核酸の検出用物質及び検出方法
【課題】非天然塩基を用いる分析方法を提供する。
【解決手段】標的核酸を含有すると推測される試料を、核酸ポリメラーゼと、第1及び第2プライマーとに接触させ;二本鎖領域122と、非天然塩基114を含む一本鎖領域とを有する増幅産物120を生成し;標識132と、一本鎖領域の非天然塩基に相補的な非天然塩基130とを含むリポーター126と試料を接触させ;リポーターの少なくとも一部を増幅産物の一本鎖領域にアニールし;アニーリング後、リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片134を遊離させ;かつ、少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。試料中の標的核酸を検出するために使用する対応キットをも提供する。二者択一的に、リポーターをアニーリングしてから切断するのではなく、増幅産物中に組み込むことができる。
【解決手段】標的核酸を含有すると推測される試料を、核酸ポリメラーゼと、第1及び第2プライマーとに接触させ;二本鎖領域122と、非天然塩基114を含む一本鎖領域とを有する増幅産物120を生成し;標識132と、一本鎖領域の非天然塩基に相補的な非天然塩基130とを含むリポーター126と試料を接触させ;リポーターの少なくとも一部を増幅産物の一本鎖領域にアニールし;アニーリング後、リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片134を遊離させ;かつ、少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。試料中の標的核酸を検出するために使用する対応キットをも提供する。二者択一的に、リポーターをアニーリングしてから切断するのではなく、増幅産物中に組み込むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国以外のすべての国々を指定して、米国民及び居住者であるDavid J.Marshall、James R.Prudent、Christopher B.Scherrill、Gideon Shapiro、Jennifer K.Grenier、Craig S.Richmond、及びSimona JurczkによってPCT出願として出願されている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNAの特定セグメントの酵素的増幅方法である。PCRは、以下の基本工程の繰返しサイクルに基づいている:二本鎖DNAの変性、続くオリゴヌクレオチドプライマーのDNA鋳型へのアニーリング、及び核酸ポリメラーゼによるプライマー増幅(Mullisら及びSaikiら,1985;及び米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,800,159号、これらの全開示は、参照によって本明細書に取り込まれる)。PCRに使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、該DNAの反対鎖をアニールするように設計され、かつ一方のプライマーの核酸ポリメラーゼ触媒増幅産物が他方のプライマー用鋳型鎖として働くことができるように位置づけられる。PCR増幅プロセスの結果、その長さが該オリゴヌクレオチドプライマーの5'末端によって規定される別々のDNA断片の指数関数的増加となる。
【0003】
現在実施されているPCR法は、核酸配列を増幅する非常に強力な方法であるが、増幅される物質の検出には、PCR産物をさらに操作しかつ引き続き処理して、標的DNAが存在するかどうかを決定する必要がある。新しい方法及び分析法を開発することが望ましい。
参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第5,210,015号は、標識化オリゴヌクレオチドを用いて標的核酸を検出する方法を教示している。この方法は、5'→3'ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを用い、アニールされた標識化オリゴヌクレオチドプローブを切断して、検出することができる。
参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第5,846,717号は、標的配列上に核酸切断構造を形成し、それから5'ヌクレアーゼ活性を有する酵素を用いて部位特異的様式で該核酸切断構造を切断することによる標的核酸の検出方法を教示している。
参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第5,432,272号は、DNA又はRNA中の塩基対であるが、標準的なA:T又はG:C塩基対で観察されるパターンと異なる水素結合パターンを有する、非標準塩基を開示している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、標的核酸の迅速な検出のための物質及び方法に関する。本発明の方法は、リポーターオリゴヌクレオチド;核酸ポリメラーゼ;及び第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを利用する。ここで、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つは、少なくとも1個の非天然塩基を含有する。
一実施形態では、本発明は、試料中の標的核酸の検出方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。この方法は、前記試料を、核酸ポリメラーゼ、前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー、第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程;アニーリング後、前記リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程;及び前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、試料中の標的核酸の検出方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。この方法は、前記試料を、核酸ポリメラーゼ、前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー、第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターを、増幅産物中に、前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込む工程;及び前記リポーターの組込みを、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0006】
さらに別の実施形態では、本発明は、標的核酸の検出用キットを提供する。一実施形態では、本キットは、核酸ポリメラーゼ;前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー;第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマー;及び標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターを含む。任意に、本キットは、さらに本発明の方法を実施するための緩衝液及び試薬のような他の成分を含む。
本発明の方法は、種々のマス・スクリーニング法及び読み出しプラットフォームに組み込むことができる。
【0007】
本発明は、以下の本発明の種々の実施形態に関する詳細な説明を添付図面と共に考慮するすることにより、さらに完全に理解することができる。
本発明は、種々の変形及び代替形態に適用できるが、そのうち特定のものが例として図面に示されており、かつ詳述される。しかし、記述される特定の実施形態に本発明を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。反対に、本発明の精神及び範囲内にあるすべての変形、均等物、及び代替物を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】1A〜1Eは、本発明の一実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図2】2A〜2Eは、本発明の第2実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図3】多数の非天然塩基の化学構造を示し、式中、Aは高分子バックボーンへの付着点であり、XはN又はC-Zであり、YはN又はC-Hであり、かつZはH、置換若しくは無置換アルキル基、又はハロゲンである。
【図4】4A〜4Dは、本発明の第3実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図5】5A〜5Eは、本発明の第4実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図6】6A〜6Eは、本発明の第5実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図7】7A〜7Eは、本発明の第6実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図8】8A〜8Eは、本発明の第7実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図9】9A〜9Eは、本発明の第8実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図10】10A〜10Eは、本発明の第9実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図11】11A〜11Eは、本発明の第10実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図12】12A〜12Eは、本発明の第11実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図13】PCR混合物に特異的な対立遺伝子と鋳型試料を含有する分析プレートを調製するための一般的な手順を概略的に図解する。
【図14】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによるPCR反応における蛍光のクエンチングを示すグラフであり、Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図15】方法Aによる標識化非天然塩基の調製の合成スキームを概略的に図解する。
【図16】方法Bによる標識化非天然塩基の調製の合成スキームを概略的に図解する。
【図17A】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによるPCR反応における蛍光のクエンチングの“リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図17B】図17AのPCR増幅産物の融解曲線解析を示すグラフであり;X軸に融解温度が示される。
【図18A】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによるPCR反応における蛍光のクエンチングの“リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図18B】図18AのPCR増幅産物の融解曲線解析を示すグラフであり;X軸に融解温度が示される。
【図19】ゲノムDNAを増幅するPCR反応における蛍光の増加の “リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図20】種々の量の逆転写RNAを増幅するPCR反応における蛍光の増加の “リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図21】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによる種々の量の逆転写RNAを増幅するPCR反応における蛍光のクエンチングの “リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図22】野生型、突然変異体、及び異型接合性因子V DNA標的の多重PCR解析による総合結果を示すグラフであり;Y軸にHEX蛍光RFUsが示され、X軸にFAM蛍光RFUsが示される。
【図23A】種々のマウス株由来ゲノムDNAのマウスSTS配列27.MMHAP25FLA6における多型性の多重PCR解析による総合結果を示すグラフであり;X軸にPCRサイクル数が示され、Y軸にHEX蛍光RFUsが示される。
【図23B】種々のマウス株由来ゲノムDNAのマウスSTS配列27.MMHAP25FLA6における多型性の多重PCR解析による総合結果を示すグラフであり;X軸にPCRサイクル数が示され、Y軸にFAM蛍光RFUsが示される。
【図24】クエンチング化合物の部位特異的組込みによる種々の量の逆転写RNAを増幅する反応によるPCR産物の融解曲線解析であり;Y軸に経時的な蛍光の変化が示され、X軸に融解温度が示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な開示
本発明は、試料中の突然変異を検出、解析、又は試料中の標的核酸の量を定量するための方法及び物質に関する。本発明の方法は、一般的にPCRの使用を含む。PCRは、Fast-shotTM増幅でよい。本発明の方法は、リポーターオリゴヌクレオチド;核酸ポリメラーゼ;及び第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを利用し、この第1及び第2プライマーオリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、少なくとも1個の非天然塩基を含有する。固体支持体と共に使用する他の関連する分析方法は、2000年10月14日に出願された米国特許仮出願番号60/、タイトル“非天然塩基を用いる固体支持体分析システム及び方法”、代理人事件整理番号13238.2USP1に記述されている。
【0010】
本明細書で使用する場合、“核酸”は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、又は化学的バックボーンによって結合される塩基であって、該塩基が塩基対を形成するか又は相補的化学構造とハイブリダイズする能力を有する塩基として一般的に言及されるものの配列のようなポリマー分子を包含する。好適な非ヌクレオチドバックボーンとしては、例えばポリアミド及びポリモルフォリノバックボーンが挙げられる。用語“核酸”は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチド配列、及びその断片又は部分を包含する。核酸は、いずれの適切な、例えば天然源から単離された、組換え的に生産された、又は人工的に合成された形態でも供給され、一本鎖又は二本鎖でよく、かつセンス又はアンチセンス鎖を意味しうる。
【0011】
用語“オリゴヌクレオチド”は、一般的に短い鎖(例えば、約100ヌクレオチド長未満、典型的には長さ約6〜50ヌクレオチド長)の核酸を指し、例えば、固体支持体核酸合成、DNA複製、逆転写、制限消化、流出転写等のような技術で現在利用可能な技法を用いて調製することができる。オリゴヌクレオチドの正確な大きさは多くの因子によって決まり、順次該オリゴヌクレオチドの究極的な機能又は用途によって決まる。
“配列”は、ヌクレオチドの順序付けられた配置を意味する。
用語“試料”は、その最も広い意味で使用される。この用語は、標本又は培養(例えば、微生物培養)、並びに生物学的及び非生物学的試料を包含する。
【0012】
本明細書で使用する場合、“標的”又は“標的核酸”は、試料中にあると推測され、かつ本発明の方法又はシステムで検出又は定量すべき核酸配列を含有する核酸を意味する。標的核酸は、分析手順の際に実際に分析される標的核酸配列を含有する。標的は、直接的又は間接的に分析することができる。少なくともいくつかの実施形態では、標的核酸が試料中に存在する場合、本発明の方法による増幅用鋳型として標的核酸が使用される。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語“相補的”又は“相補性”は、核酸(すなわち、オリゴヌクレオチド又は標的核酸のようなヌクレオチドの配列)を指して使用されるときは、塩基の対合規則によって関係づけられる配列を意味する。天然塩基については、塩基の対合規則は、ワトソンとクリックによって開発されたものである。本明細書で述べるような非天然塩基については、塩基の対合規則は、ワトソン−クリックの塩基の対合規則と同様な様式で、又は疎水的、エントロピー的、若しくはファンデルワールス力による水素結合の形成を含む。例として、配列“T-G-A”では、相補的配列は“A-C-T”である。相補性は、“部分的”でよく、該核酸の塩基のいくつかだけが、塩基の対合規則に適合する。代わりに、核酸間の“完全な”又は“全体的な”相補性もありうる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強さに影響する。
【0014】
用語“ハイブリダイゼーション”は、相補的核酸の対合を指して用いられる。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強さ(すなわち、核酸間の会合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与するハイブリダイゼーション条件の厳密さ、形成されるハイブリッドの融解温度(Tm)、及び核酸内のG:C比のような因子によって影響を受ける。
本明細書で使用する場合、“標識”は、検出可能な(好ましくは定量化できる)シグナルを与えることができ、かつ核酸又はタンパク質に結合できるいずれの原子又は分子をも意味する。標識は、比色、蛍光、電気泳動、電気化学的、分光学的、クロマトグラフ的、濃度測定、又はラジオグラフ法等のような技法によって検出可能なシグナルを与えることができる。標識は、それ自体検出可能なシグナルを生成しないが、別の標識と併用したときに検出可能なシグナルを生成又はクエンチできる分子でよい。例えば、標識は、クエンチャー−染料対のクエンチャーでよい。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語“熱安定性核酸ポリメラーゼ”は、ヌクレオシドの重合を触媒し、かつ例えば大腸菌由来のヌクレオチドポリメラーゼと比較した場合、相対的に熱に安定な酵素を意味する。一般的に、この酵素は、標的配列にアニールされたプライマーの3'末端で合成を開始し、かつ鋳型に沿って5'方向に進行し、かつ5'→3'ヌクレアーゼ活性を有する場合、合成が終了するまで、介在するアニールされたオリゴヌクレオチドを加水分解して、介在するヌクレオチド塩基又はヌクレオチド断片を遊離させる。熱安定性酵素は、少なくとも約37℃〜約42℃、典型的には約50℃〜約75℃の範囲内の温度で活性を有する。代表的な熱安定性ポリメラーゼとしては、例えば、天然及び限定するものではないが、Thermus aquaticus(Taq)、Thermus flavus(Tfl)、及びThermus thermophilus(Tth)を含むThermus種、及び限定するものではないが、Thermotoga neapolitanaを含むThermotoga種の変性ポリメラーゼが挙げられる。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語“DNA多型性”は、DNA中の特定部位に2つ以上の異なるヌクレオチド配列が存在することができ、かつ単数又は複数のヌクレオチド置換、欠失又は挿入のようないずれのヌクレオチド変化をも含む状態を意味する。これらヌクレオチド変化は、突然変異体又は多型性対立遺伝子変異体でありうる。本明細書で述べる方法の少なくともいくつかの実施形態は、単一塩基の突然変異、付加若しくは欠失によって引き起こされるβ-グロブリン遺伝病(いくつかのβ-サラセミア、鎌状細胞貧血、ヘモグロビンC病等)で生じるような核酸中の単一核酸の変化、及びα-サラセミア又はいくつかのβ-サラメニアに付随するような複数塩基の変化を検出することできる。さらに、本明細書の方法は、病気とは必ずしも関係ないが、単に、集団中の核酸の特定部位に2つ以上の異なるヌクレオチド配列(置換、欠失又は挿入されたヌクレオチド塩基対を有するかどうか)が、ヒトゲノムのHLA領域を有し、かつミトコンドリアDNAのようなランダム多型性として存在できる状態を検出できる。
【0017】
本発明は、試料中の標的核酸を検出するための方法及び物質を提供する。一実施形態では、方法は、標的核酸を含有すると推測される試料を、核酸ポリメラーゼと、第1及び第2プライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、該標的核酸を、前記第1及び第2プライマーを用いてPCRによって増幅して、二本鎖領域と、少なくとも1つの非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基(又は複数の塩基)に相補的である非天然塩基(又は複数の塩基)とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程;アニーリング後、前記リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程;及び前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0018】
別の実施形態では、方法は、標的核酸が含有すると推測される試料を、ポリメラーゼと、第1及び第2プライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、該標的核酸を、前記第1及び第2プライマーを用いてPCRによよって増幅して、二本鎖領域と、少なくとも1つの非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基(又は複数の塩基)とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターを前記増幅産物中に組み込む工程;及び前記リポーターの組込みを、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0019】
本発明は、本明細書で述べる1種以上の方法を用いる試料中の標的核酸の検出で使用する対応キットをも包含する。
本発明は、所望により、いくつかの実施形態における洗浄又は分離(例えば、ゲル電気泳動法による)のような反応後処理を必要とせずに試料中の標的核酸を検出する能力を含め、多くの利点を提供することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本方法は、1セットの反応条件で処理される1つの反応混合物中に全要素を添加することによって実施することができる。これは、順次、複数の反応工程及び試薬に付随する問題又は心配事を回避或いは低減できる。
【0020】
一般的議論
さて、本発明の一実施形態について図1に示される概略図を参照しながら一般用語で説明する。図1Aを参照すると、試料は、標的核酸100を含有すると推測され、標的核酸100は、第1部分102と、第2部分104を含む。示されるように、標的核酸100は、鎖100a及び100bで構成される二本鎖分子である。
図1Bを参照すると、示されるように、第1プライマー106及び第2プライマー108と試料を接触させる。第1プライマー106は、標的核酸100の第1部分に相補的である。第2プライマー108は、第1領域110と第2領域112を含み、第1領域110は、標的核酸100の第2部分104に相補的である配列を含む。第2プライマー108の第2領域112は、非天然塩基114を含む。第2領域112は、標的核酸100に相補的でない。
【0021】
第1及び第2プライマーに加え、試料をポリメラーゼにも接触させ、本明細書で述べるように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供される。標的核酸100が試料中に存在する場合、第1プライマー106の相補的部分及び第2プライマー108の相補的部分が、標準的な塩基の対合規則に従って標的核酸100の対応する領域102及び104にアニールする。示されるように、プライマーが標的にアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドは、図1B中107と示されるヌクレオチドの配列、つまり“ギャップ”によって、第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドから分離される。好ましい実施形態では、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸にアニールされるとき、鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップ107が、PCRプライマーの3'末端間に存在するように設計される。
【0022】
図1Bに示されるように、ポリメラーゼを用いて、PCR、つまりFast-shotTM増幅により、各プライマーの3'-OH末端から一本鎖が合成される。すなわち、図1Cに示されるように、第1プライマー106を用いて、標的核酸100の鎖100aの少なくとも一部に相補的である鎖120aが合成され、第2プライマー108を用いて、標的核酸100の鎖100bの少なくとも一部に相補的である鎖120bが合成される。ポリメラーゼ連鎖反応を所望のサイクル数進め、増幅産物120を得ることができる。
図1Cに示されるように、増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を含む。この実施形態で示されるように、非天然塩基114は、二本鎖領域122に隣接する、一本鎖領域124中に位置する。一本鎖領域124は、1個より多くの非天然塩基を含むことができる。
【0023】
図1Dを参照すると、増幅産物120をリポーター126に接触させる。リポーター126は、標的核酸の増幅が起こる前、その間、又はその後に、反応に添加できると考えられる。リポーター126は、標識128、132及び増幅産物120の一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的である非天然塩基130を含む。図1Dの実施形態では、リポーター126は、染料128とクエンチャー132を含む標識と、非天然塩基130を含む。リポーター126は、増幅産物120にアニールさせることができる。アニーリング後、図1Eに示されるように、リポーター126の少なくとも一部が切断され、染料128を含むリポーター断片134が生成される。リポーター断片134の遊離が、試料中の標的核酸の存在と関連づけられる。図示される場合では、リポーター断片の非クエンチド染料の存在が検出される。別の実施形態では、染料及びクエンチャーの位置が逆転され、切断時にリポーター断片がクエンチャーを持ち去る。
【0024】
図8は、別の分析法を示しており、クエンチャー132は、リポーターの代わりに第2プライマー108に結合されている。クエンチャー132は、リポーター126の一部が切断され、染料128を含むリポーター断片134を生成するまで、リポーター126の染料128の蛍光をクエンチする。代替として、クエンチャーがリポーターに結合し、染料が第2プライマーに結合することもできる。本説明では、実施形態の図で共通する要素は同じ番号を付し、該要素について個々に説明する必要がない。
図9A〜9E、10A〜10E、11A〜11E、及び12A〜12Eは、図1A〜1Eの分析と同様の多数の実施形態であり、X及びYは、非標準塩基を表す。例えば、Xはイソ−シチジンを表し、Yはイソ−グアノシンを意味しうる。以下の記述は、図1A〜1Eとこれら実施形態の分析との相異について説明する。その他の点では、同一の考察及び条件を適用できる。
【0025】
図9A〜9Eの分析では、第1及び第2プライマー106、108は、図9Aに示されるように、二本鎖核酸100と接触させられる。第2プライマーは、標的核酸の一部に相補的である第1部分110と、標的核酸に相補的でなく、通常標的核酸にハイブリダイズしない第2部分112とを有する。第2プライマー108は、第2部分112内で、かつ標的核酸にアニールする第2プライマーの第1部分110に隣接する非標準塩基114を有する。図9B及び9Cに示されるように、第1及び第2プライマーを用いて、PCRにより、標的核酸の部分に相補的である増幅産物120が合成される。増幅産物120は、二本鎖領域122と一本鎖領域124を有する。図9Cに示されるように、リポーター126は、増幅産物120の一本鎖領域124と接触させられる。リポーターは、一本鎖領域124の非標準塩基114に相補的である非標準塩基119を含む。図9Dに示されるように、リポーター126は、一本鎖領域124にアニールする。リポーター126では、非標準塩基119に隣接する塩基127は、一本鎖領域の非標準塩基114に隣接する二本鎖領域の塩基131に相補的でありうるが、必ずしもそうでなくてもよい。図9Eに示されるように、塩基127がポリメラーゼによって切断され、リポーター断片134が生成し、通常、発蛍光団又はクエンチャーのような標識又は標識の一部128を含有し、増幅産物120のリポーター断片の検出を可能にする。任意に、塩基127は、通常標識128を含むオリゴヌクレオチド配列で置換され、かつリポーターの残部から切断される。
【0026】
図10A〜10Eには別の実施形態が示される。この実施形態では、塩基131は、標的核酸に相補的である第2プライマー108の第1領域110の一部ではなく、代わりに塩基131は標的核酸配列に非相補的であり、かつ第2プライマー108の第に2領域112の一部である。その他の点では、この分析法の工程及び手順は、図9A〜9Eの分析法と同一である。
【0027】
別の実施形態では、図11Aに示されるように、第1及び第2プライマー106、108が、二本鎖標的核酸100と接触させられる。第2プライマーは、標的核酸の一部に相補的である第1部分110と、標的核酸に相補的でなく、かつ通常標的核酸にハイブリダイズしない第2部分112を有する。第2プライマー108は、第2部分112内で、かつ標的核酸にアニールする第2プライマーの第1部分110に隣接する少なくとも2個の連続した非標準塩基114、117を有する。図11B及び11Cに示されるように、第1及び第2プライマーを用いて、PCRにより、標的核酸の部分に相補的である増幅産物120が合成される。増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を有する。任意に、非標準塩基114、117の最初の向かいに塩基141が誤って組み込まれる。図11Cに示されるように、リポーター126は、増幅産物120の一本鎖領域124と接触させられる。リポーターは、第2プライマーの非標準塩基に相補的である非標準塩基を含む。図11Dに示されるように、リポーター126が一本鎖領域124にアニールする。図11Eに示されるように、非標準塩基127がポリメラーゼによって切断され、リポーター断片134が生成し、通常、発蛍光団又はクエンチャーのような標識又は標識の一部128を含有し、増幅産物120のリポーター断片の検出を可能にする。任意に、塩基127は、通常標識128を含むオリゴヌクレオチド配列で置換され、かつリポーターの残部から切断される。
【0028】
さらに別の実施形態では、図12Aに示されるように、第1及び第2プライマー106、108が、二本鎖標的核酸100に接触させられる。第2プライマーは、標的核酸の一部に相補的である第1部分110と、標的核酸に相補的でなく、かつ通常標的核酸にハイブリダイズしない第2部分112を有する。第2プライマー108は、第2部分112内で、かつ標的核酸にアニールする第2プライマーの第1部分110に隣接する2個の非標準塩基114、117を有する。図12B及び12Cに示されるように、第1及び第2プライマーを用いて、PCRにより、標的核酸の部分に相補的である増幅産物120が合成される。増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を有する。任意に、非標準塩基117の向かいにポリメラーゼによって誤って組み込まれた塩基121を含む。図12Cに示されるように、リポーター126は、増幅産物120の一本鎖領域124と接触させられる。リポーターは、第2プライマーの非標準塩基114に相補的である非標準塩基を含む。図12Dに示されるように、リポーター126が一本鎖領域124にアニールする。リポーター126は、一本鎖領域の塩基114にアニールする非標準塩基119に結合された塩基127を含むが、塩基127は一本鎖領域の塩基117に相補的でない。図12Eに示されるように、塩基127がポリメラーゼによって切断され、リポーター断片134が生成し、通常、発蛍光団又はクエンチャーのような標識又は標識の一部128を含有し、増幅産物120のリポーター断片の検出を可能にする。任意に、塩基127は、通常標識128を含むオリゴヌクレオチド配列で置換され、かつリポーターの残部から切断される。
【0029】
図2には、本発明の別の実施形態が概略的に示される。図2Aに示されるように、二本鎖標的核酸100は、第1部分102及び第2部分104を含む。試料が、第1プライマー106及び第2プライマー108に接触される。第1プライマー106は、標的核酸100の第1部分102に相補的である。第2プライマー108は、標的核酸100の第2部分104に相補的である第1領域110と、非天然塩基114を含み、かつ標的核酸100に相補的でない第2領域114とを含む。
第1プライマー106及び第2プライマー108に加え、試料はポリメラーゼ(図示せず)と接触させられ、ポリメラーゼ連鎖反応が行われる。図1に示される実施形態と同様に、標的核酸100が試料中に存在する場合、第1プライマー106の相補性部分及び第2プライマー108の相補性部分が、標準的な塩基の対合規則に従い、標的核酸100の対応する部分102、104にアニールする。図1に示される実施形態と同様に、プライマーがアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドは、ヌクレオチドの配列、つまり“ギャップ”107によって第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドから分離される。好ましい実施形態では、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸にアニールされるとき、鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップが、PCRプライマーの3'末端間に存在するように設計される。
【0030】
図2B及び2Cに示されるように、ポリメラーゼを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応、つまりFast-shotTM増幅により、各プライマーの3'-OH末端から一本鎖120a、120bが合成される。ポリメラーゼ連鎖反応を所望のサイクル数進め、図2Cに示される増幅産物120を得ることができる。
図2Cに示されるように、増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を含む。示されるように、一本鎖領域124は、第2プライマー108の非天然塩基114を含む。一本鎖領域124は単一の非天然塩基を含んで示されているが、本発明は、それに限定されず、一本鎖領域は1個より多くの非天然塩基を含むことができる。
【0031】
さて、図2Dを参照すると、増幅産物120がリポーター150に接触している。リポーター150は、PCR増幅の前、その間又はその後に添加される。リポーター150は、図2Eに示されるように、標識154と、増幅産物120の一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的である非天然塩基152とを含む。リポーター150は、非天然塩基114の反対側の増幅産物中に組み込まれる。さらに詳細に後述するが、リポーター150の組込みは、例えば、ポリメラーゼ又はリガーゼのようないずれの適切な酵素を用いても達成することができる。試料中の標的核酸の存在は、増幅産物中のリポーターの存在と関連づけることによって決定される。図示した場合では、例えば、標的核酸の存在は、例えば蛍光若しくは他の可視化方法により標識154を検出することによって決定される。適切な検出及び可視化方法については、さらに詳細に後述する。
【0032】
図1及び2の概略図は、本発明の構成要素の相対的な位置及び大きさを示すが、これらの提示は例示目的だけのためである。本明細書の議論から明かなように、第1プライマー及び第2プライマー、並びに標的核酸の第1部分及び第2部分の相対的な大きさは、特定の用途によって変わるだろう。さらに、標的核酸に沿う第1プライマー及び第2プライマーの相対的な位置は変化するだろう。また、本発明で用いる非天然塩基及び標識の位置も用途によって変わるだろう。
【0033】
ポリメラーゼ
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応、つまりFast-shotTM増幅を利用して試料中の関心のある標的核酸を検出する方法及び物質を提供する。適切な核酸ポリメラーゼとしては、例えば、鋳型オリゴヌクレオチドに相補的な核酸を組み込むことでオリゴヌクレオチドを伸長できるポリメラーゼが挙げられる。例えば、ポリメラーゼはDNAポリメラーゼでよい。
ポリメラーゼ活性を有する酵素は、核酸プライマーの成長末端の3'ヒドロキシル基と、ヌクレオチド三リン酸の5'リン酸基との間の結合の形成を触媒する。これらヌクレオチド三リン酸は、通常デオキシアデノシン三リン酸(A)、デオキシチミジン三リン酸(T)、デオキシシチジン三リン酸(C)及びデオキシグアノシン三リン酸(G)から選択される。しかし、少なくともいくつかの実施形態では、本発明の方法で有用なポリメラーゼは、それらの非天然塩基のヌクレオチド三リン酸を用いて非天然塩基を組み込むこともできる。
【0034】
PCRのような方法の際、鎖の変性に必要なかなり高い温度は、多くの核酸ポリメラーゼの不可逆的な不活性化をもたらしうるので、本発明で有用な核酸ポリメラーゼ酵素は、好ましくはPCRのような方法の高温にさらされたときに反応を達成するのに十分なポリメラーゼ活性を保持する。好ましくは、本発明の方法に有用な核酸ポリメラーゼ酵素は、熱安定性核酸ポリメラーゼである。好適な熱安定性核酸ポリメラーゼとしては、限定するものではないが、好熱性生体由来の酵素が挙げられる。好適な熱安定性核酸ポリメラーゼを誘導できる好熱性生体の例としては、限定するものではないが、Thermus aquaticus、Thermus thermophius、Thermus flavus、Thermotoga neapolitana及びBacillus、Thermococcus、Sulfobus、及びPyrococcus属の種が挙げられる。核酸ポリメラーゼは、これら好熱性生体から直接精製できる。しかし、まず組換えDNA技法によって、該酵素をコードする遺伝子を多コピー発現ベクター中でクローン化し、そのベクターを、該酵素を発現可能な宿主細胞株中に挿入し、そのベクター含有宿主細胞を培養してから、該酵素を発現している宿主細胞株から核酸ポリメラーゼを抽出することによって、収率がかなり高い核酸ポリメラーゼを得ることができる。
【0035】
多くの核酸ポリメラーゼは、核酸ポリメラーゼ活性に加え、他の活性を有し;これら活性としては、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性及び3'-5'エキソヌクレアーゼ活性が挙げられる。5'-3'及び3'-5'エキソヌクレアーゼ活性は、本技術の当業者に公知である。3'-5'エキソヌクレアーゼ活性は、組み込まれた間違った塩基を除去することによって、新しく合成される鎖の精度を高める。対照的に、核酸ポリメラーゼ酵素中にしばしば存在する5'-3'エキソヌクレアーゼ活性は、プライマーを含め、非保護5'末端を有する核酸を消化しうるので、特定用途では望ましくないことがある。従って、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性が弱力化しているか、又は該活性が存在しない熱安定性核酸ポリメラーゼが、本発明の少なくともいくつかの実施形態で使用するために望ましい特性の酵素である。他の実施形態では、ポリメラーゼは、リポーターを切断し、かつ直接的又は間接的にシグナルが生成されるような標識断片を遊離させるのに十分な5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を有することが望ましい。
【0036】
5'-3'エキソヌクレアーゼ活性の無い又は弱力化した5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を有する適切な核酸ポリメラーゼは技術的に公知である。この目的を達成する核酸ポリメラーゼに修飾が導入された種々の核酸ポリメラーゼ酵素について記述されている。例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片は、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を制御するタンパク質のドメインが除去されたホロ酵素のタンパク分解断片として生成されうる。5'-3'エキソヌクレアーゼ活性が欠乏している好適な核酸ポリメラーゼは商業的に入手可能なである。5'-3'エキソヌクレアーゼ活性が欠乏している商業的に入手可能なポリメラーゼの例としては、AMPLITAQ STOFFELTMDNAポリメラーゼ及びKlenTaqTMDNAポリメラーゼが挙げられる。
【0037】
ポリメラーゼは、PCRの際に塩基を“間違って組み込む”ことがある。他言すれば、ポリメラーゼは、合成鎖上の3'位に、鋳型核酸鎖上の対をなすヌクレオチド(例えば、シトシン)と正準の水素塩基対を形成しないヌクレオチド(例えば、アデニン)を組み込みうる。PCR条件を変えて、塩基の間違った組込みの発生を少なくすることができる。例えば、温度、塩濃度、pH、清浄剤濃度、金属のタイプ、金属の濃度等のような反応条件を変えて、ポリメラーゼが鋳型鎖に相補的でない塩基を組み込むようなことを低減することができる。
単一のポリメラーゼを使用する代替として、本明細書で述べる方法のいくつかは、複数の酵素を使用して実施することができる。例えば、エキソヌクレアーゼ欠乏性ポリメラーゼのようなポリメラーゼ、及びエキソヌクレアーゼは、組み合わせて使用することができる。別の例は、エキソヌクレアーゼ欠乏性ポリメラーゼと熱安定性フラップエンドヌクレアーゼの使用である。さらに、RNAを試料として用いること、及び逆転写酵素を用いてRNAをcDNAに転写できることがわかるだろう。転写は、PCR増幅の前又は増幅時に起こりうる。
【0038】
第1プライマー及び第2プライマー
本発明は、ポリメラーゼ、第1プライマー及び第2プライマーを含むPCRを用いて標的核酸を検出する方法を提供する。図1、2及び9〜12に示されるように、第1プライマー106は、標的核酸100の第1部分102に相補的な配列を含む。第2プライマー108は、第1領域110及び第2領域112を含み、第1領域110は標的核酸の第2部分104に相補的な配列を含み、第2領域112は、少なくとも1個の非天然塩基を含む。第2領域は、一般的に標的核酸に相補的でない。
【0039】
PCR法では、プライマーは、増幅すべき標的核酸中に存在することが分かっている配列に相補的に設計される。通常、プライマーは、増幅すべき標的核酸配列に隣接する(かつその一部でありうる)配列に相補的であるように選択される。好ましくは、プライマーは、検出すべき標的核酸に隣接する配列に相補的であるように選択される。標的核酸の配列が分かれば、プライマーの配列は、まず検出すべき標的核酸の長さ又は大きさを決定し、標的核酸配列の5'及び3'末端に近いか、又は5'及び3'末端に近接している適切なフランキング配列を決定し、かつ標準的なワトソン−クリックの塩基の対合規則を用いて標的核酸のフランキング領域に相補的な核酸配列を決定してから、その決定したプライマー配列を合成することによって調製することができる。この調製法は、技術的に公知のいずれの適切な方法、例えば、適切な配列のクローニング及び制限及び直接化学合成によっても達成することができる。化学合成法としては、例えば、Narangら(1979)Metods in Enzymology68:90によって記載されているホスホトリエステル法、Brownら(1979)Metods in Enzymology68:109によって開示されているホスホジエステル法、Beaucageら(1981)Tetrahedron Letters 22:1859に開示されているジエチルホスホラミデート法、及び米国特許第4,458,066号に開示されている固体担持法が挙げられる。これらはすべて参照によって本明細書に取り込まれる。
【0040】
第1プライマー及び第2プライマーの標的核酸に対して十分に安定なハイブリッドを形成する能力は、いくつかの因子、例えば、プライマーと標的核酸との間で発現される相補性の程度によって決まる。典型的には、その標的に対して高度な相補性を有するオリゴヌクレオチドは、該標的と安定なハイブリッドを形成するだろう。
さらに、プライマーの長さは、プライマーが標的核酸にハイブリダイズする温度に影響を及ぼす。一般に、より長いプライマーは、より短いプライマーよりも高温で標的核酸配列に対して十分に安定なハイブリッドを形成する。
さらに、プライマー中に高割合のG若しくはC又は特定の非天然塩基が存在すると、プライマーと標的核酸との間に形成されるハイブリッドの安定性を高めることができる。この増加した安定性は、例えば、A-T相互作用における2つの水素結合と比較した、G-C相互作用又は他の非天然塩基対相互作用における3つの水素結合の存在のためでありうる。
【0041】
核酸二本鎖の安定性は、融解温度、つまり“Tm”によって評価又は表すことができる。特定条件下における特定の核酸二本鎖のTmは、該核酸二本鎖の集団の50%が一本鎖核酸分子に溶解する温度である。特定の核酸二本鎖のTmは、いずれの適宜の方法によっても予測することができる。特定の核酸二本鎖のTmを決定する好適な方法としては、例えば、ソフトウェアプログラムが挙げられる。本発明の方法及びキットで使用するのに好適なプライマーは、該プライマーを含むオリゴヌクレオチド二本鎖の予想されたTmに基づいて予め決定することができる。
