核酸測定用の核酸プローブ
【課題】核酸測定において、1)標的核酸の希釈工程が不要、2)標的核酸濃度に合わせてプローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有する核酸測定方法を可能とする標的核酸測定用の新規混合物を提供すること。
【解決手段】1)1種の内部標準核酸、1種の蛍光色素で標識された2種の核酸プローブを含む混合物、2)1種の1部変異を有する内部標準核酸、1種の蛍光色素で標識された核酸プローブを含む、Km値測定のための混合物、3)1種の内部標準核酸、2種の蛍光色素で標識された2重核酸プローブを含む混合物。当該混合物を用いた核酸測定方法。
【解決手段】1)1種の内部標準核酸、1種の蛍光色素で標識された2種の核酸プローブを含む混合物、2)1種の1部変異を有する内部標準核酸、1種の蛍光色素で標識された核酸プローブを含む、Km値測定のための混合物、3)1種の内部標準核酸、2種の蛍光色素で標識された2重核酸プローブを含む混合物。当該混合物を用いた核酸測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の新規測定方法用の新規混合物に関する。詳しくは、1種若しくは複数種の標的核酸を、正確、簡便に且つ安価に測定するための新規混合物、及びそれを用いた標的核酸の測定方法、並びにそれらに用いられる核酸プローブ及び測定キット類に関する。
【背景技術】
【0002】
標的核酸測定方法の多くの例は、標的核酸とハイブリダイズすることで蛍光が変化する性質を有する蛍光色素標識核酸プローブ(均一溶液系プローブ、又は標的核酸プローブという場合もある。同じ意味を有する。)を用いて、均一溶液系で測定が行われる方法である。当該方法は、本特徴により、一般的にハイブリダイゼーション方法において不可欠な工程であった1)標的核酸の固定化工程(或いはプローブの洗浄工程)、2)未反応プローブの洗浄工程(或いは未反応遺伝子の固定化工程)が不要となるため、簡便、迅速且つ正確な方法である。このため、当該標的核酸定量法は、様々な遺伝子解析手法に汎用されている(非特許文献1参照。)。
【0003】
均一溶液系プローブを用いて直接標的核酸を測定する場合、次の手順から目的を達成することが出来る。
(1)予め用意した既知濃度の標的核酸と、均一溶液系プローブとをハイブリダイゼーションさせ、その際の光学的キャラクターの変化若しくは変化量をモニタリングしておく。
(2)当該変化若しくは変化量は、標的核酸量と正比例の関係にあるため、この関係式を作製すると、標的核酸の検量線となる。
(3)未知試料についても上記と同様の操作を実施し、得られた光学的キャラクターの変化若しくは変化量に基づいて、当該検量線から標的核酸量を定量する。
【0004】
しかしながら、当該方法では、検量線作成の際に添加したプローブ濃度以上に標的核酸が存在した場合、光学的キャラクターの変化若しくは変化量は常に一定となる。このため、既存の測定法では、1)標的核酸を希釈する、2)プローブ濃度を変化させた系を複数系列用意する、という手段の内、どちらかを講じる必要性がある。1)の対策を講じた場合、希釈工程が必要となるため、操作が煩雑となり、(1)分析に時間がかかる、(2)希釈による誤差が生じる、(3)分析を自動化する際は、希釈のための装置が必要、といった問題が生じる。また、2)の対策を講じた場合は、ハイブリダイゼーションに最適な反応時間、反応温度が添加したプローブ濃度によって異なるため(標的核酸とプローブの高濃度で存在すれば、ハイブリダイゼーションが完了する時間は短なり、その逆の場合は、反応時間は長くなる。また、Tm値は、標的核酸とプローブが高濃度で存在すれば、高くなり、その逆の場合は、低くなる。)、(1)プローブ濃度毎に、実験系を最適化する必要性がある、(2)添加したプローブ濃度毎に検量線を用意する必要性がある、といった問題点が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】蛋白質・核酸・酵素;35巻、17号、1990年、共立出版株式会社;実験医学、15巻、7号、1997年、羊土社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前記の状況に鑑み、均一系核酸プローブを用いる方法において、1)標的核酸の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有する核酸測定方法を可能とする標的核酸測定用の新規混合物、それを用いた新規核酸測定方法、及びそれらに用いる新規核酸プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するにあたり、以下のような種々の検討を行い、次の知見を得て本発明を完成した。即ち、既知濃度の特定の内部標準核酸、均一系の蛍光色素で標識された特定の標的核酸プローブ及び/又は前記の内部標準核酸にハイブリダイズし、蛍光色素で標識された特定の内部標準核酸プローブを含む反応液(ハイブリダイゼーション反応系)に標的核酸を添加し、ハイブリダイゼーション反応を行わせ、発生する光学的キャラクターの変化を測定する。そして、内部標準核酸と標的核酸との測定値の比を求めることにより、本発明の課題は達成できる。
【0008】
すなわち、本発明は、
1) 下記のタイプの一種若しくは二種以上の均一溶液系核酸プローブと下記のタイプの一種若しくは二種以上の内部標準核酸を、又は更に内部標準核酸プローブを含むことを特徴とする一種若しくは二種以上の標的核酸を測定するための核酸測定用新規混合物又は新規反応液(以下単に、両者を一緒に新規混合物と総称する。)、
A)均一溶液系核酸プローブ(以下、標的核酸プローブと略称する。):以下の特性を有する:
a) 一本鎖のオリゴヌクレオチドからなる。
b) 一種若しくは二種以上の蛍光色素で、且つ1若しくは2分子以上の蛍光色素で、オリゴヌクレオチドの末端部位及び/又は鎖中部位の塩基部位、糖部位及び/又はリン酸部位で標識されている。
c) 標的核酸及び/又は内部標準核酸とハイブリダイズしたとき蛍光キャラクターが変化し得る核酸プローブである。
d) 標的核酸と内部標準核酸とを区別せずにハイブリダイズすることが出来る。
e) 内部標準核酸とハイブリダイズしたときの量と、標的核酸とハイブリダイズしたときの蛍光キャラクター変化量との間に差が生じることが出来る。
【0009】
B) 内部標準核酸(内部遺伝子、又は内部標準遺伝子という場合もある。):前記標的核酸プローブがハイブリダイズし得る領域の標的核酸の構造とは、少なくとも一部位に相違がある構造を有し、且つ前記均一系プローブが当該核酸とハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量と、標的核酸と前記標的核酸プローブがハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量との間に差が生じ得る内部標準核酸。
【0010】
C) 内部標準核酸プローブ:以下の特性を有する:
前記標的核酸プローブの特質a)〜e)を有し、更に、蛍光標識部位及び標識蛍光色素の蛍光キャラクターは、前記標的核酸プローブのものとは各々異なったものにする。
【0011】
2)標的核酸プローブが一部領域で標的核酸と相補しない塩基配列を有するものである標的核酸プローブを含む前記1)に記載の新規混合物、
3)前記核酸プローブ類が二種以上の蛍光色素で標識されている場合、それらの蛍光キャラクターが異なる蛍光色素で標識されているものである前記1)に記載の新規混合物、
4)蛍光キャラクター変化量が、蛍光強度の増加(例えば、FRET現象を有する色素で標識されたプローブ)又は減少(例えば、Qプローブ)である前記1)に記載の新規混合物、
5)標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び/又は内部標準核酸とハイブリダイズした際、少なくとも2つの部位(末端部、鎖中部の塩基部、糖部、リン酸部)が、蛍光キャラクターが異なる蛍光色素で標識されている(以下、二重標識核酸プローブと略称する。)ものである前記1)又は3)に記載の新規混合物、
【0012】
6)少なくとも2つの部位が少なくとも2つの塩基である前記5)に記載の新規混合物、
7)塩基がシトシン(以下、Cと略称する。)である前記6)に記載の新規混合物、
8)Cが両末端の塩基である前記7)に記載の新規混合物、
9)標的核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に相補的である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
10)二重標識核酸プローブが、一方の部位においては、標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と内部標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量との間に差が発生するが、他方の部位においては、蛍光キャラクター変化量に差が発生しない二重標識核酸プローブである前記5)に記載の新規混合物、
【0013】
11)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)若しくは両末端のどちらか一方を除いて、標的核酸および内部標準核酸に少なくとも相補的である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
12)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列において、蛍光色素で標識された末端部の反対側が、標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補的でない前記1)又は5)に記載の新規混合物、
13)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが、標的核酸および内部標準核酸に対して、少なくとも相補的塩基配列を有するものである前記1)又は5)に記載の新規混合物。
14)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの一方の末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸のGの数が、標的核酸>内部標準核酸あるいは標的核酸<内部標準核酸である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
15)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における標的核酸および内部標準核酸のGの数が、一方の末端領域において標的核酸>内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸<又は=内部標準核酸であり、一方の末端領域において標的核酸<内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸>又は=内部標準核酸である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
【0014】
16)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおける一方の末端塩基に対応する塩基がグアニン(G)以外であり、他方の末端塩基に対応する塩基がGである前記1)又は5)に記載の新規混合物、
17)標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGであることを特徴とする前記1)又は5)に記載の新規混合物、
18)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸の塩基配列が、一方の末端領域において異なるが、他方の末端領域においては同じである前記1)又は5)に記載の新規混合物、
19)前記1又は5の新規混合物が、標的核酸および内部標準核酸にハイブリダイズしなかった標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの蛍光をD)減少させ得る蛍光消光物質、又はE)当該物質で標識されたオリゴヌクレオチド(以下単に消光物質標識プローブと呼ぶ)を、更に1種若しくは二種以上含むものである前記1)又は5)に記載の新規混合物、
【0015】
20)消光物質標識プローブが、下記の特性1及び/又は特性2を有するものである前記19)に記載の新規混合物、
特性:
(1)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸あるいは内部標準核酸との複合体の解離温度よりも、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと消光物質標識プローブとの複合体の解離温度が低い。
(2)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーション及び標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと内部標準核酸との間のハイブリダイゼーションが完了した後に、前記1)の特性故に消光物質標識プローブが均一溶液系プローブ又は二重標識核酸プローブとのハイブリダイズすることが出来る。
【0016】
21)新規混合物が、前記1)に記載のa)内部標準核酸、b)標的核酸プローブ及び/又はc)内部標準核酸プローブ、及びd)エキソヌクレアーゼ(exonuclease)を、下記の条件で含むもの、又はエキソヌクレアーゼがセットして付帯したものである前記1)に記載の新規混合物、
条件:標識核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び内部標準核酸の少なくとも一方に対して、蛍光標識部位領域(領域:1乃至3塩基分、好適には1塩基分)において、相補的でない。
22)exonucleaseが、3’→5’exonuclease、5’→3’exonuclease、S1 Nuclease、Mung Bean Nucleaseである前記21)に記載の新規混合物、
23)新規混合物が、前記1)に記載の内部標準核酸と標的核酸プローブを対とする、一対若しくは二対以上を含むのである前記1)に記載の新規混合物、
24)前記1)又は5)に記載の新規混合物を用いて、一種若しくは二種以上の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法、
25)標的核酸測定する方法が、一種若しくは二種以上の標的核酸及び/又は内部標準核酸の存在下でハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブの蛍光色素に由来する蛍光キャラクター変化を測定し、得られた測定値の比から一種若しくは複数種の標的核酸を測定するものである前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
26)測定対象の核酸が遺伝子増幅方法で増幅されたもの(定常期に到る任意の時期(初期、中期及び定常期のいずれか一つ。)まで増幅されたものである前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
27)測定対象の核酸が、遺伝子増幅方法により増幅された標的核酸および内部標準核酸ものの少なくとも一方である前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
【0017】
28)測定対象の核酸が、遺伝子増幅方法により、同一のプライマー用いて増幅された、標的核酸と内部標準核酸のものの少なくとも一方である前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
29)前記1)〜23)の何れか一つに記載の新規混合物が、下記タイプの標的核酸プローブ若しくは二重標識核酸プローブ及び既知濃度の前記1)〜20)の何れか一つに記載の内部標準核酸を含むものである前記に記載の核酸の新規測定方法。
標的核酸プローブ(以下このタイプのものを認識可能核酸プローブという。)
前記1)〜23)の何れか一つに記載の標的核酸プローブが、蛍光色素標識部位の少なくとも一部位若しくは二部位以上において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
二重標識核酸プローブ(以下このタイプのものを認識可能二重標識核酸プローブという。)。
前記5)〜23)の何れか一つに記載の二重標識核酸プローブが、二種類の蛍光色素のどちらか一方のものの標識部位において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
【0018】
30)核酸の前記新規測定方法において、標的核酸プローブと内部標準核酸プローブに由来する、測定された蛍光キャラクター変化量の比に基づいて、標的核酸と内部標準核酸との構成比を求め、本構成比から標的核酸を測定するものである前記29)に記載の核酸の新規測定方法、
31)前記24)又は29)に記載の核酸測定方法において、内部標準核酸と標的核酸のどちらにもハイブリダイズしなかった標的プローブ若しくは内部標準核酸プローブの蛍光を消光させることを特徴とする標的核酸の新規定量方法、
32)蛍光を消光させる方法が、標的核酸プローブの蛍光を減少させる効果を有する物質及び/又は消光物質標識プローブを用いる方法である前記31)に記載の核酸の新規定量方法、
【0019】
33)前記24)又は29)に記載の核酸の新規測定方法において、光学的キャラクター変化の測定値から、正確に標的核酸を計算する計算式:
x=(-a'-B+Ba'+b'+A-Ab')/(b'-b-Ab'+Ab-a'+a+Ba'-Ba)
但し、上記式は下記の条件である場合で、上記の記号は以下の通りである。
条件:
測定方法が二重標識核酸プローブを使用する場合で、且つ、色素A及びBで標識されている場合である。
記号:
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
A:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
a’:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
B:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
b’:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
34)前記24)又は29)に記載の核酸の新規測定方法において、光学的キャラクター変化の測定値から、正確に標的核酸を計算する計算式:
x=(b-B-Ab+A+a'B-a')/(a'B-a'-aB+a)
但し、上記式は下記の条件である場合で、上記の記号は以下の通りである。
条件:
測定方法が二重標識核酸プローブを使用する場合で、且つ、色素A及びBで標識されている場合である。
記号:
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
A:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
a’:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
B:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子および内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
35)前記1)又は5)に記載の新規混合物からなることを特徴する核酸測定用キット類、
36)前記1)又は5)に記載の一種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系において、遺伝子増幅方法により一種若しくは複数種の標的核酸、および内部標準核酸を定常期に到る任意の時期まで増幅し、得られた反応液若しくは増幅産物を試料とし、一種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法、
37)核酸増幅方法が標的核酸と内部標準核酸とを共通のプライマーで増幅するものである前記32)に記載の一種若しくは複数種の増幅前の核酸を測定する方法、
【0020】
38)プライマーがQプローブである前記36)に記載の一種若しくは複数種の増幅前の核酸を測定する方法、
39)下記のタイプの核酸プローブと下記のタイプの内部標準核酸との対を一種若しくは複数対を含むことを特徴とする、Tm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
核酸プローブ:一種若しくは二種以上の蛍光色素で標識された一本鎖のオリゴヌクレオチドであり、且つ標的核酸及び内部標準核酸にハイブリダイズできる核酸プローブで、標的核酸及び内部標準核酸にハイブリダイズしたときに、標識された蛍光色素の蛍光キャラクターが変化する核酸プローブ。複数種の核酸プローブの場合、各プローブの蛍光色素が異なる。
内部標準核酸:上記核酸プローブが標的核酸とハイブリダイズする部位の塩基配列と、内部標準核酸とハイブリダイズする部位との塩基配列が一部異なることを特徴とする内部標準核酸、
【0021】
40)核酸プローブが、シトシン部位において一種の蛍光色素で標識された一本鎖のオリゴヌクレオチドである前記39)に記載のTm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
41)蛍光色素の蛍光キャラクターの変化が蛍光強度の減少である(核酸プローブがQプローブである)前記39)に記載のTm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
42)蛍光色素の蛍光キャラクターの変化が蛍光強度の増加である前記35)に記載のTm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
【0022】
43)前記39)に記載の新規混合物を用いて、複数種の標的核酸存在下で、温度を変化させながら、反応液の蛍光強度を測定した後、下記の手順により、標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法、
手順:
1)測定された蛍光強度変化のカーブを描く。
2)当該カーブを微分する。
3)各ピークを積分してピークの面積を求める。
4)内部標準核酸のピーク面積と標的核酸のピーク面積比を求める。
5)当該比と内部標準核酸の濃度を乗ずる。
44)標的核酸が、前記35)に記載の内部標準核酸を含む反応液系で遺伝子増幅方法により増幅されたものである前記37)に核酸新規測定方法、
【0023】
45)プライマーがQプローブである前記43)に記載の核酸の新規測定方法、
46)前記1)又は39)に記載の新規混合物からなることを特徴とする核酸測定キット類、
【0024】
47)前記に記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブで、少なくとも下記の何れかの一つの構造を有するもの、
1. 標的核酸プローブ
(1)一末端若しくは両末端部位で、標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない部位を有する。
(2)前記(1)で標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない一方の部位に蛍光色素が標識され、蛍光色素標識部位の塩基から1乃至3塩基の範囲内(標識塩基部位を1とする。)にC又はGがある。
(3)前記(1)で標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない一方の部位は、蛍光色素標識部位の反対側にある。
(4)前記(1)で標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない一方の部位は、塩基数にして1乃至4塩基範囲である。
(5)前記(1)で標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGである。
【0025】
2. 二重標識核酸プローブ
(6)蛍光色素で標識された部位が少なくとも2つの塩基である。
(7)前記(6)の塩基がシトシン(以下、Cと略称する。)である。
(8)前記(7)のCが両末端の塩基である。
(9)前記(6)の塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に相補的である。
(10)前記(6)又は(9)の二重標識核酸プローブは、一方の部位においては、標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と内部標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量との間に差が発生するが、他方の部位においては、蛍光キャラクター変化量に差が発生しない二重標識核酸プローブである。
【0026】
3. 標的核酸プローブ及び二重標識核酸プローブに共通の構造
(11)前記(1)〜(10)に記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に少なくとも相補的である。
(12)前記(1)〜(11)に前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが、標的核酸および内部標準核酸に対して、完全に相補的塩基配列を有するものである。
(13)前記(1)〜(12)に前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの一方の末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸のGの数が、標的核酸>内部標準核酸あるいは標的核酸<内部標準核酸である。
【0027】
(14)前記(1)〜(13)に前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における標的核酸および内部標準核酸のGの数が、一方の末端領域において標的核酸>内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸<又は=内部標準核酸であり、一方の末端領域において標的核酸<内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸>又は=内部標準核酸である。
【0028】
(15)前記前記(1)〜(14)に記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおける一方の末端塩基に対応する塩基がグアニン(G)以外であり、他方の末端塩基に対応する塩基がGである前記1)又は5)に記載の新規混合物。
(16)前記前記(1)〜(15)に記載の何れか一項において、標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGである。
(17)前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸の塩基配列が、一方の末端領域において異なるが、他方の末端領域においては同じである。
を提供する。
【発明の効果】
【0029】
上記のような本発明の新規混合物を用いることにより、以下のような特徴を有する新規核酸測定方法が出来るようになった。即ち当該方法による標的核酸の測定において、1)標的核酸の希釈工程が不要、2)使用するプローブの濃度を、標的核酸濃度に応じて変えることが不要、3)同一測定系で複数の標的核酸を測定できる、4)測定感度が向上した、5)核酸増幅方法と本発明の核酸測定方法を合体することにより、
【0030】
(1)遺伝子増幅反応終了後(エンドポイントで)、反応チューブを開放することなく、迅速且つ簡便に測定することができるので、ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速に標的核酸の測定ができる、(2)反応チューブを解放する必要性が無く、増幅産物によるコンタミの心配がない、(3)競合法であるため阻害物質の影響を受けにくい、(4)遺伝子増幅と増幅産物の検出とを完全に分離できるため、大量サンプルの処理が可能となり、サンプル処理能力を、簡便且つ安価に向上させる事が可能(例えば、蛍光測定機能を持たない安価なPCR装置を、複数台用いて遺伝子増幅した後、蛍光測定装置にて順次解析することで、例え蛍光測定装置が一台であっても大量サンプルの処理が可能となる)、(5)増幅の過程をリアルタイムモニタリングする必要性が無く、PCR反応に不可欠なサーマルサイクラーとしての機能が不要となるため、非常に簡便かつ安価な測定装置で核酸測定が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】QProbeを用いた標的遺伝子と内部標準遺伝子の検出の模式図である。
【図2】QProbe用いた解離曲線(Tm)解析による遺伝子定量方法の模式図である。
【図3】二重標識QProbe(Switching probe)用いた遺伝子定量方法の模式図である。
【図4】競合的PCR方法の原理の模式図である。
【図5】消光率の比と遺伝子構成比との関係(2種のQProbeを使用した場合)を示す図である。○トータル遺伝子量=200nM、■トータル遺伝子量=800nM
【図6】消光率の比と遺伝子構成比との関係(Switching probeを使用した場合)を示す図である。
【図7】消光率の比と核酸増幅反応(PCR)前の遺伝子構成比との関係(Switching probeを使用し、遺伝子増幅方法を介したエンドポイント遺伝子定量法を使用した場合)を示す図である。
【図8】実施例2の実験手順を示す図である。
【図9】標的核酸プローブを用いた遺伝子構成比定量法の模式図である。
【図10】1つの均一溶液系プローブ(QProbe)を用いた遺伝子構成比と蛍光消光率との関係を示す図である。□トータル遺伝子量:200nM、○トータル遺伝子量:400nM、◆トータル遺伝子量:800nM
【図11】2重標識核酸プローブによる遺伝子検出の模式図(その2)である。
【図12】BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比と、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比との関係を示す図である。○トータル遺伝子量:200nM、◆トータル遺伝子量:400nM△トータル遺伝子量:800nM
【図13】2重標識核酸プローブによる遺伝子検出の模式図(その3)である。
【図14】TAMRA補正の有無による検量線の違いを示す図である。●トータル遺伝子量:200nM、▲トータル遺伝子量:800nM
【図15】プローブ状態と蛍光変化に関する模式図である。
【図16】標的遺伝子存在比と消光率比の関係式を示す図である。
【図17】消光物質核酸プローブ非存在下、および存在下における標的遺伝子および内部標準遺伝子の検出を示す図である。
【図18】3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素を用いた手法を示す図である。
【図19】蛍光値比と遺伝子構成比との関係を示す図である。■100nM、◇800nM
【図20】二重標識核酸プローブと消光物質標識プローブを併用した遺伝子定量手法に関する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明を更に詳細に説明する前に本発明で使用する用語を説明又は定義する。
本発明において用いる用語は、特別な定義がない場合は、現在、分子生物学、遺伝学若しくは遺伝子工学、微生物学若しくは微生物工学等で一般的に使用されている用語と同じ意味である。
【0033】
「1種若しくは二種以上」、「1種又は二種以上」、「一種若しくは複数種」とは、少なくとも1種の意味である。
「標的核酸」とは、検出・測定を目的とした核酸の意味である。
「核酸」、「標的核酸」、「内部標準核酸」には遺伝子も含まれるものとする。そして、本明細書においては一般的な場合は「標的核酸」、「内部標準核酸」又は単に「核酸」なる用語を使用し、具体的な場合は「標的遺伝子」、「内部標準遺伝子」又は単に「遺伝子」なる用語を使用した。
「試料中に含まれる核酸」のことを単に標的核酸又は目的核酸という場合がある。
【0034】
本発明において「核酸を測定する」、或いは「核酸濃度を測定する」なる用語は、標的核酸の濃度を定量することは勿論のこと、定量的検出をすること、定性的検出をすること、核酸増幅系の蛍光強度を単に測定するか若しくは単にモニタリングすること、又、測定反応系を複数の波長で光学的キャラクター変化若しくは変化量を測定して、その測定値の比を計算することによって標的核酸を求める操作等をも意味するものとする。又、このようにして得られたデーターを公知の蔵田らの方法(EP特許公開公報、EP1 046 717 A9号)で解析して、1つの系内に存在している濃度(コピー数等)を求める操作等も含めるものとする。
【0035】
上記の理由で、本発明の”試料に含まれる核酸”とは、検出・測定を目的とした特定の核酸とは限らず、意図せずとも本発明の方法により検出され得る不特定の核酸をも含むものとする。勿論遺伝子等を含む。それらの核酸が混在していてもよい。濃度の大小も問わない。核酸はDNA、RNA及びそれらの修飾物を含むものである。
【0036】
「光学的キャラクター」なる用語は、核酸プローブを標識する蛍光物質、クエンチャー物質等の各種の吸収スペクトル、若しくは蛍光発光スペクトル、及びそれらの吸収強度、偏光、蛍光発光、蛍光強度、蛍光寿命、蛍光偏光、蛍光異方性等の光学的特性等のことをいう(「蛍光強度」、単に「蛍光」で総称する場合がある。)。又、核酸プローブ等に標識されている少なくとも1つの蛍光物質等について少なくとも1種以上の測定波長で測定された測定値を総合的に評価して得た性質のこともいう。例えば、核酸の変性反応の蛍光強度曲線等もその1つである。
又、一般的な場合は、「光学的キャラクター」なる用語を使用し、具体的な場合は、「蛍光強度」、単に「蛍光」なる用語を使用した。
【0037】
本発明において、「光学的キャラクターの変化量」、「蛍光強度変化量」、「蛍光変化量」なる用語は、本発明の増幅核酸に基づく蛍光強度の変化だけでなく、当該増幅核酸に、蛍光物質及び/又はクエンチャーで標識された均一溶液系核酸プローブをハイブリダイズさせたときの、そのハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の変化若しくは変化量をも含めるものとする。
【0038】
本発明においては、プライマープローブと対応核酸とのハイブリダイゼーションによるプライマープローブと核酸の複合体のことをハイブリッド、またはハイブリッド複合体、または単に、核酸・プライマー複合体またはプライマー・核酸複合体という。
本発明において、例えば、核酸プローブの一部領域で標的核酸に「相補する」及び「相補的である」、又、「相補しない」及び「相補的でない」などの用語を使用しているが、この場合の「相補」とは、二種のオリゴヌクレオチドが存在した場合、各オリゴヌクレオチドの対応する核酸塩基同士が水素結合できるという意味である。また、ハイブリダイズできるという意味である。また、核酸プローブの一部領域が標的核酸の一部領域で「対応する」なる用語を使用しているが、この「対応」とは、核酸塩基同士の水素結合等の概念はなく、ただ単に1対1の関係にあるという意味である。従って、「対応」には「相補する」及び「相補的である」、又、「相補しない」及び「相補的でない」の双方の場合を含む。
【0039】
本発明において「光学的キャラクター変化率」とは、本発明の核酸プローブ(標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブ)及び標的核酸及び/又は内部標準核酸とがハイブリダイズしていない状態の反応系若しくは測定系の蛍光色素等の光学的測定値に対する、それらがハイブリダイズしている状態のものの比である。一例として{[ハイブリダイズしている状態の測定値]/[ハイブリダイズしていない状態の測定値]}×100なる計算式を挙げることが出来る。この場合、当該変化が蛍光で消光の場合は「蛍光消光率」と、発光の場合「蛍光発光率」等と言う。ハイブリダイズしている状態は、反応若しくは測定温度が好適には10℃〜90℃で出現し、ハイブリダイズしていない状態は、前記以上で出願する。しかし、中間状態が存在するので、各実験例毎に正確に測定しておくのが好適である。
なお、本発明の核酸プローブが本発明の蛍光色素で標識される部位のことを「蛍光色素標識部位」又は「蛍光標識部位」という。しかし、同じ意味である。
【0040】
本発明でいう蛍光色素(蛍光物質という場合もある。)とは、一般に核酸プローブに標識して、核酸の測定・検出に用いられている蛍光物質の類である。例えば、フルオレセイン(fluorescein)又はその誘導体類{例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)若しくはその誘導体等、Alexa 488、Alexa 532、cy3、cy5、6-joe、EDANS、ローダミン(rhodamine)6G(R6G)又はその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン(tetramethylrhodamine)(TMR)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(tetramethylrhodamine isothiocyanate)(TMRITC)、x−ローダミン(x-rhodamine)、テキサスレッド(Texas red)、ボデピー(BODIPY)(商標名)FL(商品名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国;BODIPYについては以下同様である。)、ボデピー(BODIPY)FL/C3、ボデピー(BODIPY)FL/C6、ボデピー(BODIPY)5-FAM、ボデピー(BODIPY)493/503、ボデピー(BODIPY)TMR又はその誘導体(例えば、ボデピー(BODIPY)TR、ボデピー(BODIPY)R6G、ボデピー(BODIPY)564、ボデピー(BODIPY)581、タムラー(TAMRA)、パッシフィクブルー(Pacific Blue)(商品名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)等を挙げることができる。
【0041】
上記の中でも、TAMRA、FITC、EDANS、テキサスレッド、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、ボデピー(BODIPY)FL/C3、ボデピー(BODIPY)R6G、ボデピー(BODIPY)FL、Alexa 532、ボデピー(BODIPY)FL/C6、ボデピー(BODIPY)TMR、5-FAM、ボデピー(BODIPY)493/503、ボデピー(BODIPY)564、ボデピー(BODIPY)581、Cy3、Cy5、x-Rhodamine、パッシフィクブルー等を好適なものとして挙げることができる。
クエンチャー物質とは、前記蛍光物質に作用して、その発光を抑制もしくは消光する物質である。例えば、Dabcyl、QSY7(モルキュラー・プローブ)、QSY33(モルキュラー・プローブ)、Ferroceneまたはその誘導体、methyl viologen、N,N'-dimethyl-2,9-diazopyrenium、BHQ、Eclipseなど、好適にはDabcylなどを挙げることができる。
前記のような、蛍光物質およびクエンチャー物質を、オリゴヌクレオチドの特定の位置に標識することにより、蛍光物質の発光は、クエンチャー物質によりクエンチング効果を受ける。
【0042】
核酸増幅方法は、本発明の目的を達成出来ればどのような方法でもよい。
本発明でいう核酸増幅方法とは、インビトロ(in vitro)で核酸を増幅する方法のことをいう。公知、未公知を問わない。例えば、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、TAS方法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)方法、LAMP方法、NASRA方法、RCA方法、TAMA方法、UCAN方法等を全て含めるものとする。好適にはプライマープローブ又は単なるプローブを用いるPCR方法で行うのが好適である。
【0043】
前記PCR方法はどのような形式のものでも好適に採用できる。
例えば、定量的PCR方法、リアルタイムモニタリング定量的PCR方法、RT-PCR、RNA-primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマープローブを用いたPCR、PNAを用いたPCR、PCRにより増幅した核酸について、融解曲線の解析若しくは分析する方法等をも含むものとする。
【0044】
”Qプローブ”又は”QProbe”とは、KURATAらにより開発されたプローブ(KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34)である。このプローブは、1本鎖のオリゴヌクレオチドを蛍光色素で標識した均一溶液系核酸プローブであるが、蛍光色素で標識した部位の塩基がG又はCであるか、又は対応核酸の標識塩基に対応する塩基から1乃至3塩基離れて(標識塩基に対応する塩基を1と数える。)G又はCが存在する均一溶液系核酸プローブである。
【0045】
蛍光色素のオリゴヌクレオチドの標識部位は、末端部、鎖中でも良い。標識位置は糖部位、リン酸部位、塩基部位どちらでもよい。糖部位においては、3’末端の3’又は2’位CのOH基、又は5’末端を脱リンして得られる5’位CのOH基である。リン酸部においては、リン酸に替えて、スルホン酸基、スルホニル基でもよい。好ましくは、5’又は3’末端部位、より好ましくは5’又は3’末端部、最良は5’又は3’末端である。好適には、C又はGを含む部位か、それら自身の部位である。最適には、Cを含む部位か、C自身の部位である。
【0046】
本発明は4つの発明からなる。各発明は更に副発明を含む。
本発明に記載の新規混合物は、液体状のもの、粉末状のもの、錠剤状のもの、カプセル状のものどちらでも好適に採用でき、特に限定されない。それで、以下の記載においては、新規混合物の形態を特別に記載していない。
【0047】
又、以下に記載の標的核酸、内部標準遺伝子は核酸増幅方法で、任意の増幅時期(定常期を含む。)まで増幅された増幅物も含まれるものとする。
又、標的核酸は、それに対応する内部標準核酸と一緒に一つの系で同時に増幅されたもの、その増幅反応液、又、その増幅反応液から標的核酸が内部標準核酸と一緒且つ同時に分離されたものも含まれるものとする。この場合、同じプライマーを使用してもよいし、しなくともよい。核酸増幅方法は下記に示した通常のものでる。
【0048】
本発明で使用する核酸プローブ(標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブ)は対応する核酸(標的核酸、内部標準核酸)にハイブリダイズしたとき、光学的キャラクターが変化するものであるが、蛍光強度が減少するもの及び増加するものを例示できる。例えば、蛍光強度が減少するものとして前記したQプローブ(QProbe)、蛍光強度が増加するものとしてFRET現象に関係する2つの色素で標識された核酸プローブ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.pp8790-8794,1988;USA特許No.4,996,143;日本特許公表公報(A)平5-50152号;日本特許公開公報(A)平8-313529号;日本特許公開公報(A)平10-215897号;特願平11-292861号)等を一例として示される。
【0049】
A)第1発明
本発明は、下記のタイプの一種若しくは二種以上の均一溶液系核酸プローブと下記のタイプの一種若しくは二種以上の内部標準核酸を、又は更に内部標準核酸プローブを含むことを特徴とする一種若しくは二種以上の標的核酸を測定するための核酸測定用新規混合物又は新規反応液(以下単に、両者を一緒に新規混合物と総称する。)である。なお、均一溶液系核酸プローブと内部標準核酸の組み合わせ自体だけ、又は更に、内部標準核酸プローブを加えた組み合わせ自体だけの一対若しくは二対以上を含むものも、本発明の新規混合物の範囲内のものである。
【0050】
A)均一溶液系核酸プローブ(以下、標的核酸プローブと略称する。):以下の特性を有する:
a) 一本鎖のオリゴヌクレオチドからなる。その長さは10〜100塩基、好適には15〜60塩基、より好適には20〜40塩基である。デオキ(olygodeoxynucleotide)体でもリボキシ(olygoribonucleotide)体でもよい。それらのキメラ体(chimeric olygonucleotide)でもよい。
b) 一種若しくは二種以上の蛍光色素で、且つ1若しくは2分子以上の蛍光色素で、オリゴヌクレオチドの末端部位及び/又は鎖中部位の塩基部位、糖部位及び/又はリン酸部位で標識されている。
c) 標的核酸及び内部標準核酸の少なくとも何れか一方とハイブリダイズしたとき蛍光キャラクターが変化し得る。
d) 標的核酸及び内部標準核酸の双方にハイブリダイズすることが出来る。
e) 内部標準核酸とハイブリダイズしたときの量と、標的核酸とハイブリダイズしたときの蛍光キャラクター変化量との間に差が生じ得る。
f) 二種以上の蛍光色素で標識した場合には、ハイブリダイズしたときの蛍光キャラクター変化に基づいて、標的核酸及び内部標準核酸を各々識別し得る。
g) 鎖長は、好適には、内部標準核酸と同じか、近似しているものである。
h) 鎖長は、好適には、内部標準核酸プローブと同じか、近似しているものである。
【0051】
B) 内部標準核酸:
a) 一本鎖のオリゴヌクレオチドからなる。その長さは40〜2000塩基、好適には60〜500塩基、より好適には80〜150塩基である。デオキ(olygodeoxynucleotide)体でもリボキシ(olygoribonucleotide)体でもよい。それらのキメラ体(chimeric olygonucleotide)でもよい。
b)前記標的核酸プローブと対応する領域の標的核酸の構造とは、少なくとも一部位に相違がある構造を有し、且つ前記均一系プローブが当該核酸とハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量と、標的核酸と前記標的核酸プローブがハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量との間に差が生じ得る。
【0052】
C) 内部標準核酸プローブ:以下の特性を有する:
前記標的核酸プローブの特質a)〜e)を有し、更に、蛍光標識部位及び標識蛍光色素の蛍光キャラクターは、前記標的核酸プローブのものとは各々異なったものである。
【0053】
本発明において、好ましくは、上記の標的核酸プローブ、内部標準核酸、又は更に内部標準核酸プローブは、次の少なくとも何れかの一つの構造をとり得るもので、以下の関係を有するものを含む新規混合物である。
1)標的核酸プローブ:
(1)少なくとも標的核酸と相補的である。
(2)少なくとも一部若しくは二部領域を除いて、内部標準核酸と相補的である。
(3)一部若しくは二部以上の領域が標的核酸と相補的でない領域を有する。
(4)二種以上の蛍光色素で標識した場合には、標識部位の構造は少なくとも相違する。
(5)前期の構造は、塩基配列である。
【0054】
(6)前記の塩基配列は、塩基数にして、少なくとも2乃至3塩基分以上である。
(7)前記記載の相補している構造を有する部位において蛍光色素で標識されている。
(8)前記記載の相補していない構造を有する部位において蛍光色素で標識されている。
(9)前記記載の標的核酸プローブの蛍光色素標識部位は、グアニン(G)塩基部及び/又はシトシン(C)塩基部か、又は標識部位の塩基近傍(標識塩基から、3’末端又は5’末端方向に1乃至3塩基(標識部位の塩基を1と数える。)の範囲)にG及び/又はCが存在する。
【0055】
(10)前記記載の蛍光色素標識部位が3’又は5’末端部位である。
(11)前記記載の末端部位が末端塩基部、糖部(3’末端の2’又は3’位CのOH基又は5末端の5’位CのOH基(脱リンして形成させることが出来る)の少なくとも何れか一つ。)、及びリン酸部(又はリン酸に替えて、スルホン基又はスルホニル基を含む。)の少なくとも何れか一つ。
【0056】
(12)前記記載の複数種の核酸プローブの場合、各プローブの蛍光色素が異なる。
(13)前記記載の標的核酸プローブが、少なくとも2つの部位(末端部、鎖中部の塩基部、糖部、リン酸部)が、蛍光キャラクターが異なる蛍光色素で標識されている(以下、二重標識核酸プローブと略称する。)。
(13−2)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRET(fluorescence resonance energy transfer)を発生しない色素である。
(13−3)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRETを発生する色素である。
【0057】
(14)前記(12)の少なくとも2つの部位が少なくとも2つの塩基である。二つの塩基間距離は1〜100塩基、好適には10〜60塩基、より好適は20〜40塩基である。
(14−2)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRETを発生しない距離で標識されている。
(14−3)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRETを発生する距離で標識されている。
【0058】
(15)前記(12)の塩基がシトシン(以下、Cと略称する。)である。
(16)前記(12)のCが両末端の塩基である。
(17)前記記載の標的核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に相補的である。
(18)前記記載の二重標識核酸プローブが、一方の部位においては、標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と内部標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量との間に差が発生するが、他方の部位においては、蛍光キャラクター変化量に差が発生しない二重標識核酸プローブである。
(19)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に少なくとも相補的である。
【0059】
(20)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが、標的核酸および内部標準核酸に対して、相補的塩基配列を有するものである。
(21)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの一方の末端塩基に対応する塩基を1とした場合、3’又は5’末端方向に向かって1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸のGの数が、標的核酸>内部標準核酸あるいは標的核酸<内部標準核酸である。
(22)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、3’又は5’末端方向に向かって1〜3塩基の範囲内における標的核酸および内部標準核酸のGの数が、一方の末端領域において標的核酸>内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸<又は=内部標準核酸であり、一方の末端領域において標的核酸<内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸>又は=内部標準核酸である。
【0060】
(23)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおける一方の末端塩基に対応する塩基がグアニン(G)以外であり、他方の末端塩基に対応する塩基がGである。
(24)前記記載の標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGである。
(25)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸の塩基配列が、一方の末端領域において異なるが、他方の末端領域においては同じである。
【0061】
(26)前記記載の核酸プローブ及び二重標識核酸プローブが蛍光消光プローブ(例えば、Qプローブ)である。
(27)前記記載の核酸プローブ及び二重標識核酸プローブが蛍光発光プローブである。
(27)前記記載の二重標識核酸プローブが消光性色素及び蛍光発光性色素で標識されている。
(28)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが標的核酸若しくは内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、標的核酸プローブの蛍光色素標識塩基部から3’又は5’末端方向に向かって、1乃至3塩基(標識塩基を1とする。)以内のGが少なくとも1つ以上するように設計された塩基配列構造を有する。
【0062】
(29)前記記載の蛍光色素標識部位とは反対側の末端部位が標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない(1乃至5塩基分の任意の塩基分、好適には1乃至3塩基分。但しこの計数には末端塩基を含む。)ものである。
(30)前記記載の両末端側の少なくとも一方がデオキシ体又はリボキシ体のオリゴヌクレオチド体でもトリ〜モノヌクレオチド体のいずれでもよい。
(31)前記記載の蛍光色素の標識位置は、末端部の糖部の場合は、5’末端の糖の5’CのOH基(脱リンにより形成される。)、3’末端の糖の3’C又は2’C(この場合はリボキシ体である。)のOH基のいずれか一つ以上である。
(32)標的核酸の二部位にG又はCが少なくとも一塩基が存在した場合に、その領域に対応するように塩基配列が設計された前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおいて、G又はCが存在する(それらの領域に対応する)領域に蛍光標識されたプローブである。
【0063】
本発明の新規混合物は、前記の新規混合物が、更に、標的核酸および内部標準核酸にハイブリダイズしなかった標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの蛍光を減少させ得る蛍光消光物質、又は当該物質で標識されたオリゴヌクレオチド(以下単に消光物質標識プローブと呼ぶ)を、更に1種若しくは二種以上含むものである。
【0064】
前記の消光物質標識プローブが、下記の特性1及び/又は特性2を有するものである新規混合物、
特性:
(1)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸あるいは内部標準核酸との複合体の解離温度よりも、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと消光物質標識プローブとの複合体の解離温度が低い。
(2)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーション及び標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと内部標準核酸との間のハイブリダイゼーションが完了した後に、前記1)の特性故に消光物質標識プローブが均一溶液系プローブ又は二重標識核酸プローブとのハイブリダイズすることが出来る。
【0065】
2)内部標準核酸
次の特性の少なくとも一つを有するものである:
(1)内部標準核酸は、一部若しくは二部位以上の領域において、標的核酸プローブと相補的ない。
(2)内部標準核酸は、一部若しくは二部位の領域において、標的核酸プローブと相補的ない。
(3)内部標準核酸は、少なくとも全ての領域において、標的核酸プローブと相補的である。
(4)内部標準核酸は、標的核酸プローブの蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在するものである。
(5)内部標準核酸は、標的核酸プローブの一若しくは二以上のの蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在しないものである。
(6)内部標準核酸は、標的核酸プローブの一若しくは二以上の蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在しないものである。
(7)内部標準核酸は、標的核酸プローブの二以上の蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域において、一の蛍光標識部位にはG又はCが存在するが、他の蛍光標識部位には存在しないものである。
(8)二重標識核酸プローブに対応する内部標準核酸において、二重標識核酸プローブの蛍光標識部位の少なくともどちらかの一方に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在するものである。
【0066】
3)標的核酸プローブと内部標準核酸の関係
(1)標的核酸プローブが、蛍光色素標識領域において、標的核酸と相補的である場合、標的核酸プローブは内部標準核酸において相補的でない。
(2)標的核酸プローブが、蛍光色素標識領域において、内部標準核酸と相補的である場合、標的核酸と相補的でない。
【0067】
4)内部標準核酸プローブ
前記標的核酸プローブと少なくとも同じ特質を有し、且つ同じ構造をとるが、蛍光色素標識部位は、前記標的プローブの部位とは異なった構造部位である。例えば、前記標的核酸プローブの当該部位が3’末端部位である場合、5’末端部位であり、反対側の場合、対応して更に反対側である。
【0068】
B.第二発明
前記の第一発明の新規混合物を用いて、一種若しくは二種以上の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法である。本発明は何ら限定さるものではない。前記の第一発明の新規混合物を用いて核酸を測定する方法は、全て、本発明の範囲内のものである。
測定対象の核酸は、任意のもので、特に限定されない。例えば、
当該方法は、前記の均一系プローブと内部標準核酸の組み合わせ、更に内部標準核酸プローブとの組み合わせにより種々の形態をとり得る。例えば、
1)遺伝子増幅方法で増幅されたもの(定常期に到る任意の時期(初期、中期及び定常期のいずれか一つ。)まで増幅されたもの。
2)遺伝子増幅方法により増幅された標的核酸および内部標準核酸ものの少なくとも一方のものである。
3)遺伝子増幅方法により、同一のプライマー用いて増幅された、標的核酸と内部標準核酸のものの少なくとも一方のものである
【0069】
当該方法を、前記の均一系プローブと内部標準核酸の組み合わせ、更に内部標準核酸プローブとの組み合わせにより種々の形態をとり得る。例えば、大きく区分すると次のようになる。
なお、本発明の具体的測定方法は、どの場合においても、標的核酸及び/又は内部標準核酸の存在下でハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブの蛍光色素に由来する光学的キャラクター変化を測定するか、又は測定して得られた測定値の比、又は光学的キャラクター変化率の比を計算して、標的核酸の測定値を決めるものである。
【0070】
測定方法A:
一種若しくは二種以上の標的核酸及び/又は内部標準核酸の存在下でハイブリダイゼーション反応を行い、一種若しくは複数種の標的核酸を測定するもの。
測定方法B:
本発明の標的核酸の一つである、標的核酸と本発明の内部標準核酸とを識別できる核酸プローブ(以下、認識可能核酸プローブという。)を用いて、標的核酸を測定するもの。
測定方法C:
前記記載の核酸測定方法において、内部標準核酸と標的核酸のどちらにもハイブリダイズしなかった標的プローブ若しくは内部標準核酸プローブの蛍光を消光させて標的核酸を測定するもの。
測定方法D:前記記載の核酸測定方法において、測定反応系に、特にハイブリダイゼーション反応終了後にエキソヌクレアーゼ(exonuclease)を添加して、測定反応系の光学的キャラクター変化を測定するもの。
【0071】
以下、測定方法Aから説明する。
測定方法A:
更に、前記の均一系プローブと内部標準核酸の組み合わせ、更に内部標準核酸プローブとの組み合わせにより、次のように分けることが出来る。
(1)前記の均一系プローブと内部標準核酸を含む混合物を用いる方法。
測定系の測定方法により二つに分けることが出来る。
(2)前記(1)における均一系プローブが二重標識核酸プローブである方法。
(3)前記(1)に更に内部標準核酸プローブを含む混合物を用いる方法。
【0072】
以下、具体的に上記順序に従って順に、本発明の具体的、標的核酸プローブ、内部標準核酸又は更に内部標準核酸プローブの例を挙げながら説明する。より具体的には実施例に示されている。しかしながら、これらの具体的例により本発明は限定されるものではない。
【0073】
測定方法1−1(実施例5及び図9参照)
好適な例を以下に示す。
本発明方法の最も簡単な標識核酸プローブ及び内部標準核酸を含む反応液を用いて、標的核酸を測定した場合の核酸測定方法を図9に示した。
当該方法においては、標的核酸プローブとして、Qプローブ(以下、「QProbe」という。)使用する。使用する標的核酸プローブは、前記記載の如何なるものでも、好適に使用できるが、最も好適には、蛍光色素標識部位とは反対側の末端部位が標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない(1乃至5塩基分の任意の塩基分、好適には1乃至3塩基分。但しこの計数には末端塩基を含む。)ものである。
【0074】
最も簡単な標的核酸プローブ及び内部標準核酸を、図1を参考に以下に説明する。図において、単一標識核酸プローブをQProbeとしてある。
【0075】
標的核酸プローブ:
また、単一標識核酸プローブは、標的核酸とハイブリダイズした場合、標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{減少(消光)}するように設計する。即ち、当該プローブがハイブリダイズする標的核酸の領域の塩基配列として、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG又はCとし、非蛍光標識末端塩基をG以外の塩基となるようなものを用意する。一方、当該プローブがハイブリダイズする内部標準核酸の領域の塩基配列としては、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG以外の塩基とし、非蛍光標識末端塩基をG又はCとなる配列を選択する。この際、単一標識核酸プローブの塩基配列は両末端塩基を除き、標的核酸および内部標準核酸に相補的なものとするが、単一標識核酸プローブの蛍光修飾末端塩基は、標的核酸とは相補するが、内部標準核酸には相補せず、非蛍光修飾末端塩基は、その逆となる。このことは、図9Aによく示されている。
【0076】
また、単一標識核酸プローブは、内部標準核酸とハイブリダイズした場合、標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{減少(消光)}するように設計することも可能である。即ち、当該プローブがハイブリダイズする内部標準核酸の領域の塩基配列として、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG又はCとし、非蛍光標識末端塩基をG以外の塩基となるようなものを用意する。一方、当該プローブがハイブリダイズする標的核酸の領域の塩基配列としては、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG以外の塩基とし、非蛍光標識末端塩基をG又はCとなる配列を選択する。この際、単一標識核酸プローブの塩基配列は両末端塩基を除き、標的核酸および内部標準核酸に相補的なものとするが、単一標識核酸プローブの蛍光修飾末端塩基は、内部標準核酸とは相補するが、標的核酸に相補せず、非蛍光修飾末端塩基は、その逆となる。このことは、図9Bによく示されている。
【0077】
内部標準核酸
内部標準核酸の塩基配列は、両末端塩基を除き標的核酸と同一にしておくのが好適である。以下に、内部標準核酸の好適な例を示す。
プローブの蛍光色素標識部位塩基に対応する内部標準核酸内の塩基は、色素標識部位の塩基と相補的となるように設計する。即ち、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がCの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はGであり、又、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がGの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はCである。また、蛍光色素非標識部位の塩基に対応する内部標準核酸の塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基に設計する。好適にはアデニン(A)又はチミン(T)にする。
一方、標的核酸は、プローブの蛍光色素非標識部位の塩基がCの場合、対応する塩基はGであり、又、プローブの色素非標識部位の塩基がGの場合、対応する塩基はCとなり、蛍光色素標識部位の塩基に対応する塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基となるような塩基配列領域を選択する。このことは、図9Bによく示されている。
【0078】
これにより、プローブと標的核酸の間の塩基対の数およびGC含量と、プローブと内部標準核酸の間の塩基対の数およびGC含量とは等しくなり、その結果、標的核酸プローブとの複合体に対する熱安定性と、内部標準核酸プローブとの複合体に対する熱安定性とは、ほとんど差がないため、両プローブは、標的核酸と内部標準核酸とを、区別することなく、無差別にハイブリダイズすると考えられる。
【0079】
上記は、単一標識核酸プローブが内部標準核酸にハイブリダイズした際に、蛍光が減少するパターンであるが、その逆(即ち、単一標識核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズした際に、蛍光が減少するパターン)でも本法を実施可能である。即ち、プローブの蛍光色素非標識部位の塩基がCの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はGであり、又、プローブの蛍光色素非標識部位の塩基がGの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はCである。また、蛍光色素標識部位の塩基に対応する内部標準核酸の塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基に設計する。好適にはアデニン(A)又はチミン(T)にする。一方、標的核酸は、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がCの場合、対応する塩基はGであり、又、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がGの場合、対応する塩基はCとなり、蛍光色素非標識部位の塩基に相応する塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基となるような塩基配列領域を選択する。このことは、図8Aによく示されている。
【0080】
更に、図9を用いてより具体的に解説する。図9Aにおいては、QProbeは標的核酸とハイブリダイズした際に、蛍光ラベル(蛍光色素で標識)したCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光(蛍光強度が減少)(以下同じ意味である。)する。内部標準遺伝子の配列は、QProbeの5’末端のCと相補的な位置にアデニン(A)が、QProbeの3’末端のCと相補的な位置にGが来るようにしておく。このため、QProbeは、内部標準遺伝子とハイブリダイズしても、蛍光標識した5’末端と相補的な位置にGが存在しないため、著しく蛍光消光することはない。しかし、標的核酸とハイブリダイズした場合は、Gがくるので、著しく蛍光消光する。このため、QProbeは、その消光率の違いから標的遺伝子を特異的に検出することが可能である。
【0081】
図9Bにおける蛍光変化は、図9Aのそれの逆となる。即ち、QProbeは、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際には、5’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光するが、標的遺伝子では、5’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にAが来るため著しく蛍光消光は見られない。よって、QProbeは、内部標準遺伝子由来の増幅産物を特異的に検出することが可能となる。
【0082】
測定方法1−2(図2参照)
前記の記載の内部標準核酸と標的核酸プローブを含む新規混合物の内、下記のタイプの新規混合物を用いた、Tm値測定に基づく核酸測定方法である。具体的には図2に示してある。
a)新規混合物
1)下記のタイプの一種若しくは二種以上の標的核酸プローブと下記のタイプの一種若しくは二種以上の内部標準核酸との対を1種若しくは二種以上の対を含むものである。
【0083】
標的核酸プローブ:標的核酸及び内部標準核酸とハイブリダイズして、蛍光キャラクターが変化するものであれば、前記記載の如何なる標的核酸プローブでもよい。特に、蛍光標識部位以外の一部位若しくは二部位以上において内部標準核酸と相補しない部位(一塩基部分を含む。)。
内部標準核酸:特に蛍光標識部位以外の一部位若しくは二部位以上において、標的核酸と相補しない部位(一塩基部分を含む。)を有するものが好適である。若しくは標的核酸プローブが標的核酸とハイブリダイズする領域に対応する領域において、蛍光標識部位以外の一部位若しくは二部位以上が、塩基配列構造(一塩基部分を含む。)に相違するものがよい。
【0084】
本発明において、下記の場合好適である。
1) 当該核酸プローブの蛍光色素標識部位が塩基C又はG若しくはそれらを含む(標識部位から1乃至3塩基分内にて)部位である。
2) 当該核酸プローブがQプローブである。
3)前記1)の標識部位が3又は5末端である。
【0085】
b)核酸の新規測定方法
1) 当該新規混合物を用いて、Tm値測定に基づく標的核酸を測定する方法であれば、どのような方法でもよいのであるが、好適には下記2)の方法である。
2)前記に記載の新規混合物に、1種若しくは複数種の標的核酸を加え、ハイブリダイゼーション反応を行った後、反応液の温度を徐々に上げながら、反応液の蛍光強度を測定した後、下記の手順により、標的核酸を測定する。
【0086】
手順:
(1)測定された光学的キャラクターの変化のカーブを描く。
(2)当該カーブを微分する。
(3)得られた各ピークの高さを測定する。又は各ピークを積分してピークの面積を求める。
(4)内部標準核酸のピークの高さ又はピーク面積に対する標的核酸のピークの高さ又はピーク面積の比(標的核酸の高さ/内部標準核酸の高さ、又は標的核酸の面積/内部標準核酸の面積)を求める。
(5)当該比と内部標準核酸の濃度を乗ずる。
【0087】
なお、本発明は前記に記載の核酸プローブ及び内部標準核酸を含む核酸測定キット類でもある。
図2を参照しながら説明する。
QProbeは、標的遺伝子と解離した際には、蛍光色素とグアニン間の相互作用は解消され、再び蛍光を発するようになる。よって、温度変化させながら、蛍光を連続的にモニタリングすることで、解離曲線を迅速・簡便に得ることが出来る。解離曲線を微分することで解離ピークを得ることが出来るが、解離ピークの面積比(又は、解離ピークの高さ比)は、遺伝子(標的核酸)構成(存在)比に依存する。本法では、この解離ピークから遺伝子構成比を求める。
【0088】
本法も、内部標準遺伝子を添加する手法であり、用いる内部標準遺伝子は、QProbeがハイブリダイズする部位に変異を入れたものを使用する。よって、標的遺伝子との間にミスマッチが存在しないQProbeを使用した場合は、内部標準遺伝子にはミスマッチが存在する事となる。この場合、内部標準遺伝子とQProbeとの解離は、標的遺伝子とQProbeとの解離よりも、低い温度で起こる。このため、標的遺伝子、内部標準遺伝子が混在した場合、その解離曲線は、2つの解離曲線が混合された状態のものが得られ、内部標準遺伝子とQProbeとのTm値と、標的遺伝子とQProbeとのTm値とに十分な差があれば、その解離ピークを完全に2つに分離することが出来る(図2参照)。この解離ピークの高さの比は、遺伝子の構成比に高い相関があるため、解離ピークの高さの比から、遺伝子の構成比を求めることが出来る。よって、標的遺伝子の定量が可能となる。
【0089】
本法において、内部標準遺伝子に好適とされる要件としては、標的遺伝子の解離ピークと、内部標準遺伝子の解離ピークとが、遺伝子の比を求めることができるよう、十分に分離する、という点を挙げることができる。よって、これを満たす内部標準遺伝子であれば、どのようなものを使用しても本法の適用性は損なわれない。
【0090】
本法も、下記の2つのQProbe(標的核酸プローブ及び内部標準核酸プローブ)を用いた遺伝子定量法と同様、遺伝子構成比を求め標的遺伝子量を定量する手法であるため、プローブ濃度が標的遺伝子と内部標準遺伝子を合わせた濃度より低い場合であっても、内部標準遺伝子の濃度が構成比を求めるのに適正な濃度であれば、標的遺伝子濃度を正確に定量することが出来る。このため、本法も、1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有しており、既存法の問題点を解決することが可能である。
【0091】
測定方法2
前記記載の二重標識核酸プローブを用いる方法である。図3、11、12、13、14、及び15を参照して説明する。
【0092】
前述の内部標準遺伝子を用いた新規遺伝子定量手法に関する問題点
i)これまで、グアニンと相互作用して著しく蛍光消光し、励起波長、蛍光波長などの蛍光特性の異なる蛍光色素は、2種類確認されているのみあり、QProbeを用いて、同一溶液系内に存在する2種類以上の遺伝子を、同時に検出することは不可能であった。このため、2種以上の遺伝子を検出したい場合は、サンプル数を増加させるしか手段がなく、結果的にQProbeを用いた遺伝子定量手法の高コスト化につながっている。
【0093】
ii)前述した新規遺伝子定量手法である2つのQProbeを用いた遺伝子定量法では、均一溶液系プローブを2種使用する。各QProbeは、標的遺伝子と内部標準遺伝子のうち、どちらか一方とハイブリダイズした際に、蛍光の消光が発生する。また、本定量法で用いるQProbeは、標的遺伝子と内部標準遺伝子を区別しないでハイブリダイズし、例えば、標的遺伝子あるいは内部標準遺伝子にハイブリダイズしたプローブの半量は、蛍光消光しないこととなる。その結果、得られる蛍光消光率があまり大きくないため、特に遺伝子量が少ない場合は、分析誤差が大きくなるという問題点があった。
【0094】
前述の課題は、前記の本発明により達成される。即ち、QProbeの各末端に、各1種類の蛍光色素を標識することで解決可能であると考えられる(図3参照)。このような異なる色素で2重標識したQProbe(Switching probeと呼ぶ)を用いることで、標的遺伝子、内部標準遺伝子のどちらにハイブリダイズした場合も、蛍光消光が発生することとなる。つまり、ハイブリダイズしたプローブで、蛍光消光しないプローブは存在しないこととなる。このため、2種のQProbeを用いた場合と比較して、理論上2倍蛍光消光率が増加し、その結果、検出感度を2倍向上させることが可能となる(図3、11、13参照)
【0095】
当該方法においても、前記に記載の二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸を含む新規混合物を使用する方法であればよく、特に制限されない。又は前記に記載の二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸を用いる方法であればよい。
しかしながら、下記のタイプの二重標識核酸プローブと内部標準核酸を含む新規混合物、又は二重標識核酸プローブと内部標準核酸を使用するのが好適である。
【0096】
二重標識核酸プローブ:前記記載の二重標識核酸プローブは特に制限なく好適に何れも使用出来る。標識された二種の蛍光色素の光学的キャラクター変化が、一例として次の場合に該当するのが好適である。
1)当該核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたとき、どちらか一方が消光し、他方が発光する。この場合において、内部標準核酸とハイブリダイズしたとき、標的核酸の場合において消光した方が発光し、標的核酸の場合において発光した方が消光するタイプ。図3の右端図及び図13参照。このような場合の当該プローブの塩基配列のタイプは、両色素の標識部位の塩基を双方とも任意のものでよいが、標的核酸側は、当該プローブの一方の色素の標識部位に対応する領域部位にGが含まれるように、他方の色素についてはGが含まれないように、即ち、A及び/又はTだけが含まれるように、塩基配列を設計するのが好適である。内部標準核酸側は、標的核酸側とは逆の塩基設計にする。
【0097】
2)当該核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたとき、双方の色素が発光若しくは消光する。この場合において、内部標準核酸とハイブリダイズしたとき、どちらか一方が発光し、他方が消光するタイプ。又、反対に当該核酸プローブが内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、双方の色素が発光若しくは消光する。この場合において、標的核酸とハイブリダイズしたとき、どちらか一方が発光し、他方が消光するタイプ。図13参照。
【0098】
このような場合の当該プローブの塩基配列のタイプは、一つのタイプとして、当該プローブの標識色素の標識部位の塩基が任意でよいが、標的核酸側は、当該プローブの双方の色素の標識部位に対応する領域部位にGが含まれるか、又はGが含まれないようにする。内部標準核酸側はどちらか一方の色素側にGが含まれるようにする。
もう一つのタイプとして、当該プローブの標識色素の標識部位の塩基が任意でよいが、標的核酸側は、当該プローブの双方の色素の標識部位に対応する領域部位のどちらか一方の色素側にGが含まれるようにし、内部標準核酸側は、当該プローブの双方の色素側にGが含まれるか、又はGが含まれないようにする。図13参照。
本発明において、このようなプローブを用いるのがより好適である。
【0099】
内部標準核酸:上記の二重標識核酸プローブの記載箇所参照。
なお、当該発明においても、二重標識核酸プローブがQプローブである場合が好適である。又、上記の核酸プローブの具体的形態は、上記に特徴づけた点を除いて、好適には第1発明の場合と同様である。
【0100】
具体的測定方法は以下の通りである。
この例は好適な方法であって、この例によって本発明は限定されない。
前記に記載の新規混合物に1種若しくは複数種の標的核酸を加えてハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の双方の色素に由来する光学的キャラクター変化を測定し、得られた測定値の比、又は測定値から光学的キャラクター変化率(例:蛍光消光率)を計算して、標的核酸の量を決めることが出来る。それらの具体的方法は、実施例6及び7に示した。
【0101】
測定方法3
前記(1)に更に内部標準核酸プローブを含む混合物を用いる方法である。図1参照。
当該新規測定方法は、前記に記載の新規混合物が内部標準核酸プローブを含むものを用いて標的核酸を測定する方法であれば、どのような方法でもよいのであるが、好適には以下の方法である。
【0102】
当該新規混合物に1種若しくは複数種の標的核酸を加えてハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の標的核酸プローブ及び内部核酸プローブの蛍光色素に由来する光学的キャラクター変化を各々測定し、各蛍光色素についての得られた測定値の比又は光学的キャラクター変化率(減少率若しくは発光率)の比から1種若しくは複数種の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法である。
【0103】
本発明方法の最も簡単な標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブ及び内部標準核酸を含む反応液を用いて、標的核酸を測定した場合の核酸測定方法を図1に示した。しかしながら、本発明は、図1の例示に限定されない。
図1においては、簡単化のために、標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブとして、QProbeを使用している。
最も簡単な標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブ及び内部標準核酸を用いて、図1を参考にしながら以下に説明する。図において、標的核酸プローブをQProbe A、内部標準核酸プローブをQProbe Bとしてある。
【0104】
標的核酸プローブ:
標的遺伝子(以下、標的核酸という。)と内部標準遺伝子(以下、内部標準核酸という。)とを区別しないでハイブリダイズするが、標識核酸とハイブリダイズした場合だけ標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{例えば、図の場合は減少(消光)}するように設計する。この場合、標識部位とは反対側の末端部領域は、標的核酸に相補的でないように設計するのが好適である。相補しない塩基数は、内部標準核酸プローブの蛍光標識部位が標的核酸に相補しない部位の塩基数と同じにするのが、標的核酸プローブと標的核酸との複合体に対する熱安定性と、内部標準核酸プローブと内部標準核酸との複合体に対する熱安定性を同じにするので好適である。
即ち、蛍光色素標識末端部位は、標的核酸の対応する領域に相補的にし、内部標準核酸の領域には相補的でなくする。一方、蛍光標識部位とは反対側の末端部位は、標的核酸とは相補的でなくし、内部標準核酸とは相補的にする。
【0105】
具体的には、当該プローブの蛍光標識部位は、G又はCを含むかG又はC自身の部位にする。標的核酸の領域の塩基配列が、対応する領域にC又はGとを含むかC又はG自身の部位になるように設計する。この設計は、標識塩基に対応する塩基が必ずしもC又はGでなくともよく、対応する塩基を含む領域(5’末端若しくは3’末端方向に1乃至3塩基分の範囲内。但し当該対応する塩基を1と計数する。)内にC又はGが少なくとも一塩基以上含まれておればよい。
一方、他端部領域の塩基配列は、標的核酸には相補しないが内部標準核酸には相補するように設計する。内部標準核酸のこの領域は、内部標準核酸プローブの蛍光標識部位が対応するように設計されるので、少なくとも一個以上のG又はCを含む。従って、標的核酸プローブの他末端部の領域は少なくとも一個以上のC又はGを含むかそれら自身の部位である。その対応は、内部標準核酸がGを含むかG自身の部位のとき、標的核酸のものはCを含むか又はC自身の部位である。反対に内部標準核酸がCを含むかC自身の部位のとき、標的核酸のものはGを含むか又はG自身の部位である。このことは、図1によく示されている。
【0106】
内部標準核酸プローブ:
塩基配列は標的核酸プローブと同じにする。但し、図1に示されているように、蛍光色素標識位置は標的核酸プローブとは反対側である。又、蛍光色素を異なったものにする。標的核酸と内部標準核酸とを区別しないでハイブリダイズするが、内部標準核酸とハイブリダイズした場合だけ標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{例えば、図の場合は減少(消光)}するように設計する。この場合、標識部位とは反対側の末端部領域は、内部標準核酸に相補的でないように設計するのが好適である。相補しない塩基数は、上記の標的核酸プローブの場合と同じようにする。
【0107】
内部標準核酸
標的核酸プローブと内部標準核酸プローブとを区別しないでハイブリダイズするが、内部標準核酸プローブとハイブリダイズした場合だけ標識蛍光色素の光学的キャラクターが変化するように設計する。これを満たす内部標準核酸であれば、どのような構造のものでもよく、好適に使用できる。例えば、内部標準核酸の塩基配列は、両末端塩基を除き標的核酸と同一にしておくのが好適である。
【0108】
内部標準核酸プローブの蛍光色素標識部位の塩基に対応する塩基は、内部標準核酸プローブの塩基と相補する塩基に設計する。即ち、内部標準核酸プローブの領域がCを含むかC自身の部位の場合、内部標準核酸の塩基はGを含むかG自身の部位であり、又、当該プローブの領域がGを含むかG自身の部位の場合、内部標準核酸のものはCを含むかC自身の部位である。
蛍光色素非標識部位の塩基に相応する領域は、プローブの塩基と相補しない塩基に設計する。即ち、内部標準核酸プローブの領域がGを含むかG自身の部位の場合、内部標準核酸の当該領域はCを含まず、G、A、Tだけを含むかそれら自身の部位にする。好適にはアデニン(A)及び/又はチミン(T)だけを含むかそれら自身の部位にする。反対に内部標準核酸プローブの領域がCを含むかC自身の部位の場合、内部標準核酸の当該領域はGを含まず、C、A、Tだけを含むかそれら自身の部位にする。好適にはアデニン(A)及び/又はチミン(T)だけを含むかそれら自身の部位にする。
【0109】
このようにすることにより、標的核酸プローブと標的核酸の複合体に対する熱安定性と、内部標準核酸プローブと内部標準核酸の複合体に対する熱安定性とは、ほとんど差がないため、両プローブは、標的核酸と内部標準核酸とを、区別することなく、無差別にハイブリダイズすると考えられる。
【0110】
以下、図1を用いてより具体的に解説する。QProbe Aは標的核酸とハイブリダイズした際に、蛍光ラベル(蛍光色素で標識)したCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光(蛍光強度が減少)(以下同じ意味である。)する。内部標準核酸の配列は、QProbe Aの5’末端のCと相補的な位置にアデニン(A)が、QProbe Aの3’末端のCと相補的な位置にGが来るようにしておく。このため、QProbe Aは、内部標準核酸とハイブリダイズしても、蛍光標識した5’末端と相補的な位置にGが存在しないため、著しく蛍光消光することはない。しかし、標的核酸とハイブリダイズした場合は、Gがくるので、著しく蛍光消光する。このため、QProbe Aは、その消光率の違いから標的核酸を特異的に検出することが可能である。
【0111】
また、QProbe Bについては、内部標準核酸とハイブリダイズした際には、3’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光するが、標的遺伝子では、3’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にAが来るため著しく蛍光消光は見られない。よって、QProbe Bは、QProbe Aとは逆に、内部標準核酸由来のPCR増幅産物を特異的に検出することが可能となる。
【0112】
標的核酸の測定方法
本発明の新規混合物は前記のような構成物を含むので、当該反応液に標的核酸を加え、ハイブリダイゼーション反応を行い、標的核酸プローブに由来する光学的キャラクター変化及び内部標準核酸プローブに由来する光学的キャラクター変化を測定して、得られた測定値の比を計算し、当該計算値に内部標準核酸の濃度を乗ずることにより、標的核酸の濃度を決めることが出来る。
【0113】
即ち、前記の各QProbeのハイブリダイゼーションは、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを区別することなく、無差別に起こる。よって、各プローブがどちらの遺伝子にハイブリダイズするかは、各遺伝子の存在比に完全に依存している。このため、QProbe Aに由来する光学的キャラクター変化を測定して得られた測定値とQProbe Bに由来する光学的キャラクター変化を測定して得られた測定値の比は、標的核酸と内部標準核酸の構成比でもある。
【0114】
本発明の核酸の新規測定方法は、前述したように核酸の存在比(構成比)を求める手法であるため、標的核酸と内部標準核酸を合わせた濃度が、標的核酸プローブ濃度と内部標準核酸プローブ濃度を合わせた濃度より高い場合(核酸濃度がプローブ濃度より高い場合)であっても、内部標準核酸の濃度が当該構成比を求めるのに適正な濃度であれば(内部標準核酸の濃度が、標的核酸の濃度に十分近ければ)、標的核酸と内部標準核酸の構成比を求めることが可能であり、その結果として、標的核酸の濃度を正確に定量することが出来る。このため本発明方法は、1)標的遺伝子を含む溶液を希釈する必要性がない、2)プローブ添加濃度は、蛍光検出に使用する装置が、検出可能な範囲内において、最も低い濃度に設定すれば良く、その濃度を変化させる必要性がない。つまり、本法は、1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有しており、前述の既存法の問題点を解決することが可能である。
【0115】
本発明においては、以下のプローブ及びキット類も本発明の中に入る。
1) 前記記載の標的プローブ及び内部標準プローブからなる一対若しくは複数対の核酸プローブ。
2) 前記記載の標的プローブ及び内部標準核酸プローブからなる一対若しくは複数対の核酸プローブと前記1)に記載の、当該核酸プローブ対と対応する1種若しくは複数種の内部標準核酸とを含む核酸測定用キット類。
【0116】
測定方法B:
測定方法に以下の二つある。
当該方法は、ハイブリダイゼーションは、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを区別することなく、無差別に起こるに基づく。よって、各プローブがどちらの遺伝子にハイブリダイズするかは、各遺伝子の存在比に完全に依存している。このため、例えば、前記のQProbe AとQProbe Bの結合比から、遺伝子構成比を求めることが可能となると考えられる。蛍光消光は、QProbe Aでは標的遺伝子に結合した際に、QProbe Bでは内部標準遺伝子に結合した際に、著しく発生するが、QProbe AとQProbe Bの蛍光消光の比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との構成比と正比例の関係にあるため、この蛍光消光率の比から、遺伝子構成比を定量的に求めることが可能となる。
【0117】
以下説明する。
測定方法1
本発明の新規混合物が、標的核酸と内部標準核酸とを認識可能な、下記タイプの標的核酸プローブ、二重標識核酸プローブ、及び多重標識核酸プローブの少なくとも何れか一つ及び既知濃度の本発明の内部標準核酸を含むものである場合の本発明の核酸の新規測定方法。以下、当該プローブを認識可能核酸プローブという。この方法における新規混合物は、下記タイプの核酸プローブを一種若しくは二種以上を含むものである。そして、二種以上の核酸プローブの場合、前記したように、各プローブに標識された蛍光色素の種類は異なるもの、特に光学的キャラクターの種類が異なる蛍光色素である。
【0118】
新規混合物
下記タイプの核酸プローブを一種若しくは二種以上及び一種若しくは二種以上の内部標準核酸を含む。
標的核酸プローブ
本発明の標的核酸プローブが、蛍光色素標識部位の少なくとも一部位若しくは二部位以上において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
【0119】
二重標識核酸プローブ
本発明の二重標識核酸プローブが、二種類の蛍光色素のどちらか一方のものの標識部位において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
本発明の方法においては、標的核酸と内部標準核酸の存在比を測定して、求められた当該比率から、標的核酸の濃度若しくは量を正確に決めることが出来るものである。
【0120】
多重標識核酸プローブ
上記二重標識核酸プローブを応用したものである。1本鎖のオリゴヌクレオチドの部位1〜部位n(末端部、鎖中部の塩基部、糖部、リン酸部を含む。nは10、好適には5、より好適には3)のC若しくはG部位(好適にはC部位)を、標的核酸とハイブリダイズしたときに光学的キャラクターが変化する蛍光色素1〜蛍光色素n(nは10、好適には5、より好適には3)で標識したものである。蛍光色素1〜蛍光色素nは各々異なった種類の蛍光色素である。更に部位1〜部位nは相互に異なった位置にある。標識部位の構造及び対応する標的核酸の構造は前記と同様である。
なお、前記の核酸プローブの好適な例は、Qプローブである。また、蛍光標識部位は、C自身の部位かそれを含む領域である。
【0121】
内部標準核酸
