説明

柔軟性超耐久性粉末被覆組成物

【課題】アモルファス樹脂および架橋剤に基づく、良好な耐候性および良好な機械的特性を特徴とする粉末被覆組成物を提供することが本発明の目的である。
【解決手段】良好な耐衝撃性および耐候性を有する粉末被覆物は、イソフタル酸系ポリエステルおよびイソシアネート系硬化剤を用いて製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソフタル酸系ポリエステル樹脂を用いて得られた、柔軟性および超耐久性(すなわち、60インチポンドよりも大きい順(forward)および逆(reverse)耐久性を有する)であり、かつ、良好な耐候性を有する熱硬化性粉末被覆物に関する。また、本発明は、粉末塗料およびワニスの製造のためのこれらの組成物の使用およびこれらの組成物で被覆された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性粉末組成物は、当該分野においてよく知られており、種々の物品を被覆するための塗料およびワニスとして広く使用されている。これらの粉末は、多くの利点を有する。これらの利点としては、優れた耐薬品性、柔軟性、意匠および審美性における高い自由度などが挙げられる。粉末は、実質的に完全に使用される。なぜなら、基材に直接接触することになる粉末のみが基材によって保持される一方で、任意の過剰の粉末は、好適には回収および再使用することができるからである。したがって、粉末組成物は、それらの明らかな経済的および生態学的利点から、しばしば有機溶媒の溶液中の被覆組成物に好適である。
【0003】
熱硬化性粉末組成物は、例えば、自動車産業用の器具または付属品に使用される、金属部分を被覆するために広く使用されている。それらは、通常、被覆された物品の意図された使用に必要とされる特性に基づいて選択される、結合剤、硬化剤、一以上の充填剤、一以上の顔料、一以上の触媒および他の既知の添加剤から構成される。
【0004】
種々のタイプの熱硬化性粉末組成物が存在する。最も広く知られた組成物としては、ヒドロキシル基含有ポリエステル結合剤および硬化剤(例えば、ブロックトまたは自己ブロックトポリイソシアネート)が挙げられる。
【0005】
粉末ワニスおよび塗料の製造に使用され得るヒドロキシル基含有ポリエステルは、非常に多くの刊行物の主題である。これらのポリエステルは、通常、芳香族ポリカルボン酸、主としてテレフタル酸およびイソフタル酸および必要に応じて小割合の脂肪族または脂環族ジカルボン酸と、一以上の脂肪族ポリオール、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、およびトリメチロールプロパンとから製造される。芳香族ジカルボン酸に基づくこれらのポリエステルは、適当な硬化剤と共に使用される場合、良好な外観および良好な機械的特性(例えば、衝撃強度および柔軟性)を有する熱硬化性組成物を与える。これらのポリエステルのいくつかおよびそれらから製造された粉末も、それらの顕著な耐候性の理由から、一般に用いられている。
【0006】
今日まで、顕著な耐候性は、イソフタル酸に基づくポリエステルによってのみ達成されていた。しかしながら、これらのポリエステルから得られた被覆物は、多くの被覆物用途に必要とされる機械的柔軟性を有しない。イソフタル酸系ポリエステルを用いて製造された粉末被覆物の機械的特性を改善するための一つのアプローチは、半結晶性およびアモルファスポリエステルの混合物を使用するものである。例えば、米国特許第6,635,721号(特許文献1)および同第4,859,760号(特許文献2)を参照のこと。このアプローチは、被覆組成物の原料および製造コストを上昇させる。また、それは、結晶性化合物の焼結に起因する粉末の工場生産加工の困難性を導く。
【0007】
したがって、イソフタル酸系ポリエステル結合剤であって、そのポリエステルを、当業者により容易に入手可能で、一般的に使用されるアルコールおよび硬化剤と反応させることによって、良好な耐候性および良好な機械的特性(特に衝撃強度)を特徴とする被覆物を製造するために使用され得る、および、単にアモルファス樹脂および架橋剤にのみ基づく、イソフタル酸系ポリエステル結合剤を開発することは有利であるだろう。
【特許文献1】米国特許第6,635,721号
【特許文献2】米国特許第4,859,760号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アモルファス樹脂および架橋剤に基づく、良好な耐候性および良好な機械的特性を特徴とする粉末被覆組成物を提供することが本発明の目的である。粉末被覆物産業における経済的な制限、および当該産業においてポリエステルが結合剤としてほとんど排他的に受け入れられていることに起因して、樹脂は、主にイソフタル酸に基づく。
