説明

梳き鋏

【課題】櫛刃の前方だけで毛髪を切断する梳き鋏を提供すること。
【解決手段】交叉箇所で回動自在に枢着される2つの鋏片の少なくとも一方に櫛刃が形成される梳き鋏であって、櫛刃31は、前方のカット部32と、後方の非カット部35とで構成され、前記カット部32の櫛刃31の先端は毛髪を捕捉する捕捉部33が形成され、前記非カット部35の櫛刃31の先端は毛髪を捕捉することなく櫛刃31間へと導く誘導部36が形成されてなることを特徴とする梳き鋏60。非カット部35の櫛刃31間の間隔W2をカット部32の櫛刃31間の間隔W1より広く形成してもよい。誘導部36を後方から前方に向け次第に下る傾斜面としてもよい。櫛刃31の非カット部35が摺動する他方の鋏片10の対向位置を刃付けしないこととしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの鋏片の少なくとも一方に櫛刃が形成される梳き鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
理容師や美容師が毛髪を梳く場合、通常、櫛刃が形成された梳き鋏を使用する。梳き鋏は、櫛刃の先端で毛髪を捕捉し、対向する鋏片とで挟んだ毛髪を切断するもので、従来から多くの提案がある。例えば、刃体に多数の櫛溝が切り込まれて櫛歯が並設形成された櫛刃と、棒刃とを枢着させた梳鋏であって、前記棒刃を閉じた時には前記棒刃に覆われることのない櫛歯基端付近の櫛刃裏面、が凹設されたことを特徴とする梳鋏(特許文献1参照)や一端側に指孔部を設け、他方側に切り刃体を設けた二本の鋏部材で構成し、両鋏部材を交叉させると共に交叉部を枢結し、一方の鋏部材の切り刃体を櫛歯形状とした理容用梳き鋏において、櫛歯間隙を刃線に対して直角より刃元側に後退傾斜させた直線溝に形成してなることを特徴とする理容用梳き鋏(特許文献2参照)がある。
【0003】
ところで、梳き鋏による毛髪を梳く作業は、櫛刃の前方を使用して毛髪を切断することにより、梳き具合などのより細やかな調整が可能となり、使用者の技量も発揮しやすい。 また、一回毎の切断量が多いと梳き鋏の鋏片を閉じる操作が重くなり、使用者に大きな負担となる一方、一回の切断量を少なくし、切断の回数を多くすれば毛髪を梳く作業の細かな調整が可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−143528号公報
【特許文献2】特開2004−154303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の梳き鋏は、櫛刃の全体で毛髪を切断する構成であったため、毛髪を櫛刃の前方のみで切断しようとしても、櫛刃の後方で切断を望まない毛髪までもが切断されてしまうことがあった。そのため、櫛刃の前方のみを使用して梳き具合などの細やかな調整をしながら毛髪を梳く作業を進め難いということがあった。また、櫛刃の全体で毛髪を切断するため、切断量が多く、梳き鋏の鋏片を閉じる操作が重くなって使用者に負担が掛かることがあった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、櫛刃の前方だけで毛髪を切断する梳き鋏を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する発明は、交叉箇所で回動自在に枢着される2つの鋏片の少なくとも一方に櫛刃が形成される梳き鋏であって、櫛刃は、前方のカット部と、後方の非カット部とで構成され、前記カット部の櫛刃の先端は毛髪を捕捉する捕捉部が形成され、前記非カット部の櫛刃の先端は毛髪を捕捉することなく櫛刃間へと導く誘導部が形成されてなることを特徴とする梳き鋏を要旨とする。この構成の発明によれば、櫛刃の前方のカット部では捕捉部に捕捉された毛髪のみが切断され、櫛刃の後方の非カット部では毛髪が櫛刃間に導かれ切断されない。
【0008】
上記の発明において、非カット部の櫛刃間の間隔をカット部の櫛刃間の間隔より広く形成してもよい。これにより、毛髪は櫛刃の後方で櫛刃間に入り易くなる。また、誘導部を後方から前方に向け次第に下る傾斜面としてもよい。これにより、毛髪を前方の櫛刃間に確実に導くことができる。また、櫛刃の非カット部が摺動する他方の鋏片の対向位置に刃付けがなされないようにしてもよい。これにより、非カット部で毛髪は確実に切断されない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の梳き鋏は、櫛刃の前方だけで毛髪を切断する構成であるため、使用者の目的とする毛髪にみを切断でき、毛髪を梳く作業を細やかに調整することで使用者の所望のスタイルに仕上げることが容易である。また、櫛刃の前方だけで毛髪を切断するため、梳き鋏の鋏片を閉じる操作が楽に行え、使い勝手に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面を参照しながら実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る梳き鋏の正面図で、図2は櫛刃が形成される鋏片の部分拡大図である。
