説明

核磁気共鳴技法および他の用途のためのエマルジョンを生成するための組成物ならびに方法

本開示は、一部において、組成物およびエマルジョンを産生する方法を提供する。ある実施形態において、本開示のエマルジョンは、MRIを用いた炎症の検出および細胞追跡に使用することができる。本開示は、一部において、インビボでの標識化、検出および細胞数定量の方法を提供する。ある実施形態において、エマルジョンは、人工血液代用物として使用することができる。ある態様において、本出願は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、乳化剤、界面活性剤共混合物、および添加剤を含む水性組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2008年5月3日に出願された米国仮特許出願第61/126,305号および2008年6月17日に出願された米国仮特許出願第61/132,420号の出願日の利益を主張する。これらの出願の全教示は、本明細書において参考として援用される。
【0002】
(背景)
多くの生物学的プロセスは、細胞の集団によって実施される。たとえば免疫系の細胞は、血流から炎症または感染範囲に補充されて、罹患部位での免疫細胞の蓄積が生じる。免疫細胞の著しい浸潤は、自己免疫疾患、癌および感染症に罹患した組織に発生することが多い。同様に、移植片拒絶反応は、移植組織に侵入して破壊する宿主免疫細胞に媒介される。骨髄から生じる幹細胞が血流を通じて移動して、損傷組織の再生を補助するという証拠も強まりつつある。
【0003】
さらに、生物学的療法の最も即時に有望な領域は、新興の細胞療法の分野を含む。細胞療法は、体外、すなわちエキソビボで選択、増殖、および薬理学的に処置された治療細胞の投与によるヒト疾患の処置として広く定義されている。これらの細胞は、患者に(自己細胞)、他のヒトに(同種細胞)、他の生物に(異種細胞)、または不死化株化細胞に由来し得る。
【0004】
細胞が究極の治療系となるのは、複雑な機能を実施するその能力と、周囲組織または宿主生物における変化に対するその応答性のためである。細胞療法の最も単純な方式では、細胞を単離して、エキソビボで量を増殖させて、患者にインプラントして、疾患機構に直接対処する可溶性因子を産生および分泌させることができる。細胞は、組織、臓器、または免疫応答の再構成などの複雑な課題も、体内の特異的部位に復帰して、循環から退出して、特異的組織中に一体化または新たな組織に分化するその能力に基づいて達成することができる。他の細胞療法も、腫瘍致死または転移処置(たとえば免疫療法)のためにプログラムすることができる。
【0005】
動的細胞集合は重大な疾患で役割を果たすが、インビボでの細胞の位置および動きを監視するための現在の技術は、きわめて限定されている。通例、細胞の動きは、組織生検の組織学的分析によって得られる「スナップショット」においてのみ監視される。しかし、組織の試料採取のプロセスは、細胞の挙動を変化させることが多く、特定の組織または臓器から採取できる生検の数は、ごく限られている。インビトロアッセイおよびエキソビボの単離組織による細胞の動きを研究することで、多少の進歩がもたらされている。生物の非侵襲性分析のための既存の装置は、現在、生細胞の追跡に不適切である。光ベースの撮像技術、たとえば生物発光(たとえばルシフェラーゼ)技術が深部構造を描出するのに無効であることが多いのは、大半の哺乳動物組織が光学的に不透明なためである。放射活性標識プローブを使用する陽電子放出断層撮影(PET)技術は、高感度である。しかしPET装置は、分解能が数ミリメートルに限定されていることが多く、組織および臓器の微細な詳細を分解することができない。さらに標識細胞は、代表的なPET放射性同位体の半減期を超える期間では検出不可能であり、一般にPETは長期の研究には有用でない。細胞プロセスを根本的に理解するために、特異的細胞型のインビボでの集団動態を描出および定量する新たな方法を開発する必要がある。
【0006】
磁気共鳴撮像(MRI)は、非侵襲性であり、光学的に不透明な対象内の観察を可能にして、軟組織間に合理的に高い空間分解能にてコントラストを与えるため、幅広く使用されている臨床診断ツールである。従来のMRIは、ほとんど解剖学的構造を描出することだけに注目しており、いずれかの特定の細胞型に対する特異性は有していない。従来のMRIで使用される「プローブ」は、移動する水分子中に遍在するプロトン(H)である。生体対象の細胞特異的撮像を容易にするために、新たなクラスの外因性MRIプローブまたは試薬が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(要旨)
ある態様において、本出願は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、乳化剤、界面活性剤共混合物、および添加剤を含む水性組成物を開示する。ある実施形態において、界面活性剤共混合物は70mol%のレシチン、28mol%のコレステロールおよび2mol%のDPPEを含む。ある実施形態において、添加剤はプロピレングリコールである。ある実施形態において、乳化剤は非イオン性可溶化剤でもある。ある実施形態において、乳化剤はグリセロールポリエチレングリコールリシノレエート(ricinoleate)を含む。
【0008】
ある実施形態において、組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを20%〜50%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを25%〜35%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを30%〜40%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35%〜36%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35.6%w/vで含む。
【0009】
ある実施形態において、組成物は乳化剤を1%〜10%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物は乳化剤を1%〜5%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物は乳化剤を3%w/vで含む。
【0010】
ある実施形態において、組成物はプロピレングリコールを1%〜10%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はプロピレングリコールを1%〜5%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はプロピレングリコールを2%w/vで含む。ある実施形態において、組成物はレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む界面活性剤共混合物を1%〜10%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む界面活性剤共混合物を1%〜5%w/vの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む界面活性剤共混合物を2%w/vで含む。
【0011】
ある態様において、本出願は、35.6%w/vのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、3.0%w/vの乳化剤、2.0%w/vの、レシチン、コレステロールおよびDPPEを含む界面活性剤共混合物、ならびに2.0%w/vの、プロピレングリコールである添加剤を含む水性組成物を開示する。ある実施形態において、乳化剤は非イオン性可溶化剤でもある。ある実施形態において、乳化剤はグリセロールポリエチレングリコールリシノレエートを含む。
【0012】
ある態様において、本出願は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびブロックコポリマーを含む水性組成物を開示し、ここで組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを10%〜20%w/wの範囲で含み、組成物はブロックコポリマーを0.1%〜2.0%w/wの範囲で含む。ある実施形態において、ブロックコポリマーは、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含むトリブロックコポリマーである。あるこのような実施形態において、ブロックコポリマーは、PEOを80%の含有率で含むポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)トリブロックコポリマーである。
【0013】
ある実施形態において、組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを12%〜17%w/wの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを15%w/wで含む。ある実施形態において、組成物はブロックコポリマーを0.1%〜1.0%w/wの範囲で含む。ある実施形態において、組成物はブロックコポリマーを0.6%w/wで含む。
【0014】
ある態様において、本出願は、15%w/wのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよび0.6%w/wのブロックコポリマーを含む水性組成物を開示する。ある実施形態において、ブロックコポリマーは、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含むトリブロックコポリマーである。あるこのような実施形態において、ブロックコポリマーは、PEOを80%の含有率で含むポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)トリブロックコポリマーである。
【0015】
ある実施形態において、組成物はさらに、硫酸プロタミンを0.01%〜1.0%w/wの範囲で含む。ある実施形態において、組成物は硫酸プロタミンを0.01%〜0.5%w/wの範囲で含む。ある実施形態において、組成物は硫酸プロタミンを0.01%〜0.1%w/wの範囲で含む。ある実施形態において、組成物は硫酸プロタミンを0.04%w/wで含む。
【0016】
ある態様において、本出願は、本明細書に記載する実施形態のいずれか1つの組成物を含むエマルジョンを開示する。ある実施形態において、エマルジョンは、直径200nM未満の平均液滴径を有する。ある実施形態において、エマルジョンは、4℃〜37℃の範囲の温度で安定である。ある実施形態において、エマルジョンは、0.1〜0.2の多分散指数を有する。
【0017】
ある態様において、本出願は、高エネルギー方法を含む、本出願のエマルジョンを調製する方法を開示する。ある実施形態において、高エネルギー方法はマイクロフルイダイゼーション(microfluidaization)である。ある実施形態において、高エネルギー方法は超音波処理である。
【0018】
ある態様において、本出願は、細胞に標識する方法を開示し、方法は、フルオロカーボン造影試薬が細胞と結合するような条件下で、エキソビボで細胞に本出願のエマルジョンを接触させるステップを含む。
【0019】
ある態様において、本出願は、対象内の細胞を検出する方法を開示し、方法は:a)対象に本出願のエマルジョンによって標識された細胞を投与するステップと;b)対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより対象内の標識細胞を検出するステップとを含む。
【0020】
ある態様において、本出願は、移植レシピエント内の移植細胞を検出する方法を開示し、方法は:a)移植レシピエントに、その少なくとも一部が本出願のエマルジョンによって標識された移植用細胞を投与するステップと;b)対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより標識細胞を検出するステップとを含む。
【0021】
ある態様において、本出願は、インビボで細胞数を定量する方法を開示し、方法は:a)対象に本出願のエマルジョンによって標識された細胞を投与するステップと;b)対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより対象内の標識細胞を検出するステップと;c)関心領域(ROI)内の標識細胞の数を定量するステップとを含む。
【0022】
ある態様において、本出願は、インビボで白血球数を定量する方法を開示し、方法は:a)対象に本出願のエマルジョンを投与するステップと;b)対象から末梢血の試料を溢出させて(extravesating)、白血球の有効細胞ローディングを測定するステップと;c)対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより対象内の標識細胞を検出するステップと;d)関心領域(ROI)内の標識細胞の数を定量するステップとを含む。ある実施形態において、細胞ローディングを測定する前に細胞の集団を試料から選別して、前記細胞の割合を使用してROI内のその集団の標識細胞の数を定量する。
【0023】
ある態様において、本出願は、細胞を標識する方法を開示し、方法は、フルオロカーボン造影試薬が細胞と結合するような条件下で、細胞にインビボで本出願のエマルジョンを接触させるステップを含む。
【0024】
ある態様において、本出願は、対象内の細胞を検出する方法を開示し、方法は:a)対象に本出願のエマルジョンを投与するステップと;b)対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより対象内の標識細胞を検出するステップとを含む。
【0025】
ある態様において、本出願は、組織における酸素の分圧を測定する方法を開示し、方法は、フルオロカーボン造影試薬が組織と結合するような条件下で、組織にインビボで本出願のエマルジョンを接触させるステップを含む。
【0026】
ある態様において、本出願は、組織における血管透過性の上昇を検出する方法を開示し、方法は、フルオロカーボン造影試薬が組織と結合するような条件下で、インビボで組織に本出願のエマルジョンを接触させるステップを含む。
【0027】
ある態様において、本出願は、対象への投与のための標識細胞製剤を開示し、製剤は:a)細胞と;b)細胞と結合した本出願のエマルジョンとを含む。
【0028】
本発明は、本発明の上述の態様および実施形態のいずれの組合せも検討する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルを含有し、クレモホールELで乳化させたエマルジョン3について収集したデータを示す。A)動的光散乱(DLS)を測定して、エマルジョン液滴径分布を示した。B)標準貯蔵温度5℃での長期安定性(6カ月)を評価した。これらのデータは、時間に対して測定した平均直径および多分散性を示す(単位はどちらもnm)。C)エマルジョンの血清安定性を、血清存在下での直径および多分散性をDLSで測定することによって評価した。データはn=3の独立した測定の平均であり、平均±標準偏差(SD)として示す。
【図2】図2は、蛍光染料によって標識したナノエマルジョン3から収集したデータを示す。A)水中での、およびエマルジョンに結合した、染料濃度に対する蛍光強度依存性どちらも測定した。B)水中での、およびエマルジョンに結合した、DiIの蛍光放出スペクトルを得た。
【図3】図3は、蛍光染料DiIで標識した(点線)および未標識(実線)のナノエマルジョン3の液滴径の比較を示す。
【図4】図4は、ナノエマルジョン3の細胞毒性およびRAW細胞での摂取量を示す。A)細胞を異なる用量のナノエマルジョン3に3および24時間暴露させて、細胞生存率を細胞カウントによって評価した。B)18時間の暴露の後に19F NMRによってペレット化RAW細胞への摂取を測定した。データは、n=3の細胞ペレットの平均を表し、エラーバーは±SDである。
【図5】図5は、製剤3標識RAW細胞の代表的な19F NMRスペクトルを示す。トリフルオロ酢酸を化学シフト−76.00ppmの内部標準として使用したのに対して、標識細胞は−92.90ppmに示されている。
【図6】図6は、製剤3標識RAW細胞でのサイトカイン産生を示す。製剤3で標識したRaw細胞を平板培養して(1×10細胞/ml)、250ng/mlのLPSに暴露させた。24時間後に細胞上清を収集して、IL−6およびTNF−アルファの存在を試験した。サイトカイン測定値をELISAによって決定した。データは、2つの独立した実験の平均であり、平均±SDとして示す。
【図7】図7は、製剤1日後および342日後のナノエマルジョン5の平均液滴径を示す(それぞれ実線および点線)。データは、ナノエマルジョン5の長期安定性、小粒径および狭い粒径分布を示す。
【図8】図8は、マウスへ静脈内注射した製剤3および5の血中クリアランス時間を示す。2つの製剤は、比較可能な血中半減期を有する。動物のコホート(n=5)から注射後の別の時点に採取した連続血液試料の平均データは、19F NMRを使用して測定した。
【図9】図9は、ナノエマルジョン3を使用する炎症モデルにおける代表的なインビボ19F/H MRIデータを示す。19Fデータ(疑似カラー)は、移植前に完全フロイントアジュバントに浸漬した、外科的にインプラントされたスポンジを取り巻く炎症細胞が非常に局在化して蓄積していることを示す。H画像(グレースケール)によって、この麻酔マウスの解剖学的バックグラウンドが与えられている。
【図10】図10は、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)ラットの脊髄の下方への炎症プロフィールの定量を示す。EAEの臨床徴候(ステージ2)を示す動物にナノエマルジョン3の静脈内注射を投与し、48時間後にラットを殺処分して、脊髄の無傷の固定セグメントの高分解能19F NMRスペクトルを使用して炎症をアッセイした。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
1.概要
ある態様において、本開示は、細胞をエキソビボで核磁気共鳴造影試薬、たとえばフルオロカーボン造影試薬で標識して、インビボまたはエキソビボで標識細胞を定量するための新規方法および試薬を提供する。標識細胞は、本明細書に記載する方法に従って19F核磁気共鳴技法(たとえばMRI/MRS)によって検出および定量され得る。19F核磁気共鳴技法が生体系にとって優れた撮像ツールであるのは、内因性バックグラウンドシグナルが存在しないためである。フッ素は生物中に存在するとしても、非常に低いレベルで存在し、一般に液体状態核磁気共鳴技法によって検出可能な化学形ではない。これは、微細な解剖学的詳細の描出を提供しながら、特異的な細胞集団の選択的検出ができない、従来のH MRIとは全く異なる。本明細書で開示するある方法によって、生存対象における標識細胞の分布を描出するための体の全体または一部のスクリーニングが可能となる。19F核磁気共鳴によって検出された標識細胞の正確な解剖学的位置は、たとえば解剖学的詳細を与えるH MRI画像の重畳によって決定され得る。好ましい実施形態において、H画像は、確実に登録するために19F画像と同じ撮像セッションの間に(対象を移動させずに)に取得される。さらに、本明細書で開示する核磁気共鳴技法は、組織試料、切除した臓器および細胞培養物の場合などの、エキソビボの状況で効果的に利用され得る。本明細書で開示する撮像技術は、多数の生物学的および医学的問題に利用され得る。
【0031】
ある態様において、本発明の方法は、細胞をエキソビボで19F造影試薬で標識するステップと、標識細胞を対象に投与するステップと、対象内の標識細胞を検出するステップとを含み得る。標識される細胞は、粗細胞画分もしくは組織試料であり得るか、または細胞は標識前に培養する、および/または濃縮を受けさせてもよい。たとえば、標識前に蛍光活性細胞分取(FACS)によって、特定の細胞型を選択してもよい。興味のあり得る各種の異なる細胞型のための他の分取または選択濃縮方法が当分野で公知である。標識される細胞型はまた、造影試薬の性質によって制御され得る。たとえば、造影試薬の単純なコロイド状懸濁物は、食作用活性によって細胞により迅速に摂取される傾向があるだろう。別の例として、造影試薬は、細胞の特定の集団への造影試薬の選択的標的化を促進する標的部分と共に製剤され得るか、または標的部分に共有結合され得る。造影試薬は、下でさらに説明する。標識後、細胞はただちに投与され得るか、またはこのような細胞の使用目的に不適合ではない任意の方法で、貯蔵、さらに培養、精製、濃縮、分離もしくは処理され得る。
【0032】
ある態様において、標識細胞は治療目的で投与されるであろう。本明細書に記載する技術は、インビボまたはその他の所望の環境における、たとえば組織外植片としての細胞治療薬の輸送を監視するために使用され得る。骨髄細胞移植は、癌の切除療法のレシピエントで長年に渡って幅広く使用されている。各種の精製された細胞集団、たとえば造血幹細胞が濃縮された細胞集団も、骨髄の代わりに使用されている;たとえば細胞は、臍帯血または末梢血から収集され得る。幹細胞は血流に入った後、一般に骨髄に移動して、そこで新たな白血球細胞、赤血球細胞、および血小板の産生を開始する。この生着は通常、移植の約2〜4週間以内に生じる。伝統的に、生着は血球数を検査することによって頻繁に監視され、免疫機能の完全な回復には一般に、数カ月(自家移植のレシピエントの場合)から数年(同種または同系移植を受ける患者の場合)を要する。骨髄吸引による細胞試料採取は、移植細胞の機能に関する情報をさらに提供することができる。これらの監視技法は、移植される細胞(またはこのような細胞のある少量の画分)のエキソビボ標識によって増強することができ、それゆえ核磁気共鳴技法による移植細胞の位置および運動の非侵襲的監視が可能となる。骨髄非破壊的同種移植(すなわち強度減弱移植)は、いくつかの種類の癌を処置するのに有効であろう同様の細胞療法である。一般にこの技法は、より低い用量の放射線および/または化学療法薬ならびに制限された対宿主性移植片病(任意の残留する宿主癌細胞に対する移植片による免疫細胞の作用)に依存して、十分な抗癌活性はもちろんのこと、患者の造血系を回復するための移植細胞の造血潜在力を提供する。伝統的な切除移植片と同様に、本発明の技法を使用して、骨髄非破壊的同種移植の移植細胞の位置および運動を監視することができる。
【0033】
細胞治療薬も、治療用タンパク質の送達で使用するために開発されている。一実施形態において、細胞を単離して、エキソビボで量的に増殖させて、次にインプラントして、局所的に(たとえば酵素、サイトカイン、および神経伝達物質)または離れて(たとえばホルモンおよび成長調節因子)のどちらかで活性であり得る可溶性因子を産生および分泌することができる。細胞は、体内の特異的部位に復帰して、循環から退出して、周囲の組織中に一体化または分化して損傷組織を置き換えるその能力に基づいて、複雑な治療目的、たとえば組織、臓器、または免疫応答の再構築を達成するためにも患者に投与され得る。幹細胞療法も、神経障害、特に細胞死を特徴とする神経障害(たとえばパーキンソン病、脳卒中および外傷によって引き起こされた脳傷害)、心血管障害(たとえば心筋梗塞)、筋再生(たとえば悪液質または他の消耗性障害に罹患している患者において)、糖尿病における膵臓再生、肝臓再生などを含む無数の疾患に対して提案されている。各例において、細胞、またはそのサブ集団は、投与前に造影試薬によってエキソビボで標識することができ、それゆえインビボでこれらの細胞を監視することができる。核磁気共鳴技法によるインビボ監視は、たとえば投与した細胞の生存能力を評価するために有用であり得る。医師は、投与後に患者で標識細胞が検出される程度に応じて、投薬スケジュールを調整することができる。インビボ監視は、治療細胞が所望の位置に局在化したか否かを判定するのにも有用であり得る。一般に、インビボでの治療細胞の数および/または生存率と同様に、インビボでの治療細胞の移動挙動と治療結果との相関を調査することも可能であろう。このような相関が確立されているとき、治療細胞のインビボ撮像は、患者に利益となるであろう適切な投薬量、投与様式およびさらなる治療介入を選択するのに有用であり得る予後指標としても使用し得る。本発明のある撮像上の進歩によって、広範囲の細胞治療方法に利益がもたらされるのは、これらの撮像方法によって、治療細胞がインビボの所望の標的に送達されたか否か、送達時点、送達場所を検出できるためである。さらに、標識細胞の検出は、特定の臓器または組織などのROIにおける標識細胞の定量によって向上され得る。
【0034】
本明細書で開示する技術の利用の一例は、樹状細胞(DC)の追跡である。DCは、最も効率的な抗原提示細胞であることが公知であり、未変性T細胞を刺激して免疫応答を開始させる能力を有する。DCは体内での免疫応答の最も強力な刺激物質であるため、DCは患者の免疫系に対する腫瘍の「視感度」を向上させる可能な治療手法に相当する。DCは、開発中の腫瘍ワクチンの焦点である。各種の方法を使用して樹状細胞が腫瘍抗原にエキソビボで露出され、その後、学習した樹状細胞を再注入して、T細胞媒介腫瘍致死の発生を刺激する。WO2005072780に示された、本開示の実施形態をDCおよび他の細胞型の標識および追跡に利用するデータは、参照により本明細書に組み入れられている。
【0035】
DCに加えて、他の細胞型によって、癌および糖尿病などの他の疾患での免疫療法への可能性が示されているが、その進歩は、動物およびヒトへの移植後にその運動が観察できないことを含む多くの因子によって阻まれてきた。ナチュラルキラー(NK)細胞は、収集され、エキソビボで処置されて、移植されたときに、移転性腫瘍細胞を死滅させる能力を示した。エキソビボで処置され、移植されて癌免疫を促進するさらなる細胞型は、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球、および活性化キラー単球を含む。病原性細胞を攻撃する白血球であるT細胞の移植によって、臨床試験が開始されている膵臓癌を含む多様な癌に対する、ならびに多発性硬化症およびHIV感染に対する見込みが示されている。
