説明

根詰まり改善支援鉢

【課題】根域制限下で形成される細根や毛根が縦横無尽に絡み合った根鉢を誰でも容易かつ的確にほぐし、余分な細根や毛根を簡単に除去しやすい植え替え支援容器を提供する。
【解決手段】植え替え支援容器100は、植物の植栽に用いる鉢200内に収まる側壁部110と底皿部120を備えた容器と、容器の壁面に設けられた多数の細根貫通孔130を備え、細根貫通孔130の径は不要な細根のみが貫通できる径とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞植物、盆栽等の根域制限下で栽培する多年生植物、永年性植物等の植え替えを容易に実施できる植え替え支援容器に関する。特に、根域制限下で栽培する植物等において土壌環境の劣化を招きやすい細根を適量残るように取り除くことを支援する植え替え支援容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、草花や小さな樹木等の人工的な植栽において、鉢等の栽培容器を用いて栽培する容器栽培方法が広く行われている。
ここで、植栽の目的には大きく分けて2つある。
第1の目的は、植物を大きく成長させることを目的とし、芽出し、育苗、定植など、植物の育成段階に応じて鉢等の栽培容器を選択して容積をだんだんと大きくしていくものがある。
第2の目的は、盆栽や観賞植物などの場合に見られるもので、植物を大きく成長させず、根域制限下で決まった大きさを保ちつつ見栄えを良くするものであり、鉢等の栽培容器の大きさは植物の状態に応じて変えることがあるが、大きな鉢に積極的に植え替えるものではない。
【0003】
従来技術において、様々な目的に応じて、多数の栽培容器が発明され、開示されている。
その多くが、上記の第1の目的に応じたものであり、いわゆる育苗ポットと呼ばれるものである。素材としてはポリオレフィンやポリエステル等の合成樹脂シートや合成繊維不織布で形成されているものが多い。育苗ポットは、細根の発生促進に重要な水分や養分が容器内に十分透過せずに容器内の細根の発生量が抑制されてしまうという問題を解決することを目的とし、できるだけ根を大きく成長させ、傷つけることなく定植することを目的としたものである。
【0004】
例えば、特開2000−50741号公報に開示された容器は、積極的に容器内の細根発生を促進させ、定植に当たっては細根の先端をほとんど損傷することなく容器の取り外しを行って活着率を向上することを主眼とするものであり、細根発生を容器内において積極的に促進させるため、太根および細根を通さない遮根性の容器としつつ、10〜100ミクロン程度の微細孔加工を施して10〜100ミクロン程度の微細孔より樹木が成長するに必要な水分・肥料分・酸素等々の補給を行って樹木の成長及び容器内での細根発生を促進させるものである。
【0005】
一方、観賞植物や盆栽では事情が異なる。観賞植物や盆栽では植物の成長を積極的に促すことはなく、むしろ、成長を緩やかに抑制することを行う。素材としては陶器、素焼きレンガ、プラスチック、合成樹脂、木材などを用い、根域を制限している。このように根域制限下にある植物は、容器内において、太根から中小細根にいたるまで縦横無尽に伸びる。しかし、1〜2年もするといわゆる根鉢という状態となり、根づまりが起こってしまう。その結果、根の活性が弱まり、植物は生育障害を起こして衰弱することがある。
【0006】
また、例えば、特開2001−136848号公報に開示された容器も、積極的に容器内の細根発生を促進させ、定植に当たっては細根の先端をほとんど損傷することなく容器の取り外しを行って活着率を向上することを主眼とするものである。上記した特開2000−50741号公報に開示された容器のように遮根性の容器を用いた場合には太根も中小根も細根もすべてが絡んで小さくまとまってしまい細根の成長が促進されないという問題があるため、特開2001−136848号公報に開示された容器では、細孔を設けることで細根は外方へ伸びるようにして、細根を成長させ、外方に伸びた細根を通じて水分や養分の吸収を促進して植物を大きく成長させようとするものである。
【0007】
【特許文献1】特開2000−50741号公報
【特許文献2】特開2001−136848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の容器には以下の問題がある。
