説明

核酸、及び塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法

【課題】 塩素化エチレンの中で唯一発癌性が証明されている塩化ビニルを分解する能力を有する微生物を簡便に検出することのできる方法を提供する。
【解決手段】 検出方法は、特定塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドを増幅するためのプライマーを用いて、試料中のDNAを鋳型としてリアルタイムPCRを行なう工程(a)を有する、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸、及び塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法に関する。特には、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出に用いることのできる核酸に関し、また、該核酸を用いた塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において科学技術が発展し、それに伴い、種々の化学物質が利用されるようになってきており、土壌や地下水が各種の有害難分解物質によって汚染されることが問題となっている。特に、テトラクロロエチレン(以下、「PCE」ともいう)、トリクロロエチレン(以下、「TCE」ともいう)、シス−1,2−ジクロロエチレン(以下、「cDCE」ともいう)、塩化ビニル(以下、「VC」ともいう)等の塩素化エチレンによる環境汚染、特に地下水、土壌の汚染は世界的に深刻な問題となっている。これらの塩素化エチレンは、土壌中に残留したものが雨水等によって地下水中に溶解して、周辺に広がるものとされている。このような塩素化エチレンは、水に対する溶解性が低く、また化学的に安定な化合物であることから、いったん環境中に放出されると、長期間にわたって土壌や地下水中に蓄積してしまう。
【0003】
一方で、塩素化エチレンのヒトに対する毒性が指摘されており、PCE、TCE及びcDCEについてはppbレベルでの環境基準値が設定されており、これらの塩素化エチレンによって汚染された土壌、地下水の浄化方法について、様々な研究がなされている。そのような研究の中でも、微生物を用いた浄化方法は、物理・化学的方法に比べて浄化コストが低いこと、また大がかりな掘削をする必要がなく、稼働中の工場等に隣接した場所における浄化が可能であること等の理由から、近年特に注目されている。塩素化エチレンを無害化することのできる微生物には、好気性微生物と嫌気性微生物との両者が存在する。前者は、メタン、トルエン、フェノール等の誘導物質の存在下に、共酸化的に塩素化エチレンを分解するものであり、現場での適用には通気を必要とするため、コスト高となることから、現場で実施する例は少ない。これに対し、嫌気性微生物を用いる浄化には通気の必要がなく、かつ分解微生物がエネルギー源として塩素化エチレンを必要とするため、誘導物質を添加する必要がないことから、低コストでの浄化が可能となり、近年注目されつつある。
【0004】
嫌気性微生物による塩素化エチレンの分解(脱塩素化反応)は、一般的にテトラクロロエチレン→トリクロロエチレン→シス−1,2−ジクロロエチレン→塩化ビニル(以下、「VC」ともいう)→エチレンの順に進行する。塩素化エチレンを分解することのできる微生物の中で、cDCEをVC、エチレンにまで分解できる微生物として、現在知られているのは、Dehalococcoides属の微生物のみである。しかし、Dehalococcoides属の微生物の中にも、種々の種類が存在しており、VCをエネルギー源として利用して生育できるものと、できないものとがあることが報告されている(非特許文献1、2及び3参照)。VCをエネルギー源として利用することのできないDehalococcoides属の場合は、VCの分解はコメタボリズムによるものであり、その分解は非常に遅く進行することが報告されている(非特許文献4)。
従って、VCをエネルギー源として利用できないDehalococcoides属微生物が優占化している塩素化エチレン汚染現場においては、バイオスティミュレーションによる浄化を試みても、塩素化エチレンの分解がVCで停止してしまうことが予想される。
【0005】
塩化ビニルについては、現在のところ、環境基準値が設定されていないが、塩素化エチレンの中では、唯一、発癌性が証明されている物質であり、浄化工程においては、当然ながら残存することは好ましくない。また、VCに対しては、「水質汚濁に関わる要監視項目」として、0.002mg/L以下という低い指針値が設定されている。
【0006】
従来より、塩素化エチレン分解菌としてDehalococcoides属微生物を検出する方法として、Dehalococcoides属の16S rDNAの解析が行われているが、16S rDNAの配列と、塩素化エチレン分解能との関連性は明確ではなく、浄化現場における塩素化エチレンの分解性を、16S rDNAの配列のみから予想することは困難である。さらに、トリクロロエチレン分解酵素遺伝子であるtceAの配列及び検出に関する報告もなされている(非特許文献5)が、本遺伝子がコードする酵素である、TceAのVC分解能は非常に低く、浄化現場地下水、土壌において、TceA遺伝子を有する微生物が検出されたとしても、塩素化エチレンの分解はVCで停止してしまうという事態が起こり得ると考えられる。
【0007】
近年、VC分解遺伝子に関して、相次いで2例の報告がなされている。一方は、Dehalococcoidessp.VS株vcrA(非特許文献6)であり、もう一方は、Dehalococcoides sp. BAV1株のbvcAである(非特許文献7)。上記非特許文献6及び7とも、特定のDehalococcoides属微生物株のVC分解遺伝子の存在及びその配列については言及しているが、それら遺伝子の定量検出方法や環境中における偏在性に関する具体的な報告はなされていない。
【0008】