【0036】
ある態様において、標識細胞は非治療目的で対象に投与される。たとえば細胞は、エキソビボで標識され、対象に投与され、次に標識細胞が検出されることができ、標識細胞はインビボでの未標識細胞と同様に挙動して、したがって内因性細胞集団の挙動を監視するために使用され得ることが期待される。監視は、細胞の運動を追跡する目的で、特に移動性が高いことが公知である細胞、たとえば免疫系の細胞、多くの種類の幹細胞および血行性(blood born)細胞の場合に使用され得る。監視は、インプラント部位での非移動性細胞の生存能力および付着力を追跡する目的でも使用され得る。筋肉、肝臓、膵臓、腎臓、脳または皮膚などの多くの組織の細胞は、比較的静止している傾向があるが、標識の消失は、高い死亡率、低い付着力、または他の情報を示し得る。最新の細胞培養および分取技法によって、各種の幹細胞型、免疫細胞型、および他の血液細胞型を含む、実質的にいずれの所望の細胞集団の選択的貯蔵および標識も可能となる。たとえば細胞表面マーカーを使用して、混合された細胞集合を分取して興味のある集団を精製することができる。WO2005072780およびUS provisional application No.60/792003に記載するように(そのどちらもその全体が参照により本明細書に組み入れられている)、T細胞および樹状細胞の両方がエキソビボで標識されて、インビボで検出され得る。
【0037】
一例として、標識免疫細胞は、患者内の免疫細胞の運動の検出可能な代理として使用され得る。免疫細胞は、癌およびアテローム性プラーク形成と同様に、炎症および自己免疫障害の宿主に関与して、そのマーカーである。一般的な方法として、免疫細胞の補充を含む任意のプロセスは、患者に標識免疫細胞を投与することによって、患者において検出され得る。特定の範囲での標識の蓄積によって、体のその部分で発生している免疫応答の程度の指標が与えられる。伝統的に、このような種類の研究には、生存対象と不適合である組織学的技法が含まれる。本開示のある方法によって、ヒト疾患の処置のための治療方法の開発が促進され得る。免疫細胞の選択された集団を非侵襲的、放射性同位体を用いずに追跡する能力は、多発性硬化症、糖尿病、臓器移植拒絶の監視、および癌などの基礎および臨床免疫学の多くの領域に影響を及ぼすことができる。たとえば腫瘍は、免疫細胞によって高度に浸潤されることが多い。標識細胞は対象内で撮像されて、腫瘍の位置を明らかにすることができ、いくつかの例では、非侵襲的検出スクリーンとして有用であり得る。大半の早期癌は消耗性の化学療法剤に頼ることなく外科手術によってただちに処置されるため、癌の早期検出は重大問題であった。同様に、他の炎症性疾患の進行は、患者における免疫細胞の動力学を追跡することによって監視され得る。免疫抑制療法の有効性も同様に評価され得る。臓器移植レシピエントの例では、レシピエントに、移植を受ける前に標識免疫細胞の用量を投与することができる。移植での免疫細胞の蓄積のインビボ監視は次に、拒絶の早期警告徴候として用いることができる。移植の場合、本明細書で開示する方法は、代わりの生検が臓器拒絶のリスクを上昇させることが周知であるため、特に所望である。
【0038】
さらなる一例として、骨髄細胞移植、または末梢血幹細胞移植で使用するための細胞は、本明細書に記載するようにエキソビボで標識して、投与して、核磁気共鳴技法によってインビボで監視され得る。このような監視は、レシピエント骨空洞におけるドナー細胞の生着はもちろんのこと、レシピエントにおける標識細胞の生存率および運動を評価するために使用され得る。医師は、レシピエントにおけるドナー細胞の輸送に関する情報を、処置の有望な成功または失敗の早期徴候として使用することができる。この種類の早期検出によって、医師はそれに従って移植後の治療計画を調整することができる。検出技術を利用することができる別の細胞癌治療法は、同種骨髄非破壊的、または強度減弱移植である。この処置は、癌細胞を破壊する移植片対腫瘍効果を上昇させるために、ドナーリンパ球注入によって使用され得る。ここで移植細胞の集団全体、または一部を注入前に標識することができる。次に核磁気共鳴技法を使用して、処置の有効性を示すことができる、体内で細胞が通る場所を決定できる。拒絶を最小限にするために同種細胞の用量を制限するのが望ましいことが多いので、細胞の輸送パターンを使用して用量が測定され得る。上の癌療法では、治療有効性を有すると考えられる移植細胞(たとえばCD34+幹細胞またはT細胞)の1つ以上のサブ集団に選択的に標識することが所望であり得る。
【0039】
さらなる例として、血管形成などの新たな組織の形成に関与する細胞を標識して、対象に投与し、検出して組織形成のホットスポットを確認することができる。たとえば平滑筋細胞および/または内皮前駆細胞は標識され、血流中に導入され得る。このような細胞は、血管形成活性の部位に蓄積することが予想される。血管形成活性は、月経周期、妊娠初期、動脈閉塞に応答した側副血管形成、腫瘍発達および創傷治癒などの生理学的および病理学的イベントに関連付けられ得る。同様に、細胞挙動を監視するために、線維芽細胞などの創傷治癒に関連する細胞を標識して、全身的にまたは損傷が疑われる部位に投与することができる。
【0040】
たとえば、心臓療法のための製剤を含む、標識した心筋細胞系統細胞凝集体またはそれから誘導された細胞を含有する薬剤または送達デバイスが、ヒトまたは動物の体の処置のために提供され得る。心筋細胞系統細胞は、心臓組織の収縮および/またはペースメーカー活性を再構成または補助する方法において患者に投与され得る(本明細書にその全体が組み入れられている、US Patent Application No.20060040389、20050112104、20050244384を参照)。
【0041】
本発明により、標識された心筋細胞系統細胞を使用して、疾患または変性によって損傷を受けた横紋心筋を再生または修復する。標識された心筋細胞系統細胞は、レシピエントの健常組織と一体化して、死んだまたは損傷を受けた細胞の機能を元に戻し、それにより心筋を全体として再生する。心筋は通常、修復能力を持たない。標識された心筋細胞系統細胞はたとえば、いくつかの主要な徴候:(i)虚血性心臓インプラント、(ii)鬱血性心不全患者のための療法、(iii)冠動脈バイパスグラフトを受けている患者のためのさらなる疾患の予防、(iv)伝導性組織再生、(v)血管平滑筋再生、および(vi)弁再生のために心筋再生で使用される。
【0042】
細胞の投与は、多様な処置によって心臓に向けることができる。局所投与が好ましい。間葉系幹細胞は、好ましい順に:自家、同種、または異種を含む、一連の供給源によることができる。この態様に対して、以下を含む複数の実施形態がある。本発明によって、これらの細胞の進行をインビボで監視することができる。
【0043】
心筋細胞系統細胞は、心筋細胞前駆細胞、または分化心筋細胞であり得る。分化心筋細胞は、心房または心室型であり得る、始原心筋細胞、結節性(ペースメーカー)心筋細胞;伝導心筋細胞;および作用性(収縮性)心筋細胞の1つ以上を含む。ある実施形態において、細胞は、衛星細胞などの筋肉前駆細胞を含有する筋肉試料(または他の試料)に由来する(US Patent Application No.20050244384)。ある実施形態において、細胞は、間葉系幹細胞(MSC)である(US Patent Application No.20050112104を参照)。
【0044】
「心筋細胞前駆体」は、(脱分化または再プログラミングを伴わずに)心筋細胞を含む子孫を生じることができる細胞として定義される。このような前駆体は、制限なく、心臓トロポニンI(cTnI)、心臓トロポニンT(cTnT)、筋節ミオシン重鎖(MHC)、GATA4、Nkx2.5、N−カドヘリン、ベータ1−アドレナリン受容体(ベータ1−AR)、ANF、転写因子のMEF−2ファミリ、クレアチンキナーゼMB(CK−MB)、ミオグロブリン、または心房性ナトリウム利尿因子(ANF)を含む、系統に特有なマーカーを発現し得る。
【0045】
ある例において、細胞は興味のある生体部位または構造と完全に関連付けられていることが判明しているので、標識細胞をこのような組織の描出を補助する目的のためのみに投与することができる。上述のように、免疫細胞は特徴的に腫瘍に浸潤する。したがって、標識免疫細胞は、腫瘍を描出する目的のために投与され得る。
【0046】
本明細書で開示する技術は、ヒト疾患の動物モデルの研究に利用され得る。疾患の各種の動物モデルは、1つ以上の細胞集団の動力学または生存の変化を証明し得る。このような細胞集団を標識して、動物に投与し、監視することができる。たとえば、糖尿病NODマウスモデルの膵臓への免疫細胞の浸潤が監視され得る。動物モデルの他の例は:実験的アレルギー性脳脊髄炎(多発性硬化症モデル)、神経膠肉腫腫瘍モデル、および臓器移植拒絶を含む。これらのモデルにおいて免疫細胞の表現型で定義された集合を追跡することによって、疾患病因の態様を解明して、治療薬による細胞輸送への影響を監視することができる。本方法はたとえば、動物モデルで所望の効果を有する薬物をスクリーニングするために使用され得る。薬物スクリーニングアッセイは、標識細胞を動物に投与するステップと、試験剤の存在下にて細胞をインビボで検出するステップとを含み得る。試験剤の存在と相関する細胞挙動の変化は、治療効果を示し得る。このような変化は、たとえば、試験剤による処置前および後の同じ動物、または別個の未処置動物を含む、好適な参照との比較によって検出され得る。試験剤に加えて、方法は運動計画、損傷、遺伝子変化などの試験条件の効果を評価するために使用され得る。一例として、自己免疫疾患の処置のための薬物は、免疫細胞が罹患組織に蓄積する傾向を低下させるであろうことが予想される。定常状態評価に加えて、本明細書で開示する方法は、細胞の動態特性、たとえば細胞が特定の部位に到着する速度および部位でのシグナル持続時間を評価するために使用され得る。薬物スクリーニングアッセイは、厳密に定義された細胞集団、たとえば各種の障害に関与するある群の免疫細胞のインビボ監視と組合せたときに特に強力であり得る。たとえば標識された細胞毒性T細胞の監視は、移植拒絶を予防するのに有用であり得る薬物を同定するのに特に有用であり得る。インビボで細胞を監視する能力によって、たとえば産生された各種のトランスジェニックまたはそうでなければ他のミュータントマウスを含む、本質的にいずれの実験動物の分析にも利用され得る強力なアッセイが提供される。
【0047】
複数のグループが、MRI造影剤を使用する免疫細胞の標識化および描出を研究してきた。他の研究者らは、MRI造影剤を使用して、幹細胞および神経細胞前駆体などの細胞型を標識している。これらの研究の大部分によって、超常磁性酸化鉄(SPIO)剤の包含によって細胞が磁気的に区別可能となる。他の種類の金属イオン、特にカドリニウムおよびマンガンを包含する造影剤によって標識された細胞も使用されてきた。これらの金属イオンベース剤を利用する研究では、化合物は直接撮像されない;代わりに、周囲の水に対する間接的な効果が観察される。薬剤の存在によって、化合物に近接した水の緩和時間(T、T、またはT)が短縮する傾向にある;これらの効果は、緩和時間重み付け画像で検出することができる。たとえばSPIO剤は、付近の可動水分子が遭遇する磁場を局所的に摂動させて、次にT、T、またはTを調節することによって、従来のH画像にコントラストを与える。本明細書に記載する方法が金属イオンベース造影剤を使用するすべての方法と明確に異なるのは、造影試薬中の19F核からのシグナルが直接検出され、場合により撮像され得るためである。
【0048】
金属イオンベース造影剤を使用して標識細胞を検出することに固有の欠点は、標識細胞を含有すると考えられる領域におけるグレースケールコントラストの微細な変化を解釈することが必要な状況でよくある欠点だということである。組織に存在する高濃度の移動する水のからの高いHバックグランドシグナルによって、標識細胞を含有する領域を明確に識別することが困難になり得る;このことは、標識された細胞分布が経験的に知られていない場合に、特に問題となる。「スナップショット」画像の結果は、標識細胞が特異的組織に存在するか否かに関して不明瞭であることが多い。このことは、肝臓または脾臓などの、解剖学的(TまたはT重み付け)画像では本質的に暗色に見える担鉄臓器でSPIO標識細胞を検出しようとするときに、特に悩ましい問題である。標識細胞が蓄積したことを検証するために、数時間の期間にわたる特定の臓器の経時的な画像強度変化の検出に頼る必要がある。さらに、金属イオンベース造影剤を使用する関心領域におけるインビボでの標識細胞の定量には問題があり、一般に、緩和時間重み付けMRIを使用して、または定量的緩和時間MRIマップを使用することによる、これを行うための簡単で信頼性の高い方法はない。
【0049】
ある実施形態において、本出願の組成物は、19F−MR分光法(MRS)、撮像(MRI)、および分光撮像(MRSI)に用途が見出され得る。
【0050】
本出願の別の態様において、本出願のエマルジョンは、常在するマクロファージおよび単球のインサイチュー標識化に使用され得る。本出願において、エマルジョンのボーラスは、直接、静脈内(iv)注射される。ここでエマルジョンは、安全なiv注射のために、適切に緩衝される(たとえば生理学的に安全なpH、容量オスモル濃度(osmality)など)。注射後、エマルジョン液滴は常在する食作用細胞、たとえば好中球、マクロファージおよび単球によって血液から除去される。これらの標識細胞は、体内の炎症性イベントに関与する。十分な数のこれらのインサイチュー標識細胞が部位に蓄積したとき、標識細胞は19F MRI/MRSを使用してインビボで、または切除されて(生検、剖検組織)検出可能になる。(インビボまたはエキソビボで測定した)組織中に存在する19F核の絶対数または19Fシグナルの量は、存在する炎症の程度または範囲に直接相関している。ある実施形態において、19Fシグナルは、炎症診断薬、定量的バイオマーカーまたは炎症指標である。
【0051】
ある実施形態において、エマルジョンボーラスがiv注射されると、エマルジョン液滴は腫瘍まで移動する、常在の食細胞によって取り込まれる。腫瘍における19Fの検出は、腫瘍の位置はもちろんのこと、そのマクロファージまたは炎症活性の分布および範囲も識別する診断ツールである。さらに、エマルジョンの主成分であるペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルは、酸素を配位または結合することが公知である。当分野では、この分子が酸素の存在下で、酸素の局所部分圧(pO2)に線形的に比例する量によって短縮された、その19F NMR緩和時間(T、TおよびT)を有することが公知である。特に、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルの19Fスピン格子緩和時間(T)は、pO2に非常に感受性である(C.H.Sotakら、Magn.Reson.Med.29,188(1993))。それゆえ腫瘍中の間質性およびマクロファージ包含ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルのT1測定値を使用して、多様な癌治療薬の効力の感受性マーカーであり得るpO2を測定することができる。ある実施形態において、本出願のエマルジョンを使用して、低酸素症または高酸素症がアッセイされ得る。ある実施形態において、組織のpO2感知は、組織中へのエマルジョンの直接注射によって実現される。
【0052】
本出願のエマルジョンを使用して、炎症が存在する広範囲の病変および疾患を検出することができる。あるこのような実施形態において、疾患は、癌、心血管疾患、炎症性腸疾患、自己免疫疾患(たとえば多発性硬化症、関節リウマチ、1型糖尿病、狼瘡、クローン病、視神経炎など)、臓器移植拒絶、感染性疾患、ならびに外傷性脳および脊髄損傷から成る群より選択される。
【0053】
ある実施形態において、本出願のエマルジョンを使用して、肝臓の病変がその臓器でのエマルジョン分布の19F画像によって撮像され得る。iv注射される本出願のエマルジョンは、肝臓によって除去され、肝細胞によって取り込まれ得る。肝臓の病変によって、エマルジョン取り込みおよび19F画像強度の異常で不均一な分布が生じ得る。
【0054】
本出願のさらなる態様において、本出願のエマルジョンは、組織酸素添加のプローブとして使用され得る。ある実施形態において、本出願のエマルジョンは、19F MRS/MRIを使用する組織のpO2のセンサとして作用することができる。ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルは酸素を配位して、それによりその19F T値を数倍変化させる。それゆえ、(たとえばT1Iの画像マップを使用する)MRSまたはMRIのどちらかによる19F T1の測定値によって、pO2の定量的測定値が与えられる。(Taylor J,and Deutsch C.Biophys J 53:227−233,1988;Mason,R.P.;Rodbumrung,W.;Antich,P.P.NMR Biomed 9:125−134;1996;Laukemper−Ostendorf,S.;Scholz,A.;Burger,K.;Heussel,C.P.;Schmittner,M.;Weiler,N.;Markstaller,K.;Eberle,B.;Kauczor,H.U.;Quintel,M.;Thelen,M.;Schreiber,W.G.Magn Reson Med 47:82−89;2002;およびKim,J.G.;Zhao,D.;Song,Y.;Constantinescu,A.;Mason,R.P.;Liu,H.J Biomed Opt8:53−62;2003を参照;そのすべては参照により本明細書に組み入れられている)。
【0055】
本出願の別の態様において、本出願のエマルジョンは、たとえば腫瘍などの血管透過性の高い領域に蓄積する。ある実施形態において、本出願のエマルジョンを使用すると、組織の灌流をアッセイすること、組織中の血液量を決定する可能性を与えること、選択的に緩和時間を短縮するまたは血液密度を低下させること、および血管透過性を図で描出することができる。ある実施形態において、本出願のエマルジョンは、悪性腫瘍の特異的診断、細胞増殖抑制、消炎または血管療法における早期療法管理、(たとえば心筋における)潅流不良領域の早期検出、血管疾患での血管造影、ならびに無菌性または感染性炎症の検出および診断に使用され得る。
【0056】
本出願のまた別の態様において、本出願のエマルジョンは、人工酸素担体または人工血液代用物として使用され得る(US Patent Publication No.20040057906、US Patent Nos.4838,274および5,785,950ならびにWO 96/40057を参照、そのすべては参照により本明細書に組み入れられている)。ある実施形態において、エマルジョンはインビボまたはエキソビボで使用され得る。本開示のエマルジョンは、単位体積当りの酸素、二酸化炭素、および空気を含む大量のガスにエマルジョンを溶解させることができる。したがって、フルオロカーボン(FC)およびペルフルオロカーボン(PFC)は、酸素が臓器および組織に供給されねばならない用途で担体として使用され得る。
【0057】
それゆえ、本明細書に開示する方法および組成物は、医学および生物学の分野で非常に必要とされるツールを提供する。
【0058】
2.エマルジョン
主題の方法で使用される造影試薬は、フルオロカーボン、すなわち少なくとも1個の炭素−フッ素結合を含む分子である。本明細書で開示する造影試薬は、19F原子のために、19F MRIおよび他の核磁気共鳴技法、たとえばMRS技法によって検出され得る。ある好ましい実施形態において、フルオロカーボン造影試薬は、以下の特性:1)細胞毒性の低下;2)単純であり、化学シフトアーチファクトを最小化するために、単一の狭い共鳴を理想的に有する、19F NMRスペクトル;3)各分子中に多数のNMR同等フッ素原子を有し、高感度;4)食作用細胞に限定されず、多くの細胞型の効率的な標識を可能にするように製剤される;の1つ以上を有するであろう。好ましくは、造影試薬は、炭素に結合された複数のフッ素、たとえば炭素に結合された5個を超える、10個を超える、15個を超えるまたは20個を超えるフッ素を含む。好ましくは、フッ素の少なくとも4個の、少なくとも8個の、少なくとも12個のまたは少なくとも16個がほぼ同等のNMR化学シフトを有する。
【0059】
培養物中の細胞の標識化には、造影試薬は、少なくとも3つの様式:1)任意の共有または他の結合会合の形成を伴わずに、標的細胞によって内部移行またはそうでなければ吸収される造影試薬;2)標的細胞に共有付着する造影試薬;および3)標的細胞に存在する分子に結合する、抗体またはリガンドなどの分子にカップリングされた造影試薬;の1つ以上で使用することができる。
【0060】
第1の種類の造影試薬は、細胞によって取り込まれ、好ましくは実質的な期間にわたって劣化せずに細胞中に保持され、たとえば少なくとも1時間の、少なくとも4時間の、少なくとも約1日の、少なくとも約3日の、または約1週間もの細胞中の半減期を有する、ペルフルオロクラウンエーテルおよび他のペルフルオロポリエーテル(PFPE)を含む。明白な理由で、造影試薬が普通の細胞機能を妨害せず、または標識化に使用した濃度で細胞毒性を示さないことが好ましい。本明細書で示すように、ペルフルオロポリエーテルは、標識細胞に対して低い毒性効果を示す。
【0061】
第2の種類の造影試薬は、細胞表面の求核部位、たとえば露出されたチオール、アミノ、および/またはヒドロキシ基と反応する求電子化合物を含む。したがって、造影試薬、たとえばマレイミド、ヨウ化アルキル、N−ヒドロキシスクシンイミドまたはN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(NHSまたはスルホ−NHSエステル)、アシルスクシンイミドなどは細胞表面との共有結合を形成することができる。タンパク質カップリングで使用される他の技法は、細胞表面タンパク質への造影試薬のカップリングに適応させることができる。このようなカップリングのさらなる手法については、Meansら(1990)Bioconjugate Chemistry 1:2−12を参照。
【0062】
第3の種類の造影試薬は、第2の種類の造影試薬を、細胞自体ではなく、細胞標的リガンドまたは抗体である官能性部分と反応させることによって調製することができる。興味のある用途のために、好適なリガンドおよび抗体を選択することができる。たとえば造血細胞を選択的に標的とするリガンドは、本明細書に記載するように造影試薬によって標識して、注射などによって患者に投与することができる。
【0063】
代わりに、造影試薬を無差別内部移行ペプチド、たとえばアンテペナペディアタンパク質、HIVトランス活性化(TAT)タンパク質、マストパラン、メリチン、ボンボリチン、デルタヘモリシン、パルダキシン、緑膿菌外毒素A、クラスリン、ジフテリア毒素、C9補体タンパク質、またはこれらのいずれかの断片にカップリングすることができる。この無差別分子によってエキソビボで処置された細胞は、造影試薬を吸収するであろう。このような標識細胞が動物、たとえば哺乳動物中にインプラントされる場合、造影試薬を使用して核磁気共鳴技法によって移植細胞を描出および/または追跡することができる。
【0064】
一実施形態において、内部移行ペプチドは、ドロソフィラ・アンテペナペディア・タンパク質、またはそのホモログに由来する。ホメオタンパク質アンテペナペディアの60アミノ酸長ホメオドメインは、生体膜を通じて転位することが示されており、それがカップリングされた異種ポリペプチドの転位を促進することができる。たとえばDerossiら(1994)J Biol Chem 269:10444−10450;およびPerezら(1992)J Cell Sci 102:717−722を参照。このタンパク質の16アミノ酸長という短い断片が内部移行を促進するのに十分であることが示されている。Derossiら(1996)J Biol Chem 271:18188−18193を参照。
【0065】
内部移行ペプチドの別の例は、HIVトランス活性化(TAT)タンパク質である。このタンパク質は、4個のドメインに分割されるように思われる(Kuppuswamyら(1989)Nucl.Acids Res.17:3551−3561)。精製TATタンパク質は、組織培養物中で細胞によって取り込まれ(Frankel and Pabo,(1989)Cell 55:1189−1193)、ペプチド、たとえばTATの残基37−62に対応する断片は、インビトロで細胞によって迅速に取り込まれる(Green and Loewenstein,(1989)Cell 55:1179−1188)。高塩基性領域は、内部移行および内部移行部分の核への標的化を媒介する(Rubenら(1989)J.Virol.63:1−8)。高塩基性領域に存在する配列を含むペプチドまたは類似体は、フッ素化造影試薬にコンジュゲートされて、内部移行およびこれらの試薬の細胞内環境への標的化を補助することができる。
【0066】
本発明は、造影試薬を含む新規組成物を提供する。たとえば、本発明は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、乳化剤、界面活性剤共混合物、および添加剤を含む水性組成物を提供する。ある実施形態において、界面活性剤共混合物は、レシチン(すなわちリポイド卵ホスファチジルコリン)、コレステロールおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含む。あるこのような実施形態において、界面活性剤共混合物は、70mol%のレシチン;28mol%のコレステロール;および2mol%のDPPIを含む。ある実施形態において、添加剤はプロピレングリコールである。
【0067】
本明細書で使用するように、「PFPEオキシド」という用語は、ペルフルオロポリ(エチレングリコール)ジアルキルエーテル(たとえばExfluor Inc.,TXから購入可能)を指し、
【0068】
【化1】

