説明

染め替え用ポリエステル系繊維製品およびその脱色方法

【課題】酸化脱色を行わなくとも、染め替え可能なポリエステル系繊維製品およびその脱色方法を提供する。
【解決手段】アゾ系分散染料で染色された染め替え用ポリエステル系繊維製品。このポリエステル繊維製品を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染め替え用ポリエステル系繊維製品およびその脱色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、強度、加工性、耐薬品性、耐光性、染色性などに優れることから、衣服、鞄、靴、カーテンなどの繊維製品として様々な色に染色され、使用されている。
また、近年の消費者の嗜好は様々であり、また変化が激しく、商品企画時に予想していたものとは異なった色が流行し、流行色に染められたものはすぐに在庫が底を尽き、他の色は全く見向きもされず、在庫となって廃棄されるといった問題が生じている。
【0003】
従来は、それでも少しでも売上を上げるため、在庫が底をつきかけてから生地を染めていたが、このような方法で追加製造していたのでは、製品ができ上がった頃には流行が去ってしまい、在庫となってしまう。
そこで、着色前の縫製品を準備しておき、すぐに染色する方法が検討された(特許文献1)。この方法では、販売時期に間に合うが、既に製品として製造された他の色のものは在庫となってしまう。
【0004】
また、従来、ポリエステル繊維製品では、染色加工時に染め斑が発生したり、色を染め間違えた場合に、苛性ソーダ−とハイドロサルファイトとを用いた還元脱色が行われている。
しかしながら、染め斑の修正や黒などの濃色には染め替えは可能であるが、淡色をはじめとする様々な色に染め直しができるほど十分な脱色ができないという問題があった。
また、本願発明者らは、さらなる脱色の手段として、苛性ソーダ−とハイドロサルファイトを用いた還元脱色を行った後、ギ酸や蓚酸または酢酸と亜塩素酸ソーダとを用いて酸化脱色を行うという、還元脱色と酸化脱色を組み合わせた脱色の検討も行った。
【0005】
しかしながら、酸化脱色を行う場合は、一般的に染色加工に用いられているステンレス製の加工機では、加工機が腐食してしまう。そこで、チタンメッキ製の加工機が必要であるが価格が高価であり、酸化脱色を行わずに、脱色することが望まれている。
【特許文献1】特開平10−130926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、在庫となりそうなもしくは在庫となってしまった、染色されている生地や染色されている衣服などを脱色し、任意の色に染め直すことにより、在庫を減らし、消費者の望む色の商品を短期間で提供するために、あるいは酸化脱色を行わなくとも、染め替え可能なポリエステル系繊維製品およびその脱色方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものであり、本発明は、例えば、下記の構成(1)〜(20)からなる。
(1)分散染料で染色されたポリエステル系繊維製品であって、分散染料がアゾ系分散染料であることを特徴とする染め替え用ポリエステル系繊維製品。
(2)アゾ系分散染料が、モノアゾ型、ジスアゾ型、チアゾールアゾ型、チオフェンアゾ型およびピロリドンアゾ型分散染料からえらばれる少なくとも1種を含む、上記(1)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品。
(3)前記繊維製品のアルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液による脱色処理後の色と前記繊維製品が染色される前の未染色繊維製品の色とを比較した色差ΔEが13以下である、上記(1)または(2)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品。
【0008】
(4)アゾ系分散染料で染色されたポリエステル繊維製品を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理することを特徴とする染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(5)前記還元剤が、ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む、上記(4)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(6)前記非イオン系界面活性剤が、脂肪酸エチレンオキサイド付加物である、上記(4)または(5)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【0009】
(7)前記脂肪酸エチレンオキサイド付加物が、不飽和脂肪酸エチレンオキサイド付加物である、上記(6)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(8)不飽和脂肪酸エチレンオキサイド付加物が、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルおよび/またはポリエチレングリコールオレイン酸ジエステルである、上記(7)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(9)前記脱色用処理液が、さらにキレート剤を含む、上記(4)〜(8)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(10)前記脱色用処理液が、さらにアニオン系界面活性剤を含む、上記(4)〜(9)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(11)前記アニオン系界面活性剤が、硫酸化油である、上記(10)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【0010】
