説明

梱包具

【課題】 効率よく物品を梱包できるし、梱包した物品を手に負担を掛けずに安定的に支持することができる梱包具を提供すること。
【解決手段】 付設されている弾性部材6により収縮可能に形成されており複数のベルト保持部材7A,7Bが外周面に装着されている筒状包装体2と、筒状包装体2に一部を固定されるとともにベルト保持部材7A,7Bに相対移動可能に保持されている上下に間隔をおいて配設された2本の水平ベルト8A,8Bと、2本の水平ベルト8A,8B間に張設されており筒状包装体2の少なくとも一部を被覆するネット10と、筒状包装体2に一部を固定されるとともに、筒状包装体2に包装されている物品の露出している底面を支持する鉛直ベルトとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具のような比較的大型の物品を運搬するために梱包する梱包具に係り、特に、物品を梱包した状態で運搬しやすくした梱包具に関する。
【背景技術】
【0002】
前述した梱包具として、長方形状の表生地と裏生地との間に緩衝部材と帯状をなす多数のゴム紐を長手方向に対して伸長状態で等間隔に配列し、表裏両生地の全面にキルティング加工を行ない、かつ端縁部をロック加工して長方形状の布団を構成し、この布団の長手方向の両端縁を縫着接合して筒状体に形成した梱包布団が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような特許文献1の梱包布団によれば、この梱包布団を物品の周囲に被着して物品の上端と下端から梱包布団を上下にはみ出させると、ゴム紐の収縮力により梱包布団が物品の上面と下面において収縮され、物品をその上面と下面においても被覆することになる。
【0004】
そこで、この梱包布団の上から物品に水平方向および鉛直方向においてそれぞれ2本ずつのロープにより緊締することにより物品を梱包布団により梱包することになる。
【0005】
【特許文献1】実公昭63−613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1の梱包布団においては、この梱包布団が物品を包装した状態において新たに4本のロープを巻回して緊締しなければならず、梱包効率が悪かった。
【0007】
また、人が梱包布団により梱包された物品を運搬する際にロープを掴まなければならないため、運搬しやすい箇所を掴むことができず、安定した状態で物品を支持できないことがあった。特に、階段やスロープを梱包布団により梱包された物品を、ロープを掴んで移動するのは非常に難しく、危険を伴うものであった。しかも、掴んだロープには荷重が集中するので、ロープを掴んだ手が痛くなるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、前述した従来のものにおける問題点を克服し、作業性よく物品を梱包できるし、梱包した物品を手に負担を掛けずに安定的に支持することができる梱包具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、請求項1に係る本発明の梱包具の特徴は、付設されている弾性部材により収縮可能に形成されており、外周面に複数のベルト保持部材が装着されている筒状包装体と、前記筒状包装体の外周面に一部を固定されるとともに、前記ベルト保持部材に相対移動可能に保持されている上下に間隔をおいて配設された2本の水平ベルトと、前記2本の水平ベルト間に張設されており、前記筒状包装体の少なくとも一部を被覆するネットと、前記筒状包装体の外周面に一部を固定されるとともに、前記筒状包装体に包装されている物品の露出している底面を支持する鉛直ベルトとを有する点にある。
【0010】
そして、このような構成を採用したことにより、筒状包装体により物品を被覆し、2本の水平ベルトを筒状包装体の外周に巻回して個々に緊締するとともに、鉛直ベルトを露出している物品の底面ならびに筒状包装体の外周に巻回して緊締することにより物品を梱包することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明の梱包具の特徴は、前記筒状包装体が、キルティング加工されている点にある。
【0012】
そして、このような構成を採用したことにより、物品を痛めないための芯材を内部移動しないように筒状包装体内に保持することができる。
【0013】
請求項3に係る本発明の梱包具の特徴は、前記各水平ベルトがそれぞれの長手方向中央部を前記筒状包装体に固定されており、個々の水平ベルトの両端部同士を介して個々のベルトごとに緊締されるように構成されている点にある。
【0014】
そして、このような構成を採用したことにより、個々の水平ベルトの両端部をそれぞれ緊締して物品を梱包することができる。
【0015】