式中、Rfは、19F NMR分析に基づいて2:1の比のCFおよびCFCFである。
【0069】
ある実施形態において、乳化剤は非イオン性可溶化剤でもある。ある実施形態において、乳化剤はグリセロールポリエチレングリコールリシノレエートを含む。あるこのような実施形態において、乳化剤は、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、遊離ポリエチレングリコール、およびエトキシ化グリセロールをさらに含む。ある実施形態において、乳化剤は、ヒマシ油およびエチレンオキシドを1:35のモル比で反応させることによって調製される。例示的な乳化剤は、BASFコーポレーションから入手可能であり、クレモホール(登録商標)ELという商品名で販売されている。
【0070】
ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを20%〜50%w/vの、たとえば25%〜45%w/vの、たとえば30%〜40%w/vの範囲で、たとえば30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%w/vで含む。あるこのような実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35%〜36%w/vの範囲で、たとえば35.1%、35.2%、35.3%、35.4%、35.5%、35.6%、35.7%、35.8%、または35.9%w/vで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35.6%w/vで含む。
【0071】
ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、クレモホール(登録商標)ELを1%〜10%w/vの、たとえば1%〜5%w/vの範囲で、たとえば1%、2%、3%、4%、または5%w/vで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、クレモホール(登録商標)ELを3%w/vで含む。
【0072】
ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、およびプロピレングリコールを含む水性組成物は、プロピレングリコールを1%〜10%w/vの、たとえば1%〜5%w/vの範囲で、たとえば1%、2%、3%、4%、または5%w/vで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、およびプロピレングリコールを含む水性組成物は、プロピレングリコールを2%w/vで含む。
【0073】
ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、添加剤(たとえばプロピレングリコール)、およびレシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を含む水性組成物は、レシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を1% 〜10%w/vの、たとえば1%〜5%w/vの範囲で、たとえば1%、2%、3%、4%、または5%w/vで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、添加剤(たとえばプロピレングリコール)、およびレシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を含む水性組成物は、レシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を2%w/vで含む。
【0074】
ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール) を含む水性組成物は、ポリエチルアミンをさらに含む。あるこのような実施形態において、水性組成物は、ポリエチルアミンを0.01%〜5.0%w/wの範囲で含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、添加剤(たとえばプロピレングリコール)、およびポリエチルアミンを含む水性組成物は、硫酸プロタミンをさらに含む。あるこのような実施形態において、水性組成物は、硫酸プロタミンを0.01%〜5.0%w/wの範囲で含む。
【0075】
ある実施形態において、本発明は、35.6%w/vのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、3.0%w/vのクレモホール(登録商標)EL、2.0%w/vの界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および2.0%w/vの添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物を提供する。
【0076】
エマルジョンおよびナノエマルジョンという用語は本出願で使用するように、別途特に指摘しない限り、同等である。ある実施形態において、エマルジョンは、ポリエチレンおよびポリプロピレングリコールのブロックコポリマーをさらに含み得る。ある実施形態において、エマルジョンは、プルロニック(商標)をさらに含み得る。非イオン性プルロニック(商標)界面活性剤、ポリエチレンオキシド(PEO)/ポリプロピレンオキシド(PPO)/ポリエチレンオキシド(PEO)ブロック(ABA型)、(PEO/PPO/PEO)ブロックコポリマーは、広範囲の親水性/疎水性をPEO/PPO比の関数として示すので、PLAなどのポリマーを含む異なる相分離形態はもちろんのこと、マトリクスの異なる水和度が得られることが期待できる。特に水和は、エステル主鎖の加水分解によるポリマー分解を判断するのに重要な役割を果たす。これらのポリマー界面活性剤は、インビボで最小限の毒性を示し、そのいくつかは、BASF Corporationによる1989 Technical Bulletin;Attwoodら、Int.J.Pharm.26,25(1985);およびKrezanoskiに対するU.S.Pat.No.4,188,373に記載されているように臨床使用されている。これらの物質は、BASFコーポレーションから入手可能である。ある実施形態において、本発明のエマルジョンは、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドを含むトリブロックコポリマーをさらに含む。
【0077】
ある実施形態において、本発明のエマルジョンは、PEOを80%の含有率で含む、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)のトリブロックコポリマーを含む。あるこのような実施形態において、トリブロックコポリマーの親水性−親油性バランス(HLB)値は29であり、ここでHLB値は以下の式から計算できる:
【0078】
【数1】

