説明

框状パネル

【課題】パネル体への横框の取付強度を向上し得るとともに、見栄えを向上し得る框状パネルを提供する。
【解決手段】框状パネル1は、パネル体2の少なくとも一面側の両側端部に沿って設けられた一対の縦框部3,3と、前記一対の縦框部の対向面3a,3a間に、嵌め込まれるように設けられた横框5とを備えており、前記横框は、前記パネル体に固着された捨板30と、この捨板に連接するように一端部26が前記パネル体に固着されるとともに、折り返されて前記捨板の表面31に貼着された化粧板20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、框部を有した框状パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の内装建材や家具材などに使用されるパネル材としては、デザイン性や重厚感等を持たせるために、表面に凹凸形状を形成する框部を有した框状のパネル材が知られている。
このような框状のパネル材としては、従来、矩形枠状の框体の内部に、この框体の厚さよりも薄い鏡板を配設したものがあった。
このようなものでは、框体と鏡板との接合部を見栄え良く納めるには、額縁部材等をタッカーやフィニッシュネイル等の固定止具によって固定して納める構成が一般的に採用されており、構造が複雑化するとともに、止具自体乃至は止具跡が目立ち、見栄えが悪いという問題があった。
【0003】
下記特許文献1では、木質材からなる縦框部と、金属製型材からなる上下框部とによって、框体を構成し、この框体の内周に設けられた取付溝に、鏡板の外周端部を嵌合させることで鏡板を支持する構造とした戸体が提案されている。これによれば、部材点数を増加させることなく、鏡板を強固に支持できるものではあった。
【0004】
また、下記特許文献2では、縦框間に、横桟や芯材等を配設し、この縦框間の表面に、化粧面板を接着により取着したフラッシュ構造の扉本体を形成した後、さらに縦框間の化粧面板に、表面飾り部材としての化粧横枠を取着した扉パネルの構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−127388号公報(図1及び図2参照)
【特許文献2】特開平9−287361号公報(図1〜図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された戸体では、鏡板を四周の框体で支持する構造とされているので、例えば、戸体の上下や中間部位には横框部を設けずに、戸体の両側端部のみに一対の縦框部を設けた、いわゆる二方框状パネルを製造したい場合には、別構造の構成を採用する必要があった。また、上下框部は、細幅の金属製型材で構成されているので、すっきりとした印象を与えるものではあるが、立体感や重厚感等をさらに持たせたい場合等、外観上の観点から更なる改善が望まれていた。
【0007】
上記特許文献2に記載された扉パネルでは、縦框間の化粧面板に化粧横枠を取着する構造とされており、その取着態様によっては、取付強度が低くなる場合や見栄えが悪くなることが考えられる。
すなわち、化粧面板の表面には、デザイン性の観点や防汚性の観点等から、コーティング処理や化粧樹脂シートの貼着等の表面処理が施されている場合が多い。このような場合において、例えば、接着剤や接着テープ(粘着テープ)等により、化粧面板の表面に化粧横枠を接着固定する場合、表面処理が施されている結果、化粧面板の表面が難接着性となり、十分な接着強度が得られず取付強度が低くなる場合がある。このような取着態様に代えて、取付強度を向上させるべく、上記のような固定止具により、化粧面板の表面に化粧横枠を固定することも考えられるが、上記同様、止具自体乃至は止具跡が目立ち、見栄えが悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、パネル体への横框の取付強度を向上し得るとともに、見栄えを向上し得る框状パネルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係る框状パネルは、パネル体の少なくとも一面側の両側端部に沿って設けられた一対の縦框部と、前記一対の縦框部の対向面間に、嵌め込まれるように設けられた横框とを備えており、前記横框は、前記パネル体に固着された捨板と、この捨板に連接するように一端部が前記パネル体に固着されるとともに、折り返されて前記捨板の表面に貼着された化粧板とを備えていることを特徴とする。
