説明

染色糸の製造方法、染色糸、およびカーペット

【課題】
ポリ乳酸の物性低下を抑制させ、染色堅牢度に優れたポリ乳酸繊維と他の繊維とが混繊されてなる染色糸、および染色糸の製造方法を提供することを目的とする。さらには、柔らかな風合い、ボリューム感、摩耗性、染色堅牢度に優れたポリ乳酸系カーペットを提供する。
【解決手段】
ポリ乳酸樹脂からなる繊維と他の繊維とが混繊されてなる混繊糸に、分散染料とは染色作用の異なる他の染料を付与し、その後に分散染料を付与する工程を含むことを特徴とする染色糸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は混繊糸に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス利用の生分解性ポリマーとして、現在、最も注目されているのは脂肪族ポリエステルの一種であるポリ乳酸である。現在、産業用の繊維としても使用可能なポリ乳酸は耐摩耗性が低いため、カーペット等の耐摩耗性の要求される用途においては、ポリ乳酸繊維と非ポリ乳酸繊維とを含む混繊糸を用いて表層を形成することで耐摩耗性を改善するという方法が採られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
そして、ポリ乳酸は易分解性でもあるため、染色工程においても劣化が起こりやすいポリ乳酸繊維の染色方法としては、染色温度、染色pHおよび染色時間を選択することにより、ポリ乳酸繊維の染色前後における引張強度の保持、重量平均分子量の低下を抑制する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、当該文献で開示された条件の下では、混繊糸における非ポリ乳酸繊維を効果的に染色することは困難であった。また、非ポリ乳酸繊維の染色条件に合わせた場合、ポリ乳酸繊維は劣化が促進されてしまうという問題があった。
【0004】
また、ポリ乳酸繊維と非ポリ乳酸繊維とを別々に染色してから混繊糸するのでは、製造効率が低いという問題もあった。
【0005】
一方、染色時間を短縮し、染色浴等に必要な液量を減少させることのできる染色方法として、スペースダイイング染色という手法がある(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この手法においては、異なる色の染料を糸の指定した箇所に付与して模様をつける装置や方法の開示はなされているが、混繊糸のような複数種類の繊維からなる糸について、繊維の種類を選択的に染色する方法については、何ら示唆がされているものではなかった。
【特許文献1】特開2005−245706号公報(請求項1,4,5)
【特許文献2】特開平8−311781号公報(請求項1、2,3,4、6)
【特許文献3】特開平9−105071号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリ乳酸繊維の物性低下を抑制しつつ、かつ、ポリ乳酸繊維と他の繊維とのいずれもが染色堅牢性に優れた混繊糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、ポリ乳酸樹脂からなる繊維と他の繊維とが混繊されてなる混繊糸に、分散染料とは染色作用の異なる他の染料を付与し、その後に分散染料を付与する工程を含むことを特徴とする染色糸の製造方法である。
【0008】
また本発明は、ポリ乳酸樹脂からなる繊維と、分散染料とは染色作用の異なる他の染料により染色される他の繊維とが混繊されてなり、ポリ乳酸樹脂からなる繊維および前記他の繊維のいずれもが染色され、前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が130,000以上、前記ポリ乳酸樹脂からなる繊維の引張強度が1.5cN/dtex以上であり、かつ、染色糸としての耐光堅牢度、摩擦堅牢度及び洗濯堅牢度がいずれも3級以上であることを特徴とする染色糸である。
【0009】
また本発明は、本発明の染色糸を用いたことを特徴とするカーペットである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリ乳酸繊維を含む混繊糸に対し、繊維の物性低下を抑制しつつ、ポリ乳酸繊維と他の繊維とのいずれをも所望の色に染色し、かつ優れた染色堅牢性を付与することができる。
【0011】
また本発明の染色糸は、ポリ乳酸樹脂からなる繊維と、分散染料とは染色作用の異なる他の染料により染色される他の繊維とが混繊されていながら、強度および染色堅牢性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の染色糸の製造方法において、染色前の混繊糸はポリ乳酸樹脂からなる繊維を含む。ポリ乳酸は、バイオマス利用の生分解性ポリマーの中でも、力学特性、耐熱性およびコストのバランスに優れている。
【0013】
ポリ乳酸は−(O−CHCH−CO)−を繰り返し単位として有するポリマーであり、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものである。
【0014】
