説明

核酸検出システム

【課題】 本出願は、標的核酸を検出するためのシステムであって、下記部分を含むシステムを開示する:5'および3'末端が異なるハプテンで標識されているプライマーおよび、場合により、ハプテンで標識されているdNTPを含み、核酸複合体を形成している核酸増幅混合物を含む容器;ならびに、特異的結合パートナーと核酸複合体の結合に適した試薬条件を含む貯留領域;核酸複合体に対する特異的結合パートナーを含む色素領域、この場合、特異的結合パートナーはレポーター色素または別のハプテンに連結またはコンジュゲートされている;および核酸複合体の異なる側面に特異的な異なる特異的結合パートナーを含む検査領域を含む水平流動式検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2004年4月7日提出の米国仮出願第60/560,197号、および2004年5月3日提出の第60/567,845号の優先権の特権を主張する。前記仮出願の内容は参照によりその全体が本明細書中に包含される。
【0002】
発明に関する政府の利権に関する記述
本取り組みは契約第DAMD17-03-C-0098号の下にU.S. Army Medical Research and Material Commandによって支援される。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
1.発明の属する分野:
本発明は、水平流動式(lateral flow)核酸検出システムを使用する核酸分子の高感度検出分野に関する。
【0004】
2.当技術の一般的背景および水準:
予防医学の進歩は、疾患、例えば兵士が熱帯または亜熱帯地域に配置される場合の蚊媒介性デング熱から現代の兵士を保護するために大きな役割を果たす。しかし、現地で注意を払うにもかかわらず、依然としてデング熱またはさらに深刻なデング出血熱/デングショック症候群(DHF/DSS)にかかっている兵士がいる。本疾患を現地レベルで迅速に検出することは、適時の処置およびそれ以上の急激な発生の予防に不可欠である。
【0005】
フラビウイルス科ファミリーはおよそ70種のウイルスを含有し、黄熱病、デング熱、ウエストナイル熱および日本脳炎を引き起こすウイルスが含まれる。国外旅行の増加のせいで、熱帯地域外で高頻度でこれらのウイルスの急激な発生が起こり始めている。米国本土では、セントルイス脳炎ウイルスの急激な発生および最近ではウエストナイルウイルスの急激な発生がニューヨークシティで始まり、米国東海岸全体に拡大した。さらに、米国には2種の媒介性の蚊、Aedes AegyptiおよびAedes albopictusが存在し、特定環境下で、それぞれデングウイルスを伝染させることが可能である。CDCによれば、この種類の伝染は南テキサスで1980、1986および1995年に検出されており、北メキシコでのデング熱の流行と関連付けられている。
【0006】
デング熱およびDHF/DSSは最も重要な節足動物媒介性のヒトウイルス性疾患として出現した(Gubler and Clark, Emerg Infect Dis. 1995 Apr-Jun;1(2):55-7)。4種の異なるデングウイルス型(DEN−1、DEN−2、DEN−3、およびDEN−4)が存在し、それぞれヒトの疾患を引き起こす能力がある。4種のデングウイルス血清型で保存されている3'−非翻訳配列をうまく利用して、(2002〜2003のMIDRP STO A/Lの資金援助を得て)TaqManベースのRT−PCRが開発された。この技術は、世界の諸地域由来のデングウイルスを定量的に同定するためのものである。
【0007】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は正確な病原体の同定を提供するが、厳密なサンプル調製、保存期間が限定されている複雑な反応成分、正確な温度調節、洗練されたハードウェア、複雑な検出プロセス、および訓練された人材を必要とし、これらはすべて、現地または「リアルタイム」条件、例えば生物テロリストの攻撃の最中に確保することが困難なものである。
【0008】
この技術は実験室での診断には適切であるが、生物学的汚染の性質および有無を迅速に評価することがその影響を最小限にするために不可欠である「リアルタイム」現地条件では有用性が限定される。タンパク質検出方法として適用されるクロマトグラフィーによる水平式アッセイ原理をDNA検出システムとして開発することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ほとんどの検出システムにおいて重要な点は、生物学的病原体の存在に由来する特定の標的配列に対応する、ポリメラーゼ連鎖反応ではない核酸ベースのアプローチによって識別可能で検出可能なシグナルを誘発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の要旨
本発明は、クロマトグラフィーによる水平流動式アッセイと併用のユーロピウム被包微粒子(europium encapsulated microparticles)および/または電気伝導度のようなシグナル増幅システムに関する。本システムは改良型の核酸検出システムであり、下記のような従来の免疫クロマトグラフィーアッセイのすべての利点を保持する:1)一段階、2)現地で使用可能、3)安定な試薬を利用、4)特殊な保存条件なし、5)迅速な結果。増幅シグナルは小型でポータブルの読み取り装置で測定され、定量的または定性的な結果が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は血清型特異的な標的核酸の検出のための蛍光発生核酸試薬キットの拡大生産に関する。本発明は、高感度で、特異的で、かつ安定な凍結乾燥キット成分にさらに関する。種々の濃度のウイルス等の培養病原体、例えばデングウイルスまたはデングウイルスcDNAを検出してよい。
【0012】
一態様において、本発明のシステムでは、調製済みで凍結乾燥された遺伝子増幅用試薬パッドを採用する。反応マトリックスには、バッファー、dNTP、RNAアーゼ阻害剤、逆転写酵素、標識された特異的プライマー、例えばデングウイルス血清型特異的プライマー(DEN−1、−2、−3、−4)、下流プライマー(lower primer)、ビオチンdUTP、Taqポリメラーゼ、内部標準mRNA、および標準mRNA特異的プライマーを含ませてよい。水平流動式アッセイを使用して検出し、ならびに指標シグナルを増幅するために、ビオチンdUTPを加えて核酸増幅産物を標識する。蛍光発生プライマーは、二本鎖PCR産物に組み込まれた場合にその蛍光強度が増加するように設計されており(Nazarenko et al., Nucleic Acids Res. 2002 May 1;30(9):e37)、そのPCR産物を水平流動式免疫クロマトグラフィーアッセイに適用してデング血清型を同定する。
【0013】
本発明の好ましいシステムでは、時間分解蛍光テクノロジーを使用し、好ましくは抗ハプテン抗体とコンジュゲートされたユーロピウム包埋微粒子(europium embedded micro particles)およびシグナル検出用の時間分解共焦点走査装置に基づくシステムを使用する。この特徴により、アッセイの追加の感度が提供される。この高感度のクロマトグラフィーによる水平流動式シグナル増幅システムは、蛍光検出システムより少ない閾値サイクル数(C)しか必要としない。本発明のPCR産物検出システムは、高速(<30分)で、一段階方式で、安定(<30℃で1年を超えて保存できる)である。本アッセイは、操作が容易で、安価で、ポータブルで、熱安定性試薬を使用し、特殊な保存条件を必要としない。これらの特徴により、訓練されていない人材がリアルタイム条件で使用するための、高速で容易な調製済みRT−PCRキットが得られる。
【0014】
本発明の検出システムは任意の生物の検出に適用してもよく、任意の生物には、非限定的に、病原体、例えば軍事上重要なウイルス、例えばフラビウイルス、例えば日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ウエストナイルウイルス、天然痘等が含まれる。他の病原体には、Bacillus anthracisのような細菌が含まれる。
【0015】
また本発明は、ユーロピウムベースおよび/または電気伝導度ベースの標的核酸検出方法を使用する、遺伝子増幅ベースではない標的核酸ベースの検出に関する。
【0016】
本発明の核酸ベースの検出システムでは、厳密なサンプル調製、保存期間が限定されている複雑な反応成分、洗練されたハードウェア、複雑な検出プロセス、または訓練された人材を伴わない条件で、生物学的病原体由来の低濃度の特定ゲノムDNA配列由来のシグナルを増幅する。また本方法は、類がなく、特異的で、シンプルであり、この増幅システムは現場に配置可能な検出モジュールにおいて操作するのが容易である。
【0017】
本発明の具体的な実例では、本発明はデング3'−非翻訳領域のリアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)テクノロジーベースのアッセイシステムに関し、このアッセイシステムは調製済みデングウイルス検出および診断システムに導入される。現地に配置可能で使いやすい診断上の装置を提示する。この装置では、水平流動式免疫クロマトグラフィーアッセイを使用する。この場合、リアルタイム蛍光発生サーマルサイクラーを用いる場合および用いない場合がある。本発明はリアルタイムPCRおよび/または慣用のPCRへの二重適用を許容する。
