、インク配合物への分散質の組み込みの前に実質的に完了しているべきである。この架橋ポリウレタンは、THF不溶分テストによる計測で約1%〜約50%の架橋を有することが好ましい。
【0066】
2種以上のポリウレタン架橋分散質バインダの組み合わせもまたインクの配合物において用いられ得る。ジオールZおよびZでの架橋分散質ポリウレタンと、ジオールZおよびZでの架橋分散質ポリウレタンとの組み合わせが本発明の明示的な実施例である。
【0067】
架橋ポリウレタン分散質は、ラテックス等を含む他のバインダと混合されることが可能である。これらのバインダの非限定的な列挙としては、分散アクリル、ネオプレン、分散ナイロン、および、THF不溶分テストにより検出される不溶画分を有さない非架橋ポリウレタン分散体が挙げられる。架橋ポリウレタン分散質は、Z、ZおよびZの各々がポリウレタン中に存在するジオールを含有するか、または、一度に2種(ZおよびZ、ならびに、ZおよびZ)が存在するジオールの物理的混合物を含有する。
【0068】
ジオールZは、構造(I)に示されるポリエーテルジオールであり、かつ、繰返し単位の少なくとも50%がエーテル化学基中に3〜36個のメチレン基を有するオリゴマーおよびポリマーである。より好ましくは約75%〜100%、さらにより好ましくは約90%〜100%、および、さらにより好ましくは約99%〜100%の繰返し単位が、エーテル化学基中の3〜36個のメチレン基(構造(I)においてm=3〜36)である。メチレン基の好ましい数は3〜12、および、より好ましくは3または4である。構造(I)に示されているポリエーテルジオールは、m=3〜36であり、α、ωジオールを含むモノマーの重縮合により調製されることが可能であり、それ故、上記に示される構造リンケージを含有するポリマーまたはコポリマーがもたらされる。上記のとおり、繰返し単位の少なくとも50%は3〜36個のメチレンエーテル単位である。
【0069】
構造(I)に示されているポリエーテルジオールに基づくオリゴマーおよびポリマーは、2〜約50個の構造(I)に示されているエーテルジオール反復基であり;より好ましくは約5〜約20個の構造(I)に示されているエーテルジオール反復基であり、ここで、pは反復基の数を示す。構造(I)において、RおよびRは、水素、アルキル、置換アルキル、アリールであり;ここで、各置換メチレン基においてRおよびRは同一であるかまたは異なっており、および、ここで、RとRまたはRとは結合されて環構造を形成していることが可能である。置換アルキル基は、以下に記載のとおり、限定された量の三価アルコールを許容することが可能である場合を除き、イソシアネート反応性基を含有していないことが好ましい。普通、置換アルキルは、ポリウレタン調製の最中は不活性であることが意図される。
【0070】
好ましくは3〜12個のメチレンエーテル単位に追加して、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドに由来する他のポリアルキレンエーテル繰返し単位などのより少ない量の他の単位が存在していてもよい。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等などのエポキシドに由来するエチレングリコールおよび1.2−プロピレングリコールの量は、ポリエーテルジオール総重量の10%未満に限定されている。
【0071】
好ましいポリエーテルジオールは、1,3−プロパンジオールに由来する。採用されるPO3Gは、種々の周知の化学経路のいずれかにより、または、生化学的形質転換経路により入手され得る。好ましくは、1,3−プロパンジオールは、再生可能資源から生化学的に得られる(「生物学的に誘導された」1,3−プロパンジオール)。この生化学的に得られる1,3−プロパンジオールの説明は、共有であると共に同時係属中の米国特許出願第11/782098号明細書(2007年7月24日出願)に見出すことが可能である。
【0072】
ジオールZは、ポリカーボネートジオール、ポリアミドジオールおよびポリ(メタ)アクリレートジオールから選択される。
【0073】
水酸基を含有するポリカーボネートは、プロパンジオール−(1,3)、ブタンジオール−(1,4)および/またはヘキサンジオール−(1,6)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、より高級のポリエーテルジオールなどのジオールと、ホスゲン;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートとの反応、または、エチレンまたはプロピレンカーボネートなどの環式炭酸塩との反応から得られる生成物などのそれ自体公知であるものを含む。また、上記のポリエステルまたはポリラクトンと、ホスゲン、ジアリール炭酸塩、ジアルキル炭酸塩または環式炭酸塩とから得られるポリエステル炭酸塩が好適である。
【0074】
ブレンドされるためのポリカーボネートジオールは、ポリエチレンカーボネートジオール、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリブチレンカーボネートジオールおよびポリヘキシレンカーボネートからなる群から選択されることが好ましい。
【0075】
ポリアミドポリオールとしては、i)芳香族、脂肪族および脂環式無水物、ならびに、二酸ハロゲン化物からなる群から選択される有機化合物と、ii)アミノアルコール、ジアミンおよびこれらの混合物を含むアミン含有化合物との反応により得られる生成物が挙げられる。
【0076】
ポリアミドの形成に用いられる化合物(i)は、脂環式無水物または二酸ハロゲン化物であることが好ましい。これらの例としては、これらに限定されないが、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、フタル酸無水物あるいはコハク酸無水物、または、テレフタロイルクロリド、スクシニルクロリドあるいはアジポイルクロリドなどの二酸ハロゲン化物が挙げられる。ポリアミドの形成に用いられるアミン含有化合物(ii)としては、第1級および第2級アミノアルコール、または、ジアミンが挙げられる。好適なアミノアルコールの例としては、これらに限定されないが、エタノールアミン、プロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよびジエタノールアミンが挙げられる。ジアミンとしては、ジアミノシクロヘキサンおよびエチレンジアミンが挙げられる。
【0077】
化合物(i)と(ii)との反応により形成されるポリアミドは、配合されてヒドロキシル置換反応性末端基を有するポリアミドをもたらす。アミン含有化合物としてジアミンが用いられる場合、この生成物は、その後、過剰量のアミノアルコールと反応されてその反応性末端基が水酸基で置換されているポリアミドがもたらされる。チオール末端ポリアミドは、アミノアルコールの代わりにアミノチオールを置き換えることにより、同一のプロセスによって調製される。
【0078】
水酸基を含有するポリ(メタ)アクリレートは、カチオン性、アニオン性およびラジカル重合等などの付加重合の技術分野において通常のものを含む。例は、α−ωジオールである。これらのタイプのジオールの例は、1つの水酸基をポリマーの末端またはその近傍に位置させることが可能である「未制御の」または「制御下の」または連鎖移動重合プロセスにより調製されるものである。米国特許第6248839号明細書および米国特許第5990245号明細書は、末端ジオールを形成するためのプロトコルの例を含む。他のジ−NCO反応性ポリ(メタ)アクリレート末端ポリマーが用いられることが可能である。一例は、アミノまたはチオールなどのヒドロキシル以外の末端基であり、および、ヒドロキシルとの混合末端基もまた含まれ得る。
【0079】
ジオール、Zは、イオン性(すなわち、イオン化可能な)基を含有するイソシアネート−反応性化合物である。例えば、アニオン性およびカチオン性基は、ポリウレタンに化学的に組み込まれて親水性をもたらすことが可能であり、ポリウレタンを水性媒体中に分散させることが可能である。
【0080】
イオン性分散性基の例としては、カルボキシレート基(−COOM)、リン酸基(−OPO)、ホスホン酸基(−PO)、スルホネート基(−SOM)、第4級アンモニウム基(−NRY、ここで、Yは、塩素またはヒドロキシルなどの一価アニオンである)、または、任意の他の有効なイオン基が挙げられる。Mは、一価金属イオン(例えば、Na、K、Li等)、H、NRなどのカチオンであり、Rの各々は、独立して、アルキル、アラルキル、アリールまたは水素であることが可能である。これらのイオン性分散性基は、典型的には、ポリウレタン主鎖からの側基に位置されている。
【0081】
アニオン基置換の場合、この基は、カルボン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルフォン酸基、リン酸基およびホスホン酸基であることが可能であり、これらの酸塩は、NCOプレポリマーの形成前、形成中、または、形成後に、好ましくは、NCOプレポリマーの形成後に、対応する酸基を中和することにより形成される。
【0082】
カルボキシル基を組み込むために好適な化合物は、米国特許第3479310号明細書、米国特許第4108814号明細書および米国特許第4408008号明細書に記載されている。カルボン酸基をカルボン酸塩基に転化するための中和剤は、前述の刊行物中に記載されており、本明細書中にも後述されている。本発明の文脈において、「中和剤」という用語は、カルボン酸基をより親水性のカルボン酸塩基に転化するために有用であるすべてのタイプの薬剤を包含することを意味する。同様に、スルホン酸基、スルフォン酸基、リン酸基、およびホスホン酸基は、より親水性の塩形態に類似する化合物で中和されることが可能である。
【0083】
カルボン酸基含有化合物の例は、式(HO)Q(COOH)(式中、Qは、直鎖または分岐鎖の、1〜12個の炭素原子を含有する炭化水素ラジカルを表し、xは1または2(好ましくは2)であり、および、yは1〜3(好ましくは1または2)である)に対応するヒドロキシ−カルボン酸である。
【0084】
これらのヒドロキシ−カルボン酸の例としては、クエン酸、酒石酸およびヒドロキシピバル酸が挙げられる。
【0085】
特に好ましい酸は、式中、x=2およびy=1である上記式のものである。これらのジヒドロキシアルカン酸は米国特許第3412054号明細書に記載されている。特に好ましいジヒドロキシアルカン酸は、構造式:
【0086】
【化2】

