説明

染色織物および鞄

【課題】従来得られなかった、発色性、光沢感に優れ、かつ実使用時に充分な耐久性を有する脂肪族ポリエステル染色織物およびこの織物を用いた鞄を創出すること。
【解決手段】ポリマーの屈折率が1.30〜1.50であり、融点が130℃以上である脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に含み、天然成分から抽出した染料で草木染めが施され、かつ下記条件の耐候性試験後の引裂強力保持率が90%以上である染色織物。
<耐候性試験方法>
JIS L0843 B法B6記載の試験条件に準じ、かつ照射、暗黒条件を交互に連続20サイクル処理する。
照射時:70±3℃×50±5RH% 3.8時間
暗黒時:38±3℃×95±5RH% 1.0時間

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に含み、衣料および衣料周辺に使用される染色織物およびその染色織物を使用した鞄に関する。さらに詳しくは、発色性、光沢感に優れ、かつ実使用時に充分な耐久性を有する脂肪族ポリエステル染色織物および鞄に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、合成繊維はその優れた機械的性質により、多分野で活用され、中でも芳香族ポリエステルは衣料及び衣料周辺素材として幅広く活用されている。しかしながら従来の合成繊維廃棄物は主に焼却や埋め立てにより処理されてきたが、焼却による有害副産物の生成・排出や埋立地の減少、さらには不法投棄による環境汚染などの問題が顕在化してきている。このような合成繊維廃棄物の処理問題について社会的に関心が高まるにつれて、酵素や微生物で分解される生分解性を有するプラスチックの研究開発が盛んに行われており、その中でも、脂肪族ポリエステルが注目されている。最近、特に積極的な研究開発が行われている生分解性の脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート・3−ヒドロキシバリレート)、ポリカプロラクトン、あるいはエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコールとコハク酸、アジピン酸などのカルボン酸よりなるポリエステルなどが知られている。
【0003】
しかしながら、これらの脂肪族ポリエステルを使用した繊維は高温の水中での加水分解性が著しく大きいため分散染料等の水分散溶液による常圧以上の高温染色を行うと布帛の引裂強度が急激に低下してしまうばかりでなく、初期強力に対し、染色品の経時的な強度劣化が大きいこと等が確認されている。
【0004】
また、同じく脂肪族ポリエステルを使用した繊維は高温多湿条件下における加水分解性も高く、結果的にある程度の耐久性を要求される分野で、通常の使用状態において高温多湿の条件に暴露される用途ではほとんど実用化されていない。
【0005】
このような問題点を解決する手段として、脂肪族ポリエステルに染着する分散染料を用い、110℃前後の比較的低温で染色する処方等が特開平8−311781号公報に公開されているが、脂肪族ポリエステル自身の染料吸着率が低いため濃色が出にくかったり、染色後の染料残留が多く、非経済的であったり、さらには脂肪族ポリエステル自身の生分解性に対して使用する染料が充分な生分解性を有していない場合などがあり、満足できるものではなかった。
【0006】
また、耐候性に優れるポリ乳酸繊維が、特開2001−303465号公報に公開されているが、本件は織物に関するものではなく、また染色を施していないロープや紐類に関する内容であり、本件の目的とする耐候性に優れた染色織物を示唆するものではない。
【特許文献1】特開平8−311781号公報
【特許文献2】特開2001−303465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、発色性、光沢感に優れ、かつ実用時の耐久性に優れた脂肪族ポリエステルを用いた染色織物ならびにその染色織物を少なくとも一部に用いたことを特徴とする鞄を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、ポリマーの屈折率が1.30〜1.50であり、融点が130℃以上である脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に含み、天然成分から抽出した染料で草木染めが施され、かつ下記条件の耐候性試験後の引裂強力保持率が90%以上である染色織物によって解決することが出来る。
【0009】
<耐候性試験方法>
JIS L0843 B法B6記載の試験条件に準じ、かつ照射、暗黒条件 を交互に連続20サイクル処理する。
【0010】
照射時:70±3℃×50±5RH% 3.8時間
暗黒時:38±3℃×95±5RH% 1.0時間
ここで言う脂肪族ポリエステルとしては、L−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリエステルが好適に用いられる。また、カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tであることが望ましい。
【0011】
