説明

核形成ポリエチレンから成形される物品

ポリマー物品とその形成方法が本明細書で述べられている。この方法は、一般に、エチレンをベースとするポリマーを提供し、エチレンをベースとするポリマーを変成剤とブレンドして、変成ポリエチレンを形成し、変成ポリエチレンをポリマー物品に成形することを含み、ポリマー物品が類似の変成ポリエチレンにより作製されたポリマー物品よりも少なくとも約10%小さいヘイズを呈することを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の態様は、一般に、ポリエチレンにより成形される物品に関する。特に、この発明の態様は、一般に、核形成ポリエチレンにより成形される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部、ポリプロピレンの結晶化速度によって、プロピレンポリマーは、射出成形、回転成形(rotomolding)、ブロー成形フィルムおよび固相延伸法などの種々の適用において核形成され、例えば、加工と得られる物品の性質における改善を実証してきた。例えば、核形成プロピレンポリマーから成形される固相延伸された物品は、靭性の増大、収縮の低下および透明性の増加を呈し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、核形成エチレンポリマーは、少なくとも一部、ポリエチレンの初期結晶成長速度が高く、核形成エチレンポリマーの延伸性を維持することができなくなることにより、固相延伸法により延伸することが困難であった。それゆえ、ポリエチレンを核形成する以前の試みは、線状低密度ポリエチレンと組み合わせる具体的な核形成剤の使用に焦点が置かれてきた。線状低密度ポリエチレンについては成功(結晶化速度の増大により測定されるような)が得られたが、中密度および高密度ポリエチレンなどの他のポリエチレンを核形成の可能性は実証されていない。
【0004】
それゆえ、改善された性質を呈するポリマーおよび方法を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の態様は、ポリマー物品を形成する方法を包含する。この方法は、一般に、エチレンをベースとするポリマーを提供し、エチレンをベースとするポリマーを変成剤とブレンドして、変成ポリエチレンを形成し、変成ポリエチレンをポリマー物品に成形することを含み、ポリマー物品が、類似する変成ポリエチレンにより作製されたポリマー物品よりも少なくとも約10%小さいヘイズを呈することを伴う。
【0006】
態様は、この方法から形成されるポリマー物品を更に包含する。
【0007】
一つ以上の態様では、エチレンをベースとするポリマーは、約0.926g/ccから約0.97g/ccの密度と、約1.5から約7の分子量分布を呈する。
【0008】
一つ以上の態様では、変成剤は核形成剤である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明を提供する。添付の請求項の各々は、別々な発明を規定するが、これは、抵触の目的には請求項で特定されている種々の要素または限定の同等物を包含すると認識される。文脈によって、「本発明」の下記のすべての引用は、ある場合にはしかるべき具体的な態様のみを指すことがある。他の場合には、「本発明」の引用は、請求項の一つ以上で述べられているが、必ずしも全部において述べられていない主題事項を指す。本発明の各々は、具体的な態様、変形及び例を含めて下記で更に詳述されるが、本発明は、この特許の中の情報を入手し得る情報および技術と組み合わせれば、当該分野で通常の技術を有する者が本発明を利用することができるように含められている、これらの態様、変形または例に限定されない。
【0010】
本明細書中で使用される種々の用語を下記に示す。請求項中で使用される用語が下記に定義されていない範囲で、当該分野の者が印刷刊行物および出願時点での交付済特許において反映されているような、その用語に与えてきた最も広い定義が、与えられるべきである。更に、特記しない限り、本明細書で述べられているすべての化合物は、置換または非置換であってもよく、化合物の列挙はその誘導体を含む。
【0011】
種々の範囲を下記に更に示す。特記しない限り、終点は互換可能であるべきであるということが意図されているということを認識すべきである。更に、その範囲内のいかなる点も本明細書で開示されていると考えられる。
【0012】
本発明の態様は、エチレンをベースとするポリマーを変成剤とブレンドして、変成ポリエチレンを形成し、変成ポリエチレンをポリマー物品に成形することに関する。このような態様は、性質および方法の想定外の改善をもたらし、これらを本明細書で示す。
【0013】
触媒系
オレフィンモノマーの重合に有用な触媒系は、当該分野の熟練者に既知のいかなる触媒系も包含する。例えば、この触媒系は、例えば、メタロセン触媒系、シングルサイト触媒系、チーグラー・ナッタ触媒系またはこれらの組み合わせを包含し得る。当該分野で既知であるように、触媒は、以降の重合にために活性化されてもよく、担体材料と組み合わされても、またはされていなくともよい。このような触媒系の手短な議論が下記に包含されているが、本発明の範囲をこのような触媒に限定するようには意図されていない。
