説明

棒材の搬送装置

【課題】搬送転換機の設置場所の制約をあまり受けずに、棒材の進行を停止させることなく搬送方向を転換でき、棒材の搬送を円滑に行える棒材の搬送装置を低コストで提供する。
【解決手段】搬送方向転換機4として、一定の角速度で回転するターンテーブル9と、上流側の直線コンベア機2の直線ガイド7a、7bに接続する外側および内側の方向転換ガイド13、14とを備え、搬送された棒材1を、上流側の直線コンベア機2とは異なる方向の出口に案内するものを用いる。方向転換ガイド13、14の形状を工夫するとともに、上流側の直線コンベア機2と下流側の直線コンベア機3の各軸方向中心線の配置をターンテーブル9の中心軸に対して適切に設定し、棒材の直線コンベア機2からターンテーブル9への移行を円滑にするとともに、搬送速度を変化させることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物である棒材を、搬送方向を変えながら搬送するための搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設資材や機械部品として使用される丸棒や角棒などの棒材の製造工場において、製造途中または製造完了後の棒材を搬送するための搬送装置を設置する場合、搬送元と搬送先との位置関係によっては、搬送経路を単純に一直線にすることができず、途中に搬送方向の転換手段を設けなければならない場合がある。
【0003】
かかる搬送方向の転換手段として、従来、間欠回転式のターンテーブルを備えた搬送方向転換機(たとえば、特許文献1参照)、ローラ式の曲線コンベア機(たとえば、特許文献2参照)、ベルト式の曲線コンベア機(たとえば、特許文献3参照)などが使用されている。
【0004】
しかしながら、間欠回転式のターンテーブルを備えた搬送方向転換機を使用する場合には、搬送方向の転換時に搬送物の進行が一旦停止するため、搬送の円滑化を図りにくい。これに対して、ローラ式やベルト式の曲線コンベア機を使用する場合には、搬送物の進行を停止させずに搬送方向の転換を行えるため、搬送の円滑化を図りやすい。ただし、ローラ式やベルト式の曲線コンベア機は、部品点数が多く、複雑な構造を有しているため、高価になりやすい。
【0005】
一方、搬送方向の転換手段として、シュートと呼ばれる、重力を利用して搬送物を滑りおろす傾斜面を有するものを使用すれば、ローラ式やベルト式の曲線コンベア機を使用する場合と同様、搬送物の進行を停止させずに搬送方向の転換を行えるため、搬送の円滑化を図りやすい。しかも、前記シュートは、シンプルな構造を有するため、安価に製造できる。
【0006】
しかしながら、転換手段としてシュートを使用する場合には、搬送方向の転換部分が落差および幅が大きい傾斜部になる。このため、設置箇所の都合により、このような傾斜部を設けることができない場合には、シュートを用いた転換手段を使用することができない。
【0007】
これに対して、棒材の搬送とは異なるが、2本のコンベア間に、円盤および該円盤の上を搬送物が通過するために必要なガイドを設けた搬送方向変換装置が提案されている(特許文献4参照)。この装置は、臨床化学検査装置の検体容器の搬送にかかるものであるが、両側に平行に配置された直線ガイドを伴うコンベアで移送されてきた搬送物は、直線ガイドに接続する曲線ガイドに当接し、方向変換して、回転円盤状に乗り上げ、その後、方向変換後のコンベアの引き込み力と回転円盤の押し出し力により、方向変換後のコンベアの直線ガイドに沿って、このコンベアに移行するようになっている。
【0008】
しかしながら、この構成では、検体容器と異なり、厚みが小さく、細くしなやかな棒材であると、円盤に乗移った後の棒材の末端が、乗移り後の回転運動や上下動により、末端がベルトと円盤の隙間に挟まれたり、または棒材の端面がベルトを削るような堅さや鋭利さを持っていた場合には、ベルトを削って消耗させたりといったトラブルを生じるおそれがある。円盤から出る場合に、出口受取り側のベルトとガイドの隙間に先端が突入してはまり込むという問題もある。よって、棒材の搬送装置として、この文献に開示された構成を適用することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−319020号公報
【特許文献2】特開2005−239394号公報
【特許文献3】特開2002−338022号公報
