説明

核酸の単離および増幅方法

本発明は、核酸集団からのポリヌクレオチド分子の配列特異的単離および単離ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントのその後の増幅のための方法および組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、核酸分子を単離および増幅するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
関連分野の説明
現在の臨床研究の1つの主な領域は、疾患に対する感受性および/または薬物療法に対する応答についての個体の遺伝子プロフィールの相関関係である。薬理ゲノム学と呼ばれているこの研究分野により、個体への薬物のターゲティングならびに遺伝的素因およびリスクの解明のためのストラテジーが提案されている。さらに、薬理ゲノム学により、複雑な疾患の分子基盤のより深い理解に基づいた改良創薬過程が得られる可能性が高くなる。
【0003】
個体の遺伝子プロフィールの同定には、個体のゲノム中の特定の核酸配列の同定および増幅が必要であり得る。これらの特定の核酸配列には、同種個体間の1つまたはいくつかのヌクレオチドが相違した核酸配列が含まれ得る。例えば、一塩基多型(SNP)は、継承された遺伝子パターンを追跡するために使用される個体のDNAの共通の変動である。
【0004】
現在の核酸多型の単離、増幅、および同定方法は、手間がかかり、高額であり、且つ低感度であり得る。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、核酸分子を単離および増幅するための方法および組成物を提供する。目的のポリヌクレオチド分子を、最初に、ポリヌクレオチド分子中の特定の配列に基づいて核酸集団中の他の核酸分子から単離し、その後に等温増幅することができる。一定の実施形態では、本発明は、相対的に長いポリヌクレオチド分子(例えば、約50kbまたはそれを超える)を単離し、その後に単離した分子またはそのフラグメントを増幅する。増幅されたポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを、さらに分析することができる。
【0006】
1つの態様では、本発明は、目的のポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを増幅する方法であって、(a)固定可能な分離基を使用して核酸集団からポリヌクレオチド分子を単離して単離ポリヌクレオチド分子を準備する工程と、(b)前記単離ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを等温増幅する工程とを含む方法を提供する。
【0007】
一定の実施形態では、(A)前記核酸集団が目的のポリヌクレオチド分子を含み、(B)前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖が標的核酸配列および識別エレメントを含み、(C)前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在し、(D)前記工程(a)が、(i)前記核酸集団を前記ポリヌクレオチド分子中の前記標的核酸配列に特異的に結合するターゲティングエレメントと接触させる工程と、(ii)前記固定可能な分離基を前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列に結合したターゲティングエレメントに選択的に付着させてターゲティングエレメント−分離基複合体を形成させる工程と、(iii)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(iv)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程と
を含む。
【0008】
一定の実施形態では、(1)前記ターゲティングエレメントがオリゴヌクレオチドを含むことと、(2)前記分離基が固定可能なヌクレオチドを含むことと、(3)前記分離基が、前記固定化可能なヌクレオチドの存在下での前記オリゴヌクレオチドの伸長によってターゲティングエレメントに付着し、それにより、前記固定化可能なヌクレオチドを含む伸長産物が形成される。
【0009】
一定の実施形態では、(4)前記オリゴヌクレオチドの3’末端が、前記ポリヌクレオチド分子中の前記識別エレメントまたはその一部と相補的であり、(5)前記固定化可能なヌクレオチドが非終結であり、(6)前記伸長産物が複数の分離基を含む。
【0010】
一定の他の実施形態では、(4)前記標的核酸配列が前記識別エレメントに対してすぐ3’側に存在し、(5)前記固定化可能なヌクレオチドが終結であり、前記識別エレメントまたはその一部と相補的である。
【0011】
一定の実施形態では、(A)前記核酸集団が目的のポリヌクレオチド分子を含み、(B)前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖が標的核酸配列および識別エレメントを含み、(C)前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在し、(D)前記工程(a)が、(i)前記核酸集団をターゲティングエレメント−分離基複合体と接触させる工程と、前記ターゲティングエレメント−分離基複合体が前記ポリヌクレオチド分子中の前記標的核酸配列に特異的に結合することと、(ii)前記ポリヌクレオチド分子中の前記標的核酸配列への前記ターゲティングエレメント−分離基複合体の結合を選択的に安定化させる工程と、(iii)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する安定化された前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(iv)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する安定化された固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程と
を含む。
【0012】
(1)前記ターゲティングエレメントがオリゴヌクレオチドを含み、(2)前記オリゴヌクレオチドの3’末端が前記ポリヌクレオチド中の識別エレメントまたはその一部と相補的である。
【0013】
一定の実施形態では、選択的安定化をライゲーションによって行う。一定の実施形態では、選択的安定化を、テンプレートとしてポリヌクレオチド分子を使用したオリゴヌクレオチドの伸長によって行う。
【0014】
一定の実施形態では、工程(b)を、鎖置換増幅によって行う。
【0015】
一定の実施形態では、工程(b)は一般的な増幅である。一定の他の実施形態では、工程(b)は配列特異的増幅(例えば、遺伝子座特異的増幅)である。一定の他の実施形態では、工程(b)は、遺伝子座に偏った増幅である。
【0016】
一定の実施形態では、工程(b)により、単離ポリヌクレオチド分子の全領域が増幅される。一定の他の実施形態では、工程(b)により、単離ポリヌクレオチド分子の特定の領域が増幅される。
【0017】
一定の実施形態では、工程(b)を、それぞれが前記標的核酸配列を含むポリヌクレオチド分子鎖中の特定の領域と少なくとも実質的に相補的な第1の特異的プライマー組の存在下で行う。
【0018】
一定の関連する実施形態では、工程(b)を、それぞれが前記標的核酸配列を含まないポリヌクレオチド分子鎖中の特定の領域と少なくとも実質的に相補的な第2の特異的プライマー組の存在下でさらに行う。
【0019】
一定の実施形態では、標的核酸配列を含む単離ポリヌクレオチド分子鎖にアニーリングする場合、前記第1の特異的プライマー組がその隣接プライマーから約0.5kb離れている
【0020】
一定の実施形態では、標的核酸配列を含まない単離ポリヌクレオチド分子鎖にアニーリングする場合、前記第2の特異的プライマー組がその隣接プライマーから約0.5kb離れている
【0021】
一定の実施形態では、工程(b)をランダムプライマー組の存在下でさらに行う。一定の実施形態では、ランダムプライマーは、その隣接プライマーから約2kb離れている。
【0022】
一定の実施形態では、工程(b)を、末端特異的プライマーの存在下で行う。一定の実施形態では、隣接末端特異的プライマー間の平均距離が、50ヌクレオチドと250ヌクレオチドとの間である。
【0023】
一定の実施形態では、工程(b)を、中心特異的プライマーの存在下でさらに行う。一定の実施形態では、隣接中心特異的プライマー間の距離が、100ヌクレオチドと5000ヌクレオチドとの間である。
【0024】
一定の実施形態では、中心特異的プライマーが配列特異的である。一定の他の実施形態では、中心特異的プライマーが縮重プライマーである。
【0025】
一定の実施形態では、本発明の方法は、(c)ハプロタイプを構成する増幅ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメント中の1つまたは複数の部位を特徴づける工程をさらに含む。このような方法は、(d)前記特徴づけられた部位の情報をアセンブリする工程をさらに含み得る。
【0026】
一定の関連する実施形態では、本発明の方法は、(c)前記増幅ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメント中の1つまたは複数の多型部位を特徴づける工程をさらに含む。このような方法は、(d)特徴づけた部位の情報をアセンブリする工程をさらに含み得る。
【0027】
別の態様では、本発明は、核酸分子集団から目的の複数のポリヌクレオチド分子を増幅する方法であって、(a)1つまたは複数の固定化可能な分離基を使用して核酸集団から複数のポリヌクレオチド分子を単離して目的の単離ポリヌクレオチド分子を得る工程と、(b)前記単離ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを等温増幅する工程と
を含む方法を提供する。
【0028】
多重化核酸の単離および増幅の一定の実施形態では、工程(a)は、(A)各ターゲティングエレメントがその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的の複数のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団を複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、(i)前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(ii)前記識別エレメントが、前記ポリヌクレオチド分子を前記ポリヌクレオチド分子とほぼ同一の別の核酸分子と識別することと、(B)前記対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列に結合した複数のターゲティングエレメントに分離基を選択的に付着させて、ターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(D)結合する前記固定化ターゲティングエレメント−分離基分子を除去し、それにより、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0029】
多重化核酸の単離および増幅の一定の実施形態では、工程(a)は、(A)各ターゲティングエレメントがその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的の複数のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団を分離基が付着する複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、(i)各標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に対応する識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(ii)各識別エレメントが、特異的ポリヌクレオチド分子を前記ポリヌクレオチド分子とほぼ同一の他の核酸分子と識別することと、(B)前記ターゲティングエレメントのその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列への結合を選択的に安定化させて、前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合した安定化されたターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(D)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0030】
一定の実施形態では、異なる分離基を異なるターゲティングエレメントに付着する。一定の他の実施形態では、同一の分離基を異なるターゲティングエレメントに付着する。
【0031】
別の態様では、本発明は、目的のゲノムDNA分子またはそのフラグメントを増幅する方法であって、前記目的のゲノムDNA分子が多型配列を含み、(a)前記目的のゲノムDNA分子を含むゲノムDNA集団をオリゴヌクレオチドと接触させる工程と、(i)前記オリゴヌクレオチドが、前記目的のゲノムDNA分子の1つの鎖中の標的核酸配列と少なくとも実質的に相補的な配列を含むことと、(ii)前記標的核酸配列が、前記目的のゲノムDNA分子の1つの鎖中の多型配列に対してすぐ3’側に存在することと、(iii)前記目的のゲノムDNA分子の1つの鎖にアニーリングする場合、前記オリゴヌクレオチドの3’部分が多型配列またはその一部と相補的であることと、(b)固定化可能なヌクレオチドの存在下でテンプレートとしてオリゴヌクレオチドがアニーリングする目的のゲノムDNA分子の1つの鎖を使用して前記オリゴヌクレオチドを伸長し、伸長産物を得る工程と、(c)固定化可能なヌクレオチドを介して目的のゲノムDNA分子が結合する伸長産物を基盤に固定化する工程と、(d)前記目的のゲノムDNA分子が結合する固定化された伸長産物を除去し、それにより、前記ゲノムDNA集団から前記目的のゲノムDNA分子を単離する工程と、(e)任意選択的に、前記基盤から前記目的のゲノムDNA分子を溶離する工程と、(f)単離または溶離された前記目的のゲノムDNA分子またはそのフラグメントを等温増幅する工程とを含む方法を提供する。
【0032】
別の態様では、本発明は、ハプロタイプをアセンブリする方法であって、(a)ハプロタイプを目的とする生物から核酸集団を準備する工程と、(b)複数の基盤を使用したハプロタイプ特異的抽出によってポリヌクレオチド分子を個別に単離する工程と、(i)各基盤を使用して、ポリヌクレオチド分子が、複数の抽出部位で単離されることと、(ii)1つの基盤を使用して1つの抽出部位で単離されたポリヌクレオチド分子が、同一の基盤を使用した他の抽出部位で単離したポリヌクレオチド分子中にも存在する多型部位を含まないことと、(iii)前記1つの基盤を使用して1つの抽出部位で単離された1つまたは複数のポリヌクレオチド分子が、他の基盤を使用して隣接抽出部位で単離されたポリヌクレオチド分子中にも存在する多型部位を含むことと、(c)各基盤を使用して単離したポリヌクレオチド分子中の多型部位を個別に特徴づける工程と、(d)1つを超える基盤を使用して単離したポリヌクレオチド分子中に存在する多型部位の特徴付けに基づいてハプロタイプをアセンブリする工程とを含む方法を提供する。
【0033】
一定の他の実施形態では、ハプロタイプをアセンブリする方法は、工程(c)の前に複数の基盤を使用して単離した前記ポリヌクレオチド分子を等温増幅する工程をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明は、ポリヌクレオチド分子中の一定の特異的配列(例えば、ハプロタイプ特異的または遺伝子座特異的)に基づいて核酸分子を単離および増幅するための方法および組成物を提供する。単離ポリヌクレオチド分子を、その後に、一般的増幅、配列特異的増幅(例えば、遺伝子座特異的)、または配列特異的(例えば、遺伝子座に偏った)増幅を使用して等温増幅することができる。一定の実施形態では、本発明は、比較的大きなポリヌクレオチド分子(例えば、約50kbまたはそれを超える)の単離およびその後の単離ポリヌクレオチド分子またはその一部の増幅に有用である。
【0035】
一定の実施形態では、本発明の方法は、1つまたは複数の以下の利点を有する:(1)既存のDNA供給源から一倍体(再使用可能なゲノムDNAライブラリー)の作製が容易になること、(2)核酸分析の複雑さが軽減され、それにより、読み取りの感度および分解能が増加すること、(3)直接達成可能な抽出あたりの連鎖距離が伸長し、利用可能なテンプレート量の増加によってその後の操作の安定性が増加すること、(4)従来の配列ベースの分類(SBT)または配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)によって解明できない対立遺伝子対の組み合わせを使用した潜在的に困難な二倍体を明確に分類できること、および(5)巨大な連鎖距離にわたって複数の多型を用いてハプロ分離サンプルを分類できること。
【0036】
本発明の方法の詳細な説明およびその関連する利点を以下に示す。
【0037】
A.核酸抽出
配列特異的抽出は、一般に、米国特許出願公開公報20010031467号およびPCT出願公開公報WO01/042150号に記載されている。一般に、配列特異的抽出は、目的のポリヌクレオチド分子の特異的配列に基づく核酸分子集団からの目的のポリヌクレオチド分子の分離方法である。
【0038】
一定の実施形態では、核酸抽出方法は、(1)目的のポリヌクレオチド分子を含むヌクレオチド酸集団をターゲティングエレメントと接触させる工程と、(a)ポリヌクレオチド分子の1つの鎖が標的核酸配列および識別エレメントを含むことと、(b)標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(c)ターゲティングエレメントが目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列とに特異的に結合することと、(2)前記固定可能な分離基を前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列に結合したターゲティングエレメントに選択的に付着させてターゲティングエレメント−分離基複合体を形成させる工程と、(3)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(4)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0039】