【非特許文献1】He et al., Nature, vol.424, P62-65
【非特許文献2】Szewzyk et al., Nature, vol.408, P580-583
【非特許文献3】Maymo-Gatell et al., Applied and Environmental Microbiology, vol.65, p3108-3113,1999
【非特許文献4】Maymo-Gatell, X., T. Anguish, and S. H. Zinder, 1999, Applied and Environmental Microbiology 65:3108-3113
【非特許文献5】Magnunson, J. K., M. F. Romine, D. R. Burris, and M. T. Kingsley, 2000, Applied and Environmental Microbiology, 66:5141-5147
【非特許文献6】Muller JA, Rosner BM, Von Abendroth G, Meshulam-Simon G, McCarty PL, Spormann AM, 2004, Applied and Environmental Microbiology, 70:4880-4888
【非特許文献7】Krajmalnik-Brown R, Holscher T, Thomson IN, Saunders FM, Ritalahti KM, Loffler FE, 2004, Applied and Environmental Microbiology, 70:6347-6351
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、Dehalococcoides属微生物には、VCを分解することができるものと、分解できないものとがあることが明らかになっている。
そのため、塩素化エチレンで汚染された地下水、土壌を浄化し、地下水、土壌中に含まれる塩素化エチレンをバイオレメディエーションにより確実にエチレンにまで分解させるためには、浄化を開始する前に、塩化ビニルを分解できる微生物であるかどうかを予め確認するための簡便な方法、及び浄化の進行度を予測するためのVC分解菌の検出方法の確立が望まれていた。しかしながら、VC分解菌及び分解遺伝子に関する報告例、知見は未だ少ないのが現状であり、さらにはVC分解遺伝子を簡便かつ高感度に検出できる方法は確立されていない。
【0010】
従来のバイオレメディエーションによる塩素化エチレンで汚染された地下水、土壌を浄化する際には、塩素化エチレン分解微生物の16S rDNAやtceA遺伝子の解析を行うことにより、汚染現場にDehalococcoides属微生物が存在することを確認していたが、上述のように、Dehalococcoides属微生物の中には、VCを分解できないものあり、汚染現場に存在するDehalococcoides属微生物がVCを分解できないか、又は分解能の低いものである場合は、塩素化エチレンの分解がVCで停止してしまう場合もあった。従って、汚染現場を浄化する際にVCの蓄積を防止するために、Dehalococcoides属微生物がVCを分解できるものであるかを簡便かつ短時間で定量検出できる方法が望まれていた。
従って、本発明の目的は、塩化ビニルを分解する能力を有する微生物を簡便かつ短時間に検出することのできる方法、該方法に用いることのできる核酸(プライマー、プローブ)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、塩化ビニル分解能を有する微生物が有する特定の遺伝子に着目し、本発明を完成させた。すなわち、上述した、塩化ビニル分解微生物が有するbvcA遺伝子及びvcrA遺伝子を、国内各地のバイオスティミュレーション現場の地下水から検出するため、PCR反応を行い、PCR合成産物のアガロース電気で移動を行った結果、全ての試料において、vcrAと同様の遺伝子の存在を示す単一の断片が検出されたのに対し、bvcAについては試料により異なった結果が得られた。このことより、国内における塩素化エチレン汚染浄化現場においてはvcrAと同様の塩化ビニル分解遺伝子が優占的に存在していることが示唆される。
【0012】
次いで、塩化ビニル分解遺伝子であるvcrA遺伝子と、vcrA遺伝子から生合成されるタンパク質であるVcrAタンパク質のアンカープロテインであるVcrBタンパク質をコードするvcrB遺伝子について、国内各地のバイオスティミュレーション現場地下水より抽出したDNAを用いてPCR反応を行い、塩基配列を比較したところ、塩化ビニル分解遺伝子であるvcrAよりも、vcrA遺伝子から生合成されるタンパク質であるVcrAタンパク質のアンカープロテインであるVcrBタンパク質をコードするvcrB遺伝子の塩基配列が環境中において高度に保存されているという知見を得、本発明を完成させた。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、塩化ビニル分解能を有する微生物が有するDNAに優先的にハイブリダイズする核酸であって、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸、又は配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸と相補的な塩基配列を有する核酸を提供するものである。
また、本発明は、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドを増幅するためのプライマーを用いて、試料中のDNAを鋳型としてPCRを行なう工程(a)を有する、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、配列番号:1、2、3、4又は5で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸をプライマーとして用いて、試料中のDNAを鋳型としてPCRを行い、合成されたDNA断片を検出する工程を有する、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法を提供する。