【0014】
例えば、チーグラー・ナッタ触媒系は、一般に、金属成分(例えば、触媒)を、例えば、触媒担体、共触媒および/または一つ以上の電子供与体などの一つ以上の追加の成分と組み合わせることにより形成される。
【0015】
本発明の一つ以上の態様は、アルキルマグネシウム化合物をアルコールと接触させて、マグネシウムジアルコキシド化合物を形成し、次いでマグネシウムジアルコキシド化合物を逐次的に強力な塩素化剤と接触させることにより一般に形成されるチーグラー・ナッタ触媒系を包含する(参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,734,134号および第6,174,971号を参照されたい)。
【0016】
メタロセン触媒は、π結合により遷移金属と配位されている一つ以上のシクロペンタジエニル(Cp)基(各置換が同一であるかまたは異なる置換,または非置換のものであってよい)を組み込んだ配位化合物として一般に特徴付けられ得る。Cp上の置換基は、例えば、線状、分岐または環状のヒドロカルビル基であってもよい。環状ヒドロカルビル基は、例えば、インデニル、アズレニルおよびフルオレニル基を含む他の隣接する環構造を更に形成し得る。これらの隣接する環構造も、例えば、CからC20ヒドロカルビル基などのヒドロカルビル基により置換されてもよく、または非置換であってもよい。
【0017】
本発明の一つ以上の態様は、インデニル配位子を含むメタロセン触媒系を包含する。例えば、このメタロセン触媒系はテトラヒドロインデニル配位子を包含してもよい。
【0018】
重合方法
本明細書中で示されているように、触媒系がポリオレフィン組成物の形成に使用される。触媒系を作製したならば、上述のようにおよび/または当該分野の熟練者には既知のように、その組成物を用いて種々の方法が実施され得る。重合工程で使用される装置、工程条件、反応試剤、添加物および他の材料は、形成されるポリマーの所望の組成物および性質によって与えられる工程で変わる。このような方法は、例えば、溶液相、気相、スラリ
ー相、バルク相、高圧法またはこれらの組み合わせを包含し得る(参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第5,525,678号;第6,420,580号;第6,380,328号;第6,359,072号;第6,346,586号;第6,340,730号;第6,339,134号;第6,300,436号;第6,274,684号;第6,271,323号;第6,248,845号;第6,245,868号;第6,245,705号;第6,242,545号;第6,211,105号;第6,207,606号;第6,180,735号および第6,147,173号を参照されたい)。
【0019】
ある態様では、上述の方法は、一般に、一つ以上のオレフィンモノマーを重合させて、ポリマーを形成することを包含する。オレフィンモノマーとしては、例えば、CからC30オレフィンモノマー、またはCからC12オレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンおよびデセン)が挙げられてもよい。モノマーとしては、例えば、オレフィン系不飽和モノマー、CからC18ジオレフィン、共役または非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマーおよび環状オレフィンが挙げられてもよい。他のモノマーの非限定的な例としては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびシクロペンテンが挙げられてもよい。形成されるポリマーは、例えば、ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを包含してもよい。
【0020】
溶液法の例は、参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第4,271,060号、第5,001,205号、第5,236,998号および第5,589,555号で述べられている。
【0021】