一定の他の実施形態では、核酸抽出法は、(1)目的のポリヌクレオチド分子を含むヌクレオチド酸集団をターゲティングエレメント−分離基複合体と接触させる工程と、(a)ポリヌクレオチド分子の1つの鎖が標的核酸配列および識別エレメントを含むことと、(b)標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(c)ターゲティングエレメント−分離基複合体が目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列とに特異的に結合することと、(2)前記ポリヌクレオチド分子中の前記ターゲティングエレメント−分離基複合体の標的核酸配列への結合を選択的に安定化させる工程と、(3)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(4)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する安定化された固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0040】
1.核酸供給源
目的のポリヌクレオチド分子を含むか、含むことが疑われる場合、精製形態または非精製形態の任意の核酸標本を、出発核酸として使用することができる。したがって、この過程は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、増幅DNA、cDNA、全細胞RNA、hnRNA、およびポリA含有RNAを使用することができる。核酸は、1つの単細胞生物または真核生物に由来し得る。例えば、ヒトなどの哺乳動物から核酸を得ることができる。核酸の混合物を使用することもできる。
【0041】
核酸含有サンプルは、任意の供給源(体液または組織(例えば、血液、血清、尿、排泄物、唾液、ミルク、導管液、涙、口腔分泌物標本、および精液など)が含まれる)に由来し得る。あるいは、サンプルは、肝臓、脳、結腸、泌尿生殖器、造血組織、胸腺、精巣、卵巣、子宮、前立腺、胸、結腸、肺、および腎組織などの器官ならびにこれらの組織のいずれかに関連する腫瘍に由来し得る。核酸分子を、種々の技術(Sambrook and Russell(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.,3rd Ed.Pp 6.4−6.32,6.63 and 6.64,2001)に記載の技術が含まれる)によって抽出することができる。
【0042】
一般に、生体サンプルから直接単離した核酸集団を、最初に増幅させることなく配列特異的抽出に使用することができる。事前の増幅(例えば、ランダムプライマーを使用する)を行わない直接抽出により、抽出時ならびにその後の目的のポリヌクレオチド分子の増幅および分析時のバックグラウンドを減少させることができる。しかし、必要に応じて、一定の環境下で、配列特異的抽出の実施前に、核酸集団のその全体または選択的に目的のフラグメントを、PCRまたは別の増幅技術を使用して増幅することができる。
【0043】
核酸集団中の核酸分子のサイズは、核酸集団の供給源(例えば、プラスミド、ウイルスゲノム、細菌ゲノム、真核生物ゲノム)、生体サンプル由来の集団の調製で使用された方法、および核酸単離前に生体サンプルが保存された条件に依存する。例えば、新鮮または良好に保存されたサンプルは、一般に、非保存的条件下またはパラフィン包埋サンプルなどの改変されたサンプル中で保存された核酸分子よりも核酸分子の損傷が小さい。
【0044】
巨大なポリヌクレオチド分子の抽出および増幅が望ましい一定の実施形態では、生体サンプルを得て、その後に核酸分子の完全性が維持された(すなわち、破壊または剪断を最小限にした)サンプルから核酸を単離する方法が好ましい。方法の例には、さらに精製しない溶解法(例えば、界面活性剤、有機溶媒、アルカリ、および/またはプロテアーゼを使用した化学的または酵素的溶解法)、さらなる核酸精製を行うか行わない核の単離、沈殿工程を使用した単離法、固体マトリクス(例えば、核酸分子が結合するシリカベースの膜、ビーズ、または改変表面)、ゲル様マトリクス(例えば、アガロース)、または粘性溶液を使用した核酸単離法、ならびに密度勾配を使用して核酸分子を富化する方法が含まれるが、これらに限定されない。一定の実施形態では、目的のポリヌクレオチド分子の配列特異的抽出の前に、単離核酸分子を最初にライゲーションして核酸単離時に生じたニックを修復し、それにより、一本鎖領域が配列特異的抽出の任意選択的な変性工程時に完全に変性してより小さなフラグメントに破壊されるのを防止する。巨大ポリヌクレオチドの単離および精製方法の例を、Dear and Cook,Biochem J.273(Pt 3):695−9,1991;Gurrieri and Bustamante,Biochem J.326(Pt 1):131−8,1997;Upcroft and Upcroft,J Chromatogr.618(1−2):79−93,1993;Park et al.,Clin Chem.51(8):1520−3,2005;Rook et al.,Am J Pathol.164(1):23−33,2004;Hummelshoj et al.,Biotechniques 38(4):605−10,2005;Vester and Wengel,Biochemistry 43(42):13233−41,2004;Dean et al.,Proc Natl Acad Sci USA.99(8):5261−6,2002;Hosono et al.,Genome Res.13(5):954−64,2003;and Kotler et al.,Proc Natl Acad Sci USA.90(9):4241−5,1993に見出すことができる。
【0045】
2.ターゲティング
一定の実施形態では、目的のポリヌクレオチド分子の単離は、ポリヌクレオチド分子の特異的配列(本明細書中で、「識別エレメント」と併せて「標的核酸配列」という)に基づく。「識別エレメント」は、ヌクレオチド配列を含まない他の分子から目的のポリヌクレオチド分子を固有に識別することができる目的のポリヌクレオチド分子中のヌクレオチド配列である。識別エレメントは、例えば、多型(多型オリゴヌクレオチド配列、一塩基多型、ハプロタイプ「タグ」一塩基多型(タグSNP)、短いタンデム反復など)、欠失、挿入、逆位、重複、転座、または染色体の別の再編成形態であり得る。識別エレメントはまた、例えば、制限部位、メチル化制限部位、メチル化配列モチーフ、タンパク質結合部位、SiRNAをコードするかSiRNAによるサイレンシングをターゲティングすることが見出されている部位、領域、もしくは配列、または特異的二次構造を有する配列であり得る。
【0046】
一定の実施形態では、識別エレメントは、対立遺伝子特異的である。当該分野で公知であるように、「対立遺伝子」は、染色体上の所与の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替形態の1つをいう。「対立遺伝子特異的」は、特定の対立遺伝子と他の代替対立遺伝子を識別することができる特異的配列をいう。「対立遺伝子特異的抽出」は、ポリヌクレオチド分子中の対立遺伝子特異的配列に基づいた目的のポリヌクレオチド分子の単離をいう。
【0047】
一定の実施形態では、識別エレメントはハプロタイプ特異的である。当該分野で公知であるように、「ハプロタイプ」は、通常は共に遺伝する密接に連鎖した遺伝子の対立遺伝子組またはマーカー組をいう。
【0048】
「ハプロタイプ特異的」は、遺伝子の異なるハプロタイプ間(例えば、母性起源の遺伝子コピーとヘテロ接合部位での親起源の遺伝子コピーとの間)で識別することができる特異的配列をいう。「ハプロタイプ特異的抽出」は、ポリヌクレオチド分子中のハプロタイプ特異的配列に基づいた目的のポリヌクレオチド分子の単離をいう。
【0049】
一定の実施形態では、識別エレメントは、遺伝子座特異的である。当該分野で公知であるように、「遺伝子座」は、特定の形質の遺伝子が存在する染色体上の位置をいう。遺伝子座は、遺伝子の対立遺伝子のいずれか1つによって占められ得る。「遺伝子座特異的」は、特定の遺伝子座を別の遺伝子座と識別することができる特異的配列をいう。一般に、遺伝子座特異的配列は、遺伝子座を占める実質的に全ての対立遺伝子(すなわち、全対立遺伝子の約80%超)を共有する配列であるが、別の遺伝子座の配列と異なる。一定の実施形態では、遺伝子座特異的配列は、約90%、95%、または98%を超える目的の遺伝子座を占める対立遺伝子を共有する配列である。「遺伝子座特異的抽出」は、ポリヌクレオチド分子中の遺伝子座特異的配列に基づいたポリヌクレオチド分子の単離をいう。
【0050】
一定の実施形態では、識別エレメントは、目的のポリヌクレオチド分子をこのポリヌクレオチド分子とほぼ同一の別の核酸分子と識別することができる。核酸分子は、95%を超える配列が同一である場合、ポリヌクレオチド分子と「ほぼ同一である」。一定の実施形態では、識別エレメントは、目的のポリヌクレオチド分子をこのポリヌクレオチド分子と96%、97%、または99%を超えて同一の別の核酸分子と識別することができる。
【0051】
識別エレメントに加えて、目的のポリヌクレオチド鎖はまた、ターゲティングエレメントが結合することができる標的核酸配列を含む。一定の実施形態では、標的核酸配列と識別エレメントとの間の距離は、100ヌクレオチドと0ヌクレオチドとの間である(100と0との間の任意の整数値(50、20、25、10、8、7、6、5、4、3、2、および1など)が含まれる)。異なる実施形態では、識別エレメントは、標的核酸配列の一部であってよく、好ましくは、標的核酸配列の5’末端または5’末端付近に存在し得る。識別エレメントが標的核酸配列の一部である実施形態において、識別エレメントと標的核酸配列との間の距離を0ヌクレオチドと見なすことを除き、標的核酸配列間の距離を、(1)標的核酸配列が識別エレメントに対して3’側に存在する場合、標的核酸配列の5’末端と識別エレメントの3’末端との間のヌクレオチド数、(2)標的核酸配列が識別エレメントに対して5’側に存在する場合、標的核酸配列の3’末端と識別エレメントの5’末端との間のヌクレオチド数に基づいて計算する。
【0052】
用語「3’」および「5’」を、本明細書中で、核酸分子の一本鎖内の特定の部位の位置を説明するために使用する。核酸分子内の位置が基準ヌクレオチドまたは基準ヌクレオチド配列「に対して3’側」または「の3’側」である場合、これは、この位置が、基準ヌクレオチドまたは基準ヌクレオチド配列の3’末端と核酸のこの鎖の3’ヒドロキシルとの間であることを意味する。同様に、核酸分子内の位置が基準ヌクレオチドまたは基準ヌクレオチド配列「に対して5’側」または「の5’側」である場合、これは、この位置が、基準ヌクレオチドまたは基準ヌクレオチド配列の5’末端と核酸のこの鎖の5’リン酸との間であることを意味する。さらに、ヌクレオチド配列が基準ヌクレオチドまたは基準ヌクレオチド配列「に対して直接的に3’側」(「に対してすぐに3’側」とも交換可能に使用される)または「の直接的に3’側」(「のすぐに3’側」とも交換可能に使用される)である場合、これは、ヌクレオチド配列の5’末端が基準ヌクレオチドのすぐ隣りまたは基準ヌクレオチド配列の3’末端に存在することを意味する。同様に、ヌクレオチド配列が基準ヌクレオチドまたは基準ヌクレオチド配列「に対して直接的に5’側」(「に対してすぐに5’側」とも交換可能に使用される)または「の直接的に5’側」(「のすぐに5’側」とも交換可能に使用される)である場合、これは、ヌクレオチド配列の3’末端が基準ヌクレオチドのすぐ隣りまたは基準ヌクレオチド配列の5’末端に存在することを意味する。
【0053】
一定の実施形態では、標的核酸配列は、目的のポリヌクレオチド分子の1つの鎖中の識別エレメントに対して3’側に存在する。一定の実施形態では、標的核酸配列は、目的のポリヌクレオチド分子の1つの鎖中の識別エレメントに対してすぐ3’側に存在する。
【0054】
核酸集団から目的のポリヌクレオチド分子を単離するために、ターゲティングエレメントを使用して、ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列を結合する。「ターゲティングエレメント」(「配列特異的抽出プローブ」または「配列特異的プローブ」ともいう)は、核酸分子集団中の目的のポリヌクレオチド分子の標的核酸分子に特異的に結合する分子をいう。一定の所与の条件下(例えば、核酸伸長反応混合物中)で分子が標的核酸配列を含むポリヌクレオチド分子に結合するが、標的核酸配列を含まない核酸分子に結合しない場合、標的核酸配列に「特異的に結合する」分子。
【0055】
いくつかの実施形態では、ターゲティングエレメントは、目的のポリヌクレオチド分子中の相補的標的核酸配列とハイブリッド形成する核酸または核酸誘導体である。核酸ベースの核酸誘導体の例には、例えば、オリゴヌクレオチド、オリゴ−ペプチド核酸(PNA)、オリゴ−LNA、またはリボザイムが含まれる。あるいは、ターゲティングエレメントは、標的核酸配列に特異的に結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体であり得る。ポリペプチドベースのターゲティングエレメントの例には、例えば、制限酵素、転写因子、RecA、ヌクレアーゼ、および他の配列特異的DNA結合タンパク質が含まれる。あるいは、ターゲティングエレメントは、1つまたは複数の各ターゲティングエレメントのハイブリッド、複合体、または連結された化合物であり得る。
【0056】
標的核酸配列へのターゲティングエレメントの結合は、個別の化学的会合または物理的会合の一部として起こり得る。例えば、酵素反応、化学反応、物理的会合、重合、ライゲーション、制限酵素切断、切断、ハイブリッド形成、組換え、架橋、またはpHベースの切断の一部として会合が起こり得る。
【0057】
一定の実施形態では、ターゲティングエレメントは、目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列と少なくとも実質的に相補的なオリゴヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドが所与の反応混合物(例えば、核酸伸長混合物)中の標的核酸配列にアニーリングすることができる場合、オリゴヌクレオチドは、標的核酸配列と「少なくとも実質的に相補的」である。一定の実施形態では、ターゲティングエレメントは、標的核酸配列と正確にまたは完全に相補的である。すなわち、ターゲティングエレメントの各ヌクレオチドは、その対応する位置の標的核酸のヌクレオチドと相補的である。
【0058】
一定の実施形態では、標的核酸配列は、目的のポリヌクレオチド分子の1つの鎖中の識別エレメントに対してすぐ3’側に存在し、ターゲティングエレメントの3’末端ヌクレオチドが標的核酸配列の5’末端ヌクレオチドに結合するように、ターゲティングエレメントはポリヌクレオチド分子のこの鎖中の標的核酸配列に結合する。以下により詳細に記載するように、識別エレメント中のヌクレオチドに相補的な終結ヌクレオチドおよび固定化可能なヌクレオチドの存在下でのオリゴヌクレオチドの伸長により、目的のポリヌクレオチド分子を識別エレメントを含まない他の核酸分子と区別することが可能である。
【0059】
一定の実施形態では、標的核酸配列は、目的のポリヌクレオチド分子の1つの鎖中識別エレメントに対してすぐ3’側に存在し、ターゲティングエレメントは、ターゲティングエレメントの3’末端ヌクレオチドが標的核酸配列の識別エレメント中のヌクレオチドと結合するように、ポリヌクレオチド分子のこの鎖中の標的核酸配列および識別エレメント(または識別エレメントの少なくとも一部)の両方に結合する。以下にも詳述するように、標的核酸配列および識別エレメントの両方を含むポリヌクレオチド分子鎖を使用したオリゴヌクレオチドの選択的伸長により、目的のポリヌクレオチド分子を識別エレメントを含まない他の核酸分子と区別することが可能である。
【0060】
目的のポリヌクレオチド分子の標的核酸配列への例示的ターゲティングエレメント(すなわち、オリゴヌクレオチド)の結合を以下に詳述する。
【0061】
オリゴヌクレオチドでのポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列のターゲティングは、両方が一本鎖形態に存在する場合、容易である。各オリゴヌクレオチド−標的核酸配列複合体の融点(この温度未満でハイブリッド形成が起こる)を計算することができる。完全に適合するオリゴヌクレオチドのみが標的核酸配列に結合するようにハイブリッド形成条件(主に、温度および塩/カチオン濃度)を調整することが可能である。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ダイターミネーター配列決定反応、およびミニ配列決定またはプライマー伸長反応に関する多数の文献およびプロトコールが多数存在し、これらは本発明の酵素識別反応の性質と類似する(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Sambrook et al.,Third Edition 2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.;AmpliTaqTM product sheet,Perkin Elmer/Roche,Branchburg,N.J.およびその参考文献)。一本鎖DNAを、いくつかの方法(例えば、加熱およびその後の氷上での反応停止、NaOH変性またはPCR産物のたった1つのコピーに組み込まれたビオチン化PCR−プライマーに基づいた物理的分離)で生成することができる(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Sambrook et al.,Third Edition 2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.;Mitchell and Merril,Anal Biochem.1989 May 1;178(2):23942)。
【0062】
目的のポリヌクレオチド分子が二本鎖核酸(ゲノムDNAまたはプラスミドDNAなど)として核酸集団中に存在する場合、目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列は、オリゴヌクレオチドが配列に結合するように接近可能にしなければならない。熱変性(すなわち、DNAが融解して一本鎖DNAのループを形成し始める温度(例えば、65℃、80℃、または95℃を超える温度)へのサンプルの加熱)によってこれを行うことができる。熱変性を、化学的変性(例えば、ポリヌクレオチド分子のアルカリインキュベーションによる)または酵素的鎖分離(例えば、ヘリカーゼ、RecAなどを使用)などの標的核酸配列へのターゲティングエレメントの結合を容易にする他の方法に置換することができる。