また、本発明の別の課題は、上述したいずれかの染色織物を少なくとも一部に用いることを特徴とする鞄である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の染色織物は、従来脂肪族ポリエルテル織物が展開出来なかった耐久性を要求される衣料および衣料周辺に使用でき、特に夏場の車内に放置される可能性の高い鞄用途に使用することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の染色織物は脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に含み、その屈折率が1.30〜1.50であるものである。屈折率が1.50よりも高いと繊維表面における反射光が多くなるため、このような繊維を用いて布帛にしても発色性に劣るものとなる。屈折率は好ましくは1.30〜1.45である。
【0014】
ここでいう屈折率は、自然光を採光できる室内に設置され恒温水の循環などの手段により23℃に調節された、プリズムを備えたアッベ屈折計により、JIS−K7105記載の方法に準拠して測定される値を意味している。
【0015】
染色織物に占める脂肪族ポリエステル繊維の含有率は、30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。
【0016】
また、本発明の脂肪族ポリエステルは、マルチフィラメントでもステープルファイバーでも良いが、融点が130℃以上であるものである。融点が130℃よりも低い場合には、単糸間の融着の発生による延伸性不良や、染色加工時、熱セット時、摩擦加熱時に溶融欠点が生じるなど、製品の品位が著しく低いものとなるため、織物用途に用いるには好ましくない。好ましくは脂肪族ポリエステルの融点は150℃以上であり、さらに好ましくは融点が165℃以上である。ここで融点とは、DSC測定によって得られた溶融ピークのピーク温度を意味する。
【0017】
屈折率が1.30〜1.50であり、融点が130℃以上である脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバリレートなどのポリオキシ酸類、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの重縮合物類、ポリピバロラクトンなどの脂肪族環状エステルを開環重合して得られるポリエステル類、およびこれらのブレンド物、変性物等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
なかでも、高融点、高耐熱性の観点から望ましいポリマーとしては、L−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリエステルであるポリ乳酸を挙げることができる。ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いるポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。
【0019】
ポリ乳酸の平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも10万、好ましくは10〜30万である。平均分子量が5万よりも低い場合には繊維の強度物性が低下する傾向がある。30万を越える場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融紡糸が困難になる場合がある。
【0020】
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。ただし、高い融点を維持するためや繊維強度を損なわないため、繊維の70モル%以上が乳酸単位からなることが望ましい。
【0021】
また、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコールなどの脂肪族ポリエーテルポリマーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑剤として含有させることができる。さらには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0022】
また、本発明における織物は、前記脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に含む様な組み合わせで製織したのち、天然成分から抽出した染料で草木染めを施していることが必要である。これは脂肪族ポリエステル繊維の生分解性に合わせ、染料も生分解を生じる等、地球環境問題に対応するためだけでなく、分散染料を使用する際の高温高圧条件を採用しなくても織物を染色することが出来るためである。
【0023】
草木染めに使用する染料としては柿渋、ログウッドやオニグルミ等から抽出した色素を使用するが、これらに限定されるものではなく、また色素の抽出方法にも制約はない。
【0024】
草木染めにおいては脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に用いて製織後、生機の汚れを取る目的で精練し、その後、媒染法、直接法、カチオン前処理法等の処方により染色するものであるが、媒染法や直接法では染着性が不十分であり、淡色しか表現出来なかったり、堅牢度が不十分である場合が多いため、特開平6−173176号に公開されている様なカチオン前処理手法が好ましく採用され、第4級アンモニウム塩で精練後の生地を低温処理することで生地表面をカチオン化した後、前記に代表される天然色素を用いて染色することが望ましい。
