説明

格子体及びフェンス

【課題】線材と桟材とからなる格子体の交差部において、線材と桟材とを容易に係合させることができる格子体及び該格子体を用いたフェンスを提供する。
【解決手段】各交差部21において、線材3は、桟材4に設けられた長孔の貫通孔41に貫通され、前記貫通孔41を挟んでその両側となる位置に肉薄で側方に拡がる平坦部32が設けられ、そして線材3を、その長手方向を軸として回動させて、平坦部42の拡がり方向と貫通孔41の長手方向とを合わせた状態では、該平坦部32は貫通孔を通過可能で、平坦部32の拡がり方向と貫通孔41の長手方向とを直交させた状態では、該平坦部32は貫通孔41を通過できず、線材3と桟材4とが交差部21で係合されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の格子構成材を格子状に配置して形成された格子体およびそれを用いたフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
道路との境界、敷地同士の境界等を仕切る手段として格子体と支柱とを組み合わせたメッシュフェンスが用いられている。この格子体は、一般には格子構成材として縦線材と横線材とを用いて、この縦線材と横線材とを格子状に配置し、その交差部を溶接で接合したものが用いられている。更に、この溶接した交差部に、合成樹脂で被覆する表面処理が施されることが多い。これにより、耐食性が高められると共に、景観性を高めることができるが、その分、生産工程が複雑となる。
【0003】
そこで、特許文献1には、格子構成材として桟材を用いた格子体の製法が提案されており、この製法は、複数個の桟材を直交状に配設し、その交差する位置を定着した格子体の製法であって、一方向に配設した桟材に穿設した内面が非円形状の通孔を内面から押し広げて円形状とし、前記通孔に断面円形状の桟材を挿通したのち通孔を形成した桟材の隆起部を押圧し交差する桟材を定着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−304281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の格子体においては、断面円形状の桟材を、多数の桟材の円形状の通孔に連続的に挿通させて、かつ通孔が穿設された桟材の隆起部を押圧した際に前記断面円形状の桟材を定着させる必要があるので、通孔の加工に高い精度が必要となるものであった。
【0006】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、格子構成材として線材と桟材とを用い、この線材と桟材とからなる格子体の交差部において、線材と桟材とを容易に係合させることができる格子体及び該格子体を用いたフェンスを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち本発明に係る格子体は、交差部で格子状に交差された桟材と線材とからなる格子体であって、各交差部において、前記線材は、前記桟材に設けられた長孔の貫通孔に貫通され、かつ、前記貫通孔を挟んでその両側となる位置に肉薄で側方に拡がる平坦部が設けられ、そして前記線材を、その長手方向を軸として回動させて、平坦部の拡がり方向と貫通孔の長手方向とを合わせた状態では、該平坦部は貫通孔を通過可能となされ、平坦部の拡がり方向と貫通孔の長手方向とを直交させた状態では、該平坦部は貫通孔を通過できず、線材と桟材とが交差部で係合されるようになされたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係る格子体において、各交差部の線材は、桟材に対して上下方向の交差角度が変更可能となされているように構成してもよい。
【0009】
