説明

梱包容器および梱包体

【課題】ガラス板の積み込みや積み下ろしの作業性を向上した、梱包容器および梱包体を提供する。
【解決手段】ガラス板を横置きに複数枚積層保持する梱包容器である。ガラス板を支持する載置部4を有した容器本体6には、一端側が回動軸11に連結して固定端となり、他端側が回動端となる支持アーム12が設けられている。支持アーム12の回動端には係止めバー13が設けられている。係止めバー13は支持アーム12の回動動作に伴い、ガラス板の上面に当接する状態と、ガラス板の上面から容器本体6側に退避した状態との間で変位可能になっている。回動軸11には係止めバー13がガラス板の上面に当接する状態から容器本体6側に退避するときに付勢し、容器本体6側に退避した状態からガラス板の上面に当接するときに抵抗を与える主ダンパー機構20が付設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を横置きに複数枚積層保持する梱包容器および梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスシート等のシート材を複数枚積み重ねて横置きに保持するコンテナ(梱包容器)として、特許文献1に開示された構造のものが知られている。この特許文献1のコンテナでは、係止バーによってシート材の積み重ね体を保持するようにしている。また、このコンテナでは、係止ベルトや締め具等の機構により、係止バーをシート材に押しつけた状態に保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−298479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記のコンテナでは、係止ベルトや締め具等の機構によって係止バーを保持しているため、係止バーの取り外しや取り付け、すなわち係止バーによるシート材の保持やその解除が容易でなく、コンテナ(梱包容器)へのシート材の積み込みや積み下ろしの作業性を低下させる一因となっている。
【0005】
本発明は前記背景に鑑みてなされたもので、梱包容器へのガラス板の積み込みや積み下ろしの作業性を向上した、梱包容器および梱包体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の梱包容器は、ガラス板を横置きに複数枚積層保持する梱包容器であって、前記ガラス板の下面側を支持する載置部を有した容器本体を備え、前記容器本体には、一端側が回動軸に連結して固定端となり、他端側が回動端となる支持アームが設けられ、前記支持アームの回動端には係止めバーが設けられ、前記係止めバーは、前記支持アームの回動動作に伴い、積層保持したガラス板の最上位ガラス板の上面の縦または横方向に延びて該上面に当接する状態と、該最上位ガラス板の上面から前記容器本体側に退避した状態との間で変位可能に構成され、前記回動軸には、前記係止めバーが前記ガラス板の最上位ガラス板の上面に当接する状態から前記容器本体側に退避するときに付勢し、前記容器本体側に退避した状態から前記ガラス板の最上位ガラス板の上面に当接するときに抵抗を与える主ダンパー機構が付設されている。
【0007】
また、前記梱包容器において、前記回動軸には、前記係止めバーが前記ガラス板の最上位ガラス板の上面に当接する状態から前記容器本体側に退避するときに抵抗を与える副ダンパー機構が付設され、前記副ダンパー機構の付勢力は、前記主ダンパー機構の付勢力より弱く構成されているのが好ましい。
【0008】
また、前記梱包容器において、前記支持アームは、前記ガラス板の保持位置を挟んでその両側に一対設けられており、前記係止めバーは、前記一対の支持アームの回動端間に設けられているのが好ましい。
【0009】
また、前記梱包容器において、前記容器本体は、前記載置部と、該載置部を支持する基台部とを有してなり、前記載置部は、水平面に対して所定角度傾けられた状態で、前記基台部に支持されており、前記係止めバーは、前記載置部の傾斜する方向と直交する方向に延びて配置されているのが好ましい。
【0010】
本発明の梱包体は、前記梱包容器と、前記梱包容器の前記載置部上に、横置きに積層保持された複数枚のガラス板と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の梱包容器によれば、積層保持したガラス板の最上位ガラス板の上面に係止めバーを当接させることで、ガラス板を保持固定でき、また、その状態から係止めバーを容器本体側に退避させることで、ガラス板の保持を解除できる。したがって、単に係止めバーを変位させることでガラス板の保持やその解除を行うことができるため、ガラス板の積み込みや積み下ろしの作業性を向上できる。