(式中、Q’は、水素、または、1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基である)によって表されるα,α−ジメチロールアルカン酸である。最も好ましい化合物はα,α−ジメチロールプロピオン酸であって、すなわち、上記式においてQ’はメチルである。
【0087】
イオン性安定化基が酸である場合、酸基は、少なくとも約5、好ましくは少なくとも約10ミリグラムKOH/1.0グラムのポリウレタンの、当業者には酸価(mg KOH/グラム固体ポリマー)である酸基含有量をもたらすために十分な量で組み込まれる。酸価(AN)についての上限は約50、好ましくは約40である。
【0088】
、Z、およびZの各々が存在する第1の架橋ポリウレタンに関して、Zのモル量は、上述の分散安定性をもたらすために十分でなければならない。加えて、ZとZとは、約1:1〜約1:10、好ましくは約1:1.5〜約1:7のモル比で存在するべきである。
【0089】
第2および第3の架橋ポリウレタンが存在する場合、Zのモル量は、上述の分散安定性をもたらすために十分でなければならない。加えて、第2の架橋ポリウレタンのZとZ第3の架橋ポリウレタンとは、約1:1〜約1:10、好ましくは約1:1.5〜約1:7のモル比で存在しているべきである。
【0090】
、ZおよびZの好ましい比は、印刷された生地の手触り、色落ちなどの他の特性を維持しつつ、ポリウレタンの所望の向上した加水分解安定性、向上した洗濯堅牢度が得られるよう選択される。
【0091】
好適なジイソシアネートは、イソシアネート基に結合された芳香族、脂環式または脂肪族基のいずれかを含有するものである。これらの化合物の混合物もまた用いられ得る。脂環式または脂肪族部分に結合したイソシアネートを有するプレポリマーが好ましい。芳香族ジイソシアネートが用いられる場合、脂環式または脂肪族イソシアネートも存在していることが好ましい。
【0092】
好適なジイソシアネートの例としては、シクロヘキサン−1,3−および−1,4−ジイソシアネート;1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI);ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン;1,3−および1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン;1−イソシアナト−2−イソシアナトメチルシクロペンタン;2,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン;ビス−(4−イソシアナト−3−メチル−シクロヘキシル)−メタン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および/または−1,4−キシリレンジイソシアネート;1−イソシアナト−1−メチル−4(3)−イソシアナトメチルシクロヘキサン;および2,4−および/または2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネートが挙げられる。
【0093】
追加のジイソシアネートは、直鎖または分岐であり、4〜12個の炭素原子、好ましくは4〜9個の炭素を含有し得、これは、1,4−テトラメチレンジイソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート;および1,12−ドデカメチレンジイソシアネートを含む。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが、架橋ポリウレタンに有効なジイソシアネートの例である。イソシアネート重付加反応において好ましくは二官能性である上記の成分に追加して、ポリウレタン化学において一般に公知である、トリメチロールプロパンまたは4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートなどの、単官能性成分、ならびに、三官能性およびより高級の官能性成分の小さい部分も、NCOプレポリマーまたはポリウレタンの側鎖が所望される場合には用いられ得る。しかしながら、NCOプレポリマーは実質的に直鎖であるべきであり、これは、プレポリマー出発成分の平均官能性を2:1以下に維持することにより達成され得る。
【0094】
好ましいNCO含有プレポリマーを調製するためのプロセス条件は既述の刊行物において検討されている。最終NCO含有プレポリマーは、プレポリマー固形分の重量を基準として、約1〜約20%、好ましくは約1〜約10重量%のイソシアネート含有量を有するべきである。
【0095】
架橋ポリウレタン分散質は、典型的には、これらのNCO含有プレポリマーを連鎖延長することにより調製される。連鎖延長剤は、米国特許第4269748号明細書および米国特許第4829122号明細書に開示されているとおり、任意により部分的にまたは完全にブロックされることが可能であるポリアミン連鎖延長剤である。これらの刊行物は、NCO含有プレポリマーと少なくとも部分的にブロックされた、ジアミンまたはヒドラジン連鎖延長剤とを水の不在下に混合し、次いで、この混合物を水に添加することによる、水性ポリウレタン分散質の調製を開示する。水と接触するとブロック剤が切り離されて、得られるブロックされていないポリアミンがNCO含有プレポリマーと反応してポリウレタンが形成される。
【0096】
好適なブロックアミンおよびヒドラジンとしては、ポリアミンとケトンおよびアルデヒドとのケチミンおよびアルジミンが形成される反応生成物、ならびに、ヒドラジンと、ケトンおよびアルデヒドとのケタジン、アルダジン、ケトンヒドラゾンおよびアルデヒドヒドラゾンが形成される反応が挙げられる。少なくとも部分的にブロックされたポリアミンは、1つ以下の第1級または第2級アミノ基、および、水の存在下で遊離第1級または第2級アミノ基を放出する少なくとも1つのブロックされた第1級または第2級アミノ基を含有する。
【0097】
少なくとも部分的にブロックされたポリアミンを調製するために好適なポリアミンは、平均官能性、すなわち、分子当たり、2〜6個、好ましくは2〜4個およびより好ましくは2〜3個のアミン窒素を有する。所望の官能性は、第1級または第2級アミノ基を含有するポリアミンの混合物を用いることにより得ることが可能である。ポリアミンは、一般に、芳香族、脂肪族または脂環式アミンであり、1〜30個、好ましくは2〜15個およびより好ましくは2〜10個の炭素原子を含有する。これらのポリアミンは追加の置換基を含有していてもよいが、ただし、これらは、第1級または第2級アミンほどイソシアネート基と反応性ではない。これらの同一のポリアミンは、部分的にまたは完全にブロックされているポリアミンであることが可能である。
【0098】
連鎖延長の好適な方法は、プレポリマーの水への転化の前、最中、または、その後にポリアミンをNCO−プレポリマーに添加することである。任意により、連鎖延長は、プレポリマー転化の後に生じることが可能である。ポリアミンとしては、1−アミノ−3−アミメエチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミンまたはIPDA)、ビス−(4−アミノ−シクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、1,6−ジアミノヘキサン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミンおよびペンタエチレンヘキサミンが挙げられる。
【0099】
いくつかの場合において、連鎖停止が望ましい場合がある。これは、ほとんどの場合において、モノアミンまたはモノアルコールなどのモノNCO反応性材料の添加を必要とする。これらの材料は、プレポリマーの転化の前、最中、または、その後に添加されることが可能である。ポリNCO反応性材料は、NCO−反応性基の1つが他のものよりも実質的に速く反応する場合に用いられることが可能である。例は、エタノールアミンおよびジエタノールアミンであろう。アミン基は、アルコールよりもかなり速くNCO基と反応するであろう。
【0100】
好適な連鎖停止剤は、1の平均官能性/分子を有するアミンまたはアルコールであり、すなわち、第1級または第2級アミン窒素またはアルコール酸素の数が分子当たり平均1であろう。所望される官能性は、第1級または第2級アミノ基を用いることにより達成することが可能である。アミンまたはアルコールは、一般に、芳香族、脂肪族または脂環式であり、1〜30個、好ましくは2〜15個およびより好ましくは2〜10個の炭素原子を含有する。これらは、追加の置換基を含有していてもよいが、ただし、これら、アミンまたはアルコール基ほどイソシアネート基と反応性ではない。連鎖停止剤の例としては、ジメチルイソプロピルアミン、ビス(メトキシエチル)アミン、および他のアミンが挙げられる。
【0101】
連鎖停止剤および連鎖延長剤は、混合物として、または、NCO−プレポリマーへの順次的な添加として、一緒に用いられることが可能である。
【0102】
本発明により用いられるべき連鎖延長剤および/または連鎖停止剤の量は、プレポリマー中のイソシアネート基の数に応じる。好ましくは、プレポリマーのイソシアネート基対連鎖延長剤/停止剤のイソシアネート−反応性基の比は、当量基準で、約1.0:0.6〜約1.0:1.1、より好ましくは約1.0:0.7〜約1.0:1.1である。アミンまたはアルコールで連鎖延長/停止されないイソシアネート基はいずれも、連鎖延長剤として機能する水と反応するであろう。
【0103】
連鎖延長は、プロセスにおける水の添加の前に実施されることが可能であるが、典型的には、NCO含有プレポリマー、連鎖延長剤、水および他の任意の成分を攪拌下に組み合わせることにより実施される。
【0104】