乳酸にはD体とL体の2つの光学異性体が存在するが、L体またはD体のいずれにしても、ポリ乳酸の光学純度が高いほどポリ乳酸の融点も高く、すなわち耐熱性が向上するため好ましい。ポリ乳酸の光学純度としては、95%以上が好ましい。またポリ乳酸の融点としては、繊維の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましい。
【0015】
また、通常、ポリ乳酸中には低分子量残留物として残存ラクチドが存在しうるが、ポリ乳酸中の残存ラクチド量としては3000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは1000質量ppm以下、さらに好ましくは300質量ppm以下である。ポリ乳酸中の残存ラクチド量を抑えることにより、延伸や仮撚加工工程での加熱ヒーター汚れや染色加工工程での染め斑等の染色異常を防ぐことができる。
【0016】
また、ポリ乳酸の生分解性を損なわない範囲で、乳酸以外の成分を共重合していてもよい。共重合する成分としては、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール、ポリブチレンサクシネートやポリグリコール酸などの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレートなどの芳香族ポリエステル、及びヒドロキシカルボン酸、ラクトン、ジカルボン酸、ジオールなどのエステル結合形成性の単量体が挙げられる。
【0017】
ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)としては、耐摩耗性を保持する上で130,000以上とすることが重要であり、好ましくは150,000以上、より好ましくは170,000以上である。一方、延伸性、ひいては分子配向による繊維強度を維持する上で、ポリ乳酸の重量平均分子量は350,000以下が好ましく、より好ましくは300,000以下、さらに好ましくは250,000以下である。
【0018】
ポリ乳酸樹脂は、粒子、結晶核剤、難燃剤、可塑剤、末端封鎖剤、帯電防止剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、エチレンビスステアリンサンアミドなどの滑剤等を含有していてもよい。
【0019】
末端封鎖剤としては、ポリカルボジイミド等のカルボジイミド化合物や、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、トリジグリシジルイソシアヌレート等のグリシジル基を有する化合物を挙げることができる。
【0020】
末端封鎖剤のポリ乳酸に対する添加量としては、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%以上とすることでポリ乳酸繊維の耐久性を向上させることができる。また、10質量%の添加を行えば末端基が十分に封鎖され、10質量%超では耐久性向上の効果は飽和する。
【0021】
ポリ乳酸樹脂からなる繊維の断面形状としては、丸断面、中空断面、多孔中空断面、三葉断面(三角断面、Y断面、T断面など)等の多葉断面、扁平断面、W断面、X断面等を採用することが可能である。なかでも、異形断面は嵩高性を向上させる上で好ましい。異形断面の異形度としては、1.1〜8.0が好ましく、より好ましくは1.3〜7.0である。ここで、異形度は、断面における内接円の径に対する外接円の径の比で表される。異形度を1.1以上とすることで、異形断面による嵩高性向上の実効を得ることができる。また8.0以下とすることで、繊維のフィブリル化を防ぐことができる。
【0022】
本発明の染色糸におけるポリ乳酸樹脂からなる繊維は、捲縮を有することが好ましい。そうすることで、カーペット用途においてカーペットとしての質感を出すことができる。
【0023】
本発明の染色糸におけるポリ乳酸樹脂からなる繊維の引張強度としては、1.5cN/dtex以上であることが重要であり、好ましくは1.6cN/dtex以上である。1.5cN/dtex以上とすることで、カーペット加工でのタフト時の糸切れを防ぎ、カーペットとしての耐久性を向上させることができる。
【0024】
本発明の染色糸におけるポリ乳酸樹脂からなる繊維の引張伸度としては、40%以上であることが好ましく、より好ましくは45%以上である。40%以上とすることで、カーペット加工でのタフト時の糸切れを防ぎ、カーペットとしての耐久性を向上させることができる。
【0025】
本発明の染色糸におけるポリ乳酸樹脂からなる繊維は、染色加工前に対する引張強度保持率及び、重量平均分子量保持率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。そうすることで、カーペット使用時のポリ乳酸繊維の耐久性を向上させることができる。
【0026】
本発明の染色糸の製造方法における染色前の混繊糸は、ポリ乳酸樹脂からなる繊維以外の他の繊維も含むことが重要である。ポリ乳酸繊維は、他の汎用繊維に比べ表面が削れやすく耐摩耗性にも劣るため、ポリ乳酸よりも耐摩耗性に優れた「他の繊維」を混繊加工することで、ポリ乳酸繊維の弱点である耐摩耗性を補うことができる。
【0027】