【0018】
本発明はRT反応と併せて血清型特異的情報の詳細な分析結果にさらに関する。多重PCR反応は単一の試験管中で実行してよい(図4)。RT反応およびPCR反応用のすべての反応成分は適切な処方を用いてマトリックス中で凍結乾燥する。ビオチンdUTPまたは標識されたオリゴヌクレオチドプライマーおよび蛍光標識されたビーコンプライマーを加えて、PCR産物を標識し、リアルタイム蛍光発生サーマルサイクラーまたは水平流動式検出キットを使用して検出する。4種のデングウイルスの血清型を単一のPCR反応で同定できる。この反応キットは室温で1年を超える期間保存できる。
【0019】
本発明の水平流動式システムを使用してプローブとサンプル中の標的核酸の結合を検出可能にアッセイすることができる限り、任意の適切な検出システムを使用してよく、その検出システムには、蛍光、化学発光、酵素または任意の他の色素ベースのシステムが含まれることが理解されるべきである。前記色素システムには、フルオレセインベースの標識を有する分子ビーコン型システムを含ませてよく、あるいは他の標識、例えばビオチン標識をコロイド金コンジュゲートアビジンまたはストレプトアビジンパートナーとともに含有させるか、あるいは任意の他の検出可能でコンジュゲート可能な(conjugable)化学物質、例えばランタニド元素、例えばユーロピウムを含有させてよい。他の種類の検出標識および方法も本発明の範囲内である。
【0020】
本発明は自己実施式(self-performing)の装置にさらに関する。この高速核酸検出システムには正確な量のすべての試薬および成分が含有されていて、サンプルを加えると検査結果が生成される。このシステムは内蔵の加熱パッドを有してもよい。それにより、システムはプローブオリゴヌクレオチド組成に基づくヌクレオチド標的配列の同定に正確に適合する。
【0021】
サンプル中の生物学的病原体の標的DNAを、ユーロピウム粒子で標識されたオリゴヌクレオチド、ユーロピウム粒子で標識されたペプチド核酸(PNA)と反応させてよい。この場合、光アドレスダイレクト電子読み取り(Light Addressable Direct Electrical Readout(LADER))、または電気伝導度を用いる。水平流動式アッセイシステムとともに使用できる、前記ユーロピウムで標識されたオリゴマーおよび電気伝導度の検出方法では、コロイド金微粒子と比較して、感度が10〜1,000倍増加し得る。(図5)これらの2種のシグナル増幅システムでは、感度が103標的/100μl(=10aM)より高く増加し得る。さらに、これらの検出システムをクロマトグラフィーによる水平流動式アッセイと組み合わせると、平衡プレートアッセイと比較して10倍を超えて感度が増加し得る(Hampl etal. Anal Biochem 2001; 176-187)。
【0022】
一側面では、本発明は標的核酸を検出するための水平流動式装置であって、下記領域を含む装置に関する:貯留領域、色素領域および検査領域、この場合、貯留領域は、ハプテンで標識されたプライマーおよび/またはハプテンで標識されたdNTPを含む調製済みの核酸増幅混合物を含み;色素領域は、レポーター色素に連結された第一の種類のハプテンに対する特異的結合パートナーを含み;ならびに、検査領域は第二の種類のハプテンに対する特異的結合パートナーを含む。複数の形式の標的核酸が検出対象である場合、この装置には1種を超える異なる第二の種類のハプテンを有する貯留槽を含有させてよい。第一の種類のハプテンはビオチンであってよく、その特異的結合パートナーはストレプトアビジンであってよく、レポーター色素はユーロピウムまたは金であってよい。さらに、第二の種類のハプテンは、ビオチン、フルオロフォア、またはオリゴペプチドであってよく、その特異的結合パートナーはストレプトアビジンまたは、フルオロフォア(flurophore)またはオリゴペプチドに特異的な抗体であってよい。これは単一の形式の標的核酸が検出対象である場合である。さらに、第二の種類のハプテンは複数の種類のフルオロフォアまたはオリゴペプチドであってよく、その特異的結合パートナーは各種類のフルオロフォアまたはオリゴペプチドに特異的な抗体であってよい。標的核酸の供給源は病原体であってよく、その病原体はデングウイルス等のウイルスであってよく、種々の第二の種類のハプテンを使用してデングウイルス粒子の血清型を検出してよい。また、プライマーは分子ビーコン型であってよい。
【0023】
また本発明は、サンプル中の標的核酸の存在に関するアッセイ方法であって、サンプルを上記装置の貯留領域に接触させる段階を含む方法に関し、この場合、サンプル中に標的核酸が存在すれば、標的核酸が増幅され、少なくとも2種類のハプテンで標識され、色素領域に輸送され、色素領域では、第一のハプテンが、レポーター色素に連結されているその特異的結合パートナーに結合し、毛細管作用によって検査領域を通ってさらに輸送され、検査領域上の第二の種類のハプテン特異的結合パートナーに結合し、その検出によってサンプル中に標的核酸が存在することが示される。複数の形式の標的核酸が検出対象である場合、貯留槽には1種を超える異なる第二の種類のハプテンを含ませてよい。第一の種類のハプテンはビオチンであってよく、その特異的結合パートナーはストレプトアビジンであってよく、レポーター色素はユーロピウムまたは金であってよい。第二の種類のハプテンは、ビオチン、フルオロフォア、またはオリゴペプチドであってよく、その特異的結合パートナーはストレプトアビジンまたは、フルオロフォア(flurophore)またはオリゴペプチドに特異的な抗体であってよい。これは単一の形式の標的核酸が検出対象である場合である。第二の種類のハプテンは複数の種類のフルオロフォアまたは複数の種類のオリゴペプチドであってよく、その特異的結合パートナーは各種類のフルオロフォアまたはオリゴペプチドに特異的な抗体であってよい。標的核酸の供給源は病原体であってよい。
【0024】
本発明はサンプル中の標的核酸の存在に関するアッセイ方法であって、サンプルを水平流動式装置の貯留領域に接触させる段階を含む方法にさらに関し、この場合、サンプル中に標的核酸が存在すれば、標的核酸が増幅され、少なくとも1種類のハプテンで標識され、色素領域に輸送され、色素領域では、ハプテンが、レポーター色素に連結されているその特異的結合パートナーに結合し、毛細管作用によって検査領域を通ってさらに輸送され、検査領域で標的特異的オリゴヌクレオチドに結合し、その検出によってサンプル中に標的核酸が存在することが示され、この場合、検出は光アドレスダイレクト電子読み取りまたはレポーター色素の検出による。検査領域でのハイブリダイゼーションは水平流動式装置に内蔵の加熱パッドによって調節してよい。ハプテンはビオチンであってよく、その特異的結合パートナーはストレプトアビジンであり、レポーター色素はユーロピウムまたは金であってよい。
【0025】
また本発明はサンプル中の標的核酸の存在に関するアッセイ方法であって、サンプルを水平流動式装置の貯留領域に接触させる段階を含む方法に関し、この場合、サンプル中に標的核酸が存在すれば、毛細管作用によって検査領域を通って標的核酸(nucleic)が輸送され、ユーロピウムで標識されている標的特異的オリゴヌクレオチドに結合する。さらに、検査領域に輸送される前に標的核酸を増幅してよい。電気伝導度およびユーロピウムの検出が使用される場合などの高感度なアッセイを使用する場合は、増幅は必要ないかもしれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
好ましい態様の詳細な説明
本出願では、「a」および「an」を使用して、単一の対象および複数の対象の両者を表す。
【0027】
本明細書中で使用される「複数の形式の標的核酸」とは、複数のアイソフォームまたは血清型の標的核酸、例えばデングウイルスの核酸を表し、デングウイルスの場合は4種の血清型を有してよい。
【0028】
本明細書中で使用される場合、プローブ設定で使用される用語である「核酸」または「オリゴヌクレオチド」とは任意のヌクレオチド鎖を表す。ゆえに、DNA、RNAまたはPNAが含まれる。
【0029】
本明細書中で使用される「核酸増幅」とは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Qβレプリカーゼ、鎖置換アッセイ(SDA)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、またはカスケード式ローリングサークル増幅(CRCA)を表す。
【0030】
本明細書中で使用される、核酸増幅の関連での「調製済み(ready to use)」とは、標的核酸を含むサンプルとの接触時に標的核酸の増幅を実行するために必要なすべての試薬および酵素を表す。
【0031】
一側面では、本発明は核酸検出用シグナルを生成させることに関する。本方法は、シグナルを高感度に測定するための種々の標識またはハプテンを使用することを含んでよい。
【0032】
