説明

核酸の回収方法

【課題】糞便等の生体試料から直接核酸を回収する方法であって、生体試料由来の不純物のキャリーオーバーが低減され、純度の高い核酸を回収し得る方法の提供。
【解決手段】生体試料から核酸を回収する方法であって、(A)生体試料と細胞溶解剤とを混合し、懸濁液を調製する工程と、(B)前記工程(A)において調製された懸濁液を遠心分離処理し、上清を粗核酸溶液として回収する工程と、(C)前記工程(B)において回収された粗核酸溶液から、核酸を回収する工程と、を有し、化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)を接触させる処理を、前記工程(B)の前に、前記工程(A)により調製された懸濁液に対して、前記工程(C)の前に、前記工程(B)において回収された粗核酸溶液に対して、又は前記工程(C)の後に、回収された核酸に対して行うことを特徴とする核酸の回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料から純度の高い核酸を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、定期健診等にも適した、非侵襲的で簡便であり、かつ信頼性の高い新たな検査方法として、糞便等の生体試料中のがん細胞の有無やがん細胞由来遺伝子の有無を調べる検査が注目されている。これらの検査方法は、直接的にがん細胞やがん細胞由来遺伝子の有無を調べるため、信頼性の高い検査法であると期待されている。
【0003】
一方で、生体試料には通常様々な物質が含まれており、PCR(Polymerase Chain Reaction)等の核酸増幅反応に対して阻害作用を有する物質も含まれている。例えば、糞便中に多く含まれている胆汁酸やその塩等は、PCR等の核酸増幅反応に対して阻害作用を有することが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。大人の平均的な排泄糞便量は、約200〜400g/日とされるが、健常人ではその糞便中に200〜650mg/日の胆汁酸が排泄されるという報告がある。すなわち、便1gあたりに換算した場合、健常人で約0.5mg〜3.25mg、患者でその10倍の胆汁酸が含まれることになる。胆汁酸塩によるPCRの阻害効果は、50μg/mL程度の濃度で生じるとの報告もあり、糞便から核酸を抽出し、それをPCR等で増幅する場合は、胆汁酸塩等の核酸増幅反応阻害物質のキャリーオーバーを防止することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ウィルソン(Wilson IG)、アプライド・アンド・エンバイロメンタル・マイクロバイオロジー(APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY)、1997年、第63巻、第3741〜3751ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糞便中には、胆汁酸等の核酸増幅反応阻害物質だけではなく、夾雑物、未消化物や繊維質等の不純物が多く存在し、それらが核酸の回収、増幅、検出の際に悪影響を与える可能性が高い。そこで、細胞画分を分離することなく、糞便から直接RNAを回収する場合には、核酸増幅反応阻害物質のみならず、細胞溶解時に溶出するタンパク質や代謝物等を除去し、これらの不純物のキャリーオーバーを防止することが望ましい。
【0006】
しかしながら、非特許文献1には、糞便から核酸を回収する際の、糞便中の胆汁酸や胆汁酸塩等の核酸増幅反応阻害物質、細胞溶解時に溶出するタンパク質や代謝物、debris等の不純物のキャリーオーバーを防止することについては、一切記載されていない
【0007】
本発明は、糞便等の生体試料から直接核酸を回収する方法であって、生体試料由来の不純物のキャリーオーバーが低減され、純度の高い核酸を回収し得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、糞便等の生体試料を細胞溶解剤で懸濁させた後、得られた懸濁液から不溶性成分を除去し、残りの粗核酸溶液から核酸を回収する方法において、懸濁液からの不溶性成分の除去を遠心分離処理により行い、かつ懸濁液調製から核酸回収までのいずれかの時点において、核酸を含む液性画分(例えば、懸濁液、粗核酸溶液、又は回収された核酸)を化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)に接触させる処理を行うことにより、回収された核酸への不純物のキャリーオーバーを低減させられることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) 生体試料から核酸を回収する方法であって、
(A)生体試料と細胞溶解剤とを混合し、懸濁液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)において調製された懸濁液を遠心分離処理し、上清を粗核酸溶液として回収する工程と、
(C)前記工程(B)において回収された粗核酸溶液から、核酸を回収する工程と、
を有し、
化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)を接触させる処理を、
前記工程(B)の前に、前記工程(A)により調製された懸濁液に対して、
前記工程(C)の前に、前記工程(B)において回収された粗核酸溶液に対して、又は
前記工程(C)の後に、回収された核酸に対して行うことを特徴とする核酸の回収方法、
(2) 前記化学繊維又は天然繊維が、多孔質体を形成していることを特徴とする前記(1)に記載の核酸の回収方法、
(3) 前記化学繊維又は天然繊維の平均孔径が1〜600μmであることを特徴とする前記(2)に記載の核酸の回収方法、
(4) 前記化学繊維又は天然繊維が、不織布であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の核酸の回収方法、
(5) 前記懸濁液が、RNA分解酵素阻害剤を含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の核酸の回収方法、
(6) 前記遠心分離処理の遠心力が、2000×g以上であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の核酸の回収方法、
(7) 前記生体試料が糞便であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の核酸の回収方法、
(8) 生体試料中の核酸を解析する方法であって、
(A)生体試料と細胞溶解剤とを混合し、懸濁液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)において調製された懸濁液を遠心分離処理し、上清を粗核酸溶液として回収する工程と、
(C)前記工程(B)において回収された粗核酸溶液から、核酸を回収する工程と、
(D)前記工程(C)において回収された核酸を解析する工程と、
を有し、
化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)を接触させる処理を、
前記工程(B)の前に、前記工程(A)により調製された懸濁液に対して、