図1及び2に示されるように、第1プライマー及び第2プライマーが標的核酸にアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドと第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドとの間にギャップ107が存在する。ギャップ107は、標的核酸の多数のヌクレオチドを含む。ギャップは、ポリメラーゼが伸長鎖中に十分にヌクレオチドを組み込んで、一回りのPCR反応(例えば、一回りのアニーリング、伸長、変性)の際に、該ギャップを満たすことができることを条件として、いずれの数のヌクレオチドでもよい。典型的には、ポリメラーゼは、1秒当たり約30〜約100塩基を配置することができる。従って、プライマー間のギャップの最大長は、温度が、ポリメラーゼが活性であり、かつプライマーがアニールされる範囲内である一回りのPCRでかかる時間量によって決まる。
【0042】
標準的な熱サイクラーを用いるFast-shotTM増幅では、ペルチエ冷却及び加熱の限界を考えると、温度変化は比較的遅い。標準的な熱サイクラーを用いる場合、Fast-shotTM増幅反応条件が、ポリメラーゼが活性であり、かつプライマーがアニールされる温度範囲内である時間は、約10〜約15秒である。本発明の方法は、試料の温度を迅速に熱循環できる微量流体系を用いて遂行することができ、伸長時間はかなり短く、かつ温度変化がかなり速い。このような迅速な熱循環は、例えば、LabChipTM技術(Caliper Technology,Palo Alto,CA)を用いて達成できる。一実施形態では、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸にアニールされるときに、PCRプライマーの3'末端間に、標的核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップが存在するように設計される。
【0043】
非天然塩基
本発明で考えられるように、第2プライマーの第2領域は、通常少なくとも1個の非天然塩基を含む。DNA及びRNAは、それぞれホスホジエステル結合によって結合されているデオキシリボース又はリボースを含むオリゴヌクレオチドである。各デオキシリボース又はリボースは、糖に結合された塩基を含む。天然に存在するDNA及びRNAに組み込まれる塩基は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、チミジン(T)、シチジン(C)、及びウリジン(U)である。これら5個の塩基が“天然塩基”である。ワトソンとクリックによって考案された塩基の対合規則に従い、天然塩基はハイブリダイズしてプリン−ピリミジン塩基対を形成し、GはCと対になり、AはT又はUと対になる。これら対合規則は、オリゴヌクレオチドの相補的オリゴヌクレオチドとの特異的なハイブリダイゼーションを促進する。
【0044】
これら天然塩基による塩基対の形成は、各塩基対の2個の塩基間の2又は3個の水素結合の生成によって促進される。各塩基は、2又は3個の水素結合供与体と水素結合受容体を含む。塩基対の水素結合は、一方の塩基上の少なくとも1個の水素結合供与体と、他方の塩基上の水素結合受容体との相互作用によって、それぞれ形成される。水素結合供与体は、例えば、少なくとも1個の水素に結合されているヘテロ原子(例えば、酸素又は窒素)を含む。水素結合受容体は、例えば、孤立電子対を有するヘテロ原子(例えば、酸素又は窒素)を含む。
天然塩基、A、G、C、T、及びUを、非水素結合部位における置換によって誘導して改変天然塩基を形成することができる。例えば、天然塩基は、反応性官能基(例えば、チオール、ヒドラジン、アルコール、アミン等)を塩基の非水素結合原子に結合することで支持体への付着に誘導することができる。他の可能な置換としては、例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光性基、アルキル基(例えば、メチル又はエチル)等が挙げられる。
【0045】
また、水素結合塩基対を形成する非天然塩基は、例えば、米国特許第5,432,272号、第5,965,364号、第6,001,983号、及び第6,037,120号及び米国特許出願第08/775,401号に記載されているように構成することができる。これらすべての開示は参照によって本明細書に取り込まれる。図3は、適切な塩基及びその対応する塩基対のいくつかの例を示す。これら塩基の特定の例は、塩基対の組合せ(iso-C/iso-G、K/X、H/J、及びM/N)に以下の塩基を含み:
【0046】
【化1】
【0047】
【化2】
【0048】
式中、Aは、高分子バックボーンの糖又は他の部分への結合点であり、Rは、H又は置換若しくは無置換アルキル基である。水素結合を利用する他の非天然塩基のみならず、塩基の非水素結合原子での官能基の組込みによる、上で特定した非天然塩基の変形を調製できることがわかるだろう。
【0049】
これら非天然塩基対の水素結合は、天然塩基の場合と同様であり、非天然塩基と対になる水素結合受容体と水素結合供与体との間に、2又は3個の水素結合が形成される。天然塩基とこれら非天然塩基との相異の1つは、水素結合受容体と水素結合供与体の数及び位置である。例えば、シトシンは、供与体/受容体/受容体塩基で、受容体/供与体/供与体塩基であるグアニンと相補性である。参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第6,037,120号に示されように、iso-Cは受容体/受容体/供与体塩基であり、iso-Gは相補的な供与体/供与体/受容体塩基である。
【0050】
オリゴヌクレオチドに使用される他の非天然塩基としては、例えば、両方とも参照によって本明細書に取り込まれる、Renら,J.Am.Chem.Soc.118,1671(1996)及びMcMinnら,J.Am.Chem.Soc.121,11585(1999)で議論されているナフタレン、フェナントレン、及びピレン誘導体が挙げられる。これら塩基は、安定化のために水素結合を利用しないが、代わりに疎水的又はファンデルワールス相互作用によって塩基対を形成する。
【0051】
本発明に従い、非天然塩基を使用すると、試料中に存在する核酸配列の検出及び定量化を拡張可能である。例えば、非天然塩基は、核酸に伴う反応を触媒する多くの酵素によって認識されうる。ポリメラーゼは、伸長オリゴヌクレオチド鎖を重合し続けるために相補的なヌクレオチドを必要とするが、他の酵素は、相補的なヌクレオチドを必要としない。非天然塩基塩基が鋳型中に存在し、その相補的な非天然塩基が反応混合物中に存在しない場合、ポリメラーゼは、通常、該非天然塩基を通り過ぎて伸長プライマーを伸長しようと試みてエンストする(又は、十分量の時間が与えられた場合には、塩基を間違って組み込む)。しかし、リガーゼ、キナーゼ、ヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ等のような、核酸に伴う反応を触媒する他の酵素は、非天然塩基を含む反応を触媒することができる。このような非天然塩基の特徴は、本発明に利用され、かつ本発明の範囲内である。
【0052】
例えば、非天然塩基を用いて、一本鎖オーバーハングを有する二本鎖核酸配列を生成することができる。これは、PCR反応を行い、試料中の標的核酸を検出することで達成することができ、該標的核酸は第1部分と第2部分を有し、この反応系は全4個の天然に存在するdNTP's、標的核酸の第1部分に相補的な第1プライマー、第1領域と第2領域を有する第2プライマーを含み、該第1領域は標的核酸の第1部分に相補的であり、かつ該第2領域は標的核酸に非相補的である。第2プライマーの第2領域は非天然塩基を含む。標的核酸が存在する場合、第1プライマー及び第2プライマーの第1領域が該標的核酸にハイブリダイズする。数回のPCRで、(i)二本鎖領域及び(ii)一本鎖領域を含有する増幅産物が生成する。二本鎖領域は、PCRの際に第1及び第2プライマーの伸長によって形成される。一本鎖領域は1個以上の非天然塩基を含む。ポリメラーゼは、相補的な非天然塩基のヌクレオチド三リン酸の非存在下では非天然塩基を越えて重合により伸長産物を形成できないので、増幅産物の一本鎖領域が生じる。このように、非天然塩基が作用して、増幅産物の一本鎖領域を維持する。
【0053】
上述したように、ポリメラーゼは、場合によっては、非天然塩基の反対の塩基を間違って組み込むことがある。この実施形態では、反応混合物が相補的な非天然塩基を含まないので、間違った組込みが起こる。従って、十分量の時間が与えられると、ポリメラーゼは、場合により、反応混合物の中に存在する、非天然塩基と反対の塩基を間違って組み込むことがある。
【0054】
増幅
PCRの際、ポリメラーゼ酵素、第1プライマー及び第2プライマーを用いて本明細書で述べるような増幅産物を生成する。使用可能な1つのPCR法は改変PCR、Fast-shotTM増幅である。本明細書で使用する場合、用語“Fast-shotTM増幅”は、改変ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
伝統的なPCR法は以下の工程を含む:二本鎖核酸の変性、又は融解;プライマーのアニーリング;及びポリメラーゼによるプライマーの伸長。伸長されたプライマーを変性し、再び開始することにより、このサイクルが繰り返される。標的核酸のコピー数は、理論的には指数関数的に増加する。実際には、コピー数は、通常酵素が該サイクルの間に伸長できるより多くのプライマー鋳型が集積するプラトーに達するまで、各サイクルで倍加し;そして標的核酸の増加が線形になる。
【0055】
Fast-shot増幅は、改変ポリメラーゼ連鎖反応であり、伸長工程のみならず、アニーリング及び融解工程が非常に短いか或いは除去される。本明細書で使用する場合、PCRの“工程”を指すとき、工程は、反応が所望の温度で、当該温度が実質的に変動せずに維持される時間である。例えば、典型的なPCRの伸長工程は約30秒〜約60秒である。Fast-shotTM増幅の伸長工程は、通常、約0秒〜約20秒の範囲である。好ましくは、伸長工程は約1秒以下である。好ましい実施形態では、伸長工程が除去される。典型的なPCRのアニーリング及び融解工程の時間は、30秒〜60秒の範囲である。Fast-shotTM増幅のアニーリング及び融解工程は、通常約0秒〜約60秒の範囲である。Fast-shotTM増幅では、アニーリング及び融解工程は、通常約2秒を超えず、好ましくは約1秒以下である。伸長工程が除去される場合、温度は、アニーリング温度と融解温度との間に中間の伸長工程を含まずに、アニーリング工程と融解工程の間で循環される。
【0056】
さらに、どうやってアニーリング温度から融解温度に速く変えるかという限界は、伸長プライマー上への塩基の組込みにおけるポリメラーゼの効率と、プライマー間のギャップとプライマーの長さによって決まる組み込まなければならない塩基の数によって決まる。実施例では、Fast-shotTM増幅の例が示される。
試料中の核酸配列の存在を決定するために必要なFast-shotTM増幅のサイクル数は、試料中の標的分子の数によって変化しうる。後述する一実施例では、100個程度の標的核酸を検出するためには全部で37サイクルで十分である。
【0057】
増幅産物
例えば、図1、2、及び9〜12に示されるように、PCRを用いて、二本鎖領域122と一本鎖領域124を含む増幅産物120が生成される。これらの図に示されるように、二本鎖領域122は、第1及び第2プライマー106及び108の伸長によって生じる。上述したように、一本鎖領域124は、本発明の第2プライマー内の非天然塩基の組込みから生じる。第2プライマー108の第2領域112は標的核酸100に相補的でない。上述したように、非天然塩基はワトソンとクリックの塩基の対合規則に従って他の非天然塩基と結合を形成するので、非天然塩基の存在は増幅産物120内の一本鎖領域124としての第2領域を維持する。
これとは別の実施形態では、一本鎖領域124は、1個より多くの非天然塩基を含む。第2プライマー108の第2領域112に含まれる非天然塩基の数は、所望通りに選択することができる。
【0058】
リポーター
本明細書で使用する場合、用語“リポーター”は、第2プライマーの第2部分に相補的であり、それゆえに二本鎖構造を形成する成分(例えば、オリゴヌクレオチド)を指す。例えば、図1、2、及び9〜12に示されるような実施形態を参照すると、リポーターは、標識128、132(図2では154)と、一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的である少なくとも1個の非天然塩基130(図2では152)とを含む。好ましくは、リポーターはポリメラーゼ連鎖反応の第1プライマー又は第2プライマーのどちらにも相補的でない。好ましくは、リポーターの3'末端は、“遮断”され、プライマー伸長産物中へのリポーターの組込みを阻害する。“遮断”は非相補性塩基を用いて、又は最後のヌクレオチドの3'ヒドロキシルに、ビオチン若しくはリン酸基のような化学成分を付加することで達成することができ、選択する成分によっては、標識としても作用することで、二重に目的に役立ちうる。
【0059】
本発明で有用なリポーターは1個より多くの非天然塩基を含むことができる。リポーターに含まれる非天然塩基の数は、使用者によって決めることができ、例えば、第2プライマーの第2領域の長さと塩基組成及び所望のハイブリダイゼーション条件とハイブリダイゼーション特異性のような因子よって決まるだろう。
リポーターのヌクレオチド含量は、通常第2プライマーの第2領域のヌクレオチド含量によって決定される。すなわち、リポーターの配列は、第2プライマーの第2領域の配列を決定し、かつワトソンとクリックによって開発された標準規則を用いて当該第2領域に対する補体を決定することで決められる。一実施形態では、例えば、第2プライマーの第2領域は単一の非天然塩基を含む。この実施形態では、リポーターは、好ましくは第2プライマーに含まれる非天然塩基に相補的な単一の非天然塩基を含む。同様に、1個より多くの非天然塩基が第2プライマーの第2領域に含まれる場合、第2領域の配列は、当該配列に対する補体を決定し、その結果によりリポーターが合成される。
【0060】
第2プライマーの第2部分にハイブリダイズ可能な同一配列を有するリポーターは、第2プライマーの第2部分が、それら分析においても同じであることを条件として、種々の分析に使用することができる。他言すれば、“万能な”リポーターと第2プライマーの第2部分とを使用することができる。そして、第1部分が該標的核酸に特異的である第2プライマーの“万能な”第2部分を第2プライマーの一部に結合し或いは一部として合成することができる。これは、例えば、所望の標的核酸のために使用者の注文によって特製されるキットで使用することができる。
【0061】
他の実施形態では、特定の分析において、それぞれ第2領域に異なった配列を有するいくつかの第2プライマーと、それぞれそのいくつかの異なった第2プライマーの1つの第2部分に相補的な配列を有するいくつかのリポーターとを使用することが有益である。このような分析では、各リポーターが異なった標識を有することが有利である。いくつかの実施形態では、リポーターを、その3'末端によって固体又は他の独特な支持体の別個の領域に結合させることができる。
リポーターの、相補的配列を有するオリゴヌクレオチドに対して十分に安定なハイブリッドを形成する能力は、プライマーについて上述したような因子によって決まる。
【0062】
これとは別の実施形態では、第2プライマーとリポーターが単一化合物である。この実施形態は図4に示される。図4Aに示されるように、標的核酸100は、第1プライマー106及び第2プライマー108と接触している。この実施形態では、第2プライマーは以下を含む:第1領域110、第2領域112、リンカー180、リポーター190、及びクエンチャー196。この実施形態では、リンカー180が第2プライマー108をリポーター190と連結する。リポーター190は、染料192、非天然塩基194、及びクエンチャー196を含む。非天然塩基194は第2プライマー108の非天然塩基114に相補的である。図4Bに示されるように、第1領域110が標的核酸100の第1部分102にアニールする。リンカー180は、一方のヌクレオチドの5'末端をもう一方のヌクレオチドの3'末端に結合させる化学的リンカーを含む。リンカー180は、図4Bに示されるように、リポーター126を折り返し、かつ第2プライマー102の第2領域112と塩基対を形成させる。一実施形態では、リンカー180は、リポーター126を第2領域112とハイブリダイズさせるのに十分な長さのヌクレオチドの配列を含む。好ましくは、この実施形態におけるリンカー180を含むヌクレオチドは、ヘアピンループ182を形成可能である。別の実施形態では、リポーター126が第2領域112にハイブリダイズする温度が、第1領域110が標的100の第2部分104にハイブリダイズする温度より低い。
【0063】
図4Cは、PCR、つまりFast-shotTM増幅の際にプライマー104及び106の伸長の結果生じる増幅産物200を示す。増幅産物200は、二本鎖領域202及び一本鎖領域204を含む。リポーター190が増幅産物の一本鎖領域204にアニールする。
図4Dに示されるように、リポーター190は、例えば、ポリメラーゼ又は他の適宜な酵素によって切断され、ひいてはリポーター断片198を遊離させる。遊離されたリポーター断片198は染料192を含む。ここで述べるように、クエンチャー196の近接による染料192の遊離によって、可視化されうる。いくつかの実施形態では、図4に示されるように、リポーター126が第2領域112にハイブリダイズされ、第1及び第2プライマー106、108が伸長する。これは、第1プライマー106が十分に伸長したときにポリメラーゼがリポーター断片198を切断するのを可能にし、かつPCRプロセスの際に、リポーターの引き続き添加せずに、該分析の“リアルタイム”モニタリングを可能にする。しかし、第1及び第2プライマーの伸長時におけるリポーターの第2領域へのハイブリダイゼーションは必要な特徴ではない。リポーターの第2領域へのハイブリダイゼーションは、図1で示される分析について述べたのと同一様式で伸長後に起こりうる。
【0064】
標識
本発明により、リポーターは標識を含む。ヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的分析によって検出可能な成分を組み込むことによって標識化できる。標識をヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに連結又は結合する方法は、使用する標識のタイプと、ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド上の該標識の位置によって決まる。
本発明の用途に適する種々の標識、及びプローブ内にそれを封入する方法は技術的に公知であり、限定するものではないが、酵素基質、放射性原子、蛍光染料、発色団、化学発光標識、ORI-TAGTM(Igen)のような電気化学発光標識、特異的な結合パターンを有するリガンド、又はシグナルを増強し、変化させ、若しくは減少させるために相互作用しうる他のいずれの標識も挙げられる。熱サイクラー設備を用いてPCRを実施し、この自動プロセスで必要な温度循環を存続するように標識を選択すべきであることが理解される。
本発明の方法の標識に好適な1つの放射性原子は、32Pである。32Pを核酸中に導入する方法は技術的に公知であり、例えば、キナーゼによる5'標識化、又はニックトランスレーションによるランダム挿入が挙げられる。
【0065】
上記説明は、同一標識は、いくつかの異なる態様で働きうるので、種々の標識を明確なクラスに分類することを意図したものでないことを理解すべきである。例えば、125Iは、放射性標識として、又は電子高密度試薬として貢献しうる。さらに、所望の効果のために種々の標識を組み合わせることができる。例えば、ヌクレオチドをビオチンで標識し、かつその存在を125Iで標識されたアビジンで検出することができる。他の変更及び可能性は、本技術の当業者には明かであり、本発明の範囲内で考えられる。
ある場合には、オリゴヌクレオチド上に標識の適切な間隔を維持して、オリゴヌクレオチドの加水分解時における標識の分離を許容するために正当な考慮を払って、単一のオリゴヌクレオチド上に2個の相互作用的標識を使用することが望ましい。同様に、例えば、リポーターと第2プライマーの第2領域のような異なるオリゴヌクレオチド上に2個の相互作用的標識を使用することが望ましい。この実施形態では、リポーターと第2領域は、相互にハイブリダイズするように設計される。この場合もやはり、ハイブリダイズ時にオリゴヌクレオチド間の標識の適当な間隔を維持することに考慮が払われる。
【0066】
相互作用的標識対の1種は、クエンチャー−染料対である。好ましくは、クエンチャー−染料対は、発蛍光団とクエンチャーで構成される。好適な発蛍光団としては、例えば、フルオレッセイン、カスケードブルー、ヘキサクロロ−フルオレッセイン、テトラクロロフルオレッセイン、TAMRA、ROX、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5,p-メトキシフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-S-インダセン-3-プロピオン酸、6-カルボキシ-X-ローダミン、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン、テキサスレッド、エオシン、フルオレッセイン、4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5,p-エトキシフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸及び4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-S-インダセンプロピオン酸が挙げられる。好適なクエンチャーとしては、例えば、Dabcyl、QSY7TM(Molecular Probes,Eugene,OR)等が挙げられる。さらに、染料は、それらが別の染料の放射光線を吸収する場合、クエンチャーとしても使用できる。
【0067】
標識は、非天然塩基を含むヌクレオチド、又はオリゴヌクレオチドに、種々の技法により直接又は間接的に結合させることができる。使用する標識の正確なタイプによって、標識はリポーターの5'又は3'末端に位置づけ、リポーターのヌクレオチド配列の内部に位置づけ、又はリポーターから伸長し、かつ種々の大きさ及び組成を有するスペーサーアームに結合させて、シグナルの相互作用を促すことができる。商業的に入手可能なホスホラミダイト試薬を用いて、例えば、リン酸結合の形成による5'塩基の5'ヒドロキシルにホスホラミダイト染料を結合させることによって、又は内部的に適切に保護されたホスホラミダイトを介して、各末端に官能基(例えば、チオール又は一級アミン)を含有するオリゴヌクレオチドを生成し、かつ例えば、参照によって本明細書に取り込まれるPCRプロトコル:A Guide to Methods and Applications,Innisら編集,Academic Press,Inc.,1990に記載されているプロトコルを用いてそれらを標識化することができる。
【0068】
1種以上のスルフヒドリル、アミノ又はヒドロキシル成分を有する試薬を官能化するオリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチドリポーター配列中、通常5'末端に組み込む方法は、参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第4,914,210号に記載されている。例えば、5'リン酸基はポリヌクレオチドキナーゼと[γ32P]ATPを用いて放射性同位体として組み込み、リポーター基を与えることができる。ビオチンは、合成時に導入されたアミノチミジン残基を、ビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させることによって、5'末端に付加することができる。
3'末端における標識は、例えば、ポリヌクレオチド末端トランスフェラーゼを利用して、例えば、コルジセピン、35S-dATP、及びビオチン化dUTPのような所望成分を付加することができる。
【0069】
オリゴヌクレオチド誘導体は標識としても利用できる。例えば、エテノ-dA及びエテノ-Aは、リポーター中に組み込むことのできる公知の蛍光アデニンヌクレオチドである。同様に、エテノ-dCは、リポーター合成に使用できる別の類似体である。このようなヌクレオチド誘導体を含有するリポーターは、PCRの際に核酸ポリメラーゼがプライマーを伸長するとき、ポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性によって加水分解され、ずっと強い蛍光性のモノヌクレオチドを遊離しうる。
いくつかの実施形態では、標識化リポーターが第1及び第2標識を含み、第1標識はヌクレアーゼ感受性切断部位によって第2標識から分離されている。
【0070】
リポーターの標識は、リポーターのいずれの適切な位置に位置づけることもできる。例えば、リポーターが1個より多くのヌクレオチドを含む場合、標識はリポーター配列のいずれの適切なヌクレオチドにも結合させることができる。標識は、リポーターの5'末端に位置づけ、非相補的配列によって標的核酸に相補的なリポーター配列から分離することができる。この実施形態では、増幅産物の非天然塩基に相補的な非天然塩基、及び第2プライマーの第2領域に非相補的な配列を含み、かつ該標識は第2領域に非相補的な配列内に位置づけられる。さらに、標識は、適切なスペーサー又は化学的リンカーを用いて、リポーターのヌクレオチドに間接的に結合させることができる。
【0071】
別の実施形態では、標識化リポーターは、リポーター上又はリポーター上及び分析の第2構成要素(第2オリゴヌクレオチドのような)上に有効に位置づけられた1対の相互作用的シグナル生成標識を含み、この相互作用的シグナル生成標識が相互に十分に近接したときに検出可能なシグナルの生成をクエンチする。好ましくは、これら標識はヌクレアーゼ切断に感受性なリポーター内の部位によって分離され、それによって核酸ポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性が、ヌクレアーゼ感受性部位でリポーターを切断することにより、第1の相互作用的シグナル生成標識を第2の相互作用的シグナル生成標識から分離させる。相互作用的シグナル生成成分の分離(例えば、該標識の一方を含有するリポーター断片を遊離させるためのリポーターの切断)の結果、検出可能なシグナルの生成となる。このような標識の例としては、染料/クエンチャー対又は2種の染料対(一方の染料の放射が第2染料による放射を刺激する)が挙げられる。
【0072】
例示実施形態では、相互作用的シグナル生成対は、発蛍光団、例えばフルオレッセイン、5-[(2-アミノエチル)アミノ]ナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、テトラメチルローダミン等と、発蛍光団の蛍光放射をクエンチすることができるクエンチャー、例えば、ジメチルアミノアゾベンゼンアミノエキサル-3-アクリイニド(Dabcyl)とを含む。当業者は、特定の発蛍光団の放射をクエンチすることができる適切なクエンチャー成分を選択することができる。例示実施形態では、Dabcylクエンチャーが発蛍光団成分からの蛍光の放射を吸収する。発蛍光団−クエンチャー対については、参照によって本明細書に取り込まれるMorrison,Detection of Energy Transfer and Fluoresence Quenching in Nonisotpic Probing,Blotting and Sequencing Academic Press,1995に記述されている。
これとは別に、これら相互作用的シグナル生成標識は、第2プライマーの第2領域が少なくとも1個の非天然塩基と標識を含む場合の検出方法で使用することができる。この対の第2標識は、第2プライマーの非天然塩基に相補的な少なくとも1個の非天然塩基と、第2標識とを含むリポーターによって供給される。この実施形態は図6に示される。例えば、染料/クエンチャー対を使用すると、リポーターのハイブリダイゼーション又は増幅産物の組込みの結果、蛍光の減少となる。
【0073】
これとは別に、2つの標識の近接は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)又は蛍光偏光によって検出することができる。FRETは2個の染料分子の電子励起状態間の距離依存性相互作用であり、光子の放射無しで、励起が供与体分子から受容体分子へ転移する。FRETの供与体/受容体染料対の例は、フルオレッセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANSTM/フルオレッセイン(Molecular Probes,Eugene,OR)、EDANSTM/Dabcyl、フルオレッセイン/フルオレッセイン(Molecular Probes,Eugene,OR)、BODIPYTM FL(Molecular Probes,Eugene,OR)、及びフルオレッセイン/QSY7TMである。
【0074】
アニーリング
リポーターは、検出方法の際適宜の時に試料に付加される。図1に示される実施形態では、PCRが十分な増幅産物120を生成した後、増幅産物120の一本鎖領域124にリポーター126がアニールされる。この図解される実施形態では、リポーター126は、染料128、クエンチャー132、及び第2プライマー108の非天然塩基114に相補的な非天然塩基130を含む。リポーター126は、第2プライマー108の第2領域112に対応する配列にアニールする。PCRが十分な増幅産物120を生成した後に反応混合物にリポーター126を添加するか、又はPCR増幅の前に反応混合物にリポーター126を添加することができる。好ましくは、PCR増幅の前にリポーター126が反応混合物に添加される。増幅後、好ましくは、リポーター/増幅産物の融解温度未満に温度を下げ、リポーターを増幅産物の一本鎖領域にアニーリングさせる。一実施形態では、リポーターの一本鎖オーバーハング領域へのアニーリング工程の際、反応温度は約49℃以下である。アニーリングは、上述したような他のリポーター及び他のタイプの標識を用いる実施形態を含め、本発明の他の実施形態と同様に行われる。別の実施形態では、リポーター126は、第1及び第2プライマー106、108と増幅産物120の融解温度又はそれ以上の温度でアニールされる。この実施形態は、PCR増幅産物の“リアルタイム”検出を行う場合に特に有用である。
【0075】
切断
本発明の一実施形態では、リポーターが増幅産物にアニールした後、切断事象が起こって少なくとも1つのリポーター断片を遊離する。このリポーター断片の遊離は、後述するように、標的核酸の存在に関連づけられる。リポーターが増幅産物の一本鎖領域にアニールすると、これがリポーター/増幅産物複合体を形成し、複合体を切断してリポーター断片を遊離させる酵素によって認識されうる。この実施形態で使用するために考えられる酵素は、一般的に種々のリポーター/増幅産物複合体構造を認識することができる。例えば、リポーター126の5'末端部は、増幅産物の配列と重なることができ、一本鎖オーバーハング領域160を形成する(図1D参照)。
【0076】
別の実施形態では、リポーター126はオーバーラップ領域を含まないで一本鎖オーバーハング領域を形成するが、リポーターが増幅産物にアニールされるときは(図5参照)、むしろリポーターはニック様構造を形成する。図5Dに示されるように、この実施形態では増幅産物中にニック様構造が形成される。一般的に、二本鎖DNA中の“ニック”は、1本の鎖上の2個の隣接するヌクレオチド間にホスホジエステル結合が存在しないことである。本明細書で使用する場合、用語“ニック様”構造は、リポーター126の5'末端ヌクレオチドと増幅産物の鎖100aの3'末端ヌクレオチドとの間にホスホジエステル結合が存在しない場合に形成される。二本鎖DNAの1本の鎖が新物質の再合成によって分解及び置換されうる開始点として、二本鎖DNA中のニックを使用することができる、例えば大腸菌DNAポリメラーゼIのようないくつかの酵素がある。
【0077】
この実施形態では、リポーター210は、増幅産物の非天然塩基114に相補的である非天然塩基216、染料212、及びクエンチャー214を含む。リポーター210が増幅産物の一本鎖部分にアニールする。従って、ニックは、非天然塩基216と増幅産物の隣接するヌクレオチドとの間に生成される。この実施形態では、ポリメラーゼは、リポーター/増幅産物複合体中に形成されたニック様構造を認識し、かつ当該ニック部位でリポーターを切断する。複合体の切断がリポーター断片134を遊離し、シグナルが検出される。
リポーター/増幅産物複合体によって形成される特定構造のいくつかは、いくらか詳細に議論されるが、他のリポーター/増幅産物複合体は、本明細書で述べるように切断を行うことで形成することができる。
【0078】
図1Dに示される実施形態を参照すると、アニーリング後、リポーター126の5'末端160の部分は標的にアニールされず、一本鎖である。アニールされたリポーター断片を増幅産物から切断するためのポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性の能力が維持されることを条件として、塩基中のいずれの長さの一本鎖オーバーハング領域160も考えられることが分かる。図1Dで例示される実施形態では、検出のため、ポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性を、アニールされたリポーター126の切断を可能にするのに十分な条件下で反応が続けられる。リポーター126の切断が切断断片134(標識又は標識の一部を含有する)を生成し、それが検出される(又は、代わりに残存リポーター/増幅産物複合体が検出され)、かつそれらは試料中における標的核酸の存在の指標である。少なくともいくつかの実施形態では、リポーター断片はモノ−、ジ−、及びより大きいヌクレオチド断片の混合物を含むことができる。
【0079】
図1Eに示されるように、ポリメラーゼのヌクレアーゼ活性が一本鎖領域160を切断し、リポーター断片134を遊離させる。この実施形態では、リポーター断片は染料128を含む。クエンチャー132を含む増幅産物からの染料128の遊離が染料の検出を可能にする。従って、リポーター断片の遊離は、リポーター断片がクエンチャーへの近接から遊離されるときに染料の検出を可能にする。これは、順次、リポーター断片の遊離と標的核酸の存在との関係を斟酌する。そうでなければ、染料とクエンチャーの配置が逆にされ、クエンチャーがリポーター断片と共に遊離され、リポーター/増幅産物上の染料が検出される。
【0080】
組込み
さて、図2を参照すると、本発明の別の実施形態が示される。この実施形態では、第2プライマーの第2領域124が非天然塩基124を含む。非天然塩基124に相補的な非天然塩基152が、適切な酵素を用いて増幅産物中に組み込まれる。この実施形態では、リポーターの組込みが試料中の標的核酸の存在と関連づけられる。
図2に示されるように、本発明の方法はリポーター150;核酸ポリメラーゼ(図示せず);第1プライマー106及び第2プライマー108を利用する。PCR反応混合物は、4個の天然に存在するヌクレオチド三リン酸(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)及び1個以上の非天然ヌクレオチド三リン酸(又は非天然ヌクレオチド三リン酸を含有するオリゴヌクレオチド)をもリポーター150として含有する。例示実施形態では、反応混合物中の1個以上の非天然ヌクレオチド三リン酸152が標識154を含む。PCRはFast-shotTM増幅でよい。
【0081】
第1プライマー106は、標的核酸100の一部に相補的な配列を含み、かつ標的核酸100の当該部分にハイブリダイズすることができる。第2プライマー108は第1領域110と第2領域112を有する。第1領域110は、標的核酸100の一部に相補的な配列を含む。第2プライマー108の第2領域112は非天然塩基114を含み、この第2領域112は標的核酸100に相補的でない。単一のヌクレオチドだけが第2領域112に図示されているが、第2領域はさらにヌクレオチドを含みうることが分かるだろう。好ましくは、非天然塩基114は、第2プライマー108の第1領域110と第2領域112との接合部に位置する。いくつかの実施形態では、第2オリゴヌクレオチドプライマーの第2領域112中に存在する非天然塩基114は、iso-C又はiso-Gである。
【0082】
第1プライマー106及び第2プライマー108に加え、試料はポリメラーゼに接触させられ(図示せず)、ポリメラーゼ連鎖反応が行われる。標的核酸100が試料中に存在する場合、塩基の標準的な対合規則に従って、第1プライマー106の相補性部分と第2プライマー108の相補性部分110が、標的核酸100の対応領域102、104にアニールする。図1に示される実施形態と同様に、プライマーが標的にアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドは、ヌクレオチドの配列、つまり“ギャップ”によって、第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドから分離される。好ましい実施形態では、第1及び第2プライマーは、鋳型核酸にアニールされるとき、PCRプライマーの3'末端間に、鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップが存在するように設計される。
【0083】
図2B及び2Cに示されるように、ポリメラーゼを用いてポリメラーゼ連鎖反応、つまりFast-shotTM増幅によって、各プライマーの3'-OH末端から一本鎖120a、120bが合成される。ポリメラーゼ連鎖反応は所望のサイクル数続け、図2Cに示される増幅産物120を得ることができる。
図2Cに示されるように、増幅産物120は二本鎖領域122及び一本鎖領域124を含む。示されるように、一本鎖領域124は第2プライマー108の非天然塩基114を含む。一本鎖領域124は単一の非天然塩基を含んで示されているが、この領域は、1個より多くの非天然塩基を含むことができる。
【0084】
さて、図2Dを参照すると、増幅産物120がリポーター150と接触させられる。リポーター150は標識154と非天然塩基152を含む。図2Eに示されるように、リポーター150は、増幅産物中非天然塩基114の反対側に組み込まれる。一実施形態では、リポーター150の非天然塩基152は、増幅産物120の一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的なヌクレオチド三リン酸を含む。この実施形態では、PCR反応は、4個の天然に存在するヌクレオチド三リン酸塩基(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)に加え、標識された非天然ヌクレオチド三リン酸塩基の存在を含む。PCR反応における非天然ヌクレオチド三リン酸塩基の濃度は、例えば、1μM〜100μMの範囲でよい。
【0085】
リポーター150を増幅産物120中に組み込むための好適な酵素としては、例えば、ポリメラーゼ及びリガーゼが挙げられる。伸長プライマー鎖中に天然ヌクレオチドを組み込むことができる多くのポリメラーゼを使用して、増幅産物中相補的な非天然塩基の向かい側に非天然塩基を組み込むこともできる。典型的には、クレノウ、Tfl、Tth、Taq、Hot Tub、及びBstのようなクラスA DNAポリメラーゼが、Pfu、Tli、Vent exo-、T4、及びPwoのようなクラスBポリメラーゼよりも非天然塩基をうまく組み込むことができる。HIV-1のような逆転写酵素を使用しても、伸長プライマー中に、鋳型内のその相補性非天然塩基の向かい側に非天然塩基を組み込むことができる。この実施形態では、ポリメラーゼはヌクレアーゼ欠乏性であるか、又は低減されたヌクレアーゼ活性を有することができる。本発明を限定する意図ではないが、ヌクレアーゼ活性はいくつかのPCR反応を妨害することが分かっているので(Gene 1192 112(1):29-35及びScience 1993
260(5109):778-83)、ヌクレアーゼ欠乏性ポリメラーゼが、より強力であると考えられる。
【0086】
試料中の標的核酸の存在は、増幅産物中のリポーターの存在と関連づけることによって決定される。適切な検出及び可視化方法を用いて標的核酸を検出する。例えば、例示の場合、標的核酸の存在は、例えば、蛍光又は他の可視化方法によって、標識154を検出することによって決定される。例えば、蛍光偏光を利用して、増幅産物中へのリポーターの組込みを検出することができる。
好ましくは、この実施形態では、洗浄工程又は分離工程は、リポーター150の増幅産物120中への組込み後、かつ検出前に行われる。この洗浄又は分離工程は、系から未結合リポーター150を除去するので、シグナルの検出は組み込まれたリポーターに依存する。当業者は、ゲル電気泳動法等によるサイズ分離等を含め、いずれの公知の洗浄又は分離工程も本発明と共に使用できることが容易にわかるだろう。代わりに、検出の方法として蛍光偏光を用いる場合、洗浄工程は必要ない。
【0087】
この実施形態で使用するリポーター150は、少なくとも1個の非天然塩基152を含む。リポーターの非天然塩基は、好ましくは標識154を含む。リポーター150の非天然塩基152は、PCR増幅の際、第2プライマー108の少なくとも1個の非天然塩基114の反対側にポリメラーゼによって増幅産物中に挿入される。
別の実施形態では、図6に示されるように、リポーター170は、第2プライマー108の非天然塩基114に相補的な非天然塩基172と、クエンチャー129とを含む。この実施形態では、第2プライマー108の非天然塩基114は染料162を含む。この実施形態では、リポーター170の組込みにより、クエンチャー129を染料162に近接させる。これは、順次、染料162のシグナル出力を減少させ、このシグナルの減少を検出し、標的核酸の存在と関連づけられる。好適な染料−クエンチャー対については上述した。これとは別に、染料−染料対を使用できる。標的核酸が存在する場合、PCRは、近接して2つの染料を配置する二重産物を生成し、標識の蛍光出力が変化する。この変化は、ベンチトップ蛍光プレートリーダーによって検出可能である。
この実施形態で用いるポリメラーゼは、ヌクレアーゼ活性を有し、又は低減したヌクレアーゼ活性を有し、又はヌクレアーゼ活性欠乏性でよい。好ましくは、このポリメラーゼは熱安定性ポリメラーゼである。
【0088】
検出
リポーターオリゴヌクレオチド断片の検出と解析は、技術的に公知のいずれの方法によっても達成することができる。上記標識を含有する核酸の検出に多くの方法が利用できる。例えば、ビオチン標識オリゴヌクレオチドは、ストレプトアビジン−アルカリ性ホスファターゼ接合体のようなアビジン接合体を利用する非放射性同位体検出法を用いて検出することができる。フルオレッセイン標識オリゴヌクレオチドは、フルオレッセイン−イメージャーを用いて検出することができる。
一実施形態では、さらに処理することなくPCR反応混合物内でリポーターオリゴヌクレオチドを検出することができる。例えば、切断されたオリゴヌクレオチドからのシグナルは、物理的分離の無い未切断オリゴヌクレオチドのシグナルから解明することができる。これは、例えば蛍光偏光解析によって達成することができ、蛍光分子の溶液中での大きさひいては回転速度の変化を検出することができる。
【0089】
一実施形態では、標的が存在する場合、第1及び第2標識(例えば、染料/染料対)を近接して配置する二重産物が生成される。2つの標識が近接すると、リポーター分子標識の蛍光出力が変化する。この変化は、ほとんどのベンチトップ蛍光プレートリーダーで検出できる。これとは別に、標識対は近接したクエンチャー−標識対を含む。この実施形態では、リポーター分子標識の蛍光出力が変化し、この変化は検出可能である。この発明では、他の適切な検出方法が考えられる。
別の実施形態では、さらに処理した後にリポーターが検出される。オリゴヌクレオチドを分離するのに有用な技術的に公知の多くの技法のいずれを用いても反応からリポーターオリゴヌクレオチド断片を分離できると考えられる。例えば、固相抽出によって反応混合物からリポーターオリゴヌクレオチド断片を分離することができる。電気泳動法又は電気泳動法以外の方法でリポーターオリゴヌクレオチド断片を分離することができる。例えば、ビオチン−標識オリゴヌクレオチドは、常磁性若しくは磁性ビーズ、又はアビジン(若しくはストレプトアビジン)で被覆された粒子を用いて反応混合物から分離することができる。この様式では、ビオチン化オリゴヌクレオチド/アビジン−磁性ビーズ複合体は、該複合体を磁場にさらすことによって、混合物中の他の成分から物理的に分離されうる。一実施形態では、リポーターオリゴヌクレオチド断片は、質量分析法によって解析される。
【0090】
いくつかの実施形態において、熱循環時に蛍光を読み取ることのできる機器上で増幅が行われ、かつ検出される場合、非特異性PCR産物から意図したPCR産物を区別することができる。鋳型核酸の量が制限されている場合、意図した産物以外の増幅産物が形成されうる。これは、第2プライマー108が、それ自体又は第1プライマー106と共にプライマー二量体に合体されるプライマー二量体形成のためである。プライマー二量体形成の際、2つのプライマーの3'末端がハイブリダイズし、かつ核酸ポリメラーゼにより、関与する各プライマーの5'末端まで伸長される。これが、次の一回りの増幅でこの非特異的産物をさらに指数関数的に生じさせるのに関与するプライマーの形成時の完全基質である基質を生じさせる。従って、プライマー二量体の最初の形成は、それが非常に珍しい事象である場合でさえ、特に鋳型核酸が制限され或いは不在のとき、増幅プロセスが二量体産物を該反応に打ち勝たせることができるので、有利な相互作用である必要はない。第2オリゴヌクレオチドプライマー106がこの産物中に組み込まれるとき、標識された非標準塩基170は、第2プライマー106の非標準塩基114に対して直交に配置される。この結果、リポーターの標識129と第2プライマーの162との間に相互作用をもたらし、図6Eに示されるような意図した産物120の形成におけるのと同一の蛍光出力の変化を与えるだろう。プライマー二量体産物は、通常意図した産物より長さが短く、それゆえより低い融解温度を有する。図6Eに示されるように標識は二本鎖を越えて近接に保持されるので、2本の鎖を分離する事象は、標識の相互作用を破壊するだろう。反応産物を含有する反応の温度をプライマー二量体の二本鎖DNAsのTmより高く上昇させると、意図した産物は、該産物のDNA二本鎖を融解し、かつ標識の相互作用を破壊して蛍光の測定可能な変化を与えるだろう。増幅及びシグナル生成後、徐々に反応温度を上げながら蛍光の変化を測定することによって、意図した産物のTm及び非特異的産物のTmを決定することができる。