【0010】
このような構成とすることで、パネル体への横框の取付強度を向上させることができるとともに、見栄えを向上させることができる。
すなわち、パネル体に対して固着された化粧板の一端部は、当該化粧板の折り返し部位により、覆い隠されることとなるので、固定止具等を露出させることなく、該一端部をパネル体に対して強固に固着させることができる。このように化粧板の一端部を強固に固着させることで、パネル体と横框の一端部を構成する化粧板の折り返し部位との間に隙間や浮き等が生じ難く、見栄えを向上させることができる。従って、これらの接合部に従来のような額縁部材を設けないようにすることもできる。
また、パネル体に取り付けられる横框は、その捨板をパネル体に対して固定止具等によって強固に固着できるとともに、その捨板の表面に貼着された化粧板によって固定止具等や捨板を覆い隠すことができるので、見栄えを向上させることができる。
【0011】
さらにまた、このような構成によれば、パネル体の一対の縦框部間の表面に、デザイン性の観点や防汚性の観点等から、コーティング処理や化粧樹脂シートの貼着等の表面処理が施されている場合にも、横框をパネル体に対して強固に、かつ見栄え良く固定することができる。この結果、一対の縦框部を有した二方框状パネルを製造した後、その縦框部間の任意の位置に横框を取り付けることもできる。これによれば、二方框状パネルと、これに横框を取り付けた框状パネルとを製造する際に、製造ラインの一部を共通して利用でき、生産性を向上させることができる。
【0012】
本発明においては、前記捨板を、その厚さが前記化粧板の厚さよりも大きく形成されたものとし、前記化粧板を、前記一端部の反固着面側に厚み調整板を介在させて折り返されたものとしてもよい。
このような構成とすれば、横框を効率的に肉厚にできるので、製造コストを低減しながらも重厚感を持たせることができ、見栄えを向上させることができる。
また、これにより、化粧板を薄くできるので、厚くしたものと比べて、折り返し部位が丸まったようにならず、見栄えを向上させることができる。
【0013】
また、本発明においては、前記化粧板の裏面に、当該横框の端縁部に面取り部が形成されるように、複数条の折曲溝を設けるようにしてもよい。
このような構成とすれば、横框の端縁部が角張った構成とされたものに比べて、柔らかな印象を与えることができ、見栄えを向上させることができる。
【0014】
また、本発明においては、前記横框を、その表面が、前記一対の縦框部の表面から段落ち状に位置するように設けるようにしてもよい。
このような構成とすれば、一対の縦框部の表面と横框の表面とを略面一状としたものと比べて、段差を設けることで立体感を持たせることができるとともに、縦框部と横框との間の目地を目立ち難くすることができ、より見栄えを向上させることができる。
【0015】
また、本発明においては、前記一対の縦框部の表面及び対向面並びに、これら一対の縦框部の対向面間の表面を、前記パネル体の基材表面に沿うように折り曲げられて貼着された表面化粧材によって形成するようにしてもよい。
このような構成とすれば、縦框部の対向面と、これら対向面間のパネル体の表面とによって形成される入隅部に、隙間等が形成されず、見栄えを向上させることができる。従って、上記入隅部に従来のような額縁部材を設けないようにすることもできる。
また、このように、パネル体の表面に表面化粧材を貼着したものでも、上述のように、横框を強固に、かつ見栄え良く固着させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る框状パネルは、上述のような構成としたことで、パネル体への横框の取付強度を向上させることができるとともに、見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明の一実施形態に係る框状パネルを模式的に示し、(a)は、図2におけるX−X線矢視に対応させた一部破断概略横断面図、(b)は、図2におけるY−Y線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図2】同框状パネルを模式的に示す一部破断概略正面図である。