【0063】
アニーリング条件下および典型的には目的のポリヌクレオチド分子と比較して過剰なオリゴヌクレオチドの存在下で、オリゴヌクレオチドは、質量作用ならびに通常はそのより小さなサイズ(したがって、より高い拡散係数)により、融解したフラグメントの再生が起こる前に相同領域に結合する。オリゴヌクレオチドはまた、生理学的条件下(37℃)で相同な位置に二本鎖フラグメントを入れることができる(Iyer et al.,J Biol Chem.1995 Jun 16,270(24):14712−7およびその参考文献)。
【0064】
異なる対立遺伝子の逆ストランド間の交差ハイブリッド形成の可能性があり、それにより2つの対立遺伝子のミスマッチ二本鎖ハイブリッドが抽出され得るので、これは関連性がある。通常、この理由により完全に一本鎖のテンプレートDNAを生成することは望ましくないが、ゲノムDNAサンプル中で交差ハイブリッド形成が起こる可能性は低い。以下で考察するように、分離基および識別エレメントの強い連結により、厳しい変性および洗浄条件下でさえも識別エレメントを含むポリヌクレオチド分子を保持することができる。
【0065】
ゲノムDNAまたはプラスミドDNAなどの二本鎖標的へのオリゴヌクレオチドの配列特異的移入を容易にする方法およびキットが開発されており、本発明と組み合わせて使用することができる(Iyer et al.,J Biol Chem.270(24):14712−7,1995)およびその参考文献;Teintze et al.,Biochem Biophys Res Commun.211(3):804−11,1995;Honigberg et al.,Proc Natl Acad Sci USA.83(24):9586−90,1986;Rigas et al.,Proc Natl Acad Sci USA.83(24):9591−5,1986;Hakvoort et al.,Nucleic Acids Res.24(17):3478−80,1996;Hakvoort et al.,Gene Cloning and Analysis by RT−PCR,Edited by Siebert and Larrick,Biotechniques Books 1998,Natick,Mass.;ClonCaptureTM cDNA Selection Kit,Clontech,Palo Alto,Calif.;and Welcher et al.,Nucleic Acids Res.14(24):10027−44,1986)。RecA(例えば、大腸菌組換えタンパク質「A」)またはスタフィロコッカスヌクレアーゼなどのDNA結合タンパク質でのオリゴヌクレオチドのコーティングにより、より高い濃度での類似の未修飾オリゴヌクレオチドの移入と比較してその組み込みが桁違いに加速し、このような複合体の安定性が有意に増加する一方で(Cunningham et al.,Cell 24(1):213−23,1981;Belotserkovskii et al.,Biochemistry.38(33):10785−92,1999;およびSena and Zarling,Nat Genet.3(4):365−72,1993)、依然として移入されたオリゴヌクレオチドが酵素的に伸長する(Iyer et al.,J Biol Chem.270(24):14712−7,1995およびその参考文献)。一定の実施形態では、鎖置換活性を有するポリメラーゼ(例えば、φ29DNAポリメラーゼおよびObetaレプリカーゼ)および3’エクソヌクレアーゼ保護ターゲティングエレメントを使用することができる。例えば、その鎖置換活性により、φ29DNAポリメラーゼは、テンプレートとして巨大または完全な二本鎖(すなわち、未変性)DNAを使用してオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを伸長することができる。φ29DNAポリメラーゼがテンプレートとして未変性DNAを使用する能力により、変性時のテンプレートDNAの破壊が防止される。しかし、φ29DNAポリメラーゼは校正活性(すなわち、プライマーのミスマッチ3’末端を修正し、その後にこれらを伸長する活性)も有するので、3’エクソヌクレアーゼ保護プライマー(塩基間のホスホロチオエート結合の使用またはLNAの組み込みによる)を使用することが好ましい。以下に考察するように、そうでなければ、プライマーのミスマッチ3’末端の消失により、異なるポリヌクレオチド分子の区別が妨害される。
【0066】
あるいは、またはさらに、ヘルパーオリゴヌクレオチドを使用して、ポリヌクレオチド分子の二本鎖領域および/または二次構造の開口を容易にすることができる。このようなヘルパーオリゴヌクレオチドは3’リン酸化されており、それにより、配列特異的抽出反応に添加した場合、伸長されない。しかし、これらは、ハイブリッド形成を補助し、ポリヌクレオチド分子の二次構造の開口を容易にするように機能することができる。本発明で有用なヘルパーオリゴヌクレオチドの説明を、米国特許第6,482,592号;同第5,387,510号;同第5,547,843号;および同第5,731,153号に見出すことができる。
【0067】
目的の二本鎖ポリヌクレオチド分子へのオリゴヌクレオチドの配列特異的移入を容易にする上記の全ての方法(および他の公知の方法)は、比較的長いポリヌクレオチド分子の伸長が望ましい場合、特に有用であり得る。このような方法は、目的のポリヌクレオチド分子が断片化し得る変性工程の使用が減少する。
【0068】
3.区別
一定の実施形態では、目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列に結合するターゲティングエレメントへの固定化可能な分離基の選択的付着によって、核酸集団中の目的のポリヌクレオチド分子と他の核酸分子とを区別する。固定化可能な分離基が識別エレメントを含む目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列に結合するターゲティングエレメントのみに付着するが、目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列に結合しないいかなるターゲティングエレメント(例えば、いかなる核酸分子にも結合しない任意のターゲティングエレメントまたは目的のポリヌクレオチド分子以外の核酸分子に結合する任意のターゲティングエレメント)にも付着しない場合、固定化可能な分離基がターゲティングエレメントに「選択的に付着」する。言い換えれば、ターゲティングエレメントへの固定化可能な分離基の選択的付着は、ターゲティングエレメントが結合する核酸分子が目的のポリヌクレオチド分子(すなわち、ターゲティングエレメントが結合する標的核酸配列が存在する鎖中に特定の識別エレメントを含む核酸)であるかどうかに依存する。
【0069】
一定の実施形態では、ターゲティングエレメントはオリゴヌクレオチドであり、標的核酸配列は、目的のポリヌクレオチド分子の1つの鎖中の識別エレメントに対してすぐ3’側に存在する。このような実施形態では、一旦オリゴヌクレオチドがポリヌクレオチド分子中のターゲティング核酸配列に結合すると、これが適切な条件下で(例えば、核酸伸長反応混合物中で)5’→3’方向に酵素的に伸長する。各ヌクレオチドの組み込みによって伸長し、それにより、(識別エレメント(例えば、多型部位)のヌクレオチドに相補的な)オリゴヌクレオチドの3’末端のすぐ隣りの塩基の同一性により、伸長配列の差異が確立される。共有結合した分離エレメント(ビオチンなど)を含む固有の修飾ヌクレオチドが得られるようにこの差異を活用することができる。
【0070】
例えば、「A」がAに付着したビオチン部分と共に示された場合、多型部位に「T」を有するポリヌクレオチド分子に結合するオリゴヌクレオチドの伸長産物のみがビオチン化された「A」を有する。他の核酸分子に結合したオリゴヌクレオチドも伸長されるが、最初に伸長されたヌクレオチドはビオチン化された「A」ではない。
【0071】
目的のポリヌクレオチド分子以外の核酸分子に結合したオリゴヌクレオチドの伸長産物から分離基が得られないことが好ましい。例えば、多型部位に対してさらなる下流(すなわち、酵素的伸長方向)でオリゴヌクレオチドが結合する核酸分子が「T」を有する場合、目的のポリヌクレオチド分子に結合しないオリゴヌクレオチドの伸長産物に分離基を組み込むことができ、この場合、ビオチン化された「A」を組み込むことができる。オリゴヌクレオチドの3’末端のすぐ隣りの塩基に組み込まれない限り、第1の組み込まれたヌクレオチドの後のオリゴヌクレオチドの伸長が停止されて分離基を付着することができないように終結ヌクレオチドを使用することよって問題を排除することができる。
【0072】
上記方法の修正により、非終結ヌクレオチドの使用が可能である。この場合、標的核酸配列だけでなく目的のポリヌクレオチド分子中の識別エレメントまたは識別エレメントの少なくとも一部にもアニーリングするようなオリゴヌクレオチドを選択する。好ましくは、オリゴヌクレオチドの3’部分または3’末端は、識別エレメントまたはその一部と相補的である(またこれにアニーリングする)。
【0073】
目的のポリヌクレオチドにアニーリングする場合に限りオリゴヌクレオチドが伸長するが、目的のポリヌクレオチド分子中の識別エレメントを含まない他の核酸分子にアニーリングする場合に伸長しないような条件を選択することができる。他の核酸分子中の識別エレメントの欠如により、(好ましくは、オリゴヌクレオチドの3’部分または3’末端に)1つまたは複数のミスマッチが起こり、ポリメラーゼがオリゴヌクレオチドを伸長させるのが困難になる。このような条件には、完全に適合したオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成がミスマッチを含む任意の部位へのこのオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成よりも非常に好ましくなる条件(Woolley et al.,Nat Biotechnol.18(7):7603,2000)およびオリゴヌクレオチド−核酸複合体が塩基ミスマッチを含む場合に、ポリメラーゼが結合して重合を開始するのを防止する条件(Carver et al.,Proc Natl Acad Sci USA.91(22):10670−4,1994)が含まれる。ビオチン化ヌクレオチドが反応物中に存在する場合、これらは、目的のポリヌクレオチド分子に結合したオリゴヌクレオチドの伸長産物に組み込まれるのみである。
【0074】
終結ヌクレオチドと非終結ヌクレオチドとの組み合わせを使用することが可能であり、全ての場合でオリゴヌクレオチドが多型部位のすぐ隣りに結合する必要はない。
【0075】
この例では、ターゲティングエレメントの結合位置と以下の2つの対立遺伝子を識別する多型部位との間に介在配列が存在する:
5’−GATTACCAAAAATTC ...3’(配列番号1)(対立遺伝子1)

5’−GATTACCAAAAAGTC ...(配列番号2)(対立遺伝子2)。
【0076】
2つの対立遺伝子を、下線を引いた配列で結合するオリゴヌクレオチドの使用によって識別することができ、この場合、ボールド体のヘテロ接合部位は、例えば、
修飾されているが必ずしも付着した分離基で「A」が終結されていないこと、
未修飾であり、必ずしも「G」が終結されていないこと、および
終結されているが、そうでなければ未修飾の「C」によってリゴヌクレオチドの3’末端のすぐ隣りに存在しない(多型部位は、対立遺伝子1中の「T」および対立遺伝子2中の「G」である)。
【0077】
反応する場合、対立遺伝子1のみにより、捕捉することができる分離エレメントが得られる。
【0078】
上記のターゲティングエレメント(例えば、オリゴヌクレオチド)への分離基の選択的付着を、ポリメラーゼ(DNAポリメラーゼなど)によって行うことができる。一定の実施形態では、DNAポリメラーゼは、進行性DNAポリメラーゼである。「進行性DNAポリメラーゼ」は、ポリメラーゼ−核酸結合複合体あたり100個を超えるヌクレオチドを重合させるDNAポリメラーゼをいう。一定の実施形態では、ポリメラーゼ−核酸結合複合体あたり500個、1000個、または2000個を超えるヌクレオチドを重合させる進行性DNAポリメラーゼを、本出願で使用する。進行性DNAポリメラーゼの例には、φ29DNAポリメラーゼおよびBcaDNAポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
ターゲティングエレメント(すなわち、オリゴヌクレオチド)への分離基の選択的付着を3’→5’エクソヌクレアーゼ活性(すなわち、校正活性)を有するDNAポリメラーゼによって行う一定の実施形態では、エクソヌクレアーゼ耐性ターゲティングエレメントを使用することが推奨される(しかし、絶対的に必要というわけではない)。
【0080】
1つの分離基によって非常に巨大な分子および複合体を固定化するかそうでなければ捕捉することが可能である(Dapprich and Nicklaus,Bioimaging 6(1):25−32,1998;Teintze et al.,Biochem Biophys Res Commun.211(3):804−11,1995;Honigberg et al.,Proc Natl Acad Sci USA.83(24):9586−90,1986;Rigas et al.,Proc Natl Acad Sci USA.83(24):9591−5,1986;Hakvoort et al.,Nucleic Acids Res.24(17):3478−80,1996;Hakvoort et al.,Gene Cloning and Analysis by RT−PCR,Edited by Siebert and Larrick,Biotechniques Books 1998,Natick,Mass.;ClonCaptureTM cDNA Selection Kit,Clontech,Palo Alto,Calif.;Welcher et al.,Nucleic Acids Res.14(24):10027−44,1986;Hakvoort et al.,Nucleic Acids Res.,24(17):347880,1996;Tagle et al.,Nature.361(6414):751−3,1993)。相同領域間の単なるハイブリッド形成を使用する場合、操作時のフラグメントの喪失を防止するのに十分なサイズのオリゴヌクレオチド−分離基の長さを選択しなければならない。数百から数千の塩基サイズのフラグメントのために、比較的に短いオリゴヌクレオチド(20塩基)で十分であるのに対して、フラグメント分子が長いほどより長い距離にわたって結合するオリゴヌクレオチドが必要である。オリゴヌクレオチド−分離基によって周辺溶液に関連するフラグメントを操作する条件下で、配列の一部で熱変動による一過性の融解が起こり、溶液成分間の相対運動が存在しない場合に安定な複合体の鎖解離が起こり得るので、ハイブリッド形成の安定性はいくらか減少することをこの文脈で留意することが重要である。
【0081】
目的のポリヌクレオチド分子を他の核酸分子と識別する反応の結果として分離エレメントと標的核酸配列との間に共有結合または位相的結合が形成(または切断)された場合に有利である。分離基の選択的組み込みの際に反応基が標的核酸配列のみに不可逆的に付着すように分離基に結合した反応基を準備することによってこれを行うことができる。この目的のために使用することができる反応の例は、例えば、Pfannschmidt et al.,Nucleic Acids Res.24(9):1702−9,1996;Cimino et al.,Annu Rev Biochem.54:1151−93,1985;Takasugi et al.,Proc Natl Acad Sci USA.88(13):5602−6,1991;Zenkova et al.,Eur J Biochem.231(3):726−35,1995;Francois et al.,Proc Natl Acad Sci USA.]86(24):9702−6,1989;Perrouault et al.,Nature.344(6264):358−60,1990;Le Doan et al.,Antisense Res Dev.1(1):43−54,1991;Barre et al.,Proc Natl Acad Sci USA.97(7):3084−8,2000;Sun et al.,Proc Natl Acad Sci USA.86(23):9198−202,1989;Sayers et al.,Nucleic Acids Res 16(3):803−14,19888;およびSayers et al.,Nucleic Acids Res.16(3):791−802,1988に記載されている。位相的結合の形成の例は、 Examples for the formation of topologically linked bonds are described in Escude et al.,Proc Natl Acad Sci USA.96(19):10603−7,1999;Antson et al.,Nucleic Acids Res.28(12):E58,2000;およびNilsson et al.,Nat Genet.16(3):252−5,1997に記載されている。
【0082】
オリゴヌクレオチド−分離基複合体と目的のポリヌクレオチド分子との間の結合の安定性を選択的に増加させる別の方法は、既に連結した分離エレメントを有するターゲティングエレメントを準備して結合をさらに選択的に安定させることである。オリゴヌクレオチド−分離基複合体と目的のポリヌクレオチド分子との間の結合が安定化される一方で、オリゴヌクレオチド−分離基複合体と目的のポリヌクレオチド分子以外の核酸分子との間の結合が安定化されないかより低い程度で安定化される場合、オリゴヌクレオチド−分離基複合体と目的のポリヌクレオチド分子との間の結合は、「選択的に安定化される」。
【0083】