安定な分散体を得るために、任意の親水性エチレンオキシドおよび他のアルケニルオキシド単位および任意の外部乳化剤と組み合わされた場合に、得られるポリウレタンが水性媒体中に安定に分散されたままとなるよう、十分な量のイオン基(存在する場合)が中和されなければならない。一般に、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%の酸基が対応するカルボン酸塩基に中和される。あるいは、ポリウレタン中のカチオン性基は、第4級アンモニウム基(−NRY、式中、Yは塩素またはヒドロキシルなどの一価アニオンである)であることが可能である。
【0105】
酸基を塩基に転化するために好適な中和剤としては、第三級アミン、アルカリ金属カチオンおよびアンモニアが挙げられる。これらの中和剤の例が、米国特許第4701480号明細書、ならびに、米国特許第4501852号明細書に開示されている。好ましい中和剤は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、およびジメチルエチルアミンなどのトリアルキル置換第三級アミンである。置換アミンはまた、ジエチルエタノールアミンまたはジエタノールメチルアミンなどの有用な中和基である。
【0106】
中和は、プロセスにおける任意の時点で行われ得る。典型的な手法としては、プレポリマーの少なくともいくつかの中和を含み、これが、次いで、追加の中和剤の存在下に水中で連鎖延長/停止される。
【0107】
最終生成物は、約60重量%以下、好ましくは約15〜約60重量%および最も好ましくは約30〜約40重量%の乾燥粉末固形分含有量を有するポリウレタン粒子の安定な水性分散質である。固体含有量はまた、固形分基準とも呼ばれる。架橋ポリウレタン分散質量がインク中に報告されている場合、これは、乾燥粉末としての架橋ポリウレタン分散質の重量として報告される。水中のポリウレタンが35重量%である場合、7%架橋ポリウレタン分散質バインダ(乾燥粉末固形分として)を有するインクは、20重量部の水性架橋ポリウレタン分散体が添加されているであろう。しかしながら、この分散体を、所望される任意の最低固形分含有量に希釈することが常に可能である。架橋ポリウレタン分散質の分散体は、これらのタイプの分散体に典型的な、オフホワイトの乳白色の外観を呈する物質であり;有機材料の長期間の加熱により生じ易いいくらかの黄色味がある可能性がある。
【0108】
架橋ポリウレタン分散質を調製して、粒子の安定な分散体をもたらす好ましい方法が以下に記載されている。
【0109】
(a)(i)上記に定義されているとおり、少なくとも1種のジオールZまたはZ、(ii)ジイソシアネートを含む少なくとも1種のポリイソシアネート成分、および、(iii)上記に定義されているとおり、イオン基Zを含有する少なくとも1種のイソシアネート反応性処方成分を含む少なくとも1種の親水性反応体を含む反応体を提供する工程;
(b)(i)、(ii)および(iii)を水和性の有機溶剤の存在下に接触させて、イソシアネート−官能性ポリウレタンプレポリマーを形成する工程;
(c)水を添加して、水性分散体を形成する工程;ならびに
(d)ステップ(c)に先立って、それと同時に、または、その後、ステップ(c)に先立って、それと同時に、または、その後、架橋成分、連鎖延長または連鎖停止イソシアネート官能性プレポリマーに第1級または第2級アミン添加する工程。
【0110】
ジオール、ジイソシアネートおよび親水性反応体は、一緒に任意の順番で添加され得る。
【0111】
親水性反応体が可イオン化基を含有する場合、水を添加する際に(ステップ(c))、可イオン化基は、酸または塩基(可イオン化基のタイプに応じて)を、ポリウレタンを安定に分散させることが可能であるような量で添加することにより、イオン化されなければならない。
【0112】
好ましくは、反応の最中のある時点で(一般に、水の添加の後および架橋、連鎖延長または連鎖停止の後)、有機溶剤が、減圧下で実質的に除去されて、事実上溶剤を含まない分散体がもたらされる。
【0113】
上記のポリウレタン分散体は、次いで、着色剤、印刷後硬化剤、ビヒクルおよび他のインク成分と、任意の簡便な順番で組み合わされてインクジェットインクが得られる。
【0114】
水性ビヒクル
「水性ビヒクル」とは、水、または、水と少なくとも1種の水溶性有機溶剤(共溶剤)との混合物を指す。好適な混合物の選択は、所望される表面張力および粘度、選択された着色剤、インクの乾燥時間、および、インクが印刷されることとなる基材のタイプなどの特定の用途の要求に応じる。選択され得る水溶性有機溶剤の代表例が米国特許第5085698号明細書に開示されている。
【0115】
本発明の水性インクは水を主に含む。それ故、本インクは、インクの総重量を基準にして、少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも約45重量%、およびより好ましくは少なくとも約50重量%の水を含む。
【0116】
水と水溶性溶剤との混合物が用いられる場合、水性ビヒクルは、典型的には、約40重量%〜約95重量%の水を含有し、残り(すなわち、約60重量%〜約5重量%)が水溶性溶剤であろう。好ましい組成物は、水性ビヒクルの総重量を基準にして約65重量%〜約95重量%の水を含有する。
【0117】
インク中の水性ビヒクルの量は、典型的には、インクの総重量を基準にして、約70重量%〜約99.8重量%、および、好ましくは約80重量%〜約99.8重量%の範囲である。
【0118】
水性ビヒクルは、グリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールなどの界面活性剤または浸透剤を含むことにより、速浸透性(速乾性)とすることが可能である。グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソ−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソ−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−イソ−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、およびジプロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテルが挙げられる。1,2−アルカンジオールは、好ましくは1,2−C4〜6アルカンジオール、もっとも好ましくは1,2−ヘキサンジオールである。好適な界面活性剤としては、エトキシル化アセチレンジオール(例えばAir Products製のSurfynols(登録商標)シリーズ)、エトキシル化第一級アルコール(例えばShell製のNeodol(登録商標)シリーズ)および第二級アルコール(例えばUnion Carbide製のTergitol(登録商標)シリーズ)、Pluronic(登録商標)ブロックコポリマー界面活性剤、スルホコハク酸塩(例えばCytec製のAerosol(登録商標)シリーズ)、オルガノシリコーン(例えばWitco製のSilwet(登録商標)シリーズ)およびフルオロ界面活性剤(例えばDuPont製のZonyl(登録商標)シリーズ)が挙げられる。
【0119】
添加されるグリコールエーテルおよび1,2−アルカンジオールの量は適当に判定されなければならないが、典型的には、インクの総重量に基づいて、約1〜約15重量%およびより典型的には約2〜約10重量%の範囲である。
【0120】
界面活性剤が、典型的には、インクの総重量を基準にして約0.01〜約5%および好ましくは約0.1〜約1%の量で用いられ得る。
【0121】
加えて、水和性ではない溶剤を、インクに添加して、ポリウレタン分散質バインダをその中に有するインクの印刷を促進し得る。理論には束縛されないが、この添加された非水性溶剤は、印刷された基材、生地印刷の場合には特に布上へのポリウレタンの結合を補助すると考えられている。これらの不水和性の溶剤の例は、プロピレンカーボネートおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0122】
主処方成分の割合
生地インクにおいて利用される着色剤レベルは、所望される色密度を印刷画像に付与するために典型的に必要とされるレベルである。典型的には、好ましい着色剤に関して、顔料は、インクの総重量の約0.1重量%のレベルから約30重量%のレベル以下で存在する。あるいは、顔料は、インクの総重量の約0.25〜約25%であることが可能である。さらに、顔料は、インクの総重量の約0.25〜約15%であることが可能である。
【0123】
利用される架橋ポリウレタン分散質レベルは、許容されることが可能であるインク特性の範囲によって指定される。一般に、ポリウレタンレベルは、インクの総重量の基準で、約30重量%(ポリウレタン固形分基準)以下、より具体的には約1重量%〜約25重量%以下、および、典型的には約4重量%〜約20重量%の範囲であろう。
【0124】
ポリウレタンの有効なレベルは、典型的には、ポリウレタン(固形分)対着色剤(顔料)の重量比が少なくとも約0.2、好ましくは約0.75超、あるいは、約1.0超であるレベルである。この重量比は、許容可能な噴射性能を維持するために粘度などの他のインク特性に対してバランスがとれていなければならない。特性の正しいバランスが各状況に対して判定されていなければならず、これは、当業者によってルーチン的な実験を用いてなされることが可能である。
【0125】
他の処方成分
インクジェットインクは、技術分野において周知であるとおり他の処方成分を含有し得る。例えば、アニオン性、ノニオン性、カチオン性または両性界面活性剤が用いられ得る。水性インク中には、界面活性剤は、典型的には、インクの総重量を基準にして、約0.01〜約5%、および、好ましくは約0.2〜約2%の量で存在する。
【0126】
米国特許第5272201号明細書中に例示されているものなどの共溶剤が、インク組成物の閉塞抑止特性を向上させるために含まれていてもよい。
【0127】
殺生剤が微生物の増殖を阻害するために用いられ得る。