「他の繊維」の熱可塑性樹脂としては、耐摩耗性向上の点から、熱可塑性ポリアミド、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレン等を好ましく用いることができる。
【0028】
なかでも、熱可塑性ポリアミドは、加熱流体処理などにより捲縮を付与しやすい点、カーペットなどに用いたときのしなやかな踏み応え感等の点で、特に好ましい。
【0029】
熱可塑性ポリアミドは、アミド結合を有するポリマーであり、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン510等を挙げることができる。
【0030】
「他の繊維」は、ホモポリマーであっても共重合ポリマーであってもよいが、耐摩耗性を維持する上で、結晶性を有するものであることが好ましい。結晶性の有無は、示差走査熱量計(DSC)測定において観測される融解ピークの有無により判定することができ、融解ピークを観測できれば結晶性有りと判定できる。
【0031】
「他の繊維」の融点としては、耐熱性を考慮すると150℃以上であることが好ましい。
【0032】
「他の繊維」も、ポリ乳酸樹脂からなる繊維と同様、捲縮を有することが好ましい。
【0033】
混繊糸におけるポリ乳酸樹脂からなる繊維の分率としては、低環境負荷の点から、30質量%以上であることが好ましい。また、混繊糸における「他の繊維」の分率としては、耐摩耗性、柔らかさの点から、30質量%以上であることが好ましい。すなわち、混繊糸におけるポリ乳酸樹脂からなる繊維の分率としては30〜70質量%が好ましく、「他の繊維」分率としては70〜30質量%が好ましい。
【0034】
混繊方法としては例えば、コーミング(エアーエンタングル)や合撚を挙げることができる。
【0035】
コーミングは、繊維を混合ノズルから吸い上げ、ノズルを通って進行する糸の上に空気のジェットをぶつけることにより、繊維を絡み合わせる。
【0036】
合撚に用いる撚糸機としては、リング撚糸機、カバーリング撚糸機、ダブルツイスター撚糸機、ケーブルツイスター撚糸機、アップツイスター撚糸機等を挙げることができる。
【0037】
合撚の種類としては片撚りと諸撚りを挙げることができる。片撚りは、複数の糸がそれぞれ無撚りの状態で合糸され、当該合糸にZ又はSの一方向に撚りがかけられる。また、諸撚りは、複数の糸がそれぞれZ又はSの同じ方向に下撚りされた状態で合糸され、当該合糸に先の下撚りとは逆方向に上撚りがかけられる。諸撚りは、カーペットに用いる場合、スナール(解除撚り)がなく加工性に優れるため好ましい。
【0038】
合撚糸における撚数としては、30〜250T/mが好ましく、より好ましくは50〜200T/mである。30T/m以上とすることで、ポリ乳酸樹脂からなる繊維と「他の繊維」が均一に混ざり合い、ポリ乳酸繊維の削れによる毛羽の発生を抑えることができ、またカーペットに用いる場合、耐摩耗性改善の効果を得ることができる。一方、250T/m以下とすることで、クリープ特性の低いポリ乳酸繊維にクラックが発生するのを抑え、糸の強度低下を抑えることができる。尚、諸撚りにおいては、撚り合わせる糸のそれぞれの下撚りおよび上撚りがいずれも30〜250T/mであることが好ましく、より好ましくは50〜200T/mである。
【0039】
混繊糸の総繊度としては、500〜6000dtexが好ましく、より好ましくは1000〜5000dtexである。500dtex以上とすることで、カーペットのパイル用途において地透け等を防ぐことができる。また、6000dtex以下とすることで、カーペットのパイル用途においてのステッチ数を多くとることができ、カーペットのボリューム感を出すことができる。
【0040】
本発明の染色糸の製造方法は、ポリ乳酸樹脂からなる繊維と「他の繊維」とが混繊されてなる混繊糸に、分散染料とは染色作用の異なる「他の染料」を付与し、その後に分散染料を付与する工程を含むことが重要である。そうすることで、ポリ乳酸繊維を含む混繊糸に対し、繊維の物性低下を抑制しつつ、ポリ乳酸繊維と「他の繊維」とのいずれをも所望の色に染色し、かつ優れた染色堅牢性を付与することができる。具体的には、ポリ乳酸樹脂からなる繊維は染色前に比べ、重量平均分子量の保持率が90%以上であり、染色糸としての染色堅牢度すなわち、耐光堅牢度、摩擦堅牢度及び洗濯堅牢度が3級以上と優れた、染色糸ひいてはカーペットを得ることができる。
【0041】
そのメカニズムとしては次のようなことが考えられる。
まず、ポリ乳酸樹脂からなる繊維および「他の繊維」を、分散染料および分散染料とは染色作用の異なる「他の染料」で同時に染色しようとすると、分散染料が「他の繊維」の表面にも一時的に付着し、「他の染料」が「他の繊維」に染着するのを阻害しているのではないかと言うことを、本発明者等は推測した。
本発明においては、先ず「他の染料」が「他の繊維」に選択的に染着し、次いで分散染料がポリ乳酸樹脂からなる繊維に選択的に染着することで、上述のような効果を奏する。
【0042】
分散染料の例としては、アゾ系分散染料、キノフタロン系分散染料、アントラキノン系分散染料、ピリドン系分散染料、ニトロ系分散染料、メチン系分散染料、配合分散染料等が挙げられる。