また、本発明は、配列番号:6又は配列番号:7で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸を、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、抗原、抗体又は化学物質で標識した、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用プローブを提供する。
また、本発明は、配列番号:1、2、3、4又は5で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸をプライマーとして用い、請求項7に記載のプローブをハイブリダイゼーションプローブとして用いてリアルタイムPCR法を行う、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のオリゴヌクレオチドを用いることにより、塩化ビニルを分解する能力を有する微生物を簡便かつ短時間に検出することができる。
本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法によれば、塩化ビニルを分解する能力を有する微生物を簡便かつ短時間に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、先ず本発明の核酸について説明する。
本発明の核酸は、塩化ビニル分解能を有する微生物が有するDNAに優先的にハイブリダイズする核酸であって、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸、又は配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸と相補的な塩基配列を有する核酸である。配列番号:1〜7について以下に記載する。
配列番号:1:aca att gca tta gca gtt gg
配列番号:2:cta tga cgc cca cta tcc at
配列番号:3:gtt gga cta act atg cta tt
配列番号:4:acc ctg cgt ctt act gat
配列番号:5:cta tgc tat tta cct ggt tt
配列番号:6:aag cta gta aca gcc cca ata tg
配列番号:7:caa gta ccc act cat tcc act tt
【0017】
本発明の核酸は、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有するものであり、このような核酸は、公知の方法により化学的に容易に合成することができる。
本発明の核酸は、塩化ビニル分解能を有する微生物が有するDNAに優先的にハイブリダイズする核酸であり、上記DNAに優先的にハイブリダイズする能力を有していれば、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列において、1〜3個程度の塩基が欠失、置換若しくは付加されていてもよい。以下の説明において、配列番号:1〜7の塩基配列を有するという場合は、1〜3個程度の塩基が欠失、置換もしくは付加されているものも含まれるものとする。
【0018】
また、配列番号:1〜7で表される核酸と優先的にハイブリダイズするDNAとしては、塩化ビニル分解能を有する微生物が有するDNAであり、例えば、塩化ビニル分解能を有する微生物が有するvcrB遺伝子が挙げられる。vcrB遺伝子は、配列番号:8で表わされる塩基配列を有する核酸であり、上記配列番号:1〜7のいずれかで表わされる核酸は、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部を利用してデザインされており、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAを増幅するためのプライマーとして使用することができる。vcrB遺伝子は、塩化ビニル分解能を有する微生物が有する塩化ビニル分解遺伝子であるvcrA遺伝子のアンカープロテインであるVcrBタンパク質をコードする遺伝子である。
【0019】
なお、本明細書で、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAとは、該DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAを含むものとし、例えば、配列番号:8で表わされる塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上の相同性を有する塩基配列を有するDNAである。ハイブリダイゼーションは、従来より公知の方法、又はそれに準ずる方法、例えばモレキュラー・クローニング(Molecular Cloning, 2nd, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合には、添付された使用説明書に記載された方法に従って行うことができる。本明細書において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、DIG DNA Labeling (ロシュ・ダイアグノスティックス社製)でプローブをラベルした場合に、32℃のDIG Easy Hyb 溶液(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)中でハイブリダイズさせ、40℃の0.1xSSC 溶液(0.1%[w/v]SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1xSSCは0.15M NaCl,0.015M クエン酸ナトリウムである)でのサザンブロットハイブリダイゼーションで本発明DNAプローブにハイブリダイズする程度の条件をいう。