【図3】(a)〜(d)は、いずれも同框状パネルの製造工程の一例について説明するための概念的な説明図である。
【図4】(a)〜(c)は、いずれも同製造工程の概念的な説明図である。
【図5】同製造工程の概念的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図5は、本実施形態に係る框状パネルについて説明するための説明図である。
尚、図1(a)では、図2に示す折戸を構成する二枚の戸板のうちの一方の戸板の概略横断面のみを示している。
【0019】
本実施形態に係る框状パネル1は、図2に示すように、蝶番等の連結部材によって複数枚(図例では二枚)が連結されて折戸Aを構成する戸板1とされている。
各戸板1は、表面側の両側端部に上下に沿って設けられた一対の縦框部3,3を有したパネル体2と、これら一対の縦框部3,3の対向面3a,3a間に形成された凹部4に嵌め込まれるように設けられた上下の横框5A,5(上横框5A及び下横框5)とを備えている。これら縦框部3,3と、横框5A,5とによって、パネル体2の表面側の四周端部の框部を構成している。また、これら縦框部3,3と、横框5A,5とによって、パネル体2の表面側に立体的な凹凸形状を形成しており、これら縦框部3,3及び横框5A,5が突部となり、これらに囲まれた内方空間に凹部4が形成されている(図1も参照)。
尚、図2において、符号6は、折戸Aのハンドル部である。
【0020】
パネル体2は、図1(a)、(b)に示すように、基材10と、この基材10の外周面に沿って貼着された表面化粧材15とを備えている。
基材10は、表面側の両側端部に、手前側に向けて突出するように形成され、一対の縦框部3,3を構成する一対の基材突出部を有している。これら基材突出部間には、凹部4を構成する基材凹部が形成されている。また、基材10の両側端面手前側には、面取り部14,14が形成されている。
【0021】
この基材10は、繊維方向を上下に沿わせるように配置したLVL(単板積層材)等から製された一対の縦枠と、これら縦枠の上端部間及び下端部間にそれぞれ連結され、パーティクルボード等から製された一対の横枠とからなる枠部材の間に、横桟とハニカム状コア材とを配設した、いわゆるフラッシュ構造の基材とされている。このようなフラッシュ構造の基材とすることで、軽量でありながらも適度な強度を有したものとなり、内装建材、特に、開閉扉や引戸、折戸等の扉パネルとして好適なものとなる。
尚、基材10としては、上記したようなフラッシュ構造のものに限られず、合板やLVL等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などの木質系板材を、上記形状に加工したものとしてもよい。
【0022】
表面化粧材15は、MDF等の木質繊維板を基材とし、その表面15aには、表面処理が施されて、この表面15aは、化粧面とされている。
この表面処理としては、防汚性塗料や耐光性塗料、撥水性塗料等の塗布によるコーティング処理が挙げられる。または、防汚性や耐光性、撥水性等を有した合成樹脂化粧シート(フィルム)の貼着による表面処理が挙げられる。
このような表面処理により、表面化粧材15は、その表面15aに、被固定部材を接着剤や両面接着テープ(両面粘着テープ)等の接着手段によって固定する場合、十分な接着強度を得ることが困難な難接着性の表面物性を有したものとなる。
尚、上記コーティング処理は、上記基材の表面に、天然銘木を薄くスライスして形成された突板等を貼着した後、該突板の表面に施すようにしてもよい。
【0023】
この表面化粧材15の裏面には、図1(a)に示すように、基材10の形状に対応させて、折り曲げ用の複数本の折曲溝が形成されるとともに、一対の縦框部3,3の凹部側表面縁部に面取り部3c,3cが形成されるように折り曲げ用かつ面取り形成用の折曲溝が設けられている。
この表面化粧材15は、基材10の裏面、面取り部14,14を含む両側端面、一対の基材突出部の各表面11,11、これら基材突出部の対向する各対向面13,13、及び基材凹部の底面12に沿うように上記折曲溝で折り曲げられて、基材10の外周面の全面に貼着されている。
