説明

架空配電線用絶縁カバー

【課題】絶縁カバーを、架空配電線への取付け後に任意に移動させることを可能とし、架空配電線の揺れなどによる該架空配電線に対する絶縁カバーの移動は抑止し、また雨天の際の工事も支障なく可能として作業性を向上させる。
【解決手段】それぞれ半円断面状の一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7の長手方向の境界にヒンジ部8を形成し、該ヒンジ部を開閉軸として一方の絶縁カバー本体と他方の絶縁カバー本体とを閉じ合わせることにより両端部が開口した円筒状の絶縁カバー15を構成し、該円筒状の絶縁カバーに架空配電線を挿通させる。一方の絶縁カバー本体及び他方の絶縁カバー本体の各内面に多数個の弾性を有する突起体16を突設し、該多数個の弾性を有する突起体を架空配電線に弾接させて円筒状の絶縁カバーを当該架空配電線に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空配電線用絶縁カバーに関するものであり、特に、電力を供給するための高圧架空配電線における高圧充電部が露出した部分などを覆って防護を行うための架空配電線用絶縁カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、電柱に設置した柱上トランスに対し高圧の架空配電線から分岐線をとるときの分岐線接続工事において、工事中、電気技術基準に則って架空配電線を接地しておくため該架空配電線の接地線接続箇所の絶縁被覆を除去して芯線を露出し、その芯線の露出部に接地線がつながれた接続用クランプを取り付けて接地取りが行われる。そして、工事終了後に絶縁被覆が除去されて芯線が露出した箇所を防護するため架空配電線用絶縁カバーが使用される。
【0003】
また、例えば、柱間切分式無停電工法においては、高圧の架空配電線に事故が発生した場合等に、安全のため工事箇所を無電圧状態にする必要から、工事箇所を挟んで次の手順によるバイパス工事が行われている。まず、工事箇所を挟んだ所定の2箇所で、架空配電線の絶縁被覆を剥ぎ取って芯線を露出させる。この2箇所の芯線の露出部にバイパスケーブルでつながれた接続用クランプを取り付けて通電する。次いで、工事箇所の区分開閉器を開放し、工事箇所を無電圧状態にして工事を行う。工事が済んだら無電圧状態を解除通電し、バイパスケーブルを取り外す。そして、工事終了後に絶縁被覆が剥ぎ取られて芯線が露出した箇所を防護するため架空配電線用絶縁カバーが使用される。
【0004】
このような用途を有する架空配電線用絶縁カバーの第1の従来技術としては、例えば、図3に示すようなものがある。同図において、この従来技術の架空配電線用絶縁カバー1は、内面に移動防止用のボス2が内周方向に適宜の間隔をおいて3箇所程度設けられているポリエチレンのシートを射出成形で成形し、それを円形に丸め加熱及び急冷を行い、予め円形に癖付けされた形状となっている。そして、架空配電線3における絶縁被覆4が剥ぎ取られて芯線3aが露出した箇所に、のり巻き形に巻きつけられて、その箇所を防護するようにしている。この防護状態において前記ボス2が絶縁被覆4と芯線3aとの段差部に当接することで取付け箇所からの架空配電線用絶縁カバー1の移動が防止される。
【0005】
また、取付け箇所からの移動が防止されるようにした架空配電線用絶縁カバーの第2の従来技術としては、例えば、図4の(a)、(b)及び図5の(a)、(b)、(c)に示すような二つ割ヒンジタイプのものがある。この従来技術の架空配電線用絶縁カバー(以下、単に絶縁カバーという)は、絶縁カバー内面に粘着層付きのスポンジパッキンが貼り付けられており、粘着層と架空配電線における絶縁被覆とが接触することによって、取付け箇所から移動しないようになっている。
【0006】
図4(a)は、円筒形状で二つ割の絶縁カバー5を上下に開いて内側から見た図である。該絶縁カバー5は、閉じたときに架空配電線が内部を挿通するような円筒状の形状をしており、長手方向に直交する断面が円形であり、その円形断面を中心軸を通る面で二つ割にした半円断面状の一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7とを有している。
【0007】
この一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7との境界には可撓性を有するヒンジ部8が長手方向に沿って直線状に形成されている。そして一方及び他方の各絶縁カバー本体6,7には、それぞれ合わせ部9a,9bが形成されていて一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7とがヒンジ部8を開閉軸として開閉するとき、両合わせ部9a,9bにおいて当接と離脱が行われる。