また本発明に係るフェンスは、設置面に間隔をおいて立設された支柱の間に、前記の格子体が支持されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る格子体によれば、各交差部において、前記線材は、前記桟材に設けられた長孔の貫通孔に貫通され、かつ、前記貫通孔を挟んでその両側となる位置に肉薄で側方に拡がる平坦部が設けられ、そして前記線材を、その長手方向を軸として回動させて、平坦部の拡がり方向と貫通孔の長手方向とを合わせた状態では、該平坦部は貫通孔を通過可能となされ、平坦部の拡がり方向と貫通孔の長手方向とを直交させた状態では、該平坦部は貫通孔を通過できず、線材と桟材とが交差部で係合されるようになされているので、格子体を組み立てる時は、まず線材の平坦部の拡がり方向と桟材の貫通孔の長手方向とを合わせて桟材の貫通孔に線材を通して貫通孔を挟んでその両側に平坦部を配置させた状態とし、続いて線材を回動させて平坦部の拡がり方向と貫通孔の長手方向とが直交する状態とすれば、各交差部において、平坦部は貫通孔を通過できなくなって、線材と桟材とが交差部で係合されるため、格子体の組み立てや分解が容易となる。
【0011】
本発明に係る格子体において、各交差部の線材は、桟材に対して上下方向の交差角度が変更可能となされているようにすれば、格子体を組み立てた後でも格子体の格子形状を矩形状や平行四辺形状等に変更することができる。
【0012】
本発明に係るフェンスによれば、設置面に間隔をおいて立設された支柱の間に、上記の格子体が支持されているので、フェンスを設置する際に設置面の起伏に沿うように格子体の格子形状を矩形状や平行四辺形状等に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す概略正面図である。
【図2】図1の交差部付近の拡大斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2の説明図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】図2の分解説明図である。
【図7】図6のC−C断面図である。
【図8】図2の説明図である。
【図9】図8のD−D断面における説明図である。
【図10】本発明に係る格子体の他の実施形態において、その交差部付近を示す斜視図である。
【図11】図10の分解説明図である。
【図12】図10のE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0015】
図面において、1は支柱、2は支柱1に支持される格子体であり、本発明に係るフェンスPは、これら支柱1、格子体2から主に構成されている。
【0016】
図1は、本発明に係るフェンスPの第1の実施形態を示す説明図であり、図1は概略正面図である。支柱1は、一般には強度的に安定しておりコストの安い丸パイプ状の鋼管が用いられているが、角パイプ状の鋼管でもよく、断面H字状、T字状、ハット型の鋼材等からなる支柱でもよい。又ステンレス合金やアルミニウム合金等の他の金属から形成されたものでもよい。かかる支柱1は、上端にキャップ11が被されて取付けられると共に、間隔をおいて複数立設されている。
【0017】
格子体2は、横方向に延びる複数の線材3が上下に間隔をおいて配置され、縦方向に延びる複数の桟材4が横方向に間隔をおいて線材3と交差して配置され、各交差部21で係合されて格子状に形成されたものである。そして、格子体2の上下端部には、桟材4の上端部及び下端部を覆う胴縁22がそれぞれ取付けられている。
【0018】
格子体2は、本形態では、連結部材5を介して支柱1に固定されている。前記連結部材5は、本形態では、格子体2の端部の上段部、中段部及び下段部を支柱1に固定するように配置されているが、隣り合う支柱1の間に格子体2を強固に固定できる形態であればよい。
【0019】
図1は、設置面に間隔をおいて立設された支柱1間に格子体2が配置され、連結部材5を介して格子体2を支柱1の左右両側に固定する、いわゆる固定柱タイプのフェンスPを示したものであるが、図示しないが、支柱の前方側あるいは後方側に格子体を配置し、該支柱に取付けたフックボルト等の固定金具を介して格子体を支柱に固定する、いわゆる自由柱タイプのフェンスに本形態に係る格子体2を用いて本発明に係るフェンスPを構成してもよい。
【0020】
次に、上記格子体2の交差部21について、図2〜7を参照して具体的に説明する。まず図2〜3のおいて、格子体2を構成する線材3と桟材4とが交差する各交差部21において、線材3には、長手方向に沿って延びる棒状部31と、その両側に前記棒状部31より肉薄で側方に拡がるの平坦部32が間隔をおいて二個設けられている。一方、桟材4には、左右方向に貫通して上下方向に長くなされた側面視略小判形状の貫通孔41が形成されている。そして、線材3の棒状部31が桟材4の貫通孔41を貫通しており、前記平坦部32が貫通孔41を挟んでその両側に配置されている。