このように、基材10の表面側に、一枚の表面化粧材15を折り曲げて貼着することで、各縦框部3,3の対向面3a,3aと、これら対向面3a,3a間の凹部底面4aとによって形成される入隅部に、隙間等が形成されず、見栄えを向上させることができる。従って、この入隅部に従来のような額縁部材を設けないようにすることもできる。
【0024】
尚、本実施形態では、框状パネルとして戸板1を例示しており、その上下端面は施工された状態では、目立ち難いことから、基材10の上下端面には、表面化粧材を貼着していない例を示しているが、上下端面にも表面化粧材を貼着するようにしてもよい。
また、表面化粧材15の端部同士の継ぎ目は、基材10の裏面側或いは端面側に位置するように貼着することが好ましい。
さらに、一枚の表面化粧材15を折曲溝で折り曲げて、基材10の外周面の全面に亘って貼着する態様に限られず、例えば、表面側用と裏面側用の二枚の表面化粧材によって、基材10の外周面を被覆するようにしてもよい。この場合は、各表面化粧材の各端部同士の継ぎ目を、両側端面や裏面側両縁部に位置させるようにしてもよい。
さらにまた、基材10の少なくとも表面側を、一枚の表面化粧材15を折り曲げて貼着する態様に代えて、各基材突出部表面11及び基材突出部対向面13に表面化粧材を折り曲げて貼着した後、基材凹部底面12用の表面化粧材を別途、貼着するようにしてもよい。
【0025】
上記のように、外周面に表面化粧材15が貼着されたパネル体2は、上下の横框5A,5を取り付けていない状態では、その表面側の両側端部に、上下に沿って一対の縦框部3,3を有した、いわゆる二方框状パネル材2となる。
本実施形態では、このような二方框状パネル材2に対して、更に立体感や重厚感等を持たせるために、この二方框状パネル材2の上下方向の全体に亘って形成された凹溝状の凹部4の上下端部に、横框5A,5を設けている。
尚、これら上横框5A及び下横框5は、図2に示すように、下横框5の上下長さが上横框5Aの上下長さよりも長く形成されている以外の構造については、互いに上下を逆にした状態で略同様であるので、以下では、これら横框5A,5の具体的構造について、下横框5を例にして説明する。つまり、上横框5Aについては、以下に説明する下横框5の上下を逆にして把握すればよい。
【0026】
下横框5は、図1(a)、(b)に示すように、二方框状パネル材2の凹部底面4aに固着された捨板30と、二方框状パネル材2の凹部底面4aに一端部(固着端部)26が固着されるとともに、折り返されて、捨板30の表面31に貼着された化粧板20と、この化粧板20の固着端部26の手前側に設けられた厚み調整板36とを備えている。
【0027】
捨板30は、上記したような木質系板材を、略方形状に加工した略方形状板材とされており、この捨板30の表面31には、上記したような表面処理は施されておらず、板材素地が露出乃至は必要により易接着性の表面処理が施されており、この表面31は、易接着性の表面物性を有している。
この捨板30は、その下端面35を、二方框状パネル材2の下端面2aに一致させるようにして、二方框状パネル材2の凹部底面4aの下端部に嵌め込まれるようにして固着されている。この状態では、図1(a)に示すように、捨板30の裏面32が二方框状パネル材2の凹部底面4aに、密着するようにして当接乃至は近接対面しており、また、捨板30の両側端面34,34が二方框状パネル材2の各縦框部対向面3a,3aに、密着するようにして当接乃至は近接対面している。
【0028】
化粧板20は、上記した表面化粧材15と同様、MDF等の木質繊維板を基材とし、その表面21に上記同様の表面処理が施されて、この表面21は、化粧面とされている。一方、化粧板20の裏面22には、上記した捨板30の表面31と同様、板材素地が露出乃至は必要により易接着性の表面処理が施されており、この裏面22は、易接着性の表面物性を有している。
この化粧板20は、捨板30の上端面33に、固着端部26側の一端面23を当接乃至は近接対面させ、その固着端部26が凹部底面4aに固着されている。
【0029】
