棒状体用交差連結具
【課題】 交差姿勢で係合連結される両棒状体の位置変更操作を片手で能率良く容易に行う。
【解決手段】 一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部6を備え、且つ前記両係合部6を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部6が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材5が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている。
【解決手段】 一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部6を備え、且つ前記両係合部6を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部6が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材5が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、壁や天井などの構造体に吊設される空調機等の機器類や配管ダクト類に対する振れ止め措置として、振れ止め措置対象の複数の吊りボルトにわたって振れ止めボルトを傾斜姿勢で固定連結するなど、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合に用いられる棒状体用交差連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の棒状体用交差連結具では、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている長尺な連結部材の内面側の中央部に、コの字状に屈曲形成された短尺な連結部材が、屈曲方向を同じ側に向けた状態で相対回転自在に枢支連結されている。
前記長尺連結部材は、枢支連結孔を備えた中央板部と、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部の両端から同一側に延出される傾斜板部と、該両傾斜板部の先端側に延出される操作板部を備えて構成され、前記両傾斜板部には、一方の棒状体に対してそれに交差する方向の同一側から係入自在な開口を備えた第1係合部が形成されている。
前記短尺連結部材の両端には、他方の棒状体に対してそれに交差する方向の同一側から係入自在なV字状の第2係合部が形成されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特公昭61−26286号公報
【特許文献2】実公昭62−2883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の棒状体用交差連結具では、前記二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合、前記短尺連結部材の両端に形成されているV字状の第2係合部を、手前側に位置する棒状体に係合し、その状態を維持したまま、前記長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作し、該長尺連結部材の両傾斜板部に形成されている第1係合部を、後方側に位置する棒状体に対してそれに交差する方向の同一側から係入させたのち、前記両操作板部に加えられていた近接操作力を解除し、長尺連結部材の弾性復元力で両第1係合部を棒状体に係合させている。
【0005】
しかし、一方の棒状体に対する長尺連結部材の係合位置又は他方の棒状体に対する短尺連結部材の係合位置を変更する必要が生じたとき、長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作して、一方の棒状体と両第1係合部の係合を解除すると、短尺連結部材の両第2係合部と他方の棒状体との係合も同時に解除される。
【0006】
そのため、例えば、短尺連結部材が係合されている他方の棒状体に対して、長尺連結部材の両第1係合部が係合されていた一方の棒状体の位置を変更する必要が生じた場合には、短尺連結部材の第2係合部を他方の棒状体に押し付けて係合状態を維持し、且つ、長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作したまま、一方の棒状体を他方の棒状体に対して位置変更分だけ移動操作する必要がある。
【0007】
また、長尺連結部材の両第1係合部が係合されていた一方の棒状体に対して、短尺連結部材が係合されている他方の棒状体の係合位置を変更する必要が生じた場合には、長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作して、短尺連結部材の第2係合部を他方の棒状体から遊離した係合解除状態に維持し、その状態で一方の棒状体に対して他方の棒状体を位置変更分だけ移動操作する必要がある。
【0008】
それ故に、上述のいずれの場合でも、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性があり、且つ、両棒状体同士が接触して干渉することがあるため、両棒状体の位置変更操作が煩雑化し、一人作業では手間取り易く、作業性の低下を招来していた。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、交差姿勢で係合連結される両棒状体の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことのできる棒状体用交差連結具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部を備え、且つ前記両係合部を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合、枢支連結されている一対の連結部材の一方をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作し、この連結部材における両係合部間の枢支連結部位を両棒状体の交差重合部位間に位置させた状態で前記両係合部を一方の棒状体に係合させたのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除し、一方の連結部材の弾性復元力で両係合部を一方の棒状体に係合保持させることができる。
【0012】