植物を大きく成長させることを目的とした容器は、容器内の空間において如何に元気に細根や毛根を伸ばさせて水分や養分の吸収効率を上げることを目的としているため、細根や毛根が縦横無尽に絡み合った根鉢が形成されやすくなってしまう。そのような根鉢が形成されると土壌中の酸素濃度の低下等によって根の活性が弱まり、地上部の植物体は衰弱してしまう。根の活性を向上するためには、このような根詰まりの改善が必要である。根詰まりの改善は、より大きな容積を持つ容器に移植するか、根鉢から余分な中小細根の除去をするか、いずれかの処置が必要となる。観賞植物や盆栽等、根域制限下で栽培する場合には容器の容積を大きくすることはできないため、余分な中小細根の除去をする処置が必要となってくる。しかし、細根や毛根が縦横無尽に絡み合った根鉢から余分な細根や毛根を除去するのは大変な手間と技能が必要となる。
【0009】
また、従来の観賞植物や盆栽の鉢は細根や毛根が過剰に伸びないようにもともと容積の小さな鉢が選択されることが多いが、鉢内部において細根や毛根が縦横無尽に絡み合った根鉢が形成されてしまう点は同様である。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決し、根域制限下での植物の栽培において、根の活性を保つために根鉢から余分な中小細根を簡単に除去することができる植え替え支援容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の植え替え支援容器は、鉢内に収め入れ、根鉢における不要な細根の除去を支援する植え替え支援容器であって、前記鉢内に収める容器と、前記容器の壁面に設けられた多数の細根貫通孔とを備え、前記細根貫通孔の径が前記不要な細根のみが貫通できる径とし、植え替えに際して前記鉢から取り出した状態において前記細根貫通孔から出ている細根を切り取りやすくしたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成により、植物の太根や中小根から細根や毛根が伸びること自体は植物の生育上抑制できないものの、縦横無尽に絡み合う根鉢が形成された場合、細根貫通孔から外方へ伸びている細根や毛根を切り取ることにより容易に不要な細根や毛根を簡単に除去することができるとともに、植え替え時に植え替え支援容器内の土壌を新しい土壌に入れ替えることができる。
【0013】
本発明の植え替え支援容器の構成例としては、容器が側壁部と底皿部を備え、側壁部の内周壁において底皿部が嵌合係止されて両者が組み合わされたものがある。
例えば、側壁部が上面側から底面側へ向かうほど径が小さくなる逆円錐台側面を形成しており、側壁部が径を調整する径調整機構と、底皿部が側壁部の内壁面において嵌合係止する位置を調整する底皿部高さ調整機構を備え、容器の容積を調整することができるものが好ましい。
【0014】
具体的な構造例としては、側壁部が上面側から底面側へ向かうほど内径が小さくなる逆円錐台側面を形成し、底皿部が側壁部の内壁面で略同径となる位置で嵌合係止して組み合わされたものであり、径調整機構により側壁部の径を調整するとともに、側壁部の内壁面において底皿部が嵌合係止する位置を調整するものである。
上記構成によれば、本発明の植え替え支援容器はその大きさを適宜変更することができ、植え替え支援容器の内径を拡げることができるとともに、底皿部の高さも調整できる。
【0015】
上記構成の本発明の植え替え支援容器において、以下の工夫を施すこともできる。
第1の工夫は、細根貫通孔の孔径が側壁部の位置に応じて変化させることである。例えば、側壁部の内壁面のうち上面近くの側壁に設けられたものは大きく、底面側に向かうにつれ小さくなるように細根貫通孔の孔径を変化させる。
このように細根貫通孔の孔径に変化を付けておくことにより、植え替え支援容器の上面近く、つまり、横方向に伸びる根は植栽上重要度が低いと考えられるため比較的太い細根も外方へ出して不要な根として切り取ることができる。逆に下面方向になるほど根としての重要性は高いため孔を小さくし細根貫通孔から外方に出た細い細根や毛根を不要な根として切り取ることができる。
また、例えば、細根貫通孔の孔径として、大きいものと小さいものを混在させることもできる。大きい細根貫通孔と小さい細根貫通孔を混在させておくことにより、比較的太い細根と比較的細い細根の割合を適度に均等化することができる。
【0016】
第2の工夫は、細根貫通孔のエッジの形の工夫である。細根貫通孔のエッジが容器の外方側に向けて凸状になるように工夫する。例えば、外方に凸状に膨らんだものとする。このように細根貫通孔のエッジを立体的に凸状に外方へ突出させることにより、植え替え支援容器を鉢土中から取り出しやすくなり、また、細根貫通孔のエッジが外方へ突出しているため細根貫通孔のエッジに剪定鋏などを当てやすくなり、細根、毛根の切除が容易となる。
【0017】