また、この化粧板20の裏面22には、二方框状パネル材2の凹部底面4aに固着された固着端部26を固定部位として、非固定部位29を捨板30の表面31に向けて折り返すための複数条の折曲溝27,28,28が切欠形成されている(図3(d)も参照)。
これら折曲溝のうち、固着端部26側の折曲溝27は、溝底の角度が略直角とされた断面略V字形状とされ、非固定部位29を、固着端部26に対して、略直交するように折り曲げ得る形状とされている。
この折曲溝27の反固着端部側に設けられた二本の折曲溝28,28は、溝底の角度がそれぞれ略45度程度とされており、折り返された非固定部位29の上端側表面縁部に、C面形状の面取り部5cが形成されるよう、切欠形成されている。
【0030】
また、化粧板20は、凹部底面4aに固着端部26を固着させ、折り返されて捨板30の表面31に非固定部位29が貼着された状態では、図1(b)に示すように、その下端面25と、二方框状パネル材2の下端面2aとが略一致している。つまり、この化粧板20の上下長さは、折り返された非固定部位29によって、捨板30の表面31の全面を隠蔽し得るとともに、固定部位としての固着端部26を、固定止具等によって二方框状パネル材2の凹部底面4aに固着し得る長さとすればよい。
また、上記状態では、図1(a)に示すように、化粧板20の両側端面24,24が二方框状パネル材2の各縦框部対向面3a,3aに、密着するようにして当接乃至は近接対面している。
【0031】
上記のように化粧板20と捨板30とを積層した横框5は、その表面5bを構成する化粧板20の表面21が、一対の縦框部3,3の各表面3b,3bから段落ち状に位置するように設けられている。つまり、凹部底面4aからの各縦框部3,3の突出高さよりも、凹部底面4aからの横框5の厚さが小さく形成されている。図例では、一対の縦框部3,3の凹部側表面縁部に形成されたC面形状の面取り部3c,3cの下端側縁部に、横框5の表面5bが略一致する構成とされている。
このように、横框5を、その表面5bが、一対の縦框部3,3の各表面3b,3bから段落ち状に位置するように設けることで、一対の縦框部3,3の各表面3b,3bと横框5の表面5bとを略面一状としたものと比べて、段差が形成され、立体感を持たせることができるとともに、縦框部3,3と横框5との間の目地を目立ち難くすることができ、見栄えを向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態では、化粧板20の厚さを、捨板30の厚さよりも大きく形成しており、上記のように、凹部底面4aに固着された固着端部26の手前側に、これら化粧板20と捨板30との厚さ寸法差を吸収し得る厚さとされた厚み調整板36を介在させて、非固定部位29が折り返されている。つまり、厚み調整板36は、化粧板20の固着端部26と、折り返された非固定部位29との間にこれらと密接状に配設されている。このように配設された状態では、厚み調整板36は、その下端面が捨板30の上端面33に当接乃至は近接対面し、その上端面が化粧板20の折り返し部位の裏面に当接乃至は近接対面している。また、図示は省略しているが、この厚み調整板36の両側端面は、捨板30の両側端面34,34及び化粧板20の両側端面24,24と同様、二方框状パネル材2の各縦框部対向面3a,3aに、密着するようにして当接乃至は近接対面している。
この厚み調整板36の表面には、上記した捨板30の表面31と同様、板材素地が露出乃至は必要により易接着性の表面処理が施されており、この厚み調整板の表面は、易接着性の表面物性を有している。
【0033】
上記のように、化粧板20の固着端部26と、折り返された非固定部位29との間に厚み調整板36を介在させることで、横框5を効率的に肉厚にできるので、製造コストを低減しながらも重厚感を持たせることができ、見栄えを向上させることができる。
また、これにより、化粧板20を比較的、薄くできるので、厚くしたものと比べて、折り返し部位の表面が丸まったようにならず、見栄えを向上させることができる。特に、このような構成によれば、化粧板20の折り返し部位の表面縁部となる、横框5のC面形状とされた面取り部5cをシャープな形状とできる。
【0034】
