説明

核医学診断装置

【課題】データの数え落としの減少により感度向上を図ることができる核医学診断装置を提供する。
【解決手段】検出器ユニット2のFPGA31は第1データソート部51と第1散乱線処理部53を有しており、検出器ユニット2内からのパケットデータを第1データソート部51で検出時刻順に並べ替え、第1散乱線処理部53において散乱線処理をする。また、複数の検出器ユニット2をブロック化し、パケットデータを、データ収集ユニット3に集める。データ収集ユニット3は第2データソート部57と第2散乱線処理部59を有しており、複数の検出器ユニット2のFPGA31からのパケットデータを第2データソート部57で検出時刻順に並べ替え、第2散乱線処理部59において散乱線処理をする。第2散乱線処理部59を出たパケットデータはデータ処理装置12へ送信され、そこで同時計数処理がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核医学診断装置に係り、特に、放射線検出器を用いた核医学診断装置の一種である陽電子放出型断層撮影(Positron Emission Computed Tomography)装置(以下、PET装置と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
PET検査とは、陽電子放出核種(例えば11C、13N、15O、18F等)を含んで、検査対象となる患部(病巣)で代謝される性質を付与したPET用の放射性薬剤(以下、PET用薬剤という)を被検体に投与し、所定時間後、PET用薬剤が被検体内のどの部位に集積しているか(どの部位で多く消費されているか)を、患部に集積したPET用薬剤に起因して放出されるγ線を検出することにより特定するものである。PET用薬剤から放出された陽電子は、付近の電子と結合して陽電子消滅し、その際、一対のγ線を放出する。これら一対のγ線(以下、γ線対と記載する)は、互いにほぼ正反対の方向に放射されるので、そのγ線の検出信号を基に、そのγ線の発生源位置(患部位置)を通る直線を特定することができる。
【0003】
PET検査では、こうして患部に集積したPET用薬剤に起因して体内から放出されるγ線対を多数検出し、そのデータをもとにPET用薬剤を多く消費する箇所(患部位置)を含む被検体の断層像(以下、PET像という)を作成する。このようなPET検査を行なうPET検査装置としては、例えば特許文献1に記載の核医学診断装置等、既に多数のものが提唱されている。
【0004】
通常、PET装置は、γ線を検出する放射線検出器を複数備えており、どの放射線検出器がγ線を検出したかを割り出して患部を含むPET画像を作成する。医者がそのPET画像を見て患部の位置を特定する。γ線は、放射線検出器に入射してもそのまま透過してしまうこともあるが、この場合を除き、放射線検出器に入射して減衰する。γ線が減衰した放射線検出器は、そのγ線の減衰エネルギに相当する検出信号(電荷)を出力する。また、検出された(減衰した)γ線は、全減衰する場合を除き、その放射線検出器内で散乱する。散乱したγ線(以下、散乱γ線と記載する)は、進行方向を変え、異なる入射角で他の放射線検出器に入射する。勿論、散乱γ線は、その後減衰せずに入射した各放射線検出器を透過する場合もあるし、他の放射線検出器にて全減衰、或いは再び散乱し検出されることもある。つまり、放射線検出器により検出されるγ線には、散乱前の(放射線検出器により散乱していない状態の)γ線(以下、非散乱γ線と記載する)と散乱γ線とが混在することになる。またガンマ線は患者の体内においても散乱(以下、体内散乱γ線と記載する)を起こし、進行方向を変え、エネルギが減衰した状態で放射線検出器へ到達する場合がある。
【0005】
ここで前記のように、体内散乱γ線は、発生時と進行方向が異なるため、体内散乱γ線のベクトルの延長上には、そのγ線の発生源は存在しない。即ち、体内散乱γ線の検出信号をもとにしたPET画像のデータは、誤った情報となりノイズの原因となる。そこで、従来、体内散乱γ線が、散乱時にエネルギ減衰することを考慮し、設定したエネルギ閾値以下のエネルギのγ線を体内散乱γ線と判定して除去するのが一般的であった。ところがこの場合、患者の体内で散乱していないγ線であっても散乱γ線は、そのエネルギが前記エネルギ閾値を超えないために、PET画像のデータ収集効率が低下する場合があった。
【0006】
これに対し、前記特許文献1に記載の核医学診断装置においては、複数のγ線が検出された場合、これらγ線の検出信号を同時計数し、ほぼ同時に検出されたγ線の発生源を同一と見なし、算出したそれらのトータルエネルギが設定範囲内の値かどうかを見て、それらの中に非散乱γ線が含まれているかを判定している。そして、非散乱γ線を含むと判定した場合、検出したγ線の中から、統計的に非散乱γ線である確率が高いものを1つ選定することにより、γ線の初期入射位置を選定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、3DのPET画像を生成するPET装置では、コリメータを用いないため半導体放射線検出器へのγ線の入力レートが高くなり、散乱γ線の判定をより高速で行なう必要がある。また、この従来技術においては、511keVという散乱の生じやすい高エネルギのγ線に対して、撮像時間を短くするため、1つの入射γ線による複数の散乱γ線の検出を特定して、PET画像の生成に用いる場合の、高速処理の問題を解決していない。
特に、γ線の散乱時の検出エネルギは小さく、その場合のγ線検出信号の波形における立ち上がりは遅くなる。γ線検出信号から検出時刻を測定する方法の一つであるリーディングエッジトリガ手法を用いると、エネルギの小さい検出信号(イベント)は、次のγ線検出信号(イベント)と、検出タイミングが重なってしまう。例え、エネルギによる検出時刻の誤差が生じにくい回路を用いたとしても、低エネルギでは検出時刻の時間分解能が劣化する。
また、化合物半導体をγ線検出器に用いる場合には、電子・正孔の移動度の差によるγ線検出信号の波形変動より検出時刻の時間分解能が劣化し、1つの入射γ線に対する散乱による複数のγ線検出信号であることを判定するための時間窓を広げる必要が出てくる。そうすると散乱線処理の候補となるイベントの数が増加し、散乱線処理を効率的に行なう技術が求められるようになる。
【0008】
本発明の目的は、同一のγ線による複数のγ線検出信号に対して、散乱γ線を効率良く特定し、精度の高いPET画像を作成することができる核医学診断装置を提供することにある。
【特許文献1】特開2000−321357号公報
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するため、本発明は、散乱線処理部は、複数の検出γ線情報のうち、基準となる検出γ線情報と他の複数の検出γ線情報のそれぞれについて、基準となる検出γ線情報に含まれる検出器IDにもとづき、予め設定された第1の空間範囲に含まれる同一の前記γ線に起因する検出γ線情報であるか否かの第1の散乱線判定を行ない、第1の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合し、第1の散乱線判定において同一のγ線に起因すると判定された検出γ線情報以外にもとづき、第1の空間範囲より広く予め設定された第2の空間範囲に含まれるγ線検出器からの同一のγ線に起因する検出γ線情報であるか否かの第2の散乱線判定を行ない、第2の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、同一のγ線による複数のγ線検出信号に対して、散乱γ線を効率良く特定し、精度の高いPET画像を作成することができる核医学診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
《第1の実施形態》
次に、本発明の好適な一実施形態である核医学診断装置について、適宜図面を参照しながら説明する。
以下において、本実施形態の核医学診断装置、アナログASIC等といった各素子の基板上への配置(レイアウト)、基板のユニット化等の本実施形態に適用される要素の説明、散乱線処理の方法の説明を行なう。
なお、アナログASICは、アナログ信号を処理する、特定用途向けICであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)を意味し、LSI(Large Scale Integrated Circuit)の一種である。
【0012】
(核医学診断装置)
まず、最初に、本実施形態の核医学診断装置を説明する。
図1に示すように、核医学診断装置としてのPET装置1は、カメラ11、データ処理装置12、操作コンソール13等を含んで構成されている。被検体P(図2参照)は、ベッド14に載せられてカメラ11で撮影されるようになっている。
操作コンソール13は、PET装置1の断層画像やPET装置1の状態チェック結果等を表示する表示装置13a、キーボードやマウス等の入力操作部13bを有している。
【0013】
図2に示すように、カメラ11の内部には、被検体Pから放出されるγ線を検出するため、半導体放射線検出器(γ線検出器、以下、単に検出器と称する)21(図4、図5参照)を多数備えた結合基板(ユニット基板)20(詳細は図6参照)を複数収納した検出器ユニット2が、円周方向に多数配置されており、被検体Pの体内から放出されるγ線を検出器21で検出する。
検出器ユニット2は、γ線の検出エネルギ、検出時刻を計測するための集積回路(ASIC)を前記結合基板20上に有しており、検出したγ線の検出エネルギや検出時刻を測定したり、γ線を検出した検出器21のアドレスを検知したりして、それらを検出γ線情報としてデータ処理装置12に出力するようになっている。
【0014】
検出器ユニット2は、検出したγ線の検出エネルギのデータ(検出エネルギ値情報)、検出時刻のデータ(検出時刻情報)および前記した検出器21のアドレスに対応する検出器ID(検出器アドレス情報)を含むパケットデータ(検出γ線情報)を、データ収集ユニット3(3A、3B、3C、3D)経由でデータ処理装置12に出力する。データ収集ユニット3は、検出器ユニット2からのパケットデータの一部を隣接するデータ収集ユニット3に転送する。
データ収集ユニット3は、詳細は後記するが、複数の検出器ユニット2から出力されるパケットデータを、検出時刻情報にもとづいて順に並べるソート処理機能と、検出器ユニット2間における後記する散乱線処理機能を有している。
【0015】
図2に示すようにデータ処理装置12は、図示しない記憶装置、同時計測装置12Aおよび断層像情報作成装置12Bを有する。データ処理装置12は、パケットデータを取り込む。同時計測装置12Aは、前記パケットデータ、特に検出時刻のデータおよび検出器IDにもとづいて同時計測判定を行なう。そして、511keVのγ線の検出位置を特定し記憶装置に記憶する。断層像情報作成装置12Bは、この特定した位置にもとづいて機能画像を作成して、表示装置13aに表示する。
【0016】
ちなみに、被検体Pは、放射性薬剤、例えば、半減期が110分の18Fを含んだフルオロ・ディオキシ・グルコース(FDG)を投与され、被検体Pの体内からは、FDGから放出された陽電子の消滅時に511keVのγ線(消滅γ線)の対が、互いにほぼ180°の方向に放出される。
このとき、カメラ11の各検出器21はベッド14の周囲を取り囲んでいる。検出器ユニット2からデータ収集ユニット3経由でデータ処理装置12へは、検出器21がγ線と相互作用を起こした際のγ線検出信号にもとづいて得られた検出エネルギ値情報および検出時刻情報、および検出器IDが、検出器ユニット2に含まれる検出器21ごとに出力されるようになっている。
【0017】
検出器ユニット2は、図3の(a)に示すようにカメラ11の開口部11bに周方向に60〜70個着脱自在に配置された構成をしており、保守点検が容易なようにされている。検出器ユニット2は、ユニット支持部材2Aを介して装着される。また、図3の(b)に示すように、検出器ユニット2は、ユニット支持部材2Aに片端支持されてカメラ11に装着されている。ユニット支持部材2Aは、中空の円盤状(ドーナツ状)をしており、検出器ユニット2を装着する開口部11bをカメラ11の周方向に多数(装着する検出器ユニット2の数だけ)備えている。このように、検出器ユニット2を片端支持するため、検出器ユニット2の筐体30の体軸方向手前側には、ストッパとなるフランジ部分が設けてある。
【0018】
ちなみに、検出器ユニット2を周方向に極力密に並べようとすると、周方向内側のフランジ部分は邪魔になる。そこで、この邪魔になる部分のフランジ部分を筐体30からなくし、周方向外側のフランジ部分を残すようにしても良い。ユニット支持部材2Aを体軸方向にもう1つ設置し、検出器ユニット2の両端部を両方のユニット支持部材2Aで保持しても良い。
【0019】