前記工程(C)の前に、前記工程(B)において回収された粗核酸溶液に対して、又は
前記工程(C)の後に、回収された核酸に対して行うことを特徴とする核酸の解析方法、
(9) 前記工程(D)において、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする前記(8)に記載の核酸の解析方法、
(10) 前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカー又は炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする前記(9)に記載の核酸の解析方法、
(11) 前記工程(D)において、前記工程(C)において回収されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、得られたcDNAを用いて、新生物性転化を示すマーカー又は炎症性消化器疾患を示すマーカーを解析することを特徴とする前記(8)又は(9)に記載の核酸の解析方法、
(12) 生体試料から核酸を回収するために用いられるキットであって、
細胞溶解剤と、化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)とを有することを特徴とする、核酸回収用キット、
(13) 前記化学繊維又は天然繊維が不織布であることを特徴とする、前記(12)記載の核酸回収用キット、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の核酸の回収方法により、不純物のキャリーオーバーが少なく、純度の高い核酸を回収することができる。このため、本発明の核酸の回収方法は、特に、糞便等のような比較的夾雑物が多く含有される生体試料からの核酸の回収に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1において、xenoRNA遺伝子の発現量の相対値を算出した結果を示した図である。
【図2】実施例2において、xenoRNA遺伝子の発現量の相対値を算出した結果を示した図である。
【図3】実施例3において、各糞便検体A〜Cから回収されたRNA量を測定した結果を示した図である。
【図4】実施例3において、β2M遺伝子の発現量(蛍光強度の測定値)を算出した結果を示した図である。
【図5】実施例4において、xenoRNA遺伝子の発現量の相対値を算出した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願明細書において、阻害物質とは、核酸を基質とする酵素反応に対して阻害的に作用する物質を意味する。当該酵素反応としては、核酸を基質とする酵素反応であれば特に限定されるものではなく、例えば、逆転写反応や核酸合成反応等の核酸解析において一般的に用いられる酵素反応等が挙げられる。該阻害物質としては、具体的には、胆汁酸、胆汁酸塩等が挙げられる。その他、生体試料中の細胞を溶解させた際に溶出するタンパク質や代謝物、debrisなども、阻害物質に含まれる。
【0013】
ここで、核酸合成反応とは、ポリメラーゼ又はリガーゼによる核酸伸長を伴う反応を意味する。ポリメラーゼによる核酸伸長を伴う反応としては、PCR(polymerase chain reaction)、リアルタイムPCR、SDA(Standard Displacement Amplification)等が挙げられる。リガーゼによる核酸伸長を伴う反応としては、LCR(ligase chain reaction)等が挙げられる。
【0014】
本願明細書において、細胞とは、ヒト由来の細胞等の哺乳細胞のみならず、バクテリア等の細菌も含む。
【0015】
<核酸の回収方法>
本発明の核酸の回収方法(以下、「本発明の回収方法」ということがある。)は、 生体試料から核酸を回収する方法であって、下記工程(A)〜(C)を有し、かつ化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)を接触させる処理を、下記工程(B)の前に、下記工程(A)により調製された懸濁液に対して、下記工程(C)の前に、下記工程(B)において回収された粗核酸溶液に対して、又は下記工程(C)の後に、回収された核酸に対して行うことを特徴とする。
(A)生体試料と細胞溶解剤とを混合し、懸濁液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)において調製された懸濁液を遠心分離処理し、上清を粗核酸溶液として回収する工程と、
(C)前記工程(B)において回収された粗核酸溶液から、核酸を回収する工程。
【0016】
本発明の回収方法に供される生体試料としては、例えば、糞便、尿、血液、骨髄液、リンパ液、喀痰、唾液、精液、胆汁、膵液、腹水、滲出液、羊膜液、腸管洗浄液、肺洗浄液、気管支洗浄液、又は膀胱洗浄液等が挙げられる。その他、培養細胞等の培養物であってもよい。本発明の回収方法に供される生体試料としては、特に、糞便、血液、又は培養細胞等の培養物であることが好ましい。また、生体試料は、生物から採取されたものであれば特に限定されるものではないが、哺乳動物由来のものであることが好ましく、ヒト由来のものであることがより好ましい。例えば、定期健診や診断等のためにヒトから採取された生体試料であることが好ましいが、家畜や野生動物等の生体試料であってもよい。また、採取後一定期間保存されたものであってもよいが、採取直後のものであることが好ましい。生体試料が糞便である場合には、本発明の回収方法に供される糞便は、排泄直後のものであることが好ましいが、排泄後時間を経たものであってもよい。
【0017】
本発明の回収方法に供される生体試料の量は特に限定されるものではなく、生体試料の種類、当該生体試料から回収された核酸の解析方法等を考慮して、適宜決定することができる。例えば糞便の場合には、10mg〜1gであることが好ましい。糞便量があまりに多くなってしまうと、採取作業に手間がかかり、採便容器も大きくなってしまうため、取り扱い性等が低下するおそれがある。逆に糞便量があまりに少量である場合には、糞便中に含まれる大腸剥離細胞等の哺乳細胞数が少なくなりすぎるため、必要な核酸量を回収できず、目的の核酸解析の精度が低下するおそれがある。また、糞便はヘテロジニアスである、つまり、多種多様な成分が不均一に存在しているため、哺乳細胞の局在の影響を避けるために、採糞時には、糞便の広範囲から採取することが好ましい。
【0018】
以下工程ごとに説明する。
まず、工程(A)として、生体試料と細胞溶解剤とを混合し、懸濁液を調製する。生体試料を細胞溶解剤に懸濁させることにより、生体試料中の細胞等の固形成分から核酸を抽出させる。
【0019】
細胞溶解剤としては、細胞内に含まれている核酸を細胞外へ溶出させる作用を有するものであれば、特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知の化合物や組成物の中から適宜選択して用いることができる。細胞溶解剤として用いられる化合物等としては、具体的には、有機溶媒、カオトロピック塩、界面活性剤等の、通常タンパク質の変性剤として用いられている化合物が挙げられる。なお、細胞溶解剤としては、1種類の化合物を添加してもよく、2種類以上の化合物を添加してもよい。
【0020】