式中、nはポリマーのPEOセグメント中の反復単位の数を表し、mはポリマーのPPOセグメント中の反復単位の数を表す。例示的なトリブロックコポリマーは、BASF Corporationから入手可能であり、プルロニック(商標)F68の商品名で販売されている。
【0079】
本発明は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物をさらに提供する。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5またはPFPEオキシドエーテルを10%〜20%w/wの、たとえば12%〜17%w/wの範囲で、たとえば12%、13%、14%、15%、16%、または17%w/wで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを15%w/wで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、プルロニック(商標)F68を0.1%〜2.0%w/wの、たとえば0.1%〜1.0%w/wの範囲で、たとえば0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1.0%w/wで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、プルロニック(商標)F68を0.6%w/wで含む。
【0080】
ある実施形態において、本発明は、15%w/wのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよび0.6%w/wのプルロニック(商標)F68を含む水性組成物を提供する。
【0081】
ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、硫酸プロタミンをさらに含む。あるこのような実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、プルロニック(商標)F68、および硫酸プロタミンを含む水性組成物は、硫酸プロタミンを0.01%〜1.0%w/wの、たとえば0.01%〜0.5%w/wの、たとえば0.01%〜0.10%w/wの範囲で、たとえば0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.10%w/wで含む。ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、プルロニック(商標)F68、および硫酸プロタミンを含む水性組成物は、硫酸プロタミンを0.04%w/wで含む。
【0082】
ある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、ポリエチルアミンをさらに含む。ある実施形態において、本発明は、15%w/wのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、0.6%w/wのプルロニック(商標)F68および0.04%w/wの硫酸プロタミンを含む水性組成物を提供する。
【0083】
本発明は、細胞による取り込みに好適である、上述のような本発明の組成物の製剤も提供する。たとえば、本発明の組成物は、エマルジョンとして製剤され得る。一例として、本発明は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物、および添加剤を含む水性組成物を含むエマルジョンを提供する。ある実施形態において、界面活性剤共混合物は、レシチン、コレステロールおよびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)を含む。あるこのような実施形態において、界面活性剤共混合物は、70mol%のレシチン;28mol%のコレステロール;および2mol%のDPPIを含む。ある実施形態において、添加剤はプロピレングリコールである。
【0084】
上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを20%〜50%w/vの、たとえば25%〜45%w/vの、たとえば30%〜40%w/vの範囲で、たとえば30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%w/vで含む。上述のエマルジョンのあるこのような実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35%〜36%w/vの範囲で、たとえば35.1%、35.2%、35.3%、35.4%、35.5%、35.6%、35.7%、35.8%、または35.9%w/vで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35.6%w/vで含む。
【0085】
上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、クレモホール(登録商標)ELを1%〜10%w/vの、たとえば1%〜5%w/vの範囲で、たとえば1%、2%、3%、4%、または5%w/vで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、および添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物は、クレモホール(登録商標)ELを3%w/vで含む。
【0086】
上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、およびプロピレングリコールを含む水性組成物は、プロピレングリコールを1%〜10%w/vの、たとえば1%〜5%w/vの範囲で、たとえば1%、2%、3%、4%、または5%w/vで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)、およびプロピレングリコールを含む水性組成物は、プロピレングリコールを2%w/vで含む。
【0087】
上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、添加剤(たとえばプロピレングリコール)、ならびにレシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を含む水性組成物は、レシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を1%〜10%w/vの、たとえば1%〜5%w/vの範囲で、たとえば1%、2%、3%、4%、または5%w/vで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、クレモホール(登録商標)EL、添加剤(たとえばプロピレングリコール)、ならびにレシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を含む水性組成物は、レシチン、コレステロール、およびDPPEを含む界面活性剤共混合物を2%w/vで含む。
【0088】
ある実施形態において、本発明は、35.6%w/vのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、3.0%w/vのクレモホール(登録商標)EL、2.0%w/vの界面活性剤共混合物(たとえばレシチン、コレステロールおよびDPPEを含む)および2.0%w/vの添加剤(たとえばプロピレングリコール)を含む水性組成物を含むエマルジョン提供する。
【0089】
本発明は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物を含むエマルジョンをさらに提供する。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを10%〜20%w/wの、たとえば12%〜17%w/wの範囲で、たとえば12%、13%、14%、15%、16%、または17%w/wで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを15%w/wで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、プルロニック(商標)F68を0.1%〜2.0%w/wの、たとえば0.1%〜1.0%w/wの範囲で、たとえば0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%または1.0%w/wで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、プルロニック(商標)F68を0.6%w/wで含む。
【0090】
ある実施形態において、本発明は、15%w/wのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよび0.6%w/wのプルロニック(商標)F68を含む水性組成物を含むエマルジョンを提供する。
【0091】
上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドおよびプルロニック(商標)F68を含む水性組成物は、硫酸プロタミンをさらに含む。上述のエマルジョンのあるこのような実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、プルロニック(商標)F68、および硫酸プロタミンを含む水性組成物は、硫酸プロタミンを0.01%〜1.0%w/wの、たとえば0.01%〜0.5%w/wの、たとえば0.01%〜0.10%w/wの範囲で、たとえば0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.10%w/wで含む。上述のエマルジョンのある実施形態において、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、プルロニック(商標)F68、および硫酸プロタミンを含む水性組成物は、硫酸プロタミンを0.04%w/wで含む。
【0092】
ある実施形態において、本発明は、15%w/wのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、0.6%w/wのプルロニック(商標)F68、および0.04%w/wの硫酸プロタミンを含む水性組成物を含むエマルジョンを提供する。
【0093】
ある実施形態において、本発明の組成物およびエマルジョンは、ヒマシ油をエチレンオキシドと1:35のモル比で反応させることによって生成した、ポリエチレングリコールリシノレエートを含む非イオン性可溶化剤および乳化剤である、クレモホール(登録商標)ELを含む。この物質は、BASF Corporationから入手可能である。
【0094】
ある実施形態において、エマルジョンは脂質をさらに含み得る。脂質をさらに含む本発明のエマルジョンのある実施形態において、脂質はDMPCである。脂質をさらに含む本発明のエマルジョンのある実施形態において、エマルジョンはプルロニック(商標)をさらに含む。ある実施形態において、プルロニック(商標)はF68である。
【0095】
ある実施形態において、エマルジョンはポリエチルアミンをさらに含み得る。
【0096】
ある実施形態において、エマルジョンは硫酸プロタミンをさらに含み得る。硫酸プロタミンをさらに含む本発明のエマルジョンのある実施形態において、エマルジョンはプルロニック(商標)をさらに含む。ある実施形態において、プルロニック(商標)はF68である。ある実施形態において、本発明のエマルジョンは硫酸プロタミンをさらに含む。
【0097】
本発明のエマルジョンは好ましくは、十分な細胞取り込みを可能にする液滴径の分布を有するであろう。ある実施形態において、均一な液滴径が好都合であり得る。液滴径の所望の程度の均一性は、用途に応じて変化し得る。ある実施形態においては、エマルジョンは、直径500nm未満の、または400nm未満の、または300nm未満の、または200nm未満の平均液滴径を有する。場合により、液滴の25%、または50%、または75%またはそれ以上が選択された範囲に含まれるであろう。液滴径は、たとえば光散乱技法によって、またはEM顕微鏡写真を使用してエマルジョン液滴を描出することによって評価され得る。大半の幹細胞などの比較的少ない量の細胞質を有するある細胞型において、エマルジョンは、直径200nm未満の、または100nm未満の、または50nm未満の平均液滴径を有する。
【0098】
ある実施形態において、小さい液滴径が好都合である。ある実施形態において、小さい液滴径によって、エマルジョンがiv注射される用途では循環時間が延長する。ある実施形態において、液滴は循環によって細胞から分離可能(seperable)である。ある実施形態において、小さい液滴径によってエキソビボ細胞標識化が促進される。ある実施形態において、小さい液滴径によって均一標識化が促進される。
【0099】
細胞中で使用するためのエマルジョンは、好ましくは、広範囲の温度で安定であるべきである。ある実施形態において、エマルジョンは、体温(ヒトでは37℃)および4℃または室温(20〜25℃)などの貯蔵温度にて安定であろう。たとえばエマルジョンを2〜10℃の範囲の低温で、たとえば4℃で貯蔵して、次にエマルジョンを室温(たとえば18〜28℃、さらに通例は20〜25℃)に加温することがしばしば所望であろう。細胞の標識化後に、エマルジョンは約37℃の温度にされるであろう。したがって、好ましいエマルジョンは、冷蔵温度から体温までに及ぶ温度にて、所望の範囲の液滴径を維持するであろう。ある実施形態において、エマルジョンは、4℃〜37℃の範囲の温度で安定である。
【0100】
ある実施形態において、エマルジョンは、0.1〜0.2の多分散指数を有する。
【0101】
エマルジョンの特性は、造影試薬自体の特性、使用する界面活性剤および/または溶媒の性質、ならびに処理装置の種類(たとえば超音波処理装置、マイクロフルイダイザ、ホモジナイザなど)によって主に制御され得る。あるPFPE分子によってエマルジョンを形成する方法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられている、U.S.Pat.Nos.5,330,681および4,990,283で広範囲に記載されている。高濃度水溶液中の多価アルコールおよびサッカライドなどのポリヒドロキシル化化合物の連続相が有効であり得る。以下の多価アルコールおよびサッカライド:グリセロール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、フルクトース、サッカロース、マルチトール、グリセロール(ジグリセロールまたはビス(2,3−ジ−ヒドロキシプロピル)エーテルのダイマー化合物、糖などの固体水溶性ポリヒドロキシル化化合物ならびにトリグリセロールおよびテトラグリセロールなどのグリセロール縮合生成物は、特に有効であることが判明している。エマルジョンへの分散は、カチオン性、アニオン性、両性および非イオン性界面活性剤を含む従来の界面活性剤の存在下で実施され得る。好適な界面活性剤の例は、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸塩(スルホコハク酸半エステル)、ココアンホカルボキシグリシン酸、セチルリン酸カリウム、ナトリウムアルキル−ポリオキシエチレン−エーテルカルボン酸、塩化カリウムベンザルコニウム、アルキルアミドプロピルベタイン、セチル−ステアリルエトキシ化アルコール、およびソルビタン−エトキシレート(20)−モノ−オレエート(トウィーン20)を含む。所望の液滴径および安定性を有するエマルジョンを与える造影試薬の混合物の予測を試みるために熱力学式が使用され得るが、各種の混合物を実際に試験することが最も有効であることが一般に受け入れられている。混合物の乳化は簡単かつ迅速であり、高速で広範囲の組合せを試験して本明細書で開示する方法で使用するのに好適なエマルジョンを生成する混合物を識別することができる。
【0102】
エキソビボ標識化を含む用途では、好ましいエマルジョンは、対象細胞による造影試薬の取り込みを促進するように設計される。界面活性剤は、大量のペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを水相中に輸送する安定なエマルジョンを形成するように設計され得る。さらに界面活性剤は、考えられる最も短いインキュベーション時間でエマルジョン液滴の細胞内送達を促進する特性を有し得る。ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドの細胞内ローディングの向上によって、標識細胞に対する感度が改善される。さらに培養時間を最短にすることは、初代細胞培養物を扱うときに重要であり得る。細胞内取り込みの効率は、細胞型に依存する。たとえばマクロファージおよび一部の樹状細胞は、ほぼすべての微粒子もエンドサイトーシスによって取り込むが、興味のある他の細胞型は、ごく弱い食作用を示し得る。どちらの場合も、エマルジョン液滴の表面が培養物中での細胞取り込みを促進する特性を有するように(すなわち「自己送達」エマルジョン液滴)界面活性剤を設計することによって、取り込み効率を実質的に上昇させることができる(Janjicら、JACS,2008,130(9),2832−2841およびUS Provisional Patent Application 61/062,710、その両方はその全体が参照により組み入れられている)。エマルジョン液滴表面は、適切な界面活性剤設計によって、親油性、または場合によりカチオン性特性を有するようにすることができる。たとえば界面活性剤は、細胞表面に結合または細胞表面と融合する傾向があり、それによりエマルジョン液滴取り込みを促進する、脂質、たとえばカチオン性または中性脂質、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、またはリポソームを含むことができる。エマルジョン液滴表面は、ポリアミンなどの細胞送達シグナルも包含し得る。例は、ポリアミン、たとえばポリエチレンイミンまたは硫酸プロタミンが処理中にエマルジョン液滴の界面活性剤層に包含されたエマルジョンを含む。
【0103】
ある実施形態において、インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用するためのコロイド系は、リポソーム(すなわち人工膜小胞)である。このような系の調製および使用は、当分野で周知である。好適なカチオン性脂質は、以下に記載されており、その全体が本明細書に組み入れられている:Felgnerら、1987,PNAS 84,7413−7417;Eppsteinら、U.S.Pat.No.4,897,355)、(Rose,U.S.Pat.No.5,279,833;Eppandら、U.S.Pat.No.5,283,185;Gebeyehuら、U.S.Pat.No.5,334,761;Nantzら、U.S.Pat.No.5,527,928;Baileyら、U.S.Pat.No.5,552,155;Jesse,U.S.Pat.No.5,578,475)。他の手法は、細胞中、または特異的細胞表面分子を標的とする抗体中への進入を促進する、界面活性剤ペプチド(たとえばオリゴ−Arg9およびTAT様ペプチド)への包含を含む。さらにある実施形態において、細胞取り込みを促進するために、硫酸プロタミンなどの小型カチオン性タンパク質を界面活性剤に包含させることができる。硫酸プロタミンは細胞に対して非毒性であり、へパリン拮抗薬としてのヒトでの使用でFDAに承認されている。ある実施形態において、巨大分子複合体、ナノカプセル剤、ミクロスフェア、およびビーズなどのコロイド分散系が使用される。さらなるトランスフェクション剤を使用することによって、または細胞の電気穿孔を使用することによってなどの、乳化フルオロカーボンの取り込みを促進する他の手法が本明細書に記載されている。
【0104】
好ましい実施形態において、エマルジョンは、取り込み促進試薬を添加されることなく、「自己送達」特性を有する。前記エマルジョンは、好ましくは安定であり、数カ月または数年の期間の有効期間を有する。
【0105】
界面活性剤および取り込み促進試薬は排他的な群を意味するものではなく、いくつかの場合では、それらが重複し得ることが理解される。
3.細胞および標識化
本明細書に記載する方法は、原核および真核細胞の両方を含む広範囲の細胞、ならびに好ましくは哺乳動物細胞と共に使用され得る。細胞調製の技術は、細胞培養、クローニング、核移植、遺伝子組み換えおよびカプセル封入を含む。
【0106】
好適な哺乳動物細胞の一部のリストは:血液細胞、筋芽細胞、骨髄細胞、末梢血細胞、臍帯血細胞、心筋細胞(およびその前駆体)、軟骨細胞(軟骨細胞)、樹状細胞、胎児神経組織、線維芽細胞、肝細胞(肝臓細胞)、膵臓の島細胞、角化細胞(皮膚細胞)および幹細胞を含む。ある好ましい実施形態において、使用される細胞は、免疫細胞の分画された集団である。免疫細胞の認識されている分集団は、リンパ球、たとえばBリンパ球(Fc受容体、MHCクラスII、CD19+、CD21+)、hELer Tリンパ球(CD3+、CD4+、CD8−)、細胞溶解性Tリンパ球(CD3+、CD4−、CD8+)、ナチュラルキラー細胞(CD16+)、単球、好中球およびマクロファージを含む単核食細胞、および樹状細胞を含む。興味のあり得る他の細胞型は、好酸球および好塩基球を含む。
【0107】
細胞は、自系(すなわち同じ固体に由来する)または同系(すなわち遺伝的に同一の固体、たとえば同系同腹仔または一卵性双生児に由来する)であり得るが、同種細胞(すなわち同じ種の遺伝的に異なる固体に由来する細胞)も検討される。あまり好ましくはないが、異種(すなわちレシピエントとは異なる種に由来する)細胞、たとえばトランスジェニックブタによる細胞も投与され得る。ドナー細胞が異種であるとき、細胞を同じ目内の、さらに好ましくは同じ上科または科内の種の個体から得ることが好ましい(たとえばレシピエントがヒトであるとき、細胞が霊長類、さらに好ましくは上科のホミノイデアのメンバに由来することが好ましい)。
【0108】
細胞は、医学的および倫理的に適切である場合、出生前(たとえば胎芽または胎児)、乳児(たとえばヒトの出生から約3歳まで)、小児(たとえばヒトの約3歳から約13歳まで)、思春期(たとえばヒトの約13歳から約18歳まで)、若年成人(たとえばヒトの約18歳から約35歳まで)、成人(ヒトの約35歳から約55歳まで)または高齢者(たとえばヒトの約55歳およびそれ以上の年齢)を含む、ドナー個体の任意の発生段階から取得され得る。
【0109】
多くの実施形態において、細胞は、試薬が細胞によって取り込まれるように、造影試薬のエマルジョンと接触させることによって標識される。食作用性細胞および非食作用性細胞のどちらも、このよな方法によって標識され得る。たとえばWO2005072780に示されているように、樹状細胞(食作用性)および神経膠肉腫細胞(非食作用性)はどちらも、細胞を造影試薬のエマルジョンと接触することによって標識することができる。
【0110】
ある態様において、本発明の方法は、細胞をインビボで19F造影試薬によって標識することと、対象にて標識細胞を検出することを含み得る。標識される細胞は、食作用活性などの細胞の特異的な特性によって決定され得る。標識される細胞は、造影試薬の投与経路によって制御され得る。標識される細胞型は、造影試薬の性質によって制御され得る。たとえば、造影試薬の単純なコロイド状懸濁物は、食作用活性によって細胞により迅速に摂取される傾向があるだろう。別の例として、造影試薬は、細胞の特定の集団への造影試薬の選択的標的化を促進する標的部分と共に製剤され得るか、または標的部分に共有結合され得る。ある実施形態において、造影試薬はペルフルオロ−15−クラウンエーテルを含む。
【0111】
ある実施形態において、標識される細胞は、幹細胞である。幹細胞療法は、高線量放射線および/または化学療法剤を用いる癌治療のための除去レジメンの一部として通常使用される。除去レジメンは一般に、例えば、末梢血、臍帯血または骨髄から採取され得るような、造血幹細胞、または造血幹細胞を含有する細胞の集団を使用する。この種類の細胞、またはその一部は、適切な位置での生存および生着を監視するために、標識およびインビボで追跡され得る。他の種類の幹細胞は、広範囲の障害のための治療剤として魅力を増している。
【0112】
一例として、細胞は、マウス胚性幹細胞、または別のモデル動物によるES細胞であり得る。このような細胞の標識化は、場合により、胚性幹細胞治療薬を開発するための前臨床研究プログラムの一部として、マウスに投与されたこのような細胞の運命を追跡するのに有用であり得る。マウス胚性幹細胞の例は:M.Qiuら、Genes Dev 9, 2523(1995)に記載されているJM1 ES細胞株、およびG.Friedrich,P.Soriano,Genes Dev 5,1513(1991)に記載されたROSA株、およびUS Patent No.6,190,910に記載されたマウスES細胞を含む。多くの他のマウスES系統は、ジャクソンラボラトリーズ(Bar Harbor,Maine)から入手できる。ヒト胚性幹細胞の例は、以下の供給者:Arcos Bioscience,Inc.,Foster City,California、CyThera,Inc.,San Diego,California、BresaGen,Inc.,Athens,Georgia、ES Cell International,Melbourne,Australia、Geron Corporation,Menlo Park,California、Goeteborg University,Goeteborg,Sweden、Karolinska Institute,Stockholm,Sweden、Maria Biotech Co.Ltd.−Maria Infertility Hospital Medical Institute,Seoul,Korea、MizMedi Hospital−Seoul National University,Seoul,Korea、National Centre for Biological Sciences/Tata Institute of Fundamental Research,Bangalore,India、Pochon CHA University,Seoul,Korea、Reliance Life Sciences,Mumbai,India、ReNeuron,Surrey,United Kingdom、StemCells,Inc.,Palo Alto,California、Technion University,Haifa,Israel、University of California,San Francisco,California、およびWisconsin Alumni Research Foundation,Madison,Wisconsinを通じて入手可能なものを含む。さらに胚性幹細胞の例は、以下の米国特許および公開特許出願:6,245,566;6,200,806;6,090,622;6,331,406;6,090,622;5,843,780;20020045259;20020068045に記載されている。好ましい実施形態において、ヒトES細胞は、National Institutes of Healthによって提供され、http://escr.nih.gov.にてアクセス可能な承認株化細胞のリストより選択される。ある好ましい実施形態において、胚性幹細胞株は、Dr.J.Thomson(Univ.of Wisconsin)から入手したWA09株ならびにどちらも現在、NIHに登録されているUC01およびUC06株を含む群より選択される。
【0113】