第3の工夫は、細根貫通孔の内壁面に外方へ向かうと径が小さくなるテーパーを設ける工夫である。このように細根貫通孔の内壁面に外方へ向かうと径が小さくなるテーパーを設けておくことにより、植え替え支援容器の内から外へは細根貫通孔を通過しやすいが、植え替え支援容器の外から内へは細根貫通孔を通過しにくくなる。つまり、植物の太根や中小根から外方に向かって伸びた細根や毛根は細根貫通孔を通過して外方に出やすいが、一旦細根貫通孔から外方へ出た細根や毛根が鉢などに遮られて方向を変えたとしても、植え替え支援容器の外から内へ逆戻りして内部に入り込むことを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の植え替え支援容器を用いることにより、縦横無尽に絡み合う根鉢が形成されないよう細根や毛根が外方へ伸びるように導くことができ、細根貫通孔から外方へ伸びている細根や毛根を切り取ることにより容易に不要な細根や毛根を簡単に除去することができる。
また、太根は植え替え支援容器の中にあるため、誤って除去したり傷つけたりすることがなく、誰でも容易に不要な細根のみを除去することができ、地上部の植物体の衰弱を招くことがない。
また、植え替え支援容器を取り出して再び鉢内に戻す際に土壌を容易に入れ替えることができるという利点もある。
また、本発明の植え替え支援容器はその大きさを適宜変更することができ、植え替え支援容器の内径を拡げることができるとともに、底皿部の高さも調整できる。
また、細根貫通孔の孔径に変化を付けておくことにより、植え替え支援容器の上面近く、つまり、横方向に伸びる根は比較的太い細根を外方へ導いて切り取り、下方向に伸びる根は比較的細い細根のみを外方へ導いて切り取ると言った工夫も行うことができる。
また、細根貫通孔のエッジが容器の外方側に向けて凸状になるように工夫すれば、細根貫通孔のエッジが外方へ突出しているため細根貫通孔のエッジに剪定鋏などを当てやすくなり、細根、毛根の切除が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の植え替え支援容器の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示したものに限定されるものではないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100の一構成例について説明する。
鉢内に収め入れ、形成される根鉢における不要な細根の除去を支援する。
図1は、本発明の実施例1の植え替え支援容器100の構成例を簡単に示す図である。図1(a)は鉢と植え替え支援容器100の関係を簡単に示す図、図1(b)は正面図、図1(c)は平面図、図1(d)は斜視図を示している。
【0021】
本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100は、図1に示すように、陶器製などの鉢200の内側に収まり入る程度の大きさとなっている。つまり、本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100は、鉢200内に投入して使うものとなっている。例えば、鉢200に対する植え替え支援容器100が占める容積率は例えば40〜80%程度のものを選択することができる。
【0022】
植え替え支援容器100全体の外形は特に限定されず、適用する鉢200の内面の形状に略沿ったものであれば良い。植え替え支援容器100には側壁面110と底皿面120があり、つまり、側壁面110と底皿面120の形状は円筒形、矩形筒型、すり鉢型など様々なものがあり得る。ここでは、鉢などで良く見られる略逆円錐台形(すり鉢型)のものを例として挙げる。
【0023】
植え替え支援容器100の素材は限定されず、プラスチック、金属、合成樹脂、化学繊維、不織布などを広く適用することができる。
【0024】
植え替え支援容器100の側壁面110と底皿面120は分離するタイプであっても一体型のタイプであっても良い。側壁面110と底皿面120が分離するタイプのものは他の実施例で述べるとし、本実施形態1に係る植え替え支援容器100は一体型のタイプのものとして説明する。
【0025】
図1に示すように、鉢200に収まる容器の側壁面110と底皿面120には、壁面に設けられた多数の細根貫通孔130を備えたものとなっている。細根貫通孔130の径は細根のみが貫通できる径となっている。細根貫通孔130の径は適用する鉢200の大きさに応じて選択するが、例えば、5号の鉢のものに適用する植え替え支援容器100の細根貫通孔130の径としては、例えば、直径2〜3mm程度とすることができる。また、例えば、10号の鉢のものに適用する植え替え支援容器100の細根貫通孔130の径としては、例えば、直径3〜4mm程度とすることができる。
【0026】
また、細根貫通孔130の数は特に限定されないが、多方向から多数発生する細根に対応するため、および、植え替え支援容器内の排水性を良くするため、細根貫通孔130の数は多く設けておくことが好ましい。例えば、この構成例では、壁面に占める孔の面積率は70〜90%程度とする。
図1に示した構成例では、細根貫通孔130の径、数は、側壁面110と底皿面120とも一様のものとしたが、径の大きさや数を植え替え支援容器100における高さに応じて変化させる例は後述する。
【0027】
実施例1にかかる植え替え支援容器100の使用方法について説明する。
図2は、本発明の実施例1にかかる植え替え支援容器100の使用手順を説明する図である。左図が本発明の実施例1にかかる植え替え支援容器100、右図が従来の鉢のみの植栽の場合を比較して示したものである。
【0028】
図2(a)左図に示すように、植物の状態に応じた鉢200に対して本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100を投入し、植栽する植物を土壌とともに植え替え支援容器100内に投入し、鉢200と植え替え支援容器100の間にも土壌を投入する。なお、植栽時における植え替え支援容器100内の様子が分かりやすいように根の様子を簡単に示している。
【0029】
一方、図2(a)右図に示すように、鉢200に対して植栽する植物を土壌とともに内に投入する。同様に、植栽時における植え替え支援容器100内の様子が分かりやすいように根の様子を簡単に示している。
【0030】
期間が経過すると(例えば1年)根が成長して太根や中小根に加え、多数の細根や毛根が伸びている。
ここで、図2(b)に示すように、不要な細根や毛根を切り取る処置を行うため、鉢200から植物を取り出す。
図2(b)左図に示すように、本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100を投入した場合には、外方へ伸びた多数の細根や毛根がそのまま植え替え支援容器100の細根貫通孔130を通過して周囲へ拡がっている。なお、植え替え支援容器100の細根貫通孔130を抜け出た後、鉢200の壁面があるため伸長方向が変えられ、概ね鉢200の壁面に沿って伸びて行く。そのため、主に、植え替え支援容器100の外周と鉢200の内周の間において太根や中小根はなく、多数の細根や毛根が絡み合った根鉢が形成される。
【0031】
一方、図2(b)右図に示すように、鉢200に対して直に植物を植栽した場合は、鉢200の内側空間全体において、縦横無尽に太根、中小根に加え、多数の細根や毛根が絡み合った根鉢が形成されている。
【0032】
次に、図3(a)に示すように、不要な細根や毛根を切り取る処置を行うため、細根や毛根を適度にほぐす。
図3(a)に左図に示すように、本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100を投入した場合には、植え替え支援容器100の外周に太根や中小根は外方へ出ていないので細根や毛根は太根や中小根に対して絡み合っておらず、主に細根や毛根のみが絡み合った根鉢であり、容易にほぐれる。
【0033】
一方、図3(a)右図に示すように、鉢200に対して直に植物を植栽した場合は、太根、中小根に加え、縦横無尽に多数の細根や毛根が絡み合った根鉢が形成されており、根鉢は容易にほぐすことはできず、太根、中根まで切ってしまう場合があり、植物への悪影響が大きい。
【0034】
次に、図3(b)に示すように、不要な細根や毛根を切り取る処置を行う。
図3(b)に左図に示すように、本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100を投入した場合には、主に、植え替え支援容器100の外周において根鉢がある程度ほぐれた形で細根貫通孔130から細根や毛根が出ているので、植え替え支援容器100の外周に沿って細根貫通孔130から出ている細根や毛根を切り取れば良い。
【0035】
図3(b)に左図に示すように、本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100を投入した場合には、植え替え支援容器100の外周に沿って細根貫通孔130から出ている細根や毛根を切り取るのみで良いので、誰でも容易に実施でき、植物への影響を最小限に抑えることができる。