【0008】
一方の絶縁カバー本体6は、断面半円形の径が均一で断面形状が変化しない絶縁カバー主部6aと、該絶縁カバー主部6aの両側から各端部に向かって断面半円形の径が徐々に縮小される各テーパー部6b,6bと、各テーパー部の端部にあって電線を挿通させるための半円形の開口端部6c,6cとが形成されている。他方の絶縁カバー本体7も、これと同様に、絶縁カバー主部7a、各テーパー部7b,7b及び各開口端部7c,7cが形成されている。
【0009】
一方の絶縁カバー本体6の開閉部の端辺には、合わせ部9aの端部から適宜間隔をおいて3個の係止フック10が外周側に突設され、これに対応して他方の絶縁カバー本体7の開閉部の端辺には、図示しないフック受入部が設けられている。一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7とが閉じられたときには、係止フック10がフック受入部に係止されて固定される。また、他方の絶縁カバー本体7の開閉部の端辺には、図示しない専用取付け工具で架空配電線に取付ける際の把持部11が形成されている。
【0010】
そして、一方の絶縁カバー本体6における絶縁カバー主部6aの内側両側部及び他方の絶縁カバー本体7における絶縁カバー主部7aの内側両側部の各位置に離型紙12a付きの両面粘着層付きのスポンジパッキン12,…がそれぞれ貼り付けられている。
【0011】
上記の構成を備えた絶縁カバー5は、一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7とがヒンジ部8を開閉軸として開閉自在な構成となり、半円筒状の一方の絶縁カバー本体6の合わせ部9aと同じく半円筒状の他方の絶縁カバー本体7の合わせ部9bとを閉じて合わせることにより、断面円形の円筒状の立体構造とすることができ、その内部に架空配電線の所定箇所を挿通して絶縁カバー5の中に該架空配電線を固定することができる。絶縁カバーの取り付け作業の手順は、図5の(a)、(b)、(c)に示すように、絶縁カバー5の開閉部を開けて架空配電線3の所定箇所に被せ、絶縁カバー5の開閉部を閉じて係止フック10をフック受入部に係止させることで絶縁カバー5を架空配電線3の所定箇所に固定させることができる。絶縁カバー5を固定後、把持部11は除去される。このとき、予め離型紙12aを剥がしておいたスポンジパッキン12の粘着層が架空配電線3における絶縁被覆に貼り付いて所定箇所からの絶縁カバー5の移動が防止される。
【0012】
さらに、架空配電線用絶縁カバーに関連する第3の従来技術として、例えば、図6の(a)、(b)に示すような電線用カバーおよび絶縁カバーの固定方法が知られている。この従来技術における架空配電線用絶縁カバー13では、一方の絶縁カバー本体6における絶縁カバー主部6aの図6(a)左側内壁面及び他方の絶縁カバー本体7における絶縁カバー主部7aの図6(a)左側内壁面の各位置に、それぞれ2個ずつのリブ状支持部14a,・、14a,・が設けられている。これと同様に、一方の絶縁カバー本体6における絶縁カバー主部6aの図6(a)右側内壁面及び他方の絶縁カバー本体7における絶縁カバー主部7aの図6(a)右側内壁面の各位置に、それぞれ2個ずつのリブ状支持部14b,・、14b,・が設けられている。各リブ状支持部14a,14bは、配置される架空配電線の表面に当接する当接部位を有し、前記絶縁カバー主部6a,7aの各内壁面と前記当接部位との間で変形自在になるような材質で次のような形状に形成されている。
【0013】
即ち、各リブ状支持部14a,14bは、所定の厚みを有する四角形又は三角形の板状形状をなして、架空配電線の長手方向に沿ったリブ長さと、架空配電線の長手方向に直交する面上での前記内壁面−当接部位間の寸法としてのリブ高さとを有し、各リブ状支持部14a,14bは、当接部位が架空配電線の表面に当接したときに変形して前記リブ高さが縮小するような寸法に設定され、前記リブ長さの方向は、架空配電線の長手方向から角度を付けた方向に設定されている。
【0014】