ある実施形態において、開示した方法で使用するための幹細胞は、神経および神経内分泌起源の幹細胞、たとえば中枢神経系(たとえばUS Patent Nos.6,468,794;6,040,180;5,753,506;5,766,948)、神経堤(たとえばUS Patent Nos.5,589,376;5,824,489を参照)、嗅球または末梢神経組織(たとえばPublished US Patent Applications 20030003574;20020123143;20020016002およびGrittiら、2002 J Neurosci 22(2):437−45を参照)、脊髄(たとえばUS Patent Nos.6,361,996、5,851,832を参照)または神経内分泌系統、たとえば副腎、下垂体または腸のある部分(たとえばUS Patent Nos.6,171,610およびKimuraら、1994 J.Biol.Chem.269:18961−67に記載されているPC12細胞を参照)による幹細胞である。好ましい実施形態において、神経幹細胞は、末梢組織または容易に治癒する組織から得られ、それにより移植のための自系細胞集合が提供される。
【0114】
造血または間葉性幹細胞は、ある開示した方法で使用され得る。最近の研究は、ただちに単離される骨髄由来造血(HSC)および間葉性幹細胞(MSC)が以前に認識されたよりも広範な分化可能性を有することを示唆している。精製HSCは、血液中のすべての細胞を生成するだけではなく肝細胞のような内胚葉に通常由来する細胞へと発生することもできる(Krauseら、2001,Cell 105:369−77;Lagasseら、2000 Nat Med 6:1229−34)。同様に、末梢血および臍帯血によるHSCは、有用な一連の発生可能性を与えることが期待されている。MSCは、同様に多能性であると思われ、たとえば神経細胞マーカーを発現可能な子孫を産生する(Pittengerら、1999 Science 284: 143−7;Zhaoら、2002 Exp Neurol 174:11−20)。造血幹細胞の例は、US Patent Nos.4,714,680;5,061,620;5,437,994;5,914,108;5,925,567;5,763,197;5,750,397;5,716,827;5,643,741;5,061,620に記載されているものを含む。間葉性幹細胞の例は、US Patent Nos.5,486,359;5,827,735;5,942,225;5,972,703に記載されているもの、PCT publication nos.WO 00/53795;WO 00/02654;WO 98/20907に記載されているもの、およびPittengerらおよびZhaoら、同上に記載されているものを含む。
【0115】
幹細胞株は好ましくは、哺乳動物、たとえばげっ歯類(たとえばマウスまたはラット)、霊長類(たとえばサル、チンパンジーまたはヒト)、ブタ、および反芻動物(たとえばウシ、ヒツジおよびヤギ)に、ならびに特にヒトに由来する。ある実施形態において、幹細胞は、自系源またはHLA型適合源に由来する。たとえば、幹細胞を膵臓ホルモン産生細胞が必要な対象(たとえばインスリン産生細胞が必要な糖尿病患者)から採取し、培養して自系インスリン産生細胞を生成させることができる。他の幹細胞源、たとえば筋肉組織による幹細胞、皮膚による幹細胞(真皮または表皮)および脂肪による幹細胞は、対象から容易に採取される。
【0116】
いくつかの好ましい実施形態において、ヒトに投与するための細胞は、U.S.Food and Drug Administration(FDA)または他国の同等の監督官庁が制定したgood tissue practice guidelinesに適合すべきである。このような細胞株を開発する方法は、ドナー検査、ならびに非ヒト細胞および生成物への暴露を回避することを含み得る。
【0117】
ドナー(場合により患者がドナーである)に由来する細胞は、送達される細胞の目的によって指示されるように、未分画または分画細胞として投与され得る。細胞は、投与前にある細胞型を濃縮するために分画され得る。分画の方法は当分野で周知であり、一般に正の選択(すなわち特定の特性に基づく細胞の保持)および負の選択(すなわち特定の特性に基づく細胞の除去)の両方を含む。当業者に明らかになるように、正および負の選択に使用される特定の特性(たとえば表面マーカー)は、所望の細胞集団に依存するであろう。細胞の選択/濃縮に使用する方法は、免疫親和性技術または密度遠心分離法を含み得る。免疫親和性技術は、当分野で周知であるように、多様な形を取り得るが、一般に、ある種類の分離技術と組合せて抗体または抗体誘導体を利用する。分離技術は一般に、抗体に結合された細胞および抗体に結合されていない細胞の物理的分離を引き起こすが、いくつかの例において、抗体に結合された細胞を致死させる分離技術が負の選択に使用され得る。
【0118】
蛍光活性化細胞選別(FACS)、パニング、免疫磁気分離、免疫親和性クロマトグラフィー、抗体媒介補体結合、抗毒素、密度勾配分離などを含む、任意の好適な免疫親和性技術が、使用される選択した細胞の選択/濃縮に利用され得る。免疫親和性プロセスでの処理後に、所望の細胞(正の選択の場合には、免疫親和性試薬によって結合された細胞、および負の選択の場合には免疫親和性試薬によって結合されていない細胞)を収集して、さらなる回数の免疫親和性選択/濃縮を行うか、または患者への投与のために貯蔵するかのどちらかである。
【0119】
免疫親和性選択/濃縮は通例、所望の細胞型を含む細胞の調製物を抗体または抗体由来親和性試薬(たとえば所与の表面マーカーに対して特異的な抗体)によってインキュベートして、次に結合した親和性試薬を利用して、抗体が結合している細胞に有利または不利な選択のどちらかを行うことによって実施される。選択プロセスは一般に、単一の細胞を含有する液滴を結合親和性試薬の存在または非存在に応じて異なる容器に導入すること(FACS)によって、固相基質に(直接または間接的に)結合された抗体を利用すること(パニング、免疫親和性クロマトグラフィー)によって、または磁場を利用して親和性試薬を介して磁性液滴に結合した細胞を収集すること(免疫磁性分離)によって達成できるような、物理的分離を含む。代わりに、親和性試薬に結合された細胞に細胞毒性傷害を指示する親和性試薬を使用して、望ましくない細胞を調製物から除去することができる。細胞毒性傷害は、親和性試薬(たとえば補体結合)によって活性化され得るか、または親和性試薬(たとえばリシンB鎖などの抗毒素)によって標的細胞に局在化され得る。
【0120】
本明細書で開示する方法は細胞のインビボ監視に頻繁に使用されることが予想されるが、方法が培養物中、組織試料または他のエキソビボ細胞物質中の細胞の監視にとって等しく有効であることに注目すべきである。治療用途のために、細胞は患者への投与のための調製中の所望のステップで標識され得る。
【0121】
多様な方法を使用して、細胞を造影試薬で標識することができる。一般に細胞は、造影試薬が細胞と結合されるように、造影試薬と接触して配置されるであろう。条件は、細胞生存能力を維持するために設計された標準細胞培養条件であることが多い。「結合した」という用語は、インビボまたはインビトロにかかわらず、造影試薬が細胞位置に関する有用な情報を提供できるような十分な時間にわたって、造影試薬および細胞を物理的に十分に接近させておく任意の方式を含むことを意図する。造影試薬は細胞内で、たとえば食作用または界面活性剤に媒介された細胞への進入後に、細胞内に配置され得る。免疫細胞、たとえば樹状細胞、マクロファージおよびT細胞は高い食作用を示すことが多く、本明細書または他の研究で示されたデータによって、このような細胞、および他の食作用細胞型がただちに標識されることが証明されている。他の細胞型、たとえば幹細胞も食作用活性とは無関係に標識され得る。造影試薬は、細胞膜中に挿入され得るか、または細胞の細胞外成分に共有もしくは非共有結合され得る。たとえば本明細書に記載するある直鎖フルオロカーボンを誘導体化して、1個以上の標的部分に結合することができる。標的部分は、造影試薬の標識される細胞との結合を促進するために選択されるであろう。標的部分は、細胞膜中へのフルオロカーボンの非特異的挿入を引き起こすために(たとえば疎水性アミノ酸配列またはパルミトイル部分もしくはミリストイル部分などの他の疎水性部分)または細胞中への非特異的進入を促進するために設計され得る。標的部分は、受容体リガンドの場合と同様に、細胞表面成分に結合し得る。標的部分は特異的結合対のメンバであり得て、パートナーは細胞表面成分である。標的部分は、たとえば受容体のリガンド、または抗体、たとえば免疫グロブリンの可変部分を含むモノクローナルもしくはポリクローナル抗体もしくは各種のポリペプチド結合剤(たとえばFv断片、単鎖Fv(scFv)断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、単一ドメイン抗体、ラクダ化抗体、ヒト化抗体、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ)のいずれかであり得る。ある実施形態において、フルオロカーボン造影試薬は、ペルフルオロ−15−クラウンエーテルを含む。
【0122】
フルオロカーボンエマルジョンによる細胞標識化は、細胞中での送達を補助するトランスフェクション剤を使用することによっても促進することができる。トランスフェクション剤は、カチオン性脂質、カチオン性リポソーム、ポリカチオンなどから成ることが多い。トランスフェクション剤は、フルオロカーボンエマルジョン標識剤と事前に混合することによって、エマルジョン液滴と結合するようになるか、またはエマルジョン液滴をコーティングする。次にトランスフェクション剤で処理したエマルジョン液滴を培養した細胞に添加して、細胞が標識されるようにインキュベートする。一般的なトランスフェクション剤は、リポフェクタミン(Invitrogen,Inc)FuGene、DOTAP(Roche Diagnostics,Inc.)、およびポリ−L−リジンを含む。多くの種類のプロタミンなどの小型タンパク質も、トランスフェクション剤として使用できる。大半の脊椎動物の精子の核中の主要なDNA結合タンパク質であるプロタミンは、体細胞核の5%未満の量のDNAを包んでいる。プロタミンは、アルギニンが豊富であり、強塩基性である低分子量の単純タンパク質である。市販のプロタミンは、サケまたは他のある種の魚の精子に由来している。「プロタミン」という用語は、本明細書で使用するように、低分子量でカチオン性の、アルギニンが豊富なポリペプチドを指す。プロタミン分子は通例、約20〜約200アミノ酸を含み、通常、少なくとも20%、50%または70%のアルギニンを含有することを特徴とする。プロタミンは、1個以上の対イオンを用いて、硫酸塩、リン酸塩および塩化物などの塩として製剤されることが多い。
【0123】
本出願で提供するデータは、プロタミン(たとえば硫酸プロタミン)がPFPEフルオロカーボンエマルジョン液滴を培養された細胞に送達するのに非常に有効であることを示す。好適な硫酸プロタミンは、多様な源(たとえばサケ、ニシン、マスなど)に由来して、各種のグレードおよび形(たとえばUSP、グレードII、III、Xなど)であり、ヒストンまたは任意の組み換え誘導体を含んでも含まなくてもよい。トランスフェクション剤として使用され得る他のプロタミン溶液の例は、リン酸プロタミン、塩化プロタミン、硫酸プロタミン−2、硫酸プロタミン−3、硫酸プロタミン−10、およびプロタミン遊離塩基を含む。
【0124】
本出願で提供されるデータは、自己送達型ナノエマルジョンがフルオロカーボン造影試薬(たとえばペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド)によって調製され、プルロニック(商標)界面活性剤を場合により硫酸プロタミンと共に、またはクレモホール(登録商標)ELを乳化剤と共に、および添加剤を含むことを示している。細胞とある自己送達型ナノエマルジョンとの単純な同時インキュベーションによって、トランスフェクション試薬を必要とせずに、撮像のために十分な細胞標識化が提供される。
【0125】
細胞が治療レジメンで使用される場合、各種の方法が、注射および細胞を各種臓器にインプラントするための特殊器具の使用を含む細胞の送達に使用されている。本発明は、いずれかの特定の送達方法に拘束されない。標識細胞は、細胞が特定部位に直接送達されるか、または全身的に送達されるかにかかわらず監視され得る。たとえば標識DCは、組織への直接の局所インプラントまたは静脈内注射のどちらかの後に正しく撮像され、T細胞は腹腔内注射の後に撮像された。細胞は、対象への注射またはインプラントによる導入を容易にする送達器具中に挿入され得る。このような送達器具は、レシピエント対象の体内に細胞および流体を注入するためのチューブ、たとえばカテーテルを含み得る。好ましい実施形態において、チューブは針、たとえばシリンジをさらに有し、これを通じて本開示の細胞を対象中の所望の位置に導入することができる。細胞は送達のために、多様な異なる形で調製され得る。たとえば細胞は、このような送達器具に含有されるときに、溶液もしくはゲル中に懸濁され得るか、または支持マトリクスに包埋され得る。細胞は、本開示の細胞がその中で生存可能である製薬的に許容される担体または希釈剤と混合され得る。製薬的に許容される担体および希釈剤は、生理食塩水、水性緩衝溶液、溶媒および/または分散媒を含む。このような担体および希釈剤の使用は当分野で周知である。溶液は好ましくは滅菌され、流動性である。好ましくは、溶液は製造および貯蔵条件下で安定であり、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの使用によって、細菌および真菌などの微生物の汚染作用を受けずに保存される。本開示の溶液は、滅菌濾過の後に、製薬的に許容される担体または希釈剤中に本明細書に記載するような細胞を、そして必要に応じて上に挙げた他の成分を包含することによって調製され得る。
【0126】
4.核磁気共鳴技法
本明細書に記載するように、核磁気共鳴技法を使用して、標識細胞の集団を検出することができる。「検出する」という用語は、特に核磁気共鳴技法によって、標識分子または細胞の存在または非存在を確認するいずれの試みも含む。「検出する」という用語は、定量的測定および2または3次元画像生成を含む、より高度な測定を含むことも意図する。たとえばMRIを使用して、このような細胞の画像が生成され得る。多くの例において、標識細胞は生存対象に投与され得る。細胞の投与後に、対象のある部分、または対象全体をMRIによって検査してMRIデータセットを生成してもよい。他の例では、エマルジョンを直接iv注射して、次に対象を1時点またはそれ以上で撮像する。「データセット」は、本用語が本明細書で使用されるように、対象物質の磁気共鳴プロービング中に収集された生データ、取得パラメータはもちろんのこと、生データから処理、変換または抽出された情報も含むことを意図する。生データは、自由誘導減衰、スピンエコー、刺激エコー、および/または勾配エコーを含む、MRI/MRSによって取得した過渡シグナルを含む。処理情報の例は、対象物質の2次元または3次元画像表現を含む。処理情報は、強度画像、実数および虚数画像成分はもちろんのこと、関連付けられた位相マップ画像も含み得る。抽出情報の別の例は、対象物質中の撮像試薬または19Fシグナルの量または濃度を表現するスコアである。対象物質中の19Fシグナル、およびインプラント前の細胞当りの造影試薬の平均量の校正(エキソビボ標識化の場合)を使用することによって、対象物質中の細胞の絶対数を概算することができる。対象物質に存在する19Fシグナルの量は、多くの方法で表現または計算することができる;たとえば関心領域(ROI)での19Fシグナルの平均シグナル対ノイズ比(SNR)を測定および使用して、標識細胞の存在量が計算され得る。ある実施形態において、19Fシグナルの平均強度、または画像単位もしくはボクセル単位の総和を使用して、標識細胞の存在量が計算され得る。この種類のデータは、対象の単一の領域、たとえば脾臓または標識細胞に特に関連性のある別の臓器にて収集され得る。標識細胞は、対象以外の状況で検査され得る。培養物中で標識細胞を検査することが所望であり得る。ある実施形態において、標識細胞を組織試料または組織培養物内にて添加または産生することができ、したがって標識細胞はこのような状況でも撮像され得る。たとえば移植される臓器、組織または他の細胞物質を造影試薬と接触させて、このような移植物の対象へのインプラント前に標識細胞を産生することができる。
【0127】
一般に、本開示の標識剤は、従来のMRI検出システムで使用するために設計されている。MRIを最も一般的に実施する際には、対象物質中に含有される移動する水の分子中の水素核(プロトン、H)が観察される。本明細書で開示する標識を検出するためには、代わりの核19Fを検出する。19F MRIは、Hと比較してごくわずかに低い固有感度を有する;相対感度は約0.83である。どちらも+1/2の核スピンを有する。19Fの天然同位体存在量は100%であり、Hの99.985%に匹敵する。検出および画像形成の背後にある物理的原理は、Hおよび19F MRIの両方で同じである。対象物質を大型静止磁場に置く。場は、Hまたは19F核に関連付けられた磁気モーメントを場方向に沿って整列させる傾向がある。核はラーモア周波数のパルス化高周波(RF)放射によって平衡状態から撹乱され、ラーモア周波数は、核がエネルギーを共鳴して吸収する磁場強度に比例する特徴的な周波数である。RFを除去するときに、核は受信器アンテナで過渡電圧を誘導する;この過渡電圧は、核磁気共鳴(NMR)シグナルを構成する。空間的情報は、大型静止場に重ねられた磁場勾配の選択的印加によって、NMRシグナルの周波数および/または位相の両方でコードされる。過渡電圧は一般にデジタル化され、次にこれらのシグナルをたとえばコンピュータによって処理して、画像を得ることができる。
【0128】
一定の磁場強度での19Fのラーモア周波数は、Hと比較してわずかにやや低い(〜6%)。それゆえ19Fデータの取得に、従来のMRIスキャナのハードウェアおよびソフトウェアの両方を適応させることは容易である。19F検出は、異なる種類の磁気共鳴スキャン、たとえばMRI、MRSまたは他の技法と組合せられ得る。通例、H MRI画像を取得して19F画像と比較することが所望であろう。生物または他の生体組織において、プロトンMRIによって対象物質の画像が提供され、19F画像で検出された標識細胞の解剖学的状況を定義することができる。本開示の好ましい実施形態において、同じセッションの間に、19FおよびHの両方についてデータが収集される;2つのデータセットがより確実に、空間的に位置合せされるように、これらの取得中に対象は移動されない。通常、19FおよびHデータセットはどちらかの順序で順次取得される。19FおよびHラーモア周波数から電気的に同調可能であるRFコイル(すなわちアンテナ)を架設することができる。これらの2つの周波数の間の同調は、手動(たとえば電気機械可変コンデンサまたはインダクタによって)、またはアクティブ電子回路によって電気的に実施することができる。代わりに、MRI装置のハードウェアおよび/またはソフトウェアの適切な改良によって、どちらのデータセットも同時に取得して、たとえば撮像時間を短縮することができる。19FおよびHデータセットの同時取得には、19FおよびHラーモア周波数に同時に電気的に同調できるRFコイルまたはアンテナ(すなわち2重同調コイル)が必要である。代わりにRFコイルは、両方のラーモア周波数(すなわち19FおよびH)を範囲に含む1つの広域同調電気共鳴を備えた「ブロードバンド」であってもよい。他の撮像技法、たとえば蛍光検出が19F MRIと組合され得る。このことは、フルオロカーボン造影試薬が蛍光部分によって誘導体化されている場合に特に所望であろう。他の実施形態において、19F MRIスキャンは、本明細書に記載するような2重モデル放射性18F/19Fフルオロカーボン標識化試薬を使用することによって、同じ対象または患者においてPETスキャンと組合され得る。
【0129】
MRI検査は、当分野で公知の任意の好適な方法に従って実施され得る。多くの異なる種類のMRIパルスシーケンス、またはデータ収集を調整するためにMRI装置によって使用される命令のセット、およびシグナル処理技法(たとえばフーリエ変換および投影復元法)は、画像データの収集および処理のために長年にわたって開発されてきた(たとえばMagnetic Resonance Imaging,Third Edition,editors D.D.Stark and W.G.Bradley,Mosby,Inc.,St.Louis MO 1999を参照)。本開示の試薬および方法は、いずれの特定の撮像パルスシーケンスまたは生NMRシグナルの処理方法に拘束されない。たとえば本開示に適用できるMRI方法は、スピンエコー、刺激エコー、勾配エコー、自由誘導減衰ベース撮像、およびその任意の組合せを広範に含む。k空間の2本以上のラインまたはk空間の大型セグメントが各励起シグナルから取得される高速撮像技法も、19F(またはH)データを取得するのに非常に好適である。高速撮像技法の例は、高速スピンエコー手法(たとえばFSE、ターボSE、TSE、RARE、またはHASTE)、エコープラナー撮像(EPI)、勾配エコーおよびスピンエコー併用技法(たとえばGRASE)、スパイラル撮像、およびバースト撮像を含む。新規および改良パルスシーケンスおよびシグナル処理方法の開発は、絶えず進化している分野であり、当業者は、その解剖学的状況で19F標識細胞を撮像する複数の方法を考案することができる。
【0130】
核磁気共鳴技法の別の例として、MRSを使用して、局在組織または臓器におけるフルオロカーボン標識細胞の存在を検出することができる。通常、MRS方法は、従来のMRIスキャナで実施される。局在関心体積(VOI)は、従来の解剖学的H MRIスキャン内で定義されることが多い。次に、VOI内で観察される19F NMRシグナルの大きさは、標識細胞の数、および/または組織または臓器に存在する細胞当りのPFPEの平均濃度と直接関連付けられる。はるかに大型の対象内のVOIを隔離する方法は、当分野で周知である(たとえばMagnetic Resonance Imaging,Third Edition,Chapter 9,Editors D.D.Stark and W.G.Bradley,Mosby,Inc.,St.Louis MO 1999)。例は、VOI付近の局在RF表面コイル、表面スポイリング、表面コイルB勾配方法、スライス選択的B勾配技法、STEAM、PRESS、画像選択的インビボ分光法(ISIS)、および磁気共鳴分光撮像(MRSI)の使用を含む。MRSの新規および改良パルスシーケンスおよびシグナル処理方法の開発は、絶えず進化しており、当業者は、VOI内のフルオロカーボン標識細胞から生じる19F NMRシグナルを検出する複数の方法を考案することができる。
【0131】
ある場合において、対象物質は、動物またはヒトから生検または剖検された組織の、固定またはそうでなければ保存された試料である。次に対象物質に従来の高分解能の1次元または多次元液体状態19F NMRを受けさせて、試料中に存在するフッ素の量を定量する。フッ素含有量は、対象物質(materal)試料中の標識細胞の数に直接関連付けられる。常在する食細胞(たとえば単球、マクロファージ、好中球、肝臓の細胞)の上述のようなフッ素エマルジョンによるインサイチュー標識化(たとえばナノエマルジョン3を使用する)の場合、試料中で測定された19Fの量は、組織中に存在するこれらの食細胞の数に正比例する。このようにして、組織学的または他の破壊的で時間のかかる技法を使用することを必要とせずに、無傷組織の炎症の相対量をアッセイすることができる。ある実施形態において、組織の19F含有量を分析するために、1次元19F NMRを使用する。ある実施形態において、細胞標識化エマルジョンの組成物と異なる化学シフトを有する19Fスピンの数が既知である試料に、19F参照化合物を添加する(下を参照)。ある実施形態において、エマルジョンピークおよび参照ピーク下の相対積分面積を使用して、組織試料中に存在するフッ素の絶対数を計算することができる。ある実施形態において、組織試料の重量もこの計算に含めて組織試料の平均フッ素密度を抽出することができ、このパラメータは、炎症の定量的指数、すなわち「炎症指数」と見なすことができる。
【0132】
ある実施形態において、本開示は、インビボでの、またはROI内の対象物質中の標識細胞の数を定量する方法を提供する。ROIは、対象中のすべての標識細胞、または膵臓などの特異的臓器、リンパ節などの特異的組織、もしくは任意の領域における、または検出可能なMRI/MRS 19Fシグナルを示す1個以上のボクセルの標識細胞を含み得る。ROIは、特定の実験の範囲を超えた別の未定義の面積であり得る。標識細胞が対象物質中またはインビボで定量され得る方法は、本明細書に記載するようにいくつかある。
【0133】
エキソビボ標識化の場合、特定の細胞集団のインプラント前に19F標識試薬の平均「細胞用量」を校正することは、対象物質または患者における定量的細胞決定の前提条件であることが多い。異なる細胞型が有するインビトロで標識化剤を取り込む固有の能力が異なり、それゆえ標識化剤の細胞用量も変わることが予想される。さらに、異なる源(たとえば異なる患者)から取得した同じ型の異なる細胞は、標識化剤に対して異なる親和性を有し得る。それゆえ細胞用量の校正が必要であり得る。この校正を使用して最初に標識化プロトコル(すなわちインキュベーション条件、細胞が標識化フルオロカーボンエマルジョンでインキュベートされる期間、標識化の間の培地中のフルオロカーボンエマルジョンの濃度など)を修正して、撮像される対象で標識細胞を実際に使用する前にある範囲の細胞用量を実現することができる。代わりに、標識化条件およびプロトコルを固定して、撮像される対象での次の定量のために細胞1個当りの標識19Fの平均値を測定することができる。ある実施形態において、標識細胞集団の細胞1個当りの19F分子の平均数(F’s)は、対象または患者への細胞の投与前に、インビトロで測定(すなわち校正)される。ある実施形態において、標識細胞集団の細胞1個当りの19F分子の平均数(F’s)は、特定の種類の細胞の試験集団にて校正され、必ずしも患者向けであるというわけではないが、標識化剤の細胞用量を校正するために、特定の標識化プロトコルまたは条件セットの結果として使用される;場合により、細胞用量の値は次に、同じ標識化プロトコルを使用して、細胞の同じ集団型での今後の標識化およびインビボ撮像実験で使用される。
【0134】
標識化剤の細胞用量は、多様な定量的技法を使用して、インビトロでアッセイすることができる。たとえば、標識細胞の数が既知である細胞ペレット、細胞懸濁物、または細胞溶解物から得た1次元(1D)19F NMRスペクトルを使用することができる。このスペクトルから、細胞と結合した標識化試薬から発生した19Fスペクトルの積分面積またはその一部を計算することができる。Scellsとして示される、19Fスペクトルの積分面積は細胞ペレット、懸濁物、または溶解物中の19Fの総量に正比例する。19F核の絶対数を測定するために、測定したScells19F標準に正規化され得る。19F標準はたとえば、フルオロケミカルの体積および濃度が既知である溶液であることが可能であり、ここでFstanとして示される、標準中の19F核の総数を計算することができる。好適なフルオロケミカル参照は理想的には、好ましくは単一狭幅共鳴と、場合により標識化フルオロカーボンとは著しく異なる19F化学シフトとを持つ、単純な19F NMRスペクトルを有する(たとえばトリフルオロ酢酸、すなわちTFA)。19F標準は、測定中の標識細胞物質と同じNMRチューブに、別のチューブに入れることができるか、または場合により、同じNMR装置を使用して別の実験で測定することができる。次に、Sstanで示される、19F標準によるスペクトルの積分面積を測定することができる。続いて、Fで示される、標識細胞1個当りの19Fの平均数は、たとえば式を使用して計算することができる:
【0135】
【数2】