細胞溶解剤として用いられる有機溶媒としては、フェノールであることが好ましい。フェノールは中性であってもよく、酸性であってもよい。酸性のフェノールを用いた場合には、DNAよりもRNAを選択的に水層に抽出することができる。
また、細胞溶解剤として用いるフェノールは、フェノール単独で生体試料に添加されてもよく、フェノールによる細胞溶解作用を阻害しないその他の成分も含む、フェノール混合物として生体試料に添加されてもよい。但し、該フェノール混合物は、クロロホルムを含有していないものであることが好ましい。
【0021】
細胞溶解剤として用いられるカオトロピック塩としては、例えば、塩酸グアニジン、グアニジンイソチオシアネート、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、及びトリクロロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
細胞溶解剤として用いられる界面活性剤としては、イオン性界面活性剤であってもよいが、非イオン性界面活性剤であることが好ましい。該非イオン性界面活性剤として、例えば、Tween80、CHAPS(3−[3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、Triton X−100、Tween20等がある。
【0023】
生体試料が尿等の液分量の多いものである場合や、細胞溶解剤がフェノール等の液体である場合には、生体試料に直接細胞溶解剤を添加することにより、懸濁液を調製することができる。一方、固形分の多い生体試料と固形の細胞溶解剤とを混合させる場合、細胞溶解剤を予め適当なバッファーに溶解させて細胞溶解剤溶液を調製し、この細胞溶解剤溶液と生体試料とを混合することにより、懸濁液を調製することができる。細胞溶解剤を溶解させるバッファーとしては、例えば、PBS等のリン酸バッファーやトリスバッファー、クエン酸バッファー等を用いることができる。
【0024】
さらに、工程(A)において調製する懸濁液には、生体試料由来の核酸の保存安定性を向上させるために、RNA分解酵素阻害剤等の核酸の分解抑制剤等を含ませてもよい。RNA分解酵素阻害剤としては、例えば、EDTA等のキレート剤、カオトロピック塩等が挙げられる。
その他、工程(A)において調製する懸濁液には、適宜着色剤を添加してもよい。懸濁液に着色剤を添加することにより、誤飲防止、生体試料の色が緩和される等の効果が得られる。該着色剤としては、食品添加物として使用される着色料であることが好ましく、青色や緑色等が好ましい。例えば、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)等が挙げられる。また、複数の着色剤を混合して添加してもよく、単独で添加しても良い。
【0025】
糞便等の固形成分の多い生体試料である場合には、採取された生体試料と混合させる細胞溶解剤溶液又は細胞溶解剤(以下、単に細胞溶解剤溶液という。)の容量は、特に限定されるものではないが、生体試料と細胞溶解剤溶液との混合比率は、生体試料容量1に対して細胞溶解剤溶液容量が1以上であることが好ましい。生体試料と等量以上の細胞溶解剤溶液を用いることにより、生体試料と細胞溶解剤とを速やかに混合させることができ、生体試料に細胞溶解剤を十分に作用させることが可能となるためである。特に、生体試料に対して、5倍以上の容量の細胞溶解剤溶液を混合させることにより、細胞溶解剤溶液中への生体試料の分散を迅速かつ効果的に行うことができ、さらに、生体試料に含有されている水分による細胞溶解剤濃度の低下の影響を抑えることもできる。一方、生体試料と細胞溶解剤溶液との混合物の総量は比較的少量であるほうが、取り扱いが容易となって好ましい場合も多い。例えば、糞便を用いる場合には、予め細胞溶解剤溶液を備えた採便容器に糞便を採取し、当該容器内で混合物を調製することができるが、この場合に、例えば、糞便と細胞溶解剤溶液が等量である場合には、細胞溶解剤溶液入り採便容器の軽量化・小型化が可能となる。このように、生体試料及び得られる懸濁液の取り扱い性と、生体試料の細胞溶解剤溶液への分散性とを、バランス良く向上させることが可能となるため、生体試料が糞便である場合には、生体試料と細胞溶解剤溶液の混合比率が、1:1〜1:20であることがより好ましく、1:3〜1:10であることがさらに好ましく1:5程度であることがより好ましい。
【0026】
生体試料と細胞溶解剤溶液とを混合させて得られる懸濁液中の細胞溶解剤の濃度は、生体試料中の固形成分から核酸を溶出させることができる濃度(核酸溶出効果が奏される濃度)であれば、特に限定されるものではなく、生体試料量やその後の核酸回収・解析方法等を考慮して、適宜決定することができる。
【0027】
生体試料と細胞溶解剤溶液を混合し懸濁液を調製する方法は、物理的手法により混合する方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、予め細胞溶解剤溶液を入れておいた密閉可能な容器に、採取された生体試料を投入して密閉した後、該容器を上下に転倒させることにより、混合してもよく、該容器をボルテックス等の振とう機にかけることにより混合してもよい。また、生体試料と細胞溶解剤溶液を、混合用粒子の存在下で混合してもよい。速やかに混合させることができるため、振とう機を用いる方法や、混合用粒子を用いる方法であることが好ましい。特に、予め混合用粒子を含有させた採取用容器を用いることにより、家庭等の特殊な装置のない環境においても迅速に混合することができる。
【0028】
混合用粒子としては、細胞溶解剤溶液による核酸溶出効果を損なわない組成物であって、糞便等の生体試料にぶつかることにより、細胞溶解剤による生体試料中の細胞の溶解を促進させ得る硬度や比重を有し、かつ、溶出された核酸に対する親和性が十分に低い粒子であれば、特に限定されるものではなく、1種類の材質からなる粒子であってもよく、2種類以上の材質からなる粒子であってもよい。このような混合用粒子として、例えば、プラスチック、ラテックス、金属等からなる粒子がある。その他、混合用粒子は、磁性粒子であってもよく、非磁性粒子であってもよい。
【0029】
次いで、工程(B)として、工程(A)において調製された懸濁液を遠心分離処理し、上清を粗核酸溶液として回収する。生体試料の多くは水分含有量が高いため、細胞溶解剤としてフェノール等の有機溶媒を用いた場合には、遠心分離処理により、当該懸濁液は下層の有機溶媒層と上層の水層とに分かれる。この場合には、上層の水層を上清として回収する。
【0030】
遠心分離処理の条件は、当該懸濁液中の不溶性の固形成分を、水性の液体成分から分離可能な条件であれば、特に限定されるものではなく、生体試料や細胞溶解剤の種類や量等を考慮して適宜調整することができる。例えば、遠心分離処理は室温で行ってもよく、4℃等の低温環境下で行ってもよい。また、例えば、細胞溶解剤としてフェノールを用いた場合には、遠心力が2000×g以上であれば、充分にフェノール層と不溶性の固形分層と水層とに分離させることができる。なお、遠心力の上限値は特に限定されるものではないが、過度に大きくないことが好ましい。例えば、12000×g以下であれば、大型の遠心分離装置を必要としないため、本発明の回収方法の全行程を自動で実行可能な装置が容易に実現可能となる。
【0031】