なお、カメラ11に検出器ユニット2を装着する場合は、蓋11aを取り外して、ユニット支持部材2Aを露出させ、開口部11bから検出器ユニット2をフランジ部分が突き当たるまで差し込んで装着するようになっている。差し込んで装着することにより、カメラ11の図示しない電源および信号配線のそれぞれのコネクタと検出器ユニット2の対応するコネクタとの接続が行われ、カメラ11と検出器ユニット2との信号および電源の接続がなされる。
検出器21、結合基板20および検出器ユニット2の構成は、後に詳しく説明する。
以下、本実施形態の特徴部分の説明を行なう。
【0020】
(半導体放射線検出器)
まず、本実施形態に適用される検出器21を図4、図5を参照しながら説明する。図4は、検出器21の積層構造を概念的に示した図であり、図5の(a)は検出器の構成部品である検出素子と電極を模式的に示した斜視図であり、図5の(b)はそれを積層して一体化した後の斜視図である。
図4に示すように、検出器21は、板状の半導体材料Sからなる半導体放射線検出素子(以下、検出素子という)211の両面を薄板状(膜状)の電極(アノードA、カソードC)で覆ったものを、例えば、5層に重ねた積層構造をしている。
このうち、半導体材料Sは、前記したCdTe(テルル化カドミウム)、CdZnTe(テルル化亜鉛カドミウム)、HgI(ヨウ化水銀)、TlBr(臭化タリウム)、GaAs(ガリウム砒素)等のいずれかの単結晶で構成されている。
また、電極A(アノードA)、電極C(カソードC)は、Pt(白金)、Au(金)、In(インジウム)等のいずれかの材料が用いられる。
なお、以下の説明では、半導体材料SはCdTeの単結晶をスライスしたものであるとする。また、検出する放射線は、PET装置1で用いる511keVのγ線であるとする。
【0021】
図4に示す半導体材料S(検出素子211)の1層の厚さは、例えば、0.5〜1.5mmである。アノードAおよびカソードCの厚みはそれぞれ約20μmである。
この図4に示される積層構造の検出器21は、アノードA同士、カソードC同士が共通で接続されていることから、各層それぞれが他の層とは独立に放射線を検出する構成ではない。換言すると、γ線と半導体材料Sとが相互作用を起こした場合、最上層で起こしたのか、最下層で起こしたのか等を判別しない構成である。もちろん、各層ごとに検出するような構成とすることもできる。
【0022】
ちなみに、このように5層構造としているのは、半導体材料Sの厚さを薄くした方が、γ線検出信号の立ち上がり速度も、波高値も高くなるので検出器として都合が良いが、厚さが薄いと半導体材料Sと相互作用をせずに素通りしてしまうγ線が多くなることから、電荷の収集効率を高めつつ、素通りをしてしまうγ線の量を少なくして、半導体材料Sとγ線との相互作用を増やすため、つまり、カウント数を増やすためである。
このような積層構造の検出器21の構成とすることで、より良好なγ線検出信号の立ち上がりとより正確な波高値が得られると共に、半導体材料Sと相互作用を起こすγ線のカウント数を増やすこと、つまり、感度を上昇させることを両立できる。
【0023】
電極(アノードA、カソードC)の面積は、4〜120mmが好ましい。面積の増加は検出器21の容量(浮遊容量)を増加させ、この浮遊容量の増加により、ノイズが増加するため、電極の面積は極力小さいほうが良い。また、γ線検出時に発生した電荷は、浮遊容量に一部蓄積されるので、浮遊容量が増加するとアナログASIC24(図7参照)の前置増幅器24aで蓄積される電荷量、ひいては出力電圧(波高値)が減少する問題が発生する。検出器21としてCdTeを使用する場合、その比誘電率は11であり、検出器21の面積を120mm、厚さを1mmとするとその容量は12pFとなり回路のコネクタ等の浮遊容量が数pFであることを考えると無視できなくなる。従って、電極の面積は、120mm以下が好ましい。
また、電極の面積の下限値は、PET装置1の位置分解能から決定される。
【0024】
なお、以上の説明では、γ線と相互作用を起こす半導体材料SをCdTeとしたが、半導体材料SがCdZnTe、TlBrやGaAs等であっても良いのはいうまでもない。
【0025】
(結合基板;検出器基板とASIC基板)
次に、検出器ユニット2内に設置される結合基板(ユニット基板)20の詳細構造を、図6を用いて説明する。図6の(a)は結合基板を示した正面図であり、(b)は同(a)の側面図である。
結合基板20は、両面に複数の検出器21が設置された検出器基板20Aと、両面にコンデンサ22、抵抗23、アナログASIC24、アナログ/デジタル変換器(以下、ADCという)25が設置され、片面にデジタルASIC26が設置されたASIC基板20Bと、をコネクタC1で接続したものである。
【0026】
(検出器基板)
図6の(a)に示すように、検出器基板20Aには、基板本体20aの片面上に、被検体Pの体軸方向に対応する図6の(a)における横方向一列に、例えば、16個の検出器21が配列され、さらに、被検体Pの体軸に対して径方向に対応する図6の(a)における縦方向に4列配列され、つまり、横16個×縦4個の合計64個の検出器21が格子状に配設されている。また、図6の(b)に示すように、検出器基板20Aの他の面にも同様に検出器21が設置され、1つの検出器基板20Aには、両面合計で128個の検出器21が配設されている。
ここで、検出器21の数が多くなるほどγ線を検出し易くなり、かつ、γ線検出の際の位置精度を高めることができるので、検出器21は、極力密に検出器基板20A上に配設される。
【0027】
ちなみに、図6の(a)において、ベッド14上の被検体Pから放出されたγ線が、図面の下方から上方(矢印32の方向、すなわち、カメラ11の半径方向)に進行する場合、検出器基板20Aにおける左右方向の検出器21の配置を密にした方が、素通りするγ線の数(検出器21同士の隙間を通過するγ線の数)を減らすことができるので好ましい。これにより、γ線の検出効率を高めることになり、得られる画像の体軸方向の空間分解能を高めることができる。
【0028】
なお、本実施形態の検出器基板20Aは、図6の(b)に示すように、検出器21を基板本体20aの両面に設置しているので、片面にしか設置しない場合よりも、基板本体20aを両面に搭載することにより共有化できる。このため、基板本体20aの数を半減することができ、被検体Pの体軸の周方向により密に検出器21を配置することができる。併せて、前記のように、検出器基板20A(結合基板20)の枚数を半分に減らせる。
前記説明では、横16個の検出器21は、カメラ11において、被検体の体軸方向に配置される構造としたが、それに限定されない。例えば、横16個の検出器21を、カメラ11において被検体Pの体軸に対して周方向に配置する構造としても良い。
また、検出器21は、図5の(b)に示す電極A、Cの面を基板本体20aの面に平行にして配設しても良いし、また、電極A、Cの面を基板本体20aの面に垂直にして配設しても良い。
【0029】
各検出器21のアノードAとカソードCの間には、電荷収集のために、例えば、高圧電源27(図8参照)により500Vの電位差(電圧)が印加されている。この電圧は、ASIC基板20B側からコネクタC1(図6の(a)参照)を介して検出器基板20A側へ供給される。また、各検出器21がγ線を検出したときに出力するγ線検出信号は、コネクタC1を介してASIC基板20B側へ供給される。このため、検出器基板20Aの基板本体20a内には、コネクタC1と各検出器21を接続する図示しない基板内配線(検出器印加電圧用、信号授受用)が設けられている。この基板内配線は多層構造をしている。検出器基板20Aは、各検出器21にそれぞれ接続される基板内配線と接続しているコネクタC1を有し、後記するASIC基板20BのコネクタC1と接続する構造である。
【0030】
(ASIC基板)
次に、図6を参照しながらASICを搭載したASIC基板20Bを説明する。図6の(a)に示すように、ASIC基板20Bは、基板本体20bの両面に2個ずつアナログASIC24が設置され、片面に1個のデジタルASIC26が設置されている。つまり、1つのASIC基板20Bは合計4個のアナログASIC24と1個のデジタルASIC26を有する。
また、ASIC基板20Bは、基板本体20bの片面に16個ずつ計32個のADC25を有する。また、1つの基板本体20bの両面には、コンデンサ22および抵抗23が検出器21の数に対応した数だけ設置されている。また、これらの、コンデンサ22、抵抗23、アナログASIC24、ADC25、デジタルASIC26を電気的に接続するため、ASIC基板20B(基板本体20b)内には、前記した検出器基板20Aと同様に図示しない基板内配線が設けられている。この基板内配線も積層構造をしている。
【0031】
これらの各回路素子22、23、24、25、26の配列および基板内配線は、検出器基板20Aから供給された信号が、コンデンサ22、抵抗23、アナログASIC24、ADC25、デジタルASIC26の順に供給されるようになっている。
なお、ASIC基板20Bは、各コンデンサ22に接続される基板内配線にそれぞれ接続されて検出器基板20Aとの電気的接続を行なうコネクタC1と、データ処理装置12側(後記するユニット統合FPGA側)との電気的接続を行なう基板コネクタC2とを有している。
【0032】
(検出器基板とASIC基板の接続構造)
検出器基板20AとASIC基板20Bとは、図6の(b)に示すように、端部近傍に重なり合うオーバラップ部分を設けて、これらのオーバラップ部分に存在する互いのコネクタC1同士を接続する。この接続は、締結用のネジ等により着脱自在(分離・接続自在)に行われる。
なお、このような接続を行なうのは、検出器基板20AとASIC基板20Bとが接続(結合)された結合基板20を、水平方向に片端支持(片持ち支持)や両端支持すると、結合基板20の中央部(接続部分)には、該結合基板20を下方に撓ませたり曲げたりする力が作用するので、接続部分が端面同士を突き合わせたものである場合は、接続部分が撓み易かったり折れ曲がり易かったりするので、接続部分の強度を増すためである。
【0033】
コネクタC1としては、電気的な接続を良好にするため、例えば、スパイラルコンタクト(登録商標)が使用される。スパイラルコンタクト(登録商標)は、螺旋状の接触子にボール状の接続端子が広い面積で接触して良好な電気的な接続が図られるという特性を有する。
なお、ボール状の接続端子がASIC基板20B側に設けられる場合は、螺旋状の接触子は検出器基板20A側に設けられ、ボール状の接続端子が検出器基板20A側に設けられる場合は、螺旋状の接触子はASIC基板20B側に設けられる。
このような、検出器基板20AとASIC基板20Bとの電気的な接続構造を用いることで、信号を検出器基板20AからASIC基板20Bへと、低損失で伝送することができる。損失が少なくなると、例えば、検出器21としてのエネルギ分解能が向上する。
【0034】
前記の構成は、ASIC基板20Bに1つの検出器基板20Aを接続しているが、検出器基板を複数に分割しても良い。例えば、横方向に8個、縦方向に4個の検出器21を1つの基板実装とし、2枚の検出器基板をASIC基板に接続する構成でも良い。
また、検出器基盤20AとASIC基板20Bとを、1枚の通しの基板本体で構成しても良い。
【0035】
次に、図7、図8を参照しながらASIC基板上の各回路素子の構成および機能について説明する。
図7はアナログASICおよびデジタルASICそれぞれの概略構成、およびアナログASICとデジタルASICの接続関係を示した検出器ユニットのブロック図である。
(アナログASIC)
図8はアナログASICの機能構成を模式的に示したブロック図である。
図8に示すように、1個のアナログASIC24は、1つの電荷有感型前置増幅器(以下、前置増幅器と称する)24aと、それに接続するファースト系24Aおよびスロー系24Bと、を有するアナログ信号処理回路33を、例えば、32組備えている。1個のアナログASIC24は32組のアナログ信号処理回路33をLSI化したものである。
【0036】
アナログ信号処理回路33は検出器21ごとに設けられ、1つのアナログ信号処理回路33は1つの検出器21に接続される。ここで、ファースト系24Aは、前置増幅器24aから出力されるγ線検出信号にもとづいてγ線の検出時刻を特定するためのタイミング信号を出力するタイミングピックオフ回路24bを有している。タイミングピックオフ回路24bは、CFDやリーディングエッジトリガ等の手法を用いてタイミング信号を発生させる。また、スロー系24Bは、γ線検出信号にもとづいてγ線の検出エネルギ(波高値)を求めることを目的として、所定の時定数を有し、信号波形をガウス型に整形する波形整形回路24dを有し、波形整形回路24dにさらにピークホールド回路24eが接続されて設けられている。波形整形回路24dには、例えば、CR−RCフィルタ等が用いられる。
【0037】