気相重合法の一つの例は、循環ガス流れ(再循環流れまたは流動媒体としても知られている)が反応器中で重合熱により加熱される、連続的な循環系を包含する。熱は、循環の別の部分で反応器の外の冷却系により循環ガス流れから除去される。一つ以上のモノマーを含有する循環ガス流れは、反応性条件下触媒の存在において流動床に連続的に循環されてもよい。循環ガス流れは、一般に、流動床から抜き出され、反応器に再循環される。同時に、ポリマー製品が反応器から抜き出され、重合済のモノマーを置き換えるために、新しいモノマーが添加されてもよい。気相法における反応器圧力は、例えば、約100psigから約500psig、または約200psigから約400psig、または約250psigから約350psigまで変わってもよい。気相法における反応器温度は、例えば、約30℃から約120℃、または約60℃から約115℃、または約70°から約110℃、または約70℃から約95℃まで変わってもよい(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,543,399号;第4,588,790号;第5,028,670号;第5,317,036号;第5,352,749号;第5,405,922号;第5,436,304号;第5,456,471号;第5,462,999号;第5,616,661号;第5,627,242号;第5,665,818号;第5,677,375号および第5,668,228号を参照のこと)。
【0022】
スラリー相法は、一般に、液体重合媒体中の固体の粒子状ポリマーの懸濁液を形成し、これにモノマーと、場合によっては水素を触媒と共に添加することを伴う。懸濁液(希釈剤を含むこともある)は、反応器から間欠的にまたは連続的に取り出され、そこで揮発性成分をポリマーから分離し、場合によっては蒸留した後で反応器に再循環することができる。重合媒体中で使用される液化希釈剤は、例えば、CからCアルカン(例えば、ヘキサンまたはイソブタン)を包含してもよい。使用される媒体は、一般に、重合の条件下で液体であり、比較的不活性である。バルク相法は、バルク相法においては液体媒体も反応試剤(例えば、モノマー)であることを除いて、スラリー法のそれに類似している。しかしながら、方法は、例えば、バルク法、スラリー法またはバルクスラリー法であっても
よい。
【0023】
具体的な態様では、スラリー法またはバルク法は、一つ以上のループ反応器中で連続的に実施されてもよい。触媒は、例えば、それ自身希釈剤中の成長ポリマー粒子の循環スラリーを充填させることができる反応器ループに、スラリーまたは乾燥した自由流動性粉末として規則的に注入されてもよい。場合によっては、水素は、得られるポリマーの分子量制御などのために、工程に添加されてもよい。ループ反応器は、例えば、約27バールから約50バールの、または約35バールから約45バールの圧力、および約38℃から約121℃の温度で維持されてもよい。反応熱は、例えば、二重ジャケット付きパイプまたは熱交換器によるなどの当該分野の熟練者に既知のいかなる方法によってもループ壁から除去されてもよい。
【0024】
別法としては、例えば、直列、並列、またはこれらの組み合わせの攪拌反応器などの他の形式の重合法が使用されてもよい。
【0025】
反応器から取り出したとき、ポリマーは、例えば、添加物の添加および/または押し出しなどの更なる処理のためにポリマー回収系に通されてもよい。特に、本発明の態様は、ポリマー回収系中で、当該分野の熟練者には既知の別の方法で行い得る、ポリマーと変成剤とのブレンド(すなわち、「変成」)を伴う。本明細書中で使用されるとき、用語「変成剤」は、液体ポリマーから半結晶性ポリマーへの相変化を有効に加速(結晶化速度により測定される)する添加物を指し、市販の核形成剤、透明剤およびこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
核形成剤は、オレフィンをベースとするポリマーの変成に当該分野の熟練者には既知である、いかなる核形成剤も包含し得る。例えば、核形成剤の非限定的な例としては、安息香酸ナトリウムを含むカルボン酸塩、タルク、リン酸塩、金属ケイ酸塩水和物、ジベンジリデンソルビトールの有機誘導体、ソルビトールアセタール、有機リン酸塩およびこれらの組み合わせが挙げられてもよい。一つの態様において、核形成剤は、Amfine Chemicalから市販されているAmfine Na−11およびNa−21と、Milliken Chemicalから市販されているHyperform HPN−68およびMillad3988から選択される。一つの具体的な態様では、変成剤としては、Milliken Chemicalから市販されているHyperform HPN−20Eが挙げられる。
【0027】
変成剤は、ポリマーの相変化を加速するのに充分な濃度でポリマーとブレンドされる。一つ以上の態様では、変成剤は、例えば、ポリマーの重量で約5ppmから約3000ppmの、または約50ppmから約1500ppmの、または約100ppmから約1000ppmの濃度で使用されてもよい。
【0028】
変成剤は、当該分野の熟練者に既知のいかなる方法によってもポリマーとブレンドされてもよい。例えば、本発明の一つ以上の態様は、エチレンをベースとするポリマーを変成剤と溶融ブレンドすることを伴う。
【0029】
変成剤は、ポリマーとのブレンドの前に「マスターバッチ」(例えば、上述のポリマーと同一であるかまたは異なる濃度のマスターバッチポリマーと組み合わされた)として形成されてもよいと考えられる。別法としては、変成剤は、ポリマーと「ニート」でブレンド(例えば、別の薬品と組み合わせずに)されてもよいと考えられる。
【0030】
ポリマー製品
本明細書で述べられている方法により形成されるポリマー(およびそのブレンド)とし