本発明においては、生体試料を細胞溶解剤で処理することによって、当該生体試料中に含まれている細胞等から核酸を溶液中へ抽出した後、遠心分離処理によって、水に不溶性の生体成分を除去する。得られた上清を粗核酸溶液とし、この粗核酸溶液から核酸を回収することによって、生体試料由来の阻害物質のキャリーオーバーを顕著に低減させることができる。このため、本発明の回収方法によって生体試料から回収された核酸を解析に用いることにより、阻害物質の影響が低減され、信頼性の高い解析結果を得ることができる。
【0032】
なお、従来から、生体試料にフェノールを添加して混合した後、クロロホルムをさらに追加して混合した後に遠心分離処理して上清を回収し、得られた上清から核酸を回収することが行われている。これに対して、本発明の回収方法において細胞溶解剤としてフェノールを用い、かつ工程(B)の後工程(C)の前に、粗精製処理としてクロロホルム処理を行った場合には、フェノールを添加して得た混合物に対して遠心分離処理を行い、得られた上清にクロロホルムを添加して上清を得、該上清から核酸を回収する。このように、クロロホルム添加前に予め遠心分離処理を行うことにより、従来法よりも顕著に阻害物質のキャリーオーバーが低減できる理由は明らかではないが、2度に分けて遠心分離処理することにより、阻害物質のみならず、細胞溶解時に溶出するタンパク質や代謝物等の不純物を効率よく沈殿除去させることができるためではないかと推察される。その他、フェノール処理後に遠心分離処理によって、不溶性物質とともにフェノールに対する溶解性の高い阻害物質を効果的に抽出除去することができ、その後にさらにクロロホルム処理を行うことによって、クロロホルムへの溶解性の高い阻害物質を効果的に抽出除去することができるためではないかとも推察される。
【0033】
その後、さらに工程(C)として、工程(B)において回収された粗核酸溶液から、核酸を回収する。核酸回収方法は特に限定されるものではなく、エタノール沈殿法や塩化セシウム超遠心法等の公知の手法で行うことができる。例えば、当該粗核酸溶液に無機支持体を添加し、溶出させた核酸を無機支持体に吸着させた後、当該無機支持体から核酸を溶出させることにより、核酸を回収することができる。核酸を吸着させる無機支持体は、核酸を吸着することができる公知の無機支持体を用いることができる。また、該無機支持体の形状も特に限定されるものではなく、粒子状であってもよく、膜状であってもよい。該無機支持体として、例えば、シリカゲル、シリカ質オキシド、ガラス、珪藻土等のシリカ含有粒子(ビーズ)等が挙げられる。吸着させた核酸を無機支持体から溶出させる溶媒は、回収する核酸の種類やその後の核酸解析方法等を考慮して、これらの公知の無機支持体から核酸を溶出するために通常用いられている溶媒を適宜用いることができる。該溶出用溶媒として、特に精製水であることが好ましい。なお、核酸を溶出する前に、核酸を吸着させた無機支持体を適当な洗浄バッファーを用いて洗浄することが好ましい。
【0034】
本発明においては、工程(B)の後のいずれかの時点において、核酸を含む液性画分を化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)に接触させる。遠心分離処理に加えて、阻害物質等の不純物を当該繊維に接触させて吸着させることにより、該液性画分中から不純物が除去される結果、該試料から回収された核酸に対する不純物のキャリーオーバーをより低減させ、さらに純度の高い核酸を回収することができる。
【0035】
該核酸を含む液性画分は、具体的には、工程(A)により調製された懸濁液、工程(B)において回収された粗核酸溶液、工程(C)において回収された核酸を含む溶液等が挙げられる。すなわち、本発明においては、工程(B)の前に、工程(A)により調製された懸濁液に、化学繊維等を接触させるか、工程(C)の前に、工程(B)において回収された粗核酸溶液に、化学繊維等を接触させるか、又は工程(C)の後に、回収された核酸に、化学繊維等を接触させた後、繊維と核酸を分離する。
【0036】
本発明の回収方法において用いられる繊維としては、シリカ化合物繊維以外の繊維であって、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、レーヨン、アクリル、ビニロン等が挙げられる。本発明の回収方法において用いられる天然繊維としては、セルロース、綿繊維、パルプ、炭素繊維等が挙げられる。なお、核酸を含む液性画分に接触させる繊維は、1種類の繊維のみであってもよく、2種類以上の繊維を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
核酸を含む液性画分に接触させる繊維の形態は、平均孔径が所定の範囲内にある多孔質体であれば特に限定されるものではなく、布やメンブレン、フィルタ等のシート状であってもよく、中空糸であってもよく、ビーズ(粒子)であってもよい。布は、織物であってもよく、不織布であってもよい。本発明においては、多種多様の不純物を効率よく吸着し得ることから、不織布であることが好ましい。
【0038】
繊維の孔径は、胆汁酸及びその塩等の阻害物質、細胞を溶解させた際に溶出するタンパク質や代謝物、debris等を吸着し得る程度の大きさである。繊維の平均孔径があまりに小さすぎる場合には、核酸を含む液性画分が繊維へ浸透し難く、このため、阻害物質の吸着除去が不十分となるおそれがある。一方で、繊維の平均孔径があまりに大きすぎる場合には、核酸を含む液性画分が接触する単位面積当たりの繊維量が少なく、阻害物質の吸着除去効率が低くなるおそれがある。繊維の平均孔径が1〜600μmであれば、核酸を含む液性画分の浸透性が高く、阻害物質等の吸着除去を効率よく行うことができる。本発明において用いられる繊維の平均孔径としては、5〜600μmであることが好ましく、10〜600μmであることがより好ましく、100〜600μmであることがさらに好ましい。本発明においては、中でも、1〜600μmの孔径を備える繊維であることが好ましく、1〜600μmの孔径を備える不織布であることが特に好ましい。
【0039】
本発明及び本願明細書において、不織布とは、短繊維又はフィラメントを、機械的、熱的、化学的な手段を用いて、接着又は交絡させて作るシート状又はウェブ構造のものである(「第2版 繊維便覧」、繊維学会編、丸善株式会社発行)。不織布は様々な方法で生産されるが、基本的な工程は、ウェブ(繊維の方向がある程度揃った繊維塊のシート状のもの)の形成工程、ウェブの接着工程、それに仕上げ工程である。不織布には、天然繊維から化学繊維まで種々の繊維が用いられているが、一般的に用いられているのは綿、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンで、その他アクリル、ビニロン、ガラスなどのシリカ化合物繊維、パルプ、炭素繊維なども使用される。ウェブを形成する方式は、湿式、乾式および直接式に大別される。直説法は紡糸直結式ともいわれる方法で、溶融高分子溶液から紡糸された繊維を集めて直接ウェブとする工程である。これに含まれる方法は、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法などがあり、本発明では、どの方法から得られた不織布を用いてもよい。
【0040】