二重標識核酸プローブを使用した測定方法に用いた方法と同様である。そして、前記したように、多重標識核酸プローブの各蛍光色素標識部位に対応する領域部位の構造は標的核酸部位の構造とは異なったものにする。異なった構造とは、相補する構造か、しない構造かの相違である。これらの構造は、前記各方法の場合に準ずる。標的核酸が二種以上の場合は、それに対応した内部標準核酸となるので、上記の本発明の新規混合物は、二種以上の内部標準核酸を含むことになる。
【0122】
測定方法
当該方法の新規混合物に、一種若しくは二種以上の標的核酸を加えて、ハイブリダイゼーション反応を行い、一種若しくは二種以上の測定波長で反応系の各標的核酸プローブの各蛍光色素の、標的核酸及び内部標準核酸に由来する蛍光キャラクター変化若しくは変化率(例:蛍光消光率)を測定する。標的核酸からの各測定値と内部標準核酸からの測定値の比を求める。内部標準核酸の濃度が既知であるので、一種若しくは二種以上の標的核酸濃度若しくは量を測定することができる。
【0123】
測定方法2
前記に記載のTm値測定に基づく方法である。
新規混合物は前記と同様でよい。
【0124】
測定方法:
新規混合物に、一種若しくは二種以上の標的核酸を加え、ハイブリダイゼーション反応を行った後、反応液の温度を徐々に上げながら、反応液の蛍光強度を測定した後、下記の手順により、標的核酸の存在比を測定する。
【0125】
手順:(各プローブ毎にこの操作を行う。)
(1)測定された光学的キャラクターの変化のカーブを描く。
(2)当該カーブを微分する。
(3)得られた各ピークの高さを測定する。又は各ピークを積分してピークの面積を求める。
(4)各ピークの中から一つの基準ピーク(基準標的核酸のピーク)を選び、基準ピークの高さ又はピーク面積に対する他の標的核酸のピークの高さ又はピーク面積の比(他の標的核酸のピーク高さ/基準核酸ピークの高さ、又は他の標的核酸のピーク面積/基準核酸ピークの面積)を求める。
(5)基準核酸と比較の存在比を求める。
(6)内部標準核酸の濃度は既知であるので、存在比から標的核酸の濃度若しくは量が決めることが出来る。
【0126】
上記の方法を、例えばQProbeで説明する。QProbeは、標的遺伝子と解離した際には、蛍光色素とグアニン間の相互作用は解消され、再び蛍光を発するようになる。よって、温度変化させながら、蛍光を連続的にモニタリングすることで、解離曲線を迅速・簡便に得ることが出来る。解離曲線を微分することで解離ピークを得ることが出来るが、解離ピークの面積比(又は、解離ピークの高さ比)は、遺伝子構成比に依存する。本法では、この解離ピークから遺伝子構成比を求める。
【0127】
本法は、前述したように遺伝子存在比を求める手法であるため、標的遺伝子と内部標準遺伝子を合わせた濃度が、QProbe AとQProbe Bを合わせた濃度より高い場合(遺伝子よりプローブ濃度が高い場合)であっても、内部標準遺伝子の濃度が構成比を求めるのに適正な濃度であれば(内部標準遺伝子の濃度が、標的遺伝子濃度に十分近ければ)、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比を求めることが可能であり、その結果、標的遺伝子濃度を正確に定量することが出来る。
【0128】
このため本法は、1)標的遺伝子を含む溶液を希釈する必要性がない、2)プローブ添加濃度は、蛍光検出に使用する装置が、検出可能な範囲内において、最も低い濃度に設定すれば良く、その濃度を変化させる必要性がない。つまり、本法は、1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有しており、前述の既存法の問題点を解決することが可能である。
【0129】
測定方法C:
前記記載の核酸測定方法において、内部標準核酸と標的核酸のどちらにもハイブリダイズしなかった標的プローブ若しくは内部標準核酸プローブの蛍光を消光させて標的核酸を測定するもの。この際の下記例示の消光物質又は消光プローブを用いて目的を達成するものである。下記のものは単なる例示であり、これらの例示により本発明は限定されない。実施例9参照。
消光物質:前記のクエンチャー物質を例示できる。例示物質の少なくとも何れか一つを使用すればよい。好適には、Dabcyl、BH、Eclipse、Elle Quencherなど例示できる。
消光プローブ:オリゴヌクレオチド(デオキシ体、リボ体のどちらでもよい。)の一部領域に上記の消光物質のいずれか一つを標識したものが好適に使用できる。具体的には、実施例9参照。標識部位又は位置は、標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしていない標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブの光学的キャラクター(例、発光若しくは消光)を変化させるものであればよく、特に制限されない。
【0130】
測定方法D:
本発明の測定反応系に、特にハイブダイゼーション反応が平衡状態に達したときにexonucleaseを添加して、測定反応系の光学的キャラクター変化を、当該酵素の添加前後で測定する方法である。実施例10を参照。測定反応系においては、本発明の核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び/又は」内部標準核酸とハイブリダイズして、標識されている蛍光色素の光学的キャラクターが変化(例、発光、消光など)している。この状態の核酸プローブに、当該酵素が作用して、蛍光色素標識されたものモノヌクレオチドを、核酸プローブから遊離させることが出来る。遊離した蛍光色素標識モノヌクレオチドは、核酸プローブがハイブリダイズした状態の光学的キャラクター的特徴を最早示さない。その変化を測定するものである。具体的測定方法は実施例に記載されている。
但し、好適には次の条件においてである。
条件:標識核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び内部標準核酸の少なくとも一方に対して、蛍光標識部位領域(領域:1乃至3塩基分、好適には1塩基分)において、相補的でない。
【0131】
本発明の新規混合物としては、当該酵素を含むものであるが、その形態は、標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブと内部標準核酸が混合した状態ではなく、当該酵素がセットとして、新規混合物に付帯する形態が好適な形態である。
使用できるExonucleaseの例:(但し、本発明は、当該例示により特に限定されるものではない。)
1) 3’→5'exonuclease
Exonuclease I(アマシャムバイオサインス)、Vent DNA polymerase(New England Biolabs)、T7 DNA polymerase(New England Biolabs)、Klenow Fragment DNA polymerase(New England Biolabs)、Phi29 DNA polymerase(New England Biolabs)、Exonuclease III(Fermendas)。
2) 5'→3’exonuclease
Taq DNA polymerase、Exonuclease VII(アマシャムバイオサインス)
3)その他の使用可能な酵素
S1 Nuclease(アマシャムバイオサインス)、Mung Bean Nuclease(アマシャムバイオサインス)。
【0132】
第3発明
前記発明と核酸増幅方法を合わせた発明である。核酸増幅方法で得られた増幅産物を前記核酸測定方法で測定する方法である。遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できる。特に、前記発明の1種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、核酸の前記測定方法で測定する方法である。以下の発明A、発明B、発明C及び発明Dからなる。
【0133】
1.発明A
1)本発明の1種若しくは二種以上の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは二種以上の標的核酸を定常期に到るまで(初期、中期、定常期を含む。)増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、従来公知の標的核酸を測定する方法である。
【0134】
2)前記1)に記載の増幅産物を試料として、本発明の新規核酸測定方法で測定する方法である。
【0135】
3)本発明の内部標準核酸を含む反応系で、標的核酸を遺伝子増幅方法により増幅し、遺伝子増幅方法により1種若しくは二種以上の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
【0136】
4)標的核酸のプライマーと内部標準核酸のプライマーとして同じもの用いた核酸増幅方法である前記1)〜3)の何れか一項に記載の1種若しくは二種以上の増幅前の核酸を測定する方法である。
5)プライマーがQプローブである前記3)又は4)に記載の1種若しくは二種以上の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
6)プライマーが標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、光学的変化が増加するものであるである前記3)〜5)何れか一項に記載の1種若しくは二種以上の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
【0137】
本発明においては、遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できるのであるが、特に従来不可能とされていた遺伝子増幅産物、即ち定常期まで(定常期を含む。)増幅された遺伝子増幅産物について好適に適用される。
【0138】
発明B
1)前記に記載のTm値測定に基づく1種若しくは二種以上の標的核酸を測定するための1種若しくは二種以上の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、従来公知の標的核酸測定方法で標的核酸を測定する方法である。
【0139】
2)前記記載の試料を用いて、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を、本発明のTm値測定に基づく、1種若しくは二種以上の標的核酸を測定する方法で
3)標的核酸測定方法が、1種若しくは二種以上の増幅前の核酸遺伝子増幅方法である前記2)に記載の標的核酸を測定する測定方法である。
4)標的核酸測定方法が、標的核酸のプライマーと内部標準核酸のプライマーとして同じもの用いた核酸増幅方法である前記3)に記載の核酸を測定する方法である。
5)プライマーがQプローブである前記4)に記載の標的核酸を測定する方法である。
6)プライマーが標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、光学的変化が増加するものである前記4)に記載の標的核酸を測定する方法である。
【0140】
本発明においては、遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できるのであるが、特に従来不可能とされていた遺伝子増幅産物、即ち定常期まで(定常期を含む。)増幅された遺伝子増幅産物について好適に適用される。
【0141】
発明C
1)第2発明の発明2に記載の1種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする標的核酸の新規測定方法である、又、
【0142】
2)第2発明の発明2に記載の1種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、第2発明の発明2の前記1)〜3)の何れか一項に記載の新規混合物を用いて、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする標的核酸の新規測定方法である、又、
【0143】
3)第2発明の発明2に記載の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により標的核酸を定常期に到るまで(定常期を含む。)増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、第2発明の発明2の1)〜3)の何れか一項に記載の新規混合物を用いて、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法である、又、
【0144】
4)標的核酸のプライマーと内部標準核酸のプライマーとして同じもの用いた核酸増幅方法である前記1)〜3)の何れか一項に記載の1種若しくは複数種の増幅前の核酸を測定する方法である、又、
5)プライマーがQプローブである前記4)に記載の1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定する方法である、又、
6)プライマーが標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、光学的変化が増加するものである前記5)に記載の1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
【0145】
本発明においては、遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できるのであるが、特に従来不可能とされていた遺伝子増幅産物について適用される。
【0146】
測定方法D END POINT 測定方法
遺伝子増幅法を介した遺伝子定量法の問題点
遺伝子増幅法を介した遺伝子定量法は、標的遺伝子を増幅し、定量を行う手法であるため、非常に感度が高く、僅かにしか存在しない標的遺伝子であっても定量する事も可能であるため、現在最も汎用されている遺伝子定量手法の1つとなっている。遺伝子増幅法を介した遺伝子定量法は、各種知られているが、以下に示すような問題点が存在している。以下、その内容を詳細に示す。
【0147】
(1)既存法の問題点
i)既存法の問題点1:リアルタイム定量的PCR法
現在最も汎用されている遺伝子増幅法であるPCR法では、増幅産物がある程度蓄積するまで、指数関数的に反応が進行することが知られている。しかしながら、増幅産物が増加するにつれて、増幅効率は低下し、最終的には増幅産物量は一定の値をとる(プラトーに達する)。このことは、増幅反応を十分に実施した場合、初期の遺伝子の量に関わらず、得られる増幅産物量は変わらないということを示している。以上より、増幅反応完了後の(エンドポイントでの)増幅産物量から、初期の遺伝子量を定量する事はできない。本特徴は、PCR法に限らず、現在報告されている遺伝子増幅法に共通の特徴である。
【0148】
しかしながら、一般的な遺伝子増幅法における初期反応段階の増幅効率は、初期遺伝子量に関わらず一定である。このため、増幅産物がある一定量(閾値)に達するのに必要なサイクル数は、指数関数的に増幅が発生する領域であれば、初期遺伝子の量に依存する。例えば、数段階の希釈系列を設けた既知濃度の標的遺伝子をPCR増幅した場合、増幅産物量が閾値に達するサイクル数(CT値)は、初期の遺伝子量と、逆相関の関係にある。
【0149】
これは前述したように、初期反応段階の増幅効率が初期遺伝子量に関わらず一定であるためである。この関係式は、未知試料中の標的遺伝子を定量するための検量線として使用することができる。通常の場合、未知試料についても標的遺伝子の増幅効率は、一定であると考えられるため、同様にCT値を求め、上記の検量線にあてはめることで、初期の遺伝子量を定量する事が可能となる。これらのことから、増幅産物をリアルタイムにモニタリングする事ができれば、初期遺伝子量の定量が可能となるといえる。
【0150】
本原理に基づく遺伝子定量手法が、リアルタイム定量的PCR法である。本法は、(1)ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速、(2)反応チューブを解放する必要性が無く、増幅産物によるコンタミの心配がないといった、といった優れた特長を有する。しかしながら、その一方で(1)産物をリアルタイムにニタリングする必要性があるため、装置が大がかり且つ高価となる、(2)検量線を作成した際の増幅効率と、未知試料中の標的遺伝子の増幅効率が全く同じであるという仮定に基づく手法であるが、未知試料中に遺伝子増幅の阻害物質が存在する場合、この仮定が成り立たなくなる。即ち、常に正しい定量値が得られているとは言い難い、(3)本手法では、増幅産物をリアルタイムモニタリングする必要性があるため、遺伝子増幅の間、1台の測定装置が占有されることとなる。このため、サンプル処理能力には自ずと限界がある、といった問題点がある。
【0151】
ii)既存法の問題点2:競合的PCR法
目的の遺伝子を高感度に定量するための手法として、競合的PCR法(図4参照)も一般的に知られている。本法は、以下の工程より実施される。まず、標的遺伝子を増幅するためのプライマーと同じプライマーで増幅される既知濃度の遺伝子(内部標準遺伝子と呼ぶ)を反応液に添加しておき、これを標的遺伝子と同時に増幅させる。次に、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物とを、増幅終了後に、電気泳動などの分離手法を用いて分離・定量し、増幅産物の比(内部標準遺伝子由来の増幅産物/標的遺伝子由来の増幅産物)を求める。標的遺伝子と内部標準遺伝子とは、共通のプライマーにて増幅するため、それぞれの増幅効率は同じと考えられる。よって、初期添加した内部標準遺伝子量に、増幅産物の比を乗じることで標的遺伝子量を求める事が可能となる。
【0152】
本法は、内部標準遺伝子を標的遺伝子と共存させて、遺伝子増幅を実施するため、増幅阻害物質の影響を受けにくい手法であり、得られた定量値の信頼性は高い手法であるといえる(理由:例え増幅阻害物質が存在したとしても、内部標準遺伝子の増幅効率と、標的遺伝子の増幅効率は、全く同じように低下する。このことより、増幅阻害物質の存在は、産物比に影響を与えないため、競合的PCR法では正しい定量値が得られる)。また、装置が比較的簡易且つ安価といった特長も挙げることが出来る。
【0153】
しかしながら、本法は、(a)遺伝子増幅後に、増幅産物を定量する必要性があるため、操作が煩雑かつ時間がかかる、(b)産物を定量する際、反応チューブを解放するため、増幅産物によるコンタミの原因となる、(c)本手法は、工程が煩雑且つその自動化は困難であるため、サンプル処理能力が低い、といった問題点が指摘されている。
【0154】
iii)既存法の問題点3:リアルタイム競合的PCR法
リアルタイム競合的PCR法は、競合的PCR法の改良法であり、TaqManプローブ、QProbeなど蛍光標識核酸プローブにて、内部標準遺伝子由来の増幅産物と標的遺伝子由来の増幅産物を、同時にリアルタイムにモニタリングし、それぞれの増幅産物由来の蛍光シグナルから、初期の標的遺伝子量を定量する手法である。
【0155】
本法は、(1)ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速、(2)反応チューブを解放する必要性が無い、(3)競合法であるため阻害物質の影響を受けにくい、といった優れた特長を有する手法である。しかしながら、内部標準遺伝子由来の増幅産物と標的遺伝子由来の増幅産物を、同時にリアルタイムにモニタリングする必要性があるため、リアルタイム定量的PCR法と同様、(i)装置が大がかり且つ高価となる、(ii)サンプル処理能力が低い、という問題点が存在する。以上、既存法の問題点を以下の表にまとめた。この表から、現在提案されている遺伝子定量法には、何らかの問題点が存在することが分かる。
【0156】
【0157】
なお前述の遺伝子定量法は、NASBA法、LAMP法、RCA法、ICAN法など、PCR法以外の遺伝子増幅手法にも適用可能であるため、現在、様々な遺伝子増幅法を介した遺伝子定量手法も実施されている。しかしながら、PCR法を介した遺伝子増幅手法と全く共通の問題点を抱えており、どの遺伝子増幅法を介した場合でも、前述の問題点を解決することが要望されている。
【0158】
(2)本課題を解決するための方策
前述のように、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物との比から、初期の標的遺伝子量を定量することが可能である。もし、この増幅産物比を、遺伝子増幅反応終了後(エンドポイントで)、反応チューブを開放することなく、迅速且つ簡便に測定することができれば、(1)ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速、(2)反応チューブを解放する必要性が無く、増幅産物によるコンタミの心配がない、(3)競合法であるため阻害物質の影響を受けにくい(4)遺伝子増幅と増幅産物の検出とを完全に分離できるため、大量サンプルの処理が可能となり、既存法の共通の問題点であったサンプル処理能力を、簡便且つ安価に向上させる事が可能(例えば、蛍光測定機能を持たない安価なPCR装置を、複数台用いて遺伝子増幅した後、蛍光測定装置にて順次解析することで、例え蛍光測定装置が一台であっても大量サンプルの処理が可能となる)、(5)増幅の過程をリアルタイムモニタリングする必要性が無く、PCR反応に不可欠なサーマルサイクラーとしての機能が不要となるため、非常に簡便かつ安価な測定装置で遺伝子定量が可能、といった特長を有する極めて優れた遺伝子定量法となりうると考えられる。
【0159】
既存法である競合的PCR法は、エンドポイントで増幅産物比を求めることが可能であるが、反応チューブを開放する必要性があり、迅速に増幅産物比を求めることは出来ない。同じく既存法であるリアルタイム競合的PCR法は、蛍光修飾プローブを用いて検出するため、反応チューブを開放する必要性はなく、増幅産物検出は非常に迅速に行える。しかしながら、既存の蛍光修飾プローブにより得られる蛍光シグナルの比は、常に増幅産物比を定量的に示している訳ではなく、その領域は限られている。従って、増幅産物の比を求めるためには、蛍光シグナル比と増幅産物比とが定量的な関係を示す領域で、各増幅産物を検出する必要性がある。このため、リアルタイム競合的PCR法では、増幅産物を常にモニタリングする必要性がある。以上より、前述したような、増幅産物との比を、反応チューブを開放することなく、エンドポイントで迅速且つ簡便に測定可能な手法は、これまで存在しなかった。
【0160】
上記を鑑み、検討を進めた結果、我々は、増幅産物の比を、エンドポイントにて測定可能な新規手法を発見した。本発明は、本発見に基づく新規遺伝子定量法および新規核酸プローブに関するものでる。以下、その内容を詳細に説明する。
【0161】
i)QProbeを用いたエンドポイント遺伝子定量法
<QProbeによる標的遺伝子および内部標準遺伝子の特異的検出>
本法では、前述した2重蛍光標識QProbe(Switching probe)あるいは、2種のQProbeを用いて、増幅産物の検出を実施する。本説明では、Switching probeを用いた測定方法について解説した。Switching probeは、(1)プローブの両末端塩基はCである、(2)両末端が異なる色素で蛍光標識されている、という特長を有している。内部標準遺伝子の配列は、標的遺伝子においてはSwitching probeの5’末端のCと相補的な位置に存在するGをアデニン(A)に、Switching probeの3’末端のCと相補的な位置に存在するAを、Gに、それぞれ置換してある。このため、Switching probeは、内部標準遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした場合、5’末端と相補的な位置にGが存在しないため、5’末端に標識した色素が著しく蛍光消光しないが、3’末端には相補的な位置にGが存在するため、3’末端に標識した色素が著しく蛍光消光する。
【0162】
一方、標的遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした場合は、5’末端と相補的な位置にGが存在するため、5’末端に標識した色素が著しく蛍光消光するが、3’末端には相補的な位置にGが存在しないため、3’末端に標識した色素が著しく蛍光消光しない。つまり、どちらの末端に標識した色素が蛍光消光したかを観察することにより、各増幅産物を特異的に検出することが可能となる。
【0163】
<内部標準遺伝子の特長>
内部標準遺伝子の配列は、(1)標的遺伝子と共通のプライマーで増幅可能、(2)標的遺伝子と内部標準遺伝子のGC含量は、全く同一、(3)標的遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした際の、完全相補的な部分の塩基長と、内部標準遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした際の完全相補的な部分の塩基長は全く同一、(4)標的遺伝子と、内部標準遺伝子の塩基配列は、QProbeの両末端と相補的な塩基を除き同一、といった特徴を有する。
【0164】
以上より、Switching probeの標的遺伝子由来の増幅産物に対する親和性と、内部標準遺伝子由来の増幅産物に対する親和性とは、ほとんど差がないと考えられる。つまり、Switching probeは、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物とを区別することなく、完全にランダムにハイブリダイゼーションするため、標的遺伝子由来の増幅産物に結合したSwitching probeと内部標準遺伝子由来の増幅産物に結合したSwitching probeとの比は、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物との比と、完全に一致する。よって、Switching probeの両末端に標識した2種の色素から得られる蛍光消光率より、増幅産物の比を求めることが出来る。
【0165】
また、(1)プライマーは標的遺伝子と内部標準遺伝子共通であり、(2)標的遺伝子と内部標準遺伝子のGC含量は、全く同一、(3)塩基配列が2箇所異なる以外は、標的遺伝子と内部標準遺伝子は同じ塩基配列を有するため、標的遺伝子と内部標準遺伝子の増幅効率は、同じであると考えられる。また、前記(2)及び(3)より、増幅産物が再結合する事によって発生するバイアスは、発生しないと考えられる。よって、増幅産物構成比は、初期遺伝子構成比を保持することが可能となる。しかしながら、原理的に内部標準遺伝子が存在する要件は、(1)どの増幅段階においても、初期遺伝子の比が崩れない(増幅効率が標的遺伝子と同じ)、(2)プローブが、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物とに区別しないでハイブリダイズする、という2点を挙げることができ、これら2点を満たす内部標準遺伝子であれば、必ずしも上記の特長を有する内部標準遺伝子である必要性はない。
【0166】
前述のように、Switching probeの両末端に標識した2種の色素から得られる蛍光消光率より、増幅産物を定量的に求めることが可能となる。
【0167】
以上より、前述した性質を有する内部標準遺伝子およびSwitching probeを使用することで、増幅産物の比を、反応管を開放することなくエンドポイントで、迅速、且つ簡便に求めることが可能となる。また、エンドポイントでの測定が可能となるため、前述のように、多サンプル処理を安価に実施可能となる。
【0168】
本発明の遺伝子定量法は、遺伝子増幅の後、標的遺伝子と内部標準遺伝子の増幅産物の比を求め、標的遺伝子の定量する手法である。このため、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを、その初期構成比を保持したまま、増幅できる遺伝子増幅法であれば、その種類に依らず、本法を適用することが可能である。よって、NASBA法、LAMP法、RCA法、ICAN法など、PCR法以外の遺伝子増幅手法にも適用可能である。
【0169】
ii)QProbeを用いた解離曲線解析によるエンドポイント遺伝子定量法
前述したようにQProbeにより得られる解離曲線解析から、遺伝子構成比を求めることが可能である。本手法を、遺伝子増幅法を介した競合的遺伝子定量法に応用することが可能であると考えられる。
【0170】
本法で用いる内部標準遺伝子は、QProbeがハイブリダイズする部位に変異を入れたものを使用する。遺伝子増幅完了後、この解離ピークの高さの比は、遺伝子の構成比に高い相関があるため、解離ピークの高さの比から、遺伝子の構成比を求めることが出来る。よって、標的遺伝子と増幅効率の同じ、既知濃度の内部標準遺伝子を、標的遺伝子とともに各種遺伝子増幅法によって増幅し、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物との比を求めることで、標的遺伝子の定量が可能となる。
【0171】
本法において、内部標準遺伝子の要件としては、(1)どの増幅段階においても、初期遺伝子の比が崩れない(増幅効率が標的遺伝子と同じ)、(2)標的遺伝子の解離ピークと、内部標準遺伝子の解離ピークとが、遺伝子の比を求めることができるよう、十分に分離する、という2点を挙げることができる。よって、これら2点を満たす内部標準遺伝子であれば、必ずしも上記の特徴を有する内部標準遺伝子である必要性はない。
【0172】
本発明の遺伝子定量法は、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを、その初期構成比を保持したまま、増幅できる遺伝子増幅法であれば、その種類に依らず、本法を適用することが可能である。よって、NASBA法、LAMP法、RCA法、ICAN法など、PCR法以外の遺伝子増幅手法にも適用可能である。
【0173】
D.第4発明
本発明方法で得られる測定値を用いて、正確に標的核酸を測定(決める)方法である。実施例8及び11に記載されている。
【実施例】
【0174】
本実施例において、各種核酸プローブ、内部標準核酸、及び標的核酸は特別に断りがない場合は、オリゴデオキシヌクレオチド体を使用した。
又、各種核酸プローブにおいて、蛍光標識部位若しくは位置は、末端部位の場合は、5’末端については、5’末端の糖の5’位CのOH基(脱リンして得られる。)である。一方、3’末端については、3’末端の糖の3’位CのOH基である。
<実施例1>
2つのQProbeを含む新規混合物及びそれを用いた遺伝子の新規測定方法
新規混合物
下記の組成からなる新規混合物を作製した。
・下記のQProbe A(標的遺伝子検出用QProbe):200nM
・下記のQProbe B(内部標準遺伝子検出用):200nM
・下記の内部標準核酸:下記の濃度のものを各々作製した。
a)200nMの1/10、1/5、1/2、4/5、9/10のもの。
b)800nMの1/10、1/5、1/2、4/5、9/10のもの。
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
【0175】
新規測定方法
(1)実験方法
標的遺伝子を前記の新規混合物に添加し、2つのQProbeを用いて、その存在比を求めことが可能であるか検討した。実験では、標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を変化させたDNA溶液を作成し、そこに標的遺伝子検出用QProbeと、内部標準遺伝子検出用QProbeを添加後、蛍光測定を実施した。蛍光測定は、60℃と95℃で実施した(60℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が結合した際の蛍光値であり、95℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が完全に解離した際の蛍光値であると考えられる。)。なお95℃の蛍光値は、蛍光消光率を求める際のリファレンスとした。そして各プローブの蛍光消光率の比と、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比との関係を調べ、この関係式から、遺伝子構成比が定量可能であるか検討した。
以下に、詳細な実験条件を示す。
【0176】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:5'-AGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAG-3'
内部標準遺伝子の配列:5'-GGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAA-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、800nM(標的:内部標準=9:1、4:1、1:1、1:4、1:9)
【0177】
・QProbe
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:5'-CTCCTCTGGCCTTTCCGGAACC-3'
色素:QProbe A(標的遺伝子検出用QProbe)はBODIPY FL(Molecular probes社製、D-6140)で、QProbe B(内部標準遺伝子検出用)はTAMRA(Molecular probes社製、C-6123)にて蛍光標識。
各QProbeの終濃度:200nM(トータルで400nM)
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
・使用装置:蛍光測定は、温度調節装置(社製)の付属したLS50B(パーキンエルマー社製)にて行った。QProbe Aの測定波長は、励起波長:480nm、蛍光波長:520nmにて実施し、QProbe Bの測定波長は、励起波長:550nm、蛍光波長:580nmにて実施した。
【0178】
蛍光測定は、ハイブリダイズした際の蛍光測定は、60℃で実施した。また、リファレンスとして完全にプローブからデバイブリする温度(95℃)の蛍光強度を測定し、下式より蛍光消光率を求めた。
蛍光消光率(%)=(1-(F60/F95)/(F60プローブのみ/F95プローブのみ))×100
F60:ターゲット遺伝子存在下での60℃の蛍光強度値
F95:ターゲット遺伝子存在下での95℃の蛍光強度値
F60プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での60℃の蛍光強度値
F95プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での95℃の蛍光強度値
【0179】
(3)実験結果および考察
実験結果を図5として示す。本グラフから、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比と、QProbe A消光率/QProbe B消光率との間には高い相関があることが明らかとなった。よって、本関係式を検量線として用いることにより、本手法によって標的遺伝子の定量が可能であることが示唆された。
【0180】
また、標的遺伝子および内部標準遺伝子のトータル量が、プローブ添加量より多い場合(800nM)においても、少ない場合(200nM)と同様の相関が観察されたことから、本測定法では、ターゲットとなる遺伝子量が、プローブより多い場合であっても、正確に定量可能であることが示唆された。以上より、本手法は1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有する遺伝子定量手法であることが示された。
【0181】
<実施例2>
2−2グアニンとの相互作用により消光する新規色素のスクリーニング
(1)実験方法
プローブ配列の3’末端をCとし、そのCに各種の蛍光色素にてラベルしたプローブを作成した。作成したプローブとその相補鎖を、溶液中でハイブリダイズさせ、蛍光消光率を求めた。
【0182】
実験の手順は、
(2)実験条件
・標的遺伝子
標的遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:3'ggggggggggggAAAAAA5'
終濃度:320nM
・プローブ
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:5'CCCCCCCCCCCCTTTTTT3'
色素:PacificBlue(P-10163)、TET(C-6166)、TBSF(C-6166)、HEX(T-20091)、R6G(C-6127)を使用した。
プローブの終濃度:40nM
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
【0183】
・使用装置
蛍光測定は、温度調節装置(社製)の付属したLS50B(パーキンエルマー社製)にて行った。
蛍光測定の条件は、各色素の最大励起波長と最大蛍光波長を、LS50Bを用いて求め、蛍光消光率を求める際には、得られた最大励起波長と最大蛍光波長にて蛍光測定を実施した。各色素の最大励起波長と最大蛍光波長は、結果で示す。スリット幅は、励起波長と蛍光波長ともに5nmとした。
【0184】
実験の手順を図8に示す。蛍光測定は、35℃で実施した。
【0185】
蛍光消光率は下式より求めた。
蛍光消光率(%)=(測定値(i)−測定値(ii))÷測定値(i)×100
【0186】
(3)実験結果および考察
下表から分かるように、全ての色素で蛍光消光が確認された。特にPacificBlueとR6Gでは蛍光消光が著しく、これまで知られている色素よりも高い消光率が得られた。また、PacificBlue(新規実施分)、R6G(新規実施分)、BODIPY FL(既知色素)、TAMRA(既知色素)の蛍光キャラクターとはそれぞれ異なるため、上記の色素で標識した4種のプローブを用いることで、同じ試料中に存在する4種遺伝子の同時検出が可能であると考えられる。
【0187】
【0188】
<実施例3>
2−3 Switching probeを用いた遺伝子定量法
新規混合物
下記の組成からなる新規混合物を作製した。
・下記のSwitching probe:400nM
・下記の内部標準核酸:下記の濃度のものを各々作製した。
a)600nMの1/10、1/5、1/2、4/5、9/10のもの。
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
【0189】
又、Switching probeの実験データを検証するために、上記の反応液において、Switching probeに代えてQProbe AとQProbe Bを含有させた新規混合物を作製した。
・下記のQProbe A(標的遺伝子検出用):200nM
・下記のQProbe B(内部標準遺伝子検出用):200nM
【0190】
新規測定方法
標的遺伝子を前記の新規混合物に添加し、標的遺伝子を測定した。また、Switching probeを用いた際に得られる蛍光消光率と、2つのQProbeを用いた際に得られる蛍光消光率とを比較した。
【0191】
(1)実験方法
Switching probeを用いることでも、前述の2種のQProbeを用いた場合と同様、その存在比を求めことが可能であるか検討した。また、Switching probeを用いた際に得られる蛍光消光率と、2つのQProbeを用いた際に得られる蛍光消光率とを比較した。
【0192】
以下に、詳細な実験条件を示す。
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TTTGGATGACTGACTGACTGACTGACGAGATTT-3'
内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TTTAGATGACTGACTGACTGACTGACGAGGTTT-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:600nM(標的:内部標準=9:1、4:1、1:1、1:4、1:9)
・QProbe
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
【0193】
Switching probeの配列と構造
BODIPY FL-5'CCTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC3'-TAMRA
QProbeの配列と構造
<QProbe A(標的遺伝子検出用)>
BODIPY FL-5'CCTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC3'
<QProbe B(内部標準遺伝子)>
5'CCTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC3'-TAMRA
なお、使用した蛍光色素は、実施例1と同様である。
【0194】
終濃度:400nM(2種のQProbeを使用する場合はトータルで400nM)
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
・使用装置、使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方は、実施例2−1と同様である。
【0195】
(3)実験結果および考察
BODIPY FLは5’末端のCに標識されているため、標的遺伝子とハイブリダイズした際に著しき蛍光消光する。一方、TAMRAは3’末端のCに標識されているため、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際に著しき蛍光消光する。よって、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との比と高い相関があると考えられる。実験結果を図6として示す。本グラフから、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比と、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比との間には高い相関があることが確認された。本結果より、Switching probeを用いても、標的遺伝子の定量が可能であることが示された。
【0196】
Switching probeの際に得られた蛍光消光率と、2種のQProbeを用いた場合に得られたSwitching probeの際に得られた蛍光消光率を比較した。その結果を表3に示す。本表からも、Switching probeで得られた蛍光消光率は、2種のQProbeを用いた際に得られた蛍光消光率よりも約2倍高い数値を示した。このことから、2種のQProbeを用いる手法より、Switching probeを用いる手法のほうが、より精度良く標的遺伝子の定量を実施できることが示された。
【0197】
【0198】
<実施例4>
2−4 遺伝子増幅法を介したエンドポイント遺伝子定量法
(1)実験方法
遺伝子増幅を介したエンドポイント遺伝子定量法について、正確に標的遺伝子量を定量出来るか確認した。遺伝子増幅法は、PCR法を採用し、プローブはSwitching Probeを採用した。
【0199】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子:遺伝子組換え大豆(ラウンドアップ大豆)RRS遺伝子のPCR産物 標的遺伝子の配列:5'-AGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAG-3'
(下線が内部標準遺伝子と異なる部分。表記した配列にプローブが結合する。これ以外の配列は、標的遺伝子、内部標準遺伝子共に共通であるため表示しなかった。)
内部標準遺伝子:遺伝子組換え大豆(ラウンドアップ大豆)のRRS遺伝子に変異を人為的に挿入したPCR産物
内部標準遺伝子の配列:5'-GGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAA-3'
(下線が標的遺伝子と異なる部分。表記した配列にプローブが結合する。
これ以外の配列は、標的遺伝子、内部標準遺伝子共に共通であるため表示しなかった。)
【0200】
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:1000copy
内部標準遺伝子と標的遺伝子との初期構成比:標的:内部標準=9:1、4:1、1:1、1:4、1:9
・Switching Probeの製造
合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
Switching probeの配列と構造
BODIPY FL-5'CTCCTCTGGCCTTTCCGGAACC3'-TAMRA
(色素はこれまでと同様)
プローブ終濃度:400nM
【0201】
・PCR条件
Denature:95℃(60秒)
Annealing:56℃(60秒)
Extension:72℃(60秒)
・遺伝子増幅用酵素:TaqポリメラーゼはGeneTaq(日本ジーン社製)を用いた。
【0202】
・プライマー
合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
フォワードプライマー配列:
5'CCTTTAGGATTTCAGCATCAGTGG3'
リバースプライマー配列:5'GACTTGTCGCCGGGAATG3'
プライマー終濃度:各1000nM
【0203】
・内部標準遺伝子の製造
目的とする内部標準遺伝子配列を有するオリゴDNAを、エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)に製造委託した。得られたオリゴDNAを鋳型として上記の検出用プライマーを用いてPCR増幅し、得られた産物を、Microcon PCR(ミリポア社製)にて精製した。精製の後に、PicoGreen(Molecular probes社製)を用いて定量し、これを内部標準遺伝子として用いた。
【0204】
・標的遺伝子PCR産物の製造
内部標準遺伝子の作成と同様の方法で実施した。
・使用装置と測定条件
蛍光消光率を求める際の使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方は、実施例2−1と同様である。
PicoGreenを用いた定量での測定波長は、励起波長:480nm、蛍光波長:520nmにて実施した。スリット幅は、何れの場合も5nmとした。PCR反応は、サーマルサイクラー(iCycler、バイオラッド社製)を用いて実施した。
【0205】
(3)実験結果
BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との比との関係式を求めた結果、両者の間には高い相関が見られた(図7参照)。この結果から、標的遺伝子と内部標準遺伝子とは、初期の遺伝子構成比を保ったまま増幅された事が示唆された。また、本結果から、遺伝子増幅法を介した場合も、本手法により、標的遺伝子の定量が可能であることが示された。
【0206】
<実施例5>