また、植え替え支援容器100内部の土壌は綺麗に保たれているため、植え替え支援容器外の土壌を容易に新しい土壌に入れ替えることができる。
【0036】
一方、図3(b)右図に示すように、鉢200に対して直に植物を植栽した場合は、太根、中小根に加え、縦横無尽に多数の細根や毛根が絡み合った根鉢が形成されているため、根鉢中から細根や毛根のみを切り取ることは容易ではない。太根や中小根も併せて切り取るおそれが強い。
そのため、図3(b)右図に示すように、鉢200に対して直に植物を植栽した場合は、縦横無尽に太根、中小根に対して細根や毛根が絡み合った根鉢から細根や毛根を直接刈り込むため、太根や中小根も併せて切り取られており、しばしば植物体が衰弱し、ひどい場合は枯死に至る。
【0037】
発明者荒木齋は、簡単な実験を行って本発明の植え替え支援容器100の効果を確認した。
図4(a)は、試作した植え替え支援容器100を適用した観賞植物を矩形の鉢に植栽した後、1年経過した様子である。なお、試作した植え替え支援容器100は簡単に金網メッシュ状の素材を用いて矩形に仕立てている。
図4(b)は、鉢から植え替え支援容器100ごと観賞植物を取り出した様子を示す写真である。細根や毛根が外周面を覆って根鉢が形成されている様子が分かる。
図4(c)は、植え替え支援容器100の外周面を覆って根鉢状態となっている細根や毛根をほぐした様子を示す写真である。非常に容易に細根や毛根をほぐすことができた。
図4(d)は、外周面のうち側壁面を覆っていた細根や毛根を切り取った様子を示す写真である。細根や毛根をほぐした状態であったので比較的容易に剪定鋏にて細根や毛根を切り取ることができた。
図4(e)は、外周面のうち底面を覆っていた細根や毛根を切り取った様子を示す写真である。細根や毛根をほぐした状態であったので容易に剪定鋏にて細根や毛根を切り取ることができた。
図4(f)は、植え替え支援容器100の外周面を覆っていた細根や毛根を切り取った後に再び鉢に戻した様子である。植え替え支援容器100の底面と側面に新しい土壌を入れ替えて植え替え作業は終了する。
【0038】
以上のように、通常の鉢だけを用いた栽培であれば、太根、中小根に対して縦横無尽に細根や毛根が絡み合った根鉢が形成される。一方、本発明の植え替え支援容器100を用いることにより、余分な細根や毛根のみを細根貫通孔130から外方へ伸ばして、植え替え支援容器100の外周と鉢200の内周の間の細根や毛根のみで根鉢を形成させることができる。これによって、植え替え支援容器100の外周に沿って細根貫通孔130から出ている細根や毛根を切り取りやすくすることができる。
【実施例2】
【0039】
実施例2にかかる本発明の植え替え支援容器100aを説明する。
実施例2にかかる本発明の植え替え支援容器100aは、実施例1で示した基本形の植え替え支援容器100に対して種々の工夫を盛り込んだものとなっている。
【0040】
第1の工夫は、細根貫通孔130の孔径を側壁部110の位置に応じて変化させた工夫である。図5(a)は細根貫通孔130の孔径を側壁部110の位置に応じて変化させた様子を示す図である。
この構成例では、図5(a)に示すように、側壁部110の内壁面のうち上面近くの側壁に設けられた細根貫通孔130の孔径は大きく、底面側に向かうにつれ側壁に設けられた細根貫通孔130の孔径は小さくなっている。このように、細根貫通孔130の孔径を側壁部110の位置(高さ)に応じて上方は大きく底面付近は小さくしておくことにより、通過できる細根や毛根の太さを制御することができる。つまり、植物から横方向に伸びて植え替え支援容器100の上方付近の側壁面に到達した細根や毛根にとっては、比較的大きな孔径の細根貫通孔130が存在するためにその孔径に相当する比較的太いレベルの細根も通過できる。
【0041】
一方、植物から下方向に伸びて植え替え支援容器100の底面付近の側壁面に到達した細根や毛根にとっては、比較的小さな孔径の細根貫通孔130が存在するためにその孔径に相当する比較的細い細根しか通過できない。
植え替え支援容器の上面近く、つまり、横方向に伸びる根は、比較的太い細根も植え替え支援容器の外方へ出して実施例1に沿った手順で不要な根として切り取ることができる。逆に下方向に伸びている根は小さな孔径の細根貫通孔130から外方に出た細い細根や毛根のみを不要な根として切り取ることができる。
【0042】
このように細根貫通孔の孔径に変化を付けておくことにより、植え替え支援容器内での高さに応じて不要な細根や毛根の太さを調整することが可能となる。
また、例えば、細根貫通孔の孔径として、大きいものと小さいものを混在させることもできる。大きい細根貫通孔と小さい細根貫通孔を混在させておくことにより、比較的太い細根と比較的細い細根の割合を適度に均等化することができる。