他方の連結部材は、一方の棒状体に係合保持された一方の連結部材に対して背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているため、一方の棒状体及び一方の連結部材に対する特別な操作が不要で、他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、この連結部材の両係合部を他方の棒状体に係合したのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除するだけで、他方の連結部材の弾性復元力で両係合部を他方の棒状体に係合保持させることができる。
【0013】
また、一方の連結部材が係合保持されている一方の棒状体に対して、他方の連結部材が係合保持されている他方の棒状体の位置を変更する必要が生じた場合でも、その位置変更対象である他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、他方の棒状体との係合位置を変更操作するだけで済む。
【0014】
従って、前記両棒状体の交差重合部位間を、背中合わせで相対回転自在に枢支連結された両連結部材の枢支連結部位によって物理的に分断することにより、従来装置のように、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性を排除することができると同時に、両棒状体同士が接触して干渉することを回避することができるため、両棒状体の位置変更操作が簡素になり、交差姿勢で係合連結される両棒状体の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことができる。
【0015】
しかも、前記両連結部材を背中合わせで相対回転自在に枢支連結しながらも、前記両棒状体に係合保持された状態では、各連結部材が両棒状体の交差重合部位間を装着起点として各棒状体の外周面に沿って装着されるから、両連結部材の端部の外方への張り出し量が少なくなり、他物との引っ掛かりを抑制することができる。
【0016】
本発明による第2の特徴構成は、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているとともに、前記各連結部材の両側部には、前記棒状体に対して交差方向から係入自在な開口を備えた凹状の係合部が形成され、前記連結部材の両端部を互いに近づける側への弾性変形操作で前記両係合部が棒状体に対して係脱自在に構成され、前記連結部材の弾性復元力で前記両係合部が棒状体に対して係合可能に構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合、枢支連結されている一対の連結部材の一方をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作し、この連結部材における両係合部間の枢支連結部位を両棒状体の交差重合部位間に位置させた状態で前記両係合部を一方の棒状体に対して交差方向から係合させたのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除し、一方の連結部材の弾性復元力で両係合部を一方の棒状体に係合保持させることができる。
【0018】
他方の連結部材は、一方の棒状体に係合保持された一方の連結部材に対して背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているため、一方の棒状体及び一方の連結部材に対する特別な操作が不要で、他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、この連結部材の両係合部を他方の棒状体に対して交差方向から係合させたのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除するだけで、他方の連結部材の弾性復元力で両係合部を他方の棒状体に係合保持させることができる。
【0019】
また、一方の連結部材が係合保持されている一方の棒状体に対して、他方の連結部材が係合保持されている他方の棒状体の位置を変更する必要が生じた場合でも、その位置変更対象である他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、他方の棒状体との係合位置を変更操作するだけで済む。
【0020】
従って、前記両棒状体の交差重合部位間を、背中合わせで相対回転自在に枢支連結された両連結部材の枢支連結部位によって物理的に分断することにより、従来装置のように、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性を排除することができると同時に、両棒状体同士が接触して干渉することを回避することができるため、両棒状体の位置変更操作が簡素になり、交差姿勢で係合連結される両棒状体の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことができる。
【0021】
しかも、前記両連結部材を背中合わせで相対回転自在に枢支連結しながらも、前記両棒状体に係合保持された状態では、各連結部材が両棒状体の交差重合部位間を装着起点として各棒状体の外周面に沿って装着されるから、両連結部材の端部の外方への張り出し量が少なくなり、他物との引っ掛かりを抑制することができる。
【0022】
本発明による第3の特徴構成は、前記各連結部材が、枢支連結孔を備えた中央板部と、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部の両端から同一側に延出される傾斜板部と、該両傾斜板部の先端側に延出される操作板部を備えて構成され、前記両傾斜板部には、前記棒状体に対して両連結部材の相対回転方向から係入自在な互いに逆向きの開口を備えた前記係合部が形成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、前記各連結部材の両操作板部による弾性変形操作に伴う両傾斜板部の姿勢変化を利用して、該両傾斜板部に形成された係合部を介して棒状体に容易に係脱することができるとともに、一方の連結部材が一方の棒状体に係合保持された半拘束状態にあっても、両連結部材が持つ相対回転機能を利用して他方の連結部材の両係合部を他方の棒状体に容易に係合保持させることができる。
【0024】
本発明による第4の特徴構成は、前記棒状体における少なくとも連結部材との係合箇所には雄ネジ部が形成されているとともに、前記係合部には、前記棒状体の雄ネジ部の谷部に対して係合可能な係合爪が形成されている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、前記係合部の係合爪を棒状体の雄ネジ部の谷部に係合させることによって、棒状体に対する連結部材の係合保持力を高めることができる。