1つの均一溶液系核酸プローブ及び内部標準核酸からなる新規混合物及びそれを用いた遺伝子の新規測定方法について、その好適な使用例を以下に示す。
【0207】
(1)実験方法
1つの均一溶液系核酸プローブ(ここではQProbeを使用)を用いて、その標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を求めことが可能であるか検討した。実験では、標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を変化させたDNA溶液を作成し、そこにQProbeを添加後、蛍光測定を実施した。蛍光測定は、60℃と95℃で実施した(60℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が結合した際の蛍光値であり、95℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が完全に解離した際の蛍光値であると考えられる。)。なお95℃の蛍光値は、蛍光消光率を求める際のリファレンスとした。そして各プローブの蛍光消光率の比と、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比との関係を調べ、この関係式から、遺伝子構成比が定量可能であるか検討した。
以下に、詳細な実験条件を示す。
【0208】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:5'-AGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAG-3'
内部標準遺伝子の配列:5'-GGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAA-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、400nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0209】
・QProbe
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:5'-CTCCTCTGGCCTTTCCGGAACC-3'
色素:BODIPY FL(Molecular probes社製、D-6140)。
QProbeの終濃度:400nM
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
・使用装置:蛍光測定は、温度調節装置(社製)の付属したLS50B(パーキンエルマー社製)にて行った。測定波長は、励起波長:480nm、蛍光波長:520nmにて実施した。
【0210】
蛍光測定は、ハイブリダイズした際の蛍光測定は、60℃で実施した。また、リファレンスとして完全にプローブからデバイブリする温度(95℃)の蛍光強度を測定し、下式より蛍光消光率を求めた。
蛍光消光率(%)=(1-(F60/F95)/(F60プローブのみ/F95プローブのみ))×100
F60:ターゲット遺伝子存在下での60℃の蛍光強度値
F95:ターゲット遺伝子存在下での95℃の蛍光強度値
F60プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での60℃の蛍光強度値
F95プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での95℃の蛍光強度値
【0211】
(3)実験結果および考察
実験結果を図10として示す。標的遺伝子および内部標準遺伝子のトータル量が、プローブ添加量と等量の場合(400nM)とプローブ添加量より多い場合(800nM)は、それぞれの検量線が一致した。これは、プローブ量が、トータル遺伝子量以下である場合、あるBODIPY消光率が得られた際に、導かれる遺伝子構成比は、トータル遺伝子量に関わらず同じであることを示している。よって、プローブ量がトータル遺伝子量以下である場合、BODIPY消光率から、遺伝子構成比が正確に定量可能であることが示された。しかしながら、プローブ量がトータル遺伝子量より多い場合(200nM)の検量線と、プローブ量がトータル遺伝子量以下の場合の検量線とは、一致しなかった。これは、トータル遺伝子量が200nMの場合、プローブ添加量は400nMであることから、ハイブリダイズしていないプローブが200nM存在するため、トータル遺伝子量が400nM、800nMの場合と比較して、蛍光消光が約半分になるためである。
なお、トータル遺伝子量(標的核酸の濃度)がプローブ量より少ない場合は、検量線の不一致を解決するには、プローブの濃度を種々変えて測定するのが好適である。
【0212】
<実施例6>
二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸からなる新規混合物を用いた遺伝子定量法(その2)
実施例5に記載した方法においても、プローブの量を種々変化させることにより、標的核酸を正確に測定できるが、本方法を用いるとプローブの量を種々変化させなくとも、より好適に測定できるようになる。
(1)実験方法
標的核酸および内部標準核酸と完全相補的であり、蛍光標識部位に対応する塩基(蛍光標識塩基に対応する塩基を1とする)から1塩基乃至3塩基の範囲内のGの数を、標的核酸と内部標準核酸の間で変化させることによって、蛍光強度が変化するタイプの二重標識核酸プローブ(図11)を用い、前述の二重標識核酸プローブ(C又はG自身の部位に標識されたプローブ)を用いた場合と同様、標的核酸の存在比を求めことが可能であるか検討した。
【0213】
以下に、詳細な実験条件を示す。
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TAATGATGACTGACTGACTGACTGACGATGGT-3'
内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TGGTATGACTGACTGACTGACTGACGAGTAAT-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、400nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0214】
・二重標識核酸プローブ
BODIPY FL-5'ACTACTGACTGACTGACTGACTGCTCA 3'-TAMRA
終濃度:400nM
なお、使用した蛍光色素および委託製造先等は、実施例5と同様である。
【0215】
・使用装置、使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方、バッファー等は、実施例5と同様である。
【0216】
BODIPY FLは、標的遺伝子とハイブリダイズした際に、蛍光標識末端塩基の近傍にGが存在するため、著しく蛍光消光する。しかし、内部標準遺伝子とハイブリダイズした場合は、近傍にGが存在しないため蛍光消光は発生しない。
一方、TAMRAは、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際に、蛍光標識末端塩基の近傍にGが存在するため、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際に著しく蛍光消光する。よって、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との比と高い相関があると考えられる。
【0217】
(3)実験結果および考察
実験結果を図12として示す。本グラフから、トータル遺伝子量の違いに関わらず、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比と、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比との間には高い相関があることが確認された。本結果より、本タイプの二重標識核酸プローブを用いた手法は、プローブに対してトータル遺伝子量が大きい場合も、小さい場合も、正確に標的遺伝子を定量可能であることが示唆された。
【0218】
<実施例7>
二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸からなる新規混合物を用いた遺伝子定量法(その3)
(1)実験方法
蛍光標識した2部位のうち、一方の部位に標識した蛍光色素においては、標的核酸及び内部標準核酸のどちらがハイブリダイズしても同程度の蛍光キャラクター変化量が得られるが、他方に標識した蛍光色素においては、標的核酸とハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と、内部標準核酸とハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量とに差が生じるタイプの二重標識核酸プローブ(図13)を用いることでも、前述の二重標識核酸プローブを用いた場合と同様、標的核酸の存在比を求めことが可能であるか検討した。
【0219】
以下に、詳細な実験条件を示す。
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TAAGGATGACTGACTGACTGACTGACGATGGT-3'
内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TAAGATGACTGACTGACTGACTGACGAGTAAT-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、400nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0220】
二重標識核酸プローブの配列と構造
BODIPY FL-5'ACTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC 3'-TAMRA
終濃度:400nM
なお、使用した蛍光色素は、実施例5と同様である。
【0221】
・使用装置、使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方、バッファー等は、実施例5と同様である。
【0222】
上記の二重標識プローブの5’末端に標識したBODIPY FLは、標的遺伝子とハイブリダイズした際に、蛍光標識末端塩基の近傍にGが存在するため、著しく蛍光消光する。しかし、内部標準遺伝子とハイブリダイズした場合は、近傍にGが存在しないため蛍光消光は発生しない。よって、BODIPY FLの蛍光消光率は、標的遺伝子の存在比と高い相関があると考えられる。そして、ハイブリダイズしたプローブの割合が既知であれば、ハイブリダイズした全プローブのうち、標的遺伝子(あるいは内部標準遺伝子)にハイブリダイズしたプローブの割合を求めることが可能となる。以下、例を挙げて説明する。実サンプルにおける標的核酸と内部標準核酸とで消光の差がある蛍光色素の消光率が40%であり、差のない色素のものに基づいて、添加した全プローブの半分がハイブリダイズしたと計算されたとき、ハイブリダイズしたプローブだけに注目した場合、ハイブリダイズしたプローブの80%が消光したこととなる。ここで用いたプローブは、標的遺伝子にハイブリダイズしたときに、BODIPY FLの蛍光が完全に消えるプローブであるとすると、実サンプルにおける消光率(40%)から、ハイブリダイズしたプローブのうち、80%が標的遺伝子にハイブリダイズしたと計算できる。このように、ハイブリダイズしたプローブの割合と、BODIPY FLの消光率が明らかとなれば、標的遺伝子・内部標準遺伝子間の構成比を定量可能である。
【0223】
二重標識プローブの3’末端に標識したTAMRAは、標識遺伝子、内部標準遺伝子ともに、蛍光標識末端塩基の相補的な位置にGが存在するため、標識遺伝子にハイブリダイズした場合も、内部標準遺伝子にハイブリダイズした場合も同じように消光する。このため、TAMRAの消光率は、ハイブリダイズしたプローブの割合を示すこととなる。
前述したように、ハイブリダイズしたプローブの割合が既知であれば、遺伝子の構成比を定量可能になると考えられる。よって、BODIPY FLの消光率をTAMRAの消光率で補正することにより、トータル遺伝子量の大小にかかわらず、標的遺伝子の定量が可能になるものと考えられる。
【0224】
(3)実験結果および考察
実験結果を図14として示す。図14Aは、BODIPYの蛍光消光率と、標的遺伝子存在比との相関を示した。この図から、トータル遺伝子量の違いによって検量線が異なることが分かる。この結果は、標的遺伝子の存在比が同じであっても、トータル遺伝子量が変化すれば、BODIPYの蛍光消光率も変化することを示している。このことから、BODIPY蛍光消光率では、標的遺伝子の存在比を定量不可能であることが明らかとなった。一方、BODIPYの蛍光消光率を、ハイブリダイズしたプローブの割合を示すTAMRAの蛍光消光率で割った値(BODIPY蛍光消光率/TAMRA蛍光消光率)は、トータル遺伝子量の違いに関わらず、それらの関係式がほぼ一致していることがわかる(図14B)。つまり、BODIPY蛍光消光率/TAMRA蛍光消光率は、トータル遺伝子量に依存せず、標的遺伝子の存在比にのみに依存し変化することが確認された。以上の結果より、本タイプの二重標識核酸プローブを用いた手法は、トータル遺伝子量が大小に関わらず、標的遺伝子の存在比を正確に定量可能であることが示唆された。
【0225】
本法において使用するプローブは、(1)一方に標識した色素の蛍光量が、標的遺伝子にハイブリダイズしたときと内部標準遺伝子にハイブリダイズしたときとで異なる、(2)他方に標識した色素においては、標的核酸及び内部標準核酸のどちらがハイブリダイズしても同程度の蛍光変化量(消光でもよく、発蛍光でもよい)が得られる、という特徴を有するプローブであれば良く、この性質を有するプローブであれば、上記と同様の原理で標的遺伝子を定量可能である。また、使用する蛍光色素は、ハイブリダイゼーションにより、蛍光キャラクターが変化する色素であれば良く、そのような性質を有する色素であれば特に限定されない。
【0226】
<実施例8>
蛍光測定値から標的核酸濃度を正確に計算する方法(その1)。
これまでに示した実施例において使用したプローブは、標的遺伝子と内部標準遺伝子にうち、一方の遺伝子に結合したときに色素の発する蛍光量が変化した(主に蛍光消光)とすると、他方の遺伝子に結合したときの蛍光は、結合していないプローブの蛍光と同じになるものを用いた(実施例7を除く)。つまり、プローブが存在する状態としては、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態の三通り存在するが、色素1分子毎の蛍光量に着目すると、蛍光量が異なるプローブは2通りしか存在しなかった(図15参照)。しかしながら、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態で、それぞれ蛍光量が異なるプローブが存在することが分かってきた(図15参照)。このタイプのプローブを用いた反応系の場合、蛍光量が異なるプローブが三通り存在することになるため、これまでの実施例ように、単純な計算式で標的遺伝子を定量することは困難であると考えられる。そこで、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態でそれぞれ蛍光量が異なるプローブを使用することを前提とした計算方法を考案したので、以下説明する。
【0227】
<計算式(その1)>
一方の蛍光部位に標識した色素の蛍光強度が、標的遺伝子と結合した際に著しく減少し、他方の蛍光部位に標識した色素の蛍光強度が、内部標識遺伝子と結合した際に減少するタイプの二重標識プローブを用いた場合の計算式を以下に示した。その内容を詳細に説明する。
本計算式で使用する定数を以下に定義する。
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
【0228】
A:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
a’:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
B:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
b’:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
【0229】
実サンプルにおける色素Aの蛍光強度割合(A)は、以下のように表される。
A=(1-y)+axy+(1-x)a'y=1-y+axy+a'y -a'xy (1)
(1)を変形させると、ハイブリダイズしたプローブの割合(y)は、以下のように表すことが出来る。
y=(1-A)/(a'x-ax+1-a') (2)
一方、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度(B)は、以下のように表される。
B=(1-y)+(1-x)by+b'xy=1-y-bxy+by+ b'xy (3)
(3)を変形させると、ハイブリダイズしたプローブの割合(y)は、以下のように表すことが出来る。
y=(1-B)/(b'x-bx+1-b') (4)
(2)式に、(4)式を代入すると、以下のようになり、
(1-A)/(a'x-ax+1-a')=(1-B)/(b'x-bx+1-b') (5)
(5)式を変形すると、(6)式に変形することが出来る。
x=(-a'-B+Ba'+b'+A-Ab')/(b'-b-Ab'+Ab-a'+a+Ba'-Ba) (6)
x以外は全て実験的に求めることが可能であるので、(6)により標的遺伝子の割合を算出することが可能であると考えられる。
【0230】
以下に、詳細な実験条件を示す。
実験は、(1)検量線を作成し、本検量線から標的遺伝子構成比を定量する方法、(2)前述の計算式で、標的遺伝子構成比を定量する方法、以上、2通りの定量法により、模擬的に作成した試料(以下、単に模擬試料と呼ぶ)における標的遺伝子構成比を定量し、本結果より、2つの定量方法を比較、評価した。
【0231】
(2)実験条件
<標的遺伝子および内部標準遺伝子>
・標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
・オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造
・標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-AATTCGTACCAACTATCCTCGTCGTCAGCTATG-3'
・内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-GATTCGTACCAACTATCCTCGTCGTCAGCTATA-3'
・消光率測定時の標的遺伝子および内部標準遺伝子の添加量
標的遺伝子:800nM
内部標準遺伝子:800nM
・内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度(検量線)
800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
・内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度(模擬試料)
200nM、800nM(標的:内部標準遺伝子=4:1)
【0232】
・二重標識核酸プローブの配列と構造
BODIPY FL-5' CATAGCTGACGACGAGGATAGTTGGTACGAATC 3'-TAMRA
なお、使用した蛍光色素は、実施例6と同様である。プローブ終濃度は400nMである。
その他の条件(バッファー、使用装置、使用機器、測定条件等)は、これまでの実施例7と同様である。
【0233】
(3)結果と考察
<プローブ消光率の測定>
まず、本実施例で使用したプローブについて、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態の消光率を測定した。なお、BODIPY FLの蛍光消光率については、内部標準遺伝子を添加した実験系を基準(消光率=0%)として、その他の消光率を算出し、BODIPY FLの蛍光消光率については、標的遺伝子を添加した実験系を基準(消光率=0%)として、その他の消光率を算出した。その結果を下の表に示す。この表から分かるように、遺伝子を添加していない系(遺伝子非添加)の蛍光消光率は、両色素ともに、0%ではないことが分かる。これは、本プローブが、蛍光標識した塩基と相補的位置にGの存在しない遺伝子(BODIPY FLの場合は内部標準遺伝子で、TAMRAの場合は標的遺伝子)と結合した場合も、プローブに標識した色素の発する蛍光量が変化したことを示している。以上より、本実施例で使用するプローブは、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態で、その蛍光量が変化することが明らかとなった。
【0234】
【0235】
<標的遺伝子存在比の定量>
検量線を下図に示す。この検量線から分かるように、標的遺伝子存在比と消光率比の間に、高い相関が認められた。本検量線で得られた関係式から、模擬試料における標的遺伝子の存在比を定量した。
【0236】
その定量結果を下表に示す。この結果より、模擬試料におけるトータル遺伝子量が800nMの場合、標的遺伝子存在比の定量値は、理論値(模擬試料における標的遺伝子:内部標準遺伝子は4:1であるので、理論値は4.0となる。)近く、正確な定量値が得られた事が分かる。しかしながら、トータル遺伝子量が200nMの場合、得られた標的遺伝子存在比は、理論値の約半分であった。以上の結果より、プローブ量がトータル遺伝子量より少ない場合、非結合プローブの蛍光量、標的遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量、内部標準遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量がそれぞれ異なるプローブでは、正確に遺伝子構成比を定量出来ないことが示された。
【0237】
【0238】
本実施例におけるプローブの添加量は400nMであるため、トータル遺伝子量が200nMの場合、添加プローブの半分は結合しない。本実施例で使用したプローブの場合、非結合プローブの蛍光量、標的遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量、内部標準遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量は、それぞれ異なる。このため、トータル遺伝子量がプローブ量より少ない場合、各色素の蛍光変化量は、内部標準遺伝子に結合した際の蛍光変化量と、標的遺伝子に結合した際の蛍光変化量の両方に由来することとなる(非結合プローブの蛍光を基準とした場合)。つまり、各色素の蛍光変化は、標的遺伝子と内部標準遺伝子の両方に影響を受けることとなる。このため、蛍光変化量の比は、遺伝子構成比を反映せず、その結果、正確な定量値が得られなかったと考えられる。一方、トータル遺伝子量が800nMの場合、プローブは、標的遺伝子と内部標準遺伝子のどちらかに結合し、非結合プローブは存在しない。このため、蛍光変化量は、一方の遺伝子のみに由来する。よって、蛍光変化量の比は遺伝子構成比を正確に反映することとなり、正確な定量値が得られたと考えられる。
【0239】
前述した計算式を用いて、遺伝子構成比を定量した結果を、下の表に示す。蛍光測定値は、検量線による定量で用いた測定値であるが、非結合プローブの蛍光量を1としたときの蛍光量に変換し、計算式に代入した。この表から、トータル遺伝子量が、プローブ添加量よりも少ない場合も多い場合と同様、正確に遺伝子構成比(標的遺伝子/内部標準遺伝子)を定量可能であった事が分かる。以上より、前述した関係式により、トータル遺伝子量によらず遺伝子構成比を定量可能であることが明らかとなった。
【0240】
【0241】
<実施例9>
消光物質若しくは消光物質標識プローブを含有する本発明の新規混合物を用いて標的核酸を測定した例。
トータル遺伝子量が、プローブ添加量よりも大幅に少ない場合、標的遺伝子および内部標準遺伝子に結合した際のプローブの蛍光変化量が少なくなり、標的遺伝子量を正確に定量出来ないことが予想された(図17A参照)。しかしながら、非結合プローブが発する蛍光を消光させることができれば、ハイブリダイズしたプローブに由来する蛍光変化量を正確に測定でき、その結果、プローブ添加量よりもトータル遺伝子量が大幅に少ない場合においても、標的遺伝子の定量が可能となることが予想された(図17B参照)。この目的を達成するため、蛍光消光物質で標識したプローブ(消光物質標識プローブと呼ぶ)を、用いることが有効であると考えられた。消光物質標識プローブの好適な使用条件として、(1)消光物質標識プローブは、標的核酸プローブにハイブリダイズする、(2)消光物質標識プローブと標的核酸プローブがハイブリダイズした際に、標的核酸プローブに標識した色素の近傍に消光物質標識プローブの消光物質が位置する、(3)標的核酸プローブ・消光物質標識プローブ間の解離温度が、標的核酸プローブ・標的遺伝子間および、標的核酸プローブ・内部標準遺伝子間の解離温度よりも低い、以上3つの条件を挙げることができる。更に、好適な適用例を図17Bとして示す。消光物質標識プローブは、(1)二重標識プローブと相補的な配列を有している、(2)二重標識プローブとハイブリダイズした際、蛍光標識した塩基と相補的な塩基が消光物質で標識されている。(3)消光物質標識プローブは、標的核酸プローブよりも短いものを2本使用し、それぞれは標的核酸プローブの異なる領域に重ならないようにハイブリダイズする、という特性を有している。
(1)、(2)、(3)の特性によって、二重標識核酸プローブの内部標準遺伝子および標的遺伝子へのハイブリダイゼーションを阻害することなく、二重標識核酸プローブの蛍光を効果的に消光させることができる。
【0242】
(1)実験方法
実験は、消光物質標識核酸プローブを添加した系と、添加しない系の2通りの実験を行い、その模擬試料における標的遺伝子存在比の定量値を比較することで、消光物質標識核酸プローブの効果を評価した。標的遺伝子存在比の定量は、実施例8の計算式で行った。
前述の実験の前に、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子および内部標準遺伝子のみに十分にハイブリダイズするが、消光物質標識核酸プローブとはハイブリダイズしない温度域と、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子、内部標準遺伝子および消光物質標識核酸プローブに十分にハイブリダイズする温度域を予め特定した。その温度域は、前記が55〜60℃付近で、後記が40℃以下であった。この結果を基に、確認実験では、温度を、95℃、57℃、35℃の順で変更し、それぞれの温度で1分間保持した。57℃に保持する目的は、二重標識核酸プローブを標的遺伝子および内部標準遺伝子のみにハイブリダイズさせるためである。その後に、35℃に保持することにより、結合しなかった二重標識核酸プローブを、消光物質標識核酸プローブとハイブリダイズさせ、二重標識核酸プローブの蛍光を消光させた。
【0243】
その他の条件(バッファー、使用装置、使用機器等)は、実施例8と同様である。
(2)実験条件
<標的遺伝子および内部標準遺伝子>
・標的遺伝子、内部標準遺伝子および二重標識核酸プローブ
実施例8と同じものを使用した。
・消光物質標識核酸プローブ
消光物質としてはDABCYL(グレンリサーチ、米国)を使用した。配列を以下に示す。
消光物質標識核酸プローブA:5' CTCGTCGTCAGCTATGG 3'-DABCYL
消光物質標識核酸プローブB:DABCYL-5' GGATTCGTACCAACTATC
(下線は、二重標識核酸プローブと結合する領域を示す。)
上記の合成:エスペックオリゴサービス株式会社による委託製造
・模擬試料における内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度
20nM、40nM、80nM(標的:内部標準=4:1)
・二重標識核酸プローブの終濃度:400nM
・消光物質標識核酸プローブの終濃度:800nM
【0244】
(3)結果と考察
下表に消光物質標識核酸プローブを添加していない系における遺伝子構成比の定量結果を示す。この結果から明らかなように、トータル遺伝子量が低下するにしたがい、模擬試料における蛍光強度割合(AおよびB)が、非結合プローブの蛍光強度割合に近づいており、蛍光の変化量が減少することが分かる。その結果、トータル遺伝子量が低下するにしたがい、模擬試料における遺伝子構成比の定量値は、理論値からずれる結果となった。
【0245】
【0246】
下表に消光物質標識核酸プローブを添加した系における遺伝子構成比の定量結果を示す。この系においても、トータル遺伝子量が低下するにしたがい模擬試料における蛍光強度割合(AおよびB)が低下した。しかしながら、トータル遺伝子量が最も低い20nMの系においても、非結合プローブの蛍光に対して、約1.5〜2.0倍の蛍光変化が見られた。その結果、トータル遺伝子量が低下しても、模擬試料における遺伝子構成比の定量値は、理論値にほぼ近い値が得られた。以上の結果より、消光物質標識核酸プローブを添加し、非結合プローブの蛍光を減少させることによって、トータル遺伝子量が少ない場合も、遺伝子構成比を正確に定量でき、その結果、標的遺伝子量を正確に定量できることが明らかとなった。
【0247】
消光物質標識核酸プローブは、非結合プローブの蛍光を消光させることによって、標的遺伝子および内部標準遺伝子にハイブリダイズしたプローブに由来する蛍光を正確に測定することが可能となる。このため、消光物質標識核酸プローブは、本出願において示した全ての標的核酸プローブ(内部標準核酸プローブおよび二重標識核酸プローブを含む)及び、これらプローブを用いた測定法に有効である。
また、遺伝子増幅法により増幅された産物を対象とした場合も、消光物質標識核酸プローブは前述と同様の理由で有効である。その場合、消光物質標識核酸プローブが、プライマーとして機能することを防止するため、3’末端が標識されていない消光物質標識核酸プローブの場合は、3’末端をリン酸化する等の処理を行っておく必要性がある(但し、遺伝子増幅後、標的核酸プローブ(内部標準核酸プローブおよび二重標識核酸プローブを含む)及び消光物質標識核酸プローブを添加し、標的遺伝子構成比を定量する場合は、その限りではない。)。
【0248】
【0249】
<実施例10>
エキソヌクレアーゼを含有してなる本発明の新規混合物を用いて標的核酸を測定した方法
標的核酸プローブと内部標準核酸プローブを用いる新たな手法に関する実施例を以下に示す。本手法においては、標的核酸プローブと内部標準核酸プローブとともに、エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素(以下、単にエキソヌクレアーゼと呼ぶ)を併用する。その好適な例を、図18に示す。ここでは、3’→5’エキソヌクレアーゼの使用を前提としている。
【0250】
本手法においては、蛍光色素と消光物質で2重標識された標的核酸プローブおよび内部標準プローブを使用する。標的核酸プローブおよび内部標準プローに標識する蛍光色素は、それぞれ異なる蛍光色素を使用するのが、より好適である。また、3’→5’エキソヌクレアーゼを使用する場合、蛍光標識する部位は、3’末端部位が好適であり、消光物質標識する部位は、蛍光標識した部位と異なることが好適である。核酸プローブは、一方の遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも非相補的であり、他方の遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも相補的となるように設計する。(図18)においては、標的核酸プローブは、標的遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも非相補的であり、内部標準遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも相補的となるように設計してある。一方、内部標準核酸プローブは、内部標準核酸にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも非相補的であり、標的核酸にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも相補的となるように設計してある。)。上記の特徴を有する標的核酸プローブおよび内部標準核酸プローブは、これらプローブが完全な状態であれば、プローブ分子内に標識された消光物質の影響により、標識蛍光色素の蛍光は消光されている。しかしながら、3’末端にミスマッチが存在すると、その3’末端塩基を切断するという特徴を有する3’→5’エキソヌクレアーゼの存在下で、標的核酸および内部標準核酸にハイブリダイズさせると、3’末端にミスマッチが存在する場合のみ、3’→5’エキソヌクレアーゼがこのミスマッチを認識して、プローブを切断する。従って、各プローブは、標的核酸か内部標準遺伝子のうち、どちらか一方にハイブリダイズした際に、特異的に蛍光を発することとなる(図18)においては、標的核酸プローブは、標的遺伝子にハイブリダイズした時にのみ、切断され蛍光を発し、内部標準核酸プローブは、内部標準遺伝子にハイブリダイズした時にのみ、切断され蛍光を発する。)。また、標的核酸プローブと標的遺伝子の塩基対の数と、標的核酸プローブと内部標準遺伝子の塩基対の数の違いは、1塩基のみであり、その1塩基も標的核酸プローブの末端塩基であるので、標的核酸プローブは、標的遺伝子と内部標準核酸プローブをほぼ区別せず、ハイブリダイズするものと考えられる(これは、内部標準核酸プローブについても同様である。)。このため、各プローブ由来の蛍光値(あるいは発蛍光量)の比は、標的遺伝子・内部標準遺伝子間の遺伝子構成比をほぼ正確に反映する。したがって、本法によっても標的遺伝子の定量が可能となるものと考えられる。
【0251】
(1)実験方法
前述の標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブおよび3’→5’エキソヌクレアーゼを用いて、その標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を求めことが可能であるか検討した。実験では、標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を変化させたDNA溶液を作成し、そこに標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブおよび3’→5’エキソヌクレアーゼを添加後、一定時間反応させた後、蛍光測定を実施した。蛍光測定は、95℃で実施した。そして各プローブ由来の発蛍光量の比と、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比との関係を調べ、この関係式から、遺伝子構成比が定量可能であるか検討した。
以下に、詳細な実験条件を示す。
【0252】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:5' TTGTCCGGAAAGGCCAGAGGAG 3'
内部標準遺伝子の配列:5' ATGTCCGGAAAGGCCAGAGGAG 3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:100nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0253】
・標的核酸プローブ
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:DABCYL-5' CTCCTCTGGCCTTTCCGGACAT 3'-BODIPY FL
色素:BODIPY FL(これまで使用したものと同様)、標識部位:3’末端
消光物質色素:DABCYL(これまで使用したものと同様、標識部位:5’末端
終濃度:200nM
【0254】
・内部標準核酸プローブ
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:DABCYL-5' CTCCTCTGGCCTTTCCGGACAA 3'-TAMRA
色素:TAMRA(これまで使用したものと同様)、標識部位:3’末端
昇汞物質色素:DABCYL(これまで使用したものと同様、標識部位:5’末端
終濃度:200nM
・3’→5’エキソヌクレアーゼ:TaKaRa LA Taq(タカラバイオ)
・バッファー:TaKaRa LA Taqに付属のバッファーを使用した。
・反応時間:1時間
【0255】
(3)結果と考察
蛍光測定値の比と遺伝子構成比との関係を図19に示した。この図より、トータル遺伝子量に関わらず蛍光変化量の比と遺伝子構成比との間に高い相関のあることが確認された。このことより、本手法は遺伝子構成比を正確に測定可能であり、標的遺伝子の定量に利用可能であることが明らかとなった。PCR用耐熱性酵素は、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するものが数多く存在する。このため、PCRに本手法を適用すれば、新たに3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素を添加する必要性がないため、より好適に本法を実施可能である。
【0256】
本実施例においては、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を使用した例について述べたが、5’末端にミスマッチが存在すると、その5’末端塩基を切断するという特徴を有する5’→3’エキソヌクレアーゼを用いても、同様に標的遺伝子を定量可能である。その場合、標的核酸プローブおよび内部標準核酸プローブの蛍光標識部位は5’末端塩基部位とし、消光物質標識部位は3’末端塩基部位とするのが好適である。
【0257】
<実施例11>
蛍光測定値から正確に標的核酸を測定できる計算式(その2)
一方の部位に標識した色素については、標的遺伝子にハイブリダイズした際の蛍光強度と、内部標準遺伝子にハイブリダイズした際の蛍光強度に差が生じるが、他方の部位に標識した色素については、標的遺伝子と内部標準遺伝子のどちらに結合しても、蛍光強度がほぼ同じという特徴を有する二重標識核酸プローブと、消光物質標識プローブを併用した際の実施例を以下に示す。図20に、本法の好適な適用例の模式図を示した。二重標識核酸プローブの一方の末端は、Gとの相互作用により消光するタイプの蛍光色素(色素A)が標識されている。これにより、プローブが標的核酸とハイブリダイズした際には、色素Aの近傍にGが存在するため消光するが、内部標準核酸とハイブリダイズした際には、色素Aの近傍にはGは存在しないため消光しない。他方の末端は、基本的にどのような蛍光色素でも良いが、標的核酸にハイブリダイズしたときの蛍光強度と、内部標準核酸にハイブリダイズしたときの蛍光強度が同じになるような色素で標識しておく。これにより、ハイブリダイズしたプローブに標識した色素Bは、遺伝子の違いに影響を受けず、蛍光強度が同じとなるため、非結合プローブの蛍光を消光物質標識プローブで消光させることにより、色素Bの蛍光量から、ハイブリダイズしたプローブの割合を定量することが可能となる。標識する色素としては、蛍光強度が塩基配列等の影響を受けにくい蛍光色素(色素B)で標識することが好適である。更には、蛍光強度がGの影響を受けにくい蛍光色素で標識するのがより好適である。Gの影響を受ける色素を用いた場合、色素Bの発する蛍光強度をできるだけ強くさせるため、プローブがハイブリダイズする領域は、色素Bの近傍にGが少ない領域を選択するのが好適である。このため、標的核酸と内部標準核酸の塩基配列により、ある程度プローブ設計が制限される場合がある。一方、Gに影響を受けない色素を使用すれば、色素Bの近傍にGが存在したとしても、蛍光が影響を受けないため、プローブ設計の自由度が高くなり、より好適である。
【0258】
蛍光強度が塩基配列等の影響を受けにくい蛍光色素として、Cy系色素、Alexa系色素、Texas Red等を挙げることができる。
【0259】
(1)実験方法
実験は、模擬試料における標的遺伝子存在比の定量値を比較することで、消光物質標識核酸プローブの効果を評価した。標的遺伝子存在比の定量は、下記に示す計算式を用いて実施した。
前述の実験の前に、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子および内部標準遺伝子のみに十分にハイブリダイズするが、消光物質標識核酸プローブとはハイブリダイズしない温度域と、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子、内部標準遺伝子および消光物質標識核酸プローブに十分にハイブリダイズする温度域を予め特定した。その温度域は、前記が52〜57℃付近で、後記が35℃以下であった。この結果を基に、確認実験では、温度を、95℃、52℃、30℃の順で変更し、それぞれの温度で1分間保持した。52℃に保持する目的は、二重標識核酸プローブを標的遺伝子および内部標準遺伝子のみにハイブリダイズさせるためである。その後に、30℃に保持することにより、結合しなかった二重標識核酸プローブを、消光物質標識核酸プローブとハイブリダイズさせ、二重標識核酸プローブの蛍光を消光させた。
【0260】
<計算式>
本実施例において遺伝子構成比を定量するための計算法を説明する。
本計算式で使用する定数を以下に定義した。標的遺伝子に結合した際の蛍光強度と内部標準遺伝子に結合した際の蛍光強度に差が生じるほうの色素を色素Aとし、蛍光強度に差が生じないほうの色素を色素Bとした。
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
【0261】
A:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
a’:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
B:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子および内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
【0262】
実施例9で示したように、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度割合(A)は、以下のように表される。
A=(1-y)+axy+(1-x)a'y=1-y+axy+a'y -a'xy (1)
(1)を変形させると、標的遺伝子の割合(x)は、以下のように表すことが出来る。
x=(1-y-A+a'y)/(a'y-ay) (2)
一方、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度(B)は、以下のように表される。
B=by+1-y (3)
(3)を変形させると、ハイブリダイズしたプローブの割合(y)は、以下のように表すことが出来る。
y=(B-1)/(b-1) (4)
(2)式に、(4)式を代入すると、以下のようになり、
x=(1-(B-1)/(b-1)-A+a'(B-1)/(b-1))/(a'(B-1)/(b-1)-a(B-1)/(b-1))
=(b-B-Ab+A+a'B-a')/(a'B-a'-aB+a) (5)
(5)式は、x以外は全て実験的に求めることが可能であるので、(5)により標的遺伝子の割合を算出することが可能であると考えられる。
【0263】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
実施例9と同様ものを用いた。
模擬試料における内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:20nM、40nM、80nM(標的:内部標準=4:1)
・二重標識核酸プローブの配列と構造
BODIPY FL-5' ACTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC 3'-Cy5
終濃度:400nM
3’末端をCy5標識した以外は、実施例6と同様である。
・消光物質標識核酸プローブ
消光物質としてはDABCYL(グレンリサーチ、米国)を使用した。配列を以下に示す。
消光物質標識核酸プローブA:5' GTCAGTCAGTAGTG 3'-DABCYL、3’末端をDABCYL標識
消光物質標識核酸プローブB:DABCYL-5' GGGAGCAGTCAGTCA、5’末端をDABCYL標識
(下線は、二重標識核酸プローブと結合する領域を示す。)
上記の合成:エスペックオリゴサービス株式会社による委託製造
消光物質標識核酸プローブの終濃度:800nM
Cy5は、励起波長:600nm、測定波長:670nmで測定した。その他の条件(バッファー、使用装置、使用機器等)は、実施例9と同様である。
【0264】
(3)結果と考察
下表に遺伝子構成比の定量結果を示す。この系においても、トータル遺伝子量が低下するにしたがい模擬試料におけるBODIPY FL蛍光強度割合(AおよびB)が低下した。しかしながら、トータル遺伝子量が最も低い20nMの系においても、模擬試料における遺伝子構成比の定量値は、理論値にほぼ近い値が得られた。以上の結果より、消光物質標識核酸プローブを添加し、非結合プローブの蛍光を減少させることによって、遺伝子構成比を正確に定量でき、その結果、標的遺伝子量を正確に定量できることが明らかとなった。また、本実施例で示した計算方法も、遺伝子構成比の定量に有効であることが明らかとなった。
【0265】
実施例9と同様、消光物質標識核酸プローブは、非結合プローブの蛍光を消光させることによって、標的遺伝子および内部標準遺伝子にハイブリダイズしたプローブに由来する蛍光を正確に測定することが可能となる。このため、消光物質標識核酸プローブは、本出願において示した全ての標的核酸プローブ(内部標準核酸プローブおよび二重標識核酸プローブを含む)及び、これらプローブを用いた測定法に有効である。
また、遺伝子増幅法により増幅された産物を対象とした場合も、消光物質標識核酸プローブは前述と同様の理由で有効である。
【0266】
【産業上の利用可能性】
【0267】
本願の新規混合物を前記のような効果を生ずる核酸測定方法になる。それで本願発明は、遺伝子工学、医薬、医療技術、農業技術、各種のバイオ技術の開発、廃棄物処理プラントにおける複合微生物の開発等に大いに貢献するものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の新規測定方法用の新規混合物に関する。詳しくは、1種若しくは複数種の標的核酸を、正確、簡便に且つ安価に測定するための新規混合物、及びそれを用いた標的核酸の測定方法、並びにそれらに用いられる核酸プローブ及び測定キット類に関する。