より詳細には、一定の実施形態では、オリゴヌクレオチドを、最初に1つまたは複数の固定化可能な分離基(例えば、ビオチン化ヌクレオチド)に付着させ、その後に目的のポリヌクレオチド分子中で標的核酸配列と識別エレメント(またはその一部)との両方にアニーリングすることができる。オリゴヌクレオチドと目的のポリヌクレオチド分子との間結合を、調節ヌクレオチドの存在下または固定化可能なヌクレオチドの存在下でのテンプレートとしてポリヌクレオチド分子を使用したオリゴヌクレオチドの3’末端の伸長によって安定化することができる。しかし、オリゴヌクレオチドと識別エレメントを含まない核酸分子との結合は、ミスマッチによって安定化されないかより低い程度で安定化され(好ましくは、オリゴヌクレオチドの3’部分または3’末端で)、ポリメラーゼによる有効な伸長が防止される。一定の実施形態では、オリゴヌクレオチドの3’末端がアニーリングするヌクレオチドに対してすぐ5’側の領域に相補的な別の核酸フラグメントでのオリゴヌクレオチドのライゲーションによって、選択的安定化を行うことができる。
【0084】
4.分離
本発明で有用な分離基は、目的のポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列とそれ自体が会合する付着ターゲティングエレメントのその後の単離を容易にする任意の部分であり得る。このような分離基には、同族リガンドと特異的に相互作用することができる分離基が含まれる。一定の実施形態では、分離基は固定化可能であり、適切な基盤への固定化によって分離基と会合したポリヌクレオチド分子を分離可能である。例示的分離基は、固定化可能なヌクレオチド(例えば、ビオチン化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド)を含むか固定化可能なヌクレオチドである。分離基の他の例には、リガンド、受容体、抗体、ハプテン、酵素、抗体またはアプタマーによって認識可能な化学基が含まれる。
【0085】
分離基を、任意の所望の基盤上に固定することができる。所望の基盤には、粒子、ビーズ、磁性ビーズ、光学的に捕捉されたビーズ、マイクロタイタープレート、スライドガラス、紙、テストストリップ、ゲル、スピンカラム、他のマトリクス、ニトロセルロース、およびナイロンが含まれるが、これらに限定されない。基盤は、分離基に結合するか架橋することができる任意の結合パートナーを含み得る。例えば、分離エレメントがビオチンである場合、基盤は、ストレプトアビジンまたはニュートラビジンなどの異形を含み得る。
【0086】
一定の実施形態では、ターゲティングエレメント(例えば、オリゴヌクレオチド)に共有結合するようになる分離エレメントの酵素駆動組み込みを行う。例えば、一定の実施形態では、ターゲティングエレメントは伸長可能な3’ヒドロキシル末端を有するオリゴヌクレオチドであり、分離基は固定化可能なヌクレオチド(ビオチンかヌクレオチドなど)である。分離基を、ビオチン化ヌクレオチドの存在下でのポリメラーゼでのオリゴヌクレオチドの伸長によってターゲティングエレメントに付着させ、それにより、固定化可能なヌクレオチドを含む伸長産物の形成することができる。ターゲティングエレメント自体をターゲティングされたポリヌクレオチド(すなわち、目的のポリヌクレオチド分子)に共有結合させるか位相的に結合させて非常に高いストリンジェンシーで洗浄工程を行うことができ、それにより、バックグラウンドが減少し、特異性が増加する。
【0087】
最終工程では、反応混合物を、目的のポリヌクレオチド分子(例えば、母方起源)を含む画分および他の核酸分子(例えば、父方起源)を含む別の画分に分離する。標的核酸配列がターゲティングエレメント−分離基複合体に結合する目的のポリヌクレオチド分子の固体支持体への固定化によってこれを行う。例えば、分離基がビオチン化ヌクレオチドを含む実施形態では、目的のポリヌクレオチド分子中で標的核酸配列にアニーリングするオリゴヌクレオチドの伸長産物中でのビオチン化ヌクレオチドの選択的組み込みにより、ポリヌクレオチド分子がストレプトアビジンコーティングした磁性ビーズに結合するが、他の核酸分子には結合しない。次いで、ビーズを反応混合物から分離することができ、それにより、他の核酸分子を含む残存反応混合物からビーズに結合した目的のポリヌクレオチド分子を分離することが可能である。
【0088】
任意選択的な工程として、捕捉した目的のポリヌクレオチド分子自体をビーズ(または他の固体支持体)から分離し、いかなるビーズも含まない保存溶液に溶離することができる。例えば、水中での結合した目的のポリヌクレオチド分子を含むビーズの少なくとも70℃で少なくとも1秒間、より典型的には80℃で10分間の加熱によってこれを行うことができる。ビオチン−ストレプトアビジン結合の可逆的破壊によって、目的のポリヌクレオチド分子をビーズから分離し、分離したままにする(Holmberg et al.,Electrophoresis 2005,26,501−510)。典型的には、磁石を使用してチューブの側面に磁性ビーズを引き寄せることまたは遠心分離および上清の吸引によって磁性ビーズをサンプルから除去する。
【0089】
ビーズ(または他の固体支持体)から捕捉された目的のポリヌクレオチド分子を除去することの利点は、いくつかの下流増幅または分類アッセイが磁性ビーズ(または他の固体支持体)の存在に感受性を示し得ることである。例えば、高濃度で、ビーズは、増幅過程または検出過程において光学的工程または酵素的工程を妨害し得る。上記のように、非終結固定化可能なヌクレオチドが目的のポリヌクレオチド分子の標的核酸配列のみに特異的に結合するオリゴヌクレオチドの伸長産物に選択的に組み込まれる一定の実施形態では、複数の分離基(例えば、ビオチン化ヌクレオチド)と固体支持体(例えば、ストレプトアビジンコーティングされたビーズ)との間の複数の結合事象によって特に強力に付着する。これは、比較的長いポリヌクレオチド分子の単離に特に有利である。
【0090】
伸長領域の距離が組み込まれたビオチン化ヌクレオチドとヘリックスのピッチ(ターンあたり約3.4nmまたは10塩基対)との間の平均距離よりも有意に長い場合、二本鎖DNAのより合わせたヘリックス構造により、複数の分離基(例えば、ビオチン化ヌクレオチド)を含む伸長産物は、(伸長産物にアニーリングした)目的のポリヌクレオチド分子が固体支持体に位相的に結合する方法で基盤(例えば、ストレプトアビジンコーティングされた表面)に結合することができる。
【0091】
本方法の関連バージョンでは、各ターゲティングエレメントと分離基対との間に介在配列を有する固体支持体にポリヌクレオチド分子を同時に結合する複数のターゲティングエレメントおよび分離基の使用によって、固体支持体への目的のポリヌクレオチド分子の結合が位相的に改良される。このような複数のターゲティングエレメントが目的のポリヌクレオチド分子を同時に同定し、いかなるこのようなエレメントの他の核酸分子への結合も防止することが必要である。
【0092】
一定の実施形態では、比較的長い目的のポリヌクレオチド分子を、本発明にしたがって単離する。本発明によって抽出可能な比較的長い目的のポリヌクレオチド分子の例には、約5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、もしくは800Kb以上、または約1Mb以上が含まれる。
【0093】
分離工程の準備では、迅速な開始速度ならびに選択性および効率が高い目的のポリヌクレオチド分子と固体支持体との間の結合を達成することが有利である。小さいポリヌクレオチド分子を分離する場合、室温での回転子でのインキュベーションによる結合の実施に十分である。巨大なポリヌクレオチド分子の場合、以下の2つの要因が反応を妨害し、結合がより遅く且つ非効率的になる:a)巨大なポリヌクレオチド分子の拡散係数が有意に低いこと、およびb)1つの分離エレメントのみがポリヌクレオチド分子に会合する場合、同一分子の他の領域は、分離エレメントが固体支持体が結合反応を開始するのに十分に極めて近接するようになることを有効に遮断することよって結合工程を妨害され得る。分離基が会合するポリヌクレオチド分子と固体支持体との間の相対運動により、両方の問題が克服される。異なる手段(例えば、磁気作用による捕捉に使用されるビーズの溶液に対する前後の移動、遠心分離、沈殿および再懸濁の繰り返し、または電気泳動によって得られた移動)によってこれを行うことができる。あるいは、固定化固体支持体(例えば、側方流動デバイス中の固定化ストレプトアビジンを含む多孔質膜または基盤)にサンプル流動物を流すことによって生じる相対運動によってこれを行うことができる。当該分野で公知の種々の手段(例えば、ポンピング、ウィッキング、疎水性相互作用、真空作用、重力流、または遠心分離)によって支持体に対して流動物を運動させることができる。
【0094】
固体支持体への目的のポリヌクレオチド分子以外の核酸分子の任意の非特異的結合により、他の核酸分子からのポリヌクレオチド分子の分離が不完全になり得る。特に、一本鎖DNAは、未反応の磁性ビーズまたは他の表面に容易に結合し得る。表面上の非特異的結合部位を飽和するが分離エレメントの特異的結合を妨害しない成分を含む溶液への表面の曝露によってこの問題は克服される(Duhamel and Whitehead,Methods Enzymol.1990,184:201−7)。例として、ブロッキング緩衝液「MBSB」を使用して、ビーズ(2.8μm磁性ビーズ、Dynabeads M−280 Streptavidin,Dynal A.S.,Oslo,Norwayまたは1μmポリスチレンビーズ、Streptavidin Coated Latex,Interfacial Dynamics Corporation,Portland,Oreg.)への非特異的結合を抑制し、その結果、PCRによってビオチン化フラグメントが容易に増幅される一方で、非ビオチン化フラグメントは両ビーズ型(磁性またはポリスチレン)を使用して検出不可能な増幅産物が産生される。
【0095】
緩衝液「MBSA」は、10mM Tris(pH7.5)、2mM EDTA、0.2% Tween−20、1M NaCl、5μg/ml BSA、1.25mg/ml「カーネーション」粉乳(Nestle)、1mg/mlグリシンを含む溶液である。緩衝液「MBSB」は「MBSB」と同一であるが、200ng/μl変性サケ精子DNA(GIBCO BRL)が添加され、平均サイズが約1000塩基対であり、3分間ボイルし、氷上で反応停止させ、配列TTAGTGCTGAACAAGTAGATCAGA(配列番号3)およびGTATATTCCAAGATCCATTAGCAG(配列番号4)の50nMの各オリゴヌクレオチドを含む。
【0096】
ビーズを、短時間のボルテックスおよび沈殿によって1ml「MBSA」で2回洗浄した。粒子回収磁石(Polysciences,Warrington,Pa.)で1分間沈殿させるか(磁性ビーズ)、卓上型遠心分離機で13,000rpmにて3分間遠心分離した(ポリスチレンビーズ)。次いで、ビーズを新たなチューブにおける100μlの「MBSB」中にて室温で2時間インキュベートし、「MBSB」中で冷蔵した。
【0097】
同一配列で225塩基対のビオチン化フラグメントおよび非ビオチン化フラグメントを、HLA(ヒト白血球関連)遺伝子座中の領域のPCR増幅によって生成した。
【0098】
目的のポリヌクレオチド以外の非特異的に抽出された核酸分子による汚染を防止するための代替法は、分離完了後に溶液にターゲティングされたフラグメントを選択的に放出することができる切断可能なリンカーを使用することである(Dynal product sheet for Dynabeads M−280 Streptavidin,Dynal A.S.,Oslo,Norway,www.dynal.noおよびその参考文献、Pierce Chemical Technical Library:"Avidin−biotin",Pierce,Rockford,Ill.,www.piercenet.comおよびその参考文献;ならびにDawson et al.,J Biol Chem.264(22):12830−7,1989)。
【0099】
ターゲティングエレメントが核酸集団に接触する前に分離基がターゲティングエレメントに付着し、ターゲティングエレメント−分離複合体と目的のポリヌクレオチド分子との間の結合の選択的安定化によって他の核酸分子が完成される実施形態では、目的のポリヌクレオチド分子およびターゲティングエレメント−分離基を含む選択的に安定化された複合体のみが基盤に固定化されるが、ターゲティングエレメント−分離基および他の非安定化核酸分子を含む複合体は固定化されないような条件下で、会合した分離基を介してポリヌクレオチド分子が固定化されるべきである。このような条件により、固定化画分の目的のポリヌクレオチド分子以外の核酸分子での汚染が防止されるか減少する。例示的条件には、2つの比較的長い核酸フラグメント間がアニーリングされるが、そのアニーリングパートナー由来の比較的短い核酸フラグメント間が解離する条件が含まれる。
【0100】
5.多重化
必要に応じて、第2のターゲティングエレメントを使用して、核酸分子集団中での核酸分子集団と第2の目的のポリヌクレオチド配列中の第2の標的核酸配列に特異的に結合する第2のターゲティングエレメントとの接触によって、上記方法を繰り返すことができる。第2の分離基は、第2のターゲティングエレメントに選択的に付着する。次いで、付着した第2の分離基を基盤に固定化し、それにより、第2のポリヌクレオチド分子が結合した第2の固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体が形成される。次いで、第2のポリヌクレオチド分子が結合した第2の固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体核酸分子集団から除去し、それにより、核酸集団中の他の核酸分子から目的の第2の核酸配列が分離される。
【0101】
関連する実施形態では、第2の分離基を、目的の第2のポリヌクレオチド分子の第2の標的核酸配列に特異的に結合することができる第2のターゲティングエレメントに付着させる。得られた第2のターゲティングエレメント−分離基は、第2の目的のポリヌクレオチド分子中の第2の標的核酸配列に特異的に結合する。次いで、第2のターゲティングエレメント−分離基複合体と第2のポリヌクレオチド分子との間の結合を選択的に安定化する。次に、第2のターゲティングエレメント−分離基複合体および第2のポリヌクレオチド分子を含む安定化複合体を、第2のターゲティングエレメント−分離基複合体および第2のポリヌクレオチド分子以外の核酸を含む非安定化複合体の固定化を防止する条件下で基盤に固定化する。次いで、第2のポリヌクレオチド分子が結合した固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を、核酸分子集団から除去し、それにより、核酸集団中の他の核酸分子から目的の第2の核酸配列が分離される。
【0102】
一定の実施形態では、上記の工程および方法を、連続的に複数回繰り返すことができる。例えば、第3のターゲティングエレメントおよび第3の分離基を使用して、第2の目的のポリヌクレオチド分子の単離に起因する核酸分子を含む非固定化画分から第3の目的のポリヌクレオチド分子単離することができる。この過程を、4回、5回、6回繰り返して、第4、第5、第6の目的のポリヌクレオチドを単離することができる。
【0103】
一定の実施形態では、1つを超える(例えば、少なくとも3、5、10、25、50、75、100、250、または500)目的のポリヌクレオチド分子または1つを超える(例えば、少なくとも3、5、10、25、50、75、100、250、または500)目的のポリヌクレオチド分子の領域を一度にターゲティングすることによる多重化様式で上記方法を行うことができる。
【0104】
一定の実施形態では、本発明にしたがって(複数の目的のポリヌクレオチド分子を抽出するために)多重化様式で実施した配列特異的抽出は、(A)各ターゲティングエレメントがその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的の複数のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団を複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、(i)各標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(ii)前記識別エレメントが、前記ポリヌクレオチド分子をほぼ同一の他の核酸分子と識別することと、(B)前記対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列に結合した複数のターゲティングエレメントに分離基を選択的に付着させて、ターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(D)ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記固定化ターゲティングエレメント−分離基分子複合体を除去し、それにより、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0105】
一定の他の実施形態では、本発明にしたがって(複数の目的のポリヌクレオチド分子を抽出するために)多重化様式で実施した配列特異的抽出は、(A)各ターゲティングエレメントがその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的の複数のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団を分離基が付着する複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、(i)各標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(ii)各識別エレメントが、特異的ポリヌクレオチド分子をほぼ同一の他の核酸分子と識別することと、(B)ポリヌクレオチド分子を選択的に安定化させて、前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合した安定化されたターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(D)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0106】