ては、例えば、線状低密度ポリエチレン、エラストマー、プラストマー、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0031】
一つ以上の態様では、ポリマーは、エチレンをベースとするものである。本明細書中で使用されるとき、用語「エチレンをベースとする」は、少なくとも約80重量%の、または少なくとも約85重量%の、または少なくとも約90重量%のポリエチレン、または少なくとも約95重量%のポリエチレンまたは少なくとも約98重量%のポリエチレンを有する、ポリマーを指す。
【0032】
本明細書では特記しない限り、試験方法は、出願の時点で最新の方法である。
【0033】
エチレンをベースとするポリマーは、例えば、約0.86g/ccから約0.97g/ccの、または約0.88g/ccから約0.965g/ccの、または約0.90g/ccから約0.965g/ccの、または約0.925g/ccから約0.97g/ccの密度(ASTM D−792により測定して)を有してもよい。
【0034】
一つ以上の態様では、ポリマーは中密度ポリエチレンである。本明細書中で使用されるとき、用語「中密度ポリエチレン」は、約0.92g/ccから約0.94g/ccの、または約0.926g/ccから約0.94g/ccの密度を有する、エチレンをベースとするポリマーを指す。別な態様では、ポリマーは高密度ポリエチレンである。本明細書中で使用されるとき、用語「高密度ポリエチレン」は、約0.94g/ccから約0.97g/ccの密度を有する、エチレンをベースとするポリマーを指す。
【0035】
エチレンをベースとするポリマーは狭い分子量分布を有してもよい。本明細書中で使用されるとき、用語「狭い分子量分布」は、例えば、約1.5から約8の、または約2.0から約7.5の、または約2.0から約7.0の分子量分布(M/M)を有する、ポリマーを指す。
【0036】
エチレンをベースとするポリマーは、例えば、約0.01dg/分から約100dg/分の、または約0.01dg/分から約25dg/分の、または約0.03dg/分から約15dg/分の、または約0.05dg/分から約10dg/分のメルトインデックス(MI)(ASTM D1238により測定して)を有し得る。
【0037】
一つ以上の態様は、シングルサイト遷移金属触媒系から形成されるエチレンをベースとするポリマーを包含する。一つの態様において、遷移金属触媒系は、メタロセン触媒系(本明細書ではこれ以降メタロセンポリエチレンと呼ばれる)を包含する。例えば、メタロセンポリエチレンは、TOTAL PETROCHEMICALS,USA,Inc.から市販されているFinacene(登録商標)m3410またはFinacene(登録商標)m2710を包含し得る。
【0038】
一つ以上の態様では、メタロセンエチレンをベースとするポリマーは、例えば、約1.5から約4.5の、または約2.0から約4.0の分子量分布を有し得る。
【0039】
一つ以上の態様は、チーグラー・ナッタ触媒系(本明細書ではこれ以降Z−Nポリエチレン)から形成されるエチレンをベースとするポリマーを包含する。例えば、Z−Nポリエチレンとしては、TOTAL PETROCHEMICALS,USA,Inc.から市販されているFinathene(登録商標)6410またはFinathene(登録商標)6420が挙げられてもよい。
【0040】
製品の用途
ポリマーおよびそのブレンドは、当該分野での熟練者には既知の成形操作(例えば、フィルム、シート、パイプおよび繊維の押し出しならびに共押し出しならびにブロー成形、射出成形および回転成形(rotary molding))などの用途で有用である。フィルムとしては、押し出しもしくは共押し出しにより、または積層により成形される、収縮フィルム、粘着フィルム、延伸フィルム、シールフィルム、配向フィルム、スナック包装、重作業用袋、買い物袋、調理食品および冷凍食品包装、医用包装、工業用ライニング材、および例えば、食品接触および非食品接触の用途における膜として有用な、ブロー成形フィルム、配向フィルムまたは流延フィルムが挙げられる。繊維としては、例えば、布袋、袋、ロープ、より糸、カーペット裏材、カーペット糸、フィルター、おむつ布地、医用衣類およびジオテキスタイルの作製用で織った形または不織の形で使用するためのスリットフィルム、モノフィラメント、溶融紡糸、溶液紡糸およびメルトブロー成形繊維操作品が挙げられる。押し出し物品としては、例えば、医用チューブ、電線及びケーブル用被覆材、シート、熱成形シート、ジオメンブランおよびポンドライナー(pond liner)が挙げられる。成形物品としては、例えば、瓶、タンク、大型中空物品、剛性食品容器および玩具の形の単層または多層の構造物が挙げられる。
【0041】
本発明の一つ以上の態様は、例えば、熱成形、延伸テープ、延伸モノフィラメント、一方向配向フィルム、二軸配向フィルム、固相押し出しおよび射出延伸ブロー成形などの固相延伸の適用においてポリマーを使用することを包含する。
【0042】
