説明

梅干しの種抜き装置

【課題】多数の種抜き棒を備えた種抜き盤を、パレット上に載置した多数の梅干しに向かって降下させることで、多数の梅干しの種抜きを一斉に行うことを可能にする。
【解決手段】種抜き棒3が垂直方向に間隔をおいて多数並設された昇降可能な種抜き盤2の真下に、種抜き棒3と同じ間隔をおいて梅干し20を個別に収容可能な大きさの多数の収容孔12を備えた上板13と、この収容孔の中心位置に梅干しの種よりも小さく弾力により梅干しの種が通過可能な種抜き孔14が形成された弾性板15と、上板の収容孔と対応する位置に排出孔16備えた下板17とがサンドイッチ状に重ねられてなるパレット6を位置させ、種抜き盤2を降下させることにより多数の梅干しの種抜きが一斉に行われるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は梅干しの種抜き装置、詳しくは多数の梅干しの種抜きを能率よく、しかも種への梅肉の付着が少なくて、種抜き後の梅肉の残存率の向上に寄与する梅干しの種抜き装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
梅干しは健康食品とし重宝され古来から広く食用されているが、食用の際、内部の種が邪魔になることから最近においては予め種を抜いた梅肉だけの梅干しが好まれるようになり、特許文献1や特許文献2にみられるように、梅干しの種抜き装置が開発されるに至っている。
【0003】
上記特許文献1記載の種抜き装置は、間隔をおいて透孔が穿設され、それぞれの透孔にスリットを備えた弾性板が配された間歇回転可能な支持円板と、所定の箇所に位置した弾性板に向かって上下方向に往復運動するところの先端部に3本の突起を備えた突き出し棒とからなり、各弾性板上に梅干しを載置して支持円板を間歇的に回転させ、所定の箇所に位置した梅干しに向かって突き出し棒を降下させて突き出し棒によって梅干しの種を下方に押し出し、梅干しから種を排除できるようになっている。
【0004】
しかしながら、上記の種抜き装置においては、支持円板の間歇的な回転と突き出し棒の上下動によって支持円板上の梅干しから種を抜き取ることができるが、個別の種抜きであり生産性が低いという難点がある。
【0005】
そのうえ、上記の種抜き装置においては、突き出し棒の降下により弾性板のスリットが簡易に拡開するため種がスムーズに押し出されるという利点を有しているが、反面弾性板にスリットが形成されていることから種からの梅肉の剥離力が弱く、可成り多くの梅肉(10〜30%)が種に付着したまま分離され、種抜き後の梅肉の残存率の低下を招いている。そのうえ、種の分離後の押し出し棒の上昇により拡開したスリットが閉じるときスリット間に梅肉の一部が挟まれて付着することが避けられず、種抜き後の梅肉の残存率がさらに低下することになる。
【0006】
また特許文献2の図2にみられるように、基台の透孔の上に配設されたスリットを備えた弾性板(ゴム製の舌片)を押さえているリング状の押さえ板の孔径と基台の透孔の内径が同じであるため、図9に示しているように、突き出し棒22により種21が押し出される際、弾性板23に下方に屈曲と伸長方向の圧力が加えられ、それによって押え板24と弾性板23のスリットの基部との間に隙間Sが生じ、種抜き後に弾性板23が復元するとき、この隙間Sに梅干しの表皮や梅肉の一部が挟まれ、表皮や梅肉の一部が残存するという事態が生じる。
【0007】
さらにまた、上記の種抜き装置においては、突き出し棒の降下により先端部の3本の突起がスリットを備えた弾性板の特定部分に反復して衝突することから、長期間の使用にスリット部分が破損する恐れがあり、もし破損した場合にはその破片が梅肉内に混入することになる。
【特許文献1】特開平7−147956号公報
【特許文献2】特開2001−299310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする第一の問題点は、従来の種抜き装置は種抜きの生産性が低いという点であり、解決しようとする第二の問題点は、従来の種抜き装置は種抜き後の梅肉の残存率が低いという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の梅干しの種抜き装置は、フレームの上方に多数の種抜き棒が垂直方向に間隔をおいて並設された種抜き盤が上下可能に配設され、この種抜き盤の真下に、種抜き棒と同じ間隔をおいて梅干しを個別に収容可能な大きさの多数の収容孔を備えた上板と、この収容孔の中心位置に梅干しの種よりも小さく弾力により梅干しの種が通過可能な種抜き孔が形成された弾性板と、上板の収容孔と対応する位置に排出孔を備えた下板とがサンドイッチ状に重ねられてなるパレットが設置され、パレットの弾性板上に載置した多数の梅干しに向かって多数の種抜き棒を備えた種抜き盤を降下させて多数の梅干しの種抜きを一斉に行うことができるようになしたことを主要な特徴とする。
【0010】