ちなみに、スロー系24Bは、波高値を求めるためにはある程度の処理の時間を要することから「スロー」という名前が付いている。検出器21から出力されてコンデンサ22を通過した信号は、前置増幅器24aで増幅されγ線検出信号として出力され、さらに波形整形回路24dで増幅され、ピークホールド回路24eに入力される。ピークホールド回路24eは、後記するように波形整形されたγ線検出信号の最大値、つまり検出したγ線のエネルギ値に比例した波高値を保持する。
【0038】
なお、コンデンサ22および抵抗23をアナログASIC24の内部に設けることもできるが、適切なコンデンサ容量や適切な抵抗値を得るため、および、アナログASIC24の大きさを小さくする等の理由から、本実施形態では、コンデンサ22および抵抗23は、アナログASIC24の外に配置されている。
ちなみに、コンデンサ22および抵抗23は、外部に設けた方が、個々のコンデンサ容量や抵抗値のバラツキが少ないとされている。
【0039】
アナログASIC24のスロー系24Bの出力は、ADC25に供給されるようになっている(図8参照)。さらに、アナログASIC24のファースト系24Aの出力およびADC25の出力は、デジタルASIC26に供給されるようになっている。
ここで、各アナログASIC24とデジタルASIC26は、32チャンネルのファースト系24Aの信号を1つ1つ送信する32本の配線で接続されている(図7参照)。また、アナログASIC24と各ADC25との間、および各ADC25とデジタルASIC26との間は、検出器21の8チャンネル分のスロー系24Bの信号をそれぞれ纏めて送信する1本の配線でそれぞれ接続されている(図7参照)。
さらに、デジタルASIC26からは、8チャンネル分のアナログ信号処理回路33に対応して1個の対応付けられたADC25を制御する1本のADC制御信号線、および各アナログASIC24の1つのアナログ信号処理回路33のピークホールド回路24eを個別に制御するための8チャンネル分を1本に纏めたピークホールド制御信号線が出ており、ADC25およびアナログ信号処理回路33に接続されている。
なお、前記したピークホールド制御信号線は8チャンネル分を1本に纏めることなく、デジタルASIC26から各アナログ信号処理回路33に対して1本ずつ配線するようにしても良い。
【0040】
(デジタルASIC)
次に、図7を参照しながらデジタルASIC26について説明する。
デジタルASIC26は、図7に示すように、8個のタイミング検出部35および1個の検出器制御部36を含む検出信号処理部34を16組と、1個のデータ転送部37とを有しており、これらをLSI化したものである。
【0041】
PET装置1に設けられた全てのデジタルASIC26は、図示されていない、例えば、500MHzのクロック発生回路(水晶発振器)からのクロック信号を受け、同期して動作している。各デジタルASIC26に入力されたクロック信号は、全ての検出信号処理部34内のそれぞれのタイミング検出部35に入力される。
タイミング検出部35は、検出器21ごとに設けられ、該当するアナログ信号処理回路33のタイミングピックオフ回路24bからタイミング信号が入力される。タイミング検出部35はタイミング信号が入力された時のクロック信号にもとづいてγ線の検出時刻を決定する。タイミング信号は、アナログASIC24のファースト系24Aの信号にもとづくものであるので、真の検出時刻に近い時刻を検出時刻(検出時刻情報)とすることができる。
【0042】
検出器制御部36は、アドレス演算機能と、ADC・ピークホールド制御機能と、データ補正機能と、パケットデータ生成機能を有している。
(アドレス演算機能)
アドレス演算機能は、タイミング検出部35からγ線を検出したタイミング信号に対応する検出時刻情報を受け、その検出器IDを特定する。すなわち、検出器制御部36は、接続される各タイミング検出部35に対する検出器IDを記憶しており、あるタイミング検出部35から検出時刻情報が入力されたとき、そのタイミング検出部35に対応する検出器IDを特定することによってアドレス演算機能が果たされる。これは、タイミング検出部35が検出器21ごとに設けられていて、検出器制御部36に接続されていることにより可能となる。
【0043】
(ADC・ピークホールド制御機能)
さらに、検出器制御部36は、時刻情報を入力された後、前記特定された検出器IDを含む8チャンネル分のアナログ信号処理回路33にピークホールド制御信号を出力し、また、検出器IDとADC制御信号をADC25に出力する。
【0044】
ピークホールド制御信号を受けたアナログ信号処理回路33のピークホールド回路24eは、波形整形回路24dから入力される信号に対してピークホールド処理をする。そして、所定時間後に検出器制御部36からリセット信号を受け、ピークホールド処理を解除する。ADC25は、検出器制御部36から入力された検出器IDに対応するアナログ信号処理回路33のピークホールド回路24eから出力された波高値(電圧値)を、デジタル信号に変換して検出器制御部36に出力する。
【0045】
(データ補正機能)
検出器制御部36は、タイミング検出部35から入力された検出時刻情報を、ADC25を介して取得した波高値にもとづいて、例えば、特開2005−249806号公報に記載されている方法で補正する。また、ADC25から入力された波高値に対して、予め収集された校正データを基に、検出器21、アナログASIC24のゲイン、オフセット補正を行なう。
【0046】
(パケットデータ生成機能)
検出器制御部36は、前記補正された波高値を検出エネルギ値情報とし、検出エネルギ値情報に補正された検出時刻情報および検出器IDを付加してデジタル情報であるパケットデータ(検出γ線情報、検出放射線情報)を生成し、データ転送部37に出力する。
【0047】
(データ転送部)
データ転送部37は、複数の入力系統をひとつの出力系統に纏める入出力統合機能と、入力されたパケットデータを一時的に記憶し、後段の構成要素の処理速度に応じて出力するバッファメモリ機能とを有している。データ転送部37は、各検出器制御部36からパケットデータを入力されると、必要に応じてバッファリングし、各検出信号処理部34から出力されたパケットデータを、例えば、定期的に12枚の結合基板20を収めている検出器ユニット2(図9参照)の筐体30の外側に1個設けられているユニット統合FPGA(Field Programmable Gate Array、以下、FPGAと称する)31に送信する。
【0048】
(ユニット統合FPGA)
FPGA31は、検出器ユニット2内に収容されている全結合基板20のデジタルASICからのパケットデータをいったん受け入れるバッファ機能と、検出時刻情報にもとづいてパケットデータを時刻順に並べるソート処理機能と、検出器ユニット2内に含まれる検出器21間で検出された散乱γ線の検出に対して散乱線処理を行なう機能と、を有している。
【0049】
なお、このソート処理機能と散乱線処理機能の詳細な説明については、FPGA31とデータ収集ユニット3のソート処理機能と散乱線処理機能の説明のところで後記する。FPGA31、データ収集ユニット3のソート処理機能は、処理能力や回路規模が異なるが、これらの構成要素では、複数のパケットデータをソート処理する機能部を備えており、基本的に同一の原理に従っている。このため、FPGA31、データ収集ユニット3は、同一の基本的概念にもとづく回路構成をとることができる。これらの構成要素におけるソート処理の機能部の具体例については、FPGA31の構成を後記する際に、例示的に説明する。
FPGA31は、パケットデータをコネクタ38に接続された情報伝送用配線を介してデータ収集ユニット3に送信する。データ収集ユニット3(図2参照)は、例えば、周方向に4つ配され、周方向に4群にブロック化された検出器ユニット2からのパケットデータを纏めて1つのデータ収集ユニット3に集めて、ソート処理して散乱線処理をし、その後、データ処理装置12へ送信する。
【0050】
(検出器ユニット;結合基板の収納によるユニット化)
次に、前記した結合基板20の筐体30への収納によるユニット化を説明する。
図9に示すように、検出器ユニット2は、12枚の結合基板20、この12枚の結合基板20に電荷収集用の電圧を供給する高圧電源装置PS、FPGA31、外部との信号の授受を行なう信号用のコネクタ、外部から電源の供給を受けるための電源用のコネクタ等を収納したり保持したりする筐体30(図10参照)等を備える。
【0051】
図9および図10に示すように、結合基板20は、奥行方向(被検体Pの体軸方向)には重なり合わないように3列、カメラ11の周方向には4枚並んで筐体30内に収められている。つまり、1個の筐体30には、結合基板20が12枚収納されている。このように収納するため、奥行方向に伸びる1条のガイド溝G1を周方向に適宜離間して4列備えるガイド部材39が、筐体30の上端部に取り付けられている。ガイド部材39は、各ガイド溝G1の部分に、天板30aの各コネクタC3と対向する位置にそれぞれ開口40を有する。
【0052】
さらに、奥行方向に伸びる1条のガイド溝G2を有する4つのガイド部材41が、周方向に適宜離間して筐体30の底板30bの上面に取り付けられている(図10参照)。ガイド溝G1、G2は、結合基板20を3枚収納する分の奥行を持っている。結合基板20のASIC基板20B側端部がガイド溝G1に、結合基板20の検出器基板20A側端部がガイド溝G2に、それぞれ挿入される。3枚の結合基板20がガイド溝G1、G2の奥行方向に並んで保持されるようになっている。
【0053】
ちなみに、結合基板20は、ASIC基板20B側端部と検出器基板20A側端部がガイド溝G1、G2内で摺動するようになっているので、指等で結合基板20を、ガイド溝G1、G2内を滑らして所定の箇所に容易に位置させることができる。このとき、各基板コネクタC2はそれぞれ開口40の部分に位置している。所定枚数の結合基板20が筐体30内に配置された後、天板30aが筐体30の上端にネジ等で着脱自在に取り付けられる。天板30aに設けられた各コネクタC3は、該当する開口40内に挿入されて該当する基板コネクタC2に接続される。
【0054】
なお、筐体30の上部、下部とは、筐体30をカメラ11から取り出した場合のことであり、図2に示されるように、筐体30がカメラ11に備えられた場合には、上下が反転したり、上下が90°回転して左右になったり、斜めになったりする。
【0055】
図10に示すように、筐体30の天板30aには、前記した4列のガイド溝G1が備えられるほかに、FPGA31およびコネクタ38が備えられる。コネクタ38はFPGA31に接続される。FPGA31は、現場でプログラムを組むことができる。この点、プログラムを組むことができないASICとは異なる。従って、本実施形態のように、FPGA31では、例えば、収納する結合基板20の数や種類が変わった場合でも、結合基板枚数の変化にも適切に対応することができる。
【0056】
なお、本実施形態で用いているCdTeを半導体材料Sとする検出器21は、光に反応して電荷を発生することから、筐体30はアルミニウムやアルミニウム合金といった遮光性を有する材料から構成されると共に、光が侵入する隙間をなくすようにしてある。即ち、筐体30は遮光性を有する構成をしている。ちなみに、遮光性が他の手段により確保される場合は、筐体30はそれ自体が遮光性を有する必要はなく、検出器21を着脱自在に保持する枠(枠体)で良い。例えば、筐体30を枠構造とし、遮光用の面材等は不用とすることができる。
【0057】
また、検出ユニット2内の全結合基板20のデータ転送部37から出力されたパケットデータ(結合基板20の全検出器21に対する全パケットデータ)が、検出ユニット2に設けられたFPGA31からデータ処理装置12に送られる。
【0058】
(電源)
次に、電荷収集用の電圧を供給する高圧電源装置PSについて説明をする。図9に示すように、検出器ユニット2は、FPGA31の裏面側で筐体30内に、導体金属材料で構成された隔壁30cによって形成される空間に、各検出器21に電荷収集用の電圧を供給する高圧電源装置PSを設置している。この高圧電源装置PSは、低圧の電源を供給され、図示しない電圧を昇圧するDC−DCコンバータにより電圧を500Vに昇圧して各検出器21に供給するようになっている。ちなみに、検出器21は、検出器基板20A1枚について、片面で64個、両面で128個備えられている。そして、この結合基板20が1つの筐体30には12枚収納される。よって、高圧電源装置PSからは、128×12=1536個の検出器21に電圧が供給される。
【0059】
本実施形態では、検出器ユニット2に内蔵する高圧電源装置PSが、天板30aに設けられた電源用のコネクタ42およびコネクタ38を介して電源配線により外部の低電圧(5〜15V)の直流電源に接続されている。高圧電源装置PSの高電圧側端子は、天板30aに設けられたコネクタ43を介して、天板30aに設けられた12個のコネクタC3に高圧電源配線44によりそれぞれ接続されている。図9では高圧電源配線44は1本のみが例示としてコネクタ43からコネクタC3に接続するように表示してあるが、実際にはコネクタ43から高圧電源配線44が各コネクタC3に配線されている。