【0043】
次に、第2の工夫は、細根貫通孔130のエッジの形に対する工夫である。図5は細根貫通孔130のエッジの形を外部側に向けて凸状にした工夫を示す図である。
図5(b)に示すように、細根貫通孔130のエッジを立体的に凸状に外方へ突出させたものとなっている。中央に孔が開いた突起状体が多数設けられたものとなっている。
【0044】
図5(b)に示すように、細根貫通孔130が中央に孔が開いた突起状体であれば、図2(b)に示したように、植え替え支援容器100aを鉢200の土中から取り出しやすくなり、また、細根貫通孔130のエッジが外方へ突出しているため、細根貫通孔130のエッジに剪定鋏などを当てやすくなり、細根、毛根の切除が容易となるという効果が得られる。もし、細根貫通孔130のエッジが外方へ凸状になっておらず平面状であれば、円筒型の外表面に沿って剪定鋏を当てて細根や毛根を切ることとなるが、図5(b)のように細根貫通孔130のエッジが外方へ凸状になっておれば、剪定鋏を当てる部分が外方に突き出ているので、一層、剪定鋏を当てて細根や毛根を切りやすくなる。
【0045】
次に、第3の工夫は、細根貫通孔130の内壁面の形状の工夫であり、内壁面において外方へ向かうと径が小さくなるテーパーを設ける工夫である。図6は細根貫通孔130の内壁面の形状として外方へ向かうと径が小さくなるテーパーを設けた例を示す図である。簡単に断面積において拡大して示している。
【0046】
図6(a)に示すように、細根貫通孔130の内壁面において外方へ向かうと径が小さくなるテーパーを設けておくことにより、細根や毛根の通過する方向を制御することができ、植え替え支援容器100の内から外へは細根貫通孔130を通過しやすいが、植え替え支援容器100の外から内へは細根貫通孔130を通過しにくくなるという効果が得られる。
【0047】
この工夫は細根や毛根の逆戻りの防止に対して有効である。つまり、植物の太根や中小根から外方に向かって伸びた細根や毛根は図6(b)に示すように、細根貫通孔130を通過して外方に出るが、一旦、細根貫通孔130から外方へ出た細根や毛根が鉢200などに遮られて方向を変えた場合、行き場を失って再度、植え替え支援容器100内に逆戻りする方向に伸びることもあり得るが、細根貫通孔130の内壁面においてテーパーが設けられていると、図6(c)に示すように、植え替え支援容器100の内から外へは細根貫通孔130を通過しやすく外方に出るが、植え替え支援容器100の外から内へは細根貫通孔130を通過しにくくなっており、細根や毛根が植え替え支援容器100の内側へ逆戻りして内部に入り込むことを防止することができる。
【実施例3】
【0048】
本発明の実施例1に係る植え替え支援容器100bとして、側壁部110、底皿部120が分離可能な構造を備えたものである。
図7は、本発明の実施例3に係る植え替え支援容器100bの構造を簡単に示す図である。図7に示すように、植え替え支援容器100bは、側壁部110b、底皿部120bを備えたものとなっている。底皿部120bは、側壁部110bの内周壁面に嵌め込む形となっており嵌合係止されて両者が組み合わされるものとなっている。
【0049】
側壁部110bは、図7に示す構成例では、上面側から底面側へ向かうほど径が小さくなる逆円錐台状となっており、この構成例では径を調整する径調整機構を備えたものである。図7(b)に示すように、側壁部110bの周囲にホック状の留め具140が間歇的に設けられており、ホック状の留め具140で留める位置を調整することにより、側壁部110bの径を調整する径調整機構となっている。
【0050】
植栽する植物の大きさや成長状態に応じて鉢200を選別するが、選別された鉢200の大きさに応じて植え替え支援容器100も選択する必要があるが、本発明の実施例3に係る植え替え支援容器100bであれば、側壁部110bは径を調整する径調整機構を備えているので、適宜、選別された鉢200の大きさに応じた径となるように植え替え支援容器100bの側壁部110bの径を調整する。
【0051】
底皿部120bは、側壁部110bの内壁面において嵌合係止する位置を調整する底皿部高さ調整機構を備えたものとなっている。底皿部120の外周壁面には側壁部110bの内周壁面のテーパーに合致するテーパーが設けられて逆円錐台状となっており、側壁部110bの内周壁面に嵌め込んで嵌合係止されやすい形状となっている。
【0052】