また、回動軸に付設した主ダンパー機構により、係止めバーがガラス板の最上位ガラス板の上面に当接する状態から容器本体側に退避するときに付勢し、容器本体側に退避した状態からガラス板の最上位ガラス板の上面に当接するときに抵抗を与えるようにしているため、係止めバーを退避させるときには、主ダンパー機構に付勢されることによってその操作に要する力が少なくなり、操作性が向上する。また、係止めバーでガラス板を保持固定するときには、主ダンパー機構から抵抗が与えられることによって係止めバーが急激に変位することが抑えられ、係止めバーがガラス板に衝突することが防止される。
また、本発明の梱包体によれば、前記梱包容器の前記載置部上に、ガラス板が横置きに積層保持されているため、係止めバーによってガラス板が載置部上に確実に保持固定されたものとなる。また、ガラス板の積み込みや積み下ろしの際の作業性が向上したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の梱包容器の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図2】サイドエッジ案内部の概略構成を説明するための要部側面図である。
【図3】図1に示した梱包容器の、載置板を除いて基台部側を示した斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は主ダンパー機構の動作を説明するための模式図である。
【図5】(a)〜(c)は副ダンパー機構の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の梱包容器および梱包体の一実施形態について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は、本発明の梱包容器の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。図1中符号1は、ガラス板を保持固定し、搬送するための梱包容器であり、Gは梱包容器1に保持固定されたガラス板である。
【0014】
ガラス板Gとしては、たとえば液晶装置やEL装置、プラズマディスプレイ装置等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板が対象となる。具体的には、サイズが2500mm×2200mmで、厚さが0.7mm程度の矩形板状のガラス基板がガラス板Gとして用いられる。ただし、本発明は、このようなサイズのガラス板Gの保持固定に限定されることなく、種々のサイズや厚さのガラス板の保持固定にも適用できる。また、FPD用ガラス基板以外の、種々のガラス板も適用対象となる。
【0015】
梱包容器1は、ガラス板Gを横置きに複数枚積層保持するもので、基台部2と、該基台部2上に支持材3a、3b、3cを介して設けられた載置板(載置部)4と、基台2に設けられた積み重ね用支柱15と、からなる容器本体6を備えて構成されている。基台部2は、床や車の荷台等の略水平面上に置かれるもので、上下に配置された一対の矩形状の枠体2aと、該枠体2aの各枠間に設けられた補強材2bと、上下の枠体2aの各隅部間に設けられた支柱2cと、上下の枠体2aの中心部間に設けられた補強材2eとによって構成されている。このような構成のもとに基台部2は、上下の枠体2a、2a間の隙間2dがフォークリフトのフォーク部が入るフォーク挿入口として機能するようになっている。
支持材3aは、基台部2の補強材2b上に複数配置されている。同様に、支持材3b、3cも、基台部2の補強材2b上にそれぞれ複数配置されている。また、本実施形態では、支持材3a、3b、3cは互いに高さが異なって形成されており、支持材3aが最も低く、支持材3b、支持材3cの順に高くなっている。
【0016】
載置板4は、前記支持材3a、3b、3cを介して基台部2上に支持されている。したがって、該載置板4は、水平に配置される基台部2に対して、所定角度傾けられた状態に配置されている。つまり、載置板4は、水平面に対して所定角度傾けられた状態で、基台部2に支持されている。水平面に対する傾斜角としては、特に限定されないものの、たとえば3°〜15°程度とされる。このように傾斜させておくことで、この載置板4上にガラス板Gを複数枚保持した際、ガラス板Gの荷重(自重)が傾斜する方向にかかることにより、その姿勢が安定する。すなわち、積層されたガラス板Gはその間で滑り易いため、姿勢が安定し難いものの、載置板4を傾斜させて一方の側に荷重がかかるようにすることで、傾斜方向での滑動を抑えることができる。
【0017】