本発明の一側面では、調製済み核酸増幅プレミックスを容器に含ませてよい。プレミックスにサンプルを加え、核酸増幅を実行してよい。プレミックスには、核酸増幅用試薬、例えば5'および/または3'末端で識別可能に標識されているプライマーを含有させてよい。リアルタイムPCRの適用では、分子ビーコン様式において単一プライマーの5'および3'末端を識別可能に標識してよい。この場合、一方の末端にはフルオロフォアが存在し、他方の末端にはクエンチャーが存在する。これらの各標識はハプテンとみなしてよい。その理由は、これらの標識に対する抗体が入手可能で、それらを作成することができるからである。さらに、ハプテンで標識されているdNTP、例えばビオチンで増幅産物本体を適宜標識してよい。プレミックスは乾燥または凍結乾燥してよい。プレミックスは等温増幅PCRおよび/またはリアルタイムPCRによる増幅に好適であってよい。
【0033】
水平流動式アッセイでは、色素領域に流動可能な標的核酸(通常は切断部分)を含有する、ハプテン化(haptenized)または標識されている増幅核酸または未増幅ゲノムDNAを、水平流動式アッセイ装置上の貯留領域で接触させる。貯留領域にはハイブリダイゼーション条件または抗体/抗原結合条件または他の特異的結合対条件に適切な試薬を含有させる。
【0034】
その後、核酸は色素領域に進むであろう。色素領域には、核酸およびその核酸に結合しているハプテンからなる標的核酸複合体に対する特異的結合パートナーを含有させる。ゆえに、特異的結合パートナーは、標的特異的オリゴヌクレオチド、ハプテンの1つに対する抗体または高親和性リガンド、例えばストレプトアビジンであってよく、ストレプトアビジンは高親和力でビオチンに結合する。特異的結合パートナーを色素、好ましくは高感度の色素、例えばユーロピウムまたは金に連結またはコンジュゲートして、標的核酸特異的結合パートナーと色素の複合体を形成させてよい。別法では、異なる標識を用いて特異的結合パートナーをさらにハプテン化してよい。さらに、オリゴヌクレオチド特異的結合パートナーに関する標識は、任意の手段によってその標識が検出可能である限り、ユーロピウム、フルオロフォア、FITC、ビオチン、オリゴペプチド等であってよい。
【0035】
複合体が検査領域に移動するにつれて、検査領域には、標的核酸複合体中の他のハプテンの1つに対する別の特異的結合パートナー、例えば標的核酸に特異的なオリゴヌクレオチドを固定してよく、その時点で、複合体が検査領域上の異なる特異的結合パートナーと結合すれば標的核酸の存在が示される。色素領域で使用されるオリゴヌクレオチドおよび検査領域に固定されるオリゴヌクレオチドはペプチド核酸またはRNAであってよい。検査領域上にDNAオリゴヌクレオチドが固定される場合、標的核酸複合体と検査領域上のオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって電気伝導度シグナルが生成され、そのシグナルを高感度LADERアッセイによって測定できる。さらに、ユーロピウムで標識されているオリゴヌクレオチドと検査領域上に固定されているオリゴヌクレオチドまたはPNAをハイブリダイズさせる場合、LADERアッセイおよびユーロピウムアッセイの感度を組み合わせた高感度アッセイが行われる。例えば、ユーロピウムで標識されている部分が一体となって結合すると、ユーロピウムが強いシグナルを生じる。ユーロピウムで標識されている領域は固定済みの核酸に結合しないが、ユーロピウムで標識されていない部分の核酸だけが結合すれば、代替アッセイとしてLADER伝導率が利用可能である。
【0036】
本発明の別の側面では、検査領域には、標的特異的オリゴヌクレオチドおよび/または、標的核酸をさらに識別し、特定するためのハプテンの1つに関する少なくとも1つの他の特異的結合パートナーを固定してよい。ゆえに、ある特定態様では、標的核酸上のハプテンの1つに対する特異的結合パートナー、例えば5'標識または3'標識のいずれかに特異的なパートナーを検査領域に固定してよく、標的核酸に対するオリゴヌクレオチドプローブを固定して、高い特異性で標的核酸の検出が行われるようにしてもよい。
【0037】
下記説明では、PCR核酸増幅法を使用するデングウイルスの検出を例証するが、任意の化学的に駆動される核酸増幅法、例えばPCR、LCR、NASBA等を使用して任意の病原体を検出してよいことが理解される。
【0038】
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)は正確なウイルス性病原体の同定をもたらすが、従来通りに使用される場合、厳密なサンプル調製、保存期間が限定されている複雑な反応成分、正確な温度調節、洗練されたハードウェア、複雑な検出プロセス、および訓練された人材を必要とするのが現状である。本技術は実験室での診断に適しているが、「リアルタイム」現地条件では有用性が限定される。
【0039】
本発明のシステムは汎用および血清型特異的な微生物の検出、例えばデングウイルス検出用のRT−PCR試薬キットの生産を最適化し、拡大する。乾燥および調製済みデングアッセイキットを作成するための特別な凍結乾燥プロトコルを開発する。キットは単一試験管中のRT反応多重PCR反応に関するすべての成分を含有する。本キットは、一般的なサーマルサイクラーまたはリアルタイムPCRサーマルサイクラー、例えば蛍光発生PCRサーマルサイクラーで使用できる。
【0040】
ウイルスRNAの抽出
QiAamp Viral RNA Handbook(Qiagen Inc. Valencia, CA 91355)にしたがって、ウイルス感染血清、例えばデング感染血清のウイルス懸濁液からウイルスRNAを抽出する。
【0041】
分子ビーコン血清型特異的プライマーのデザインシンセシス
分子ビーコンはステムアンドループ構造を形成する「ヘアピン」オリゴヌクレオチドであり、内部レポーターシグナル、例えば蛍光レポーターおよびクエンチャー分子を有する。それらがヘアピン構造を形成すると、蛍光レポーターおよびクエンチャー分子はともに接近し、蛍光が抑制される。それらが相補的標的配列に結合すると、その高次構造が遷移して、蛍光のスイッチがオンになる(Bonnet et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1999 May 25;96(11):6171-6.)。このヘアピン分子ビーコンは蛍光発生PCRプライマーまたは蛍光発生プローブとして使用できる。オリゴヌクレオチドプライマーを修飾してフルオロフォアを有するヘアピン構造を形成させると、そのプライマーによってその低い初期蛍光を提供することができ、その蛍光はPCR産物の形成にしたがって8倍まで増加する(Nazarenko et al., Nucleic Acids Res. 2002 May 1;30(9):e37)。ヘアピンオリゴヌクレオチドは線状プライマーと同程度に効率的であろうし、プライマー二量体およびミスプライミングを妨げることによってPCRに追加の特異性をもたらす。
【0042】
上記研究に基づいて、上流プライマーを修飾してヘアピン構造を形成させてよい(図1)。ヘアピンプライマーを作成するために、プライマーの3'末端に相補的な5'尾部を伸長させる。5'尾部はその融点未満の温度で平滑末端のヘアピンを形成する。レポーターフルオレセイン(6-FAMTM(520nm)、HEXTM(556nm)、Texas Red(登録商標)(603nm)、Bodipsy(登録商標)(640nm)、等)で3'末端から3番目または4番目の塩基(T)を標識する。クエンチャーフルオレセイン(Iowa blackTM(クエンチング範囲520nm〜700nm))で3'末端に相補的な伸長済み5'末端の配列を標識する。すべてのレポーター色素およびクエンチャーはIntegrated DNA Technology, Inc.(Coralville, IA)およびMolecular Probes, Inc.(Eugene, OR)から入手できる。予測される二次構造および蛍光標識位置を図2に示す。
【0043】
本発明の別の側面では、フルオレセインは、水平流動式高速一段階同定検査キットを使用して血清型特異的PCR産物を同定するための抗ハプテン抗体と反応するハプテン抗原としても機能する。
【0044】
アンチセンスプライマーおよびRTプライマーのデザインシンセシス
デング1〜3の3'−非翻訳配列間で良好なホモロジーを有する汎用のアンチセンスプライマーDV−L1(ヌクレオチド残基368〜388)を、これらのウイルスに関するRTプライマーとして設計する。デング4のゲノムはDV−L1配列とかなりのホモロジーを共有するが、図3に示されるようにDV−L1プライマー内に5個のヌクレオチドミスマッチが存在する。したがって、デング4ウイルスの検出に関するRT反応では、別のアンチセンスプライマーDV−L2を特に使用する。これら2種のアンチセンスプライマー(DV−L1およびDV−L2)を汎用RTプライマーセットとして使用し、全4種のデングウイルス血清型に関するRNAを転写する(Houng et al., 2001 J. Virol. Meth. 95:24-35)。
【0045】
単一試験管中の多重RT−PCR反応
RT反応および多重PCR反応は単一の試験管中で実行してよい(図4)。RT反応およびPCR反応用のすべての反応成分は適切な処方を用いてマトリックス中で凍結乾燥する。ビオチンdUTPおよび標識されたオリゴヌクレオチドプライマーおよび蛍光標識されたビーコンプライマーを加えて、PCR産物を標識し、リアルタイム蛍光発生サーマルサイクラーまたは水平流動式検出キットを使用して検出する。4種のデングウイルスの血清型を単一のPCR反応で同定できる。この反応キットは室温で1年を超える期間保存できる。
【0046】
PCRの結果の同定
本調製済みキットに関して市販のリアルタイム蛍光発生PCRシステムを使用できる。蛍光検出システムに応じて、調製済みキットを調節してカスタマイズできる。さらに、リアルタイムサーマルサイクラーがなく、理想的でない実験室条件下で本キットを使用できる。