【背景技術】
【0002】
標的核酸測定方法の多くの例は、標的核酸とハイブリダイズすることで蛍光が変化する性質を有する蛍光色素標識核酸プローブ(均一溶液系プローブ、又は標的核酸プローブという場合もある。同じ意味を有する。)を用いて、均一溶液系で測定が行われる方法である。当該方法は、本特徴により、一般的にハイブリダイゼーション方法において不可欠な工程であった1)標的核酸の固定化工程(或いはプローブの洗浄工程)、2)未反応プローブの洗浄工程(或いは未反応遺伝子の固定化工程)が不要となるため、簡便、迅速且つ正確な方法である。このため、当該標的核酸定量法は、様々な遺伝子解析手法に汎用されている(非特許文献1参照。)。
【0003】
均一溶液系プローブを用いて直接標的核酸を測定する場合、次の手順から目的を達成することが出来る。
(1)予め用意した既知濃度の標的核酸と、均一溶液系プローブとをハイブリダイゼーションさせ、その際の光学的キャラクターの変化若しくは変化量をモニタリングしておく。
(2)当該変化若しくは変化量は、標的核酸量と正比例の関係にあるため、この関係式を作製すると、標的核酸の検量線となる。
(3)未知試料についても上記と同様の操作を実施し、得られた光学的キャラクターの変化若しくは変化量に基づいて、当該検量線から標的核酸量を定量する。
【0004】
しかしながら、当該方法では、検量線作成の際に添加したプローブ濃度以上に標的核酸が存在した場合、光学的キャラクターの変化若しくは変化量は常に一定となる。このため、既存の測定法では、1)標的核酸を希釈する、2)プローブ濃度を変化させた系を複数系列用意する、という手段の内、どちらかを講じる必要性がある。1)の対策を講じた場合、希釈工程が必要となるため、操作が煩雑となり、(1)分析に時間がかかる、(2)希釈による誤差が生じる、(3)分析を自動化する際は、希釈のための装置が必要、といった問題が生じる。また、2)の対策を講じた場合は、ハイブリダイゼーションに最適な反応時間、反応温度が添加したプローブ濃度によって異なるため(標的核酸とプローブの高濃度で存在すれば、ハイブリダイゼーションが完了する時間は短なり、その逆の場合は、反応時間は長くなる。また、Tm値は、標的核酸とプローブが高濃度で存在すれば、高くなり、その逆の場合は、低くなる。)、(1)プローブ濃度毎に、実験系を最適化する必要性がある、(2)添加したプローブ濃度毎に検量線を用意する必要性がある、といった問題点が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】蛋白質・核酸・酵素;35巻、17号、1990年、共立出版株式会社;実験医学、15巻、7号、1997年、羊土社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、前記の状況に鑑み、均一系核酸プローブを用いる方法において、1)標的核酸の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有する核酸測定方法を可能とする標的核酸測定用の新規混合物、それを用いた新規核酸測定方法、及びそれらに用いる新規核酸プローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するにあたり、以下のような種々の検討を行い、次の知見を得て本発明を完成した。即ち、既知濃度の特定の内部標準核酸、均一系の蛍光色素で標識された特定の標的核酸プローブ及び/又は前記の内部標準核酸にハイブリダイズし、蛍光色素で標識された特定の内部標準核酸プローブを含む反応液(ハイブリダイゼーション反応系)に標的核酸を添加し、ハイブリダイゼーション反応を行わせ、発生する光学的キャラクターの変化を測定する。そして、内部標準核酸と標的核酸との測定値の比を求めることにより、本発明の課題は達成できる。
【0008】
すなわち、本発明は、
1) 下記のタイプの一種若しくは二種以上の均一溶液系核酸プローブと下記のタイプの一種若しくは二種以上の内部標準核酸を、又は更に内部標準核酸プローブを含むことを特徴とする一種若しくは二種以上の標的核酸を測定するための核酸測定用新規混合物又は新規反応液(以下単に、両者を一緒に新規混合物と総称する。)、
A)均一溶液系核酸プローブ(以下、標的核酸プローブと略称する。):以下の特性を有する:
a) 一本鎖のオリゴヌクレオチドからなる。
b) 一種若しくは二種以上の蛍光色素で、且つ1若しくは2分子以上の蛍光色素で、オリゴヌクレオチドの末端部位及び/又は鎖中部位の塩基部位、糖部位及び/又はリン酸部位で標識されている。
c) 標的核酸及び/又は内部標準核酸とハイブリダイズしたとき蛍光キャラクターが変化し得る核酸プローブである。
d) 標的核酸と内部標準核酸とを区別せずにハイブリダイズすることが出来る。
e) 内部標準核酸とハイブリダイズしたときの量と、標的核酸とハイブリダイズしたときの蛍光キャラクター変化量との間に差が生じることが出来る。
【0009】
B) 内部標準核酸(内部遺伝子、又は内部標準遺伝子という場合もある。):前記標的核酸プローブがハイブリダイズし得る領域の標的核酸の構造とは、少なくとも一部位に相違がある構造を有し、且つ前記均一系プローブが当該核酸とハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量と、標的核酸と前記標的核酸プローブがハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量との間に差が生じ得る内部標準核酸。
【0010】
C) 内部標準核酸プローブ:以下の特性を有する:
前記標的核酸プローブの特質a)〜e)を有し、更に、蛍光標識部位及び標識蛍光色素の蛍光キャラクターは、前記標的核酸プローブのものとは各々異なったものにする。
【0011】
2)標的核酸プローブが一部領域で標的核酸と相補しない塩基配列を有するものである標的核酸プローブを含む前記1)に記載の新規混合物、
3)前記核酸プローブ類が二種以上の蛍光色素で標識されている場合、それらの蛍光キャラクターが異なる蛍光色素で標識されているものである前記1)に記載の新規混合物、
4)蛍光キャラクター変化量が、蛍光強度の増加(例えば、FRET現象を有する色素で標識されたプローブ)又は減少(例えば、Qプローブ)である前記1)に記載の新規混合物、
5)標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び/又は内部標準核酸とハイブリダイズした際、少なくとも2つの部位(末端部、鎖中部の塩基部、糖部、リン酸部)が、蛍光キャラクターが異なる蛍光色素で標識されている(以下、二重標識核酸プローブと略称する。)ものである前記1)又は3)に記載の新規混合物、
【0012】
6)少なくとも2つの部位が少なくとも2つの塩基である前記5)に記載の新規混合物、
7)塩基がシトシン(以下、Cと略称する。)である前記6)に記載の新規混合物、
8)Cが両末端の塩基である前記7)に記載の新規混合物、
9)標的核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に相補的である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
10)二重標識核酸プローブが、一方の部位においては、標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と内部標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量との間に差が発生するが、他方の部位においては、蛍光キャラクター変化量に差が発生しない二重標識核酸プローブである前記5)に記載の新規混合物、
【0013】
11)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)若しくは両末端のどちらか一方を除いて、標的核酸および内部標準核酸に少なくとも相補的である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
12)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列において、蛍光色素で標識された末端部の反対側が、標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補的でない前記1)又は5)に記載の新規混合物、
13)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが、標的核酸および内部標準核酸に対して、少なくとも相補的塩基配列を有するものである前記1)又は5)に記載の新規混合物。
14)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの一方の末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸のGの数が、標的核酸>内部標準核酸あるいは標的核酸<内部標準核酸である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
15)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における標的核酸および内部標準核酸のGの数が、一方の末端領域において標的核酸>内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸<又は=内部標準核酸であり、一方の末端領域において標的核酸<内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸>又は=内部標準核酸である前記1)又は5)に記載の新規混合物、
【0014】
16)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおける一方の末端塩基に対応する塩基がグアニン(G)以外であり、他方の末端塩基に対応する塩基がGである前記1)又は5)に記載の新規混合物、
17)標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGであることを特徴とする前記1)又は5)に記載の新規混合物、
18)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸の塩基配列が、一方の末端領域において異なるが、他方の末端領域においては同じである前記1)又は5)に記載の新規混合物、
19)前記1又は5の新規混合物が、標的核酸および内部標準核酸にハイブリダイズしなかった標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの蛍光をD)減少させ得る蛍光消光物質、又はE)当該物質で標識されたオリゴヌクレオチド(以下単に消光物質標識プローブと呼ぶ)を、更に1種若しくは二種以上含むものである前記1)又は5)に記載の新規混合物、
【0015】
20)消光物質標識プローブが、下記の特性1及び/又は特性2を有するものである前記19)に記載の新規混合物、
特性:
(1)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸あるいは内部標準核酸との複合体の解離温度よりも、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと消光物質標識プローブとの複合体の解離温度が低い。
(2)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーション及び標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと内部標準核酸との間のハイブリダイゼーションが完了した後に、前記1)の特性故に消光物質標識プローブが均一溶液系プローブ又は二重標識核酸プローブとのハイブリダイズすることが出来る。
【0016】
21)新規混合物が、前記1)に記載のa)内部標準核酸、b)標的核酸プローブ及び/又はc)内部標準核酸プローブ、及びd)エキソヌクレアーゼ(exonuclease)を、下記の条件で含むもの、又はエキソヌクレアーゼがセットして付帯したものである前記1)に記載の新規混合物、
条件:標識核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び内部標準核酸の少なくとも一方に対して、蛍光標識部位領域(領域:1乃至3塩基分、好適には1塩基分)において、相補的でない。
22)exonucleaseが、3’→5’exonuclease、5’→3’exonuclease、S1 Nuclease、Mung Bean Nucleaseである前記21)に記載の新規混合物、
23)新規混合物が、前記1)に記載の内部標準核酸と標的核酸プローブを対とする、一対若しくは二対以上を含むのである前記1)に記載の新規混合物、
24)前記1)又は5)に記載の新規混合物を用いて、一種若しくは二種以上の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法、
25)標的核酸測定する方法が、一種若しくは二種以上の標的核酸及び/又は内部標準核酸の存在下でハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブの蛍光色素に由来する蛍光キャラクター変化を測定し、得られた測定値の比から一種若しくは複数種の標的核酸を測定するものである前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
26)測定対象の核酸が遺伝子増幅方法で増幅されたもの(定常期に到る任意の時期(初期、中期及び定常期のいずれか一つ。)まで増幅されたものである前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
27)測定対象の核酸が、遺伝子増幅方法により増幅された標的核酸および内部標準核酸ものの少なくとも一方である前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
【0017】
28)測定対象の核酸が、遺伝子増幅方法により、同一のプライマー用いて増幅された、標的核酸と内部標準核酸のものの少なくとも一方である前記24)に記載の核酸の新規測定方法、
29)前記1)〜23)の何れか一つに記載の新規混合物が、下記タイプの標的核酸プローブ若しくは二重標識核酸プローブ及び既知濃度の前記1)〜20)の何れか一つに記載の内部標準核酸を含むものである前記に記載の核酸の新規測定方法。
標的核酸プローブ(以下このタイプのものを認識可能核酸プローブという。)
前記1)〜23)の何れか一つに記載の標的核酸プローブが、蛍光色素標識部位の少なくとも一部位若しくは二部位以上において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
二重標識核酸プローブ(以下このタイプのものを認識可能二重標識核酸プローブという。)。
前記5)〜23)の何れか一つに記載の二重標識核酸プローブが、二種類の蛍光色素のどちらか一方のものの標識部位において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
【0018】
30)核酸の前記新規測定方法において、標的核酸プローブと内部標準核酸プローブに由来する、測定された蛍光キャラクター変化量の比に基づいて、標的核酸と内部標準核酸との構成比を求め、本構成比から標的核酸を測定するものである前記29)に記載の核酸の新規測定方法、
31)前記24)又は29)に記載の核酸測定方法において、内部標準核酸と標的核酸のどちらにもハイブリダイズしなかった標的プローブ若しくは内部標準核酸プローブの蛍光を消光させることを特徴とする標的核酸の新規定量方法、
32)蛍光を消光させる方法が、標的核酸プローブの蛍光を減少させる効果を有する物質及び/又は消光物質標識プローブを用いる方法である前記31)に記載の核酸の新規定量方法、
【0019】
33)前記24)又は29)に記載の核酸の新規測定方法において、光学的キャラクター変化の測定値から、正確に標的核酸を計算する計算式:
x=(-a'-B+Ba'+b'+A-Ab')/(b'-b-Ab'+Ab-a'+a+Ba'-Ba)
但し、上記式は下記の条件である場合で、上記の記号は以下の通りである。
条件:
測定方法が二重標識核酸プローブを使用する場合で、且つ、色素A及びBで標識されている場合である。
記号:
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
A:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
a’:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
B:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
b’:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
34)前記24)又は29)に記載の核酸の新規測定方法において、光学的キャラクター変化の測定値から、正確に標的核酸を計算する計算式:
x=(b-B-Ab+A+a'B-a')/(a'B-a'-aB+a)
但し、上記式は下記の条件である場合で、上記の記号は以下の通りである。
条件:
測定方法が二重標識核酸プローブを使用する場合で、且つ、色素A及びBで標識されている場合である。
記号:
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
A:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
a’:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
B:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子および内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
35)前記1)又は5)に記載の新規混合物からなることを特徴する核酸測定用キット類、
36)前記1)又は5)に記載の一種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系において、遺伝子増幅方法により一種若しくは複数種の標的核酸、および内部標準核酸を定常期に到る任意の時期まで増幅し、得られた反応液若しくは増幅産物を試料とし、一種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法、
37)核酸増幅方法が標的核酸と内部標準核酸とを共通のプライマーで増幅するものである前記32)に記載の一種若しくは複数種の増幅前の核酸を測定する方法、
【0020】
38)プライマーがQプローブである前記36)に記載の一種若しくは複数種の増幅前の核酸を測定する方法、
39)下記のタイプの核酸プローブと下記のタイプの内部標準核酸との対を一種若しくは複数対を含むことを特徴とする、Tm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
核酸プローブ:一種若しくは二種以上の蛍光色素で標識された一本鎖のオリゴヌクレオチドであり、且つ標的核酸及び内部標準核酸にハイブリダイズできる核酸プローブで、標的核酸及び内部標準核酸にハイブリダイズしたときに、標識された蛍光色素の蛍光キャラクターが変化する核酸プローブ。複数種の核酸プローブの場合、各プローブの蛍光色素が異なる。
内部標準核酸:上記核酸プローブが標的核酸とハイブリダイズする部位の塩基配列と、内部標準核酸とハイブリダイズする部位との塩基配列が一部異なることを特徴とする内部標準核酸、
【0021】
40)核酸プローブが、シトシン部位において一種の蛍光色素で標識された一本鎖のオリゴヌクレオチドである前記39)に記載のTm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
41)蛍光色素の蛍光キャラクターの変化が蛍光強度の減少である(核酸プローブがQプローブである)前記39)に記載のTm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
42)蛍光色素の蛍光キャラクターの変化が蛍光強度の増加である前記35)に記載のTm値測定に基づく一種若しくは複数種の標的核酸を測定するための新規混合物、
【0022】
43)前記39)に記載の新規混合物を用いて、複数種の標的核酸存在下で、温度を変化させながら、反応液の蛍光強度を測定した後、下記の手順により、標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法、
手順:
1)測定された蛍光強度変化のカーブを描く。
2)当該カーブを微分する。
3)各ピークを積分してピークの面積を求める。
4)内部標準核酸のピーク面積と標的核酸のピーク面積比を求める。
5)当該比と内部標準核酸の濃度を乗ずる。
44)標的核酸が、前記35)に記載の内部標準核酸を含む反応液系で遺伝子増幅方法により増幅されたものである前記37)に核酸新規測定方法、
【0023】
45)プライマーがQプローブである前記43)に記載の核酸の新規測定方法、
46)前記1)又は39)に記載の新規混合物からなることを特徴とする核酸測定キット類、
【0024】
47)前記に記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブで、少なくとも下記の何れかの一つの構造を有するもの、
1. 標的核酸プローブ
(1)一末端若しくは両末端部位で、標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない部位を有する。
(2)前記(1)で標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない一方の部位に蛍光色素が標識され、蛍光色素標識部位の塩基から1乃至3塩基の範囲内(標識塩基部位を1とする。)にC又はGがある。
(3)前記(1)で標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない一方の部位は、蛍光色素標識部位の反対側にある。
(4)前記(1)で標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない一方の部位は、塩基数にして1乃至4塩基範囲である。
(5)前記(1)で標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGである。
【0025】
2. 二重標識核酸プローブ
(6)蛍光色素で標識された部位が少なくとも2つの塩基である。
(7)前記(6)の塩基がシトシン(以下、Cと略称する。)である。
(8)前記(7)のCが両末端の塩基である。
(9)前記(6)の塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に相補的である。
(10)前記(6)又は(9)の二重標識核酸プローブは、一方の部位においては、標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と内部標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量との間に差が発生するが、他方の部位においては、蛍光キャラクター変化量に差が発生しない二重標識核酸プローブである。
【0026】
3. 標的核酸プローブ及び二重標識核酸プローブに共通の構造
(11)前記(1)〜(10)に記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に少なくとも相補的である。
(12)前記(1)〜(11)に前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが、標的核酸および内部標準核酸に対して、完全に相補的塩基配列を有するものである。
(13)前記(1)〜(12)に前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの一方の末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸のGの数が、標的核酸>内部標準核酸あるいは標的核酸<内部標準核酸である。
【0027】
(14)前記(1)〜(13)に前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における標的核酸および内部標準核酸のGの数が、一方の末端領域において標的核酸>内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸<又は=内部標準核酸であり、一方の末端領域において標的核酸<内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸>又は=内部標準核酸である。
【0028】
(15)前記前記(1)〜(14)に記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおける一方の末端塩基に対応する塩基がグアニン(G)以外であり、他方の末端塩基に対応する塩基がGである前記1)又は5)に記載の新規混合物。
(16)前記前記(1)〜(15)に記載の何れか一項において、標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGである。
(17)前記記載の何れか一項において、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸の塩基配列が、一方の末端領域において異なるが、他方の末端領域においては同じである。
を提供する。
【発明の効果】
【0029】
上記のような本発明の新規混合物を用いることにより、以下のような特徴を有する新規核酸測定方法が出来るようになった。即ち当該方法による標的核酸の測定において、1)標的核酸の希釈工程が不要、2)使用するプローブの濃度を、標的核酸濃度に応じて変えることが不要、3)同一測定系で複数の標的核酸を測定できる、4)測定感度が向上した、5)核酸増幅方法と本発明の核酸測定方法を合体することにより、
【0030】
(1)遺伝子増幅反応終了後(エンドポイントで)、反応チューブを開放することなく、迅速且つ簡便に測定することができるので、ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速に標的核酸の測定ができる、(2)反応チューブを解放する必要性が無く、増幅産物によるコンタミの心配がない、(3)競合法であるため阻害物質の影響を受けにくい、(4)遺伝子増幅と増幅産物の検出とを完全に分離できるため、大量サンプルの処理が可能となり、サンプル処理能力を、簡便且つ安価に向上させる事が可能(例えば、蛍光測定機能を持たない安価なPCR装置を、複数台用いて遺伝子増幅した後、蛍光測定装置にて順次解析することで、例え蛍光測定装置が一台であっても大量サンプルの処理が可能となる)、(5)増幅の過程をリアルタイムモニタリングする必要性が無く、PCR反応に不可欠なサーマルサイクラーとしての機能が不要となるため、非常に簡便かつ安価な測定装置で核酸測定が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】QProbeを用いた標的遺伝子と内部標準遺伝子の検出の模式図である。
【図2】QProbe用いた解離曲線(Tm)解析による遺伝子定量方法の模式図である。
【図3】二重標識QProbe(Switching probe)用いた遺伝子定量方法の模式図である。
【図4】競合的PCR方法の原理の模式図である。
【図5】消光率の比と遺伝子構成比との関係(2種のQProbeを使用した場合)を示す図である。○トータル遺伝子量=200nM、■トータル遺伝子量=800nM
【図6】消光率の比と遺伝子構成比との関係(Switching probeを使用した場合)を示す図である。
【図7】消光率の比と核酸増幅反応(PCR)前の遺伝子構成比との関係(Switching probeを使用し、遺伝子増幅方法を介したエンドポイント遺伝子定量法を使用した場合)を示す図である。
【図8】実施例2の実験手順を示す図である。
【図9】標的核酸プローブを用いた遺伝子構成比定量法の模式図である。
【図10】1つの均一溶液系プローブ(QProbe)を用いた遺伝子構成比と蛍光消光率との関係を示す図である。□トータル遺伝子量:200nM、○トータル遺伝子量:400nM、◆トータル遺伝子量:800nM
【図11】2重標識核酸プローブによる遺伝子検出の模式図(その2)である。
【図12】BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比と、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比との関係を示す図である。○トータル遺伝子量:200nM、◆トータル遺伝子量:400nM△トータル遺伝子量:800nM
【図13】2重標識核酸プローブによる遺伝子検出の模式図(その3)である。
【図14】TAMRA補正の有無による検量線の違いを示す図である。●トータル遺伝子量:200nM、▲トータル遺伝子量:800nM
【図15】プローブ状態と蛍光変化に関する模式図である。
【図16】標的遺伝子存在比と消光率比の関係式を示す図である。
【図17】消光物質核酸プローブ非存在下、および存在下における標的遺伝子および内部標準遺伝子の検出を示す図である。
【図18】3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素を用いた手法を示す図である。
【図19】蛍光値比と遺伝子構成比との関係を示す図である。■100nM、◇800nM
【図20】二重標識核酸プローブと消光物質標識プローブを併用した遺伝子定量手法に関する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明を更に詳細に説明する前に本発明で使用する用語を説明又は定義する。
本発明において用いる用語は、特別な定義がない場合は、現在、分子生物学、遺伝学若しくは遺伝子工学、微生物学若しくは微生物工学等で一般的に使用されている用語と同じ意味である。
【0033】
「1種若しくは二種以上」、「1種又は二種以上」、「一種若しくは複数種」とは、少なくとも1種の意味である。
「標的核酸」とは、検出・測定を目的とした核酸の意味である。
「核酸」、「標的核酸」、「内部標準核酸」には遺伝子も含まれるものとする。そして、本明細書においては一般的な場合は「標的核酸」、「内部標準核酸」又は単に「核酸」なる用語を使用し、具体的な場合は「標的遺伝子」、「内部標準遺伝子」又は単に「遺伝子」なる用語を使用した。
「試料中に含まれる核酸」のことを単に標的核酸又は目的核酸という場合がある。
【0034】
本発明において「核酸を測定する」、或いは「核酸濃度を測定する」なる用語は、標的核酸の濃度を定量することは勿論のこと、定量的検出をすること、定性的検出をすること、核酸増幅系の蛍光強度を単に測定するか若しくは単にモニタリングすること、又、測定反応系を複数の波長で光学的キャラクター変化若しくは変化量を測定して、その測定値の比を計算することによって標的核酸を求める操作等をも意味するものとする。又、このようにして得られたデーターを公知の蔵田らの方法(EP特許公開公報、EP1 046 717 A9号)で解析して、1つの系内に存在している濃度(コピー数等)を求める操作等も含めるものとする。
【0035】
上記の理由で、本発明の”試料に含まれる核酸”とは、検出・測定を目的とした特定の核酸とは限らず、意図せずとも本発明の方法により検出され得る不特定の核酸をも含むものとする。勿論遺伝子等を含む。それらの核酸が混在していてもよい。濃度の大小も問わない。核酸はDNA、RNA及びそれらの修飾物を含むものである。
【0036】
「光学的キャラクター」なる用語は、核酸プローブを標識する蛍光物質、クエンチャー物質等の各種の吸収スペクトル、若しくは蛍光発光スペクトル、及びそれらの吸収強度、偏光、蛍光発光、蛍光強度、蛍光寿命、蛍光偏光、蛍光異方性等の光学的特性等のことをいう(「蛍光強度」、単に「蛍光」で総称する場合がある。)。又、核酸プローブ等に標識されている少なくとも1つの蛍光物質等について少なくとも1種以上の測定波長で測定された測定値を総合的に評価して得た性質のこともいう。例えば、核酸の変性反応の蛍光強度曲線等もその1つである。
又、一般的な場合は、「光学的キャラクター」なる用語を使用し、具体的な場合は、「蛍光強度」、単に「蛍光」なる用語を使用した。
【0037】
本発明において、「光学的キャラクターの変化量」、「蛍光強度変化量」、「蛍光変化量」なる用語は、本発明の増幅核酸に基づく蛍光強度の変化だけでなく、当該増幅核酸に、蛍光物質及び/又はクエンチャーで標識された均一溶液系核酸プローブをハイブリダイズさせたときの、そのハイブリダイゼーション前後の蛍光強度の変化若しくは変化量をも含めるものとする。
【0038】
本発明においては、プライマープローブと対応核酸とのハイブリダイゼーションによるプライマープローブと核酸の複合体のことをハイブリッド、またはハイブリッド複合体、または単に、核酸・プライマー複合体またはプライマー・核酸複合体という。
本発明において、例えば、核酸プローブの一部領域で標的核酸に「相補する」及び「相補的である」、又、「相補しない」及び「相補的でない」などの用語を使用しているが、この場合の「相補」とは、二種のオリゴヌクレオチドが存在した場合、各オリゴヌクレオチドの対応する核酸塩基同士が水素結合できるという意味である。また、ハイブリダイズできるという意味である。また、核酸プローブの一部領域が標的核酸の一部領域で「対応する」なる用語を使用しているが、この「対応」とは、核酸塩基同士の水素結合等の概念はなく、ただ単に1対1の関係にあるという意味である。従って、「対応」には「相補する」及び「相補的である」、又、「相補しない」及び「相補的でない」の双方の場合を含む。
【0039】
本発明において「光学的キャラクター変化率」とは、本発明の核酸プローブ(標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブ)及び標的核酸及び/又は内部標準核酸とがハイブリダイズしていない状態の反応系若しくは測定系の蛍光色素等の光学的測定値に対する、それらがハイブリダイズしている状態のものの比である。一例として{[ハイブリダイズしている状態の測定値]/[ハイブリダイズしていない状態の測定値]}×100なる計算式を挙げることが出来る。この場合、当該変化が蛍光で消光の場合は「蛍光消光率」と、発光の場合「蛍光発光率」等と言う。ハイブリダイズしている状態は、反応若しくは測定温度が好適には10℃〜90℃で出現し、ハイブリダイズしていない状態は、前記以上で出願する。しかし、中間状態が存在するので、各実験例毎に正確に測定しておくのが好適である。
なお、本発明の核酸プローブが本発明の蛍光色素で標識される部位のことを「蛍光色素標識部位」又は「蛍光標識部位」という。しかし、同じ意味である。
【0040】
本発明でいう蛍光色素(蛍光物質という場合もある。)とは、一般に核酸プローブに標識して、核酸の測定・検出に用いられている蛍光物質の類である。例えば、フルオレセイン(fluorescein)又はその誘導体類{例えば、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)(FITC)若しくはその誘導体等、Alexa 488、Alexa 532、cy3、cy5、6-joe、EDANS、ローダミン(rhodamine)6G(R6G)又はその誘導体(例えば、テトラメチルローダミン(tetramethylrhodamine)(TMR)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(tetramethylrhodamine isothiocyanate)(TMRITC)、x−ローダミン(x-rhodamine)、テキサスレッド(Texas red)、ボデピー(BODIPY)(商標名)FL(商品名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国;BODIPYについては以下同様である。)、ボデピー(BODIPY)FL/C3、ボデピー(BODIPY)FL/C6、ボデピー(BODIPY)5-FAM、ボデピー(BODIPY)493/503、ボデピー(BODIPY)TMR又はその誘導体(例えば、ボデピー(BODIPY)TR、ボデピー(BODIPY)R6G、ボデピー(BODIPY)564、ボデピー(BODIPY)581、タムラー(TAMRA)、パッシフィクブルー(Pacific Blue)(商品名;モレキュラー・プローブ(Molecular Probes)社製、米国)等を挙げることができる。
【0041】
上記の中でも、TAMRA、FITC、EDANS、テキサスレッド、6-joe、TMR、Alexa 488、Alexa 532、ボデピー(BODIPY)FL/C3、ボデピー(BODIPY)R6G、ボデピー(BODIPY)FL、Alexa 532、ボデピー(BODIPY)FL/C6、ボデピー(BODIPY)TMR、5-FAM、ボデピー(BODIPY)493/503、ボデピー(BODIPY)564、ボデピー(BODIPY)581、Cy3、Cy5、x-Rhodamine、パッシフィクブルー等を好適なものとして挙げることができる。
クエンチャー物質とは、前記蛍光物質に作用して、その発光を抑制もしくは消光する物質である。例えば、Dabcyl、QSY7(モルキュラー・プローブ)、QSY33(モルキュラー・プローブ)、Ferroceneまたはその誘導体、methyl viologen、N,N'-dimethyl-2,9-diazopyrenium、BHQ、Eclipseなど、好適にはDabcylなどを挙げることができる。
前記のような、蛍光物質およびクエンチャー物質を、オリゴヌクレオチドの特定の位置に標識することにより、蛍光物質の発光は、クエンチャー物質によりクエンチング効果を受ける。
【0042】
核酸増幅方法は、本発明の目的を達成出来ればどのような方法でもよい。
本発明でいう核酸増幅方法とは、インビトロ(in vitro)で核酸を増幅する方法のことをいう。公知、未公知を問わない。例えば、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、TAS方法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)方法、LAMP方法、NASRA方法、RCA方法、TAMA方法、UCAN方法等を全て含めるものとする。好適にはプライマープローブ又は単なるプローブを用いるPCR方法で行うのが好適である。
【0043】
前記PCR方法はどのような形式のものでも好適に採用できる。
例えば、定量的PCR方法、リアルタイムモニタリング定量的PCR方法、RT-PCR、RNA-primed PCR、Stretch PCR、逆PCR、Alu配列を利用したPCR、多重PCR、混合プライマープローブを用いたPCR、PNAを用いたPCR、PCRにより増幅した核酸について、融解曲線の解析若しくは分析する方法等をも含むものとする。
【0044】
”Qプローブ”又は”QProbe”とは、KURATAらにより開発されたプローブ(KURATA et al.,Nucleic acids Research,2001,vol.29,No.6 e34)である。このプローブは、1本鎖のオリゴヌクレオチドを蛍光色素で標識した均一溶液系核酸プローブであるが、蛍光色素で標識した部位の塩基がG又はCであるか、又は対応核酸の標識塩基に対応する塩基から1乃至3塩基離れて(標識塩基に対応する塩基を1と数える。)G又はCが存在する均一溶液系核酸プローブである。
【0045】
蛍光色素のオリゴヌクレオチドの標識部位は、末端部、鎖中でも良い。標識位置は糖部位、リン酸部位、塩基部位どちらでもよい。糖部位においては、3’末端の3’又は2’位CのOH基、又は5’末端を脱リンして得られる5’位CのOH基である。リン酸部においては、リン酸に替えて、スルホン酸基、スルホニル基でもよい。好ましくは、5’又は3’末端部位、より好ましくは5’又は3’末端部、最良は5’又は3’末端である。好適には、C又はGを含む部位か、それら自身の部位である。最適には、Cを含む部位か、C自身の部位である。
【0046】
本発明は4つの発明からなる。各発明は更に副発明を含む。
本発明に記載の新規混合物は、液体状のもの、粉末状のもの、錠剤状のもの、カプセル状のものどちらでも好適に採用でき、特に限定されない。それで、以下の記載においては、新規混合物の形態を特別に記載していない。
【0047】
又、以下に記載の標的核酸、内部標準遺伝子は核酸増幅方法で、任意の増幅時期(定常期を含む。)まで増幅された増幅物も含まれるものとする。
又、標的核酸は、それに対応する内部標準核酸と一緒に一つの系で同時に増幅されたもの、その増幅反応液、又、その増幅反応液から標的核酸が内部標準核酸と一緒且つ同時に分離されたものも含まれるものとする。この場合、同じプライマーを使用してもよいし、しなくともよい。核酸増幅方法は下記に示した通常のものでる。
【0048】
本発明で使用する核酸プローブ(標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブ)は対応する核酸(標的核酸、内部標準核酸)にハイブリダイズしたとき、光学的キャラクターが変化するものであるが、蛍光強度が減少するもの及び増加するものを例示できる。例えば、蛍光強度が減少するものとして前記したQプローブ(QProbe)、蛍光強度が増加するものとしてFRET現象に関係する2つの色素で標識された核酸プローブ(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.pp8790-8794,1988;USA特許No.4,996,143;日本特許公表公報(A)平5-50152号;日本特許公開公報(A)平8-313529号;日本特許公開公報(A)平10-215897号;特願平11-292861号)等を一例として示される。
【0049】
A)第1発明
本発明は、下記のタイプの一種若しくは二種以上の均一溶液系核酸プローブと下記のタイプの一種若しくは二種以上の内部標準核酸を、又は更に内部標準核酸プローブを含むことを特徴とする一種若しくは二種以上の標的核酸を測定するための核酸測定用新規混合物又は新規反応液(以下単に、両者を一緒に新規混合物と総称する。)である。なお、均一溶液系核酸プローブと内部標準核酸の組み合わせ自体だけ、又は更に、内部標準核酸プローブを加えた組み合わせ自体だけの一対若しくは二対以上を含むものも、本発明の新規混合物の範囲内のものである。
【0050】
A)均一溶液系核酸プローブ(以下、標的核酸プローブと略称する。):以下の特性を有する:
a) 一本鎖のオリゴヌクレオチドからなる。その長さは10〜100塩基、好適には15〜60塩基、より好適には20〜40塩基である。デオキ(olygodeoxynucleotide)体でもリボキシ(olygoribonucleotide)体でもよい。それらのキメラ体(chimeric olygonucleotide)でもよい。
b) 一種若しくは二種以上の蛍光色素で、且つ1若しくは2分子以上の蛍光色素で、オリゴヌクレオチドの末端部位及び/又は鎖中部位の塩基部位、糖部位及び/又はリン酸部位で標識されている。
c) 標的核酸及び内部標準核酸の少なくとも何れか一方とハイブリダイズしたとき蛍光キャラクターが変化し得る。
d) 標的核酸及び内部標準核酸の双方にハイブリダイズすることが出来る。
e) 内部標準核酸とハイブリダイズしたときの量と、標的核酸とハイブリダイズしたときの蛍光キャラクター変化量との間に差が生じ得る。
f) 二種以上の蛍光色素で標識した場合には、ハイブリダイズしたときの蛍光キャラクター変化に基づいて、標的核酸及び内部標準核酸を各々識別し得る。
g) 鎖長は、好適には、内部標準核酸と同じか、近似しているものである。
h) 鎖長は、好適には、内部標準核酸プローブと同じか、近似しているものである。
【0051】
B) 内部標準核酸:
a) 一本鎖のオリゴヌクレオチドからなる。その長さは40〜2000塩基、好適には60〜500塩基、より好適には80〜150塩基である。デオキ(olygodeoxynucleotide)体でもリボキシ(olygoribonucleotide)体でもよい。それらのキメラ体(chimeric olygonucleotide)でもよい。
b)前記標的核酸プローブと対応する領域の標的核酸の構造とは、少なくとも一部位に相違がある構造を有し、且つ前記均一系プローブが当該核酸とハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量と、標的核酸と前記標的核酸プローブがハイブリダイズした際に生じる蛍光キャラクター変化量との間に差が生じ得る。
【0052】
C) 内部標準核酸プローブ:以下の特性を有する:
前記標的核酸プローブの特質a)〜e)を有し、更に、蛍光標識部位及び標識蛍光色素の蛍光キャラクターは、前記標的核酸プローブのものとは各々異なったものである。
【0053】
本発明において、好ましくは、上記の標的核酸プローブ、内部標準核酸、又は更に内部標準核酸プローブは、次の少なくとも何れかの一つの構造をとり得るもので、以下の関係を有するものを含む新規混合物である。
1)標的核酸プローブ:
(1)少なくとも標的核酸と相補的である。
(2)少なくとも一部若しくは二部領域を除いて、内部標準核酸と相補的である。
(3)一部若しくは二部以上の領域が標的核酸と相補的でない領域を有する。
(4)二種以上の蛍光色素で標識した場合には、標識部位の構造は少なくとも相違する。
(5)前期の構造は、塩基配列である。
【0054】
(6)前記の塩基配列は、塩基数にして、少なくとも2乃至3塩基分以上である。
(7)前記記載の相補している構造を有する部位において蛍光色素で標識されている。
(8)前記記載の相補していない構造を有する部位において蛍光色素で標識されている。
(9)前記記載の標的核酸プローブの蛍光色素標識部位は、グアニン(G)塩基部及び/又はシトシン(C)塩基部か、又は標識部位の塩基近傍(標識塩基から、3’末端又は5’末端方向に1乃至3塩基(標識部位の塩基を1と数える。)の範囲)にG及び/又はCが存在する。
【0055】
(10)前記記載の蛍光色素標識部位が3’又は5’末端部位である。
(11)前記記載の末端部位が末端塩基部、糖部(3’末端の2’又は3’位CのOH基又は5末端の5’位CのOH基(脱リンして形成させることが出来る)の少なくとも何れか一つ。)、及びリン酸部(又はリン酸に替えて、スルホン基又はスルホニル基を含む。)の少なくとも何れか一つ。
【0056】