そして、複数のリブ状支持部14a,・、14b,・は、一組になって1本の架空配電線を外周方向から均等に支持する。図6(b)は、架空配電線用絶縁カバー13を架空配電線3に被せて固定した状態を示している。この従来技術の架空配電線用絶縁カバー13は、複数のリブ状支持部14a,・、14b,・を適用することによって広範囲な外形を有する架空配電線を1本の架空配電線用絶縁カバーで確実に固定することができる。したがって、サイズ毎の絶縁カバーを準備することが不要となり、絶縁カバーの種類を削減することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−268577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
図3に示した従来技術においては、架空配電線における絶縁被覆が剥ぎ取られて芯線が露出した箇所に、予め円形に癖付けされたポリエチレンシートがのり巻き形に巻きつけられて、芯線が露出した箇所を防護するようにしている。この防護状態において内面に設けられたボスが絶縁被覆の段差部に当接することで取付け箇所からの架空配電線用絶縁カバーの移動を防止するようにしている。
【0017】
図4の(a)、(b)及び図5の(a)、(b)、(c)に示した従来技術においては、絶縁カバーの内面に粘着層付きのスポンジパッキンが貼り付けられており、該粘着層が架空配電線における絶縁被覆に貼り付くことで所定箇所に取付けた絶縁カバーの移動を防止するようにしている。しかしながら、雨天の際の工事になると架空配電線における絶縁被覆や粘着層等が雨水で濡れるため、粘着層が架空配電線における絶縁被覆に貼り付きにくくなって、作業性が悪化するおそれがある。
【0018】
また、特許文献1に記載の従来技術においては、絶縁カバー本体における絶縁カバー主部の左端側及び右端側の各内壁面にそれぞれ4個ずつのリブ状支持部を設け、この各4個ずつのリブ状支持部がそれぞれ一組になって1本の架空配電線を外周方向から均等に支持して絶縁カバーを架空配電線における所定箇所に取付けるようにしている。
【0019】
ところで、ここ近年、架空配電線の工事は間接活線工法が主流となっており、架空配電線用絶縁カバーの取付けも間接活線工具での取付け作業が増えている。間接活線工具での作業では、工具先端に絶縁カバーをセットして行うため、絶縁カバーは、手元から約2m離れており、所定取付け箇所への絶縁カバーの位置合わせが難しい。このため、取付け後の位置合わせが可能であることが望まれている。また、絶縁カバーが取付けられている箇所について再工事がある場合に備えて、絶縁カバーは移動可能に取付けておきたいという要望もある。
【0020】
そこで、絶縁カバーを、架空配電線への取付け後に任意に移動させることを可能として、取付け後の架空配電線における所定取付け箇所への該絶縁カバーの位置合わせを可能にするとともに絶縁カバーが取付けられている箇所について再工事がある場合の該絶縁カバーの移動を可能にし、架空配電線の揺れなどによる該架空配電線に対する絶縁カバーの移動は抑止し、また雨天の際の工事も支障なく可能として作業性を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、それぞれ半円断面状の一方の絶縁カバー本体と他方の絶縁カバー本体の長手方向の境界にヒンジ部を形成し、該ヒンジ部を開閉軸として前記一方の絶縁カバー本体と前記他方の絶縁カバー本体とを閉じ合わせることにより両端部が開口した円筒状の絶縁カバーを構成し、該円筒状の絶縁カバーに架空配電線を挿通させて該円筒状の絶縁カバーを前記架空配電線に取付けるようにした架空配電線用絶縁カバーにおいて、前記一方の絶縁カバー本体及び前記他方の絶縁カバー本体の各内面に多数個の弾性を有する突起体を突設し、該多数個の弾性を有する突起体を前記架空配電線に弾接させて前記円筒状の絶縁カバーを当該架空配電線に取付けた架空配電線用絶縁カバーを提供する。
【0022】
この構成によれば、間接活線工具等を用いて架空配電線に取付けられた円筒状の絶縁カバーは、その内面に突設された多数個の弾性を有する突起体が架空配電線に弾力的に接することで該架空配電線に支持される。したがって、間接活線工具を用いた架空配電線への円筒状の絶縁カバーの取付け作業において、架空配電線における所定取付け箇所への絶縁カバーの取付け位置がずれていても、取付け後に該絶縁カバーを任意に移動させることができて、取付け後の所定取付け箇所への該絶縁カバーの正しい位置合わせ修正が可能となる。また、架空配電線の揺れなどによる動きによっては、該架空配電線上での絶縁カバーの移動は抑止される。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記一方及び他方の絶縁カバー本体は、それぞれ断面半円形の径が均一で断面形状が変化しない絶縁カバー主部と、該絶縁カバー主部の両側から各端部に向かって断面半円形の径が徐々に縮小される各テーパー部と、各テーパー部の端部にあって電線を挿通させるための半円形の開口端部とで形成され、上記多数個の弾性を有する突起体は、前記一方及び他方の絶縁カバー本体における各絶縁カバー主部の内面に突設されている架空配電線用絶縁カバーを提供する。