上述した、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する、本発明の核酸は、後述するように、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用に用いることができる。
【0020】
次に、本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法について説明する。
本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法は、配列番号:8で表される塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドを増幅するためのプライマーを用いて、試料中のDNAを鋳型としてPCRを行なう工程(a)を有する。用いられるプライマーとしては、例えば、上述した、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸が挙げられるが、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドを増幅するために用いる得るプライマーであれば、それ以外のものを用いてもよい。また、ここで用いられる試料としては、塩素化エチレンで汚染された地下水、土壌等から抽出されたDNAが挙げられる。また、汚染区域から得られる地下水等でなく、保存されている微生物から抽出されたDNAを鋳型として用いてもよい。
【0021】

PCR法の条件については特に制限はなく、従来公知の方法が用いられる。PCR法においてはDNAポリメラーゼが用いられる。DNAポリメラーゼとは、DNA鎖を鋳型として新たなDNA鎖を合成する酵素のことを意味し、特に限定はされないが、例えば、ポルI型DNAポリメラーゼ(大腸菌DNAポリメラーゼI、クレノウ断片、Taq DNAポリメラーゼなど)、α型DNAポリメラーゼ(ピロコッカス・フリオサス由来DNAポリメラーゼ(ストラタジーン社製)、VENT DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラブス社製)、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)、DEEP VENT DNAポリメラーゼ(ニューイングランドバイオラブス社製)及び非α非ポルI型DNAポリメラーゼ(国際公開第97/24444号パンフレット記載のDNAポリメラーゼ)等が挙げられる。また、鎖置換(Strand displacement)活性を有するDNAポリメラーゼを用いてもよく、このようなものとしては、バチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax、以下、B.caと称す)やバチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus、以下B.stと称す)等の好熱性バチルス属細菌由来DNAポリメラーゼ及び該DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠失した変異体等が挙げられる。さらに、上記クレノウ断片のような鎖置換活性を有し、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有していないDNAポリメラーゼも鎖置換型DNAポリメラーゼに含まれる。さらに、上記DNAポリメラーゼは、複数のDNAポリメラーゼの混合物、特に限定はされないが上記鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及び鎖置換活性を有さないDNAポリメラーゼを組み合わせた混合物でもよい。
【0022】
PCR法における反応条件は一般的な条件でよく、例えば、約95℃にて5〜10分間処理した後、約95℃にて15〜30秒間、約55〜60℃にて15〜30秒間、約72℃にて15〜30秒間を25〜30サイクルでよい。上記温度及び時間はプライマーの長さ及びGC含量等を考慮し、当業者の一般的能力の範囲で適宜変更することができる。なお、PCRは従来公知の方法により実施することもでき、市販されているPCR用キットを用いて行ってもよい。PCRは、通常、フォワードプライマー及びリバースプライマーの2種類のプライマーを用いて実施するが、いずれか一方又は両方のプライマーとして、本発明の核酸、すなわち、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸、特に、配列番号:1〜5のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸を用いることができる。
【0023】
すなわち、本発明は、配列番号:1、2、3、4又は5で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸をプライマーとして用いて、試料中のDNAを鋳型としてPCRを行い、合成されたDNA断片を検出する工程を有する、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法を提供する。
本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法においては、上述したPCR法を行った後、合成されたDNA断片を検出する工程を有する。DNA断片を検出する方法に特に制限はなく、従来よりPCR法において用いられている方法が用いられる。例えば、合成されたDNA断片を電気泳動することによって、その存在及びヌクレオチド長(大きさ)を確認することができる。すなわち、PCR法によって、予想される大きさのDNAが合成された場合に、試料中に塩化ビニル分解能を有する微生物が存在すると判断することができる。
【0024】