【0026】
本発明による第5の特徴構成は、前記各連結部材に、前記係合部の設定係合位置に係入した棒状部材の前記交差方向での相対離脱移動を接当規制する規制部が形成されている点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、前記両棒状体に両連結部材を係合保持させた交差連結状態において、前記両棒状体又は両連結部材若しくは両者に外力が作用しても、前記係合部の設定係合位置に係入した棒状部材の前記交差方向での相対離脱移動を接当規制することができるので、棒状部材と連結部材との係合連結を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、構造体の一例であるコンクリート製のスラブSに吊設された複数本の吊りボルト(棒状体の一例)3に、被吊設部材の一例である空調機器1の取付け金具1Aをナット2で取付けるとともに、振れ止め措置対象の二本の吊りボルト3にわたって交差姿勢の振れ止めボルト(棒状体の一例)4を交差連結具Aで係合連結してある振れ止め措置構造を示す。
【0029】
前記交差連結具Aは、図2〜図7に示すように、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている一対の金属製の連結部材5が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結手段の一例であるリベット7にて枢支連結されているとともに、前記各連結部材5の両側部には、前記ボルト3,4に対して交差方向から係入自在な開口6aを備えた凹状の係合部6が形成され、前記連結部材5の両端部を互いに近づける側への弾性変形操作で前記両係合部6がボルト3,4に対して係脱自在に構成され、前記連結部材5の弾性復元力で前記両係合部6がボルト3,4に対して係合可能に構成されている。
【0030】
前記各連結部材5は、前記リベット7に対する枢支連結孔8を貫通形成してある中央板部5Aと、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部5Aの両端から同一側に延出される傾斜板部5Bと、該両傾斜板部5Bの先端側に延出される操作板部5Cを備えた帯板状のバネ板部材から構成され、前記両傾斜板部5Bには、前記ボルト3,4に対して両連結部材5の相対回転方向(交差方向)から係入自在な互いに逆向きの開口6aを備えた前記係合部6が切欠き形成されている。
【0031】
そして、二本の前記ボルト3,4を交差姿勢で係合連結する場合、図4〜図6に示すように、枢支連結されている一対の連結部材5の一方をそれの両係合部6が近接する側に弾性変形操作し、この連結部材5における両係合部6間の枢支連結部位、つまり前記中央板部5Aを両ボルト3,4の交差重合部位間に位置させた状態で前記両係合部6をボルト3,4の一方に対して相対回転方向から係合させたのち、該連結部材5に加えられていた近接操作力を解除し、この連結部材5の弾性復元力で両係合部6をボルト3,4の一方に係合保持させることができる。
【0032】
他方の連結部材5は、図7に示すように、ボルト3,4の一方に係合保持された一方の連結部材5に対して背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているため、一方のボルト3,4及び一方の連結部材5に対する特別な操作が不要で、他方の連結部材5をそれの両係合部6が近接する側に弾性変形操作して、この連結部材5の両係合部6をボルト3,4の他方に対して交差方向から係合させたのち、該連結部材5に加えられていた近接操作力を解除するだけで、他方の連結部材5の弾性復元力で両係合部6を他方の棒状体に係合保持させることができる。
【0033】
また、一方の連結部材5が係合されている一方のボルト3,4に対して、他方の連結部材5が係合されている他方のボルト3,4の位置を変更する必要が生じた場合でも、その位置変更対象である他方の連結部材5をそれの両係合部6が近接する側に弾性変形操作して、他方のボルト3,4との係合位置を変更操作するだけで済む。
【0034】
それ故に、前記両ボルト3,4の交差重合部位間を、背中合わせで相対回転自在に枢支連結された両連結部材5の枢支連結部位である前記中央板部5Aによって物理的に分断することにより、従来装置のように、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性を排除することができると同時に、両棒状体同士が接触して干渉することを回避することができるため、両ボルト3,4の位置変更操作が簡素になり、交差姿勢で係合連結される両ボルト3,4の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことができる。
【0035】
前記各連結部材5の傾斜板部5Bには、前記係合部6の設定係合位置6bに係入したボルト3,4の前記相対回転方向での相対離脱移動を接当規制する規制部5Dがボルト軸芯方向に沿って一体的に突出形成され、この規制部5Dの存在により、前記係合部6が略L字状の係合溝に形成され、このL字状係合溝6のボルト軸芯方向に沿う係合縦溝部が前記設定係合位置6bとなり、L字状係合溝6のボルト軸芯方向に対して直交する係合横溝部の一端側が前記開口6aに構成されている。
【0036】
そのため、前記両ボルト3,4に両連結部材5を係合保持させた交差連結状態において、前記両ボルト3,4又は両連結部材5若しくは両者3,4,5に外力が作用しても、前記係合部6の設定係合位置であるL字状係合溝6の係合縦溝部内に係入したボルト3,4の前記相対回転方向での相対離脱移動を接当規制することができるので、ボルト3,4と連結部材5の係合部6との係合連結状態を良好に維持することができる。
【0037】
前記各連結部材5の傾斜板部5Bのうち、L字状係合溝6の係合縦溝部における両端部の各々には、該係合縦溝部の幅でボルト軸芯方向に沿って切れ込む一対のスリット6cを形成して、この両スリット6c間に、ボルト3,4の外周面全域に形成された雄ネジ部3a,4aの谷部(ネジ溝)に弾性圧接状態で係合可能な係止爪5Eが形成されている。
【0038】
