説明

栽培用プランター

【課題】 プランター内の水温などの不要な上昇を防止して、かつ、容器内の高精度な水位調節が可能で水位を均等に保つことができ、しかも、土壌や水を収容した重量な状態であっても、簡単に移動することができる栽培用プランターを提供すること。
【解決手段】 容器本体1における壁面12の上部側面には、給排水可能な上部開孔13が複数形成されており、かつ、底板11近傍レベルにおける壁面12の下部側面には、底排水孔14が形成されている一方、
パイプ部材2の開口端部21が上向きにした状態で固定され、かつ、この開口端部21のレベルを昇降調節自在に構成されており、前記容器本体1の底板11の裏面には、支持脚部材として、回転自在な車輪32を備えたキャスター部材3が複数配設されており、このキャスター部材3の上部基端側が前記底板11に連結され、かつ、この連結部にはアジャスタ機構31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランターの改良、更に詳しくは、プランター内の水温などの不要な上昇を防止して、かつ、容器内の高精度な水位調節が可能で水位を均等に保つことができ、しかも、土壌や水を収容した重量な状態であっても、簡単に移動することができる栽培用プランターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、一般家庭においては、花壇・菜園などで植物を育てることが多く、最近では、植物の中でも、特に、コメのプランター栽培が行われるようになり、日常の主食としての作物を生育して収穫し実際に食する体験を行うことができることから、学校教育の一環としても有意義であるとして普及している。
【0003】
ところで、コメの栽培にあっては、水位や水温、気温、日射量の調整などの管理が非常に難しく、例えば、水位の違いによっても苗の生長が異なってくるため、水位を一定に管理しておかないと、生長にムラができてしまうというおそれがある。
【0004】
従来、植物を栽培するための種々のプランターが存在しており、特に、コメの栽培(自家米の栽培等)に適しているとのプランターが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、かかる従来のプランターにあっては、排水孔が定位置に設置されているため、水位調節の自由度が小さく、灌水や蒸発などによりプランター内の水位が変動しやすくて、細やかな生育管理を行うことができないという不満がある。
【0006】
また、従来のプランターは、地面の状況によっては水平に載置できない場合があり、もしも傾いた状態で設置されると、プランター内に収容した土壌レベルと水面レベルとが平行にならないため、プランター内で水位の異なる箇所ができてしまい、苗の生長にムラが生じるという問題がある。
【0007】
更にまた、このようなプランターは狭小なベランダなどで使用されることが多いという事情があるところ、プランター内に土壌および水を収容した状態では、プランターが重量になるため、移動が困難であり、日当たりの良い場所に移動させることができず、また、非常時において避難経路の妨害になるおそれもある。
【0008】
更にまた、プランターがコンクリートの上に載置される場合には、地熱の影響を非常に受け易いため、容器内に収容された水が必要以上に高温になってしまったり、蒸発して干上がってしまうおそれがあり、植物がうまく生長しないという問題がある。
【特許文献1】特開平8−103168号公報(第3−4頁、図1−6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来の栽培用のプランターに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、プランター内の水温などの不要な上昇を防止して、かつ、容器内の高精度な水位調節が可能で水位を均等に保つことができ、しかも、土壌や水を収容した重量な状態であっても、簡単に移動することができる栽培用プランターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、底板11の周囲に壁面12が立設して構成され、土壌および水を収容可能な育苗用の容器本体1であって、
この容器本体1における壁面12の上部側面には、給排水可能な上部開孔13が複数形成されており、かつ、底板11近傍レベルにおける壁面12の下部側面には、底排水孔14が形成されている一方、
少なくとも一つの上部開孔13の外側面にはパイプ部材2が連結されており、このパイプ部材2の開口端部21が上向きにした状態で固定され、かつ、この開口端部21のレベルを昇降調節自在に構成されており、
前記容器本体1の底板11の裏面には、支持脚部材として、回転自在な車輪32を備えたキャスター部材3が複数配設されており、このキャスター部材3の上部基端側が前記底板11に連結され、かつ、この連結部にはアジャスタ機構31が設けられており、このアジャスタ機構31により当該キャスター部材3を昇降調節可能であり、
これらのアジャスタ機構31をそれぞれ昇降操作することによって底板11を水平に保持できるとともに、開口端部21のレベル調節により、容器内に収容した水の水位を土壌表面と平行な位置に維持することができるように構成するという技術的手段を採用した。