また、図示しないものの、載置板4にはその上面側に緩衝材が設けられている。緩衝材は、エチレン・プロピレン・ポリマー(EPP)、高密度エチレン酢酸ビニル・ポリマー(EVA)、エチレン・プロピレン・ジエンポリメチレン・エラストマー(EPDM)等のゴム、発泡材、スポンジゴム、または弾性を有するポリマー材料から形成することができる。このような材料からなることで、緩衝材は、ガラス板Gの取扱い時に載置板4上でガラス板Gが水平方向に滑動しないように、その上に載せられたガラス板Gに対して十分な摩擦力を付与するようになっている。
【0018】
積み重ね用支柱15は、基台2の上側の枠体2aの四隅にそれぞれ設けられており、高さが全て同じに形成されている。これら積み重ね用支柱15には、その上端面に円柱状、角柱状、円錐状、角錐状等の嵌合突部15aが形成されている。嵌合突部15aは、基台2の前記支柱2cの底面に形成された嵌合凹部(図示せず。)に嵌合するようになっている。このような構成によって梱包容器1は、複数を積み重ねることが可能になっている。すなわち、下側の梱包容器1の積み重ね用支柱15上に上側の梱包容器1の支柱2cを位置合わせし、互いの嵌合突部15aと嵌合凹部とを嵌合することにより、横ずれすることなく梱包容器1を上下に積み重ねることができるようになっている。
【0019】
基台2の一方の側には、トップエッジ案内板5が設けられている。トップエッジ案内板5は、傾斜させられた載置板4の高い側に配置された板状のもので、積み重ね用支柱15間に設けられた桟材5aに対して、例えばボルトや、ロックピン、グリップ、さらには公知の締結具によって着脱可能、かつ位置調整可能に取り付けられている。このような構成により、後述するように載置板4上に積層支持されるガラス板Gは、その上側の端縁(トップエッジ)がトップエッジ案内板5によって規制され、載置板4上に保持されるようになっている。このトップエッジ案内板5の内側の面、すなわち載置板4側の面にも、図示しないものの、前記緩衝材と同様の緩衝材が設けられている。なお、トップエッジ案内板5については、本実施形態では桟材5aの長さ方向に3つ設けているが、その数や大きさは任意であり、梱包容器1の大きさ等に応じて適宜に決定される。また、本実施形態ではトップエッジ案内板5を桟材5aに取り付けるようにしたが、載置板4や該載置板4を支持する支持材(図示せず。)等に取り付けるようにしてもよい。
【0020】
また、基台部2の枠体2aには、前記トップエッジ案内板5と反対の側、すなわち傾斜させられた載置板4の低い側に、複数のボトムエッジ案内板7が上方に延びて立てられて設けられている。該ボトムエッジ案内板7は、ガラス板Gを載置板4上に載せるときにガラス板Gの下側の端縁(ボトムエッジ)を案内するようになっている。また、ガラス板Gを積んだ梱包容器1の取扱い時や搬送時には、ガラス板Gの下側の端縁を支持するようになっている。このような構成のもとにボトムエッジ案内板7は、傾斜した載置板4と協働して、載置板4およびボトムエッジ案内板7に対してガラス板Gを下方へ引き寄せる重力の作用により、ガラス板Gを梱包容器1上に保持固定する。なお、このボトムエッジ案内板7の内側の面、すなわち載置板4側の面にも、図示しないものの、前記緩衝材と同様の緩衝材が設けられている。
【0021】
基台部2の上側の枠体2aには、載置板4の左右両側、すなわちトップエッジ案内板5やボトムエッジ案内板7が配置された辺と異なる辺に、それぞれサイドエッジ案内部8が設けられている。サイドエッジ案内部8は、図2に示すように枠体2a上に設けられた収容部9と、該収容部9内に出し入れ可能に収容される案内板10とを備えて構成されている。収容部9は、上部に開口を形成した四角筒状のもので、枠体2a上に配置されることでその底部を閉塞している。また、この収容部9の外側面にはボルト挿通用の雌ねじ孔(図示せず)が形成されている。なお、前記トップエッジ案内板5の構造に、このサイドエッジ案内部8の構造を適用しても何ら問題はない。
【0022】
案内板10は、側面視L状(逆L状)のもので、一端側10aが収容部9内に出し入れ可能に収容され、他端側10bが載置板4側に折曲することで、載置板4上に積層されたガラス板Gの浮き上がりを防止するようになっている。すなわち、該案内板10は、収容部9内に収容された後、ボルト9aが前記雌ねじ孔に螺合させられることにより、収容部9内の適宜位置に固定されるようになっている。したがって、前記他端側10bが、載置板4上に積層されたガラス板Gの最上位ガラス板Gに当接し、またはその上面より少し高い位置になるように、収容部9内への一端側10aの固定位置を決めることにより、搬送中等にガラス板Gが大きく浮き上がってしまうのを他端側10bで抑えることができる。
【0023】