【0047】
水平流動式免疫クロマトグラフィーアッセイは増幅されたPCR産物を同定するための代替システムである。本方法は、類がなく、特異的で、現地に配置可能なシステムにおいて操作が容易である。本システムは実質的にすべての生物学的病原体およびウイルスに対して機能し、現地または「リアルタイム」条件で、例えば米国兵士がデング流行地域に配置される事例において確実な結果を提供する。
【0048】
非PCR水平流動式核酸検出
自己実施式高速核酸検出システムの構成は図23に示される通りである。その構成には正確な量のすべての試薬および成分が含有されていて、サンプルを加えると検査結果が生成される。また、このシステムは内蔵の加熱パッドを有し、それにより、プローブオリゴヌクレオチド組成に基づくヌクレオチド標的配列の同定に正確に適合する。このアッセイの原理は図で説明される通りである(図24)。サンプルはまず貯留パッドを通る。貯留パッドは、サンプルのpHを最適化するためのバッファー、サンプル中のすべての成分を懸濁するための界面活性剤、および装置を通して適切な流動を生じさせるための多孔性フィルターを含有する。次いでサンプルは毛細管作用によって色素領域へ流動し、色素領域では、サンプル中の生物学的病原体の標的DNAが、ユーロピウム粒子で標識されているオリゴヌクレオチドまたはペプチド核酸(PNA)と反応する。上記のように形成された反応複合体は吸い上げ膜(wicking membrane)を通って移動し、この場合、伝導率検査およびコントロール領域には捕獲オリゴヌクレオチドが包埋されている。最初のユーロピウム標識済みプローブ反応では標的ヌクレオチド配列を開示することができる。
【0049】
時間分解蛍光を用いる水平流動式アッセイ
水平流動式アッセイ形式で超高感度時間分解蛍光(TRF)色素を使用する。その使用により、水平流動式アッセイの有益な側面を保ちつつ、改良された感度が確保される。ナノサイズTRF色素は、β−ジケトンによってエントラップされている30,000〜2,000,000個のユーロピウム分子を含有する。これは既知のランタニドキレート剤のうちで最高の量子収量の1つを有するものである(Harma, Technology Review 126/2002, TEKES, National Technology Agency, Helsinki 2002)。この被包化は色素の蛍光収率に対する影響を実質的に有さない。典型的な100nmサイズのユーロピウム粒子では、蛍光収率は約3,000分子のフルオレセインに相当する。それに比べて、フィコビリンタンパク質B−PE(おそらく最高の既知蛍光物質)は約30個のフルオレセイン分子に相当する蛍光収率を有する。100nm粒子は直径がフィコビリンタンパク質B−PEの約10倍であり、容量/質量が1000倍大きいため、Seradynユーロピウム粒子はモルベースではB−PEより100倍高い蛍光性であるが、容量/質量ベースでは10%の蛍光性でしかない(Seradyn, Color-RichTM Dyed and Fluoro-MaxTM Florescent Microparticles Technical Bulletins 1999)。このTRF色素粒子を用いる水平流動式アッセイでは、pg/mlレベルまで検出感度が増加し得る。したがって、閾値サイクル数(Ct)を10サイクルまで減少させることができることを意味する。この特徴によって追加の特異性が提供される。
【0050】
本システムは、複雑で高価な自動機器を必要としないシンプルで自己実施式の一段階方式を必要とする。本発明の自己実施式アッセイストリップを含有する小さいプラスチック片およびその検査結果の例を図5に示す。
【0051】
本明細書中で提供されるアッセイシステムを用いれば、単一のサンプリングで追加の手順段階を行わずに複数の分析物を検出することが可能である。免疫クロマトグラフィーアッセイシステムが好ましい。種々の抗体−色素コンジュゲートを色素パッド領域に包埋し、各レポーター色素に特異的な抗体を膜上の別のゾーンにそれぞれ固定すれば、各検査ラインは特定の各デング血清型に特有の情報を提供する(図6)。
【0052】
現地に配置可能な検出システム
現地に配置可能な検出システムが考慮される。ストリップ読み取り装置を使用してサンプルの存在を検出してよい。例えば、時間分解ランタニド発光を測定するための機器を使用してよい。この機器は、窒素レーザー、回折格子分光計、電荷結合素子(CCD)および時間ゲート開閉用の機械的チョッパーを装備している。
【0053】
本発明の範囲は本明細書中に記載の特定態様によって限定されないものとする。実際、前記説明および添付の図面から、本明細書中に記載されるものに加えて本発明についての種々の修飾が当業者には自明となる。このような修飾は特許請求の範囲内に入るものとする。下記実施例は本発明を説明するために提供されるものであり、限定するためのものではない。
【0054】
ポジティブコントロールであるデングウイルスcDNAおよび内部標準であるウサギグロビンmRNAを用いて例証する段階的手順を以下に挙げる。増幅PCR産物同定システムの全体の設計を説明する。
【実施例1】
【0055】
分子ビーコンプライマーの設計
Beacon Designer 2(Bio-Rad)プライマーおよびプローブ設計ソフトウェアを使用して分子ビーコンプライマーを設計する。
【0056】
二重標識分子ビーコンプライマーの調製
種々のレポーターフルオレセイン(Oregon Green(登録商標)(517nm)、6-FAMTM(520nm)、HEXTM(556nm)、TAMRATM(573nm)、Texas Red(登録商標)(603nm)、Bodipsy(登録商標)(640nm)、等)で3'末端から3番目または4番目の塩基(T)を標識する。クエンチャーフルオレセイン(Iowa blackTM(クエンチング範囲520nm〜700nm))で3'末端に相補的な伸長済み5'末端の配列を標識する。すべてのレポーター色素およびクエンチャーはIntegrated DNA Technology, Inc.(Coralville, IA)およびMolecular Probes, Inc.(Eugene, OR)から入手できる。
【0057】
内部品質管理システム
調製済みキットは、内部反応標準である1ngのウサギグロビンmRNAおよび2種の各グロビン特異的PCRプライマーを含有する。ウサギグロビンmRNAのPCR産物を水平流動式同定キットによってコントロールゾーンで検出する。このコントロールゾーンの強度を半定量的結果に関する参照として使用できる。
【0058】
調製済みRT−PCR反応キット
種々のマトリックス媒体、例えばセルロース、ガラス繊維、ポリエステルまたはレーヨン等を評価する。以下に列挙する配合成分を凍結乾燥機において一定減圧下で乾燥する。最適な試薬の再構成およびRT−PCR反応に関してマトリックスを選択する。
【0059】
配合成分のリスト:
RT−PCRバッファー
適切な濃度のMgCl2
dNTP
ビオチンdUTP(ビオチン−16−dUTPまたはビオチン−21−dUTP)
RNAアーゼ阻害剤
逆転写酵素
標識済みデングウイルス血清型特異的プライマー(1、2、3、4型)
標識済み下流プライマー
ウサギグロビンmRNA
2種のグロビン特異的PCRプライマー
Taqポリメラーゼ
安定剤(RNアーゼ/DNアーゼフリーのBSAおよび糖、等)
【0060】
この段階の主目的は、すべての成分の解放およびRT−PCR反応条件下での再構成と組み合わせる最適な凍結乾燥および重要な成分の保存条件を見出すことである。化学物質、例えば非限定的にバッファー、界面活性剤、糖およびポリマーおよび生体材料、例えばタンパク質および他の生体ポリマーの種々の組み合わせを試験し、最良の条件を見出す。調製済みRT−PCRキットをiCycler IQTM(BioRad)およびABI 7700リアルタイム蛍光発生サーマルサイクラーによって試験する。MgCl2濃度は水平流動式アッセイの成功に関する重要な要因である。好ましいMgCl2濃度の範囲は約1.5mMを超えない範囲であり、特定量のMgCl2を超えるとプライマー二量体および偽陽性の結果が認められる。ビオチンdUTPを加えると、捕獲能の向上または指示薬結合能の向上のために感度が増加する(表1)。標識および未標識の比率をコントロールし、過剰の捕獲および指示薬量を適用することによって、基質阻害を克服した。
【0061】
表1は、デングウイルス血清型2の検出に関する、標識済みプライマーを用いた増幅PCRの結果と標識済みプライマーおよびビオチンdUTPの取り込みを用いた増幅PCRの結果間の比較データを示す。
【0062】
表1.デングウイルスの増幅PCRの結果間の比較データ
【0063】
【表1】

【実施例2】
【0064】
水平流動式高速PCR産物同定検査キット
検査の構成
本発明の検査キットは自己実施式の装置として設計する。図7に描写されるような水平流動式高速PCR産物同定検査キットには正確な量のすべての試薬および成分がその貯留パッドに含有されていて、サンプルを加えると検査結果が生成される。そのアッセイの原理および構成は図8に記載される通りである。サンプルはまず貯留パッドを通る。貯留パッドには、サンプルのpHを最適化するためのバッファー、サンプル中のすべての成分を懸濁するための界面活性剤、未反応基質、例えば標識済みプライマーおよびビオチン化dUTPを分離するための分離カラム材料、例えばセファロースビーズ、等、および装置を通して適切な流動を生じさせるための多孔性貯留槽を含有させる。その後、サンプルは毛細管作用によって色素領域へ流動し、色素領域では、サンプル中のデングウイルスDNAの血清型特異的PCR産物が、ユーロピウム粒子で標識済みのストレプトアビジンと反応する。上記のように形成された反応複合体は、抗蛍光色素抗体による検査領域ならびにコントロール領域とともに包埋されている吸い上げ膜を通って移動する。