一定の他の実施形態では、本発明にしたがって(1つの目的のポリヌクレオチド分子中の複数の領域を抽出するために)多重化様式で実施した配列特異的抽出は、(A)各ターゲティングエレメントが目的のポリヌクレオチド分子中のその対応する標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団を複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、(i)各標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中にその対応する識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(ii)各識別エレメントが、前記ポリヌクレオチド分子をほぼ同一の他の核酸分子と識別することができることと、(B)前記ポリヌクレオチド分子の標的核酸配列に結合した複数のターゲティングエレメントのそれぞれに分離基を選択的に付着させて、ターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(D)ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記固定化ターゲティングエレメント−分離基分子複合体を除去し、それにより、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0107】
一定の他の実施形態では、本発明にしたがって(1つの目的のポリヌクレオチド分子中の複数の領域を抽出するために)多重化様式で実施した配列特異的抽出は、(A)各ターゲティングエレメントがポリヌクレオチド分子中のその対応する標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団をそれぞれ分離基が付着する複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、(i)各標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中にその対応する識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、(ii)各識別エレメントが、特異的ポリヌクレオチド分子をほぼ同一の他の核酸分子と識別することと、(B)ポリヌクレオチド分子中のその対応する標的核酸配列への各ターゲティングエレメントの結合を選択的に安定化させて、前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合した安定化されたターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中のターゲティング核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、(D)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程とを含む。
【0108】
上記のように、1つの目的のポリヌクレオチド分子中または複数の目的のポリヌクレオチド分子中での異なる多型配列(すなわち、異なる識別エレメント)に特異的に結合する複数のオリゴヌクレオチドの使用によって多重化配列特異的抽出を行うことができる。多型が全て同一型(例えば、全て「T」)である場合、多型を含む全ての目的のポリヌクレオチド分子を、同一の分離基型(例えば、ビオチン化された「A」(「一次多重化」と呼ぶ))を使用して抽出することができる。多型が異なる型である場合、異なるヌクレオチド型に付着した異なる固定化可能な部分を含む種々の分離基を使用して、多型を含む対応するポリヌクレオチド分子を選択的に抽出することができる(「二次多重化」と呼ぶ)。例えば、「T」型の全ての多型を、ビオチン化された「A」の使用によってターゲティングし、ストレプトアビジンコーティングしたビーズで抽出することができ、「C」型の全ての多型を、フルオレセイン修飾された「G」の使用によってターゲティングし、「G」に対する抗体を含むビーズで抽出することができる。この実施形態は、一定のターゲティングされた多型部位の遺伝子型が未知であるサンプルの対立遺伝子を分離する場合に特に有用である。多型が異なる型である一定の実施形態では、異なるヌクレオチド型(例えば、「A」および「G」)に付着した同一の固定化可能な部分(例えば、ビオチン)を含む種々の分離基(例えば、ビオチン化された「A」およびビオチン化された「G」)を使用して、多型を含む対応するポリヌクレオチド分子を選択的に抽出することができる。同一の固定化可能な部分の使用により、1つの基盤型(例えば、ストレプトアビジンコーティングしたビーズ)または1つの基盤(特異的抗体でコーティングした表面)に目的のポリヌクレオチド分子を固定化することが可能である。
【0109】
一般に、1つの目的のポリヌクレオチド分子中の複数の領域を抽出するための多重化配列特異的抽出のために、使用される分離基は、同一基盤に固定化可能である。しかし、一定の実施形態では、使用される分離基は、異なる基盤に固定化可能であり得る。
【0110】
1つの実施形態では、組み合わせた多重化ハプロ分離のためのターゲティングエレメント組を、ゲノムの実質的部分または全ゲノムを含み、これらで見出される多型に基づいて任意の領域の潜在的に重複するハプロ分離が可能であるようにデザインする。いくつかの実施形態では、複数の典型的に非連鎖遺伝子座上に存在する候補遺伝子を含む好ましい領域のためのターゲティングエレメントをデザインする。使用者の好みに依存して、多重化または連続的なハプロ抽出により、1〜1000(この間の任意の整数値が含まれる)またはこれを超える固有の配列エレメント(すなわち、識別エレメント)を一度にターゲティングすることができる。最初のターゲティングエレメント組は典型的には小さく、さらなる遺伝情報が必要となるにつれて増加する。捕捉された目的のポリヌクレオチド分子は、数百塩基対ほどの小ささであってよく、より典型的には、ゲノムDNAから単離された場合、50,000〜100,000塩基長であり、DNA出発材料の完全性を保護するDNA単離およびハプロ分離プロトコールを使用する場合、全染色体まで拡大することができる。
【0111】
本発明をハプロタイプ決定に使用し、1つの基盤型(例えば、ストレプトアビジンコーティングしたビーズ)または1つの基盤を使用する一定の実施形態では、ゲノム領域上の隣接する識別エレメントの位置(隣接する「抽出部位」ともいう)は、一般に、抽出されたポリヌクレオチド分子が隣接抽出部位との間の距離がより長くないように互いに十分に離れているべきである(図7A)。そうでなければ、同一の基盤を使用して1つの抽出部位から抽出されたポリヌクレオチド分子と隣接抽出部位から抽出したポリヌクレオチド分子との間に偽シグナルが生じ得る物理的に重複した多型部位が存在し、真のハプロタイプシグナルと混同し得る。
【0112】
上記説明と類似したハプロタイプを決定するための連続的抽出のために複数の基盤型(例えば、ストレプトアビジンコーティングしたビーズおよび抗体コーティングしたビーズ)を使用する一定の実施形態では、1つの基盤型(例えば、ストレプトアビジンコーティングしたビーズ)を使用して抽出可能な隣接抽出部位は、一般に、1つの基盤型を使用して抽出されたポリヌクレオチド分子が隣接抽出部位との間の距離がより長くないように互いに十分に離れているべきである。上記説明を図7Bに示す。より詳細には、抽出部位1、4、および7でビーズAを使用して単離したポリヌクレオチド分子は重複すべきではない。同様に、抽出部位2、5、および8でビーズBを使用して単離したポリヌクレオチド分子は重複すべきではなく、抽出部位3および6でビーズCを使用して単離したポリヌクレオチド分子は重複すべきではない。
【0113】
しかし、1つの基盤型(例えば、ストレプトアビジンコーティングしたビーズ)を使用して抽出されたポリヌクレオチド分子は、別の基盤型(抗体コーティングしたビーズ)を使用して抽出されたポリヌクレオチド分子と重複した多型部位を有し得る。次いで、このような重複多型部位を、抽出されたポリヌクレオチド分子の各バッチ(すなわち、各基盤型を使用して抽出された多型分子)について分類し、連続的な多重化抽出由来の情報に基づいて連続ハプロタイプをアセンブリする。上記説明を図7Cに示す。より詳細には、抽出部位1でビーズAを使用して単離したポリヌクレオチド分子は抽出部位2でビーズBを使用して単離したポリヌクレオチド分子と重複し得る。抽出部位2でビーズBを使用して単離したポリヌクレオチド分子は抽出部位3でビーズCを使用して単離したポリヌクレオチド分子と重複し得る。ビーズA、ビーズB、およびビーズCを使用して単離した多型分子中の多型部位を個別に分類し、異なるビーズ(すなわち、ビーズA、ビーズB、またはビーズC)を使用して単離した多型分子間の多型部位を使用して連続ハプロタイプをアセンブリする。
【0114】
したがって、1つの態様では、本発明は、ハプロタイプをアセンブリする方法であって、(a)ハプロタイプを目的とする生物から核酸集団を準備する工程と、(b)複数の基盤を使用したハプロタイプ特異的抽出によってポリヌクレオチド分子を個別に単離する工程と、(i)各基盤を使用して、ポリヌクレオチド分子が、複数の抽出部位で単離されることと、(ii)1つの基盤を使用して1つの抽出部位で単離されたポリヌクレオチド分子が、同一の基盤を使用した他の抽出部位で単離したポリヌクレオチド分子中にも存在する多型部位を含まないことと、(iii)前記1つの基盤を使用して1つの抽出部位で単離された1つまたは複数のポリヌクレオチド分子が、他の基盤を使用して隣接抽出部位で単離されたポリヌクレオチド分子中にも存在する多型部位を含むことと、(c)各基盤を使用して単離したポリヌクレオチド分子中の多型部位を個別に特徴づける工程と、(d)1つを超える基盤を使用して単離したポリヌクレオチド分子中に存在する多型部位の特徴付けに基づいてハプロタイプをアセンブリする工程とを含む方法を提供する。一定の実施形態では、ハプロタイプをアセンブリする方法は、工程(c)の前に複数の基盤を使用して単離した前記ポリヌクレオチド分子を等温増幅する工程をさらに含む。しかし、単離ポリヌクレオチド分子の等温増幅は、その特徴付け前に常に必要であるわけではないので、一定の他の実施形態では使用しない。
【0115】
B.核酸の増幅
上記の単離された目的のポリヌクレオチド分子またはその一部を、本発明にしたがってさらに等温増幅することができる。このような増幅を、依然として基盤に付着した目的のポリヌクレオチド分子または基盤から解離した後の目的のポリヌクレオチド分子を使用して行うことができる。一般的増幅、配列特異的増幅、または偏った増幅によって増幅することができる。
【0116】
増幅により、目的の遺伝子座を含む核酸分子数が増加し、それにより、その後の分析の感度が増大する(図1A〜1C)。より詳細には、図1Aは、単離されたポリヌクレオチドサンプルのDNA分子数およびその長さの分布を示す。抽出点は、最初の核酸集団からのポリヌクレオチド分子の単離で使用した識別エレメントの位置に対応する。図1Bは、抽出点と遺伝子座Aとの間の連鎖を示す。遺伝子座Aが抽出点に比較的近接して存在するので、単離されたポリヌクレオチドサンプルは、遺伝子座Aを含むポリヌクレオチド分子を十分な量で含む。したがって、単離されたポリヌクレオチドサンプルを直接使用して、遺伝子座Aを検出および分析することができる。図1Cは、抽出点と、遺伝子座Aと、遺伝子座Bとの間の連鎖を示す。遺伝子座Aと異なり、遺伝子座Bは、抽出点から比較的離れている。単離されたポリヌクレオチドサンプルは、遺伝子座Bを含むポリヌクレオチド分子を遺伝子座Bを直接検出または分析するのに十分な量で含まない。しかし、本発明のポリヌクレオチドサンプルの増幅により、遺伝子座Bを含むポリヌクレオチド分子の量が増加し、それにより、この遺伝子座のその後の検出および分析が可能である。
【0117】
1.一般的増幅
「一般的増幅」は、ランダムプライマーのみを使用するポリヌクレオチド分子の増幅をいう。一般的増幅を、図2Aに概略的に示す。一定の実施形態では、プライマーは、6ヌクレオチド長と40ヌクレオチド長との間(6ヌクレオチド長と30ヌクレオチド長との間または8ヌクレオチド長と20ヌクレオチド長との間)であり得る。
【0118】
一般的増幅は、「全DNA増幅(WDA)」ともいう。さらに、単離されたポリヌクレオチド分子がゲノムDNAである場合、一般的増幅は「全ゲノム増幅」(WGA)とも呼ばれる。
【0119】
一般的増幅により、任意の所与の遺伝子座で利用可能なテンプレート分子数が増加する。これにより、信頼できるシグナルを検出することができる閾値レベルが減少し、複数の遺伝子座(図1Bおよび1C中の遺伝子座Aおよび遺伝子座Bとして示す)の連鎖を決定的に確立することができる距離も増加する。
【0120】
反応条件、増幅すべきポリヌクレオチド分子、およびランダムプライマーの長さに依存して、ランダムプライマーは、一般に、ポリヌクレオチド分子に沿って各鎖中のおよそ200から1000ヌクレオチド毎に結合する。ランダムプライマーと組み合わせて鎖置換増幅を使用する場合、テンプレートポリヌクレオチド分子の内部領域が指数関数的に増幅される。対照的に、テンプレートポリヌクレオチド分子のいずれかの末端付近に存在する領域は実質的に直線的に増幅する。これにより、テンプレートポリヌクレオチド分子の末端領域と比較してより多い内部領域のコピーが得られる。これを図5に示し、およそ500ヌクレオチド毎に結合するランダムプライマーを使用した鎖置換増幅後の10kb長のフラグメント中に外部領域および内部領域が存在する確率(p)を計算している。
【0121】
2.配列特異的増幅
「配列特異的増幅」は、配列特異的プライマーのみを使用したポリヌクレオチド分子の増幅をいう。プライマーは、一定の所与の条件下で目的の配列にアニーリングするが、同一条件下で増幅反応混合物中の他の核酸分子にアニーリングしない場合、目的の配列(例えば、配列特異的抽出によって単離されたポリヌクレオチド分子)に「特異的」である。
【0122】
一定の実施形態では、本発明の配列特異的増幅は遺伝子座特異的である。「遺伝子座特異的増幅」は、特定の遺伝子座に特異的なプライマーのみを使用したポリヌクレオチド分子の増幅をいう。配列特異的増幅の各増幅産物は、目的の遺伝子座の配列の少なくとも一部を含む。
【0123】
プライマーは、一定の所与の条件下で(例えば、核酸増幅のための等温条件下で)、遺伝子座を占める対立遺伝子の全部または大部分によって共有される遺伝子座内または遺伝子座に隣接する共通の配列に結合するが、他の配列(例えば、他の遺伝子座の配列)に結合しない場合、遺伝子座に「特異的」である。配列が遺伝子座の外側に存在するが、配列と遺伝子座の隣接末端との間の距離が500ヌクレオチド以内である場合、配列は遺伝子座に「隣接する」。一定の実施形態では、遺伝子座に隣接する配列は、遺伝子座の隣接末端から300、200、150、100、50ヌクレオチド離れている。
【0124】
一定の実施形態では、遺伝子座特異的プライマーは、6ヌクレオチド長と40ヌクレオチド長との間(6ヌクレオチド長と30ヌクレオチド長との間または8ヌクレオチド長と20ヌクレオチド長との間など)であり得る。一定の実施形態では、遺伝子座特異的プライマー中の50%を超えるヌクレオチド(例えば、70%、80%、85%、90%、95%、または98%を超える)がテンプレートポリヌクレオチド分子の1つの鎖中のその対応するヌクレオチドと相補的である。
【0125】
一定の実施形態では、増幅率が最も高い領域の30%〜100%が目的の領域と重複するようにプライマーをデザインする。一定の実施形態では、増幅率が最も高い領域の約50%〜約80%または約80%〜100%が目的の領域と重複する。
【0126】
一定の実施形態では、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーの両方を使用する。「センスプライマー」は、標的核酸配列および識別エレメントを含むポリヌクレオチド分子鎖の一部にアニーリングするプライマーである。「アンチセンスプライマー」は、標的核酸配列または識別エレメントを含まないポリヌクレオチド分子鎖にアニーリングするプライマーである。
【0127】
一定の実施形態では、複数の配列特異的センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを使用して、増幅率を増大し、そして/またはテンプレートポリヌクレオチド分子、詳細には、テンプレートポリヌクレオチド分子の2つの末端の十分な増幅を確実にする。一定の実施形態では、テンプレートポリヌクレオチド分子の2つの各末端に極めて接近してアニーリングする4、6、8、または10個を超えるプライマーを使用する。プライマーとその付近でプライマーがアニーリングするテンプレートポリヌクレオチド分子の末端との間の距離が近いほど、全テンプレートポリヌクレオチド分子にわたる増幅率が最も高くなる可能性が高くなる。一定の実施形態では、プライマーとその付近でプライマーがアニーリングするテンプレートポリヌクレオチド分子の末端との間の距離は、1ヌクレオチドと1000ヌクレオチドとの間(1ヌクレオチドと500ヌクレオチドとの間または1ヌクレオチドと250ヌクレオチドとの間)である。図6Bは、DNAフラグメントの各末端に特異的な10プライマー(隣接プライマーの間の距離が50ヌクレオチドである)を使用した核酸増幅由来の10kb DNAフラグメントの異なる領域の配列表示の相対的確率を示す。
【0128】
一定の関連する実施形態では、複数の配列特異的センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを使用して、増幅率を増大し、そして/または目的の遺伝子座、詳細には、遺伝子座の2つの末端の十分な増幅を確実にする。一定の実施形態では、目的の遺伝子座の2つの各末端に極めて接近してアニーリングする4、6、8、または10個を超えるプライマーを使用する。プライマーとその付近でプライマーがアニーリングする目的の遺伝子座の末端との間の距離が近いほど、全遺伝子座にわたる増幅率が最も高くなる可能性が高くなる。一定の実施形態では、プライマーとその付近でプライマーがアニーリングする目的の遺伝子座の末端との間の距離は、1ヌクレオチドと1000ヌクレオチドとの間(1ヌクレオチドと500ヌクレオチドとの間または1ヌクレオチドと250ヌクレオチドとの間)である。
【0129】
一定の実施形態では、(例えば、鎖置換による)ポリヌクレオチド分子またはその領域の増幅のために、中心特異的プライマーと共に末端特異的プライマーを使用する。末端特異的プライマーとの反応物への中心特異的プライマーの添加は、長いテンプレートポリヌクレオチド分子の増幅に有用であり得る。一定の実施形態では、テンプレートポリヌクレオチド分子の長さは、少なくとも約5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、もしくは800Kb、または約1Mb以上であり得る。
【0130】
「末端特異的プライマー」は、(i)全ポリヌクレオチド分子を増幅することを意図する場合、テンプレートポリヌクレオチドの隣接末端から500ヌクレオチド以内のテンプレートポリヌクレオチド分子にアニーリングするプライマー、または(ii)目的の特定の領域のみを増幅することを意図する場合、目的の特定の領域の隣接末端から500ヌクレオチド以内に存在するポリヌクレオチド分子中のテンプレートポリヌクレオチド分子にアニーリングするプライマーである。前者の場合、末端特異的プライマーは、目的のテンプレートポリヌクレオチド分子内の位置にアニーリングする。後者の場合、末端特異的プライマーは、目的の特定の領域内の位置にアニーリングすることができるか、目的の特定の領域に隣接する位置(すなわち、目的の特定の領域の外側)にアニーリングすることができる。