なお、このようなサイドエッジ案内部8の構成については、図2に示した例に限ることなく、種々の構成が採用可能である。たとえば、ボルト9aを用いることなく、案内板10を単に収容部9に収容するだけで、他端側10bが適宜高さとなるように設計しておいてもよい。ただし、その場合には、ガラス板Gの浮き上がり防止効果を得るうえで、案内板10の重さを充分な重さにしておくか、またはボルト以外の適宜なロック機構を設ける必要がある。また、収容部9を設けることなく、案内板10を枠体2aや載置板4等にボルト等で直接取り付け、固定するようにしてもよい。
【0024】
また、容器本体6には、図1に示した梱包容器1から載置板4を除いて基台部2側を示した図3に示すように、枠体2aと載置板4との間に金属棒状の回動軸11が設けられている。回動軸11は、図3中二点鎖線で示す載置板4の左右方向(載置板4が傾斜する方向と直交する方向)に延びて配置され、左右それぞれにおいて載置板4よりわずかに延出して設けられている。また、該回動軸11は、支持材3aに取り付けられた軸受け(図示せず)に回動可能に支持されており、容器本体6に対してその位置が固定されて配置されている。
【0025】
固定軸11には、その両端部にそれぞれ、支持アーム12の一端側が連結されている。これら一対の支持アーム12は、細長い板状のもので、一端側が回動軸11に連結されて固定端12aとされ、他端側が前記回動軸11を軸にして回動する回動端12bとなっている。該支持アーム12は、図1に示すように載置板4の左右両側において、それぞれの回動端12bが載置板4上に積層保持されるガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面より高い位置となるように、その長さが決められている。
【0026】
一対の支持アーム12間には、それぞれの回動端12b間に係止めバー13が回動可能に連結されている。係止めバー13は、載置板4の左右方向の幅より長く形成された金属棒状の支軸13aと、該支軸13aに巻装された緩衝材からなる保持材13bとによって構成されている。保持材13bを形成する緩衝材としては、前述した、載置板4の上面側に設けられる緩衝材と同様の材質のものが用いられる。
【0027】
このような構成によって係止めバー13は、回動軸11を軸とする一対の支持アーム12の回動動作に伴い、図1中実線で示すように 積層保持したガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面の横方向(左右方向)に延びて該上面に当接する状態と、図1中二点鎖線で示すように該最上位ガラス板Gの上面から容器本体6側に退避した状態との間で、図1中矢印で示すように変位可能になっている。なお、前記ボトムエッジ案内板7や積み重ね用支柱15は、このような係止めバー13の回動動作を妨げないような高さや位置に形成されている。
【0028】
また、回動軸11には、図3に示すように主ダンパー機構20と副ダンパー機構30とがそれぞれ付設されている。主ダンパー機構20は、図4(a)〜(c)に示すように回動軸11に固定された状態で連結された矩形板状の回動片21と、回動片21に対して回動可能に連結されたダンパー22とからなっている。回動片21は、その長辺の長さ方向が、回動軸11に連結された支持アーム12の長さ方向と所定角度、本実施形態では略直角となるように、回動軸11に固定されている。回動軸11に対する回動片21の固定は、ピン結合や溶接等によってなされている。
【0029】
ダンパー22は、シリンダー23とロッド24とを有する油圧式、空圧式またはバネ式等のもので、図4(a)〜(c)中に矢印で示すように、シリンダー23に対してロッド24を伸長させる方向に付勢するものである。また、ダンパー22は、ロッド24の先端部が前記回動片21に回動可能に軸支されており、シリンダー23の後端部23aが図3に示したように、補強枠2bに設けられた取付部材2cに回動可能に固定されている。
【0030】
このような構成によって主ダンパー機構20は、図4(a)〜(c)に示すように、回動軸11の位置とシリンダー23の後端部23aの位置とが固定されていることにより、これらの間の距離が常に一定になっている。また、回動軸11、回動片21とロッド24との連結部、およびシリンダー23の後端部23aでそれぞれ回動可能になっている。
【0031】
また、副ダンパー機構30は、図5(a)〜(c)に示すように回動軸11に固定された状態で連結された矩形板状の回動片31と、回動片31に対して回動可能に連結されたダンパー32とからなっている。なお、副ダンパー機構30は、主ダンパー機構20と同様に回動軸11に固定されているが、図3に示すように回動軸11の長さ方向において異なる位置に固定されている。回動片31は、その長辺の長さ方向が、回動軸11に連結された支持アーム12の長さ方向にほぼ一致するようにして、回動軸11に固定されている。回動軸11に対する回動片31の固定は、ピン結合や溶接等によってなされている。