式中、Ncellsは、インビトロ試験試料に含有される標識細胞の数である。19Fおよび他の核のための定量的NMR方法は当分野で周知であり、当業者は、上述の細胞用量校正手順の多くの変形を考案することができる。19F NMR以外に標識化試薬の細胞用量をアッセイするために使用できる他の定量的方法がある。たとえば試薬は、蛍光によって、発光によって、光学的に、または放射線によって標識され得る(たとえば参照によりその全体が本明細書に組み入れられているUS Patent Application No.2007−0258886を参照)。
【0136】
同様に、エマルジョンのiv注射後に循環している食細胞のインサイチュー細胞標識化の場合、有効な細胞標識化を測定するために、上述の方法を使用して、対象からの末梢血の一部を溢出させて(extravesate)、白血球の有効細胞ローディングを測定することができる。さらに、どの細胞集団がインサイチューで標識されたかをより良好に定義するために、各種の細胞選別または濃縮技法の1つ以上を使用して、ローディング測定(上述)の前に食細胞(たとえばマクロファージ)を選別することができる。測定した細胞標識化パラメータを次に使用して、組織中に存在する見かけの炎症細胞の数を本明細書に記載する磁気共鳴方法を用いて計算することができる。
【0137】
19F MRI/MRSデータセットから標識細胞の正確な定量および/または相対炎症スコアを抽出するために、さらなる校正および標準が使用され得る。たとえば、標識細胞を含有する対象物質の実際の19F MRI/MRSスキャンの間に、校正外部19F参照(すなわちファントム)を使用することができる。校正したファントムの画像強度は、たとえば対象物質または患者を検査する際に、19F MRI/MRSデータセットを分析して19F核の数の絶対標準を証明するときに使用される。校正したファントムを使用して、撮像される特定の対象をロードした特定のMRI/MRSシステムの感度を正規化する。19F参照はたとえば、19F核の濃度が既知である溶液を含有する1個以上の容器であり得る。好ましい実施形態において、溶液は希釈濃度の乳化フルオロカーボン標識化試薬を含有する。場合により、溶液は、たとえば好適な溶媒で希釈された非乳化フルオロカーボン標識化試薬、ゲル、または液体を含有する。場合により、溶液は、好ましくは単一の狭幅NMR共鳴を持つ、理想的には単純な19F NMRスペクトルを備えた別のフルオロケミカル(たとえばトリフルオロ酢酸(TFA)またはトリフルオロアセトアミド(TFM)および他のフッ化酸、トリフルオロトルエンまたはトリフルオロエタノール)から成ることが可能である。好ましい実施形態において、参照溶液のT1およびT2値は、標識化試薬のT1およびT2値と同様である。場合により、溶液はペルフルオロカーボン標識細胞、またはその溶解物を含むことができる。非細胞参照は、貯蔵時間がより長いという利点を有する。場合により、溶液はゲルの形をとることができる。溶液を含有する容器は、好ましくは密封可能であり、多様な形態を取ることができる;好ましい容器形態は、楕円形、円筒形、球形、および平行六面体形を含む。19F参照溶液を含有する1個以上の容器を対象物質の19F MRI/MRSの間に使用することができる。複数の19F参照(すなわち容器)が使用される場合、それらは同じ19F濃度または異なる濃度を含有することが可能であり、異なる濃度を含有する場合、それらは理想的には段階的濃度のフルオロケミカルを含有する。校正した19F参照の容器の配置は好ましくは、データ取得の前に撮像される対象もしくは患者の外部または対象もしくは患者に沿って、または場合により対象もしくは患者の内部に配置できる。好ましい実施形態において、参照は、19F MRIを使用して、対象と共に同じ画像視野(FOV)内に撮像される。場合により、19F MRSデータは、対象データセットと連続的または並列のどちらかで、参照中に取得される。場合により、参照からのデータは、別のスキャンで取得したMRI/MRSを使用して取得される。場合により、外部参照は、各19F MRI/MRS検査で対象と共にスキャンされないが、MRI/MRSを使用して取得した参照19Fシグナル強度の値はむしろ、比較可能な対象またはシミュレートされた対象のスキャンから使用される。所与の19F MRI/MRSスキャンでは、校正された19F標準は、1ボクセル単位またはそれ以上でサンプリングされ得る。ボクセルによって生成された観察可能な19F強度は、溶液(またはゲル)中のフルオロケミカルの濃度およびボクセル体積に比例し得る。19F MRIスキャンでは、参照標準が多くのボクセルで構成されることが多い。参照標準の1個、複数またはすべてのボクセルの平均強度が計算されることが多い。場合により、平均画像強度は、参照標準の19F画像内で定義されたROIに対して計算される。場合により、参照標準容器の物理学的形態は、観察された19Fシグナル強度の定義に寄与する;たとえば、19F参照溶液を含有する体積コンパートメントは、ボクセル体積よりも小さい。他の実施形態において、校正された外部参照は、検出可能なHの数が既知である、Hシグナル強度を持つ溶液に依存している;この場合、対象物質の19Fシグナルの感度は、H校正標準の参照である。理想的には、H校正参照の溶液またはゲル(上述のように容器に含有された)によって、単一の狭幅NMR共鳴を持つ、単純なH NMRスペクトルが生じる(たとえばHO、またはHO−DOの混合物)。H標準参照の使用は、核が異なる以外は、19F参照について上述した他の多くの点で同じである。場合により、校正した参照標準は、その他の任意のMRI/MRS活性核を含有する。いくつかの実施形態において、参照は、H MRI/MRSによって検出された内部臓器または組織であり、データは生であるか、または正規化され得る。他の実施形態において、参照は、対象と共にスキャンされない標準であるが、患者の体重または体腔のサイズなどの関連因子によって校正される。
【0138】
19F MRI/MRSデータセットからの2個以上の主要パラメータをコンピュータにより操作または組合せすることによって、本明細書に記載するようにROI中の標識細胞の数および/または炎症の相対量を計算することができる。たとえばパラメータの主要セットは:(i)インビトロで測定された標識化剤の細胞用量(すなわちF);(ii)標識細胞投与後に1回以上の時点で対象にて取得された、インビボ19F MRI/MRSデータセット;(iii)ボクセル体積;(iv)平面内ボクセル面積(すなわち画像画素の面積);(v)場合により、19F参照標準からのMRI/MRSデータセット;(vi)場合により、対象物質中の19F MRI/MRSデータの測定されたジョンソンノイズ;(vii)場合により、対象物質中の19F MRI/MRSデータセットの1個以上のボクセルの測定されたシグナル対ノイズ比(SNR);(viii)場合により、参照標準からの19F MRI/MRSデータセットの1個以上のボクセルの測定されたSNR;(ix)場合により、対象物質の19F NMR緩和時間(T、T、およびT);(x)場合により、参照標準の19F NMR緩和時間(T、T、およびT)を含み得る(たとえばMagnetic Resonance Imaging,Third Edition,chapter 4,editors D.D.Stark and W.G.Bradley,Mosby,Inc.,St.Louis MO 1999を参照)。当業者は、特に19F MRI/MRSデータセットから、インサイチューの標識細胞数を定量するために使用できる、他のパラメータ、上のセットの組合せ、またはその派生を誘導することができる。ある実施形態において、主要パラメータの上のセットを使用して、測定した標識細胞数の精度または信頼性の定量的または統計的尺度を誘導することができる。
【0139】
主要パラメータ(上のi〜x)、これらの任意のサブセット、またはその組合せもしくは近似値のいずれかを組合せて、Ncで示される、対象物質中で19F MRIによって参照された標識細胞の有効数を概算するための多くの方法がある。たとえば、
【0140】
【数3】