本発明において、核酸を含む液性画分と繊維を接触させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、核酸を含む液性画分の液面に繊維を浮遊させてもよく、核酸を含む液性画分の溶液中に繊維を浸漬させてもよく、不織布等のシート状繊維の表面に核酸を含む液性画分を流し、フロースルーさせてもよく、核酸を含む液性画分を不織布フィルタに透過させたり、ろ紙でろ過してもよい。その他、核酸を含む液性画分を、内部に繊維を充填したチップに通してもよく、表面を繊維で被覆したチップに、核酸を含む液性画分を流してもよい。核酸を含む液性画分を、不織布フィルタやろ紙、チップ等に透過させた場合、得られた透過液や濾過液が、化学繊維等に接触させた後の核酸を含む液性画分である。
また、核酸を含む液性画分に接触させた化学繊維等は、その後、除去される。例えば、核酸を含む液性画分に不織布の断片等の繊維片を投入した後、遠心分離処理を行い、該繊維片を沈殿除去させ、得られた上清を化学繊維等に接触させた後の核酸を含む液性画分とすることができる。その他、核酸を含む液性画分の液面に、不織布を浮遊させた後、該不織布を溶液から分離して回収してもよい。
【0041】
核酸を含む液性画分が、工程(B)において回収された粗核酸溶液であって、工程(B)の後工程(C)の前に、粗精製処理としてクロロホルム処理を行い、かつ化学繊維等が繊維片等である場合、該粗核酸溶液にまず繊維片等を投入したものを、クロロホルム処理に供することができる。クロロホルム混合後の遠心分離処理により、その他の不溶性物質とともに繊維片も分離除去される。
【0042】
本発明の回収方法により回収された核酸は、他の手法により回収された核酸と同様に、公知の核酸解析方法を用いて解析することができる。特に、早期発見の要請の強い、がんの発症や感染症の罹患の有無を調べるための核酸解析に供されることが好ましい。また、当該回収された核酸から、感染症等の原因である病原菌由来の核酸、例えばウィルス由来の核酸や寄生虫由来の核酸、細菌由来の核酸等が検出されるかどうかを調べることにより、当該生体試料が採取された生物個体について、感染症の罹患の有無や寄生虫の存在の有無を調べることができる。
【0043】
生体試料として糞便を用いた場合には、回収された核酸は、大腸、小腸、胃等の消化管細胞由来の核酸の解析に供されることが好ましく、大腸剥離細胞由来の核酸の解析に供されることが特に好ましい。例えば、本発明の回収方法により回収された核酸は、大腸がんや大腸腺腫の発症の有無や、大腸炎、小腸炎、胃炎、膵炎等の炎症性疾患の発症の有無を調べるための核酸解析に供することができる。その他、ポリープ等の隆起性病変の検査や胃潰瘍等の大腸、小腸、胃、肝臓、胆嚢、胆管の疾患の検査に供されてもよい。
【0044】
<核酸回収用キット>
細胞溶解剤と繊維とをキット化することにより、本発明の回収方法をより簡便に行うことができる。本発明においては、繊維として不織布を備えたキットであることが好ましく、ポリプロピレンやポリエチレンからなる不織布であることがより好ましい。また、この核酸回収用キットには、細胞溶解剤と繊維の他にも、本発明の回収方法に用いられる他の試薬を備えていてもよい。例えば、細胞溶解剤を希釈・溶解させるためのバッファー、タンパク質除去に使用されるクロロホルム、懸濁液や粗核酸溶液から核酸を回収するための試薬等が挙げられる。また、細胞溶解剤を用いる核酸抽出キット等の市販のキットに、繊維を加えることにより、本発明の核酸回収用キットとすることもできる。
【0045】
<核酸の解析方法>
本発明の核酸の解析方法(以下、「本発明の解析方法」ということがある。)は、本発明の回収方法により回収された核酸を解析することを特徴とする。具体的には、前記工程(A)〜(C)の後、工程(D)として、工程(C)において回収された核酸を解析する工程を行う。
【0046】
工程(D)において核酸を解析する方法は、特に限定されるものではなく、解析対象の核酸の種類、解析の目的等を考慮して、公知の解析方法の中から適宜選択して用いることができる。該解析方法としては、例えば、核酸を定量する方法や、PCR等を用いて特定の塩基配列領域を検出する方法等がある。その他、RNAを回収した場合には、逆転写反応によりcDNAを合成した後、該cDNAを用いて、DNAと同様にして解析に用いることができる。生体試料から回収された核酸のうち、DNAを用いた場合には、例えば、DNA上の変異解析やエピジェネティック変化解析を行うことができる。変異解析としては、例えば、塩基の挿入、欠失、置換、重複、又は逆位の解析等が挙げられる。エピジェネティック変化解析としては、例えば、メチル化や脱メチル化の解析等が挙げられる。また、マイクロサテライトを含む塩基配列領域等の遺伝的変異の有無を検出することにより、がんの発症の有無を調べることができる。一方、生体試料から回収された核酸のうち、RNAを用いた場合には、例えば、RNA上の塩基の挿入、欠失、置換、重複、逆位、又はスプライシングバリアント(アイソフォーム)等の変異を検出することができる。その他、機能性RNA(ノンコーディングRNA)解析、例えば、転移RNA(transfer RNA、tRNA)、リボソームRNA(ribosomalRNA、rRNA)、microRNA(miRNA、マイクロRNA)等の解析を行うことができる。また、RNA発現量を検出し解析することもできる。特に、mRNAの発現解析、K−ras遺伝子の変異解析、及びDNAのメチル化の解析等を行うことが好ましい。なお、これらの解析は、当該分野において公知の方法により行うことができる。また、K−ras遺伝子変異解析キット、メチル化検出キット等の市販の解析キットを用いてもよい。
【0047】
本発明の解析方法では、目的に応じて、生体試料中に含まれているいずれの生物種由来の核酸を検出してもよいが、哺乳細胞由来の核酸を検出し解析することが好ましい。また、生体試料として糞便を用いた場合には、当該糞便を排泄した哺乳動物の消化管細胞や大腸剥離細胞由来の核酸を検出し解析することが好ましい。
【0048】
特に、新生物性転化を示すマーカーや炎症性消化器疾患を示すマーカーを検出するための解析に供されることが好ましい。該新生物性転化を示すマーカーとして、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、シアリルTn抗原(STN)等の公知のがんマーカーや、APC遺伝子、p53遺伝子、K−ras遺伝子等の変異の有無等がある。また、p16、hMLHI、MGMT、p14、APC、E−cadherin、ESR1、SFRP2等の遺伝子のメチル化の検出も、大腸疾患の診断マーカーとして有用である(例えば、Lind et al.、「A CpG island hypermethylation profile of primary colorectal carcinomas and colon cancer cell lines」、Molecular Cancer、2004年、第3巻第28章参照。)。その他、糞便試料中のヘリコバクターピロリ菌由来のDNAが、胃がんマーカーとして用いられ得ることが既に報告されている(例えばNilsson et al.、Journal of Clinical Microbiology、2004年、第42巻第8号、第3781〜8ページ参照。)。一方、炎症性消化器疾患を示すマーカーとして、例えば、Cox−2遺伝子由来核酸等がある。
【実施例】
【0049】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例1]