【0009】
本発明の別の目的は、超耐久性および良好な耐候性を特徴とする被覆された物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当業者にとって明らかであるこれらのおよび他の目的は、1.9〜2.4の平均ヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオールを結合剤として使用することによって達成される。このポリエステルポリオールは、主に(すなわち、75重量%を超える)イソフタル酸である酸と、ジオールと、必要に応じて、2より大きい、好適には3または4のヒドロキシル基官能価を有するポリオールとの反応生成物である。このポリエステルポリオールは、イソシアネート系硬化剤を用いて硬化される。ポリエステルポリオールおよび硬化剤は、ポリエステルポリオールおよびイソシアネート系硬化剤の平均官能価が2.2より大きく2.375未満、好適には約2.25となるような量で使用される。この平均官能価は、ポリエステルポリオールの官能価およびイソシアネート系硬化剤の官能価の合計を2で割ることによって算出される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性粉末組成物は、優れた貯蔵安定性、および、長期間に亘って2.7ミル以下の被覆厚みに保たれる、高い光沢度を有する滑らかな表面外観および60/60インチポンド以上の順(forward)/逆(reverse)衝撃性能を有する被覆物を製造するそれらの能力を特徴とする。通常、本発明の粉末組成物は、順/逆衝撃において60/60インチポンドよりも良好である。これは、当該分野の被覆物の状態に対する顕著な改善である。
【0012】
粉末塗料産業において、本発明の組成物を使用することで与えられる、優れた柔軟性と結び付いた優れた耐候性は、商業的に重要であることが明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、良好な耐候性および機械的特性を特徴とする熱硬化性粉末被覆物に関する。この被覆組成物は、(a)結合剤および(b)硬化剤から構成される。結合剤としては、1.9〜2.4、好適には約2.1〜約2.3、最も好適には約2.2の平均官能価を有するポリエステルポリオールが挙げられる。この平均官能価は、以下のように算出される:
OH=OH基の当量
エステル=形成されたエステル結合の当量
OH価=56,100×(OH−エステル)/充填量(g)−エステル×18[g/当量]。
充填量(g)=酸(g)+ジオール(g)+任意のポリオール(g)の合計。
=[(充填量(g)−エステル)×18]/(酸、ジオールおよびポリオールの合計モル−エステル)。
OH官能価=OH価×M/56,100。
【0014】
硬化剤は、好適には、ブロックトイソシアネート硬化剤である。
結合剤および硬化剤は、結合剤のヒドロキシル官能価と反応性基の官能価の合計の平均が、2.2以上および2.375以下、好適には約2.25になるように選択される。
【0015】
本発明の被覆組成物に必要とされるポリエステルポリオールは、酸(これは主にイソフタル酸である)と、ジオールと、必要に応じて、2より大きい、好適には3または4のヒドロキシル官能価を有するポリオールとの反応生成物でなければならない。
【0016】
本発明の被覆組成物に使用されるイソフタル酸系ポリエステルは、通常、1700〜4500、好適には2000〜3200の数平均分子量;40〜80℃(DSCによる測定)のガラス転移温度(Tg);200℃で測定した場合、500〜5,000mPa・sの溶融粘度(ブルックフィールド粘度計CAP2000H、750rpm、スピンドル6)を有する。
【0017】
本発明の熱硬化性組成物に使用されるポリエステルの酸構成成分は、主にイソフタル酸、すなわち、使用される酸全体の少なくとも75重量%、好適には少なくとも90重量%、最も好適には少なくとも95重量%がイソフタル酸である。使用される酸が100%未満のイソフタル酸である場合、使用される酸の残りは、アジピン酸(これは、10重量%未満の量で使用されるべきである)、無水フタル酸、無水トリメリト酸または当業者に既知の任意の他の酸または酸無水物であり得る。
【0018】
本発明の熱硬化性組成物に使用されるイソフタル酸系ポリエステルの製造に有用なヒドロキシル材料としては、少なくとも一つのジオールが挙げられ、たいていの場合、2より大きい、好適には3または4のヒドロキシル官能価を有する少なくとも一つのポリオールが挙げられる。ジオール、および、使用される場合、ポリオールは、通常、ジオールおよびポリオール中のヒドロキシル基全体に対する酸のモル比が、約1.05〜約1.14、好適には約1.07〜約1.12となるような量で使用される。
【0019】