【0091】
入れ子状PCR
本発明の方法を用いて入れ子状PCRを行うことができる。例として、第1、第2、及び第3プライマー(又はそれより多い)を用いて入れ子状PCRを行うことができる。第2プライマーは、標的配列に相補的な第1領域と、リポーターオリゴヌクレオチドに相補的な第2領域を有する。第1及び第3プライマーは、第2プライマーより高温で標的にハイブリダイズすることができる。変性及びアニーリング温度間の循環が第1及び第3プライマーを標的核酸にアニールさせるが、第2プライマーはアニールさせない、数回のPCRサイクルが行われた後、第1増幅産物が生成されうる。その後、PCRアニーリング温度を下げて、第2プライマーの第1領域を第1増幅産物にハイブリダイズさせることができる。この下げたアニーリング温度での数サイクルのPCRにより、第1及び第2プライマー間の第2増幅産物が生成する。温度を下げて、リポーターオリゴヌクレオチドの第2プライマーの第2領域へのハイブリダイゼーションを可能にする。
【0092】
DNA多型性の検出における使用
本発明の方法は、核酸配列の配列変異を検出するのに有用である。本明細書で使用する場合、用語“配列変異”は、2核酸間の核酸配列の相異を指す。例えば、野生型遺伝子とこの遺伝子の突然変異体は、単一塩基の置換若しくは欠失又は1個以上のヌクレオチド挿入の存在によって、配列が変化しうる。これら2つの遺伝子の型は、相互に配列が変わると言われている。配列変異の一例は、DNA多型性である。図7に示される実施形態では、単一のヌクレオチド多型性(SNP)の検出が例示されており、PCRを用い、蛍光プレートリーダー上にPCR反応プレートを配置すること以外はさらに試料の操作を必要としない。対立遺伝子特異性標識を含む対立遺伝子特異性リポーター又はプライマーが使用される。例えば、2つの対立遺伝子系は、異なった色の標識を有する対立遺伝子特異性リポーター又はプライマーを含んでよい。試料中の当該対立遺伝子の存在を指標するどちらかの色の存在及び当該両方の対立遺伝子を指標する2色の組合せの存在が試料中にある。
【0093】
この実施形態では、プライマーは以下のように単一のヌクレオチド多型性を検出するように設計される。好ましくは、使用するプライマーの1つは対立遺伝子特異性プライマーを含む。好ましくは、プライマーの1つは非天然塩基を含む。一実施形態では、これら両特徴が単一のプライマーによって与えられる。代わりに、対立遺伝子特異性プライマーは、非天然塩基を含むプライマーとは別個のプライマーである。
本明細書で使用する場合、用語“対立遺伝子特異性プライマー”は、SNPを含有すると推測される領域内の標的核酸に完全に相補的であるプライマーを意味する。
【0094】
SNP対立遺伝子を区別するために使用可能な対立遺伝子特異性PCRプライマーは、関心のある多型性塩基が該プライマーの3'末端に位置するように、各対立遺伝子に相補的に設計される。高レベルの対立遺伝子の区別は、その3'末端で標的DNAの3'末端、すなわち、プライマーが特異的でない対応する対立遺伝子とヌクレオチドのミスマッチがあるプライマーを伸長するポリメラーゼの能力の制限によって部分的に達成される。さらに、対立遺伝子の区別は、対立遺伝子特異性プライマー内の他の位置にミスマッチを配置することで達成することができる。一般に、対立遺伝子特異的な位置は、ミスマッチがあるとポリメラーゼがプライマーを有効に伸長できないという条件で、プライマー内のどこでもよい。好ましくは、対立遺伝子ミスマッチが、選択されたPCR条件では異なった対立遺伝子の標的核酸配列への対立遺伝子特異性プライマーのハイブリダイゼーションを十分に不安定にするようにプライマーが選択される。一実施形態では、対立遺伝子特異的な位置は、プライマーの3'末端から約5塩基以内である。例えば、対立遺伝子特異的な位置は、プライマーの3'末端塩基でよい。プライマー中の対立遺伝子特異的な位置のこれら交代性の位置を用いて、以下の2つの主な方法で選択的な増幅を達成することができる:1)プライマーのTmを下げ、ポリメラーゼの熱循環の際に鋳型DNA上でプライマーがハイブリダイズして伸長しないようにすることにより、又は2)ポリメラーゼが伸長しないであろう不都合なプライマー/鋳型構造を創造することによる。特異性の向上は、伸長停止時間、及びアニーリングと融解の停止時間が短いか、又は存在しないFast-shotTM増幅を利用することによって達成される。このような一実施形態では、反応は約90〜100℃と約50〜65℃との間で迅速に循環され、各温度で最大約1秒保持され、それによってポリメラーゼにミスマッチのプライマーを伸長する時間をほとんど残さない。例示した実施形態では、反応は約95℃と約58℃の間で循環され、各温度で最大約1秒保持される。この迅速な循環は、最短の可能なPCR産物を生成することで、一般的に、PCRプライマーの3'塩基間の鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5塩基のギャップを残すことによって可能にされる。好ましくは、プライマーは、可能な最短配列及び約55〜60℃のTmを有するように設計される。ゲノムDNA試料に関するSNP解析を含む一実施形態では、30個程度の標的分子を検出するには、総計約37サイクルで十分だった。
【0095】
図7には対立遺伝子特異的分析法の1例が示される。本明細書で議論される他の分析法を使用し、又は対立遺伝子特異的分析のために改変できることが分かるだろう。図7Aを参照すると、試料は標的核酸100を含有すると推測され、該標的核酸100は、第1部分102と第2部分104を含む。示されるように、標的核酸100は、鎖100aと100bで構成される二本鎖分子である。
図7Bを参照すると、示されるように、試料が2つ以上の対立遺伝子特異性第1プライマー106a、106bと、第2プライマー108と接触させられる。一方の対立遺伝子特異性第1プライマー106aは標的核酸100の第1部分102に相補的である。他方の対立遺伝子特異性プライマー106bは、標的核酸100の第1部分102に完全には相補的でない。第2プライマー108は、第1領域110と第2領域112を含み、第1領域110は標的核酸100の第2部分104に相補的な配列を含む。第2プライマー108の第2領域112は、非天然塩基114を含む。第2領域112は、標的核酸100に相補的でない。
【0096】
第1プライマー及び第2プライマーに加え、試料はポリメラーゼとも接触させられ、本明細書で述べるように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供される。試料中に標的核酸100が存在する場合、対立遺伝子特異性第1プライマー106aの相補性部分及び第2プライマー108の相補性部分が、塩基の標準的な対合規則に従って標的核酸100の対応する領域102及び104にアニールする。
図7Bに示されるように、ポリメラーゼを用い、PCR、つまりFast-shotTM増幅により、各プライマー106a、108の3'-OH末端から一本鎖が合成される。すなわち、対立遺伝子特異性第1プライマー106aを用い、標的核酸100の鎖100aの少なくとも一部に相補的な鎖120aが合成され、第2プライマー108を用い、標的核酸100の鎖100bの少なくとも一部に相補的な鎖120bが合成される。対立遺伝子特異性第1プライマー106bは、標的核酸100に完全には相補的でないので、実質的に伸長しない。ポリメラーゼ連鎖反応を所望のサイクル数進め、図7Cに示される増幅産物120を得ることができる。そして、図1に示される分析で述べたように分析を進める。
【0097】
キット
本発明の方法で使用する試薬を診断キットに詰めることができる。診断キットは、標識化リポーター、第1プライマー、及び第2プライマーを含む。いくつかの実施形態では、キットは、ポリメラーゼによって伸長オリゴヌクレオチド中に組み込むことができる非天然塩基を含む。一実施形態では、この非天然塩基は標識される。オリゴヌクレオチドと非天然塩基が標識されない場合、特異的な標識試薬もキットに含めることができる。キットは、他の適宜の梱包試薬及び増幅に必要な物質、例えば、緩衝液、dTNPs、重合酵素、及び検出解析のために、例えば、酵素及び固相抽出用溶媒を含むこともできる。
本発明の方法に有用な試薬は、溶液で貯蔵することができ、又は凍結乾燥することができる。凍結乾燥する場合、試薬のいくつか又はすべては、再構成後簡単に使用するため微量定量プレートウェル内に直ちに貯蔵することができる。凍結乾燥試薬の技術的に公知のいずれの方法も、本発明の方法で有用な試薬を乾かして調製するのに適すると考えられる。
【0098】
本明細書で参照又は引用されるすべての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物は、その全体がこの明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲まで、参照によって本明細書に取り込まれる。
以下は、本発明を実施する手順を説明する実施例である。これら実施例は、限定するものと考えるべきでない。特に言及しない限り、すべてのパーセンテージは質量についてであり、すべての溶媒混合割合は体積についてである。
【実施例】
【0099】
実施例1
プライマー設計
核酸成分の配列中に示される記号は以下の通りである:A=デオキシアデニレート;T=デオキシチミジレート;C=デオキシシチジレート;G=デオキシグアニレート;X=デオキシ−イソ−シトシン(d-isoC);Y=デオキシ−イソ−グアニン(d-isoG);P=標的核酸中の多型性ヌクレオチドに相補的な第1プライマーのヌクレオチド;B=核酸ポリメラーゼと、リポーターの伸長を遮断するために機能する3'末端へのビオチンTEGCPG(Glen Reserch,Sterling,VA)の付加によるリポーター核酸の3'修飾;Q=5'-ジメトキシトリチルオキシ-5-[(N-4'-カルボキシ-4(ジメチルアミノ)-アゾベンゼン)-アミノヘキシル-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン-3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホラミダイト(Dabcyl dT;Glen Reserch,Sterling,VA)の付加によってリポーター中に組み込まれるシグナルクエンチング要素(5'-5-[(N-4'-カルボキシ-4(ジメチルアミノ)-アゾベンゼン)-アミノヘキシル-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン(Dabcyl dT;Glen Reserch,Sterling,VA);FAM=シグナル生成要素(6-カルボキシフルオレッセイン(6-FAM);Glen Reserch,Sterling,VA)。下線は、鋳型に相補的でない核酸成分の部分を示す。
【0100】
核酸成分の設計は、以下のように示される。
【0101】
【0102】
第1プライマーは、約60℃のTmを有するように設計される。第2プライマーは、約61℃のTmを有するように設計される。Tmは、参照によって本明細書に取り込まれるPeyretら,Biochemistry,38,3468-77(1999)を含め、種々の公知技術によって推定することができる。
ハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである。
【0103】
【0104】
3'Gは、TaqポリメラーゼのGミスマッチを広げる傾向のため、対立遺伝子特異性プライマーの設計では避けた。
第2プライマーの第1領域、つまり3'末端は、標的核酸の第2部分、つまり下流領域に相補的だった。標的核酸上の第2プライマーの位置は、ギャップ、つまり第1及び第2プライマーの3'末端間にある標的核酸の領域を与え、0〜約5ヌクレオチドでありうる。第2プライマーの合成では、第2プライマーの第2領域内のイソ−シトシンヌクレオチド組込みは、標準的なDNA合成条件を用いて行った。
【0105】
実施例2
対立遺伝子特異性PCR
蛍光に基づいたPCR反応では、以下の核酸成分を使用した。
【0106】
【0107】
個々に20μlのPCR反応量に対するPCR反応中の成分の作用濃度(1X)は以下に示される。
【0108】
【0109】
氷上で各成分を解凍し、一緒に穏やかに混合した。10X PCR緩衝液を調製し、100mM トリスpH8.0、0.1%BSA、0.1%Triton X-100、1mg/mlの分解したニシン精子DNA(Sigma D-3159)、400mMの酢酸カリウム、及び20mM MgCl2で構成された。マスターミックス及び対立遺伝子特異性ミックスは、下記の割合で試薬を添加して調製した。
【0110】
【0111】
反応の最終体積は20μLだった。マスターミックスと第1プライマーを合わせて15μLに5μLの標的核酸を添加した。標的核酸の量は、最終利用者のニーズに応じてマスターミックスに添加する水の量を調整することで増減できる。5μLは、多チャネルピペッターで供給するのに便利な量である、対立遺伝子特異性ミックスは、以下に示されるように調製した。
【0112】
【0113】
以下のように分析プレートを調製した:15μLの対立遺伝子特異性ミックス(上述したような)を96−ウェル分析プレートに等分した。(対立遺伝子特異性ミックスは、分析で使用される各特異性第1プライマーについて調製かつ実験することができる)。標的核酸試料を、対立遺伝子特異性ミックスを含有する各ウェルに体積5μLで繰返し添加した。特定数のウェルを対照として取っておいた:各対立遺伝子特異性ミックスについてネガティブ対照(標的核酸無し)を実験すべきである。標的核酸の添加後、20μLの鉱油で反応を覆い、分析プレートをDNA熱サイクラーに移した。この手順の実際の時間は、多チャネルピペッターの使用により非常に短縮された。
分析プレートの熱循環パラメーターは以下に示される。
【0114】
【0115】
PCR循環反応後、分析プレートを蛍光シグナルの放射について調べた。分析プレートをPerSeptive Biosystems CytofluorTM4000蛍光プレートリーダーに移し、プレートの上部から読み取るように装置をセットした。プレートリーダーのパラメーターは次の通りである:485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲインを50に設定。そして、試料を読み取った。
表1は、対立遺伝子特異性プライマーを用いて得られた示度を示す。
【0116】
表1
RFU=相対蛍光単位
【0117】
実施例3
SNP検出における“Fast-shotTM”増幅と標準PCRとの比較
この実施例は、標的レベルの大きさを3桁にわたって変えることにり、“Fast-shotTM”増幅と伝統的なPCR循環パラメーターとの間の対立遺伝子の区別の相対的なレベルを示す。Fast-shotTM増幅は、プライマーの変性及びアニーリング温度間の循環を含み、これら温度は非常に短時間で停止する。
【0118】
以下の核酸成分を用いた。
【0119】
【0120】
鋳型核酸濃度は、アトモル範囲にあった。個々の20μLのPCR反応量に対するPCR反応における成分の作用濃度(1X)は、以下に示される。
【0121】
【0122】
PCR反応は、実施例2で述べたのと同一手順で調製した。
“fast shot”PCRでは、以下のPCRパラメーターを用いた。
【0123】
【0124】
伝統的なPCRでは、以下のPCRパラメーターを用いた。
【0125】
【0126】
AmplitaqTMGoldは、5'→3'エキソヌクレアーゼポジティブTaqポリメラーゼであり、AmplitaqTMStoffelは、5'→3'エキソヌクレアーゼ欠乏性Taqポリメラーゼである。
表2に示されるデータは、標的核酸レベルの大きさを3桁にわたって変えることによる“Fast-shotTM”増幅と伝統的なPCR循環パラメーターとの間の対立遺伝子の区別の相対的なレベルを示す。特異的反応(C-プライマー/G-標的、及びA-プライマー/T-標的)と、ミスマッチ反応(C-プライマー/T-標的、及びA-プライマー/G-標的)のバンド強度の比較により、対立遺伝子区別のレベルを決定することができる。表2は、これら実験で見られた区別のレベルを要約している。
【0127】
表2
【0128】
この結果に示されるように、特定の3'ミスマッチは、核酸ポリメラーゼによって容易に拡大される。この場合、伝統的なPCRパラメーターでは、AmplitaqTMGoldを含有する5'→3'エキソヌクレアーゼ及び5'→3'エキソヌクレアーゼ欠乏性AmplitaqTMStoffelDNAポリメラーゼの両者で、C/Tミスマッチが、A/Gミスマッチよりずっと多く拡大する。“Fast-shotTM”増幅を利用することで、どちらかの酵素を用いて両対立遺伝子間の1:1000レベルの区別が達成される。
【0129】
実施例4
PCR及びリポーターアニーリング
蛍光に基づいたPCR反応には、以下の核酸を使用した。
【0130】
【0131】
2μg/mlニシン精子DNA中の2fMの合成鋳型対照、及び2mM MOPS pH7.0を用いた。
次の反応の反応成分は、以下に示される。
【0132】
AMPLITAQ GOLDTM5U/μlは、Perkin Elmerから得た。
【0133】
試薬を解凍し、穏やかに混合して2つのマスターミックスを調製した。一方のマスターミックス(A)は、第2プライマーAとリポーターAを含んでいた。他方のマスターミックス(B)は、第2プライマーBとリポーターBを含んでいた。以下のようにマスターミックスを調製した。
【0134】
【0135】
反応の最終体積は20μlだった。マスターミックスと第1プライマーを合わせて15μLに5μlの標的核酸を添加した。標的核酸の量は、マスターミックスに添加する水の量を調整することで、最終利用者のニーズに応じて増減できる。
分析プレートは次にように調製した:15μlのマスターミックスを96−ウェル分析プレートのウェルに等分した(Low Profile MultiplateTM96ウェル;MJ Reseach,MLL-9601)。標的核酸試料を、マスターミックスを含有するウェルに体積5μlで繰返し添加した。いくつかのウェルには、ネガティブ対照として、標的核酸ではなく5μlの水を添加した。標的核酸又はネガティブ対照の添加後、20μLの鉱油Mineral Oil(明白色油;Sigma,M-3516)で反応を覆い、分析プレートをDNA熱サイクラーに移した。
【0136】
分析プレートの熱循環パラメーターは以下に示される。
【0137】
【0138】
追加の対照として、試料のいくつかはPCR熱循環に供しなかった。
PCR循環反応後、蛍光シグナルの放射について分析プレートを調べた。分析プレートをPerSeptive Biosystems CytofluorTM4000蛍光プレートリーダーに移し、プレートの上部から読み取るように装置をセットした。プレートリーダーのパラメーターは次の通りである:485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲインを50に設定。そして、試料を読み取った。対照としてPCR増幅前の蛍光シグナルの放射についても分析プレートを調べた。
引き続き試料を10%未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)で追跡し、次に臭化エチジウム染色を行い、増幅産物の存在を検出かつ分析プレートから得られた蛍光示度を確認した。
標的核酸鋳型の蛍光検出の結果は、表3に示される。増幅産物は、PAGE後の臭化エチジウムによっても検出された。表3では、(−)は、鋳型又は熱循環プロセスの非存在を示し、(+)は存在を示す。表3中の数は、相対蛍光単位を示す(RFUs)。
【0139】
表3
【0140】
表3に示されるように、いくつかの第2プライマー及びリポーターは、試料中に存在する標的核酸配列の存在の検出にうまく使用できる。マスターミックスA中の第2プライマー/リポーターの組合せは、マスターミックスB中の第2プライマー/リポーター組合せより強いシグナルを生成した。(シグナル強度のいくらかの差を斟酌し、マスターミックスAは、マスターミックスBよりも多くのPCR産物を含むことも分かるだろう。)シグナル強度の差は、より低温で大きいようである。しかし、マスターミックスB中の第2プライマーとリポーターは、すべての保持温度でバックグラウンドを超えるシグナルを生成したので、標的核酸配列の検出及び定量には十分だった。
【0141】
PCR産物は、PAGE及び臭化エチジウムによる染色か或いはMolecular Dynamics(Sunnyvale,CA)595 FluoroimagerTMによるフルオレッセイン蛍光の走査によって分離した。マスターミックスAとマスターミックスBの両反応について、鋳型含有反応に対応するレーンでPAGE後の臭化エチジウム染色によって増幅産物が検出された(+)。核酸鋳型を含有しない反応に対応するレーンでは、増幅産物は見られなかった(−)。これら結果は、上記分析で検出された蛍光シグナルの増加が、試料中の標的核酸配列の存在がによることを確証した。
【0142】
マスターミックスAの第2プライマー/リポーターの組合せと、マスターミックスBの第2プライマー/リポーターの組合せとの間のシグナル強度の差は、反応時の非天然塩基、isoCの分解が原因のようだった。非天然塩基、isoCは、トリス緩衝液含有溶液のような求核物質含有溶液中では、高温で分解する傾向がある。しかし、上で提示した結果は、isoCがトリス緩衝液中、高温で使用するのに適することを示している。
本発明の方法の効率を最適化するため、非天然塩基、isoCを使用する場合は、ホットスタート活性化を必要としないポリメラーゼと、事実上非求核性である緩衝液を使用すべきである。
【0143】
実施例5
乾燥プレート調製
本発明の方法に必要な試薬のいくらか又はすべては、貯蔵に便利かつ使用しやすいように乾燥することができる。例えば、40mM酢酸カリウム、20mM MgCl2、50μM dNTPs(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、1単位/反応のAMPLITAQ GOLDTMポリメラーゼ、後述するような糖、及び8μMリポーターを含有するマスターミックスとして反応を設定することができる。マスターミックスを96ウェル微量定量プレートのウェル内に等分し、SPEEDVACTM(Savant Instruments,Holbrook,New York)内で45〜50分間(加熱せず)乾燥する。乾燥後、1
DESPIAKTM(Trocken,Germany)を有する真空バッグ内に置かれたMICROSEAL ATMフィルム(MJ Research,Waltham,MA)でプレートを覆い、バッグをアルゴンで充填し、FOOD SAVERTM(Tilia,San Franscisco,CA)で封鎖することができる。種々の糖(マンノース、ラフィノース、スクロース、及びトレハロース(Sigma,St.Louis,MO))を種々の濃度(1質量%、2質量%、5質量%、及び10質量%)で使用することができる。
【0144】
反応ミックスは、核酸標的、第1プライマー、第2プライマー、及び任意にリポーターを含有する水中で再構成することができる。そして、反応ミックスをPCRに供することができる。
このように、乾燥した試薬は、容易に再構成し、かつPCRでうまく使用することができる。このような凍結乾燥試薬は長期間室温で貯蔵することができる。試薬のいくつか又はすべては、乾燥することができる。本発明の所定の方法で必要な凍結乾燥試薬のいくつか又はすべては、再構成後の使用のため微量定量プレートのウェル内に貯蔵することができる。
【0145】
実施例6
非天然塩基のPCR組込みを含む分析
以下の実施例は、第2プライマーの標識近傍の位置におけるDNA二重鎖を横切るヌクレオチド三リン酸の部位特異性組込み(SSI)による第2プライマー上の標識のシグナルをクエンチすることによるPCR産物の集積を監視する方法を説明する。標識化ヌクレオチド三リン酸は、PCR伸長の際、伸長している第1プライマー中に組み込まれる。標識化ヌクレオチド三リン酸の標識は、第2プライマー上の標識をクエンチすることができる。代わりに、第2プライマーの標識(供与体染料)とリポーターの標識(受容体染料)との間に蛍光エネルギー転移(FRET)を観察することができる。PCR産物の検出は、供与体染料を励起し、かつ組み込まれた受容体染料の放射を読み取ることによって観察できる。
【0146】
PCR反応には、以下の核酸成分を使用した。
【0147】
【0148】
“c3”は、プロピルスペーサーを示し、第1プライマーの合成の際にヌクレオチドの代わりに化学的に導入された。第1プライマーの合成で用いるホスホラミダイトは、3-O-ジメチルトリチル-プロピル-1-[2-シアノエチル-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホラミダイト(スペーサーホスホラミダイトC3;Glen Reserch,Sterling,VA)だった。任意に、ヌクレオチド修飾を含め、同一のヌクレオチド配列を含有するが、プロピルスペーサーを欠いたオリゴヌクレオチドをPCR反応の第1プライマー用の代用物として使用することができる。
【0149】
これら系の設計では、標識化ヌクレオチド三リン酸が第2プライマーA又はBの標識近傍の塩基に相補的であることが好ましい。標識される天然に存在するヌクレオチド塩基を使用する場合、第2プライマーA又はBの標識近傍の該相補性塩基を組み込む能力は、限定された場合のみに可能である。これは、すべての4つの天然に存在するヌクレオチド塩基は、おそらく他の位置で組み込まれるからである。例えば、isoG及びisoCのような標識化非天然塩基を使用することによって、標識化非天然塩基は、相補的な非天然塩基の向かい側だけに組み込まれ、第2プライマーA又はBの標識近傍に配置されるうる。
【0150】
標識された非天然塩基及び天然に存在するヌクレオチド三リン酸を使用する系は、試料中に存在する標的核酸(鋳型)の量を検出又は定量する分析において、クエンチャー染料(QSY7TM)で標識された天然に存在するヌクレオチド(dTTP)を利用する。この実施例では、標識された天然に存在するヌクレオチドが、PCR伸長の際、第2プライマーAの標識(FAM)の向かい側、かつ近傍の位置で第1プライマー中に組み込まれた。試料中に存在する標的核酸(鋳型)の量を検出又は定量するための分析において、クエンチャー染料(QSY7TM)で標識された非天然塩基、isoG(dGisoTP)を使用する系も実施することができる。この実施例では、標識された天然に存在するヌクレオチドが、PCR伸長の際、isoC(X)の向かい側、第2プライマーBの標識(FAB)の近傍の位置で、第1プライマー中に組み込まれた。QSY7TMdTTP及びQSY7TMdGisoTPの化学構造は以下に示される。
【0151】
【化3】
【0152】
【化4】
【0153】
PCR反応を行い、PCRにおける部位特異的組込みによる蛍光クエンチングを示した。PCR条件:25μlの反応量中、0.2μMの第1プライマー、0.2μMの第2プライマーA、0.4pMの鋳型核酸、50μMのdATP、dGTP、及びdCTP、10mMトリスpH8、0.1%BSA、0.1%TritonTMX-100、0.1μg/μl分解ニシン精子DNA、40mM KAc、2mM MgCl2、1単位のKlentaqTMDNAポリメラーゼ(Ab Peptides,St/Louis,MO)、及び0又は3.9uM QSY7TMdTTP。
PCR条件は、以下に示される。
【0154】
【0155】
反応は、CytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(485nm励起/530nm放射)による蛍光について、又はゲル電気泳動法によって解析した。70℃で6秒の保持時間を使用して、正確な蛍光示度を得た。結果は、表4に示される。
PCR反応は、TypoonTM蛍光スキャナー(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)を用いて6FAMについて走査した10%未変性ポリアクリルアミドゲルに基づいて解明した。産物バンドに含まれ相対蛍光単位(RFU's)は、(+)QSY7TMdTTP反応では1,325,644であり、(−)QSY7TMdTTP反応では41,462,945だった。ポリアクリルアミドゲルは、臭化エチジウム(10mMトリス-HCl、1mM EDTA中50μg/ml)で染色もした。臭化エチジウム染色からの産物バンドの定量化は、(+)QSY7TMdTTP反応では21,993RFU's、(−)QSY7TMdTTP反応では25,537RFU'sを示した。
【0156】
表4は、35サイクルのPCRの前後でPCR反応ウェル内で読み取られた正味のRFU'sを示す。
【0157】
表4
【0158】
これらの結果は、標識化ヌクレオチド三リン酸(QSY7TMdTTP)が、PCRの際に第2プライマーのフルオレッセイン標識(FAM)の向かい側で二重鎖中に組み込まれるとき、蛍光強度が27倍減少することを示す。
この実施例の核酸成分を用いて、部位特異的組込み(SSI)によるPCR産物の集積の“リアルタイム”モニタリングをも実証した。
【0159】
PCR条件は以下の通りだった:15μlの反応量中、0.2μMの第1プライマー、0.2μMの第2プライマーA、0.33pMの鋳型、50μMのdATP、dGTP、及びdCTP、10mMトリスpH8、0.1%BSA、0.1%Triton X-100、0.1μg/μl分解ニシン精子DNA、40mM KAc、2mM MgCl2、1単位のKlentaqTMDNAポリメラーゼ(Ab Peptides,St/Louis,MO)、及び0又は3uM QSY7TMdTTP。
【0160】
PCR条件:
(*X=6,11,16,21,26,31,又は36)
【0161】
反応は、CytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(PE Biosystems,Foster City,CA)による蛍光について(485nm励起/530nm放射)、又はゲル電気泳動法によって解析した。図14に結果を示す。
図14は、相対蛍光対PCRサイクル数を示す。QSY7TMdTTP含有反応もゲル電気泳動法で調べた(10%未変性ポリアクリルアミドゲルについて5μl)。臭化エチジウム(10mMトリス-HCl、1mM EDTA中50μg/ml)によるゲルの染色は、予想された産物の集積を示した。QSY7TMdTTP含有反応の蛍光は、ゲル解析で示されたPCR産物の状況及び集積と一致する。これら結果は、標的濃度に対するクエンチングに相関するPCRの回数は、試料中に存在する標的の量を数量化できることをも示した。例えば、存在する標的が多いほど、クエンチングが速く起こるだろう。
【0162】
上述の実施例では、正確な蛍光測定のために70℃で6秒の保持時間を用いた。このような保持時間は、プライマー間のギャップを越え、かつプライマーを越えて組み込まれる不可欠な数の塩基については必要ない。蛍光が測定されない場合、70℃での保持時間は必要ない。蛍光示度、又は他の適切な測定値を得るために保持時間が必要な場合、保持温度は、第1プライマーが標的配列に効率的にハイブリダイズできる温度より高い温度が好ましい。一実施形態では、保持温度は、第1プライマーの融解温度より10℃以上高い。
【0163】
実施例7
標識化非天然塩基の合成
本発明の方法及びキットに好適な標識化非天然塩基は種々の方法で製造することができる。標識化−デオキシイソグアノシン5'-三リン酸の2種の合成スキームが提供される:方法Aは図15に示され、方法Aの化合物(化合物1〜8、8a〜8dを含む)はセクションAで述べられ;方法Bは図16に示され、方法Bの化合物(化合物9〜18)はセクションBで述べられる。
【0164】
セクションA
方法Aによる標識化−デオキシイソグアノシン5'-三リン酸の合成に関与する以下の化学反応のため、SephadexTMDEAEセルロース、ω-アミノブチルアガロースゲル及びトリブチルアンモニウムピロリン酸はSigmaから購入し;ビオチン2-ニトロフェニルエステル、6-カルボキシフルオレッセイン N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、及び6-カルボキシテトラメチルローダミン N-ヒドロキシスクシンイミドはBerry & Associatesから購入し;QSY7TM NヒドロキシスクシンイミドエステルはMolecular Probesから購入し;他の全化学薬品はAldrich Chemical Co.又はFisher Chemical Co.から購入し、さらに精製せずに使用した。溶媒は、4Å分子ふるい上で乾燥した。反応は、乾燥アルゴン下、オーブン−ドライガラスシステム内で行った。“エバポレーション”は、膜ポンプによる揮発性溶媒の除去を指す。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(230〜425メッシュ)で行った。
【0165】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノ-2-クロロプリン 2'-デオキシ-3',5'-ジ-トルイルリボシド2:
DMF(100ml)に溶解した2,6-ジクロロ-2'-デオキシ-3',5'-ジトルイルリボシド1(1当量, 5mmol,2.705g)を、室温で、200ml DMF中ヘキサメチレンジアミン(20当量, 100mmol, 11.60g)の撹拌溶液に40分かけて添加した。溶液を50℃で2.5時間撹拌してから室温に冷まし、濃縮して残留物を抽出した(水/酢酸エチル)。有機層を水で洗浄し(5×50ml)、乾燥し(Na2SO4)、溶媒をエバポレートしてフォームとして2.673g(4.308mmol, 86%)の生成物2を得た。
【0166】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノ-2-クロロプリン2'-デオキシリボシド3:
上で得られた化合物2(4.308mmol,2.673g)を20mlメタノールに溶解し、0℃にてアンモニアで飽和させ、封管に入れた。それを80℃で1時間加熱し、0℃に冷却した。管を開け、溶媒を膜ポンプ真空下でエバポレートした。残留物をエーテル/ヘキサンで3回処理し、得られた粉末を真空中乾燥し、さらに精製せずに次工程で使用した。
【0167】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノ-2-フェノキシプリン2'-デオキシリボシド4:
上で得られた化合物3(最大4.308mmol)をDMF(15ml)に溶解し、ベンジルアルコール(43ml)中のNaH溶液(12当量,51.69mmol,鉱油に60%分散の2.068g)を添加した。それを100℃で2時間撹拌し、室温に冷却した。酢酸を添加(12当量)して反応混合物を中和した。その結果の溶液をCeliteTM上でろ過し、ろ液をエバポレートし、得られた残留物をさらに精製せずに次工程で使用した。
【0168】
6-(6-トリフルオロアセチルアミドヘキシル)-アミノ-2-フェノキシプリン2'-デオキシリボシド5:
上で得られた生成物をメタノール(30ml)/トリフルオロ酢酸エチル(30ml)の混合物に溶解し、室温で24時間撹拌した。溶媒及び過剰のトリフルオロ酢酸エチルをエバポレーションで除去し、残留物をクロロホルム中1.5%メタノール、そしてクロロホルム中17.5メタノールの一段階勾配を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量:626mg(1.134mmol,3段階で26%)。
【0169】
6-(6-トリフルオロアセチルアミドヘキシル)-アミノ-3-フェノキシプリン2'-デオキシリボシド5'-三リン酸6:
1,2,4-トリアゾール(4.5当量,0.585mmol,40mg)を0.5mlのアセトニトリル/4.5当量のトリエチルアミン(0.585mmol,0.081ml)の混合物に溶解し、そのフラスコを氷浴内に入れた。オキシ塩化リン(1.5当量,0.195mmol,0.018ml)を添加し、それを室温で30分間撹拌した。それをろ過し、固体を最小量のアセトニトリルで洗浄し、ろ液を化合物5(1当量,0.13mmol,72mg)に添加した。をれを30分間室温で撹拌してからDMF(2ml)中トリブチルアンモニウムピロリン酸(89mg)の溶液を添加し、19時間撹拌を続けた。そして、水(1ml)を添加して残存トリアゾリド基を加水分解した。30分間撹拌後、反応混合物を真空中30℃で濃縮し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配を用いてDEAEセルロース上のカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を0.4〜0.5Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションを30℃でエバポレートし、さらに使用した。
【0170】
N6-(6-アミノヘキシル)-2'-デオキシイソグアノシン5'-三リン酸7:
上で得られた化合物をメタノールと共にエバポレートし、メタノール(5ml)に溶解した。Pd/C(10質量%,10mg)及びHCOONH4(63mg)を添加し、還流下45分間撹拌した。それを室温に冷却し、触媒からろ過し、かつ触媒を熱水で洗浄し、その混合ろ液を真空中で濃縮した。残留物を28%水酸化アンモニウム水溶液(3ml)に溶解し、室温で3時間撹拌し、真空中濃縮し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配を用いてDEAEセルロース上のカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を0.3〜0.4Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションをエバポレートし、さらに使用した。
【0171】
N6-(6-Tamra-アミドヘキシル)-2'-デオキシイソグアノシン5'-三リン酸8a:
化合物7(そのトリエチルアンモニウム塩として約1mg)を0.2mlの0.1M TEAB緩衝液に溶解し、DMF(0.2ml)に溶解した6-カルボキシテトラメチルローダミンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(10mg)を添加した。それを35℃で3時間撹拌してからω-アミノブチルアガロースを添加して過剰のTamraTMを結合させ、さらに1時間撹拌し、反応混合物をDEAEセルロースカラムに装填し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配で溶離した。生成物を0.4Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションを30℃でエバポレートした。
化合物8b及び8dは、6-カルボキシテトラメチルローダミンN-ヒドロキシスクシンイミドエステルの代わりに、それぞれ、6-カルボキシフルオレッセインN-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びQSY7TM N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて、化合物8aと同様に調製される。
【0172】
N6-(6-ビオチニルアミドヘキシル)-2'-デオキシイソグアノシン5'-三リン酸8c:
化合物7(そのトリエチルアンモニウム塩として約1mg)を0.2mlの水に溶解し、DMF(0.2ml)に溶解したビオチン2-ニトロフェニルエステル(10mg)を添加した。溶液は明黄色に変わった。それを35℃で1時間撹拌し、ω-アミノブチルアガロースを添加して過剰のビオチンを結合させ、さらに1時間撹拌し、反応混合物をDEAEセルロースカラムに装填し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配で溶離した。生成物を0.4Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションを30℃でエバポレートした。
【0173】
セクションB
方法Aによる標識化−デオキシイソグアノシン5'-三リン酸の合成に関与する以下の化学反応のため、トリブチルアンモニウムピロリン酸はSigmaから購入し;ビオチンNヒドロキシスクシンイミドエステルはPierce Chemical Companyから購入し;QSY7TM N-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びDabcyl N-ヒドロキシスクシンイミドはMolecular Probesから購入し;他の全化学薬品はAldrich Chemical Co.又はFisher Chemical Co.から購入し、さらに精製せずに使用した。溶媒は、4Å分子ふるい上で乾燥した。反応は、乾燥アルゴン下、オーブン−ドライガラス製品内で行った。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(230〜425メッシュ)で行った。
以下の略語を使用した:Ac2O(無水酢酸);DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);DMAP(4,4'-ジメチルアミノピリジン);DMT(4,4'-ジメトキシトリチル);Et3N(トリエチルアミン);MeCN(アセトニトリル);MeOH(メチルアルコール);Tol(p-トルイル)。
【0174】
1-(p,p'-ジメトキシトリチル)-ヘキサメチレンジアミン(9)
ヘキサメチレンジアミン(10当量,375mmol,43.5g)を2回ピリジンから共エバポレートし、100mlのピリジンに溶解した。DMAP(0.1当量,3.75mmol,457mg)を添加し、反応フラスコを氷浴内に置いた。100mlピリジンに溶解したDMT-クロライド(1当量,37.5mmol,12.69g)を2時間かけて滴下添加した。それを室温で4時間撹拌し、MeOH(5ml)を添加し、反応混合物を濃縮し、残存残留物を水性NaHCO3/酢酸エチルで抽出した。有機層を2回NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥し、溶媒をエバポレートした。得られた生成物をさらに精製せずに次工程で使用した。
収量:14.895g(65.634mmol,95%)粘着性油。
【0175】
2-クロロ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-2'-デオキシ-3',5'-ジトルイルリボシド(10)
化合物9(1.3当量,31.916mmol,13.34g)をDMFと共に共エバポレートし、100mlのDMFに溶解した。100mlのDMFに溶解したジイソプロピルエチルアミン(3.9当量,95.748mmol,16.65ml)及び化合物1(1当量,24.551mmol,13.282g)を添加し、室温で3時間撹拌した。それを濃縮し、残留物を水性NaHCO3/酢酸エチルで抽出し、有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートした。残留物をエーテルと共に2回こね、固体生成物を得、さらに真空中で乾燥後さらに精製せずに使用した。
【0176】
2-ベンジルオキシ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-2'-デオキシリボシド(11)
化合物10(1当量,19.23mmol,17.74g)をDMF(25ml)に溶解し、ベンジルアルコール(128mL)中のNaH(10当量,192.3mmol, 鉱油中に分散の7.69g)溶液に添加した。反応混合物を加熱してから(120℃,6時間)室温で(15時間)撹拌後、CeliteTM上でろ過し、ろ液をエバポレートし、残留物を抽出し(酢酸エチル/水)、有機層を洗浄(NaHCO3−溶液)、乾燥し、溶媒を除去し、残留物をエーテル/ヘキサン1:10と共に5回こねた。TLC:CHCl3/10%MeOH RF=0.26。収量:10.280g(13.562mmol,2段階で70.5%)フォーム。
【0177】
2-ベンジルオキシ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-2'-デオキシ-5'-O-p,p'-ジメトキシトリチルリボシド(12)
化合物11(14.7388mmol,11.172g)をピリミジンで共エバポレートし、150mlのピリジンに溶解し、DMAP(0.25当量,3.6847mmol,450mg)を添加した。フラスコを氷浴内に置き、DMTC1(1.5当量,22.108mmol,7.848g)を2時間かけてゆっくり添加した。それを室温で22時間撹拌してからMeOH(1ml)を添加し、反応混合物を濃縮し、残留物を抽出した(クロロホルム/水性NaHCO3)。有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートし、残留物をエーテル/ヘキサン1:1と共ににこねて過剰のDMTを除去し、不溶性の固体生成物を乾燥し、精製せずにさらに使用した。
収量:14.890g(14.047mmol,95%)明褐色フォーム。
【0178】
2-ベンジルオキシ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-2'-デオキシ-5'-O-p,p'-ジメトキシトリチルリボシド(13)
化合物12(14.047mmol,14.89g)をピリミジンで共エバポレートし、200mlのピリジンに溶解し、DMAP(0.25当量,3.5117mmol,428mg)、ET3N(5当量,70.235mmol,9.7ml)及びAc2O(2.5当量,35.1175mmol,3.582g)を添加した。それを室温で4.5時間撹拌してからMeOH(2ml)を添加し、反応混合物を濃縮し、残留物を抽出した(酢酸エチル/水性NaHCO3)。有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートし、残留物を、酢酸エチル/ヘキサン/ET3N 30:60:1、それから65:35:3の一段階勾配を用いてカラムクロマトグラフィーで精製した。収量:5.93g(5.385mmol,38%)黄色フォーム。