【0131】
「中心特異的プライマー」は、目的の全ポリヌクレオチド分子を増幅することを意図する場合、ポリヌクレオチド分子の隣接末端から500ヌクレオチドを超えて離れた目的のテンプレートポリヌクレオチド分子にアニーリングするプライマー、または(ii)目的の特定の領域のみを増幅することを意図する場合、目的の特定の領域の隣接末端から500ヌクレオチドを超えて離れて存在するテンプレートポリヌクレオチド分子の特定の領域(例えば、遺伝子座)にアニーリングするプライマーである。
【0132】
一定の実施形態では、隣接する末端特異的プライマー間の距離は、1〜500ヌクレオチドの間(例えば、10ヌクレオチドと400ヌクレオチドとの間、20ヌクレオチドと300ヌクレオチドとの間、30ヌクレオチドと200ヌクレオチドとの間、40ヌクレオチドと100ヌクレオチドとの間、50ヌクレオチドと80ヌクレオチドとの間)である。一定の実施形態では、隣接する末端特異的プライマー間の平均距離は、50ヌクレオチドと250ヌクレオチドとの間(その間の任意の値(約100ヌクレオチドなど)が含まれる)である。
【0133】
一定の実施形態では、隣接する中心特異的プライマー間の距離は、1ヌクレオチドと10,000ヌクレオチドの間(例えば、10ヌクレオチドと5,000ヌクレオチドとの間、50ヌクレオチドと2000ヌクレオチドとの間、または100ヌクレオチドと1000ヌクレオチドとの間)である。一定の実施形態では、隣接する中心特異的プライマー間の平均距離は、100ヌクレオチドと5000ヌクレオチドとの間(その間の任意の値(約2000ヌクレオチドなど)が含まれる)である。
【0134】
末端特異的プライマーおよび中心特異的プライマーの両方は、センスプライマーまたはアンチセンスプライマーであり得る。一定の実施形態では、センス末端特異的プライマーおよびアンチセンス末端特異的プライマーの両方は、増幅反応混合物中に存在する。一定の実施形態では、センス中心特異的プライマーおよびアンチセンス中心特異的プライマーの両方は、増幅反応混合物中に存在する。一定の実施形態では、センス末端特異的プライマーおよびアンチセンス末端特異的プライマーならびにセンス中心特異的プライマーおよびアンチセンス中心特異的プライマーは、増幅反応混合物中に存在する。
【0135】
一定の他の実施形態では、末端特異的プライマーを、任意の中心特異的プライマーの非存在下で使用することができる。このようなプライマーを、テンプレートポリヌクレオチド分子の中心(5’→3’)またはテンプレートポリヌクレオチド分子の目的の領域に向かうようにデザインする(図6A)。
【0136】
3.配列に偏った増幅
「配列に偏った増幅」は、一般的増幅と配列特異的増幅とのハイブリッドである。ランダムプライマーおよび配列特異的プライマーの両方の存在下で行う。
【0137】
一定の実施形態では、配列に偏った増幅は遺伝子座に偏っている。「遺伝子座に偏った増幅」は、一般的増幅と遺伝子座に偏った増幅とのハイブリッドである。ランダムプライマーおよび遺伝子座特異的プライマーの両方の存在下で行う(図2B)。遺伝子座に偏った増幅により、単離された核酸サンプル中の他のポリヌクレオチド分子と比較して目的の遺伝子座が優先的に増幅される。例えば、HLA−Bで抽出し、且つHLA−Cとの連鎖を検索する場合、WDAのためのランダムプライマーを使用するだけでなく、HLA−C遺伝子座周囲の領域中で結合するようにデザインされたプライマーとの増幅混合物を「急増させる」ことが有利である。この方法では、遺伝子座特異的プライマーにより、特異的領域(この例ではHLA−C)が優先的に増幅されるが、厳密な遺伝子座特異的方法ではPCR時に増幅されない。
【0138】
配列特異的プライマーと組み合わせたランダムプライマーの使用は、特に、長いテンプレートポリヌクレオチド分子の増幅または長いテンプレートポリヌクレオチド分子中の複数の領域の増幅に有用である。一定の実施形態では、テンプレートポリヌクレオチド分子の長さは、5、10、20、40、50、60、80、100、200、400、または500Kbであり得る。
【0139】
一定の実施形態では、隣接ランダムプライマー間の距離が約1〜10Kb(その間の任意の値が含まれる)であるように(例えば、適切な長さの)ランダムプライマーをデザインする。一定の実施形態では、隣接ランダムプライマー間の平均距離は約2Kbである。
【0140】
一定の実施形態では、隣接配列特異的プライマー間の距離は、2Kbと10Kbとの間(その間の任意の値が含まれる)である。一定の他の実施形態では、隣接配列特異的プライマー間の距離は、0.1Kbと0.9Kbとの間(その間の任意の値(約0.5Kbなど)が含まれる)である。
【0141】
一定の実施形態では、(例えば、鎖置換による)ポリヌクレオチド分子またはその領域の増幅のために、縮重中心特異的プライマーと共に末端特異的プライマーを使用する。「縮重プライマー」は、その配列が一定の位置にいくつかの可能な塩基を有する配列特異的プライマーである。一定の実施形態では、縮重中心特異的プライマーは、配列の長さが同一であり、且つ同一のテンプレートポリヌクレオチド位置にターゲティングする類似しているが同一ではない中心特異的プライマーの混合物である。
【0142】
一定の実施形態では、隣接する末端特異的プライマー間の距離は、1〜500ヌクレオチドの間(例えば、10ヌクレオチドと400ヌクレオチドとの間、20ヌクレオチドと300ヌクレオチドとの間、30ヌクレオチドと200ヌクレオチドとの間、40ヌクレオチドと100ヌクレオチドとの間、50ヌクレオチドと80ヌクレオチドとの間)である。一定の実施形態では、隣接する末端特異的プライマー間の平均距離は、50ヌクレオチドと250ヌクレオチドとの間(その間の任意の値(約100ヌクレオチドなど)が含まれる)である。一定の実施形態では、隣接する縮重中心特異的プライマー間の距離は、1ヌクレオチドと10,000ヌクレオチドの間(例えば、10ヌクレオチドと5,000ヌクレオチドとの間、50ヌクレオチドと2000ヌクレオチドとの間、または100ヌクレオチドと1000ヌクレオチドとの間)である。一定の実施形態では、隣接する中心特異的プライマー間の平均距離は、100ヌクレオチドと5000ヌクレオチドとの間(その間の任意の値(約2000ヌクレオチドなど)が含まれる)である。
【0143】
4.増幅手順
上記のように、本発明にしたがって、配列特異的抽出によって単離されたポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを等温増幅することができる。等温増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、Saiki et al.,1995.Science 230:1350−1354を参照のこと)、リガーゼ連鎖反応(例えば、Barany,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189−193;Barringer et al.,1990,Gene 89:117−122を参照のこと)、および転写ベースの増幅(例えば、Kwoh et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177を参照のこと)などの温度サイクリングを必要とする増幅と比較して、単離された巨大ポリヌクレオチド分子(またはそのフラグメント)の増幅で特に有用である。例えば、等温増幅は、(1)巨大フラグメントの効果のない熱変性および(2)使用したポリメラーゼの低進行性に起因するPCRベースの増幅技術に関連する巨大なポリヌクレオチドフラグメント増幅の感度の喪失を回避する。
【0144】
「等温増幅」または「ポリヌクレオチド分子の等温増幅」などは、等温条件下で行う核酸増幅をいう。「等温条件」は、温度サイクリングを行わない所与の温度または狭い範囲の温度で増幅が行われる増幅条件をいう。反応温度は、20℃と80℃との間の任意の温度(例えば、25℃と75℃との間および30℃と70℃との間)であり得る。等温条件下での温度の変動(すなわち、等温核酸増幅を行った最大の温度と最小の温度との間の差異)は、20℃未満(例えば、10℃未満または5℃未満)であるべきである。
【0145】
本発明で有用な例示的等温増幅系には、持続的配列複製(例えば、Guatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878,1990を参照のこと);Qβレプリカーゼ系(例えば、Lizardi et al.,BioTechnology 6:1197−1202,1988を参照のこと);鎖置換増幅(Nucleic Acids Res.20(7):1691−6,1992を参照のこと);PNAS 89(1):392−6,1992に記載の方法;NASBA(J Virol Methods.35(3):273−86,1991を参照のこと);ローリングサークルベースの増幅(RCA)(例えば、米国特許第5,714,320号および同第5,854,033号;Hatch et al.,Genet.Anal.Biomol.Engineer.15:35−40,1999;およびReagin et al.,Journal of Biomolecular Techniques,14:143−48,2003を参照のこと)が含まれるが、これらに限定されない。
【0146】
一定の実施形態では、鎖置換増幅法を使用して等温核酸増幅を行う。「鎖置換」は、二本鎖核酸分子の一本鎖核酸分子への完全なまたは部分的な変換をいう。鎖置換を、ポリメラーゼ(例えば、RecA、φ29DNAポリメラーゼ、BcaDNAポリメラーゼ、ヘリカーゼ、T4−gp32など)または別の酵素の活性によって容易にすることができる。「鎖置換増幅」は、鎖置換を使用して二本鎖核酸分子から一本鎖部分を生成する、テンプレートとして二本鎖核酸分子の一本鎖部分を使用したプライマー伸長に起因する増幅をいう。
【0147】
一般に、本発明の等温増幅は、配列特異的抽出によって単離されたポリヌクレオチド分子に特異的である。言い換えれば、このような増幅により、他の核酸分子のいかなる有意な汚染もなく配列特異的抽出によって単離されたポリヌクレオチド分子が増幅される。「いかなる有意な汚染もなく」は、配列特異的抽出によって単離されたポリヌクレオチド分子以外の核酸分子の画分またはその増幅産物が50%未満であることをいう。一定の実施形態では、配列特異的抽出によって単離されたポリヌクレオチド分子以外の核酸分子の画分またはその増幅産物が25%、15%、10%、または5%未満である。
【0148】
5.プライマー
増幅用プライマーは、典型的には、所望の一般的増幅または遺伝子座特異的増幅を行うのに十分な長さおよび適切な配列のオリゴヌクレオチドである。詳細には、本明細書中で使用される、用語「プライマー」は、プライマー伸長産物の合成を開始することができ、且つ実質的に目的のヌクレオチド配列と相補的な6つまたはそれを超えるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む配列をいう。合成を助長する環境条件には、ヌクレオシド三リン酸および重合剤(DNAポリメラーゼなど)ならびに適切な温度およびpHが含まれる。プライマーは、増幅効率を最大にするには一般鎖が好ましいが、二本鎖でもよい。二本鎖の場合、プライマーを、伸長産物を調製するために使用する前に、最初にその鎖を分離するための処理を行う。一定の実施形態では、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは、重合誘導剤の存在下での伸長産物の合成をプライミングするのに十分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは、多数の要因(温度、緩衝液、およびヌクレオチド組成が含まれる)に依存する。オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には、12〜20またはそれを超えるヌクレオチドを含むが、より少ないヌクレオチドを含み得る。
【0149】
上記で考察しているように、一般に、増幅すべきゲノム遺伝子座の各鎖に実質的に相補的であり、且つ適切なGまたはCヌクレオチドを含むようにプライマーをデザインする。これは、プライマーが重合剤が作用する条件下でその各鎖とハイブリッド形成するのに十分に相補的でなければならないことを意味する。さらに、本出願の核酸増幅に有用なプライマーを、その3’末端の伸長によって増幅を意図するテンプレート配列の少なくとも一部(またはその相補物)を含む産物が産生されるような方向(すなわち、5’→3’)でデザインする。
【0150】
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーを、任意の適切な方法(従来のホスホトリエステル法およびホスホジエステル法またはその自動化実施形態など)を使用して調製することができる。1つのこのような自動化実施形態では、出発材料としてジエチルホスホラミダイトを使用し、Beaucage et al.,Tetrahedron Letters,22:1859−1862,1981に記載のように合成することができる。修飾固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成法の例は、米国特許第4,458,066号に記載されている。
【0151】
一定の実施形態では、RecAコーティングプライマーを使用して、変性することなく二本鎖テンプレートポリヌクレオチド分子の鎖侵入を容易にすることができる。
【0152】
一定の他の実施形態では、3’エクソヌクレアーゼ保護プライマーを使用することができる。φ29DNAポリメラーゼと組み合わせて、このようなプライマーにより、テンプレートポリヌクレオチド分子の二本鎖領域の全域でさえも連続的に増幅可能である。
【0153】
6.ポリメラーゼ
一般に、プライミングした3’−OH基の活性を伸長することができる任意のポリメラーゼを、本発明の単離ポリヌクレオチド分子の増幅で使用することができる。ポリメラーゼは、DNAまたはRNA指向性DNAポリメラーゼであり得る。一定の実施形態では、ポリメラーゼは、3’→5’エクソヌクレアーゼを欠く。適切なDNA指向性ポリメラーゼには、φ29レプリカーゼ、バチルス・ステアロサーモフィルス、テルムス・アクアチクス、パイロコッカス・フリオシシス、サーモコッカス・リトラリス、および高度高熱菌、T4およびT7バクテリオファージ由来のDNAポリメラーゼ、ならびに大腸菌DNAポリメラーゼIクレノウフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。適切なRNA指向性DNAポリメラーゼには、トリ骨髄芽球症ウイルス由来の逆転写酵素、モロニーマウス白血病ウイルス由来の逆転写酵素、およびヒト免疫不全ウイルス−I由来の逆転写酵素が含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
一定の実施形態では、本出願で進行性DNAポリメラーゼを使用する。一定の実施形態では、ポリメラーゼ−核酸結合複合体あたり500、1000、または2000個を超えるヌクレオチドを重合する進行性DNAポリメラーゼをー本出願で使用する。例示的進行性DNAポリメラーゼには、φ29DNAポリメラーゼおよびBcaDNAポリメラーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0155】
一定の実施形態では、配列特異的抽出時にターゲティングエレメントに分離基を選択的に付着させ、ターゲティングエレメント−分離基複合体を選択的に安定化させるために使用されるポリメラーゼは、単離ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントの増幅のためのポリメラーゼと同一であり得る。一定の他の実施形態では、配列特異的抽出時のターゲティングエレメントへの分離基の選択的付着またはターゲティングエレメント−分離基複合体の選択的安定化ならびに単離ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントの増幅のために異なるポリメラーゼを使用する。
【0156】
7.多重化
配列特異的抽出と同様に、抽出された(すなわち、単離された)ポリヌクレオチド分子の増幅を、複数のプライマーもしくは複数のプライマー組(例えば、一般的プライマー、配列特異的プライマー、または一般的プライマーと配列特異的プライマーとの組み合わせ)を使用して行うことができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、多重化を使用して、同一の識別エレメントを含む単離ポリヌクレオチド分子の異なる領域を増幅する。例えば、一定の実施形態では、同一の識別エレメントを含む単離ポリヌクレオチド分子の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれを超える異なる領域を増幅する。
【0158】
一定の実施形態では、多重化を使用して、異なる識別エレメントを含む単離ポリヌクレオチド分子を同時に増幅する。例えば、一定の実施形態では、異なる識別エレメントを含む少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれを超える異なる単離ポリヌクレオチド分子を増幅する。
【0159】
一定の実施形態では、多重化ハプロタイプ特異的抽出を使用して、1つのDNAサンプルから異なる識別エレメントを含む異なるポリヌクレオチド分子をターゲティングおよび抽出することができる。異なる識別エレメントを含む抽出されたポリヌクレオチド分子を、例えば、全ゲノム増幅または全DNA増幅によってその後に増幅して、理論的に使用し、保存し、無期限に再増幅することができる一倍体サンプルを作製することができる。これにより、最初は興味を持たれなかった領域を研究する必要性に応じて再使用可能な既存の保存された二倍体標本から一倍体を作製するかそうでなければ修飾ライブラリーを作製することが可能である。
【0160】
C.連続した抽出および増幅ラウンド
必要に応じて、連続的抽出および増幅後にさらなる配列特異的抽出および/または増幅を行うことができる。例えば、抽出サンプルを、一般的増幅に供し、その後に第2の抽出に供し、その後に遺伝子座特異的増幅に供し、任意選択的に、さらに抽出し、さらに増幅することができる。一定の実施形態では、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20回の連続的抽出および増幅を行う。