請求項4に係る本発明の梱包具の特徴は、前記鉛直ベルトがその基端部を前記筒状包装体に固定されており、その先端部を介していずれかの前記水平ベルトに緊締されるように構成されている点にある。
【0016】
そして、このような構成を採用したことにより、鉛直ベルトをいずれかの水平ベルトに緊締して物品を梱包することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、筒状包装体に2本の水平ベルトと1本の鉛直ベルトとがそれぞれ自由度を有するようにして固定されているので、これらのベルトにより種々の寸法の物品を効率的に梱包することができる。
【0018】
また、水平ベルト間にはネットが張設されているので、ネットを掴んで梱包した物品を手に負担を掛けずに安定的に支持して運搬することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明に係る梱包具の実施形態を示すものであり、本実施形態の梱包具1は、筒状をなす包装体2を有している。一例として、この筒状包装体2を扁平に変形させた状態における寸法は、縦80cm、横1mとされている。なお、前記寸法を変えた複数種の筒状包装体2を用意し、梱包する物品の大きさに応じて使用する筒状包装体2を選択するようにすればよい。
【0020】
前記筒状包装体2を展開した状態を図2に示すが、この筒状包装体2を展開したシート状包装体2aは、図3および図4に詳示するように、同形の表地3と裏地4とを有しており、これらの表地3と裏地4との間には、梱包した物品が硬いものに衝突しても傷がつかなくするために衝突の際の衝撃を緩衝する剛性ならびに柔軟性を兼ね備えたフェルトのような芯材5と、それぞれ水平方向に延在され伸長状態に保持されている複数の弾性部材であるゴムひも6,6…が平行に配設されている。
【0021】
そして、前記シート状包装体2aには、表面全体にキルティングマシンによるキルティング加工Kが施されており、前記芯材5および各ゴムひも6が内部で移動し得ないようになっている。また、前記シート状包装体2aの外周縁部にはロックミシンによるロック加工Rが施されており、内部が露出し得ないようになっている。
【0022】
したがって、前記各ゴムひも6により前記シート状包装体2aは、水平方向に収縮可能とされている。
【0023】
前記シート状包装体2aの表面の左右端部には、それぞれ上下方向に間隔を隔てて各1対のベルト保持部材7A,7Bが取付けられている。そして、上位の前記両ベルト保持部材7A,7Aならびに下位の前記両ベルト保持部材7B,7Bはそれぞれ同一高さに配設されている。
【0024】
前記両ベルト保持部材7A,7Aには、前記シート状包装体2aの横寸法より長い長さを有しポリエステルのような丈夫な材料からなる水平方向に延在するベルト8Aが各ベルト保持部材7Aに対し相対移動しうるように挿通されている。また、前記両ベルト保持部材7B,7Bには、前記ベルト8Aと等しい長さを有し、ベルト8Aと同じ材質で水平方向に延在するベルト8Bが各ベルト保持部材7Bに対し相対移動しうるように挿通されている。各ベルト8A,8Bの一端部には、各ベルト8A,8Bの他端部との緊締のために使用されるDリング9A,9Bが取付けられている。
【0025】
前記両ベルト8A,8B間には、上下端部をそれぞれ各ベルト8A,8Bに固定されている長方形状のネット10が張設されている。このネット10の横寸法は一例として2m90cmとされているが、このネット10は、両ベルト保持部材7A,7A間および両ベルト保持部材7B,7B間に固定されているため、各ベルト8A,8Bとともに両ベルト保持部材7A,7A間および両ベルト保持部材7B,7B間において弛んだ状態となっている。
【0026】
また、前記ネット10の材質は、物品を梱包具1に梱包した状態において手でネット10を掴んでも破れない丈夫な材料により形成されている。
【0027】
前記シート状包装体2aの横方向における中央位置には、上方に位置する前記ベルト8Aとの交差部位を基端として筒状包装体2の下端縁より下方に延在する鉛直ベルト11が配設されている。この鉛直ベルト11の前記シート状包装体2a上に位置する部位の全域は、この鉛直ベルト11と交差する部位の前記各ベルト8A,8Bとともに前記筒状包装体2に縫製Sにより固定されている。下方に位置する前記ベルト8Bより下方に位置する部位の前記鉛直ベルト11の長さは、一例として2m30cmとされている。
【0028】
前述したシート状包装体2aの両側縁を縫製Sにより接続することにより筒状包装体2が形成され、当然のことながら各ベルト保持部材7A,7B、各ベルト8A,8B,11、ネット10などは筒状包装体2の外周面に位置することになる。この状態が、図1の梱包具1である。
【0029】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0030】