【0179】
2-ベンジルオキシ-6-(6-アミノヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-2'-デオキシリボシド(14)
化合物14(2.471mmol,2.723g)を50mlのアセトニトリル/2mlの水に溶解し、Ce(CH4)2(NO3)3(0.3当量,0.74mmol,406mg)を添加した。それを45分間還流し、さらに0.15当量のCe(CH4)2(NO3)3(0.37mmol,205mg)を添加し、1時間還流を続けた。それをエバポレートし、残留物をエーテルと共にこねてDMTを除去し、不溶性生成物を乾燥し、さらに精製せずにさらに使用した。
【0180】
2-ベンジルオキシ-6-(6-トリフルオロアセトアミドヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-2'-デオキシリボシド(15)
上で得られた化合物14(最大5.385mmol)を30mlのMeOH/50mlのトリフルオロ酢酸エチル/5mlのEt2Nに溶解し、反応混合物を室温で21.5時間撹拌した。TLC(クロロホルム/17.5%MeOH):RF=0.72)は完全な転換を示した。それをエバポレートし、残留物を抽出し(食塩水/酢酸エチル)、有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートして残留物をクロロホルム/1.5%MeOH、それから17.5%MeOHの一段階勾配を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。収量:2.80g(4.714mmol,87%)フォーム。
【0181】
2-ベンジルオキシ-6-(6-トリフルオロアセトアミドヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(16)
イミダゾール(61当量,306mg,4.5mmol,再結晶)をアセトニトリル(3.6mL)に溶解し、冷却した(0℃)。POCl3(19当量,0.128mL)及びトリエチルアミン(61当量,0.633mL)を添加し、混合物を撹拌後(0℃,0.5時間)一部(0.309mL)を化合物15(1当量,0.074mmol,44mg)に添加した。この混合物を撹拌後(室温,0.5時間)、トリブチルアンモニウムピロリン酸(2当量,0.16mmol,73mg)を含有するDMF(1.5mL)を添加した。24時間後に反応をクエンチし(2mL,10%NH4COO)、凍結乾燥した。生成物を20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCNの勾配を用いてアニオン交換クロマトグラフィー(Dionex ProPacTMSAX-10;Dionex,Sunnyvale,CA)によって精製した。集めた生成物を繰返し凍結乾燥し、過剰の塩を除去した。収量0.007mmol(10%)、白色固体。
【0182】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(7)
化合物16(0.007mmol)をメタノール(2.5mL)に溶解後、Pd/C(10%,5mg)及びNH4COO(0.05mmol,31mg)を添加した。懸濁液を還流後(1時間)触媒をろ過して除き、溶媒をエバポレートした。残留物を28%水酸化アンモニウムで処理後(1.5mL,3時間,室温)反応生成物を乾燥し、20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCNの勾配を用いてアニオン交換クロマトグラフィー(Dionex ProPacTMSAX-10;Dionex,Sunnyvale,CA)によって精製した。集めた生成物を繰返し凍結乾燥し、過剰の塩を除去した。収量0.0063mmol(90%)、白色固体。
【0183】
6-(6-ビオチニルアミドヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(8c)、6-(6-dabcylアミドヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(17a)、6-(6-QSY7TMアミドヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(17b)
H2O中(40μL)化合物7(0.88μmol,トリエチルアンモニウム塩)に、ホウ酸ナトリウム(10.5μL,1M,pH8.5)を添加し、次いでビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、dabcyl N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又はQSY7TM N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.6μmol,3当量)を含有するDMF(216mL)を添加した。反応を進行後(3時間,55℃)、それを20%MeCNで希釈し、生成物を、20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCNの勾配を用いてアニオン交換クロマトグラフィー(Dionex ProPacTMSAX-10;Dionex,Sunnyvale,CA)によって精製した。収率50〜80%。
【0184】
実施例8
蛍光−クエンチング非標準デオキシ−ヌクレオチド三リン酸の部位特異的組込みの“リアルタイム”モニタリング。
PCR反応の循環の際に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。PCR反応は、第1及び第2プライマーを含み、第2プライマーは、その5'末端に発蛍光団結合ヌクレオチド(FAM-dT)を含む。鋳型核酸の増幅の際、蛍光クエンチング化合物(Dabcy又はQSY7TM)に結合している標準のヌクレオシド三リン酸(反応A;dTTP)又はisoGヌクレオシド三リン酸(反応B;dGisoTP)が、第2プライマーの発蛍光団−結合ヌクレオシドに(FAM-dT)[向かい側かつ隣接して]組み込まれ、PCR反応における蛍光シグナルが減少する。
【0185】
この実施例では、以下の核酸をPCR反応に使用した。
【0186】
【0187】
“c3”は、プロピルスペーサーを示し、第1プライマーの合成時にヌクレオチドの代わりに化学的に導入された。第1プライマーの合成で用いたホスホラミダイトは、3-O-ジメチルトリチル-プロピル-1-[2-シアノエチル-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホラミダイトだった(スペーサーホスホラミダイトC3;Glen Research,Sterling,VA)。任意に、ヌクレオチド修飾を含め、同一のヌクレオチド配列を含有するが、プロピルスペーサーを欠いているオリゴヌクレオチドをPCR反応の第1プライマーの代用物として使用できる。
【0188】
全PCR反応で、以下の成分(基本PCR反応成分)が指示濃度で存在した。
【0189】
上記成分を調製した。
【0190】
第2プライマーA、第2プライマーB、dTTP、DabcyldTTP(Glen Research,Sterling,VA)、DabcylGisoTP及びQSY7TMdGisoTPは、以下のPCR反応で可変成分だった。これら成分を、以下に示されるように、PCR反応A〜Jに下記濃度で添加した。
【0191】
【0192】
反応は、最終体積25μLに調製した。反応混合物を25μLのSmart Cycler PCR管(Cepheid,Sunnyvale,CA)に充填した。PCR管を微小遠心分離機内で6秒間回転させ、反応チャンバー内に液体を引いた。PCR反応を含む管をSmart CyclerTM(Cepheid,Sunnyvale,CA)内に置き、全PCR反応の間、蛍光を絶え間なく監視した。
【0193】
熱循環パラメーター:
*2〜41循環の3工程時に、Smart CyclerTMのオプティクスを活性化し、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
【0194】
41サイクルのPCR増幅後、蛍光モニタリングオプティクスにて毎秒0.2℃の割合でPCR管内の温度を60℃から95℃に上昇させることによって、PCR反応産物を融解曲線解析に供した。
PCR反応A、B、及びCからのPCR反応産物の蛍光クエンチングが図17Aに示され、これらPCR産物の融解曲線解析が図17Aに示される。これら結果は、それぞれ、発蛍光団−結合標準ヌクレオシド含有第2プライマー又は非標準ヌクレオシド含有第2プライマーと組み合わせてクエンチング化合物−結合標準ヌクレオシド三リン酸又はクエンチング化合物−結合isoGヌクレオシド三リン酸を含む試料内でPCR反応の蛍光がクエンチされることを示している。融解曲線データは、発蛍光団−結合核酸鎖をクエンチング化合物−結合核鎖から分離することで反応産物内の蛍光が復元されることを示している。
PCR反応D、E、F、及びGからのPCR反応産物の蛍光クエンチングは、図18Aに示される。PCR反応H、I、及びJからのPCR反応産物の蛍光クエンチングは、図18Bに示される。
【0195】
実施例9
ゲノムDNAのリアルタイム定量化
PCR反応の循環及びゲノムDNA試料からの核酸鋳型の増幅時に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。PCR反応は、第1プライマーと、2個の非標準ヌクレオチド(iso-G及びiso-C)を含有する第2プライマーとを含み;プライマーはハイブリダイズしてマウスゲノムDNAの領域を増幅するように設計した。PCR反応は、非標準ヌクレオチド(iso-G)を含有するリポーター核酸、蛍光クエンチング化合物−結合ヌクレオチド(Dabcyl dT)、及び該リポーターの5'塩基(T)に結合した発蛍光団(6FAM)をも含んでいた。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物へのリポーター核酸のアニーリングが、蛍光クエンチング化合物−結合ヌクレオチドを含有するリポーター核酸からの核酸ポリメラーゼ活性による発蛍光団の切断をもたらしうる。
【0196】
この実施例では、以下の核酸をPCR反応で使用した。
【0197】
【0198】
マウスゲノムDNAは、Jackson研究所(Bar Harbor,ME)から得、1mM MOPSpH7.5、0.01mM EDTA中に希釈した。鋳型Aでは、マウス株A/JゲノムDNAを連続的に濃度5ng/μl、2.5ng/μl、1.25ng/μl、0.63ng/μl、0.31ng/μl、及び0.16ng/μlに希釈した。鋳型Bでは、マウス株C57BL/6JゲノムDNAを連続的に濃度20ng/μl、2ng/μl、0.2ng/μl、20pg/μl、2pg/μl、及び0.2pg/μlに希釈した。ゲノムDNA希釈シリーズを5分間煮沸し、氷上に5分間置き、-20℃で貯蔵した。
【0199】
マウスゲノム中の特定の標的核酸配列のPCR増幅及び検出用にプライマーを合成した。最初の標的核酸配列は、A/JマウスゲノムDNA、座L11316、染色体3−9.679P(設計A)を用いてこの手順の実行可能性を評価するために選択した。さらなるゲノムDNA定量化のために選択した標的配列は、マウス株C57BL/6J、座R75378、染色体10−41.5F(設計B)だった。第1プライマーA及び第1プライマーBは、60.0〜63.0℃のTmを有するように設計される。第2プライマーA及び第2プライマーBは、61.0〜63.0℃のTmを有するように設計される。Macintosh用のOligo 4.0TMソフトウェア(National Bioscience,Minneapolis,MN)を用いて、全プライマーを二次構造形成について評価した。
【0200】
この実施例の全PCR反応には、以下の成分(基本PCR成分)が指示濃度で存在した。
【0201】
【0202】
上記成分を含有する(第1プライマーA及び第2プライマーAと共に)マスターミックスAは、25μLの最終反応量に対して1.04X濃度で調製した。
上記成分を含有する(第1プライマーB及び第2プライマーBと共に)マスターミックスBは、25μLの最終反応量に対して1.25X濃度で調製した。
設計A反応混合物は、5ng/μL、2.5ng/μL、1.25ng/μL、0.63ng/μL、0.31ng/μL、及び0.16ng/μLの各A/Jゲノム標的DNA希釈1μLを、24μLのPCR Aマスターミックスを含有する25μLのSmart CyclerTMPCR管に添加することによって作製した。管を微小遠心分離機内で6秒間回転させ、液体を反応チャンバー内に引いた。個々のPCR管は、それぞれ核酸標的数1500、750、375、188、94、及び47ハプロイド当量に相当する5ng、2.5ng、1.25ng、630pg、30pg、及び160pgのA/Jゲノム標的DNAを含んでいた。
【0203】
設計B反応混合物は、20ng/μL、2ng/μL、0.2ng/μL、20pg/μL、及び2pg/μLの各C57BL/6Jゲノム標的DNA希釈5μLを、20μLのPCRマスターミックスBを含有する熱循環プレートウェル又は各リアルタイム熱サイクラー特有の管に添加することによって作製した。個々のPCR管又はウェルは、それぞれ核酸標的数30,000標的、3,000標的、300標的、30標的、及び3標的に相当する100ng、10ng、1ng、100pg、及び10pgのC57BL/6Jゲノム標的DNAを含んでいた。反応を微量定量プレート内で行うときは、試料量の蒸発を防ぐため熱循環の前に15μLの鉱油オーバレイを各ウェルに添加した。
【0204】
設計A反応混合物をSmart CyclerTM内に置き、次の条件下で循環させた。
【0205】
*サイクル#17〜51の2工程時に、動的プロットを生成するため、リアルタイムPCR熱サイクラーのオプティクスを活性化してFAM−生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
これら反応の蛍光示度は、図19に示される。
【0206】
設計B反応混合物を、下記のリアルタイムPCR熱サイクラー内に個々別々に置き:
1)Smart CyclerTM25μL管(Cepheid;Sunnyvale,CA)を用いるSmart CyclerTM(Cepheid;Sunnyvale,CA)
2)Light CyclerTM管(Roche;Basel,Switzerland)を用いるSmart CyclerTM(Roche;Basel,Switzerland)
3)96-ウェル微量定量プレート(MJ Research Inc.;Waltham,MA)を用いるiCyclerTM(BioRad;Hercules,CA)
4)MicroAmpTM光学96-ウェル反応プレートウェル(Applied Biosystems;Foster City,CA)を用いる7700(Applied Biosystems,Foster City,CA)かつ以下の条件下で循環させた。
【0207】
*2〜41循環の3工程時に、Smart CyclerTMのオプティクスを活性化し、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
【0208】
閾値サイクル(Ct)及び分散の相関関係(Cv)法によって、蛍光の読取り情報を解析した。閾値サイクルは、システムが、対数−線形期の際にPCR産物の指数関数的成長に伴うシグナルの増加を検出し始める時である。対数−線形期の傾斜は増幅効率の反映であり、真正な増幅は該傾斜の屈折点、すなわち対数−線形期が始まる時の成長曲線上の点で示される。この点は、成長曲線に沿った変化の最大割合をも表す。核酸定量化はCtに関連し、核酸の初期量が多いほどCt値は低い。Ctは、どのベースライン活性より上、かつ指数関数的増加期以内に置かれるべきである。
【0209】
実施例10
RNAのリアルタイム定量化
PCR反応の循環及びRNA試料からの核酸鋳型の増幅の際に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。ヒトβ-アクチンmRNAの検出及び定量化のためにDNAプライマーを合成した。cDNA/第1プライマーがヒトβ-アクチンmRNAの5'領域上の配列にハイブリダイズし、逆転写酵素によるcDNA合成を開始する。cDNA/第1プライマーと、2個の非標準ヌクレオチド(iso-C及びiso-G)を含む第2プライマーとを、鋳型としてcDNAを用いるヒトβ-アクチン配列の増幅に用いた。PCR反応はリポーター核酸をも含み、これは非標準ヌクレオチド(iso-G)、蛍光クエンチング化合物−結合ヌクレオチド(Dabcyl dT)、及び該リポーターの5'塩基(T)に結合した発蛍光団(6FAM)を含有する。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物にリポーター核酸をアニーリングすると、核酸ポリメラーゼ活性による蛍光クエンチング化合物に結合したリポーター核酸からの発蛍光団の切断が起こる。
【0210】
この実施例の逆転写-PCR(RT-PCR)反応に以下の核酸を使用した。
【0211】
【0212】
単一ドナー由来の全ヒト心臓RNAは、Clontech(Palo Alto,CA)から得た。RNA試料は、5mMビス-トリス-プロパンpH8.9、0.1mM ETDA、100ng/ml酵母tRNA(Sigma, St.Louis,MO)及び100ng/mlの剪断されたニシン精子DNA(Sigma, St.Louis,MO)で構成される緩衝液に20ng/μl、2ng/μl、200pg/μl、20pg/μl、2pg/μl及び0.2 pg/μlに希釈した。
【0213】
全PCR反応で、以下の成分(基本PCR反応成分)が指示濃度で存在した。
【0214】
【0215】
表Xに示される試薬を含有するRT-PCRマスターミックスは、25μLの最終反応量のためにヌクレアーゼの無いH2Oを用いて1.25X濃度で調製した。RT-PCR反応混合物は、20μLの1.25X RT-PCRマスターミックスを25μLのSmart CyclerTMPCR管にそれぞれ希釈したRNA試料5μLに添加することによって調製した。そして、管を微小遠心分離機内で6秒間回転させて反応チャンバー内に液体を引いた。
【0216】
遠心分離後、すぐに反応混合物をSmart CyclerTMに入れ、下記の条件下で循環させた。
【0217】
*サイクル#3〜52の2工程時に、動的プロットを生成するため、リアルタイムPCR熱サイクラーのオプティクスを活性化してFAM−生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。結果は、図20に示される。
【0218】
実施例11
標識化非標準塩基の部位特異的組込みによるRNAのリアルタイム定量化
PCR反応の循環及びRNA試料からの核酸鋳型の増幅の際に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。ヒトβ-アクチンmRNAの検出及び定量化のためにDNAプライマーを合成した。cDNA/第1プライマーがヒトβ-アクチンmRNAの5'領域上の配列にハイブリダイズし、逆転写酵素によるcDNA合成を開始する。cDNA/第1プライマーと、リポーターの5'塩基(T)に結合した発蛍光団(6FAM)及び5'の最後から2番目の非標準ヌクレオチド(iso-dC)を含有する第2プライマーとを、鋳型としてcDNAを用いるヒトβ-アクチン配列の増幅に用いた。鋳型核酸の増幅時、発蛍光団クエンチング化合物−結合非標準ヌクレオシド三リン酸(Dabcyl-d-isoGTP)がPCR反応に存在し、発蛍光団−結合5'-ヌクレオチド(FAM-dT)に隣接し、かつPCR反応の蛍光シグナルを減少させる第2プライマーの非標準ヌクレオチド(iso-dC)の向かい側に組み込まれた。
【0219】
この実施例では、以下の核酸をRT-PCR反応に使用した。
【0220】
【0221】
単一ドナー由来の全ヒト心臓RNAは、Clontech(Palo Alto,CA)から得た。RNA試料は、5mMビス-トリス-プロパンpH8.9、0.1mM ETDA、100ng/mL酵母tRNA(Sigma, St.Louis,MO)及び100ng/mLの剪断されたニシン精子DNAで構成される緩衝液中、20ng/μL、2ng/μL、200pg/μL、20pg/μL、2pg/μL及び0.2pg/μLに希釈した。
【0222】
全PCR反応で、以下の成分(基本PCR反応成分)が指示濃度で存在した。
【0223】
【0224】
RT-PCRマスターミックスは、25μLの最終反応量のためにヌクレアーゼの無いH2Oを用いて1.25X濃度で調製した。RT-PCR反応混合物は、20μLの1.25X RT-PCRマスターミックスを、25μLのSmart CyclerTM25μL管(Cepheid,Sunnyvale,CA)にそれぞれ希釈したRNA試料5μLに添加することによって調製した。そして、管を微小遠心分離機内で6秒間回転させて反応チャンバー内に液体を引いた。
【0225】
遠心分離後、すぐに反応混合物をSmart CyclerTM(Cepheid,Sunnyvale,CA)内に入れ、下記の条件下で循環させた。
【0226】
*サイクル#23〜52の3工程時に、図21に示されるような動的プロットを生成するため、Smart CyclerTMのオプティクスを活性化してFAM−生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
【0227】
実施例12
多重対立遺伝子特異的PCR
多重蛍光に基づいたPCR反応を行い、種々のマウス株由来の単一ヌクレオチド多型性マウスSTS配列27.MMHAP25FLA6の配列を決定した。この実施例では、多重PCR反応は、標的核酸上の下流の非多型性配列にハイブリダイズする共通の第1プライマーと、2つの上流第2プライマー、すなわち第2プライマーA及び第2プライマーBとを含み、各第2プライマーは対立遺伝子特異的であり、特異性は、異なる3'ヌクレオチドによって決まる。第2プライマーA及び第2プライマーBは、標的核酸ハイブリダイゼーションには寄与しないが、それぞれリポーターA及びリポーターBのハイブリダイゼーションを許容する、異なる5'領域をも有していた。リポーター核酸は、それぞれ5'の最後の2番目の非標準ヌクレオチド及び発蛍光団クエンチング化合物−結合ヌクレオチドを含み、かつそれぞれ5'ヌクレオチドに結合した異なる発蛍光団(FAM又はHEX)を有する5'ヌクレオチドを含んでいた。異なる発蛍光団は、励起により異なる波長の光を放射した。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物へのリポーター核酸のアニーリングが、核酸ポリメラーゼ活性によるクエンチング化合物−結合リポーター核酸からの発蛍光団(単数又は複数)の切断を引き起こしうる。対立遺伝子特異性核酸標的の優勢の結果、切断されたリポーターからの発蛍光団の特有の蛍光放射となる。
【0228】
この実施例では、以下の核酸をRT-PCR反応に使用した。
【0229】
±=近交系。**=F1ハイブリッド系。
マウスgDNA試料は、Jackson研究所(Bar Harbor,ME)から購入した。すべてのgDNA試料は、1mM MOPSpH7.5、0.01mM EDTA中、2ng/μLに希釈した。
【0230】
【0231】
上記成分を含有するマスターミックスは、10μLの最終反応量のために2X濃度で調製した。5μLのマスターミックスを分析プレートの個々のウェルに等分し、個々のウェルに5μLの標的DNAs(10ng)を添加した。ポジティブ対照(完全適合鋳型)及びネガティブ対照(不適合鋳型又は鋳型無し)用にPCR反応を調製した。鋳型核酸の添加後、各ウェルを15μLの鉱油で覆い、簡単に遠心分離した。PCR反応を行う前に、分析プレートを蛍光シグナルの強度について走査し、530及び580nmにベースライン蛍光を設置した。
【0232】
以下のPCRパラメーターを使用した。
【0233】
【0234】
PCR循環反応後、分析プレートを蛍光シグナルの放射について調べた。分析プレートを、プレートの上部から読むように設定された装置を有するCytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(Applied Biosystems,Foster City,CA)に移した。プレートリーダーのパラメーターは以下の通り:(6FAM蛍光検出)485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定、(HEX蛍光検出)530±12.5nmに励起フィルター設定;580±25nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定。
【0235】
実施例13
因子V遺伝子型の多重PCR解析
多重蛍光に基づいたPCR反応を行い、ヒトゲノムDNAの因子V遺伝子における対立遺伝子特異的ヌクレオチド変異を決定した。この実施例で用いた手順は、実施例12で用いた手順と同様である。
【0236】
【0237】
合成因子V標的は、自動DNA解析によって調製した。因子V標的を含むヒトゲノムDNAは、Cornell/NIGMSヒト遺伝子細胞貯蔵所(Camden,NJ)から得た。全gDNA試料は、1mM MOPSpH7.5、0.1mM EDTA内せ1又は5ng/μLに希釈し、5分間煮沸してからPCR前に氷上に置いた。合成標的は、連続的に、1mMトリスpH8.0(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)及び0.1μg/mLニシン精子DNA(St.Louis,MO)中、1又は10fMに希釈した。
【0238】
【0239】
上記成分を含有するマスターミックスは、10μLの最終反応量のために2X濃度で調製した。5μLのマスターミックスを分析プレート(Low Profile MultiplateTM,96ウェル;MJ Research,Waltham,MA)の個々のウェルに等分し、個々のウェルに5μLの標的DNAsを添加した。5又は50zmol(約3000又は30,000分子)の突然変異、野生型、又は異型接合的合成標的をウェルに添加した。5又は25ngの異型接合的、又は野生型ヒトゲノムDNAをウェルに添加した。対照として標的DNAを含有しないウェルを用いた。鋳型核酸の添加後、各ウェルを15μLの鉱油で覆い、簡単に遠心分離した。PCR反応を行う前に、分析プレートを蛍光シグナルの強度について走査し、530nm及び580nmにベースライン蛍光を設置した。
【0240】
以下のPCRパラメーターを使用した。
【0241】
【0242】
PCR循環反応後、分析プレートを蛍光シグナルの放射について調べた。分析プレートを、プレートの上部から読むように設定された装置を有するCytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(Applied Biosystems,Foster City,CA)に移した。プレートリーダーのパラメーターは以下の通り:(6FAM蛍光検出)485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定、(HEX蛍光検出)530±12.5nmに励起フィルター設定;580±25nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定。行われる各多重PCR反応について、それぞれY及びX軸に示されるHEX及びFAM蛍光の相対蛍光単位(RFUs)が合わせて図22に示される。
【0243】
実施例14
エキソヌクレアーゼ欠乏性核酸ポリメラーゼ及び切断剤としてFlapエンドヌクレアーゼを用いる多重リアルタイム対立遺伝子特異的PCR
種々のマウス株由来のゲノムDNAのマウスSTS配列27.MMHAP25FLA6内の単一ヌクレオチド多型の配列に対し、多重蛍光に基づいたPCR反応を行った。この実施例では、多重PCR反応は、標的核酸上の下流の非多型性配列にハイブリダイズする共通の第1プライマーと、2つの上流第2プライマー、すなわち第2プライマーA及び第2プライマーBとを含み、各第2プライマーは対立遺伝子特異的であり、特異性は、異なる3'ヌクレオチドによって決まる。第2プライマーA及び第2プライマーBは、標的核酸ハイブリダイゼーションには寄与しないが、それぞれリポーターA及びリポーターBのハイブリダイゼーションを許容する、異なる5'領域をも有していた。リポーター核酸は、それぞれ5'の最後の2番目の非標準ヌクレオチド及び発蛍光団クエンチング化合物−結合ヌクレオチドを含むが、5'ヌクレオチドに結合した異なる発蛍光団(FAM又はHEX)を有する5'ヌクレオチドを含んでいた。異なる発蛍光団は、励起により異なる波長の光を放射した。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物へのリポーター核酸のアニーリングが、フラップエンドヌクレアーゼ-1(FEN-1)酵素活性によるクエンチング化合物−結合リポーター核酸からの発蛍光団(単数又は複数)の切断を引き起こしうる。対立遺伝子特異性核酸標的の優勢の結果、切断されたリポーターからの発蛍光団の特有の蛍光放射となる。
【0244】
この実施例では、以下の核酸をRT-PCR反応に使用した。
【0245】
±=近交系。**=F1ハイブリッド系。
マウスgDNA試料は、Jackson研究所(Bar Harbor,ME)から購入した。すべてのgDNA試料は、1mM MOPSpH7.5、0.01mM EDTA中、20ng/μLに希釈し、95℃に5分間加熱し、氷上で急冷した。
【0246】
【0247】
Mja FEN-1は、参照によって本明細書に取り込まれるHosfieldら,J.Biol.Chem(1998)273:27154-61に記載されている方法を修正した方法に従って発現させ、かつ精製した。Mja FEN-1配列を含むGenBank受入番号はU67585である。Mja FEN-1は、米国特許第5,843,669号、及びBultら,Science(1996)273:1058-1073に記載されており、両者とも参照によって本明細書に取り込まれる。Methanococcus jannaschii FEN-1遺伝子を含有するプラスミドを大腸菌株BL21(DE3)(Novagen,Madison,WI)中に形質転換し、最終濃度0.4mMまでイソプロピルチオガラクトピラノシド(Sigma, St.Louis,MO)の添加により、対数期にタンパク質過剰発現を誘発した。さらに2時間の成長後細胞を3000Xgでペレット化し、緩衝液1(10mMトリス,pH7.5(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA),150mM NaCl(Sigma, St.Louis,MO),10mM イミダゾール(Aldrich,Milwaukee,WI))に再懸濁させ、簡単に超音波処理し、75℃で45分間加熱して可溶化してから氷上で0℃に急冷した。この手順は、細胞を可溶化し、混入している中温性の自然の大腸菌タンパク質の大部分を沈殿させた。生成溶液を25,000Xgで遠心分離し、緩衝液1で予め平衡させたTALONTM金属親和性樹脂(Clontech,Palo Alto,CA)と上清を合わせ、重力流カラム内に装填し、緩衝液1で広範に洗浄した。100mM、200mM、350mM及び500mMの段階的なイミダゾール勾配を含むように調整した緩衝液1を用いてFEN-1を溶離した。FEN-1含有フラクションを収集し、10mMトリス、pH7.5(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)、150mM KCl、及び1mM EDTAを含有する緩衝液に対して広範に透析した。透析した原料を50%グリセロール(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)、0.5%TweenTM20(EM Sciences,Gibbstown,NJ)、及び0.5%NonidetTMP-40(Roche,Indianapolis,IN)に調整した。
【0248】
上記成分を含有するマスターミックスを1.5X以上の最終濃度に調製した。これらミックスの15μlを分析プレートの個々のウェルに等分し、標的DNAs(100ng)5μLを個々のウェルに添加して吸引によって混合した。ポジティブ対照(完全適合鋳型)、ネガティブ対照(不適合鋳型又は鋳型無し)、及び異種接合性試料(適合及び不適合鋳型)用にPCR反応を調製した。鋳型核酸添加後、各ウェルを20μLの鉱油で覆い、簡単に遠心分離した。
分析プレートをiCycler iQリアルタイムPCR検出システム(BioRad,Hercules,CA)に移し、下記のパラメーターを用いて循環させた。シグナル検出に使用したフィルター設定は以下の通り:(6FAM)−励起フィルター490±10nm、放射フィルター530±15nm;(HEX)励起フィルター530±15nm、放射フィルター575±10nm。
【0249】
以下のPCRパラメーターを使用した。
【0250】
*サイクル#27〜42の2工程時に、動的プロットを生成するためiCycler iQTMリアルタイムPCR検出システムのオプティクスを活性化してFAM及びHEX生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。結果は、図23A〜Bに示される。
【0251】
実施例15
蛍光クエンチドPCR増幅産物の融解曲線解析及び蛍光クエンチドPCR増幅産物
クエンチング化合物を有するSSIによってクエンチされた発蛍光団を含有するPCR反応産物の融解曲線解析を用いてクエンチャー組込みプライマー/二量体の存在を調べることができる。クエンチャー組込みプライマー/二量体は、通常クエンチャー組込みPCR産物より低温で融解する。融解曲線解析は、クエンチャー組込みプライマー/二量体と、PCR増幅後の産物として両者が存在する場合はクエンチャー組込みPCR産物との融点における蛍光の増加を示すことができる。
【0252】
実施例11からのPCR増幅産物をSmart CyclerTM(Cepheid,Sunnyvale,CA)を用いる融解曲線解析に供した。毎秒0.1℃の割合でPCR反応産物の温度を徐々に上昇させながら蛍光の変化を監視した。意図した産物(クエンチャー組込みPCR産物)のTm及び非特異的産物(クエンチャー組込みプライマー/二量体)のTmが図25に示される。出発量1pgのRNA鋳型を含むRT-PCR反応についての融解解析は、約71℃のTmを有する有意量の非特異的産物及び約79℃のTmを有する意図した産物を示した。100ngのRNA鋳型を含む反応についての融解解析は、79℃のTmを有する意図した産物の形成のみを示した。一端意図した産物のTmが分かると、意図した産物によって生成されるシグナルを特異的に観察するために、非特異的産物のTmより高い温度、及び意図した産物のTm未満の温度で、反応の蛍光測定を行うことによって観察することが有用である考えられる。融解曲線解析の結果は、図24に示される。
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国以外のすべての国々を指定して、米国民及び居住者であるDavid J.Marshall、James R.Prudent、Christopher B.Scherrill、Gideon Shapiro、Jennifer K.Grenier、Craig S.Richmond、及びSimona JurczkによってPCT出願として出願されている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、DNAの特定セグメントの酵素的増幅方法である。PCRは、以下の基本工程の繰返しサイクルに基づいている:二本鎖DNAの変性、続くオリゴヌクレオチドプライマーのDNA鋳型へのアニーリング、及び核酸ポリメラーゼによるプライマー増幅(Mullisら及びSaikiら,1985;及び米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,800,159号、これらの全開示は、参照によって本明細書に取り込まれる)。PCRに使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、該DNAの反対鎖をアニールするように設計され、かつ一方のプライマーの核酸ポリメラーゼ触媒増幅産物が他方のプライマー用鋳型鎖として働くことができるように位置づけられる。PCR増幅プロセスの結果、その長さが該オリゴヌクレオチドプライマーの5'末端によって規定される別々のDNA断片の指数関数的増加となる。
【0003】
現在実施されているPCR法は、核酸配列を増幅する非常に強力な方法であるが、増幅される物質の検出には、PCR産物をさらに操作しかつ引き続き処理して、標的DNAが存在するかどうかを決定する必要がある。新しい方法及び分析法を開発することが望ましい。
参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第5,210,015号は、標識化オリゴヌクレオチドを用いて標的核酸を検出する方法を教示している。この方法は、5'→3'ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを用い、アニールされた標識化オリゴヌクレオチドプローブを切断して、検出することができる。
参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第5,846,717号は、標的配列上に核酸切断構造を形成し、それから5'ヌクレアーゼ活性を有する酵素を用いて部位特異的様式で該核酸切断構造を切断することによる標的核酸の検出方法を教示している。
参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第5,432,272号は、DNA又はRNA中の塩基対であるが、標準的なA:T又はG:C塩基対で観察されるパターンと異なる水素結合パターンを有する、非標準塩基を開示している。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、標的核酸の迅速な検出のための物質及び方法に関する。本発明の方法は、リポーターオリゴヌクレオチド;核酸ポリメラーゼ;及び第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを利用する。ここで、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つは、少なくとも1個の非天然塩基を含有する。
一実施形態では、本発明は、試料中の標的核酸の検出方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。この方法は、前記試料を、核酸ポリメラーゼ、前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー、第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程;アニーリング後、前記リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程;及び前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、試料中の標的核酸の検出方法であって、以下の工程を含む方法を提供する。この方法は、前記試料を、核酸ポリメラーゼ、前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー、第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターを、増幅産物中に、前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込む工程;及び前記リポーターの組込みを、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0006】
さらに別の実施形態では、本発明は、標的核酸の検出用キットを提供する。一実施形態では、本キットは、核酸ポリメラーゼ;前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー;第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマー;及び標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターを含む。任意に、本キットは、さらに本発明の方法を実施するための緩衝液及び試薬のような他の成分を含む。
本発明の方法は、種々のマス・スクリーニング法及び読み出しプラットフォームに組み込むことができる。
【0007】
本発明は、以下の本発明の種々の実施形態に関する詳細な説明を添付図面と共に考慮するすることにより、さらに完全に理解することができる。
本発明は、種々の変形及び代替形態に適用できるが、そのうち特定のものが例として図面に示されており、かつ詳述される。しかし、記述される特定の実施形態に本発明を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。反対に、本発明の精神及び範囲内にあるすべての変形、均等物、及び代替物を包含することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】1A〜1Eは、本発明の一実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図2】2A〜2Eは、本発明の第2実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図3】多数の非天然塩基の化学構造を示し、式中、Aは高分子バックボーンへの付着点であり、XはN又はC-Zであり、YはN又はC-Hであり、かつZはH、置換若しくは無置換アルキル基、又はハロゲンである。
【図4】4A〜4Dは、本発明の第3実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図5】5A〜5Eは、本発明の第4実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図6】6A〜6Eは、本発明の第5実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図7】7A〜7Eは、本発明の第6実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図8】8A〜8Eは、本発明の第7実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図9】9A〜9Eは、本発明の第8実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図10】10A〜10Eは、本発明の第9実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図11】11A〜11Eは、本発明の第10実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図12】12A〜12Eは、本発明の第11実施形態の分析方法を概略的に図解する。
【図13】PCR混合物に特異的な対立遺伝子と鋳型試料を含有する分析プレートを調製するための一般的な手順を概略的に図解する。
【図14】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによるPCR反応における蛍光のクエンチングを示すグラフであり、Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図15】方法Aによる標識化非天然塩基の調製の合成スキームを概略的に図解する。
【図16】方法Bによる標識化非天然塩基の調製の合成スキームを概略的に図解する。
【図17A】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによるPCR反応における蛍光のクエンチングの“リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図17B】図17AのPCR増幅産物の融解曲線解析を示すグラフであり;X軸に融解温度が示される。
【図18A】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによるPCR反応における蛍光のクエンチングの“リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図18B】図18AのPCR増幅産物の融解曲線解析を示すグラフであり;X軸に融解温度が示される。
【図19】ゲノムDNAを増幅するPCR反応における蛍光の増加の “リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図20】種々の量の逆転写RNAを増幅するPCR反応における蛍光の増加の “リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図21】PCR増幅産物中へのクエンチング化合物の部位特異的組込みによる種々の量の逆転写RNAを増幅するPCR反応における蛍光のクエンチングの “リアルタイム”モニタリングを示すグラフであり;Y軸に相対蛍光単位(RFU's)が示され、X軸にPCRサイクル数が示される。
【図22】野生型、突然変異体、及び異型接合性因子V DNA標的の多重PCR解析による総合結果を示すグラフであり;Y軸にHEX蛍光RFUsが示され、X軸にFAM蛍光RFUsが示される。
【図23A】種々のマウス株由来ゲノムDNAのマウスSTS配列27.MMHAP25FLA6における多型性の多重PCR解析による総合結果を示すグラフであり;X軸にPCRサイクル数が示され、Y軸にHEX蛍光RFUsが示される。
【図23B】種々のマウス株由来ゲノムDNAのマウスSTS配列27.MMHAP25FLA6における多型性の多重PCR解析による総合結果を示すグラフであり;X軸にPCRサイクル数が示され、Y軸にFAM蛍光RFUsが示される。
【図24】クエンチング化合物の部位特異的組込みによる種々の量の逆転写RNAを増幅する反応によるPCR産物の融解曲線解析であり;Y軸に経時的な蛍光の変化が示され、X軸に融解温度が示される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な開示