また、本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法においては、更に、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドを定量する工程(b)、及び工程(b)で求められた、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドの定量値から、塩化ビニル分解能を有する微生物の定量を行う工程(c)を有することが好ましい。工程(b)のヌクレオチドを定量する方法については、従来公知の方法が用いられ、例えば、リアルタイムPCR法により実施することができる。リアルタイムPCR法については後述する。
【0025】
工程(c)においては、既知濃度の塩化ビニル分解能を有する微生物について本発明の検出方法を行い、濃度を変えて濃度の異なる微生物について同様に操作を行い、塩化ビニル分解能を有する微生物の濃度と、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドの定量値との関係を求め、検量線を作成しておき、試料について測定を行った結果を検量線に挿入することによって、塩化ビニル分解能を有する微生物の定量を行うことができる。
【0026】
次に、本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用プローブについて説明する。本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用プローブは、配列番号:6又は配列番号:7で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸を、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、抗原、抗体又は化学物質で標識したものである。核酸を標識する物質としては、従来から核酸を標識するために用いられている標識物質を用いることができ、例えば、32P等の放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン等の蛍光物質;ジゴキシゲニン等のハプテン(抗原)、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素;ビオチン等の生化学物質等が挙げられる。これらを用いて核酸を標識する方法に特に制限はなく、従来公知の方法で実施することができる。
【0027】
本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用プローブは、塩化ビニル分解能を有する微生物を検出するために用いることができ、例えば、後述する、本発明の第2の実施の形態にかかる、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法においてハイブリダイゼーションプローブとして用いることができる。
【0028】
また、本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用プローブは、後述する方法において用いられるのみでなく、直接、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出に用いることができる。すなわち、上記プローブと試料とのハイブリダイゼーションを実施し、次いで標識物質を指標としてvcrB遺伝子を検出し、塩化ビニル分解能を有する微生物の有無を高感度に検出することが可能である。
【0029】
例えば、放射性同位元素で標識した場合には、公知の方法で放射能を測定することにより検出することができ、蛍光物質で標識した場合には、公知の方法で光量を測定することにより検出することができる。また、酵素で標識した場合には、公知の方法により、標識した酵素活性を測定することによって検出することができ、化学物質で標識した場合は、その化学物質の分析を実施することにより検出することができる。また、抗原又は抗体で標識した場合には、標識した抗原又は抗体と特異的に反応する抗体又は抗原を用いて抗原抗体反応を起こさせ、反応生成物を公知の方法によって測定することにより検出することができる。
【0030】
以下に、本発明の第2の実施の形態にかかる、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法について説明する。本発明の第2の実施の形態にかかる、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法は、配列番号:1、2、3、4又は5で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸をプライマーとして用い、上記プローブをハイブリダイゼーションプローブとして用いてリアルタイムPCR法を行うものである。
【0031】
リアルタイムPCR法とは、例えば、蛍光標識したプローブを利用することによって、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づいて目的のPCR増幅産物をリアルタイムに検出することを可能とする方法のことを意味するものとし、このような方法であれば従来公知の方法のいずれを用いてもよい。具体例としては、一般にリアルタイムPCR法として知られている方法(例えば、Proc. Natl. Acac. Sci., 88, 7276-7280 (1991)、特表平6−500021号公報等に記載されている方法、以下、本明細書において「汎用リアルタイムPCR法」ともいう)、及びライトサイクラー(Light Cycler)ハイブリダイゼーションフォーマットとして知られている方法(例えば、Biotecniques, 22, 176-181 (1997)に記載されている方法、以下、本明細書において「ライトサイクラーハイブリダイゼーションフォーマット法又はハイブリダイゼーションプローブ法」ともいう)等が挙げられる。
【0032】