【0161】
D.適用形式
本発明の核酸の単離および増幅方法を、種々の形式で行うことができる。例えば、配列特異的核酸抽出およびその後の増幅(一般的増幅、遺伝子座特異的増幅、または偏った増幅が含まれる)を、DNAアレイを使用して行うことができる。当該分野で公知の技術を使用して、アレイを作製することができる。一定の実施形態では、平面上にアレイを都合よく提供する。
【0162】
図4に示す統合された配列特異的抽出(例えば、ハプロタイプ特異的抽出)、増幅、およびDNA分析の装置10でアレイを使用することができる。生体サンプルを抽出室120の注入口100に導入し、ここで配列特異的抽出が行われる。抽出後、連結ポート140を介してサンプルを増幅室160に移動させ、ここで増幅工程を行う。試薬および溶液を排出口220から排出することができる。装置の異なる領域の至るところへのサンプルの移動を、当該分野で公知の多数の方法によって容易にすることができる。1つの例示的輸送様式は、外部ポンプもしくはピペットによって制御される接続路中の空気もしくは流動物の移動または微細構造の適切な可動性成分の制御された弾性変形を介した圧力の使用によるものである。例えば、装置内の流動物を輸送するための簡素で信頼できる都合の良い様式は、外部チップの開口部(典型的には、微細構造の軟成分中に存在する垂直ポート)への接続によるものである。チップは流路を備えた気密シールを形成し、チップに接続したポンプが作動した場合にこれを使用して流動物を微細構造の内側に移動させることができる。チップまたは他の機械的作動装置は、密封可能な室を含み得る微細構造の領域に圧力を印可することもできる。例えば、チップまたは他の作動装置を室上の垂直アクセスポートを閉じるように配置し、その後に微細構造をさらに下に押す場合、チップが下がるにつれて室の体積が有意に減少する。これにより、押し下げられた室から微細構造の接続領域に流動物を有効に輸送することができる。この簡潔な手順を、マニュアル形式または自動化形式で繰り返し実施して、サンプルを装置の全領域(ハプロタイプ特異的抽出、増幅、検出アレイなど)に移動させることができる。本明細書中に示す例では、増幅工程の産物を、第2の連結ポート180を介して検出アレイ200に移動させ、ここで配列特異的抽出(例えば、ハプロタイプ特異的抽出)および増幅過程の産物を検出する。
【0163】
本発明の配列特異的抽出を、標準的なロボット液体処理およびサンプル調製システムの使用によって完全に自動化された実施形態で実施することができる。特に、このようなプロトコールのマニュアル操作と酷似している方法でサンプルからDNAを抽出するための磁性ビーズを使用するロボットシステムは市販されている。このシステムへの方法の適応および完全に自動化された処理ラインへの統合は容易であり、システムのプログラミング以外の装置の改変は必要ない。
【0164】
抽出されたポリヌクレオチド分子の配列特異的抽出およびその後の増幅を、例えば、癌の診断、分類、および予後診断において組織の潜在的に小さな組織を試験するためまたは巨大な連続領域にわたって存在する多型に関する情報を得るために小型化することができる。
【0165】
一定の実施形態では、単一分子レベルで配列特異的抽出(例えば、ハプロタイプ特異的抽出)を行うことができる。例として、それぞれの光学的に捕捉されたストレプトアビジンコーティングされたビーズを使用して、1つまたは多数のターゲティングされたフラグメントを捕捉し、例えば、微細構造中でこれらを操作することができる(Dapprich and Nicklaus,Bioimaging 6(1):25−32,1998)。単離されたポリヌクレオチド分子を、さらなる処理(増幅または配列分析など)のために微細構造の異なる室などの個別の位置に輸送するか(Mitra and Church,Nucleic Acids Res.27(24):e34,1999;Stahl et al.,Nucleic Acids Res.16(7):3025−38,1988;Dapprich,J.Cytometry.36(3):163−8,1999)、微細構造から除去することができる。ターゲティングされたフラグメント以外は元のサンプルを保存し、異なるフラグメントのその後の抽出のために再使用することができる。
【0166】
さらに、小型化および統合されたデバイスは、例えば診断目的のために方法を実施することができる好ましいプラットフォームである。配列特異的抽出を、小型化され、安価であり、且つ統合された遺伝子型同定および配列分析のための標準的な方法およびデバイスに容易に適応させることができる(Hacia et al.,Nat Genet.22(2):164−7,1999;Mitchell et al.,Methods Mol Biol.58:97−103,1996;and Technote#303,Bangs Laboratories,Fishers,Ind.)。
【0167】
配列特異的抽出(例えば、ハプロタイプ特異的抽出)を、平らな支持体(紙または「ディップスティック」型妊娠検査形式など)で任意選択的に行うことができる。次いで、この支持体を、捕捉DNAの記憶媒体またはさらなる増幅を繰り返し行うことができる基盤として直接使用することができる。
【0168】
E.核酸の単離および増幅のためのキット
1つの態様では、本発明は、核酸の単離およびその後の等温増幅のためのキットを提供する。このようなキットは、1つまたは複数の以下の成分を含み得る:(1)1つまたは複数のターゲティングエレメント(例えば、特定の識別エレメントを含むポリヌクレオチド分子の抽出に特異的なオリゴヌクレオチド)、(2)生体サンプル由来の核酸調製物のための試薬(例えば、溶解緩衝液および中和緩衝液)、(3)分離基(例えば、ビオチン化ヌクレオチド)、(4)分離基が結合することができる基盤(例えば、ストレプトアビジンコーティングされたビーズ)、(5)配列特異的抽出によって単離されたポリヌクレオチド分子または単離されたポリヌクレオチド分子の特定の領域のための配列特異的プライマー、(6)ランダムプライマー、(7)核酸増幅のためのdNTP、(8)ターゲティングエレメントへの分離基の選択的付着および/または核酸の伸長/増幅のためのポリメラーゼ(例えば、φ29DNAポリメラーゼ)、および(9)増幅産物中の特定の配列の存在を検出するための1つまたは複数の特異的プローブ(例えば、対立遺伝子特異的プローブ)。
【0169】
F.核酸の単離および増幅への適用
本発明の核酸の単離および増幅方法は、種々に適用される。例えば、単離されたポリヌクレオチド分子およびその増幅産物を、広範なアッセイ(配列決定、特異的配列の検出、さらなる多型部位の特徴付け、さらなる増幅(リアルタイムPCRなど)、および質量分析法が含まれる)で使用することができる。
【0170】
一定の実施形態では、本発明の方法を使用して、一塩基多型(SNP)を含む核酸を同定および単離する。このような方法により、プールしたサンプルからのSNP検索の実施が容易になり、106または107の富化比が必要であり得る。一定の他の実施形態では、本発明の方法を使用して、他の遺伝子マーカー(制限部位、1つのタンデム反復、マイクロサテライト、およびメチル化などの潜在的に後成的なパターンが含まれる)を同定および単離する。
【0171】
本発明の方法は、2つの選択された部位の対比較およびそれによる無数のハプロタイプを構成する部位の相関に制限されない。例えば、本発明の方法を使用して、分離された対立遺伝子を含む画分にDNA(複数の対立遺伝子を含むサンプルの染色体フラグメントに由来)を分離することができ、異なるフラグメントの重複ヘテロ接合領域を使用して、連続フラグメントにわたる同時遺伝ゲノム領域に関する情報をアセンブリすることができる(図2C)。この画分を含むライブラリーを、異なる領域で繰り返し分析して、さらに対立遺伝子を分離することなく以前に分類されていない多型を研究することができる。
【0172】
一定の実施形態では、配列特異的抽出を使用して、2つのほぼ同一の配列を識別する。例示的実施形態では、本方法により、ハプロタイプ決定のためにフラグメント間の相違を評価することができるようにヘテロ接合部位の同一性に基づいて母方起源および父方起源のDNAフラグメントを分離可能である。この能力により、一般に遺伝子型同定のために使用される標準的方法と組み合わせた場合、個体の大量且つ費用効果のある迅速なハプロタイプ決定が可能になり、それにより、稀な事象(治療非応答事象または悪影響を受けた個体など)の分析に注目することによって、有意にサイズを減少させ、遺伝子プロファイリング研究期間を短縮することができる。
【0173】
ハプロタイプ特異的抽出および増幅を使用して個体のハプロタイプを決定する一定の実施形態では、予め選択した遺伝子組または遺伝子座組に基づいてハプロタイプを選択することができる。例えば、1〜500、5〜250、10〜200、20〜100、25〜75、または約50の部位を選択することができる。部位は、例えば、特定の形質に関連すると疑われるゲノム中の領域であり得る。
【0174】
例えば、一定の実施形態では、特定の疾患または容態を罹患した個体のハプロタイプを最初に決定し、任意の保存された遺伝子パターンを同定する。次いで、パターンを、コントロール群(すなわち、疾患または容態を示さない群)と比較し、潜在的会合を明らかにする。例えば、一定の癌型の分子ベースの分類における疾患の型またはクラスの同定のためにこれを保持する。
【0175】
さらに、ハプロタイプ特異的抽出によって組織型を明確に同定可能であり、一定の疾患または容態に潜在的に関連する異常(ヘテロ接合性の喪失、逆位、欠失、重複、または転座など)を検出することができる。他の実施形態では、遡及研究を行って治療上の処置(薬学的、外科的、または放射線ベースの治療など)に対する応答(正および負)についての遺伝的関係を同定する。これらの研究の結果を使用して、患者が所与の治療上の処置に対して応答するか副作用を生じる可能性を決定することができる。
【0176】
本発明の核酸の単離および増幅方法は、抽出あたりの直接達成可能な連鎖距離を伸長し、利用可能なテンプレート量の増加によってその後の操作の信頼性が増す。一定の実施形態では、抽出あたりの連鎖距離は、少なくとも約10、20、50、70、100、150、300、500、もしくは800Kb、または約1Mb以上である。
【0177】
一定の実施形態では、ハプロタイプ特異的抽出と全DNA増幅との組み合わせを、組織分類に使用するが、この組み合わせは、従来の配列ベースの分類(SBT)または配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)によって解明できない対立遺伝子対の組み合わせを使用して潜在的に扱いにくい二倍体サンプルを明確に分類可能であるからである。これにより、遺伝子座特異的増幅のみを使用して適切に増幅できない巨大連鎖距離にわたる複数の多型を使用してハプロ分離サンプルを分類することも可能である。
【0178】
本発明のさらなる適用は、癌分類を容易にすること、腫瘍および宿主中の遺伝子変化の継続的モニタリング、癌治療薬の有効性の予想、混合サンプル、汚染サンプル、または法医学サンプル由来の腫瘍DNAまたはウイルス核酸の富化、微小残存病変および他の疾患(例えば、癌およびHIV)のモニタリング、ヒト疾患の診断、ヒト疾患素因の決定(代謝疾患、癌の分類、診断、および予後診断が含まれる)、オルガネラDNA(ミトコンドリアおよびクロロプラスと)および植物形質の分析、ならびに創薬および進化研究(例えば、疾患進化の追跡)の促進を含む。
【0179】
本発明を、以下の制限されない実施例中にさらに示す。
【0180】
実施例
φ29レプリカーゼ/GenomiPhiキット(AmershamBiosciences)を使用して、ハプロタイプ特異的抽出後にハプロ分離ゲノムDNAを増幅した。得られた増幅DNAは、配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP;Innogenetics)によって分類した場合、以前として二倍体であり、非ターゲティング対立遺伝子の視覚可能な残存成分を本質的に含まなかった。ハプロ分離サンプルから生成されたSSOPシグナルは、二倍体コントロールサンプルから生成されたSSOPシグナルより顕著に強い(図3)。
【0181】
市販のプライマーおよび試験ストリップ(Innogenetics/Murex,Dartford,UK)を使用して、ハプロタイプ特異的抽出によるハプロ分離二倍体サンプル後のHLA−Bエクソン1〜3の一般低増幅を行った。各サンプルの分類は、スキャニングしたストリップから直接得た2つのストリップ(その両方を図3に示す)からなる。サンプルを、1μlの出発材料(ビーズ上でのハプロ抽出DNA)から増幅した。2つの一倍体画分が予想される全株は、全ゲノム増幅前後に存在する。全DNA増幅後でさえも、他の非ターゲティング対立遺伝子が予想される株は存在しない。
【0182】
これらの結果は、ハプロタイプ特異的抽出のDNA増幅との適合性を示す。
【0183】
本明細書中で言及され、そして/または出願書類に列挙された全ての上記米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許刊行物は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0184】
上記から、本発明の特定の実施形態を例示を目的として本明細書中に記載しているが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の修正形態を実施することができることが認識される。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲以外に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1A】核酸分子の単離サンプルについてのDNA分子数対長さの分布のグラフである。目的のフラグメントを固有に同定する識別エレメント(隣接または重複標的核酸配列と併せて)によって特徴づけられた抽出点でフラグメントをターゲティングする。例として、無作為に剪断されたフラグメントは、固有の配列エレメント(すなわち、隣接または重複標的核酸配列と併せた識別エレメント)を含む場合、抽出点の上流または下流に存在するフラグメントの任意の連結セグメントと共に捕捉される。抽出点に連結された任意の所与の遺伝子座のための利用可能な捕捉テンプレートのコピー数は、フラグメントの全サイズ分布に基づいた抽出点からの距離が増加するにつれて減少する。
【図1B】抽出点と遺伝子座Aとの間の連鎖を示す核酸分子の単離サンプルについてのDNA分子数対長さの分布のグラフである。検出閾値、ひいては直接達成可能な連鎖距離を、所与のアッセイを使用して遠位遺伝子座で検出可能なシグナルを得るのに必要なテンプレート分子の最小数によって決定する。
【図1C】全捕捉材料の増幅後の抽出点と、遺伝子座Aと、遺伝子座Bとの間の連鎖を示す核酸分子の単離サンプルについてのDNA分子数対長さの分布のグラフである。テンプレートの全コピー数が増加し、検出閾値を有効に低下させ、検出可能な連鎖距離を増加させることができる。
【図2A】捕捉DNAの偏りのない(一般的な)増幅後のDNA分子数対長さの分布のグラフである。
【図2B】捕捉DNAの偏った増幅後(一般的増幅と遺伝子座特異的増幅との組み合わせ)のDNA分子数対長さの分布のグラフである。
【図2C】3つの個別の抽出物を使用して単離およびアセンブリしたハプロタイプを示すグラフである。
【図3】コントロールサンプル(「二倍体:B14,B44」)ならびに全DNA増幅前(「一倍体:B*14」)および全DNA増幅後(「WGA後の一倍体:WGA後のB*14」)から生じた配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)シグナルを示す図である。
【図4】シリコンカバーを有するスライドガラス上の統合されたハプロ抽出、増幅、およびDNA分析用装置を示す図である。
【図5】それぞれ約500ヌクレオチドに結合するランダムプライマーを使用した複数の鎖置換増幅後の10kb長フラグメントの増幅された外側および内側の領域の存在についての相対確率分布(p)対ヌクレオチドの位置を示す図である。フラグメントの5’末端または3’末端付近に存在する外側の領域と比較して内側の領域が優先的に増幅される。
【図6A】標的フラグメントの末端付近に優先的に存在する増幅プライマーおよび標的フラグメントの中心への方向(5’→3’)を示す図である。
【図6B】DNAフラグメントの各末端に特異的になるように選択した10個のプライマーを使用した複数の鎖置換増幅後の10kbDNAフラグメントの異なる領域の存在を示すための相対確率分布(p)対ヌクレオチドの位置を示す図である。隣接プライマー間の距離は50ヌクレオチドである。
【図7A】異なる抽出産物間の物理的に重複した多型部位に関する潜在的問題が解決される配列特異的抽出の組み合わせ多重化を示すグラフである。単一系列のビーズについて、一定の所与の条件下で全長の抽出フラグメントが未だいかなる検出可能なハプロタイプシグナルを生じていないほど離して、多重化抽出部位を選択する(図7A)。
【図7B】複数のビーズ組(すなわち、3組−ビーズA、ビーズB、およびビーズC)を使用することができるが、各捕捉遺伝子座をたった1つのターゲティングエレメント(「配列特異的抽出プローブ」とも呼ばれる)によって抽出することが好ましい(図7B)。
【図7C】次いで、重複多型部位を、多重化ビーズの各バッチについて分類し、連続多重化抽出由来の情報に基づいて連続ハプロタイプをアセンブリする(図7C)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的のポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを増幅する方法であって、
(a)固定可能な分離基を使用して核酸集団からポリヌクレオチド分子を単離して単離ポリヌクレオチド分子を準備する工程と、
(b)前記単離ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを等温増幅する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
(A)前記核酸集団が目的のポリヌクレオチド分子を含み、
(B)前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖が標的核酸配列および識別エレメントを含み、
(C)前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在し、
(D)前記工程(a)が、
(i)前記核酸集団を前記ポリヌクレオチド分子中の前記標的核酸配列に特異的に結合するターゲティングエレメントと接触させる工程と、