2名の健常人(A、B)から糞便を採取後、可及的速やかに各12本の15mLチューブに約0.5gずつ分取し、液体窒素を用いて瞬間凍結させ、−80℃で保存した。各健常人から採取された糞便のうち、各3本の15mLチューブに含まれている糞便から下記回収法1〜4によりRNA溶液を調製した。
なお、細胞溶解剤としてフェノール混合物を、不織布フィルタとしてフィルタ付きサニスペックテストバック(アズワン社製)を、それぞれ用いた。該フィルタ付きサニスペックテストバックを透過させたろ液は、通常、細菌・細胞検査に用いられる。
【0051】
回収法1(遠心分離処理無し、かつ不織布フィルタ処理無しの場合):
凍結便に対して、フェノール混合物「Trizol」(Invitrogen社製)を添加し、十分に溶解した後、クロロホルムを添加しボルテックスを用いて十分に混合した。その後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)から、エタノール沈澱法によりRNAを回収した。具体的には、酢酸ナトリウムと100%エタノールを添加して撹拌した後、遠心分離処理を行い、沈澱を得た。得られた沈殿を洗浄して、風乾させた後、DEPC処理をした水に溶解させることにより、RNA溶液を得た。
【0052】
回収法2(遠心分離処理あり、かつ不織布フィルタ処理無しの場合):
凍結便に対して、フェノール混合物「Trizol」(Invitrogen社製)を添加し、十分に溶解した後、12,000×g、4℃で5分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)に、クロロホルムを添加しボルテックスを用いて十分に混合した。その後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)から、エタノール沈澱法によりRNAを回収した。エタノール沈澱法は、回収法1と同様にして行った。
【0053】
回収法3(遠心分離処理無し、かつ不織布フィルタ処理ありの場合):
凍結便に対して、フェノール混合物「Trizol」(Invitrogen社製)を添加し、十分に溶解させて、懸濁液を調製した。この懸濁液を、フィルタ付きサニスペックテストバック(アズワン社製)に入れ、不織布フィルタを通し、得られたろ液を15mLチューブに回収した。さらに、クロロホルムを添加して、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)から、エタノール沈澱法によりRNAを回収した。エタノール沈澱法は、回収法1と同様にして行った。
【0054】
回収法4(遠心分離処理あり、かつ不織布フィルタ処理ありの場合):
凍結便に対して、フェノール混合物「Trizol」(Invitrogen社製)を添加し、十分に溶解した後、12,000×g、4℃で5分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)を、フィルタ付きサニスペックテストバック(アズワン社製)に入れ、不織布フィルタを通し、得られたろ液を15mLチューブに回収した。該ろ液にクロロホルムを添加して、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)から、エタノール沈澱法によりRNAを回収した。エタノール沈澱法は、回収法1と同様にして行った。
【0055】
回収されたRNA中のxenoRNAを解析した。
具体的には、まず、一反応系につき、糞便から回収されたRNA溶液4.0μL又は1.0μL、及びxenoRNA1μLを加え、逆転写反応を行い、cDNAを得た。対照として、xenoRNA1μLのみを加えて逆転写反応を行った。
次いで、xenoRNA Taqmanプローブを用いて、Taqman PCRを行って増幅し、得られた増幅産物を検出した。リアルタイムPCRのプライマーは、アプライドバイオシステム社製のcell−to−PCR コントロールキット付属のプローブ(Cat:#4386995)を用いた。具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、各cDNAを1μLずつ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのプローブをそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、95℃で10分間処理した後、95℃で1分間、56.5℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行った後、さらに72℃で7分間処理することにより、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。
【0056】
蛍光強度の計測結果を分析して、xenoRNA単独の発現量(コピー数)を1とした時のxenoRNAの発現量の相対値を、表1及び図1に示す。表中、「遠心分離(−)、不織布フィルタ(−)」は回収法1により回収されたRNA溶液を用いた結果を、「遠心分離(+)、不織布フィルタ(−)」は回収法2により回収されたRNA溶液を用いた結果を、「遠心分離(−)、不織布フィルタ(+)」は回収法3により回収されたRNA溶液を用いた結果を、「遠心分離(+)、不織布フィルタ(+)」は回収法4により回収されたRNA溶液を用いた結果を、それぞれ示す。「コントロール」は、大腸菌由来のRNAを添加していない場合の結果を示す。また、「RT鋳型」の欄には、逆転写反応に鋳型として添加したRNAを示している。
【0057】
【表1】

【0058】
健常人Bから採取された糞便から回収されたRNAでは、逆転写反応及びその後に続くPCR反応に添加するRNA溶液の量や、遠心分離処理や不織布フィルタの有無に関わらず、xenoRNAの発現量に大きな差はなかった。一方で、健常人Aから採取された糞便から回収されたRNAでは、遠心分離を用いた回収法2、不織布フィルタを用いた回収法3、及び遠心分離と不織布フィルタと用いた回収法4によって回収されたRNAでは、逆転写反応に添加したRNA溶液量に関わらず同程度のxenoRNAの発現量が観察された。これに対して、遠心分離処理及び不織布フィルタのいずれも用いなかった回収法1によって回収されたRNAでは、回収法2〜4によって回収されたRNAよりもxenoRNAの発現量が顕著に低く、特に、逆転写反応に4μLのRNA溶液を添加した場合には、xenoRNAの発現量はほとんどなかった。
【0059】
いずれのサンプルも等量のxenoRNAが含まれていたが、糞便A由来のRNAを添加した場合には、回収方法や添加されたRNA量によってxenoRNAの発現量が大きく相違していた。これは、各反応液中に持ち込まれた糞便由来の阻害物質の量等が異なるためと推察される。ここで、xenoRNAの発現量が少ないほど、糞便由来の阻害物質による阻害作用が大きいといえる。すなわち、これらの結果から、懸濁液を遠心分離処理すること、該遠心分離処理後の上清を不織布に接触させること、及び懸濁液を不織布に接触させることにより、阻害物質のキャリーオーバーの少ない純度の高い核酸を回収し得ることが明らかである。中でも、回収法2又は3により回収されたRNAを添加した場合よりも、回収法4により回収されたRNAを添加した場合のほうが、xenoRNAの発現量が高いという結果が得られたことから、遠心分離処理と不織布フィルタ処理を組み合わせることにより、非常に高い阻害物質除去効果が得られることがわかった。また、回収法や添加したRNA量の影響がほとんど観察されなかった健常人Bから採取された糞便は阻害物質等の不純物が比較的少なく、健常人Aから採取された糞便は比較的多く含まれていたと推察される。