【0128】
EDTAなどの金属イオン封鎖剤もまた重金属不純物の悪影響を排除するために含まれていてもよい。
【0129】
インク特性
噴射速度、液滴の分離長、液滴サイズおよび流れ安定性は、インクの表面張力および粘度によって大きく影響される。インクジェット印刷システムでの使用に好適なインクジェットインクは、約20dyne/cm〜約70dyne/cm、より好ましくは約25〜約40dyne/cmの範囲の表面張力を25℃で有しているべきである。粘度は、25℃で、好ましくは約1cP〜約30cP、より好ましくは約2〜約20cPの範囲内である。インクは、すなわち、ペンの駆動周波数、ならびに、ノズルの形状およびサイズといった噴射条件の広い範囲に適合する物理特性を有する。
【0130】
インクは、長期間にわたって優れた保管安定性を有しているべきである。好ましくは、本インクは、粘度または粒径が実質的に増加することなく、長期間にわたって、密閉された容器中において高温を維持することが可能である(例えば、70℃で7日間にわたって)。
【0131】
さらに、インクは、接触することとなるインクジェット印刷デバイスの部品を腐食させるべきではなく、かつ実質的に無臭および無毒であるべきである。
【0132】
本発明のインクは、洗濯堅牢度の有益な耐久特性を達成することが可能である。
【0133】
インクセット
本発明によるインクセットは、好ましくは少なくとも3色の異なる有色インク(CMYなど)、および、好ましくは少なくとも4色の異なる有色インク(CMYKなど)を含んでおり、ここで、インクの少なくとも1色は、水性ビヒクル、着色剤および架橋ポリウレタン分散質を含む水性インクジェットインクであり、ここで、着色剤は、水性ビヒクルに可溶性であるか、または、分散性である。
【0134】
インクセットは、オレンジインク、グリーンインク、レッドインクおよび/またはブルーインクなどの異なる有色インク、ならびに、濃色インクと淡シアンおよび淡マゼンタなどの淡色インクとの組み合わせを含む、1種または複数種の「色再現領域拡大」インクをさらに含んでいてもよい。これらの「色再現領域拡大」インクは、米国特許出願公開第20030128246号明細書に開示されているものなどのアナログスクリーン印刷の色再現領域をシミュレートする生地印刷において特に有用である。
【0135】
印刷方法
本発明のインクおよびインクセットは、任意のインクジェットプリンタでの印刷により印刷されることが可能である。基材は、単色の紙(標準的な電子写真用紙など)、加工紙(写真用紙のようなコート紙など)、生地、ならびに、ポリ塩化ビニルおよびポリエステルなどの高分子フィルムを含む非多孔性基材を含む任意の好適な基材であることが可能である。
【0136】
本発明のインクおよびインクセットの特に好ましい使用は、生地のインクジェット印刷にある。生地としては、これらに限定されないが、綿、ウール、絹、ナイロン、ポリエステル等、および、これらのブレンドが挙げられる。生地の仕上がり形態としては、これらに限定されないが、布、被服、Tシャツ、カーペットおよびいす張り生地などの家具等が挙げられる。また、考慮される繊維生地材料は、特に、これらに限定されないが、綿、リネンおよびアサなどの天然繊維材料、ならびに、ビスコースおよびリオセルなどの再生繊維材料を含むヒドロキシル基含有繊維材料である。特に好ましい生地としては、ビスコースおよび特に綿が挙げられる。さらなる繊維材料としては、ウール、絹、ポリビニル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミド、ポリプロピレンおよびポリウレタンが挙げられる。前記繊維材料は、シート形状生地織布、メリヤス布またはウェブの形態であることが好ましい。
【0137】
生地印刷に設計されている好適な市販されているインクジェットプリンタとしては、例えば、デュポン(DuPont)(登録商標)Artistri(登録商標)2020および3210 Textile Printers(E.I. du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DE)、Textile Jet(Mimaki USA,Duluth,GA)、DisplayMaker Fabrijet(MacDermid ColorSpan,Eden Prairie,MN)、Amber、ZirconおよびAmethyst(Stork(登録商標))が挙げられる。
【0138】
印刷された生地は、任意により、米国特許出願公開第20030160851号明細書に開示されているものなど、熱および/または圧力で後処理され得る。
【0139】
より高い温度が、印刷される特定の生地の許容誤差によって指定される。より低い温度は、所望のレベルの耐久性を達成するために必要とされる熱量によって判定される。一般に、融着温度は、少なくとも約80℃および好ましくは少なくとも約140℃、より好ましくは少なくとも約160℃および最も好ましくは少なくとも約180℃であろう。
【0140】
向上した耐久性を達成するために必要な融着圧力は、きわめて少なめであることが可能である。それ故、圧力は、約3psig、好ましくは少なくとも約5psig、より好ましくは少なくとも約8psigおよび最も好ましくは少なくとも約10psigであることが可能である。約30psi以上の融着圧力は、耐久性に対して追加の利点はもたらさないように見受けられるが、このような圧力が排除されるわけではない。
【0141】
融着時間(印刷された生地が所望の温度で加圧下にある時間)は、特に重要ではないと考えられている。融着操作におけるほとんどの時間の間には、一般に、印刷物を所望の温度へ昇温工程が含まれる。一旦、印刷物が温度に完全に達したら、加圧下にある時間は短時間(数秒)であることが可能である。
【0142】
本発明が、特に限定されていないが、以下の実施例によってさらに例示されている。
【実施例】
【0143】
ポリウレタン分散質、インクおよび印刷された生地を特性付けるために用いたテストは、技術分野において通例用いられるものである。いくつかの特定の手法を列挙する。
【0144】
印刷およびテスト技術
以下の実施例において用いたインクジェットプリンタは以下のとおりである。
【0145】
(1)8個以下の印刷ヘッド、および媒体プラテンが設けられた固定式印刷ヘッドを備えている印刷システム。印刷ヘッドはXaar(Cambridge,United Kingdom)製のものであった。この媒体プラテンは適用可能な媒体を保持し、印刷ヘッドの下を移動する。サンプルサイズは、7.6cm×19cmであった。特に記載のない限り、この印刷システムを用いてテストサンプルを印刷した。
【0146】
(2)布が許容されるよう構成されたSeiko IP−4010プリンタ。
【0147】
(3)デュポン(DuPont)(登録商標)Artistri(登録商標)2020プリンタ。
【0148】
用いた布は、Testfabrics,Inc(Pittston PA)から得たが、すなわち:(1)漂白された、マーセル加工コーマブロードクロス(133×72)である100%綿布スタイル番号419W;(2)マーセル加工および漂白された65/35ポプリンであるポリエステル/綿布スタイル番号7435M;ならびに、(3)マーセル加工および漂白された65/35ポプリンであるポリエステル布スタイル7436であった。
【0149】
(4)all American screen printing and supply,Philadelphia PAから入手可能であるFlexijet被服プリンタ
いくつかの実施例においては、印刷された生地を高温および高圧で融着した。2種の異なる融着装置を利用した。
【0150】
(1)調整可能な空気プレスを備えた2本の加熱されたベルトの間に印刷された布を移動させて、最後にニップローラアセンブリに通す、Glenro(Paterson,NJ)Bondtex(商標)Fabric and Apparel Fusing Press;および
(2)温度および圧力を正確に制御する目的のために組み立てられたプラテンプレス。このプラテンプレスは、所望のプラテン温度を維持するよう設定可能である抵抗加熱素子が埋設された2つの平行な6インチ角のプラテンを備えていた。これらのプラテンは、調整可能な空気圧により所望の圧力でプラテンを一緒にプレスすることが可能である空気プレスに対して相互に平行な位置に固定されていた。融着されるワークピースの全体にわたって等しい圧力が印加されるよう、プラテンが確実に位置合わせされていることに注意した。適切な寸法のスペーサ(例えばシリコーンゴム製)を挿入することにより、プラテンの有効領域を、必要に応じて低減させて、より小さなワークピースに対する作業を可能とすることが可能である。
【0151】
実施例における融着ステップに対する標準的な温度は、他に示されていない限りにおいて160℃であった。
【0152】
印刷された生地を、American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)、Research Triangle Park,NCによって開発された方法によってテストした。AATCC試験法61−1996、「Colorfastness to Laundering, Home and Commercial: Accelerated」を用いた。このテストにおいて、色堅牢度は、「処理、テスト、保管または材料の使用の最中に遭遇し得るいずれかの環境への材料の暴露の結果の、その色特性のいずれかの変化、その着色剤の隣接する材料への移り、または、両方に対する材料の耐性」と説明されている。テスト3Aを行い、色洗濯堅牢度を記録した。これらのテストに対する格付けは1〜5であり、5が最良の結果であって、すなわち、退色がほとんどまたはまったくない。
【0153】
いくつかのテストに関して、洗濯堅牢度は、Wascomat洗濯機において、以下の洗濯パラメータで生地を3回洗浄することにより測定した。
【0154】
【表1】