【0024】
この構成によれば、円筒状の絶縁カバーの両端部には、絶縁カバー主部の両側から各端部に向かって断面半円形の径が徐々に縮小される各テーパー部によって、テーパー状部が形成され、該テーパー状部の端部に開口部が形成される。したがって、多数個の弾性を有する突起体で架空配電線に弾力的に支持されている円筒状の絶縁カバー内が、該円筒状の絶縁カバーの両端部に形成されたテーパー状部により外部雰囲気から遮断される。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明は、架空配電線に取付けられた円筒状の絶縁カバーは、その内面に突設された多数個の弾性を有する突起体が架空配電線に弾力的に接することで該架空配電線に支持されている。したがって、取付け後に該絶縁カバーを任意に移動させることができて、架空配電線における所定取付け箇所への絶縁カバーの取付け位置がずれていても、取付け後の所定取付け箇所への該絶縁カバーの正しい位置合わせ修正を行うことができ、また、絶縁カバーが取付けられている箇所について再工事がある場合には、該絶縁カバーを適宜に移動させることができる。さらに、架空配電線の揺れなどによる該架空配電線に対する絶縁カバーの移動は、これを抑止することができる。さらにまた、絶縁カバーは、その内面に設けた粘着層付きのスポンジパッキンで架空配電線における絶縁被覆に貼り付けるようにしていないことから、雨天の際の工事も支障なく行うことができて作業性を向上させることができるという利点がある。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えてさらに、円筒状の絶縁カバー内が、該円筒状の絶縁カバーの両端部に形成されたテーパー状部により外部雰囲気から遮断されることで、該円筒状の絶縁カバー内を長期にわたって清浄に維持することができる。したがって、取付け後、絶縁カバーが取付けられている箇所について再工事がある場合等の該絶縁カバーの移動を常にスムーズに行うことができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係る架空配電線用絶縁カバーを示す図であり、(a)は円筒形状で二つ割の絶縁カバーを上下に開いて内側から見た図、(b)は図(a)中のX−X線に沿う断面図。
【図2】図1の二つ割の絶縁カバーを閉じ合わせて構成した円筒状の絶縁カバーを軸方向に断面して、その内面に突設した多数個の弾性を有する突起体の作用等を説明するための図であり、(a)は円筒状の絶縁カバーの内面に突設された多数個の弾性を有する突起体を示す図、(b)は多数個の弾性を有する突起体が架空配電線に弾力的に接して円筒状の絶縁カバーが該架空配電線に取付けられた状態を示す図、(c)は取付け後に絶縁カバーを移動させたとき多数個の弾性を有する突起体が適宜に撓みつつ架空配電線に弾力的に接している状態を示す図。
【図3】第1の従来技術としての架空配電線用絶縁カバーの軸方向断面図。
【図4】第2の従来技術としての架空配電線用絶縁カバーを示す図であり、(a)は円筒形状で二つ割の絶縁カバーを上下に開いて内側から見た図、(b)は図(a)中のY−Y線に沿う断面図。
【図5】上記第2の従来技術としての架空配電線用絶縁カバーを架空配電線に固定する手順を説明するための図であり、(a)は絶縁カバーを上下に開いて架空配電線に被せる様子を示す図、(b)は離型紙を剥がしたスポンジパッキンの粘着層に架空配電線における絶縁被覆部分を押付けた状態を示す図、(c)は絶縁カバーを閉じて該絶縁カバーを架空配電線に固定した状態を示す図。