(12)前記硫酸化油が、硫酸化ひまし油である、上記(11)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(13)前記脱色用処理液が、さらに芳香族化合物を含む、上記(4)〜(12)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(14)前記芳香族化合物が、N−ブチルフタルイミドおよび/または安息香酸ベンジルである、上記(13)に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【0011】
(15)前記脱色処理が120〜140℃にて10〜180分間行われる、上記(4)〜(14)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(16)前記脱色処理液が、前記非イオン系界面活性剤を0.01〜10質量%の量で含む、上記(4)〜(15)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(17)前記脱色処理液が、前記芳香族化合物を0.01〜10質量%の量で含む、上記(4)〜(16)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【0012】
(18)前記脱色用処理液が、前記アニオン系界面活性剤を0.001〜5質量%の量で含む、上記(4)〜(17)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(19)前記脱色用処理液が、前記アルカリ剤を0.05〜10質量%の量で含む、上記(4)〜(18)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
(20)前記脱色用処理液が、前記還元剤を0.1〜10質量%の量で含む、上記(4)〜(18)のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の染め替え用ポリエステル系繊維製品を用いれば、脱色処理により染料を繊維製品から容易に脱色することが可能であるため、染め替え時の色制限が少ない、染め替え可能な染色されている繊維製品を提供することができる。
また、本発明の繊維製品を本発明の脱色方法にて脱色処理することにより、酸化処理に耐え得るチタンメッキ製の装置を用いなくとも、従来の染色加工に用いられている装置により短時間で脱色処理することができ、安価で染め替え可能なポリエステル系繊維製品を提供することができる。
従って、本発明によれば、染色繊維製品の在庫を減らし、消費者の望む色の商品を短期間で提供することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の好ましい態様について説明するが、本発明は、これらの態様のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な変更がなされ得ることを理解されたい。
【0015】
本発明において、ポリエステル系繊維製品とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートやポリ乳酸などのポリエステルを用いて得られる繊維製品を挙げることができる。再生ポリエステルであってもよい。また、これらの繊維製品は、糸状、綿状、織物状、編物状、不織布状などの形態や、衣服、鞄、袋物、テント、カーテン、布団、敷布などの縫製品の形態などのいずれにあってもよい。
また、上記のポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル繊維の他に綿、麻、羊毛などの天然繊維やナイロン、アクリルなどの合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維を含んでいてもよい。
リサイクル時の分別やケミカルリサイクル時に得られる成分の純度の観点からは、ポリエステル繊維のみからなるものが好ましい。
【0016】
さらに、これらのポリエステル系繊維製品には、撥水加工、制電加工、吸水加工、抗菌防臭加工、難燃加工、柔軟加工等の一般的なポリエステル系繊維製品に行われている各種付帯加工が施されていてもよい。
【0017】
本発明に用いられるアゾ系分散染料は、モノアゾ型、ジスアゾ型、チアゾールアゾ型、チオフェンアゾ型およびピロリドンアゾ型分散染料から選ばれる少なくとも1種を含むのが好ましい。また、アルキルエステル基を有するものも好ましく用いられる。
より具体的には、C.I.Disperse Yellow 3、C.I.Disperse Yellow 126、C.I.Disperse Yellow 163、C.I.Disperse Yellow 226、C.I.Disperse Orange 30、C.I.Disperse Red 54、C.I.Disperse Red 65、C.I.Disperse Red 73、C.I.Disperse Red 179、C.I.Disperse Red 278、C.I.Disperse Red 356、C.I.Disperse Violet 12、C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 125、C.I.Disperse Blue 148、C.I.Disperse Blue 165、C.I.Disperse Blue 183、C.I.Disperse Green 9、C.I.Disperse Yellow 60、C.I.Disperse Red 58、C.I.Disperse Yellow 7、C.I.Disperse Yellow 23、C.I.Disperse Orange 29、C.I.Disperse Orange 13、C.I.Disperse Red 141などが挙げられる。