という形の式を使用できる。式中:N=ROI中の標識細胞の総数;[F]=校正した19F参照溶液(またはゲル)中の19Fの濃度;v=ボクセル体積;I=MRI/MRSスキャンによって取得して、1以上のボクセルで平均した、校正19F参照の平均強度;F=インビトロで測定した標識化剤の平均19F細胞用量;NROI=標識細胞を含有するROI中のボクセルの数;I(i)=標識細胞を含有するROI中のi番目のボクセルの画像強度;i=標識細胞を含有するROI中のボクセルの無単位指数。
【0141】
19FデータセットからNを概算する多くの方法もある。たとえば、
【0142】
【数4】

を使用可能であり、式中、Iavgは、標識細胞を含有するROIの平均強度である(すなわちNROIボクセルの平均強度)。別の例として、
【0143】
【数5】

を使用可能であり、式中、Vは、標識細胞を含有するROIの総体積である。さらなる例として、
【0144】
【数6】

を使用可能であり、式中、Vは、19F MRI/MRSにおける参照の有効体積であり、Nは、V中の19F核の数である。上の式のすべてにおいて、各種の強度(すなわちI、Iavg、I(i))を画像ノイズに正規化することができ、それゆえ上の式は、特定の領域の適切なSNR値によって等しく表現できることに注意する。それゆえ標識細胞の数、Nを概算する多くの方法があり、これらの基本的な式の多くの同様な形を基本的な数学的操作によって誘導することができるが、すべて(i−x)によって示される入力パラメータに含有される同じ基本的内容に依存している。さらに、ROI中の標識細胞の定量は、絶対数または有効細胞数によって表現する必要はない。ROI中の細胞の量を示す、他の定量的指数を誘導することができる。たとえば比Iavg/I、またはROIおよび参照で観察された平均SNR値の比を計算することができる;これらすべては、上の式および/またはパラメータのサブセットに含まれる。
【0145】
細胞数および関連する指数の上の分析は、フルオロカーボン標識の19F NMR緩和時間(すなわち特にT1および/またはT2)が校正した19F参照標準中の物質とほぼ同じであることを前提としていることに注意する。緩和時間が比較できない場合、当業者は、T1およびT2で表される、使用されている特定の撮像プロトコルの公知のMRI強度の等式を使用することによって、これをただちに補正することができる。
【0146】
場合により、対象物質の19F MRIデータセットに、(上述のような)実際の細胞定量計算を実施する前に、後処理を受けさせることができる。たとえば後処理アルゴリズムは、19Fデータセットを「ノイズ除去」することを含み得る。このことはたとえば、画像の閾値を定めて低強度ノイズを遮断することによって実施できる;これには低い値がゼロに設定されるように、画像強度を再設計することが含まれる。MRI強度画像では、ランダムなジョンソンノイズが明らかであり、画像FOVに均一に分布していることが多い。低レベル画像強度を閾値外とすることができるため、真のシグナルを含有しない(すなわち19Fおよび/またはHがない)ことが既知の領域がゼロのまたは非常にゼロに近い強度を有すると思われることが、当分野で周知である。このプロセスは、その場限りの方式で(すなわち「手動で」または目視検査によって)、またはコンピュータアルゴリズムによって実施できる。他の実施形態において、データセットのノイズ除去は、他のアルゴリズムを使用すること、たとえばウェーブレット分析を使用することによって実現することができ、多くの方法が画像ノイズ除去の分野で公知である。以下の参考文献はその全体が本明細書に組み入れられている:Khare,A.ら、INTERNATIONAL JOURNAL OF WAVELETS MULTIRESOLUTION AND INFORMATION PROCESSING,3(4):477−496 DEC 2005;Cruz−Enriquez,H.ら、IMAGE ANALYSIS AND RECOGNITION,3656:247−254 2005;Awate,SP.ら、INFORMATION PROCESSING IN MEDICAL IMAGING,PROCEEDINGS,3565:677−688 2005;Ganesan,R.ら、IIE TRANSACTIONS,36(9):787−806 SEP 2004;Scheunders,P.,IEEE TRANSACTIONS ON IMAGE PROCESSING,13(4):475−483 APR 2004;Ghugre,NR.,MAGNETIC RESONANCE IMAGING,21(8):913−921 OCT2003;Bao,P.ら、IEEE TRANSACTIONS ON MEDICAL IMAGING,22(9):1089−1099 SEP 2003;Wu,ZQ.ら、ELECTRONICS LETTERS,39(7):603−605 APR 3 2003;LaConte,SM.ら、MAGNETIC RESONANCE IN MEDICINE,44(5):746−757 NOV 2000;Laine,AF.,ANNUAL REVIEW OF BIOMEDICAL ENGINEERING,2:511−550 2000;Zaroubi,S.ら、MAGNETIC RESONANCE IMAGING,18(1):59−68 JAN 2000;Nowak,RD.,IEEE TRANSACTIONS ON IMAGE PROCESSING,8(10):1408−1419 OCT 1999;およびHealy,DM.ら、ANNALS OF BIOMEDICAL ENGINEERING,23(5):637−665 SEP−OCT 1995。
【0147】
定量の前後に19F MRIデータセットに適用できる他の種類の後処理アルゴリズム、たとえばゼロ充填(A Handbook of Nuclear Magnetic Resonance,2nd Edition,Ray Freeman,Addison Wesley Longman Press 1997)および各種の画像内挿、ノイズ除去、および画像平滑化アルゴリズム(たとえばThe Image Processing Handbook,3rd Edition,John C.Russ,CRC Press/IEEE Pressを参照)が当分野で公知である。
【0148】
ある実施形態において、主要パラメータ(i〜x)の上のセットを使用して、測定した標識細胞または関連する指数の精度または信頼性の定量的または統計的尺度を誘導することができる。19F MRI/MRSデータセットはROI内でSNR制限を受けることが多く、それゆえ測定値の信頼性または精度の測定基準を計算することが有用であることが多い。MRIおよび生物医学型画像の統計的分析ための多くの方法が当分野で公知である。請求された実施形態は、これらの公知の方法を含むと理解される。
【0149】
5.製薬的製剤および使用
本出願のエマルジョンの投与方法は、当業者に周知である。所望の活性を実現するために、エマルジョンは多様な単位投薬形で投与することができる。用量は、特定のエマルジョンによって変わるであろう。用量も投与方式、患者の全身の健康状況、状態、サイズ、および年齢に応じて変化するであろう。
【0150】
ある実施形態において、エマルジョンの投与は、静脈内経路によって、たとえば注射による静脈内輸液を介して実施され得る。ある実施形態において、他の投与経路が使用され得る。注射に好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に記載されている。このような製剤は、滅菌性および非発熱性でなければならず、一般に製薬的に有効な担体、たとえば生理食塩水、緩衝(たとえばリン酸緩衝)生理食塩水、ハンクス液、リンゲル液、デキストロース/生理食塩水、グルコース溶液などを含むであろう。製剤は、製薬的に許容される補助物質、浸透圧調整剤、湿潤剤、殺菌剤、保存料、安定剤などを必要に応じて含有し得る。ある実施形態において、静脈内投与に好適な緩衝剤を使用して、エマルジョン安定性を補助する。ある実施形態において、グリコールを使用して、エマルジョンの安定性を補助する。
【0151】
ある実施形態において、エマルジョンの投与は、非経口経路によって、通例、関節内もしくは静脈内注射(たとえば静脈内輸液)または筋肉内注射などの注射を介して実施され得る。他の投与経路、たとえば経口(p.o.)は、投与される特定のエマルジョンにとって所望であり、実行可能であれば使用され得る。
【0152】
湿潤剤、乳化剤および潤滑剤、たとえばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムはもちろんのこと、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存料および抗酸化剤も、本出願の製薬組成物に存在することができる。
【0153】
ある実施形態において、主題エマルジョンの製剤は、内毒素および/または関連する発熱性物質を実質的に含まない、発熱物質を含まない製剤である。内毒素は、微生物内部に閉じ込められ、微生物が破壊または致死したときに放出される毒素を含む。発熱性物質は、細菌および他の微生物の外膜からの発熱誘発性の熱安定性物質(糖タンパク質)も含む。これらの物質のどちらも、ヒトに投与された場合に発熱、低血圧およびショックを引き起こすことがある。潜在的に有害な影響のために、少量の内毒素でも静脈内投与される製薬溶液から除去することが好都合である。The Food & Drug Administration(「FDA」)は、静脈内薬物利用では1時間の期間中に体重1キログラム当り、5内毒素単位(EU)の上限を設定している(The United States Pharmacopeial Convention,Pharmacopeial Forum 26(1):223(2000))。
【0154】
主題のエマルジョンの製剤は、経口、食事、局所、非経口(たとえば静脈内、動脈内、筋肉内、皮下注射)、眼科用(たとえば局所または眼内)、吸入(たとえば気管支内、鼻内または経口吸入、鼻内滴剤)、経直腸、および/または膣内投与に好適な製剤を含む。他の好適な投与方法は、再装薬式または生分解性デバイスおよび制御放出ポリマーデバイスも含むことができる。ステントは特に、本出願の薬剤と混合した制御放出ポリマーによってコーティングされ得る。本開示の製薬組成物は、他の薬剤との併用療法の一部として(同じ製剤または別個の製剤のどちらかで)投与することもできる。
【0155】
治療的に有効である製剤の量は、標準臨床技法によって決定することができる。さらに、場合によりインビトロアッセイを使用して、最適な投薬量範囲の確認に役立てることができる。製剤で使用される正確な用量も、投薬経路に依存するであろう。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系より得た用量応答曲線から外挿され得る。投与される組成物の投薬量は、標準用量応答試験と併せて必要以上の実験を行わずに、当業者が決定することができる。これらの決定を行う際に検討される関連状況は、治療される1つ以上の状態、投与される組成物の選択、個々の患者の年齢、体重、および応答、ならびに患者の症状の重症度を含む。たとえば患者の実際の体重を使用して、投与される製剤の用量がミリリットル(mL)で計算され得る。「理想」体重への下方調整は行われ得ない。このような状況で、適切な用量は、以下の式:用量(mL)=[患者体重(kg)×用量レベル(mg/kg)/薬物濃度(mg/mL)]によって計算され得る。
【0156】
本開示の治療剤は、多様な単位投薬形で投与することができ、その投薬量は、投与されている特定の治療剤のサイズ、効力、およびインビボ半減期によって変化するであろう。
【0157】
インサイチュー利用の場合、エマルジョンは、エマルジョンの排除前に食細胞に取り込み可能とするために、最適な薬物動態特性を有するように製剤され得る。
【0158】
本開示の治療剤の用量は、投与方式、エマルジョンの特定の用途、患者の全身の健康状況、状態、サイズ、および年齢、ならびに処方する医師の判断に応じても変化するであろう。
【0159】
本出願の製剤は、包装材料ならびにエマルジョンおよび投与方式に応じて適切な製薬的に許容される担体を含む製薬薬剤を含む製造品として流通させることができる。本開示の製薬用製剤および使用は、本出願の利用のための任意の公知の組成物と組合され得る。
【0160】
6.コンピュータ方法
標識細胞を定量する方法は通例、このような定量を目的として設計されたソフトウェアを動作させ得るコンピュータを活用して実施されるであろう。このようなソフトウェアは、スタンドアロンプログラムであり得るか、または他のソフトウェア、たとえばMRI画像処理ソフトウェアに組み込まれ得る(その全体が参照により本明細書に組み入れられている、US Patent Application No.2007−0253910を参照)。
【0161】
本開示は、本出願のある態様および実施形態を単に例証する目的で含まれており、本開示を限定することを意図しない、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0162】
別途指摘しない限り、以下に示すナノエマルジョンはすべて、酸素検知および細胞追跡のために血液代用物としてエマルジョンの製剤に使用される、当分野で周知のフルオロカーボンである、ペルフルオロ−15−クラウンエーテルを用いて調製される(その全体が参照により本明細書に組み入れられている、US Patent Nos.4,838,274および5,785,950を参照)。以下の実施例で、我々は、ペルフルオロ−15−クラウン5エーテルを用いて安定なナノエマルジョンを製剤する新規手法を紹介した。他の新規製剤は、エマルジョンを各種の細胞型の中に「自己送達可能」にする各種の共乳化剤を包含する。本明細書に記載する新規エマルジョン製剤は、特に、インビボ利用に好都合であるナノエマルジョン液滴径の縮小(110nmもの小ささ)に関して、従来技術のエマルジョンを超える明らかな改良点を示している。紹介したナノエマルジョンは、単分散(PDI<0.1)として調製され、血清の存在下および体温にて格別な安定性を示す。さらなる新規性は、「自己送達型」特性を達成するための硫酸プロタミンまたは他の共界面活性剤の導入および格別に小さい液滴径および高いインビボ安定性を達成するためのクレモホールELの使用にある。
【0163】
紹介したナノエマルジョンはすべて、マイクロフルイダイゼーションを使用して0.5〜1リットルのスケールで調製される。エマルジョンは、Malvern Zetasizer Nano ZSを使用して、液滴径および多分散性について動的光散乱(DLS)によって分析した。エマルジョンの外観を目視で評価した。ナノエマルジョンは血清安定性、pHおよび容量オスモル濃度について試験した。さらに、インビボ実験の有効性が証明されている。
【0164】
血清実験はすべて、10%FBS(ウシ胎仔血清、Hyclone Inc.)の存在下のDMEM(ダルベッコ変法必須培地、Invitrogen Inc.)培地中で実施した。
【0165】
省略形
w/w 重量/重量比
RT 室温
PDI 多分散指数
WFI 注射用水(滅菌)
PSA 液滴径分析
MF マイクロフルイダイザ
物質
ペルフルオロ−15−クラウン−5−エーテル:ExFluor,Inc.Round Rock,TX.
硫酸プロタミン:Sigma P3369ロット番号022K12201 CAS# 53597−25−4 USP試験に適合
プルロニックF68:BASF(ルトロールF68/ポロキサマー188)USP/NFグレード
注射用水:Braun(滅菌/発熱物質を含まない)
コレステロール:Sigma Cholesterol Ph Eur;14606
DPPE: Avanti Polar Lipidsによるジパルミトイルホスファチジルエタノール:16:0 PE 850705P
レシチン(Egg PC):リポイド卵ホスファチジルコリン
クレモホールELP:BASF 10205104 USP/NF グレード
プロピレングリコール:Fagron BV 176947 Ph Eurグレード。
【0166】
硫酸プロタミンを含むおよび含まないペルフルオロ−15−クラウン5エーテル/F68
【0167】
【表1】

手順:
高濃度プレエマルジョンを最初に調製して、滅菌水で希釈して必要な最終濃度に到達させて、最後にMFによって処理して、許容される液滴径(<200nm)および多分散性(<0.15)のエマルジョンを得た。乳化剤および添加剤を使用直前に滅菌水に溶解させた。プルロニックF68溶液を水で100mg/mlに、硫酸プロタミンで20mg/mLに調製した。高濃度プレエマルジョンは、必要な液体すべて(ペルフルオロ−15−クラウン5エーテル油、F68溶液および硫酸プロタミン溶液)を回転剪断機(直径25mmのultra−turraxシャフトを使用)で13500rpmにて2.5分間処理することによって調製した。この最初の混合物を次に、必要な最終濃度まで希釈して、回転剪断機によって1分間再処理した。プレエマルジョンは、M−110Sマイクロフルイダイザ(Microfluidics Corp.)を使用して、MFによってただちに処理した。マイクロフルイダイゼーション処理の間の液圧は>18500psiであり5〜8回別々に通過させること(サイクル)によって小さい液滴径が達成された。ナノエマルジョンを濾過によって滅菌した。生成物は、フィルタホルダ(PALL,Inc.)内の47mm PFR(PTFE、0.22μm)ディスクを使用して濾過した。2〜8ml/分の低流を使用して濾過を正常に実現した。
【0168】
エマルジョンを目視検査して、DLSによる液滴径および多分散性測定を受けさせた。すべての試料はDLS測定前に、WFIで希釈して、1%ペルフルオロ−15−クラウン−5−エーテルの最終濃度に到達させた。
【0169】
結果
【0170】
【表2】

どちらの製剤でも、5℃および室温での貯蔵時には3ヶ月間にわたって、液滴径は<200nm、多分散性は<0.2であった。
【0171】
クレモホールELを含むペルフルオロ−15−クラウン5エーテルナノエマルジョン(製剤3)
現在公知の脂質ベースナノエマルジョンを超える安定性上昇および液滴径縮小のために、ペルフルオロ−15−クラウン−5−エーテルの新たな製剤を設計した。この新たな製剤は、クレモホール(登録商標)EL(BASF)をフルオロカーボンの乳化剤として最初に利用する。クレモホールELは非イオン性可溶化剤であり、主成分は、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステルと共に疎水性部分となるグリセロール−ポリエチレングリコールリシノレエートであり;より小型の親水性成分は、ポリエチレングリコールおよびエトキシ化グリセロールから成る。脂質成分は、ナノエマルジョン液滴のリポソームコート中に混和されるが、PEGによって立体安定化が確保される。得られたナノエマルジョン液滴は、ペルフルオロ−15−クラウン−5−エーテルコア、リポソームコーティング、およびクレモホールELのPEG部分によって立体的に安定化された表面を有する。立体安定化によって、有効期限およびインビボでのナノエマルジョン安定性が著しく改善された。クレモホールELをエマルジョン製剤に導入することによって実現された改善点を証明するために、以前に報告された手順に従って(WO2006096499)従来技術の製剤(エマルジョン4)を、新たな製剤(エマルジョン3)と並行して調製した。2つのエマルジョンを比較して、結果を下に示す。どちらのエマルジョンも250mLスケールで調製した。
【0172】
【表3】

手順:
要約すると、リポソームをリポソーム成分の超音波処理によって調製した。高濃度プレエマルジョンを、ペルフルオロ−15−クラウン−5−エーテル/乳化剤1および添加剤を添加することによって調製した;続いて、バッチを最終濃度まで注射用水で希釈して、MFを使用して最終油液滴径まで処理した。
【0173】
さらに詳細には、リポソーム成分のレシチン、コレステロールおよびDPPEをクロロホルムに溶解させて、回転蒸発によって乾燥させてフィルムにした。次に脂質を超音波処理によってWFI中に分散させた。得られた懸濁物にアルゴン(気体)を通気して、密閉し、使用するまで5℃にて遮光して貯蔵した。クレモホール(登録商標)EL(またはベニバナ油)、ペルフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、プロピレングリコール、およびリポソームを含むすべての成分を最初に、少量の水と合せた。この初期高濃度混合物は、ペルフルオロ−15−クラウン−5−エーテルを60%w/w有していた。混合物を回転剪断機(turrax)によって12500rpmにて2分間処理して、得られた高濃度プレエマルジョンをWFIで最終濃度までさらに希釈して、再度12500rpmにて1分間処理した。プレエマルジョンは安定でなかったため、それゆえ>18500psiの圧にてMFで5〜8回慎重に通過させること(サイクル)によってマイクロフルイダイゼーションによってただちに処理した。最終エマルジョン生成物は、後述するように安定であった。
【0174】
製剤5は、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルを重量で直鎖PFPEに置き換えて、製剤3について上述したような手順を使用して調製した。この置き換えは、直鎖PFPEとペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルとの間の比重量および粘度が同様であるため実施可能であった。製剤5中のPFPEオキシドの量は、製剤3中のペルフルオロ−15−クラウン5エーテルの重量による量と等しく、同等の19Fスピン/ナノエマルジョン液滴をより多数得られるという利点があった。界面活性剤共混合物、クレモホールELおよび添加剤の量は、製剤3で上述した量と同じであった。簡潔には、クレモホール(登録商標)EL(またはベニバナ油)、直鎖PFPE,プロピレングリコール、およびリポソームを最初に、少量の水と合せた。この初期高濃度混合物は、直鎖PFPEを60%w/w含んでいた。混合物を回転剪断機(turrax)によって12500rpmにて2分間処理して、得られた高濃度プレエマルジョンをWFIで最終濃度までさらに希釈して、再度12500rpmにて1分間処理した。プレエマルジョンは安定であり、>18500psiの圧にてMFで5〜8回慎重に通過させること(サイクル)によってマイクロフルイダイゼーションによってただちに処理した。図7は、第1日および第342日における製剤5のDLSによる液滴径測定を示す。これらのデータによって、4℃での貯蔵時のこの製剤が格別に安定性であることが示された。
【0175】
結果:
製剤3エマルジョンの有効期間安定性:
エマルジョン3は続いてDLSを受けて、合計6カ月超にわたって脱安定化の徴候について目視検査された。製剤3の安定性データのまとめを図1に示す。製剤3は、目視検査時には不透明で乳白色に見えた;大規模な液滴、凝集体、沈殿または相分離は、追跡中に見られなかった。重要なことに、製剤3エマルジョンの液滴径は、試験を行った他のすべてのエマルジョンと比較すると小さく、最も重要なことには、液滴径およびPDIは、製剤4と比較して劇的に縮小した(WO2006096499)。比較結果を表4に示す。クレモホールELの導入によって、同じ製造条件下でベニバナ油を用いて調製した製剤4と比較して、製剤3の液滴径を劇的に縮小した。
【0176】
【表4】

5℃および25℃のどちらにおいても、液滴径のわずかな増大(2ヶ月後に5℃にて17%、25℃にて32%まで)が最初に検出された。液滴径のわずかな縮小によって、追跡の最初の2カ月の間に、オストワルド熟成が考えられることを示された。3ヶ月の時点で、径は約150nmに安定して、PDIは低いままであった(<0.15)。液滴の膨潤は停止して、ナノエマルジョンはその外観に変化がなく、さらなる追跡の間、安定なままであった。エマルジョン3を血清存在下で、時間ゼロおよび6カ月の2つの時点で試験した。各時点において、ナノエマルジョン液滴径およびPDIは、37℃での3時間のインキュベーション後に血清存在下での著しい変化を示さなかった(表6)。
【0177】
【表5】

【0178】
【表6】

ベニバナ油を用いた製剤4を、先に報告した方法を使用して製剤3と並行して調製した(WO2006096499)。このエマルジョンの液滴径、PDIおよび血清安定性を、クレモホールELを利用する製剤3(上記)と比較した。製剤4の液滴径は、製剤1、2、または3と比較して、実質的に(substantionally)大きかった(表4および7)。液滴径は、5℃にてわずか1週間後に、約25%増大した(表7)。2週間の期間の後、液滴径は見かけのプラトー値に達した(表7)。多分散性はかなり上昇し、このことは製剤3では見られなかった。表8は、製剤4の血清安定性を示す。
【0179】
【表7】