適当なジオールとしては:ネオペンチルグリコール;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;プロピレングリコール;1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール;2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール;2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ブタンジオール;1,8-オクタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール;チオジエタノール;1,2-シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール;2-メチル-1,3-プロパン-ジオール;水素化ビスフェノールA;ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート;およびそれらの混合物ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0020】
ポリエステルの分枝化は、3個または4個のヒドロキシル基を含有するポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、1,2,3-プロパントリオール;1,2,6-ヘキサントリオール;2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール;1,3,5-トリス-(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレート;ジトリメチロールプロパン;トリメチロールエタン;ペンタエリスリトール;およびそれらの混合物ならびにそれらの組合せを使用することによって達成することができる。
【0021】
ヒドロキシル基含有ポリエステルは、当業者に既知の従来のポリエステル合成方法のいずれか、例えば、一段階または多段階エステル化によって製造することができる。ポリエステルの合成は、ただ一つの工程で行われることが好適である。従来の反応器のいずれかを使用して、本発明に必要とされるポリエステルを製造することができる。しかしながら、攪拌機、不活性ガス(窒素)吸入口、水冷凝縮器に連結した蒸留カラムおよび温度調節器に結合した温度計を備えた反応器が好適である。
【0022】
ポリエステルの製造に使用されるエステル化条件は、従来のものである。スズ由来の標準エステル化触媒(例えば、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジラウレートまたはn-ブチルスズトリオクトエート)、またはチタン由来の標準エステル化触媒(例えば、テトラブチルチタネート)、あるいはブレンステッド酸(例えば、リン酸および硫酸)は、反応物の0.01〜0.5重量%の量で使用することができる。必要に応じて、抗酸化剤(例えば、フェノール性化合物IRGANOX 1010(CIBA-GEIGY))、またはホスホナイト型およびホスファイト型安定化剤(例えば、トリブチルホスファイト)は、反応物の0〜2重量%の量で添加することができる。
【0023】
エステル化は、通常、5〜1600トールの圧力下、160℃から約270℃まで徐々に上昇させた温度にて、所望の酸価を有するポリエステルが得られるまで行う。エステル化の程度は、反応過程中に形成された水の量および得られたポリエステルの特性、例えば、酸価、OH価、分子量および/または粘度を決定することによってモニターされる。
【0024】
これらのヒドロキシル基含有ポリエステルは、本発明の熱硬化性超耐久性粉末組成物を硬化剤と共に形成する結合剤として作用する。この粉末組成物は、静電気または摩擦電気スプレーガンを用いる堆積技術を使用して、または流動床堆積技術を使用して塗布することができる、ワニスおよび塗料に特に有用である。
【0025】
本発明の熱硬化性粉末組成物を塗布することによる、物品、好適には金属物品を被覆する方法において、被覆される物品は、静電気または摩擦電気スプレーガンを使用するスプレー堆積によって、または流動床堆積によって被覆される。そして、被覆物は、100〜250℃の温度にて、約0.5〜60分間、好適には5〜20分間硬化される。
【0026】
本発明の熱硬化性粉末組成物を製造するのに使用される硬化剤は、ポリエステルのヒドロキシル基と反応し得る官能基を含有する化合物から選択される。適当な硬化剤としては:イソシアネート、ブロックトイソシアネート、自己ブロックトイソシアネート(「ウレトジオン」としても既知)およびこのような官能基を一より多く含有する材料が挙げられる。水素化MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)およびε-カプロラクタムに基づくブロックトイソシアネートは、特に好適である。最も好適な硬化剤は、Bayer MaterialScienceから、名称Crelan NW5(平均官能価=2.3)のもと市販されている。