前記各連結部材5の傾斜板部5Bは、図3〜図5に示すように、前記中央板部5Aに連続する急傾斜の第1傾斜板部分5aと前記操作板部5Cに連続する緩傾斜の第2傾斜板部分5bとに略への字状に屈曲形成され、この第1傾斜板部分5a及び第2傾斜板部分5bに対して前記係止爪5Eがボルト3,4の雄ネジ部3a,4a側に突出する状態で屈曲形成されているとともに、前記操作板部5Cは、ボルト3,4のボルト軸芯に対して交差する急傾斜の第1操作板部分5dとこれに対して外方側に傾斜する第1操作板部分5eとに略への字状に屈曲形成されている。
【0039】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記各連結部材5の傾斜板部5Bを、前記中央板部5Aに連続する急傾斜の第1傾斜板部分5aと前記操作板部5C連続する緩傾斜の第2傾斜板部分5bとに略への字状に屈曲形成し、この第1傾斜板部分5a及び第2傾斜板部分5bに対して前記係止爪5Eをボルト3,4の雄ネジ部3a,4a側に突出する状態で屈曲形成したが、図8〜図11に示すように、前記各連結部材5の傾斜板部5Bを、前記両係止爪5Eの先端同士を結ぶ線分と同じ傾斜角度又はこれに近い状態で少なくとも一方の係止爪5Eの先端を通る傾斜角度に設定して、第1実施形態よりも両係止爪5Eの曲げ加工数の削減を図ってもよい。
【0040】
特に、当該第2実施形態では、前記操作板部5C側に位置する係止爪5Eの先端を通る傾斜角度に設定して、該係止爪5Eの曲げ加工数を削減してある。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0041】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、前記連結部材5の両係合部6を、前記ボルト3,4に対して両連結部材5の相対回転方向(交差方向)から係入自在な互いに逆向きの開口6aを備えた凹部状に切欠き形成したが、該両係合部6を、前記ボルト3,4に対してそれの交差方向の同一側から係入自在な開口6aを備えた凹部状に切欠き形成してもよい。
さらに、前記連結部材5の両係合部6を、前記ボルト3,4を挿通可能な貫通孔から構成して、前記ボルト3,4に対する連結部材5のボルト径方向での離脱移動を360度の範囲で防止するように構成してもよい。
【0042】
(2)上述の各実施形態では、雄ネジ部3a,4aが外周面全域に形成されているボルト3,4を用いたが、前記両係合部6の係合領域又はそれよりも少し大きな領域にのみに雄ネジ部3a,4を形成してあるボルト3,4を用いて実施してもよく、さらに、前記棒状体が樹脂製の場合は、外周面にネジ部が形成されていなくても、前記両係合部6の端縁が棒状体の外周面に喰い込むため、棒状体と連結部材との係合連結を良好に維持することができる。
【0043】
(3)前記連結部材5の形態としては、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されているものであればよく、さらに、枢支連結孔8等の枢支連結部を備えた中央板部5Aと、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部5Aの両端から同一側に延出される傾斜板部5Bと、該両傾斜板部5Bの先端側に延出される操作板部5Cを備えている形態が好ましい。
【0044】
(4)互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結される両連結部材5の枢支連結部位の対向面に低摩擦処理を施して実施してもよい。
【0045】
(5)上述の各実施形態では、前記一対の連結部材5を同一形状に構成したが、形状や長さ、材質等の少なくとも一つが異なる連結部材5同士を組み合わせて構成してもよい。
【0046】
(6)上述の各実施形態では、一対の連結部材5を互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結する枢支連結手段としてリベット7を用いたが、ボルト・ナット等の他の枢支連結部材を用いてもよい。
【0047】
(7)上述の各実施形態では、空調機器1の吊下げ支持構造を構成する複数本の吊りボルト3とこれの振れ止め措置を講ずる振れ止めボルト4との係止連結構造について説明したが、本発明の技術は棒状体同士を交差姿勢で係合連結するものであれば、あらゆる分野で使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の交差連結具の第1実施形態を示す空調機器の吊下げ支持構造の正面図
【図2】交差連結具の分解斜視図と組付け斜視図
【図3】交差連結具の組付け時の側面図
【図4】一方の連結部材を圧縮操作したときの正面図
【図5】一方の連結部材をボルトに係合連結したときの断面側面図
【図6】吊りボルトに取り付けたときの交差連結具の斜視図
【図7】吊りボルトと振れ止めボルトとに取り付けたときの交差連結具の斜視図
【図8】本発明の交差連結具の第2実施形態を示す組付け時の側面図
【図9】一方の連結部材の正面図
【図10】一方の連結部材の側面図
【図11】一方の連結部材をボルトに係合連結したときの断面側面図
【符号の説明】
【0049】
3 棒状体(吊りボルト)
3a 雄ネジ部
4 棒状体(振れ止めボルト)
4a 雄ネジ部
5 連結部材
5A 中央板部
5B 傾斜板部
5C 操作板部
5D 規制部
5E 係止爪
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、壁や天井などの構造体に吊設される空調機等の機器類や配管ダクト類に対する振れ止め措置として、振れ止め措置対象の複数の吊りボルトにわたって振れ止めボルトを傾斜姿勢で固定連結するなど、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合に用いられる棒状体用交差連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の棒状体用交差連結具では、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている長尺な連結部材の内面側の中央部に、コの字状に屈曲形成された短尺な連結部材が、屈曲方向を同じ側に向けた状態で相対回転自在に枢支連結されている。
前記長尺連結部材は、枢支連結孔を備えた中央板部と、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部の両端から同一側に延出される傾斜板部と、該両傾斜板部の先端側に延出される操作板部を備えて構成され、前記両傾斜板部には、一方の棒状体に対してそれに交差する方向の同一側から係入自在な開口を備えた第1係合部が形成されている。