本発明は、試料中の突然変異を検出、解析、又は試料中の標的核酸の量を定量するための方法及び物質に関する。本発明の方法は、一般的にPCRの使用を含む。PCRは、Fast-shotTM増幅でよい。本発明の方法は、リポーターオリゴヌクレオチド;核酸ポリメラーゼ;及び第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを利用し、この第1及び第2プライマーオリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、少なくとも1個の非天然塩基を含有する。固体支持体と共に使用する他の関連する分析方法は、2000年10月14日に出願された米国特許仮出願番号60/、タイトル“非天然塩基を用いる固体支持体分析システム及び方法”、代理人事件整理番号13238.2USP1に記述されている。
【0010】
本明細書で使用する場合、“核酸”は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド核酸(PNA)、又は化学的バックボーンによって結合される塩基であって、該塩基が塩基対を形成するか又は相補的化学構造とハイブリダイズする能力を有する塩基として一般的に言及されるものの配列のようなポリマー分子を包含する。好適な非ヌクレオチドバックボーンとしては、例えばポリアミド及びポリモルフォリノバックボーンが挙げられる。用語“核酸”は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、又はポリヌクレオチド配列、及びその断片又は部分を包含する。核酸は、いずれの適切な、例えば天然源から単離された、組換え的に生産された、又は人工的に合成された形態でも供給され、一本鎖又は二本鎖でよく、かつセンス又はアンチセンス鎖を意味しうる。
【0011】
用語“オリゴヌクレオチド”は、一般的に短い鎖(例えば、約100ヌクレオチド長未満、典型的には長さ約6〜50ヌクレオチド長)の核酸を指し、例えば、固体支持体核酸合成、DNA複製、逆転写、制限消化、流出転写等のような技術で現在利用可能な技法を用いて調製することができる。オリゴヌクレオチドの正確な大きさは多くの因子によって決まり、順次該オリゴヌクレオチドの究極的な機能又は用途によって決まる。
“配列”は、ヌクレオチドの順序付けられた配置を意味する。
用語“試料”は、その最も広い意味で使用される。この用語は、標本又は培養(例えば、微生物培養)、並びに生物学的及び非生物学的試料を包含する。
【0012】
本明細書で使用する場合、“標的”又は“標的核酸”は、試料中にあると推測され、かつ本発明の方法又はシステムで検出又は定量すべき核酸配列を含有する核酸を意味する。標的核酸は、分析手順の際に実際に分析される標的核酸配列を含有する。標的は、直接的又は間接的に分析することができる。少なくともいくつかの実施形態では、標的核酸が試料中に存在する場合、本発明の方法による増幅用鋳型として標的核酸が使用される。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語“相補的”又は“相補性”は、核酸(すなわち、オリゴヌクレオチド又は標的核酸のようなヌクレオチドの配列)を指して使用されるときは、塩基の対合規則によって関係づけられる配列を意味する。天然塩基については、塩基の対合規則は、ワトソンとクリックによって開発されたものである。本明細書で述べるような非天然塩基については、塩基の対合規則は、ワトソン−クリックの塩基の対合規則と同様な様式で、又は疎水的、エントロピー的、若しくはファンデルワールス力による水素結合の形成を含む。例として、配列“T-G-A”では、相補的配列は“A-C-T”である。相補性は、“部分的”でよく、該核酸の塩基のいくつかだけが、塩基の対合規則に適合する。代わりに、核酸間の“完全な”又は“全体的な”相補性もありうる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強さに影響する。
【0014】
用語“ハイブリダイゼーション”は、相補的核酸の対合を指して用いられる。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションの強さ(すなわち、核酸間の会合の強さ)は、核酸間の相補性の程度、関与するハイブリダイゼーション条件の厳密さ、形成されるハイブリッドの融解温度(Tm)、及び核酸内のG:C比のような因子によって影響を受ける。
本明細書で使用する場合、“標識”は、検出可能な(好ましくは定量化できる)シグナルを与えることができ、かつ核酸又はタンパク質に結合できるいずれの原子又は分子をも意味する。標識は、比色、蛍光、電気泳動、電気化学的、分光学的、クロマトグラフ的、濃度測定、又はラジオグラフ法等のような技法によって検出可能なシグナルを与えることができる。標識は、それ自体検出可能なシグナルを生成しないが、別の標識と併用したときに検出可能なシグナルを生成又はクエンチできる分子でよい。例えば、標識は、クエンチャー−染料対のクエンチャーでよい。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語“熱安定性核酸ポリメラーゼ”は、ヌクレオシドの重合を触媒し、かつ例えば大腸菌由来のヌクレオチドポリメラーゼと比較した場合、相対的に熱に安定な酵素を意味する。一般的に、この酵素は、標的配列にアニールされたプライマーの3'末端で合成を開始し、かつ鋳型に沿って5'方向に進行し、かつ5'→3'ヌクレアーゼ活性を有する場合、合成が終了するまで、介在するアニールされたオリゴヌクレオチドを加水分解して、介在するヌクレオチド塩基又はヌクレオチド断片を遊離させる。熱安定性酵素は、少なくとも約37℃〜約42℃、典型的には約50℃〜約75℃の範囲内の温度で活性を有する。代表的な熱安定性ポリメラーゼとしては、例えば、天然及び限定するものではないが、Thermus aquaticus(Taq)、Thermus flavus(Tfl)、及びThermus thermophilus(Tth)を含むThermus種、及び限定するものではないが、Thermotoga neapolitanaを含むThermotoga種の変性ポリメラーゼが挙げられる。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語“DNA多型性”は、DNA中の特定部位に2つ以上の異なるヌクレオチド配列が存在することができ、かつ単数又は複数のヌクレオチド置換、欠失又は挿入のようないずれのヌクレオチド変化をも含む状態を意味する。これらヌクレオチド変化は、突然変異体又は多型性対立遺伝子変異体でありうる。本明細書で述べる方法の少なくともいくつかの実施形態は、単一塩基の突然変異、付加若しくは欠失によって引き起こされるβ-グロブリン遺伝病(いくつかのβ-サラセミア、鎌状細胞貧血、ヘモグロビンC病等)で生じるような核酸中の単一核酸の変化、及びα-サラセミア又はいくつかのβ-サラメニアに付随するような複数塩基の変化を検出することできる。さらに、本明細書の方法は、病気とは必ずしも関係ないが、単に、集団中の核酸の特定部位に2つ以上の異なるヌクレオチド配列(置換、欠失又は挿入されたヌクレオチド塩基対を有するかどうか)が、ヒトゲノムのHLA領域を有し、かつミトコンドリアDNAのようなランダム多型性として存在できる状態を検出できる。
【0017】
本発明は、試料中の標的核酸を検出するための方法及び物質を提供する。一実施形態では、方法は、標的核酸を含有すると推測される試料を、核酸ポリメラーゼと、第1及び第2プライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、該標的核酸を、前記第1及び第2プライマーを用いてPCRによって増幅して、二本鎖領域と、少なくとも1つの非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基(又は複数の塩基)に相補的である非天然塩基(又は複数の塩基)とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程;アニーリング後、前記リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程;及び前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0018】
別の実施形態では、方法は、標的核酸が含有すると推測される試料を、ポリメラーゼと、第1及び第2プライマーと接触させる工程;試料中に前記標的核酸が存在する場合、該標的核酸を、前記第1及び第2プライマーを用いてPCRによよって増幅して、二本鎖領域と、少なくとも1つの非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程;前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の非天然塩基に相補的である非天然塩基(又は複数の塩基)とを含むリポーターと接触させる工程;前記リポーターを前記増幅産物中に組み込む工程;及び前記リポーターの組込みを、前記試料中の標的核酸の存在と関連づける工程を含む。
【0019】
本発明は、本明細書で述べる1種以上の方法を用いる試料中の標的核酸の検出で使用する対応キットをも包含する。
本発明は、所望により、いくつかの実施形態における洗浄又は分離(例えば、ゲル電気泳動法による)のような反応後処理を必要とせずに試料中の標的核酸を検出する能力を含め、多くの利点を提供することができる。さらに、いくつかの実施形態では、本方法は、1セットの反応条件で処理される1つの反応混合物中に全要素を添加することによって実施することができる。これは、順次、複数の反応工程及び試薬に付随する問題又は心配事を回避或いは低減できる。
【0020】
一般的議論
さて、本発明の一実施形態について図1に示される概略図を参照しながら一般用語で説明する。図1Aを参照すると、試料は、標的核酸100を含有すると推測され、標的核酸100は、第1部分102と、第2部分104を含む。示されるように、標的核酸100は、鎖100a及び100bで構成される二本鎖分子である。
図1Bを参照すると、示されるように、第1プライマー106及び第2プライマー108と試料を接触させる。第1プライマー106は、標的核酸100の第1部分に相補的である。第2プライマー108は、第1領域110と第2領域112を含み、第1領域110は、標的核酸100の第2部分104に相補的である配列を含む。第2プライマー108の第2領域112は、非天然塩基114を含む。第2領域112は、標的核酸100に相補的でない。
【0021】
第1及び第2プライマーに加え、試料をポリメラーゼにも接触させ、本明細書で述べるように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供される。標的核酸100が試料中に存在する場合、第1プライマー106の相補的部分及び第2プライマー108の相補的部分が、標準的な塩基の対合規則に従って標的核酸100の対応する領域102及び104にアニールする。示されるように、プライマーが標的にアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドは、図1B中107と示されるヌクレオチドの配列、つまり“ギャップ”によって、第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドから分離される。好ましい実施形態では、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸にアニールされるとき、鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップ107が、PCRプライマーの3'末端間に存在するように設計される。
【0022】
図1Bに示されるように、ポリメラーゼを用いて、PCR、つまりFast-shotTM増幅により、各プライマーの3'-OH末端から一本鎖が合成される。すなわち、図1Cに示されるように、第1プライマー106を用いて、標的核酸100の鎖100aの少なくとも一部に相補的である鎖120aが合成され、第2プライマー108を用いて、標的核酸100の鎖100bの少なくとも一部に相補的である鎖120bが合成される。ポリメラーゼ連鎖反応を所望のサイクル数進め、増幅産物120を得ることができる。
図1Cに示されるように、増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を含む。この実施形態で示されるように、非天然塩基114は、二本鎖領域122に隣接する、一本鎖領域124中に位置する。一本鎖領域124は、1個より多くの非天然塩基を含むことができる。
【0023】
図1Dを参照すると、増幅産物120をリポーター126に接触させる。リポーター126は、標的核酸の増幅が起こる前、その間、又はその後に、反応に添加できると考えられる。リポーター126は、標識128、132及び増幅産物120の一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的である非天然塩基130を含む。図1Dの実施形態では、リポーター126は、染料128とクエンチャー132を含む標識と、非天然塩基130を含む。リポーター126は、増幅産物120にアニールさせることができる。アニーリング後、図1Eに示されるように、リポーター126の少なくとも一部が切断され、染料128を含むリポーター断片134が生成される。リポーター断片134の遊離が、試料中の標的核酸の存在と関連づけられる。図示される場合では、リポーター断片の非クエンチド染料の存在が検出される。別の実施形態では、染料及びクエンチャーの位置が逆転され、切断時にリポーター断片がクエンチャーを持ち去る。
【0024】
図8は、別の分析法を示しており、クエンチャー132は、リポーターの代わりに第2プライマー108に結合されている。クエンチャー132は、リポーター126の一部が切断され、染料128を含むリポーター断片134を生成するまで、リポーター126の染料128の蛍光をクエンチする。代替として、クエンチャーがリポーターに結合し、染料が第2プライマーに結合することもできる。本説明では、実施形態の図で共通する要素は同じ番号を付し、該要素について個々に説明する必要がない。
図9A〜9E、10A〜10E、11A〜11E、及び12A〜12Eは、図1A〜1Eの分析と同様の多数の実施形態であり、X及びYは、非標準塩基を表す。例えば、Xはイソ−シチジンを表し、Yはイソ−グアノシンを意味しうる。以下の記述は、図1A〜1Eとこれら実施形態の分析との相異について説明する。その他の点では、同一の考察及び条件を適用できる。
【0025】
図9A〜9Eの分析では、第1及び第2プライマー106、108は、図9Aに示されるように、二本鎖核酸100と接触させられる。第2プライマーは、標的核酸の一部に相補的である第1部分110と、標的核酸に相補的でなく、通常標的核酸にハイブリダイズしない第2部分112とを有する。第2プライマー108は、第2部分112内で、かつ標的核酸にアニールする第2プライマーの第1部分110に隣接する非標準塩基114を有する。図9B及び9Cに示されるように、第1及び第2プライマーを用いて、PCRにより、標的核酸の部分に相補的である増幅産物120が合成される。増幅産物120は、二本鎖領域122と一本鎖領域124を有する。図9Cに示されるように、リポーター126は、増幅産物120の一本鎖領域124と接触させられる。リポーターは、一本鎖領域124の非標準塩基114に相補的である非標準塩基119を含む。図9Dに示されるように、リポーター126は、一本鎖領域124にアニールする。リポーター126では、非標準塩基119に隣接する塩基127は、一本鎖領域の非標準塩基114に隣接する二本鎖領域の塩基131に相補的でありうるが、必ずしもそうでなくてもよい。図9Eに示されるように、塩基127がポリメラーゼによって切断され、リポーター断片134が生成し、通常、発蛍光団又はクエンチャーのような標識又は標識の一部128を含有し、増幅産物120のリポーター断片の検出を可能にする。任意に、塩基127は、通常標識128を含むオリゴヌクレオチド配列で置換され、かつリポーターの残部から切断される。
【0026】
図10A〜10Eには別の実施形態が示される。この実施形態では、塩基131は、標的核酸に相補的である第2プライマー108の第1領域110の一部ではなく、代わりに塩基131は標的核酸配列に非相補的であり、かつ第2プライマー108の第に2領域112の一部である。その他の点では、この分析法の工程及び手順は、図9A〜9Eの分析法と同一である。
【0027】
別の実施形態では、図11Aに示されるように、第1及び第2プライマー106、108が、二本鎖標的核酸100と接触させられる。第2プライマーは、標的核酸の一部に相補的である第1部分110と、標的核酸に相補的でなく、かつ通常標的核酸にハイブリダイズしない第2部分112を有する。第2プライマー108は、第2部分112内で、かつ標的核酸にアニールする第2プライマーの第1部分110に隣接する少なくとも2個の連続した非標準塩基114、117を有する。図11B及び11Cに示されるように、第1及び第2プライマーを用いて、PCRにより、標的核酸の部分に相補的である増幅産物120が合成される。増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を有する。任意に、非標準塩基114、117の最初の向かいに塩基141が誤って組み込まれる。図11Cに示されるように、リポーター126は、増幅産物120の一本鎖領域124と接触させられる。リポーターは、第2プライマーの非標準塩基に相補的である非標準塩基を含む。図11Dに示されるように、リポーター126が一本鎖領域124にアニールする。図11Eに示されるように、非標準塩基127がポリメラーゼによって切断され、リポーター断片134が生成し、通常、発蛍光団又はクエンチャーのような標識又は標識の一部128を含有し、増幅産物120のリポーター断片の検出を可能にする。任意に、塩基127は、通常標識128を含むオリゴヌクレオチド配列で置換され、かつリポーターの残部から切断される。
【0028】
さらに別の実施形態では、図12Aに示されるように、第1及び第2プライマー106、108が、二本鎖標的核酸100に接触させられる。第2プライマーは、標的核酸の一部に相補的である第1部分110と、標的核酸に相補的でなく、かつ通常標的核酸にハイブリダイズしない第2部分112を有する。第2プライマー108は、第2部分112内で、かつ標的核酸にアニールする第2プライマーの第1部分110に隣接する2個の非標準塩基114、117を有する。図12B及び12Cに示されるように、第1及び第2プライマーを用いて、PCRにより、標的核酸の部分に相補的である増幅産物120が合成される。増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を有する。任意に、非標準塩基117の向かいにポリメラーゼによって誤って組み込まれた塩基121を含む。図12Cに示されるように、リポーター126は、増幅産物120の一本鎖領域124と接触させられる。リポーターは、第2プライマーの非標準塩基114に相補的である非標準塩基を含む。図12Dに示されるように、リポーター126が一本鎖領域124にアニールする。リポーター126は、一本鎖領域の塩基114にアニールする非標準塩基119に結合された塩基127を含むが、塩基127は一本鎖領域の塩基117に相補的でない。図12Eに示されるように、塩基127がポリメラーゼによって切断され、リポーター断片134が生成し、通常、発蛍光団又はクエンチャーのような標識又は標識の一部128を含有し、増幅産物120のリポーター断片の検出を可能にする。任意に、塩基127は、通常標識128を含むオリゴヌクレオチド配列で置換され、かつリポーターの残部から切断される。
【0029】
図2には、本発明の別の実施形態が概略的に示される。図2Aに示されるように、二本鎖標的核酸100は、第1部分102及び第2部分104を含む。試料が、第1プライマー106及び第2プライマー108に接触される。第1プライマー106は、標的核酸100の第1部分102に相補的である。第2プライマー108は、標的核酸100の第2部分104に相補的である第1領域110と、非天然塩基114を含み、かつ標的核酸100に相補的でない第2領域114とを含む。
第1プライマー106及び第2プライマー108に加え、試料はポリメラーゼ(図示せず)と接触させられ、ポリメラーゼ連鎖反応が行われる。図1に示される実施形態と同様に、標的核酸100が試料中に存在する場合、第1プライマー106の相補性部分及び第2プライマー108の相補性部分が、標準的な塩基の対合規則に従い、標的核酸100の対応する部分102、104にアニールする。図1に示される実施形態と同様に、プライマーがアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドは、ヌクレオチドの配列、つまり“ギャップ”107によって第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドから分離される。好ましい実施形態では、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸にアニールされるとき、鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップが、PCRプライマーの3'末端間に存在するように設計される。
【0030】
図2B及び2Cに示されるように、ポリメラーゼを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応、つまりFast-shotTM増幅により、各プライマーの3'-OH末端から一本鎖120a、120bが合成される。ポリメラーゼ連鎖反応を所望のサイクル数進め、図2Cに示される増幅産物120を得ることができる。
図2Cに示されるように、増幅産物120は、二本鎖領域122と、一本鎖領域124を含む。示されるように、一本鎖領域124は、第2プライマー108の非天然塩基114を含む。一本鎖領域124は単一の非天然塩基を含んで示されているが、本発明は、それに限定されず、一本鎖領域は1個より多くの非天然塩基を含むことができる。
【0031】
さて、図2Dを参照すると、増幅産物120がリポーター150に接触している。リポーター150は、PCR増幅の前、その間又はその後に添加される。リポーター150は、図2Eに示されるように、標識154と、増幅産物120の一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的である非天然塩基152とを含む。リポーター150は、非天然塩基114の反対側の増幅産物中に組み込まれる。さらに詳細に後述するが、リポーター150の組込みは、例えば、ポリメラーゼ又はリガーゼのようないずれの適切な酵素を用いても達成することができる。試料中の標的核酸の存在は、増幅産物中のリポーターの存在と関連づけることによって決定される。図示した場合では、例えば、標的核酸の存在は、例えば蛍光若しくは他の可視化方法により標識154を検出することによって決定される。適切な検出及び可視化方法については、さらに詳細に後述する。
【0032】
図1及び2の概略図は、本発明の構成要素の相対的な位置及び大きさを示すが、これらの提示は例示目的だけのためである。本明細書の議論から明かなように、第1プライマー及び第2プライマー、並びに標的核酸の第1部分及び第2部分の相対的な大きさは、特定の用途によって変わるだろう。さらに、標的核酸に沿う第1プライマー及び第2プライマーの相対的な位置は変化するだろう。また、本発明で用いる非天然塩基及び標識の位置も用途によって変わるだろう。
【0033】
ポリメラーゼ
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応、つまりFast-shotTM増幅を利用して試料中の関心のある標的核酸を検出する方法及び物質を提供する。適切な核酸ポリメラーゼとしては、例えば、鋳型オリゴヌクレオチドに相補的な核酸を組み込むことでオリゴヌクレオチドを伸長できるポリメラーゼが挙げられる。例えば、ポリメラーゼはDNAポリメラーゼでよい。
ポリメラーゼ活性を有する酵素は、核酸プライマーの成長末端の3'ヒドロキシル基と、ヌクレオチド三リン酸の5'リン酸基との間の結合の形成を触媒する。これらヌクレオチド三リン酸は、通常デオキシアデノシン三リン酸(A)、デオキシチミジン三リン酸(T)、デオキシシチジン三リン酸(C)及びデオキシグアノシン三リン酸(G)から選択される。しかし、少なくともいくつかの実施形態では、本発明の方法で有用なポリメラーゼは、それらの非天然塩基のヌクレオチド三リン酸を用いて非天然塩基を組み込むこともできる。
【0034】
PCRのような方法の際、鎖の変性に必要なかなり高い温度は、多くの核酸ポリメラーゼの不可逆的な不活性化をもたらしうるので、本発明で有用な核酸ポリメラーゼ酵素は、好ましくはPCRのような方法の高温にさらされたときに反応を達成するのに十分なポリメラーゼ活性を保持する。好ましくは、本発明の方法に有用な核酸ポリメラーゼ酵素は、熱安定性核酸ポリメラーゼである。好適な熱安定性核酸ポリメラーゼとしては、限定するものではないが、好熱性生体由来の酵素が挙げられる。好適な熱安定性核酸ポリメラーゼを誘導できる好熱性生体の例としては、限定するものではないが、Thermus aquaticus、Thermus thermophius、Thermus flavus、Thermotoga neapolitana及びBacillus、Thermococcus、Sulfobus、及びPyrococcus属の種が挙げられる。核酸ポリメラーゼは、これら好熱性生体から直接精製できる。しかし、まず組換えDNA技法によって、該酵素をコードする遺伝子を多コピー発現ベクター中でクローン化し、そのベクターを、該酵素を発現可能な宿主細胞株中に挿入し、そのベクター含有宿主細胞を培養してから、該酵素を発現している宿主細胞株から核酸ポリメラーゼを抽出することによって、収率がかなり高い核酸ポリメラーゼを得ることができる。
【0035】
多くの核酸ポリメラーゼは、核酸ポリメラーゼ活性に加え、他の活性を有し;これら活性としては、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性及び3'-5'エキソヌクレアーゼ活性が挙げられる。5'-3'及び3'-5'エキソヌクレアーゼ活性は、本技術の当業者に公知である。3'-5'エキソヌクレアーゼ活性は、組み込まれた間違った塩基を除去することによって、新しく合成される鎖の精度を高める。対照的に、核酸ポリメラーゼ酵素中にしばしば存在する5'-3'エキソヌクレアーゼ活性は、プライマーを含め、非保護5'末端を有する核酸を消化しうるので、特定用途では望ましくないことがある。従って、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性が弱力化しているか、又は該活性が存在しない熱安定性核酸ポリメラーゼが、本発明の少なくともいくつかの実施形態で使用するために望ましい特性の酵素である。他の実施形態では、ポリメラーゼは、リポーターを切断し、かつ直接的又は間接的にシグナルが生成されるような標識断片を遊離させるのに十分な5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を有することが望ましい。
【0036】
5'-3'エキソヌクレアーゼ活性の無い又は弱力化した5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を有する適切な核酸ポリメラーゼは技術的に公知である。この目的を達成する核酸ポリメラーゼに修飾が導入された種々の核酸ポリメラーゼ酵素について記述されている。例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIのクレノウ断片は、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を制御するタンパク質のドメインが除去されたホロ酵素のタンパク分解断片として生成されうる。5'-3'エキソヌクレアーゼ活性が欠乏している好適な核酸ポリメラーゼは商業的に入手可能なである。5'-3'エキソヌクレアーゼ活性が欠乏している商業的に入手可能なポリメラーゼの例としては、AMPLITAQ STOFFELTMDNAポリメラーゼ及びKlenTaqTMDNAポリメラーゼが挙げられる。
【0037】
ポリメラーゼは、PCRの際に塩基を“間違って組み込む”ことがある。他言すれば、ポリメラーゼは、合成鎖上の3'位に、鋳型核酸鎖上の対をなすヌクレオチド(例えば、シトシン)と正準の水素塩基対を形成しないヌクレオチド(例えば、アデニン)を組み込みうる。PCR条件を変えて、塩基の間違った組込みの発生を少なくすることができる。例えば、温度、塩濃度、pH、清浄剤濃度、金属のタイプ、金属の濃度等のような反応条件を変えて、ポリメラーゼが鋳型鎖に相補的でない塩基を組み込むようなことを低減することができる。
単一のポリメラーゼを使用する代替として、本明細書で述べる方法のいくつかは、複数の酵素を使用して実施することができる。例えば、エキソヌクレアーゼ欠乏性ポリメラーゼのようなポリメラーゼ、及びエキソヌクレアーゼは、組み合わせて使用することができる。別の例は、エキソヌクレアーゼ欠乏性ポリメラーゼと熱安定性フラップエンドヌクレアーゼの使用である。さらに、RNAを試料として用いること、及び逆転写酵素を用いてRNAをcDNAに転写できることがわかるだろう。転写は、PCR増幅の前又は増幅時に起こりうる。
【0038】
第1プライマー及び第2プライマー
本発明は、ポリメラーゼ、第1プライマー及び第2プライマーを含むPCRを用いて標的核酸を検出する方法を提供する。図1、2及び9〜12に示されるように、第1プライマー106は、標的核酸100の第1部分102に相補的な配列を含む。第2プライマー108は、第1領域110及び第2領域112を含み、第1領域110は標的核酸の第2部分104に相補的な配列を含み、第2領域112は、少なくとも1個の非天然塩基を含む。第2領域は、一般的に標的核酸に相補的でない。
【0039】
PCR法では、プライマーは、増幅すべき標的核酸中に存在することが分かっている配列に相補的に設計される。通常、プライマーは、増幅すべき標的核酸配列に隣接する(かつその一部でありうる)配列に相補的であるように選択される。好ましくは、プライマーは、検出すべき標的核酸に隣接する配列に相補的であるように選択される。標的核酸の配列が分かれば、プライマーの配列は、まず検出すべき標的核酸の長さ又は大きさを決定し、標的核酸配列の5'及び3'末端に近いか、又は5'及び3'末端に近接している適切なフランキング配列を決定し、かつ標準的なワトソン−クリックの塩基の対合規則を用いて標的核酸のフランキング領域に相補的な核酸配列を決定してから、その決定したプライマー配列を合成することによって調製することができる。この調製法は、技術的に公知のいずれの適切な方法、例えば、適切な配列のクローニング及び制限及び直接化学合成によっても達成することができる。化学合成法としては、例えば、Narangら(1979)Metods in Enzymology68:90によって記載されているホスホトリエステル法、Brownら(1979)Metods in Enzymology68:109によって開示されているホスホジエステル法、Beaucageら(1981)Tetrahedron Letters 22:1859に開示されているジエチルホスホラミデート法、及び米国特許第4,458,066号に開示されている固体担持法が挙げられる。これらはすべて参照によって本明細書に取り込まれる。
【0040】
第1プライマー及び第2プライマーの標的核酸に対して十分に安定なハイブリッドを形成する能力は、いくつかの因子、例えば、プライマーと標的核酸との間で発現される相補性の程度によって決まる。典型的には、その標的に対して高度な相補性を有するオリゴヌクレオチドは、該標的と安定なハイブリッドを形成するだろう。
さらに、プライマーの長さは、プライマーが標的核酸にハイブリダイズする温度に影響を及ぼす。一般に、より長いプライマーは、より短いプライマーよりも高温で標的核酸配列に対して十分に安定なハイブリッドを形成する。
さらに、プライマー中に高割合のG若しくはC又は特定の非天然塩基が存在すると、プライマーと標的核酸との間に形成されるハイブリッドの安定性を高めることができる。この増加した安定性は、例えば、A-T相互作用における2つの水素結合と比較した、G-C相互作用又は他の非天然塩基対相互作用における3つの水素結合の存在のためでありうる。
【0041】
核酸二本鎖の安定性は、融解温度、つまり“Tm”によって評価又は表すことができる。特定条件下における特定の核酸二本鎖のTmは、該核酸二本鎖の集団の50%が一本鎖核酸分子に溶解する温度である。特定の核酸二本鎖のTmは、いずれの適宜の方法によっても予測することができる。特定の核酸二本鎖のTmを決定する好適な方法としては、例えば、ソフトウェアプログラムが挙げられる。本発明の方法及びキットで使用するのに好適なプライマーは、該プライマーを含むオリゴヌクレオチド二本鎖の予想されたTmに基づいて予め決定することができる。
図1及び2に示されるように、第1プライマー及び第2プライマーが標的核酸にアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドと第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドとの間にギャップ107が存在する。ギャップ107は、標的核酸の多数のヌクレオチドを含む。ギャップは、ポリメラーゼが伸長鎖中に十分にヌクレオチドを組み込んで、一回りのPCR反応(例えば、一回りのアニーリング、伸長、変性)の際に、該ギャップを満たすことができることを条件として、いずれの数のヌクレオチドでもよい。典型的には、ポリメラーゼは、1秒当たり約30〜約100塩基を配置することができる。従って、プライマー間のギャップの最大長は、温度が、ポリメラーゼが活性であり、かつプライマーがアニールされる範囲内である一回りのPCRでかかる時間量によって決まる。
【0042】
標準的な熱サイクラーを用いるFast-shotTM増幅では、ペルチエ冷却及び加熱の限界を考えると、温度変化は比較的遅い。標準的な熱サイクラーを用いる場合、Fast-shotTM増幅反応条件が、ポリメラーゼが活性であり、かつプライマーがアニールされる温度範囲内である時間は、約10〜約15秒である。本発明の方法は、試料の温度を迅速に熱循環できる微量流体系を用いて遂行することができ、伸長時間はかなり短く、かつ温度変化がかなり速い。このような迅速な熱循環は、例えば、LabChipTM技術(Caliper Technology,Palo Alto,CA)を用いて達成できる。一実施形態では、第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸にアニールされるときに、PCRプライマーの3'末端間に、標的核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップが存在するように設計される。
【0043】
非天然塩基
本発明で考えられるように、第2プライマーの第2領域は、通常少なくとも1個の非天然塩基を含む。DNA及びRNAは、それぞれホスホジエステル結合によって結合されているデオキシリボース又はリボースを含むオリゴヌクレオチドである。各デオキシリボース又はリボースは、糖に結合された塩基を含む。天然に存在するDNA及びRNAに組み込まれる塩基は、アデノシン(A)、グアノシン(G)、チミジン(T)、シチジン(C)、及びウリジン(U)である。これら5個の塩基が“天然塩基”である。ワトソンとクリックによって考案された塩基の対合規則に従い、天然塩基はハイブリダイズしてプリン−ピリミジン塩基対を形成し、GはCと対になり、AはT又はUと対になる。これら対合規則は、オリゴヌクレオチドの相補的オリゴヌクレオチドとの特異的なハイブリダイゼーションを促進する。
【0044】
これら天然塩基による塩基対の形成は、各塩基対の2個の塩基間の2又は3個の水素結合の生成によって促進される。各塩基は、2又は3個の水素結合供与体と水素結合受容体を含む。塩基対の水素結合は、一方の塩基上の少なくとも1個の水素結合供与体と、他方の塩基上の水素結合受容体との相互作用によって、それぞれ形成される。水素結合供与体は、例えば、少なくとも1個の水素に結合されているヘテロ原子(例えば、酸素又は窒素)を含む。水素結合受容体は、例えば、孤立電子対を有するヘテロ原子(例えば、酸素又は窒素)を含む。
天然塩基、A、G、C、T、及びUを、非水素結合部位における置換によって誘導して改変天然塩基を形成することができる。例えば、天然塩基は、反応性官能基(例えば、チオール、ヒドラジン、アルコール、アミン等)を塩基の非水素結合原子に結合することで支持体への付着に誘導することができる。他の可能な置換としては、例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、蛍光性基、アルキル基(例えば、メチル又はエチル)等が挙げられる。
【0045】
また、水素結合塩基対を形成する非天然塩基は、例えば、米国特許第5,432,272号、第5,965,364号、第6,001,983号、及び第6,037,120号及び米国特許出願第08/775,401号に記載されているように構成することができる。これらすべての開示は参照によって本明細書に取り込まれる。図3は、適切な塩基及びその対応する塩基対のいくつかの例を示す。これら塩基の特定の例は、塩基対の組合せ(iso-C/iso-G、K/X、H/J、及びM/N)に以下の塩基を含み:
【0046】
【化1】
【0047】
【化2】
【0048】
式中、Aは、高分子バックボーンの糖又は他の部分への結合点であり、Rは、H又は置換若しくは無置換アルキル基である。水素結合を利用する他の非天然塩基のみならず、塩基の非水素結合原子での官能基の組込みによる、上で特定した非天然塩基の変形を調製できることがわかるだろう。
【0049】
これら非天然塩基対の水素結合は、天然塩基の場合と同様であり、非天然塩基と対になる水素結合受容体と水素結合供与体との間に、2又は3個の水素結合が形成される。天然塩基とこれら非天然塩基との相異の1つは、水素結合受容体と水素結合供与体の数及び位置である。例えば、シトシンは、供与体/受容体/受容体塩基で、受容体/供与体/供与体塩基であるグアニンと相補性である。参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第6,037,120号に示されように、iso-Cは受容体/受容体/供与体塩基であり、iso-Gは相補的な供与体/供与体/受容体塩基である。
【0050】
オリゴヌクレオチドに使用される他の非天然塩基としては、例えば、両方とも参照によって本明細書に取り込まれる、Renら,J.Am.Chem.Soc.118,1671(1996)及びMcMinnら,J.Am.Chem.Soc.121,11585(1999)で議論されているナフタレン、フェナントレン、及びピレン誘導体が挙げられる。これら塩基は、安定化のために水素結合を利用しないが、代わりに疎水的又はファンデルワールス相互作用によって塩基対を形成する。
【0051】
本発明に従い、非天然塩基を使用すると、試料中に存在する核酸配列の検出及び定量化を拡張可能である。例えば、非天然塩基は、核酸に伴う反応を触媒する多くの酵素によって認識されうる。ポリメラーゼは、伸長オリゴヌクレオチド鎖を重合し続けるために相補的なヌクレオチドを必要とするが、他の酵素は、相補的なヌクレオチドを必要としない。非天然塩基塩基が鋳型中に存在し、その相補的な非天然塩基が反応混合物中に存在しない場合、ポリメラーゼは、通常、該非天然塩基を通り過ぎて伸長プライマーを伸長しようと試みてエンストする(又は、十分量の時間が与えられた場合には、塩基を間違って組み込む)。しかし、リガーゼ、キナーゼ、ヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ等のような、核酸に伴う反応を触媒する他の酵素は、非天然塩基を含む反応を触媒することができる。このような非天然塩基の特徴は、本発明に利用され、かつ本発明の範囲内である。
【0052】
例えば、非天然塩基を用いて、一本鎖オーバーハングを有する二本鎖核酸配列を生成することができる。これは、PCR反応を行い、試料中の標的核酸を検出することで達成することができ、該標的核酸は第1部分と第2部分を有し、この反応系は全4個の天然に存在するdNTP's、標的核酸の第1部分に相補的な第1プライマー、第1領域と第2領域を有する第2プライマーを含み、該第1領域は標的核酸の第1部分に相補的であり、かつ該第2領域は標的核酸に非相補的である。第2プライマーの第2領域は非天然塩基を含む。標的核酸が存在する場合、第1プライマー及び第2プライマーの第1領域が該標的核酸にハイブリダイズする。数回のPCRで、(i)二本鎖領域及び(ii)一本鎖領域を含有する増幅産物が生成する。二本鎖領域は、PCRの際に第1及び第2プライマーの伸長によって形成される。一本鎖領域は1個以上の非天然塩基を含む。ポリメラーゼは、相補的な非天然塩基のヌクレオチド三リン酸の非存在下では非天然塩基を越えて重合により伸長産物を形成できないので、増幅産物の一本鎖領域が生じる。このように、非天然塩基が作用して、増幅産物の一本鎖領域を維持する。
【0053】
上述したように、ポリメラーゼは、場合によっては、非天然塩基の反対の塩基を間違って組み込むことがある。この実施形態では、反応混合物が相補的な非天然塩基を含まないので、間違った組込みが起こる。従って、十分量の時間が与えられると、ポリメラーゼは、場合により、反応混合物の中に存在する、非天然塩基と反対の塩基を間違って組み込むことがある。
【0054】
増幅
PCRの際、ポリメラーゼ酵素、第1プライマー及び第2プライマーを用いて本明細書で述べるような増幅産物を生成する。使用可能な1つのPCR法は改変PCR、Fast-shotTM増幅である。本明細書で使用する場合、用語“Fast-shotTM増幅”は、改変ポリメラーゼ連鎖反応を意味する。
伝統的なPCR法は以下の工程を含む:二本鎖核酸の変性、又は融解;プライマーのアニーリング;及びポリメラーゼによるプライマーの伸長。伸長されたプライマーを変性し、再び開始することにより、このサイクルが繰り返される。標的核酸のコピー数は、理論的には指数関数的に増加する。実際には、コピー数は、通常酵素が該サイクルの間に伸長できるより多くのプライマー鋳型が集積するプラトーに達するまで、各サイクルで倍加し;そして標的核酸の増加が線形になる。
【0055】
Fast-shot増幅は、改変ポリメラーゼ連鎖反応であり、伸長工程のみならず、アニーリング及び融解工程が非常に短いか或いは除去される。本明細書で使用する場合、PCRの“工程”を指すとき、工程は、反応が所望の温度で、当該温度が実質的に変動せずに維持される時間である。例えば、典型的なPCRの伸長工程は約30秒〜約60秒である。Fast-shotTM増幅の伸長工程は、通常、約0秒〜約20秒の範囲である。好ましくは、伸長工程は約1秒以下である。好ましい実施形態では、伸長工程が除去される。典型的なPCRのアニーリング及び融解工程の時間は、30秒〜60秒の範囲である。Fast-shotTM増幅のアニーリング及び融解工程は、通常約0秒〜約60秒の範囲である。Fast-shotTM増幅では、アニーリング及び融解工程は、通常約2秒を超えず、好ましくは約1秒以下である。伸長工程が除去される場合、温度は、アニーリング温度と融解温度との間に中間の伸長工程を含まずに、アニーリング工程と融解工程の間で循環される。
【0056】
さらに、どうやってアニーリング温度から融解温度に速く変えるかという限界は、伸長プライマー上への塩基の組込みにおけるポリメラーゼの効率と、プライマー間のギャップとプライマーの長さによって決まる組み込まなければならない塩基の数によって決まる。実施例では、Fast-shotTM増幅の例が示される。
試料中の核酸配列の存在を決定するために必要なFast-shotTM増幅のサイクル数は、試料中の標的分子の数によって変化しうる。後述する一実施例では、100個程度の標的核酸を検出するためには全部で37サイクルで十分である。
【0057】
増幅産物
例えば、図1、2、及び9〜12に示されるように、PCRを用いて、二本鎖領域122と一本鎖領域124を含む増幅産物120が生成される。これらの図に示されるように、二本鎖領域122は、第1及び第2プライマー106及び108の伸長によって生じる。上述したように、一本鎖領域124は、本発明の第2プライマー内の非天然塩基の組込みから生じる。第2プライマー108の第2領域112は標的核酸100に相補的でない。上述したように、非天然塩基はワトソンとクリックの塩基の対合規則に従って他の非天然塩基と結合を形成するので、非天然塩基の存在は増幅産物120内の一本鎖領域124としての第2領域を維持する。
これとは別の実施形態では、一本鎖領域124は、1個より多くの非天然塩基を含む。第2プライマー108の第2領域112に含まれる非天然塩基の数は、所望通りに選択することができる。
【0058】
リポーター
本明細書で使用する場合、用語“リポーター”は、第2プライマーの第2部分に相補的であり、それゆえに二本鎖構造を形成する成分(例えば、オリゴヌクレオチド)を指す。例えば、図1、2、及び9〜12に示されるような実施形態を参照すると、リポーターは、標識128、132(図2では154)と、一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的である少なくとも1個の非天然塩基130(図2では152)とを含む。好ましくは、リポーターはポリメラーゼ連鎖反応の第1プライマー又は第2プライマーのどちらにも相補的でない。好ましくは、リポーターの3'末端は、“遮断”され、プライマー伸長産物中へのリポーターの組込みを阻害する。“遮断”は非相補性塩基を用いて、又は最後のヌクレオチドの3'ヒドロキシルに、ビオチン若しくはリン酸基のような化学成分を付加することで達成することができ、選択する成分によっては、標識としても作用することで、二重に目的に役立ちうる。
【0059】
本発明で有用なリポーターは1個より多くの非天然塩基を含むことができる。リポーターに含まれる非天然塩基の数は、使用者によって決めることができ、例えば、第2プライマーの第2領域の長さと塩基組成及び所望のハイブリダイゼーション条件とハイブリダイゼーション特異性のような因子よって決まるだろう。