【0027】
硬化剤は、硬化剤の官能価とポリエステルのヒドロキシル官能価の合計の平均が2.2以上2.375以下、好適には約2.25になるような官能価を有する必要がある。この硬化剤は、ポリエステル中の官能基に対する硬化剤中の官能基の比率が0.85と1.15の間、好適には約1になるような量で使用されなければならない。
【0028】
また、本発明の熱硬化性粉末組成物は、粉末塗料およびワニスの製造において慣例的に使用される種々の添加剤および加工助剤を含有することができる。
本発明の熱硬化性組成物に必要に応じて添加することができる添加剤および加工助剤としては:紫外線吸収化合物;光安定化剤;他の安定化剤;抗酸化剤;流動調整剤;可塑剤;粉砕助剤;乾燥オイル;および脱気剤(例えばベンゾイン)が挙げられる。これらの添加剤および加工助剤は、従来の量で使用され、そして、本発明の熱硬化性組成物がクリアコートとして使用される場合、隠蔽性を有する補助剤の添加は、省略されるべきであると理解される。
【0029】
また、本発明の被覆組成物は、10重量%(被覆組成物と添加剤の総重量に基づく)までの種々の任意の既知の鉱物充填剤および顔料を含有することができる。このような顔料および充填剤の例としては:金属酸化物(例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛など);金属水酸化物;金属粉;スルフィド;スルフェート;カーボネート;シリケート(例えばケイ酸アルミニウム);カーボンブラック;タルク;カオリン;バライト;紺青;鉛青;有機赤;および有機マルーンが挙げられる。
【0030】
本発明の一実施態様において、熱硬化性粉末組成物、ポリエステル、硬化剤および任意の添加剤および/または加工助剤は、例えば、ドラム混合機中で乾燥混合される。次いで、この混合物は、押出機中、80〜140℃の温度にて均質化される。適当な押出機としては、一軸Buss-Ko-Kneader押出機およびPrismまたはA.P.V.型の二軸押出機が挙げられる。次いで、押出物は、冷却および固体化される。次いで、固体押出物は、10μmと70μmの間、好適には25μmと45μmの間の平均粒度を有する粉末を得るために、篩にかけられる。
【0031】
本発明の熱硬化性粉末組成物は、優れた貯蔵安定性、および、長期間に亘って2.7ミル以下の被覆厚みに保たれる、高い光沢度を有する滑らかな表面外観および60/60インチポンド以上の順/逆衝撃性能を有する被覆物を製造するそれらの能力を特徴とする。通常、本発明の粉末組成物は、順/逆衝撃において60/60インチポンドよりも良好である。これは、当該分野の被覆物の状態に対する顕著な改善である。
【0032】
粉末塗料産業において、本発明の組成物を使用することで与えられる、優れた柔軟性と結び付いた優れた耐候性は、商業的に重要であることが明らかである。
【0033】
かくして得られた粉末塗料およびワニスは、従来技術を使用して、すなわち、良く知られた流動床堆積技術を使用して、または静電気または摩擦電気スプレーガンを使用する塗布によって、被覆される物品上に塗布するのに完全に適当である。後者の場合、摩擦電気系において電荷を捕らえる能力を高めることが知られている添加剤が添加される。
【0034】
被覆される物品に塗布された後、堆積された被覆物は、当業者に既知の任意の技術にしたがって硬化することができる。適当な硬化技術の例としては、100〜250℃、好適には約170〜約210℃の温度のオーブン中で、約0.5〜60分間、好適には5〜20分間焼き付けて被覆物を硬化することが挙げられる。また、対流式オーブンよりも迅速な硬化を誘導するために、赤外線を用いて被覆物を硬化させることができる。また、赤外線と対流式オーブン中の焼き付けの組合せも使用することができる。
【0035】
本発明は、このように説明されるが、以下の実施例は、その例示の目的で与えられる。他に示さない限り、実施例中に与えられた部および%は、重量部または重量%である。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
1990gのネオペンチルグリコールおよび72gのトリメチロールプロパンを、窒素下、160℃の温度に維持したオイル中に浸した、攪拌機を備えた反応器に充填した。反応器の内容物の攪拌を16rpmにて開始し、約35分後、2977gのイソフタル酸および5gの有機スズエステル化触媒(Tegokat-250、Goldschmidtから入手可能)を反応器に添加した。反応器中の撹拌を、42rpmに高め、オイルの温度を徐々に4℃/時間の速度で230℃の温度まで上昇させた。大気圧下の蒸留が終了したとき、600トールの真空を漸次確立した。