【0018】
さらに、アゾ系分散染料以外のベンゾジフラノン系、フタルイミド系、キノン系分散染料等であっても、下記の脱色処理において問題にならない程度に色が残る染料であれば、併用してもよい。
【0019】
上記分散染料による染色は、前述したポリエステル系繊維製品が、糸状、綿状、織物状、編物状、不織布状などの形態や、衣服、鞄、袋物、テント、カーテン、布団、敷布などの縫製品の形態などのいずれの状態で行われてもよい。
染色濃度は、淡色から濃色のいずれでもよく、繊維製品の質量に対して、市販されている染料濃度で0.001〜15%omf程度であってよい。
さらに、染色色相は、赤、青、黄、グリーン、黒等任意の色であってよい。
【0020】
また、前記染色繊維製品の下記の如き脱色処理後の色と前記繊維製品が染色される前の未染色繊維製品の色とを比較した色差ΔEは13以下であるのが好ましく、10以下であるのがより好ましい。
ここで、色差ΔEは、CIE1976LAB ΔE=√(ΔL+Δa+Δb)、光源D65、10°視野にて求めたものであり、分光光度計としては倉敷紡績株式会社製COLOR−7X 拡散/8°、6インチ積分球、色彩管理システム AUCOLOR−NF2を用いた。
【0021】
本発明のリサイクル用ポリエステル繊維製品の脱色方法は、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理することを特徴とする。
ここで、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
これらのアルカリ剤は、0.05〜10%の濃度、特に0.1〜1%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この水溶液の濃度が0.05%未満であると脱色効果が十分でないことがあり、10%を超えるとポリエステル系繊維を溶かしてしまう可能性がある。
【0022】
有用な還元剤としては、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、亜鉛スルホキシレート・ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシレート・ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用されてもよい。特に、ハイドロサルファイトと二酸化チオ尿素とを併用するのが好ましい。
これらの還元剤は、0.1〜10%の濃度、特に0.1〜3%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.1%未満であると脱色が十分でないことがあり、10%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。
【0023】
有用な非イオン界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが挙げられる。これらのうちでは脂肪酸エチレンオキサイド付加物が好ましく、不飽和脂肪酸エチレンオキサイド付加物がより好ましい。より具体的には、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル、ポリエチレングリコールオレイン酸ジエステルが挙げられる。
【0024】
これらの非イオン系界面活性剤は、0.01〜10%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.01%未満であると脱色が十分でないことがあり、10%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利であり、多量の泡が発生したりする可能性がある。
【0025】
さらに、本発明で用いる脱色用処理液はキレート剤を含んでいてもよい。有用なキレート剤としては、縮合リン酸塩としてピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなど、アミノカルボン酸型としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)など、オキシカルボン酸型としてグルコン酸など、ホスホン酸型としてヒドロキシエチリデンジホスホン酸など、ポリカルボン酸型としてポリアクリル酸ソーダ、ポリマレイン酸ソーダなどが挙げられる。これらのうちではエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が好まし、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上の組み合わせで用いられてもよい。
これらのキレート剤は、0.001〜0.1%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.001%未満であると脱色が十分でないことがあり、0.1%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。
【0026】
また、脱色用処理液はアニオン系界面活性剤を含んでいてもよい。アニオン系界面活性剤としては、セッケン、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩などが挙げられる。より好ましくは硫酸化油であり、さらに好ましくは硫酸化ひまし油である。
【0027】
これらのアニオン系界面活性剤は0.001〜5%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.001%未満であると脱色が十分でないことがあり、5%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。