高圧電源は、コネクタC3、各結合基板20の基板コネクタC2、基板本体20b内の図示しない高圧電源配線、コネクタC1および基板本体20a内の図示しない高圧電源配線を介して基板本体20aに設けられた各検出器21の電極Cにそれぞれ接続される。コネクタC1、C2は、検出器21の出力信号を伝えるコネクタ以外に、高圧電源配線用のコネクタを含んでいる。
【0060】
ちなみに、コネクタ38から高圧電源装置PSに供給された電圧は、高圧電源装置PS内の図示しないDC−DCコンバータにより500Vに昇圧され、昇圧後、筐体30の天板30a内を通って、結合基板20ごと、ASIC基板20B→検出器基板20A→各検出器21へと供給される。即ち、筐体30(天板30a)は、高圧電源装置PSから各結合基板20へ電圧を供給する図示しない電圧供給用の配線を備える。また、各結合基板20は、基板コネクタC2を介して高圧電源装置PSから供給された電圧を、各検出器21に供給する電圧供給用の配線を備える。
なお、天板30aを介してではなく、高圧電源装置PSを、直接、基板本体20aに設けた高圧電源配線にコネクタを介して接続しても良い。また、高圧電源用のコネクタは、検出器21の出力信号用のコネクタから分離して配置しても良い。
【0061】
《ソート処理機能と散乱線処理機能の説明》
次に、図11から図17を参照しながら、FPGA31およびデータ収集ユニット3におけるソート処理機能と散乱線処理機能について説明する。
図11は、検出器ユニットおよびデータ収集ユニットの概略構成を示す図である。検出器ユニット2の筐体30の外面に設けられたFPGA31は、図11に示すように、第1データソート部51、第1散乱線処理部53を備えている。また、データ収集ユニット3は、データ転送部55、第2データソート部(ユニット間検出データ出力部)57、第2散乱線処理部(ユニット間散乱線処理部)59を備えている。
そして、図2に示すように4群にブロック化された各検出器ユニット2のFPGA31から出力されたパケットデータは、ブロックごとにデータ収集ユニット3(3A、3B、3C、3D)のデータ転送部55に入力される。データ転送部55に入力されたパケットデータのうち、当該ブロック内で周方向に反時計回り端に位置する検出器ユニット2の、周方向に反時計回り側の半分の検出器21からのγ線検出信号にもとづくパケットデータを、周方向に反時計回りに隣接するデータ収集ユニット3の第2データソート部57へ出力する。例えば、データ収集ユニット3Aのデータ転送部55からデータ収集ユニット3Bの第2データソート部57へ出力する。
第1データソート部51、第1散乱線処理部53は、この順序に接続されている。また、データ転送部55、第2データソート部57、第2散乱線処理部59は、この順序に接続されている。
【0062】
第1散乱線処理部53は、後記するように、入力されたパケットデータについて散乱線処理を行い、一個のγ線に起因する複数のパケットデータを纏める機能を有する。散乱線処理の一例は、特開2003−255048号公報に記載されている。第1散乱線処理部53の出力は、このデータ収集ユニット3内の第2データソート部57に入力される。一個のγ線に起因する複数の散乱γ線は、同一の検出器ユニット2内の検出器21で検出されるとは限られず、隣接する検出器ユニット2内の検出器21でも検出される場合がある。このため、第1散乱線処理部53で散乱線処理を行った後、データ収集ユニット3内の第2データソート部57へ転送し、検出器ユニット2間での散乱線処理を行なうのである。また、データ収集ユニット3に入力されるブロック化された検出器ユニット2だけで、検出器ユニット2間での散乱線処理を行なうと、ブロックの境界の検出器ユニット2同士の間の散乱線処理がされないので、それを補うため、隣接するデータ収集ユニット3間で、ブロックの境界の検出器ユニット2のパケットデータの送信を行い、一方のデータ収集ユニット3でブロックの境界の検出器ユニット2間の散乱線処理を行なう。
【0063】
データ収集ユニット3の第2データソート部57は、ブロック化された検出器ユニット2の第1散乱線処理部53から送信され、データ転送部55を介して入力されるパケットデータ、および周方向に隣接した一方側のデータ収集ユニット3のデータ転送部55から送信される、隣のデータ収集ユニット3に属する前記一方側の境界の検出器ユニット2の境界寄りの半分のパケットデータを合わせた状態でそれらのパケットデータを検出時刻順に並べて第2散乱線処理部59に出力する。
なお、データ転送部55は、自身の属するブロックの検出器ユニット2から送信されたパケットデータのうち、周方向に隣接した他方側のデータ収集ユニット3のデータ転送部55に、自身のデータ収集ユニット3に属する前記他方側の境界の検出器ユニット2の境界寄りの半分のパケットデータを送信する。
【0064】
ここで、第2データソート部57へ入力される11本のパケットデータ列(図11参照)は、すでに検出時刻順に並んでいる。このため、パケットデータ列の先頭から検出時刻の早いものを選び、1列に併合するだけで、それらのパケットデータを検出時刻順に並べることができる。このため、簡単なマージソート回路を用い、回路規模を縮小し、かつ高速で処理することができる。
【0065】
第2散乱線処理部59は、第1散乱線処理部53と同様の構成を有し、同様の原理で動作する。第2散乱線処理部59は、入力されたパケットデータを用いて散乱線処理を行い、一個のγ線に起因する複数のパケットデータのうち最初にγ線が入射された検出器21のγ線検出信号にもとづいたパケットデータを把握する機能を有する。第2散乱線処理部59の出力は、データ処理装置12へ出力される。
【0066】
(ソート処理機能の説明)
次に、図12を参照しながら第1データソート部の詳細な構成とパケットデータを検出時刻順にソートする方法を説明する。図12は第1データソート部の詳細な構成ブロック図である。
複数のデジタルASIC26からパケットデータが第1データソート部51に入力される。第1データソート部51は、図12では、4つの切替スイッチ60、61、4つのデータバッファ65が示されているが、実際には12個の切替スイッチ60、61、12個のデータバッファ65および1つのユニットソート回路66を備えている。
なお、本実施形態では、デジタルASIC26が検出器ユニット2内に12個ある場合について説明したが(図7参照)、デジタルASIC26の個数は12個以外にしても良い。この場合には、切替スイッチ60、61およびデータバッファ65の各個数は、いずれも、デジタルASIC26の個数と同じにする。
【0067】
各データバッファ65は、2つのバッファ、すなわち、第1バッファ65aおよび第2バッファ65bを含んでいる。
【0068】
各切替スイッチ60は、それぞれ、1つのデータバッファ65の第1バッファ65aおよび第2バッファ65bの一方の入力端にそれぞれ接続される。各切替スイッチ61は、それぞれ、1つのデータバッファ65の第1バッファ65aおよび第2バッファ65bの出力端に接続される。1つのデジタルASIC26は、該当する切替スイッチ60の切替操作によって1つのデータバッファ65の第1バッファ65aおよび第2バッファ65bの一方に接続される。ユニットソート回路66は、該当する切替スイッチ61の切替操作によって1つのデータバッファ65の第1バッファ65aおよび第2バッファ65bの一方に接続される。ユニットソート回路66の出力側は、第1散乱処理部53に接続される。
【0069】
第1データソート部51の機能を、以下に具体的に説明する。データバッファ65は、パケットデータを入力順に格納する機能と、格納したパケットデータを入力順に出力する機能と、格納したパケットデータを一括して消去する機能とを有する緩衝記憶装置である。
【0070】
切替スイッチ60は、タイムフレームごとに、次の(a1)、(a2)の切替え操作を反復し、デジタルASIC26に接続されるバッファを切替える。
(a1)切替スイッチ60は、あるタイムフレームでは、デジタルASIC26と第1バッファ65aを接続する。このとき、そのデジタルASIC26は第2バッファ65bに接続されていない。
(a2)切替スイッチ60は、次のタイムフレームでは、デジタルASIC26と第2バッファ65bを接続する。このとき、そのデジタルASIC26は第1バッファ65aに接続されていない。
【0071】
切替スイッチ61は、タイムフレームごとに、次の(b1)、(b2)の動作を反復し、ユニットソート回路66に接続されるバッファを切替える。
(b1)あるタイムフレームにおいて、切替スイッチ60がデジタルASIC26と第1バッファ65aを接続している間、切替スイッチ61は、第2バッファ65bとユニットソート回路66を接続する。このとき、第1バッファ65aとユニットソート回路66は接続されない。
(b2)次のタイムフレームにおいて、切替スイッチ60がデジタルASIC26と第2バッファ65bを接続している間、切替スイッチ61は、第1バッファ65aとユニットソート回路66を接続する。このとき、第2バッファ65bとユニットソート回路66は接続されない。
【0072】
したがって、第1バッファ65aが、デジタルASIC26からのパケットデータを格納している間、第2バッファ65bは、格納したパケットデータをユニットソート回路66へ出力する。反対に、第2バッファ65bが、デジタルASIC26からのパケットデータを格納している期間では、第1バッファ65aは、格納したパケットデータをユニットソート回路66へ出力する。このように切り替えが行われるため、タイムフレームごとにデータ処理を行っても、複数のパケットデータは連続して処理される。
【0073】
なお、格納したパケットデータを出力していた第1バッファ65a(または第2バッファ65b)は、次のタイムフレームに変わった時点で、新たなパケットデータを格納するため、既に格納していたパケットデータを一括して消去する。第1バッファ65aおよび第2バッファ65bは、デジタルASIC26から1タイムフレームの間に出力が見込まれるパケットデータを格納するのに充分な容量を有することが好ましい。しかしながら、第1バッファ65a(または第2バッファ65b)に、容量を超えるパケットデータが1タイムフレームの期間に入力された場合には、容量を超過した分のパケットデータが廃棄される。このように、第1バッファ65aおよび第2バッファ65bが、実用上十分な容量を有すれば良いことにより、回路規模の縮小を図ることができる。
【0074】
ユニットソート回路66は、第1バッファ65a(または第2バッファ65b)から、格納されているパケットデータを読み出す場合には、複数の第1バッファ65a(または複数の第2バッファ65b)からパケットデータを検出時刻順に順次出力させる機能を有する。具体的には、ユニットソート回路66は、12の第1バッファ65a(または12の第2バッファ65b)のそれぞれの、まだ読み出されていなくて最も出力端側に位置する各パケットデータのうち、最も早い検出時刻情報を含むパケットデータを検索して読み出す。ユニットソート回路66は、読み出したパケットデータを出力予定のパケットデータ列の最後尾に付加する。このパケットデータ列は、検出時刻順に並べられた複数のパケットデータを含んでいる。ユニットソート回路66は、前記したように、最も早い検出時刻情報を含むパケットデータの取り出し、およびパケットデータ列の最後尾への付加を反復する。なお、第1バッファ65a(または第2バッファ65b)において、取り出されたパケットデータには、取り出されたことを示すフラグが立てられる。
【0075】
第1バッファ65aおよび第2バッファ65bは、最も出力端側に位置するパケットデータが読み出されると、このパケットデータを消去し、格納されている残りのパケットデータを、1つずつ出力端側へシフトさせるように、構成しても良い。あるいは、既読または未読のデータアドレスを保持しておき、読み出されていない先頭のパケットデータが判別できるようにしておいても良い。
【0076】
ユニットソート回路66は、前記のように検出時刻順に読み出されたパケットデータを、この順序で所定個数纏めて、第1散乱処理部53へ出力する。ユニットソート回路66は、このように、予め検出時刻順に並べられた複数のパケットデータを纏めて出力するため、多数のパケットデータを纏めてソートする場合と比較すると、処理負荷が小さくて済み、回路規模の小規模化または処理速度の高速化を図ることができる。
【0077】
次に、図13を参照しながら第1散乱線処理部53の詳細な構成と動作について説明する。図13は第1散乱線処理部の詳細な構成ブロック図である。
図13に示すように、第1散乱線処理部53は、ペア確認部85およびペア生成部86を備えている。ペア確認部85は、レジスタ90a〜90eを含む比較データレジスタ90、比較器95a〜95dを含む比較器95、および散乱線判定回路96を備えている。ペア生成部86は、レジスタ92a〜92eを含むペアデータレジスタ92、セレクタ97a〜97dを含むデータセレクタ97、およびペアデータ生成回路98を備えている。