【0032】
ダンパー32は、主ダンパー機構20のダンパー22と同様に、シリンダー33とロッド34とを有する油圧式、空圧式またはバネ式等のもので、図5(a)〜(c)中に矢印で示すように、シリンダー33に対してロッド34を伸長させる方向に付勢するものである。ただし、このダンパー32の付勢力は、主ダンパー機構20のダンパー22の付勢力に比べ、充分に弱く(小さく)形成されている。
【0033】
また、ダンパー32は、ロッド34の先端部が前記回動片31に回動可能に軸支されており、シリンダー33の後端部33aが図3に示したように、枠体2aに設けられた補強枠(図示せず)等に回動可能に固定されている。なお、該ダンパー32の後端部33aの固定位置(取付位置)は、主ダンパー機構20のダンパー22の後端部23aの固定位置(取付位置)と同じ部材(補強材2b)上であってもよく、異なる部材上であってもよい。
【0034】
すなわち、図4(a)〜(c)に示すダンパー22の後端部23aの位置と、図5(a)〜(c)に示すダンパー32の後端部33aの位置とは、側面視して同じ位置であってもよく、異なっていてもよい。同じ位置にした場合には、ダンパー22とダンパー32とを異なる種類のもとすることで、その付勢力に強弱をつけることができる。また、異なる位置にした場合には、ダンパー22とダンパー32との長さを異ならせること等で、その付勢力に強弱をつけることができる。
【0035】
また、本実施形態では、図1中二点鎖線で示すように、必要に応じて締付ベルト40を設けることができる。締付ベルト40は、たとえば容器本体6の支柱5a、5a間またはトップエッジ案内板5側の桟材5b上と、ボトムエッジ案内部7、7間との間に掛け渡されて、載置板4上に積層されたガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面を保持固定するようになっている。このような締付ベルト40としては、たとえば車のシートベルトのように、プリテンショナー機構を備えた公知の構成のものが使用可能である。
【0036】
なお、前記基台部2や載置板4、トップエッジ案内板5、ボトムエッジ案内板7等については、梱包容器1が強く、軽量で耐久力がありかつ再使用が可能なように、スチールやアルミニウム等の金属、またはポリマーとガラス繊維、炭素繊維等との複合材、またはその他の耐久力のあるポリマーで形成されている。
【0037】
次に、主ダンパー機構20および副ダンパー機構30の動作について説明する。
図1中実線で示したように、係止めバー13を載置板4上に積層されたガラス板G上に倒し、ガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に当接させている状態では、図4(a)に示すように主ダンパー機構20は、ダンパー22の付勢力が回転軸11を矢印A方向に回動させるよう作用する。その結果、係止めバー13は最上位ガラス板Gの上面を所定の付勢力Mで軽く押圧し、積層されたガラス板Gを保持固定する。
【0038】
また、その状態から、図1中二点鎖線で示すように係止めバー13を手動で持ち上げて回動させ、最上位ガラス板Gの上面から容器本体6側に退避させると、図4(b)に示すように所定角度までは、ダンパー22の付勢力が回動軸11に対して矢印A方向に働くことで、係止めバー13の回動操作(退避操作)に対して抵抗を与える。しかし、その後は、図4(c)に示すようにダンパー22の付勢力が回転軸11を矢印B方向に回動させるように作用する。すなわち、ダンパー22は回転軸11を矢印B方向に回動させるように付勢する。その結果、係止めバー13はダンパー20に付勢されてその回動が半自動的に円滑に進み、容器本体6側に退避する。
【0039】
係止めバー13の回動動作に対して、ダンパー22が矢印A方向に付勢する状態から矢印B方向に付勢する状態に切り換わる点は、ダンパー22のロッド24の長さ方向と、回動片21の長辺の長さ方向とがほぼ一致する点である。したがって、図4(a)〜(c)に示した例では、ロッド24と回動片21との間の連結部が、図4(a)に示すように下に凸になっているときにはダンパー22の付勢力は矢印A方向に働き、図4(c)に示すように上に凸になっているときには、ダンパー22の付勢力は矢印B方向に働く。
【0040】