(12)前記記載の複数種の核酸プローブの場合、各プローブの蛍光色素が異なる。
(13)前記記載の標的核酸プローブが、少なくとも2つの部位(末端部、鎖中部の塩基部、糖部、リン酸部)が、蛍光キャラクターが異なる蛍光色素で標識されている(以下、二重標識核酸プローブと略称する。)。
(13−2)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRET(fluorescence resonance energy transfer)を発生しない色素である。
(13−3)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRETを発生する色素である。
【0057】
(14)前記(12)の少なくとも2つの部位が少なくとも2つの塩基である。二つの塩基間距離は1〜100塩基、好適には10〜60塩基、より好適は20〜40塩基である。
(14−2)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRETを発生しない距離で標識されている。
(14−3)前記記載の蛍光キャラクターが異なる蛍光色素が二つの部位においてFRETを発生する距離で標識されている。
【0058】
(15)前記(12)の塩基がシトシン(以下、Cと略称する。)である。
(16)前記(12)のCが両末端の塩基である。
(17)前記記載の標的核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に相補的である。
(18)前記記載の二重標識核酸プローブが、一方の部位においては、標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と内部標準核酸にハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量との間に差が発生するが、他方の部位においては、蛍光キャラクター変化量に差が発生しない二重標識核酸プローブである。
(19)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの塩基配列が、両末端塩基部(末端塩基から少なくとも1乃至3塩基分;末端塩基を1と計数する。)を除いて、標的核酸および内部標準核酸に少なくとも相補的である。
【0059】
(20)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが、標的核酸および内部標準核酸に対して、相補的塩基配列を有するものである。
(21)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの一方の末端塩基に対応する塩基を1とした場合、3’又は5’末端方向に向かって1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸のGの数が、標的核酸>内部標準核酸あるいは標的核酸<内部標準核酸である。
(22)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、3’又は5’末端方向に向かって1〜3塩基の範囲内における標的核酸および内部標準核酸のGの数が、一方の末端領域において標的核酸>内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸<又は=内部標準核酸であり、一方の末端領域において標的核酸<内部標準核酸の場合、他方の末端領域において標的核酸>又は=内部標準核酸である。
【0060】
(23)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおける一方の末端塩基に対応する塩基がグアニン(G)以外であり、他方の末端塩基に対応する塩基がGである。
(24)前記記載の標的核酸プローブの末端塩基に対応する2つの塩基のうち、標的核酸がGの場合は、内部標準核酸はG以外であり、標的核酸がG以外の場合は、内部標準核酸はGである。
(25)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの両末端塩基に対応する塩基を1とした場合、1〜3塩基の範囲内における、対応する標的核酸および内部標準核酸の塩基配列が、一方の末端領域において異なるが、他方の末端領域においては同じである。
【0061】
(26)前記記載の核酸プローブ及び二重標識核酸プローブが蛍光消光プローブ(例えば、Qプローブ)である。
(27)前記記載の核酸プローブ及び二重標識核酸プローブが蛍光発光プローブである。
(27)前記記載の二重標識核酸プローブが消光性色素及び蛍光発光性色素で標識されている。
(28)前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブが標的核酸若しくは内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、標的核酸プローブの蛍光色素標識塩基部から3’又は5’末端方向に向かって、1乃至3塩基(標識塩基を1とする。)以内のGが少なくとも1つ以上するように設計された塩基配列構造を有する。
【0062】
(29)前記記載の蛍光色素標識部位とは反対側の末端部位が標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない(1乃至5塩基分の任意の塩基分、好適には1乃至3塩基分。但しこの計数には末端塩基を含む。)ものである。
(30)前記記載の両末端側の少なくとも一方がデオキシ体又はリボキシ体のオリゴヌクレオチド体でもトリ〜モノヌクレオチド体のいずれでもよい。
(31)前記記載の蛍光色素の標識位置は、末端部の糖部の場合は、5’末端の糖の5’CのOH基(脱リンにより形成される。)、3’末端の糖の3’C又は2’C(この場合はリボキシ体である。)のOH基のいずれか一つ以上である。
(32)標的核酸の二部位にG又はCが少なくとも一塩基が存在した場合に、その領域に対応するように塩基配列が設計された前記記載の標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブにおいて、G又はCが存在する(それらの領域に対応する)領域に蛍光標識されたプローブである。
【0063】
本発明の新規混合物は、前記の新規混合物が、更に、標的核酸および内部標準核酸にハイブリダイズしなかった標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブの蛍光を減少させ得る蛍光消光物質、又は当該物質で標識されたオリゴヌクレオチド(以下単に消光物質標識プローブと呼ぶ)を、更に1種若しくは二種以上含むものである。
【0064】
前記の消光物質標識プローブが、下記の特性1及び/又は特性2を有するものである新規混合物、
特性:
(1)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸あるいは内部標準核酸との複合体の解離温度よりも、標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと消光物質標識プローブとの複合体の解離温度が低い。
(2)標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーション及び標的核酸プローブ又は二重標識核酸プローブと内部標準核酸との間のハイブリダイゼーションが完了した後に、前記1)の特性故に消光物質標識プローブが均一溶液系プローブ又は二重標識核酸プローブとのハイブリダイズすることが出来る。
【0065】
2)内部標準核酸
次の特性の少なくとも一つを有するものである:
(1)内部標準核酸は、一部若しくは二部位以上の領域において、標的核酸プローブと相補的ない。
(2)内部標準核酸は、一部若しくは二部位の領域において、標的核酸プローブと相補的ない。
(3)内部標準核酸は、少なくとも全ての領域において、標的核酸プローブと相補的である。
(4)内部標準核酸は、標的核酸プローブの蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在するものである。
(5)内部標準核酸は、標的核酸プローブの一若しくは二以上のの蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在しないものである。
(6)内部標準核酸は、標的核酸プローブの一若しくは二以上の蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在しないものである。
(7)内部標準核酸は、標的核酸プローブの二以上の蛍光標識部位に対応する、内部標準核酸の部位領域において、一の蛍光標識部位にはG又はCが存在するが、他の蛍光標識部位には存在しないものである。
(8)二重標識核酸プローブに対応する内部標準核酸において、二重標識核酸プローブの蛍光標識部位の少なくともどちらかの一方に対応する、内部標準核酸の部位領域にG又はCが存在するものである。
【0066】
3)標的核酸プローブと内部標準核酸の関係
(1)標的核酸プローブが、蛍光色素標識領域において、標的核酸と相補的である場合、標的核酸プローブは内部標準核酸において相補的でない。
(2)標的核酸プローブが、蛍光色素標識領域において、内部標準核酸と相補的である場合、標的核酸と相補的でない。
【0067】
4)内部標準核酸プローブ
前記標的核酸プローブと少なくとも同じ特質を有し、且つ同じ構造をとるが、蛍光色素標識部位は、前記標的プローブの部位とは異なった構造部位である。例えば、前記標的核酸プローブの当該部位が3’末端部位である場合、5’末端部位であり、反対側の場合、対応して更に反対側である。
【0068】
B.第二発明
前記の第一発明の新規混合物を用いて、一種若しくは二種以上の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法である。本発明は何ら限定さるものではない。前記の第一発明の新規混合物を用いて核酸を測定する方法は、全て、本発明の範囲内のものである。
測定対象の核酸は、任意のもので、特に限定されない。例えば、
当該方法は、前記の均一系プローブと内部標準核酸の組み合わせ、更に内部標準核酸プローブとの組み合わせにより種々の形態をとり得る。例えば、
1)遺伝子増幅方法で増幅されたもの(定常期に到る任意の時期(初期、中期及び定常期のいずれか一つ。)まで増幅されたもの。
2)遺伝子増幅方法により増幅された標的核酸および内部標準核酸ものの少なくとも一方のものである。
3)遺伝子増幅方法により、同一のプライマー用いて増幅された、標的核酸と内部標準核酸のものの少なくとも一方のものである
【0069】
当該方法を、前記の均一系プローブと内部標準核酸の組み合わせ、更に内部標準核酸プローブとの組み合わせにより種々の形態をとり得る。例えば、大きく区分すると次のようになる。
なお、本発明の具体的測定方法は、どの場合においても、標的核酸及び/又は内部標準核酸の存在下でハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブの蛍光色素に由来する光学的キャラクター変化を測定するか、又は測定して得られた測定値の比、又は光学的キャラクター変化率の比を計算して、標的核酸の測定値を決めるものである。
【0070】
測定方法A:
一種若しくは二種以上の標的核酸及び/又は内部標準核酸の存在下でハイブリダイゼーション反応を行い、一種若しくは複数種の標的核酸を測定するもの。
測定方法B:
本発明の標的核酸の一つである、標的核酸と本発明の内部標準核酸とを識別できる核酸プローブ(以下、認識可能核酸プローブという。)を用いて、標的核酸を測定するもの。
測定方法C:
前記記載の核酸測定方法において、内部標準核酸と標的核酸のどちらにもハイブリダイズしなかった標的プローブ若しくは内部標準核酸プローブの蛍光を消光させて標的核酸を測定するもの。
測定方法D:前記記載の核酸測定方法において、測定反応系に、特にハイブリダイゼーション反応終了後にエキソヌクレアーゼ(exonuclease)を添加して、測定反応系の光学的キャラクター変化を測定するもの。
【0071】
以下、測定方法Aから説明する。
測定方法A:
更に、前記の均一系プローブと内部標準核酸の組み合わせ、更に内部標準核酸プローブとの組み合わせにより、次のように分けることが出来る。
(1)前記の均一系プローブと内部標準核酸を含む混合物を用いる方法。
測定系の測定方法により二つに分けることが出来る。
(2)前記(1)における均一系プローブが二重標識核酸プローブである方法。
(3)前記(1)に更に内部標準核酸プローブを含む混合物を用いる方法。
【0072】
以下、具体的に上記順序に従って順に、本発明の具体的、標的核酸プローブ、内部標準核酸又は更に内部標準核酸プローブの例を挙げながら説明する。より具体的には実施例に示されている。しかしながら、これらの具体的例により本発明は限定されるものではない。
【0073】
測定方法1−1(実施例5及び図9参照)
好適な例を以下に示す。
本発明方法の最も簡単な標識核酸プローブ及び内部標準核酸を含む反応液を用いて、標的核酸を測定した場合の核酸測定方法を図9に示した。
当該方法においては、標的核酸プローブとして、Qプローブ(以下、「QProbe」という。)使用する。使用する標的核酸プローブは、前記記載の如何なるものでも、好適に使用できるが、最も好適には、蛍光色素標識部位とは反対側の末端部位が標的核酸及び/又は内部標準核酸に相補しない(1乃至5塩基分の任意の塩基分、好適には1乃至3塩基分。但しこの計数には末端塩基を含む。)ものである。
【0074】
最も簡単な標的核酸プローブ及び内部標準核酸を、図1を参考に以下に説明する。図において、単一標識核酸プローブをQProbeとしてある。
【0075】
標的核酸プローブ:
また、単一標識核酸プローブは、標的核酸とハイブリダイズした場合、標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{減少(消光)}するように設計する。即ち、当該プローブがハイブリダイズする標的核酸の領域の塩基配列として、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG又はCとし、非蛍光標識末端塩基をG以外の塩基となるようなものを用意する。一方、当該プローブがハイブリダイズする内部標準核酸の領域の塩基配列としては、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG以外の塩基とし、非蛍光標識末端塩基をG又はCとなる配列を選択する。この際、単一標識核酸プローブの塩基配列は両末端塩基を除き、標的核酸および内部標準核酸に相補的なものとするが、単一標識核酸プローブの蛍光修飾末端塩基は、標的核酸とは相補するが、内部標準核酸には相補せず、非蛍光修飾末端塩基は、その逆となる。このことは、図9Aによく示されている。
【0076】
また、単一標識核酸プローブは、内部標準核酸とハイブリダイズした場合、標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{減少(消光)}するように設計することも可能である。即ち、当該プローブがハイブリダイズする内部標準核酸の領域の塩基配列として、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG又はCとし、非蛍光標識末端塩基をG以外の塩基となるようなものを用意する。一方、当該プローブがハイブリダイズする標的核酸の領域の塩基配列としては、単一標識核酸プローブの蛍光標識末端塩基に対応する塩基をG以外の塩基とし、非蛍光標識末端塩基をG又はCとなる配列を選択する。この際、単一標識核酸プローブの塩基配列は両末端塩基を除き、標的核酸および内部標準核酸に相補的なものとするが、単一標識核酸プローブの蛍光修飾末端塩基は、内部標準核酸とは相補するが、標的核酸に相補せず、非蛍光修飾末端塩基は、その逆となる。このことは、図9Bによく示されている。
【0077】
内部標準核酸
内部標準核酸の塩基配列は、両末端塩基を除き標的核酸と同一にしておくのが好適である。以下に、内部標準核酸の好適な例を示す。
プローブの蛍光色素標識部位塩基に対応する内部標準核酸内の塩基は、色素標識部位の塩基と相補的となるように設計する。即ち、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がCの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はGであり、又、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がGの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はCである。また、蛍光色素非標識部位の塩基に対応する内部標準核酸の塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基に設計する。好適にはアデニン(A)又はチミン(T)にする。
一方、標的核酸は、プローブの蛍光色素非標識部位の塩基がCの場合、対応する塩基はGであり、又、プローブの色素非標識部位の塩基がGの場合、対応する塩基はCとなり、蛍光色素標識部位の塩基に対応する塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基となるような塩基配列領域を選択する。このことは、図9Bによく示されている。
【0078】
これにより、プローブと標的核酸の間の塩基対の数およびGC含量と、プローブと内部標準核酸の間の塩基対の数およびGC含量とは等しくなり、その結果、標的核酸プローブとの複合体に対する熱安定性と、内部標準核酸プローブとの複合体に対する熱安定性とは、ほとんど差がないため、両プローブは、標的核酸と内部標準核酸とを、区別することなく、無差別にハイブリダイズすると考えられる。
【0079】
上記は、単一標識核酸プローブが内部標準核酸にハイブリダイズした際に、蛍光が減少するパターンであるが、その逆(即ち、単一標識核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズした際に、蛍光が減少するパターン)でも本法を実施可能である。即ち、プローブの蛍光色素非標識部位の塩基がCの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はGであり、又、プローブの蛍光色素非標識部位の塩基がGの場合、それに対応する内部標準核酸の塩基はCである。また、蛍光色素標識部位の塩基に対応する内部標準核酸の塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基に設計する。好適にはアデニン(A)又はチミン(T)にする。一方、標的核酸は、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がCの場合、対応する塩基はGであり、又、プローブの蛍光色素標識部位の塩基がGの場合、対応する塩基はCとなり、蛍光色素非標識部位の塩基に相応する塩基は、プローブの塩基と相補しない塩基となるような塩基配列領域を選択する。このことは、図8Aによく示されている。
【0080】
更に、図9を用いてより具体的に解説する。図9Aにおいては、QProbeは標的核酸とハイブリダイズした際に、蛍光ラベル(蛍光色素で標識)したCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光(蛍光強度が減少)(以下同じ意味である。)する。内部標準遺伝子の配列は、QProbeの5’末端のCと相補的な位置にアデニン(A)が、QProbeの3’末端のCと相補的な位置にGが来るようにしておく。このため、QProbeは、内部標準遺伝子とハイブリダイズしても、蛍光標識した5’末端と相補的な位置にGが存在しないため、著しく蛍光消光することはない。しかし、標的核酸とハイブリダイズした場合は、Gがくるので、著しく蛍光消光する。このため、QProbeは、その消光率の違いから標的遺伝子を特異的に検出することが可能である。
【0081】
図9Bにおける蛍光変化は、図9Aのそれの逆となる。即ち、QProbeは、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際には、5’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光するが、標的遺伝子では、5’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にAが来るため著しく蛍光消光は見られない。よって、QProbeは、内部標準遺伝子由来の増幅産物を特異的に検出することが可能となる。
【0082】
測定方法1−2(図2参照)
前記の記載の内部標準核酸と標的核酸プローブを含む新規混合物の内、下記のタイプの新規混合物を用いた、Tm値測定に基づく核酸測定方法である。具体的には図2に示してある。
a)新規混合物
1)下記のタイプの一種若しくは二種以上の標的核酸プローブと下記のタイプの一種若しくは二種以上の内部標準核酸との対を1種若しくは二種以上の対を含むものである。
【0083】
標的核酸プローブ:標的核酸及び内部標準核酸とハイブリダイズして、蛍光キャラクターが変化するものであれば、前記記載の如何なる標的核酸プローブでもよい。特に、蛍光標識部位以外の一部位若しくは二部位以上において内部標準核酸と相補しない部位(一塩基部分を含む。)。
内部標準核酸:特に蛍光標識部位以外の一部位若しくは二部位以上において、標的核酸と相補しない部位(一塩基部分を含む。)を有するものが好適である。若しくは標的核酸プローブが標的核酸とハイブリダイズする領域に対応する領域において、蛍光標識部位以外の一部位若しくは二部位以上が、塩基配列構造(一塩基部分を含む。)に相違するものがよい。
【0084】
本発明において、下記の場合好適である。
1) 当該核酸プローブの蛍光色素標識部位が塩基C又はG若しくはそれらを含む(標識部位から1乃至3塩基分内にて)部位である。
2) 当該核酸プローブがQプローブである。
3)前記1)の標識部位が3又は5末端である。
【0085】
b)核酸の新規測定方法
1) 当該新規混合物を用いて、Tm値測定に基づく標的核酸を測定する方法であれば、どのような方法でもよいのであるが、好適には下記2)の方法である。
2)前記に記載の新規混合物に、1種若しくは複数種の標的核酸を加え、ハイブリダイゼーション反応を行った後、反応液の温度を徐々に上げながら、反応液の蛍光強度を測定した後、下記の手順により、標的核酸を測定する。
【0086】
手順:
(1)測定された光学的キャラクターの変化のカーブを描く。
(2)当該カーブを微分する。
(3)得られた各ピークの高さを測定する。又は各ピークを積分してピークの面積を求める。
(4)内部標準核酸のピークの高さ又はピーク面積に対する標的核酸のピークの高さ又はピーク面積の比(標的核酸の高さ/内部標準核酸の高さ、又は標的核酸の面積/内部標準核酸の面積)を求める。
(5)当該比と内部標準核酸の濃度を乗ずる。
【0087】
なお、本発明は前記に記載の核酸プローブ及び内部標準核酸を含む核酸測定キット類でもある。
図2を参照しながら説明する。
QProbeは、標的遺伝子と解離した際には、蛍光色素とグアニン間の相互作用は解消され、再び蛍光を発するようになる。よって、温度変化させながら、蛍光を連続的にモニタリングすることで、解離曲線を迅速・簡便に得ることが出来る。解離曲線を微分することで解離ピークを得ることが出来るが、解離ピークの面積比(又は、解離ピークの高さ比)は、遺伝子(標的核酸)構成(存在)比に依存する。本法では、この解離ピークから遺伝子構成比を求める。
【0088】
本法も、内部標準遺伝子を添加する手法であり、用いる内部標準遺伝子は、QProbeがハイブリダイズする部位に変異を入れたものを使用する。よって、標的遺伝子との間にミスマッチが存在しないQProbeを使用した場合は、内部標準遺伝子にはミスマッチが存在する事となる。この場合、内部標準遺伝子とQProbeとの解離は、標的遺伝子とQProbeとの解離よりも、低い温度で起こる。このため、標的遺伝子、内部標準遺伝子が混在した場合、その解離曲線は、2つの解離曲線が混合された状態のものが得られ、内部標準遺伝子とQProbeとのTm値と、標的遺伝子とQProbeとのTm値とに十分な差があれば、その解離ピークを完全に2つに分離することが出来る(図2参照)。この解離ピークの高さの比は、遺伝子の構成比に高い相関があるため、解離ピークの高さの比から、遺伝子の構成比を求めることが出来る。よって、標的遺伝子の定量が可能となる。
【0089】
本法において、内部標準遺伝子に好適とされる要件としては、標的遺伝子の解離ピークと、内部標準遺伝子の解離ピークとが、遺伝子の比を求めることができるよう、十分に分離する、という点を挙げることができる。よって、これを満たす内部標準遺伝子であれば、どのようなものを使用しても本法の適用性は損なわれない。
【0090】
本法も、下記の2つのQProbe(標的核酸プローブ及び内部標準核酸プローブ)を用いた遺伝子定量法と同様、遺伝子構成比を求め標的遺伝子量を定量する手法であるため、プローブ濃度が標的遺伝子と内部標準遺伝子を合わせた濃度より低い場合であっても、内部標準遺伝子の濃度が構成比を求めるのに適正な濃度であれば、標的遺伝子濃度を正確に定量することが出来る。このため、本法も、1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有しており、既存法の問題点を解決することが可能である。
【0091】
測定方法2
前記記載の二重標識核酸プローブを用いる方法である。図3、11、12、13、14、及び15を参照して説明する。
【0092】
前述の内部標準遺伝子を用いた新規遺伝子定量手法に関する問題点
i)これまで、グアニンと相互作用して著しく蛍光消光し、励起波長、蛍光波長などの蛍光特性の異なる蛍光色素は、2種類確認されているのみあり、QProbeを用いて、同一溶液系内に存在する2種類以上の遺伝子を、同時に検出することは不可能であった。このため、2種以上の遺伝子を検出したい場合は、サンプル数を増加させるしか手段がなく、結果的にQProbeを用いた遺伝子定量手法の高コスト化につながっている。
【0093】
ii)前述した新規遺伝子定量手法である2つのQProbeを用いた遺伝子定量法では、均一溶液系プローブを2種使用する。各QProbeは、標的遺伝子と内部標準遺伝子のうち、どちらか一方とハイブリダイズした際に、蛍光の消光が発生する。また、本定量法で用いるQProbeは、標的遺伝子と内部標準遺伝子を区別しないでハイブリダイズし、例えば、標的遺伝子あるいは内部標準遺伝子にハイブリダイズしたプローブの半量は、蛍光消光しないこととなる。その結果、得られる蛍光消光率があまり大きくないため、特に遺伝子量が少ない場合は、分析誤差が大きくなるという問題点があった。
【0094】
前述の課題は、前記の本発明により達成される。即ち、QProbeの各末端に、各1種類の蛍光色素を標識することで解決可能であると考えられる(図3参照)。このような異なる色素で2重標識したQProbe(Switching probeと呼ぶ)を用いることで、標的遺伝子、内部標準遺伝子のどちらにハイブリダイズした場合も、蛍光消光が発生することとなる。つまり、ハイブリダイズしたプローブで、蛍光消光しないプローブは存在しないこととなる。このため、2種のQProbeを用いた場合と比較して、理論上2倍蛍光消光率が増加し、その結果、検出感度を2倍向上させることが可能となる(図3、11、13参照)
【0095】
当該方法においても、前記に記載の二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸を含む新規混合物を使用する方法であればよく、特に制限されない。又は前記に記載の二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸を用いる方法であればよい。
しかしながら、下記のタイプの二重標識核酸プローブと内部標準核酸を含む新規混合物、又は二重標識核酸プローブと内部標準核酸を使用するのが好適である。
【0096】
二重標識核酸プローブ:前記記載の二重標識核酸プローブは特に制限なく好適に何れも使用出来る。標識された二種の蛍光色素の光学的キャラクター変化が、一例として次の場合に該当するのが好適である。
1)当該核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたとき、どちらか一方が消光し、他方が発光する。この場合において、内部標準核酸とハイブリダイズしたとき、標的核酸の場合において消光した方が発光し、標的核酸の場合において発光した方が消光するタイプ。図3の右端図及び図13参照。このような場合の当該プローブの塩基配列のタイプは、両色素の標識部位の塩基を双方とも任意のものでよいが、標的核酸側は、当該プローブの一方の色素の標識部位に対応する領域部位にGが含まれるように、他方の色素についてはGが含まれないように、即ち、A及び/又はTだけが含まれるように、塩基配列を設計するのが好適である。内部標準核酸側は、標的核酸側とは逆の塩基設計にする。
【0097】
2)当該核酸プローブが標的核酸にハイブリダイズしたとき、双方の色素が発光若しくは消光する。この場合において、内部標準核酸とハイブリダイズしたとき、どちらか一方が発光し、他方が消光するタイプ。又、反対に当該核酸プローブが内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、双方の色素が発光若しくは消光する。この場合において、標的核酸とハイブリダイズしたとき、どちらか一方が発光し、他方が消光するタイプ。図13参照。
【0098】
このような場合の当該プローブの塩基配列のタイプは、一つのタイプとして、当該プローブの標識色素の標識部位の塩基が任意でよいが、標的核酸側は、当該プローブの双方の色素の標識部位に対応する領域部位にGが含まれるか、又はGが含まれないようにする。内部標準核酸側はどちらか一方の色素側にGが含まれるようにする。
もう一つのタイプとして、当該プローブの標識色素の標識部位の塩基が任意でよいが、標的核酸側は、当該プローブの双方の色素の標識部位に対応する領域部位のどちらか一方の色素側にGが含まれるようにし、内部標準核酸側は、当該プローブの双方の色素側にGが含まれるか、又はGが含まれないようにする。図13参照。
本発明において、このようなプローブを用いるのがより好適である。
【0099】
内部標準核酸:上記の二重標識核酸プローブの記載箇所参照。
なお、当該発明においても、二重標識核酸プローブがQプローブである場合が好適である。又、上記の核酸プローブの具体的形態は、上記に特徴づけた点を除いて、好適には第1発明の場合と同様である。
【0100】
具体的測定方法は以下の通りである。
この例は好適な方法であって、この例によって本発明は限定されない。
前記に記載の新規混合物に1種若しくは複数種の標的核酸を加えてハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の双方の色素に由来する光学的キャラクター変化を測定し、得られた測定値の比、又は測定値から光学的キャラクター変化率(例:蛍光消光率)を計算して、標的核酸の量を決めることが出来る。それらの具体的方法は、実施例6及び7に示した。
【0101】
測定方法3
前記(1)に更に内部標準核酸プローブを含む混合物を用いる方法である。図1参照。
当該新規測定方法は、前記に記載の新規混合物が内部標準核酸プローブを含むものを用いて標的核酸を測定する方法であれば、どのような方法でもよいのであるが、好適には以下の方法である。
【0102】
当該新規混合物に1種若しくは複数種の標的核酸を加えてハイブリダイゼーション反応を行い、反応系の標的核酸プローブ及び内部核酸プローブの蛍光色素に由来する光学的キャラクター変化を各々測定し、各蛍光色素についての得られた測定値の比又は光学的キャラクター変化率(減少率若しくは発光率)の比から1種若しくは複数種の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法である。
【0103】
本発明方法の最も簡単な標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブ及び内部標準核酸を含む反応液を用いて、標的核酸を測定した場合の核酸測定方法を図1に示した。しかしながら、本発明は、図1の例示に限定されない。
図1においては、簡単化のために、標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブとして、QProbeを使用している。
最も簡単な標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブ及び内部標準核酸を用いて、図1を参考にしながら以下に説明する。図において、標的核酸プローブをQProbe A、内部標準核酸プローブをQProbe Bとしてある。
【0104】
標的核酸プローブ:
標的遺伝子(以下、標的核酸という。)と内部標準遺伝子(以下、内部標準核酸という。)とを区別しないでハイブリダイズするが、標識核酸とハイブリダイズした場合だけ標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{例えば、図の場合は減少(消光)}するように設計する。この場合、標識部位とは反対側の末端部領域は、標的核酸に相補的でないように設計するのが好適である。相補しない塩基数は、内部標準核酸プローブの蛍光標識部位が標的核酸に相補しない部位の塩基数と同じにするのが、標的核酸プローブと標的核酸との複合体に対する熱安定性と、内部標準核酸プローブと内部標準核酸との複合体に対する熱安定性を同じにするので好適である。
即ち、蛍光色素標識末端部位は、標的核酸の対応する領域に相補的にし、内部標準核酸の領域には相補的でなくする。一方、蛍光標識部位とは反対側の末端部位は、標的核酸とは相補的でなくし、内部標準核酸とは相補的にする。
【0105】
具体的には、当該プローブの蛍光標識部位は、G又はCを含むかG又はC自身の部位にする。標的核酸の領域の塩基配列が、対応する領域にC又はGとを含むかC又はG自身の部位になるように設計する。この設計は、標識塩基に対応する塩基が必ずしもC又はGでなくともよく、対応する塩基を含む領域(5’末端若しくは3’末端方向に1乃至3塩基分の範囲内。但し当該対応する塩基を1と計数する。)内にC又はGが少なくとも一塩基以上含まれておればよい。
一方、他端部領域の塩基配列は、標的核酸には相補しないが内部標準核酸には相補するように設計する。内部標準核酸のこの領域は、内部標準核酸プローブの蛍光標識部位が対応するように設計されるので、少なくとも一個以上のG又はCを含む。従って、標的核酸プローブの他末端部の領域は少なくとも一個以上のC又はGを含むかそれら自身の部位である。その対応は、内部標準核酸がGを含むかG自身の部位のとき、標的核酸のものはCを含むか又はC自身の部位である。反対に内部標準核酸がCを含むかC自身の部位のとき、標的核酸のものはGを含むか又はG自身の部位である。このことは、図1によく示されている。
【0106】
内部標準核酸プローブ:
塩基配列は標的核酸プローブと同じにする。但し、図1に示されているように、蛍光色素標識位置は標的核酸プローブとは反対側である。又、蛍光色素を異なったものにする。標的核酸と内部標準核酸とを区別しないでハイブリダイズするが、内部標準核酸とハイブリダイズした場合だけ標識蛍光色素の光学的キャラクター(蛍光発光)が変化{例えば、図の場合は減少(消光)}するように設計する。この場合、標識部位とは反対側の末端部領域は、内部標準核酸に相補的でないように設計するのが好適である。相補しない塩基数は、上記の標的核酸プローブの場合と同じようにする。
【0107】
内部標準核酸
標的核酸プローブと内部標準核酸プローブとを区別しないでハイブリダイズするが、内部標準核酸プローブとハイブリダイズした場合だけ標識蛍光色素の光学的キャラクターが変化するように設計する。これを満たす内部標準核酸であれば、どのような構造のものでもよく、好適に使用できる。例えば、内部標準核酸の塩基配列は、両末端塩基を除き標的核酸と同一にしておくのが好適である。
【0108】
内部標準核酸プローブの蛍光色素標識部位の塩基に対応する塩基は、内部標準核酸プローブの塩基と相補する塩基に設計する。即ち、内部標準核酸プローブの領域がCを含むかC自身の部位の場合、内部標準核酸の塩基はGを含むかG自身の部位であり、又、当該プローブの領域がGを含むかG自身の部位の場合、内部標準核酸のものはCを含むかC自身の部位である。
蛍光色素非標識部位の塩基に相応する領域は、プローブの塩基と相補しない塩基に設計する。即ち、内部標準核酸プローブの領域がGを含むかG自身の部位の場合、内部標準核酸の当該領域はCを含まず、G、A、Tだけを含むかそれら自身の部位にする。好適にはアデニン(A)及び/又はチミン(T)だけを含むかそれら自身の部位にする。反対に内部標準核酸プローブの領域がCを含むかC自身の部位の場合、内部標準核酸の当該領域はGを含まず、C、A、Tだけを含むかそれら自身の部位にする。好適にはアデニン(A)及び/又はチミン(T)だけを含むかそれら自身の部位にする。
【0109】
このようにすることにより、標的核酸プローブと標的核酸の複合体に対する熱安定性と、内部標準核酸プローブと内部標準核酸の複合体に対する熱安定性とは、ほとんど差がないため、両プローブは、標的核酸と内部標準核酸とを、区別することなく、無差別にハイブリダイズすると考えられる。
【0110】
以下、図1を用いてより具体的に解説する。QProbe Aは標的核酸とハイブリダイズした際に、蛍光ラベル(蛍光色素で標識)したCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光(蛍光強度が減少)(以下同じ意味である。)する。内部標準核酸の配列は、QProbe Aの5’末端のCと相補的な位置にアデニン(A)が、QProbe Aの3’末端のCと相補的な位置にGが来るようにしておく。このため、QProbe Aは、内部標準核酸とハイブリダイズしても、蛍光標識した5’末端と相補的な位置にGが存在しないため、著しく蛍光消光することはない。しかし、標的核酸とハイブリダイズした場合は、Gがくるので、著しく蛍光消光する。このため、QProbe Aは、その消光率の違いから標的核酸を特異的に検出することが可能である。
【0111】
また、QProbe Bについては、内部標準核酸とハイブリダイズした際には、3’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にGが来るため著しく蛍光消光するが、標的遺伝子では、3’末端に蛍光ラベルしたCと相補的な位置にAが来るため著しく蛍光消光は見られない。よって、QProbe Bは、QProbe Aとは逆に、内部標準核酸由来のPCR増幅産物を特異的に検出することが可能となる。
【0112】
標的核酸の測定方法
本発明の新規混合物は前記のような構成物を含むので、当該反応液に標的核酸を加え、ハイブリダイゼーション反応を行い、標的核酸プローブに由来する光学的キャラクター変化及び内部標準核酸プローブに由来する光学的キャラクター変化を測定して、得られた測定値の比を計算し、当該計算値に内部標準核酸の濃度を乗ずることにより、標的核酸の濃度を決めることが出来る。
【0113】
即ち、前記の各QProbeのハイブリダイゼーションは、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを区別することなく、無差別に起こる。よって、各プローブがどちらの遺伝子にハイブリダイズするかは、各遺伝子の存在比に完全に依存している。このため、QProbe Aに由来する光学的キャラクター変化を測定して得られた測定値とQProbe Bに由来する光学的キャラクター変化を測定して得られた測定値の比は、標的核酸と内部標準核酸の構成比でもある。
【0114】
本発明の核酸の新規測定方法は、前述したように核酸の存在比(構成比)を求める手法であるため、標的核酸と内部標準核酸を合わせた濃度が、標的核酸プローブ濃度と内部標準核酸プローブ濃度を合わせた濃度より高い場合(核酸濃度がプローブ濃度より高い場合)であっても、内部標準核酸の濃度が当該構成比を求めるのに適正な濃度であれば(内部標準核酸の濃度が、標的核酸の濃度に十分近ければ)、標的核酸と内部標準核酸の構成比を求めることが可能であり、その結果として、標的核酸の濃度を正確に定量することが出来る。このため本発明方法は、1)標的遺伝子を含む溶液を希釈する必要性がない、2)プローブ添加濃度は、蛍光検出に使用する装置が、検出可能な範囲内において、最も低い濃度に設定すれば良く、その濃度を変化させる必要性がない。つまり、本法は、1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有しており、前述の既存法の問題点を解決することが可能である。
【0115】
本発明においては、以下のプローブ及びキット類も本発明の中に入る。
1) 前記記載の標的プローブ及び内部標準プローブからなる一対若しくは複数対の核酸プローブ。
2) 前記記載の標的プローブ及び内部標準核酸プローブからなる一対若しくは複数対の核酸プローブと前記1)に記載の、当該核酸プローブ対と対応する1種若しくは複数種の内部標準核酸とを含む核酸測定用キット類。
【0116】
測定方法B:
測定方法に以下の二つある。
当該方法は、ハイブリダイゼーションは、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを区別することなく、無差別に起こるに基づく。よって、各プローブがどちらの遺伝子にハイブリダイズするかは、各遺伝子の存在比に完全に依存している。このため、例えば、前記のQProbe AとQProbe Bの結合比から、遺伝子構成比を求めることが可能となると考えられる。蛍光消光は、QProbe Aでは標的遺伝子に結合した際に、QProbe Bでは内部標準遺伝子に結合した際に、著しく発生するが、QProbe AとQProbe Bの蛍光消光の比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との構成比と正比例の関係にあるため、この蛍光消光率の比から、遺伝子構成比を定量的に求めることが可能となる。
【0117】
以下説明する。
測定方法1
本発明の新規混合物が、標的核酸と内部標準核酸とを認識可能な、下記タイプの標的核酸プローブ、二重標識核酸プローブ、及び多重標識核酸プローブの少なくとも何れか一つ及び既知濃度の本発明の内部標準核酸を含むものである場合の本発明の核酸の新規測定方法。以下、当該プローブを認識可能核酸プローブという。この方法における新規混合物は、下記タイプの核酸プローブを一種若しくは二種以上を含むものである。そして、二種以上の核酸プローブの場合、前記したように、各プローブに標識された蛍光色素の種類は異なるもの、特に光学的キャラクターの種類が異なる蛍光色素である。
【0118】
新規混合物
下記タイプの核酸プローブを一種若しくは二種以上及び一種若しくは二種以上の内部標準核酸を含む。
標的核酸プローブ
本発明の標的核酸プローブが、蛍光色素標識部位の少なくとも一部位若しくは二部位以上において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
【0119】
二重標識核酸プローブ
本発明の二重標識核酸プローブが、二種類の蛍光色素のどちらか一方のものの標識部位において、標的核酸及び内部標準核酸のどちらかに相補しないものである。
本発明の方法においては、標的核酸と内部標準核酸の存在比を測定して、求められた当該比率から、標的核酸の濃度若しくは量を正確に決めることが出来るものである。
【0120】
多重標識核酸プローブ
上記二重標識核酸プローブを応用したものである。1本鎖のオリゴヌクレオチドの部位1〜部位n(末端部、鎖中部の塩基部、糖部、リン酸部を含む。nは10、好適には5、より好適には3)のC若しくはG部位(好適にはC部位)を、標的核酸とハイブリダイズしたときに光学的キャラクターが変化する蛍光色素1〜蛍光色素n(nは10、好適には5、より好適には3)で標識したものである。蛍光色素1〜蛍光色素nは各々異なった種類の蛍光色素である。更に部位1〜部位nは相互に異なった位置にある。標識部位の構造及び対応する標的核酸の構造は前記と同様である。
なお、前記の核酸プローブの好適な例は、Qプローブである。また、蛍光標識部位は、C自身の部位かそれを含む領域である。
【0121】
内部標準核酸
二重標識核酸プローブを使用した測定方法に用いた方法と同様である。そして、前記したように、多重標識核酸プローブの各蛍光色素標識部位に対応する領域部位の構造は標的核酸部位の構造とは異なったものにする。異なった構造とは、相補する構造か、しない構造かの相違である。これらの構造は、前記各方法の場合に準ずる。標的核酸が二種以上の場合は、それに対応した内部標準核酸となるので、上記の本発明の新規混合物は、二種以上の内部標準核酸を含むことになる。
【0122】
測定方法
当該方法の新規混合物に、一種若しくは二種以上の標的核酸を加えて、ハイブリダイゼーション反応を行い、一種若しくは二種以上の測定波長で反応系の各標的核酸プローブの各蛍光色素の、標的核酸及び内部標準核酸に由来する蛍光キャラクター変化若しくは変化率(例:蛍光消光率)を測定する。標的核酸からの各測定値と内部標準核酸からの測定値の比を求める。内部標準核酸の濃度が既知であるので、一種若しくは二種以上の標的核酸濃度若しくは量を測定することができる。
【0123】
測定方法2
前記に記載のTm値測定に基づく方法である。
新規混合物は前記と同様でよい。
【0124】
測定方法:
新規混合物に、一種若しくは二種以上の標的核酸を加え、ハイブリダイゼーション反応を行った後、反応液の温度を徐々に上げながら、反応液の蛍光強度を測定した後、下記の手順により、標的核酸の存在比を測定する。
【0125】
手順:(各プローブ毎にこの操作を行う。)
(1)測定された光学的キャラクターの変化のカーブを描く。
(2)当該カーブを微分する。
(3)得られた各ピークの高さを測定する。又は各ピークを積分してピークの面積を求める。
(4)各ピークの中から一つの基準ピーク(基準標的核酸のピーク)を選び、基準ピークの高さ又はピーク面積に対する他の標的核酸のピークの高さ又はピーク面積の比(他の標的核酸のピーク高さ/基準核酸ピークの高さ、又は他の標的核酸のピーク面積/基準核酸ピークの面積)を求める。
(5)基準核酸と比較の存在比を求める。
(6)内部標準核酸の濃度は既知であるので、存在比から標的核酸の濃度若しくは量が決めることが出来る。
【0126】
上記の方法を、例えばQProbeで説明する。QProbeは、標的遺伝子と解離した際には、蛍光色素とグアニン間の相互作用は解消され、再び蛍光を発するようになる。よって、温度変化させながら、蛍光を連続的にモニタリングすることで、解離曲線を迅速・簡便に得ることが出来る。解離曲線を微分することで解離ピークを得ることが出来るが、解離ピークの面積比(又は、解離ピークの高さ比)は、遺伝子構成比に依存する。本法では、この解離ピークから遺伝子構成比を求める。