リポーターのヌクレオチド含量は、通常第2プライマーの第2領域のヌクレオチド含量によって決定される。すなわち、リポーターの配列は、第2プライマーの第2領域の配列を決定し、かつワトソンとクリックによって開発された標準規則を用いて当該第2領域に対する補体を決定することで決められる。一実施形態では、例えば、第2プライマーの第2領域は単一の非天然塩基を含む。この実施形態では、リポーターは、好ましくは第2プライマーに含まれる非天然塩基に相補的な単一の非天然塩基を含む。同様に、1個より多くの非天然塩基が第2プライマーの第2領域に含まれる場合、第2領域の配列は、当該配列に対する補体を決定し、その結果によりリポーターが合成される。
【0060】
第2プライマーの第2部分にハイブリダイズ可能な同一配列を有するリポーターは、第2プライマーの第2部分が、それら分析においても同じであることを条件として、種々の分析に使用することができる。他言すれば、“万能な”リポーターと第2プライマーの第2部分とを使用することができる。そして、第1部分が該標的核酸に特異的である第2プライマーの“万能な”第2部分を第2プライマーの一部に結合し或いは一部として合成することができる。これは、例えば、所望の標的核酸のために使用者の注文によって特製されるキットで使用することができる。
【0061】
他の実施形態では、特定の分析において、それぞれ第2領域に異なった配列を有するいくつかの第2プライマーと、それぞれそのいくつかの異なった第2プライマーの1つの第2部分に相補的な配列を有するいくつかのリポーターとを使用することが有益である。このような分析では、各リポーターが異なった標識を有することが有利である。いくつかの実施形態では、リポーターを、その3'末端によって固体又は他の独特な支持体の別個の領域に結合させることができる。
リポーターの、相補的配列を有するオリゴヌクレオチドに対して十分に安定なハイブリッドを形成する能力は、プライマーについて上述したような因子によって決まる。
【0062】
これとは別の実施形態では、第2プライマーとリポーターが単一化合物である。この実施形態は図4に示される。図4Aに示されるように、標的核酸100は、第1プライマー106及び第2プライマー108と接触している。この実施形態では、第2プライマーは以下を含む:第1領域110、第2領域112、リンカー180、リポーター190、及びクエンチャー196。この実施形態では、リンカー180が第2プライマー108をリポーター190と連結する。リポーター190は、染料192、非天然塩基194、及びクエンチャー196を含む。非天然塩基194は第2プライマー108の非天然塩基114に相補的である。図4Bに示されるように、第1領域110が標的核酸100の第1部分102にアニールする。リンカー180は、一方のヌクレオチドの5'末端をもう一方のヌクレオチドの3'末端に結合させる化学的リンカーを含む。リンカー180は、図4Bに示されるように、リポーター126を折り返し、かつ第2プライマー102の第2領域112と塩基対を形成させる。一実施形態では、リンカー180は、リポーター126を第2領域112とハイブリダイズさせるのに十分な長さのヌクレオチドの配列を含む。好ましくは、この実施形態におけるリンカー180を含むヌクレオチドは、ヘアピンループ182を形成可能である。別の実施形態では、リポーター126が第2領域112にハイブリダイズする温度が、第1領域110が標的100の第2部分104にハイブリダイズする温度より低い。
【0063】
図4Cは、PCR、つまりFast-shotTM増幅の際にプライマー104及び106の伸長の結果生じる増幅産物200を示す。増幅産物200は、二本鎖領域202及び一本鎖領域204を含む。リポーター190が増幅産物の一本鎖領域204にアニールする。
図4Dに示されるように、リポーター190は、例えば、ポリメラーゼ又は他の適宜な酵素によって切断され、ひいてはリポーター断片198を遊離させる。遊離されたリポーター断片198は染料192を含む。ここで述べるように、クエンチャー196の近接による染料192の遊離によって、可視化されうる。いくつかの実施形態では、図4に示されるように、リポーター126が第2領域112にハイブリダイズされ、第1及び第2プライマー106、108が伸長する。これは、第1プライマー106が十分に伸長したときにポリメラーゼがリポーター断片198を切断するのを可能にし、かつPCRプロセスの際に、リポーターの引き続き添加せずに、該分析の“リアルタイム”モニタリングを可能にする。しかし、第1及び第2プライマーの伸長時におけるリポーターの第2領域へのハイブリダイゼーションは必要な特徴ではない。リポーターの第2領域へのハイブリダイゼーションは、図1で示される分析について述べたのと同一様式で伸長後に起こりうる。
【0064】
標識
本発明により、リポーターは標識を含む。ヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的分析によって検出可能な成分を組み込むことによって標識化できる。標識をヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに連結又は結合する方法は、使用する標識のタイプと、ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド上の該標識の位置によって決まる。
本発明の用途に適する種々の標識、及びプローブ内にそれを封入する方法は技術的に公知であり、限定するものではないが、酵素基質、放射性原子、蛍光染料、発色団、化学発光標識、ORI-TAGTM(Igen)のような電気化学発光標識、特異的な結合パターンを有するリガンド、又はシグナルを増強し、変化させ、若しくは減少させるために相互作用しうる他のいずれの標識も挙げられる。熱サイクラー設備を用いてPCRを実施し、この自動プロセスで必要な温度循環を存続するように標識を選択すべきであることが理解される。
本発明の方法の標識に好適な1つの放射性原子は、32Pである。32Pを核酸中に導入する方法は技術的に公知であり、例えば、キナーゼによる5'標識化、又はニックトランスレーションによるランダム挿入が挙げられる。
【0065】
上記説明は、同一標識は、いくつかの異なる態様で働きうるので、種々の標識を明確なクラスに分類することを意図したものでないことを理解すべきである。例えば、125Iは、放射性標識として、又は電子高密度試薬として貢献しうる。さらに、所望の効果のために種々の標識を組み合わせることができる。例えば、ヌクレオチドをビオチンで標識し、かつその存在を125Iで標識されたアビジンで検出することができる。他の変更及び可能性は、本技術の当業者には明かであり、本発明の範囲内で考えられる。
ある場合には、オリゴヌクレオチド上に標識の適切な間隔を維持して、オリゴヌクレオチドの加水分解時における標識の分離を許容するために正当な考慮を払って、単一のオリゴヌクレオチド上に2個の相互作用的標識を使用することが望ましい。同様に、例えば、リポーターと第2プライマーの第2領域のような異なるオリゴヌクレオチド上に2個の相互作用的標識を使用することが望ましい。この実施形態では、リポーターと第2領域は、相互にハイブリダイズするように設計される。この場合もやはり、ハイブリダイズ時にオリゴヌクレオチド間の標識の適当な間隔を維持することに考慮が払われる。
【0066】
相互作用的標識対の1種は、クエンチャー−染料対である。好ましくは、クエンチャー−染料対は、発蛍光団とクエンチャーで構成される。好適な発蛍光団としては、例えば、フルオレッセイン、カスケードブルー、ヘキサクロロ−フルオレッセイン、テトラクロロフルオレッセイン、TAMRA、ROX、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5,p-メトキシフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-S-インダセン-3-プロピオン酸、6-カルボキシ-X-ローダミン、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン、テキサスレッド、エオシン、フルオレッセイン、4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸、4,4-ジフルオロ-5,p-エトキシフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸及び4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-S-インダセンプロピオン酸が挙げられる。好適なクエンチャーとしては、例えば、Dabcyl、QSY7TM(Molecular Probes,Eugene,OR)等が挙げられる。さらに、染料は、それらが別の染料の放射光線を吸収する場合、クエンチャーとしても使用できる。
【0067】
標識は、非天然塩基を含むヌクレオチド、又はオリゴヌクレオチドに、種々の技法により直接又は間接的に結合させることができる。使用する標識の正確なタイプによって、標識はリポーターの5'又は3'末端に位置づけ、リポーターのヌクレオチド配列の内部に位置づけ、又はリポーターから伸長し、かつ種々の大きさ及び組成を有するスペーサーアームに結合させて、シグナルの相互作用を促すことができる。商業的に入手可能なホスホラミダイト試薬を用いて、例えば、リン酸結合の形成による5'塩基の5'ヒドロキシルにホスホラミダイト染料を結合させることによって、又は内部的に適切に保護されたホスホラミダイトを介して、各末端に官能基(例えば、チオール又は一級アミン)を含有するオリゴヌクレオチドを生成し、かつ例えば、参照によって本明細書に取り込まれるPCRプロトコル:A Guide to Methods and Applications,Innisら編集,Academic Press,Inc.,1990に記載されているプロトコルを用いてそれらを標識化することができる。
【0068】
1種以上のスルフヒドリル、アミノ又はヒドロキシル成分を有する試薬を官能化するオリゴヌクレオチドをオリゴヌクレオチドリポーター配列中、通常5'末端に組み込む方法は、参照によって本明細書に取り込まれる米国特許第4,914,210号に記載されている。例えば、5'リン酸基はポリヌクレオチドキナーゼと[γ32P]ATPを用いて放射性同位体として組み込み、リポーター基を与えることができる。ビオチンは、合成時に導入されたアミノチミジン残基を、ビオチンのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させることによって、5'末端に付加することができる。
3'末端における標識は、例えば、ポリヌクレオチド末端トランスフェラーゼを利用して、例えば、コルジセピン、35S-dATP、及びビオチン化dUTPのような所望成分を付加することができる。
【0069】
オリゴヌクレオチド誘導体は標識としても利用できる。例えば、エテノ-dA及びエテノ-Aは、リポーター中に組み込むことのできる公知の蛍光アデニンヌクレオチドである。同様に、エテノ-dCは、リポーター合成に使用できる別の類似体である。このようなヌクレオチド誘導体を含有するリポーターは、PCRの際に核酸ポリメラーゼがプライマーを伸長するとき、ポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性によって加水分解され、ずっと強い蛍光性のモノヌクレオチドを遊離しうる。
いくつかの実施形態では、標識化リポーターが第1及び第2標識を含み、第1標識はヌクレアーゼ感受性切断部位によって第2標識から分離されている。
【0070】
リポーターの標識は、リポーターのいずれの適切な位置に位置づけることもできる。例えば、リポーターが1個より多くのヌクレオチドを含む場合、標識はリポーター配列のいずれの適切なヌクレオチドにも結合させることができる。標識は、リポーターの5'末端に位置づけ、非相補的配列によって標的核酸に相補的なリポーター配列から分離することができる。この実施形態では、増幅産物の非天然塩基に相補的な非天然塩基、及び第2プライマーの第2領域に非相補的な配列を含み、かつ該標識は第2領域に非相補的な配列内に位置づけられる。さらに、標識は、適切なスペーサー又は化学的リンカーを用いて、リポーターのヌクレオチドに間接的に結合させることができる。
【0071】
別の実施形態では、標識化リポーターは、リポーター上又はリポーター上及び分析の第2構成要素(第2オリゴヌクレオチドのような)上に有効に位置づけられた1対の相互作用的シグナル生成標識を含み、この相互作用的シグナル生成標識が相互に十分に近接したときに検出可能なシグナルの生成をクエンチする。好ましくは、これら標識はヌクレアーゼ切断に感受性なリポーター内の部位によって分離され、それによって核酸ポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性が、ヌクレアーゼ感受性部位でリポーターを切断することにより、第1の相互作用的シグナル生成標識を第2の相互作用的シグナル生成標識から分離させる。相互作用的シグナル生成成分の分離(例えば、該標識の一方を含有するリポーター断片を遊離させるためのリポーターの切断)の結果、検出可能なシグナルの生成となる。このような標識の例としては、染料/クエンチャー対又は2種の染料対(一方の染料の放射が第2染料による放射を刺激する)が挙げられる。
【0072】
例示実施形態では、相互作用的シグナル生成対は、発蛍光団、例えばフルオレッセイン、5-[(2-アミノエチル)アミノ]ナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)、テトラメチルローダミン等と、発蛍光団の蛍光放射をクエンチすることができるクエンチャー、例えば、ジメチルアミノアゾベンゼンアミノエキサル-3-アクリイニド(Dabcyl)とを含む。当業者は、特定の発蛍光団の放射をクエンチすることができる適切なクエンチャー成分を選択することができる。例示実施形態では、Dabcylクエンチャーが発蛍光団成分からの蛍光の放射を吸収する。発蛍光団−クエンチャー対については、参照によって本明細書に取り込まれるMorrison,Detection of Energy Transfer and Fluoresence Quenching in Nonisotpic Probing,Blotting and Sequencing Academic Press,1995に記述されている。
これとは別に、これら相互作用的シグナル生成標識は、第2プライマーの第2領域が少なくとも1個の非天然塩基と標識を含む場合の検出方法で使用することができる。この対の第2標識は、第2プライマーの非天然塩基に相補的な少なくとも1個の非天然塩基と、第2標識とを含むリポーターによって供給される。この実施形態は図6に示される。例えば、染料/クエンチャー対を使用すると、リポーターのハイブリダイゼーション又は増幅産物の組込みの結果、蛍光の減少となる。
【0073】
これとは別に、2つの標識の近接は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)又は蛍光偏光によって検出することができる。FRETは2個の染料分子の電子励起状態間の距離依存性相互作用であり、光子の放射無しで、励起が供与体分子から受容体分子へ転移する。FRETの供与体/受容体染料対の例は、フルオレッセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANSTM/フルオレッセイン(Molecular Probes,Eugene,OR)、EDANSTM/Dabcyl、フルオレッセイン/フルオレッセイン(Molecular Probes,Eugene,OR)、BODIPYTM FL(Molecular Probes,Eugene,OR)、及びフルオレッセイン/QSY7TMである。
【0074】
アニーリング
リポーターは、検出方法の際適宜の時に試料に付加される。図1に示される実施形態では、PCRが十分な増幅産物120を生成した後、増幅産物120の一本鎖領域124にリポーター126がアニールされる。この図解される実施形態では、リポーター126は、染料128、クエンチャー132、及び第2プライマー108の非天然塩基114に相補的な非天然塩基130を含む。リポーター126は、第2プライマー108の第2領域112に対応する配列にアニールする。PCRが十分な増幅産物120を生成した後に反応混合物にリポーター126を添加するか、又はPCR増幅の前に反応混合物にリポーター126を添加することができる。好ましくは、PCR増幅の前にリポーター126が反応混合物に添加される。増幅後、好ましくは、リポーター/増幅産物の融解温度未満に温度を下げ、リポーターを増幅産物の一本鎖領域にアニーリングさせる。一実施形態では、リポーターの一本鎖オーバーハング領域へのアニーリング工程の際、反応温度は約49℃以下である。アニーリングは、上述したような他のリポーター及び他のタイプの標識を用いる実施形態を含め、本発明の他の実施形態と同様に行われる。別の実施形態では、リポーター126は、第1及び第2プライマー106、108と増幅産物120の融解温度又はそれ以上の温度でアニールされる。この実施形態は、PCR増幅産物の“リアルタイム”検出を行う場合に特に有用である。
【0075】
切断
本発明の一実施形態では、リポーターが増幅産物にアニールした後、切断事象が起こって少なくとも1つのリポーター断片を遊離する。このリポーター断片の遊離は、後述するように、標的核酸の存在に関連づけられる。リポーターが増幅産物の一本鎖領域にアニールすると、これがリポーター/増幅産物複合体を形成し、複合体を切断してリポーター断片を遊離させる酵素によって認識されうる。この実施形態で使用するために考えられる酵素は、一般的に種々のリポーター/増幅産物複合体構造を認識することができる。例えば、リポーター126の5'末端部は、増幅産物の配列と重なることができ、一本鎖オーバーハング領域160を形成する(図1D参照)。
【0076】
別の実施形態では、リポーター126はオーバーラップ領域を含まないで一本鎖オーバーハング領域を形成するが、リポーターが増幅産物にアニールされるときは(図5参照)、むしろリポーターはニック様構造を形成する。図5Dに示されるように、この実施形態では増幅産物中にニック様構造が形成される。一般的に、二本鎖DNA中の“ニック”は、1本の鎖上の2個の隣接するヌクレオチド間にホスホジエステル結合が存在しないことである。本明細書で使用する場合、用語“ニック様”構造は、リポーター126の5'末端ヌクレオチドと増幅産物の鎖100aの3'末端ヌクレオチドとの間にホスホジエステル結合が存在しない場合に形成される。二本鎖DNAの1本の鎖が新物質の再合成によって分解及び置換されうる開始点として、二本鎖DNA中のニックを使用することができる、例えば大腸菌DNAポリメラーゼIのようないくつかの酵素がある。
【0077】
この実施形態では、リポーター210は、増幅産物の非天然塩基114に相補的である非天然塩基216、染料212、及びクエンチャー214を含む。リポーター210が増幅産物の一本鎖部分にアニールする。従って、ニックは、非天然塩基216と増幅産物の隣接するヌクレオチドとの間に生成される。この実施形態では、ポリメラーゼは、リポーター/増幅産物複合体中に形成されたニック様構造を認識し、かつ当該ニック部位でリポーターを切断する。複合体の切断がリポーター断片134を遊離し、シグナルが検出される。
リポーター/増幅産物複合体によって形成される特定構造のいくつかは、いくらか詳細に議論されるが、他のリポーター/増幅産物複合体は、本明細書で述べるように切断を行うことで形成することができる。
【0078】
図1Dに示される実施形態を参照すると、アニーリング後、リポーター126の5'末端160の部分は標的にアニールされず、一本鎖である。アニールされたリポーター断片を増幅産物から切断するためのポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性の能力が維持されることを条件として、塩基中のいずれの長さの一本鎖オーバーハング領域160も考えられることが分かる。図1Dで例示される実施形態では、検出のため、ポリメラーゼの5'→3'ヌクレアーゼ活性を、アニールされたリポーター126の切断を可能にするのに十分な条件下で反応が続けられる。リポーター126の切断が切断断片134(標識又は標識の一部を含有する)を生成し、それが検出される(又は、代わりに残存リポーター/増幅産物複合体が検出され)、かつそれらは試料中における標的核酸の存在の指標である。少なくともいくつかの実施形態では、リポーター断片はモノ−、ジ−、及びより大きいヌクレオチド断片の混合物を含むことができる。
【0079】
図1Eに示されるように、ポリメラーゼのヌクレアーゼ活性が一本鎖領域160を切断し、リポーター断片134を遊離させる。この実施形態では、リポーター断片は染料128を含む。クエンチャー132を含む増幅産物からの染料128の遊離が染料の検出を可能にする。従って、リポーター断片の遊離は、リポーター断片がクエンチャーへの近接から遊離されるときに染料の検出を可能にする。これは、順次、リポーター断片の遊離と標的核酸の存在との関係を斟酌する。そうでなければ、染料とクエンチャーの配置が逆にされ、クエンチャーがリポーター断片と共に遊離され、リポーター/増幅産物上の染料が検出される。
【0080】
組込み
さて、図2を参照すると、本発明の別の実施形態が示される。この実施形態では、第2プライマーの第2領域124が非天然塩基124を含む。非天然塩基124に相補的な非天然塩基152が、適切な酵素を用いて増幅産物中に組み込まれる。この実施形態では、リポーターの組込みが試料中の標的核酸の存在と関連づけられる。
図2に示されるように、本発明の方法はリポーター150;核酸ポリメラーゼ(図示せず);第1プライマー106及び第2プライマー108を利用する。PCR反応混合物は、4個の天然に存在するヌクレオチド三リン酸(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)及び1個以上の非天然ヌクレオチド三リン酸(又は非天然ヌクレオチド三リン酸を含有するオリゴヌクレオチド)をもリポーター150として含有する。例示実施形態では、反応混合物中の1個以上の非天然ヌクレオチド三リン酸152が標識154を含む。PCRはFast-shotTM増幅でよい。
【0081】
第1プライマー106は、標的核酸100の一部に相補的な配列を含み、かつ標的核酸100の当該部分にハイブリダイズすることができる。第2プライマー108は第1領域110と第2領域112を有する。第1領域110は、標的核酸100の一部に相補的な配列を含む。第2プライマー108の第2領域112は非天然塩基114を含み、この第2領域112は標的核酸100に相補的でない。単一のヌクレオチドだけが第2領域112に図示されているが、第2領域はさらにヌクレオチドを含みうることが分かるだろう。好ましくは、非天然塩基114は、第2プライマー108の第1領域110と第2領域112との接合部に位置する。いくつかの実施形態では、第2オリゴヌクレオチドプライマーの第2領域112中に存在する非天然塩基114は、iso-C又はiso-Gである。
【0082】
第1プライマー106及び第2プライマー108に加え、試料はポリメラーゼに接触させられ(図示せず)、ポリメラーゼ連鎖反応が行われる。標的核酸100が試料中に存在する場合、塩基の標準的な対合規則に従って、第1プライマー106の相補性部分と第2プライマー108の相補性部分110が、標的核酸100の対応領域102、104にアニールする。図1に示される実施形態と同様に、プライマーが標的にアニールされるとき、第1プライマー106の3'末端ヌクレオチドは、ヌクレオチドの配列、つまり“ギャップ”によって、第2プライマー108の3'末端ヌクレオチドから分離される。好ましい実施形態では、第1及び第2プライマーは、鋳型核酸にアニールされるとき、PCRプライマーの3'末端間に、鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5個の塩基のギャップが存在するように設計される。
【0083】
図2B及び2Cに示されるように、ポリメラーゼを用いてポリメラーゼ連鎖反応、つまりFast-shotTM増幅によって、各プライマーの3'-OH末端から一本鎖120a、120bが合成される。ポリメラーゼ連鎖反応は所望のサイクル数続け、図2Cに示される増幅産物120を得ることができる。
図2Cに示されるように、増幅産物120は二本鎖領域122及び一本鎖領域124を含む。示されるように、一本鎖領域124は第2プライマー108の非天然塩基114を含む。一本鎖領域124は単一の非天然塩基を含んで示されているが、この領域は、1個より多くの非天然塩基を含むことができる。
【0084】
さて、図2Dを参照すると、増幅産物120がリポーター150と接触させられる。リポーター150は標識154と非天然塩基152を含む。図2Eに示されるように、リポーター150は、増幅産物中非天然塩基114の反対側に組み込まれる。一実施形態では、リポーター150の非天然塩基152は、増幅産物120の一本鎖領域124の非天然塩基114に相補的なヌクレオチド三リン酸を含む。この実施形態では、PCR反応は、4個の天然に存在するヌクレオチド三リン酸塩基(すなわち、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP)に加え、標識された非天然ヌクレオチド三リン酸塩基の存在を含む。PCR反応における非天然ヌクレオチド三リン酸塩基の濃度は、例えば、1μM〜100μMの範囲でよい。
【0085】
リポーター150を増幅産物120中に組み込むための好適な酵素としては、例えば、ポリメラーゼ及びリガーゼが挙げられる。伸長プライマー鎖中に天然ヌクレオチドを組み込むことができる多くのポリメラーゼを使用して、増幅産物中相補的な非天然塩基の向かい側に非天然塩基を組み込むこともできる。典型的には、クレノウ、Tfl、Tth、Taq、Hot Tub、及びBstのようなクラスA DNAポリメラーゼが、Pfu、Tli、Vent exo-、T4、及びPwoのようなクラスBポリメラーゼよりも非天然塩基をうまく組み込むことができる。HIV-1のような逆転写酵素を使用しても、伸長プライマー中に、鋳型内のその相補性非天然塩基の向かい側に非天然塩基を組み込むことができる。この実施形態では、ポリメラーゼはヌクレアーゼ欠乏性であるか、又は低減されたヌクレアーゼ活性を有することができる。本発明を限定する意図ではないが、ヌクレアーゼ活性はいくつかのPCR反応を妨害することが分かっているので(Gene 1192 112(1):29-35及びScience 1993
260(5109):778-83)、ヌクレアーゼ欠乏性ポリメラーゼが、より強力であると考えられる。
【0086】
試料中の標的核酸の存在は、増幅産物中のリポーターの存在と関連づけることによって決定される。適切な検出及び可視化方法を用いて標的核酸を検出する。例えば、例示の場合、標的核酸の存在は、例えば、蛍光又は他の可視化方法によって、標識154を検出することによって決定される。例えば、蛍光偏光を利用して、増幅産物中へのリポーターの組込みを検出することができる。
好ましくは、この実施形態では、洗浄工程又は分離工程は、リポーター150の増幅産物120中への組込み後、かつ検出前に行われる。この洗浄又は分離工程は、系から未結合リポーター150を除去するので、シグナルの検出は組み込まれたリポーターに依存する。当業者は、ゲル電気泳動法等によるサイズ分離等を含め、いずれの公知の洗浄又は分離工程も本発明と共に使用できることが容易にわかるだろう。代わりに、検出の方法として蛍光偏光を用いる場合、洗浄工程は必要ない。
【0087】
この実施形態で使用するリポーター150は、少なくとも1個の非天然塩基152を含む。リポーターの非天然塩基は、好ましくは標識154を含む。リポーター150の非天然塩基152は、PCR増幅の際、第2プライマー108の少なくとも1個の非天然塩基114の反対側にポリメラーゼによって増幅産物中に挿入される。
別の実施形態では、図6に示されるように、リポーター170は、第2プライマー108の非天然塩基114に相補的な非天然塩基172と、クエンチャー129とを含む。この実施形態では、第2プライマー108の非天然塩基114は染料162を含む。この実施形態では、リポーター170の組込みにより、クエンチャー129を染料162に近接させる。これは、順次、染料162のシグナル出力を減少させ、このシグナルの減少を検出し、標的核酸の存在と関連づけられる。好適な染料−クエンチャー対については上述した。これとは別に、染料−染料対を使用できる。標的核酸が存在する場合、PCRは、近接して2つの染料を配置する二重産物を生成し、標識の蛍光出力が変化する。この変化は、ベンチトップ蛍光プレートリーダーによって検出可能である。
この実施形態で用いるポリメラーゼは、ヌクレアーゼ活性を有し、又は低減したヌクレアーゼ活性を有し、又はヌクレアーゼ活性欠乏性でよい。好ましくは、このポリメラーゼは熱安定性ポリメラーゼである。
【0088】
検出
リポーターオリゴヌクレオチド断片の検出と解析は、技術的に公知のいずれの方法によっても達成することができる。上記標識を含有する核酸の検出に多くの方法が利用できる。例えば、ビオチン標識オリゴヌクレオチドは、ストレプトアビジン−アルカリ性ホスファターゼ接合体のようなアビジン接合体を利用する非放射性同位体検出法を用いて検出することができる。フルオレッセイン標識オリゴヌクレオチドは、フルオレッセイン−イメージャーを用いて検出することができる。
一実施形態では、さらに処理することなくPCR反応混合物内でリポーターオリゴヌクレオチドを検出することができる。例えば、切断されたオリゴヌクレオチドからのシグナルは、物理的分離の無い未切断オリゴヌクレオチドのシグナルから解明することができる。これは、例えば蛍光偏光解析によって達成することができ、蛍光分子の溶液中での大きさひいては回転速度の変化を検出することができる。
【0089】
一実施形態では、標的が存在する場合、第1及び第2標識(例えば、染料/染料対)を近接して配置する二重産物が生成される。2つの標識が近接すると、リポーター分子標識の蛍光出力が変化する。この変化は、ほとんどのベンチトップ蛍光プレートリーダーで検出できる。これとは別に、標識対は近接したクエンチャー−標識対を含む。この実施形態では、リポーター分子標識の蛍光出力が変化し、この変化は検出可能である。この発明では、他の適切な検出方法が考えられる。
別の実施形態では、さらに処理した後にリポーターが検出される。オリゴヌクレオチドを分離するのに有用な技術的に公知の多くの技法のいずれを用いても反応からリポーターオリゴヌクレオチド断片を分離できると考えられる。例えば、固相抽出によって反応混合物からリポーターオリゴヌクレオチド断片を分離することができる。電気泳動法又は電気泳動法以外の方法でリポーターオリゴヌクレオチド断片を分離することができる。例えば、ビオチン−標識オリゴヌクレオチドは、常磁性若しくは磁性ビーズ、又はアビジン(若しくはストレプトアビジン)で被覆された粒子を用いて反応混合物から分離することができる。この様式では、ビオチン化オリゴヌクレオチド/アビジン−磁性ビーズ複合体は、該複合体を磁場にさらすことによって、混合物中の他の成分から物理的に分離されうる。一実施形態では、リポーターオリゴヌクレオチド断片は、質量分析法によって解析される。
【0090】
いくつかの実施形態において、熱循環時に蛍光を読み取ることのできる機器上で増幅が行われ、かつ検出される場合、非特異性PCR産物から意図したPCR産物を区別することができる。鋳型核酸の量が制限されている場合、意図した産物以外の増幅産物が形成されうる。これは、第2プライマー108が、それ自体又は第1プライマー106と共にプライマー二量体に合体されるプライマー二量体形成のためである。プライマー二量体形成の際、2つのプライマーの3'末端がハイブリダイズし、かつ核酸ポリメラーゼにより、関与する各プライマーの5'末端まで伸長される。これが、次の一回りの増幅でこの非特異的産物をさらに指数関数的に生じさせるのに関与するプライマーの形成時の完全基質である基質を生じさせる。従って、プライマー二量体の最初の形成は、それが非常に珍しい事象である場合でさえ、特に鋳型核酸が制限され或いは不在のとき、増幅プロセスが二量体産物を該反応に打ち勝たせることができるので、有利な相互作用である必要はない。第2オリゴヌクレオチドプライマー106がこの産物中に組み込まれるとき、標識された非標準塩基170は、第2プライマー106の非標準塩基114に対して直交に配置される。この結果、リポーターの標識129と第2プライマーの162との間に相互作用をもたらし、図6Eに示されるような意図した産物120の形成におけるのと同一の蛍光出力の変化を与えるだろう。プライマー二量体産物は、通常意図した産物より長さが短く、それゆえより低い融解温度を有する。図6Eに示されるように標識は二本鎖を越えて近接に保持されるので、2本の鎖を分離する事象は、標識の相互作用を破壊するだろう。反応産物を含有する反応の温度をプライマー二量体の二本鎖DNAsのTmより高く上昇させると、意図した産物は、該産物のDNA二本鎖を融解し、かつ標識の相互作用を破壊して蛍光の測定可能な変化を与えるだろう。増幅及びシグナル生成後、徐々に反応温度を上げながら蛍光の変化を測定することによって、意図した産物のTm及び非特異的産物のTmを決定することができる。
【0091】
入れ子状PCR
本発明の方法を用いて入れ子状PCRを行うことができる。例として、第1、第2、及び第3プライマー(又はそれより多い)を用いて入れ子状PCRを行うことができる。第2プライマーは、標的配列に相補的な第1領域と、リポーターオリゴヌクレオチドに相補的な第2領域を有する。第1及び第3プライマーは、第2プライマーより高温で標的にハイブリダイズすることができる。変性及びアニーリング温度間の循環が第1及び第3プライマーを標的核酸にアニールさせるが、第2プライマーはアニールさせない、数回のPCRサイクルが行われた後、第1増幅産物が生成されうる。その後、PCRアニーリング温度を下げて、第2プライマーの第1領域を第1増幅産物にハイブリダイズさせることができる。この下げたアニーリング温度での数サイクルのPCRにより、第1及び第2プライマー間の第2増幅産物が生成する。温度を下げて、リポーターオリゴヌクレオチドの第2プライマーの第2領域へのハイブリダイゼーションを可能にする。
【0092】
DNA多型性の検出における使用
本発明の方法は、核酸配列の配列変異を検出するのに有用である。本明細書で使用する場合、用語“配列変異”は、2核酸間の核酸配列の相異を指す。例えば、野生型遺伝子とこの遺伝子の突然変異体は、単一塩基の置換若しくは欠失又は1個以上のヌクレオチド挿入の存在によって、配列が変化しうる。これら2つの遺伝子の型は、相互に配列が変わると言われている。配列変異の一例は、DNA多型性である。図7に示される実施形態では、単一のヌクレオチド多型性(SNP)の検出が例示されており、PCRを用い、蛍光プレートリーダー上にPCR反応プレートを配置すること以外はさらに試料の操作を必要としない。対立遺伝子特異性標識を含む対立遺伝子特異性リポーター又はプライマーが使用される。例えば、2つの対立遺伝子系は、異なった色の標識を有する対立遺伝子特異性リポーター又はプライマーを含んでよい。試料中の当該対立遺伝子の存在を指標するどちらかの色の存在及び当該両方の対立遺伝子を指標する2色の組合せの存在が試料中にある。
【0093】
この実施形態では、プライマーは以下のように単一のヌクレオチド多型性を検出するように設計される。好ましくは、使用するプライマーの1つは対立遺伝子特異性プライマーを含む。好ましくは、プライマーの1つは非天然塩基を含む。一実施形態では、これら両特徴が単一のプライマーによって与えられる。代わりに、対立遺伝子特異性プライマーは、非天然塩基を含むプライマーとは別個のプライマーである。
本明細書で使用する場合、用語“対立遺伝子特異性プライマー”は、SNPを含有すると推測される領域内の標的核酸に完全に相補的であるプライマーを意味する。
【0094】
SNP対立遺伝子を区別するために使用可能な対立遺伝子特異性PCRプライマーは、関心のある多型性塩基が該プライマーの3'末端に位置するように、各対立遺伝子に相補的に設計される。高レベルの対立遺伝子の区別は、その3'末端で標的DNAの3'末端、すなわち、プライマーが特異的でない対応する対立遺伝子とヌクレオチドのミスマッチがあるプライマーを伸長するポリメラーゼの能力の制限によって部分的に達成される。さらに、対立遺伝子の区別は、対立遺伝子特異性プライマー内の他の位置にミスマッチを配置することで達成することができる。一般に、対立遺伝子特異的な位置は、ミスマッチがあるとポリメラーゼがプライマーを有効に伸長できないという条件で、プライマー内のどこでもよい。好ましくは、対立遺伝子ミスマッチが、選択されたPCR条件では異なった対立遺伝子の標的核酸配列への対立遺伝子特異性プライマーのハイブリダイゼーションを十分に不安定にするようにプライマーが選択される。一実施形態では、対立遺伝子特異的な位置は、プライマーの3'末端から約5塩基以内である。例えば、対立遺伝子特異的な位置は、プライマーの3'末端塩基でよい。プライマー中の対立遺伝子特異的な位置のこれら交代性の位置を用いて、以下の2つの主な方法で選択的な増幅を達成することができる:1)プライマーのTmを下げ、ポリメラーゼの熱循環の際に鋳型DNA上でプライマーがハイブリダイズして伸長しないようにすることにより、又は2)ポリメラーゼが伸長しないであろう不都合なプライマー/鋳型構造を創造することによる。特異性の向上は、伸長停止時間、及びアニーリングと融解の停止時間が短いか、又は存在しないFast-shotTM増幅を利用することによって達成される。このような一実施形態では、反応は約90〜100℃と約50〜65℃との間で迅速に循環され、各温度で最大約1秒保持され、それによってポリメラーゼにミスマッチのプライマーを伸長する時間をほとんど残さない。例示した実施形態では、反応は約95℃と約58℃の間で循環され、各温度で最大約1秒保持される。この迅速な循環は、最短の可能なPCR産物を生成することで、一般的に、PCRプライマーの3'塩基間の鋳型核酸上の約ゼロ(0)〜約5塩基のギャップを残すことによって可能にされる。好ましくは、プライマーは、可能な最短配列及び約55〜60℃のTmを有するように設計される。ゲノムDNA試料に関するSNP解析を含む一実施形態では、30個程度の標的分子を検出するには、総計約37サイクルで十分だった。
【0095】
図7には対立遺伝子特異的分析法の1例が示される。本明細書で議論される他の分析法を使用し、又は対立遺伝子特異的分析のために改変できることが分かるだろう。図7Aを参照すると、試料は標的核酸100を含有すると推測され、該標的核酸100は、第1部分102と第2部分104を含む。示されるように、標的核酸100は、鎖100aと100bで構成される二本鎖分子である。
図7Bを参照すると、示されるように、試料が2つ以上の対立遺伝子特異性第1プライマー106a、106bと、第2プライマー108と接触させられる。一方の対立遺伝子特異性第1プライマー106aは標的核酸100の第1部分102に相補的である。他方の対立遺伝子特異性プライマー106bは、標的核酸100の第1部分102に完全には相補的でない。第2プライマー108は、第1領域110と第2領域112を含み、第1領域110は標的核酸100の第2部分104に相補的な配列を含む。第2プライマー108の第2領域112は、非天然塩基114を含む。第2領域112は、標的核酸100に相補的でない。
【0096】
第1プライマー及び第2プライマーに加え、試料はポリメラーゼとも接触させられ、本明細書で述べるように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供される。試料中に標的核酸100が存在する場合、対立遺伝子特異性第1プライマー106aの相補性部分及び第2プライマー108の相補性部分が、塩基の標準的な対合規則に従って標的核酸100の対応する領域102及び104にアニールする。
図7Bに示されるように、ポリメラーゼを用い、PCR、つまりFast-shotTM増幅により、各プライマー106a、108の3'-OH末端から一本鎖が合成される。すなわち、対立遺伝子特異性第1プライマー106aを用い、標的核酸100の鎖100aの少なくとも一部に相補的な鎖120aが合成され、第2プライマー108を用い、標的核酸100の鎖100bの少なくとも一部に相補的な鎖120bが合成される。対立遺伝子特異性第1プライマー106bは、標的核酸100に完全には相補的でないので、実質的に伸長しない。ポリメラーゼ連鎖反応を所望のサイクル数進め、図7Cに示される増幅産物120を得ることができる。そして、図1に示される分析で述べたように分析を進める。
【0097】
キット
本発明の方法で使用する試薬を診断キットに詰めることができる。診断キットは、標識化リポーター、第1プライマー、及び第2プライマーを含む。いくつかの実施形態では、キットは、ポリメラーゼによって伸長オリゴヌクレオチド中に組み込むことができる非天然塩基を含む。一実施形態では、この非天然塩基は標識される。オリゴヌクレオチドと非天然塩基が標識されない場合、特異的な標識試薬もキットに含めることができる。キットは、他の適宜の梱包試薬及び増幅に必要な物質、例えば、緩衝液、dTNPs、重合酵素、及び検出解析のために、例えば、酵素及び固相抽出用溶媒を含むこともできる。
本発明の方法に有用な試薬は、溶液で貯蔵することができ、又は凍結乾燥することができる。凍結乾燥する場合、試薬のいくつか又はすべては、再構成後簡単に使用するため微量定量プレートウェル内に直ちに貯蔵することができる。凍結乾燥試薬の技術的に公知のいずれの方法も、本発明の方法で有用な試薬を乾かして調製するのに適すると考えられる。
【0098】
本明細書で参照又は引用されるすべての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物は、その全体がこの明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲まで、参照によって本明細書に取り込まれる。
以下は、本発明を実施する手順を説明する実施例である。これら実施例は、限定するものと考えるべきでない。特に言及しない限り、すべてのパーセンテージは質量についてであり、すべての溶媒混合割合は体積についてである。
【実施例】
【0099】
実施例1
プライマー設計
核酸成分の配列中に示される記号は以下の通りである:A=デオキシアデニレート;T=デオキシチミジレート;C=デオキシシチジレート;G=デオキシグアニレート;X=デオキシ−イソ−シトシン(d-isoC);Y=デオキシ−イソ−グアニン(d-isoG);P=標的核酸中の多型性ヌクレオチドに相補的な第1プライマーのヌクレオチド;B=核酸ポリメラーゼと、リポーターの伸長を遮断するために機能する3'末端へのビオチンTEGCPG(Glen Reserch,Sterling,VA)の付加によるリポーター核酸の3'修飾;Q=5'-ジメトキシトリチルオキシ-5-[(N-4'-カルボキシ-4(ジメチルアミノ)-アゾベンゼン)-アミノヘキシル-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン-3'-[(2-シアノエチル)-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホラミダイト(Dabcyl dT;Glen Reserch,Sterling,VA)の付加によってリポーター中に組み込まれるシグナルクエンチング要素(5'-5-[(N-4'-カルボキシ-4(ジメチルアミノ)-アゾベンゼン)-アミノヘキシル-3-アクリルイミド]-2'-デオキシウリジン(Dabcyl dT;Glen Reserch,Sterling,VA);FAM=シグナル生成要素(6-カルボキシフルオレッセイン(6-FAM);Glen Reserch,Sterling,VA)。下線は、鋳型に相補的でない核酸成分の部分を示す。
【0100】
核酸成分の設計は、以下のように示される。
【0101】
【0102】
第1プライマーは、約60℃のTmを有するように設計される。第2プライマーは、約61℃のTmを有するように設計される。Tmは、参照によって本明細書に取り込まれるPeyretら,Biochemistry,38,3468-77(1999)を含め、種々の公知技術によって推定することができる。
ハイブリダイゼーション条件は、以下の通りである。
【0103】
【0104】
3'Gは、TaqポリメラーゼのGミスマッチを広げる傾向のため、対立遺伝子特異性プライマーの設計では避けた。
第2プライマーの第1領域、つまり3'末端は、標的核酸の第2部分、つまり下流領域に相補的だった。標的核酸上の第2プライマーの位置は、ギャップ、つまり第1及び第2プライマーの3'末端間にある標的核酸の領域を与え、0〜約5ヌクレオチドでありうる。第2プライマーの合成では、第2プライマーの第2領域内のイソ−シトシンヌクレオチド組込みは、標準的なDNA合成条件を用いて行った。
【0105】
実施例2
対立遺伝子特異性PCR
蛍光に基づいたPCR反応では、以下の核酸成分を使用した。
【0106】
【0107】
個々に20μlのPCR反応量に対するPCR反応中の成分の作用濃度(1X)は以下に示される。
【0108】
【0109】
氷上で各成分を解凍し、一緒に穏やかに混合した。10X PCR緩衝液を調製し、100mM トリスpH8.0、0.1%BSA、0.1%Triton X-100、1mg/mlの分解したニシン精子DNA(Sigma D-3159)、400mMの酢酸カリウム、及び20mM MgCl2で構成された。マスターミックス及び対立遺伝子特異性ミックスは、下記の割合で試薬を添加して調製した。
【0110】
【0111】
反応の最終体積は20μLだった。マスターミックスと第1プライマーを合わせて15μLに5μLの標的核酸を添加した。標的核酸の量は、最終利用者のニーズに応じてマスターミックスに添加する水の量を調整することで増減できる。5μLは、多チャネルピペッターで供給するのに便利な量である、対立遺伝子特異性ミックスは、以下に示されるように調製した。
【0112】
【0113】
以下のように分析プレートを調製した:15μLの対立遺伝子特異性ミックス(上述したような)を96−ウェル分析プレートに等分した。(対立遺伝子特異性ミックスは、分析で使用される各特異性第1プライマーについて調製かつ実験することができる)。標的核酸試料を、対立遺伝子特異性ミックスを含有する各ウェルに体積5μLで繰返し添加した。特定数のウェルを対照として取っておいた:各対立遺伝子特異性ミックスについてネガティブ対照(標的核酸無し)を実験すべきである。標的核酸の添加後、20μLの鉱油で反応を覆い、分析プレートをDNA熱サイクラーに移した。この手順の実際の時間は、多チャネルピペッターの使用により非常に短縮された。