また、図4(c)に示したように係止めバー13を容器本体6側に退避させた状態から、積層されたガラス板Gを保持固定する場合には、前記の操作とは逆に、係止めバー13を図1中の二点鎖線で示した状態から、図1中実線で示した状態に回動する。すると、回動初期では、図4(c)に示したように回動方向とは逆にダンパー22の付勢力が作用するものの、その後前記した切り換わる点を過ぎると、回動方向に付勢力が作用するため、係止めバー13の回動が半自動的に円滑に進み、最上位ガラス板Gの上面に当接してこれを押圧し、積層されたガラス板Gを保持固定するようになる。その際、特に回動初期においてはダンパー22の付勢力が回動方向と逆に作用し、したがってダンパー22は回動軸11に対して抵抗を与えるように作用するため、係止めバー13が急激に回動(変位)することが抑えられる。
【0041】
ただし、図1中二点鎖線で示したように係止めバー13を回動して容器本体6側に退避させた際、必要以上に強い力で係止めバー13を回動させてしまうと、ダンパー22の付勢力が加わることで係止めバー13が急激に回動(変位)してしまい、周辺部の物を損壊するなど不測の事態を招くおそれがある。
【0042】
そこで、本実施形態では、副ダンパー機構30を付設したことで、このようなおそれも回避している。
副ダンパー機構30は、図1中実線で示したように、係止めバー13を載置板4上に積層されたガラス板G上に倒し、ガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に当接させている状態では、図5(a)に示すようシリンダー33に対してロッド34が伸びきった状態となり、したがって付勢力が零(ゼロ)となっている。よって、図4(a)およびこれに対応する図5(a)に示す状態では、主ダンパー機構20による付勢力Mのみが作用し、係止めバー13はこの付勢力Mによって積層されたガラス板Gを保持固定する。
【0043】
また、その状態から、図1中二点鎖線で示すように係止めバー13を手動で持ち上げて回動させ、最上位ガラス板Gの上面から容器本体6側に退避させると、図5(b)、(c)に示すようにシリンダー33に対してロッド34が徐々に押し入れられることで、ダンパー32は図5中に矢印で示す付勢力Sを除々に強めていく。すなわち、ダンパー32は回動軸11を矢印A方向に付勢するようになる。したがって、特に図5(c)に示すように係止めバー13が容器本体6側に退避する際には、副ダンパー機構30による矢印A方向の付勢力Sは、図4(c)に示した主ダンパー機構20による矢印B方向の付勢力とは逆の方向に作用するようになる。
【0044】
ただし、前述したように副ダンパー機構30のダンパー32の付勢力は、主ダンパー機構20のダンパー22の付勢力に比べて充分に弱く(小さく)形成されているので、図4(b)、図5(b)に示す状態から図4(c)、図5(c)に示す状態に至る過程において、係止めバー13は主ダンパー機構20と副ダンパー機構30とを合わせた合計の付勢力によって回動方向に付勢され、その回動が円滑に進むようになる。
すなわち、図5(b)、(c)に主ダンパー機構20による付勢力Mを矢印で示すと、この付勢力Mは副ダンパー機構30の付勢力Sより大きくなっている。したがって、係止めバー13を容器本体6側に退避させた際には、特にその後半において、係止めバー13の勢いが副ダンパー機構30によって減じられるものの、主ダンパー機構20による回動方向への付勢力は残っているため、係止めバー13の回動は進むようになる。
【0045】
よって、係止めバー13を最上位ガラス板Gの上面から容器本体6側に退避させた際、たとえ必要以上に強い力で係止めバー13を回動させてしまっても、主ダンパー機構20のダンパー22による付勢力が副ダンパー機構30のダンパー32による付勢力によって弱められているため、係止めバー13が急激に回動(変位)してしまい、周辺部の物を損壊するなどの不測の事態を回避することができる。
【0046】
次に、このような梱包容器1に対するガラス板Gの積み込みおよび梱包について説明する。
まず、サイドエッジ案内部8について、その収容部9から案内板10を取り外しておく。また、係止めバー13を図1中の二点鎖線で示すように容器本体6側に退避させておく。その際、前述したように主ダンパー機構20のダンパー22による付勢力が副ダンパー機構30のダンパー32による付勢力によって弱められているため、係止めバー13が急激に回動(変位)してしまうことが回避される。
そして、その状態のもとで搬送アーム(図示せず)等によりガラス板Gを載置板4上に順次積み重ねていく。所定枚数のガラス板Gの積み込みが終了したら、必要に応じてシート等を被せる。
【0047】
次に、サイドエッジ案内部8の収容部9に案内板10を差し入れ、図2に示すように他端側10bがガラス基板Gの最上位ガラス基板Gの上面より少し高い位置となるように、案内板10を位置決めし、ボルト9aで固定する。