【0078】
比較データレジスタ90は、第1散乱線処理部53の入力端(レジスタ90a)から第1散乱線処理部53の出力端(レジスタ92e)に向かって(すなわち、順方向に)レジスタ90a〜90eを直列接続したシフトレジスタであって、1クロックごとに、レジスタ90a〜90eに格納しているデータを順方向で隣のレジスタにシフトさせる。レジスタ90aは、第1データソート部51の出力端に接続される。また、比較器95aは、レジスタ90a、90eに接続されている。同様に、比較器95bはレジスタ90b、90eに接続され、比較器95cはレジスタ90c、90eに接続され、比較器95dはレジスタ90d、90eに接続されている。
【0079】
第1データソート部51からのパケットデータは、比較データレジスタ90のレジスタ90aに入力される。比較データレジスタ90は、レジスタ90a〜90eを直列に接続したシフトレジスタであり、クロックに同期して、1タイムスロットごとに、パケットデータを順方向へ(レジスタ90eに向かって)シフトさせる。
【0080】
散乱線判定回路96は、入力端が比較器95a〜95eに、出力端がレジスタ90a〜90eにそれぞれ接続されている。
【0081】
散乱線判定回路96は、先ず、レジスタ90eに格納されたパケットデータの検出エネルギ値情報から検出エネルギを読み出して、その検出エネルギが入射γ線エネルギ511keVに対して設けられた所定のエネルギ窓の中に入っているか、否かをチェックする。所定のエネルギ窓の中に入っている場合は、そのパケットデータは、入射γ線の511keVの全エネルギに対応する検出γ線情報であると判定して、後の散乱線処理の対象ではないと判別させるための全吸収フラグをレジスタ90eのパケットデータに付加する。
次いで、全吸収フラグが付加されなかった場合に、散乱線判定回路96は、比較器95(比較器95a〜95d)を制御し、比較器95a〜95dのそれぞれは、レジスタ90a〜90dのうち対応する1つのレジスタ、およびレジスタ90eに格納されている各パケットデータを入力し、これらのパケットデータが1個のγ線に起因するものであるか否かを判定する。具体的には、比較器95a〜95dのそれぞれは、前記の対応するレジスタおよびレジスタ90e内のそれぞれのパケットデータから、各検出器21の位置を特定できる識別子である検出器IDおよび各検出時刻情報を読み取り、2個のパケットデータが所定の時間窓内のものであり、散乱γ線としてあり得る検出位置関係にあるか否かを判定する。さらに、比較器95a〜95dは、比較対象の2個のパケットデータに含まれる2つの検出エネルギ値情報の検出エネルギの和が、被検体Pから放出されたγ線のエネルギ(511keV)と所定のエネルギ窓の範囲で等しいか否かを判定する。
【0082】
その後、散乱線判定回路96は、比較器95a〜95dのそれぞれの判定結果を入力され、前記の3つの判定条件を満足したパケットデータのペアが1組以下であるか、2組以上である否かを判定する。散乱線判定回路96は、パケットデータのペアが1組である場合に、レジスタ90a〜90dのうちで該当する1つのレジスタ、およびレジスタ90eに格納されている各パケットデータに散乱フラグを立て、パケットデータを“有効”にする。また、そのペアが複数組ある場合は、散乱フラグを“無効”にする。つまり、無効フラグを立てる。
【0083】
散乱線処理を行なう場合、各ペアでは時間窓と散乱γ線としてあり得る検出位置関係を満足しているが、ペアの検出エネルギの総和がエネルギ窓の条件を満たさない場合がある。散乱線判定回路96では、これらの組み合わせに係るパケットデータを無効とせず、3個以上のパケットデータの検出エネルギの総和をチェックし、511keVに対する所定のエネルギ窓内に入るか否かを判定して、所定のエネルギ窓内に入る場合は、散乱線として組み合わせる。比較器95は、レジスタ90eに格納されたパケットデータの検出器IDにもとづいて後記する近距離散乱と遠距離散乱のフラグ付加し、散乱線判定回路96は、近距離散乱のフラグの立てられた組み合わせのパケットデータを優先選択し、その他の組み合わせに係るパケットデータは、無視する。
【0084】
ペア確認部85からのパケットデータは、ペア生成部86のペアデータレジスタ92のレジスタ92aに入力される。ペアデータレジスタ92は、レジスタ92a〜92eを直列に接続したシフトレジスタであり、クロックに同期して、1タイムスロットごとに、パケットデータを順方向へ(レジスタ92eに向かって)シフトさせる。セレクタ97aはレジスタ92aに、セレクタ97bはレジスタ92bに、セレクタ97cはレジスタ92cに、およびセレクタ97dはレジスタ92dに、それぞれ接続されている。また、セレクタ97a〜97dは、ペアデータ生成回路98に接続されている。ペアデータ生成回路98は、レジスタ92a〜92eと接続している。
【0085】
ペアデータ生成回路98は、レジスタ92e入力されたパケットデータの散乱フラグと後記する無効検出γ線情報フラグを読み取る。そして、ペアデータ生成回路98は、そのパケットデータに無効検出γ線情報フラグが立っておらず、散乱フラグが立っていれば、データセレクタ97(セレクタ97a〜97d)を制御し、ペアとなるパケットデータをレジスタ92a〜92dから探し出す。ペアデータ生成回路98は、ペアまたは3つの組み合わせとなるパケットデータが存在する場合には、これらのペアまたは3つの組み合わせとなるパケットデータのうち最も検出エネルギが大きいγ線検出信号にもとづいたパケットデータの検出時刻情報を代表検出時刻情報とし、最も被検体Pの体軸に近い位置の検出器21の検出器IDを代表検出位置(代表検出器ID)とし、一個のγ線に起因するパケットデータ生成をしてデータ収集ユニット3のデータ転送部55出力する。この際、出力されるそのパケットデータは、ペアまたは3つの組み合わせとなるパケットデータに係る検出エネルギの合計値を、検出エネルギ値情報とする。ペアデータ生成回路98は、レジスタ92eに格納されたパケットデータを基準としたペアまたは3つの組み合わせとなるペアデータレジスタ92に格納されているパケットデータに対して、以後の散乱線処理、PET画像生成に使用されないようにする識別子である無効検出γ線情報フラグを立てる。
【0086】
第2データソート部57は、入力元および出力先が異なるほかは、第1データソート部51より簡単なソート回路で、同様のソート処理を行なう。
第2散乱線処理部59は、入力元および出力先が異なるほかは、第1散乱線処理部53と同様の構成を有し、同様の散乱線処理を行なう。
【0087】
次に、第1散乱線処理部53を例にあげて、図14から図16を参照しながら散乱処理における散乱線判定回路96で実行されるペア確認の散乱線判定の処理の手順について説明する。
図14から図16は散乱線判定の処理の制御の流れを示すフローチャートである。第2散乱線処理部59も同様な散乱線判定の処理を行なう。
まず、散乱線判定回路96は、比較データレジスタ90においてレジスタ90eに新たなパケットデータがシフトされるまで待つ(ステップS301)。散乱線判定回路96は、レジスタ90eに新たなパケットデータが格納された後、ステップS303〜318の各処理(散乱線判定の処理)を実行する。レジスタ90eに新たなパケットデータが格納されたとき、レジスタ90eに格納されているパケットデータを基準となるパケットデータとし、基準となるパケットデータの検出エネルギが入射γ線の所定のγ線エネルギ(511keV)に対するエネルギ窓内に入っているか否かをチェックする(ステップS302)。
【0088】
所定のエネルギ窓内に入っている場合(Yes)は、基準となるパケットデータに全吸収フラグを立てる(ステップS303)。ここで、全吸収フラグとは、1つのパケットデータの検出エネルギがγ線の所定の入射エネルギに相当し、散乱を伴っていないというデータ処理上の識別子である。ステップS303の後、ステップS304に進み、比較器95に比較データレジスタ90の比較されるパケットデータと基準となるパケットデータとの散乱線判定の比較をさせない。その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
【0089】
ステップS302において、エネルギ窓に入っていない場合(No)は、比較器95に比較データレジスタ90の比較されるパケットデータと、基準となるパケットデータとの散乱線判定の比較をさせる(ステップS305)。
ステップS306では、比較器95a〜95dからの出力情報にもとづいて、基準となるパケットデータと、散乱線判定の時間窓と検出器位置関係の条件に合致と判定されたパケットデータの数が0であるかを否か判定する(ステップS306)。ここで、散乱線判定の時間窓の条件とは、基準となるパケットデータの検出時刻と比較されたパケットデータの検出時刻の差が所定の時間内であり、1つの入射γ線に対する散乱による複数の検出器21からの検出信号と判定される、略同時と判定のできる時間窓内に入っているという意味である。散乱線の検出器位置関係の条件とは、例えば、特開2003−255048号公報に記載されている位置関係である。
【0090】
合致すると判定されたパケットデータの数が0の場合(Yes)は、その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
パケットデータの数が0でない場合(No)は、ステップS307へ進む。
ステップS307では、基準となるパケットデータと、散乱線判定の時間窓と検出器位置関係の条件に合致と判定されたパケットデータの数が1であるかを否か判定する。前記条件に合致と判定されたパケットデータの数が1の場合(Yes)はステップS308へ進み、そうでない場合(No)はステップS313へ進む。
【0091】
ステップS308では、基準となるパケットデータと、合致と判定されたパケットデータとについて、検出エネルギの総和を求める。次いで、該当する2個のパケットデータの検出エネルギの総和が、所定のエネルギ窓内であるか否かをチェックする(ステップS309)。
この判定が、「No」であるときに、その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
この判定が「Yes」であるとき、当該の2個のパケットデータの検出器位置関係は、近距離散乱か遠距離散乱かを判定する。ここで、近距離散乱とは、基準となるパケットデータの検出器IDに対応する検出器21を中心として、所定の近距離散乱範囲(第1の空間範囲)として設定した検出器21単位の3次元空間距離内での散乱を意味し、また、遠距離散乱とは、所定の近距離散乱範囲よりも広い所定の遠距離散乱範囲(第2の空間範囲)として設定した検出器21単位の3次元空間距離内での散乱を意味する。
【0092】
近距離散乱の場合は、ステップS311へ進み、2個のパケットデータに近距離散乱フラグを立てる。このとき、フラグの値として、基準となるパケットデータには散乱線ペアと考えられるパケットデータの相対位置を、比較されたパケットデータ(つまり、レジスタ90a〜90dの内の当該のもう一つのパケットデータ)には、“0”を設定する。
ただし、基準となるパケットデータにおいて近距離散乱フラグがすでに立っている場合は、近距離散乱フラグ、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。このとき、基準となるパケットデータに対してのみ近距離散乱フラグおよび遠距離散乱フラグを無効に設定しても良いし、また、基準となるパケットデータおよび比較されたパケットデータの両方とも前記遠距離近距離両方の散乱フラグを無効にしても良い。この場合、基準となるパケットデータは、それ以前の周期ステップにおいて比較されるパケットデータであったときに、近距離散乱フラグが“0”と設定されていた場合に相当し、今回の周期で基準となるパケットデータとなったときに、自身より後ろに続く近距離散乱のペアの可能性のあるパケットデータが見つかったことを意味する。その場合、自身より時間的に遡ったパケットデータとの近距離散乱のペア、および今回、自身を基準とする時間的に後ろに続く近距離散乱の可能性のあるペアをともに、散乱線処理において無効とする。これは、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
また、近距離散乱フラグが既に立っている比較されたパケットデータには、近距離散乱フラグ、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。これも、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
【0093】
遠距離散乱の場合は、ステップS312へ進み、2個のパケットデータに遠距離散乱フラグを立てる。このとき、フラグの値として、基準となるパケットデータには散乱線ペアと考えられるパケットデータの相対位置を、比較されたパケットデータには、“0”を設定する。