【0060】
[実施例2]
糞便から単離・培養された細菌群を生体試料として、本発明の回収方法によって核酸を回収した。
まず、健常人1名から採取された糞便を生理食塩水で懸濁し、その懸濁液の一部を平板培地で分離培養し、細菌群を得た。この細菌群を液体培地で培養し、得られた培養液を10mLずつ12本の15mLチューブに入れ、遠心分離処理後、上清を捨てて、ペレット化した細菌のみを液体窒素で凍結させ、−80℃で保存した。実施例1の回収法1〜4により、15mLチューブのうちの各3本に含まれている細菌の培養物から、RNA溶液を調製した。
回収されたRNA中のxenoRNAを解析した。具体的には、実施例1と同様にして、一反応系につき、糞便から回収されたRNA溶液4.0μL又は1.0μL、及びxenoRNA1μLを加えて逆転写反応を行い、得られたcDNAを鋳型として、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。
【0061】
蛍光強度の計測結果を分析して、xenoRNA単独の発現量(コピー数)を1とした時のxenoRNAの発現量の相対値を、表2及び図2に示す。表中、「遠心分離(−)、不織布フィルタ(−)」等は、表1と同じである。
この結果、実施例1の場合と同様に、懸濁液を遠心分離処理後、得られた上清(水層)に不織布に接触させた場合のほうが、遠心分離処理や不織布フィルタ処理をそれぞれ単独で行った場合よりも、阻害物質のキャリーオーバーの少ない純度の高い核酸を回収し得ることが分かった。
【0062】
【表2】

【0063】
[実施例3]
本発明の回収方法において、生体試料と細胞溶解剤とから調製された懸濁液を遠心分離処理する際の、遠心力の影響を観察した。
まず、健常人3名から採取された糞便を、各1人につき約0.5gずつ6本の15mLチューブに分取し、液体窒素を用いて瞬間凍結させ、−80℃で保存した。次いで、各15mLチューブに入っている凍結便に対して、それぞれフェノール混合物「Trizol」(Invitrogen社製)を添加し、十分に溶解させて、懸濁液を調製した。
6本の15mLチューブのうち3本に対して、2000×g、4℃で5分間遠心分離を行った。残りの3本に対しては12000×g、4℃で5分間遠心分離を行った。その後、クロロホルムを添加して、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000g、4℃で20分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)から、エタノール沈澱法によりRNAを回収した。エタノール沈澱法は、回収法1と同様にして行った。回収された各RNAの濃度を測定した。測定結果を表3及び図3に示す。
【0064】
回収されたRNA中のβ2M遺伝子発現量を解析した。
具体的には、まず、一反応系につき、糞便から回収されたRNA溶液1.0μLを加え、逆転写反応を行い、cDNAを得た。
次いで、β2M Taqmanプローブを用いて、Taqman PCRを行って増幅し、得られた増幅産物を検出した。リアルタイムPCRのプライマーは、アプライドバイオシステム社製のβ2MプライマープローブMIX(カタログNo.4326319E)を用いた。具体的には、0.2mLの96ウェルPCRプレートに、各cDNAを4μLずつ分取した。その後、各ウェルに8μLの超純水と10μLの核酸増幅試薬「TaqMan GeneExpression Master Mix」(アプライドバイオシステム社製)を添加し、さらに、1μLのプローブをそれぞれ添加して混合し、PCR反応溶液を調製した。該PCRプレートを、ABIリアルタイムPCR装置に設置し、95℃で10分間処理した後、95℃で1分間、56.5℃で1分間、72℃で1分間の熱サイクルを40サイクル行った後、さらに72℃で7分間処理することにより、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。β2M遺伝子の発現量(蛍光強度の測定値)を、表3及び図4に示す。
【0065】
この結果、糞便検体と細胞溶解剤を混合し、調製された懸濁液を12000×g、又は2000×gで遠心分離処理を行った結果、各糞便検体において、RNA濃度、β2M遺伝子発現量はともに大きな違いが見られなかった。
【0066】
【表3】

【0067】
[実施例4]
本発明の回収方法において、核酸を含む液性画分に接触させる繊維の種類による影響を観察した。
まず、健常人1名から採取された糞便を、約0.5gずつ33本の15mLチューブに分取し、液体窒素を用いて瞬間凍結させ、−80℃で保存した。
次いで、33本の15mLチューブに入っている凍結便に対して、それぞれフェノール混合物「Trizol」(Invitrogen社製)を添加し、十分に溶解させて、懸濁液を調製した。33本の15mLチューブのうち3本ずつに対して、各チューブに入っている懸濁液に、それぞれ表4に記載の繊維からなる担体を入れ、30秒間ボルテックスを行った。その後、クロロホルムを添加して、ボルテックスを用いて十分に混合した後、12,000×g、4℃で20分間遠心分離を行った。該遠心分離処理により得られた上清(水相)から、エタノール沈澱法によりRNAを回収した。具体的には、酢酸ナトリウムと100%エタノールを添加して撹拌した後、遠心分離処理を行い、沈澱を得た。得られた沈殿を洗浄して、風乾させた後、DEPC処理をした水に溶解させることにより、RNA溶液を得た。
また、残る3本の15mLチューブに入っている懸濁液から、実施例1の回収法1(遠心分離処理と不織布フィルタ処理のいずれも用いない場合)によりRNA溶液を調製した。
【0068】
【表4】

【0069】
回収されたRNA中のxenoRNAを解析した。
具体的には、まず、一反応系につき、糞便から回収されたRNA溶液4.0μL又は1.0μL、及びxenoRNA1μLを加え、逆転写反応を行い、cDNAを得た。対照として、xenoRNA1μLのみを加えて逆転写反応を行った。
次いで、得られたcDNAを鋳型として、実施例1と同様にして、経時的に蛍光強度を計測しながらPCRを行った。
【0070】
【表5】

【0071】
蛍光強度の計測結果を分析して、xenoRNA単独の発現量(コピー数)を1とした時のxenoRNAの発現量の相対値を、表5及び図5に示す。表5中、「コントロール1」は、実施例1の回収法1により回収されたRNAをRTの鋳型として用いた場合の結果であり、「コントロール2」は、xenoRNA1μLのみをRTの鋳型として用いた場合の結果である。
この結果、シリカやガラス等のシリカ化合物繊維を用いた場合(繊維1、2及び10)は、RT鋳型として、便から回収されたRNA溶液を1μL用いた場合と4μL用いた場合とでxenoRNA発現量の差が大きく、阻害物質のキャリーオーバーが多かった。
これに対して、繊維5を除き、その他の化学繊維を用いた場合には、繊維の形態に関わらず、RT鋳型として、便から回収されたRNA溶液を1μL用いた場合と4μL用いた場合とでxenoRNA発現量の差が小さく、阻害物質のキャリーオーバーが抑えられていることが分かった。