本実施形態の梱包具1は、筒状包装体2内に複数のゴムひも6が伸長状態で収納されているので、自由状態において前記筒状包装体2は、各ゴムひも6の弾性力により水平方向において収縮され波打ってる状態とされている。
【0031】
このような状態において、家具のような物品を梱包するには、物品の外周寸法に合わせて筒状包装体2を各ゴムひも6の弾性力に抗して伸長させるようにして物品の上からかぶせ、物品の各側面を完全に被覆する。このとき、筒状包装体2の下端縁を物品の下端縁に合わせるようにして筒状包装体2を物品の上端から突出させるようにしておく。すると、物品の上端から突出している部位の筒状包装体2は各ゴムひも6の弾性により収縮されるので、図5に示すように物品Aの上面に密着することになる。
【0032】
そこで、図5に示すように、筒状包装体2により物品Aを被覆した状態で、各ベルト8A,8Bの両端部をDリング9A、9Bを介してそれぞれ緊締する。
【0033】
つぎに、図6に示すように、筒状包装体2の下端縁から突出している部位の鉛直ベルト11を筒状包装体2の下端縁から露出している物品の底面の下方に渡したうえで、上位に位置するベルト8Aの中間位置に絡ませるようにして緊締する。
【0034】
このようにして梱包具1により物品Aを作業性よく梱包することができる。
【0035】
また、筒状包装体2は、複数本のゴムひも6により伸縮自在なので、筒状包装体2の伸長状態を梱包する物品の大きさに合わせて選択することにより種々の大きさの物品Aを梱包することができる。
【0036】
さらに、物品Aを痛めないためのキルティング加工Kにより芯材5を内部移動しないように筒状包装体2内に保持しているので、運搬中に物品Aを傷めることもない。
【0037】
さらにまた、ネット10を掴むことにより、物品Aの荷重が掴んだネット10の個々の部位に分散するので、梱包具1により梱包した物品Aを手に負担を掛けずに安定的に支持して運搬することができる。特に、階段やスロープを梱包具により梱包された物品を運搬する際、ネットを掴んで移動すれば、物品を安定的に支持することができるため運搬の作業性がよい。
【0038】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、ベルトとしては、幅を狭くしたロープ状のものも発明の技術的範囲に含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る梱包具の実施形態を示す斜視図
【図2】図1の筒状包装体を展開した状態を示す正面図
【図3】図2のシート状包装体の正面図
【図4】図3の横断面図
【図5】図1の梱包具により物品を梱包した状態を示す斜視図
【図6】図5の背部からの斜視図
【符号の説明】
【0040】
1 梱包具
2 筒状包装体
2a シート状包装体
3 表地
4 裏地
5 芯材
6 ゴムひも
7A,7B ベルト保持部材
8A,8B ベルト
9A,9B Dリング
10 ネット
11 鉛直ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付設されている弾性部材により収縮可能に形成されており、外周面に複数のベルト保持部材が装着されている筒状包装体と、
前記筒状包装体の外周面に一部を固定されるとともに、前記ベルト保持部材に相対移動可能に保持されている上下に間隔をおいて配設された2本の水平ベルトと、
前記2本の水平ベルト間に張設されており、前記筒状包装体の少なくとも一部を被覆するネットと、
前記筒状包装体の外周面に一部を固定されるとともに、前記筒状包装体に包装されている物品の露出している底面を支持する鉛直ベルトと
を有することを特徴とする梱包具。
【請求項2】
前記筒状包装体は、キルティング加工されていることを特徴とする請求項1に記載の梱包具。
【請求項3】
前記各水平ベルトはそれぞれの長手方向中央部を前記筒状包装体に固定されており、個々の水平ベルトの両端部同士を介して個々のベルトごとに緊締されるように構成されている請求項1または請求項2に記載の梱包具。
【請求項4】
前記鉛直ベルトはその基端部を前記筒状包装体に固定されており、その先端部を介していずれかの前記水平ベルトに緊締されるように構成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の梱包具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−131261(P2006−131261A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322147(P2004−322147)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【Fターム(参考)】