【0025】
また、本発明における脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度[COOH]は0〜20eq/tであることが望ましい。カルボキシル基末端濃度が20eq/tよりも多い場合には、染色加工時に生じる加水分解の度合いが大きく、染色条件によっては布帛の引裂強力の低下を招くことがある。特に、濃色に染色するためには草木染めの染色回数を増やして繰り返し染色したり、染色温度を高くする場合があり、加水分解が進みやすい。布帛の強力保持の観点からは、脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度は好ましくは10eq/t以下、最も好ましくは6eq/t以下である。カルボキシル基末端基濃度は低ければ低いほど好ましい。ここでカルボキシル基末端基濃度とは実施例中に記載の方法によって測定した値を指す。
【0026】
このような低いカルボキシル基末端基量の脂肪族ポリエステルは、脂肪族ポリエステルの溶融状態でカルボキシル基と反応性を有する化合物、例えばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物、ジオール化合物、長鎖アルコール化合物などの末端封鎖剤を適量反応させることで得ることができるが、脂肪族ポリエステルの高重合度化、残存低分子量物の抑制などの観点から、ポリマーの重合反応終了後に末端封鎖剤を添加・反応させることが好ましい。
【0027】
上記した末端封鎖剤と脂肪族ポリエステルとの混合・反応としては、例えば、重縮合反応終了直後の溶融状態の脂肪族ポリエステルに末端封鎖剤を添加し攪拌・反応させる方法、脂肪族ポリエステルのチップに末端封鎖剤を添加・混合した後に反応缶あるいはエクストルーダなどで混練・反応させる方法、エクストルーダで脂肪族ポリエステルに液状の末端封鎖剤を連続的に添加し、混練・反応させる方法、末端封鎖剤を高濃度含有させた脂肪族ポリエステルのマスターチップと脂肪族ポリエステルのホモチップとを混合したブレンドチップをエクストルーダなどで混練・反応させる方法などにより行うことができる。また、末端封鎖剤を用いず、ポリマーの重縮合反応を低温でおこなう等、ポリマーの重合時における熱分解を抑制する方法によってもよい。
【0028】
ここで、本発明の染色織物は次の条件で耐候性を試験した際の引裂強力保持率が90%以上であることが必須要件である。
【0029】
<耐候性試験方法>
JIS L0843 B法B6記載の試験条件に準じ、かつ照射、暗黒条件を交互に連続20サイクル処理する。
【0030】
照射時:70℃×50%RH 3.8時間
暗黒時:38℃×95%RH 1.0時間
これは、ある程度の耐久性を要求される衣料および衣料周辺用途を想定した場合、通常の使用状態の範囲で製品放置される高温多湿の条件を想定しており、この条件で著しい強度低下を示すものは、事実上実用化は困難である。
【0031】
本発明の染色織物に使用される脂肪族ポリエステル繊維は、丸断面あるいは扁平、三〜八葉、C型、H型、中空などの異形断面であってもよいし、また、通常のフラットヤーン以外に、仮撚加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸、混繊糸等のマルチフィラメントヤーンや同様のステープルファイバーであってもよい。
【0032】
本発明の染色織物は、例えば衣料、鞄、天幕、旗、幟、靴、シート、のれん、寝装品等に用いられる。
【0033】
以下、本発明の染色織物を用いた鞄に関して述べる。
【0034】
本発明の染色織物を一部に用いた鞄とは、ハンドバッグ、ブリーフケース、ショルダーバッグ、ポーチ、リュック等、特に形状にとらわれるものではなく、本発明の染色織物を鞄のベース生地に用いた鞄のみならず、取っ手の一部、あるいは飾り生地として使用した鞄も含むものである。
【0035】
鞄としては本発明の染色織物を単独で全面に使用しても良く、また皮革や綿等、従来から鞄用の材料として使用されてきた素材と組み合わせて使用しても良い。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.融点
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC−7)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定し、得られた溶融ピークのピーク温度を融点とした。
B.カルボキシル基末端濃度[COOH](eq/t)
精秤した試料をo−クレゾール(水分5%)調製液に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加の後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより測定した。
C.屈折率
ポリマーの熱圧フィルムを試料として、23℃に調節された、プリズムを備えたアッベ屈折計により、JIS−K7105記載の方法に準拠して測定した。
D.引裂強力、引裂強力保持率
インストロン社引張試験機を用い、JIS1096 A−I シングルタング法に準じて引裂強力を測定、耐候性試験処理前の強力をN1、耐候性試験処理後の強力をN2として引裂強力保持率を算出した。
【0037】
引裂強力保持率(%)=(1−(N1−N2)/N1)×100