分析プレートの熱循環パラメーターは以下に示される。
【0114】
【0115】
PCR循環反応後、分析プレートを蛍光シグナルの放射について調べた。分析プレートをPerSeptive Biosystems CytofluorTM4000蛍光プレートリーダーに移し、プレートの上部から読み取るように装置をセットした。プレートリーダーのパラメーターは次の通りである:485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲインを50に設定。そして、試料を読み取った。
表1は、対立遺伝子特異性プライマーを用いて得られた示度を示す。
【0116】
表1
RFU=相対蛍光単位
【0117】
実施例3
SNP検出における“Fast-shotTM”増幅と標準PCRとの比較
この実施例は、標的レベルの大きさを3桁にわたって変えることにり、“Fast-shotTM”増幅と伝統的なPCR循環パラメーターとの間の対立遺伝子の区別の相対的なレベルを示す。Fast-shotTM増幅は、プライマーの変性及びアニーリング温度間の循環を含み、これら温度は非常に短時間で停止する。
【0118】
以下の核酸成分を用いた。
【0119】
【0120】
鋳型核酸濃度は、アトモル範囲にあった。個々の20μLのPCR反応量に対するPCR反応における成分の作用濃度(1X)は、以下に示される。
【0121】
【0122】
PCR反応は、実施例2で述べたのと同一手順で調製した。
“fast shot”PCRでは、以下のPCRパラメーターを用いた。
【0123】
【0124】
伝統的なPCRでは、以下のPCRパラメーターを用いた。
【0125】
【0126】
AmplitaqTMGoldは、5'→3'エキソヌクレアーゼポジティブTaqポリメラーゼであり、AmplitaqTMStoffelは、5'→3'エキソヌクレアーゼ欠乏性Taqポリメラーゼである。
表2に示されるデータは、標的核酸レベルの大きさを3桁にわたって変えることによる“Fast-shotTM”増幅と伝統的なPCR循環パラメーターとの間の対立遺伝子の区別の相対的なレベルを示す。特異的反応(C-プライマー/G-標的、及びA-プライマー/T-標的)と、ミスマッチ反応(C-プライマー/T-標的、及びA-プライマー/G-標的)のバンド強度の比較により、対立遺伝子区別のレベルを決定することができる。表2は、これら実験で見られた区別のレベルを要約している。
【0127】
表2
【0128】
この結果に示されるように、特定の3'ミスマッチは、核酸ポリメラーゼによって容易に拡大される。この場合、伝統的なPCRパラメーターでは、AmplitaqTMGoldを含有する5'→3'エキソヌクレアーゼ及び5'→3'エキソヌクレアーゼ欠乏性AmplitaqTMStoffelDNAポリメラーゼの両者で、C/Tミスマッチが、A/Gミスマッチよりずっと多く拡大する。“Fast-shotTM”増幅を利用することで、どちらかの酵素を用いて両対立遺伝子間の1:1000レベルの区別が達成される。
【0129】
実施例4
PCR及びリポーターアニーリング
蛍光に基づいたPCR反応には、以下の核酸を使用した。
【0130】
【0131】
2μg/mlニシン精子DNA中の2fMの合成鋳型対照、及び2mM MOPS pH7.0を用いた。
次の反応の反応成分は、以下に示される。
【0132】
AMPLITAQ GOLDTM5U/μlは、Perkin Elmerから得た。
【0133】
試薬を解凍し、穏やかに混合して2つのマスターミックスを調製した。一方のマスターミックス(A)は、第2プライマーAとリポーターAを含んでいた。他方のマスターミックス(B)は、第2プライマーBとリポーターBを含んでいた。以下のようにマスターミックスを調製した。
【0134】
【0135】
反応の最終体積は20μlだった。マスターミックスと第1プライマーを合わせて15μLに5μlの標的核酸を添加した。標的核酸の量は、マスターミックスに添加する水の量を調整することで、最終利用者のニーズに応じて増減できる。
分析プレートは次にように調製した:15μlのマスターミックスを96−ウェル分析プレートのウェルに等分した(Low Profile MultiplateTM96ウェル;MJ Reseach,MLL-9601)。標的核酸試料を、マスターミックスを含有するウェルに体積5μlで繰返し添加した。いくつかのウェルには、ネガティブ対照として、標的核酸ではなく5μlの水を添加した。標的核酸又はネガティブ対照の添加後、20μLの鉱油Mineral Oil(明白色油;Sigma,M-3516)で反応を覆い、分析プレートをDNA熱サイクラーに移した。
【0136】
分析プレートの熱循環パラメーターは以下に示される。
【0137】
【0138】
追加の対照として、試料のいくつかはPCR熱循環に供しなかった。
PCR循環反応後、蛍光シグナルの放射について分析プレートを調べた。分析プレートをPerSeptive Biosystems CytofluorTM4000蛍光プレートリーダーに移し、プレートの上部から読み取るように装置をセットした。プレートリーダーのパラメーターは次の通りである:485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲインを50に設定。そして、試料を読み取った。対照としてPCR増幅前の蛍光シグナルの放射についても分析プレートを調べた。
引き続き試料を10%未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)で追跡し、次に臭化エチジウム染色を行い、増幅産物の存在を検出かつ分析プレートから得られた蛍光示度を確認した。
標的核酸鋳型の蛍光検出の結果は、表3に示される。増幅産物は、PAGE後の臭化エチジウムによっても検出された。表3では、(−)は、鋳型又は熱循環プロセスの非存在を示し、(+)は存在を示す。表3中の数は、相対蛍光単位を示す(RFUs)。
【0139】
表3
【0140】
表3に示されるように、いくつかの第2プライマー及びリポーターは、試料中に存在する標的核酸配列の存在の検出にうまく使用できる。マスターミックスA中の第2プライマー/リポーターの組合せは、マスターミックスB中の第2プライマー/リポーター組合せより強いシグナルを生成した。(シグナル強度のいくらかの差を斟酌し、マスターミックスAは、マスターミックスBよりも多くのPCR産物を含むことも分かるだろう。)シグナル強度の差は、より低温で大きいようである。しかし、マスターミックスB中の第2プライマーとリポーターは、すべての保持温度でバックグラウンドを超えるシグナルを生成したので、標的核酸配列の検出及び定量には十分だった。
【0141】
PCR産物は、PAGE及び臭化エチジウムによる染色か或いはMolecular Dynamics(Sunnyvale,CA)595 FluoroimagerTMによるフルオレッセイン蛍光の走査によって分離した。マスターミックスAとマスターミックスBの両反応について、鋳型含有反応に対応するレーンでPAGE後の臭化エチジウム染色によって増幅産物が検出された(+)。核酸鋳型を含有しない反応に対応するレーンでは、増幅産物は見られなかった(−)。これら結果は、上記分析で検出された蛍光シグナルの増加が、試料中の標的核酸配列の存在がによることを確証した。
【0142】
マスターミックスAの第2プライマー/リポーターの組合せと、マスターミックスBの第2プライマー/リポーターの組合せとの間のシグナル強度の差は、反応時の非天然塩基、isoCの分解が原因のようだった。非天然塩基、isoCは、トリス緩衝液含有溶液のような求核物質含有溶液中では、高温で分解する傾向がある。しかし、上で提示した結果は、isoCがトリス緩衝液中、高温で使用するのに適することを示している。
本発明の方法の効率を最適化するため、非天然塩基、isoCを使用する場合は、ホットスタート活性化を必要としないポリメラーゼと、事実上非求核性である緩衝液を使用すべきである。
【0143】
実施例5
乾燥プレート調製
本発明の方法に必要な試薬のいくらか又はすべては、貯蔵に便利かつ使用しやすいように乾燥することができる。例えば、40mM酢酸カリウム、20mM MgCl2、50μM dNTPs(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、1単位/反応のAMPLITAQ GOLDTMポリメラーゼ、後述するような糖、及び8μMリポーターを含有するマスターミックスとして反応を設定することができる。マスターミックスを96ウェル微量定量プレートのウェル内に等分し、SPEEDVACTM(Savant Instruments,Holbrook,New York)内で45〜50分間(加熱せず)乾燥する。乾燥後、1
DESPIAKTM(Trocken,Germany)を有する真空バッグ内に置かれたMICROSEAL ATMフィルム(MJ Research,Waltham,MA)でプレートを覆い、バッグをアルゴンで充填し、FOOD SAVERTM(Tilia,San Franscisco,CA)で封鎖することができる。種々の糖(マンノース、ラフィノース、スクロース、及びトレハロース(Sigma,St.Louis,MO))を種々の濃度(1質量%、2質量%、5質量%、及び10質量%)で使用することができる。
【0144】
反応ミックスは、核酸標的、第1プライマー、第2プライマー、及び任意にリポーターを含有する水中で再構成することができる。そして、反応ミックスをPCRに供することができる。
このように、乾燥した試薬は、容易に再構成し、かつPCRでうまく使用することができる。このような凍結乾燥試薬は長期間室温で貯蔵することができる。試薬のいくつか又はすべては、乾燥することができる。本発明の所定の方法で必要な凍結乾燥試薬のいくつか又はすべては、再構成後の使用のため微量定量プレートのウェル内に貯蔵することができる。
【0145】
実施例6
非天然塩基のPCR組込みを含む分析
以下の実施例は、第2プライマーの標識近傍の位置におけるDNA二重鎖を横切るヌクレオチド三リン酸の部位特異性組込み(SSI)による第2プライマー上の標識のシグナルをクエンチすることによるPCR産物の集積を監視する方法を説明する。標識化ヌクレオチド三リン酸は、PCR伸長の際、伸長している第1プライマー中に組み込まれる。標識化ヌクレオチド三リン酸の標識は、第2プライマー上の標識をクエンチすることができる。代わりに、第2プライマーの標識(供与体染料)とリポーターの標識(受容体染料)との間に蛍光エネルギー転移(FRET)を観察することができる。PCR産物の検出は、供与体染料を励起し、かつ組み込まれた受容体染料の放射を読み取ることによって観察できる。
【0146】
PCR反応には、以下の核酸成分を使用した。
【0147】
【0148】
“c3”は、プロピルスペーサーを示し、第1プライマーの合成の際にヌクレオチドの代わりに化学的に導入された。第1プライマーの合成で用いるホスホラミダイトは、3-O-ジメチルトリチル-プロピル-1-[2-シアノエチル-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホラミダイト(スペーサーホスホラミダイトC3;Glen Reserch,Sterling,VA)だった。任意に、ヌクレオチド修飾を含め、同一のヌクレオチド配列を含有するが、プロピルスペーサーを欠いたオリゴヌクレオチドをPCR反応の第1プライマー用の代用物として使用することができる。
【0149】
これら系の設計では、標識化ヌクレオチド三リン酸が第2プライマーA又はBの標識近傍の塩基に相補的であることが好ましい。標識される天然に存在するヌクレオチド塩基を使用する場合、第2プライマーA又はBの標識近傍の該相補性塩基を組み込む能力は、限定された場合のみに可能である。これは、すべての4つの天然に存在するヌクレオチド塩基は、おそらく他の位置で組み込まれるからである。例えば、isoG及びisoCのような標識化非天然塩基を使用することによって、標識化非天然塩基は、相補的な非天然塩基の向かい側だけに組み込まれ、第2プライマーA又はBの標識近傍に配置されるうる。
【0150】
標識された非天然塩基及び天然に存在するヌクレオチド三リン酸を使用する系は、試料中に存在する標的核酸(鋳型)の量を検出又は定量する分析において、クエンチャー染料(QSY7TM)で標識された天然に存在するヌクレオチド(dTTP)を利用する。この実施例では、標識された天然に存在するヌクレオチドが、PCR伸長の際、第2プライマーAの標識(FAM)の向かい側、かつ近傍の位置で第1プライマー中に組み込まれた。試料中に存在する標的核酸(鋳型)の量を検出又は定量するための分析において、クエンチャー染料(QSY7TM)で標識された非天然塩基、isoG(dGisoTP)を使用する系も実施することができる。この実施例では、標識された天然に存在するヌクレオチドが、PCR伸長の際、isoC(X)の向かい側、第2プライマーBの標識(FAB)の近傍の位置で、第1プライマー中に組み込まれた。QSY7TMdTTP及びQSY7TMdGisoTPの化学構造は以下に示される。
【0151】
【化3】
【0152】
【化4】
【0153】
PCR反応を行い、PCRにおける部位特異的組込みによる蛍光クエンチングを示した。PCR条件:25μlの反応量中、0.2μMの第1プライマー、0.2μMの第2プライマーA、0.4pMの鋳型核酸、50μMのdATP、dGTP、及びdCTP、10mMトリスpH8、0.1%BSA、0.1%TritonTMX-100、0.1μg/μl分解ニシン精子DNA、40mM KAc、2mM MgCl2、1単位のKlentaqTMDNAポリメラーゼ(Ab Peptides,St/Louis,MO)、及び0又は3.9uM QSY7TMdTTP。
PCR条件は、以下に示される。
【0154】
【0155】
反応は、CytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(485nm励起/530nm放射)による蛍光について、又はゲル電気泳動法によって解析した。70℃で6秒の保持時間を使用して、正確な蛍光示度を得た。結果は、表4に示される。
PCR反応は、TypoonTM蛍光スキャナー(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)を用いて6FAMについて走査した10%未変性ポリアクリルアミドゲルに基づいて解明した。産物バンドに含まれ相対蛍光単位(RFU's)は、(+)QSY7TMdTTP反応では1,325,644であり、(−)QSY7TMdTTP反応では41,462,945だった。ポリアクリルアミドゲルは、臭化エチジウム(10mMトリス-HCl、1mM EDTA中50μg/ml)で染色もした。臭化エチジウム染色からの産物バンドの定量化は、(+)QSY7TMdTTP反応では21,993RFU's、(−)QSY7TMdTTP反応では25,537RFU'sを示した。
【0156】
表4は、35サイクルのPCRの前後でPCR反応ウェル内で読み取られた正味のRFU'sを示す。
【0157】
表4
【0158】
これらの結果は、標識化ヌクレオチド三リン酸(QSY7TMdTTP)が、PCRの際に第2プライマーのフルオレッセイン標識(FAM)の向かい側で二重鎖中に組み込まれるとき、蛍光強度が27倍減少することを示す。
この実施例の核酸成分を用いて、部位特異的組込み(SSI)によるPCR産物の集積の“リアルタイム”モニタリングをも実証した。
【0159】
PCR条件は以下の通りだった:15μlの反応量中、0.2μMの第1プライマー、0.2μMの第2プライマーA、0.33pMの鋳型、50μMのdATP、dGTP、及びdCTP、10mMトリスpH8、0.1%BSA、0.1%Triton X-100、0.1μg/μl分解ニシン精子DNA、40mM KAc、2mM MgCl2、1単位のKlentaqTMDNAポリメラーゼ(Ab Peptides,St/Louis,MO)、及び0又は3uM QSY7TMdTTP。
【0160】
PCR条件:
(*X=6,11,16,21,26,31,又は36)
【0161】
反応は、CytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(PE Biosystems,Foster City,CA)による蛍光について(485nm励起/530nm放射)、又はゲル電気泳動法によって解析した。図14に結果を示す。
図14は、相対蛍光対PCRサイクル数を示す。QSY7TMdTTP含有反応もゲル電気泳動法で調べた(10%未変性ポリアクリルアミドゲルについて5μl)。臭化エチジウム(10mMトリス-HCl、1mM EDTA中50μg/ml)によるゲルの染色は、予想された産物の集積を示した。QSY7TMdTTP含有反応の蛍光は、ゲル解析で示されたPCR産物の状況及び集積と一致する。これら結果は、標的濃度に対するクエンチングに相関するPCRの回数は、試料中に存在する標的の量を数量化できることをも示した。例えば、存在する標的が多いほど、クエンチングが速く起こるだろう。
【0162】
上述の実施例では、正確な蛍光測定のために70℃で6秒の保持時間を用いた。このような保持時間は、プライマー間のギャップを越え、かつプライマーを越えて組み込まれる不可欠な数の塩基については必要ない。蛍光が測定されない場合、70℃での保持時間は必要ない。蛍光示度、又は他の適切な測定値を得るために保持時間が必要な場合、保持温度は、第1プライマーが標的配列に効率的にハイブリダイズできる温度より高い温度が好ましい。一実施形態では、保持温度は、第1プライマーの融解温度より10℃以上高い。
【0163】
実施例7
標識化非天然塩基の合成
本発明の方法及びキットに好適な標識化非天然塩基は種々の方法で製造することができる。標識化−デオキシイソグアノシン5'-三リン酸の2種の合成スキームが提供される:方法Aは図15に示され、方法Aの化合物(化合物1〜8、8a〜8dを含む)はセクションAで述べられ;方法Bは図16に示され、方法Bの化合物(化合物9〜18)はセクションBで述べられる。
【0164】
セクションA
方法Aによる標識化−デオキシイソグアノシン5'-三リン酸の合成に関与する以下の化学反応のため、SephadexTMDEAEセルロース、ω-アミノブチルアガロースゲル及びトリブチルアンモニウムピロリン酸はSigmaから購入し;ビオチン2-ニトロフェニルエステル、6-カルボキシフルオレッセイン N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、及び6-カルボキシテトラメチルローダミン N-ヒドロキシスクシンイミドはBerry & Associatesから購入し;QSY7TM NヒドロキシスクシンイミドエステルはMolecular Probesから購入し;他の全化学薬品はAldrich Chemical Co.又はFisher Chemical Co.から購入し、さらに精製せずに使用した。溶媒は、4Å分子ふるい上で乾燥した。反応は、乾燥アルゴン下、オーブン−ドライガラスシステム内で行った。“エバポレーション”は、膜ポンプによる揮発性溶媒の除去を指す。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(230〜425メッシュ)で行った。
【0165】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノ-2-クロロプリン 2'-デオキシ-3',5'-ジ-トルイルリボシド2:
DMF(100ml)に溶解した2,6-ジクロロ-2'-デオキシ-3',5'-ジトルイルリボシド1(1当量, 5mmol,2.705g)を、室温で、200ml DMF中ヘキサメチレンジアミン(20当量, 100mmol, 11.60g)の撹拌溶液に40分かけて添加した。溶液を50℃で2.5時間撹拌してから室温に冷まし、濃縮して残留物を抽出した(水/酢酸エチル)。有機層を水で洗浄し(5×50ml)、乾燥し(Na2SO4)、溶媒をエバポレートしてフォームとして2.673g(4.308mmol, 86%)の生成物2を得た。
【0166】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノ-2-クロロプリン2'-デオキシリボシド3:
上で得られた化合物2(4.308mmol,2.673g)を20mlメタノールに溶解し、0℃にてアンモニアで飽和させ、封管に入れた。それを80℃で1時間加熱し、0℃に冷却した。管を開け、溶媒を膜ポンプ真空下でエバポレートした。残留物をエーテル/ヘキサンで3回処理し、得られた粉末を真空中乾燥し、さらに精製せずに次工程で使用した。
【0167】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノ-2-フェノキシプリン2'-デオキシリボシド4:
上で得られた化合物3(最大4.308mmol)をDMF(15ml)に溶解し、ベンジルアルコール(43ml)中のNaH溶液(12当量,51.69mmol,鉱油に60%分散の2.068g)を添加した。それを100℃で2時間撹拌し、室温に冷却した。酢酸を添加(12当量)して反応混合物を中和した。その結果の溶液をCeliteTM上でろ過し、ろ液をエバポレートし、得られた残留物をさらに精製せずに次工程で使用した。
【0168】
6-(6-トリフルオロアセチルアミドヘキシル)-アミノ-2-フェノキシプリン2'-デオキシリボシド5:
上で得られた生成物をメタノール(30ml)/トリフルオロ酢酸エチル(30ml)の混合物に溶解し、室温で24時間撹拌した。溶媒及び過剰のトリフルオロ酢酸エチルをエバポレーションで除去し、残留物をクロロホルム中1.5%メタノール、そしてクロロホルム中17.5メタノールの一段階勾配を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製した。収量:626mg(1.134mmol,3段階で26%)。
【0169】
6-(6-トリフルオロアセチルアミドヘキシル)-アミノ-3-フェノキシプリン2'-デオキシリボシド5'-三リン酸6:
1,2,4-トリアゾール(4.5当量,0.585mmol,40mg)を0.5mlのアセトニトリル/4.5当量のトリエチルアミン(0.585mmol,0.081ml)の混合物に溶解し、そのフラスコを氷浴内に入れた。オキシ塩化リン(1.5当量,0.195mmol,0.018ml)を添加し、それを室温で30分間撹拌した。それをろ過し、固体を最小量のアセトニトリルで洗浄し、ろ液を化合物5(1当量,0.13mmol,72mg)に添加した。をれを30分間室温で撹拌してからDMF(2ml)中トリブチルアンモニウムピロリン酸(89mg)の溶液を添加し、19時間撹拌を続けた。そして、水(1ml)を添加して残存トリアゾリド基を加水分解した。30分間撹拌後、反応混合物を真空中30℃で濃縮し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配を用いてDEAEセルロース上のカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を0.4〜0.5Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションを30℃でエバポレートし、さらに使用した。
【0170】
N6-(6-アミノヘキシル)-2'-デオキシイソグアノシン5'-三リン酸7:
上で得られた化合物をメタノールと共にエバポレートし、メタノール(5ml)に溶解した。Pd/C(10質量%,10mg)及びHCOONH4(63mg)を添加し、還流下45分間撹拌した。それを室温に冷却し、触媒からろ過し、かつ触媒を熱水で洗浄し、その混合ろ液を真空中で濃縮した。残留物を28%水酸化アンモニウム水溶液(3ml)に溶解し、室温で3時間撹拌し、真空中濃縮し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配を用いてDEAEセルロース上のカラムクロマトグラフィーで精製した。生成物を0.3〜0.4Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションをエバポレートし、さらに使用した。
【0171】
N6-(6-Tamra-アミドヘキシル)-2'-デオキシイソグアノシン5'-三リン酸8a:
化合物7(そのトリエチルアンモニウム塩として約1mg)を0.2mlの0.1M TEAB緩衝液に溶解し、DMF(0.2ml)に溶解した6-カルボキシテトラメチルローダミンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(10mg)を添加した。それを35℃で3時間撹拌してからω-アミノブチルアガロースを添加して過剰のTamraTMを結合させ、さらに1時間撹拌し、反応混合物をDEAEセルロースカラムに装填し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配で溶離した。生成物を0.4Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションを30℃でエバポレートした。
化合物8b及び8dは、6-カルボキシテトラメチルローダミンN-ヒドロキシスクシンイミドエステルの代わりに、それぞれ、6-カルボキシフルオレッセインN-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びQSY7TM N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて、化合物8aと同様に調製される。
【0172】
N6-(6-ビオチニルアミドヘキシル)-2'-デオキシイソグアノシン5'-三リン酸8c:
化合物7(そのトリエチルアンモニウム塩として約1mg)を0.2mlの水に溶解し、DMF(0.2ml)に溶解したビオチン2-ニトロフェニルエステル(10mg)を添加した。溶液は明黄色に変わった。それを35℃で1時間撹拌し、ω-アミノブチルアガロースを添加して過剰のビオチンを結合させ、さらに1時間撹拌し、反応混合物をDEAEセルロースカラムに装填し、0.05M〜0.5M TEAB緩衝液の勾配で溶離した。生成物を0.4Mの緩衝液濃度で溶離した。生成物含有フラクションを30℃でエバポレートした。
【0173】
セクションB
方法Aによる標識化−デオキシイソグアノシン5'-三リン酸の合成に関与する以下の化学反応のため、トリブチルアンモニウムピロリン酸はSigmaから購入し;ビオチンNヒドロキシスクシンイミドエステルはPierce Chemical Companyから購入し;QSY7TM N-ヒドロキシスクシンイミドエステル及びDabcyl N-ヒドロキシスクシンイミドはMolecular Probesから購入し;他の全化学薬品はAldrich Chemical Co.又はFisher Chemical Co.から購入し、さらに精製せずに使用した。溶媒は、4Å分子ふるい上で乾燥した。反応は、乾燥アルゴン下、オーブン−ドライガラス製品内で行った。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(230〜425メッシュ)で行った。
以下の略語を使用した:Ac2O(無水酢酸);DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);DMAP(4,4'-ジメチルアミノピリジン);DMT(4,4'-ジメトキシトリチル);Et3N(トリエチルアミン);MeCN(アセトニトリル);MeOH(メチルアルコール);Tol(p-トルイル)。
【0174】
1-(p,p'-ジメトキシトリチル)-ヘキサメチレンジアミン(9)
ヘキサメチレンジアミン(10当量,375mmol,43.5g)を2回ピリジンから共エバポレートし、100mlのピリジンに溶解した。DMAP(0.1当量,3.75mmol,457mg)を添加し、反応フラスコを氷浴内に置いた。100mlピリジンに溶解したDMT-クロライド(1当量,37.5mmol,12.69g)を2時間かけて滴下添加した。それを室温で4時間撹拌し、MeOH(5ml)を添加し、反応混合物を濃縮し、残存残留物を水性NaHCO3/酢酸エチルで抽出した。有機層を2回NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥し、溶媒をエバポレートした。得られた生成物をさらに精製せずに次工程で使用した。
収量:14.895g(65.634mmol,95%)粘着性油。
【0175】
2-クロロ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-2'-デオキシ-3',5'-ジトルイルリボシド(10)
化合物9(1.3当量,31.916mmol,13.34g)をDMFと共に共エバポレートし、100mlのDMFに溶解した。100mlのDMFに溶解したジイソプロピルエチルアミン(3.9当量,95.748mmol,16.65ml)及び化合物1(1当量,24.551mmol,13.282g)を添加し、室温で3時間撹拌した。それを濃縮し、残留物を水性NaHCO3/酢酸エチルで抽出し、有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートした。残留物をエーテルと共に2回こね、固体生成物を得、さらに真空中で乾燥後さらに精製せずに使用した。
【0176】
2-ベンジルオキシ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-2'-デオキシリボシド(11)
化合物10(1当量,19.23mmol,17.74g)をDMF(25ml)に溶解し、ベンジルアルコール(128mL)中のNaH(10当量,192.3mmol, 鉱油中に分散の7.69g)溶液に添加した。反応混合物を加熱してから(120℃,6時間)室温で(15時間)撹拌後、CeliteTM上でろ過し、ろ液をエバポレートし、残留物を抽出し(酢酸エチル/水)、有機層を洗浄(NaHCO3−溶液)、乾燥し、溶媒を除去し、残留物をエーテル/ヘキサン1:10と共に5回こねた。TLC:CHCl3/10%MeOH RF=0.26。収量:10.280g(13.562mmol,2段階で70.5%)フォーム。
【0177】
2-ベンジルオキシ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-2'-デオキシ-5'-O-p,p'-ジメトキシトリチルリボシド(12)
化合物11(14.7388mmol,11.172g)をピリミジンで共エバポレートし、150mlのピリジンに溶解し、DMAP(0.25当量,3.6847mmol,450mg)を添加した。フラスコを氷浴内に置き、DMTC1(1.5当量,22.108mmol,7.848g)を2時間かけてゆっくり添加した。それを室温で22時間撹拌してからMeOH(1ml)を添加し、反応混合物を濃縮し、残留物を抽出した(クロロホルム/水性NaHCO3)。有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートし、残留物をエーテル/ヘキサン1:1と共ににこねて過剰のDMTを除去し、不溶性の固体生成物を乾燥し、精製せずにさらに使用した。
収量:14.890g(14.047mmol,95%)明褐色フォーム。
【0178】
2-ベンジルオキシ-6-(6-p,p'-ジメトキシトリチルアミノヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-2'-デオキシ-5'-O-p,p'-ジメトキシトリチルリボシド(13)
化合物12(14.047mmol,14.89g)をピリミジンで共エバポレートし、200mlのピリジンに溶解し、DMAP(0.25当量,3.5117mmol,428mg)、ET3N(5当量,70.235mmol,9.7ml)及びAc2O(2.5当量,35.1175mmol,3.582g)を添加した。それを室温で4.5時間撹拌してからMeOH(2ml)を添加し、反応混合物を濃縮し、残留物を抽出した(酢酸エチル/水性NaHCO3)。有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートし、残留物を、酢酸エチル/ヘキサン/ET3N 30:60:1、それから65:35:3の一段階勾配を用いてカラムクロマトグラフィーで精製した。収量:5.93g(5.385mmol,38%)黄色フォーム。
【0179】
2-ベンジルオキシ-6-(6-アミノヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-2'-デオキシリボシド(14)
化合物14(2.471mmol,2.723g)を50mlのアセトニトリル/2mlの水に溶解し、Ce(CH4)2(NO3)3(0.3当量,0.74mmol,406mg)を添加した。それを45分間還流し、さらに0.15当量のCe(CH4)2(NO3)3(0.37mmol,205mg)を添加し、1時間還流を続けた。それをエバポレートし、残留物をエーテルと共にこねてDMTを除去し、不溶性生成物を乾燥し、さらに精製せずにさらに使用した。
【0180】
2-ベンジルオキシ-6-(6-トリフルオロアセトアミドヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-2'-デオキシリボシド(15)
上で得られた化合物14(最大5.385mmol)を30mlのMeOH/50mlのトリフルオロ酢酸エチル/5mlのEt2Nに溶解し、反応混合物を室温で21.5時間撹拌した。TLC(クロロホルム/17.5%MeOH):RF=0.72)は完全な転換を示した。それをエバポレートし、残留物を抽出し(食塩水/酢酸エチル)、有機層を乾燥し、溶媒をエバポレートして残留物をクロロホルム/1.5%MeOH、それから17.5%MeOHの一段階勾配を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。収量:2.80g(4.714mmol,87%)フォーム。
【0181】
2-ベンジルオキシ-6-(6-トリフルオロアセトアミドヘキシル)-アミノプリン-3'-O-アセチル-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(16)
イミダゾール(61当量,306mg,4.5mmol,再結晶)をアセトニトリル(3.6mL)に溶解し、冷却した(0℃)。POCl3(19当量,0.128mL)及びトリエチルアミン(61当量,0.633mL)を添加し、混合物を撹拌後(0℃,0.5時間)一部(0.309mL)を化合物15(1当量,0.074mmol,44mg)に添加した。この混合物を撹拌後(室温,0.5時間)、トリブチルアンモニウムピロリン酸(2当量,0.16mmol,73mg)を含有するDMF(1.5mL)を添加した。24時間後に反応をクエンチし(2mL,10%NH4COO)、凍結乾燥した。生成物を20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCNの勾配を用いてアニオン交換クロマトグラフィー(Dionex ProPacTMSAX-10;Dionex,Sunnyvale,CA)によって精製した。集めた生成物を繰返し凍結乾燥し、過剰の塩を除去した。収量0.007mmol(10%)、白色固体。
【0182】
6-(6-アミノヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(7)
化合物16(0.007mmol)をメタノール(2.5mL)に溶解後、Pd/C(10%,5mg)及びNH4COO(0.05mmol,31mg)を添加した。懸濁液を還流後(1時間)触媒をろ過して除き、溶媒をエバポレートした。残留物を28%水酸化アンモニウムで処理後(1.5mL,3時間,室温)反応生成物を乾燥し、20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCNの勾配を用いてアニオン交換クロマトグラフィー(Dionex ProPacTMSAX-10;Dionex,Sunnyvale,CA)によって精製した。集めた生成物を繰返し凍結乾燥し、過剰の塩を除去した。収量0.0063mmol(90%)、白色固体。
【0183】
6-(6-ビオチニルアミドヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(8c)、6-(6-dabcylアミドヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(17a)、6-(6-QSY7TMアミドヘキシル)-アミノプリン-5'-トリホスホリル-2'-デオキシリボシド(17b)
H2O中(40μL)化合物7(0.88μmol,トリエチルアンモニウム塩)に、ホウ酸ナトリウム(10.5μL,1M,pH8.5)を添加し、次いでビオチンN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、dabcyl N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、又はQSY7TM N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(2.6μmol,3当量)を含有するDMF(216mL)を添加した。反応を進行後(3時間,55℃)、それを20%MeCNで希釈し、生成物を、20%MeCN及び(NH4)2CO3/20%MeCNの勾配を用いてアニオン交換クロマトグラフィー(Dionex ProPacTMSAX-10;Dionex,Sunnyvale,CA)によって精製した。収率50〜80%。
【0184】
実施例8
蛍光−クエンチング非標準デオキシ−ヌクレオチド三リン酸の部位特異的組込みの“リアルタイム”モニタリング。
PCR反応の循環の際に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。PCR反応は、第1及び第2プライマーを含み、第2プライマーは、その5'末端に発蛍光団結合ヌクレオチド(FAM-dT)を含む。鋳型核酸の増幅の際、蛍光クエンチング化合物(Dabcy又はQSY7TM)に結合している標準のヌクレオシド三リン酸(反応A;dTTP)又はisoGヌクレオシド三リン酸(反応B;dGisoTP)が、第2プライマーの発蛍光団−結合ヌクレオシドに(FAM-dT)[向かい側かつ隣接して]組み込まれ、PCR反応における蛍光シグナルが減少する。
【0185】
この実施例では、以下の核酸をPCR反応に使用した。
【0186】
【0187】
“c3”は、プロピルスペーサーを示し、第1プライマーの合成時にヌクレオチドの代わりに化学的に導入された。第1プライマーの合成で用いたホスホラミダイトは、3-O-ジメチルトリチル-プロピル-1-[2-シアノエチル-(N,N-ジイソプロピル)]-ホスホラミダイトだった(スペーサーホスホラミダイトC3;Glen Research,Sterling,VA)。任意に、ヌクレオチド修飾を含め、同一のヌクレオチド配列を含有するが、プロピルスペーサーを欠いているオリゴヌクレオチドをPCR反応の第1プライマーの代用物として使用できる。
【0188】
全PCR反応で、以下の成分(基本PCR反応成分)が指示濃度で存在した。
【0189】
上記成分を調製した。
【0190】
第2プライマーA、第2プライマーB、dTTP、DabcyldTTP(Glen Research,Sterling,VA)、DabcylGisoTP及びQSY7TMdGisoTPは、以下のPCR反応で可変成分だった。これら成分を、以下に示されるように、PCR反応A〜Jに下記濃度で添加した。
【0191】
【0192】
反応は、最終体積25μLに調製した。反応混合物を25μLのSmart Cycler PCR管(Cepheid,Sunnyvale,CA)に充填した。PCR管を微小遠心分離機内で6秒間回転させ、反応チャンバー内に液体を引いた。PCR反応を含む管をSmart CyclerTM(Cepheid,Sunnyvale,CA)内に置き、全PCR反応の間、蛍光を絶え間なく監視した。
【0193】
熱循環パラメーター:
*2〜41循環の3工程時に、Smart CyclerTMのオプティクスを活性化し、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
【0194】
41サイクルのPCR増幅後、蛍光モニタリングオプティクスにて毎秒0.2℃の割合でPCR管内の温度を60℃から95℃に上昇させることによって、PCR反応産物を融解曲線解析に供した。
PCR反応A、B、及びCからのPCR反応産物の蛍光クエンチングが図17Aに示され、これらPCR産物の融解曲線解析が図17Aに示される。これら結果は、それぞれ、発蛍光団−結合標準ヌクレオシド含有第2プライマー又は非標準ヌクレオシド含有第2プライマーと組み合わせてクエンチング化合物−結合標準ヌクレオシド三リン酸又はクエンチング化合物−結合isoGヌクレオシド三リン酸を含む試料内でPCR反応の蛍光がクエンチされることを示している。融解曲線データは、発蛍光団−結合核酸鎖をクエンチング化合物−結合核鎖から分離することで反応産物内の蛍光が復元されることを示している。
PCR反応D、E、F、及びGからのPCR反応産物の蛍光クエンチングは、図18Aに示される。PCR反応H、I、及びJからのPCR反応産物の蛍光クエンチングは、図18Bに示される。
【0195】
実施例9
ゲノムDNAのリアルタイム定量化
PCR反応の循環及びゲノムDNA試料からの核酸鋳型の増幅時に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。PCR反応は、第1プライマーと、2個の非標準ヌクレオチド(iso-G及びiso-C)を含有する第2プライマーとを含み;プライマーはハイブリダイズしてマウスゲノムDNAの領域を増幅するように設計した。PCR反応は、非標準ヌクレオチド(iso-G)を含有するリポーター核酸、蛍光クエンチング化合物−結合ヌクレオチド(Dabcyl dT)、及び該リポーターの5'塩基(T)に結合した発蛍光団(6FAM)をも含んでいた。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物へのリポーター核酸のアニーリングが、蛍光クエンチング化合物−結合ヌクレオチドを含有するリポーター核酸からの核酸ポリメラーゼ活性による発蛍光団の切断をもたらしうる。
【0196】
この実施例では、以下の核酸をPCR反応で使用した。
【0197】
【0198】
マウスゲノムDNAは、Jackson研究所(Bar Harbor,ME)から得、1mM MOPSpH7.5、0.01mM EDTA中に希釈した。鋳型Aでは、マウス株A/JゲノムDNAを連続的に濃度5ng/μl、2.5ng/μl、1.25ng/μl、0.63ng/μl、0.31ng/μl、及び0.16ng/μlに希釈した。鋳型Bでは、マウス株C57BL/6JゲノムDNAを連続的に濃度20ng/μl、2ng/μl、0.2ng/μl、20pg/μl、2pg/μl、及び0.2pg/μlに希釈した。ゲノムDNA希釈シリーズを5分間煮沸し、氷上に5分間置き、-20℃で貯蔵した。
【0199】
マウスゲノム中の特定の標的核酸配列のPCR増幅及び検出用にプライマーを合成した。最初の標的核酸配列は、A/JマウスゲノムDNA、座L11316、染色体3−9.679P(設計A)を用いてこの手順の実行可能性を評価するために選択した。さらなるゲノムDNA定量化のために選択した標的配列は、マウス株C57BL/6J、座R75378、染色体10−41.5F(設計B)だった。第1プライマーA及び第1プライマーBは、60.0〜63.0℃のTmを有するように設計される。第2プライマーA及び第2プライマーBは、61.0〜63.0℃のTmを有するように設計される。Macintosh用のOligo 4.0TMソフトウェア(National Bioscience,Minneapolis,MN)を用いて、全プライマーを二次構造形成について評価した。
【0200】
この実施例の全PCR反応には、以下の成分(基本PCR成分)が指示濃度で存在した。
【0201】
【0202】
上記成分を含有する(第1プライマーA及び第2プライマーAと共に)マスターミックスAは、25μLの最終反応量に対して1.04X濃度で調製した。
上記成分を含有する(第1プライマーB及び第2プライマーBと共に)マスターミックスBは、25μLの最終反応量に対して1.25X濃度で調製した。
設計A反応混合物は、5ng/μL、2.5ng/μL、1.25ng/μL、0.63ng/μL、0.31ng/μL、及び0.16ng/μLの各A/Jゲノム標的DNA希釈1μLを、24μLのPCR Aマスターミックスを含有する25μLのSmart CyclerTMPCR管に添加することによって作製した。管を微小遠心分離機内で6秒間回転させ、液体を反応チャンバー内に引いた。個々のPCR管は、それぞれ核酸標的数1500、750、375、188、94、及び47ハプロイド当量に相当する5ng、2.5ng、1.25ng、630pg、30pg、及び160pgのA/Jゲノム標的DNAを含んでいた。
【0203】
設計B反応混合物は、20ng/μL、2ng/μL、0.2ng/μL、20pg/μL、及び2pg/μLの各C57BL/6Jゲノム標的DNA希釈5μLを、20μLのPCRマスターミックスBを含有する熱循環プレートウェル又は各リアルタイム熱サイクラー特有の管に添加することによって作製した。個々のPCR管又はウェルは、それぞれ核酸標的数30,000標的、3,000標的、300標的、30標的、及び3標的に相当する100ng、10ng、1ng、100pg、及び10pgのC57BL/6Jゲノム標的DNAを含んでいた。反応を微量定量プレート内で行うときは、試料量の蒸発を防ぐため熱循環の前に15μLの鉱油オーバレイを各ウェルに添加した。
【0204】
設計A反応混合物をSmart CyclerTM内に置き、次の条件下で循環させた。
【0205】
*サイクル#17〜51の2工程時に、動的プロットを生成するため、リアルタイムPCR熱サイクラーのオプティクスを活性化してFAM−生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
これら反応の蛍光示度は、図19に示される。
【0206】
設計B反応混合物を、下記のリアルタイムPCR熱サイクラー内に個々別々に置き:
1)Smart CyclerTM25μL管(Cepheid;Sunnyvale,CA)を用いるSmart CyclerTM(Cepheid;Sunnyvale,CA)
2)Light CyclerTM管(Roche;Basel,Switzerland)を用いるSmart CyclerTM(Roche;Basel,Switzerland)