【0127】
本法は、前述したように遺伝子存在比を求める手法であるため、標的遺伝子と内部標準遺伝子を合わせた濃度が、QProbe AとQProbe Bを合わせた濃度より高い場合(遺伝子よりプローブ濃度が高い場合)であっても、内部標準遺伝子の濃度が構成比を求めるのに適正な濃度であれば(内部標準遺伝子の濃度が、標的遺伝子濃度に十分近ければ)、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比を求めることが可能であり、その結果、標的遺伝子濃度を正確に定量することが出来る。
【0128】
このため本法は、1)標的遺伝子を含む溶液を希釈する必要性がない、2)プローブ添加濃度は、蛍光検出に使用する装置が、検出可能な範囲内において、最も低い濃度に設定すれば良く、その濃度を変化させる必要性がない。つまり、本法は、1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有しており、前述の既存法の問題点を解決することが可能である。
【0129】
測定方法C:
前記記載の核酸測定方法において、内部標準核酸と標的核酸のどちらにもハイブリダイズしなかった標的プローブ若しくは内部標準核酸プローブの蛍光を消光させて標的核酸を測定するもの。この際の下記例示の消光物質又は消光プローブを用いて目的を達成するものである。下記のものは単なる例示であり、これらの例示により本発明は限定されない。実施例9参照。
消光物質:前記のクエンチャー物質を例示できる。例示物質の少なくとも何れか一つを使用すればよい。好適には、Dabcyl、BH、Eclipse、Elle Quencherなど例示できる。
消光プローブ:オリゴヌクレオチド(デオキシ体、リボ体のどちらでもよい。)の一部領域に上記の消光物質のいずれか一つを標識したものが好適に使用できる。具体的には、実施例9参照。標識部位又は位置は、標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしていない標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブの光学的キャラクター(例、発光若しくは消光)を変化させるものであればよく、特に制限されない。
【0130】
測定方法D:
本発明の測定反応系に、特にハイブダイゼーション反応が平衡状態に達したときにexonucleaseを添加して、測定反応系の光学的キャラクター変化を、当該酵素の添加前後で測定する方法である。実施例10を参照。測定反応系においては、本発明の核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び/又は」内部標準核酸とハイブリダイズして、標識されている蛍光色素の光学的キャラクターが変化(例、発光、消光など)している。この状態の核酸プローブに、当該酵素が作用して、蛍光色素標識されたものモノヌクレオチドを、核酸プローブから遊離させることが出来る。遊離した蛍光色素標識モノヌクレオチドは、核酸プローブがハイブリダイズした状態の光学的キャラクター的特徴を最早示さない。その変化を測定するものである。具体的測定方法は実施例に記載されている。
但し、好適には次の条件においてである。
条件:標識核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブが、標的核酸及び内部標準核酸の少なくとも一方に対して、蛍光標識部位領域(領域:1乃至3塩基分、好適には1塩基分)において、相補的でない。
【0131】
本発明の新規混合物としては、当該酵素を含むものであるが、その形態は、標的核酸プローブ及び/又は内部標準核酸プローブと内部標準核酸が混合した状態ではなく、当該酵素がセットとして、新規混合物に付帯する形態が好適な形態である。
使用できるExonucleaseの例:(但し、本発明は、当該例示により特に限定されるものではない。)
1) 3’→5'exonuclease
Exonuclease I(アマシャムバイオサインス)、Vent DNA polymerase(New England Biolabs)、T7 DNA polymerase(New England Biolabs)、Klenow Fragment DNA polymerase(New England Biolabs)、Phi29 DNA polymerase(New England Biolabs)、Exonuclease III(Fermendas)。
2) 5'→3’exonuclease
Taq DNA polymerase、Exonuclease VII(アマシャムバイオサインス)
3)その他の使用可能な酵素
S1 Nuclease(アマシャムバイオサインス)、Mung Bean Nuclease(アマシャムバイオサインス)。
【0132】
第3発明
前記発明と核酸増幅方法を合わせた発明である。核酸増幅方法で得られた増幅産物を前記核酸測定方法で測定する方法である。遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できる。特に、前記発明の1種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、核酸の前記測定方法で測定する方法である。以下の発明A、発明B、発明C及び発明Dからなる。
【0133】
1.発明A
1)本発明の1種若しくは二種以上の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは二種以上の標的核酸を定常期に到るまで(初期、中期、定常期を含む。)増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、従来公知の標的核酸を測定する方法である。
【0134】
2)前記1)に記載の増幅産物を試料として、本発明の新規核酸測定方法で測定する方法である。
【0135】
3)本発明の内部標準核酸を含む反応系で、標的核酸を遺伝子増幅方法により増幅し、遺伝子増幅方法により1種若しくは二種以上の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
【0136】
4)標的核酸のプライマーと内部標準核酸のプライマーとして同じもの用いた核酸増幅方法である前記1)〜3)の何れか一項に記載の1種若しくは二種以上の増幅前の核酸を測定する方法である。
5)プライマーがQプローブである前記3)又は4)に記載の1種若しくは二種以上の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
6)プライマーが標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、光学的変化が増加するものであるである前記3)〜5)何れか一項に記載の1種若しくは二種以上の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
【0137】
本発明においては、遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できるのであるが、特に従来不可能とされていた遺伝子増幅産物、即ち定常期まで(定常期を含む。)増幅された遺伝子増幅産物について好適に適用される。
【0138】
発明B
1)前記に記載のTm値測定に基づく1種若しくは二種以上の標的核酸を測定するための1種若しくは二種以上の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、従来公知の標的核酸測定方法で標的核酸を測定する方法である。
【0139】
2)前記記載の試料を用いて、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を、本発明のTm値測定に基づく、1種若しくは二種以上の標的核酸を測定する方法で
3)標的核酸測定方法が、1種若しくは二種以上の増幅前の核酸遺伝子増幅方法である前記2)に記載の標的核酸を測定する測定方法である。
4)標的核酸測定方法が、標的核酸のプライマーと内部標準核酸のプライマーとして同じもの用いた核酸増幅方法である前記3)に記載の核酸を測定する方法である。
5)プライマーがQプローブである前記4)に記載の標的核酸を測定する方法である。
6)プライマーが標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、光学的変化が増加するものである前記4)に記載の標的核酸を測定する方法である。
【0140】
本発明においては、遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できるのであるが、特に従来不可能とされていた遺伝子増幅産物、即ち定常期まで(定常期を含む。)増幅された遺伝子増幅産物について好適に適用される。
【0141】
発明C
1)第2発明の発明2に記載の1種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする標的核酸の新規測定方法である、又、
【0142】
2)第2発明の発明2に記載の1種若しくは複数種の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により1種若しくは複数種の標的核酸を増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、第2発明の発明2の前記1)〜3)の何れか一項に記載の新規混合物を用いて、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする標的核酸の新規測定方法である、又、
【0143】
3)第2発明の発明2に記載の内部標準核酸を含む反応系で遺伝子増幅方法により標的核酸を定常期に到るまで(定常期を含む。)増幅し、得た反応液若しくは増幅産物を試料として、第2発明の発明2の1)〜3)の何れか一項に記載の新規混合物を用いて、1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定することを特徴とする核酸の新規測定方法である、又、
【0144】
4)標的核酸のプライマーと内部標準核酸のプライマーとして同じもの用いた核酸増幅方法である前記1)〜3)の何れか一項に記載の1種若しくは複数種の増幅前の核酸を測定する方法である、又、
5)プライマーがQプローブである前記4)に記載の1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定する方法である、又、
6)プライマーが標的核酸及び/又は内部標準核酸にハイブリダイズしたとき、光学的変化が増加するものである前記5)に記載の1種若しくは複数種の増幅前の標的核酸を測定する方法である。
【0145】
本発明においては、遺伝子増幅方法で得られたどのような産物にも適用できるのであるが、特に従来不可能とされていた遺伝子増幅産物について適用される。
【0146】
測定方法D END POINT 測定方法
遺伝子増幅法を介した遺伝子定量法の問題点
遺伝子増幅法を介した遺伝子定量法は、標的遺伝子を増幅し、定量を行う手法であるため、非常に感度が高く、僅かにしか存在しない標的遺伝子であっても定量する事も可能であるため、現在最も汎用されている遺伝子定量手法の1つとなっている。遺伝子増幅法を介した遺伝子定量法は、各種知られているが、以下に示すような問題点が存在している。以下、その内容を詳細に示す。
【0147】
(1)既存法の問題点
i)既存法の問題点1:リアルタイム定量的PCR法
現在最も汎用されている遺伝子増幅法であるPCR法では、増幅産物がある程度蓄積するまで、指数関数的に反応が進行することが知られている。しかしながら、増幅産物が増加するにつれて、増幅効率は低下し、最終的には増幅産物量は一定の値をとる(プラトーに達する)。このことは、増幅反応を十分に実施した場合、初期の遺伝子の量に関わらず、得られる増幅産物量は変わらないということを示している。以上より、増幅反応完了後の(エンドポイントでの)増幅産物量から、初期の遺伝子量を定量する事はできない。本特徴は、PCR法に限らず、現在報告されている遺伝子増幅法に共通の特徴である。
【0148】
しかしながら、一般的な遺伝子増幅法における初期反応段階の増幅効率は、初期遺伝子量に関わらず一定である。このため、増幅産物がある一定量(閾値)に達するのに必要なサイクル数は、指数関数的に増幅が発生する領域であれば、初期遺伝子の量に依存する。例えば、数段階の希釈系列を設けた既知濃度の標的遺伝子をPCR増幅した場合、増幅産物量が閾値に達するサイクル数(CT値)は、初期の遺伝子量と、逆相関の関係にある。
【0149】
これは前述したように、初期反応段階の増幅効率が初期遺伝子量に関わらず一定であるためである。この関係式は、未知試料中の標的遺伝子を定量するための検量線として使用することができる。通常の場合、未知試料についても標的遺伝子の増幅効率は、一定であると考えられるため、同様にCT値を求め、上記の検量線にあてはめることで、初期の遺伝子量を定量する事が可能となる。これらのことから、増幅産物をリアルタイムにモニタリングする事ができれば、初期遺伝子量の定量が可能となるといえる。
【0150】
本原理に基づく遺伝子定量手法が、リアルタイム定量的PCR法である。本法は、(1)ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速、(2)反応チューブを解放する必要性が無く、増幅産物によるコンタミの心配がないといった、といった優れた特長を有する。しかしながら、その一方で(1)産物をリアルタイムにニタリングする必要性があるため、装置が大がかり且つ高価となる、(2)検量線を作成した際の増幅効率と、未知試料中の標的遺伝子の増幅効率が全く同じであるという仮定に基づく手法であるが、未知試料中に遺伝子増幅の阻害物質が存在する場合、この仮定が成り立たなくなる。即ち、常に正しい定量値が得られているとは言い難い、(3)本手法では、増幅産物をリアルタイムモニタリングする必要性があるため、遺伝子増幅の間、1台の測定装置が占有されることとなる。このため、サンプル処理能力には自ずと限界がある、といった問題点がある。
【0151】
ii)既存法の問題点2:競合的PCR法
目的の遺伝子を高感度に定量するための手法として、競合的PCR法(図4参照)も一般的に知られている。本法は、以下の工程より実施される。まず、標的遺伝子を増幅するためのプライマーと同じプライマーで増幅される既知濃度の遺伝子(内部標準遺伝子と呼ぶ)を反応液に添加しておき、これを標的遺伝子と同時に増幅させる。次に、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物とを、増幅終了後に、電気泳動などの分離手法を用いて分離・定量し、増幅産物の比(内部標準遺伝子由来の増幅産物/標的遺伝子由来の増幅産物)を求める。標的遺伝子と内部標準遺伝子とは、共通のプライマーにて増幅するため、それぞれの増幅効率は同じと考えられる。よって、初期添加した内部標準遺伝子量に、増幅産物の比を乗じることで標的遺伝子量を求める事が可能となる。
【0152】
本法は、内部標準遺伝子を標的遺伝子と共存させて、遺伝子増幅を実施するため、増幅阻害物質の影響を受けにくい手法であり、得られた定量値の信頼性は高い手法であるといえる(理由:例え増幅阻害物質が存在したとしても、内部標準遺伝子の増幅効率と、標的遺伝子の増幅効率は、全く同じように低下する。このことより、増幅阻害物質の存在は、産物比に影響を与えないため、競合的PCR法では正しい定量値が得られる)。また、装置が比較的簡易且つ安価といった特長も挙げることが出来る。
【0153】
しかしながら、本法は、(a)遺伝子増幅後に、増幅産物を定量する必要性があるため、操作が煩雑かつ時間がかかる、(b)産物を定量する際、反応チューブを解放するため、増幅産物によるコンタミの原因となる、(c)本手法は、工程が煩雑且つその自動化は困難であるため、サンプル処理能力が低い、といった問題点が指摘されている。
【0154】
iii)既存法の問題点3:リアルタイム競合的PCR法
リアルタイム競合的PCR法は、競合的PCR法の改良法であり、TaqManプローブ、QProbeなど蛍光標識核酸プローブにて、内部標準遺伝子由来の増幅産物と標的遺伝子由来の増幅産物を、同時にリアルタイムにモニタリングし、それぞれの増幅産物由来の蛍光シグナルから、初期の標的遺伝子量を定量する手法である。
【0155】
本法は、(1)ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速、(2)反応チューブを解放する必要性が無い、(3)競合法であるため阻害物質の影響を受けにくい、といった優れた特長を有する手法である。しかしながら、内部標準遺伝子由来の増幅産物と標的遺伝子由来の増幅産物を、同時にリアルタイムにモニタリングする必要性があるため、リアルタイム定量的PCR法と同様、(i)装置が大がかり且つ高価となる、(ii)サンプル処理能力が低い、という問題点が存在する。以上、既存法の問題点を以下の表にまとめた。この表から、現在提案されている遺伝子定量法には、何らかの問題点が存在することが分かる。
【0156】
【0157】
なお前述の遺伝子定量法は、NASBA法、LAMP法、RCA法、ICAN法など、PCR法以外の遺伝子増幅手法にも適用可能であるため、現在、様々な遺伝子増幅法を介した遺伝子定量手法も実施されている。しかしながら、PCR法を介した遺伝子増幅手法と全く共通の問題点を抱えており、どの遺伝子増幅法を介した場合でも、前述の問題点を解決することが要望されている。
【0158】
(2)本課題を解決するための方策
前述のように、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物との比から、初期の標的遺伝子量を定量することが可能である。もし、この増幅産物比を、遺伝子増幅反応終了後(エンドポイントで)、反応チューブを開放することなく、迅速且つ簡便に測定することができれば、(1)ポストPCR工程が必要なく簡便・迅速、(2)反応チューブを解放する必要性が無く、増幅産物によるコンタミの心配がない、(3)競合法であるため阻害物質の影響を受けにくい(4)遺伝子増幅と増幅産物の検出とを完全に分離できるため、大量サンプルの処理が可能となり、既存法の共通の問題点であったサンプル処理能力を、簡便且つ安価に向上させる事が可能(例えば、蛍光測定機能を持たない安価なPCR装置を、複数台用いて遺伝子増幅した後、蛍光測定装置にて順次解析することで、例え蛍光測定装置が一台であっても大量サンプルの処理が可能となる)、(5)増幅の過程をリアルタイムモニタリングする必要性が無く、PCR反応に不可欠なサーマルサイクラーとしての機能が不要となるため、非常に簡便かつ安価な測定装置で遺伝子定量が可能、といった特長を有する極めて優れた遺伝子定量法となりうると考えられる。
【0159】
既存法である競合的PCR法は、エンドポイントで増幅産物比を求めることが可能であるが、反応チューブを開放する必要性があり、迅速に増幅産物比を求めることは出来ない。同じく既存法であるリアルタイム競合的PCR法は、蛍光修飾プローブを用いて検出するため、反応チューブを開放する必要性はなく、増幅産物検出は非常に迅速に行える。しかしながら、既存の蛍光修飾プローブにより得られる蛍光シグナルの比は、常に増幅産物比を定量的に示している訳ではなく、その領域は限られている。従って、増幅産物の比を求めるためには、蛍光シグナル比と増幅産物比とが定量的な関係を示す領域で、各増幅産物を検出する必要性がある。このため、リアルタイム競合的PCR法では、増幅産物を常にモニタリングする必要性がある。以上より、前述したような、増幅産物との比を、反応チューブを開放することなく、エンドポイントで迅速且つ簡便に測定可能な手法は、これまで存在しなかった。
【0160】
上記を鑑み、検討を進めた結果、我々は、増幅産物の比を、エンドポイントにて測定可能な新規手法を発見した。本発明は、本発見に基づく新規遺伝子定量法および新規核酸プローブに関するものでる。以下、その内容を詳細に説明する。
【0161】
i)QProbeを用いたエンドポイント遺伝子定量法
<QProbeによる標的遺伝子および内部標準遺伝子の特異的検出>
本法では、前述した2重蛍光標識QProbe(Switching probe)あるいは、2種のQProbeを用いて、増幅産物の検出を実施する。本説明では、Switching probeを用いた測定方法について解説した。Switching probeは、(1)プローブの両末端塩基はCである、(2)両末端が異なる色素で蛍光標識されている、という特長を有している。内部標準遺伝子の配列は、標的遺伝子においてはSwitching probeの5’末端のCと相補的な位置に存在するGをアデニン(A)に、Switching probeの3’末端のCと相補的な位置に存在するAを、Gに、それぞれ置換してある。このため、Switching probeは、内部標準遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした場合、5’末端と相補的な位置にGが存在しないため、5’末端に標識した色素が著しく蛍光消光しないが、3’末端には相補的な位置にGが存在するため、3’末端に標識した色素が著しく蛍光消光する。
【0162】
一方、標的遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした場合は、5’末端と相補的な位置にGが存在するため、5’末端に標識した色素が著しく蛍光消光するが、3’末端には相補的な位置にGが存在しないため、3’末端に標識した色素が著しく蛍光消光しない。つまり、どちらの末端に標識した色素が蛍光消光したかを観察することにより、各増幅産物を特異的に検出することが可能となる。
【0163】
<内部標準遺伝子の特長>
内部標準遺伝子の配列は、(1)標的遺伝子と共通のプライマーで増幅可能、(2)標的遺伝子と内部標準遺伝子のGC含量は、全く同一、(3)標的遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした際の、完全相補的な部分の塩基長と、内部標準遺伝子由来の増幅産物とハイブリダイズした際の完全相補的な部分の塩基長は全く同一、(4)標的遺伝子と、内部標準遺伝子の塩基配列は、QProbeの両末端と相補的な塩基を除き同一、といった特徴を有する。
【0164】
以上より、Switching probeの標的遺伝子由来の増幅産物に対する親和性と、内部標準遺伝子由来の増幅産物に対する親和性とは、ほとんど差がないと考えられる。つまり、Switching probeは、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物とを区別することなく、完全にランダムにハイブリダイゼーションするため、標的遺伝子由来の増幅産物に結合したSwitching probeと内部標準遺伝子由来の増幅産物に結合したSwitching probeとの比は、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物との比と、完全に一致する。よって、Switching probeの両末端に標識した2種の色素から得られる蛍光消光率より、増幅産物の比を求めることが出来る。
【0165】
また、(1)プライマーは標的遺伝子と内部標準遺伝子共通であり、(2)標的遺伝子と内部標準遺伝子のGC含量は、全く同一、(3)塩基配列が2箇所異なる以外は、標的遺伝子と内部標準遺伝子は同じ塩基配列を有するため、標的遺伝子と内部標準遺伝子の増幅効率は、同じであると考えられる。また、前記(2)及び(3)より、増幅産物が再結合する事によって発生するバイアスは、発生しないと考えられる。よって、増幅産物構成比は、初期遺伝子構成比を保持することが可能となる。しかしながら、原理的に内部標準遺伝子が存在する要件は、(1)どの増幅段階においても、初期遺伝子の比が崩れない(増幅効率が標的遺伝子と同じ)、(2)プローブが、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物とに区別しないでハイブリダイズする、という2点を挙げることができ、これら2点を満たす内部標準遺伝子であれば、必ずしも上記の特長を有する内部標準遺伝子である必要性はない。
【0166】
前述のように、Switching probeの両末端に標識した2種の色素から得られる蛍光消光率より、増幅産物を定量的に求めることが可能となる。
【0167】
以上より、前述した性質を有する内部標準遺伝子およびSwitching probeを使用することで、増幅産物の比を、反応管を開放することなくエンドポイントで、迅速、且つ簡便に求めることが可能となる。また、エンドポイントでの測定が可能となるため、前述のように、多サンプル処理を安価に実施可能となる。
【0168】
本発明の遺伝子定量法は、遺伝子増幅の後、標的遺伝子と内部標準遺伝子の増幅産物の比を求め、標的遺伝子の定量する手法である。このため、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを、その初期構成比を保持したまま、増幅できる遺伝子増幅法であれば、その種類に依らず、本法を適用することが可能である。よって、NASBA法、LAMP法、RCA法、ICAN法など、PCR法以外の遺伝子増幅手法にも適用可能である。
【0169】
ii)QProbeを用いた解離曲線解析によるエンドポイント遺伝子定量法
前述したようにQProbeにより得られる解離曲線解析から、遺伝子構成比を求めることが可能である。本手法を、遺伝子増幅法を介した競合的遺伝子定量法に応用することが可能であると考えられる。
【0170】
本法で用いる内部標準遺伝子は、QProbeがハイブリダイズする部位に変異を入れたものを使用する。遺伝子増幅完了後、この解離ピークの高さの比は、遺伝子の構成比に高い相関があるため、解離ピークの高さの比から、遺伝子の構成比を求めることが出来る。よって、標的遺伝子と増幅効率の同じ、既知濃度の内部標準遺伝子を、標的遺伝子とともに各種遺伝子増幅法によって増幅し、標的遺伝子由来の増幅産物と内部標準遺伝子由来の増幅産物との比を求めることで、標的遺伝子の定量が可能となる。
【0171】
本法において、内部標準遺伝子の要件としては、(1)どの増幅段階においても、初期遺伝子の比が崩れない(増幅効率が標的遺伝子と同じ)、(2)標的遺伝子の解離ピークと、内部標準遺伝子の解離ピークとが、遺伝子の比を求めることができるよう、十分に分離する、という2点を挙げることができる。よって、これら2点を満たす内部標準遺伝子であれば、必ずしも上記の特徴を有する内部標準遺伝子である必要性はない。
【0172】
本発明の遺伝子定量法は、標的遺伝子と内部標準遺伝子とを、その初期構成比を保持したまま、増幅できる遺伝子増幅法であれば、その種類に依らず、本法を適用することが可能である。よって、NASBA法、LAMP法、RCA法、ICAN法など、PCR法以外の遺伝子増幅手法にも適用可能である。
【0173】
D.第4発明
本発明方法で得られる測定値を用いて、正確に標的核酸を測定(決める)方法である。実施例8及び11に記載されている。
【実施例】
【0174】
本実施例において、各種核酸プローブ、内部標準核酸、及び標的核酸は特別に断りがない場合は、オリゴデオキシヌクレオチド体を使用した。
又、各種核酸プローブにおいて、蛍光標識部位若しくは位置は、末端部位の場合は、5’末端については、5’末端の糖の5’位CのOH基(脱リンして得られる。)である。一方、3’末端については、3’末端の糖の3’位CのOH基である。
<実施例1>
2つのQProbeを含む新規混合物及びそれを用いた遺伝子の新規測定方法
新規混合物
下記の組成からなる新規混合物を作製した。
・下記のQProbe A(標的遺伝子検出用QProbe):200nM
・下記のQProbe B(内部標準遺伝子検出用):200nM
・下記の内部標準核酸:下記の濃度のものを各々作製した。
a)200nMの1/10、1/5、1/2、4/5、9/10のもの。
b)800nMの1/10、1/5、1/2、4/5、9/10のもの。
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
【0175】
新規測定方法
(1)実験方法
標的遺伝子を前記の新規混合物に添加し、2つのQProbeを用いて、その存在比を求めことが可能であるか検討した。実験では、標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を変化させたDNA溶液を作成し、そこに標的遺伝子検出用QProbeと、内部標準遺伝子検出用QProbeを添加後、蛍光測定を実施した。蛍光測定は、60℃と95℃で実施した(60℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が結合した際の蛍光値であり、95℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が完全に解離した際の蛍光値であると考えられる。)。なお95℃の蛍光値は、蛍光消光率を求める際のリファレンスとした。そして各プローブの蛍光消光率の比と、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比との関係を調べ、この関係式から、遺伝子構成比が定量可能であるか検討した。
以下に、詳細な実験条件を示す。
【0176】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:5'-AGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAG-3'
内部標準遺伝子の配列:5'-GGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAA-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、800nM(標的:内部標準=9:1、4:1、1:1、1:4、1:9)
【0177】
・QProbe
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:5'-CTCCTCTGGCCTTTCCGGAACC-3'
色素:QProbe A(標的遺伝子検出用QProbe)はBODIPY FL(Molecular probes社製、D-6140)で、QProbe B(内部標準遺伝子検出用)はTAMRA(Molecular probes社製、C-6123)にて蛍光標識。
各QProbeの終濃度:200nM(トータルで400nM)
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
・使用装置:蛍光測定は、温度調節装置(社製)の付属したLS50B(パーキンエルマー社製)にて行った。QProbe Aの測定波長は、励起波長:480nm、蛍光波長:520nmにて実施し、QProbe Bの測定波長は、励起波長:550nm、蛍光波長:580nmにて実施した。
【0178】
蛍光測定は、ハイブリダイズした際の蛍光測定は、60℃で実施した。また、リファレンスとして完全にプローブからデバイブリする温度(95℃)の蛍光強度を測定し、下式より蛍光消光率を求めた。
蛍光消光率(%)=(1-(F60/F95)/(F60プローブのみ/F95プローブのみ))×100
F60:ターゲット遺伝子存在下での60℃の蛍光強度値
F95:ターゲット遺伝子存在下での95℃の蛍光強度値
F60プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での60℃の蛍光強度値
F95プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での95℃の蛍光強度値
【0179】
(3)実験結果および考察
実験結果を図5として示す。本グラフから、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比と、QProbe A消光率/QProbe B消光率との間には高い相関があることが明らかとなった。よって、本関係式を検量線として用いることにより、本手法によって標的遺伝子の定量が可能であることが示唆された。
【0180】
また、標的遺伝子および内部標準遺伝子のトータル量が、プローブ添加量より多い場合(800nM)においても、少ない場合(200nM)と同様の相関が観察されたことから、本測定法では、ターゲットとなる遺伝子量が、プローブより多い場合であっても、正確に定量可能であることが示唆された。以上より、本手法は1)標的遺伝子の希釈工程が不要、2)プローブの濃度を変化させることが不要、といった特徴を有する遺伝子定量手法であることが示された。
【0181】
<実施例2>
2−2グアニンとの相互作用により消光する新規色素のスクリーニング
(1)実験方法
プローブ配列の3’末端をCとし、そのCに各種の蛍光色素にてラベルしたプローブを作成した。作成したプローブとその相補鎖を、溶液中でハイブリダイズさせ、蛍光消光率を求めた。
【0182】
実験の手順は、
(2)実験条件
・標的遺伝子
標的遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:3'ggggggggggggAAAAAA5'
終濃度:320nM
・プローブ
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:5'CCCCCCCCCCCCTTTTTT3'
色素:PacificBlue(P-10163)、TET(C-6166)、TBSF(C-6166)、HEX(T-20091)、R6G(C-6127)を使用した。
プローブの終濃度:40nM
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
【0183】
・使用装置
蛍光測定は、温度調節装置(社製)の付属したLS50B(パーキンエルマー社製)にて行った。
蛍光測定の条件は、各色素の最大励起波長と最大蛍光波長を、LS50Bを用いて求め、蛍光消光率を求める際には、得られた最大励起波長と最大蛍光波長にて蛍光測定を実施した。各色素の最大励起波長と最大蛍光波長は、結果で示す。スリット幅は、励起波長と蛍光波長ともに5nmとした。
【0184】
実験の手順を図8に示す。蛍光測定は、35℃で実施した。
【0185】
蛍光消光率は下式より求めた。
蛍光消光率(%)=(測定値(i)−測定値(ii))÷測定値(i)×100
【0186】
(3)実験結果および考察
下表から分かるように、全ての色素で蛍光消光が確認された。特にPacificBlueとR6Gでは蛍光消光が著しく、これまで知られている色素よりも高い消光率が得られた。また、PacificBlue(新規実施分)、R6G(新規実施分)、BODIPY FL(既知色素)、TAMRA(既知色素)の蛍光キャラクターとはそれぞれ異なるため、上記の色素で標識した4種のプローブを用いることで、同じ試料中に存在する4種遺伝子の同時検出が可能であると考えられる。
【0187】
【0188】
<実施例3>
2−3 Switching probeを用いた遺伝子定量法
新規混合物
下記の組成からなる新規混合物を作製した。
・下記のSwitching probe:400nM
・下記の内部標準核酸:下記の濃度のものを各々作製した。
a)600nMの1/10、1/5、1/2、4/5、9/10のもの。
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
【0189】
又、Switching probeの実験データを検証するために、上記の反応液において、Switching probeに代えてQProbe AとQProbe Bを含有させた新規混合物を作製した。
・下記のQProbe A(標的遺伝子検出用):200nM
・下記のQProbe B(内部標準遺伝子検出用):200nM
【0190】
新規測定方法
標的遺伝子を前記の新規混合物に添加し、標的遺伝子を測定した。また、Switching probeを用いた際に得られる蛍光消光率と、2つのQProbeを用いた際に得られる蛍光消光率とを比較した。
【0191】
(1)実験方法
Switching probeを用いることでも、前述の2種のQProbeを用いた場合と同様、その存在比を求めことが可能であるか検討した。また、Switching probeを用いた際に得られる蛍光消光率と、2つのQProbeを用いた際に得られる蛍光消光率とを比較した。
【0192】
以下に、詳細な実験条件を示す。
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TTTGGATGACTGACTGACTGACTGACGAGATTT-3'
内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TTTAGATGACTGACTGACTGACTGACGAGGTTT-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:600nM(標的:内部標準=9:1、4:1、1:1、1:4、1:9)
・QProbe
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
【0193】
Switching probeの配列と構造
BODIPY FL-5'CCTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC3'-TAMRA
QProbeの配列と構造
<QProbe A(標的遺伝子検出用)>
BODIPY FL-5'CCTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC3'
<QProbe B(内部標準遺伝子)>
5'CCTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC3'-TAMRA
なお、使用した蛍光色素は、実施例1と同様である。
【0194】
終濃度:400nM(2種のQProbeを使用する場合はトータルで400nM)
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
・使用装置、使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方は、実施例2−1と同様である。
【0195】
(3)実験結果および考察
BODIPY FLは5’末端のCに標識されているため、標的遺伝子とハイブリダイズした際に著しき蛍光消光する。一方、TAMRAは3’末端のCに標識されているため、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際に著しき蛍光消光する。よって、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との比と高い相関があると考えられる。実験結果を図6として示す。本グラフから、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比と、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比との間には高い相関があることが確認された。本結果より、Switching probeを用いても、標的遺伝子の定量が可能であることが示された。
【0196】
Switching probeの際に得られた蛍光消光率と、2種のQProbeを用いた場合に得られたSwitching probeの際に得られた蛍光消光率を比較した。その結果を表3に示す。本表からも、Switching probeで得られた蛍光消光率は、2種のQProbeを用いた際に得られた蛍光消光率よりも約2倍高い数値を示した。このことから、2種のQProbeを用いる手法より、Switching probeを用いる手法のほうが、より精度良く標的遺伝子の定量を実施できることが示された。
【0197】
【0198】
<実施例4>
2−4 遺伝子増幅法を介したエンドポイント遺伝子定量法
(1)実験方法
遺伝子増幅を介したエンドポイント遺伝子定量法について、正確に標的遺伝子量を定量出来るか確認した。遺伝子増幅法は、PCR法を採用し、プローブはSwitching Probeを採用した。
【0199】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子:遺伝子組換え大豆(ラウンドアップ大豆)RRS遺伝子のPCR産物 標的遺伝子の配列:5'-AGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAG-3'
(下線が内部標準遺伝子と異なる部分。表記した配列にプローブが結合する。これ以外の配列は、標的遺伝子、内部標準遺伝子共に共通であるため表示しなかった。)
内部標準遺伝子:遺伝子組換え大豆(ラウンドアップ大豆)のRRS遺伝子に変異を人為的に挿入したPCR産物
内部標準遺伝子の配列:5'-GGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAA-3'
(下線が標的遺伝子と異なる部分。表記した配列にプローブが結合する。
これ以外の配列は、標的遺伝子、内部標準遺伝子共に共通であるため表示しなかった。)
【0200】
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:1000copy
内部標準遺伝子と標的遺伝子との初期構成比:標的:内部標準=9:1、4:1、1:1、1:4、1:9
・Switching Probeの製造
合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
Switching probeの配列と構造
BODIPY FL-5'CTCCTCTGGCCTTTCCGGAACC3'-TAMRA
(色素はこれまでと同様)
プローブ終濃度:400nM
【0201】
・PCR条件
Denature:95℃(60秒)
Annealing:56℃(60秒)
Extension:72℃(60秒)
・遺伝子増幅用酵素:TaqポリメラーゼはGeneTaq(日本ジーン社製)を用いた。
【0202】
・プライマー
合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
フォワードプライマー配列:
5'CCTTTAGGATTTCAGCATCAGTGG3'
リバースプライマー配列:5'GACTTGTCGCCGGGAATG3'
プライマー終濃度:各1000nM
【0203】
・内部標準遺伝子の製造
目的とする内部標準遺伝子配列を有するオリゴDNAを、エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)に製造委託した。得られたオリゴDNAを鋳型として上記の検出用プライマーを用いてPCR増幅し、得られた産物を、Microcon PCR(ミリポア社製)にて精製した。精製の後に、PicoGreen(Molecular probes社製)を用いて定量し、これを内部標準遺伝子として用いた。
【0204】
・標的遺伝子PCR産物の製造
内部標準遺伝子の作成と同様の方法で実施した。
・使用装置と測定条件
蛍光消光率を求める際の使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方は、実施例2−1と同様である。
PicoGreenを用いた定量での測定波長は、励起波長:480nm、蛍光波長:520nmにて実施した。スリット幅は、何れの場合も5nmとした。PCR反応は、サーマルサイクラー(iCycler、バイオラッド社製)を用いて実施した。
【0205】
(3)実験結果
BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との比との関係式を求めた結果、両者の間には高い相関が見られた(図7参照)。この結果から、標的遺伝子と内部標準遺伝子とは、初期の遺伝子構成比を保ったまま増幅された事が示唆された。また、本結果から、遺伝子増幅法を介した場合も、本手法により、標的遺伝子の定量が可能であることが示された。
【0206】
<実施例5>
1つの均一溶液系核酸プローブ及び内部標準核酸からなる新規混合物及びそれを用いた遺伝子の新規測定方法について、その好適な使用例を以下に示す。
【0207】
(1)実験方法
1つの均一溶液系核酸プローブ(ここではQProbeを使用)を用いて、その標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を求めことが可能であるか検討した。実験では、標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を変化させたDNA溶液を作成し、そこにQProbeを添加後、蛍光測定を実施した。蛍光測定は、60℃と95℃で実施した(60℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が結合した際の蛍光値であり、95℃における測定値はプローブとそのターゲット遺伝子が完全に解離した際の蛍光値であると考えられる。)。なお95℃の蛍光値は、蛍光消光率を求める際のリファレンスとした。そして各プローブの蛍光消光率の比と、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比との関係を調べ、この関係式から、遺伝子構成比が定量可能であるか検討した。
以下に、詳細な実験条件を示す。
【0208】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:5'-AGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAG-3'
内部標準遺伝子の配列:5'-GGTTCCGGAAAGGCCAGAGGAA-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、400nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0209】
・QProbe
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:5'-CTCCTCTGGCCTTTCCGGAACC-3'
色素:BODIPY FL(Molecular probes社製、D-6140)。
QProbeの終濃度:400nM
・バッファー:10mM Tris-HClバッファー(pH:8.3)、KCl:50mM、MgCl2:1.5mM
・使用装置:蛍光測定は、温度調節装置(社製)の付属したLS50B(パーキンエルマー社製)にて行った。測定波長は、励起波長:480nm、蛍光波長:520nmにて実施した。
【0210】
蛍光測定は、ハイブリダイズした際の蛍光測定は、60℃で実施した。また、リファレンスとして完全にプローブからデバイブリする温度(95℃)の蛍光強度を測定し、下式より蛍光消光率を求めた。
蛍光消光率(%)=(1-(F60/F95)/(F60プローブのみ/F95プローブのみ))×100