次に、上記構成とされた本実施形態に係る戸板1の製造工程の一例について、図3〜図5に基づいて説明する。
まず、上記したように、基材10の外周面に、表面化粧材15を貼着し、図3(a)に示すように、二方框状パネル材2を製造する。
次いで、図3(b)に示すように、二方框状パネル材2の凹部底面4aに、二方框状パネル材2の下端面2aと、捨板30の下端面35とを一致させるようにして、捨板30を、凹部4に嵌め込むようにして取り付ける。この際、捨板30を、凹部底面4aに対して斜めに配置し、捨板30の一方の側端面34を、縦框部3,3のうちの一方の対向面3aに当接させ、捨板30を撓ませるようにして、凹部4に嵌め込むようにしてもよい。
【0035】
上記のように捨板30を凹部4に嵌め込んだ後、図3(c)に示すように、捨板30を、固定止具7によって、二方框状パネル材2に対して固着する。この際、捨板30の下端面35と、二方框状パネル材2の下端面2aとに段差が形成されないよう、捨板30の下端部側から先に固定止具7を打ち込む(或いは捻じ込む)ようにしてもよい。また、図例のように、強固に固着すべく、適宜、ピッチで複数箇所に固定止具7を止着させるようにしてもよい。
尚、固定止具7としては、図例では、ステイプルを示しているが、その他、木ねじや釘(フィニッシュネイル)、タッカー等、捨板30を二方框状パネル材2に対して機械的に固定し得るものであれば、どのようなものでもよい。
【0036】
次いで、図3(d)及び図4(a)に示すように、化粧板20の表裏を反転させた状態、すなわち、化粧面とされた化粧板20の表面21を凹部底面4aに対面させた状態で、この化粧板20の固着端部26側の一端面23を、捨板30の上端面33に、当接乃至は近接対面させるようにして、化粧板20を凹部4に嵌め込むように載置する。
そして、図4(b)に示すように、化粧板20の固着端部26の手前面(反固着面)側に、厚み調整板36を載置し、図4(c)に示すように、これら厚み調整板36及び化粧板20の固着端部26を、上記同様の固定止具7によって、二方框状パネル材2に対して固着する。この際、図4(c)に示すように、厚み調整板36の上端部(反捨板側端部)に沿って固定止具7を止着させるようにすることが好ましい。これによれば、横框5の上端部となる化粧板20の折り返し部位と凹部底面4aとの間に隙間等が生じることをより確実に防止できる。
【0037】
次いで、図4(c)に示すように、捨板30の表面31及び厚み調整板36の表面の適所に、両面接着テープ(両面粘着テープ)8を取り付け、また、接着剤9を塗布する。この際、折曲溝27,28にも接着剤9を塗布するようにしてもよい。また、このように、折曲溝に接着剤を塗布する場合、折曲溝の溝長手方向両端部には、折り返された際に接着剤9が食み出さないよう、接着剤9を塗布しないようにしてもよい。
この接着剤9としては、各種水性接着剤やエマルション接着剤等としてもよく、例えば、酢酸ビニル系接着剤やゴムラテックス系エマルション接着剤としてもよい。
尚、捨板30の表面31及び厚み調整板36の表面の適所に、塗布乃至は取り付ける接着手段としては、両面接着テープ8及び接着剤9のうちのいずれか一方を採用するようにしてもよく、他の接着手段を採用するようにしてもよい。
また、捨板30の表面31及び厚み調整板36の表面に上記接着手段を塗布乃至は取り付ける態様に代えて、或いは加えて、化粧板20の折り返される非固定部位29の接着面(化粧板20の裏面22)に接着手段を塗布乃至は取り付けるようにしてもよい。
【0038】
次いで、図5に示すように、二方框状パネル材2に対して固着されていない、化粧板20の非固定部位29を、捨板30の表面31に向けて折り返し、化粧板20の下端面25と、捨板30の下端面35とが略一致するように、非固定部位29の裏面22を、厚み調整板36の表面及び捨板30の表面31に当接させ、接着固定する。このように非固定部位29の裏面22を、厚み調整板36の表面及び捨板30の表面31に当接させた後、当て板等を用いて、非固定部位29の表面21を押圧するようにしてもよい。