また、図1中二点鎖線で示すように締付ベルト40を備えている場合には、車のシートベルトと同様の操作により、積層したガラス板Gの最上位ガラス基板Gの上面を該締付ベルト40で締め付け、ガラス板Gを載置板4上に保持固定する。
【0048】
その後、容器本体6側に退避させていた係止めバー13を、手動によって図1中実線で示すように回動し、積層したガラス板Gの最上位ガラス基板Gの上面に当接させる。その際、係止めバー13は主ダンパー機構20によって途中までは抵抗が与えられるものの、その後は付勢力が与えられるため、操作が容易になる。
これにより、図1中実線で示したように、係止めバー13によって積層したガラス板Gの最上位ガラス基板Gの上面を主ダンパー機構20の付勢力で押圧し、積層したガラス板G全体を載置板4上に保持固定できる。
また、このようにガラス板Gを載置板4上に保持固定することで、本発明の梱包体の一実施形態が得られる。
【0049】
このようにしてガラス板Gを積み込んだ梱包体からガラス板Gを積み下ろすには、まず、係止めバー13を手動によって図1中の二点鎖線で示すように回動し、容器本体6側に退避させる。その際、主ダンパー機構20のダンパー22による付勢力が副ダンパー機構30のダンパー32による付勢力によって弱められているため、係止めバー13が急激に回動(変位)してしまうことが回避される。
次いで、サイドエッジ案内部8の案内板10を収容部9から取り外すとともに、締付ベルトも車のシートベルトと同様の操作によって外し、ガラス板Gの保持固定を解除する。
その後、搬送アーム(図示せず)等によってガラス板Gを載置板4上から順次積み下ろす。
【0050】
このような構成の梱包容器1にあっては、積層保持したガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に係止めバー13を当接させることで、ガラス板G全体を保持固定でき、また、その状態から係止めバー13を容器本体6側に退避させることで、ガラス板Gの保持を解除できる。したがって、単に係止めバー13を変位させることでガラス板Gの保持やその解除を行うことができるため、ガラス板Gの積み込みや積み下ろしの作業性を向上できる。
また、回動軸11に付設した主ダンパー機構20により、係止めバー13がガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に当接する状態から容器本体側に退避するときに付勢し、容器本体6側に退避した状態からガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に当接するときに抵抗を与えるようにしているため、係止めバー13を退避させるときには、主ダンパー機構20に付勢されることによってその操作に要する力が少なくなり、操作性が向上する。また、係止めバー13でガラス板Gを保持固定するときには、主ダンパー機構20から抵抗が与えられることによって係止めバー13が急激に変位することが抑えられ、係止めバー13がガラス板Gに衝突することが防止される。
【0051】
また、回動軸11に、係止めバー13がガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に当接する状態から容器本体6側に退避するときに抵抗を与える副ダンパー機構30を付設し、副ダンパー機構30の付勢力を、主ダンパー機構20の付勢力より弱く構成しているため、係止めバー13を最上位ガラス板Gの上面から容器本体6側に退避させた際、たとえ必要以上に強い力で係止めバー13を回動させてしまっても、主ダンパー機構20のダンパー22による付勢力を副ダンパー機構30のダンパー32による付勢力によって弱めているため、係止めバー13が急激に回動(変位)してしまい、周辺部の物を損壊するなどの不測の事態を回避することができる。
【0052】
また、支持アーム12を、ガラス板Gの保持位置となる載置板4を挟んでその両側に一対設け、係止めバー13を、一対の支持アーム12の回動端12b間に設けているので、係止めバー13が一対の支持アーム12間に安定して保持され、したがってその回動操作を安定して行うことができる。
【0053】
また、容器本体6が、載置板(載置部)4と、該載置板4を支持する基台部2とを有してなり、載置板4が、水平面に対して所定角度傾けられた状態で基台部2に支持されているため、載置板4上にガラス板Gを安定して保持することができる。さらに、係止めバー13を、載置部4の傾斜する方向と直交する方向に延びるように配置しているため、係止めバー13全体をガラス板Gに当接させることができる。
【0054】