【0155】
色落ちに対する色堅牢度もまた、AATCCクロックメータ法、AATCC試験法8−1996により測定した。これらのテストに対する格付けは、1〜5であり、それぞれ、5が最良の結果であって、すなわち、退色はほとんどまたはまったくなく、および、他の材料への色移りはほとんどまたはまったくない。結果は0.5単位まで四捨五入されており、これを、本方法の精度として判定した。
【0156】
着色剤分散体または他の安定な水性着色剤を、インクジェット技術分野において公知の技術により調製した。ブラック顔料分散体を、明記されている場合を除いてインク実施例について用いた。以下の処方成分を、実施例において用いた架橋ポリウレタンを形成するために明記されているまま用いた。
【0157】
処方成分および略語
BZMA=ベンジルメタクリレート
DBTL=ジブチルスズジラウレート
DMEA=ジメチルエタノールアミン
DMIPA=ジメチルイソプロピルアミン
DMPA=ジメチロールプロピオン酸
EDA=エチレンジアミン
ETEGMA=エトキシトリエチレングリコールメタクリレート
HDI=1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDA=イソホロンジアミン
IPDI=イソホロンジイソシアネート
MAA=メチルアクリル酸
POEA=2−フェノキシエチルアクリレートエステル
TEA=トリエチルアミン
TETA=トリエチレンテトラミン
THF=テトラヒドロフラン
【0158】
特に記載のない限り、上記の化学薬品は、Aldrich(Milwaukee,WI)または実験用化学薬品の他の同様な供給者から入手した。
【0159】
Desmophene C200−Bayer(Pittsburgh,PA)製のポリエステルカーボネートジオール
Surfynol(登録商標)440−Air Products(Allentown,PA)製のノニオン性界面活性剤
Terathane(登録商標)1400−Invista(Wilmington,DE)製のポリテトラメチレンオキシドポリオール
【0160】
ポリウレタン反応の程度
ポリウレタン反応の程度は、ウレタン化学において通常の方法である、ジブチルアミン滴定によるNCO%の検出により判定した。
【0161】
この方法においては、NCO含有プレポリマーのサンプルが、既知の量のジブチルアミン溶液と反応され、残存するアミンがHClで逆滴定される。
【0162】
粒径計測
ポリウレタン分散体、顔料およびインクの粒径は、Honeywell/Microtrac(Montgomeryville,PA)製のMicrotrac(登録商標)UPA150分析器を用いる動的光散乱により測定した。
【0163】
この技術は、粒子の速度分布と粒径との間の関係に基づいている。レーザ生成光は各粒子で拡散され、粒子ブラウン運動によりドップラー偏移される。偏移された光と未偏移の光との周波数差が増幅され、デジタル化され、分析されて粒径分布が得られる。
【0164】
以下に報告された数は体積平均粒径である。
【0165】
固体含有量計測
溶剤を含まないまたは水性架橋ポリウレタン分散質に関する固体含有量を、水分分析器、Sartorius製のモデルMA50で計測した。NMPなどの高融点溶剤を含有するポリウレタン分散質に関しては、固体含有量は、150℃のオーブン中での180分間の焼成前後の重量差により測定した。この様式で固体にまで乾燥されるポリウレタンは、容易には再分散されず、かつ、用いられることが可能ではないことに留意すべきである。
【0166】
THF不溶分計測
ポリウレタンのTHF不溶分含有量を、先ず、1グラムの分散ポリウレタンと30グラムのTHFとを予め軽量した遠心分離チューブ中に混合することにより計測した。溶液を17,000rpmで2時間遠心分離した後、上部の液体層を注ぎ出して、底の未溶解ゲルを残留させた。未溶解ゲルを含む遠心分離チューブは、チューブをオーブンに入れて110℃で2時間乾燥させた後に再計量した。
【0167】
ポリウレタンの%ミクロゲル=((チューブおよび未溶解ゲルの重量)−(チューブの重量))/(サンプル重量×ポリウレタン固体%)。
【0168】
ポリウレタンの加水分解安定性のためのテスト
ポリウレタンの加水分解安定性を研究するためのテストは、ポリウレタンのフィルムをその分散体からキャストし、フィルムを水中に浸漬し、次いで、重量の増加を計測する。このテストは、新たに調製したポリウレタンと、ポリウレタン分散体を70℃のオーブン中に7日間入れることにより加熱加齢させたポリウレタンとで行われる。重量増加、吸水が、新たなポリウレタンおよび加齢させた材料について比較される。ポリウレタンが加齢条件下で分解する場合には、この分解は、ポリウレタン中のいくつかの結合の加水分解に起因している可能性がある。
【0169】
加齢ポリウレタン製のフィルムの吸水が新たなポリウレタン製のフィルムと同様である場合、これは比較的良好な加水分解安定性を示し;および、結果として、ポリウレタン分散体またはこの分散体製のインクジェットインクの長期間の安定性を示す。
【0170】
PUDフィルム調製
10〜20gのPUD樹脂を、テフロン(登録商標)(Teflon)フィルムで被覆されたペトリ皿に入れた。この樹脂を先ず48時間空気乾燥させた。次いで、これを、100℃の真空オーブン中で4時間焼成した。乾燥フィルムの厚さは約1mm〜3.5mmの範囲であった。
【0171】
吸水テスト
0.5〜1.0gの樹脂フィルムを1オンス(oz)ガラスジャーに入れた。このガラスジャーを30gの洗剤水で満たしてフィルムを覆った(1.5g AATCC 3A洗浄用洗剤/1リットルの水)。次いで、このガラスジャーを70℃のオーブン中に24時間入れた。ガラスジャーをオーブンから取り出した後すぐに、このフィルムを取り出し、ゴルフタオルで乾燥させて計量した。
【0172】
吸水%=(水への浸漬後の重量−元の重量)/元の重量
【0173】
インクの調製
実施例において用いたインクは、インクジェットの技術分野において標準的な手法に従って形成した。処方量は、最終インクを基準とした重量パーセントである。ポリウレタン分散質バインダおよび着色剤が固形分基準に引用されている。
【0174】
インク調製の例として、インクビヒクルを調製して、攪拌しながら水性分散体ポリウレタン分散質バインダに添加した。良好な分散体が得られるまで攪拌した後、この混合物を顔料分散体に添加し、さらに3時間攪拌するか、または、良好なインク分散体が得られるまで攪拌した。
【0175】
ブラック顔料分散体の調製
先ず、以下の処方成分をよく混合することにより黒色の分散体を調製した:(i)210.4重量部(pbw)脱イオン水、(ii)80.3pbwの41.5重量%(固形分)アニオン性高分子分散剤、および(iii)9.24pbwのジメチルエタノールアミン。アニオン性ポリマー分散剤は、米国特許出願公開第20030128246号明細書からの「分散剤の調製1」に従って、モノマーの比を、この刊行物中に記載されている61.6/5.8/32.6比の代わりに66.2/4.2/29.5が得られるよう調整して調製したグラフトコポリマー66.3/−g−4.2/29.5 POEA/−g−ETEGMA/MAAであった。
【0176】
これに、100pbwブラック顔料(Nipex 180IQ、Degussa)を徐々に添加した。顔料を組み込んだ後、100pbw脱イオン水を混入させて練り顔料を形成し、これを、粉砕するために媒体ミル中に循環させた。次いで、55.4pbw脱イオン水を、最終強度に希釈するために追加した。
【0177】
得られた15重量%分散体は以下の特性を有していた:8.60cPの粘度(ブルックフィールド粘度計、20℃)、約7.5のpHおよび92nmの中央粒径。
【0178】
架橋ポリウレタン分散体比較例1
(米国特許出願公開第20050182154号明細書からの実施例2に対応)
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、699.2g Desmophene C1200、ポリエステルカーボネートジオール(Bayer)、280.0gアセトンおよび0.06g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、189.14g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに15.5gアセトンですすぎ入れた。
【0179】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて44.57g DMPA、次に続けて25.2g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを15.5gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.23%以下となるまで50℃で保持した。
【0180】
50℃の温度で、1498.0g脱イオン(DI)水を10分間にわたって添加し、続いて、97.5gのEDA(6.25%水溶液として)および29.7gのTETA(6.25%水溶液として)の混合物を5分間にわたって、滴下漏斗を介して添加し、次いで、これを80.0g水ですすいだ。混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0181】
アセトン(−310.0g)を減圧下で除去して、約35.0重量%固形分を有するポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0182】
架橋ポリウレタン分散体比較例2
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、349g Formrez66−56、2000MWポリ(ヘキサアジペート)ジオール(Crompton)、140gアセトンおよび0.06g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、87g IPDIおよび16g Desmodur N3400の混合物を、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに10gアセトンですすぎ入れた。
【0183】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて22.3g DMPA、次に続けて12.8g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを6.7gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.22%以下となるまで50℃で保持した。
【0184】
50℃の温度では、750g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、90g EDA(6.25%水溶液として)を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を40.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0185】
アセトン(−160g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0186】
架橋ポリウレタン分散体比較例3
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、663.6g Terathane1400、ポリエーテルジオール(Invista)、280.0gアセトンおよび0.06g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、223.5g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに15.5gアセトンですすぎ入れた。
【0187】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて44.5g DMPA、次に続けて25.2g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを15.5gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.23%以下となるまで50℃で保持した。
【0188】
50℃の温度では、1415g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、26.2g EDA(6.25%水溶液として)および212.4g TETA(6.25%水溶液として)の混合物を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0189】
アセトン(−310.0g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0190】
架橋ポリウレタン分散体比較例4
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、349.6gのPCDL L6002、ポリカーボネートジオール、(旭化成株式会社)、140gアセトンおよび0.04g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、87g IPDI、16g Desmodur N3400、HDI40重量%ダイマーおよび60重量%三量体ブレンド、(Bayer)を、滴下漏斗を介して60分かけてフラスコに仕込み、残存したイソシアネートのすべてを滴下漏斗からフラスコに10gアセトンですすぎ入れた。
【0191】