【0065】
この検査は最小限の訓練を受けた人が現地で実施してよく、使い捨て検査カードに1または2滴のDNA抽出サンプルを加えた後10分以内に迅速な結果が得られる。標識済みのストレプトアビジンおよび標的DNAの複合体は検査およびコントロール領域で捕獲される。検査領域では各血清型特異的PCR産物が識別され、シグナル検出用の標識としてユーロピウムを使用する場合、時間分解蛍光走査装置を装備している読み取り装置でこの領域を検出できる。独立したコントロール領域では、内部品質管理システムとして任意の増幅PCR産物が検出される。このコントロール領域の反応によって、重要な検査用コンポーネントが適切に機能していることが保証される。
【0066】
捕獲用抗色素抗体を固定する調製
蛍光色素に対する抗体によって、シグナルの増強および蛍光色素で標識済みのPCR産物の二次検出の両者に関するまたとない機会が提供される。Molecular Probes, Inc.(Eugene, OR)から種々の抗フルオロフォア抗体が入手可能である。プリント装置(BioDot Corp.)を使用して、0.5〜2mg/mlの範囲の諸濃度で厚さ0.5〜1mmで各抗体をプリントする。可視バンドの質および抗体の結合特性はPonceau法(Hassan, J., et al, J. Clin. Lab. Immunol., 24:104, 1987)によって検査できる。
【0067】
抗ハプテン抗体コンジュゲート微粒子の調製
ユーロピウム粒子
Seradyn(Indianapolis, Indiana)およびMolecular Probes(Eugene, Oregon)から種々の粒子サイズ(50nm〜300nm)のユーロピウム粒子を購入した。10mmol/LのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミドおよび100mmol/LのN−ヒドロキシスルホスクシンイミドで30分間ユーロピウムキレートナノ粒子のカルボキシル基を活性化した。活性化された粒子を50mM MESバッファー、pH6.1で1回洗浄した。5mg/Lの抗体またはストレプトアビジンを加えた。2時間インキュベートした後、抗体またはストレプトアビジンコーティング済み粒子を50mM MESバッファー、pH6.1で3回洗浄した。
【0068】
金粒子
British Biocell International(UK)から種々の粒子サイズ(20nm〜200nm)の金粒子を購入した。最適なコンジュゲーションのために、コロイド金溶液のpHを6.5に調節した。5mg/Lの抗体またはストレプトアビジンを加えた。15分間インキュベートした後、2g/Lのウシ血清アルブミンを加えた。抗体またはストレプトアビジンコーティング済み粒子を10mMリン酸バッファー、pH7.4で2回洗浄した。
【0069】
ストレプトアビジンに対する微粒子コンジュゲーションの最適化
ストレプトアビジンの濃度、コンジュゲートのブロック製法(blocking formulation)およびコンジュゲートの保存の影響を種々の条件下で測定する。また、共有結合性の架橋を測定する。コンジュゲーション収率および拡大の可能性は最適化システムの選択において重要な決定要因である。
【0070】
抗ハプテン抗体に対する微粒子コンジュゲーションの最適化
抗ハプテン抗体の濃度、コンジュゲートのブロック製法およびコンジュゲートの保存の影響を種々の条件下で測定する。また、共有結合性の架橋を測定する。コンジュゲーション収率および拡大の可能性は最適化システムの選択において重要な決定要因である。
【0071】
キット構築
色素領域
この段階の主目的は、湿式アッセイ条件下での標識済みストレプトアビジンまたは抗体の解放と組み合わせる最適な色素−ストレプトアビジンまたはハプテン−抗体コンジュゲートの保存条件を見出すことである。化学物質、例えば非限定的にバッファー、界面活性剤、糖およびポリマーおよび生体材料、例えばタンパク質および他の生体ポリマーの種々の組み合わせを試験して、最良の条件を見出す。
【0072】
貯留領域
サンプルは貯留領域に適用されるので、種々の組み合わせの化学物質および生体材料でアッセイに最適な条件に調整される。
【0073】
吸い上げ膜
このコンポーネントは核酸サンプルの毛細管移動を促すので、核酸が効率的に動員され、捕獲用ストレプトアビジンに結合している標識済み標的核酸間の免疫反応が許容され、長期間にわたって強い毛細管作用が提供されるはずである。適切な安定剤とともに使用される界面活性剤の最適濃度を見出すことも重要である。
【0074】
水平流動式アッセイ
本システムの構成は抗原−抗体免疫クロマトグラフィーアッセイと同様であるが、ストレプトアビジンをコロイド金粒子にコンジュゲートさせて、ストレプトアビジン−ビオチン相互作用によってシグナルを生成させることができる。血清型2特異的プライマーを蛍光ハプテン、例えばローダミンレッドで標識した。抗ローダミンレッド抗体をニトロセルロース膜上に固定した。サンプルはまず貯留パッドを通り、毛細管作用によって色素領域へ流動し、色素領域では、デングウイルスの血清型特異的PCR産物がコロイド金コンジュゲート型ストレプトアビジンと反応する。上記のように形成された反応複合体は吸い上げ膜を通って移動し、この場合、検査およびコントロール領域には抗蛍光色素抗体が包埋されている。
【0075】
水平流動式のデングウイルス血清型2の検査を首尾良く適用して、デングウイルス血清型2特異的PCR増幅を検出および同定することができた。デングウイルス血清型2の検査の検出限界は<100pg/検査であった。この値は<1フェムトモル/検査に相当する。理論的には、この感度は1桁のコピーのデングウイルスcDNAから増幅PCR産物を検出するのに十分である。
【0076】
ここに報告するデングウイルス血清型2の検査は最小限の訓練を受けた人が現地で実施することができ、使い捨て検査カードにPCR産物を加えた後10分以内に迅速な結果が得られる。また、本システムはシンプルで自己実施式の一段階方式であり、複雑で高価な実験室条件を必要としない。
【実施例3】
【0077】
イソチオシアン酸フルオレセイン(fluorecein)(FITC)コンジュゲート型オリゴヌクレオチドの調製
イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)はSigmaから購入した。コンジュゲーション用に、12炭素鎖(C12)アミノ修飾因子リンカーでデングウイルス2型フォワードプライマーの5'を修飾した。(図9)慣用の手順を使用して修飾型オリゴマーにFITCを結合させた。
【0078】
水平流動式アッセイの準備
ストレプトアビジンをコロイド金粒子にコンジュゲートさせ、抗原−抗体反応によってシグナルを生成させることができる。リバースプライマー(DV.L1)の5'末端にビオチン分子をコンジュゲートさせる。フォワードプライマー(DV2.U)の5'末端にFITC分子をコンジュゲートさせる。その修飾型フォワードおよびリバースプライマーを有する増幅PCR産物はビオチンおよびFITC両分子を含有する。PCR増幅中にビオチンdUTPが取り込まれる。検査用ストリップにこのサンプルを適用すると、増幅PCR産物のビオチンタグがストレプトアビジンコンジュゲート型コロイド金と反応する。そしてPCR産物−金コンジュゲート複合体はクロマトグラフィーの毛細管力によってニトロセルロース膜を通って移動する。その複合体は固定済み抗FITC抗体によって捕獲される。捕獲された金またはユーロピウム粒子の量に応じて、可視シグナルが生成される(図10)。装置形式の構成は図11に示される通りである。
【0079】
1型、2型、および3型のビオチン標識済みフォワードプライマーの調製
デングウイルスフォワードプライマー(DV1.U、DV2.U、およびDV3.U)の5'末端にビオチン分子をコンジュゲートさせた。各フォワードプライマーの5'を6炭素鎖(C6)リンカーで修飾した(図12)。
【0080】
ローダミンレッド標識済みリバースプライマー(DV.L1)の調製
リバースプライマーを修飾し、リバースプライマー(DV.L1)の5'末端にローダミンレッド分子をコンジュゲートさせた(図13)。
【0081】
オリゴペプチド標識済みリバースプライマー(DV2.U)の調製
フォワードプライマーを修飾し、プライマー(DV2.U)の5'末端に合成オリゴペプチド分子をコンジュゲートさせた(図14)。
【0082】
ストリップ形式アッセイのアッセイ手順(図15)
1)サンプル適用
種々の鋳型濃度での増幅PCR産物、金またはユーロピウムコンジュゲートおよびバッファーを混合し、ニトロセルロース膜上に接触させて加える。
【0083】
2)アッセイ用バッファー
界面活性剤を含有するPBSを慣用の方法にしたがって調製した。
【0084】
3)アッセイ
10分後に検査結果を読み取る。
【0085】
装置形式アッセイのアッセイ手順(図16)
1)サンプル適用
種々の鋳型濃度での増幅PCR産物、例えば2μlのPCR産物をサンプルウェルに加えた。
【0086】
2)アッセイ用バッファー