アゾ系分散染料の例としては、DIANIX Yellow Brown SE−R(ダイスター社製)、DIANIX Red C−4G 150%(ダイスター社製)、DIANIX Blue S−2G(ダイスター社製)、TERASIL Rubine 2GFL(チバスペシャルティケミカルズ社製)、KAYALON POLYESTER Yellow 4GE(日本化薬(株)製)、KAYALON POLYESTER Red BR−S(日本化薬(株)製)、KAYALON POLYESTER Blue 2R−SF(日本化薬(株)製)、MIKETON POLYESTER Yellow Brown 2RL(ダイスター社製)、MIKETON POLYESTER Red FL(ダイスター社製)、MIKETONPOLYESTER Blue G−ADW(ダイスター社製)等が挙げられる。
アントラキノン系分散染料の例としては、DIANIX Yellow AM−42(ダイスター社製)、DIANIX Red AM−86(ダイスター社製)、DIANIX Blue FBL(ダイスター社製)、Disperse Blue KT‐1(東京化成工業株製)、TERASIL Red FB 200%(チバスペシャルティケミカルズ社製)、TERASIL Blue BGE−01(チバスペシャルティケミカルズ社製)等が挙げられる。
キノフタロン系分散染料の例としては、DIANIX Yellow S−3G(ダイスター社製)、MIKETON POLYESTER Yellow 3GSL(ダイスター社製)等が挙げられる。
ピリドン系分散染料の例としては、DIANIX Flavine XF(ダイスター社製)等が挙げられる。
ニトロ系分散染料の例としては、DIANIX Yellow AM−42(ダイスター社製)、TERATOP Yellow GWL(チバスペシャルティケミカルズ社製)等が挙げられる。
メチン系分散染料の例としては、DIANIX Yellow 7GL(ダイスター社製)等が挙げられる。
配合分散染料の例としては、DIANIX Yellow PAL(ダイスター社製)、DIANIX Red ASC−E01(ダイスター社製)、DIANIX Red CC(ダイスター社製)、DIANIX Blue PAL(ダイスター社製)、TERATOP Red NFR(チバスペシャルティケミカルズ社製)、TERATOP Yellow NFG(チバスペシャルティケミカルズ社製)、CIBACET Yellow EL−F2G(チバスペシャルティケミカルズ社製)、CIBACET Blue EL−B(チバスペシャルティケミカルズ社製)、CIBACET Blue EL−FG(チバスペシャルティケミカルズ社製)、CIBACET Black EL−FGL(チバスペシャルティケミカルズ社製)、KAYALON POLYESTER Blue B−SF conc(日本化薬(株)製)、SUMIKARON Yellow E−RPD(住化ケムテックス(株)製)、SUMIKARON Red E−RPD(住化ケムテックス(株)製)、SUMIKARON Blue E−RPD(住化ケムテックス(株)製)、SUMIKARON Yellow SE−RPD(住化ケムテックス(株)製)等が挙げられる。
他の分散染料の例としては、DIANIX Blue AM−SLR(ダイスター社製)、TERASIL Yellow SD(チバスペシャルティケミカルズ社製)、CIBACET Navy FL−R(チバスペシャルティケミカルズ社製)、MIKETON POLYESTER Yellow YL(ダイスター社製)、Amacron(アメリカンカラーアンドケミカル社製)、Calcosperse(アメリカンサイナミド社製)、DIANIX Yellow Brown Dianix Fast(ダイスター社製)、DIANIX Light(ダイスター社製)、Eastman Polyester(イーストマンケミカルプロダクツ社製)、Foron、Genacron(クラリアント社製)、Hisperse(マエダ化成(株)製)、Interchem Polydye(インモント社製)、Intrasperse(ヨークシャージャパン(株)製)、Kiwalon(紀和化学工業(株)製)、Reform(エヌエスカラーテクノ(株)製)、Serilene(ヨークシャージャパン(株)製)、Terasil(チバスペシャルティケミカルズ社製)等が挙げられる。
分散染料は1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0043】
分散染料と染色作用の異なる「他の染料」としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料、硫化染料、アゾイック染料、反応染料、金属錯塩染料等が挙げられる。「他の繊維」として例えばナイロン6繊維を採用する場合には、酸性染料、反応染料、金属錯塩染料等が染色堅牢度の観点より良い。
酸性染料の例としては、Lanasyn Yellow GRL(クラリアント社製)、Lanasyn Bordeaux RLA200(クラリアント社製)、Lanasyn Black M−GL(クラリアント社製)、Isolan Yellow GRL、Iragalan Black RBLN等が挙げられる。