フラスコ温度を50℃に昇温させて、30分間保持した。次いで、22.3g DMPA、続いて、12.8g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを10gのアセトンですすいだ。フラスコ温度をNCO%が1.25%以下となるまで50℃で保持した。
【0192】
50℃の温度で、750.0g DI水を10分間かけて添加し、続いて、90g EDA(6.25%水溶液として)を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、これを40.0gの水ですすいだ。次いで、混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0193】
アセトン(−160g)を減圧下に除去し、約35重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0194】
未架橋ポリウレタン分散体比較例5
未架橋ポリウレタンを、米国特許出願公開第2005/0182154号明細書からの比較ポリウレタン分散質2に従って形成した。
【0195】
加水分解的に安定なポリウレタン1での架橋ポリウレタン分散体
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、655.3g PCDL T6002、ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社)、152.7g Terathane1400、ポリエーテルジオール(Invista)、326.6gアセトンおよび0.08g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、228.7g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに18gアセトンですすぎ入れた。
【0196】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて52g DMPA、次に続けて32g DMIPA(ジメチルイソプロピルアミン)を、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを18gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.17%以下となるまで50℃で保持した。
【0197】
50℃の温度では、1750.5g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、29g EDA(6.25%水溶液として)および139g DETA(6.25%水溶液として)の混合物を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0198】
アセトン(−362.6g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0199】
加水分解的に安定なポリウレタン2での架橋ポリウレタン分散体
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、718.9g PCDL T6002、ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社)、90.4g Terathane1400、ポリエーテルジオール(Invista)、326.6gアセトンおよび0.08g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、226.9g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに18gアセトンですすぎ入れた。
【0200】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて52g DMPA、次に続けて27g DMIPA(ジメチルイソプロピルアミン)を、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを18gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.17%以下となるまで50℃で保持した。
【0201】
50℃の温度では、1719.4g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、29g EDA(6.25%水溶液として)および141g TETA(10.4%水溶液として)の混合物を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0202】
アセトン(−362.6g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0203】
加水分解的に安定なポリウレタン3での架橋ポリウレタン分散体
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、715g PCDL T6002、ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社)、78.8g Terathane650、ポリエーテルジオール(Invista)、326.3gアセトンおよび0.08g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、241.9g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに18gアセトンですすぎ入れた。
【0204】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて52g DMPA、次に続けて27g DMIPA(ジメチルイソプロピルアミン)を、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを18gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.24%以下となるまで50℃で保持した。
【0205】
50℃の温度では、1719.4g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、30.8g EDA(6.25%水溶液として)および150g TETA(10.4%水溶液として)の混合物を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0206】
アセトン(−362.3g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0207】
加水分解的に安定なポリウレタン4での架橋ポリウレタン分散体
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、301.7g Sovermol920、ポリエーテルカーボネートジオール(Cognis)、121.3gアセトンおよび0.06g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、83.7g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに6.7gアセトンですすぎ入れた。
【0208】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて19.3g DMPA、次に続けて10.9g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを6.7gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.05%以下となるまで50℃で保持した。
【0209】
50℃の温度では、652g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、10.8g EDA(6.25%水溶液として)および52.5g TETA(6.25%水溶液として)の混合物を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0210】
アセトン(−134.7g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0211】
加水分解的に安定なポリウレタン5aでの架橋ポリウレタン分散体
(Z2およびZ3ジオールのみ)
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、815.8g PCDL T6002、ポリカーボネートジオール(旭化成株式会社)、326.5gアセトンおよび0.08g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、220.67g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに18gアセトンですすぎ入れた。
【0212】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて52g DMPA、次に続けて31.3g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを18gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.13%以下となるまで50℃で保持した。
【0213】
50℃の温度では、1754g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、29.2g EDA(6.25%水溶液として)および120.7g DETA(6.25%水溶液として)の混合物を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0214】
アセトン(−362.5g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0215】
加水分解的に安定なポリウレタン5bでの架橋ポリウレタン分散体
(Z1およびZ2ジオールのみ)
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、774.2g Terathane1400、ポリエーテルジオール(Invista)、326.1gアセトンおよび0.08g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、260.7g IPDIを、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存したIPDIのすべてを滴下漏斗からフラスコに18gアセトンですすぎ入れた。
【0216】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて52g DMPA、次に続けて31.3g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを18gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.33%以下となるまで50℃で保持した。
【0217】
50℃の温度では、1717.8g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、36g EDA(6.25%水溶液として)および148.9g DETA(6.25%水溶液として)の混合物を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0218】
アセトン(−362.1g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0219】
加水分解的に安定なポリウレタン6bでの架橋ポリウレタン分散体
(Z2およびZ3ジオールのみ)
滴下漏斗、コンデンサ、攪拌機および窒素ガスラインを備える、乾燥した、アルカリおよび酸を含まないフラスコに、220.0gTego BD1000、1000MWブチルメタクリレートジオール(Degussa)、108gアセトンおよび0.06g DBTLを添加した。内容物を40℃に加熱してよく混合した。次いで、混合物87g IPDIおよび16g Desmodur N3400を、滴下漏斗を介して40℃で60分かけてフラスコに添加し、残存分をすべて滴下漏斗からフラスコに10gアセトンですすぎ入れた。
【0220】
フラスコ温度を50℃に昇温させ、30分間保持し、次に続けて18g DMPA、次に続けて10g TEAを、滴下漏斗を介してフラスコに添加し、次いで、これを10gアセトンですすいだ。次いで、フラスコ温度再度50℃に昇温させて、NCO%が1.35%以下となるまで50℃で保持した。
【0221】
50℃の温度では、588g脱イオン(DI)水を10分間かけて添加し、続いて、74.9g EDA(6.25%水溶液として)を、5分間かけて滴下漏斗を介して添加し、次いで、この滴下漏斗を80.0g水ですすいだ。この混合物を50℃で1時間保持し、次いで、室温に冷却した。
【0222】
アセトン(−128g)を減圧下に除去し、約35.0重量%固形分のポリウレタンの最終分散体を残留させた。
【0223】
ポリウレタンの吸水テスト
第1のステップは、インクジェットインクを形成するために印刷後硬化剤と配合されていてもよい、必要な加水分解安定性を有するポリウレタンを識別することである。新たに形成されたポリウレタンのフィルムおよび加熱加齢されたポリウレタンのフィルムを形成し、吸水テストにおいてテストした。このテスト結果が以下の表1に報告されている。
【0224】
【表2】