また、前記梱包体にあっては、前記梱包容器1の載置板4上に、ガラス板Gが横置きに積層保持されているため、係止めバー13によってガラス板Gが載置板4上に確実に保持固定されたものとなる。また、ガラス板Gの積み込みや積み下ろしの際の作業性が向上したものとなる。
【0055】
本発明は、前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
たとえば、前記実施形態では係止めバー13を一対の支持アーム12間に設けたが、支持アーム12については一対設けることなく一つのみとし、係止めバー13については一つの支持アーム12によって片持ち状に保持するようにしてもよい。
また、前記実施形態では載置板4を水平面に対して所定角度傾けた状態で基台部2に支持させているが、載置板4を傾斜させることなく、水平に配置してもよい。
【0056】
また、主ダンパー機構20や副ダンパー機構30についても、前記実施形態の構成に限定されることなく種々の構成が採用可能である。
すなわち、図4(a)〜(c)に示した主ダンパー機構20では、支持アーム12の回動に伴って付勢する方向が途中で反転するように構成したが、本発明はこれに限定されることなく、単に係止めバー13がガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に当接する状態から容器本体6側に退避するときに付勢し、容器本体6側に退避した状態からガラス板Gの最上位ガラス板Gの上面に当接するときに抵抗を与えることができれば、付勢する方向を途中で反転させなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の梱包容器および梱包体によれば、ガラス板の積み込みや積み下ろしの作業性を向上した、優れた梱包容器および梱包体を提供できる。
【符号の説明】
【0058】
1…梱包容器、2…基台部、4…載置板(載置部)、6…容器本体、11…回動軸、12…支持アーム、12a…固定端、12b…回動端、13…係止めバー、20…主ダンパー機構、30…副ダンパー機構、G…ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板を横置きに複数枚積層保持する梱包容器であって、
前記ガラス板の下面側を支持する載置部を有した容器本体を備え、
前記容器本体には、一端側が回動軸に連結して固定端となり、他端側が回動端となる支持アームが設けられ、
前記支持アームの回動端には係止めバーが設けられ、
前記係止めバーは、前記支持アームの回動動作に伴い、積層保持したガラス板の最上位ガラス板の上面の縦または横方向に延びて該上面に当接する状態と、該最上位ガラス板の上面から前記容器本体側に退避した状態との間で変位可能に構成され、
前記回動軸には、前記係止めバーが前記ガラス板の最上位ガラス板の上面に当接する状態から前記容器本体側に退避するときに付勢し、前記容器本体側に退避した状態から前記ガラス板の最上位ガラス板の上面に当接するときに抵抗を与える主ダンパー機構が付設されていることを特徴とする梱包容器。
【請求項2】
前記回動軸には、前記係止めバーが前記ガラス板の最上位ガラス板の上面に当接する状態から前記容器本体側に退避するときに抵抗を与える副ダンパー機構が付設され、
前記副ダンパー機構の付勢力は、前記主ダンパー機構の付勢力より弱く構成されている請求項1に記載の梱包容器。
【請求項3】
前記支持アームは、前記ガラス板の保持位置を挟んでその両側に一対設けられており、
前記係止めバーは、前記一対の支持アームの回動端間に設けられている請求項1または2に記載の梱包容器。
【請求項4】
前記容器本体は、前記載置部と、該載置部を支持する基台部とを有してなり、
前記載置部は、水平面に対して所定角度傾けられた状態で、前記基台部に支持されており、
前記係止めバーは、前記載置部の傾斜する方向と直交する方向に延びて配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の梱包容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の梱包容器と、
前記梱包容器の前記載置部上に、横置きに積層保持された複数枚のガラス板と、を備えることを特徴とする梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131549(P2012−131549A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286567(P2010−286567)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】