【0021】
線材3の棒状部31は、本形態では断面略円形の線材3を何ら加工していないそのままの形状の断面略円形となされて、桟材4の貫通孔41に貫通された状態で、線材3の長手方向を軸とするX方向又はY方向に回動可能となされている。また二個の平坦部32のそれぞれの拡がり幅H1は、貫通孔41の長手方向の寸法K1よりも幅狭となされ、かつ、前記長手方向と直交する幅方向の寸法K2よりも幅広となされている。これにより、平坦部32の拡がり方向と貫通孔41の長手方向とを合わせれば、平坦部32を貫通孔41に貫通させることができるので、一方の平坦部32を貫通孔41に貫通させ、貫通孔41を挟んで2個の平坦部32をその両側に配置させることができる。そして線材3をX方向又はY方向に回動させて、平坦部32の拡がり方向を貫通孔41の長手方向と直交する方向にすれば、平坦部32は貫通孔41を通過できず、したがって、交差部21において、線材3と桟材4とが係合して互いに外れない状態とすることができる。なお二個の平坦部32のそれぞれの拡がり方向及び拡がり幅H1は厳密に一致していなくてもよく、前記の関係を満たす範囲で異なっていてもよい。
【0022】
線材3の棒状部31は、本形態のように断面円形状とすれば、桟材4の貫通孔41に貫通された状態であれば、X方向又はY方向に回動させることができるので好ましいが、線材3の平坦部32が貫通孔41を通過できる状態と通過できない状態とに変更可能であればよく、図示しないが、例えば、断面楕円形状や断面多角形状でもよい。
【0023】
線材3の平坦部32は、その中央部が幅広に押し潰されて棒状部31の直径よりも幅広となされた平面視略小判形状であるが、線材3をX方向又はY方向に回動させた時に、貫通孔41を通過できる状態と、通過できない状態とに変更可能であればよく、平坦部32の形状は、図示しないが、平面視円盤形状、楕円形状、多角形状等でもよい。また平坦部32は、その拡がり方向と貫通孔41の長手方向とがずれた時にも貫通孔41を通過できる場合があってもよく、逆に、その拡がり方向と貫通孔41の長手方向とが直交しない時にも貫通孔41を通過できない場合があってもよい。
【0024】
桟材4は、本形態では、前記貫通孔41が上下方向に間隔をおいて、すなわち線材3が位置する位置毎に貫通孔41が設けられた縦板部42と、前記縦板部42の前後に設けられた前フランジ部43と後フランジ44とからなる平面視略H字形状となされており、桟材4をかかる平面視略H字形状とすれば、縦板部42において貫通孔41が設けられた付近の薄肉部を補強することができるので好ましい。
【0025】
桟材4の貫通孔41は、上下方向に長い長孔であるので、図8に示すように、桟材4に対して線材3の交差角度を変更することができる。すなわち、貫通孔41は、両側面の中央部が上下方向に略平行となされた小判形状であり、貫通孔41に貫通された棒状部31を上下方向(図9におけるS方向又はT方向)に傾斜させても貫通孔41の両側面と干渉しにくく、線材3と桟材4との交差角度を広い範囲で変更することができる。これにより、各交差部21において、線材3と桟材4との上下方向の交差角度を広範囲に変更することができるので、格子体2の形状を矩形状や平行四辺形状に可逆的に変更させることが可能となり、図1に示すように、設置面の起伏に合わせて格子体2を配置することができる。
【0026】
したがって、貫通孔41の形状は、線材3が必要とされる交差角度の変更範囲を確保できるものであればよく、図示しないが、例えば、楕円形状や縦長長方形状等の他の形状でもよい。また、貫通孔41の小判形状は、長手方向が上下方向となっており、桟材4の縦板部42の横幅を不必要に拡げることがなく好ましいが、図示しないが、例えば、水平方向が長手方向としてもよく、他の方向が長手方向としてもよい。
【0027】
線材3は、一般には丸線材の一部をプレス加工により前後から押し潰して平坦部32を形成したものであり、表面に施した亜鉛めっき等の表面処理層が残存しているので耐食性等の性能低下が抑えられ、また平坦部32の厚さを調整しやすいので好ましい。また、該線材3の断面形状は略円形であればよく、真円でなくてもよい。すなわち、一般には鋼線は、コイル状に巻き取られており、それをほどいて用いるため、その際に捩れ等が生じる可能性がある。そのため断面形状が四角形状や六角形状であれば、捩れが生じた状態でプレス加工を施すと、第一の平坦部32に扁形が生じたり、歪みが生じたりする可能性がある。一方、本形態のような断面形状は略円形であれば、前記のような扁形や歪みが生じにくくなり、好ましい。