また、脱色用処理液は芳香族化合物を含んでいてもよい。かかる芳香族化合物としては、具体的には、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、安息香酸ベンジル、ジベンジルエーテル、N−ブチルフタルイミドなどが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用されてもよい。脱色性や臭いの観点からは、安息香酸ベンジル、N−ブチルフタルイミドが好ましく、これらを併用するのがより好ましい。
【0028】
これらの芳香族化合物は0.01〜10%の濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.01%未満であると脱色が十分でないことがあり、10%を超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利であり、また繊維製品に芳香族化合物が残留し、臭いが発生する可能性がある。
また、脱色処理は、100〜140℃、特に120〜140℃で、10〜180分間行なわれるのが好ましい。この温度が100℃を下まわると十分脱色ができないことがあり、また140℃を超えるとポリエステル系繊維が脆化してしまうことがある。
また、脱色処理されるポリエステル系繊維製品と脱色処理液の浴比は、ポリエステル系繊維製品の染色濃度によっても変わるが、1:5〜1:500程度がよい。浴比が1:5を下まわると十分な脱色が得られないことがあり、1:500を超えても脱色効果にさほど差がみられないため、コスト的に不利である。
【0029】
また、脱色処理に用いる装置としては、通常ポリエステル系繊維製品の染色や精練処理に用いられる液流染色機や高圧ワッシャ−などを、ポリエステル系繊維製品の形態に応じて適宜選択して用いることができ、上記の処理条件で処理できるものであれば特に限定されるものではない。
また、脱色処理は、必要に応じて、上記の処理を2回以上繰り返して行ってもよい。
脱色処理後は、乾燥前に水洗を行うのが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
ポリエステルタフタ(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸83デシテックス/72フィラメント、ヨコ糸83デシテックス/72フィラメント、密度 タテ114本/2.54cm、ヨコ92本/2.54cm)を、アゾ系分散染料Dianix Yellow 7GL200%(ピロリドンアゾ型、C.I.Disperse Yellow 126、ダイスタージャパン製)を用い、生地の質量に対し、1%omfの染料を用いて、液流染色機により、130℃で30分間染色を行い、黄色に染色した。
【0031】
次に、帯電防止剤ナイスポールFL(日華化学製)の0.5%水溶液を用いてパディング処理し、帯電防止加工を行った。
次に、上記のタフタを用いてブラウスを縫製し、リサイクル用ポリエステル系繊維製品とした。
上記ブラウスをユニホームとして着用した後、ブラウスを回収した。
回収したブラウスからボタン等を取り去り、高圧ワッシャーにて下記脱色処理液を用い、常温より2℃/分にて昇温しながら135℃まで昇温を行い、135℃にて40分間脱色処理を1回行なった(浴比1:50)。
【0032】
脱色処理液
苛性ソーダ 0.3%
ハイドロサルファイト 0.5%
二酸化チオ尿素 0.2%
ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 1.0%
硫酸化ひまし油 0.1%
N−ジブチルフタルイミド 0.5%
安息香酸ベンジル 0.2%
キレート剤(DTPA) 0.01%
水 残量
【0033】
水洗、乾燥後、脱色された繊維製品は、ほぼ白色になっており、わずかに黄味を有していた。
次に、繊維製品の脱色処理後の色と繊維製品が染色される前の白生地の色とを測定し、色差ΔEを求めたところ、4.93であった。
【0034】
次に、脱色された染め替え用ポリエステル繊維製品(ブラウス)を、染料Dianix Yellow 7GL200%に代えて、アゾ系分散染料Palanil Dark Blue 3RT(ニトロベンゾチアゾールアゾ型、C.I.Disperse Blue 148、ダイスタージャパン製)0.3%omfおよびアゾ系分散染料Kayalon Polyester Yellow GLDS(モノアゾ型、C.I.Disperse Yellow 226、日本化薬製)0.3%omfを用い,高圧ワッシャーを用いた以外は、上記と同様に染色を行った。
染色された染め替え用ポリエステル繊維製品(ブラウス)は、前の黄色に染色されていた色の影響をほとんど受けず、緑色のブラウスであった。
その後、再度上記と同様の条件にて脱色処理を行った。脱色処理された繊維製品は,ほぼ白色になっていた。
【0035】
次に、繊維製品の脱色処理後の色と最初の繊維製品が染色される前の白生地の色とを測定し、色差ΔEを求めたところ、5.54であった。
以上のように、本発明の染め替え用ポリエステル系繊維製品は任意の色に染め直すことができる。したがって、短期間で流行色の繊維製品に染め替えができ、消費者の望むものを、在庫を減らしながら提供することができる。
【0036】
実施例2
ポリエステルタフタ(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸83デシテックス/72フィラメント、ヨコ糸83デシテックス/72フィラメント、密度 タテ114本/2.54cm、ヨコ92本/2.54cm)を、アゾ系分散染料Kayalon Polyester Rubine BLS200(ニトロベンゼンチアゾールアゾ型、C.I.Disperse Red 179、日本化薬製)を用い、生地の質量に対し、3%omfの染料を用いて、液流染色機により、130℃で30分間染色を行い、エンジに染色した。