混合物を、600トールの真空下、230℃で3時間加熱した後、反応器の内容物を、アルミニウムパンに注ぎ、冷却した。かくして得られたヒドロキシル基を含有するポリエステルは、以下の特徴を有した:
酸価 2.18mgKOH/g
ヒドロキシル価 46.7mgKOH/g
粘度(20℃) 980mPa・s
51.7℃
官能価 2.2
【0037】
(実施例2)
2072gのネオペンチルグリコール、35gのトリメチロールプロパン、2977gのイソフタル酸および5.0gの有機スズエステル化触媒(名称Tegokat-250のもと入手可能)を使用して、実施例1の手順を繰り返した。
かくして製造されたポリエステルポリオールは、酸価1.9mgKOH/g、OH価38.5mgKOH/g、粘度(200℃)780mPa・s、Tg=51.3および官能価2.1を有した。
【0038】
(実施例3)
1984gのネオペンチルグリコール、108gのトリメチロールプロパン、2977gのイソフタル酸、および5gの有機スズエステル化触媒(名称Tegokat-250のもと入手可能)を使用して、実施例1の手順を繰り返した。
かくして製造されたポリエステルポリオールは、酸価2.4mgKOH/g、OH価43.2mgKOH/g、粘度(200℃)1100mPa・s、官能価2.45を有した。
【0039】
以下の材料を使用して、実施例の被覆組成物を製造した。
ポリエステルA:実施例1にしたがって製造されたポリエステル。
ポリエステルB:実施例2にしたがって製造されたポリエステル。
ポリエステルC:実施例3にしたがって製造されたポリエステル。
硬化剤:ブロックトポリイソシアネート硬化剤(これは、名称Crelan NW-5のもとBayer MaterialScienceから市販されている(官能価=2.32);当量=336)。
フロー剤:流動調整剤(これは、名称Resiflow P-67のもとEstronから市販されている)。
脱気剤:ベンゾイン。
顔料A:二酸化チタン(これは、称号R-960のもとDuPont de Nemoursから市販されている)。
顔料B:二酸化チタン(これは、称号R-961のもとMelleniumから市販されている)。
顔料C:黒色顔料(これは、名称Raven 1255のもと市販されている)。
触媒:ジブチルスズジラウレート。
【0040】
(実施例4〜6)
ポリエステルAまたはポリエステルBまたはポリエステルC、硬化剤、フロー剤、脱気剤、顔料Cおよび触媒を、表1に示した量で組み合わせた。次いで、混合物を、Prism PC 24mm押出機中に押し出した。ここで、ゾーン番号1は、温度30℃で、ゾーン番号2は、温度105℃で、400rpmであった。押出物を粉々にし、そして、表1に示した厚みでアルミニウム基材に塗布し、表1に示したように焼き付けた。フィルム厚み、写像性(DOI)、である光沢度(20°)(ASTM D 523にしたがって角度20°で測定した光沢度)、光沢度(60°)(ASTM D 523にしたがって角度60°で測定した光沢度)、直接/逆衝撃(ASTM D 2794にしたがって決定したもの)、および耐薬品性(メチルエチルケトン[MEK]を用いる二重摩擦の数として示される)を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
ポリエステルBまたはポリエステルCを用いて製造した粉末被覆物は、本発明にしたがって製造された被覆物の所望の衝撃性能(すなわち、60インチポンドより大きい順および逆衝撃)を有しなかったことが表1に示すデータから見ることができる。
【0043】
(実施例7〜11)
ポリエステルA、硬化剤、フロー剤、脱気剤、顔料Cおよび触媒を、表2に示す量で組み合わせた。次いで、混合物を、Prism PC 24 mm押出機(ゾーン#1(30℃)、ゾーン#2(105℃)、400rpm)中に押し出した。押出物を粉々にし、そして、アルミニウム基材に表2に示す厚みで塗布した。フィルム厚み、DOI、光沢度(20°)、光沢度(60°)、直接/逆衝撃およびMEKを、表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
硬化剤の量を高めるにつれて被覆物の機械的特性が改善されたことが表2に示すデータから見ることができる。
【0046】
(実施例12〜18)
実施例9(NCO:OH=0.89)にしたがって製造された粉末被覆物を、表3に示す速度にてアルミニウム基材上に焼き付けた。それらの被覆物の特性を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