このような工程を経て、図1(a)、(b)及び図2に示すように、横框5(及び横框5A)が設けられた戸板1が製造される。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る戸板1では、二方框状パネル材2の凹部4に横框5が取り付けられた状態では、化粧板20の化粧面とされた表面21が、横框5の上端面5a、面取り部5c及び表面5bを構成する。この化粧板20は、その固着端部26が凹部底面4aに強固に固着されているので、横框5の上端面5aと、凹部底面4aとの間に、隙間や浮き等が生じ難く、見栄えを向上させることができる。従って、従来のような額縁部材を設けないようにすることもできる。
また、二方框状パネル材2に対して固着された化粧板20の固着端部26及び厚み調整板36は、化粧板20の折り返し部位及び折り返された非固定部位29により、覆い隠されることとなるので、固着端部26及び厚み調整板36を二方框状パネル材2に対して固着するための固定止具等が露出することがない。従って、これら固着端部26及び厚み調整板36を二方框状パネル材2に対して強固に、かつ見栄え良く固着させることができる。
【0040】
また、化粧板20の折り返された非固定部位29の裏面22側に捨板30を介在させるようにしているので、捨板30がスペーサーとなり、化粧板20を薄くすることができる。従って、製造コストを低減させることができる。
さらに、各横框5A,5は、捨板30を二方框状パネル材2に対して固定止具等によって強固に固着できるとともに、その捨板30の表面31に貼着された化粧板20によって固定止具等や捨板30を覆い隠すことができるので、見栄えを向上させることができる。
【0041】
さらにまた、上述のように、二方框状パネル材2の一対の縦框部3,3間の表面、すなわち、凹部底面4aに、デザイン性の観点や防汚性の観点等から、コーティング処理や化粧樹脂シートの貼着等の表面処理が施されている場合にも、横框5A,5を、二方框状パネル材2に対して強固に、かつ見栄え良く固定することができる。この結果、上述のように、一対の縦框部3,3を有した二方框状パネル材2を製造した後、その縦框部3,3間の任意の位置に横框5A,5を取り付けることができる。これによれば、二方框状パネル材2と、これに横框5A,5を取り付けた框状パネル(図例では、戸板1)とを製造する際に、製造ラインの一部を共通して利用でき、生産性を向上させることができる。
【0042】
尚、本実施形態では、パネル体(二方框状パネル材)を、その一面側(表面側)の両側端部に沿って一対の縦框部を有したものとし、これら一対の縦框部間に横框を設けた態様を例示しているが、パネル体の裏面側の両側端部にも、上記同様の一対の縦框部を設け、これら縦框部間に、上記同様にして横框を設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では、パネル体の凹部の上下端部に、それぞれ横框を設けた例を示しているが、上下端部のうち、いずれか一方のみに横框を設けるようにしてもよい。または、このような上下の横框に代えて、若しくは加えて、凹部の途中部位に横框を設けた態様としてもよい。この場合は、化粧板の折り返し部位によって化粧面が形成されない側の横框端部(例えば、化粧板の下端面及び捨板の下端面)に、上記したような化粧面となる表面処理を施すようにしてもよい。或いは、上記横框端部に対応する化粧板の端部裏面に折曲溝を設け、この化粧板の端部を凹部底面に向けて折り曲げ、この端部裏面を捨板の対応する端面に接着固定することで、横框端部の表面を化粧面とするようにしてもよい。これによれば、捨板の上下端部を化粧板によって隠蔽することができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、化粧板の固定部位としての固着端部側の端面と、捨板の一辺端面とを当接させて対面させた例を示しているが、これら端面間に空隙が形成されるように対面させるようにしてもよい。この場合は、化粧板の非固定部位の長さを上記したように捨板の表面を隠蔽し得るよう、適宜、設定するようにすればよい。
さらにまた、本実施形態では、化粧板の厚さを捨板の厚さよりも小さく形成し、化粧板の固着端部の反固着面側に厚み調整板を介在させた態様を例示しているが、これら化粧板と捨板とを略同厚さのものとし、厚み調整板を介在させないものとしてもよい。