次に、帯電防止剤ナイスポールFL(日華化学製)の0.5%水溶液を用い、パディング処理にて帯電防止加工を行った。
次に、上記のタフタを織物の状態で保管した。その後、この染色された織物を、液流染色機にて、下記脱色処理液を用い、常温より2℃/分にて昇温しながら135℃まで昇温を行い、135℃にて30分間の脱色処理を2回行った(浴比1:50)。
【0037】
脱色処理液
苛性ソーダ 0.3%
ハイドロサルファイト 0.5%
二酸化チオ尿素 0.2%
ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 1.0%
キレート剤(DTPA) 0.01%
水 残量
【0038】
水洗、乾燥後、脱色された繊維製品は、ほぼ白色になっており、わずかに黄味を有していた。
次に、繊維製品の脱色処理後の色と繊維製品が染色される前の白生地の色とを測定し、色差ΔEを求めたところ、9.94であった。
【0039】
次に、脱色された染め替え用ポリエステル繊維製品を、染料Kayalon Polyester Rubine BLS200に代えて、アゾ系分散染料Palanil Dark Blue 3RT(ニトロベンゾチアゾールアゾ型、C.I.Disperse Blue 148,ダイスタージャパン製)0.5%omfを用いて上記と同様に染色を行った。
染色された染め替え用ポリエステル繊維製品(織物)は、前のルビン色に染色されていた色の影響をほとんど受けず、綺麗な青色であった。
【0040】
実施例3
ポリエステルオックス(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸280デシテックス/48フィラメント、ヨコ糸280デシテックス/48フィラメント、密度 タテ51本/2.54cm、ヨコ51本/2.54cm)を、アゾ系分散染料Dianix Green CC(チオフェンアゾ型、C.I.Disperse Green 9、ダイスタージャパン製)を用い、生地の質量に対し、1%omfの染料を用いて、液流染色機により、130℃で30分間染色を行い、緑色に染色した。
次に、上記のオックスを用いてカーテンを縫製した。
このカーテンを高圧ワッシャーにて、下記脱色処理液を用い、常温より2℃/分にて昇温しながら135℃まで昇温を行い、135℃にて40分間の脱色処理を1回行った(浴比1:50)。
【0041】
脱色処理液
苛性ソーダ 0.3%
ハイドロサルファイト 0.5%
二酸化チオ尿素 0.2%
ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 1.0%
硫酸化ひまし油 0.1%
N−ジブチルフタルイミド 0.5%
安息香酸ベンジル 0.2%
キレート剤(DTPA) 0.01%
キレート剤(NTA) 0.01%
水 残量
【0042】
水洗、乾燥後、脱色された繊維製品は、ほぼ白色になっており、わずかに黄味を有していた。
次に、繊維製品の脱色処理後の色と繊維製品が染色される前の白生地の色とを測定し、色差ΔEを求めたところ、2.81であった。
次に、脱色された染め替え用ポリエステル繊維製品(カーテン)を、染料Dianix Green CCに代えて、アゾ系分散染料Palanil Dark Blue 3RT(ニトロベンゾチアゾールアゾ型、C.I.Disperse Blue 148、ダイスタージャパン製)0.5%omfおよびDianix Red C−4G150%(ニトロベンゼンアゾ型、アルキルエステル基含有、C.I.Disperse Red 278、ダイスタ−ジャパン製)0.2%omfを用い、高圧ワッシャーを用いた以外は、上記と同様に染色を行った。
染色された染め替え用ポリエステル繊維製品(カーテン)は、前の緑色に染色されていた色の影響をほとんど受けず、綺麗な紫色であった。
【0043】
実施例4
ポリエステルオックス(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸280デシテックス/48フィラメント、ヨコ糸280デシテックス/48フィラメント、密度 タテ51本/2.54cm、ヨコ51本/2.54cm)を、アゾ系分散染料Dianix Yellow 7GL200%(ピロリドンアゾ型、C.I.Disperse Yellow 126、ダイスタージャパン製)0.7%omfおよびアゾ系染料Dianix Red C−4G150%(ニトロベンゼンアゾ型、アルキルエステル基含有、C.I.Disperse Red 278、ダイスタ−ジャパン製)0.5%omfを用いて、液流染色機により、130℃で30分間染色を行い、橙色に染色した。
次に、上記のオックスを用いて鞄を縫製して、染め替え用ポリエステル系繊維製品とした。
染色された鞄を、高圧ワッシャーにて、下記脱色処理液を用い、常温より2℃/分にて昇温しながら135℃まで昇温を行い、135℃にて40分間の脱色処理を1回行った(浴比1:50)。
【0044】
脱色処理液
苛性ソーダ 0.3%
ハイドロサルファイト 0.5%
二酸化チオ尿素 0.2%
ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 1.0%
硫酸化ひまし油 0.1%
N−ジブチルフタルイミド 0.5%
安息香酸ベンジル 0.2%
キレート剤(DTPA) 0.01%
キレート剤(ポリアクリル酸ソーダ) 0.01%
水 残量
【0045】
水洗、乾燥後、脱色された繊維製品は、ほぼ白色になっており、わずかに黄味を有していた。
次に、繊維製品の脱色処理後の色と繊維製品が染色される前の白生地の色とを測定し、色差ΔEを求めたところ、2.55であった。
【0046】
次に、脱色された染め替え用ポリエステル繊維製品(鞄)を、染料Dianix Yellow 7GL200%、Dianix Red C−4G150%に代えて、アゾ系分散染料Palanil Dark Blue 3RT(ニトロベンゾチアゾールアゾ型、C.I.Disperse Blue 148、ダイスタージャパン製)0.5%omfを用い、高圧ワッシャーを用いた以外は、上記と同様に染色を行った。