長い焼き付けサイクルは、衝撃性能に顕著に影響を与えることが表3に示すデータから見ることができる。また、厚みは、衝撃性能について重要な効果を有する。
【0049】
(実施例19〜25)
実施例10(NCO:OH - 0.93)にしたがって製造された被覆物を、種々の厚みでアルミニウム基材に塗布し、種々の速度にて焼き付けた。これらの被覆物の特性を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
被覆厚みは、被覆耐久性について、焼き付け計画よりもはるかに顕著な効果を有することが表4に示すデータから見ることができる。全体にわたって、衝撃性能は、表3に示した被覆物よりも良好であった。なぜなら、NCO:OH比が1:1(すなわち、0.93)により近いためである。
【0052】
表3および4中のデータは、15'/200℃の最小の焼き付け計画が実施例9および10にしたがって製造された被覆物に必要とされることを明らかに示す。2.5ミル(実施例16)と同じくらい高い厚みでさえも、本発明にしたがって製造された被覆物は、良好な耐久性および衝撃特性を有する。
【0053】
(実施例26〜27)
顔料AおよびBを、各々、顔料含量が25%となるような量で使用して、被覆物を製造した。ポリエステル、硬化剤、フロー剤、脱気剤、顔料Aまたは顔料G、および触媒の量を表5に示す。被覆物を、表5に示す厚みで基材に塗布した。また、被覆物の特性を表5に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
他の点では本発明の範囲に含まれる25%の顔料含量を有する被覆物は、2ミルの厚みでさえも良好な耐衝撃性を示さなかったことが表5に示すデータから見ることができる。
【0056】
(実施例28〜29)
実施例28および29にしたがって製造された、被覆された基材について行われる耐候性の測定を、標準規格ASTM D 4587-01にしたがって、促進老化を測定するためのQ−UV装置中で実施した。ここで、被覆物は、凝縮(40℃にて4時間)の間欠的影響、ならびに60℃にて8時間、蛍光UVランプ(ランプUV−B 313nm)によって引き起こされる光誘導劣化の模擬影響を受けた。
【0057】
(実施例28)
本発明の範囲内の粉末被覆物(被覆物B)を、455gのポリエステルA、121gの硬化剤、15gの顔料C、6gのフロー剤、および3gの脱気剤の混合物を37℃(ゾーン1)および105℃(ゾーン2)にて押し出すことによって製造し、冷却し、そして、平均粒度75μmに粉々にした。次いで、この被覆物(被覆物B)を、1.8〜2.8ミルの厚みにてアルミニウム基材に塗布し、そして、200℃にて15分間焼き付けた。次いで、この被覆された基材を、QUV B促進耐候性試験に付した。この耐候性試験の結果を、図中にグラフ的に示した。
【0058】
(実施例29)
粉末被覆物(被覆物A)(これは、被覆物工業において標準である)を、ポリエステルAの代わりに名称Rucote 102のもとBayer MaterialScienceから市販されているポリエステル(480.19g)を使用し、硬化剤を名称Crelan NI2のもとBayer MaterialScienceから市販されているイソシアネート系硬化剤(95.82g)に置き換えた(これらの材料は、標準耐候性を有する粉末被覆物についての工業標準である)以外は、被覆物Bと同様の方法で製造した。次いで、この被覆物を、1.8〜2.8ミルの厚みでアルミニウム基材に塗布し、200℃にて10分硬化し、次いで、被覆された基材を、被覆物Bと同時におよび同様にQUV B促進耐候性試験に付した。この耐候性試験の結果を、図中にグラフ的に示した。
本発明にしたがって製造された被覆物(被覆物B)は、被覆物Aよりも良好な耐候性(角度20°での光沢度によって評価される)を示したことが図から見ることができる。
【0059】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図は、テレフタル酸系ポリエステルを用いて製造された、市販されている標準耐久性の被覆物と、本発明の範囲内の被覆物の長期間に亘る耐候性(光沢度によって測定される)のグラフ的な比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(1)(i)少なくとも75重量%のイソフタル酸を含んでなる酸と、
(ii)少なくとも一つのジオールと、
(iii)必要に応じて、2より大きいヒドロキシル官能価を有するポリオールと、
(iv)触媒
との反応生成物である、1.9〜2.4の平均ヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオールを含んでなる結合剤と、
b)イソシアネート系硬化剤と
を含んでなり、