上記した多数の梅干しを載置したパレットは、作業員の手により種抜き盤の真下に送り込み、種抜き後取り出すという動作を反復してもよいが、フレームにフレームの外側から種抜きの真下まで延びるレールを設けてパレットをフレームの外側位置から種抜き盤の真下の種抜き位置まで往復移動可能となし、フレームの外側位置において弾性板上に多数の梅干しを載置してパレットと共に種抜き盤の真下に送り込み、種抜き後のパレットを、例えば、エアシリンダで押し出すように構成すれば、生産性は一層向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の種抜き装置は、多数の種抜き棒が垂直方向に間隔をおいて並設された種抜き盤を、梅干しを多数の収容孔内に載置したパレットに向かって降下させることによって、多数の梅干しから一斉に種を排除することができ、種抜き梅干しの生産性が著しく向上する。そのうえ、種抜き処理後のパレットを取り出し、準備していた次のパレットを送り込むことにより順次多量に種抜きが達成でき、種抜き梅干しの生産性が著しく向上する。
【0012】
そのうえ、パレットの弾性板による種抜きは、スリットではなく梅干しの種よりも小さい種抜き孔の弾力を利用して行われるから、種抜き棒で種が下方に押し出される際、弾性板の種抜き孔の内周縁が種の外皮へ広範囲に弾力的に摺接して梅肉の剥ぎ取り作用をなし、種に付着して排出される梅肉の量を少なくすることができ、梅肉の残存率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
生産性を高めるという目的を、上下動する種抜き盤に多数の種抜き棒を設け、この種抜き盤の真下に、種抜き棒と同じ間隔をおいて梅干しを個別に収容可能な大きさの多数の収容孔を備えた上板と、弾力により梅干しの種が通過可能にして梅干しの種よりも小さい種抜き孔が形成された弾性板と、上板の収容孔と対応する位置に排出孔を備えた下板とがサンドイッチ状に重ねられてなるパレットを使用し、パレットの各収容孔内に梅干しを載置して装置の種抜き位置に送り込み、パレットの収容孔のそれぞれに載置した梅干しに向かって多数の種抜き棒を備えた種抜き盤を降下させることにより実現した。
【0014】
また、種抜きの時の梅肉の残存率を高めるという目的を、種抜き棒の降下により種のみを通過させるための弾性板の種抜き孔を、スリットではなく弾力により拡開して梅干しの種が通過可能なところの梅干しの種より小さい孔となすことによって達成した。
【実施例】
【0015】
図1および図2は、本発明の種抜き装置の一実施例の側面図と正面図を示しているものであって、1は装置のフレーム、2は上下可動可能な種抜き盤であり、この種抜き盤2の下面には垂直方向に間隔をおいて多数の種抜き棒3が並設され、フレーム1の上方に設けたエアシリンダ4の作動により一定のストロークを上下動するようになっている。5は上下動のガイドシャフト、6は多数の梅干しを載置するパレット、7は種抜き盤2の降下時に各種抜き棒3が通過可能な孔を備えたガイド板、8はパレット6を載置して種抜き位置に送り込むための台車、9は台車8を支持するレール、10は種抜き位置の台車9を送り込み位置まで押し出すための取り出し用のエアシリンダ、そして11は種入れ箱である。本実施例においては、このエアシリンダ10で上記パレットがフレームの外側位置から種抜き盤の真下の種抜き位置まで往復移動できるように構成され、フレーム1の外側位置においてパレット上に多数の梅干しを載置してパレット6と共に種抜き盤2の真下に送り込むことができるようになっている。
【0016】
種抜き盤2の下面には、本実施例においては、縦列に7本、横列に8本の種抜き棒3が並設され、一度に56個の種抜き梅干しが生産できるようになっている。
【0017】
パレット6は、図3および図4に示しているように、上から上板13、弾性板15、下板17の順にサンドイッチ状に重ねられているものであって、種抜き盤2の種抜き棒3と同じ間隔をおいて梅干しを個別に収容可能な大きさ(内径約30〜40mm)の多数の収容孔12を備えた金属製の上板13と、この収容孔12の中心位置に梅干しの種よりも小さく弾力により梅干しの種が通過可能な大きさ(内径約9〜13mm)の種抜き孔14が形成された弾性板15と、上板13の収容孔12と対応する位置に収容孔12とほぼ同じ内径の排出孔16を備えた金属製の下板17とがサンドイッチ状に重ねられてボルト・ナット18によって、上板と弾性板と下板が取り替え変更可能に取り付けられてる。そして、この弾性板15として本実施例においては厚さが5mmのシリコンゴムが適用されている。なお、弾性板15に穿設された種抜き孔14の大きさは、処理する梅干しの大きさ(種の大きさ)によって定められるものであり、本実施例においては、L、サイズ、2Lサイズの梅干しに適用できるように12mmとなしている。
【0018】
上記パレット6の梅干しの収容孔12の数を上記した種抜き棒3の本数と同数であることが望ましいが、本実施例のように56本の種抜き棒3に合わして56個の収容孔12を有したパレット6となした場合、パレット6の重量が大きくなって取扱いが困難となる。このため本実施例においては、上記した種抜き棒3の本数の1/2の収容孔12を備えたパレット6となし、2枚のパレット6を並べて台車8に載せ、種抜き装置の種抜き位置まで移送できるようになしている。図中19は台車8への載置作業や種抜き後の台車8からの取り出し作業を容易にするための把手である。
【0019】