染色された染め替え用ポリエステル繊維製品(鞄)は、前の橙色に染色されていた色の影響をほとんど受けず、綺麗な青色であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば染色された繊維製品の染め直しを容易に行うことができるので、本発明は産業上有利に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散染料で染色されたポリエステル系繊維製品であって、分散染料がアゾ系分散染料であることを特徴とする染め替え用ポリエステル系繊維製品。
【請求項2】
アゾ系分散染料が、モノアゾ型、ジスアゾ型、チアゾールアゾ型、チオフェンアゾ型およびピロリドンアゾ型分散染料からえらばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品。
【請求項3】
前記繊維製品のアルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液による脱色処理後の色と前記繊維製品が染色される前の未染色繊維製品の色とを比較した色差ΔEが13以下である、請求項1または2に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品。
【請求項4】
アゾ系分散染料で染色されたポリエステル繊維製品を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理することを特徴とする染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項5】
前記還元剤が、ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む、請求項4に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項6】
前記非イオン系界面活性剤が、脂肪酸エチレンオキサイド付加物である、請求項4または5に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項7】
前記脂肪酸エチレンオキサイド付加物が、不飽和脂肪酸エチレンオキサイド付加物である、請求項6に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項8】
不飽和脂肪酸エチレンオキサイド付加物が、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステルおよび/またはポリエチレングリコールオレイン酸ジエステルである、請求項7に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項9】
前記脱色用処理液が、さらにキレート剤を含む、請求項4〜8のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項10】
前記脱色用処理液が、さらにアニオン系界面活性剤を含む、請求項4〜9のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項11】
前記アニオン系界面活性剤が、硫酸化油である、請求項10に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項12】
前記硫酸化油が、硫酸化ひまし油である、請求項11に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項13】
前記脱色用処理液が、さらに芳香族化合物を含む、請求項4〜12のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項14】
前記芳香族化合物が、N−ブチルフタルイミドおよび/または安息香酸ベンジルである、請求項13に記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項15】
前記脱色処理が120〜140℃にて10〜180分間行われる、請求項4〜14のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項16】
前記脱色処理液が、前記非イオン系界面活性剤を0.01〜10質量%の量で含む、請求項4〜15のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項17】
前記脱色処理液が、前記芳香族化合物を0.01〜10質量%の量で含む、請求項4〜16のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項18】
前記脱色用処理液が、前記アニオン系界面活性剤を0.001〜5質量%の量で含む、請求項4〜17のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項19】
前記脱色用処理液が、前記アルカリ剤を0.05〜10質量%の量で含む、請求項4〜18のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。
【請求項20】
前記脱色用処理液が、前記還元剤を0.1〜10質量%の量で含む、請求項4〜18のいずれかに記載の染め替え用ポリエステル系繊維製品の脱色方法。

【公開番号】特開2007−254907(P2007−254907A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78538(P2006−78538)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】