「他の染料」は1種類を単独で用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0044】
染色方法としては、浸染と捺染を挙げることができる。浸染には、ばら毛染め、トウ染め、かせ染め、チーズ染色等があり、捺染には、解し捺染、ビゴロ捺染等がある。また浸染の染色機としてはパッケージ染色機を用いることができ、捺染の染色機としてはスペースダイイング染色機等を用いることができる。
【0045】
浸染・捺染のうち捺染は、染色浴中に糸を長時間浸ける必要がなく、ポリ乳酸の、重量平均分子量ひいては物性の低下を抑制するという点から、捺染が好ましい。
【0046】
また、スペースダイイングは、染色対象の糸を走行させながら染色を行い、任意の順番で任意の染料による染色を行うことが可能である。
【0047】
スペースダイイングの糸走行速度としては、工程安定性及び生産性の点から、10〜300m/minが好ましく、より好ましくは50〜200m/minである。
【0048】
スペースダイイングの例を工程に分けて説明する。
【0049】
1.前加熱工程
ヒーターで糸を加熱する。そうすることで、繊維を構成する分子の熱運動を活発化させ、染料、特に分散染料を繊維に強固に固着させることができる。
前加熱工程のヒーター温度としては90〜120℃が好ましい。90℃以上とすることで、繊維分子の熱運動を活発化させることができる。また、120℃以下とすることで、繊維を構成するポリマー、特にポリ乳酸の加水分解を抑えることができる。
【0050】
2.染料塗布工程
混繊糸に染料を塗布する。本発明においては、先ず「他の染料」を塗布し、次いで分散染料を塗布する。「他の染料」と分散染料とは別個の浴に入れておく。
【0051】
3.仮固着工程
ヒーターで糸を再度加熱する。そうすることで、染料が繊維に仮固着され、染色ムラを低減させることができる。仮固着工程のヒーター温度としては90〜120℃が好ましい。90℃以上とすることで、仮固着の実効を得ることができる。また、120℃以下とすることで、繊維を構成するポリマー、特にポリ乳酸の加水分解を抑えることができる。
【0052】
4.スチーム処理工程
スチームで糸を加熱する。そうすることで、染料を繊維に固定させることができる。また、上記前加熱工程や仮固着工程を含む熱処理により、糸の形状を固定し、カーペットタフト時の撚りによるスナール(解除撚り)を改善することでポイント感に優れた風合いのカーペットを得ることができる。スチーム温度としては90〜120℃が好ましい。90℃以上とすることで、染料分子を繊維内部へ浸入、拡散させることにより染色堅牢度を向上させることができる。また、120℃以下とすることで、繊維を構成するポリマー、特にポリ乳酸の加水分解を抑えることができる。
【0053】
5.洗浄工程
糸の洗浄を行う。そうすることで、糸表面に付着した未固着の染料を分解または除去し、染色堅牢度を向上させることができる。
洗液としては、30℃以上の温水又は、還元剤および還元補助剤を含む溶液が好ましい。
なお、洗浄工程は、仮固着工程とスチーム工程との間に設けてもよいし、スチーム工程と後述する機能性樹脂付与工程との間に設けてもよいし、後述する機能性樹脂付与工程の後に設けてもよい。
【0054】
6.機能性樹脂付与工程
糸に機能性樹脂を付与する工程を設けてもよい。機能性樹脂としては例えば、柔軟剤、消臭剤、抗菌剤、防汚剤等を挙げることができる。
【0055】
7.乾燥工程
糸を乾燥する。乾燥手段としては、温風乾燥機を挙げることができる。
【0056】
(カーペット)
本発明のカーペットの態様としては例えば、段通、ウイルトン、ダブルフェイス、アキスミンター等の織りカーペットや、タフティング、フックドラグ等の刺繍カーペットや、ボンデッド、電着、コード等の接着カーペットや、あるいはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0057】
カーペットにおける、タフトしたパイル糸の単位面積あたりの質量(目付)としては、用途にもよるが、例えば、家庭用カーペットについては、100〜5000g/mが好ましく、より好ましくは500〜3000g/mである。100g/m以上とすることで、耐摩耗性を発揮することができる。一方、5000g/m以下とすることが経済的には好ましい。
【0058】
本発明のカーペットはポリ乳酸樹脂からなる繊維と他の繊維とが混繊されてなるため、耐摩耗性が低いポリ乳酸樹脂からなる繊維を他の繊維でカバーし、ポリ乳酸系カーペットの耐摩耗性を高くすることができる。カーペットにおけるパイルの耐摩耗性としては、カーペットの摩耗試験(回転数300回)において摩耗性が3級以上である事が好ましく、より好ましくは4級以上、さらに好ましくは5級である。
【実施例】
【0059】
[測定方法]
(1)繊度
JIS L 1013:1999 8.3.1 A法に基づき、112.5m分のかせをサンプル数5採取し、その質量を測定し、その値(g)に10000/112.5をかけ、見掛け繊度(dtex)を求めた。見かけ繊度から、次の式によって正量繊度を求め、平均値を算出した。
正量繊度(dtex)=D'×(100+Rc)/(100+Re)
