説明

核医学診断装置

【課題】ガンマカメラで検出したガンマ線に基づく画像作成技術に関し、低カウント値に基づく画質の悪さを是正する技術を提供する。
【解決手段】ガンマ線検出素子を有する検出部でガンマ線を検出する。ガンマ線検出に基づき、ガンマ線の入射位置を算出する。予め、ガンマ線の入射位置の確率分布を反映するカウント値分布データを記憶しておき、算出された入射位置を中心にしてカウント値分布データを当てはめ、入射位置に対応する収集メモリとその周囲の収集メモリに該当のカウント値を加算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体内の放射性同位元素から放射されるガンマ線を検出する核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位元素(Radioisotope:RI)で標識した薬剤を被検体に投与し、放射性同位元素から放射されるガンマ線を検出することで被検体内を画像化する手法がある。投与された薬剤が生理学的、生化学的な性質に従って体内を移動することにより、臓器の循環や代謝、腫瘍の有無、神経伝達物質、神経受容体の分布などを知ることができる。
【0003】
この手法が適用された装置として、核医学診断装置がある。ガンマ線を検出するガンマカメラを搭載し、検出したガンマ線の入射位置及びエネルギーから画像を作成する装置である。二次元上の各位置に対応した収集メモリを備え、入射位置に対応する収集メモリに1のガンマ線入射につき1のカウント値を加算する。一定期間ガンマ線を検出して集計したカウント値から画像を作成する。
【0004】
このガンマカメラにおいて、コリメータによって入射方向を制限されたガンマ線は、シンチレータの光電面に衝突する。シンチレータは、ガンマ線の衝突により蛍光し、その光を二次元上に綿密に並べられた光電子像倍管で捉え、電気信号に変換する。ガンマ線の拡がり角によって一点から放射されたガンマ線は所定の拡がりをもってガンマカメラに入射し、シンチレータの発光点周囲の各光電子像倍管が光を捉えるため、入射位置が存在確率分布となって電気信号に変換される。
【0005】
そこで、従来のガンマカメラでは、電気信号の分布から電気的な重心を算出し、その重心位置を入射位置として該当する収集メモリにカウント値を加算していた。
【0006】
また、カウント値の加算に際し、エネルギウィンドウを用いたTEW(Triple Energy Window)法散乱補正によって特定の範囲の電気信号のみを通過させる波高弁別を行い、特定エネルギーのガンマ線のみを収集することで散乱線を除去している(例えば、「特許文献1」参照。)。さらに、画像のざらつきを抑えるためにローパスフィルタを通じて画像のぼかし処理を行っている。
【0007】
【特許文献1】特開平11−38145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
核医学診断装置では、X線と比べて収集されるカウント値が低いのが特徴である。にもかかわらず、入射位置算出によってカウントアップする収集メモリの値は1であるので、データ数の損失が多い。この低カウント値のため、核医学診断装置で作成される画像は、画質が悪いのが欠点である。
【0009】
近年、収集メモリを配置するマトリクスを大型化する試みが行われているが、収集マトリクスを大きくすると、細やかにカウント値が分散されてしまい、1ピクセル当たりのカウント値がさらに低くなってしまう。これにより、S/N比が低下し、さらなる画質低下が生じるおそれがある。
【0010】
また、低カウント値の場合、精度不足によりTEW法散乱線補正が旨くできない場合がある。そうすると、散乱線の除去精度が悪くなり画質低下の一因となる。
【0011】
すなわち、従来の核医学診断装置では、収集されるカウント値が低いことにより、様々な画質低下の要因となっていた。