【特許文献4】特開平6−1427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述のような事情にかんがみ、搬送物である棒材の進行を停止させずに搬送方向の転換を円滑に行えるとともに、安価に製造できて、しかも設置場所に制約を受けることのない、棒材の搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の棒材の搬送装置は、(1)軸方向中心線を有し、所定の長さの棒材を該軸方向中心線の方向に搬送する搬送面と、該搬送面の両側に配され該棒材を案内する外側および内側の直線ガイドとを備える上流側の直線コンベア機と、(2)該上流側の直線コンベア機に隣接して配置され、前記棒材の軸方向寸法の0.7倍以上の大きさの直径寸法を有する円盤からなり、一定の角速度で回転するターンテーブルと、前記外側および内側の直線ガイドに接続する外側および内側の方向転換ガイドとを備え、前記上流側の直線コンベア機の搬送面に載って搬送されてきた前記棒材を、該上流側の直線コンベア機の軸方向中心線とは異なる方向の軸方向中心線を有する出口に回転移動させて排出する搬送方向転換機とを少なくも備える。なお、好ましくは、前記円盤の直径寸法は、前記棒材の軸方向寸法の1.0倍以上の長さとする。
【0012】
特に、本発明の棒材の搬送装置は、(a)前記外側の方向転換ガイドが、前記上流側の直線コンベア機の外側の直線ガイドと同方向に連続する入口側直線部と、該入口側直線部に連続する円弧部と、該円弧部に連続する出口側直線部とを備え、(b)前記内側の方向転換ガイドが、前記上流側の直線コンベア機の内側の直線ガイドと連続し、前記棒材が前記外側の方向転換ガイドの内側面に沿って移動する際の軌道と重ならない範囲に配置される、曲線形状、中間部に前記円弧部と同方向に鈍角となる複数の折れ曲がり部を有する連続直線形状、または、直線部と円弧部と直線部の連続からなる形状を備え、前記出口において、前記外側の出口側直線部と平行となる出口側直線部を有する点に特徴がある。
【0013】
本発明の第1態様では、前記搬送方向転換機の出口の軸方向中心線と同方向の軸方向中心線を有し、該出口に回転移動した前記棒材を該軸方向中心線の方向に搬送する搬送面と、前記外側および内側の方向転換ガイドの前記各出口側直線部に接続し、該搬送面の両側に配され該棒材を案内する外側および内側の直線ガイドとを備える下流側の直線コンベア機をさらに備える。
【0014】
本発明の第2態様では、前記出口の終端に配され、搬送されてきた前記棒材が前記ターンテーブルの上面から外れた位置で、前記棒材の前端と当接するストッパと、前記出口の前記ターンテーブルの上面から外れた位置で、該出口の下方に配され、前記棒材を案内する傾斜面を備えるシュートとをさらに備える。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記ターンテーブルの中心(O1)と前記上流側の直線コンベア機の軸方向中心線(X1)との間の距離(L1)は、該ターンテーブルの半径(r)より短く、具体的には、該距離(L1)を該ターンテーブルの半径(r)の0.4倍〜0.8倍の長さとする。また、この距離(L1)を、該ターンテーブルの中心(O1)と前記出口の軸方向中心線(X2)との間の距離(L2)の0.7倍〜1.1倍の長さ、好ましくは、0.8倍〜1.0倍とする。
【0016】
また、前記ターンテーブルの中心(O1)と前記出口の軸方向中心線(X2)との間の距離(L2)は、該ターンテーブルの半径(r)より長く、具体的には、該距離(L2)を該ターンテーブルの半径(r)の1.05倍〜1.2倍の長さとすることが好ましい。
【0017】
もしくは、本発明の棒材の搬送装置は、前記上流側の搬送コンベア機の搬送面の搬送速度をV1、前記ターンテーブルの中心と前記上流側の直線コンベア機の軸方向中心線との間の距離をL1、前記ターンテーブルの角速度をωとした場合に、前記角速度ωが、ω≧V1/L1となるように定めて、各構成部材の配置、寸法などを規定することもできる。なお、前記ターンテーブルの角速度ωは、最大でV1/L1の値の1倍〜1.5倍程度に設定する。
【0018】
さらには、前記上流側の搬送コンベア機の搬送面の搬送速度をV1、前記ターンテーブルの中心と前記上流側の直線コンベア機の軸方向中心線との間の距離をL1、前記ターンテーブルの角速度をω、前記下流側の搬送コンベア機の搬送面の搬送速度をV2、前記ターンテーブルの中心と前記下流側の搬送コンベア機の軸方向中心線との間の距離をL2とした場合、前記角速度ωが、ω≧V1/L1となるように定め、かつ、前記搬送速度V2が、V2≧ω・L2となるように定めて、各構成部材の配置、寸法などを規定することもできる。なお、前記下流側の搬送コンベア機の搬送面の搬送速度V2は、ω・L2の値の1倍〜1.5倍程度に設定する。