本発明の他の態様は、ブロー成形フィルムおよび流延フィルムなどの溶融成形フィルムにおいてポリマーを使用することを伴う。ブロー成形フィルムは、溶融ポリマーを環状ダイから押し出し、次いでブロー成形することにより成形されてもよい。次いで、得られる泡は、平坦化され、細片に切断され、ロールにかけられると、平らなフィルムのロールを生じる。対照的に、流延フィルムは、溶融ポリマーを押し出し機に通し、得られる薄い層を冷ロールの上に通して、冷ロールを形成することにより成形されてもよい。次いで、得られる冷ロールは、切断され、流延フィルムのロールとされる。
【0043】
しかしながら、核形成エチレンポリマーは、少なくとも一部、ポリエチレンの初期結晶成長速度が高く、核形成エチレンポリマーの延伸性を維持することができなくなることにより、固相延伸法により延伸することが困難であった。ポリエチレンを核形成する以前の試みは、それゆえ、線状低密度ポリエチレンと組み合わせる具体的な核形成剤の使用に絞られてきた。線状低密度ポリエチレンについては成功(結晶化速度の増大により測定されるような)が得られたが、中密度および高密度ポリエチレンなどの他のポリエチレンを核形成の可能性は実証されていない。
【0044】
本発明の態様は、例えば、靭性などの他の性質を著しく劣化させずに、透明性を含めて、性質を想定外に改善することを示した。一つ以上の態様は、例えば、同一方法および変成を行わないポリマーにより形成される物品と比べて、少なくとも約10%の、または少なくとも約15%の、または少なくとも約20%の、または少なくとも約25%の、または少なくとも約30%の、または少なくとも約35%の、または少なくとも約40%の、または少なくとも約45%の、または少なくとも約50%のヘイズ(ASTM D1003により測定して)の低下を形成される物品において生じた。一つ以上の態様は、例えば、同一方法および変成を行わないポリマーにより形成される物品と比べて、少なくとも約20%の、または少なくとも約25%の、または少なくとも約30%の、または少なくとも約40%の、または少なくとも約50%の、または少なくとも約60%の45°光沢(ASTM D2457により測定した)の増加を形成される物品において生じた。一つ以上の態様は、例えば、同一方法および変成を行わないポリマーにより形成される物品と比べて、少なくとも約15%の、または少なくとも約20%の、または少なくとも約25%
の、または少なくとも約30%の、または少なくとも約35%の、または少なくとも約40%の水蒸気透過速度(ASTM F1249により測定した)の減少を形成される物品において生じた。
【0045】
加えて、本発明の態様は、類似の変成ポリエチレンと比較して、想定以上に性質を改善することが示された。本明細書中で使用されるとき、用語「類似の変成ポリエチレン(a
similarly modified polyethylene)」は、本明細書で定義されている要求に合致しない変成ポリエチレン(上述のように変成剤とブレンドされたポリエチレン)を指す。例えば、「類似の変成ポリエチレン」は、上述の改善を有する物品を生じない変成ポリエチレンを指す。具体的には、「類似の変成ポリエチレン」は、少なくとも約10%のヘイズの低下を有する成形物品を生じない変成ポリエチレンを指す。
【0046】
一つ以上の態様は、例えば、類似の変成ポリエチレンと比べて、少なくとも約5%の、または少なくとも約8%の、または少なくとも約10%の、または少なくとも約12%のヘイズ低下を形成される物品において生じた。一つ以上の態様は、少なくとも約10%の、または少なくとも約15%の、または少なくとも約20%の、または少なくとも約25%の、または少なくとも約30%の、または少なくとも約40%の光沢増加を成形物品において生じた。一つ以上の態様は、例えば、類似の変成ポリエチレンと比べて、少なくとも約5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約15%、または少なくとも約20%または少なくとも約25%の水蒸気透過速度の減少を成形物品において生じた。
【0047】
加えて、本発明の態様は、フィルム加工時の摩擦係数(COF)の改善された制御を提供する。例えば、COF制御のための先行努力は、フィルムのコロナ処理を伴い、添加物のスリップ移行をしばしば生じた。
【0048】
しかしながら、変成剤および本明細書で述べられているポリマーのブレンドは、COFと比べて制御の増大を生じるということが観察された。例えば、本発明の一つ以上の態様は、例えば、約0.3から約0.5の範囲内でCOFを制御する能力を提供した。
【0049】
一つの具体的な態様では、上述のポリマーは、ブロー成形フィルムの成形に使用される。想定外のこととして、核形成されたブロー成形フィルムは、比較としてのバリアグレードの核形成ポリエチレンにより成形されるブロー成形フィルムが呈することのない、卓越した光学的性質(ヘイズおよび光沢の改善により示されるような)を呈する。
【0050】