【図6】第3の従来技術としての架空配電線用絶縁カバーを示す図であり、(a)は円筒形状で二つ割の絶縁カバーを上下に開いて内側から見た図、(b)は架空配電線用絶縁カバーを架空配電線に被せて固定した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、絶縁カバーを、架空配電線への取付け後に任意に移動させることを可能として、取付け後の架空配電線における所定取付け箇所への該絶縁カバーの位置合わせを可能にするとともに絶縁カバーが取付けられている箇所について再工事がある場合の該絶縁カバーの移動を可能にし、架空配電線の揺れなどによる該架空配電線に対する絶縁カバーの移動は抑止し、また雨天の際の工事も支障なく可能として作業性を向上させるという目的を達成するために、それぞれ半円断面状の一方の絶縁カバー本体と他方の絶縁カバー本体の長手方向の境界にヒンジ部を形成し、該ヒンジ部を開閉軸として前記一方の絶縁カバー本体と前記他方の絶縁カバー本体とを閉じ合わせることにより両端部が開口した円筒状の絶縁カバーを構成し、該円筒状の絶縁カバーに架空配電線を挿通させて該円筒状の絶縁カバーを前記架空配電線に取付けるようにした架空配電線用絶縁カバーにおいて、前記一方の絶縁カバー本体及び前記他方の絶縁カバー本体の各内面に多数個の弾性を有する突起体を突設し、該多数個の弾性を有する突起体を前記架空配電線に弾接させて前記円筒状の絶縁カバーを当該架空配電線に取付けることにより実現した。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の好適な実施例を図1の(a)、(b)及び図2の(a)、(b)、(c)を参照して説明する。なお、図1の(a)、(b)及び図2の(a)、(b)、(c)において、前記図4の(a)、(b)及び図5の(a)、(b)、(c)における構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符合を以って示し、重複した説明を省略する。
【0030】
まず、本実施例に係る架空配電線用絶縁カバーの構成を説明する。図1の(a)、(b)において、架空配電線用絶縁カバー(以下、単に絶縁カバーともいう)15は、ポリエチレン等の樹脂で成形されている。そして、本実施例においては、一方の絶縁カバー本体6及び他方の絶縁カバー本体7における各絶縁カバー主部6a,7aの内面に多数個の弾性を有する突起体16,…が突設されている。前記一方の絶縁カバー本体6と前記他方の絶縁カバー本体7とを閉じ合わせて絶縁カバー15を円筒状に構成したとき、図2(a)に示すように、多数個の弾性を有する突起体16,…は、それぞれ円筒状の絶縁カバー15の中心軸に向かって突設された態様となる。
【0031】
次に、上述のように構成された架空配電線用絶縁カバーの作用を図2の(b)、(c)を用いて説明する。架空配電線3における所定箇所への絶縁カバー15の取付けは、一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7とを開き、間接活線工具等で把持部11を把持して架空配電線3の所定箇所に被せ、一方の絶縁カバー本体6と他方の絶縁カバー本体7とを閉じ合わせて係止フック10をフック受入部に係止させることで円筒状となった絶縁カバー15が架空配電線3の所定箇所に取付けられる。絶縁カバー5の取付け後、把持部11は除去される。
【0032】
このとき、円筒状の絶縁カバー15は、図2(b)に示すように、その内面に突設された多数個の弾性を有する突起体16,…が架空配電線3に弾力的に接することで該架空配電線3の所定箇所に支持されるようにして取付けられる。そして、図2(c)に示すように、取付け後に円筒状の絶縁カバー15を移動させると、多数個の弾性を有する突起体16,…は、それぞれ適宜に撓みつつ架空配電線3に、なお弾力的に接した状態を維持する。このため、取付け後に円筒状の絶縁カバー15を任意に移動させることが可能となる。
【0033】
したがって、間接活線工具を用いた架空配電線3への円筒状の絶縁カバー15の取付け作業において、架空配電線3における所定取付け箇所への絶縁カバー15の取付け位置がずれていても、取付け後に該絶縁カバーを移動させて、取付け後の所定取付け箇所への該絶縁カバーの正しい位置合わせ修正が可能となる。一方、架空配電線の揺れなどによる動きによっては、該架空配電線上での絶縁カバーの移動は抑止される。
【0034】
また、円筒状の絶縁カバー15の両端部には、絶縁カバー主部6a,7aの両側から各端部に向かって断面半円形の径が徐々に縮小される各テーパー部6b,7bによって、テーパー状部が形成され、該テーパー状部の端部に開口端部6c,7cによって開口部が形成される。したがって、多数個の弾性を有する突起体16,…で架空配電線3に弾力的に支持されている円筒状の絶縁カバー15内が、該円筒状の絶縁カバー15の両端部に形成されたテーパー状部により外部雰囲気から遮断される。
【0035】