【0012】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、キャスター部材3のアジャスタ機構31を、底板11の裏面に螺合して着脱自在に構成するという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、キャスター部材3の車輪32にストッパ部材32aを配設するという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の底板11に溝部11aを形成して、この溝部11aの側縁に底排水孔14を形成するという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の底板11の溝部11aの上部に、メッシュカバー部材15を載置可能にするという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0016】
本発明にあっては、底板の周囲に壁面を立設して構成し、土壌および水を収容可能な育苗用の容器本体であって、この容器本体における壁面の上部側面には、給排水可能な上部開孔を複数形成して、かつ、底板近傍レベルにおける壁面の下部側面には、底排水孔を形成する一方、少なくとも一つの上部開孔の外側面にはパイプ部材を連結して、このパイプ部材の開口端部を上向きにした状態で固定して、かつ、この開口端部のレベルを昇降調節自在に構成して、前記容器本体の底板の裏面には、支持脚部材として、回転自在な車輪を備えたキャスター部材を複数配設して、このキャスター部材の上部基端側が前記底板に連結して、かつ、この連結部にはアジャスタ機構を設けて、このアジャスタ機構により当該キャスター部材を昇降調節可能にしたことによって、これらのアジャスタ機構をそれぞれ昇降操作することによって底板を水平に保持できるとともに、開口端部のレベル調節により、容器内に収容した水の水位を土壌表面と平行な位置に維持することができる。
【0017】
したがって、本発明の栽培用プランターによれば、キャスター部材を介して、容器本体を地上から適度なスペースを有して支持することができるので、アスファルトやコンクリートなどの高温になるおそれのある地表であっても、地熱の影響を軽減してプランター内の土壌や水の温度上昇を防止することができ、根枯れなどを防止することができる。
【0018】
また、パイプ部材を操作することによって、容器内の高精度な水位調節が可能で水位を均等に保つことができるので、生長のムラを防止することができる。
【0019】
更にまた、土壌や水を収容した重量な状態であっても、簡単に移動することができるので、日当たりの良い場所に速やかに移動して、日照量を確保することができるし、また、非常時においても避難経路の妨害を回避することもできることから、産業上における利用価値は頗る高いと云える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると次のとおりである。
【0021】
本発明の実施形態を図1から図8に基づいて説明する。図1中、符号1で指示するものは容器本体であり、この容器本体1は、底板11の周囲に壁面12が立設して構成され、土壌および水を収容可能な育苗用の箱型容器である。本実施形態では、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を射出成形して作製する。
【0022】
また、符号2で指示するものはパイプ部材であり、このパイプ部材2は、軟質ゴムまたは熱可塑性樹脂から形成される筒状部材である。
【0023】
更にまた、符号3で指示するものはキャスター部材であり、このキャスター部材3は、回転自在な車輪32を備え、上部基端側が前記底板11に連結され、かつ、この連結部にはアジャスタ機構31が設けられている。なお、キャスター部材3は、回転軸を設けて車輪32の走行方向を変更して自由に方向転換させることができる。
【0024】
しかして、本実施形態の栽培用プランターを構成するにあっては、まず、底板11の周囲に壁面12を立設して構成する。本実施形態における底板11は、四角形状に成形する。
【0025】
次いで、この容器本体1における壁面12の上部側面には、給排水可能な上部開孔13を複数(本実施形態では、対面する各壁面12の2箇所)形成する。なお、これらの上部開孔13は、未使用時にはキャップ等で塞いでおくことができる。
【0026】
また、底板11近傍レベルにおける壁面12の下部側面には、底排水孔14を形成する。本実施形態では、図2に示すように、容器本体1の底板11に溝部11aを形成し、この溝部11aの側縁に底排水孔14を形成する。この際、容器本体1の底板11の溝部11aの上部に、メッシュカバー部材15を載置可能にして、土壌が溝部11aおよび底排水孔14を塞ぐのを防止することもができる(図3参照)。なお、これらの底排水孔14についても、未使用時にはキャップ等で塞いでおくことができる。
【0027】
そして、少なくとも一つの上部開孔13の外側面にはパイプ部材2を連結して、このパイプ部材2の開口端部21を上向きにした状態で固定して、かつ、この開口端部21のレベルを昇降調節自在に構成する(図4参照)。この開口端部21のレベルと容器本体1内の水位とは、大気圧の釣り合いにより一致する。
【0028】
本実施形態では、パイプ部材2の開口端部21の近傍にクリップを設け、このクリップを上下操作できるように構成する。なお、パイプ部材2を、例えばL字型に成形して、回転させることによって水位のレベル調節できるようにしても良い(図5参照)。
【0029】
また、前記容器本体1の底板11の裏面には、支持脚部材として、回転自在な車輪32を備えたキャスター部材3を複数配設する。本実施形態では、底板11の各隅角部に4本配設する。この際、キャスター部材3の車輪32にストッパ部材32aを、適宜配設することができる。