上述した、汎用リアルタイムPCR法は、プローブとしてレポーター蛍光色素及びクエンチャー蛍光色素を同一のプローブ内に結合させてなる蛍光標識プローブを利用するものであって、プローブの分解に伴い抑制されていたレポーター蛍光色素の蛍光強度が増加することにより増幅産物の検出が可能となるものである。汎用リアルタイム法において用いられるレポーター蛍光色素としては、例えば、6−カルボキシ−フルオレセイン(FAM)等のフルオレセイン蛍光色素が挙げられ、クエンチャー蛍光色素としては、例えば、6−カルボキシ−テトラメチル−ローダミン(TAMRA)等のローダミン系色素が挙げられる。
【0033】
また、ライトサイクラーハイブリダイゼーションフォーマット法は、検出対象である増幅産物に隣接して結合するように設計された2つのプローブを利用して行なう方法である。これら2つのプローブは、一方にドナー蛍光色素を結合し、他方にアクセプター蛍光色素を結合した蛍光標識プローブであって、2つのプローブが近接して増幅産物に結合した際に起こる蛍光共鳴エネルギー移動により増幅産物の検出が可能となるものである。ライトサイクラーハイブリダイゼーションフォーマット法において用いられるドナー蛍光色素としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)等のフルオレセインが挙げられ、アクセプター蛍光色素としては、例えば、LCRed640(べーリンガーハイム社製)等が挙げられる。
【0034】
リアルタイムPCR法は、サーマルサイクラーと分光蛍光光度計とを一体化した装置を用いて行うので、PCRによる増幅産物の生成過程をリアルタイムでモニタリングすることができ、解析、定量を行うことが可能となる。
リアルタイムPCR法は、通常のリアルタイム法に従って常法により実施することができる。リアルタイムPCR法を実施するための装置や機器及びキットはいずれも市販されており、本発明においてはかかる市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)製の「Light Cycler 」等が挙げられ、「Light Cycler 」等を用いることにより、ターゲットDNAを増幅させる工程、融解温度解析を行う工程を連続して行うことができ、操作が容易であると共に、短時間での解析が可能となる。
【0035】
上述した、本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法によれば、迅速かつ簡便に、塩化ビニル分解能を有する微生物を検出することができる。従って、例えば、地下水又は土壌を試料として本発明の検出方法を実施することにより、塩化ビニルの分解が良好に行われるかどうかを予め予測することが可能である。この場合、塩化ビニル分解能を有する微生物が検出されなかった場合には、塩化ビニル分解能を有する微生物を人為的に汚染地下水、土壌へ添加することにより、浄化の効率を向上させることが可能となる。一方、塩化ビニル分解能を有する微生物が検出された場合、その地下水、土壌を培地に接種して培養を行い、得られた培養液を、塩素化エチレンで汚染された地下水、土壌に導入することによって、地下水、土壌中の塩素化エチレンを分解することができ、地下水、土壌を浄化することが可能となる。すなわち、本発明の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法によって、塩化ビニル分解能を有する微生物の存在が明らかになった場合、その試料を地下水、土壌等に導入することによって、塩素化エチレンの分解が塩化ビニルで停止することなく、エチレンにまで分解させることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
参考例1
塩素化エチレンで汚染されている6カ所の現場地下水を植種源として、塩化ビニルを含有する下記組成からなる培地で集積培養を行なうことにより得られたVC集積体を得、それぞれを、バイアルA〜Fとした。なお、集積培養は、培養容器内の気相を、窒素/二酸化炭素混合ガス(混合比=8:2)で置換した後、ポリテトラフルオロエチレンでコートされたブチルゴム栓により培養容器を密栓した。次いで、培養容器10を30℃の恒温槽中にいれ、静置培養を行った。また、塩化ビニルが分解されることが確認されている浄化現場3カ所の地下水を採取し、それぞれ、サイトG〜Iとした。
培地組成
H(OH)(COONa) 500mg/L
酵母エキス 100mg/L
CaCl・2HO 15mg/L
NaHCO 2,520mg/L
Tris 2,290mg/L
レザズリン 1mg/L
MgCl・6HO 500mg/L
NaCl 500mg/L
KHPO 200mg/L
NHCl 300mg/L
KCl 300mg/L
NaS・9HO 480mg/L
FeCl・4HO 200mg/L
MnCl・4HO 1mg/L
CoCl・2HO 1.9mg/L
ZnCl 0.7mg/L
CuSO・5HO 0.04mg/L
BO 0.06mg/L
NiCl・6HO 0.25mg/L
NaMoO・2HO 0.44mg/L
HCl 1μL/L
【0037】
バイアルA〜F及びサイトG〜Iについて、培養液又は地下水を、孔径が0.2μmのフィルターでろ過して微生物をフィルター上に収穫した。次いで、フィルターを2mL容のエッペンドルフチューブに入れ、凍結融解、SDS処理を行い、次いでBead Beater処理を行い、DNAを抽出し、vcrA遺伝子及びvcrB遺伝子を含むDNA断片のPCR合成を行った。PCRの際に用いたプライマーは、5’-GACTCTCCCTGAAACAATGG-3’(配列番号:9)、及び5’-GCGACTTACTACCTTATCTA-3’(配列番号:10)であり、既に米国のGenBankに登録されているAY322364の塩基配列データから設計したものであり、vcrA及びvcrBの周辺領域を利用したものである。
【0038】