一つの具体的な態様では、このポリマーは、流延フィルムの成形に使用される。上述のブロー成形フィルム態様により改善が認められたが、ブロー成形フィルムでの成功は、流延フィルムによる成功を保証しない。例えば、流延フィルムで使用される急速な冷却によって、変成剤は無効となり得る。
【0051】
しかしながら、本発明の態様、特に、本明細書で述べられているポリマーは、例えば、透明性の増加(ヘイズの減少、光沢の増加、光沢の更なる均一性)、収縮の低下および透過性の減少などの流延フィルムの性質の改善を実証した。流延フィルムは、同じように核形成ポリエチレンと比較して改善されたヒートシール性およびホットタック性と、減少した透過性を生じるということが更に認められた。
【0052】
一つの具体的な態様では、このポリマーは、ブロー成形物品の成形に使用される。
【0053】
本明細書で述べられている態様により成形されるブロー成形物品は、増加した透明性、光沢、バリア性のおよびサイクル時間(再結晶化温度の減少により証明されるように)を
呈するということが認められた。
【実施例】
【0054】
実施例1:種々のポリマー試料からブロー成形フィルムを成形した。TOTAL PETROCHEMICALS,USA,Inc.から市販されているM3410EP(0.934g/ccの密度および0.9dg/分のMIを有するメタロセンポリエチレン)から試料1Aを成形した。試料1Aを1000ppmのHPN−20E、Milliken Chemicalsから市販されている核形成剤と溶融ブレンドすることにより、試料1Bを成形した。TOTAL PETROCHEMICALS,USA,Inc.から市販されている6420(0.962g/ccの密度および2.0dg/分のMIを有するメタロセンポリエチレン)から試料1Cを成形した。試料1Cを1000ppmのHPN−20Eと溶融ブレンドすることにより、試料1Dを成形した。
【0055】
試料を混練し、ブロー成形フィルムを作製した。ブロー成形フィルムの性質を測定し、下記の表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
水蒸気透過速度、酸素透過速度およびヘイズの著しい減少を認めた。光沢の増加を認めた。フィルムの機械的性質では僅かな変化を認めた。
【0058】
加えて、中密度ポリエチレンならびに高密度ポリエチレンによって水蒸気透過速度(WVTR)の著しい低下(少なくとも20%)が可能であるということを認めた。
【0059】
実施例2:種々のポリマー試料からブロー成形フィルムを成形した。70重量%の核形成された(1000ppmのHPN−20E)M3410を30重量%の6420とブレンドすることにより、試料2Aを成形した。70重量%の核形成された(1000ppmのHPN−20E)6420を30重量%のM3410とブレンドすることにより、試料2Bを成形した。70重量%のM3410を30重量%の核形成された(1000ppmのHPN−20E)6420とブレンドすることにより、試料2Cを成形した。70重量%の6420を30重量%の核形成された(1000ppmのHPN−20E)M3410とブレンドすることにより、試料2Dを成形した。
【0060】
試料を混練し、2ミルのブロー成形フィルムを作製した。ブロー成形フィルムの性質を測定し、下記の表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
想定外のこととして、混合物のパーセント基準で予測されるよりも低い水蒸気透過速度および酸素透過速度を観察した。それゆえ、メリットのあるポリマーを核形成剤と組み合わせて相互にブレンドすることは、性質の指数的な改善を生み出すということが観察された。
【0063】
実施例3:種々のポリマー試料から流延フィルムを成形した。M3410EPから試料3Aを成形した。試料3Aを1000ppmのHPN−20Eと溶融ブレンドすることにより、試料3Bを成形した。メタロセンポリエチレン(MI3.6dg/分、T125.6℃および0.943g/ccの見積もり密度)から試料3Cを成形した。試料3Cをマスターバッチと溶融ブレンドして、2000ppmのHPN−20Eを有するポリエチレンを形成することにより、試料3Dを成形した。試料3Aを4重量%のHPN−20Eと合体することにより、このマスターバッチを形成した。
【0064】
試料3Aおよび3Bを流延して、16ミルのシートを成形し、試料3Cおよび3Dを流延して、2ミルシートを成形し、次いでこれを性質の改善のために評価した。下記の表3Aに性質を示す。
【0065】
【表3A】

【0066】
変成試料(3Bおよび3D)は、非変成試料(3Aおよび3C)から成形されるシートと比べて、ヘイズの低下および光沢の増加を、均一性の改善と共に呈するということが観察された。想定外のこととして、この薄いフィルム(2ミルシート)は、流延フィルムで使用される急速冷却にも拘わらず光学的性質の著しい改善を生じた。
【0067】
次いで、シートを4×4の面積延伸比で配向させることにより、成形シートの2つを延伸性能について評価した。表3Bに結果を示す。
【0068】
【表3B】

【0069】