【0180】
【表8】

製剤5エマルジョンの有効期間安定性:
製剤5のエマルジョンは続いてDLSを受けて、合計11カ月にわたって脱安定化の徴候について目視検査された。上述のように、図7は、粒径およびPDIが4〜8℃での貯蔵時に342日後(>11カ月)に不変のままであることを示す。
【0181】
製剤3への蛍光染料の包含
製剤3の有用性をさらに証明するために、蛍光染料を処理後の製剤3の脂質層に包含させた。この添加によって、19F磁気共鳴および各種の蛍光方法(たとえばフローサイトメトリー、組織学、FACs分析、蛍光顕微鏡など)の両方によって検出できる、「デュアルモダリティ」剤が生成された。幅広く市販されている親油性染料(たとえばジアルキルカルボシアニン、Invitrogen,Inc.)を使用した。たとえば水に溶解せず、脂質の疎水性環境でなければ実質的に蛍光を示さない蛍光染料であるDiI(Molecular Probes)を使用した。DiIを製剤3のリポソームコーティング中に包含させた。蛍光試験によって、製剤のリポソーム部分の中で染料の安定な蛍光が示された(図2)。染料は、エマルジョン脂質コアと結合しない限り、明らかに非蛍光性であった。染料は、低い水溶性のために、ナノエマルジョンと結合したままであり、水または細胞培地での希釈時にその蛍光を維持した。蛍光染料の包含は、図3に示すように製剤3の、液滴径または多分散性に影響せず、血清安定性に影響しなかった。染料は、細胞へのナノエマルジョン取り込みにも負の影響を持っていなかった(データを示さず)。
硫酸プロタミンおよびポリエチルアミンを用いた製剤3および5
ナノエマルジョン3および5は、硫酸プロタミンおよびポリエチルアミンを用いて製剤して、非食細胞への取り込みを改善することもできる。これらのポリアミンは、プレエマルジョン中に包含されて、上述のようにMF処理後にエマルジョン界面活性剤層に混入する。ポリアミンの量は、最適な細胞標識化を実現するように最適化されるであろう。(参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、WO2009/009105を参照)。
【0182】
蛍光PFPEを添加した製剤3および5
蛍光ブレンドPFPEアミド(FBPA)は最近、共有コンジュゲート蛍光染料(たとえばボディピー、FITCまたはアレクサ647)を含有することが記載されている。これらの蛍光コンジュゲートPFPE油は、ナノエマルジョンプロセスの間に独自のフルオロカーボン単相として挙動する[詳細については、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Janjicら、J Am Chem Soc.2008 Mar 5;130(9):2832−41を参照]。蛍光性の製剤3および5は、FBPAを用いて調製され得る。製剤3では、10%v/vのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルをFBPAで置き換えることができる。結果として、製剤5では、10%v/vのPFPEオキシドをFBPAで置き換える。油を慎重に共にブレンドして独自のフルオロカーボン相を得て、次に製剤3および製剤5で記載したようなナノエマルジョン調製手順を受けさせる。界面活性剤共混合物ではなく蛍光染料によって標識されているフルオロカーボン相の利点は、何倍にもなる。第1に、これらの新たな製剤中の蛍光染料は、処理を通じて、細胞標識化の間、そしておそらくインビボで、ナノエマルジョン液滴のフルオロカーボンコア内に残存する。第2に、蛍光シグナルは標識組織または細胞からの19F NMRシグナルに正比例し[Janjicら、J Am Chem Soc.2008 Mar 5;130(9):2832−41]、それゆえ2つの撮像または検出様式(すなわち磁気共鳴および蛍光)での細胞(または組織)間に標識化の差異はない。
【0183】
製剤3の生物学的評価
製剤3は、図1に示すように、優れた安定性および非常に小さい液滴径(<150nm)を低い多分散性(<0.15)と共に示す。ナノエマルジョンを細胞培養条件下でのインビトロと、げっ歯類への注射時のインビボの両方で安定である。ここで我々は、細胞取り込み、毒性プロフィール、ならびに表現型および活性変化についての標識細胞の評価を含む、製剤3のより詳細な評価を示す。
【0184】
販売者の説明書に従って培養したRAW細胞(ATCC,Manassass,VA)を製剤3の異なる濃度に3時間および24時間暴露して、直接細胞カウントによって細胞毒性を推定した。最小毒性は、適用された最大用量にて、暴露24時間後に観察された(図4A)。RAW細胞への製剤3の取り込みは、上述のように細胞ペレット中で19F NMRによって測定され、明らかな用量依存性を示した(図4B)。図5は、製剤3標識RAW細胞の代表的な19F NMRスペクトルを示す。18時間の同時インキュベーションの後、トランスフェクション試薬を用いずに、食作用性RAW細胞に十分な取り込みが行われた。非食作用性細胞への取り込みを促進するために、硫酸プロタミンおよびポリエチルアミンを、(上記の)製剤2で記載したように、製剤3中に包含させた。
【0185】
製剤3の細胞標識化は、RAW細胞のサイトカイン産生能力に何の影響もなかった(図6)。細胞をLPSで24時間活性化してから、製剤3に18時間暴露させて、洗浄し、次に24時間培養した。ELISAアッセイを使用して、IL−6およびTNF−アルファのレベルを含むサイトカイン産生を測定した。これらの試験により、製剤3によって標識した細胞はインビボでのその活性に何の影響もないことが示された。
【0186】
げっ歯類で製剤3および5のインビボ血中クリアランス時間を測定した(図8)。C57BL/6マウスのコホート(メス、6週齢)に所与の製剤のボーラス0.5mLを1回、尾静脈に注射した。注射時に、これらの動物では有害事象は見られなかった。次に血液の少量の一定分量(alloquots)を各動物から一連の固定時点に採取した。各製剤にN=5マウスの試料サイズを使用した。各血液試料の19F含有量は、19F NMRを使用してアッセイした;各血液試料の既知の体積を、上述のように校正フッ素参照溶液(TFA)によってスパイクして、毛細管に入れ、血液体積当りの19Fの量を時間に対して計算した(図8)。全体として、製剤3および5はどちらも、同様の長い血液半減期を有していた(>14時間、図8)。
【0187】
全体として、上述の製剤のいくつか(たとえば製剤3および5)は、無傷組織標本における炎症定量の日常的な作業を迅速化するために開発された。インサイチュー標識化実験の場合、炎症は2つの方法、従来の高分解能NMRによって、またはMRIを使用することによってアッセイできる。どちらの方法においても、食作用性炎症細胞(たとえば単球/マクロファージ/好中球)内に含有される、19F核の組織における存在量を検出する。最も標準的なNMR装置は、19Fを日常的に検出できる。NMRは、組織試料中の白血球浸潤の程度を定量する高感度で費用効率の高い手法を提供する。この手法によって、時間集約的な病理学的染色と、続いての顕微鏡による細胞定量の必要が排除される。任意の固定ステップを除いて、特殊な組織調製は不要である。さらに、NMRの使用によって、組織学的試料採取での潜在的な偏りおよび誤差がなくなり、より小さく、より高い品質のデータセットが得られる。切除組織のNMR分析は非破壊的であり、それゆえNMRの後に同じ組織に組織学的および生化学的分析を受けさせることができる。
【0188】
これらのエマルジョンのインビボ有効性の代表的な利用例として、製剤3を使用して、スポンジ肉芽腫モデルにおける炎症をインビボMRIを用いて検出した。PVSスポンジディスクを完全フロイントアジュバント(CFA)に浸漬して、C57BL/6マウスの背側へ皮下インプラントした。術後第4日に、製剤3の静脈内注射(0.5mL)を1回投与した。麻酔したマウスを第5日の7Tに撮像した。図9は、H/19F融合画像を示し、19Fは疑似カラーになっている。データは、スポンジ周囲で製剤3によって標識したマクロファージの濃度が高いことを示す(アスタリスク)。少量の19Fは、製剤の主要なクリアランス経路である肝臓にも見られる(図9)。「R」は、動物の胴体に沿った希釈19F参照毛細管である。生理食塩水に浸漬したスポンジを用いた対照動物は、製剤3投与後に負の19Fシグナルを示した。これらのデータ例は、製剤3の炎症への高い特異性を示す。
【0189】
上述の製剤の有用性のさらなる例として、製剤3を使用して、多発性硬化症、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)のげっ歯類モデルの脊髄(SC)における炎症プロフィールを測定した。完全フロイントアジュバント(CFA)と混合した同系脊髄ホモジネートから成る尾基部への皮下接種1回を使用して、DAラットでEAEモデルを産生した。臨床ステージ−2 EAEラットに製剤3(0.5mL)を静脈内注射して、48時間後に、従来の19F NMR分光法を470MHzにて使用して、SCの無傷の固定分節で炎症をアッセイした(図10)。図10において、炎症指数は、組織重量当りの19F核の数として計算された、背側での各脊髄椎骨の炎症密度を表す。最低の製剤3取り込みを示す、CFAを投与したが、SCホモジネートを投与しなかった対象動物も示されている。表示したデータは、n=3動物の平均結果である。この例では、SCによる全体の調製および分析時間は約6時間であって、従来の組織学的分析に比較してほぼ1桁の短縮となった。
【0190】
製剤3および5の有用性について、他の多くの最近のインビボ実験例がある。たとえばKlugら(参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Abstract #3172,Proc.Int.Soc.Mag.Reson.Med.17,2009)は、製剤5を使用してマウスモデルでの急性および慢性炎症を描出できることを証明した。これらの研究者らは、TNF−αの局所耳注射で調製したC57BL/6マウスおよびアテローム性プラーク形成のモデルであるapoE−/−マウスの両方を使用した。製剤5の静脈内注射1回の後、C57BL/6マウスのTNF−α注射部位でのMRIによって19Fを検出することができ、apoE−/−マウスでは、19Fは、これらの動物におけるプラークの一般的な部位である、腕頭動脈(brachiocephatic)弓で検出することができた。
【0191】
他の研究では、Hitchensら(参照によりその全体が組み入れられている、Abstract #932,Proc.Int.Soc.Mag.Reson.Med.17,2009)は、製剤3を使用して固形臓器移植片拒絶を描出した。DAラットからの心臓/肺または腎臓のどちらかをBNラット株に移植した。どちらの場合も、DAからBNへの移植は、急性拒絶を経験する実験的同種移植モデルとして役立つ。移植の数日後、製剤3の注射1回をこれらの動物に静脈内送達して、次に動物に19F/H MRIを24時間後に受けさせた。インビボ19Fデータは、炎症細胞の拒絶臓器中への浸潤を明らかに示したが、対象(非拒絶)臓器では示さなかった。組織学的研究の検証により、19Fシグナルが浸潤マクロファージから発生することが確認された。
【0192】
他の研究者ら(参照によりその全体が本明細書に組み入れられている、Basse−Lusebrinkら、Abstract #807,Proc.Int.Soc.Mag.Reson.Med.17,2009)は、皮質梗塞のマウスモデルで製剤3および5の両方を使用した。梗塞動物にどちらかの製剤のIP注射を投与して、顕著な局在化19F MRIシグナルを虚血性皮質病変への推定されるマクロファージ浸潤から観察した。著者らは、製剤3および5でそれぞれ使用したペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルと直鎖PFPEとの間の小さい化学シフト(〜1ppm)が分光的にインビボで分解されて、異なる時点で注射されたエマルジョン、それゆえ炎症細胞の病変中への各種の波動を明らかにできたことをさらに示した。従来の空間局在化化学シフト撮像(CSI)を使用して、著者らは異なる時点で注射された両方の製剤のインビボ脳分布を同時に検出および分解することができた。
【0193】
参照による組み入れ
本明細書で言及したすべての刊行物および特許は、個別の刊行物または特許がそれぞれ参照により組み入れられることが具体的および個別に示されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み入れられている。矛盾のある場合には、本出願が、本明細書のいずれの定義も含めて優先するであろう。
【0194】
均等物
本発明の詳細な実施形態は、本明細書で明示的に開示されているが、上の明細書は例示的であり、制限的ではない。本発明の多くの変形が、本明細書および下の請求項を検討したときに、当業者に明らかになるであろう。本発明の全範囲は、請求項と共に均等物のその全範囲を、および明細書と共にそのような変形を参照して決定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシド、乳化剤、界面活性剤共混合物、および添加剤を含む水性組成物。
【請求項2】
前記乳化剤が非イオン性可溶化剤でもある、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記乳化剤がグリセロールポリエチレングリコールリシノレエートを含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤共混合物が70mol%のレシチン、28mol%のコレステロールおよび2mol%のDPPEを含む、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記添加剤がプロピレングリコールである、請求項1〜4のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項6】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを20%〜50%w/vの範囲で含む、請求項1〜5のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項7】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを25%〜35%w/vの範囲で含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを30%〜40%w/vの範囲で含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35%〜36%w/vの範囲で含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルまたはPFPEオキシドを35.6%w/vで含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記乳化剤を1%〜10%w/vの範囲で含む、請求項1〜5のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項12】
前記乳化剤を1%〜5%w/vの範囲で含む、請求項11に記載の水性組成物。
【請求項13】
前記乳化剤を3%w/vで含む、請求項11に記載の水性組成物。
【請求項14】
プロピレングリコールを1%〜10%w/vの範囲で含む、請求項5に記載の水性組成物。
【請求項15】
プロピレングリコールを1%〜5%w/vの範囲で含む、請求項5に記載の水性組成物。
【請求項16】
プロピレングリコールを2%w/vで含む、請求項5に記載の水性組成物。
【請求項17】
レシチン、コレステロールおよびDPPEを含む前記界面活性剤共混合物を1%〜10%w/vの範囲で含む、請求項4に記載の水性組成物。
【請求項18】
レシチン、コレステロールおよびDPPEを含む前記界面活性剤共混合物を1%〜5%w/vの範囲で含む、請求項4に記載の水性組成物。
【請求項19】
レシチン、コレステロールおよびDPPEを含む前記界面活性剤共混合物を2%w/vで含む、請求項4に記載の水性組成物。
【請求項20】
35.6%w/vのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテル、3.0%w/vの乳化剤、2.0%w/vの、レシチン、コレステロールおよびDPPEを含む界面活性剤共混合物、ならびに2.0%w/vの、プロピレングリコールである添加剤を含む水性組成物。
【請求項21】
35.6%w/vのPFPEオキシド、3.0%w/vの乳化剤、2.0%w/vの、レシチン、コレステロールおよびDPPEを含む界面活性剤共混合物、ならびに2.0%w/vの、プロピレングリコールである添加剤を含む水性組成物。
【請求項22】
前記乳化剤が非イオン性可溶化剤でもある、請求項20または21に記載の水性組成物。
【請求項23】
前記乳化剤がグリセロールポリエチレングリコールリシノレエートを含む、請求項20または21に記載の水性組成物。
【請求項24】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルおよびブロックコポリマーを含む水性組成物であって、ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルを10%〜20%w/wの範囲で含み、該ブロックコポリマーを0.1%〜2.0%w/wの範囲で含む、水性組成物。
【請求項25】
前記ブロックコポリマーが、PEOを80%の含有率で含むポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)トリ−ブロックコポリマーである、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項26】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルを12%〜17%w/wの範囲で含む、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項27】
ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルを15%w/wで含む、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項28】
前記ブロックコポリマーを0.1%〜1.0%w/wの範囲で含む、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項29】
前記ブロックコポリマーを0.6%w/wで含む、請求項24に記載の水性組成物。
【請求項30】
15%w/wのペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルおよび0.6%w/wのブロックコポリマーを含む水性組成物。
【請求項31】
前記ブロックコポリマーが、PEOを80%の含有率で含むポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(PEO−PPO−PEO)トリ−ブロックコポリマーである、請求項30に記載の水性組成物。
【請求項32】
硫酸プロタミンを0.01%〜1.0%w/wの範囲でさらに含む、請求項24〜31のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項33】
硫酸プロタミンを0.01%〜0.5%w/wの範囲で含む、請求項32に記載の水性組成物。
【請求項34】
硫酸プロタミンを0.01%〜0.1%w/wの範囲で含む、請求項32に記載の水性組成物。
【請求項35】
硫酸プロタミンを0.04%w/wで含む、請求項32に記載の水性組成物。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか一項に記載の組成物を含むエマルジョン。
【請求項37】
直径200nM未満の平均液滴径を有する、請求項36に記載のエマルジョン。
【請求項38】
4℃〜37℃の範囲の温度で安定である、請求項36に記載のエマルジョン。
【請求項39】
0.1〜0.2の多分散指数を有する、請求項36に記載のエマルジョン。
【請求項40】
高エネルギー方法を含む、請求項36〜39のいずれか一項に記載のエマルジョンを調製する方法。
【請求項41】
前記高エネルギー方法がマイクロフルイダイゼーションである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記高エネルギー方法が超音波処理である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
細胞を標識する方法であって、フルオロカーボン造影試薬が該細胞と結合するような条件下で、該細胞をエキソビボで請求項36に記載のエマルジョンと接触させるステップを含む方法。
【請求項44】
対象内の細胞を検出する方法であって:
a)該対象に請求項36に記載のエマルジョンで標識した細胞を投与するステップと;
b)該対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより該対象内の標識細胞を検出するステップと;
を含む方法。
【請求項45】
移植レシピエント内の移植細胞を検出する方法であって:
a)移植レシピエントに、その少なくとも一部が請求項36に記載のエマルジョンによって標識された移植用細胞を投与するステップと;
b)該対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより標識細胞を検出するステップと;
を含む方法。
【請求項46】
インビボで細胞数を定量する方法であって:
a)対象に請求項36に記載のエマルジョンで標識した細胞を投与するステップと;
b)該対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより該対象内の標識細胞を検出するステップと;
c)関心領域(ROI)内の標識細胞の数を定量するステップと;
を含む方法。
【請求項47】
インビボで白血球数を定量する方法であって:
a)対象に請求項36に記載のエマルジョンを投与するステップと;
b)該対象からの末梢血の試料を溢出させて、白血球の有効細胞ローディングを測定するステップと;
c)該対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより該対象内の標識細胞を検出するステップと;
d)関心領域(ROI)内の標識細胞の数を定量するステップと;
を含む方法。
【請求項48】
細胞ローディングを測定する前に細胞の集団を試料から選別して、該細胞の割合を使用して、ROI内のその集団の標識細胞の数を定量する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
細胞を標識する方法であって、フルオロカーボン造影試薬が該細胞と結合するような条件下で、該細胞をインビボで請求項36に記載のエマルジョンと接触させるステップを含む方法。
【請求項50】
対象内の細胞を検出する方法であって:
a)該対象に請求項36に記載のエマルジョンを投与するステップと;
b)該対象の少なくとも一部を核磁気共鳴技法によって検査して、それにより該対象内の標識細胞を検出するステップと;
を含む方法。
【請求項51】
組織における酸素の分圧を測定する方法であって、フルオロカーボン造影試薬が該組織と結合するような条件下で、該組織をインビボで請求項36に記載のエマルジョンと接触させるステップを含む方法。
【請求項52】
組織における血管透過性の上昇を検出する方法であって、フルオロカーボン造影試薬が該組織と結合するような条件下で、該組織をインビボで請求項36に記載のエマルジョンと接触させるステップを含む方法。
【請求項53】
組織における炎症を検出する方法であって、フルオロカーボン造影試薬が該組織と結合するような条件下で、該組織をインビボで請求項36に記載のエマルジョンと接触させるステップを含む方法。
【請求項54】
対象への投与のための標識細胞製剤であって:
a)細胞と;
b)該細胞と結合した請求項36に記載のエマルジョンと;
を含む製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−519852(P2011−519852A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507466(P2011−507466)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/002706
【国際公開番号】WO2009/134435
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(510288932)セルセンス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】