前記短尺連結部材の両端には、他方の棒状体に対してそれに交差する方向の同一側から係入自在なV字状の第2係合部が形成されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特公昭61−26286号公報
【特許文献2】実公昭62−2883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の棒状体用交差連結具では、前記二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合、前記短尺連結部材の両端に形成されているV字状の第2係合部を、手前側に位置する棒状体に係合し、その状態を維持したまま、前記長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作し、該長尺連結部材の両傾斜板部に形成されている第1係合部を、後方側に位置する棒状体に対してそれに交差する方向の同一側から係入させたのち、前記両操作板部に加えられていた近接操作力を解除し、長尺連結部材の弾性復元力で両第1係合部を棒状体に係合させている。
【0005】
しかし、一方の棒状体に対する長尺連結部材の係合位置又は他方の棒状体に対する短尺連結部材の係合位置を変更する必要が生じたとき、長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作して、一方の棒状体と両第1係合部の係合を解除すると、短尺連結部材の両第2係合部と他方の棒状体との係合も同時に解除される。
【0006】
そのため、例えば、短尺連結部材が係合されている他方の棒状体に対して、長尺連結部材の両第1係合部が係合されていた一方の棒状体の位置を変更する必要が生じた場合には、短尺連結部材の第2係合部を他方の棒状体に押し付けて係合状態を維持し、且つ、長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作したまま、一方の棒状体を他方の棒状体に対して位置変更分だけ移動操作する必要がある。
【0007】
また、長尺連結部材の両第1係合部が係合されていた一方の棒状体に対して、短尺連結部材が係合されている他方の棒状体の係合位置を変更する必要が生じた場合には、長尺連結部材の両操作板部を互いに近づける側に弾性変形操作して、短尺連結部材の第2係合部を他方の棒状体から遊離した係合解除状態に維持し、その状態で一方の棒状体に対して他方の棒状体を位置変更分だけ移動操作する必要がある。
【0008】
それ故に、上述のいずれの場合でも、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性があり、且つ、両棒状体同士が接触して干渉することがあるため、両棒状体の位置変更操作が煩雑化し、一人作業では手間取り易く、作業性の低下を招来していた。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、交差姿勢で係合連結される両棒状体の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことのできる棒状体用交差連結具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部を備え、且つ前記両係合部を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合、枢支連結されている一対の連結部材の一方をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作し、この連結部材における両係合部間の枢支連結部位を両棒状体の交差重合部位間に位置させた状態で前記両係合部を一方の棒状体に係合させたのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除し、一方の連結部材の弾性復元力で両係合部を一方の棒状体に係合保持させることができる。
【0012】
他方の連結部材は、一方の棒状体に係合保持された一方の連結部材に対して背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているため、一方の棒状体及び一方の連結部材に対する特別な操作が不要で、他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、この連結部材の両係合部を他方の棒状体に係合したのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除するだけで、他方の連結部材の弾性復元力で両係合部を他方の棒状体に係合保持させることができる。
【0013】
また、一方の連結部材が係合保持されている一方の棒状体に対して、他方の連結部材が係合保持されている他方の棒状体の位置を変更する必要が生じた場合でも、その位置変更対象である他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、他方の棒状体との係合位置を変更操作するだけで済む。
【0014】
従って、前記両棒状体の交差重合部位間を、背中合わせで相対回転自在に枢支連結された両連結部材の枢支連結部位によって物理的に分断することにより、従来装置のように、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性を排除することができると同時に、両棒状体同士が接触して干渉することを回避することができるため、両棒状体の位置変更操作が簡素になり、交差姿勢で係合連結される両棒状体の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことができる。
【0015】
しかも、前記両連結部材を背中合わせで相対回転自在に枢支連結しながらも、前記両棒状体に係合保持された状態では、各連結部材が両棒状体の交差重合部位間を装着起点として各棒状体の外周面に沿って装着されるから、両連結部材の端部の外方への張り出し量が少なくなり、他物との引っ掛かりを抑制することができる。
【0016】
本発明による第2の特徴構成は、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているとともに、前記各連結部材の両側部には、前記棒状体に対して交差方向から係入自在な開口を備えた凹状の係合部が形成され、前記連結部材の両端部を互いに近づける側への弾性変形操作で前記両係合部が棒状体に対して係脱自在に構成され、前記連結部材の弾性復元力で前記両係合部が棒状体に対して係合可能に構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する場合、枢支連結されている一対の連結部材の一方をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作し、この連結部材における両係合部間の枢支連結部位を両棒状体の交差重合部位間に位置させた状態で前記両係合部を一方の棒状体に対して交差方向から係合させたのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除し、一方の連結部材の弾性復元力で両係合部を一方の棒状体に係合保持させることができる。