ただし、基準となるパケットデータにおいて遠距離散乱フラグがすでに立っている場合は、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。このとき、基準となるパケットデータに対してのみ遠距離散乱フラグを無効に設定しても良いし、また、基準となるパケットデータおよび比較されたパケットデータの両方とも遠距離散乱フラグを無効にしても良い。これも、ステップS311における説明で前記したと同じく、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
また、遠距離散乱フラグが既に立っている比較されたパケットデータには、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。これも、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
【0094】
ステップS307からステップS313へ進んだ場合は、基準となるパケットデータと、合致と判定された全てのパケットデータとについて、検出エネルギの総和を求める。次いで、これらのパケットデータの検出エネルギの総和が、所定のエネルギ窓内であるか否かをチェックする(ステップS314)。
この判定が、「No」であるときに、その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
この判定が「Yes」であるとき、該当のパケットデータの位置関係に遠距離散乱が含まれるか否かを判定する。
【0095】
遠距離散乱が含まれない場合(No)は、ステップS316へ進み、該当するパケットデータに近距離散乱フラグを立てる。このとき、フラグの値として、基準となるパケットデータには散乱線ペアと考えられる複数のパケットデータの相対位置を、比較されたパケットデータには、“0”を設定する。
ただし、基準となるパケットデータにおいて近距離散乱フラグがすでに立っている場合は、近距離散乱フラグ、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。このとき、基準となるパケットデータに対してのみ近距離散乱フラグおよび遠距離散乱フラグを無効に設定しても良いし、また、基準となるパケットデータおよび比較されたパケットデータの両方とも前記近距離、遠距離両方の散乱フラグを無効にしても良い。これは、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
また、近距離散乱フラグが既に立っている比較されたパケットデータには、近距離散乱フラグ、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。これも、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
【0096】
遠距離散乱が含まれる場合(Yes)は、ステップS317に進み、全ての組み合わせにおいて遠距離散乱であるかチェックする。つまり、基準となるパケットデータおよび遠距離散乱のペアの可能性のある比較されたパケットデータのすべての組み合わせは、遠距離散乱の判定距離内であるかを否かをチェックする。ステップS317において「Yes」の場合は、ステップS318へ進み、該当するパケットデータに遠距離散乱フラグを立てる。このとき、フラグの値として、基準となるパケットデータには散乱線ペアと考えられる複数のパケットデータの相対位置を、比較されたパケットデータには、“0”を設定する。
ただし、基準となるパケットデータにおいて遠距離散乱フラグがすでに立っている場合は、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。このとき、基準となるパケットデータに対してのみ遠距離散乱フラグを無効に設定しても良いし、また、基準となるパケットデータおよび比較されたパケットデータの両方とも遠距離散乱フラグを無効にしても良い。これも、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
また、遠距離散乱フラグが既に立っている比較されたパケットデータには、遠距離散乱フラグを無効に設定する(フラグの値を“null”に設定する)。これも、1つの同一のγ線に起因する散乱線の検出との判定が疑わしいパケットデータのペアは、PET画像の生成に用いないという考え方によるものである。
その後、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ90eに格納されたパケットデータに対する散乱線判定の処理を終え、新たにレジスタ90eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとした散乱線判定の処理に戻る。
以上のようにして、一連の各種の組み合わせの散乱線判定の処理が行われる。
【0097】
次に図17を参照しながら、第1散乱線処理部53を例示して、ペア生成部86のペアデータ生成回路98で実行される散乱線処理におけるペアデータ生成処理について説明する。図17はペアデータ生成回路におけるペアデータ生成の制御の流れを示すフローチャートである。第2散乱線処理部59も同様なペアデータ生成処理を行なう。
まず、ペアデータ生成回路98は、ペアデータレジスタ92においてレジスタ92eに新たなパケットデータがシフトされるまで待つ(ステップ401)。次に、レジスタ92eに格納されているパケットデータ、つまり、基準となるパケットデータの近距離散乱フラグが立っていて、フラグの値として散乱線ペアと考えられるパケットデータの相対位置が設定されているか、否かをチェックする(ステップS402)。「Yes]の場合は、ステップS403へ進み、「No」の場合はステップS406へ進む。ステップS403では、前記散乱線ペアと考えられるパケットデータの相対位置に対応するペアレジスタのパケットデータに近距離散乱フラグが立っていて、フラグの値として“0”が設定されているか、否かをチェックする。「Yes」の場合は、ステップS404へ進み、「No」の場合は、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ92eに格納されたパケットデータに対するペアデータ生成の処理を終え、新たにレジスタ92eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとしたペアデータ生成処理に戻る。
【0098】
ステップS404では、同一のγ線に係る複数のパケットデータに対して、代表検出時刻情報と代表検出器IDを設定し、当該のパケットデータの検出エネルギの総和を検出エネルギとし、新たなパケットデータを生成し、送信する。
ここで、代表検出時刻情報は、前記同一のγ線に係る複数のパケットデータのうちの検出エネルギが最大のパケットデータの検出時刻情報とし、代表検出器IDは、前記同一のγ線に係る複数のパケットデータのうちの検出器21の位置が最も被検体Pの体軸に近い検出器21の検出器IDとする。また、このとき、生成したパケットデータに全吸収フラグを立てる。ステップS404の後、ステップS405へ進み、元の当該の複数のパケットデータに無効検出γ線フラグを立てる。
この新たに生成したパケットデータに全吸収フラグを立て、元の当該の複数のパケットデータに無効検出γ線フラグを立てるのは、散乱線処理の完了を意味し、後続の第2散乱線処理部59において、散乱線処理を行なわせないようにするためである。
ここで、検出時刻情報を検出エネルギの最も大きいパケットデータのものとするのは、図19に示すようにγ線検出信号の波高値が大きいほどタイミング信号が早く立ち上がり、検出時刻の補正量が小さく信頼度が高いからである。
【0099】
ステップS402からステップS406へ進んだ場合は、基準となるパケットデータの遠距離散乱フラグが立っていて、散乱線ペアと考えられるパケットデータの相対位置が設定されているか否かをチェックする。「Yes」の場合は、ステップS407へ進み、「No」の場合は、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ92eに格納されたパケットデータに対するペアデータ生成の処理を終え、新たにレジスタ92eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとしたペアデータ生成処理に戻る。
ステップS407では、前記散乱線ペアと考えられるパケットデータの相対位置に対応するペアレジスタのパケットデータに遠距離散乱フラグが立っていて、フラグの値として“0”が設定されているか、否かをチェックする。「Yes」の場合は、ステップS404へ進み、「No」の場合は、図13においてクロックに同期してパケットデータが一つ右へ送られ、レジスタ92eに格納されたパケットデータに対するペアデータ生成の処理を終え、新たにレジスタ92eに格納されたパケットデータを基準となるパケットデータとしたペアデータ生成処理に戻る。
以上で、一連のペアデータ生成処理の説明を終了する。
【0100】
本発明の第1の散乱線判定は、本実施形態におけるフローチャートのステップS305〜S311およびステップS313〜S316が対応し、第2の散乱線判定はフローチャートのステップS305〜S310、ステップS312、ステップS313〜S315、ステップS317およびステップS318が対応する。
なお、散乱線判定の処理(図14〜図16参照)およびペアデータ生成処理(図17参照)は、複数のパケットデータについて、1クロックの間に並行して実行される。
図18から図21を参照しながら散乱線判定の処理およびペアデータ生成処理の具体的な例を説明する。
図18に示すように、ここでは説明を平易にするため2次元で近距離散乱範囲と遠距離散乱範囲を設定してある。2本の所定のエネルギを有するγ線(γ1、γ2)が略同時刻に検出器21に入射し、γ1は検出器21とγ1Aとγ1Bという相互作用をし、γ2は検出器21とγ1aとγ1bという相互作用をしたとする。
ここで、(a)に示した四角枠はγ線を検出した検出器21を中心として、検出器21単位で設定した近距離散乱範囲を示し、(b)に示した四角枠はγ線を検出した検出器21を中心として、検出器21単位で設定した遠距離散乱範囲を示す。
【0101】
そして、図19に入射γ線、γ1に由来するγ線検出信号γ1Aとγ1Bのタイミング信号(検出時刻)と、γ2に由来するγ線検出信号γ1aとγ1bのタイミング信号(検出時刻)の発生のばらつきを示す。散乱により検出信号の波高が小さいと検出信号の発生タイミング(検出時刻)が遅くなることを示している。したがって、これらの散乱によるγ線も画像生成に利用するためには、時間窓をある程度広げる必要があるが、その場合、本来の所定のエネルギを持った入射γ線(γ1、γ2)そのものが異なるものも時間窓の中で取り込んでしまうことになり、従来の散乱線処理の方法ではγ1A、γ1Bのペアとγ1a、γ1bのペアを区別して散乱線処理ができなかった。
これに対し、本実施形態では、以下のように区別できる。
【0102】
図20、図21は、例えば、第1散乱線処理部53におけるペア確認部85およびペア生成部86でのクロック周期に従った比較データレジスタ90、ペアデータレジスタ92の各レジスタのパケットデータの移動と散乱線判定回路96、ペアデータ生成回路98の動作を説明する図である。横軸は各レジスタに対応し、縦軸はクロックによる周期ステップを示す。以後、前記検出器信号γ1A、γ1B、γ1a、γ1bの符号をそのまま対応するパケットデータの符号にも用いることとする。
【0103】
1ステップ目においてペア確認部85にパケットデータγ1Bが入力され、レジスタ90aに記憶される。この際、本来パケットデータγ1Bが持っている、γ線の検出時刻、検出器IDのデータ、検出エネルギのデータに加え、散乱線の処理を行なうための作業エリアとなるフラグデータが記憶される。本実施形態では散乱線の処理を遠距離、および近距離の2つにわける為、フラグのエリアとしてNear(近距離散乱フラグ)とFar(遠距離散乱フラグ)の2つのエリアを持つ。(その他に前記した全吸収フラグ、無効検出γ線フラグのエリアもあるが、ここでの散乱線処理には直接関係しないので省略する。)
各フラグデータは初め空である。入力データの先頭では、ペア確認部85の比較対象となるレジスタ90eにはパケットデータが入っていない。このため1から4ステップにおいて散乱線判定は行われず、パケットデータは時間ステップごとに次のレジスタにシフトされる。
【0104】