図5は装置の種抜き盤2と、レール9に沿って台車8により種抜き位置に送り込まれたパレット6との位置関係を示したものであり、この状態でエアシリンダ4が作動されて種抜き盤2が降下し、図6に示しているように、種抜き棒3がパレット6上の梅干し20に突入して梅干し内の種21を突き出し、種21を弾性板15の種抜き孔14を押し拡げながら種入れ箱11に向かって降下させる。そして種21が種抜き孔14を通過する際、種抜き孔14の内周縁が種21の外皮周面に広範囲に弾力的に摺接して種に付着している梅肉を剥ぎ取る作用をなす。種抜き終了後パレットは、図1に示したエアシリンダ10によりレール9に沿って外側に突き出され、パレット6から種なし梅を他に移したのち、新たに梅干しを載置したパレット6が種抜き位置に送り込まれる。
【0020】
また図7に示しているように、下板17の排出孔16の内径Aを上板13の収容孔12の内径Bよりも僅かに(1〜2mm程度)小さくしておくことも本発明の好ましい実施の形態である。これによって弾性板15の屈折基部が僅かに内側となり、弾性板15が下方に屈曲しても上板13と弾性板15との間に図9に示したような隙間Sができなくなり、種抜き棒3の突入によって拡がった梅肉や表皮の一部がこの隙間Sに挟まれるという事態を解消することができる。
【0021】
また種抜き棒3は図8に示しているように、基部よりも梅肉内に突入する先端部分3Aを僅かに細径となるテーパ状に形成しておくことも本発明の好ましい実施の形態である。これによって種抜き後、種抜き棒が上昇するときの梅肉との摩擦が小さくなって種抜き棒への梅肉の付着が少なくなる。さらに種抜き棒の下端面に、厚みを有する外周縁3Bを残して球面状の凹部3Cを形成しておけば、種抜き棒の突入時の梅干し表皮の破損防止に役立つとともに凹部3Cで的確に種を捉え、種割れをなくすることができる。
【0022】
尚本実施では、種抜き盤の上下動とパレットの送り込みにエアシリンダ4と10とを使用しているが、エアシリンダに代えて、油圧シリンダ、モータなどの公知の運動機構を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明種抜き装置の一実施例を示した側面図である。
【図2】図1の装置の正面図である。
【図3】本発明に適用したパレットの上面斜視図である。
【図4】図3のX−X線断面図である。
【図5】装置の種抜き位置の状態を示した説明図である。
【図6】種抜き状態を示した断面図である。
【図7】排出孔の内径を僅かに小さくした場合の説明図である。
【図8】種抜き棒の実施例を示した一部断面正面図である。
【図9】従来の弾性板の屈曲状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 フレーム
2 種抜き盤
3 種抜き棒
6 パレット
12 収容孔
13 上板
14 種抜き孔
15 弾性板
16 排出孔
17 下板
20 梅干し
21 梅干しの種

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの上方に、多数の種抜き棒が垂直方向に間隔をおいて並設された種抜き盤が上下動可能に配設され、この種抜き盤の真下に、種抜き棒と同じ間隔をおいて梅干しを個別に収容可能な大きさの多数の収容孔を備えた上板と、この収容孔の中心位置に梅干しの種よりも小さく弾力により梅干しの種が通過可能な種抜き孔が形成された弾性板と、上板の収容孔と対応する位置に排出孔を備えた下板とがサンドイッチ状に重ねられてなるパレットが設置され、パレットの各収容孔内の弾性板上に載置した多数の梅干しに向かって多数の種抜き棒を備えた種抜き盤を降下させて多数の梅干しの種抜きを一斉に行うことができるようになしたことを特徴とする梅干しの種抜き装置。
【請求項2】
フレームの上方に、多数の種抜き棒が垂直方向に間隔をおいて並設された種抜き盤が上下動可能に配設され、この種抜き盤の真下に、種抜き棒と同じ間隔をおいて梅干しを個別に収容可能な大きさの多数の収容孔を備えた上板と、この収容孔の中心位置に梅干しの種よりも小さく弾力により梅干しの種が通過可能な種抜き孔が形成された弾性板と、上板の収容孔と対応する位置に排出孔を備えた下板とがサンドイッチ状に重ねられてなるパレットの1〜複数枚が、フレームの外側位置から種抜き盤の真下の種抜き位置まで往復移動できるようになし、フレームの外側位置において、パレットの収容孔内の弾性板上に載置した多数の梅干しをパレットと共に種抜き盤の真下に送り込み、多数の種抜き棒を備えた種抜き盤を降下させてパレット上の多数の梅干しの種抜きを一斉に行うことができるようになしたことを特徴とする梅干しの種抜き装置。
【請求項3】
上板の収容孔よりも下板の排出孔が僅かに小さく形成されていることを特徴する請求項1または請求項2記載の梅干しの種抜き装置。
【請求項4】
種抜き盤の種抜き棒が基部よりも先端部が細径のテーパ状に形成されていることを特徴する請求項1または請求項2記載の梅干しの種抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−101853(P2006−101853A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314792(P2004−314792)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(594144795)南紀梅干株式会社 (3)
【Fターム(参考)】