【0225】
比較例1は、新たなポリウレタンからキャストしたフィルムと加齢ポリウレタンからキャストしたフィルムとの間で大幅な吸水の増加を示した。比較例2は高い吸水を示し、ならびに、対応するポリウレタン分散体を加熱加齢させてフィルムとしてキャストした後、このフィルムは水溶性であった。比較例3は、高い吸水および低い洗濯堅牢性(表3)を示した。比較例4および5は、新たに形成した材料および加齢材料の両方について十分な吸水を示したが、本発明の実施例と比して、印刷された生地の劣った色落ち、劣った取り扱い性を含む他のより劣った印刷特性を示した。この本発明のインクは吸水性が低く、水に対するこれらの安定性がより良好であることが示唆されている。これらのテストからの結果は、印刷後硬化剤と組み合わされることが可能である加水分解的に安定なポリウレタン候補を識別した。
【0226】
ブラックインクを比較および本発明の架橋ポリウレタン分散質で形成したが、印刷後硬化剤を添加しなかった。黒色分散体は既述してある。これらのインクを419綿に印刷し、AATC法により洗濯堅牢度および色落ちについてテストした。
【0227】
【表3】

【0228】
【表4】

【0229】
初期のテストにおいて、比較インクおよび本発明の実施例は、同等の洗濯堅牢度および色落ちを有する。
【0230】
【表5】

【0231】
本発明のインクは、比較インクに対して優れている。インクが商業的におかれるであろうこれらの適度な保管条件下においてさえ、本発明のインクはこれらのテストに基づいては如何なる分解も示さなかった。理論には束縛されないが、本発明のインクは、水性インクジェットインクにおいて存在することとなる加水分解条件に対して安定であると見受けられる。
【0232】
架橋ポリウレタン分散質の分解のさらなる確認は、THF可溶物テストにより計測されるミクロゲル含有量の損失の計測である。
【0233】
【表6】