慣用の方法を使用して界面活性剤を含有するPBSを調製した。そしてシグナル検出用の標識に特異的な2〜3滴の顕色溶液をニトロセルロース上で装置と接触させる。
【0087】
3)アッセイ
10分後に検査結果を読み取る。
【0088】
図17、18、および19はデング血清型1、2、および3に関するリアルタイムPCRおよび高速PCR産物分析キットの比較結果を示す。
【実施例4】
【0089】
電気伝導度およびユーロピウム標識済みオリゴヌクレオチドを用いる水平流動式アッセイ
光アドレスダイレクト電子読み取り(LADER)の原理は一本鎖(「孤立化(isolating)」)および二本鎖(「導電(conducting)」)形式のオリゴヌクレオチドの伝導率の差異に基づく。この伝導率の差異はスイッチとみなすことができる。捕獲プローブを電極に連結し、電子供与体/受容体複合体(DA)を取り付け、溶存活性成分を加えることによって分子の電気回路を構築する。電子供与体/受容体複合体は第二の光誘発性スイッチとして働く。入射光線はDからAへの電荷移動を誘発し、プローブがハイブリダイズすれば、電子はそこから電極へ移動することができる。活性成分によってDA複合体に電荷が補充されると回路が閉じ、連続循環によって非常に増幅された読み取りシグナルが生成される。LADERの原理はEP 1144685 B1およびDE 19921940 C2に記載される通りである。EP 1144685 B1にはLADERテクノロジーに関する電気化学的複合体として保護光合成反応中心および類似のシステムが記載される。前記文献の内容は電気伝導度テクノロジーの操作に関するその全体が参照により本明細書中に包含される。
【0090】
供与体/受容体複合体は、光合成に関して反応中心として知られる色素/タンパク質複合体において有効に働く。これは光誘発後100ps以内にポルフィリン供与体からキノン(chinon)受容体への電子伝達能を有する。この色素/タンパク質複合体はキノン受容体および残りの(アポ)タンパク質に容易に分離し得る。キノン受容体を修飾して、アポタンパク質とプローブ結合型キノン受容体の再構成後に一方ではオリゴヌクレオチド捕獲プローブに共有結合し、他方では(アポ)タンパク質に共有結合することができるようにする。
【0091】
このアプローチは図20の反応スキームに記載される通りである。ユビキノン(UQ)欠損光合成反応中心を再構成し、二本鎖DNAに結合しているUQに架橋させる。ポルフィリン系Pによって供与体を表し、一方ユビキノン部分は受容体Aを形成する。第一段階(1)の照射によって励起状態P*−UQが創出され、その状態は次の段階(2)で一時的に安定な電荷分離状態P−UQに進行する。この状態からDNA(3)を超えて電極(4)へ電子が取り出され、それによりP−UQがP−UQに酸化されて、測定可能な陽極の光電流が生じる。初期状態に戻るサイクルは還元剤シトクロムc+(X)によって終結し、シトクロムc+自体は系をP−UQに還元する(5)ことによって酸化される。
【0092】
値を読み取って解釈し、個別の各スポットでの参照および測定シグナル間の自動比較によって定性的および定量的に同定してよい。図21は読み取り装置の模式図およびEDDA形式のCBTチップ用の接触ヘッドの拡大図を示す。読み取り装置は部分的に展開され、シンプルな「プレス底(press bottom)」アプローチによって実施するのに必要な全液体取扱い段階を可能にする。バーコード付きチップの参照用測定データ(ハイブリダイゼーション前)を内部バッファーに保存し、ハイブリダイゼーション後の実測データと比較する。電極ごとの差異の値を外部コンピュータスクリーンに表示し、その値をさらに処理することができる。
【0093】
二本鎖DNA対一本鎖DNAの伝導率およびそれに関連するトンネル効果パラメータ(tunnelling parameter)βをさらに調査した。その調査は、電気化学的インピーダンス分光学を用いて種々の長さのDNA一本鎖および二本鎖に関する電子伝達速度定数を測定することによって行った。図22は、対応する標的とのハイブリダイゼーション前後の、20ヌクレオチド長の捕獲プローブおよび共有結合型Os標識で修飾されている電極の電気化学的挙動を示す。この場合、対応する標的自体はフェロセニウム(FcAc)標識で修飾されている。一本鎖の状態では、予測されるように捕獲プローブの遠隔末端のOs標識に起因する電気化学的応答がある。ハイブリダイゼーション後は、フェロセニウム標識に起因する追加のピークが現れる(FcAcピーク)。これにより、捕獲プローブの遠隔末端のOs標識が電気化学的に走査できることばかりでなく、ハイブリダイゼーションの効率は100%に近いことも実証される(捕獲プローブおよび標的を表す標識の2つのピークはほぼ同一の高さである)。
【0094】
伝導率検出器を用いるクロマトグラフィーアッセイ
自己実施式の高速核酸検出システムの構成(図23)には正確な量のすべての試薬および成分が含有されていて、サンプルを加えると検査結果が生成される。また、このシステムは内蔵の加熱パッドを有し、それにより、プローブオリゴヌクレオチド組成に基づくヌクレオチド標的配列の同定に正確に適合する。このアッセイの原理は図24に図示される通りである。サンプルはまず貯留パッドを通る。貯留パッドは、サンプルのpHを最適化するためのバッファー、サンプル中のすべての成分を懸濁するための界面活性剤、および装置を通して適切な流動を生じさせるための多孔性フィルターを含有する。その後、サンプルは毛細管作用によって色素領域へ流動し、色素領域では、サンプル中の生物学的病原体の標的DNAが、ユーロピウム粒子で標識済みのオリゴヌクレオチドと反応する。上記のように形成された反応複合体は吸い上げ膜を通って移動し、この膜には、伝導率検査およびコントロール領域に適した捕獲用オリゴヌクレオチドが包埋されている。最初のユーロピウム標識済みプローブ反応では標的ヌクレオチド配列を開示することができる。
【0095】
本明細書中で提案される検査は最小限の訓練を受けた人が現地で実施してよく、使い捨て検査カードに1または2滴のDNA抽出サンプルを加えた後30分以内に迅速な結果が得られる。標識済みオリゴヌクレオチドプローブおよび標的DNAの複合体は伝導率で標識済みの検査およびコントロール領域によって捕獲される。検査領域は標的配列を表示し、時間分解蛍光走査装置および/または伝導率読み取り装置を装備した読み取り装置によってこの領域を検出できる。独立したコントロール領域はユーロピウムで標識済みのオリゴヌクレオチドのカウンターオリゴヌクレオチド配列を表示する。このコントロール領域の反応によって、重要な検査用コンポーネントが適切に機能していることが保証される。
【0096】
クロマトグラフィーによる水平流動式アッセイは増幅システムである。液体サンプル中の標的DNAは、毛細管力によって膜を通って移動するときに、電気親和性によって膜上の荷電検査領域に着実に濃縮される。分子が非常に低い濃度でしか存在しない場合でさえ、検査領域中の分子の実際の濃度はサンプル中の濃度よりずっと高い。
【0097】
内蔵加熱パッド
水平流動式アッセイは加熱用PCB/PCP(プリント済み回路ペーパー)上にマウントすることができる。その腰板(base board)上には高抵抗金属(例えばニッケル/クロム合金が加熱目的で利用できる)がプリントされている。このシステムであれば比較的正確な温度モニターおよび制御を安価で備えることができる。サンプル構成は図25A〜25C、図26A〜26B、および図27A〜27Bに示される通りである。
【0098】
検査装置図
検査キットは2つのウインドウを有する使い捨てプラスチックケースからなる。2つのウインドウの一方はコントロールおよび検査領域を調査するためのものであり、他方はサンプルを受け取るためのウェルを提供する。これは図28に示される通りである。
【0099】
装置内部には、2つのパッドを有する検査用ストリップがある。第一のパッドは、一貫した検査結果を保証するためのバッファー、界面活性剤、および化学物質を含有し、また特別に作成されたバッファー系中の標的オリゴヌクレオチドコンジュゲート型ユーロピウム粒子を含有する。第二のパッドは、反応用の膜を通過済みの過剰の液体を除去するためのものである。ニトロセルロース膜の検査およびコントロール領域上に細いライン状に2種類のオリゴヌクレオチドを別々に固定する。検査領域には標的生物学的病原体に特異的なオリゴヌクレオチドを固定し、一方コントロール領域にはユーロピウムで標識済みのプローブに特異的な他方のオリゴヌクレオチドを固定する。また機器コネクターを組み入れて、時間分解蛍光または、伝導率による標識が使用される状況では伝導率を測定するための機器を装置に連結できるようにする。
【実施例5】
【0100】
ユーロピウムで標識済みのペプチド核酸(PNA)を用いる電気伝導度による水平流動式アッセイ
標的DNAを検出するためのプローブとして核酸を使用する実施例4に記載のすべての方法および手順は、ペプチド核酸をプローブとして同様に使用するために適用可能である。この場合、実施例4に記載の種々の加熱パッドおよび検査装置の使用を含む。
【実施例6】
【0101】
HLA−DQα配列多型の検出
個別の同定結果を遺伝子マーカー(genetic marker)として法医学的に分析するためにHLA−DQα2遺伝子座を使用できる。PCRで増幅されたDNA中の遺伝子変異を検出するための種々の分析技術が使用されている。
【0102】