【0011】
本実施形態に係る梳き鋏60は、図1に示すように、2つの鋏片10、30から構成される。2つの鋏片10、30は、交叉箇所40で回動自在に枢着される。一方の鋏片10は、交叉箇所40の前方に棒刃11が形成され、後方に把持部15が形成されている。棒刃11の先端は、刃付けされている。
【0012】
他方の鋏片30は、交叉箇所40の前方に櫛刃31が形成され、後方に把持部37が形成されている。また、図2に示すように、櫛刃31の前方は、先端がV字状溝からなる捕捉部33を有するカット部32が形成されている。捕捉部33は、刃付けされている。また、櫛刃31の後方は、先端が後方から前方に向け次第に下る傾斜面からなる誘導部36を有する非カット部35が形成されている。誘導部36は、刃付けされていない。また、非カット部35の櫛刃31間の間隔W2は、カット部32の櫛刃31間の間隔W1より広く形成されている。
【0013】
次いで、上記のように構成される梳き鋏60の作用及び効果について説明する。2つの鋏片10、30を開き、切断しようとする毛髪をこの間に入れる。カット部32では、捕捉部33内に毛髪が捕捉される。また、非カット部35では、櫛刃31間の間隔がカット部32の櫛刃31間の間隔より広く形成されているので、毛髪の多くは櫛刃31間に入る。非カット部35の櫛刃31の先端には、後方から前方に向け次第に下る傾斜面からなる誘導部36が形成されているので、誘導部36に接する毛髪は櫛刃31に捕捉されることなく、櫛刃31間へと誘導される。そして、鋏片10、30を閉じると、捕捉部33内に捕捉された毛髪は、対向する鋏片10との間に挟まれ、切断される。一方、非カット部35内の毛髪は、鋏片10、30を閉じたときの両者間の隙間(図示なし)に入り、切断されない。このように、本実施形態に係る梳き鋏60は、毛髪を櫛刃31の前方のみで切断できる。
【0014】
本発明は、その技術的範囲に含まれる限り、種々形態を変更して実施できるので、以下に例示する。
(1)捕捉部は、上記の実施の形態に制限されず、毛髪を捕捉できる限りどのような形態でもよく、例えば、U字状溝、平坦状、半円形溝などを採用できる。
(2)誘導部は、上記の実施の形態に制限されず、毛髪を捕捉することなく櫛刃間に導くことができる限りどのような形態でもよく、例えば、前方と後方にそれぞれ下る傾斜面からなる誘導部でもよい。
(3)カット部の櫛刃に刃付けしない構成としてもよい。
(4)梳き鋏は、2つの鋏片に互いに噛み合う櫛刃が形成される構成でもよい。
(5)櫛刃の非カット部が摺動する他方の鋏片の対向位置に刃付けをしない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る梳き鋏の正面図である。
【図2】本実施形態に係る梳き鋏の櫛刃が形成された鋏片の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0016】
10、30 鋏片
11 棒刃
31 櫛刃
32 カット部
33 捕捉部
35 非カット部
36 誘導部
60 梳き鋏

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交叉箇所で回動自在に枢着される2つの鋏片の少なくとも一方に櫛刃が形成される梳き鋏であって、櫛刃は、前方のカット部と、後方の非カット部とで構成され、前記カット部の櫛刃の先端は毛髪を捕捉する捕捉部が形成され、前記非カット部の櫛刃の先端は毛髪を捕捉することなく櫛刃間へと導く誘導部が形成されてなることを特徴とする梳き鋏。
【請求項2】
非カット部の櫛刃間の間隔がカット部の櫛刃間の間隔より広く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の梳き鋏。
【請求項3】
誘導部は、後方から前方に向け次第に下る傾斜面であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梳き鋏。
【請求項4】
櫛刃の非カット部が摺動する他方の鋏片の対向位置に刃付けがなされていないことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の梳き鋏。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−160016(P2007−160016A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364114(P2005−364114)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(505399029)
【Fターム(参考)】