または、上記のように、化粧板と捨板とを別部材としたものに代えて、化粧板の固着端部と、非固定部位とを略同寸同形状に形成し、固着端部を捨板として把握するようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、横框の表面一縁部に、C面形状の面取り部が形成されるように、化粧板の裏面に、複数条の折曲溝を設けた態様を例示しているが、この面取り部がR面形状となるように、複数条の折曲溝を設けたものとしてもよい。または、折り曲げ用の折曲溝のみを化粧板の裏面に設け、このような面取り部を設けない態様としてもよい。
さらに、本実施形態では、横框の表面が、縦框部の表面よりも段落ち状となるように横框を構成した例を示しているが、横框の表面と縦框部の表面とが略面一状(略同一平面状)となるように横框を構成するようにしてもよい。或いは、横框の表面が、縦框部の表面よりも段上がり状となるように横框の上記厚さを、縦框部の上記突出高さよりも大きく形成するようにしてもよい。
【0045】
また、本発明に係る框状パネルとしては、上述のような折戸を構成する戸板に限られず、開閉扉や引戸等の他の扉パネルとして施工されるものとしてもよく、その他、内壁パネルや天井パネル、或いは腰壁等の造作部材等の内装パネルとして施工されるものとしてもよい。さらには、家具材等のパネル材として用いられるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 戸板(框状パネル)
2 二方框状パネル材(パネル体)
3 縦框部
3a 縦框部の対向面
3b 縦框部の表面
4a 凹部底面(縦框部対向面間の表面)
5 下横框(横框)
5A 上横框(横框)
5b 横框の表面
5c 横框の面取り部
10 パネル体の基材
11 基材突出部表面(基材表面)
12 基材凹部底面(基材表面)
13 基材突出部対向面(基材表面)
15 表面化粧材
20 化粧板
22 化粧板の裏面
26 固着端部(化粧板の一端部)
28 折曲溝
30 捨板
31 捨板の表面
36 厚み調整板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル体の少なくとも一面側の両側端部に沿って設けられた一対の縦框部と、
前記一対の縦框部の対向面間に、嵌め込まれるように設けられた横框とを備えており、
前記横框は、前記パネル体に固着された捨板と、この捨板に連接するように一端部が前記パネル体に固着されるとともに、折り返されて前記捨板の表面に貼着された化粧板とを備えていることを特徴とする框状パネル。
【請求項2】
請求項1において、
前記捨板は、その厚さが前記化粧板の厚さよりも大きく形成されており、
前記化粧板は、前記一端部の反固着面側に厚み調整板を介在させて折り返されていることを特徴とする框状パネル。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記化粧板の裏面には、当該横框の端縁部に面取り部が形成されるように、複数条の折曲溝が設けられていることを特徴とする框状パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記横框は、その表面が、前記一対の縦框部の表面から段落ち状に位置するように設けられていることを特徴とする框状パネル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記一対の縦框部の表面及び対向面並びに、これら一対の縦框部の対向面間の表面は、前記パネル体の基材表面に沿うように折り曲げられて貼着された表面化粧材によって形成されていることを特徴とする框状パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−94297(P2011−94297A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246136(P2009−246136)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000157256)丸玉産業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】