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ガンマカメラで検出したガンマ線に基づく画像作成技術に関し、低カウント値に基づく画質の悪さを是正する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、被検体内の放射性同位元素から放射されたガンマ線を検出して被検体内の画像を作成する核医学診断装置であって、シンチレータを有し、前記ガンマ線を検出する検出部と、前記シンチレータの出力に基づき、前記ガンマ線の入射位置を算出する入射位置算出手段と、各画素に対応づけられ、対応画素位置のガンマ線のカウント値を一定期間順次合計して記憶する複数の収集メモリと、確率分布を反映するカウント値分布データを予め記憶する記憶部と、前記算出された入射位置を中心にして前記カウント値分布データを当てはめて、入射位置に対応する収集メモリとその周囲の収集メモリに該当のカウント値を加算する加算手段と、を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、入射位置にのみカウント値を加算していた従来に比べ画質が向上する。また、画像のざらつきを抑える為にローパスフィルタを通じて画像をぼかすことを必要とすることがなく、見栄えが向上する。さらに、収集時のマトリクスサイズを増やしても画質劣化を抑制することができる。また、TEW散乱線補正法及びSPECT再構成を適用しても画質減少を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る核医学診断装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
図1に、本実施形態に係る核医学診断装置を示す。核医学診断装置は、放射性同位元素(以下、「RI」と称する。)により標識した薬剤(トレーサー)を被検体内に投与して、当該RIから放射されるガンマ線を検知・計測した結果に基づいて、当該RIの被検体内における分布の様子を画像化する装置である。画像を所定の断層像として得るためのガンマカメラを含む検出器本体21が搭載され、これを被検体の体軸を軸として360度回転させて撮影を行う装置である。例えば、所謂SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置が広く知られている。
【0017】
この核医学診断装置は、主に、被検体Pを載置する寝台1と、検出器本体21を支持する架台2と、これら寝台1及び架台2の操作を行うための操作コンソール装置3とから構成されている。
【0018】
寝台1は、被検体Pを載置する天板11と、これをその両端部にて支持する支持部12、13とから構成されている。支持部12、13は、互いに同期して駆動することで天板11を自在に昇降させる。
【0019】
架台2は、床レール4上に載置される固定台202と、この固定台202に回転自在に嵌め込まれた回転リング201とから構成されている。検出器本体21は、この回転リング201の内面に設置され、天板11に向けて中空支持されている。回転リング201は、円周方向Aに沿って自在に回転する。固定台202は、床レール4上を被検体Pの体軸Zに沿って平行移動する。
【0020】
検出器本体21は、内部に所謂ガンマカメラを内包する。ガンマカメラは、ガンマ線を検出して、RIの二次元分布及びエネルギーを捉えるカメラである。このガンマカメラには、シンチレータを用いてガンマ線を光に変換して光を電気信号に変換する。
【0021】
コンソール装置3は、核医学診断装置の駆動操作、核医学診断装置が作成した被検体P内の画像の表示、及び被検体P内の画像作成で利用されるデータの入力操作を行う装置である。このコンソール装置3は、マンマシンインターフェースとして、操作パネル31、マウス33、及び表示モニタ32を備える。
【0022】
オペレータは、操作パネル31を用いて、寝台1の支持部12、13や架台2の回転リング201及び固定台202等に関する操作を行い、また画像作成で利用されるデータの入力をする。表示モニタ32には、作成された被検体Pの画像が表示される。オペレータは、マウス33を用いて、関心領域の設定操作等を行う。
【0023】
この核医学診断装置では、RIが投与された被検体Pが寝台1の天板11上に載置される。オペレータの操作パネル31の操作に従い支持部12、13、架台2の回転リング201、及び固定台202が駆動し、被検体Pの所望位置に向けて検出器本体21が移動する。被検体P内のRIから放射されるガンマ線が検出器本体21に入射すると、検出器本体21は、入射してきたガンマ線を検知する。検出器本体21は、入射したガンマ線の入射位置及びエネルギーを算出し、その算出結果から被検体P内の画像を作成する。作成された画像は、表示モニタ32に表示される。オペレータは、マウス33を用いて関心領域の設定操作等を行う。
【0024】