PCR反応の結果、9種類のDNAサンプル全てからvcrA及びvcrBと高い相同性を有する塩化ビニル分解遺伝子群を含むクローンを取得できた。常法に従い、それらの塩基配列を決定した。また、同時にDehalococcoides sp. VSについてもDNAの塩基配列を決定し、それぞれの塩基配列の相同性を求めた。それぞれの塩基配列を比較した結果を図1に示す。図1は、9種類のDNAサンプル、及びDehalococcoides sp. VSのDNAのvcrA遺伝子の塩基配列の相同性を比較するための図である。図1から明らかなように、例えば、バイアルCとバイアルD及びバイアルGは100%の相同性を有していることがわかるが、それ以外については、98.5〜99.9%程度の相同性を有していることがわかる。
【0039】
また、vcrB遺伝子については、図示しないが、全てのサンプルにおいて同一の塩基配列を有していることが判明した。これらの結果は、塩化ビニル分解能を有する微生物であるDehalococcoides spにおいて、vcrB遺伝子は高い保存性を有していることを示す。従って、塩化ビニル分解能を有する微生物を検出するためのプライマー、プローブとしては、vcrA遺伝子の塩基配列ではなく、より配列の保存性が高い、vcrB遺伝子内部の塩基配列を利用することが好ましいことがわかる。なお、vcrB遺伝子の塩基配列は、配列番号:8で表わされるものである。
【0040】
実施例1
vcrB遺伝子を特異的に検出するためのプライマーの設計を、市販のソフトウェアであるOLIGO(Molecular Biology Insights, Inc.製)を用いて行った。設計により得られたプライマーは、配列番号:1〜5で表わされる塩基配列を有する核酸である。この中から3種類の組み合わせを選択し、トリクロロエチレン浄化現場の地下水由来の抽出DNAをテンプレートDNAとしてPCRを行った。
プライマーの組み合わせは、配列番号:1/配列番号:2、配列番号:3/配列番号4、及び配列番号:5/配列番号:4の3通りの組み合わせを選択し、PCRの反応条件は以下に示す通りである。なお、テンプレートDNAは、2カ所のバイオスティミュレーションによるトリクロロエチレン浄化現場地下水由来のDNAを用い、それぞれをサンプルA及びBとした。なお、PCRの条件は以下の通りである。
熱変性:95℃、1分
以下を30サイクル
95℃、20秒
表1に示す温度、30秒
72℃、15秒
最後に72℃、7分
【0041】
【表1】

【0042】
PCR反応後のアガロースゲル電気泳動の結果を図2に示す。レーン1〜8は、以下に示す通りである。
レーン1:分子量マーカー(100base ladder)
レーン2:プライマー(配列番号:1/配列番号:2)、テンプレート(サンプルA)
レーン3:プライマー(配列番号:3/配列番号:4)、テンプレート(サンプルA)
レーン4:プライマー(配列番号:5/配列番号:4)、テンプレート(サンプルA)
レーン5:プライマー(配列番号:1/配列番号:2)、テンプレート(サンプルB)
レーン6:プライマー(配列番号:3/配列番号:4)、テンプレート(サンプルB)
レーン7:プライマー(配列番号:5/配列番号:4)、テンプレート(サンプルB)
レーン8:分子量マーカー(100base ladder)
【0043】
図2に示すように、何れのプライマーの組み合わせ、テンプレートを用いた場合も、DNAのバンドが認められ、何れのプライマーの組み合わせも、塩化ビニル分解能を有する微生物のvcrB遺伝子の増幅用に用い得ることがわかった。特に、配列番号:3/配列番号:4の組み合わせが最も明瞭な単一のバンドを示すことが明らかである。
【0044】
実施例2
実施例1の結果は、配列番号:3及び配列番号:4の組み合わせが、最も明瞭な単一のバンドを示したので、実施例1で用いたソフトウェアOLIGOを用いて、配列番号:3及び配列番号:4で表わされる塩基配列を有するオリゴヌクレオチドに対応するハイブリダイゼーションプローブを一対設計した。設計されたプローブは、配列番号:6及び配列番号:7で表わされる塩基配列を有する。
【0045】
配列番号:6で表される塩基配列を有するプローブについては、常法に従い、3’末端をFITC(フルオレセインイソチオシアネート)で標識し(以下、「FITC標識プローブ」ともいう)、配列番号:7で表わされる塩基配列を有するプローブについては、常法に従い、5’末端をLCRed640(べーリンガーハイム社製)で標識し、3’末端をリン酸化処理した(以下、「LCRed640標識プローブ」ともいう)。
【0046】
次いで、上記FITC標識プローブ及びLCRed640標識プローブを用いて、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)製の「Light Cycler 」を用いたリアルタイムPCR法(ハイブリダイゼーションプローブ法)による、vcrBの検出条件の検討を行った。なお、リアルタイムPCR法に用いるスタンダードとしては、参考例1で用いたバイアルFより抽出したDNAをテンプレートとして用い、実施例1で示されたプレイマーによりPCR法により増幅されたDNA断片を、pT7Blueベクター(Novagen社製)に挿入することにより作製した。
【0047】
上記FITC標識プローブ及びLCRed640標識プローブを用いて、Light Cycler を用いたリアルタイムPCR法の最適化の検討を行い、以下の表2〜表5に示す条件を得た。なお、反応液中のMgClの最適濃度は5mMであった。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
上記条件により、vcrBスタンダード濃度を10〜10コピーを含んだ反応溶液を調製し、これを用いて蛍光モニターした、リアルタイムPCR法を行った。リアルタイムPCR法において、PCR反応溶液からの蛍光強度が閾値を超えるサイクル数を調べた。結果を図3に示す。図3は、リアルタイムPCRによるvcrBの検出結果を示すグラフであり、横軸はvcrBスタンダード濃度であり、1.0E+01は10を、1.0E+03は10を、1.0E+05は10を、1.0E+07は10を示す。縦軸は蛍光強度が閾値を超えるサイクル数である。図3から明らかなように、本発明の検出方法によって、vcrBの定量が可能であることがわかる。
【0053】
実施例3