【0019】
この場合、前記距離L1とL2の関係が、L1≠L2となるように、前記上流側の搬送コンベア機と前記出口および下流側の搬送コンベア機とが配置されることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明の棒材の搬送装置は、前記下流側の搬送コンベア機の下流側に、前記搬送方向転換機をさらに1つ備えて、2方向に方向転換できるように構成することも可能であり、さらに複数の搬送方向転換機を介して、複数の搬送コンベア機を配置することも可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の棒材の搬送装置は、搬送方向転換機によって、棒材の進行を停止させずに搬送方向の転換を行えるため、該棒材の搬送を円滑に行える。
【0022】
本発明においては、ターンテーブルを用いた搬送方向転換機を採用でき、ローラ式やベルト式の曲線コンベア機を用いた場合に比べて簡単な構造を有するため、安価に製造できる。
【0023】
また、本発明では、上流側の直線コンベア機の搬送面の搬送速度、ターンテーブルの角速度、下流側の直線コンベア機の搬送面の搬送速度を適切かつ簡易に調整でき、これら相互間における棒材の乗り移りを円滑に行うことができる。
【0024】
さらに、本発明では、上流側の直線コンベア機、搬送方向転換機、該搬送方向転換機の出口もしくは下流側の直線コンベア機の配置を工夫することにより、これら相互間における棒材の乗り移りを円滑にさせるとともに、上流側から下流側に向けて、搬送速度を連続的に変化させることができる。
【0025】
本発明は、典型的には、下流側にも直線コンベア機を配置することにより、搬送物である棒材の搬送方向を変えて、さらに下流側における搬送を設置場所に制約を受けずに可能とするものであるが、この下流側の直線コンベア機の代わりに、出口にシュートを設けて、搬送先である集積場所に棒材を集積させたり、高低差を変化させてさらに搬送させたりすることも可能である。
【0026】
さらには、搬送方向転換機を複数設けて、これらを介して複数の直線コンベア機を互いに中心軸方向を変化させて配置することにより、搬送方向転換機の設置場所の制約をあまり受けずに、搬送物である棒材の搬送経路を自由に設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す平面図である。
【図2】一部を切断した状態で示す、図1の下方から見た図である。
【図3】第1、第2各直線コンベア機の搬送面の走行速度と、ターンテーブルの角速度との関係を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態の第3例を示す平面図である。
【図6】一部を切断した状態で示す、図5の下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施の形態の第1例]
本発明の棒材の搬送装置にかかる実施の形態の第1例について、図1〜図3を参照しつつ説明する。なお、本例の搬送装置における搬送対象の棒材は、所定の径寸法および軸方向寸法(一般的には、径寸法:2mm〜6mm程度、軸方向寸法:500mm程度)を有する建築資材用の丸棒1である。本発明の対象となる搬送物である棒材は、このように主として建築資材用の金属製の棒材であって、その形状としては、その他に角棒(一般的には、厚さ×幅寸法:2mm〜6mm×2mm〜6mm程度、軸方向寸法:500mm程度)などがある。ただし、本発明の適用は、この用途の棒材に限定されることはない。また、本発明の搬送装置を構成するそれぞれの機械および部品、特に搬送方向転換機の大きさなどについては、棒材の寸法などにより適宜変更するようにしてもよい。各実施例においては、上記の一般的な寸法を有する丸棒1を前提にして、前記機械および部品の寸法の数値について言及するものとする。
【0029】
本例の棒材の搬送装置は、互いに直角に配置された上流側の第1直線コンベア機2および下流側の第2直線コンベア機3と、これら第1、第2各直線コンベア機2、3の端部同士の間に配置された搬送方向転換機4とを備える。ただし、本発明において、上流側の直線コンベア機と下流側の直線コンベア機の角度は任意であり、好適には、45°〜100°の範囲に適用可能である。
【0030】
このうちの第1、第2各直線コンベア機2、3は、長手方向の両端部に回転可能に設置された一対のプーリ5a、5bと、該一対のプーリ5a、5b同士の間に掛け渡された搬送用の無端ベルト6a、6bと、図示しない駆動手段と、直線状のプレートからなる外側直線ガイド7a、7cと内側直線ガイド7b、7dとをそれぞれ備える。このうちの駆動手段は、前記一対のプーリ5a、5bのうちのいずれか一方のプーリを回転駆動することによって、前記無端ベルト6a、6bを走行させることにより、該無端ベルト6a、6bの上面である搬送面8a、8bを、それぞれ図1の矢印A、Cの向きに直線走行させるものである。また、前記外側直線ガイド7a、7cおよび内側直線ガイド7b、7dは、前記搬送面8a、8bを幅方向両側から挟む位置に、該搬送面8a、8bおよび前記各プーリ5a、5bに対して非接触な状態で配置されている。
【0031】
前記外側および内側直線ガイド7a〜7dの上端縁は、前記搬送面8a、8bよりも上方に位置している。これらの直線コンベア機2、3は、プーリ同士間の距離を変更したり、複数の直線コンベア機を直列に配したりすることにより、移動距離を調整可能としている。また、外側と内側の直線ガイド間(7aと7bの間、7cと7dの間)の距離、および無端ベルト6a、6bの搬送面8a、8bの幅については任意であり、搬送される棒材の大きさに応じて、変更することも可能である。たとえば、図1の無端ベルト6a、6b付近の外側と内側の直線ガイド間の幅は約50mm程度、およびL3の搬送面のガイド間の幅を約100mm程度とすることができるが、この大きさに限られない。
【0032】
なお、本発明の棒材の搬送装置を構成する、直線コンベア機2、3は、搬送面8a、8bが、無端ベルトの上面である、ベルト式の直線コンベア機を採用することもでき、あるいは、搬送面が複数のローラの上面である、ローラ式の直線コンベア機を採用することもできる。
【0033】
前記搬送方向転換機4は、ターンテーブル9と、駆動モータ10と、方向転換ガイド11とを備える。このうちのターンテーブル9は、その直径寸法が前記丸棒1の軸方向寸法の0.7倍以上、好ましくは、それとほぼ同じ、ないしは、それよりも大きい円盤からなる。ターンテーブルの直径寸法が棒材よりも小さい場合、ターンテーブルの機構上、棒材の円滑な方向転換が不可能となるなどの問題がある。したがって、ターンテーブルの大きさを変更することにより、種々の棒材の搬送が可能となるし、ターンテーブルの直径寸法の1.4倍以下、好ましくは1倍以下の棒材については基本的に本発明の装置が適用しうる。実施形態では、ターンテーブル9の直径寸法を、前記棒材1の軸方向寸法とほぼ同じである500mmとしているが、この場合、これ以下の長さの棒材にこの装置を好ましく適用できるし、700mm程度までの棒材に適用することも可能である。
【0034】
該ターンテーブル9は、水平方向に関しては、図1に示すように、前記第1、第2各直線コンベア機2、3の搬送面8a、8bの端部同士の間に挟まれた位置に配置される。すなわち、第1直線コンベア機2が上流側に、第2直線コンベア機3が下流側にそれぞれ配置される。より具体的に述べると、本例においては、該ターンテーブル9は、その中心軸O1が、前記各搬送面8a、8bの軸方向中心線X1、X2に対して、これら各中心線X1、X2の内側にずれており、かつ、該中心軸O1と前記第1直線コンベア機2の搬送面8aの中心線X1との垂直距離L1は、ターンテーブル9の半径寸法(250mm)より小さく、0.4〜0.8倍程度である100mm〜200mmとし、一方、前記中心軸O1と前記第2直線コンベア機3の搬送面8bの中心線X2との垂直距離L2は、ターンテーブル9の半径寸法(250mm)に対して、1.05〜1.2倍程度である262mm〜300mmとする。垂直距離L1が、ターンテーブル9の半径寸法の0倍、すなわち、上記中心線X1が中心軸O1を通過する場合、もしくは、ターンテーブル9の半径寸法の0.8倍より大きい場合には、棒材1が第1直線コンベア機2からターンテーブル9上に円滑に乗り移ることができない。
【0035】
前記中心軸O1と中心線X1との垂直距離L1は、前記中心軸O1と中心線X2との垂直距離L2とおなじ(L1=L2)とすることもできるが、この第1例では、該中心軸O1と該中心線X1との垂直距離L1が、該中心軸O1と該中心線X2との垂直距離L2よりも短くなった位置、すなわち、L1<L2の関係が成立する位置に配置される。特に、第1例では、L2がターンテーブル9の半径寸法より大きくなるようにしている。両垂直距離L1とL2がL1=L2の関係にある場合、該搬送方向転換機4における丸棒1の侵入速度と送出速度が同じとなり、L1<L2の関係が成立する場合には、丸棒1の送出速度が侵入速度より大きくなる。ただし、本発明においては、L1>L2の関係としてもよく、L1をL2の0.7倍〜1.1倍の範囲とすることが好ましい。
【0036】
また、この状態で、前記第1直線コンベア機2の搬送面8aから前記ターンテーブル9の上面12への前記丸棒1の乗り移りを円滑に行えるようにするため、該搬送面8aは該上面12よりも少しだけ高い位置に配置されている。さらに、該上面12から前記第2直線コンベア機3の搬送面8bへの前記丸棒1の乗り移りを円滑に行えるようにするため、該搬送面8bは該上面12よりも少しだけ低い位置に配置されている。これらの位置の設計も、棒材の案内が可能な範囲で任意であるが、丸棒1に対しては、搬送面8aとターンテーブル9の上面12の間の段差の大きさを1〜3mm程度と、ターンテーブル9の上面12と搬送面8bの間の段差の大きさを1〜3mm程度とする。
【0037】
前記駆動モータ10は、前記ターンテーブル9の下方に設置されており、該ターンテーブル9の中心部に結合した駆動軸を回転駆動することによって、該ターンテーブル9を、図1の矢印Bの方向に回転させるものである。
【0038】
前記方向転換ガイド11は、前記ターンテーブル9の上面12に対し、前記丸棒1を案内可能な距離、すなわち、微小隙間程度から棒材1の径の1/3以下程度の大きさだけ浮かせて配置された、プレート上の外側方向転換ガイド13および内側方向転換ガイド14によって構成される。
【0039】
外側方向転換ガイド13は、前記第1直線コンベア機2の外側直線ガイド7aの端部と、前記第2直線コンベア機3の外側直線ガイド7cの端部とに連続している。一方、内側方向転換ガイド14は、第1直線コンベア機2の内側直線ガイド7bの端部と、前記第2直線コンベア機3の内側直線ガイド7dの端部とに連続している。
【0040】
このうちの外側方向転換ガイド13は、前記第1、第2各直線コンベア機2、3を構成する外側の直線ガイド7a、7cと同方向に配置された入口側および出口側の直線部15、16と、これら両直線部15、16同士を滑らかに連続させる円弧部17とを備える。特に、本例では、丸棒1の後端が、回転力により外側に押し出され、ターンテーブル9の円盤から出る直前に、円盤の高速度で押し出されて出口側に乗り移りやすいように、という理由から、外側方向転換ガイド13は、第1直線コンベア機2の外側の直線ガイド7aから同方向に連続し、ターンテーブル9の中心軸からの最短距離となる点を通過した以降に、該ターンテーブル9と同様の曲率半径を有する円弧部17となり、第2直線コンベア機3の外側の直線ガイド7cと連続する出口側直線部16に向けて滑らかな曲線を描くように構成されることが好ましい。
【0041】
一方、前記内側方向転換ガイド14は、中間部の三箇所に、該円弧部17と同方向に鈍角に折れ曲がった、複数の折れ曲がり部を有する連続直線形状のもので、前記丸棒1が前記外側方向転換ガイド13の内側面に沿って移動する際の軌道と重ならない範囲に配置されている。より具体的には、前記外側方向転換ガイド13に丸棒1の両端を接して移動させた場合の丸棒1の軌跡にクリアランスを加えた領域の外側において、加工形状が容易になるように形状および配置が決定される。なお、該内側方向転換ガイド14の形状は、曲線形状や、直線部と曲線部とを滑らかに連続させた形状などの、他の形状にすることもできる。
【0042】
前述のように、中心軸O1と搬送面8bの軸方向中心線X2との垂直距離L2を、ターンテーブル9の半径寸法よりも大きく、具体的には、この半径寸法(250mm)の1.05〜1.2倍程度である262mm〜300mmとしている。これにより、丸棒1の後端が、回転力により外側に押し出され、円盤から出る直前に円盤の高速度で押し出されて乗移りやすいという利点がある。この場合、前記ターンテーブル9の上面12と、前記第2直線コンベア機3の搬送面8bの端部との間にくさび状の隙間部分が存在するが、このくさび状の隙間部分には、底部ガイドプレート18が配置される。そして、この状態で、該上面12から該搬送面8bへの前記丸棒1の乗り移りが行われる際に、該底部ガイドプレート18の上面によって該丸棒1の底面を円滑に案内できるようにするため、該底部ガイドプレート18の上面の高さ位置は、前記上面12と前記搬送面8bとの間の高さ位置になっている。
【0043】
上述のような構成を有する本例の棒材の搬送装置の使用時には、前記第1直線コンベア機2の搬送面8aを、図1の矢印Aの向きに、一定の速度V1で走行させ、かつ、前記搬送方向転換機4を構成するターンテーブル9を、図1の矢印Bの方向に、一定の角速度ω1で回転させ、かつ、前記第2各直線コンベア機3の搬送面8bを、図1の矢印Cの向きに、一定の速度V2で走行させる。
【0044】
そして、この状態で、前記第1直線コンベア機2の搬送面8aに、前記丸棒1を供給する。すると、該丸棒1は、図1における右上部分に示されるように、矢印Aの向きに走行する該搬送面8aに乗って、前記外側および内側の直線ガイド7a、7bにより脱落防止を図られながら、自身の中心軸の方向に直線的に搬送される。その後、該丸棒1は、前記搬送面8aから、前記ターンテーブル9の上面12に乗り移る。そして、該丸棒1は、図1における左上部分に示されるように、矢印Bの方向に回転する該上面12に乗って、該ターンテーブル9の回転により、もしくは、前記外側方向転換ガイド13の内側面により、進行方向である自身の中心軸の方向を変えられながら、前記第2直線コンベア機3の搬送面8bに向けて搬送される。その後、該丸棒1は、前記上面12から、該搬送面8bに、一部において前記底部ガイドプレート18の上面を通過しつつ乗り移る。そして、該丸棒1は、図1における左下部分に示されるように、矢印Cの向きに走行する該搬送面8bに乗って、前記外側および内側の直線ガイド7c、7dにより脱落防止を図られながら、自身の中心軸の方向に直線搬送される。
【0045】
なお、本例の場合には、図1および図3に示すように、前記第1直線ベルトコンベア機2の搬送面8aによる前記丸棒1の搬送速度である、該搬送面8aの走行速度V1と、前記第2直線ベルトコンベア機3の搬送面8bによる該丸棒1の搬送速度である、該搬送面8bの走行速度V2と、前記ターンテーブル9の角速度ω1と、該ターンテーブル9の中心軸O1と前記搬送面8aの中心線X1との垂直距離L1と、該中心軸O1と前記搬送面8bの中心線X2との垂直距離L2(>L1)との間に、
ω1=V1/L1
2=ω1・L2=V1・(L2/L1
の関係が成立するように、走行速度V1、V2および角速度ω1の設定を行っている。具体的には、本例においては、前記垂直距離L1は200mm、L2は285mm、走行速度V1が173mm/sである場合に、ターンテーブル9の角速度ω1を0.87(rad/s)とし、第2直線コンベア機3の搬送面8bの搬送速度V2を247mm/sに設定している。
【0046】
このように、前記丸棒1が前記搬送面8aから前記ターンテーブル9の上面12に円滑に乗り移ることができ、また、該丸棒1が該上面12から前記搬送面8bに円滑に乗り移ることができるような、該搬送面8a、8bと該上面12との間の、前記丸棒1の搬送速度関係を構築している。さらには、該上面12で該丸棒1の搬送方向の転換を行いながら、該丸棒1の搬送速度を連続的に増大させられるようにしている。
【0047】
上述したような本例の棒材の搬送装置の場合には、前記搬送方向転換機4によって、前記丸棒1の進行を停止させずに搬送方向の転換を行えるため、該丸棒1の搬送を円滑に行える。また、該搬送方向転換機4は、ローラ式やベルト式の曲線コンベア機に比べて簡単な構造を有するため、安価に製造できる。また、前記丸棒1の搬送方向の転換は、前記ターンテーブル9の上面12を通じて行われるが、該上面12は水平であるため、搬送方向の転換部分が落差および幅の大きな傾斜部になることはない。
【0048】
[実施の形態の第2例]
本発明の棒材の搬送装置に係る実施の形態の第2例について、図4を参照しつつ説明する。本例の棒材の搬送装置は、上述の図1〜3に示した実施の形態の第1例の構成に加えて、前記第2直線コンベア機3の下流側に、該第2直線コンベア機3に対して直角に配置された第3直線コンベア機19と、これら第2、第3各直線コンベア機3、19の端部同士の間に配置された搬送方向転換機4aと、底部ガイドプレート18aとを備えている。
【0049】
このうちの第3直線コンベア機19は、上流側の前記第2直線コンベア機3と同様の構成を有している。また、前記搬送方向転換機4aは、上流側の搬送方向転換機4とほぼ同様の構成を有している。また、前記底部ガイドプレート18aは、上流側の底部ガイドプレート18と同様の構成を有している。また、前記第2、第3各直線コンベア機3、19に対する、前記搬送方向転換機4aおよび前記底部ガイドプレート18aの配置の仕方は、前記第1、第2各直線コンベア機2、3に対する、前記搬送方向転換機4および前記底部ガイドプレート18の配置の仕方と同様である。また、使用時に、前記搬送方向転換機4aを構成するターンテーブル9aは、矢印Dの方向に、一定の角速度ω2で回転させる。また、前記第3直線コンベア機19の搬送面8cは、矢印Eの向きに、一定の速度V3で走行させる。また、前記走行速度V2と前記角速度ω2との間には、前記走行速度V1と前記角速度ω1との間と同様の速度関係を持たせ、かつ、前記角速度ω2と前記走行速度V3との間には、前記角速度ω1と前記走行速度V2との間と同様の速度関係を持たせている。
【0050】
上述のような構成を有する本例の棒部材の搬送装置の場合、使用時に、前記丸棒1は、上述した実施の形態の第1例の場合と同様にして、前記第1直線コンベア機2の搬送面8aの上流端から、前記第2直線コンベア機3の搬送面8bの下流端まで搬送される。その後、該丸棒1は、前記搬送方向転換機4aを構成するターンテーブル9aの上面12aに乗り移り、さらに、ターンテーブル9aの回転、もしくは、外側方向転換ガイド13aの内側面に案内されることによって、自身の中心軸の方向を変えながら進行し、前記第3直線コンベア機19の搬送面8cに乗り移る。その後、該丸棒1は、矢印Eの向きに走行する該搬送面8bに乗って、一対のガイドプレート7e、7fにより脱落防止を図られながら、自身の中心軸の方向に直線搬送される。その他の作用効果については、上述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0051】
[実施の形態の第3例]
本発明の棒材の搬送装置に係る実施の形態の第3例について、図5〜6を参照しつつ説明する。本例の棒材の搬送装置は、前述の図1〜3に示した実施の形態の第1例の構成から、前記第2直線コンベア機3を取り去り、さらに、該第2直線コンベア機3を取り去った後の該構成に対し、ストッパ20と、シュート21とを付加してなる。
【0052】
該ストッパ20は、本例の搬送装置の使用時に、前記丸棒1の全体が、外側方向転換ガイド13の内側面に沿って、前記ターンテーブル9の上面12から搬送方向の下流側に送り出された直後に、該丸棒1の前端縁がぶつかる位置に配置されている。また、前記シュート21は、傾斜板22と、該傾斜板22の上面である傾斜面の両側に設けられた一対のガイド23、23とを備えたもので、該傾斜面の上端部を、搬送方向転換機4の方向転換ガイド11の出口部であって、前記ストッパ20にぶつかった前記丸棒1の下方に位置させた状態で配置されている。
【0053】
上述のような構成を有する本例の棒材の搬送装置の場合、使用時に、前記丸棒1は、前述した実施の形態の第1例の場合と同様にして、前記第1直線コンベア機2の搬送面8aから、前記ターンテーブル9の上面12に乗り移る。そして、該丸棒1の全体が、前記外側方向転換ガイド13の内側面に沿って、該上面12から搬送方向の下流側に送り出されると、その直後に、該丸棒1の前端縁が、前期ストッパ20にぶつかって、該丸棒1の進行が停止する。そして、該丸棒1は、下方に存在する前記傾斜板22の上面である傾斜面の上端部に落下し、前記一対のガイド23、23の間を通って、下まで転がり落ちる。その他の作用効果は、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0054】
なお、本発明は、前述の図1〜3に示した実施の形態の第1例の搬送装置や、前述の図4に示した実施の形態の第2例の搬送装置のように、複数の直線コンベア機を、棒部材の搬送経路に沿って、間欠的に、かつ、各隣り合う直線コンベア機の搬送方向が異なるように配置するとともに、これら各隣り合う直線コンベア機同士の間に搬送方向転換機を配置してなる、棒材の搬送装置のうち、最も下流側に配置された直線コンベア機を、上述の図5〜6に示した実施の形態の第3例の搬送装置を構成する、上流側の直線コンベア機とする構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 丸棒
2 第1直線コンベア機
3 第2直線コンベア機
4、4a 搬送方向転換機
5a、5b、5c プーリ
6a、6b、6c 無端ベルト
7a、7c、7e 外側直線ガイド
7b、7d、7f 内側直線ガイド
8a、8b、8c 搬送面
9、9a ターンテーブル
10 駆動モータ
11、11a 方向転換ガイド
12、12a 上面
13、13a 外側方向転換ガイド
14、14a 内側方向転換ガイド
15、15a 入口側直線部
16、16a 出口側直線部
17、17a 円弧部
18、18a 底部ガイドプレート
19 第3直線コンベア機
20 ストッパ
21 シュート
22 傾斜板
23 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向中心線を有し、所定の長さの棒材を該軸方向中心線の方向に搬送する搬送面と、該搬送面の両側に配され該棒材を案内する外側および内側の直線ガイドとを備える上流側の直線コンベア機と、
該上流側の直線コンベア機に隣接して配置され、前記棒材の軸方向寸法の0.7倍以上の大きさの直径寸法を有する円盤からなり、一定の角速度で回転するターンテーブルと、前記外側および内側の直線ガイドに接続する外側および内側の方向転換ガイドとを備え、前記上流側の直線コンベア機の搬送面に載って搬送されてきた前記棒材を、該上流側の直線コンベア機の軸方向中心線とは異なる方向の軸方向中心線を有する出口に回転移動させて排出する搬送方向転換機とを備え、
前記外側の方向転換ガイドは、前記上流側の直線コンベア機の外側の直線ガイドと同方向に連続する入口側直線部と、該入口側直線部に連続する円弧部と、該円弧部に連続する出口側直線部とを備え、前記内側の方向転換ガイドは、前記上流側の直線コンベア機の内側の直線ガイドと連続し、前記棒材が前記外側の方向転換ガイドの内側面に沿って移動する際の軌道と重ならない範囲に配置される、曲線形状、中間部に前記円弧部と同方向に鈍角となる複数の折れ曲がり部を有する連続直線形状、または、直線部と円弧部と直線部の連続からなる形状を備え、前記出口において、前記外側の出口側直線部と平行となる出口側直線部を有する、
棒材の搬送装置。
【請求項2】
前記搬送方向転換機の出口の軸方向中心線と同方向の軸方向中心線を有し、該出口に回転移動した前記棒材を該軸方向中心線の方向に搬送する搬送面と、前記外側および内側の方向転換ガイドの前記各出口側直線部に接続し、該搬送面の両側に配され該棒材を案内する外側および内側の直線ガイドとを備える下流側の直線コンベア機をさらに備える、請求項1に記載する棒材の搬送装置。
【請求項3】
前記出口の終端に配され、搬送されてきた前記棒材が前記ターンテーブルの上面から外れた位置で、前記棒材の前端と当接するストッパと、前記出口の前記ターンテーブルの上面から外れた位置で、該出口の下方に配され、前記棒材を案内する傾斜面を備えるシュートとをさらに備える、請求項1に記載する棒材の搬送装置。
【請求項4】
前記ターンテーブルの中心軸と前記上流側の直線コンベア機の軸方向中心線との間の距離は、該ターンテーブルの半径より短く、かつ、該ターンテーブルの中心軸と前記出口の軸方向中心線との間の距離の0.7倍〜1.1倍の長さである、請求項1〜3のいずれかに記載する棒材の搬送装置。
【請求項5】
前記ターンテーブルの中心軸と前記上流側の直線コンベア機の軸方向中心線との間の距離は、該ターンテーブルの半径より短く、該ターンテーブルの中心軸と前記出口の軸方向中心線との間の距離は、該ターンテーブルの半径の1.05倍〜1.2倍の長さである、請求項1〜3のいずれかに記載する棒材の搬送装置。
【請求項6】
前記上流側の搬送コンベア機の搬送面の搬送速度をV1、前記ターンテーブルの中心軸と前記上流側の直線コンベア機の軸方向中心線との間の距離をL1、前記ターンテーブルの角速度をωとした場合、前記角速度ωが、ω≧V1/L1となるように定められている、請求項1〜3のいずれかに記載する棒材の搬送装置。
【請求項7】
前記上流側の搬送コンベア機の搬送面の搬送速度をV1、前記ターンテーブルの中心軸と前記上流側の直線コンベア機の軸方向中心線との間の距離をL1、前記ターンテーブルの角速度をω、前記下流側の搬送コンベア機の搬送面の搬送速度をV2、前記ターンテーブルの中心軸と前記下流側の搬送コンベア機の軸方向中心線との間の距離をL2とした場合、前記角速度ωが、ω≧V1/L1となるように定められ、かつ、前記搬送速度V2が、V2≧ω・L2となるように定められている、請求項2に記載する棒材の搬送装置。
【請求項8】
前記距離L1とL2の関係が、L1≠L2となるように、前記上流側の搬送コンベア機と前記出口および下流側の搬送コンベア機とが配置される、請求項7に記載する棒材の搬送装置。
【請求項9】
前記下流側の搬送コンベア機の下流側に、前記搬送方向転換機をさらに1つ備える、請求項2、7または8に記載する棒材の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−91913(P2012−91913A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241041(P2010−241041)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【出願人】(398069447)株式会社キャダック (14)
【Fターム(参考)】