【0018】
他方の連結部材は、一方の棒状体に係合保持された一方の連結部材に対して背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているため、一方の棒状体及び一方の連結部材に対する特別な操作が不要で、他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、この連結部材の両係合部を他方の棒状体に対して交差方向から係合させたのち、該連結部材に加えられていた近接操作力を解除するだけで、他方の連結部材の弾性復元力で両係合部を他方の棒状体に係合保持させることができる。
【0019】
また、一方の連結部材が係合保持されている一方の棒状体に対して、他方の連結部材が係合保持されている他方の棒状体の位置を変更する必要が生じた場合でも、その位置変更対象である他方の連結部材をそれの両係合部が近接する側に弾性変形操作して、他方の棒状体との係合位置を変更操作するだけで済む。
【0020】
従って、前記両棒状体の交差重合部位間を、背中合わせで相対回転自在に枢支連結された両連結部材の枢支連結部位によって物理的に分断することにより、従来装置のように、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性を排除することができると同時に、両棒状体同士が接触して干渉することを回避することができるため、両棒状体の位置変更操作が簡素になり、交差姿勢で係合連結される両棒状体の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことができる。
【0021】
しかも、前記両連結部材を背中合わせで相対回転自在に枢支連結しながらも、前記両棒状体に係合保持された状態では、各連結部材が両棒状体の交差重合部位間を装着起点として各棒状体の外周面に沿って装着されるから、両連結部材の端部の外方への張り出し量が少なくなり、他物との引っ掛かりを抑制することができる。
【0022】
本発明による第3の特徴構成は、前記各連結部材が、枢支連結孔を備えた中央板部と、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部の両端から同一側に延出される傾斜板部と、該両傾斜板部の先端側に延出される操作板部を備えて構成され、前記両傾斜板部には、前記棒状体に対して両連結部材の相対回転方向から係入自在な互いに逆向きの開口を備えた前記係合部が形成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、前記各連結部材の両操作板部による弾性変形操作に伴う両傾斜板部の姿勢変化を利用して、該両傾斜板部に形成された係合部を介して棒状体に容易に係脱することができるとともに、一方の連結部材が一方の棒状体に係合保持された半拘束状態にあっても、両連結部材が持つ相対回転機能を利用して他方の連結部材の両係合部を他方の棒状体に容易に係合保持させることができる。
【0024】
本発明による第4の特徴構成は、前記棒状体における少なくとも連結部材との係合箇所には雄ネジ部が形成されているとともに、前記係合部には、前記棒状体の雄ネジ部の谷部に対して係合可能な係合爪が形成されている点にある。
【0025】
上記特徴構成によれば、前記係合部の係合爪を棒状体の雄ネジ部の谷部に係合させることによって、棒状体に対する連結部材の係合保持力を高めることができる。
【0026】
本発明による第5の特徴構成は、前記各連結部材に、前記係合部の設定係合位置に係入した棒状部材の前記交差方向での相対離脱移動を接当規制する規制部が形成されている点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、前記両棒状体に両連結部材を係合保持させた交差連結状態において、前記両棒状体又は両連結部材若しくは両者に外力が作用しても、前記係合部の設定係合位置に係入した棒状部材の前記交差方向での相対離脱移動を接当規制することができるので、棒状部材と連結部材との係合連結を良好に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、構造体の一例であるコンクリート製のスラブSに吊設された複数本の吊りボルト(棒状体の一例)3に、被吊設部材の一例である空調機器1の取付け金具1Aをナット2で取付けるとともに、振れ止め措置対象の二本の吊りボルト3にわたって交差姿勢の振れ止めボルト(棒状体の一例)4を交差連結具Aで係合連結してある振れ止め措置構造を示す。
【0029】
前記交差連結具Aは、図2〜図7に示すように、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている一対の金属製の連結部材5が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結手段の一例であるリベット7にて枢支連結されているとともに、前記各連結部材5の両側部には、前記ボルト3,4に対して交差方向から係入自在な開口6aを備えた凹状の係合部6が形成され、前記連結部材5の両端部を互いに近づける側への弾性変形操作で前記両係合部6がボルト3,4に対して係脱自在に構成され、前記連結部材5の弾性復元力で前記両係合部6がボルト3,4に対して係合可能に構成されている。
【0030】
前記各連結部材5は、前記リベット7に対する枢支連結孔8を貫通形成してある中央板部5Aと、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部5Aの両端から同一側に延出される傾斜板部5Bと、該両傾斜板部5Bの先端側に延出される操作板部5Cを備えた帯板状のバネ板部材から構成され、前記両傾斜板部5Bには、前記ボルト3,4に対して両連結部材5の相対回転方向(交差方向)から係入自在な互いに逆向きの開口6aを備えた前記係合部6が切欠き形成されている。
【0031】
そして、二本の前記ボルト3,4を交差姿勢で係合連結する場合、図4〜図6に示すように、枢支連結されている一対の連結部材5の一方をそれの両係合部6が近接する側に弾性変形操作し、この連結部材5における両係合部6間の枢支連結部位、つまり前記中央板部5Aを両ボルト3,4の交差重合部位間に位置させた状態で前記両係合部6をボルト3,4の一方に対して相対回転方向から係合させたのち、該連結部材5に加えられていた近接操作力を解除し、この連結部材5の弾性復元力で両係合部6をボルト3,4の一方に係合保持させることができる。
【0032】
他方の連結部材5は、図7に示すように、ボルト3,4の一方に係合保持された一方の連結部材5に対して背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているため、一方のボルト3,4及び一方の連結部材5に対する特別な操作が不要で、他方の連結部材5をそれの両係合部6が近接する側に弾性変形操作して、この連結部材5の両係合部6をボルト3,4の他方に対して交差方向から係合させたのち、該連結部材5に加えられていた近接操作力を解除するだけで、他方の連結部材5の弾性復元力で両係合部6を他方の棒状体に係合保持させることができる。
【0033】
また、一方の連結部材5が係合されている一方のボルト3,4に対して、他方の連結部材5が係合されている他方のボルト3,4の位置を変更する必要が生じた場合でも、その位置変更対象である他方の連結部材5をそれの両係合部6が近接する側に弾性変形操作して、他方のボルト3,4との係合位置を変更操作するだけで済む。
【0034】
それ故に、前記両ボルト3,4の交差重合部位間を、背中合わせで相対回転自在に枢支連結された両連結部材5の枢支連結部位である前記中央板部5Aによって物理的に分断することにより、従来装置のように、長尺連結部材の両第1係合部と短尺連結部材の第2係合部とが同時的に作用する可能性を排除することができると同時に、両棒状体同士が接触して干渉することを回避することができるため、両ボルト3,4の位置変更操作が簡素になり、交差姿勢で係合連結される両ボルト3,4の位置変更操作を片手で能率良く容易に行うことができる。
【0035】
前記各連結部材5の傾斜板部5Bには、前記係合部6の設定係合位置6bに係入したボルト3,4の前記相対回転方向での相対離脱移動を接当規制する規制部5Dがボルト軸芯方向に沿って一体的に突出形成され、この規制部5Dの存在により、前記係合部6が略L字状の係合溝に形成され、このL字状係合溝6のボルト軸芯方向に沿う係合縦溝部が前記設定係合位置6bとなり、L字状係合溝6のボルト軸芯方向に対して直交する係合横溝部の一端側が前記開口6aに構成されている。
【0036】
そのため、前記両ボルト3,4に両連結部材5を係合保持させた交差連結状態において、前記両ボルト3,4又は両連結部材5若しくは両者3,4,5に外力が作用しても、前記係合部6の設定係合位置であるL字状係合溝6の係合縦溝部内に係入したボルト3,4の前記相対回転方向での相対離脱移動を接当規制することができるので、ボルト3,4と連結部材5の係合部6との係合連結状態を良好に維持することができる。
【0037】
前記各連結部材5の傾斜板部5Bのうち、L字状係合溝6の係合縦溝部における両端部の各々には、該係合縦溝部の幅でボルト軸芯方向に沿って切れ込む一対のスリット6cを形成して、この両スリット6c間に、ボルト3,4の外周面全域に形成された雄ネジ部3a,4aの谷部(ネジ溝)に弾性圧接状態で係合可能な係止爪5Eが形成されている。
【0038】
前記各連結部材5の傾斜板部5Bは、図3〜図5に示すように、前記中央板部5Aに連続する急傾斜の第1傾斜板部分5aと前記操作板部5Cに連続する緩傾斜の第2傾斜板部分5bとに略への字状に屈曲形成され、この第1傾斜板部分5a及び第2傾斜板部分5bに対して前記係止爪5Eがボルト3,4の雄ネジ部3a,4a側に突出する状態で屈曲形成されているとともに、前記操作板部5Cは、ボルト3,4のボルト軸芯に対して交差する急傾斜の第1操作板部分5dとこれに対して外方側に傾斜する第1操作板部分5eとに略への字状に屈曲形成されている。
【0039】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記各連結部材5の傾斜板部5Bを、前記中央板部5Aに連続する急傾斜の第1傾斜板部分5aと前記操作板部5C連続する緩傾斜の第2傾斜板部分5bとに略への字状に屈曲形成し、この第1傾斜板部分5a及び第2傾斜板部分5bに対して前記係止爪5Eをボルト3,4の雄ネジ部3a,4a側に突出する状態で屈曲形成したが、図8〜図11に示すように、前記各連結部材5の傾斜板部5Bを、前記両係止爪5Eの先端同士を結ぶ線分と同じ傾斜角度又はこれに近い状態で少なくとも一方の係止爪5Eの先端を通る傾斜角度に設定して、第1実施形態よりも両係止爪5Eの曲げ加工数の削減を図ってもよい。
【0040】
特に、当該第2実施形態では、前記操作板部5C側に位置する係止爪5Eの先端を通る傾斜角度に設定して、該係止爪5Eの曲げ加工数を削減してある。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0041】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の各実施形態では、前記連結部材5の両係合部6を、前記ボルト3,4に対して両連結部材5の相対回転方向(交差方向)から係入自在な互いに逆向きの開口6aを備えた凹部状に切欠き形成したが、該両係合部6を、前記ボルト3,4に対してそれの交差方向の同一側から係入自在な開口6aを備えた凹部状に切欠き形成してもよい。
さらに、前記連結部材5の両係合部6を、前記ボルト3,4を挿通可能な貫通孔から構成して、前記ボルト3,4に対する連結部材5のボルト径方向での離脱移動を360度の範囲で防止するように構成してもよい。
【0042】
(2)上述の各実施形態では、雄ネジ部3a,4aが外周面全域に形成されているボルト3,4を用いたが、前記両係合部6の係合領域又はそれよりも少し大きな領域にのみに雄ネジ部3a,4を形成してあるボルト3,4を用いて実施してもよく、さらに、前記棒状体が樹脂製の場合は、外周面にネジ部が形成されていなくても、前記両係合部6の端縁が棒状体の外周面に喰い込むため、棒状体と連結部材との係合連結を良好に維持することができる。
【0043】
(3)前記連結部材5の形態としては、両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されているものであればよく、さらに、枢支連結孔8等の枢支連結部を備えた中央板部5Aと、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部5Aの両端から同一側に延出される傾斜板部5Bと、該両傾斜板部5Bの先端側に延出される操作板部5Cを備えている形態が好ましい。
【0044】
(4)互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結される両連結部材5の枢支連結部位の対向面に低摩擦処理を施して実施してもよい。
【0045】
(5)上述の各実施形態では、前記一対の連結部材5を同一形状に構成したが、形状や長さ、材質等の少なくとも一つが異なる連結部材5同士を組み合わせて構成してもよい。
【0046】
(6)上述の各実施形態では、一対の連結部材5を互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結する枢支連結手段としてリベット7を用いたが、ボルト・ナット等の他の枢支連結部材を用いてもよい。
【0047】
(7)上述の各実施形態では、空調機器1の吊下げ支持構造を構成する複数本の吊りボルト3とこれの振れ止め措置を講ずる振れ止めボルト4との係止連結構造について説明したが、本発明の技術は棒状体同士を交差姿勢で係合連結するものであれば、あらゆる分野で使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の交差連結具の第1実施形態を示す空調機器の吊下げ支持構造の正面図
【図2】交差連結具の分解斜視図と組付け斜視図
【図3】交差連結具の組付け時の側面図
【図4】一方の連結部材を圧縮操作したときの正面図
【図5】一方の連結部材をボルトに係合連結したときの断面側面図
【図6】吊りボルトに取り付けたときの交差連結具の斜視図
【図7】吊りボルトと振れ止めボルトとに取り付けたときの交差連結具の斜視図
【図8】本発明の交差連結具の第2実施形態を示す組付け時の側面図
【図9】一方の連結部材の正面図
【図10】一方の連結部材の側面図
【図11】一方の連結部材をボルトに係合連結したときの断面側面図
【符号の説明】
【0049】
3 棒状体(吊りボルト)
3a 雄ネジ部
4 棒状体(振れ止めボルト)
4a 雄ネジ部
5 連結部材
5A 中央板部
5B 傾斜板部
5C 操作板部
5D 規制部
5E 係止爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部を備え、且つ前記両係合部を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている棒状体用交差連結具。
【請求項2】
二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているとともに、前記各連結部材の両側部には、前記棒状体に対して交差方向から係入自在な開口を備えた凹状の係合部が形成され、前記連結部材の両端部を互いに近づける側への弾性変形操作で前記両係合部が棒状体に対して係脱自在に構成され、前記連結部材の弾性復元力で前記両係合部が棒状体に対して係合可能に構成されている棒状体用交差連結具。
【請求項3】
前記各連結部材が、枢支連結孔を備えた中央板部と、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部の両端から同一側に延出される傾斜板部と、該両傾斜板部の先端側に延出される操作板部を備えて構成され、前記両傾斜板部には、前記棒状体に対して両連結部材の相対回転方向から係入自在な互いに逆向きの開口を備えた前記係合部が形成されている請求項1又は2記載の棒状体用交差連結具。
【請求項4】
前記棒状体における少なくとも連結部材との係合箇所には雄ネジ部が形成されているとともに、前記係合部には、前記棒状体の雄ネジ部の谷部に対して係合可能な係合爪が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の棒状体用交差連結具。
【請求項5】
前記各連結部材には、前記係合部の設定係合位置に係入した棒状部材の前記交差方向での相対離脱移動を接当規制する規制部が形成されている請求項2記載の棒状体用交差連結具。
【請求項1】
二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
一方の棒状体の二箇所に対して弾性復元力で係合保持可能な係合部を備え、且つ前記両係合部を互いに近づける側への弾性変形操作で該係合部が係合解除される形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されている棒状体用交差連結具。
【請求項2】
二本の棒状体を交差姿勢で係合連結する棒状体用交差連結具であって、
両端部を互いに近づける側に弾性変形操作可能な形態に屈曲形成されている一対の連結部材が、互いに逆向き姿勢となる背中合わせで相対回転自在に枢支連結されているとともに、前記各連結部材の両側部には、前記棒状体に対して交差方向から係入自在な開口を備えた凹状の係合部が形成され、前記連結部材の両端部を互いに近づける側への弾性変形操作で前記両係合部が棒状体に対して係脱自在に構成され、前記連結部材の弾性復元力で前記両係合部が棒状体に対して係合可能に構成されている棒状体用交差連結具。
【請求項3】
前記各連結部材が、枢支連結孔を備えた中央板部と、これに対して交差する傾斜姿勢で該中央板部の両端から同一側に延出される傾斜板部と、該両傾斜板部の先端側に延出される操作板部を備えて構成され、前記両傾斜板部には、前記棒状体に対して両連結部材の相対回転方向から係入自在な互いに逆向きの開口を備えた前記係合部が形成されている請求項1又は2記載の棒状体用交差連結具。
【請求項4】
前記棒状体における少なくとも連結部材との係合箇所には雄ネジ部が形成されているとともに、前記係合部には、前記棒状体の雄ネジ部の谷部に対して係合可能な係合爪が形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の棒状体用交差連結具。
【請求項5】
前記各連結部材には、前記係合部の設定係合位置に係入した棒状部材の前記交差方向での相対離脱移動を接当規制する規制部が形成されている請求項2記載の棒状体用交差連結具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−185940(P2009−185940A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27738(P2008−27738)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]