参考例1と同様に、塩素化エチレンで汚染されている6カ所の現場地下水を植種源として、塩化ビニルを含有する培地(参考例1と同様の培地)で集積培養を行った(それぞれ、バイアル、A、B、C、D、E及びFとする)。集積培養中に、定期的に培地のサンプリングを行い、実施例2で示した条件によるリアルタイムPCR法によりvcrB遺伝子の定量を行った。また、同時に培地中の塩化ビニルの定量を行った。塩化ビニルの定量は、ガスクロマトグラフィー(GC17A)により行った。定量の結果を図4〜9に示す。図4はバイアルA、図5はバイアルB、図6はバイアルC、図7はバイアルD、図8はバイアルE、図9はバイアルFの結果であり、横軸は培養を開始してからの経過時間であり、縦軸は、塩化ビニル及びvcrB遺伝子の濃度である。縦軸の左側に塩化ビニルの濃度を示してあり、単位はmg/Lである。また、右側にはvcrB遺伝子の濃度(1mlあたりのコピー数)が示してあり、1.E+03、1.E+04、1.E+05、1.E+06、1.E+07及び1.E+08は、それぞれ、10、10、10、10、10及び10である。図4〜図9の全てにおいて、塩化ビニルの分解に伴い、vcrB遺伝子の濃度が上昇することがわかる。この結果から、本発明の検出方法は、環境中における塩化ビニル分解能を有する微生物の有無、及び塩化ビニル汚染浄化の進行度を判断するために有用であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】サンプルから得られたDNAのvcrA遺伝子の塩基配列の相同性を比較するための図である。
【図2】PCR反応後のアガロースゲル電気泳動の結果である。
【図3】リアルタイムPCRによるvcrBの検出結果を示すグラフである。
【図4】塩化ビニル及びvcrBの定量結果を示すグラフである。
【図5】塩化ビニル及びvcrBの定量結果を示すグラフである。
【図6】塩化ビニル及びvcrBの定量結果を示すグラフである。
【図7】塩化ビニル及びvcrBの定量結果を示すグラフである。
【図8】塩化ビニル及びvcrBの定量結果を示すグラフである。
【図9】塩化ビニル及びvcrBの定量結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル分解能を有する微生物が有するDNAに優先的にハイブリダイズする核酸であって、配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸、又は配列番号:1〜7のいずれかで表わされる塩基配列を有する核酸と相補的な塩基配列を有する核酸。
【請求項2】
塩化ビニル分解能を有する微生物が有するDNAが、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNA、又は配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAと90%以上の相同性を有する塩基配列を有するDNAである、請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用である、請求項1又は2に記載の核酸。
【請求項4】
配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドを増幅するためのプライマーを用いて、試料中のDNAを鋳型としてPCRを行なう工程(a)を有する、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法。
【請求項5】
更に、配列番号:8で表わされる塩基配列を有するDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドを定量する工程(b)、及び工程(b)で求められた、配列番号:8で表わされるDNAの少なくとも一部の塩基配列を有するヌクレオチドの定量値から、塩化ビニル分解能を有する微生物の定量を行なう工程(c)を有する、請求項4に記載の塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法。
【請求項6】
配列番号:1、2、3、4又は5で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸をプライマーとして用いて、試料中のDNAを鋳型としてPCRを行い、合成されたDNA断片を検出する工程を有する、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法。
【請求項7】
配列番号:6又は配列番号:7で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸を、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、抗原、抗体又は化学物質で標識した、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出用プローブ。
【請求項8】
配列番号:1、2、3、4又は5で表わされる塩基配列を有する核酸、又はこれらの塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸をプライマーとして用い、請求項7に記載のプローブをハイブリダイゼーションプローブとして用いてリアルタイムPCR法を行う、塩化ビニル分解能を有する微生物の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−49946(P2007−49946A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238233(P2005−238233)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「生分解・処理メカニズムの解析と制御技術の開発 土壌中難分解性物質等の生分解・処理技術の開発 塩素化エチレンの嫌気分解に関する研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】