5ステップ目では比較の基準となるレジスタ90eにパケットデータγ1Bが入る。比較器95はパケットデータγ1Bと後続のパケットデータγ1a、γ1b、γ1Aの検出時刻、検出器ID、検出エネルギを比較し、時間差が時間窓以内であること、2つの検出位置が散乱線とみなして良い場所に存在するか、エネルギの総和が所定の入射γ線のエネルギに等しいかなどの判定を行なう。ここでの例では、すべてのデータは時間窓内であるが、検出位置に関しては、基準となるパケットデータγ1Bに対してパケットデータγ1aとパケットデータγ1Aの2つが遠距離散乱範囲に入っていることが確認できる。この場合、散乱線判定回路96は、パケットデータγ1Bにたいする遠距離散乱のペアがパケットデータγ1aおよびパケットデータγ1Aの2つあることになり、図16のフローチャートのステップS317の判定により、遠距離での散乱線判定ができないものとして無効であることを示す“null”をすべてのデータに書き込む。
【0105】
6ステップ目でパケットデータγ1aが基準となるパケットデータとなると、パケットデータγ1bが唯一の近距離散乱線ペアとなる。このため、基準となるパケットデータγ1aの近距離散乱フラグ(Near)には、自分自身より1つ後ろのパケットデータとペアであることを示すフラグの値“1”を、またパケットデータγ1bの近距離フラグには自分自身より前のデータとペアであることを示すフラグの値“0”を設定する。
【0106】
ペア生成部86における近距離散乱フラグ、遠距離散乱フラグのフラグ立が終わったパケットデータは、順次、ペア生成部86へ送られる。10ステップ目には先頭のパケットデータγ1Bがペア生成部86のレジスタ92eに格納される。パケットデータγ1Bには近距離散乱フラグ(Near)が立っておらずペアが存在しない。また、遠距離散乱フラグ(Far)は無効であるので、散乱線処理後のペアデータにもとづく新たなパケットデータは生成されない。ステップ11ではパケットデータγ1aがレジスタ92eに格納される。パケットデータγ1aには近距離散乱フラグが立っており、フラグの値は“1”を示しているので、ペアのパケットデータが自分自身の1つ後ろに存在していることを示している。このため、近距離散乱フラグが立っておりそのフラグの値が“0”を示している1つ後ろのパケットデータγ1bとペアを作ることができる。このとき、ペアデータ生成回路98は、新たなパケットデータを生成し、元のペアとされたパケットデータγ1a、γ1bには無効γ線情報フラグを立て、その後の散乱線処理や画像生成における処理の対象とならないようにする。
【0107】
ステップ12では、パケットデータγ1bがレジスタ92eに格納される。先頭に来る。パケットデータγ1bは近距離散乱フラグが立っているが、そのフラグの値は“0”で、前方一致であることを示しており、また、前記した無効γ線情報フラグも立っているので、ペアデータとしての新たなパケットデータは生成されない。
このように近距離散乱および遠距離散乱の2つのフラグを立てることを可能とすることにより、近距離散乱の処理を優先し、遠距離散乱の処理ではペアとなるパケットデータが特定できない場合でもパケットデータのペア判定が可能となる。
【0108】
本実施形態のPET装置1によれば、次の効果が得られる。
検出器ユニット2からのデータを直接、同時計数回路に入力する構成と異なり、本実施形態では、検出器ユニット2から1タイムフレーム間に出力されるパケットデータを、一方のバッファ(例えば、第1バッファ65a)に格納している間、他方のバッファ(例えば、第2バッファ65b)に格納されたデータを利用して、後段の処理を行っている。このため、(a)パケットデータの格納および出力を、2つのバッファ(65a、65b)で交互に分担しているので、タイムフレーム内に多数のイベントが発生しても処理可能になる。このため、タイムフレームを長く設定でき、タイムフレームを跨ぐγ線検出信号の数え落しを減少できる。
(b)また、予めパケットデータを、検出時刻を基準に並べているので、同時計数判定の対象となるパケットデータの数が制限され、処理負荷が小さくなり、動作の高速化や、回路規模の小規模化を図ることができる。
(c)散乱線処理は、パケットデータを検出時刻順に並べて行っているので、散乱線処理の対象となるパケットデータの数が制限され、処理負荷が小さくなり、動作の高速化や、回路規模の小規模化を図ることができるとともに、より複雑な散乱線処理論理を採用することにより、取りこぼすγ線検出信号をさらに減らして、PET装置1の感度の向上を図ることもできる。
(d)本実施形態は、ある検出器ユニット2内での、所定の近距離散乱範囲と遠距離散乱範囲とを分けて散乱線処理を行い、その後に群に分けてブロック化した複数の検出器ユニット2からの各γ線検出信号にもとづいて得られた検出γ線情報により、データ収集ユニット3内で再び所定の近距離散乱範囲と遠距離散乱範囲とを分けて散乱線処理を行なっている。このため、検出器ユニット2内で散乱線処理は、限定された検出器信号だけで済み、FPGA31における散乱線処理の負荷が軽減できる。また、データ収集ユニット3は、検出器ユニット2内で、近距離散乱、遠距離散乱と判定されなかったものだけについて散乱線処理をすれば良いので、検出器ユニット2間の近距離散乱と遠距離散乱に対する散乱線処理が主になり、近距離散乱に対する散乱線処理の負荷が減る。
その結果、計数率の高い検出信号に対して、検出器ユニット2、データ収集ユニット3という階層式の散乱線処理構成であり、データ収集ユニット3の散乱線処理の負荷が減じて、適正化できる。
また、散乱線処理において、近距離散乱を優先的に採用するので、偶発的な同一時間窓内に発生したγ線検出情報を遠距散乱として採用する数が抑制されるのでノイズが抑制される。
【0109】
その結果、1つの所定のエネルギの入射γ線に起因する複数のγ線検出信号をも利用して断層像作成に利用できるので、γ線の検出感度がより向上し、検査時間をより短縮することができる。
【0110】
本実施形態では近距離散乱と遠距離散乱の2つの条件にわけ、散乱線処理を行ったが、近距離散乱範囲、遠距離散乱範囲の空間範囲の設定を2段階から3段階にしても良い。また、近距離散乱および遠距離散乱の条件として、検出器位置だけの関係だけではなく、検出時刻の差が小さいほど、1つの入射γ線に起因するペアの散乱線である確率が高いとして、検出時刻の差で重み付けを行なうことも可能である。
本実施形態では処理回路の規模縮小のため、検出器ユニット2のFPGA31でも、データ収集ユニット3でも、近距離、遠距離散乱線処理を纏めて行っているが、それに限定されるものではなく、近距離散乱線処理はFPGA31で行い、遠距離散乱線処理はデータ収集ユニット3で行なうように完全に2つに分け、2段階で処理しても、略同じ結果を得ることができる。
また、本実施形態では、第1散乱処理部53、第2散乱処理部59では、回路を簡単にするため、近距離散乱と遠距離散乱を1つの回路で処理したが、近距離散乱の処理と遠距離散乱の処理を別個の回路で処理するようにしても良い。
【0111】
《第2の実施形態》
次に、本発明に係る第2の実施形態である核医学診断装置ついて図22、図23を参照しながら説明する。本実施形態の核医学診断装置はPET装置1Aであり、第1の実施形態とは、以下の点で異なる。
本実施形態では、検出器ユニット2のFPGA31がFPGA31Aに置き換わり(図23参照)、検出器ユニット2Bとなり、検出器ユニット2B間でパケットデータのやり取りをし、検出器ユニット2B間の散乱線処理もFPGA31Aで行なう。また、図22に示す本実施形態における補助データ収集ユニット4は、第1の実施形態におけるデータ収集ユニット3が散乱線処理を行っていたのに対し、ただデータ転送する機能だけとなり、データ処理装置12への接続が、補助データ収集ユニット4を介している。
【0112】
第1の実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
図23に示すように、検出器ユニット2Bは、検出器ユニット2におけるFPGA31の代わりにFPGA31Aを具備している。
FPGA31Aは、散乱線処理を行なう機能を有し、第1データソート部80、第1散乱線処理部81、第2データソート部82、第2散乱線処理部83および散乱線データ処理部84を備えている。第1データソート部80、第1散乱線処理部81、第2データソート部82、第2散乱線処理部83および散乱線データ処理部84は、この順序に接続されている。複数のデジタルASIC26が第1データソート部80に接続されている。また、検出器ユニット2Bを有するカメラ11の周方向において隣り合う第1、第2の検出器ユニット2Bにおいて、第1の検出器ユニット2Bの第1散乱線処理部81が第2の検出器ユニット2Bの第2データソート部82に接続されている。第2の検出器ユニット2Bの第2散乱線処理部83が第1の検出器ユニット2Bの散乱線データ処理部84に接続されている。換言すれば、第1の検出器ユニット2Bの第1散乱線処理部81の出力を入力する第2の検出器ユニット2B、および第1の検出器ユニット2Bの第2散乱線処理部83を入力する第3の検出器ユニット2Bは、前記周方向において、第1の検出器ユニット2Bを間に挟むように配置される。
【0113】
第1データソート部80、第1散乱線処理部81は、第1の実施形態におけるFPGA31内の第1データソート部51および第1散乱線処理部53と同様の構成を有し、同様の原理で動作する。また、第2データソート部82、第2散乱線処理部83は、第1の実施形態におけるデータ収集ユニット3内の第2データソート部57および第2散乱線処理部59と同様の構成を有し、同様の原理で動作する。
第1散乱線処理部81は、入力されたパケットデータについて散乱線処理を行い、一個の所定のエネルギの入射γ線に起因する複数のパケットデータを纏める機能を有する。第1散乱線処理部81の出力は、この検出器ユニット2B内の第2データソート部82と、隣接する検出器ユニット2B内の第2データソート部82とに入力される。一個のγ線に起因する複数の散乱γ線は、同一の検出器ユニット2B内の検出器21で検出されるとは限られず、隣接する検出器ユニット2B内の検出器21でも検出される場合がある。このため、第1散乱線処理部81で散乱線処理を行った後、パケットデータを隣接する検出器ユニット2B内の第2データソート部82へも転送するのである。
【0114】
第1の検出器ユニット2Bの第1散乱線処理部81は、第1の検出器ユニット2B内で第2の検出器ユニット2Bに近い領域に位置する一部の検出器(好ましくは、第1の検出器ユニット2B内の領域を周方向において二等分した一方の領域で、第2の検出器ユニット2Bに近い領域内に位置する全検出器(第1の検出器ユニット2B内の1/2の検出器))21のγ線検出信号に起因した各パケットデータを、第2の検出器ユニット2Bの第2データソート部82に出力する。
【0115】
第2の検出器ユニット2Bの第2データソート部82は、第2の検出器ユニット2Bの第1散乱線処理部81、および周方向においてその検出器ユニット2Bと隣り合う第2の検出器ユニット2Bの第1散乱線処理部81からそれぞれ入力した各データパケットを合わせた状態でそれらのパケットデータを検出時刻順に並べて第2散乱線処理部83に出力する。
【0116】
前記したように、各第2データソート部82は、自身が属する検出器ユニット2Bと、これに隣接する検出器ユニット2Bから集められたパケットデータを、検出時刻順に出力する。ここで、第2データソート部82へ入力される2本のパケットデータ列は、すでに検出時間順に並んでいる。このため、データパケット列の先頭から検出時刻の早いものを選び、1列に併合するだけで、それらのパケットデータを検出時刻順に並べることができる。このため、第1データソート部80とは異なり、簡単なマージソート回路を用い、回路規模を縮小し、かつ高速で処理することができる。
【0117】
第2散乱線処理部83は、第1散乱線処理部81と同様の構成を有し、同様の原理で動作する。第2散乱線処理部83は、入力されたデータパケットを用いて散乱線処理を行い、一個のγ線に起因する複数のデータパケットのうち最初にγ線が入射された検出器21のγ線検出信号にもとづいたデータパケットを把握する機能を有する。第2散乱線処理部83の出力は、この検出器ユニット2B内の散乱線データ処理部84と、隣接する検出器ユニット2B内の散乱線データ処理部84とに入力される。すなわち、第2散乱線処理部83は、散乱線処理後のパケットデータが自身の属する検出器ユニット(例えば、第2の検出器ユニット)2Bのものであればそのパケットデータを自身の属する検出器ユニット(例えば、第2の検出器ユニット)2B内の散乱線データ処理部84に、それが隣接する検出器ユニット(例えば、第1の検出器ユニット)2Bのパケットデータであればそのパケットデータを隣接する検出器ユニット(例えば、第1の検出器ユニット)2B内の散乱線データ処理部84にそれぞれ出力する。
【0118】
散乱線データ処理部84は、第2データソート部82と同様の構成および機能を有し、補助データ収集ユニット4に出力する各パケットデータを検出時刻データ順に並べる。
【0119】
以上、第2の実施形態のPET装置1Aによっても、第1の実施形態同様に散乱線処理が行え、データ処理装置12側で、散乱線処理も行なう場合に比して、データ処理装置12のデータ処理の負担が軽減する。また、予めパケットデータを、検出時刻を基準に並べているので、同時計数判定の対象となるパケットデータの数が制限され、処理負荷が小さくなり、動作の高速化や、回路規模の小規模化を図ることができる。