(ii)前記固定可能な分離基を前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列に結合したターゲティングエレメントに選択的に付着させてターゲティングエレメント−分離基複合体を形成させる工程と、
(iii)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、
(iv)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的のポリヌクレオチド分子がゲノムDNA分子である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中の識別エレメントに対してすぐ3’側に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ターゲティングエレメントがオリゴヌクレオチドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記分離基が固定化可能なヌクレオチドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記固定可能なヌクレオチドが終結ヌクレオチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記固定可能なヌクレオチドが非終結ヌクレオチドである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記識別エレメントが多型配列である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記識別エレメントが一塩基多型である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
(1)前記ターゲティングエレメントがオリゴヌクレオチドを含むことと、
(2)前記分離基が固定可能なヌクレオチドを含むことと、
(3)前記分離基が、前記固定化可能なヌクレオチドの存在下での前記オリゴヌクレオチドの伸長によってターゲティングエレメントに付着し、それにより、前記固定化可能なヌクレオチドを含む伸長産物が形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
(4)前記オリゴヌクレオチドの3’末端が、前記ポリヌクレオチド分子中の前記識別エレメントまたはその一部と相補的であり、
(5)前記固定化可能なヌクレオチドが非終結であり、
(6)前記伸長産物が複数の分離基を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(4)前記標的核酸配列が前記識別エレメントに対してすぐ3’側に存在し、
(5)前記固定化可能なヌクレオチドが終結であり、かつ前記識別エレメントまたはその一部と相補的である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
(A)前記核酸集団が目的のポリヌクレオチド分子を含み、
(B)前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖が標的核酸配列および識別エレメントを含み、
(C)前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在し、
(D)前記工程(a)が、
(i)前記核酸集団をターゲティングエレメント−分離基複合体と接触させる工程と、前記ターゲティングエレメント−分離基複合体が前記ポリヌクレオチド分子中の前記標的核酸配列に特異的に結合することと、
(ii)前記ポリヌクレオチド分子中の前記標的核酸配列への前記ターゲティングエレメント−分離基複合体の結合を選択的に安定化させる工程と、
(iii)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する安定化された前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、
(iv)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する安定化された固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去し、それにより、前記核酸集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(1)前記ターゲティングエレメントがオリゴヌクレオチドを含み、
(2)前記オリゴヌクレオチドの3’末端が前記ポリヌクレオチド中の識別エレメントまたはその一部と相補的である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記選択的安定化をライゲーションによって行う、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記選択的安定化を、テンプレートとしてポリヌクレオチド分子を使用したオリゴヌクレオチドの伸長によって行う、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリヌクレオチド分子が少なくとも約10kb長である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記識別エレメントがハプロタイプ特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記識別エレメントが遺伝子座特異的である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記工程(b)を、鎖置換増幅によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記工程(b)により、単離ポリヌクレオチド分子の特定の領域が増幅される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(b)を、それぞれが前記標的核酸配列を含むポリヌクレオチド分子鎖中の特定の領域と少なくとも実質的に相補的な第1の特異的プライマー組の存在下で行う、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記工程(b)を、それぞれが前記標的核酸配列を含まないポリヌクレオチド分子鎖中の特定の領域と少なくとも実質的に相補的な第2の特異的プライマー組の存在下でさらに行う、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記標的核酸配列を含む単離ポリヌクレオチド分子鎖にアニーリングする場合、前記第1の特異的プライマー組がその隣接プライマーから約0.5kb離れている、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記標的核酸配列を含まない単離ポリヌクレオチド分子鎖にアニーリングする場合、前記第2の特異的プライマー組がその隣接プライマーから約0.5kb離れている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記工程(b)をランダムプライマー組の存在下でさらに行う、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記工程(b)をランダムプライマー組の存在下でさらに行う、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ランダムプライマーが、その隣接プライマーから約2kb離れている、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第2のランダムプライマー対が、その隣接プライマーから約2kb離れている、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記工程(b)が遺伝子座特異的増幅である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記工程(b)が遺伝子座に偏った増幅である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記工程(b)を、末端特異的プライマーの存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記隣接末端特異的プライマー間の平均距離が、50ヌクレオチドと250ヌクレオチドとの間である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記工程(b)を、中心特異的プライマーの存在下でさらに行う、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記隣接中心特異的プライマー間の距離が、100ヌクレオチドと5000ヌクレオチドとの間である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記中心特異的プライマーが配列特異的である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記中心特異的プライマーが縮重プライマーである、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
(c)ハプロタイプを構成する増幅ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメント中の1つまたは複数の部位を特徴づける工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
(d)前記特徴づけられた部位の情報をアセンブリする工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
(c)前記増幅ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメント中の1つまたは複数の多型部位を特徴づける工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
(d)前記特徴づけた部位の情報をアセンブリする工程をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
工程(b)の前に前記基盤から前記単離ポリヌクレオチド分子を解離する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項44】
工程(b)の前に前記基盤から前記単離ポリヌクレオチド分子を解離する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項45】
核酸分子集団から目的の複数のポリヌクレオチド分子を増幅する方法であって、
(a)1つまたは複数の固定化可能な分離基を使用して核酸集団から複数のポリヌクレオチド分子を単離して目的の単離ポリヌクレオチド分子を得る工程と、
(b)前記単離ポリヌクレオチド分子またはそのフラグメントを等温増幅する工程と
を含む、方法。
【請求項46】
前記工程(a)が、
(A)各ターゲティングエレメントがその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的の複数のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団を複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、
(i)前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、
(ii)前記識別エレメントが、前記ポリヌクレオチド分子を前記ポリヌクレオチド分子とほぼ同一の別の核酸分子と識別することと、
(B)前記対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列に結合した複数のターゲティングエレメントに分離基を選択的に付着させて、ターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、
(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、
(D)結合する前記固定化ターゲティングエレメント−分離基分子を除去し、それにより、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程と
を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記異なる分離基を異なるターゲティングエレメントに付着する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記同一の分離基を異なるターゲティングエレメントに付着する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記工程(a)が、
(A)各ターゲティングエレメントがその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列と特異的に結合するように前記目的の複数のポリヌクレオチド分子を含む核酸集団を分離基が付着する複数のターゲティングエレメントと接触させる工程と、
(i)前記標的核酸配列が、前記ポリヌクレオチド分子の1つの鎖中に識別エレメントの100ヌクレオチド以内で存在することと、
(ii)前記識別エレメントが、前記ポリヌクレオチド分子を前記ポリヌクレオチド分子とほぼ同一の別の核酸分子と識別することと、
(B)前記ターゲティングエレメントのその対応するポリヌクレオチド分子の標的核酸配列への結合を選択的に安定化させて、前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合した安定化されたターゲティングエレメント−分離基複合体を形成する工程と、
(C)前記分離基を介してポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する前記ターゲティングエレメント−分離基複合体を基盤に固定化する工程と、
(D)前記ポリヌクレオチド分子中の標的核酸配列が結合する固定化ターゲティングエレメント−分離基複合体を除去して、前記核酸分子集団から前記ポリヌクレオチド分子を単離する工程と
を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記異なる分離基を異なるターゲティングエレメントに付着する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記同一の分離基を異なるターゲティングエレメントに付着する、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも3つの目的の異なるポリヌクレオチドが単離される、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
目的のゲノムDNA分子またはそのフラグメントを増幅する方法であって、前記目的のゲノムDNA分子が多型配列を含み、
(a)前記目的のゲノムDNA分子を含むゲノムDNA集団をオリゴヌクレオチドと接触させる工程と、
(i)前記オリゴヌクレオチドが、前記目的のゲノムDNA分子の1つの鎖中の標的核酸配列と少なくとも実質的に相補的な配列を含むことと、
(ii)前記標的核酸配列が、前記目的のゲノムDNA分子の1つの鎖中の多型配列に対してすぐ3’側に存在することと、
(iii)前記目的のゲノムDNA分子の1つの鎖にアニーリングする場合、前記オリゴヌクレオチドの3’部分が多型配列またはその一部と相補的であることと、
(b)固定化可能なヌクレオチドの存在下でテンプレートとしてオリゴヌクレオチドがアニーリングする目的のゲノムDNA分子の1つの鎖を使用して前記オリゴヌクレオチドを伸長して、伸長産物を得る工程と、
(c)固定化可能なヌクレオチドを介して目的のゲノムDNA分子が結合する伸長産物を基盤に固定化する工程と、
(d)前記目的のゲノムDNA分子が結合する固定化された伸長産物を除去し、それにより、前記ゲノムDNA集団から前記目的のゲノムDNA分子を単離する工程と、
(e)任意選択的に、前記基盤から前記目的のゲノムDNA分子を溶離する工程と、
(f)単離または溶離された前記目的のゲノムDNA分子またはそのフラグメントを等温増幅する工程と
を含む、方法。
【請求項54】
ハプロタイプをアセンブリする方法であって、
(a)ハプロタイプを目的とする生物から核酸集団を準備する工程と、
(b)複数の基盤を使用したハプロタイプ特異的抽出によってポリヌクレオチド分子を個別に単離する工程と、
(i)各基盤を使用して、ポリヌクレオチド分子が、複数の抽出部位で単離されることと、
(ii)1つの基盤を使用して1つの抽出部位で単離されたポリヌクレオチド分子が、同一の基盤を使用した他の抽出部位で単離したポリヌクレオチド分子中にも存在する多型部位を含まないことと、
(iii)1つの基盤を使用して1つの抽出部位で単離された1つまたは複数のポリヌクレオチド分子が、他の基盤を使用して隣接抽出部位で単離されたポリヌクレオチド分子中にも存在する多型部位を含むことと、
(c)各基盤を使用して単離したポリヌクレオチド分子中の多型部位を個別に特徴づける工程と、
(d)1つを超える基盤を使用して単離したポリヌクレオチド分子中に存在する多型部位の特徴付けに基づいてハプロタイプをアセンブリする工程と
を含む、方法。
【請求項55】
前記工程(c)の前に複数の基盤を使用して単離した前記ポリヌクレオチド分子を等温増幅する工程をさらに含む、請求項54に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2008−508901(P2008−508901A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525726(P2007−525726)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/028230
【国際公開番号】WO2006/020617
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(507042408)ジェネレイション バイオテック リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【出願人】(507042419)ゲノヴィジョン インコーポレイテッド (1)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】