【0234】
比較架橋ポリウレタン分散質は、実質的に、加熱加齢の後にミクロゲルを損失する。理論には束縛されないが、本発明のインクは、テストにおいてより安定であると見受けられる。
【0235】
有色インクを、以下の配合を用いてPUD実施例1で調製した。これらを印刷した。インクをArtistri(登録商標)2020プリンタで419 100%綿に印刷した。
【0236】
【表7】

【0237】
【表8】

【0238】
本発明のインクは少なくとも匹敵する印刷テスト結果をもたらした。これらを調製後加齢させずにテストした。
【0239】
加水分解的に安定なポリウレタンおよび後硬化剤を含むインク実施例
加水分解的に安定なポリウレタンおよび後硬化剤の両方を含むCMYおよびKインクを調製し、これらの組成を表6に示し、比較インクの組成を表7に列挙する。
【0240】
【表9】

【0241】
【表10】

【0242】
Tシャツである印刷された生地を印刷し、色パラメータを、Wascomat洗濯機における3回の洗濯サイクルの前後に計測した。ΔE色計測値は洗濯堅牢度の尺度である。ΔEの変化が小さいほどより良好な洗濯堅牢度を示す。
【0243】
【表11】

【0244】
本発明のインクは、3回の洗濯サイクルの後に優れた印刷外観を示す。約3以下のΔEは、視認可能ではない程度の変化を表す。
【0245】
追加のテストを行って、本発明のシアンインクを、加水分解的に安定なポリウレタンを有していなかったインクと比較した。比較インク12は、5%のCymel 303 ULFを添加したこと以外は比較インク5と同等の組成である。比較インク13は、Cymel 303 ULFを添加した以外は比較インク11と同様であった。
【0246】
【表12】

【0247】
本発明のインクは、顕著に向上した印刷結果を実証する。加水分解的に安定な架橋ポリウレタンおよび印刷後硬化剤の組み合わせが最良の結果である。
【0248】
印刷後硬化剤は、その最終硬化特性を向上させるために酸を必要とする場合がある。本発明のインク5は、Nacure酸触媒を添加しなかったこと以外は本発明のインク2と同一である。本発明のインク5(酸触媒無し)に対するΔEは1.10であり、本発明のインク2に対するΔEは1.82であった。酸触媒は、最適な性能を達成するために必要とされない場合もある。
【0249】
本発明のインク2を標準的な加熱サイクルにおける安定性についてテストし、凍結テストをした。ポリウレタン6の3つの異なるバッチおよび2つの異なるロットのPost Printing Curing Agent(Cymel 303)。インクの各々を70℃に7日間加熱して、粒径を比較した。粒径が約25%未満で異なっている場合、インクは安定と判定される。
【0250】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤、印刷後硬化剤および第1の架橋ポリウレタン分散質を有する水性ビヒクルを含むインクジェットインク組成物であって、インクは、架橋ポリウレタン分散質を、インクの総重量を基準にして約0.5重量%超から約30重量%の量で含み、ならびに、架橋ポリウレタン中の架橋の量はTHF不溶分テストによる計測で約1%重量超、かつ、約50重量%未満であり、ここで、架橋ポリウレタンは、少なくとも第1のジオールZ、第2のジオールZ、および、第3のジオールZから形成され、ここで、
【化1】

(式中、pは2以上であり、
mは3以上〜約36であり;
、R=水素、アルキル、置換アルキル、アリールであり;ここで、RまたはRは各置換メチレン基について同一であるか異なっており、Rと、RまたはRとは結合して環構造を形成することが可能である);
はイオン基で置換されたジオールであり;
は、ポリカーボネートジオール、ポリアミドジオールおよびポリ(メタ)アクリレートジオールからなる群から選択され;
着色剤は、顔料および染料、または、顔料と染料との組み合わせから選択され、ならびに、
印刷後硬化剤は、アミドおよびアミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂およびブロック化イソシアネートから選択される、インクジェットインク組成物。
【請求項2】
着色剤、印刷後硬化剤、ならびに、第2の架橋ポリウレタン分散質および第3の架橋ポリウレタン分散質を有する水性ビヒクルを含むインクジェットインク組成物であって、インクは、第2の架橋ポリウレタン分散質を、インクの総重量を基準にして約0.25重量%超から約30重量%の量で含み、第3の架橋ポリウレタン分散質を、インクの総重量を基準にして約0.5重量%超から約30重量%の量で含み、ここで、第2の架橋ポリウレタン中の架橋の量はTHF不溶分テストによる計測で約1重量%超、かつ、約50重量%未満であり、第3の架橋ポリウレタン中の架橋の量はTHF不溶分テストによる計測で約1重量%超、かつ、約50重量%未満であり、第2の架橋ポリウレタンは少なくとも第1のジオールZおよび第2のジオールZから形成され、第3の架橋ポリウレタンは少なくとも第2のジオールZおよび第3のジオールZから形成され、ここで、
【化2】

(式中、pは2以上であり、
mは3以上〜約36であり;
、R=水素、アルキル、置換アルキル、アリールであり;ここで、RまたはRは各置換メチレン基について同一であるか異なっており、Rと、RまたはRとは結合して環構造を形成することが可能である);
はイオン基で置換されたジオールであり;
は、ポリカーボネートジオール、ポリアミドジオールおよびポリ(メタ)アクリレートジオールからなる群から選択され;
着色剤は、顔料および染料、または、顔料と染料との組み合わせから選択され、ならびに、
印刷後硬化剤は、アミドおよびアミンホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂およびブロック化イソシアネートから選択される、インクジェットインク組成物。
【請求項3】
約20dyne/cm〜約70dyne/cmの範囲内の表面張力を有し、粘度が25℃で約1cP〜約30cPの範囲内である、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
着色剤が顔料を含む、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
第1の架橋ポリウレタンがジオールZ、ZおよびZから形成され、Zがポリカーボネートジオールである、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
第1の架橋ポリウレタンがジオールZ、ZおよびZから形成され、ジオールZとZとのモル比が約1:1〜約1:10である、請求項1に記載のインクジェット組成物。
【請求項7】
第1の架橋ポリウレタンがジオールZ、ZおよびZから形成され、ジオールZとZとのモル比が約1:1.5〜約1:7である、請求項1に記載のインクジェット組成物。
【請求項8】
印刷後硬化剤がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂である、請求項1に記載のインクジェット組成物。
【請求項9】
約20dyne/cm〜約70dyne/cmの範囲内の表面張力を有し、粘度が25℃で約1cP〜約30cPの範囲内である、請求項2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
着色剤が顔料を含む、請求項2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
第1の架橋ポリウレタンがジオールZ、ZおよびZから形成され、Zがポリカーボネートジオールである、請求項2に記載のインクジェットインク組成物。
【請求項12】
第1の架橋ポリウレタンがジオールZ、ZおよびZから形成され、ジオールZとZとのモル比が約1:1〜約1:10である、請求項2に記載のインクジェット組成物。
【請求項13】
第1の架橋ポリウレタンがジオールZ、ZおよびZから形成され、ジオールZとZとのモル比が約1:1.5〜約1:7である、請求項2に記載のインクジェット組成物。
【請求項14】
印刷後硬化剤がメラミン−ホルムアルデヒド樹脂である、請求項1に記載のインクジェット組成物。

【公表番号】特表2011−523428(P2011−523428A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508701(P2011−508701)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/043260
【国際公開番号】WO2009/137753
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】