【0072】
セルロース繊維からなるろ紙を用いた場合(繊維5)には、繊維1等のシリカ化合物繊維の場合よりは若干良いものの、同じくセルロース繊維からなる不織布を用いた場合(繊維9)とは異なり、便から回収されたRNA溶液を1μL用いた場合と4μL用いた場合とでxenoRNA発現量の差が大きく、阻害物質のキャリーオーバーによる影響が観察された。これは、ろ紙と不織布の形状の差、特に孔径の差によるものと推察される。ろ紙の孔径は0.45μm程度であり、不織布に比べて小さい。このため、不織布には懸濁液が十分に浸透し、阻害物質等が不織布に吸着されやすいが、孔径が小さいろ紙には懸濁液が浸透し難く、阻害物質等の吸着が不十分になり易いためと推察される。
【0073】
[実施例5]
96名の健常人から糞便を採取後、可及的速やかに各4本の15mLチューブに約0.5gずつ分取し、液体窒素を用いて瞬間凍結させ、−80℃で保存した。各健常人から採取された15mLチューブに含まれている糞便を、それぞれ1本ずつ、実施例1の回収法1〜4によりRNA溶液を調製した。
次いで、回収されたRNA中のβ2M遺伝子発現量を解析した。具体的には、実施例3と同様にして、糞便から回収されたRNA溶液からcDNAを得、該cDNAを鋳型としてβ2M Taqmanプローブを用いてTaqman PCRを行って増幅し、得られた増幅産物を検出した。蛍光強度の計測結果を分析して、β2M遺伝子の発現量(蛍光強度の測定値)を、表6〜8に示す。また、各検体において最もβ2M遺伝子の発現量が高かった回収方法の結果(蛍光強度)の左に、「○」を付した。各表中の「遠心分離(−)、不織布フィルタ(−)」等は、表1と同じである。
【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
【表8】

【0077】
この結果、96検体中2検体は、含まれている細胞量が少なかったためか、どの回収法でも発現量が低い値を示した。特に不織布フィルタ処理を単独で行った場合(回収法3)では、発現量は検出限界未満だった(表中、「UND」)。
また遠心分離処理後、不織布フィルタ処理にかけた結果(回収法4)、遠心分離処理、不織布フィルタ処理を共に行わない場合(回収法1)、またどちらか単独で行う場合(回収法2又は3)に比べ、96検体中64検体(67%)が高い発現量を示したことから、両処理を併用する方法が、阻害物質除去効果が最も高いことが明らかになった。また、遠心分離処理のみの場合に一番高発現が見られたのが15検体(16%)、不職布フィルタ処理のみの場合に一番高発現が見られたのが14検体(15%)であり、合計で31%あった。また、両処理を併用した回収法4の場合に、その他の方法の場合よりも極端に発現量が低くなった検体はなかった。
これらの結果から、遠心分離処理と不職布フィルタ処理とを併用することにより、より多くの生体試料に対して、高い阻害物質除去効果が得られることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の回収方法により、糞便等の生体試料から、純度の高い核酸を回収することができるため、特に生体試料を用いた定期健診等の臨床検査等の分野において利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料から核酸を回収する方法であって、
(A)生体試料と細胞溶解剤とを混合し、懸濁液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)において調製された懸濁液を遠心分離処理し、上清を粗核酸溶液として回収する工程と、
(C)前記工程(B)において回収された粗核酸溶液から、核酸を回収する工程と、
を有し、
化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)を接触させる処理を、
前記工程(B)の前に、前記工程(A)により調製された懸濁液に対して、
前記工程(C)の前に、前記工程(B)において回収された粗核酸溶液に対して、又は
前記工程(C)の後に、回収された核酸に対して行うことを特徴とする核酸の回収方法。
【請求項2】
前記化学繊維又は天然繊維が、多孔質体を形成していることを特徴とする請求項1に記載の核酸の回収方法。
【請求項3】
前記化学繊維又は天然繊維の平均孔径が1〜600μmであることを特徴とする請求項2に記載の核酸の回収方法。
【請求項4】
前記化学繊維又は天然繊維が、不織布であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
【請求項5】
前記懸濁液が、RNA分解酵素阻害剤を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
【請求項6】
前記遠心分離処理の遠心力が、2000×g以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
【請求項7】
前記生体試料が糞便であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸の回収方法。
【請求項8】
生体試料中の核酸を解析する方法であって、
(A)生体試料と細胞溶解剤とを混合し、懸濁液を調製する工程と、
(B)前記工程(A)において調製された懸濁液を遠心分離処理し、上清を粗核酸溶液として回収する工程と、
(C)前記工程(B)において回収された粗核酸溶液から、核酸を回収する工程と、
(D)前記工程(C)において回収された核酸を解析する工程と、
を有し、
化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)を接触させる処理を、
前記工程(B)の前に、前記工程(A)により調製された懸濁液に対して、
前記工程(C)の前に、前記工程(B)において回収された粗核酸溶液に対して、又は
前記工程(C)の後に、回収された核酸に対して行うことを特徴とする核酸の解析方法。
【請求項9】
前記工程(D)において、哺乳細胞由来の核酸を解析することを特徴とする請求項8に記載の核酸の解析方法。
【請求項10】
前記哺乳細胞由来の核酸が、新生物性転化を示すマーカー又は炎症性消化器疾患を示すマーカーであることを特徴とする請求項9に記載の核酸の解析方法。
【請求項11】
前記工程(D)において、前記工程(C)において回収されたRNAを鋳型として逆転写反応を行い、得られたcDNAを用いて、新生物性転化を示すマーカー又は炎症性消化器疾患を示すマーカーを解析することを特徴とする請求項8又は9に記載の核酸の解析方法。
【請求項12】
生体試料から核酸を回収するために用いられるキットであって、
細胞溶解剤と、化学繊維又は天然繊維(但し、シリカ化合物繊維を除く)とを有することを特徴とする、核酸回収用キット。
【請求項13】
前記化学繊維又は天然繊維が不織布であることを特徴とする、請求項12記載の核酸回収用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−254055(P2012−254055A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130123(P2011−130123)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】