ここに、D':見かけ繊度(dtex)
Rc:公定水分率(%)
Re:平衡水分率(%)。
【0060】
(2)異形度
糸の断面を切り出し、単繊維横断面の外接円の直径Dと、単糸横断面の内接円の直径dとから次の式によって求めた。
異形度=D/d 。
【0061】
(3)ポリ乳酸の重量平均分子量(Mw)
ポリ乳酸をクロロホルムに溶解させて測定溶液とし、これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を求めた。測定数は5回とし、その平均値を算出した。
【0062】
(4)融点
島津製作所社製島津示差走査熱量計DSC−60型を用い、試料2.0mgを昇温速度20℃/minにて測定し、得た融解吸熱曲線の極値を与える温度を融点(℃)とした。試験回数は5回とし、その平均値を算出した。
【0063】
(5)引張強度及び引張伸度(標準時試験)
JIS L 1013:1999 8.5.1に拠って測定した。
試料を緩く張った状態で、引張試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン(登録商標)UCT−100)のつかみにつかみ間隔200mmで取り付け、引張速度200mm/minの定速伸長にて試験を行った。初荷重をかけたときの伸びを緩み(mm)として読み、更に試料を引張り、試料が切断したときの荷重及び伸び(mm)を測定し、次の式によって引張強度(cN/dtex)及び引張伸度(%)を算出した。試験回数は10回とし、その平均値を算出した。
=SD/F
ここに、T:引張強度
SD:切断時の強さ
:試料の正量繊度
伸度(%)=[(E−E)/(L+E)]×100
ここに、E:緩み(mm)
:切断時の伸び(mm)
L:つかみ間隔(mm)。
【0064】
(6)耐光堅牢度
JIS L 0842:1996(紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験法)に基づいて測定した。
【0065】
カーペット原反の縦方向に沿って幅70mm、長さ200mmの大きさで試験片を切り出し、原反の裏にウレタンを貼り付け、パイル面を光源に向け試験機に取り付けた。染色糸の試験を行う場合は、染色糸を幅70mm、長さ200mmの画用紙に隙間がないように貼り付け、試験片とした。試験機はカーボンアーク灯型耐光試験機(スガ試験機)を用いて、カーボンアーク1灯がけ、光源から試験片までの距離250mm、機内温度55〜65℃、試験架台のブラックパネル温度63±3℃、相対湿度30〜50%、試料回転速度3〜4回/min、照射時間40時間露光し、試験片及び変褪色用グレースケール(JIS L 0804:1994)それぞれの変褪色を比較し1級から5級までを評価した。
5級:色の変化が変褪色用グレースケール5号程度のもの。
4級:色の変化が変褪色用グレースケール4号程度のもの。
3級:色の変化が変褪色用グレースケール3号程度のもの。
2級:色の変化が変褪色用グレースケール2号程度のもの。
1級:色の変化が変褪色用グレースケール1号程度のもの又はその程度を超えるもの。
【0066】
(7)摩擦堅牢度
JIS L 0849:1996(摩擦に対する染色堅牢度試験法)に基づいて測定した。
【0067】
カーペット原反を幅30mm、長さ200mmに切り出し試験片とした。試験機の試験台に取り付け、白綿布を摩擦子の接触面にかぶせて固定した。染色糸の試験を行う場合は、染色糸を幅30mm、長さ200mmの画用紙に隙間がないように貼り付け、試験片とした。摩擦子に加える荷重を1.96Nとして、試験片100mmの間を毎分約30回往復する早さで100回往復摩擦する。その後、白綿布及び汚染用グレースケール(JIS L 0805:1998)のそれぞれの汚染を比較し1級から5級までを評価した。試験機は摩擦試験機II型(学振形)を用いた。摩擦用白綿布は、原糸が純綿糸、番手が縦30s,横36s、密度が縦72本/25.4mm,横69本/25.4mmを用い、乾燥時(DRY)と湿潤時(WET)の評価を行った。湿潤時は白綿布を10分間水に浸し、濾紙で挟んで軽く押えた後に測定を行い、測定後速やかに汚染の程度を評価した。
5級:色の変化が汚染用グレースケール5号程度のもの。
4級:色の変化が汚染用グレースケール4号程度のもの。
3級:色の変化が汚染用グレースケール3号程度のもの。
2級:色の変化が汚染用グレースケール2号程度のもの。
1級:色の変化が汚染用グレースケール1号程度のもの又はその程度を超えるもの。
【0068】
(8)洗濯堅牢度
JIS L 0844:1997 A−1法(洗濯に対する染色堅牢度試験法)に基づき、評価を行った。
試料を長さ100mm、1gの試料を採取し、これを幅40mm、長さ100mmの所定のナイロン及び綿添付白布2枚の間に並べ、4辺を白綿糸であらく縫い合わせる。ラウンダメータ形洗濯試験機付属の試験瓶に石けん5g/L、水100mLを入れ、温度40℃、に予熱する。試験瓶に試験片1枚を入れ、密閉して温度40℃に保たれた試験機に取り付け、30分間回転した。試験片を乾燥濾紙の間に挟み、軽く押えて脱水し、試験片と添付白布が縫目の一辺で接するように切り離し、60℃以下の乾燥機で乾燥した。試験後、試料の変褪色を変褪色用グレースケール(JIS L 0804:1994)、ナイロンへの汚染(汚染1)及び綿への汚染(汚染2)を汚染用グレースケール(JIS L 0805:1998)と比較し、1級から5級までを評価した。石けんはJIS K 3302「固形洗濯石鹸」(1995)無添剤を用いた。白布は予めのり抜き、精練、漂白したJIS L 0803「染色堅牢度試験用添付白布」(1998)を用いた。