また、散乱線処理において、近距離散乱を優先的に採用するので、偶発的な同一時間窓内に発生したγ線検出情報を遠距散乱として採用する数が抑制されるのでノイズが抑制される。
【0120】
なお、以上の各実施形態ではPET装置1およびPET装置1Aについて述べたが、ガンマカメラ装置にも本発明を適用することができる。ガンマカメラは、得られる機能画像が2次元的なものであり、かつ、γ線の入射角度を規制するコリメータを備える。
なお、PET装置1やPET装置1Aと、X線CTを組み合わせた核医学診断装置の構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る核医学診断装置としてのPET装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のPET装置のカメラの周方向の断面と、検出器ユニットからデータ収集ユニットを介してデータ処理装置にパケットデータを送信する経路を模式的に示した図である。
【図3】(a)は検出器ユニットをカメラに装着する構成を示したカメラの一部破断斜視図であり、(b)はカメラの中央部の検出器ユニット実装状態を示す断面図である。
【図4】半導体放射線検出器の構成を模式的に示す図である。
【図5】(a)は図5の積層構造の半導体放射線検出器の構成要素を模式的に示した斜視図であり、(b)は構成要素を組み合わせて積層構造とした斜視図である。
【図6】(a)は第1の実施形態に係る半導体放射線検出器の、検出器基板とASIC基板とを結合した結合基板を示した正面図であり、(b)は同(a)の側面図である。
【図7】デジタルASICの概略構成、およびアナログASICとデジタルASICの接続関係を示したブロック図である。
【図8】アナログASICのアナログ信号処理回路を模式的に示したブロック図である。
【図9】結合基板を複数枚収納した検出器ユニットの構造を示す透視斜視図である。
【図10】図9の検出器ユニットを体軸方向に見た側面図である。
【図11】検出器ユニットおよびデータ収集ユニットの概略構成を示す図である。
【図12】第1データソート部の詳細な構成ブロック図である。
【図13】第1散乱線処理部の詳細な構成ブロック図である。
【図14】散乱線判定の処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【図15】散乱線判定の処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【図16】散乱線判定の処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【図17】ペアデータ生成回路におけるペアデータ生成の制御の流れを示すフローチャートである。
【図18】(a)は近距離散乱範囲を示す模式図であり、(b)は遠距離散乱範囲を示す模式図である。
【図19】複数の所定のエネルギの入射γ線が略同時に検出器内で散乱して複数のγ線検出信号を出すときの、検出タイミング信号を出力する様子を説明する図である。
【図20】第1散乱線処理部における散乱線処理を説明する図である。
【図21】第1散乱線処理部における散乱線処理を説明する図である。
【図22】本発明の第2の実施形態に係る核医学診断装置としてのPET装置のカメラの周方向の断面と、検出器ユニットから補助データ収集ユニットを介してデータ処理装置にパケットデータを送信する経路を模式的に示した図である。
【図23】第2の実施形態のユニット統合FPGAの構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0122】
1、1A PET装置(核医学診断装置)
2、2B 検出器ユニット
2A ユニット支持部材(支持部材)
3 データ収集ユニット
11 カメラ(撮像装置)
11a 蓋
11b 開口部
12 データ処理装置
12A 同時計測装置
12B 断層像情報作成装置
13 操作コンソール
13a 表示装置
13b 入力操作部
14 ベッド
20、120 結合基板(ユニット基板)
20A、120A 検出器基板
20a、20b 基板本体
20B、120B ASIC基板
21 半導体放射線検出器(γ線検出器)
22 コンデンサ
23 抵抗
24、124 アナログASIC(集積回路、信号処理装置)
24A ファースト系
24B スロー系
24a 前置増幅器
24b タイミングピックオフ回路
24c 閾値制御回路
24d 波形整形回路
24e ピークホールド回路
25、25A、25B アナログ/デジタル変換器(信号処理装置)
26、126 デジタルASIC(信号処理装置、集積回路、データ生成部)
27 高圧電源
30 筐体(収納部材)
30a 天板
30b 底板
30c 隔壁
31 ユニット統合FPGA(他の集積回路)
33、133 アナログ信号処理回路
34、134 検出信号処理部
35 タイミング検出部
36 検出器制御部
37 データ転送部
38、42、43 コネクタ
51、80 第1データソート部(検出データ出力部)
53、81 第1散乱線処理部(散乱線処理部)
55 データ転送部
57 第2データソート部(検出データ出力部、ユニット間検出データ出力部)
59、 第2散乱線処理部(散乱線処理部、ユニット間散乱線処理部)
82 第2データソート部(検出データ出力部)
83 第2散乱線処理部(散乱線処理部)
211 検出素子
C1、C3 コネクタ
C2 基板コネクタ
PS 高圧電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
γ線の検出に応じてγ線検出信号を出力する複数のγ線検出器と、
前記γ線検出信号にもとづいて検出時刻情報とγ線検出器を識別する検出器IDを含む検出γ線情報を生成する複数のデータ生成部と、
前記検出γ線情報にもとづいて散乱線処理を行なう散乱線処理部と、を備え、
前記散乱線処理部は、
複数の前記検出γ線情報のうち、基準となる前記検出γ線情報と他の複数の前記検出γ線情報のそれぞれについて、前記基準となる検出γ線情報に含まれる前記検出器IDにもとづき、予め設定された第1の空間範囲に含まれる前記γ線検出器からの同一の前記γ線に起因する前記検出γ線情報であるか否かの第1の散乱線判定を行ない、
前記第1の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合し、
さらに、
複数の前記検出γ線情報のうち、基準となる前記検出γ線情報と他の複数の前記検出γ線情報のそれぞれについて、前記基準となる検出γ線情報に含まれる前記検出器IDにもとづき、前記第1の空間範囲より広く予め設定された第2の空間範囲に含まれる前記γ線検出器からの同一の前記γ線に起因する前記検出γ線情報であるか否かの第2の散乱線判定を行ない、前記第2の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合することを特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
さらに、
複数の前記データ生成部から出力された所定の個数の前記検出γ線情報を、当該検出γ線情報に含まれる前記検出時刻情報の時刻順に出力する検出データ出力部を備え、
前記散乱線処理部は、前記時刻順に出力される複数の前記検出γ線情報にもとづいて散乱線処理を行なうことを特徴とする請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項3】
周方向に複数の開口部を形成した支持部材と、前記開口部にそれぞれ挿入されて前記支持部材に着脱自在に取り付けられた複数の検出器ユニットとを備え、前記検出器ユニットが、遮光性を有する収納部材、および前記収納部材内に着脱自在に収納される複数のユニット基板を有し、
前記ユニット基板が、γ線を入射する複数の半導体放射線検出器、および前記複数の半導体放射線検出器のそれぞれが出力するγ線検出信号を処理する集積回路を含み、
前記集積回路が、γ線を検出した前記半導体放射線検出器を識別する検出器IDと検出時刻情報とを含む検出γ線情報を出力し、
さらに、
前記検出器ユニットは、それぞれの前記ユニット基板に含まれた集積回路から出力される前記検出γ線情報を前記検出器ユニットの外部に出力する他の集積回路を有し、
前記他の集積回路において、
前記ユニット基板に含まれた集積回路から出力された所定の個数の前記検出γ線情報を、当該検出γ線情報に含まれる前記検出時刻情報の時刻順に出力する検出データ出力部と、
前記時刻順に出力される複数の前記検出γ線情報にもとづいて散乱線処理を行なう散乱線処理部と、を備え、
前記散乱線処理部は、
前記検出データ出力部から出力された所定の個数の前記検出γ線情報のうち、基準となる前記検出γ線情報と他の複数の前記検出γ線情報のそれぞれについて、前記基準となる検出γ線情報に含まれる前記検出器IDにもとづき、予め設定された第1の空間範囲に含まれる前記半導体放射線検出器からの同一の前記γ線に起因する前記検出γ線情報であるか否かの第1の散乱線判定を行ない、
前記第1の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合し、
さらに、
前記検出データ出力部から出力された所定の個数の前記検出γ線情報のうち、基準となる前記検出γ線情報と他の複数の前記検出γ線情報のそれぞれについて、前記基準となる検出γ線情報に含まれる前記検出器IDにもとづき、前記第1の空間範囲より広く予め設定された第2の空間範囲に含まれる前記半導体放射線検出器からの同一の前記γ線に起因する前記検出γ線情報であるか否かの第2の散乱線判定を行ない、前記第2の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合することを特徴とする核医学診断装置。
【請求項4】
複数の前記検出器ユニットの前記他の集積回路からの検出γ線情報を収集するデータ収集ユニットを複数設け、
該データ収集ユニットは、前記検出器ユニットのユニット基板に含まれる集積回路から出力された所定の個数の前記検出γ線情報を、当該検出γ線情報に含まれる前記検出時刻情報の時刻順に出力するユニット間検出データ出力部と、
前記時刻順に出力される複数の前記検出γ線情報にもとづいて散乱線処理を行なうユニット間散乱線処理部と、を備え、
ユニット間散乱線処理部は、
出力された所定の個数の前記検出γ線情報のうち、基準となる前記検出γ線情報と他の複数の前記検出γ線情報のそれぞれについて、前記基準となる検出γ線情報に含まれる前記検出器IDにもとづき、予め設定された第1の空間範囲に含まれる前記半導体放射線検出器からの同一の前記γ線に起因する前記検出γ線情報であるか否かの第1の散乱線判定を行ない、前記第1の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合し、
さらに、
前記ユニット間検出データ出力部から出力された所定の個数の前記検出γ線情報のうち、基準となる前記検出γ線情報と他の複数の前記検出γ線情報のそれぞれについて、前記基準となる検出γ線情報に含まれる前記検出器IDにもとづき、前記第1の空間範囲より広く予め設定された第2の空間範囲に含まれる前記半導体放射線検出器からの同一の前記γ線に起因する前記検出γ線情報であるか否かの第2の散乱線判定を行ない、前記第2の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合することを特徴とする請求項3に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記散乱線処理部は、第1散乱線処理部および第2散乱線処理部を含んでおり、
前記第1散乱線処理部は、自身の前記検出器ユニットに設けられた複数の前記半導体放射線検出器からの前記γ線検出信号にもとづく前記検出γ線情報に対して前記第1の散乱線判定と前記第2の散乱線判定を行い、前記第1の散乱線判定および前記第2の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合し、
前記第2散乱線処理部は、自身の前記検出器ユニットとそれに隣り合う他の前記検出器ユニットに設けられた複数の前記半導体放射線検出器からの前記γ線検出信号にもとづく前記検出γ線情報に対して前記第1の散乱線判定と第2の散乱線判定を行い、前記第1の散乱線判定および前記第2の散乱線判定にもとづいて複数の当該検出γ線情報を併合することを特徴とする請求項3に記載の核医学診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−89384(P2008−89384A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269762(P2006−269762)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】