3)96-ウェル微量定量プレート(MJ Research Inc.;Waltham,MA)を用いるiCyclerTM(BioRad;Hercules,CA)
4)MicroAmpTM光学96-ウェル反応プレートウェル(Applied Biosystems;Foster City,CA)を用いる7700(Applied Biosystems,Foster City,CA)かつ以下の条件下で循環させた。
【0207】
*2〜41循環の3工程時に、Smart CyclerTMのオプティクスを活性化し、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
【0208】
閾値サイクル(Ct)及び分散の相関関係(Cv)法によって、蛍光の読取り情報を解析した。閾値サイクルは、システムが、対数−線形期の際にPCR産物の指数関数的成長に伴うシグナルの増加を検出し始める時である。対数−線形期の傾斜は増幅効率の反映であり、真正な増幅は該傾斜の屈折点、すなわち対数−線形期が始まる時の成長曲線上の点で示される。この点は、成長曲線に沿った変化の最大割合をも表す。核酸定量化はCtに関連し、核酸の初期量が多いほどCt値は低い。Ctは、どのベースライン活性より上、かつ指数関数的増加期以内に置かれるべきである。
【0209】
実施例10
RNAのリアルタイム定量化
PCR反応の循環及びRNA試料からの核酸鋳型の増幅の際に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。ヒトβ-アクチンmRNAの検出及び定量化のためにDNAプライマーを合成した。cDNA/第1プライマーがヒトβ-アクチンmRNAの5'領域上の配列にハイブリダイズし、逆転写酵素によるcDNA合成を開始する。cDNA/第1プライマーと、2個の非標準ヌクレオチド(iso-C及びiso-G)を含む第2プライマーとを、鋳型としてcDNAを用いるヒトβ-アクチン配列の増幅に用いた。PCR反応はリポーター核酸をも含み、これは非標準ヌクレオチド(iso-G)、蛍光クエンチング化合物−結合ヌクレオチド(Dabcyl dT)、及び該リポーターの5'塩基(T)に結合した発蛍光団(6FAM)を含有する。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物にリポーター核酸をアニーリングすると、核酸ポリメラーゼ活性による蛍光クエンチング化合物に結合したリポーター核酸からの発蛍光団の切断が起こる。
【0210】
この実施例の逆転写-PCR(RT-PCR)反応に以下の核酸を使用した。
【0211】
【0212】
単一ドナー由来の全ヒト心臓RNAは、Clontech(Palo Alto,CA)から得た。RNA試料は、5mMビス-トリス-プロパンpH8.9、0.1mM ETDA、100ng/ml酵母tRNA(Sigma, St.Louis,MO)及び100ng/mlの剪断されたニシン精子DNA(Sigma, St.Louis,MO)で構成される緩衝液に20ng/μl、2ng/μl、200pg/μl、20pg/μl、2pg/μl及び0.2 pg/μlに希釈した。
【0213】
全PCR反応で、以下の成分(基本PCR反応成分)が指示濃度で存在した。
【0214】
【0215】
表Xに示される試薬を含有するRT-PCRマスターミックスは、25μLの最終反応量のためにヌクレアーゼの無いH2Oを用いて1.25X濃度で調製した。RT-PCR反応混合物は、20μLの1.25X RT-PCRマスターミックスを25μLのSmart CyclerTMPCR管にそれぞれ希釈したRNA試料5μLに添加することによって調製した。そして、管を微小遠心分離機内で6秒間回転させて反応チャンバー内に液体を引いた。
【0216】
遠心分離後、すぐに反応混合物をSmart CyclerTMに入れ、下記の条件下で循環させた。
【0217】
*サイクル#3〜52の2工程時に、動的プロットを生成するため、リアルタイムPCR熱サイクラーのオプティクスを活性化してFAM−生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。結果は、図20に示される。
【0218】
実施例11
標識化非標準塩基の部位特異的組込みによるRNAのリアルタイム定量化
PCR反応の循環及びRNA試料からの核酸鋳型の増幅の際に、PCR反応の蛍光のモニタリングを行った。ヒトβ-アクチンmRNAの検出及び定量化のためにDNAプライマーを合成した。cDNA/第1プライマーがヒトβ-アクチンmRNAの5'領域上の配列にハイブリダイズし、逆転写酵素によるcDNA合成を開始する。cDNA/第1プライマーと、リポーターの5'塩基(T)に結合した発蛍光団(6FAM)及び5'の最後から2番目の非標準ヌクレオチド(iso-dC)を含有する第2プライマーとを、鋳型としてcDNAを用いるヒトβ-アクチン配列の増幅に用いた。鋳型核酸の増幅時、発蛍光団クエンチング化合物−結合非標準ヌクレオシド三リン酸(Dabcyl-d-isoGTP)がPCR反応に存在し、発蛍光団−結合5'-ヌクレオチド(FAM-dT)に隣接し、かつPCR反応の蛍光シグナルを減少させる第2プライマーの非標準ヌクレオチド(iso-dC)の向かい側に組み込まれた。
【0219】
この実施例では、以下の核酸をRT-PCR反応に使用した。
【0220】
【0221】
単一ドナー由来の全ヒト心臓RNAは、Clontech(Palo Alto,CA)から得た。RNA試料は、5mMビス-トリス-プロパンpH8.9、0.1mM ETDA、100ng/mL酵母tRNA(Sigma, St.Louis,MO)及び100ng/mLの剪断されたニシン精子DNAで構成される緩衝液中、20ng/μL、2ng/μL、200pg/μL、20pg/μL、2pg/μL及び0.2pg/μLに希釈した。
【0222】
全PCR反応で、以下の成分(基本PCR反応成分)が指示濃度で存在した。
【0223】
【0224】
RT-PCRマスターミックスは、25μLの最終反応量のためにヌクレアーゼの無いH2Oを用いて1.25X濃度で調製した。RT-PCR反応混合物は、20μLの1.25X RT-PCRマスターミックスを、25μLのSmart CyclerTM25μL管(Cepheid,Sunnyvale,CA)にそれぞれ希釈したRNA試料5μLに添加することによって調製した。そして、管を微小遠心分離機内で6秒間回転させて反応チャンバー内に液体を引いた。
【0225】
遠心分離後、すぐに反応混合物をSmart CyclerTM(Cepheid,Sunnyvale,CA)内に入れ、下記の条件下で循環させた。
【0226】
*サイクル#23〜52の3工程時に、図21に示されるような動的プロットを生成するため、Smart CyclerTMのオプティクスを活性化してFAM−生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。
【0227】
実施例12
多重対立遺伝子特異的PCR
多重蛍光に基づいたPCR反応を行い、種々のマウス株由来の単一ヌクレオチド多型性マウスSTS配列27.MMHAP25FLA6の配列を決定した。この実施例では、多重PCR反応は、標的核酸上の下流の非多型性配列にハイブリダイズする共通の第1プライマーと、2つの上流第2プライマー、すなわち第2プライマーA及び第2プライマーBとを含み、各第2プライマーは対立遺伝子特異的であり、特異性は、異なる3'ヌクレオチドによって決まる。第2プライマーA及び第2プライマーBは、標的核酸ハイブリダイゼーションには寄与しないが、それぞれリポーターA及びリポーターBのハイブリダイゼーションを許容する、異なる5'領域をも有していた。リポーター核酸は、それぞれ5'の最後の2番目の非標準ヌクレオチド及び発蛍光団クエンチング化合物−結合ヌクレオチドを含み、かつそれぞれ5'ヌクレオチドに結合した異なる発蛍光団(FAM又はHEX)を有する5'ヌクレオチドを含んでいた。異なる発蛍光団は、励起により異なる波長の光を放射した。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物へのリポーター核酸のアニーリングが、核酸ポリメラーゼ活性によるクエンチング化合物−結合リポーター核酸からの発蛍光団(単数又は複数)の切断を引き起こしうる。対立遺伝子特異性核酸標的の優勢の結果、切断されたリポーターからの発蛍光団の特有の蛍光放射となる。
【0228】
この実施例では、以下の核酸をRT-PCR反応に使用した。
【0229】
±=近交系。**=F1ハイブリッド系。
マウスgDNA試料は、Jackson研究所(Bar Harbor,ME)から購入した。すべてのgDNA試料は、1mM MOPSpH7.5、0.01mM EDTA中、2ng/μLに希釈した。
【0230】
【0231】
上記成分を含有するマスターミックスは、10μLの最終反応量のために2X濃度で調製した。5μLのマスターミックスを分析プレートの個々のウェルに等分し、個々のウェルに5μLの標的DNAs(10ng)を添加した。ポジティブ対照(完全適合鋳型)及びネガティブ対照(不適合鋳型又は鋳型無し)用にPCR反応を調製した。鋳型核酸の添加後、各ウェルを15μLの鉱油で覆い、簡単に遠心分離した。PCR反応を行う前に、分析プレートを蛍光シグナルの強度について走査し、530及び580nmにベースライン蛍光を設置した。
【0232】
以下のPCRパラメーターを使用した。
【0233】
【0234】
PCR循環反応後、分析プレートを蛍光シグナルの放射について調べた。分析プレートを、プレートの上部から読むように設定された装置を有するCytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(Applied Biosystems,Foster City,CA)に移した。プレートリーダーのパラメーターは以下の通り:(6FAM蛍光検出)485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定、(HEX蛍光検出)530±12.5nmに励起フィルター設定;580±25nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定。
【0235】
実施例13
因子V遺伝子型の多重PCR解析
多重蛍光に基づいたPCR反応を行い、ヒトゲノムDNAの因子V遺伝子における対立遺伝子特異的ヌクレオチド変異を決定した。この実施例で用いた手順は、実施例12で用いた手順と同様である。
【0236】
【0237】
合成因子V標的は、自動DNA解析によって調製した。因子V標的を含むヒトゲノムDNAは、Cornell/NIGMSヒト遺伝子細胞貯蔵所(Camden,NJ)から得た。全gDNA試料は、1mM MOPSpH7.5、0.1mM EDTA内せ1又は5ng/μLに希釈し、5分間煮沸してからPCR前に氷上に置いた。合成標的は、連続的に、1mMトリスpH8.0(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)及び0.1μg/mLニシン精子DNA(St.Louis,MO)中、1又は10fMに希釈した。
【0238】
【0239】
上記成分を含有するマスターミックスは、10μLの最終反応量のために2X濃度で調製した。5μLのマスターミックスを分析プレート(Low Profile MultiplateTM,96ウェル;MJ Research,Waltham,MA)の個々のウェルに等分し、個々のウェルに5μLの標的DNAsを添加した。5又は50zmol(約3000又は30,000分子)の突然変異、野生型、又は異型接合的合成標的をウェルに添加した。5又は25ngの異型接合的、又は野生型ヒトゲノムDNAをウェルに添加した。対照として標的DNAを含有しないウェルを用いた。鋳型核酸の添加後、各ウェルを15μLの鉱油で覆い、簡単に遠心分離した。PCR反応を行う前に、分析プレートを蛍光シグナルの強度について走査し、530nm及び580nmにベースライン蛍光を設置した。
【0240】
以下のPCRパラメーターを使用した。
【0241】
【0242】
PCR循環反応後、分析プレートを蛍光シグナルの放射について調べた。分析プレートを、プレートの上部から読むように設定された装置を有するCytofluorTM4000蛍光プレートリーダー(Applied Biosystems,Foster City,CA)に移した。プレートリーダーのパラメーターは以下の通り:(6FAM蛍光検出)485±10nmに励起フィルター設定;530±12.5nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定、(HEX蛍光検出)530±12.5nmに励起フィルター設定;580±25nmに放射フィルター設定、かつPMTゲイン50に設定。行われる各多重PCR反応について、それぞれY及びX軸に示されるHEX及びFAM蛍光の相対蛍光単位(RFUs)が合わせて図22に示される。
【0243】
実施例14
エキソヌクレアーゼ欠乏性核酸ポリメラーゼ及び切断剤としてFlapエンドヌクレアーゼを用いる多重リアルタイム対立遺伝子特異的PCR
種々のマウス株由来のゲノムDNAのマウスSTS配列27.MMHAP25FLA6内の単一ヌクレオチド多型の配列に対し、多重蛍光に基づいたPCR反応を行った。この実施例では、多重PCR反応は、標的核酸上の下流の非多型性配列にハイブリダイズする共通の第1プライマーと、2つの上流第2プライマー、すなわち第2プライマーA及び第2プライマーBとを含み、各第2プライマーは対立遺伝子特異的であり、特異性は、異なる3'ヌクレオチドによって決まる。第2プライマーA及び第2プライマーBは、標的核酸ハイブリダイゼーションには寄与しないが、それぞれリポーターA及びリポーターBのハイブリダイゼーションを許容する、異なる5'領域をも有していた。リポーター核酸は、それぞれ5'の最後の2番目の非標準ヌクレオチド及び発蛍光団クエンチング化合物−結合ヌクレオチドを含むが、5'ヌクレオチドに結合した異なる発蛍光団(FAM又はHEX)を有する5'ヌクレオチドを含んでいた。異なる発蛍光団は、励起により異なる波長の光を放射した。非標準ヌクレオチドの対合を含む増幅産物へのリポーター核酸のアニーリングが、フラップエンドヌクレアーゼ-1(FEN-1)酵素活性によるクエンチング化合物−結合リポーター核酸からの発蛍光団(単数又は複数)の切断を引き起こしうる。対立遺伝子特異性核酸標的の優勢の結果、切断されたリポーターからの発蛍光団の特有の蛍光放射となる。
【0244】
この実施例では、以下の核酸をRT-PCR反応に使用した。
【0245】
±=近交系。**=F1ハイブリッド系。
マウスgDNA試料は、Jackson研究所(Bar Harbor,ME)から購入した。すべてのgDNA試料は、1mM MOPSpH7.5、0.01mM EDTA中、20ng/μLに希釈し、95℃に5分間加熱し、氷上で急冷した。
【0246】
【0247】
Mja FEN-1は、参照によって本明細書に取り込まれるHosfieldら,J.Biol.Chem(1998)273:27154-61に記載されている方法を修正した方法に従って発現させ、かつ精製した。Mja FEN-1配列を含むGenBank受入番号はU67585である。Mja FEN-1は、米国特許第5,843,669号、及びBultら,Science(1996)273:1058-1073に記載されており、両者とも参照によって本明細書に取り込まれる。Methanococcus jannaschii FEN-1遺伝子を含有するプラスミドを大腸菌株BL21(DE3)(Novagen,Madison,WI)中に形質転換し、最終濃度0.4mMまでイソプロピルチオガラクトピラノシド(Sigma, St.Louis,MO)の添加により、対数期にタンパク質過剰発現を誘発した。さらに2時間の成長後細胞を3000Xgでペレット化し、緩衝液1(10mMトリス,pH7.5(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA),150mM NaCl(Sigma, St.Louis,MO),10mM イミダゾール(Aldrich,Milwaukee,WI))に再懸濁させ、簡単に超音波処理し、75℃で45分間加熱して可溶化してから氷上で0℃に急冷した。この手順は、細胞を可溶化し、混入している中温性の自然の大腸菌タンパク質の大部分を沈殿させた。生成溶液を25,000Xgで遠心分離し、緩衝液1で予め平衡させたTALONTM金属親和性樹脂(Clontech,Palo Alto,CA)と上清を合わせ、重力流カラム内に装填し、緩衝液1で広範に洗浄した。100mM、200mM、350mM及び500mMの段階的なイミダゾール勾配を含むように調整した緩衝液1を用いてFEN-1を溶離した。FEN-1含有フラクションを収集し、10mMトリス、pH7.5(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)、150mM KCl、及び1mM EDTAを含有する緩衝液に対して広範に透析した。透析した原料を50%グリセロール(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)、0.5%TweenTM20(EM Sciences,Gibbstown,NJ)、及び0.5%NonidetTMP-40(Roche,Indianapolis,IN)に調整した。
【0248】
上記成分を含有するマスターミックスを1.5X以上の最終濃度に調製した。これらミックスの15μlを分析プレートの個々のウェルに等分し、標的DNAs(100ng)5μLを個々のウェルに添加して吸引によって混合した。ポジティブ対照(完全適合鋳型)、ネガティブ対照(不適合鋳型又は鋳型無し)、及び異種接合性試料(適合及び不適合鋳型)用にPCR反応を調製した。鋳型核酸添加後、各ウェルを20μLの鉱油で覆い、簡単に遠心分離した。
分析プレートをiCycler iQリアルタイムPCR検出システム(BioRad,Hercules,CA)に移し、下記のパラメーターを用いて循環させた。シグナル検出に使用したフィルター設定は以下の通り:(6FAM)−励起フィルター490±10nm、放射フィルター530±15nm;(HEX)励起フィルター530±15nm、放射フィルター575±10nm。
【0249】
以下のPCRパラメーターを使用した。
【0250】
*サイクル#27〜42の2工程時に、動的プロットを生成するためiCycler iQTMリアルタイムPCR検出システムのオプティクスを活性化してFAM及びHEX生成蛍光を読み、PCR反応管内の蛍光の測定を可能にした。結果は、図23A〜Bに示される。
【0251】
実施例15
蛍光クエンチドPCR増幅産物の融解曲線解析及び蛍光クエンチドPCR増幅産物
クエンチング化合物を有するSSIによってクエンチされた発蛍光団を含有するPCR反応産物の融解曲線解析を用いてクエンチャー組込みプライマー/二量体の存在を調べることができる。クエンチャー組込みプライマー/二量体は、通常クエンチャー組込みPCR産物より低温で融解する。融解曲線解析は、クエンチャー組込みプライマー/二量体と、PCR増幅後の産物として両者が存在する場合はクエンチャー組込みPCR産物との融点における蛍光の増加を示すことができる。
【0252】
実施例11からのPCR増幅産物をSmart CyclerTM(Cepheid,Sunnyvale,CA)を用いる融解曲線解析に供した。毎秒0.1℃の割合でPCR反応産物の温度を徐々に上昇させながら蛍光の変化を監視した。意図した産物(クエンチャー組込みPCR産物)のTm及び非特異的産物(クエンチャー組込みプライマー/二量体)のTmが図25に示される。出発量1pgのRNA鋳型を含むRT-PCR反応についての融解解析は、約71℃のTmを有する有意量の非特異的産物及び約79℃のTmを有する意図した産物を示した。100ngのRNA鋳型を含む反応についての融解解析は、79℃のTmを有する意図した産物の形成のみを示した。一端意図した産物のTmが分かると、意図した産物によって生成されるシグナルを特異的に観察するために、非特異的産物のTmより高い温度、及び意図した産物のTm未満の温度で、反応の蛍光測定を行うことによって観察することが有用である考えられる。融解曲線解析の結果は、図24に示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、以下の工程、
a)前記試料を、核酸ポリメラーゼ;前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー;第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程、
b)前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程、
c)前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程、
d)前記リポーターの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程、
e)アニーリング後、前記リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程、及び
f)前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、前記試料中の前記標的核酸の存在と関連づける工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記核酸ポリメラーゼが、5'→3'ヌクレアーゼ活性を有し、かつ前記切断工程が、前記核酸ポリメラーゼで前記リポーターの少なくとも一部を切断し、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記核酸ポリメラーゼが熱安定性ポリメラーゼである、請求項1の方法。
【請求項4】
前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、PCRによる前記標的核酸の増幅工程が、Fast-shotTM増幅によって前記標的核酸を増幅する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、Fast-shotTM増幅による前記標的核酸の増幅工程が、前記標的核酸と、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーとを、約90℃〜100℃と約50℃〜65℃の間で、各温度約1秒保持して循環させる工程を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
前記試料を前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程が、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを前記標的核酸にアニールする工程を含み、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーが、前記標的核酸にアニールされるとき、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーの3'末端間にゼロ〜5個の塩基のギャップを有することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項7】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域の前記非天然塩基が、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1領域に隣接して位置することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】
前記リポーターが、(i)前記一本鎖領域の少なくとも一部に相補的であり、かつ前記非天然塩基を含む第1領域と、(ii)前記非天然塩基に隣接した第2領域とを含み、該リポーターの該第2領域は、前記第2ヌクレオチドプライマーの前記第1領域に相補的でないことを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記非天然塩基が、イソ−シトシン及びイソ−グアニンからなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項10】
前記リポーターの前記標識が、シグナル生成要素と、シグナルクエンチング要素とを含み、かつ前記切断工程が、前記リポーターの少なくとも一部で切断し、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程を含み、この少なくとも1つのリポーター断片が、前記シグナル生成要素及び前記シグナルクエンチング要素の両方ではなく1つを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項11】
前記標識が、前記リポーターの5'末端に位置することを特徴とする請求項10の方法。
【請求項12】
前記シグナル生成要素が発蛍光団を含み、かつ前記シグナルクエンチング要素が蛍光クエンチャーを含む、請求項10の方法。
【請求項13】
前記リポーターの前記標識が、シグナル生成要素と、シグナル受取り要素とを含み、かつ前記切断工程が、前記リポーターの少なくとも一部で切断し、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程を含み、この少なくとも1つのリポーター断片が、前記シグナル生成要素及び前記シグナル受取り要素の両方ではなく1つを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項14】
前記リポーターがオリゴヌクレオチドを含み、かつ前記アニーリング工程が、該リポーターの該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程を含む、請求項1の方法。
【請求項15】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、少なくとも2個の非天然塩基を含む、請求項1の方法。
【請求項16】
前記増幅工程が、前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRによって前記標的核酸を増幅し、増幅産物を生成する工程を含み、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記非天然塩基が、該非天然塩基を越える前記第1オリゴヌクレオチドプライマーの伸長を実質的に妨げ、その結果前記一本鎖領域となることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項17】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、該第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1領域に隣接して位置する少なくとも2個の非天然塩基を含み、かつ
前記増幅工程が、試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRによって前記標的核酸を増幅し、増幅産物を生成する工程を含み、前記核酸ポリメラーゼが、前記第1領域に最も近い、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの第2領域の非天然塩基の向かい側にヌクレオチドを間違って組み込むが、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1領域に次に近い非天然塩基の向かい側にはヌクレオチドを組み込まないことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項18】
前記アニーリング工程が、温度を下げて、前記増幅産物の前記一本鎖領域に前記リポーターの少なくとも一部をアニールする工程を含む、請求項1の方法。
【請求項19】
前記関連づけ工程が、少なくとも1つのリポーター断片を検出する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項20】
前記関連づけ工程が、前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離後に、前記増幅産物を検出する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項21】
工程a)及びc)が、前記標的核酸の増幅前に行われる、請求項1の方法。
【請求項22】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、以下の工程、
a)前記試料を、核酸ポリメラーゼ;前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー;第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程、
b)前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程、
c)前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程、
d)前記リポーターを、増幅産物中に、前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込む工程、及び
e)前記リポーターの組込みを、前記試料中の前記標的核酸の存在と関連づける工程、
を含む方法。
【請求項23】
前記試料をリポーターと接触させる工程が、標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的な非天然塩基のヌクレオチド三リン酸とを含むリポーターと前記試料を接触させる工程を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
前記試料をリポーターと接触させる工程が、本質的に標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的な非天然塩基のヌクレオチド三リン酸とから成るリポーターと前記試料を接触させる工程を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記組込み工程が、前記リポーターを前記増幅産物中に、前記核酸ポリメラーゼを用いて前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項26】
前記組込み工程が、前記リポーターを前記増幅産物中に、リガーゼを用いて前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項27】
前記標識が発蛍光団を含む、請求項22の方法。
【請求項28】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、シグナル生成/シグナルクエンチング対を含む、請求項22の方法。
【請求項29】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、1対の発蛍光団を含み、該発蛍光団の一方の放射が、他方の発蛍光団の放射を刺激することを特徴とする請求項22の方法。
【請求項30】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、少なくとも1個の追加の塩基を含む、請求項22の方法。
【請求項31】
以下の成分、
a)核酸ポリメラーゼ、
b)前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー、
c)第1領域と第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマー、及び
d)標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーター、
を含んでなるキット。
【請求項32】
前記リポーターが、前記非天然塩基を含んでなるオリゴヌクレオチドを含む、請求項31のキット。
【請求項33】
前記リポーターが、前記非天然塩基以外は、いずれの塩基も含まない、請求項31のキット。
【請求項34】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、1対の発蛍光団を含み、該発蛍光団の一方の放射が、他方の発蛍光団の放射を刺激することを特徴とする請求項31のキット。
【請求項35】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、シグナル生成要素及びシグナルクエンチング要素を含む、請求項31のキット。
【請求項1】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、以下の工程、
a)前記試料を、核酸ポリメラーゼ;前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー;第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程、
b)前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程、
c)前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程、
d)前記リポーターの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程、
e)アニーリング後、前記リポーターの少なくとも一部を切断して、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程、及び
f)前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離を、前記試料中の前記標的核酸の存在と関連づける工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記核酸ポリメラーゼが、5'→3'ヌクレアーゼ活性を有し、かつ前記切断工程が、前記核酸ポリメラーゼで前記リポーターの少なくとも一部を切断し、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記核酸ポリメラーゼが熱安定性ポリメラーゼである、請求項1の方法。
【請求項4】
前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、PCRによる前記標的核酸の増幅工程が、Fast-shotTM増幅によって前記標的核酸を増幅する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、Fast-shotTM増幅による前記標的核酸の増幅工程が、前記標的核酸と、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーとを、約90℃〜100℃と約50℃〜65℃の間で、各温度約1秒保持して循環させる工程を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
前記試料を前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程が、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを前記標的核酸にアニールする工程を含み、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーが、前記標的核酸にアニールされるとき、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーの3'末端間にゼロ〜5個の塩基のギャップを有することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項7】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域の前記非天然塩基が、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1領域に隣接して位置することを特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】
前記リポーターが、(i)前記一本鎖領域の少なくとも一部に相補的であり、かつ前記非天然塩基を含む第1領域と、(ii)前記非天然塩基に隣接した第2領域とを含み、該リポーターの該第2領域は、前記第2ヌクレオチドプライマーの前記第1領域に相補的でないことを特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記非天然塩基が、イソ−シトシン及びイソ−グアニンからなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項10】
前記リポーターの前記標識が、シグナル生成要素と、シグナルクエンチング要素とを含み、かつ前記切断工程が、前記リポーターの少なくとも一部で切断し、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程を含み、この少なくとも1つのリポーター断片が、前記シグナル生成要素及び前記シグナルクエンチング要素の両方ではなく1つを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項11】
前記標識が、前記リポーターの5'末端に位置することを特徴とする請求項10の方法。
【請求項12】
前記シグナル生成要素が発蛍光団を含み、かつ前記シグナルクエンチング要素が蛍光クエンチャーを含む、請求項10の方法。
【請求項13】
前記リポーターの前記標識が、シグナル生成要素と、シグナル受取り要素とを含み、かつ前記切断工程が、前記リポーターの少なくとも一部で切断し、少なくとも1つのリポーター断片を遊離させる工程を含み、この少なくとも1つのリポーター断片が、前記シグナル生成要素及び前記シグナル受取り要素の両方ではなく1つを含むことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項14】
前記リポーターがオリゴヌクレオチドを含み、かつ前記アニーリング工程が、該リポーターの該オリゴヌクレオチドの少なくとも一部を、前記増幅産物の前記一本鎖領域にアニールする工程を含む、請求項1の方法。
【請求項15】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、少なくとも2個の非天然塩基を含む、請求項1の方法。
【請求項16】
前記増幅工程が、前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRによって前記標的核酸を増幅し、増幅産物を生成する工程を含み、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記非天然塩基が、該非天然塩基を越える前記第1オリゴヌクレオチドプライマーの伸長を実質的に妨げ、その結果前記一本鎖領域となることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項17】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、該第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1領域に隣接して位置する少なくとも2個の非天然塩基を含み、かつ
前記増幅工程が、試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRによって前記標的核酸を増幅し、増幅産物を生成する工程を含み、前記核酸ポリメラーゼが、前記第1領域に最も近い、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの第2領域の非天然塩基の向かい側にヌクレオチドを間違って組み込むが、前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1領域に次に近い非天然塩基の向かい側にはヌクレオチドを組み込まないことを特徴とする請求項1の方法。
【請求項18】
前記アニーリング工程が、温度を下げて、前記増幅産物の前記一本鎖領域に前記リポーターの少なくとも一部をアニールする工程を含む、請求項1の方法。
【請求項19】
前記関連づけ工程が、少なくとも1つのリポーター断片を検出する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項20】
前記関連づけ工程が、前記少なくとも1つのリポーター断片の遊離後に、前記増幅産物を検出する工程を含む、請求項1の方法。
【請求項21】
工程a)及びc)が、前記標的核酸の増幅前に行われる、請求項1の方法。
【請求項22】
試料中の標的核酸を検出する方法であって、以下の工程、
a)前記試料を、核酸ポリメラーゼ;前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー;第1領域及び第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程、
b)前記試料中に前記標的核酸が存在する場合、前記第1及び第2オリゴヌクレオチドプライマーを用いてPCRにより前記標的核酸を増幅し、(i)二本鎖領域と(ii)前記非天然塩基を含む一本鎖領域とを有する増幅産物を生成する工程、
c)前記試料を、標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーターと接触させる工程、
d)前記リポーターを、増幅産物中に、前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込む工程、及び
e)前記リポーターの組込みを、前記試料中の前記標的核酸の存在と関連づける工程、
を含む方法。
【請求項23】
前記試料をリポーターと接触させる工程が、標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的な非天然塩基のヌクレオチド三リン酸とを含むリポーターと前記試料を接触させる工程を含む、請求項22の方法。
【請求項24】
前記試料をリポーターと接触させる工程が、本質的に標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的な非天然塩基のヌクレオチド三リン酸とから成るリポーターと前記試料を接触させる工程を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記組込み工程が、前記リポーターを前記増幅産物中に、前記核酸ポリメラーゼを用いて前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項26】
前記組込み工程が、前記リポーターを前記増幅産物中に、リガーゼを用いて前記一本鎖領域の前記非天然塩基の向かい側に組み込むことを特徴とする請求項22の方法。
【請求項27】
前記標識が発蛍光団を含む、請求項22の方法。
【請求項28】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、シグナル生成/シグナルクエンチング対を含む、請求項22の方法。
【請求項29】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、1対の発蛍光団を含み、該発蛍光団の一方の放射が、他方の発蛍光団の放射を刺激することを特徴とする請求項22の方法。
【請求項30】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、少なくとも1個の追加の塩基を含む、請求項22の方法。
【請求項31】
以下の成分、
a)核酸ポリメラーゼ、
b)前記標的核酸の第1部分に相補的な配列を含む第1オリゴヌクレオチドプライマー、
c)第1領域と第2領域を含む第2オリゴヌクレオチドプライマーであって、前記第1領域が前記標的核酸の第2部分に相補的な配列を含み、かつ前記第2領域が非天然塩基を含む第2オリゴヌクレオチドプライマー、及び
d)標識と、前記一本鎖領域の前記非天然塩基に相補的である非天然塩基とを含むリポーター、
を含んでなるキット。
【請求項32】
前記リポーターが、前記非天然塩基を含んでなるオリゴヌクレオチドを含む、請求項31のキット。
【請求項33】
前記リポーターが、前記非天然塩基以外は、いずれの塩基も含まない、請求項31のキット。
【請求項34】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、1対の発蛍光団を含み、該発蛍光団の一方の放射が、他方の発蛍光団の放射を刺激することを特徴とする請求項31のキット。
【請求項35】
前記第2オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2領域が、さらに標識を含み、かつ前記リポーター及び該第2オリゴヌクレオチドプライマーの該第2領域の標識が、シグナル生成要素及びシグナルクエンチング要素を含む、請求項31のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23A】
【図23B】
【図24】
【公開番号】特開2013−5803(P2013−5803A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−179420(P2012−179420)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【分割の表示】特願2001−586611(P2001−586611)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(500174502)ルミネックス コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179420(P2012−179420)
【出願日】平成24年8月13日(2012.8.13)
【分割の表示】特願2001−586611(P2001−586611)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(500174502)ルミネックス コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】
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