(変褪色)
5級:色の変化が変褪色用グレースケール5号程度のもの。
4級:色の変化が変褪色用グレースケール4号程度のもの。
3級:色の変化が変褪色用グレースケール3号程度のもの。
2級:色の変化が変褪色用グレースケール2号程度のもの。
1級:色の変化が変褪色用グレースケール1号程度のもの又はその程度を超えるもの。
(汚染)
5級:色の変化が汚染用グレースケール5号程度のもの。
4級:色の変化が汚染用グレースケール4号程度のもの。
3級:色の変化が汚染用グレースケール3号程度のもの。
2級:色の変化が汚染用グレースケール2号程度のもの。
1級:色の変化が汚染用グレースケール1号程度のもの又はその程度を超えるもの。
【0069】
(9)毛羽発生の有無
合撚糸の長さ1m中に毛羽の有無を数え、次のように評価した。試験回数は10回とし、その平均値を算出した。
【0070】
(10)クラック発生の有無
サンプルを長さ10mmに切り取り、日立E−1010蒸着装置により試料に銀のコーティングを行い、日立3500N走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率500倍によりクラック(ひび割れ)の有無を評価した。
【0071】
(11)パイル糸の目付
タフト後のカーペットを50cm角に切り取り、当該試料におけるパイル糸の総質量を測定し、単位面積(1m)あたりに換算したものをパイル糸の目付とした。
【0072】
(12)カーペットの加工性
カーペット加工時の工程通過性を次のように評価した。
○:タフト時に糸切れが発生しない。
△:タフト時に糸切れが少々発生する。
×:タフト時に糸切れが多発する。
【0073】
(13)カーペットのポイント感
カーペットを手で触り、風合いの一つであるポイント感を次のように評価した。
○:ポイント感に優れている。
△:ポイント感があまりない。
×:ポイント感が全く無い。
【0074】
(14)カーペットのボリューム感
カーペットを手で触り、風合いの一つであるボリューム感を次のように評価した。
○:ボリューム感に優れている。
△:ボリューム感があまりない。
×:ボリューム感がない。
【0075】
(15)カーペットの柔軟性
カーペトを手で触り、風合いの一つである柔軟性を次のように評価した。
○:柔軟性に優れている。
△:柔軟性があまりない。
×:柔軟性がなく、硬い風合いである。
【0076】
(16)カーペットの摩耗性
JIS L 1096:1999 8.17.3 テーバ形法に準じて、H−18摩耗輪を使用し、左右一対のそれぞれの摩耗輪に1kgf(9.8N)の荷重をかけて所定回転数回転してカーペットを摩耗させた後、その未摩耗部分と摩耗部分の変化を目視により1級〜5級の級判定を行った。回転数は、300回とした。試験回数は3回とし、その平均を摩耗性とした。
5級:まったく認められないもの。
4級:わずかに認められるがほとんど目立たないもの。
3級:明らかに認められるが、目立ちの少ないもの。
2級:やや著しいもの。
1級:かなり著しいもの。
【0077】
[実施例1〜4]
(ポリ乳酸繊維糸)
L体の光学純度98%のポリ乳酸チップを溶融紡糸し、加熱流体捲縮装置により捲縮を付与し、単繊維の断面の異形度1.6の扁平繊維からなる、総繊度1450dtex、フィラメント数54の、捲縮を有するポリ乳酸繊維糸を得た。
この段階のポリ乳酸繊維糸は、引張強度が1.79cN/dtex、引張伸度が45.1%、重量平均分子量が17.5×10であった。
【0078】
(ナイロン6繊維糸)
ナイロン6チップを溶融紡糸し、加熱流体捲縮装置により捲縮を付与し、単繊維の断面形状が異形度3.0のY断面、総繊度1170dtex、フィラメント数54の、捲縮を有するナイロン6繊維糸を得た。
【0079】
(合撚糸)
上記ポリ乳酸繊維糸と上記ナイロン6繊維糸とをそれぞれS方向に180T/mの下撚りをかけ、合糸し、当該合糸にZ方向に180T/mの上撚りをかけた。
この段階のポリ乳酸繊維からなる糸は、引張強度が1.74cN/dtex、引張伸度が42.7%、重量平均分子量が17.5×10であった。また、ポリ乳酸繊維糸においてクラックはなかった。
また、合撚糸に毛羽は全くなかった。
【0080】
(染色)
上記合撚糸を、スペースダイイング染色機にて、合撚糸を速度150m/minで走行させながら染色を行った。
(前加熱工程)
ヒーターにて、表1に記載の前加熱工程温度で走行糸を加熱した。
(染料塗布工程)
走行糸を、酸性染料(Lanasyn Bordeaux)5g/L、均染剤5g/L、酢酸10g/L、耐光剤5g/Lを入れた前浴中を通過させた。
次いで、走行糸を、分散染料(Teratop Red NFR)35g/L、均染剤5g/L、酢酸10g/L、耐光剤5g/Lを入れた後浴中を通過させた。
(仮固着工程)