【0028】
本形態では、線材3が横方向に配置され、桟材4が縦方向に配置されて、線材3を桟材4で支持するようになされているが、線材3を太くして、該線材3で桟材4を支持するように、線材3を縦方向に配置し、桟材4を横方向に配置して格子体2を形成し、格子体2の両側端に位置する桟材4を支柱1に固定してフェンスPと形成してもよい。
【0029】
図10〜12は、本発明の格子体2に係る第2の実施形態を示す部分拡大正面図である。第1の実施形態と比較して、桟材4の前フランジ部43と後フランジ部44の形状が一部異なるものであり、他の形態は同様であるため異なる点のみ説明する。すなわち、桟材4には、前フランジ部43と後フランジ部44とから縦板部42に向けて切欠部45,46が形成されている。そして、線材3の平坦部32の一部を前記切欠部45,46に挿入して、係止できるようになされている。これによって、前記平坦部32は不用意に回転しないので、交差部21において、線材3と桟材4との係合状態を強固に保持できる。
【0030】
一個の線材3は、多数の桟材4と交差部21を形成しているので、前記桟材4のうち少なくとも一個の桟材4に切欠部45,46を設けて桟材3の平坦部32を係止させれば、前記線材3は不用意に回転しないようにできる。
【0031】
前記切欠部45,46は、設置する前に予め設けていてもよいが、図1に示すように設置面が略水平でなくて起伏がある場合は、その傾斜角度に合わせて、後から切欠部45,46を設けてもよい。これにより、設置面の起伏に合わせて、格子体2の形状を平行四辺形状に変更しても、線材3と桟材4との係合を強固に保持できるので、図1に示す場合と同様に、設置面の起伏に合わせて格子体2を配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る格子体2は、格子構成材を線材と桟材とから構成し、そして前記桟材に設けられた長孔の貫通孔に線材を貫通させて、格子状に交差させるようになされているので、格子体の組み立てや分解が容易であり、加えて、交差部で格子状に連結された線材3と桟材4の上下方向の交差角度が変更可能となされていれば、例えば、山間部の耕作地の周囲に設置されて動物の侵入を防止するための獣害防止柵や、傾斜地や道路・歩道等の通路に沿って植栽された植物の生長支持フェンス等、あらゆる用途のフェンスとしても好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 支柱
11 キャップ
2 格子体
21 交差部
22 胴縁
3 線材
31 棒状部
32 平坦部
4 桟材
41 貫通孔
42 縦板部
43 前フランジ部
44 後フランジ部
45,46 切欠部
5 連結部材
H1 拡がり幅
K1 長手方向の寸法
K2 幅方向の寸法
P フェンス
S S方向
T T方向
X X方向
Y Y方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差部で格子状に交差された桟材と線材とからなる格子体であって、各交差部において、前記線材は、前記桟材に設けられた長孔の貫通孔に貫通され、かつ、前記貫通孔を挟んでその両側となる位置に肉薄で側方に拡がる平坦部が設けられ、そして前記線材を、その長手方向を軸として回動させて、平坦部の拡がり方向と貫通孔の長手方向とを合わせた状態では、該平坦部は貫通孔を通過可能となされ、平坦部の拡がり方向と貫通孔の長手方向とを直交させた状態では、該平坦部は貫通孔を通過できず、線材と桟材とが交差部で係合されるようになされたことを特徴とする格子体。
【請求項2】
各交差部において、線材は、桟材に対して上下方向の交差角度が変更可能となされていることを特徴とする請求項1に記載の格子体。
【請求項3】
設置面に間隔をおいて立設された支柱の間に、請求項1又は2に記載の格子体が支持されていることを特徴とするフェンス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate