説明

棒材用搬送装置

【課題】棒材を確実に搬送しうる棒材用搬送装置の提供。
【解決手段】この棒材用搬送装置としてのチェーンコンベア36は、歯車46と、この歯車46に並列するディスク48と、この歯車46及びディスク48を軸支する回転軸50と、この歯車46の外縁に掛けられて折り返されるチェーン54と、このチェーン54の外側に位置しており棒材がのせられるプレート62とを備えている。このチェーンコンベア36では、このプレート62の軌跡が円弧となる領域において、このプレート62はこのディスク48の外縁の内側に位置している。このチェーンコンベア36が用いられることにより、棒材に疵が発生することはない。このチェーンコンベア36が用いられることにより、棒材が次工程に確実に搬送されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材用搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
棒鋼の製造方法として、圧延による方法が広く知られている。この製造方法では、まず精錬、造塊、分塊圧延等の工程を経て、ビレットが得られる。このビレットは、加熱炉によって加熱される。次に、このビレットに熱間圧延が施される。通常は、タンデムに並べられた粗列圧延機、中間列圧延機及び仕上列圧延機による多段圧延が施される。この熱間圧延によってビレットは徐々に細径化し且つ長尺化して、棒鋼が得られる。
【0003】
熱間圧延において、棒鋼の表面には酸化物スケールが生成する。この酸化物スケールを除去するために、棒鋼は酸洗される。この棒鋼が酸洗される工程は、酸洗工程と称される。この酸洗工程には、棒鋼は棒材用搬送装置としてのチェーンコンベアで搬送される場合がある。チェーンコンベアは、棒鋼の結束設備及び棒鋼精整設備の積み込みテーブルへの、棒鋼の搬送にも適用される。
【0004】
図4は、従来のチェーンコンベア2の一部が示された側面図である。このチェーンコンベア2は、棒鋼4を搬送する。このチェーンコンベア2は、駆動部6と、搬送部8とを備えている。この図4において、矢印線Aは、棒鋼4の搬送方向を表している。図4の右側はこのチェーンコンベア2の上流側である。
【0005】
駆動部6は、モーター10と、歯車12とを備えている。このモーター10は、回転軸14を備えている。この歯車12は、この回転軸14に固定される。この歯車12は、その外縁に凸部16を備えている。
【0006】
搬送部8は、チェーン18と、ステージ20とを備えている。このチェーン18は、多数のバー22と、多数のローラー24とを備えている。図示されていないが、このバー22には、歯車12の凸部16が嵌入しうる開口部が設けられている。このチェーンコンベア2では、一のバー22と、このバー22に隣接する他のバー22とは、ローラー24で連結される。この一のバー22は、この他のバー22に対してこのローラー24を中心に回動しうる。
【0007】
ステージ20は、チェーン18の外側に位置している。このステージ20に、棒鋼4が載せられる。このステージ20は、複数のプレート26からなる。このチェーンコンベア2では、一のプレート26が一のバー22の外側に取り付けられる。図4に示されているように、このチェーンコンベア2では、一部のプレート26にガイド28がさらに設けられる。このガイド28は、搬送部8の移動方向に沿って所定の間隔で配置される。このガイド28は、棒鋼4を支持する。
【0008】
図5は、図4のチェーンコンベア2の一部が示された部分拡大側面図である。このチェーンコンベア2では、チェーン18は歯車12の外縁に掛けられる。具体的には、このチェーン18に設けられている開口部30にこの歯車12の凸部16が嵌入している。図示されていないが、このチェーン18はループ状であり、このチェーンコンベア2の上流側に設けられている別の歯車にもこのチェーン18は掛けられている。
【0009】
このチェーンコンベア2では、モーター10が作動すると回転軸14が回転する。この回転により、歯車12が回転する。この歯車12の回転により、搬送部8が矢印線Aに沿って動く。これにより、ステージ20に載せられている棒鋼4が下流側に向かって搬送される。この図4に示されているように、このチェーンコンベア2の下流側の端には受け部32が設置されている。このチェーンコンベア2で搬送された棒鋼4は、この受け部32に落とし込まれる。この受け部32に落とし込まれた棒鋼4が、次工程としての酸洗工程に移行する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図5に示されているように、チェーン18が歯車12の外縁に掛けられている領域では、プレート26aとプレート26bとの間に隙間34が形成される。このチェーンコンベア2で棒鋼4が搬送されるとき、この棒鋼4がこの隙間34に挟まれる場合がある。この隙間34に挟まれた棒鋼4が受け部32に落とし込めないとき、このチェーンコンベア2による棒鋼4の搬送が中断する。この中断は、棒鋼4の生産性に影響を与える。この隙間34に挟まれた棒鋼4に、疵が発生する場合もある。
【0011】
本発明の目的は、棒鋼を確実に搬送しうるチェーンコンベアの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る棒材用搬送装置は、歯車と、この歯車に並列するディスクと、この歯車及びディスクを軸支する回転軸と、この歯車の外縁に掛けられて折り返されるチェーンと、このチェーンの外側に位置しており棒材がのせられるプレートとを備えている。この搬送装置では、このプレートの軌跡が円弧となる領域において、このプレートはこのディスクの外縁の内側に位置している。
【発明の効果】
【0013】
この棒材用搬送装置では、回転軸が回転すると歯車が回転する。チェーンはこの歯車に掛けられているので、このチェーンが歯車に掛けられている領域では、プレートの軌跡は円弧となる。この搬送装置では、プレートの軌跡が円弧となる領域において、プレートはディスクの外縁の内側に位置している。このため、この領域では、棒鋼はプレートからディスクの外縁上にのせかえられる。この領域では、棒鋼はプレートと直接には接触しない。従って、棒鋼がプレート間の隙間に挟まれることはない。この搬送装置では、棒鋼は確実に搬送されうる。この搬送装置で運ばれた棒鋼には、疵は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る棒材用搬送装置としてのチェーンコンベア36の一部が示された側面図である。図2は、図1のチェーンコンベア36の一部が示された平面図である。このチェーンコンベア36は、棒鋼4を搬送する。具体的には、このチェーンコンベア36では、複数本の棒鋼4が緩く結束されることにより得られる棒鋼群が搬送される。このチェーンコンベア36は、フレーム38と、駆動部40と、搬送部42とを備えている。このフレーム38は、駆動部40と、搬送部42とを支持している。図1中、矢印線Aは棒鋼4の搬送方向を表している。図1の右側は、このチェーンコンベア36の上流側である。
【0016】
駆動部40は、モーター44と、歯車46と、ディスク48とを備えている。このモーター44は、回転軸50を備えている。
【0017】
歯車46は、回転軸50に固定される。この歯車46は、複数の凸部52を備えている。これらの凸部52は、この歯車46の外縁に位置している。これらの凸部52は、この歯車46の回転方向に沿って所定の間隔で配置されている。なお、図1中、矢印線Bはこの歯車46の回転方向を表している。
【0018】
ディスク48は、歯車46に並列する。このディスク48は、回転軸50に固定される。
【0019】
搬送部42は、チェーン54と、ステージ56とを備えている。このチェーン54は、多数のバー58と、多数のローラー60とを備えている。図示されていないが、このバー58には、歯車46の凸部52が嵌入しうる開口部が設けられている。このチェーンコンベア36では、一のバー58と、このバー58に隣接する他のバー58とは、ローラー60で連結される。この一のバー58は、この他のバー58に対してこのローラー60を中心に回動しうる。
【0020】
ステージ56は、チェーン54の外側に位置している。このステージ56に、棒鋼4が載せられる。図2に示されているように、棒鋼4は、その長手方向が搬送方向に対して垂直になるように、このステージ56に載せられている。このステージ56は、複数のプレート62からなる。このチェーンコンベア36では、一のプレート62が一のバー58の外側に取り付けられる。図1及び図2に示されているように、このチェーンコンベア36では、一部のプレート62にガイド64がさらに設けられる。このガイド64は、棒鋼4の搬送方向に沿って所定の間隔で配置される。このガイド64は、この棒鋼4を支持する。
【0021】
図1に示されているように、このチェーンコンベア36の下流側には受け部66が設けられている。この受け部66は、凹み部68を備えている。このチェーンコンベア36で搬送された棒鋼4は、この凹み部68に落とし込まれて、次工程に移行する。
【0022】
図3は、図1のチェーンコンベア36の一部が示されている部分拡大側面図である。この図3には、チェーン54と、ステージ56と、歯車46と、ディスク48と、棒鋼4が示されている。このチェーンコンベア36では、チェーン54が歯車46の外縁に掛けられる。具体的には、このチェーン54に設けられている開口部70が歯車46の凸部52に嵌入されている。図示されていないが、このチェーン54はループ状であり、このチェーンコンベア36の上流側に設けられている別の歯車にも掛けられている。
【0023】
このチェーンコンベア36では、モーター44が作動すると回転軸50が回転する。この回転により、歯車46が回転する。この歯車46の回転により、搬送部42が矢印線Aに沿って動く。これにより、ステージ56に載せられている棒鋼4が下流側に向かって搬送される。
【0024】
このチェーンコンベア36では、回転軸50の回転により、ディスク48が回転する。このディスク48は歯車46と同一の回転軸50に固定されている。このため、このディスク48の回転は、歯車46の回転と同期している。なお、このチェーンコンベア36が、このディスク48が軸受によりこの回転軸50に固定されて、このディスク48の回転が歯車46の回転とは同期しないように構成されてもよい。
【0025】
図3において、二点鎖線TLはこのステージ56の搬送方向前側において外側に位置する端72の軌跡を表している。図3に示されているように、このステージ56は、この歯車46に沿って移動する。この歯車46は回転軸50を中心として回転しているので、この軌跡TLは円弧となる。換言すれば、このチェーン54が歯車46に掛けられている領域では、ステージ56の軌跡は円弧となる。なお、この軌跡TLは、このプレート62の各部の軌跡のうち、ディスク48の外縁74に最も近接する位置にある。
【0026】
図3に示されているように、チェーン54が歯車46の外縁に掛けられている領域では、プレート62aとプレート62bとの間に隙間76が形成される。このチェーンコンベア36では、プレート62の軌跡が円弧となる領域において、このプレート62は、ディスク48の外縁74の内側に位置している。このため、この領域では、棒鋼4はプレート62からディスク48の外縁74の上にのせかえられる。この領域では、棒鋼4はプレート62と直接には接触しない。従って、棒鋼4がプレート62の間の隙間76に挟まれることはない。このチェーンコンベア36では、棒鋼4が挟まれて、棒鋼4の搬送が中断することはない。このチェーンコンベア36では、棒鋼4は確実に搬送されうる。この搬送装置で運ばれた棒鋼4には、疵は生じない。
【0027】
図3において、両矢印線DRはディスク48の半径と軌跡TLの半径との差を表している。このチェーンコンベア36では、この差DRは0.1mm以上5mm以下であるのが好ましい。この差DRが0.1mm以上に設定されることにより、棒鋼4がプレート62間の隙間76に挟まれることが効果的に防止されうる。この観点から、この差DRは0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が特に好ましい。この差DRが5mm以下に設定されることにより、棒鋼4のプレート62からディスク48への乗せ換えが容易となる。この観点から、この差DRは4mm以下がより好ましく、3mm以下がより好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0029】
[実施例1]
図1で示された基本構成を備えた棒材用搬送装置としてのチェーンコンベアを用いて複数本の棒鋼を搬送した。このチェーンコンベアでは、ディスクの半径とプレートの軌跡TLの半径との差DRは、1.0mmである。
【0030】
[実施例2、3、4、5、6及び7]
差DRを下記表1の通りとした他は実施例1で用いたチェーンコンベアと同様の構成を備えたチェーンコンベアを用いて棒鋼を搬送した。
【0031】
[比較例1]
従来のチェーンコンベアを用いて棒鋼を搬送した。
【0032】
[評価]
チェーンコンベアにて棒鋼が搬送されている状況が観察された。搬送中におけるライン停止の有無及び搬送された棒鋼の疵の有無について、評価が実施された。これらの結果が、下記表1に示されている。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、種々の棒材の搬送に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る棒材用搬送装置としてのチェーンコンベアの一部が示された側面図である。
【図2】図2は、図1のチェーンコンベアの一部が示された平面図である。
【図3】図3は、図1のチェーンコンベアの一部が示されている部分拡大側面図である。
【図4】図4は、従来のチェーンコンベアの一部が示された側面図である。
【図5】図5は、図4のチェーンコンベアの一部が示された部分拡大側面図である。
【符号の説明】
【0037】
2、36・・・チェーンコンベア
4・・・棒鋼
6、40・・・駆動部
8、42・・・搬送部
10、44・・・モーター
12、46・・・歯車
14、50・・・回転軸
16、52・・・凸部
18、54・・・チェーン
20、56・・・ステージ
22、58・・・バー
24、60・・・ローラー
26、26a、26b、62、62a、62b・・・プレート
28、64・・・ガイド
30、70・・・開口部
32、66・・・受け部
34、76・・・隙間
38・・・フレーム
48・・・ディスク
68・・・凹み部
72・・・端
74・・・外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車と、この歯車に並列するディスクと、この歯車及びディスクを軸支する回転軸と、この歯車の外縁に掛けられて折り返されるチェーンと、このチェーンの外側に位置しており棒材がのせられるプレートとを備えており、
このプレートの軌跡が円弧となる領域において、このプレートがこのディスクの外縁の内側に位置している棒材用搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−194736(P2008−194736A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34212(P2007−34212)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【出願人】(000203977)太平工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】