ヒーターにて、表1に記載の仮固着工程温度で走行糸を加熱し、染料を繊維に仮固着させた。
(スチーム処理工程)
スチームにて、表1に記載のスチーム処理工程温度で走行糸を加熱し、染料を繊維に固定させた。
(洗浄工程)
50℃の水で走行糸を洗浄した。
(機能性樹脂塗布工程)
走行糸を、柔軟剤10g/Lを入れた後浴中を通過させた。
(乾燥工程)
温風乾燥機にて、150℃で走行糸を乾燥させた。
以上の工程を経た糸を巻き取り、染色糸を得た。
実施例1〜4のいずれも、染色糸におけるポリ乳酸繊維糸においてクラックはなかった。
また、実施例1〜4のいずれも、染色糸に毛羽は全くなかった。
【0081】
(基布)
ポリエチレンテレフタレートからなる目付120g/mのスパンボンド不織布を、カーペットの基布とした。
【0082】
(タフティング)
上記染色糸を上記基布に、1/8ゲージ、ステッチ7.5でタフトし、パイルの先端をカットして、パイル長10mm、パイル目付1100g/mの家庭用のカーペットとした。
実施例1〜4のいずれも、カーペット加工時の糸切れはなかった。
【0083】
[比較例1〜4]
(ポリ乳酸繊維糸)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0084】
(ナイロン6繊維糸)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0085】
(合撚糸)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0086】
(染色)
上記合撚糸を、スペースダイイング染色機にて、合撚糸を速度150m/minで走行させながら染色を行った。
(前加熱工程)
ヒーターにて、表1に記載の前加熱工程温度で走行糸を加熱した。
(染料塗布工程)
走行糸を、分散染料(Teratop Red NFR35g/L、均染剤5g/L、酢酸10g/L、耐光剤5g/Lを入れた前浴中を通過させた。
次いで、走行糸を、酸性染料(Lanasyn Bordeaux)5g/L、均染剤5g/L、酢酸10g/L、耐光剤5g/Lを入れた後浴中を通過させた。
(仮固着工程)
ヒーターにて、表1に記載の仮固着工程温度で走行糸を加熱し、染料を繊維に仮固着させた。
(スチーム処理工程)
スチームにて、表1に記載のスチーム処理工程温度で走行糸を加熱し、染料を繊維に固定させた。
(洗浄工程)
50℃の水で走行糸を洗浄した。
(機能性樹脂塗布工程)
走行糸を、柔軟剤10g/Lを入れた後浴中を通過させた。
(乾燥工程)
温風乾燥機にて、150℃で走行糸を乾燥させた。
以上の工程を経た糸を巻き取り、染色糸を得た。
【0087】
(基布)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0088】
(タフティング)
上記染色糸を上記基布に、実施例1と同様にタフトして、カーペットを得た。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明により、繊維物性に優れる、工場生産の実用上問題のないポリ乳酸からなる染色糸を製造することができる。前記合撚糸を用いた繊維製品、例えば、カーペット用途に関しては、柔らかな風合い、ボリューム感、又はポイント感等を活かした自動車用オプションマット、応接室用カーペット、客室用カーペット、家庭用ラグ等としてもとても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂からなる繊維と他の繊維とが混繊されてなる混繊糸に、分散染料とは染色作用の異なる他の染料を付与し、その後に分散染料を付与する工程を含むことを特徴とする染色糸の製造方法。
【請求項2】
前記混繊糸を走行させながら前記他の染料および前記分散染料を付与する請求項1記載の染色糸の製造方法。
【請求項3】
前記他の繊維として熱可塑性ポリアミドを用いる請求項1又は2に記載の染色糸の製造方法。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂からなる繊維と、分散染料とは染色作用の異なる他の染料により染色される他の繊維とが混繊されてなり、前記ポリ乳酸樹脂からなる繊維および前記他の繊維のいずれもが染色され、前記ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が130,000以上、前記ポリ乳酸樹脂からなる繊維の引張強度が1.5cN/dtex以上であり、かつ、染色糸としての耐光堅牢度、摩擦堅牢度及び洗濯堅牢度がいずれも3級以上であることを特徴とする染色糸。
【請求項5】
前記他の繊維が熱可塑性ポリアミドを含む、請求項4に記載の染色糸。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の染色糸を用いたことを特徴とするカーペット。

【公開番号】特開2009−57653(P2009−57653A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225254(P2007−225254)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】