a)およびb)の官能価の平均が2.2より大きく2.375未満である、熱硬化性粉末被覆組成物。
【請求項2】
ポリエステルポリオールは、約2.1〜2.3の平均ヒドロキシル官能価を有する、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項3】
ポリエステルポリオールは、約2.2の平均ヒドロキシル官能価を有する、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項4】
a)およびb)の官能価の平均は、約2.25である、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項5】
ジオールは、エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;プロピレングリコール;1,3-プロパンジオール;2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール;2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール;2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール;2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4-ブタンジオール;ネオペンチルグリコール;1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;1,8-オクタンジオール;2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール;チオジエタノール;1,2-シクロヘキサンジメタノール;1,4-シクロヘキサンジメタノール;2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール;およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項6】
ジオールは、ネオペンチルグリコールである、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項7】
ポリオールは、トリメチロールプロパン;1,2,3-プロパントリオール;トリメチロールエタン;1,2,6-ヘキサントリオール;2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール;1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレート;ペンタエリスリトール;ジトリメチロールプロパン;およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項8】
ポリオールは、トリメチロールプロパンである、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項9】
ジオールは、ネオペンチルグリコールである、請求項8に記載の被覆組成物。
【請求項10】
ジオールは、ネオペンチルグリコールであり、ポリオールは、トリメチロールプロパンである、請求項2に記載の被覆組成物。
【請求項11】
硬化剤は、ブロックト脂環族ポリイソシアネートである、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項12】
硬化剤は、ブロックト水素化ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項1に記載の被覆組成物。
【請求項13】
ジオールは、ネオペンチルグリコールであり、ポリオールは、トリメチロールプロパンである、請求項12に記載の被覆組成物。
【請求項14】
充填剤および/または顔料を、充填剤/顔料の総含量が10重量%以下となるような量でさらに含む、請求項13に記載の被覆組成物。
【請求項15】
超耐久性および良好な衝撃性能を特徴とする、2.5ミル以下の厚みで請求項13に記載の被覆組成物で被覆された基材。
【請求項16】
少なくとも80/80インチポンドの順/逆衝撃強度を特徴とする、2ミル以下の厚みで請求項1に記載の被覆組成物で被覆された基材。

【図1】
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【公開番号】特開2006−111878(P2006−111878A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−297179(P2005−297179)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】