種々のハプテンまたは蛍光性ハプテンでプライマーおよびプローブを標識してよい。したがって、種々の配列およびサイズのオリゴペプチドをハプテンとして使用してよく;エピトープとして働くであろう他の小分子をハプテンとして使用してよく、表2に列挙されるような種々の蛍光性ハプテンを使用してもよい。
【0103】
【表2】

【0104】
上記ハプテンの対応物として抗ハプテン抗体を使用する。Molecular Probes, Inc.等の企業から多数の抗ハプテン抗体が市販されている。さらにまた、抗ハプテン抗体を固形マトリックス上に固定するか、あるいは種々の粒子とコンジュゲートさせてよい。「種々の粒子」とは、コロイド金、ラテックス粒子、磁性または常磁性粒子、ユーロピウム包埋ラテックス粒子等を意味する。
【実施例7】
【0105】
実施例7
医療検査用遺伝子針
本発明の別の態様では、本発明は医療検査用遺伝子針装置(GPOCT)に関する。その目的は一段階またはシンプルな段階の統合型遺伝子分析システムを提供することである。吸収パッドはマトリックスに接続され、これは反応パッドに接続されていて、この場合、医療検査用遺伝子針装置に関するライン状または点状の水平流動式アッセイとしてマトリックス上に捕獲型抗体または抗原が固定されている。反応パッド上には試薬ゾーンがあり、このゾーンで反応サンプル(増幅サンプル)が適用され、次の媒体へ移動する。
【0106】
態様1−サンプル抽出システム。
図29に関して、抽出システムの非限定的な例には下記のものが含まれるであろう:
溶液およびバッファー成分を除去してDNAまたはRNAサンプルを濃縮するための貯留システム。また、特別な処理を施された多層吸収剤および、非限定的に界面活性剤およびアルカリ性バッファーを含有する抽出溶液を含んでよい。
【0107】
このバッファーは細胞壁または膜を破壊し、DNAまたはRNA等の遺伝子サンプルを溶液中に曝露することができる。プロテアーゼを加えてヒストン様タンパク質および細胞壁を除去することが考慮される。別法では、別個の溶液カプセルまたは多層フィルムを使用してよい。
【0108】
さらに各種貯留槽、炭素フィルター、イオン交換フィルターを使用してよい。さらに、フィルターは60,000〜300,000Dまたはそれ以上の範囲の分子カットオフを有する半透膜であってよく、非粘着性のコーティングを施してよい。
【0109】
このフィルターシステムはすべての潜在的な阻害剤、小分子、イオン、およびタンパク質を除去する。その結果、元の抽出溶液からサンプルを10〜1000倍濃縮することができる。
【0110】
態様2−粗製サンプルまたは抽出済みDNAサンプル由来の統合型システム。
図29に示されるように、統合型システムはサンプル入力領域を含み、この領域は多層状フィルターシステムに接続されていて、この場合、フィルターユニットはほとんどのイオンおよび小分子およびタンパク質を吸収する。この部分は機能的ろ過および濃縮器として働く。フィルターシステムは毛細管と同様の高速熱伝達用の非常に薄い管にさらに接続されている。容易かつ迅速に温度を調節するために、管表面にプリントされている一体型の金属を加熱コイルのように機能させてよい。薄い管の内側には、固形マトリックス中に包埋されて凍結乾燥されている特定コンポーネントを収容するための領域があってよい。薄い管は反応パッドに接続され、これはさらにニトロセルロース膜に接続され、さらに吸収パッドに接続されている。
【0111】
態様3−増幅および検出用部分の概要。
精製サンプルを適用し、代替の態様では、サンプルを適用し、ローラーシステムに通す。ローラーシステムはサンプルの流動速度を調節する。その後、サンプルは熱センサーおよび熱制御回路を通り、増幅槽を通る。増幅槽は下記部分から構成されていてよい:1.すべての必要な試薬を含有するパッド;2.あらかじめ配合済みで凍結乾燥状態の試薬パッド;および3.PCR反応用に、この槽(パッド)はTaqポリメラーゼ、dNTP、プライマー(タグ付き)、他の標識モノマー等を含有する。
【0112】
サンプルが増幅槽を通過して流出すると、水平流動式アッセイの反応パッドと接触する。水平流動式アッセイ中に、サンプルは結果ウインドウを通って流動し、このウインドウでは、点またはラインまたは任意の種類の検出可能なシグナルによって結果を表示することができる。そしてサンプルは吸収パッド上に流動する。
【0113】
以下、本発明の装置の部品を詳細に説明する。
【0114】
1.熱センサーおよび熱制御回路ユニット。
可撓性マトリックス、例えばポリエステル、ポリカーボナートまたはポリスチレンの表面に各種の伝導性インクをプリントアウトすることができる。別法では、各種の伝導性インク、例えば炭素、炭素/銀混合物、銀、銀/塩化銀、金、白金、UV硬化型誘電体、熱硬化型誘電体の伝導性インクを基板上にプリントし、適切な熱を生成させて30℃〜100℃の範囲のサーモサイクル(thermocycling)の可変温度を実施してよい。ゆえに、その電流および抵抗を検出および制御することによって温度センサーおよび温度制御を達成できる。
【0115】
サーモサイクルは、2または3通りの異なる温度を設定し、その温度で20〜40回反復してサイクルすることによって達成してよい。サーモサイクルの条件はそのプライマー配列に応じて最適化する必要がある。
【0116】
2.増幅パッド
増幅パッドは等温増幅、例えばPCRまたはRFPCR用のすべての試薬を含有する。すべての試薬をあらかじめ混合し、最適に配合し、凍結乾燥してよい。すべての試薬とは増幅反応用の必須の成分を意味する。このような試薬には非限定的に下記成分が含まれるであろう:逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、PNAプライマー、標識済みプライマー、dNTP、標識済みdUTP、バッファー、および安定剤、例えばタンパク質、BSA(ウシ血清アルブミン)、およびEDTA。さらに増幅パッドは、比体積のサンプル適用を用いて再構成してよい。プライマーをガラスビーズまたはラテックスビーズに固定して、増幅反応を増強し、基質阻害を防止してよい。「基質阻害」とは、未反応プライマーが抗タグ抗体と重合プライマー間の反応を阻害できることを意味する。「プライマー」とは、オリゴヌクレオチドまたはPNA(ペプチド核酸)およびオリゴヌクレオチドハイブリッドを意味する。「ガラスビーズ」または「ラテックス粒子」とは微粒子を意味する。直径0.01〜10.0μmの範囲のサイズの微粒子が利用可能であろう。好ましくは、本発明のこの態様に関する直径は0.1〜10.0μmの範囲であってよい。
【0117】
米国特許第6,153,425号には検出システムが開示されているが、前記'425特許は、基質阻害を防止するために増幅パッド中で微粒子を使用することを開示も示唆もしていない。
【0118】
遺伝子チップ
この医療検査用遺伝子針装置の別の側面では、本発明はタンパク質チップおよび遺伝子チップに関する。遺伝子チップに関して、医療検査用遺伝子針装置の説明において具体的態様を考察した。好ましい態様では、本装置は核酸抽出装置を含んでよく、これはDNAまたはRNA精製槽に接続され、さらに増幅またはハイブリダイゼーション槽に接続され、生成シグナルを調査するための結果ウインドウに接続されている(図30)。医療検査用遺伝子針装置には上記検査用ストリップを組み込んでよい。
【0119】
本発明の一態様では、抽出バッファー容器中にサンプルを加える。さらに遺伝子POCTに抽出済みDNAサンプルを加えてよく、肉眼またはシグナル読み取り装置で30分以内に結果を読み取ってよい(図31)。遺伝子POCT法は高速で高感度である。
【0120】
本明細書中に引用のすべての参考文献は参照によりその全体が包含される。
【0121】
本明細書中に特に記載の本発明の具体的態様と等価な多数の発明を、当業者は認識し、あるいは単に通常の実験を使用して確認することができる。このような等価な発明は特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明は、下記で提供される詳細な説明および添付の図面からさらに完全に理解されよう。図面は例証目的でのみ提供されるものであり、ゆえに本発明を限定するものではない。
【0123】
【図1】図1Aおよび1Bは、A.修飾された血清型特異的上流プライマー(upper primers);およびB.プライマーを使用して構築されるヘアピン構造を示す。
【図2】図2は分子ビーコンであるデングウイルス血清型特異的上流プライマーの構造を示す。
【図3】図3はPCRアンチセンスプライマーおよびRT反応プライマー用の下流プライマーを示す。
【図4】図4は多重PCR増幅の図を示す。
【図5】図5A〜5Bは本発明のアッセイシステムを示す。5(A)は検査前の本システムの検査装置を示す。本装置は少なくとも2つの主要部分、装置底部のサンプルウェルおよび装置中央部の結果読み取りウインドウを有する。5(B)はアッセイ後の検査結果を示す。2本のラインは陽性を示し、1本のラインは陰性を示す。コントロールラインは組み込みの内部標準として働く。これはアッセイが適正に実施された場合に現れるはずである。
【図6】図6は多重PCR産物同定アッセイを示す。
【図7】図7はPCR産物同定装置の図を示す。
【図8】図8は水平流動式装置の構成を示す。
【図9】図9は5'アミノ修飾因子連結型2型フォワードプライマーの構造を示す。
【図10】図10は標識されたPCR産物を用いる免疫クロマトグラフィーPCR産物同定アッセイの構成(ストリップ形式)を示す。
【図11】図11は標識されたPCR産物を用いる免疫クロマトグラフィーPCR産物同定アッセイの構成(装置形式)を示す。