【0030】
そして、このキャスター部材3の上部基端側を前記底板11に連結する。この連結部にはアジャスタ機構31を設け、このアジャスタ機構31により当該キャスター部材3を昇降調節可能にする。本実施形態では、キャスター部材3のアジャスタ機構31を、底板11の裏面に螺合して着脱自在に構成する。
【0031】
このように構成することにより、容器本体1を地面から所定距離をおいて支持することができ、かつ、これらのアジャスタ機構31をそれぞれ昇降操作することによって底板11のレベルBLを水平に保持できるとともに、開口端部21のレベル調節により、容器内に収容した水の水位WLを土壌表面のレベルGLとが平行な位置になるように維持することができるのである(図6参照)。したがって、プランター内における水位を均等にすることができるので、苗(植物P)の生育のムラを防止することができる(図7参照)。
【0032】
本発明は概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、容器本体1の使用材料は、ポリエチレンに限らず、他の熱可塑性樹脂や金属などを採用することもできる。
【0033】
また、キャスター部材3のアジャスタ機構31は、螺合式のものに限らず、図8の(a)(b)に示すように、スライド式に挿通した両部材を重ねてピン止めできるものや、蝶ネジ等で固定するように構成したものであっても良い。
【0034】
更にまた、容器本体1の上部に差込孔を形成して支持棒材を挿入し、ビニールなどを被覆して、ビニールハウスなどを簡単に構成することもできる。また、植栽物の茎や蔓などを支持する支柱や棚などを設置することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態のプランターを表わす全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態のプランターを表わす全体斜視図である。
【図3】本発明の実施形態のプランターの変形例を表わす全体斜視図である。
【図4】本発明の実施形態のプランターを表わす側面図である。
【図5】本発明の実施形態のプランターの変形例を表わす側面図である。
【図6】本発明の実施形態のプランターの使用状態を表わす説明断面図である。
【図7】本発明の実施形態のプランターの使用状態を表わす全体斜視図である。
【図8】本発明の実施形態のプランターのアジャスタ機構の変形例を表わす正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 容器本体
11 底板
11a 溝部
12 壁面
13 上部開孔
14 底排水孔
15 メッシュカバー部材
2 パイプ部材
21 開口端部
3 キャスター部材
31 アジャスタ機構
32 車輪
32a ストッパ部材
P 植物
WL 水位レベル
GL 土壌レベル
BL 底板レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板11の周囲に壁面12が立設して構成され、土壌および水を収容可能な育苗用の容器本体1であって、
この容器本体1における壁面12の上部側面には、給排水可能な上部開孔13が複数形成されており、かつ、底板11近傍レベルにおける壁面12の下部側面には、底排水孔14が形成されている一方、
少なくとも一つの上部開孔13の外側面にはパイプ部材2が連結されており、このパイプ部材2の開口端部21が上向きにした状態で固定され、かつ、この開口端部21のレベルを昇降調節自在に構成されており、
前記容器本体1の底板11の裏面には、支持脚部材として、回転自在な車輪32を備えたキャスター部材3が複数配設されており、このキャスター部材3の上部基端側が前記底板11に連結され、かつ、この連結部にはアジャスタ機構31が設けられており、このアジャスタ機構31により当該キャスター部材3を昇降調節可能であり、
これらのアジャスタ機構31をそれぞれ昇降操作することによって底板11を水平に保持できるとともに、開口端部21のレベル調節により、容器内に収容した水の水位を土壌表面と平行な位置に維持することができるように構成したことを特徴とする栽培用プランター。
【請求項2】
キャスター部材3のアジャスタ機構31が、底板11の裏面に螺合して着脱自在に構成されていることを特徴とする請求項1記載の栽培用プランター。
【請求項3】
キャスター部材3の車輪32にストッパ部材32aが配設されていることを特徴とする請求項1または2記載の栽培用プランター。
【請求項4】
容器本体1の底板11に溝部11aが形成されており、この溝部11aの側縁に底排水孔14が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の栽培用プランター。
【請求項5】
容器本体1の底板11の溝部11aの上部に、メッシュカバー部材15を載置可能にしたことを特徴とする請求項4記載の栽培用プランター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−35521(P2010−35521A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204700(P2008−204700)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(390014029)株式会社八木熊 (31)
【Fターム(参考)】