図2に、このような核医学診断装置の内部構成を示す。図2に示すように、検出器本体21内には、検出器22、入射位置算出部23、加算装置25、収集メモリ26、カウント値分布データ記憶部27、及びエネルギー測定部28が内包されている。また、コンソール装置3には、入力部35、及びカウント値分布データ作成部34が配置されている。
【0025】
この核医学診断装置では、検出器22で入射したガンマ線を検知する。ガンマ線を検知すると、入射位置算出部23によりガンマ線の入射位置を算出し、エネルギー測定部28によりガンマ線のエネルギーを算出する。入射位置及びエネルギーが算出されると、加算装置25によりその入射位置に対応する収集メモリ26及び周辺の収集メモリ26に対してカウント値分布データ記憶部27が予め記憶するカウント値分布データを当てはめ、カウント値を加算する。各収集メモリ26には、一定期間のガンマ線検知によるカウント値が合計されて記憶され、この一定期間の合計カウント値によって画像が作成される。
【0026】
カウント値分布データは、操作パネル31及びマウス33を含み構成される入力部35を用いて入力される。あるいはカウント値分布データは、ガンマ線を検出器22に入射させてエネルギー測定部28でガンマ線のエネルギー分布を測定し、そのエネルギー分布からカウント値分布データ作成部34によりカウント値分布データが作成される。
【0027】
図3に、検出器22の詳細を示す。図3に示すように、本実施形態に係る検出器22は、所謂アンガー型のガンマカメラで構成される。この検出器22は、鉛シールド221で覆われている。内部が遮光されるように、また側面からガンマ線が入射しないようにするためである。鉛シールド221のうち寝台1と対向する面は開口されており、この一面からのみガンマ線が内部に入射可能となっている。開口には、コリメータ222が配置されている。
【0028】
コリメータ222は、内部へ連通する無数の孔を有し、材質は鉛あるいはタングステンで組成されている。コリメータ222は、入射するガンマ線の入射方向を制限して指向性を与える。コリメータ222の孔径とその孔を画成する隔壁の厚さにより、検出されるガンマ線のエネルギー量や分解能と感度のバランスが決定される。
【0029】
鉛シールド221の内部には、コリメータ222の背面にシンチレータ223が配置される。シンチレータ223は、ヨウ化ナトリウムの単結晶で組成される平板である。このシンチレータ223は、ガンマ線が衝突すると発光して420nmにピークを有する光を出力する。尚、シンチレータ223の材質は、その他の公知のものであってもよい。
【0030】
シンチレータ223の光出力方向には、複数の光電子増倍管(Photomultiplier tube:PMT)224が平面上に綿密に並べられている。光電子増倍管224は、光センサであり、光が当たると光電変換により電気信号を出力する。この光電子像倍管224は、真空管内に光電面と集極電極とダイノードと陽極を有する。集極電極と陽極との間に複数段のダイノードが配される。光電面にシンチレータ223から出力された光が当たると真空中に光電子が放出される。放出された光電子が集極電極によって陽極へ導かれ、その間に配置されるダイノードに衝突させて二次電子を放出させる。二次電子は、陽極に達するまでに複数段のダイノードに次々と衝突し、その度に増倍する。光電子像倍管224は、増倍した二次電子を電気信号として出力する。
【0031】
鉛シールド221の内部には、さらに回路構成として入射位置算出部23とエネルギー測定部28が配置される。平面上に並べられた各光電子増倍管224が出力した電気信号は、入射位置算出部23及びエネルギー測定部28に入力される。
【0032】
入射位置算出部23は、各光電子像倍管224から入力された電気信号群の電気的な重心位置を算出することでガンマ線の入射位置を推算する。推算した入射位置は、位置信号として出力する。ガンマ線は、光学特性上拡がり角を有するため、検出器22には、一定の拡がりをもって入射する。また、綿密に並べられた光電子像倍管224は、シンチレータ223の蛍光点周辺に位置する各光電子像倍管224がその光を捉える。入射位置算出部23は、光電子像倍管224が蛍光点に近い場合はその出力する電気信号が強くなり、また蛍光点から離れるに従ってその出力する電気信号が弱くなる性質を利用して電気的な重心位置を算出する。
【0033】
即ち、入射位置算出部23は、以下の数式1の演算を行いガンマ線の入射位置(X,Y)を算出する。
【0034】
数式1:X=ΣPi*Wxi/ΣPi,Y=ΣPi*Wyi/ΣPi
【0035】
上記数式1において、Piは、並び順i番目の光電子像倍管224の出力する電気信号である。Wxi,Wyiは、並び順i番目の光電子像倍管224に対応付けられた重み付け値である。重み付け値は、2次元平面にX軸方向及びY軸方向に並ぶ並び順に従っており、並び順番目を表す。
【0036】
エネルギー測定部28は、各光電子像倍管224から出力された電気信号を入射したガンマ線のエネルギー分布として測定する。また、入射したガンマ線のエネルギーZを測定する。エネルギー信号Zは、各光電子像倍管224から出力された電気信号の積であり、Z=ΣPiで算出する。エネルギー測定部28は、測定したエネルギー分布をエネルギー分布信号として出力し、測定したエネルギーをエネルギー信号として出力する。
【0037】
加算装置25は、収集メモリ26にカウント値を加算する。収集メモリ26は、2次元上に並べられる画素毎に対応して複数配置されている。この収集メモリ26は、一定期間の合計カウント値を記憶する。カウント値分布データをカウント値分布データ記憶部27から読み出し、入射位置(X,Y)に対応する収集メモリ26を中心に周辺の収集メモリ26を含めてカウント値分布データを当てはめて該当するカウント値を加算する。
【0038】
図4に、カウント値分布データ記憶部27が記憶するカウント値分布データを模式的に示す。このカウント値分布データは、ガンマ線の入射位置の存在確率分布を示す。カウント値分布データは、存在確率をカウント値に換算してその分布を示している。カウント値は、所定の拡がりをもって平面上の各位置に対応付けられており、その値は基本形態としてガウス分布形状従う。尚、カウント値分布データは、コリメータ222の特性や環境等の諸条件を考慮して補正されてもよく、例えば三角錐形状となる場合もある。
【0039】
さらにこのガウス形状を基本形態として、光電子増倍管224の配置関係、大きさ、ゲイン変化等をもたらす温度等の環境変化が反映されている。光電子像倍管224の配置関係や大きさによって、入射位置の存在確率の離散が変わるためである。また各光電子像倍管224のゲインを補正するためである。また、カウント値の分布の拡がりや分布の縁は、収集メモリ26のマトリクスサイズに合わせて決定される。
【0040】
また、ガンマ線の入射位置の直線性補正及びエネルギーの均一性補正(直線性補正及び均一性補正を合わせて「ZLC補正」という)をするためのZLC補正データをこの基本形態に加えることができる。ZLC補正後の出力に対してここで定義する分布を用いてもよい。均一性補正は、エネルギーのエネルギスペクトラムが入射位置によってばらつくことに伴う分布曲線位置の補正であり、また直線性補正は、位置信号に2次元のX,Y位置毎の補正ベクトルに拠るベクトル演算が施され、画像上の直線性を確保する補正である。
【0041】
ZLC補正データを基本形態に加える場合には、検出器22の回路構成からZLC補正部24を排除できる。ZLC補正データをカウント値分布データに反映しない場合には、入射位置算出部23から出力された位置信号及びエネルギー測定部28から出力されたエネルギー信号を、ZLC補正部24でZLC補正してから加算装置25に入力する。
【0042】
このカウント値分布データは、理想的なカウント値の分布が算出されて入力部35を用いて入力される。あるいはカウント値分布データ作成のために、試料用RIを寝台1の所定位置に載置し、エネルギー測定部28から出力されるエネルギー分布信号をもとに、カウンタ値分布データ作成部34で各データを反映して作成する。カウンタ値分布データ作成部34では、エネルギー分布データの基本形態作成として、エネルギー分布をカウンタ値分布に変換する。
【0043】
尚、存在確率分布は、光電子増倍管224や発光位置の特性により、その関数が変わる場合がある。この場合、光電子増倍管224や発光位置に対応したカウント値分布データを作成し、ユーザが選択できるように、又はその発光位置に応じたカウント値分布データが読み出せるように、それぞれカウント値分布データ記憶部27に記憶させる。さらに、これらカウント値分布データから各種の補正条件に応じて派生させたデータを記憶させるようにしてもよい。
【0044】
加算装置25には、位置信号の他、検出器22が検出したガンマ線の入射分布を示す信号及びエネルギー測定部28が測定したエネルギー信号が入力される。加算装置25では、カウント値分布データを読み出した後、このガンマ線の分布及びエネルギーをカウント値分布データに反映させて修正し、修正後の新たなカウント値分布データによってカウント値を収集メモリ26に加算する。
【0045】
尚、カウンタ値は、入射位置に対応して加算するカウンタ値と入射位置の周囲に対して加算するカウンタ値との高低から、1以外の数、例えば複数桁の整数値や、小数点を採用した実数値とする。収集メモリ26としては、対応して桁あふれ防止のため32又は64bitのメモリや浮動点を記憶する実数メモリを搭載することが好適である。
【0046】
このようなカウント値分布データを有する核医学診断装置のガンマ線検出からカウント値加算までの過程を例示する。図5乃至7は、この検出器本体21とカウント値分布データを有する核医学診断装置のガンマ線検出からカウント値加算までの過程を示している。
【0047】
図5に、検出器が検出するガンマ線の様子を示す模式的に示す。図5に示すように、検出器22に所定の拡がり角をもって入射し、蛍光点の周囲の光電子像倍管224も発光を捉えるため、実際の入射位置に位置する光電子像倍管224とその周囲の複数の光電子像倍管224が発光を捉える。発光を捉えた光電子像倍管224は、光をその光量に従った電気信号に変換する。放射位置から拡がらずに入射したガンマ線のその入射位置以外は、コリメータ222である程度制限されるために発光の光量が少なくなり、電気信号は、入射位置を中心にその電流値が小さくなって出力される。
【0048】
図6に、検出器のガンマ線検出により算出される入射重心位置算出を示す模式的に示す。入射位置算出部23は、各電気信号から電気的な重心を算出し、入射位置(X,Y)を算出する。
【0049】
図7に、カウント値分布データが当てはめられてカウント値が加算された収集メモリ26を示す。加算装置25は、入射位置(X,Y)を示す位置信号を受けて、カウント値分布データを読み出す。入射位置に応じたカウント値分布データを記憶させている場合には、位置信号に応じたカウント値分布データを読み出す。
【0050】
例えば、カウント値分布データは、中心のカウンタ値を「10」とし、その一つ周囲のカウンタ値を「7」とし、さらに一つ周囲のカウンタ値を「4」とし、さらに一つ周囲のカウンタ値を「2」とする。加算装置25は、入射位置(X,Y)に対応する収集メモリ26にカウンタ値「10」を加算する。また、座標(X±1,Y±1)に対応する収集メモリ26にカウンタ値「7」を加算する。また、座標(X±2,Y±2)に対応する収集メモリ26にカウンタ値「4」を加算する。また、座標(X±3,Y±3)に対応する収集メモリ26にカウンタ値「2」を加算する。
【0051】
一定期間加算装置25によりカウンタ値が加算された収集メモリ26から合計のカウンタ値を取得することで画像が作成される。画像作成の際には、エネルギウィンドウによって電気的に特定の範囲に入った信号だけを通過させるような波高弁別を行うTEW散乱線補正法、及びSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)再構成を行う。この際、収集メモリ26のマトリクスサイズを必要なマトリクスサイズに加算縮小するか、1段階大きなマトリクスサイズに加算縮小して処理し、断面変換処理を行う。プラナー像やホールボディー像の場合にも必要なマトリクスサイズに加算縮小して解析データとする。
【0052】
このように、本実施形態の核医学診断装置では、ガンマ線の入射位置の存在確率分布を反映したカウント値分布データを予め記憶し、算出した入射位置を中心に当該データを当てはめ、入射位置に対応する収集メモリ26及びその周囲の収集メモリ26に存在確率分布に従ったカウント値を加算するようにした。
【0053】
これにより、入射位置にのみカウント値を加算していた従来に比べ画質が向上する。また、画像のざらつきを抑える為にローパスフィルタを乗じて画像をぼかすことを必要とすることがなく、見栄えが向上する。さらに、収集メモリ26のマトリクスサイズを増やしても画質減少を抑制することができる。また、TEW散乱線補正法及びSPECT再構成を適用しても画質減少を抑制できる。
【0054】
さらに定量的には1のガンマ線の検出に対してカウント値を+1に加算していたが、ガンマカメラの特定上不感時間帯がり加算落としがあるため、画像からキャリブレーションファクタを計算しカウント値の補正をすることにより定量性を精度よく保つことができる。
【0055】
本実施形態では、フレームモードにより、ガンマ線の検出に連動してリアルタイムでカウント値を加算し、画像を作成する場合を説明したが、リストモードによりデータを収集しておき、コンソール装置3の備えるCPUにより画像を作成するようにしてもよい。リストモードは、各光電子像倍管224の位置座標毎にその出力する電気信号の値を記憶しておくものである。この座標に関連づけられた値をガンマ線検出後に後処理としてコンソール装置3でカウント値を加算した画像データを作成していく。すなわち、回路構成としてカウント値分布データでカウント値を加算する他、ソフトウェア上でカウント値分布データでカウント値を加算するようにしてもよい。
【0056】
尚、カウント値分布データは、入射位置の存在確率分布を示すデータを精度や機器特性や処理能力等各種の条件を考慮して修正することが可能であり、所定の分布を示すデータに従って入射位置とその周囲に所定のカウント値を加算するものであれば、本実施形態に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係る核医学診断装置の外観を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係る核医学診断装置の構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係る核医学診断装置が備える検出器の模式図である。
【図4】本実施形態に係る核医学診断装置が記憶するカウント値分布データを示す模式図である。
【図5】検出器が検出するガンマ線を示す模式図である。
【図6】検出器のガンマ線検出により算出される入射重心位置を示す模式図である。
【図7】カウント値分布データが当てはめられてカウント値が加算された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 寝台
11 天板
12,13 支持部
2 架台
21 検出器本体
22 検出器
221 鉛シールド
222 コリメータ
223 シンチレータ
224 光電子像倍管
23 入射位置算出部
24 ZLC補正部
25 加算装置
26 収集メモリ
27 カウント値分布データ記憶部
28 エネルギー測定部
201 回転リング
202 固定台
3 コンソール装置
31 操作パネル
32 表示モニタ
33 マウス
34 カウント値分布データ作成部
35 入力部
4 床レール
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内の放射線同位元素から放射されたガンマ線を検出して被検体内の画像を作成する核医学診断装置であって、
シンチレータを有し、前記ガンマ線を検出する検出部と、
前記シンチレータの出力に基づき、前記ガンマ線の入射位置を算出する入射位置算出手段と、
各画素に対応づけられ、対応画素位置のガンマ線のカウント値を一定期間順次合計して記憶する複数の収集メモリと、
確率分布を反映するカウント値分布データを予め記憶する記憶部と、
前記算出された入射位置を中心にして前記カウント値分布データを当てはめて、入射位置に対応する収集メモリとその周囲の収集メモリに該当のカウント値を加算する加算手段と、
を備えること、
を特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
前記カウント値分布データは、前記光電子増倍管の配置及び大きさ、検出したガンマ線のエネルギー分布、前記ガンマ線の入射分布、前記光電子増倍管の環境変化、分布の拡がりサイズ、又は分布の縁の少なくとも何れかを反映すること、
を特徴とする請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記カウント値分布データは、直線性補正データ及び均一性補正データを反映すること、
を特徴とする請求項1記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記検出部が検出するガンマ線をリストデータとして収集しておき、前記入射位置算出手段と前記加算手段は、当該リストデータに対して入射位置算出及びカウント値加算を行うこと、
を特徴とする請求項1記載の核医学診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−333425(P2007−333425A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162442(P2006−162442)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】