【図12】図12は5'ビオチン化フォワードプライマーの構造を示す。
【図13】図13は5'ローダミンレッド標識リバースプライマーの構造を示す。
【図14】図14は5'合成オリゴペプチド標識フォワードプライマーの構造を示す。
【図15】図15はストリップ検査に関するアッセイ手順を示す。
【図16】図16は装置形式のアッセイに関するアッセイ手順を示す。
【図17】図17はデングウイルス血清型1の検出に関するリアルタイムPCRおよび高速PCR産物分析キットの比較結果を示す。両検査は1.5mM MgClを用いて実施した。レーンA:4,340,000コピー/検査、レーンB:868,000コピー/検査、レーンC:173,600コピー/検査、レーンD:34,720コピー/検査、レーンE:6,944コピー/検査、レーンF:1,388コピー/検査、レーンG:277コピー/検査、レーンH:55コピー/検査、レーンI:鋳型なし。
【図18】図18はデングウイルス血清型2の検出に関するリアルタイムPCRおよび高速PCR産物分析キットの比較結果を示す。レーンA:3,720,000コピー/検査、レーンB:1,240,000コピー/検査、レーンC:413,000コピー/検査、レーンD:138,000コピー/検査、レーンE:45,900コピー/検査、レーンF:15,300コピー/検査、レーンG:5,100コピー/検査、レーンH:1,700コピー/検査、レーンI:567コピー/検査、レーンJ:189コピー/検査、レーンK:63コピー/検査、レーンL:21コピー/検査、レーンM:鋳型なし。
【図19】図19はデングウイルス血清型3の検出に関するリアルタイムPCRおよび高速PCR産物分析キットの比較結果を示す。両検査は1.5mM MgClを用いて実施した。 レーンA:5,090,000コピー/検査、レーンB:1,018,000コピー/検査、レーンC:203,600コピー/検査、レーンD:40,720コピー/検査、レーンE:8,144コピー/検査、レーンF:1,628コピー/検査、レーンG:325コピー/検査、レーンH:65コピー/検査、レーンI:鋳型なし。
【図20】図20は光アドレスダイレクト電子読み取り(LADER)の原理を示す。
【図21】図21は読み取り装置の模式図およびEDDA形式のCBTチップ用の接触ヘッドの拡大図を示す。
【図22】図22は、対応する標的とのハイブリダイゼーション前後の、20ヌクレオチド長の捕獲プローブおよび共有結合型Os標識で修飾されている電極の電気化学的挙動を示す。この場合、対応する標的自体はフェロセニウム(ferrocenium)(FcAc)標識で修飾されている。
【図23】図23は、導電性(electroconductive)アッセイを使用する自己実施式高速核酸検出システムの構成を示す。
【図24】図24は、時間分解蛍光発生および/または伝導率変化の検出を使用する、生物学的病原体特異的DNA配列の検出に関するアッセイ原理の図を示す。
【図25】図25A〜25Bは加熱システムの構成を示す。
【図26】図26AおよびBは加熱システムの構成を示す。
【図27】図27AおよびBは加熱システムの構成を示す。
【図28】図28は機器コネクター部分を有する検査装置の図を示す。
【図29】図29は医療検査用遺伝子針(gene point of care testing)(GPOCT)装置を示す。この装置は統合型DNAサンプラーである。
【図30】図30はGPOCT装置の詳細な態様を示す。
【図31】図31はGPOCT装置の詳細な態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸を検出するためのシステムであって、下記部分を含むシステム:5'および3'末端が異なるハプテンで標識されているプライマーおよび、場合により、ハプテンで標識されているdNTPを含み、核酸複合体を形成している核酸増幅混合物を含む容器;ならびに、特異的結合パートナーと核酸複合体の結合に適した試薬条件を含む貯留領域;核酸複合体に対する特異的結合パートナーを含む色素領域、この場合、特異的結合パートナーはレポーター色素または別のハプテンに連結またはコンジュゲートされている;および核酸複合体の異なる側面に特異的な異なる特異的結合パートナーを含む検査領域を含む水平流動式検査装置。
【請求項2】
核酸増幅混合物が乾燥または凍結乾燥されていて、等温増幅、PCRおよび/またはリアルタイムPCRに適している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
複数の形式の標的核酸が検出対象である場合、プレミックスが複数の種類のハプテンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
特異的結合に関して核酸複合体が核酸上のハプテンまたはその核酸を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
ハプテンが、ビオチン、フルオロフォアまたはオリゴペプチドである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
特異的結合パートナーが、ストレプトアビジン、ハプテン特異的抗体または標的核酸に相補的なオリゴヌクレオチドである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
レポーター色素が、ユーロピウム、金またはフルオロフォアである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
複数の種類のハプテンが複数の種類のフルオロフォアまたはオリゴペプチドである、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
検査領域に固定されている特異的結合パートナーが色素領域の特異的結合パートナーと異なる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
検査領域に固定されている特異的パートナーがハプテンに対する抗体および/または、標的核酸に対して相補的なオリゴヌクレオチドまたはPNAである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
検査領域に固定されている特異的結合パートナーがDNAである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
電気伝導度に関するアッセイ読み取り用のコネクターを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
標的核酸の供給源が病原体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
病原体がフラビウイルスファミリーに属するウイルスである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
ウイルスがデングウイルスである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
デングウイルス粒子の血清型が、それらを識別するための複数の異なるハプテンを有する標識プライマーによって検出される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
プライマーが、一方の末端ではフルオロフォアで標識され、他方の末端ではクエンチャーで標識されていて、ならびに場合により標識されているdNTPがビオチンで標識されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
サンプル中の標的核酸の存在に関してアッセイする方法であって、下記段階を含む方法:請求項1に記載の、標的核酸に特異的な標識済みプライマーおよび場合により標識されているdNTPを含むプレミックスを含有する容器にサンプルを接触させる段階、およびそれによって得られる増幅核酸を水平流動式装置の貯留領域に接触させる段階、および核酸複合体と検査領域上の特異的結合パートナーの結合に関してアッセイする段階。
【請求項19】
サンプル中の標的核酸の存在に関してアッセイする方法であって、請求項1に記載の水平流動式装置の貯留領域とサンプルを接触させる段階を含む方法、この場合、色素領域はレポーター色素で標識されている標的核酸特異的オリゴヌクレオチドを含み、標識済みオリゴヌクレオチドは標的核酸に結合して核酸複合体を形成し、核酸複合体は検査領域へ流動し、検査領域にはオリゴヌクレオチドが固定されていて、標識済みオリゴヌクレオチドと固定済みオリゴヌクレオチドが結合すると、標的核酸の存在に関する陽性シグナルが生じる。
【請求項20】
レポーター色素または電気伝導度によってシグナルを読み取る、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公表番号】特表2008−500820(P2008−500820A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507534(P2007−507534)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/011977
【国際公開番号】WO2006/041524
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(506338478)
【Fターム(参考)】