E.参考例1 低カルボキシル基末端濃度ポリマーの調製
融点168℃、重量平均分子量12万、カルボキシル基末端濃度26.6eq/tであるポリL乳酸ポリマー100重量部に対して1.7重量部のN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドを、2軸エクストルーダーを用いて、スクリュー部温度200℃、平均滞留時間2分間の条件で均一に混練・反応させた。エクストルーダーから押し出したガットを水冷し、チップ状に成形した。得られたポリマーの屈折率は1.43、融点は166℃、カルボキシル基末端濃度は5eq/tであった。
実施例1
参考例1で得られた、屈折率1.43、融点166℃、カルボキシル基末端濃度5eq/tのポリL乳酸ポリマーのチップを、105℃に設定した真空乾燥器で12hr乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度210℃にて溶融し、紡糸温度220℃、3000m/minで引き取って未延伸糸(813dtex−96f)を得た。
【0038】
この未延伸糸をホットローラー系の延伸機を用い、延伸温度90℃、熱セット温度120℃、延伸倍率1.45倍、延伸速度400m/minの条件で延伸して560dtex−96fの延伸糸を得た。得られた延伸糸の強度は、4.2cN/dtex、沸騰水収縮率は6.2%であった。
【0039】
得られた延伸糸を用いて平織物(織上密度18×15本/cm)を作成し、炭酸ソーダ1g/lを溶解した80℃の槽で拡布状態で精練後温水で洗浄、乾燥を行い、引き続き、カチオン化剤(一方社油脂工業株式会社性「UK」)の80℃水溶液でカチオン化処理をし、その後、ログウッド抽出染料5%owfの水溶液で80℃で染色を施し、温水洗浄後、130℃で仕上セットした。
【0040】
得られた染色織物は、タテ糸密度が19本/cm、ヨコ糸密度が16本/cmの光沢感に優れるグレー色の織物であり、染色後の初期引裂強力はヨコ方向で214.6Nであり、耐候性試験処理後の引裂強力は210.7N、引裂強力保持率は98.2%であった。
【0041】
得られた染色織物をベース生地に用い、アクセントおよび取っ手部分に天然皮革を用いたハンドバッグを作成したところ、光沢感が映え、高級感に優れる鞄となった。
実施例2
屈折率1.43、融点168℃、カルボキシル基末端濃度25eq/tのポリL乳酸ポリマーのチップを用いる他は実施例1と同様にして、560dtex−96fの延伸糸を得た。延伸糸の強度は4.1cN/dtexであり、沸収は6.5%であった。この延伸糸を用いて実施例と同条件で平織物を製織し、実施例1と同様の染色処方で染色織物を得た。
【0042】
得られた染色織物は、タテ糸密度が19本/cm、ヨコ糸密度が16本/cmの光沢感に優れるグレー色の織物であり、染色後の初期引裂強力はヨコ方向で153.6Nであり、耐候性試験処理後の引裂強力は142.1N、引裂強力保持率は92.5%であった。
比較例1
実施例2で得られた560dtex−96fの延伸糸を用いた平織物(織上密度18×15本/cm)を製織し、炭酸ソーダ1g/lを溶解した80℃の槽で拡布状態で精練後温水で洗浄、乾燥を行い、引き続き、分散染料(Dianix.N.BLUE、7%owf)を使用し120℃×50分間染色後、炭酸ソーダを含む界面活性剤温水液60℃×20分で還元洗浄をし、その後130℃で仕上セットした。
【0043】
得られた染色織物は、タテ糸密度が19本/cm、ヨコ糸密度が15本/cmの光沢感に優れる黒色の織物であり、染色後の初期引裂強力はヨコ方向で122.7Nであったが、耐候性試験処理後の引裂強力は82.3N、引裂強力保持率は67.1%と強度低下が大きいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの屈折率が1.30〜1.50であり、融点が130℃以上である脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に含み、天然成分から抽出した染料で草木染めが施され、かつ下記条件の耐候性試験後の引裂強力保持率が90%以上である染色織物。
<耐候性試験方法>
JIS L0843 B法B6記載の試験条件に準じ、かつ照射、暗黒条件を交互に連続20サイクル処理する。
照射時:70±3℃×50±5RH% 3.8時間
暗黒時:38±3℃×95±5RH% 1.0時間
【請求項2】
脂肪族ポリエステルがL−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の染色織物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルからなる織物のカルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tであることを特徴とする請求項1または2に記載の染色織物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の染色織物を少なくとも一部に用いたことを特徴とする鞄。

【公開番号】特開2006−249616(P2006−249616A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68615(P2005−68615)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】