上述したように、本実施例に係る架空配電線用絶縁カバーにおいては、架空配電線3に取付けられた円筒状の絶縁カバー15は、その内面に突設された多数個の弾性を有する突起体16,…が架空配電線3に弾力的に接することで該架空配電線3に支持されるようにして取付けられている。したがって、取付け後に該絶縁カバー15を任意に移動させることができて、架空配電線3における所定取付け箇所への絶縁カバー15の取付け位置がずれていても、取付け後の所定取付け箇所への該絶縁カバー15の正しい位置合わせ修正を行うことができる。また、絶縁カバー15が取付けられている箇所について再工事がある場合には、該絶縁カバー15を適宜に移動させることができる。さらに、架空配電線3の揺れなどによる該架空配電線3に対する絶縁カバー15の移動は、これを抑止することができる。
【0036】
絶縁カバー15は、その内面に設けた粘着層付きのスポンジパッキンで架空配電線3における絶縁被覆に貼り付けるようにしていないことから、雨天の際の工事も支障なく行うことができて作業性を向上させることができる。
【0037】
円筒状の絶縁カバー15内が、該円筒状の絶縁カバー15の両端部に形成されたテーパー状部により外部雰囲気から遮断されることで、該円筒状の絶縁カバー15内を長期にわたって清浄に維持することができる。したがって、取付け後、絶縁カバー15が取付けられている架空配電線3の箇所について再工事がある場合等の該絶縁カバー15の移動を常にスムーズに行うことができる。
【0038】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
絶縁カバーを、架空配電線への取付け後に任意に移動させることを可能として、取付け後の架空配電線における所定取付け箇所への該絶縁カバーの位置合わせを可能にするとともに絶縁カバーが取付けられている箇所について再工事がある場合の該絶縁カバーの移動を可能にし、架空配電線の揺れなどによる該架空配電線に対する絶縁カバーの移動は抑止し、また雨天の際の工事も支障なく可能として作業性を向上させることが不可欠な高圧架空配電線から分岐線をとるときの分岐線接続工事及び柱間切分式無停電工法を含む各種の電気工事において絶縁被覆が除去されて芯線が露出した箇所を防護する際の絶縁カバーに広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
3 架空配電線
3a 芯線
4 絶縁被覆
5 架空配電線用絶縁カバー
6 一方の絶縁カバー本体
6a,7a 絶縁カバー主部
6b,7b テーパー部
6c,7c 開口端部
7 他方の絶縁カバー本体
8 ヒンジ部
9a,9b 合わせ部
10 係止フック
11 把持部
15 架空配電線用絶縁カバー
16 突起体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ半円断面状の一方の絶縁カバー本体と他方の絶縁カバー本体の長手方向の境界にヒンジ部を形成し、該ヒンジ部を開閉軸として前記一方の絶縁カバー本体と前記他方の絶縁カバー本体とを閉じ合わせることにより両端部が開口した円筒状の絶縁カバーを構成し、該円筒状の絶縁カバーに架空配電線を挿通させて該円筒状の絶縁カバーを前記架空配電線に取付けるようにした架空配電線用絶縁カバーにおいて、
前記一方の絶縁カバー本体及び前記他方の絶縁カバー本体の各内面に多数個の弾性を有する突起体を突設し、該多数個の弾性を有する突起体を前記架空配電線に弾接させて前記円筒状の絶縁カバーを当該架空配電線に取付けたことを特徴とする架空配電線用絶縁カバー。
【請求項2】
上記一方及び他方の絶縁カバー本体は、それぞれ断面半円形の径が均一で断面形状が変化しない絶縁カバー主部と、該絶縁カバー主部の両側から各端部に向かって断面半円形の径が徐々に縮小される各テーパー部と、各テーパー部の端部にあって電線を挿通させるための半円形の開口端部とで形成され、上記多数個の弾性を有する突起体は、前記一方及び他方の絶縁カバー本体における各絶縁カバー主部の内面に突設されていることを特徴とする請求項1記載の架空配電線用絶縁カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27058(P2013−27058A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156142(P2011−156142)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000117010)旭電機株式会社 (127)
【Fターム(参考)】