変成は、試験された全延伸温度範囲にわたって延伸力を著しく増大させないということが観察された。しかしながら、この変成は、配向フィルムのヘイズを著しく低下させた(光沢の改善を伴って)。
【0070】
実施例4:種々のポリマー試料から瓶を成形した。TOTAL PETROCHEMICALS,USA,Inc.から市販されているM2710(0.927g/ccの密度および1.0dg/分のMIを有するメタロセンポリエチレン)により試料4Aを成形した。1000ppmのHPN−20EをM2710と溶融ブレンドすることにより、試料4Bを成形した。
【0071】
この試料をブロー成形して、瓶を成形し、次いでこれを性質の改善のために評価した。下記の表4に結果を示す。
【0072】
【表4】

【0073】
変成試料(4B)は、著しく高い透明性(ヘイズおよび光沢により示される)を有し、ヘイズ値が40%減少した(ブロー成形フィルムと類似)、瓶を成形するということが観察された。
【0074】
実施例5:種々のポリマー試料からブロー成形フィルムを成形した。1000ppmのHPN−20Eと溶融ブレンドされたM3410EPから、試料5Aを成形した。Chevron Phillips Chemicals,Inc.から市販され、1000ppmのHPN−20Eと溶融ブレンドされた、D350(0.933g/ccの密度および0.9dg/分のMIを有するメタロセンポリエチレン)から試料5Bを成形した。TOTAL PETROCHEMICALS,USA,Inc.から市販され、1000
ppmのHPN−20Eと溶融ブレンドされた、6420(0.962g/ccの密度および2.0dg/分のMIを有するチーグラー・ナッタポリエチレン)から試料5Cを成形した。Equistar Chemicals,Inc.から市販され、1000ppmのHPN−20Eと溶融ブレンドされた、L5885(0.958g/ccの密度および0.85dg/分のMIを有するチーグラー・ナッタポリエチレン)から試料5Dを成形した。
【0075】
試料を混練し、2ミルのブロー成形フィルムを作製した。ブロー成形フィルムの性質を測定した。下記の表5に示す。
【0076】
【表5】

【0077】
類似の変成ポリエチレンに比べて想定外の改善を認めた。特に、ヘイズおよび光沢の改善と組み合わせた水蒸気透過速度の著しい低下を試料5Aおよび5Cにより達成した。
【0078】
実施例6:種々のポリマー試料からブロー成形フィルムを成形した。M4707(0.947g/ccの密度および0.7dg/分のMIを有するメタロセンポリエチレン)から試料6Aを成形した。M2710(0.927g/ccの密度および0.9dg/分のMIを有するメタロセンポリエチレン)から試料6Bを成形した。試料6Aを5重量%のHPN−20Eのマスターバッチと溶融ブレンドすることにより、試料6Cを成形した。試料6Bを5重量%のHPN−20Eのマスターバッチと溶融ブレンドすることにより、試料6Dを成形した。
【0079】
試料を混練し、2ミルのブロー成形フィルムを作製した。ブロー成形フィルムの性質を測定し、下記の表6に示す。
【0080】
【表6】

【0081】
核形成時に透過性の著しい減少を観察した。加えて、摩擦係数(COF)の増加を観察した。
【0082】
前出のものはこの発明の態様に関するものであるが、本発明の他の態様および更なる態様が、その基本的な範囲から逸脱せずに考案され得、その範囲は次に続く特許請求の範囲
により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンをベースとするポリマーを提供し;
エチレンをベースとするポリマーを変成剤とブレンドして、変成ポリエチレンを形成し;変成ポリエチレンをポリマー物品に成形することを含み、
ポリマー物品が類似の変成ポリエチレンにより作製されたポリマー物品よりも少なくとも約10%小さいヘイズを呈する、ポリマー物品の成形方法。
【請求項2】
変成剤が核形成剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変成ポリエチレンが約50ppmから約3000ppmの変成剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エチレンをベースとするポリマーが少なくとも約90重量%のポリエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エチレンをベースとするポリマーが少なくとも約98重量%のポリエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エチレンをベースとするポリマーがシングルサイト触媒から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エチレンをベースとするポリマーがメタロセン触媒から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
メタロセン触媒がテトラヒドロインデニル配位子を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