図7(b)に示したように、鉢200の大きさに応じた径となるように植え替え支援容器100bの側壁部110bの径が調整されており、かつ、内周壁面にはすり鉢状にテーパーが設けられているので、側壁部110bの内周壁面の径は高さに応じて決まり、この構成例では上面から底面に向かうと徐々に径が小さくなっている。ここで、図7(c)に示すように、底皿部120bを側壁部110bの上面開口から投入すると、底皿部120bの外周径と等しい側壁部110bの内周径の箇所において嵌合係止されることとなる。
【0053】
このように、植栽する植物の大きさや成長状態に応じて鉢200を選別するが、選別された鉢200の大きさに応じて植え替え支援容器100bの大きさを可変として調整することができる。
【0054】
以上、本発明の植え替え支援容器の構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の植え替え支援容器は、観葉植物や盆栽などの鉢から大型のコンテナに植栽した植物等に至るまで広く適用することができる。本発明の植え替え支援容器を適用すれば、鉢の大小、植物の大小に関係なく、多年生、永年性の植物に対し、的確かつ容易・短時間に植え替えや鉢替えが実施でき、植物体は長年にわたり健全に生育することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施例1の植え替え支援容器100の構成例を簡単に示す図
【図2】本発明の植え替え支援容器100の使用手順を説明する図(その1)
【図3】本発明の植え替え支援容器100の使用手順を説明する図(その2)
【図4】試作した植え替え支援容器100を用いた効果確認の実験の様子を示す図
【図5】実施例2にかかる種々の工夫を盛り込んだ植え替え支援容器100aの構成例を簡単に示す図
【図6】細根貫通孔130のエッジの形を外部側に向けて凸状にした工夫を示す図
【図7】本発明の実施例3に係る植え替え支援容器100bの構造を簡単に示す図
【符号の説明】
【0057】
100,100a,100b 植え替え支援容器
110 側壁部
120 底皿部
130 細根貫通孔
140 留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉢内に収め入れ、根鉢における不要な細根の除去を支援する植え替え支援容器であって、前記鉢内に収める容器と、前記容器の壁面に設けられた多数の細根貫通孔とを備え、前記細根貫通孔の径が前記不要な細根のみが貫通できる径とし、植え替えに際して前記鉢から取り出した状態において前記細根貫通孔から出ている細根を切り取りやすくしたことを特徴とする植え替え支援容器。
【請求項2】
前記容器が側壁部と底皿部を備え、前記側壁部の内周壁において前記底皿部が嵌合係止されて両者が組み合わされた請求項1に記載の植え替え支援容器。
【請求項3】
前記側壁部が径を調整する径調整機構と、前記底皿部が前記側壁部の内壁面において嵌合係止する位置を調整する底皿部高さ調整機構を備え、前記容器の容積を調整することができる請求項2に記載の植え替え支援容器。
【請求項4】
前記側壁部が上面側から底面側へ向かうほど内径が小さくなる逆円錐台側面を形成し、前記底皿部が前記側壁部の内壁面で略同径となる位置で嵌合係止して組み合わされたものであり、
前記径調整機構により前記側壁部の径を調整するとともに、前記側壁部の内壁面において前記底皿部が嵌合係止する位置を調整するものである請求項3に記載の植え替え支援容器。
【請求項5】
前記細根貫通孔の孔径が前記側壁部の位置に応じて変化しており、前記側壁部の内壁面のうち上面近くの側壁に設けられたものは大きく、前記底面側に向かうにつれ小さくなっている請求項1乃至4に記載の植え替え支援容器。
【請求項6】
前記細根貫通孔のエッジが前記容器の外部側に向けて凸状になっている請求項1乃至5に記載の植え替え支援容器。
【請求項7】
前記細根貫通孔の内壁面において外方へ向かうと径が小さくなるテーパーが設けられている請求項1乃至6に記載の植え替え支援容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−143213(P2012−143213A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5960(P2011−5960)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【特許番号】特許第4928637号(P4928637)
【特許公報発行日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【出願人】(511013555)
【Fターム(参考)】