F60:ターゲット遺伝子存在下での60℃の蛍光強度値
F95:ターゲット遺伝子存在下での95℃の蛍光強度値
F60プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での60℃の蛍光強度値
F95プローブのみ:ターゲット遺伝子非存在下での95℃の蛍光強度値
【0211】
(3)実験結果および考察
実験結果を図10として示す。標的遺伝子および内部標準遺伝子のトータル量が、プローブ添加量と等量の場合(400nM)とプローブ添加量より多い場合(800nM)は、それぞれの検量線が一致した。これは、プローブ量が、トータル遺伝子量以下である場合、あるBODIPY消光率が得られた際に、導かれる遺伝子構成比は、トータル遺伝子量に関わらず同じであることを示している。よって、プローブ量がトータル遺伝子量以下である場合、BODIPY消光率から、遺伝子構成比が正確に定量可能であることが示された。しかしながら、プローブ量がトータル遺伝子量より多い場合(200nM)の検量線と、プローブ量がトータル遺伝子量以下の場合の検量線とは、一致しなかった。これは、トータル遺伝子量が200nMの場合、プローブ添加量は400nMであることから、ハイブリダイズしていないプローブが200nM存在するため、トータル遺伝子量が400nM、800nMの場合と比較して、蛍光消光が約半分になるためである。
なお、トータル遺伝子量(標的核酸の濃度)がプローブ量より少ない場合は、検量線の不一致を解決するには、プローブの濃度を種々変えて測定するのが好適である。
【0212】
<実施例6>
二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸からなる新規混合物を用いた遺伝子定量法(その2)
実施例5に記載した方法においても、プローブの量を種々変化させることにより、標的核酸を正確に測定できるが、本方法を用いるとプローブの量を種々変化させなくとも、より好適に測定できるようになる。
(1)実験方法
標的核酸および内部標準核酸と完全相補的であり、蛍光標識部位に対応する塩基(蛍光標識塩基に対応する塩基を1とする)から1塩基乃至3塩基の範囲内のGの数を、標的核酸と内部標準核酸の間で変化させることによって、蛍光強度が変化するタイプの二重標識核酸プローブ(図11)を用い、前述の二重標識核酸プローブ(C又はG自身の部位に標識されたプローブ)を用いた場合と同様、標的核酸の存在比を求めことが可能であるか検討した。
【0213】
以下に、詳細な実験条件を示す。
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TAATGATGACTGACTGACTGACTGACGATGGT-3'
内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TGGTATGACTGACTGACTGACTGACGAGTAAT-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、400nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0214】
・二重標識核酸プローブ
BODIPY FL-5'ACTACTGACTGACTGACTGACTGCTCA 3'-TAMRA
終濃度:400nM
なお、使用した蛍光色素および委託製造先等は、実施例5と同様である。
【0215】
・使用装置、使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方、バッファー等は、実施例5と同様である。
【0216】
BODIPY FLは、標的遺伝子とハイブリダイズした際に、蛍光標識末端塩基の近傍にGが存在するため、著しく蛍光消光する。しかし、内部標準遺伝子とハイブリダイズした場合は、近傍にGが存在しないため蛍光消光は発生しない。
一方、TAMRAは、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際に、蛍光標識末端塩基の近傍にGが存在するため、内部標準遺伝子とハイブリダイズした際に著しく蛍光消光する。よって、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比は、標的遺伝子と内部標準遺伝子との比と高い相関があると考えられる。
【0217】
(3)実験結果および考察
実験結果を図12として示す。本グラフから、トータル遺伝子量の違いに関わらず、BODIPY FLの蛍光消光率とTAMRAの蛍光消光率との比と、標的遺伝子/内部標準遺伝子の構成比との間には高い相関があることが確認された。本結果より、本タイプの二重標識核酸プローブを用いた手法は、プローブに対してトータル遺伝子量が大きい場合も、小さい場合も、正確に標的遺伝子を定量可能であることが示唆された。
【0218】
<実施例7>
二重標識核酸プローブ及び内部標準核酸からなる新規混合物を用いた遺伝子定量法(その3)
(1)実験方法
蛍光標識した2部位のうち、一方の部位に標識した蛍光色素においては、標的核酸及び内部標準核酸のどちらがハイブリダイズしても同程度の蛍光キャラクター変化量が得られるが、他方に標識した蛍光色素においては、標的核酸とハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量と、内部標準核酸とハイブリダイズした際の蛍光キャラクター変化量とに差が生じるタイプの二重標識核酸プローブ(図13)を用いることでも、前述の二重標識核酸プローブを用いた場合と同様、標的核酸の存在比を求めことが可能であるか検討した。
【0219】
以下に、詳細な実験条件を示す。
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TAAGGATGACTGACTGACTGACTGACGATGGT-3'
内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-TAAGATGACTGACTGACTGACTGACGAGTAAT-3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:200nM、400nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0220】
二重標識核酸プローブの配列と構造
BODIPY FL-5'ACTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC 3'-TAMRA
終濃度:400nM
なお、使用した蛍光色素は、実施例5と同様である。
【0221】
・使用装置、使用機器、測定条件、蛍光消光率の求め方、バッファー等は、実施例5と同様である。
【0222】
上記の二重標識プローブの5’末端に標識したBODIPY FLは、標的遺伝子とハイブリダイズした際に、蛍光標識末端塩基の近傍にGが存在するため、著しく蛍光消光する。しかし、内部標準遺伝子とハイブリダイズした場合は、近傍にGが存在しないため蛍光消光は発生しない。よって、BODIPY FLの蛍光消光率は、標的遺伝子の存在比と高い相関があると考えられる。そして、ハイブリダイズしたプローブの割合が既知であれば、ハイブリダイズした全プローブのうち、標的遺伝子(あるいは内部標準遺伝子)にハイブリダイズしたプローブの割合を求めることが可能となる。以下、例を挙げて説明する。実サンプルにおける標的核酸と内部標準核酸とで消光の差がある蛍光色素の消光率が40%であり、差のない色素のものに基づいて、添加した全プローブの半分がハイブリダイズしたと計算されたとき、ハイブリダイズしたプローブだけに注目した場合、ハイブリダイズしたプローブの80%が消光したこととなる。ここで用いたプローブは、標的遺伝子にハイブリダイズしたときに、BODIPY FLの蛍光が完全に消えるプローブであるとすると、実サンプルにおける消光率(40%)から、ハイブリダイズしたプローブのうち、80%が標的遺伝子にハイブリダイズしたと計算できる。このように、ハイブリダイズしたプローブの割合と、BODIPY FLの消光率が明らかとなれば、標的遺伝子・内部標準遺伝子間の構成比を定量可能である。
【0223】
二重標識プローブの3’末端に標識したTAMRAは、標識遺伝子、内部標準遺伝子ともに、蛍光標識末端塩基の相補的な位置にGが存在するため、標識遺伝子にハイブリダイズした場合も、内部標準遺伝子にハイブリダイズした場合も同じように消光する。このため、TAMRAの消光率は、ハイブリダイズしたプローブの割合を示すこととなる。
前述したように、ハイブリダイズしたプローブの割合が既知であれば、遺伝子の構成比を定量可能になると考えられる。よって、BODIPY FLの消光率をTAMRAの消光率で補正することにより、トータル遺伝子量の大小にかかわらず、標的遺伝子の定量が可能になるものと考えられる。
【0224】
(3)実験結果および考察
実験結果を図14として示す。図14Aは、BODIPYの蛍光消光率と、標的遺伝子存在比との相関を示した。この図から、トータル遺伝子量の違いによって検量線が異なることが分かる。この結果は、標的遺伝子の存在比が同じであっても、トータル遺伝子量が変化すれば、BODIPYの蛍光消光率も変化することを示している。このことから、BODIPY蛍光消光率では、標的遺伝子の存在比を定量不可能であることが明らかとなった。一方、BODIPYの蛍光消光率を、ハイブリダイズしたプローブの割合を示すTAMRAの蛍光消光率で割った値(BODIPY蛍光消光率/TAMRA蛍光消光率)は、トータル遺伝子量の違いに関わらず、それらの関係式がほぼ一致していることがわかる(図14B)。つまり、BODIPY蛍光消光率/TAMRA蛍光消光率は、トータル遺伝子量に依存せず、標的遺伝子の存在比にのみに依存し変化することが確認された。以上の結果より、本タイプの二重標識核酸プローブを用いた手法は、トータル遺伝子量が大小に関わらず、標的遺伝子の存在比を正確に定量可能であることが示唆された。
【0225】
本法において使用するプローブは、(1)一方に標識した色素の蛍光量が、標的遺伝子にハイブリダイズしたときと内部標準遺伝子にハイブリダイズしたときとで異なる、(2)他方に標識した色素においては、標的核酸及び内部標準核酸のどちらがハイブリダイズしても同程度の蛍光変化量(消光でもよく、発蛍光でもよい)が得られる、という特徴を有するプローブであれば良く、この性質を有するプローブであれば、上記と同様の原理で標的遺伝子を定量可能である。また、使用する蛍光色素は、ハイブリダイゼーションにより、蛍光キャラクターが変化する色素であれば良く、そのような性質を有する色素であれば特に限定されない。
【0226】
<実施例8>
蛍光測定値から標的核酸濃度を正確に計算する方法(その1)。
これまでに示した実施例において使用したプローブは、標的遺伝子と内部標準遺伝子にうち、一方の遺伝子に結合したときに色素の発する蛍光量が変化した(主に蛍光消光)とすると、他方の遺伝子に結合したときの蛍光は、結合していないプローブの蛍光と同じになるものを用いた(実施例7を除く)。つまり、プローブが存在する状態としては、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態の三通り存在するが、色素1分子毎の蛍光量に着目すると、蛍光量が異なるプローブは2通りしか存在しなかった(図15参照)。しかしながら、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態で、それぞれ蛍光量が異なるプローブが存在することが分かってきた(図15参照)。このタイプのプローブを用いた反応系の場合、蛍光量が異なるプローブが三通り存在することになるため、これまでの実施例ように、単純な計算式で標的遺伝子を定量することは困難であると考えられる。そこで、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態でそれぞれ蛍光量が異なるプローブを使用することを前提とした計算方法を考案したので、以下説明する。
【0227】
<計算式(その1)>
一方の蛍光部位に標識した色素の蛍光強度が、標的遺伝子と結合した際に著しく減少し、他方の蛍光部位に標識した色素の蛍光強度が、内部標識遺伝子と結合した際に減少するタイプの二重標識プローブを用いた場合の計算式を以下に示した。その内容を詳細に説明する。
本計算式で使用する定数を以下に定義する。
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
【0228】
A:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
a’:非結合プローブにおける色素Aの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
B:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%標的遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
b’:非結合プローブにおける色素Bの蛍光強度に対する、100%内部標準遺伝子に結合した場合の蛍光強度の割合
【0229】
実サンプルにおける色素Aの蛍光強度割合(A)は、以下のように表される。
A=(1-y)+axy+(1-x)a'y=1-y+axy+a'y -a'xy (1)
(1)を変形させると、ハイブリダイズしたプローブの割合(y)は、以下のように表すことが出来る。
y=(1-A)/(a'x-ax+1-a') (2)
一方、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度(B)は、以下のように表される。
B=(1-y)+(1-x)by+b'xy=1-y-bxy+by+ b'xy (3)
(3)を変形させると、ハイブリダイズしたプローブの割合(y)は、以下のように表すことが出来る。
y=(1-B)/(b'x-bx+1-b') (4)
(2)式に、(4)式を代入すると、以下のようになり、
(1-A)/(a'x-ax+1-a')=(1-B)/(b'x-bx+1-b') (5)
(5)式を変形すると、(6)式に変形することが出来る。
x=(-a'-B+Ba'+b'+A-Ab')/(b'-b-Ab'+Ab-a'+a+Ba'-Ba) (6)
x以外は全て実験的に求めることが可能であるので、(6)により標的遺伝子の割合を算出することが可能であると考えられる。
【0230】
以下に、詳細な実験条件を示す。
実験は、(1)検量線を作成し、本検量線から標的遺伝子構成比を定量する方法、(2)前述の計算式で、標的遺伝子構成比を定量する方法、以上、2通りの定量法により、模擬的に作成した試料(以下、単に模擬試料と呼ぶ)における標的遺伝子構成比を定量し、本結果より、2つの定量方法を比較、評価した。
【0231】
(2)実験条件
<標的遺伝子および内部標準遺伝子>
・標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
・オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造
・標的遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-AATTCGTACCAACTATCCTCGTCGTCAGCTATG-3'
・内部標準遺伝子の配列(下線がプローブとハイブリダイズする配列)
5'-GATTCGTACCAACTATCCTCGTCGTCAGCTATA-3'
・消光率測定時の標的遺伝子および内部標準遺伝子の添加量
標的遺伝子:800nM
内部標準遺伝子:800nM
・内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度(検量線)
800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
・内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度(模擬試料)
200nM、800nM(標的:内部標準遺伝子=4:1)
【0232】
・二重標識核酸プローブの配列と構造
BODIPY FL-5' CATAGCTGACGACGAGGATAGTTGGTACGAATC 3'-TAMRA
なお、使用した蛍光色素は、実施例6と同様である。プローブ終濃度は400nMである。
その他の条件(バッファー、使用装置、使用機器、測定条件等)は、これまでの実施例7と同様である。
【0233】
(3)結果と考察
<プローブ消光率の測定>
まず、本実施例で使用したプローブについて、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態の消光率を測定した。なお、BODIPY FLの蛍光消光率については、内部標準遺伝子を添加した実験系を基準(消光率=0%)として、その他の消光率を算出し、BODIPY FLの蛍光消光率については、標的遺伝子を添加した実験系を基準(消光率=0%)として、その他の消光率を算出した。その結果を下の表に示す。この表から分かるように、遺伝子を添加していない系(遺伝子非添加)の蛍光消光率は、両色素ともに、0%ではないことが分かる。これは、本プローブが、蛍光標識した塩基と相補的位置にGの存在しない遺伝子(BODIPY FLの場合は内部標準遺伝子で、TAMRAの場合は標的遺伝子)と結合した場合も、プローブに標識した色素の発する蛍光量が変化したことを示している。以上より、本実施例で使用するプローブは、標的遺伝子と結合した状態、内部標準遺伝子と結合した状態、結合していない状態で、その蛍光量が変化することが明らかとなった。
【0234】
【0235】
<標的遺伝子存在比の定量>
検量線を下図に示す。この検量線から分かるように、標的遺伝子存在比と消光率比の間に、高い相関が認められた。本検量線で得られた関係式から、模擬試料における標的遺伝子の存在比を定量した。
【0236】
その定量結果を下表に示す。この結果より、模擬試料におけるトータル遺伝子量が800nMの場合、標的遺伝子存在比の定量値は、理論値(模擬試料における標的遺伝子:内部標準遺伝子は4:1であるので、理論値は4.0となる。)近く、正確な定量値が得られた事が分かる。しかしながら、トータル遺伝子量が200nMの場合、得られた標的遺伝子存在比は、理論値の約半分であった。以上の結果より、プローブ量がトータル遺伝子量より少ない場合、非結合プローブの蛍光量、標的遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量、内部標準遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量がそれぞれ異なるプローブでは、正確に遺伝子構成比を定量出来ないことが示された。
【0237】
【0238】
本実施例におけるプローブの添加量は400nMであるため、トータル遺伝子量が200nMの場合、添加プローブの半分は結合しない。本実施例で使用したプローブの場合、非結合プローブの蛍光量、標的遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量、内部標準遺伝子と結合した時のプローブの蛍光量は、それぞれ異なる。このため、トータル遺伝子量がプローブ量より少ない場合、各色素の蛍光変化量は、内部標準遺伝子に結合した際の蛍光変化量と、標的遺伝子に結合した際の蛍光変化量の両方に由来することとなる(非結合プローブの蛍光を基準とした場合)。つまり、各色素の蛍光変化は、標的遺伝子と内部標準遺伝子の両方に影響を受けることとなる。このため、蛍光変化量の比は、遺伝子構成比を反映せず、その結果、正確な定量値が得られなかったと考えられる。一方、トータル遺伝子量が800nMの場合、プローブは、標的遺伝子と内部標準遺伝子のどちらかに結合し、非結合プローブは存在しない。このため、蛍光変化量は、一方の遺伝子のみに由来する。よって、蛍光変化量の比は遺伝子構成比を正確に反映することとなり、正確な定量値が得られたと考えられる。
【0239】
前述した計算式を用いて、遺伝子構成比を定量した結果を、下の表に示す。蛍光測定値は、検量線による定量で用いた測定値であるが、非結合プローブの蛍光量を1としたときの蛍光量に変換し、計算式に代入した。この表から、トータル遺伝子量が、プローブ添加量よりも少ない場合も多い場合と同様、正確に遺伝子構成比(標的遺伝子/内部標準遺伝子)を定量可能であった事が分かる。以上より、前述した関係式により、トータル遺伝子量によらず遺伝子構成比を定量可能であることが明らかとなった。
【0240】
【0241】
<実施例9>
消光物質若しくは消光物質標識プローブを含有する本発明の新規混合物を用いて標的核酸を測定した例。
トータル遺伝子量が、プローブ添加量よりも大幅に少ない場合、標的遺伝子および内部標準遺伝子に結合した際のプローブの蛍光変化量が少なくなり、標的遺伝子量を正確に定量出来ないことが予想された(図17A参照)。しかしながら、非結合プローブが発する蛍光を消光させることができれば、ハイブリダイズしたプローブに由来する蛍光変化量を正確に測定でき、その結果、プローブ添加量よりもトータル遺伝子量が大幅に少ない場合においても、標的遺伝子の定量が可能となることが予想された(図17B参照)。この目的を達成するため、蛍光消光物質で標識したプローブ(消光物質標識プローブと呼ぶ)を、用いることが有効であると考えられた。消光物質標識プローブの好適な使用条件として、(1)消光物質標識プローブは、標的核酸プローブにハイブリダイズする、(2)消光物質標識プローブと標的核酸プローブがハイブリダイズした際に、標的核酸プローブに標識した色素の近傍に消光物質標識プローブの消光物質が位置する、(3)標的核酸プローブ・消光物質標識プローブ間の解離温度が、標的核酸プローブ・標的遺伝子間および、標的核酸プローブ・内部標準遺伝子間の解離温度よりも低い、以上3つの条件を挙げることができる。更に、好適な適用例を図17Bとして示す。消光物質標識プローブは、(1)二重標識プローブと相補的な配列を有している、(2)二重標識プローブとハイブリダイズした際、蛍光標識した塩基と相補的な塩基が消光物質で標識されている。(3)消光物質標識プローブは、標的核酸プローブよりも短いものを2本使用し、それぞれは標的核酸プローブの異なる領域に重ならないようにハイブリダイズする、という特性を有している。
(1)、(2)、(3)の特性によって、二重標識核酸プローブの内部標準遺伝子および標的遺伝子へのハイブリダイゼーションを阻害することなく、二重標識核酸プローブの蛍光を効果的に消光させることができる。
【0242】
(1)実験方法
実験は、消光物質標識核酸プローブを添加した系と、添加しない系の2通りの実験を行い、その模擬試料における標的遺伝子存在比の定量値を比較することで、消光物質標識核酸プローブの効果を評価した。標的遺伝子存在比の定量は、実施例8の計算式で行った。
前述の実験の前に、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子および内部標準遺伝子のみに十分にハイブリダイズするが、消光物質標識核酸プローブとはハイブリダイズしない温度域と、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子、内部標準遺伝子および消光物質標識核酸プローブに十分にハイブリダイズする温度域を予め特定した。その温度域は、前記が55〜60℃付近で、後記が40℃以下であった。この結果を基に、確認実験では、温度を、95℃、57℃、35℃の順で変更し、それぞれの温度で1分間保持した。57℃に保持する目的は、二重標識核酸プローブを標的遺伝子および内部標準遺伝子のみにハイブリダイズさせるためである。その後に、35℃に保持することにより、結合しなかった二重標識核酸プローブを、消光物質標識核酸プローブとハイブリダイズさせ、二重標識核酸プローブの蛍光を消光させた。
【0243】
その他の条件(バッファー、使用装置、使用機器等)は、実施例8と同様である。
(2)実験条件
<標的遺伝子および内部標準遺伝子>
・標的遺伝子、内部標準遺伝子および二重標識核酸プローブ
実施例8と同じものを使用した。
・消光物質標識核酸プローブ
消光物質としてはDABCYL(グレンリサーチ、米国)を使用した。配列を以下に示す。
消光物質標識核酸プローブA:5' CTCGTCGTCAGCTATGG 3'-DABCYL
消光物質標識核酸プローブB:DABCYL-5' GGATTCGTACCAACTATC
(下線は、二重標識核酸プローブと結合する領域を示す。)
上記の合成:エスペックオリゴサービス株式会社による委託製造
・模擬試料における内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度
20nM、40nM、80nM(標的:内部標準=4:1)
・二重標識核酸プローブの終濃度:400nM
・消光物質標識核酸プローブの終濃度:800nM
【0244】
(3)結果と考察
下表に消光物質標識核酸プローブを添加していない系における遺伝子構成比の定量結果を示す。この結果から明らかなように、トータル遺伝子量が低下するにしたがい、模擬試料における蛍光強度割合(AおよびB)が、非結合プローブの蛍光強度割合に近づいており、蛍光の変化量が減少することが分かる。その結果、トータル遺伝子量が低下するにしたがい、模擬試料における遺伝子構成比の定量値は、理論値からずれる結果となった。
【0245】
【0246】
下表に消光物質標識核酸プローブを添加した系における遺伝子構成比の定量結果を示す。この系においても、トータル遺伝子量が低下するにしたがい模擬試料における蛍光強度割合(AおよびB)が低下した。しかしながら、トータル遺伝子量が最も低い20nMの系においても、非結合プローブの蛍光に対して、約1.5〜2.0倍の蛍光変化が見られた。その結果、トータル遺伝子量が低下しても、模擬試料における遺伝子構成比の定量値は、理論値にほぼ近い値が得られた。以上の結果より、消光物質標識核酸プローブを添加し、非結合プローブの蛍光を減少させることによって、トータル遺伝子量が少ない場合も、遺伝子構成比を正確に定量でき、その結果、標的遺伝子量を正確に定量できることが明らかとなった。
【0247】
消光物質標識核酸プローブは、非結合プローブの蛍光を消光させることによって、標的遺伝子および内部標準遺伝子にハイブリダイズしたプローブに由来する蛍光を正確に測定することが可能となる。このため、消光物質標識核酸プローブは、本出願において示した全ての標的核酸プローブ(内部標準核酸プローブおよび二重標識核酸プローブを含む)及び、これらプローブを用いた測定法に有効である。
また、遺伝子増幅法により増幅された産物を対象とした場合も、消光物質標識核酸プローブは前述と同様の理由で有効である。その場合、消光物質標識核酸プローブが、プライマーとして機能することを防止するため、3’末端が標識されていない消光物質標識核酸プローブの場合は、3’末端をリン酸化する等の処理を行っておく必要性がある(但し、遺伝子増幅後、標的核酸プローブ(内部標準核酸プローブおよび二重標識核酸プローブを含む)及び消光物質標識核酸プローブを添加し、標的遺伝子構成比を定量する場合は、その限りではない。)。
【0248】
【0249】
<実施例10>
エキソヌクレアーゼを含有してなる本発明の新規混合物を用いて標的核酸を測定した方法
標的核酸プローブと内部標準核酸プローブを用いる新たな手法に関する実施例を以下に示す。本手法においては、標的核酸プローブと内部標準核酸プローブとともに、エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素(以下、単にエキソヌクレアーゼと呼ぶ)を併用する。その好適な例を、図18に示す。ここでは、3’→5’エキソヌクレアーゼの使用を前提としている。
【0250】
本手法においては、蛍光色素と消光物質で2重標識された標的核酸プローブおよび内部標準プローブを使用する。標的核酸プローブおよび内部標準プローに標識する蛍光色素は、それぞれ異なる蛍光色素を使用するのが、より好適である。また、3’→5’エキソヌクレアーゼを使用する場合、蛍光標識する部位は、3’末端部位が好適であり、消光物質標識する部位は、蛍光標識した部位と異なることが好適である。核酸プローブは、一方の遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも非相補的であり、他方の遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも相補的となるように設計する。(図18)においては、標的核酸プローブは、標的遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも非相補的であり、内部標準遺伝子にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも相補的となるように設計してある。一方、内部標準核酸プローブは、内部標準核酸にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも非相補的であり、標的核酸にハイブリダイズした際、蛍光標識した当該プローブの3’末端塩基が、少なくとも相補的となるように設計してある。)。上記の特徴を有する標的核酸プローブおよび内部標準核酸プローブは、これらプローブが完全な状態であれば、プローブ分子内に標識された消光物質の影響により、標識蛍光色素の蛍光は消光されている。しかしながら、3’末端にミスマッチが存在すると、その3’末端塩基を切断するという特徴を有する3’→5’エキソヌクレアーゼの存在下で、標的核酸および内部標準核酸にハイブリダイズさせると、3’末端にミスマッチが存在する場合のみ、3’→5’エキソヌクレアーゼがこのミスマッチを認識して、プローブを切断する。従って、各プローブは、標的核酸か内部標準遺伝子のうち、どちらか一方にハイブリダイズした際に、特異的に蛍光を発することとなる(図18)においては、標的核酸プローブは、標的遺伝子にハイブリダイズした時にのみ、切断され蛍光を発し、内部標準核酸プローブは、内部標準遺伝子にハイブリダイズした時にのみ、切断され蛍光を発する。)。また、標的核酸プローブと標的遺伝子の塩基対の数と、標的核酸プローブと内部標準遺伝子の塩基対の数の違いは、1塩基のみであり、その1塩基も標的核酸プローブの末端塩基であるので、標的核酸プローブは、標的遺伝子と内部標準核酸プローブをほぼ区別せず、ハイブリダイズするものと考えられる(これは、内部標準核酸プローブについても同様である。)。このため、各プローブ由来の蛍光値(あるいは発蛍光量)の比は、標的遺伝子・内部標準遺伝子間の遺伝子構成比をほぼ正確に反映する。したがって、本法によっても標的遺伝子の定量が可能となるものと考えられる。
【0251】
(1)実験方法
前述の標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブおよび3’→5’エキソヌクレアーゼを用いて、その標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を求めことが可能であるか検討した。実験では、標的遺伝子と内部標準遺伝子との存在比を変化させたDNA溶液を作成し、そこに標的核酸プローブ、内部標準核酸プローブおよび3’→5’エキソヌクレアーゼを添加後、一定時間反応させた後、蛍光測定を実施した。蛍光測定は、95℃で実施した。そして各プローブ由来の発蛍光量の比と、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比との関係を調べ、この関係式から、遺伝子構成比が定量可能であるか検討した。
以下に、詳細な実験条件を示す。
【0252】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
標的遺伝子および内部標準遺伝子:オリゴDNAを用いた。
オリゴ合成:エスペックオリゴサービス株式会社(つくば)による委託製造。
標的遺伝子の配列:5' TTGTCCGGAAAGGCCAGAGGAG 3'
内部標準遺伝子の配列:5' ATGTCCGGAAAGGCCAGAGGAG 3'
内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:100nM、800nM(標的:内部標準=9:1、3:1、1:1、1:3、1:9)
【0253】
・標的核酸プローブ
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:DABCYL-5' CTCCTCTGGCCTTTCCGGACAT 3'-BODIPY FL
色素:BODIPY FL(これまで使用したものと同様)、標識部位:3’末端
消光物質色素:DABCYL(これまで使用したものと同様、標識部位:5’末端
終濃度:200nM
【0254】
・内部標準核酸プローブ
合成:エスペックオリゴサービス(株)による委託製造。
配列:DABCYL-5' CTCCTCTGGCCTTTCCGGACAA 3'-TAMRA
色素:TAMRA(これまで使用したものと同様)、標識部位:3’末端
昇汞物質色素:DABCYL(これまで使用したものと同様、標識部位:5’末端
終濃度:200nM
・3’→5’エキソヌクレアーゼ:TaKaRa LA Taq(タカラバイオ)
・バッファー:TaKaRa LA Taqに付属のバッファーを使用した。
・反応時間:1時間
【0255】
(3)結果と考察
蛍光測定値の比と遺伝子構成比との関係を図19に示した。この図より、トータル遺伝子量に関わらず蛍光変化量の比と遺伝子構成比との間に高い相関のあることが確認された。このことより、本手法は遺伝子構成比を正確に測定可能であり、標的遺伝子の定量に利用可能であることが明らかとなった。PCR用耐熱性酵素は、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するものが数多く存在する。このため、PCRに本手法を適用すれば、新たに3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有する酵素を添加する必要性がないため、より好適に本法を実施可能である。
【0256】
本実施例においては、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を使用した例について述べたが、5’末端にミスマッチが存在すると、その5’末端塩基を切断するという特徴を有する5’→3’エキソヌクレアーゼを用いても、同様に標的遺伝子を定量可能である。その場合、標的核酸プローブおよび内部標準核酸プローブの蛍光標識部位は5’末端塩基部位とし、消光物質標識部位は3’末端塩基部位とするのが好適である。
【0257】
<実施例11>
蛍光測定値から正確に標的核酸を測定できる計算式(その2)
一方の部位に標識した色素については、標的遺伝子にハイブリダイズした際の蛍光強度と、内部標準遺伝子にハイブリダイズした際の蛍光強度に差が生じるが、他方の部位に標識した色素については、標的遺伝子と内部標準遺伝子のどちらに結合しても、蛍光強度がほぼ同じという特徴を有する二重標識核酸プローブと、消光物質標識プローブを併用した際の実施例を以下に示す。図20に、本法の好適な適用例の模式図を示した。二重標識核酸プローブの一方の末端は、Gとの相互作用により消光するタイプの蛍光色素(色素A)が標識されている。これにより、プローブが標的核酸とハイブリダイズした際には、色素Aの近傍にGが存在するため消光するが、内部標準核酸とハイブリダイズした際には、色素Aの近傍にはGは存在しないため消光しない。他方の末端は、基本的にどのような蛍光色素でも良いが、標的核酸にハイブリダイズしたときの蛍光強度と、内部標準核酸にハイブリダイズしたときの蛍光強度が同じになるような色素で標識しておく。これにより、ハイブリダイズしたプローブに標識した色素Bは、遺伝子の違いに影響を受けず、蛍光強度が同じとなるため、非結合プローブの蛍光を消光物質標識プローブで消光させることにより、色素Bの蛍光量から、ハイブリダイズしたプローブの割合を定量することが可能となる。標識する色素としては、蛍光強度が塩基配列等の影響を受けにくい蛍光色素(色素B)で標識することが好適である。更には、蛍光強度がGの影響を受けにくい蛍光色素で標識するのがより好適である。Gの影響を受ける色素を用いた場合、色素Bの発する蛍光強度をできるだけ強くさせるため、プローブがハイブリダイズする領域は、色素Bの近傍にGが少ない領域を選択するのが好適である。このため、標的核酸と内部標準核酸の塩基配列により、ある程度プローブ設計が制限される場合がある。一方、Gに影響を受けない色素を使用すれば、色素Bの近傍にGが存在したとしても、蛍光が影響を受けないため、プローブ設計の自由度が高くなり、より好適である。
【0258】
蛍光強度が塩基配列等の影響を受けにくい蛍光色素として、Cy系色素、Alexa系色素、Texas Red等を挙げることができる。
【0259】
(1)実験方法
実験は、模擬試料における標的遺伝子存在比の定量値を比較することで、消光物質標識核酸プローブの効果を評価した。標的遺伝子存在比の定量は、下記に示す計算式を用いて実施した。
前述の実験の前に、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子および内部標準遺伝子のみに十分にハイブリダイズするが、消光物質標識核酸プローブとはハイブリダイズしない温度域と、二重標識核酸プローブが、標的遺伝子、内部標準遺伝子および消光物質標識核酸プローブに十分にハイブリダイズする温度域を予め特定した。その温度域は、前記が52〜57℃付近で、後記が35℃以下であった。この結果を基に、確認実験では、温度を、95℃、52℃、30℃の順で変更し、それぞれの温度で1分間保持した。52℃に保持する目的は、二重標識核酸プローブを標的遺伝子および内部標準遺伝子のみにハイブリダイズさせるためである。その後に、30℃に保持することにより、結合しなかった二重標識核酸プローブを、消光物質標識核酸プローブとハイブリダイズさせ、二重標識核酸プローブの蛍光を消光させた。
【0260】
<計算式>
本実施例において遺伝子構成比を定量するための計算法を説明する。
本計算式で使用する定数を以下に定義した。標的遺伝子に結合した際の蛍光強度と内部標準遺伝子に結合した際の蛍光強度に差が生じるほうの色素を色素Aとし、蛍光強度に差が生じないほうの色素を色素Bとした。
y:ハイブリしたプローブの割合
1−y:ハイブリしていないプローブの割合
x:標的遺伝子の割合
1−x:内部標準遺伝子の割合
【0261】
A:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度の割合
a:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
a’:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Aの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
B:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度の割合
b:二重標識核酸プローブが、消光物質標識核酸プローブと100%結合した場合の色素Bの蛍光強度に対する、二重標識核酸プローブが標的遺伝子および内部標準遺伝子に100%結合した場合の蛍光強度の割合
【0262】
実施例9で示したように、実サンプルにおける色素Aの蛍光強度割合(A)は、以下のように表される。
A=(1-y)+axy+(1-x)a'y=1-y+axy+a'y -a'xy (1)
(1)を変形させると、標的遺伝子の割合(x)は、以下のように表すことが出来る。
x=(1-y-A+a'y)/(a'y-ay) (2)
一方、実サンプルにおける色素Bの蛍光強度(B)は、以下のように表される。
B=by+1-y (3)
(3)を変形させると、ハイブリダイズしたプローブの割合(y)は、以下のように表すことが出来る。
y=(B-1)/(b-1) (4)
(2)式に、(4)式を代入すると、以下のようになり、
x=(1-(B-1)/(b-1)-A+a'(B-1)/(b-1))/(a'(B-1)/(b-1)-a(B-1)/(b-1))
=(b-B-Ab+A+a'B-a')/(a'B-a'-aB+a) (5)
(5)式は、x以外は全て実験的に求めることが可能であるので、(5)により標的遺伝子の割合を算出することが可能であると考えられる。
【0263】
(2)実験条件
・標的遺伝子および内部標準遺伝子
実施例9と同様ものを用いた。
模擬試料における内部標準遺伝子と標的遺伝子を合わせたトータルの終濃度:20nM、40nM、80nM(標的:内部標準=4:1)
・二重標識核酸プローブの配列と構造
BODIPY FL-5' ACTACTGACTGACTGACTGACTGCTCC 3'-Cy5
終濃度:400nM
3’末端をCy5標識した以外は、実施例6と同様である。
・消光物質標識核酸プローブ
消光物質としてはDABCYL(グレンリサーチ、米国)を使用した。配列を以下に示す。
消光物質標識核酸プローブA:5' GTCAGTCAGTAGTG 3'-DABCYL、3’末端をDABCYL標識
消光物質標識核酸プローブB:DABCYL-5' GGGAGCAGTCAGTCA、5’末端をDABCYL標識
(下線は、二重標識核酸プローブと結合する領域を示す。)
上記の合成:エスペックオリゴサービス株式会社による委託製造
消光物質標識核酸プローブの終濃度:800nM
Cy5は、励起波長:600nm、測定波長:670nmで測定した。その他の条件(バッファー、使用装置、使用機器等)は、実施例9と同様である。
【0264】
(3)結果と考察
下表に遺伝子構成比の定量結果を示す。この系においても、トータル遺伝子量が低下するにしたがい模擬試料におけるBODIPY FL蛍光強度割合(AおよびB)が低下した。しかしながら、トータル遺伝子量が最も低い20nMの系においても、模擬試料における遺伝子構成比の定量値は、理論値にほぼ近い値が得られた。以上の結果より、消光物質標識核酸プローブを添加し、非結合プローブの蛍光を減少させることによって、遺伝子構成比を正確に定量でき、その結果、標的遺伝子量を正確に定量できることが明らかとなった。また、本実施例で示した計算方法も、遺伝子構成比の定量に有効であることが明らかとなった。
【0265】
実施例9と同様、消光物質標識核酸プローブは、非結合プローブの蛍光を消光させることによって、標的遺伝子および内部標準遺伝子にハイブリダイズしたプローブに由来する蛍光を正確に測定することが可能となる。このため、消光物質標識核酸プローブは、本出願において示した全ての標的核酸プローブ(内部標準核酸プローブおよび二重標識核酸プローブを含む)及び、これらプローブを用いた測定法に有効である。
また、遺伝子増幅法により増幅された産物を対象とした場合も、消光物質標識核酸プローブは前述と同様の理由で有効である。
【0266】
【産業上の利用可能性】
【0267】
本願の新規混合物を前記のような効果を生ずる核酸測定方法になる。それで本願発明は、遺伝子工学、医薬、医療技術、農業技術、各種のバイオ技術の開発、廃棄物処理プラントにおける複合微生物の開発等に大いに貢献するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光消光色素としてPacific Blueで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項2】
蛍光消光色素としてTETで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項3】
蛍光消光色素としてTBSFで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項4】
蛍光消光色素としてHEXで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項5】
蛍光消光色素としてR6Gで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項6】
プローブ配列の3’末端がCであり、そのCに上記蛍光色素が標識されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸プローブ。
【請求項7】
標的核酸とハイブリダイズする塩基配列であり、かつ、上記蛍光消光色素の標識された塩基が標的核酸中のG塩基と対応するように設計された請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸プローブ。
【請求項1】
蛍光消光色素としてPacific Blueで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項2】
蛍光消光色素としてTETで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項3】
蛍光消光色素としてTBSFで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項4】
蛍光消光色素としてHEXで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項5】
蛍光消光色素としてR6Gで標識されたことを特徴とする核酸プローブ。
【請求項6】
プローブ配列の3’末端がCであり、そのCに上記蛍光色素が標識されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸プローブ。
【請求項7】
標的核酸とハイブリダイズする塩基配列であり、かつ、上記蛍光消光色素の標識された塩基が標的核酸中のG塩基と対応するように設計された請求項1〜5のいずれか1項に記載の核酸プローブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−97956(P2011−97956A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28865(P2011−28865)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2005−516382(P2005−516382)の分割
【原出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000156581)日鉄環境エンジニアリング株式会社 (67)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2005−516382(P2005−516382)の分割
【原出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000156581)日鉄環境エンジニアリング株式会社 (67)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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