エチレンをベースとするポリマーがチーグラー・ナッタ触媒から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
チーグラー・ナッタ触媒が、マグネシウムジアルコキシド化合物を逐次的に強力となる塩素化剤と接触させることにより形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
エチレンをベースとするポリマーが約15dg/分未満のメルトインデックス(MI)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
成形が固相延伸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
成形が変成ポリエチレンをフィルムにブローすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
エチレンをベースとするポリマーが約0.920g/ccから約0.970g/ccの密度を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
エチレンをベースとするポリマーが約0.926g/ccから約0.940g/ccの密度を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
エチレンをベースとするポリマーが約0.940g/ccから約0.970g/ccの密度を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
成形が変成ポリエチレンをフィルムに流延することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
成形が変成ポリエチレンをブロー成形することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
エチレンをベースとするポリマーが約1.5から約7.0の分子量分布を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法により成形される、ポリマー物品。
【請求項21】
ブロー成形フィルムを含む、請求項20に記載のポリマー物品。
【請求項22】
流延フィルムを含む、請求項20に記載のポリマー物品。
【請求項23】
ブロー成形物品を含む、請求項20に記載のポリマー物品。
【請求項24】
ポリマー物品が実質的に同一の方法および変成剤無添加のポリマーにより形成されるポリマー物品よりも少なくとも約35%小さいヘイズを呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
ポリマー物品が実質的に同一の方法および変成剤無添加のポリマーにより形成されるポリマー物品よりも少なくとも約50%大きい光沢を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
ポリマー物品が実質的に同一の方法および変成剤無添加のポリマーにより形成されるポリマー物品よりも少なくとも少なくとも約20%小さい水蒸気透過速度を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
ポリマー物品が類似の変成ポリエチレンにより作製されるポリマー物品よりも少なくとも約10%大きい光沢を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
ポリマー物品が類似の変成ポリエチレンにより作製されるポリマー物品よりも少なくとも約10%小さい水蒸気透過速度を呈する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
変成ポリエチレンを第2のエチレンをベースとするポリマーとブレンドすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
約0.926g/ccから約0.97g/ccの密度と、約1.5から約7の分子量分布を有するエチレンをベースとするポリマーを提供し;
エチレンをベースとするポリマーを核形成剤とブレンドして、変成ポリエチレンを形成し;
変成ポリエチレンをポリマー物品に成形することを含み、ポリマー物品が類似の変成ポリエチレンにより作製されたポリマー物品よりも少なくとも約10%小さいヘイズを呈する、ポリマー物品の成形方法。

【公表番号】特表2012−504688(P2012−504688A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530141(P2011−530141)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/058814
【国際公開番号】WO2010/039724
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】